JPWO2004093230A1 - 燃料電池システム及びその制御方法 - Google Patents
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Abstract
過剰な運転制限を設けることなく、燃料電池スタック(3)の出力性能(EP)を確保するため、燃料電池システム(1)のコントローラ(43)に、温度センサ(27)が検出した吸入空気温度(T1)と圧力センサ(25)が検出した大気圧(P0)とに基づいて、空気圧縮機(7)の吐出空気温度(T2)がその上限値(Lt)を超えないようにスタック(3)の運転を制限し、吸入空気温度(T1)の低下が予測される状態において運転の制限を緩和する運転制限部(45)と、温度センサ(27)が検出した吸入空気温度(T1)と圧力センサ(25)が検出した大気圧(P0)とに基づいて、空気圧縮機(7)が吐出する空気の温度(T2)がその上限値(Lt)を超えないように空気圧縮機(7)の吐出空気圧力(P2)の上限値(Lp)を設定する上限値設定部(47)とを設けた。
Description
本発明は、燃料電池システム及びその制御方法に関し、特に、燃料電池に供給される酸化剤の許容温度範囲に基づき燃料電池の発電を制限する燃料電池システム及びその制御方法に関する。
燃料電池は、例えば水素ガスからなる燃料と酸素を含有する酸化ガスからなる酸化剤とを電解質を介し電気化学的に反応させて、電解質を挟む電極間に電気エネルギを取り出す。
電解質を固体高分子で形成した固体高分子型燃料電池は、動作温度が低く、取扱いが容易なため、電動車両の車載電源として使用される。
燃料電池を電源とする電動車両は、車載の水素貯蔵装置(例えば、高圧水素タンク、液体水素タンク、水素吸蔵合金タンク)から供給される水素と、酸素を含む空気とを燃料電池で反応させ、そこから取り出した電気エネルギで車両の駆動輪につながるモータを駆動し、反応生成物として水だけを排出することから、究極のクリーン車両といわれる。
地上で使用される燃料電池システムは、通常、空気圧縮機又は送風ファンにより周囲の空気を断熱的に圧縮し、結果的に昇温し昇圧された空気を酸化剤として燃料電池へ供給する酸化剤供給系を備える。
次の特許文献1〜3に、酸化剤供給系を備える燃料電池システムに関する技術が示されている。
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電解質を固体高分子で形成した固体高分子型燃料電池は、動作温度が低く、取扱いが容易なため、電動車両の車載電源として使用される。
燃料電池を電源とする電動車両は、車載の水素貯蔵装置(例えば、高圧水素タンク、液体水素タンク、水素吸蔵合金タンク)から供給される水素と、酸素を含む空気とを燃料電池で反応させ、そこから取り出した電気エネルギで車両の駆動輪につながるモータを駆動し、反応生成物として水だけを排出することから、究極のクリーン車両といわれる。
地上で使用される燃料電池システムは、通常、空気圧縮機又は送風ファンにより周囲の空気を断熱的に圧縮し、結果的に昇温し昇圧された空気を酸化剤として燃料電池へ供給する酸化剤供給系を備える。
次の特許文献1〜3に、酸化剤供給系を備える燃料電池システムに関する技術が示されている。
日本特開2000−12060号公報(第3頁、図1)
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日本特開2000−48838号公報(第3頁、図2)
:
日本特開2000−48839号公報(第3頁、図2)
特許文献1は、空気圧縮機を通常運転時より圧力比の高い運転点で運転して得た比較的高温の空気を用いて、燃料改質器の暖機を促進し、起動時間を短縮する。
特許文献2,3は、酸化剤供給系に送風ファンを用い、先ず、その標準条件(1気圧、0℃)下での回転速度を、所要燃料量に応じて推定し、その推定結果を更に大気圧と外気温とに応じて補正することにより、燃料電池の設置位置或いは気象条件の変動に拘わらず、適量の酸化剤を燃料電池に供給できるようにしている。
特許文献1に従い空気圧縮機の圧力比を高くした場合、或いは特許文献1〜3で空気圧縮機又は送風ファンが高温の空気を吸入した場合に、その吐出空気の温度が過度に上昇する可能性がある。
特許文献1は、空気圧縮機を通常運転時より圧力比の高い運転点で運転して得た比較的高温の空気を用いて、燃料改質器の暖機を促進し、起動時間を短縮する。
特許文献2,3は、酸化剤供給系に送風ファンを用い、先ず、その標準条件(1気圧、0℃)下での回転速度を、所要燃料量に応じて推定し、その推定結果を更に大気圧と外気温とに応じて補正することにより、燃料電池の設置位置或いは気象条件の変動に拘わらず、適量の酸化剤を燃料電池に供給できるようにしている。
特許文献1に従い空気圧縮機の圧力比を高くした場合、或いは特許文献1〜3で空気圧縮機又は送風ファンが高温の空気を吸入した場合に、その吐出空気の温度が過度に上昇する可能性がある。
この問題は、そうした空気圧縮機又は送風ファンの下流側にある部品の耐熱温度を考慮して吐出空気の圧力及び燃料電池の発電を制限することにより、対処することができる。
しかしながら、そうした空気圧縮機又は送風ファンの吸込口が、例えば燃料電池自身、あるいはその水冷ラジエタの近くにあると、これが熱源となり、車両の停止時或いは低速走行時に、吸入空気の温度が高くなる。
このため、車両の発進時或いは加速時に燃料電池の発電を制限して、空気圧縮機の吐出空気温度が所定温度を超えないように配慮する必要が生じ、それだと燃料電池の性能を活かし切れない事態も想定される。
本発明は、以上の点に鑑みなされたもので、酸化剤の供給温度の許容範囲に応じて燃料電池の発電を制限しつつも、状況に応じ燃料電池の性能を活用可能な燃料電池システム及びその制御方法を提供することをその課題とする。
前記課題を解決する本発明の1つの主題は、水素を含む燃料ガスと酸素を含む酸化ガスとの供給を受けて発電する燃料電池と、前記燃料電池に空気を供給する空気供給部と、前記空気供給部が吸入する空気の温度を検出する吸入空気温度検出部と、大気圧を検出する大気圧検出部と、前記燃料電池の運転を制御する制御装置とを備えた燃料電池システムであって、前記制御装置は、前記吸入空気温度検出部が検出した吸入空気温度と前記大気圧検出部が検出した大気圧とに基づいて、前記空気供給部が吐出する空気の温度が所定の上限値を超えないように前記燃料電池の運転を制限し、所定の状態においては前記運転の制限を緩和する運転制限部を備えることを要旨とする。
前記課題を解決する本発明の別の主題は、酸化剤を含むユーティリティを供給する供給系と、前記供給系から供給されたユーティリティを用いて発電する燃料電池と、前記供給系を制御して前記燃料電池を運転するコントローラとを備えてなり、前記コントローラは、前記酸化剤の供給条件を制限する第1の制御部と、前記供給系の運転状況に応じて前記供給条件の制限を緩和する第2の制御部とを有することを要旨とする燃料電池システムである。
前記課題を解決する本発明の別の主題は、水素を含む燃料ガスと酸素を含む酸化ガスとの供給を受けて発電する燃料電池と、前記燃料電池に空気を供給する空気供給部と、前記空気供給部が吸入する空気の温度を検出する吸入空気温度検出部と、大気圧を検出する大気圧検出部と、前記燃料電池の運転を制御する制御装置とを備える燃料電池システムの制御方法であって、前記吸入空気温度検出部が検出した吸入空気温度と前記大気圧検出部が検出した大気圧とに基づいて、前記空気供給部が吐出する空気の温度が所定の上限値を超えないように前記燃料電池の運転を制限し、所定の状態においては前記運転の制限を緩和することを要旨とする。
前記課題を解決する本発明の別の主題は、酸化剤を含むユーティリティを供給する供給系と、前記供給系から供給されたユーティリティを用いて発電する燃料電池とを備え、前記供給系を制御して前記燃料電池を運転する燃料電池システムの制御方法であって、前記酸化剤の供給条件を制限し、前記供給系の運転状況に応じて前記供給条件の制限を緩和することを要旨とする。
しかしながら、そうした空気圧縮機又は送風ファンの吸込口が、例えば燃料電池自身、あるいはその水冷ラジエタの近くにあると、これが熱源となり、車両の停止時或いは低速走行時に、吸入空気の温度が高くなる。
このため、車両の発進時或いは加速時に燃料電池の発電を制限して、空気圧縮機の吐出空気温度が所定温度を超えないように配慮する必要が生じ、それだと燃料電池の性能を活かし切れない事態も想定される。
本発明は、以上の点に鑑みなされたもので、酸化剤の供給温度の許容範囲に応じて燃料電池の発電を制限しつつも、状況に応じ燃料電池の性能を活用可能な燃料電池システム及びその制御方法を提供することをその課題とする。
前記課題を解決する本発明の1つの主題は、水素を含む燃料ガスと酸素を含む酸化ガスとの供給を受けて発電する燃料電池と、前記燃料電池に空気を供給する空気供給部と、前記空気供給部が吸入する空気の温度を検出する吸入空気温度検出部と、大気圧を検出する大気圧検出部と、前記燃料電池の運転を制御する制御装置とを備えた燃料電池システムであって、前記制御装置は、前記吸入空気温度検出部が検出した吸入空気温度と前記大気圧検出部が検出した大気圧とに基づいて、前記空気供給部が吐出する空気の温度が所定の上限値を超えないように前記燃料電池の運転を制限し、所定の状態においては前記運転の制限を緩和する運転制限部を備えることを要旨とする。
