JPWO2004094357A1 - 固体酸触媒を用いたエーテルの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明者は、超強酸特性を示す固体酸触媒に好ましくは気相状態のアルコールを接触させることにより、エーテル合成反応が高い効率で行われることを見出した。この場合に、アルコールをガス空間速度1500/時以上の条件で固体酸触媒に接触させることが、触媒の劣化が少ない点から好ましい。また、アルコールの炭素数が1〜2であり、アルコールと固体酸触媒の接触時の温度が100℃以上であることが好ましい。
本発明のエーテル製造方法の原料となるアルコールは、OH基を有する有機化合物であれば特に限定されないが、特には炭素数が1〜2、すなわち、メタノールまたはエタノールが好ましい。合成されるエーテルとしては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテルなどが挙げられる。原料としてのアルコールは、窒素ガス、ヘリウムガスなどの不活性ガスで希釈されていてよいが、エーテル原料としては、実質的にアルコールのみを用いることが好ましく、原料にオレフィンが含まれることは好ましくない。
〔固体酸触媒〕
本発明には、超強酸の特性を示す固体酸触媒が用いられる。超強酸の特性とは、ハメットの酸度関数Hoが−14以下、特には−16以下が好ましい。また、アルゴン吸着熱が、−20kJ/mol以下、特には−30kJ/mol以下、更には−30〜−60kJ/mol以下が好ましい。このアルゴン吸着熱は、測定対象を真空に排気しながら300℃まで昇温した後、液体窒素温度でアルゴンを導入して、容量法により吸着量を測定したものであり、詳細は、J.Phys.Chem.B、Vol.105、No.40、p.9667−(2001)に開示される。
本発明に使用する固体酸触媒としては、結晶性の金属酸化物の表面に硫酸根を担持した固体酸触媒が好ましい。金属酸化物としては、ジルコニウム、ハフニウム、チタン、ケイ素、ゲルマニウム、スズなどの金属を1種または2種以上含む金属酸化物を用いることができる。触媒中に、これらの金属元素重量として20〜72重量%、特には30〜60重量%含むことが好ましい。硫酸分の割合は、硫黄元素重量として0.7〜7重量%、好ましくは1〜6重量%、特には2〜5重量%である。硫酸分が多すぎても少なすぎても触媒活性は低下する。このような触媒の具体例としては、以下に述べる硫酸/ジルコニア系触媒、硫酸/酸化スズ系触媒がある。
〔硫酸/ジルコニア系触媒〕
硫酸/ジルコニア系触媒は、金属酸化物の少なくとも一部分の金属成分がジルコニウムであるジルコニア(ジルコニウム酸化物)部分を含み、硫酸分を含有する。なお、金属酸化物は、含水金属酸化物を含むものとして定義される。
ジルコニア部分は実質的に正方晶ジルコニアからなることが好ましい。これは、粉末X線回折により確認でき、具体的には、CuKα線による2θ=30.2°の正方晶ジルコニアの回折ピークで確認できる。回折ピークで確認できる程度に結晶化しており、単斜晶ジルコニアは含まれていない方が好ましい。2θ=30.2°の正方晶ジルコニアの回折ピーク面積(S30)と2θ=28.2°の単斜晶ジルコニアの回折ピーク面積(S28)の比(S28/S30)が1.0以下、特には0.05以下が好ましい。
また、触媒中にアルミニウム酸化物をアルミニウム元素重量として5〜30重量%、特には8〜25重量%含むことが好ましい。このアルミナ部分は、結晶化しており、特には実質的にγ−アルミナからなることが好ましい。
硫酸/ジルコニア系触媒の製法は特に限定されないが、一例を挙げれば、ジルコニアの前駆体となる粉体(以下、「前駆体粉体」という)である含水ジルコニウム酸化物および/またはジルコニウム水酸化物の粉体に硫黄分含有化合物を加えて混練し、成形し、焼成する方法が用いられる。以下にこの方法に沿って説明を行うが、担体の焼成、硫酸分の担持などはその順序を適宜変更できる。また、硫酸/ジルコニア系触媒の形態は、粉体でも、成形体でもよい。