前記課題を解決する本発明の別の主題は、酸化剤を含むユーティリティを供給する供給系と、前記供給系から供給されたユーティリティを用いて発電する燃料電池と、前記供給系を制御して前記燃料電池を運転するコントローラとを備えてなり、前記コントローラは、前記酸化剤の供給条件を制限する第1の制御部と、前記供給系の運転状況に応じて前記供給条件の制限を緩和する第2の制御部とを有することを要旨とする燃料電池システムである。
前記課題を解決する本発明の別の主題は、水素を含む燃料ガスと酸素を含む酸化ガスとの供給を受けて発電する燃料電池と、前記燃料電池に空気を供給する空気供給部と、前記空気供給部が吸入する空気の温度を検出する吸入空気温度検出部と、大気圧を検出する大気圧検出部と、前記燃料電池の運転を制御する制御装置とを備える燃料電池システムの制御方法であって、前記吸入空気温度検出部が検出した吸入空気温度と前記大気圧検出部が検出した大気圧とに基づいて、前記空気供給部が吐出する空気の温度が所定の上限値を超えないように前記燃料電池の運転を制限し、所定の状態においては前記運転の制限を緩和することを要旨とする。
前記課題を解決する本発明の別の主題は、酸化剤を含むユーティリティを供給する供給系と、前記供給系から供給されたユーティリティを用いて発電する燃料電池とを備え、前記供給系を制御して前記燃料電池を運転する燃料電池システムの制御方法であって、前記酸化剤の供給条件を制限し、前記供給系の運転状況に応じて前記供給条件の制限を緩和することを要旨とする。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る燃料電池システムのブロック図である。
図2は、図1の燃料電池システムにおける空気圧縮機の吸入空気温度と吐出空気圧力の上限値との間の関係を実験に基づき示すグラフである。
図3は、図1の燃料電池システムのコントローラの制御フローチャートである。
図4は、図3の制御フローチャートを補完するフローチャートである。
図5は、図3の制御フローチャートを補完するフローチャートである。
図6は、図5のフローチャートを補完するフローチャートである。
図7は、第1の実施の形態の第1の変更例を示すフローチャートである。
図8Aは、空気圧縮機の吸入空気温度と吐出空気圧力の上限値との間の関係を実験に基づき示すグラフである。
図8Bは、空気圧縮機の吐出空気圧力上限値と燃料電池スタックの出力電力上限値との間の関係を実験に基づき示すグラフである。
図8Cは、空気圧縮機の吸入空気温度と燃料電池スタックの出力電力上限値との間の関係を示すグラフである。
図9は、第1の実施の形態の第2の変更例を示すフローチャートである。
図10は、図9のフローチャートを補完するフローチャートである。
図11は、図10のフローチャートを補完するフローチャートである。
図12は、第1の実施の形態の第3の変更例を示すフローチャートである。
図13は、図12のフローチャートを補完するフローチャートである。
図14は、図12のフローチャートを補完するフローチャートである。
図15は、第1の実施の形態の第4の変更例を示すフローチャートである。
図16は、第1の実施の形態の第5の変更例を示すフローチャートである。
図17は、本発明の第2の実施の形態を示す制御フローチャートである。
図18は、本発明の第3の実施の形態に係る車両の燃料電池システムのブロック図である。
図19は、図18の車両のメインモータの回転数とトルクとの関係、及び回転数と電力との関係を示すグラフである。
図20は、図18の車両の低速域における、アクセル開度と、メインモータが要求する電力と、空気圧縮機の吐出空気の圧力及び温度との時間変化を示すタイムチャートである。
図21は、図18の車両の中〜高速域における、アクセル開度と、メインモータが要求する電力と、空気圧縮機の吐出空気の圧力及び温度との時間変化を示すタイムチャートである。
図22は、図18の車両のメインモータの回転数と、メインモータが要求する電力、燃料電池スタックの運転を制限するパラメータの値を制限の緩和のために補正する補正係数、及び緩和の補完のために補正する補正係数との関係を示すグラフである。
図23は、図18の燃料電池システムのコントローラの制御フローチャートである。
図2は、図1の燃料電池システムにおける空気圧縮機の吸入空気温度と吐出空気圧力の上限値との間の関係を実験に基づき示すグラフである。
図3は、図1の燃料電池システムのコントローラの制御フローチャートである。
図4は、図3の制御フローチャートを補完するフローチャートである。
図5は、図3の制御フローチャートを補完するフローチャートである。
図6は、図5のフローチャートを補完するフローチャートである。
図7は、第1の実施の形態の第1の変更例を示すフローチャートである。
図8Aは、空気圧縮機の吸入空気温度と吐出空気圧力の上限値との間の関係を実験に基づき示すグラフである。
図8Bは、空気圧縮機の吐出空気圧力上限値と燃料電池スタックの出力電力上限値との間の関係を実験に基づき示すグラフである。
図8Cは、空気圧縮機の吸入空気温度と燃料電池スタックの出力電力上限値との間の関係を示すグラフである。
図9は、第1の実施の形態の第2の変更例を示すフローチャートである。
図10は、図9のフローチャートを補完するフローチャートである。
図11は、図10のフローチャートを補完するフローチャートである。
図12は、第1の実施の形態の第3の変更例を示すフローチャートである。
図13は、図12のフローチャートを補完するフローチャートである。
図14は、図12のフローチャートを補完するフローチャートである。
図15は、第1の実施の形態の第4の変更例を示すフローチャートである。
図16は、第1の実施の形態の第5の変更例を示すフローチャートである。
図17は、本発明の第2の実施の形態を示す制御フローチャートである。
図18は、本発明の第3の実施の形態に係る車両の燃料電池システムのブロック図である。
図19は、図18の車両のメインモータの回転数とトルクとの関係、及び回転数と電力との関係を示すグラフである。
図20は、図18の車両の低速域における、アクセル開度と、メインモータが要求する電力と、空気圧縮機の吐出空気の圧力及び温度との時間変化を示すタイムチャートである。
図21は、図18の車両の中〜高速域における、アクセル開度と、メインモータが要求する電力と、空気圧縮機の吐出空気の圧力及び温度との時間変化を示すタイムチャートである。
図22は、図18の車両のメインモータの回転数と、メインモータが要求する電力、燃料電池スタックの運転を制限するパラメータの値を制限の緩和のために補正する補正係数、及び緩和の補完のために補正する補正係数との関係を示すグラフである。
図23は、図18の燃料電池システムのコントローラの制御フローチャートである。
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態及びその変更例を説明する。同じ要素又は機能は同じ符号で示し、理解を容易となす。
〔第1の実施の形態〕
先ず、図1〜図6を参照して、本発明の第1の実施の形態を説明する。
図1は、第1の実施の形態に係る燃料電池システム1のブロック図である。
燃料電池システム1は、ユニットセル(不図示)の集合体からなる燃料電池本体としての燃料電池スタック3と、このスタック3の運転に必要な流体を供給する流体供給系FLSと、スタック3及び流体供給系FLSの動作状態を検出するスタック状態検出系DS1及び流体状態検出系DS2を含む検出システムDSと、この検出システムDSから得た検出データに基づき流体供給系FLSを制御することによりスタック3の発電を制御する制御システムCSとを備える。
なお上記燃料電池システム1は、スタック3から電力EPの供給を受けて動作する駆動ユニット19を備え、この駆動ユニット19は、本実施例ではこのシステム1を搭載した電動式自動車のメインモータとして説明するが、これに限定されず、例えばこのシステム1を搭載した電車の駆動モータ、或いはこのシステムを適用可能な任意規模プラントの電動駆動部でも良い。この点、上記検出システムDSは、駆動ユニット19の運転状態(即ち操作状態及び作動状態)を検出する検出系(不図示)を含み、また上記制御システムCSは、検出システムDSの検出データに基づき駆動ユニット19の作動状態(即ち、動作及び出力)を必要に応じ推定し、適宜制御するための制御要素を含む。
流体供給系FLSは、スタック3に燃料を供給する燃料供給系FSと、スタック3に酸化剤を供給する酸化剤供給系OSと、燃料及び酸化剤を加湿するための純水を循環させる純水循環系HSと、スタック3の運転温度を適正に保持すべく冷却するための冷却水を冷媒として循環させる冷媒循環系(不図示)とを含む。
燃料供給系FSは、燃料としてのガス状水素を貯蔵する高圧水素タンク11と、このタンク11から取出した高圧の水素の流量制御を行う可変バルブ13と、高圧の水素を適宜外部へ排出するパージ弁17と、スタック3下流側に出てきた未使用の水素を上流側へ還流させるためのイジェクタ15とを含む一群の流体回路要素を必要に応じ備える。
酸化剤供給系OSは、吸入した外気を圧縮し酸化剤として吐出する空気供給装置としての空気圧縮機7と、スタック3へ供給される空気の圧力及び流量を制御するスロットル9とを含む一群の流体回路要素を必要に応じ備える。
純水循環系HSは、純水を循環させる純水ポンプ33と、循環する純水により燃料及び酸化剤を加湿する加湿器5とを含む一群の流体回路要素を必要に応じ備える。
冷媒循環系は、スタック3に設けられた冷媒流路と、冷媒の熱を系外に放出するラジエタと、冷媒を循環させる冷媒ポンプとを含む一群の流体回路要素を必要に応じ備える。
スタック状態検出系DS1は、スタック3を構成するユニットセルあるいはセル群の電圧を検出するセル電圧検出部21を含む一群の検出要素を必要に応じ備える。
流体状態検出系DS2は、外気の温度T0及び圧力P0をそれぞれ検出する温度センサ23及び圧力センサ25と、空気圧縮機7に吸入される空気の温度T1を検出する温度センサ27と、空気圧縮機7から酸化剤として吐出された空気の温度T2及び圧力P2をそれぞれ検出する温度センサ29及び圧力センサ31と、加湿器5により加湿されてスタック3へ流入する空気の流量F3及び圧力P3をそれぞれ検出する流量センサ35及び圧力センサ37と、加湿器5により加湿されてスタック3へ流入する水素の流量Ff及び圧力Pfをそれぞれ検出する流量センサ39及び圧力センサ41とを含む一群の検出要素を必要に応じ備える。なお、外気温(T0)センサ23は、システム1内の熱源(例えば、スタック3又はその冷却水のラジエタ)の影響を受けない位置に設置する。
制御システムCSは、上記センサ23,25,27,29,31,35,37,39,41及びセル電圧検出部21を含む検出システムDSの出力を読込み、内蔵された制御プログラムに基づいて、燃料供給系FSの可変バルブ13及びパージ弁17並びに酸化剤供給系OSの空気圧縮機7及びスロットル9を含む流体供給系FLSの能動回路要素のアクチュエータを制御するコントローラ43を有する。
スタック3は、そこに供給され更に分岐されて各ユニットセルに流入した水素及び空気をそのセル内で反応させて発電を行い、全セルで得られた電力(電流)を集め、必要に応じ駆動ユニット19へ供給する。各セルに流入した水素及び空気は互いに独立な流路を流れ、その間の反応は、流路間に設けられた電解質膜(本実施形態では固体高分子膜)を介して行われる。
各セルでの反応後に残された未使用の空気は、セル間の空気合流路を介して集められ、スタック3下流側のスロットル9を介してシステム1の系外へ排出される。また各セルでの反応後に残された未使用の水素は、セル間の水素合流路を介して集めた後、更に加湿器5の上流側へイジェクタ15を介し還流して再度発電に使用するが、状況に応じ、パージ弁17を介してシステム1の系外へ排出することもできる。
水素及び空気の各セルへの分岐路、セル内流路及びセル間の合流路は、それぞれ燃料供給系FS及び酸化剤供給系OSの受動的流体回路要素をなす。従って酸化剤供給系OSの流路内圧P2,P3は、上記スロットル9の絞り圧P4に依存して決まる。
P2=f1(P4)、P3=f2(P4)
ここに、fi(i=自然数)は表示外の変数も含む多変数の関数を表す。
空気圧縮機7から吐出される空気の温度T2は、空気圧縮機7の吸入空気温度T1と圧縮比(P0/P2)とに依存し、空気圧縮機7の下流に位置する酸化剤供給系OSの流体回路要素の温度性能Tcにより許容範囲Rtの上限Ltが制限される。
T2=f3(T1,P0/P2)=f3{T1,P0/f1(P4)}
=f4(T1,P0,P4)
T2≦Lt=f5(Tc)
一方、スタック3の出力電力(又は発電電力)Gは、その許容範囲Rgの上限Lgがスタック3の動作温度Tsに依存し、この動作温度Tsは空気圧縮機7の吐出空気温度T2に依存する。
Lg=f6(Ts)、Ts=f7(T2)、
Lg=f6{f7(T2)}=f8(T2)
従って、スタック3の出力電力Gは、その許容範囲Rgの上限Lgが上記吸入空気温度T1に依存し、酸化剤供給系OSの流体回路要素の温度性能Tcにより制限される。
Lg=f8{f4(T1,P0,P4)}=f9(T1,P0,P4)
=f9{T1,P0,f1 −1(P2)}=f10(T1,P0,P2)
G≦Lg=f11(Tc)
コントローラ43は、検出システムDSの検出データを読込み、駆動ユニット19の運転状態からスタック3の目標発電量を推定して、この発電量を達成すべく流体供給系FLSの空気圧縮機7、スロットル9及び可変バルブ13を含む能動流体回路要素の制御目標値をさだめ、現データとの比較からそれぞれの所要制御量を計算して対応した制御を行うとともに、スタック3から駆動ユニット19へ必要な電力EP(電流)が供給されるように制御する。
このため、コントローラ43は、温度センサ27で検出した吸入空気温度T1と圧力センサ25で検出した大気圧P0とに基づいて、空気圧縮機7の吐出空気の温度T2がその許容範囲Rtの上限値Ltを超えないようにスタック3の運転を制限し、必要に応じ或いは所定の状態で、その制限の度合を緩和する運転制限部45を備え、更に、空気圧縮機7の吐出空気の温度T2を上記上限値Lt以下に抑えるべく、その吐出空気の圧力P2の上限値Lpを設定し、これにより吐出空気圧P2の許容範囲Rpを規定する吐出空気圧(P2)上限設定部47を備える。この上限値Lpは、上記吸入空気温度T1及び大気圧P0に基づき設定され、この設定値を変えることにより、運転制限部45によるスタック3の運転制限の緩和がなされる。
本実施の形態は、システム1が搭載された燃料電池車両を発進時または低速走行時に加速すると、空気圧縮機7の吸入空気温度T1が走行風の影響により低下して、最終的に外気温度T0にほぼ等しくなる点に着目し、この現象を利用してスタック3の運転制限を緩和することによりシステム1の効率を向上させるようにしたもので、空気圧縮機7の吐出空気温度T2の上限値Ltを見定める際、吸入空気温度T1の過渡的な変化を考慮することにより、スタック3の過剰な運転制限を回避している。
つまり、空気圧縮機7の吸入空気温度T1及び大気圧P0を検出して吐出空気温度T2をその上限値Lt以下に維持するために吐出空気圧力P2の上限値Lpを設定してスタック3の運転を制限する際に、吸入空気温度T1の変化を算出し、低下が予測される場合には、その低下率に応じて吐出空気圧力P2の上限値Lpを補正することにより、スタック3の運転制限を緩和する処理(図3のステップS6に相当)を行い、過剰な運転制限を回避する。
ここで図2を参照して、吐出空気圧力上限値Lpの補正演算の一例を説明するが、本発明は、この例に限定されるものではない。
図2は、本システム1における空気圧縮機7の吸入空気温度T1[℃]と吐出空気圧力上限値Lp[kPa]との関係を、外気圧P0=一定の条件下で行った実験に基づき示すグラフであり、曲線Ap(実線)は運転制限非緩和時(つまり、通常の運転制限状態で)の関係に相当し、曲線Bp(破線)は基準となる(つまり実験された)過度状態における運転制限緩和時の関係に相当する。
先ず、一定の大気圧P0[kPa]下でシステム1の実機実験を行い、吸入空気温度T1[℃]と、これに対応した吐出空気温度T2をその上限値Lt[℃]以下に維持するための吐出空気圧力P2の上限値Lpa[kPa]と、の間の静的な関係(曲線Ap)を記録する。
次に、同じ大気圧P0[kPa]下で、空気圧縮機7の吸入空気温度T1を所定時間t秒間に所定の温度差だけ(例えば、図2のT11[℃]からT12[℃]まで)均等に低下させる実験を行い、その時の低下率−ΔTr[℃/s]{つまり、基準となる降温速度=(T12−T11)/t}と、この基準的過度状態(つまり、吸入空気温度T1を基準の変化率ΔTrで低下させる動的な状態)における吸入空気温度T1[℃]と吐出空気圧力上限値Lpb[kPa]との間の関係(曲線Bp)とを記録する。
そして、燃料電池車両に搭載されたシステム1の運転に際し、現在の制御サイクルにおいて検出された吸入空気温度T1と、前サイクルもしくはそれより前のサイクルとの比較から算出された吸入空気温度T1の低下率−ΔTd[℃/s]とに基づき、現サイクルでの吸入空気温度T1に対応した吐出空気圧力P2の静的な上限値Lpa[kPa]を、この静的上限値Lpaとそれに対応する標準的過度状態での動的上限値Lpbとの間の比例計算から内挿的或いは必要に応じ外挿的に求められた補正量ΔLp=(Lpb−Lpa)(ΔTd/ΔTr)により、次の式(1)のように補正し、この補正された値を実際の過度状態における吐出空気圧力上限値Lpとして設定する:
Lp=Lpa+ΔLp
=Lpa+(Lpb−Lpa)(ΔTd/ΔTr)…(1)
次に、図3〜図6を参照して、本システム1の作用を説明する。
図3はコントローラ43の制御フローチャートであり、図4及び図5は図3の制御フローチャートを補完するフローチャートであり、図6は図5のフローチャートを補完するフローチャートである。
コントローラ43は、圧力センサ25により検出された大気圧P0と、温度センサ27により検出された空気圧縮機7の吸入空気温度T1とに基づいて、システム1の運転制限を行う。より詳細には「流体供給系FLSの運転(つまり操作量及び動作)を制御することによりスタック3の運転(つまり発電動作)を制限し、必要に応じ駆動ユニット19への供給電力EPも制御する」(以下、このことを「スタック3の運転制限」と呼び、文脈によっては、単に「運転制限」若しくは「(運転の)制限」と略称する)。そして、コントローラ43が認識したシステム1の運転状況に応じ、スタック3の運転制限を緩和する処理を行う。
コントローラ43の制御サイクルCL(図3)は、スタック3の運転開始指令発令以降の各タイムスロット(例えば10[ms]の時間幅)において、図3の運転制限/緩和処理LRP1を実行する。即ち、ステップS0でこの処理LRP1に入り、ステップS7でこの処理LRP1から出る。なお、現サイクル(つまり現在のタイムスロット)における処理LRP1の結果は、次サイクル(つまり現在の次のタイムスロット)以降の処理LRP1で更改されるまで維持される。
図3に示すように、制御フローはステップS0からステップS1へ進む。