硫酸/ジルコニア系触媒において、金属成分としてはジルコニウムに加え、アルミニウムを含むことが特に好ましく、ジルコニア前駆体粉体にベーマイトのようなアルミナ水和物を加えることが好ましい。ジルコニア前駆体粉体の添加量は、最終的に得られる固体酸触媒中に占めるジルコニア量がジルコニウム元素重量として20〜72重量%、特には30〜60重量%となるように用いるのが好ましく、また、アルミニウム成分添加量は、触媒中のアルミナ量がアルミニウム元素重量として5〜30重量%、特には8〜25重量%含むようにすることが好ましい。
硫黄分含有化合物は、硫酸分を含有する化合物、または、その後の焼成などの処理により硫酸分に変換されうる硫黄分を含んだ化合物である。硫黄分含有化合物としては、硫酸、硫酸アンモニウム、亜硫酸、亜硫酸アンモニウム、塩化チオニル、ジメチル硫酸などが挙げられるが、硫酸分を含んだ硫酸分含有化合物が好ましく用いられ、硫酸アンモニウム、ジメチル硫酸が製造装置の腐食性も低く好ましい。特には硫酸アンモニウムが最も好ましく用いられる。
通常、硫黄分含有化合物は水溶液のような溶液として用い、前記の原料粉末に接触させる。硫黄分含有化合物の添加量は、最終的に得られる固体酸触媒中に占める硫酸分量が、硫黄元素重量として0.7〜7重量%、好ましくは1〜6重量%、特には2〜5重量%となるようにするのが好ましい。
〔混練〕
混練の方法には特に限定は無く、一般に触媒調製に用いられている混練機を用いることができる。通常は原料を投入し、水等の溶媒を加えて攪拌羽根で混合するような方法が好ましく用いられるが、原料および添加物の投入順序など特に限定はない。混練の際には上記溶媒として通常水を加えるが、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの有機溶媒を加えて良い。混練時の温度や混練時間は、原料となるジルコニア前駆体粉体、アルミナ先駆体紛体、硫黄分含有化合物などにより異なるが、好ましい細孔構造が得られる条件であれば、特に制限はない。同様に本発明の触媒性状が維持される範囲内であれば、硝酸などの酸やアンモニアなどの塩基、有機化合物、金属塩、セラミックス繊維、界面活性剤、ゼオライト、粘土などを加えて混練しても構わない。
〔成形〕
混練後の成形方法には特に限定は無く、一般に触媒調製に用いられている成形方法を用いることができる。特に、ペレット状、ハニカム状などの任意の形状に効率よく成形できるので、スクリュー式押出機などを用いた押出成形が好ましく用いられる。成形物のサイズは特に制限はないが、通常、その断面の長さが0.5〜20mmの大きさに成形される。例えば円柱状のペレットであれば、通常直径0.5〜10mm、長さ0.5〜15mm程度のものを容易に得ることができる。
〔成形後の焼成〕
成形後の焼成は、空気または窒素などのガス雰囲気中において行われるが、特には空気中で行うことが好ましい。焼成温度は焼成時間、ガス流通量など他の焼成条件によっても異なるが、一般に400〜900℃、好ましくは500〜800℃である。焼成時間は焼成温度、ガス流通量など他の焼成条件によっても異なるが、一般に0.05〜20時間、特に0.1〜10時間、さらには0.2〜5時間が好ましい。
〔硫酸/酸化スズ系触媒〕
硫酸/酸化スズ系触媒は、金属酸化物の少なくとも一部分の金属成分がスズである酸化スズ部分を含み、硫酸分を含有する。なお、金属酸化物は、含水金属酸化物を含むものとして定義される。触媒の比表面積は100m2/g以上、特には100〜200m2/gが好ましい。
酸化スズの特性としては、非晶質の酸化スズを用いることもできるが、実質的に正方晶の結晶構造を持つ酸化物からなることが好ましい。これは、粉末X線回折により確認でき、具体的には、CuKα線による2θ=26.6°の回折ピークで確認できる。回折ピークで確認できる程度に結晶化しており、結晶子径が10〜50nm、特には20〜45nmであることが好ましい。
硫酸/酸化スズ系触媒の製法は特に限定されないが、一例を挙げれば、酸化スズに硫黄分含有化合物を含ませ、その後、焼成する製造方法を用いることができる。硫酸/酸化スズ系触媒の形態は、粉体でも、成形体でもよく、酸化スズ以外の成分からなる担体の表面に酸化スズを形成したものでもよい。