ステップS1では、現サイクルで温度センサ27により検出された空気圧縮機7の吸入空気温度T1を取得する(つまり、コントローラ43の中央処理装置が現サイクルの検出データをサンプリングしてメモリに保存し、現サイクル以降のサイクルにおける読込みに備える)。制御フローはステップS1からステップS2へ進む。
ステップS2では、現サイクルで圧力センサ25により検出された大気圧P0を取得する。制御フローはステップS2からステップS3(運転制限処理)へ進む。
ステップS3では、現サイクルで取得した吸入空気温度T1及び大気圧P0を含む保存データに基づき、図4に示す運転制限処理を行い、吐出空気圧P2の静的な上限値Lp(例えば図2のLpa)を設定する。制御フローはステップS3からステップS4(基本的な緩和許否判定処理)へ進む。
ステップS4では、図5に示す緩和許否判定処理を行って、運転制限の緩和が可能でありそれを許可すべきか或いは不可能であり拒否すべきかを判定し、緩和許可フラグFAの値(1=許可、0=拒否)を設定する。制御フローはステップS4からステップS5へ進む。
ステップS5では、ステップS4で設定された緩和許可フラグFAの値が1か0かを判断し、FA=1であれば、制御フロー(YES)がステップS5からステップS6(緩和処理)へ進み、FA=0であれば、制御フロー(NO)がステップS5からステップS7へ進む。
ステップS6では、既述の運転制限緩和処理を実行する。つまり、現サイクルでのステップS3で設定した吐出空気圧P2の静的な上限値Lpを{例えば、前述の式(1)中の静的上限値Lpaに代入することにより}補正して、現在の過度状態に対応した動的な上限値Lpを設定し、この上限値Lpに従い{即ち(P2≦動的Lp)となるように}スタック3の運転制限を行う。制御フローはステップS6からステップS7へ進む。
ここで、図4を参照して、ステップS3の運転制限処理を更に説明する。
図4に示すように、制御フローはステップS2からステップS10(制限値設定処理)へ進む。
ステップS10では、現サイクルで取得した吸入空気温度T1及び大気圧P0に基づき、吐出空気温度T2をその上限値Lt以下に維持すると推定される吐出空気圧力P2の静的な上限値Lpを演算して設定する。制御フローはステップS10からステップS12(制限実行処理)へ進む。
ステップS12では、現在従うべき吐出空気圧力上限値Lpを確認する。つまり、前サイクルで設定された緩和許可フラグFA=0であれば、現サイクルで設定した静的な上限値を現在従うべき上限値Lpとみなし、FA=1であれば、前サイクルで設定された動的な上限値と現サイクルで設定した静的な上限値との内の適宜な一方(より詳細には、前サイクル以前の運転と滑らかにつながるほう)を現在従うべき上限値Lpとみなす。そして、この上限値Lpに基づき、空気圧縮機7の吐出空気圧力P2を{(P2≦Lp)となるように}制御して、スタック3の運転を制限する。制御フローはステップS12からステップS4へ進む。
ステップS10の推定演算で使用される吐出空気温度T2及びその上限値Ltの計算は、吸入空気温度T1、大気圧P0、空気圧縮機7の全断熱効率、酸化剤供給系OSの流体回路要素の温度性能Tcに基づく吐出空気温度T2の上限値Ltなどを含む保存データを用いて行う。
なお、空気圧縮機7の吐出空気圧力P2の上限値Lpに代え吐出空気温度T2の上限値Ltを設定して、温度センサ29により検出された吐出空気温度T2がその上限値Ltを超えないように吐出空気圧力P2を制御することにより、吸入空気温度T1の過度状態におけるスタック3の運転制限の緩和を実現しても良い。
次に、図5を参照して、ステップS4の緩和許否判定処理を、更に説明する。
図5に示すように、制御フローはステップS3からステップS20へ進む。
ステップS20では、現サイクルで温度センサ23により検出された外気温度T0を取得する。制御フローはステップS20からステップS22へ進む。
ステップS22では、現サイクルで取得した吸入空気温度T1と現サイクルで取得した外気温度T0との間の温度差DT(但し、DT=T1−T0)が対応する閾値Th1を上回るか否か判定する。DT>Th1であれば、制御フロー(YES)がステップS22からステップS24(変化予測処理)へ進み、DT≦Th1であれば、制御フロー(NO)がステップS22からステップS30へ進む。
ステップS24では、図6に示す変化予測処理に従って、吸入空気温度T1の変化を予測し、吸入空気温度T1の低下が期待可能か否か判定する。制御フローはステップS24からステップS26へ進む。
ステップS26では、ステップS24の判定結果を確認する。そして、吸入空気温度T1の低下が期待できれば、制御フロー(YES)がステップS26からステップS28へ進み、吸入空気温度T1の低下が期待できなければ、制御フロー(NO)がステップS26からステップS30へ進む。
ステップS28では、緩和許可フラグFAを、FA=1に設定する。制御フローはステップS28からステップS5へ進む。
ステップS30では、緩和許可フラグFAを、FA=0に設定する。制御フローはステップS30からステップS5へ進む。
次に、図6を参照して、ステップS24の(T1)変化予測処理を、更に説明する。
図6に示すように、制御フローはステップS22からステップS40へ進む。
ステップS40では、本システム1を搭載する燃料電池車両の車速センサ60により現サイクルで検出された車速Vsを取得する。制御フローはステップS40からステップS42へ進む。
ステップS42では、現サイクルで取得した車速Vsが対応する閾値Th2(例えば、5[km/h])を下回るか否か判断する。0≦Vs<Th2であれば、制御フロー(YES)がステップS42からステップS44へ進み、Vs≧Th2であれば、制御フロー(NO)がステップS42からステップS46へ進む。
ステップS44では、車両の発進または加速に伴う走行風による吸入空気温度T1の有意な低下を現サイクル以降で期待できると判定する。制御フローはステップS44からステップS26へ進む。
ステップS46では、走行風による吸入空気温度T1の低下が既に飽和状態(つまり、DT=T1−T0=0の状態)の近傍に達しており、もはや現サイクル以降で有意な低下を期待することができないと判定する。制御フローはステップS46からステップS26へ進む。
本実施の形態によれば、ステップS22で、吸入空気温度T1が外気温T0より所定温度差Th1以上高いと判断され、かつステップS44で、吸入空気温度T1の低下が現サイクル以降で期待できると判定された場合に、ステップS28で、緩和許可フラグFAがFA=1(許可)に設定される。つまり、燃料電池車両がその停止状態あるいは極低速での走行状態から発進もしくは加速して、車速Vsが次第に上昇し、吸入空気温度T1が応分に低下すると見込まれる過度的状態を検知し、そのときスタック3の運転制限を緩和しようとしているので、燃料電池車両の加速性能を前向きに支援する仕方で、システム1を運転できる。
本実施の形態によれば、空気圧縮機7の吐出空気温度T2をその上限値Lt以下に維持すべく吐出空気圧力P2の上限値Lpを設定し、吐出空気圧力P2がこの上限値Lpを上回らないように制御しているので、スタック3の運転制限を緩和しても、吐出空気温度T2が上限値Ltを上回ることがなく、従って、空気圧縮機7の吸入空気温度T1が低下する過度的状態において過剰な運転制限を回避できる。
次に第1の実施の形態の制御フローを部分的に変更した複数の変更例を説明する。これらの変更例は適宜組み合わせることができる。
〔第1の実施の形態の第1の変更例〕
次に、図7を参照して、第1の実施の形態の第1の変更例を説明する。
この変更例は、スタック3の運転制限をパラメータ変換により多様化するもので、図3のステップS3(運転制限処理)の処理内容が図4に示すフローから図7に示すフローに変わる点で、第1の実施の形態と異なる。より詳細には、図4のステップS12(制限実行処理)が図7のステップS50,S52,及びS54に置き換わる。
図7に示すように、第1の変更例の制御フローはステップS2(図3)から、ステップS10(図4の制限値設定処理)を経て、ステップS50へ進む。
ステップS50では、現在従うべき吐出空気圧力上限値Lpを確認する。制御フローはステップS50からステップS52(パラメータ変換処理)へ進む。
ステップS52では、現在従うべき吐出空気圧力上限値Lpを、スタック3の出力電力上限値(即ち、スタック3から取出可能な電力の上限値)Lgにパラメータ変換する。この上限値Lgをスタック3の出力電流で表しても良い。制御フローはステップS52からステップS54へ進む。
ステップS54では、流体供給系FLSを制御して、スタック3の出力電力(又は発電電力)GがG≦Lgとなるように、運転の制限を行う。制御フローはステップS54からステップS4(図3の緩和許否判定処理)へ進む。
ここで図8A〜8Cを参照して、図7のステップS52(パラメータ変換処理)を更に説明する。
図8Aは、空気圧縮機7の吸入空気温度T1と吐出空気圧力P2の上限値Lpとの間の関係(曲線Lpa,曲線Lpb)を実験に基づき示す、図2に対応したグラフ;図8Bは、空気圧縮機7の吐出空気圧力上限値Lpとスタック3の出力電力上限値Lgとの間の関係(曲線Cg)を実験に基づき示す、パラメータ変換(Lp→Lg)のためのグラフ;図8Cは、パラメータ変換(Lp→Lg)により得られた、空気圧縮機7の吸入空気温度T1とスタック3の出力電力上限値Lgとの間の関係(曲線Lga,曲線Lgb)を示すグラフである。
図8Aに示すように、外気圧P0=一定の条件の下に、吸入空気温度T1と吐出空気圧力上限値Lpとの間の静的な関係を示す曲線Lpaは、例えば、T1=T11でLp=Lpa1となり、T1=T12でLp=Lpa 2となる。同じ外気圧P0=一定の条件の下に、吸入空気温度T1を基準の変化率{ΔTr=(T12−T11)/t}で低下させた過度状態で、吸入空気温度T1と吐出空気圧力上限値Lpとの間の動的な関係を示す曲線Lpbは、例えば、T1=T11でLp=Lpb1となり、T1=T12でLp=Lpb2となる。
図8Bに示すように、外気圧P0=一定の条件の下に、吐出空気圧力上限値Lpと出力電力上限値Lgとの間の関係を示す曲線Cgは、ほぼリニアかつ連続で、例えば、Lp=Lpa1のときLg=Lga1となり、Lp=Lpb1のときLg=Lgb1となり、Lp=Lpa2のときLg=Lga2となり、Lp=Lpb2のときLg=Lgb2となる。つまり、スタック3の運転を制限する限界値が、曲線Cg{即ち、対応する連続写像関数Lg=f12(Lp)}により、パラメータLpからパラメータLgへ、Lpa1→Lga1、Lpb1→Lgb1、Lpa2→Lga2、Lpb2→Lgb2のように変換される。
このパラメータ変換により、図8Cに示すように、外気圧P0=一定の条件の下に、吸入空気温度T1と出力電力上限値Lgとの間の静的な関係を示す曲線Lgaが得られ、また同じ外気圧P0=一定の条件の下に、吸入空気温度T1を基準の変化率(ΔTr)で低下させた過度状態で、吸入空気温度T1と出力電力上限値Lgとの間の動的な関係を示す曲線Lgbが得られる。静的関係を示す曲線Lgaは、例えば、T1=T11でLg=Lga1となり、T1=T12でLg=Lga2となる。動的関係を示す曲線Lgbは、例えば、T1=T11でLg=Lgb1となり、T1=T12でLg=Lgb2となる。
なお、本変更例に係る運転制限処理(図7)を含む制御フローCL(図3)の実行に際し、ステップS6の緩和処理でもパラメータ変換(Lp→Lg)を行うことは差し支えない。
その場合は、図8Bの写像関数Lg=f12(Lp)により、吐出空気圧力P2の動的な上限値Lpを出力電力(又は発電電力)Gの動的な上限値Lgに変換して、G≦Lgとなるように制御することにより、運転制限の緩和を実行する。
しかしながら、図8Cに対応するデータマップが存在する場合には、動的Lpの設定同様に、燃料電池車両に搭載されたシステム1の運転に際し、現在の制御サイクルにおいて検出された吸入空気温度T1と、前サイクルもしくはそれより前のサイクルとの比較から算出された吸入空気温度T1の低下率−ΔTd[℃/s]とに基づき、現サイクルでの吸入空気温度T1に対応した出力電力Gの静的な上限値Lga[kW]を、この静的上限値Lgaとそれに対応する標準的過度状態での動的上限値Lgbとの間の比例計算から内挿的或いは必要に応じ外挿的に求められた補正量ΔLg=(Lgb−Lga)(ΔTd/ΔTr)により、次の式(2)のように補正し、この補正された値を実際の過度状態における出力電力上限値Lgとして設定するようにしてもよい:
Lg=Lga+ΔLg
=Lga+(Lgb−Lga)(ΔTd/ΔTr)…(2)
〔第1の実施の形態の第2の変更例〕
次に、図9−11を参照して、第1の実施の形態の第2の変更例を説明する。
この変更例は、スタック3の運転制限の緩和に酸化剤の圧力変化に応じた制限を加えるもので、図3のステップS4(基本的な緩和許否判定処理)の後のステップS5(許否判断)を、図9に示すステップS66(補助的な緩和許否判定処理)とステップS68(許否判断)との組合せに置き換えた点で、第1の実施の形態と異なる。図10−11は、図9のステップS66の処理内容を示すフローチャートである。
図9に示すように、第2の変更例の制御フローはステップS4(基本的な緩和許否判定処理)からステップS66(補助的な緩和許否判定処理)へ進む。
ステップS66では、図10−11のフローに従って補助的な緩和許否判定処理を実行し、図10に示す判定フラグFB{FB=1(許可)又はFB=0(拒否)}と、図11に示す判定フラグFC{FC=1(許可)又はFC=0(拒否)}との値を設定する。制御フローはステップS66からステップS68へ進む。
ステップS68では、フラグFA(図5)とフラグFBとフラグFCとのAND(論理積:FA∩FB∩FC)が1か否かを判断する。この論理積が1であれば、制御フロー(YES)がステップS68からステップS6(図3の緩和処理)へ進む。
上記論理積が1でなければ(つまり、FA∩FB∩FC=0なら)、制御フロー(NO)がステップS68からステップS7(図3)へ進み、現サイクルでの運転制限/緩和処理LRP1(図3)から出る。
ここで、図10を参照して、ステップS66の緩和許否判定処理を更に説明する。
図10に示すように、本変更例の制御フローはステップS4(基本的な緩和許否判定処理)からステップS80(圧力変化演算処理)へ進む。
ステップS80では、図11に示すフローに従って、現サイクルで取得した吐出空気圧P2(経過サイクル数n=0)及び前サイクル以前に取得した吐出空気圧P2(経過サイクル数n≧1)を含む吐出空気圧P2のデータの全集合{P2(0≦n)}の中から、適宜な2つのP2データを含む所定サイズの部分集合{P2(0≦n≦N:Nは所定の自然数)}、を選択し、その集合要素間の圧力変化DP2を演算する処理が実行される。制御フローはステップS80からステップS82(緩和許否判断)へ進む。
ステップS82では、上記部分集合{P2(0≦n≦N)}の要素の大小比較に基づく論理演算により、前記圧力変化DP2が吐出空気圧P2の上昇側での変化か否かを判断する。上昇側での変化であれば、制御フロー(YES)がステップS82からステップS84へ進む。そうでなければ、制御フロー(NO)がステップS82からステップS86へ進む。
なお、ステップS80における圧力変化DP2の演算を、上記部分集合{P2(0≦n≦N)}の要素の代数的差分又は数値微分として行い、その符号(正又は負)からステップS82の判断を行うようにしても良い。
ステップS84では、フラグFBの値を1(許可)に設定する。制御フローはステップS84からステップS68(図9)へ進む。
ステップS86では、フラグFBの値を0(拒否)に設定する。制御フローはステップS86からステップS68(図9)へ進む。
ここで、図11を参照して、ステップS80の圧力変化(DP2)演算処理を更に説明する。
図11に示すように、本変更例の制御フローはステップS4(基本的な緩和許否判定処理)からステップS91(データ取得)へ進む。
ステップS91では、図1のセンサー31により現サイクルで検出した吐出空気圧P2(n=0)を取得する。制御フローはステップS91からステップS92(データ選択)へ進む。
ステップS92では、それまでに取得され(従ってメモリ中に保存され)た吐出空気圧P2のデータの全集合{P2(0≦n)}の中から、適宜な2つのP2データ{本変更例ではP2(n=0)及びP2(n=1)}を含むN+1個のデータからなる部分集合{P2(0≦n≦N:本変更例ではN=2)、つまりP2(n=0),P2(n=1),及びP2(n=2)}、を選択し、その集合要素間の圧力変化DP2を次の要領で計算する。
P2(n=0)−P2(n=1)≧0の場合は、
DP2=P2(n=0)−P2(n=1)
一方、P2(n=0)−P2(n=1)<0の場合には、
P2(n=0)−P2(n=2)≧0なら、
DP2={P2(n=0)−P2(n=2)}/2。
P2(n=0)−P2(n=2)<0なら、
DP2=0。
なお、前記部分集合{P2(0≦n≦N)}のサイズN=1とし、圧力変化DP2を
DP2=|P2(n=0)−P2(n=1)|
としても良い。
上記圧力変化DP2は、吐出空気圧力P2のタイムスロット当たりの変化率を示す。
そして、制御フローはステップS93からステップS94(緩和許否判断)へ進む。
ステップS94では、圧力変化DP2が所定の閾値Th3未満か否か判断する。圧力変化DP2が閾値Th3未満(即ち、DP2<Th3)であれば、制御フロー(YES)がステップS94からステップS95へ進む。そうでなければ(つまり、DP2≧Th3なら)、制御フロー(NO)がステップS94からステップS96へ進む。
ステップS95では、フラグFCの値を1(許可)に設定する。制御フローはステップS95からステップS82(図10)へ進む。
ステップS96では、フラグFCの値を0(拒否)に設定する。制御フローはステップS96からステップS82(図10)へ進む。
本変更例によれば、吐出空気圧力P2が所定の変化率(Th3)以上(FC=0)で上昇(FB=1)すると、FB∩FC=0となって、運転制限の緩和が拒否{FA∩FB∩FC=FA∩(FB∩FC)=0}されるので、吐出空気温度T2を上限値Lt以下に維持してスタック3の運転を行うことが容易となる。
〔第1の実施の形態の第3の変更例〕
次に、図12−14を参照して、第1の実施の形態の第3の変更例を説明する。
この変更例は、スタック3の運転制限の緩和に空気圧縮機7の吸入空気の温度変化に応じた制限を加えるもので、図3のステップS4(基本的な緩和許否判定処理)の後のステップS5(許否判断)を、図12に示すステップS106(補助的な緩和許否判定処理)とステップS108(許否判断)との組合せに置き換えた点で、第1の実施の形態と異なる。図13−14は、図12のステップS106の処理内容を示すフローチャートである。
図12に示すように、第3の変更例の制御フローはステップS4(基本的な緩和許否判定処理)からステップS106(補助的な緩和許否判定処理)へ進む。