酸化スズは、どのような形態も用いることができるが、特にはメタスズ酸が好ましく用いられる。硫黄分含有化合物は、硫酸分を含有する化合物、または、その後の焼成などの処理により硫酸分に変換されうる硫黄分を含んだ化合物である。硫黄分含有化合物としては、硫酸、硫酸アンモニウム、亜硫酸、亜硫酸アンモニウム、塩化チオニル、ジメチル硫酸などが挙げられる。通常、硫黄分含有化合物は水溶液のような溶液を用いて、酸化スズに接触させる。上記の酸化スズ、硫黄分含有化合物の添加量は、最終的に得られる固体酸触媒中に占める酸化スズをスズ元素重量として20〜72重量%、特には30〜72重量%、硫酸分を、硫黄元素重量として0.7〜10重量%、好ましくは1〜9重量%、特には2〜8重量%であるのが好ましい。
焼成は、空気または窒素などのガス雰囲気中において行われるが、特には空気中で行うことが好ましい。焼成温度は焼成時間、ガス流通量など他の焼成条件によっても異なるが、一般に300〜900℃、好ましくは400〜800℃である。焼成時間は焼成温度、ガス流通量など他の焼成条件によっても異なるが、一般に0.05〜20時間、特に0.1〜10時間、さらには0.2〜5時間が好ましい。
酸化スズの表面は、硫黄分含有化合物に接触させる前に、有機酸イオン、特にはカルボン酸イオンを含む溶液、特には水溶液で前処理することが好ましい。このような水溶液としては、酢酸アンモニウムなどのカルボン酸アンモニウム塩、カルボン酸金属塩の水溶液が好ましく用いられる。
〔エーテル合成反応〕
本発明のエーテル製造方法は、気相状態のアルコールを、超強酸特性を示す固体酸触媒に接触させ、アルコールの脱水反応によりエーテルを製造するものである。アルコールが気相になるような温度で反応を行わせる。反応状態が、窒素ガスなどの不活性ガスで希釈されていてもよい。圧力が大気圧よりも低い状態で反応を行わせてもよく、通常は0.5〜10気圧でよい。また、触媒にアルコールを間欠的に接触させるパルス法では、圧力を0.1〜0.3MPaで行わせることができる。反応時に生成する水を吸収する吸水剤などを用いてもよいが、本発明によれば、特に用いる必要はない。
反応は流通式で行われ、原料となるアルコールのガス空間速度は、1500/時以上、好ましくは3000/時以上、特に好ましくは5000〜500000/時である。
アルコールのガス空間速度〔1/時〕は、
(気化したアルコールを理想気体として室温で扱った流量〔ml/時〕 + 室温での希釈用不活性ガス流量〔ml/時〕) / 触媒量〔ml〕により定義される。
アルコールと固体酸触媒の接触時の温度は、100℃以上、特には105〜300℃、さらには120〜240℃が好ましい。
〔硫酸/ジルコニア系触媒SZAの調製〕
市販の乾燥水酸化ジルコニウムを乾燥した平均粒径1.5μmの粉体を含水ジルコニア粉体として用いた。また、平均粒径10μmの市販の擬ベーマイト粉体を含水アルミナ粉体として用いた。この含水ジルコニア粉体1860gと含水アルミナ粉体1120gを混合し、さらに硫酸アンモニウム575gを加え、攪拌羽根のついた混練機で水を加えながら45分間混練を行った。得られた混練物を直径1.6mmの円形開口を有する押出機より押し出して円柱状のペレットを成形し、110℃で乾燥して乾燥ペレットを得た。続いてこの乾燥ペレットの一部を675℃で1.5時間焼成し、硫酸/ジルコニア系触媒(以下、SZAともいう)を得た。
このSZAは、焼成により得られた平均直径1.4mm、平均長さ4mmの円柱状を16〜24メッシュに整粒して用いた。SZAの比表面積は158m2/g、細孔直径0.002〜10μmの細孔容積は0.31ml/gであった。SZAの細孔直径0.002〜0.05μmの範囲における中央細孔直径は5.5nmであった。アルゴン吸着熱は、−24.3kJ/molであった。得られた固体酸触媒は、ジルコニア部分が実質的に正方晶ジルコニアであった。また、固体酸触媒中に占めるジルコニア量はジルコニウム元素重量として41.8重量%、アルミナ量はアルミニウム元素重量として15.7重量%、硫酸分は硫黄元素重量として3.09重量%であった。