ステップS106では、図13−14のフローに従って補助的な緩和許否判定処理を実行し、図13に示す判定フラグFD{FD=1(許可)又はFD=0(拒否)}と、図14に示す判定フラグFE{FE=1(許可)又はFE=0(拒否)}との値を設定する。制御フローはステップS106からステップS108へ進む。
ステップS108では、フラグFA(図5)とフラグFDとフラグFEとのAND(論理積:FA∩FD∩FE)が1か否かを判断する。この論理積が1であれば、制御フロー(YES)がステップS108からステップS6(図3の緩和処理)へ進む。
上記論理積が1でなければ(つまり、FA∩FD∩FE=0なら)、制御フロー(NO)がステップS108からステップS7(図3)へ進み、現サイクルでの運転制限/緩和処理LRP1(図3)から出る。
ここで、図13を参照して、ステップS106の緩和許否判定処理を更に説明する。
図13に示すように、本変更例の制御フローはステップS4(基本的な緩和許否判定処理)からステップS110(温度変化演算処理)へ進む。
ステップS110では、図14に示すフローに従って、現サイクルのステップS1(図3)で取得した吸入空気温度T1(経過サイクル数m=0)及び前サイクル以前に取得した吸入空気温度T1(経過サイクル数m≧1)を含む吸入空気温度T1のデータの全集合{T1(0≦m)}の中から、適宜な2つのT1データを含む所定サイズの部分集合{T1(0≦m≦M:Mは所定の自然数)}、を選択し、その集合要素間の温度変化DT1を演算する処理が実行される。制御フローはステップS110からステップS112(緩和許否判断)へ進む。
ステップS112では、上記部分集合{T1(0≦m≦M)}の要素の大小比較に基づく論理演算により、前記温度変化DT1が吸入空気温度T1の下降側での変化か否かを判断する。下降側での変化であれば、制御フロー(YES)がステップS112からステップS114へ進む。そうでなければ、制御フロー(NO)がステップS112からステップS116へ進む。
なお、ステップS110における温度変化DT1の演算を、上記部分集合{T1(0≦m≦M)}の要素の代数的差分又は数値微分として行い、その符号(正又は負)からステップS112の判断を行うようにしても良い。
ステップS114では、フラグFDの値を1(許可)に設定する。制御フローはステップS114からステップS108(図12)へ進む。
ステップS116では、フラグFDの値を0(拒否)に設定する。制御フローはステップS116からステップS108(図12)へ進む。
ここで、図14を参照して、ステップS110の温度変化(DT1)演算処理を更に説明する。
図14に示すように、本変更例の制御フローはステップS4(基本的な緩和許否判定処理)からステップS122(データ選択)へ進む。
ステップS122では、それまでに取得され(従ってメモリ中に保存され)た吸入空気温度T1のデータの全集合{T1(0≦m)}の中から、適宜な2つのT1データ{本変更例ではT1(m=0)及びT1(m=1)}を含むM+1個のデータからなる部分集合{T1(0≦m≦M:本変更例ではM=2)、つまりT1(m=0),T1(m=1),及びT1(m=2)}、を選択する。制御フローはステップS122からステップS123(DT1計算)へ進む。
ステップS123では、上記部分集合{T1(m=0),T1(m=1),T1(m=2)}の要素間の温度変化DT1を次の要領で計算する。
T1(m=0)−T1(m=1)≦0の場合は、
DT1=T1(m=1)−T1(m=0)
一方、T1(m=0)−T1(m=1)>0の場合には、
T1(m=0)−T1(m=2)≦0なら、
DT1={T1(m=2)−T1(m=0)}/2。
T1(m=0)−T1(m=2)>0なら、
DT1=0。
なお、前記部分集合{T1(0≦m≦M)}のサイズM=1とし、温度変化DT1を
DT1=|T1(m=0)−T1(m=1)|
としても良い。
上記温度変化DT1は、吸入空気温度T1のタイムスロット当たりの変化率を示す。
そして、制御フローはステップS123からステップS124(緩和許否判断)へ進む。
ステップS124では、温度変化DT1が所定の閾値Th4を越えるか否か判断する。温度変化DT1が閾値Th4を越える(即ち、DT1>Th4)であれば、制御フロー(YES)がステップS124からステップS125へ進む。そうでなければ(つまり、DT1≦Th4なら)、制御フロー(NO)がステップS124からステップS126へ進む。
ステップS125では、フラグFEの値を1(許可)に設定する。制御フローはステップS125からステップS112(図13)へ進む。
ステップS126では、フラグFEの値を0(拒否)に設定する。制御フローはステップS126からステップS112(図13)へ進む。
本変更例によれば、吸入空気温度T1が所定の変化率(Th4)以下(FE=0)で下降(FD=1)すると、FD∩FE=0となって、運転制限の緩和が拒否{FA∩FD∩FE=FA∩(FD∩FE)=0}されるので、吐出空気温度T2を上限値Lt以下に維持してスタック3を運転することが容易となる。
〔第1の実施の形態の第4の変更例〕
次に、図15を参照して、第1の実施の形態の第4の変更例を説明する。
この変更例は、第3の変更例における運転制限の緩和期間を酸化剤供給系OSの昇温慣性に応じて延長するもので、図15に示すように、空気温度(T1)の変化に基づく緩和拒否時(NO)の制御フロー(図14)に、(温度制限による)拒否開始からの経過時間teが所定の閾値(Th5)未満であるか判断するステップS130を設け、閾値未満(te<Th5)の間は緩和許可(YES)側にフローを戻すようにした点で、第3の変更例と異なる。
上記経過時間teは、吐出空気温度T2がその上限値Ltを上回って(T2>Lt)いる時間と見なせるにもかかわらず、その時間teが闘値(Th5)に達するまではフローが緩和許可(YES)側に戻るので、以下、この時間teを緩和許可の延長時間と呼ぶ。
図15に示すように、本変更例の制御フローは、ステップS123でDT1計算を実行した後、ステップS124へ進んで緩和の許否を判断し、判断の結果が緩和許可(YES)であれば、ステップS124からステップS125へ進み、許可フラグFEを1に設定して、次のステップS112(図13)へ進む。
ステップS124での判断の結果が緩和拒否(NO)であれば、ステップS130へ進み、上記延長時間teが閾値(Th5)未満であるか否か判断する。
延長時間teが閾値未満(te<Th5)であれば、制御フロー(YES)がステップS130からステップS125(FE=1)へ進む。
延長時間teが閾値以上(te≧Th5)になると、制御フロー(NO)がステップS130からステップS126へ進み、許可フラグFEを0に設定する。制御フローはステップS126からステップS112(図13)へ進む。
なお、上記閾値(Th5)は、酸化剤供給系OSを構成する空気圧縮機7以降の流体回路要素及び関連部材について、その熱伝達率及び熱容量に基づく昇温速度を計算し、最も耐熱温度が低い要素又は部材の温度を考慮して設定するが、実験的に定めても良い。
本変更例によれば、コントローラ43は、運転制限の緩和に伴い、空気圧縮機7の吐出空気温度T2が上限値Ltを上回っても、酸化剤供給系OSを構成する空気圧縮機7以降の流体回路素子及び関連部材のいずれかがその耐熱温度まで昇温しない限り、運転制限の緩和を許可するように動作する。
この点、吐出空気温度T2の上限値Ltは、酸化剤供給系OSの流体回路要素の温度性能Tc(図1)に基づき設定される。
従って、酸化剤供給系OSを構成する空気圧縮機7,加湿器5,及びスタック3を含む機材各一の耐熱温度を比較し、最も耐熱温度が低い機材(例えば、ユニットセル)を基準として全機材一律に上限値Ltが設定されるので、空気圧縮機7の吐出空気温度T2がこの上限値Ltを越えても、それにより流路の温度が上がって、基準となる機材が耐熱温度に達するまでにはそれなりの時間がかかる。本変更例は、この時間を見込んで過度状態での運転制限を緩和しているので、それによりいずれかの機材の性能が劣化することはない。
〔第1の実施の形態の第5の変更例〕
次に、図16を参照して、第1の実施の形態の第5の変更例を説明する。
この変更例は、第1の実施の形態における運転制限の緩和期間を酸化剤供給系OSの昇温慣性に応じて延長するもので、図16に示すように、現サイクルにおける空気温度(T1)の変化及び以降のサイクルにおける変化の予測に基づく緩和拒否時(NO)の制御フロー(図5)に、(温度制限による)拒否開始からの経過時間teが所定の閾値(Th6)未満であるか判断するステップS140を設け、閾値未満(te<Th6)の間は緩和許可(YES)側にフローを戻すようにした点で、第1の実施の形態と異なる。
上記経過時間teも緩和許可の延長時間に相当するので、以下、そう呼称する。
図16に示すように、本変更例の制御フローは、ステップS22で吸入空気温度T1と外気温度T0との温度差DTが閾値Th1を上回る否か判断し、上回る(YES)と判断すれば、ステップS24へ進んで吸入空気温度(T1)の変化予測処理を実行する。そして、ステップS26へ進んで吸入空気温度(T1)の低下を期待できるか否か判断し、低下期待可能(YES)と判断すれば、ステップS28へ進み、緩和許可フラグFAを1に設定して、次の緩和許否判断ステップS5(図2)へ進む。
ステップS22で温度差DTが閾値Th1を上回らない(NO)と判断した場合、又はステップS26で吸入空気温度(T1)の低下を期待できない(NO)と判断した場合は、制御フローがステップS140へ進み、上記延長時間teが閾値(Th6)未満であるか否か判断する。
延長時間teが閾値未満(te<Th6)であれば、制御フロー(YES)がステップS140からステップS28(FA=1)へ進む。
延長時間teが閾値以上(te≧Th6)になると、制御フロー(NO)がステップS140からステップS30へ進み、許可フラグFAを0に設定する。制御フローはステップS30からステップS5(図2)へ進む。
上記閾値(Th6)も、酸化剤供給系OSを構成する空気圧縮機7以降の流体回路要素及び関連部材について、その熱伝達率及び熱容量に基づく昇温速度を計算し、最も耐熱温度が低い要素又は部材の温度を考慮して設定するが、実験的に定めても良い。
本変更例によれば、コントローラ43は、運転制限の緩和に伴い、空気圧縮機7の吐出空気温度T2が上限値Ltを上回っても、酸化剤供給系OSを構成する空気圧縮機7以降の流体回路素子及び関連部材のいずれかがその耐熱温度まで昇温しない限り、運転制限を緩和して、スタック3から取出す電力EP(又は電流)の増加を許容するように動作する。
本変更例によれば、過渡状態における運転制限の緩和を、上限値Lp以下の吐出空気圧P2に対し所定の時間定格を限度として継続するようにしているので、その間、吐出空気温度T2を上限値Lt以下に抑えた状態で、スタック3の出力電力EP(又は電流)を増加させることができ、過剰な運転制限を回避できる。
〔第2の実施の形態〕
次に、図17を参照して、本発明の第2の実施の形態を説明する。図17は第2の実施の形態に係る運転制限/緩和処理LRP2を示す制御フローチャートである。
この実施の形態は、図3のステップS3(運転制限処理)を図17のステップS203に変更し、図3のステップS6(制限緩和処理)を図17のステップS206及びS208に変更した点で、第1の実施の形態と異なる。
図17に示すように、第2の実施の形態の制御フローは、ステップS0(図3)からステップS1へ進んで吸入空気温度T1を取得し、更にステップS2へ進んで大気圧P0を取得した後、ステップS203(Lp設定処理)へ進む。
ステップS203では、図4のステップS10同様に、現サイクルで取得した吸入空気温度T1及び大気圧P0に基づき、吐出空気温度T2をその上限値Lt以下に維持すると推定される吐出空気圧力P2の静的な上限値Lpを演算して設定する。
制御フローはステップS203からステップS4(基本的な緩和許否判定処理)へ進み、ここで図5に示す緩和許否判定処理を行って、運転制限の緩和が可能でありそれを許可すべきか或いは不可能であり拒否すべきかを判定し、緩和許可フラグFAの値(1=許可、0=拒否)を設定する。
制御フローはステップS4からステップS5へ進み、ここで緩和許可フラグFAの値が1か0かを判断する。FA=1であれば、制御フロー(YES)がステップS5からステップS206(Lp緩和処理)へ進み、FA=0であれば、制御フロー(NO)がステップS5からステップS208(制限実行)へ進む。
ステップS206では、図3のステップS6におけると同様に、ステップS203で設定した吐出空気圧P2の静的な上限値Lpを現在の過度状態に対応した動的な上限値Lpに補正することにより、Lpの値を緩和(即ち、大きく)する。制御フローはステップS206からステップS208へ進む。
ステップS208では、現在の上限値Lp(つまり、FA=0[緩和拒否]なら静的Lp、FA=1[緩和許可]なら動的Lp)に従い、P2≦Lpとなるようにスタック3の運転制限を行う。制御フローはステップS208からステップS7(図3)へ進む。
本実施の形態によれば、図4(第1の実施の形態)のステップS12における運転制限の実行(P2≦Lp)が省略され、従って「現在従うべき上限値Lpの確認」が不要になる。
本実施の形態と第1の実施の形態の変更例とを適宜組み合わせることは差し支えない。
〔第3の実施の形態〕
次に、図18を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る燃料電池システム301の構成を説明する。図18は燃料電池システム301のブロック図である。第1の実施の形態(図1)と同じ要素又は機能は同じ参照番号で表し、理解を容易にする。
燃料電池システム301は、このシステム301が搭載された燃料電池車両Vの駆動ユニット19及びその他の電気負荷へ供給される電力EPを発電する燃料電池スタック3と、このスタック3の運転に必要な流体(即ちユーティリティ)を供給する流体供給系FLSと、スタック3及び流体供給系FLSの運転(操作/動作)状態並びに車両Vの運転(操作/動作)状態に関する情報を収集する情報システムDS3と、この情報システムDS3から得た情報に基づき流体供給系FLSを制御することによりスタック3の発電を制御する制御システムCS3とを備える。
情報システムDS3は、スタック3の運転状態に関する情報を収集するスタック情報収集系DS31と、流体供給系FLSの運転状態に関する情報を収集する流体供給情報収集系DS32とを含み、更に、車両Vの運転情報ISを制御システムCS3のコントローラ343にインターフェースするインフォメーションプロバイダIPを備える。
インフォメーションプロバイダIPでインターフェースされる運転情報ISは、例えば、車両Vのアクセルペダル50の操作量(開度)AOを検出するペダルセンサ51の検出データ、車両Vの車速Vsを検出する車速センサー60の検出データ、及び車両Vの駆動ユニット19を成すメインモータ19aの動作に関する情報DCを含む。
従って、運転情報ISには、例えば、アクセル開度AO、車速Vs、及びモータ動作情報DCが含まれ、このモータ動作情報DCには、燃料電池スタック3から駆動ユニット19のメインモータ19aへ入力され(消費され)る電力EP1に関する情報、メインモータ19aの毎分回転数KTに関する情報、及びメインモータ19aから車両Vのパワトレインへ出力される駆動トルクTQに関する情報が含まれる。
スタック3から車両Vのメインモータ19a以外の電気負荷(例えば、ヒータを含む乗員室又は貨物室空調装置等)に供給され(消費され)る電力EP2に関する情報を、運転情報ISに含めても良い。
スタック情報収集系DS31は、スタック3の動作状態WCを検出するスタック検出系SD(図1のDS1)を含み、この検出系SDは、スタック3のユニットセルの電圧、スタック3の動作温度を推定するデータとなる冷媒循環系の冷媒温度、及びスタック3の出力電力EPを算定するデータとなるスタック出力電流を検出する。
流体供給情報収集系DS32は、流体供給系FLSの運転状態を検出する流体状態検出系(図1のDS2)を含む。
制御システムCS3のコントローラ343は次の3つの制御部を含む。
1.第1の制御部345
この制御部は、流体供給系FLSの静的な(つまり通常の)運転状態に関する情報に基づきスタック3の運転を制限するパラメータLpの値を設定し、その制限値Lpに従いスタック3の運転を制限する。これは、第1の実施の形態(図1)において運転制限部45と上限設定部47の静的制限値(Lp)設定機能部分とを組み合わせたものに相当する。
2.第2の制御部347
この制御部は、第1の制御部345で設定された制限値Lpを流体供給系FLSの動的な(つまり過度的な)運転状態に関する情報に基づき補正する処理(以下、「第1の補正」と呼ぶ。)を行うことにより、(第1の制御部345による)スタック3の運転制限を緩和する。これは、第1の実施の形態(図1)における上限設定部47の動的制限値(Lp)設定機能部分に相当する。
3.第3の制御部349
この制御部は、第2の制御部347で第1の補正がなされた制限値Lpを車両Vの運転状態に関する情報に基づき補正する処理(以下、「第2の補正」と呼ぶ。)を行うことにより、(第1の制御部345による)スタック3の運転制限の緩和を補完する。
なお、本実施の形態では、スタック3の運転を制限するパラメータとして、空気圧縮機7の吐出空気圧P2に許容される変動の範囲Rpの(所与条件下での)上限値Lpを用いるが、これと変換可能な他のパラメータ、例えば、吐出空気温度上限値Lt又は発電電力上限値Lgに置き換えても良い。
ここで、図19〜図21を参照し、燃料電池車両Vと燃料電池システム301との特殊な関係を説明する。
理解を容易にするため、駆動モータ19aの入力電流に対応して消費される電力E1をスタック3の出力電力EPとみなす(つまり、EP2≒0)。従って、スタック3は、モータ19aの駆動電流に対応した大きさの電力EPを出力することが要求される。
図19は、車両Vの駆動モータ19aの回転数KTと出力トルクTQとの関係(実線)、及び回転数KTと電力EPとの関係(破線)を示している。
モータ19aのトルクTQは、低速回転時に比較的安定して大きく、回転数KTの上昇に伴い漸減して、限界速度に至り出力不能となる。スタック3に要求される電力EPは、回転数KTが初速から上昇するに連れて増大し、中速域から高速域にかけて安定し、限界速度近くで急減する。
図20は、車両Vの低速域でアクセルペダル50を踏込んだ際に生じるアクセル開度AOの時間変化と、それに対応してメインモータ19aが要求する電力EP、並びに、空気圧縮機7の吐出空気の圧力P2及び温度T2の時間変化とを示す。一方、図21は、車両Vの中−高速域でアクセルペダル50を踏込んだ際に生じるにアクセル開度AOの時間変化と、それに対応してメインモータ19aが要求する電力EP、並びに、空気圧縮機7の吐出空気の圧力P2及び温度T2の時間変化とを示す。