〔硫酸/酸化スズ系触媒STO1の調製〕
市販の塩化スズ(SnCl4・nH2O、和光純薬製)100gを水3Lに溶解し、アンモニア水(25%濃度)を滴下して沈殿を形成し、pHは8となった。濾別した沈殿を4重量%の酢酸アンモニウム水溶液に分散させ、再度濾別して空気中100℃で24時間乾燥し、前駆体1を得た。得られた前駆体1の4gを6N硫酸60mLに1時間接触させ、濾過し、空気中100℃で2時間乾燥し、さらに、空気中500℃で3時間焼成して、硫酸/酸化スズ系触媒1(以下、STO1ともいう)を得た。
このSTO1は、粉末状であり、STO1の比表面積は135m2/g、細孔直径0.002〜10μmの細孔容積は0.1ml/gであった。STO1の細孔直径0.002〜0.05μmの範囲における中央細孔直径は3.1nmであった。アルゴン吸着熱は、−29.7kJ/molであった。得られた固体酸触媒は、酸化スズ部分が実質的に正方晶酸化スズであった。また、固体酸触媒中に占める酸化スズ量はスズ元素重量として71.4重量%、硫酸分は硫黄元素重量として1.96重量%であった。
〔硫酸/酸化スズ系触媒MO−817の調製〕
市販のメタスズ酸(SnO2、山中産業製)100gを4重量%の酢酸アンモニウム水溶液に分散させ、濾別して空気中100℃で24時間乾燥し、前駆体2を得た。得られた前駆体2の4gを6N硫酸60mLに1時間接触させ、濾過し、空気中100℃で2時間乾燥し、さらに、空気中500℃で3時間焼成して、硫酸/酸化スズ系触媒(以下、MO−817ともいう)を得た。
このMO−817は、粉末状であり、比表面積は152m2/g、細孔直径0.002〜10μmの細孔容積は0.1ml/gであった。MO−817の細孔直径0.002〜0.05μmの範囲における中央細孔直径は2.8nmであった。アルゴン吸着熱は、−31.0kJ/molであった。得られた固体酸触媒は、酸化スズ部分が実質的に正方晶酸化スズであった。また、固体酸触媒中に占める酸化スズ量はスズ元素重量として70.6重量%、硫酸分は硫黄元素重量として2.44重量%であった。
〔パルス反応〕
これらの触媒0.1cm3(0.1g)を、上下方向長さ10cm、内径0.35cmの固定床流通式反応器中に充填し、ヘリウム58ml/分のキャリアガスを流しながら、反応器の上端からメタノール1μlを0.1秒でパルス状に導入し、下端出口での生成物をガスクロマトグラフィーによりメタノールとDMEの含有量を測定し、DMEへの転化率を求めた。導入は10回行い、その平均値を測定値とした。この場合のアルコールのガス空間速度は、34800/時である。また、反応圧は、大気圧であった。
この測定結果を表1に示す。メタノールが気相状態にない反応温度が90℃の実験例4、5の場合には、DMEへの転化が起こらないことがわかる。
〔流通式反応〕
これらの触媒1cm3、上下方向長さ50cm、内径1cmの固定床流通式反応器中に充填し、メタノールを窒素ガスで希釈し、大気圧の反応圧力で反応器の上端から導入し、下端出口での生成物をサンプリングし、メタノールとDMEの含有量をガスクロマトグラフィーにより測定し、DMEへの転化率を求めた。
実験結果を表2に示す。実験例7、10では触媒が劣化するが、ガス空間速度が1500/時以上の条件では触媒の劣化が緩和され、3000/時以上の条件では、触媒の劣化が起こることなく、DMEの製造が可能なことがわかる。
Claims (3)
- 気相状態のアルコールを、超強酸特性を示す固体酸触媒に接触させ、アルコールの脱水反応によりエーテルを製造するエーテルの製造方法。
- アルコールをガス空間速度1500/時以上の条件でアルコールを固体酸触媒に接触させる請求項1記載のエーテルの製造方法。
- アルコールの炭素数が1〜2であり、アルコールと固体酸触媒の接触時の温度が100℃以上である請求項1記載のエーテルの製造方法。
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