図20及び図21に示されるように、アクセル開度AOは、踏込速度に対応した踏込時間tfで最大となり、その状態を維持する。
メインモータ19aがスタック3に要求する出力電力EPは、その立上げが、車両Vの中−高速域(図21)では緩勾配になり、低速域(図20)では急勾配になる。これに合わせ、吐出空気の圧力P2及び温度T2も、車両Vの中−高速域(図21)では比較的なだらかに立上がるが、低速域(図20)ではオーバーシュートして立上がる。
本実施の形態は、前記第1の制御部345によるスタック3の運転の制限を、前記第2の制御部347の「第1の補正」により緩和し、更に、この制限の緩和を、上記オーバーシュートの発生条件及び度合を考慮した前記第3の制御部349の「第2の補正」により補完して、オーバーシュートによる制限緩和の減殺分を補償する。
「第1の補正」による制限の緩和は、そのための補正係数(以下、「第1の補正係数」と呼ぶ。)k0を運転の制限のためのパラメータLpに乗じて行い、「第2の補正」による緩和の補完は、そのための補正係数(以下、「第2の補正係数」と呼ぶ。)kxを緩和された制限値Lpに乗じて行う。
第1及び第2の補正係数k0及びkxは、それぞれ、乗算単位(=1)に等しい基数部と、条件により変動する小数部との和として次のように表される:
k0 = 1(基数部) + x1(小数部)、
kx = 1(基数部) + x2(小数部)。
ここで、図22を参照し、第1の補正係数k0と、第2の補正係数kxとを説明する。
図22は、車両Vのメインモータ19aの回転数KTとメインモータ19aが要求する電力EPとの関係(破線)と、回転数KTと第1の補正係数k0との関係(点線)と、回転数KTと第2の補正係数kxとの関係(実線)とを示す。なお、この図22では、比較の便宜上、第1の補正係数k0の大きさを、第2の補正係数kxの基数部に合わせ、縮尺して示す。
第1の補正係数k0は、燃料電池システム301(より詳細には、流体供給系FLS)の運転状態を表す情報収集系DS32からの情報に依存した値を取るが、図22に示されるように、車両Vのメインモータ19aの回転数KTには依存しない。つまり、
k0 = 1 + x1(DS32からの情報に依存した少数値)。
なお、この小数部x1が零値の場合にも、補正係数k0は意味がある。つまり、流体供給系FLSの温度性能は決まっているので、小数部x1が小さいほど、第2の補正係数kxの自由度が増して、緩和の補完をより効果的に行え、x1=0は最も効果的な補完を許容する。
一方、第2の補正係数kxは、燃料電池システム301(より詳細には、流体供給系FLS)の運転状態には依存しないが、図22に示されるように、車両Vの運転状態を表すインフォメーションプロバイダIPからの情報(この場合、メインモータ19aの回転数KT)に依存した値を取る。つまり、
kx = 1 + x2(IPからの情報に依存した少数値)。
この補正係数kxも、その小数部x2が零値の場合に、意味を持つ。つまり、小数部x2が小さいほど、第1の補正係数k0の自由度が増して、制限の緩和をより効果的に行え、x2=0は最も効果的な緩和を許容する。
本実施の態様では、図22から明らかなように、第2の補正係数kxの小数部(x2)が、車両Vの低速域では所定の正値となり、低速域から中速域への過渡領域で単調減少し、中〜高速域で零値となる。
次に、図23を参照して、コントローラ343の制御フローを説明する。図23は第3の実施の形態に係る運転制限/緩和処理LRP3を示す制御フローチャートである。
図23に示すように、第3の実施の形態の制御フローは、ステップS0(図3)からステップS1へ進んで吸入空気温度T1を取得し、更にステップS2へ進んで大気圧P0を取得して、ステップS203(図17のLp設定処理)へ進み、ここで、吸入空気温度T1及び大気圧P0に基づき、吐出空気温度T2をその上限値Lt以下に維持すると推定される吐出空気圧力P2の静的な上限値Lpを演算して設定した後、ステップS304(基本的な緩和許否判定処理)へ進む。
ステップS304では、図5に示す緩和許否判定処理を行って、運転制限の緩和が可能でありそれを許可すべきか或いは不可能であり拒否すべきかを判定し、緩和許可フラグFAの値(1=許可、0=拒否)を設定する。
制御フローはステップS304からステップS5(緩和拒否判断)へ進み、ここで緩和許可フラグFAの値が1か0かを判断する。FA=1であれば、制御フロー(YES)がステップS5からステップS306(第1の補正処理)へ進み、FA=0であれば、制御フロー(NO)がステップS5からステップS208(図17の制限実行)へ進む。
ステップS306では、ステップS203で設定した吐出空気圧P2の静的な上限値Lpを、これに(図3のステップS6におけると同様)流体供給系FLSの現在の運転状態に対応した第1の補正係数k0を乗じることにより、動的な上限値Lpに補正する。これにより、Lpの値が緩和される(即ち、大きくなる)。制御フローはステップS306からステップS309(第2の補正処理)へ進む。
ステップS309では、ステップS306で制限を緩和した吐出空気圧P2の上限値Lpを、これに車両Vの現在の運転状態に対応した第2の補正係数kxを乗じることにより、更に補正する。これにより、運転制限の緩和が補完される(即ち、車両Vの運転状態に応じて制限値Lpが更に大きくなる)。制御フローはステップS309からステップS208(図17の制限実行)へ進む。
ステップS208では、現在の上限値Lp(つまり、FA=0[緩和拒否]なら静的Lp、FA=1[緩和許可]なら補完された動的Lp)に従い、P2≦Lpとなるようにスタック3の運転制限を行う。制御フローはステップS208からステップS7(図3)へ進む。
本実施の形態によれば、車両Vの発進又は低速走行時にアクセルペダル50を踏み、空気圧縮機7の吸入空気温度T1が低下して、第1の制御部345による運転の制限を緩和することが許可され、第2の制御部347が制限値Lpを緩和する際、その緩和を第3の制御部349が更に補完して、オーバーシュートによる制限緩和の減殺分を補償するので、制限の緩和をより効果的に遂行できる。
本実施の形態と第1又は第2の実施の形態若しくはその変更例とを適宜組み合わせることは差し支えない。
ここで、日本特願2003−112956号を参照することにより、その内容を本明細書に組込む。
以上、本発明の最適な実施の形態を説明したが、この説明は例示的なものであり、当業者であれば、本発明の請求の範囲又は精神を逸脱することなく、実施の態様を変更可能なことをここに記す。
〔第1の実施の形態〕
先ず、図1〜図6を参照して、本発明の第1の実施の形態を説明する。
図1は、第1の実施の形態に係る燃料電池システム1のブロック図である。
燃料電池システム1は、ユニットセル(不図示)の集合体からなる燃料電池本体としての燃料電池スタック3と、このスタック3の運転に必要な流体を供給する流体供給系FLSと、スタック3及び流体供給系FLSの動作状態を検出するスタック状態検出系DS1及び流体状態検出系DS2を含む検出システムDSと、この検出システムDSから得た検出データに基づき流体供給系FLSを制御することによりスタック3の発電を制御する制御システムCSとを備える。
なお上記燃料電池システム1は、スタック3から電力EPの供給を受けて動作する駆動ユニット19を備え、この駆動ユニット19は、本実施例ではこのシステム1を搭載した電動式自動車のメインモータとして説明するが、これに限定されず、例えばこのシステム1を搭載した電車の駆動モータ、或いはこのシステムを適用可能な任意規模プラントの電動駆動部でも良い。この点、上記検出システムDSは、駆動ユニット19の運転状態(即ち操作状態及び作動状態)を検出する検出系(不図示)を含み、また上記制御システムCSは、検出システムDSの検出データに基づき駆動ユニット19の作動状態(即ち、動作及び出力)を必要に応じ推定し、適宜制御するための制御要素を含む。
流体供給系FLSは、スタック3に燃料を供給する燃料供給系FSと、スタック3に酸化剤を供給する酸化剤供給系OSと、燃料及び酸化剤を加湿するための純水を循環させる純水循環系HSと、スタック3の運転温度を適正に保持すべく冷却するための冷却水を冷媒として循環させる冷媒循環系(不図示)とを含む。
燃料供給系FSは、燃料としてのガス状水素を貯蔵する高圧水素タンク11と、このタンク11から取出した高圧の水素の流量制御を行う可変バルブ13と、高圧の水素を適宜外部へ排出するパージ弁17と、スタック3下流側に出てきた未使用の水素を上流側へ還流させるためのイジェクタ15とを含む一群の流体回路要素を必要に応じ備える。
酸化剤供給系OSは、吸入した外気を圧縮し酸化剤として吐出する空気供給装置としての空気圧縮機7と、スタック3へ供給される空気の圧力及び流量を制御するスロットル9とを含む一群の流体回路要素を必要に応じ備える。
純水循環系HSは、純水を循環させる純水ポンプ33と、循環する純水により燃料及び酸化剤を加湿する加湿器5とを含む一群の流体回路要素を必要に応じ備える。
冷媒循環系は、スタック3に設けられた冷媒流路と、冷媒の熱を系外に放出するラジエタと、冷媒を循環させる冷媒ポンプとを含む一群の流体回路要素を必要に応じ備える。
スタック状態検出系DS1は、スタック3を構成するユニットセルあるいはセル群の電圧を検出するセル電圧検出部21を含む一群の検出要素を必要に応じ備える。
流体状態検出系DS2は、外気の温度T0及び圧力P0をそれぞれ検出する温度センサ23及び圧力センサ25と、空気圧縮機7に吸入される空気の温度T1を検出する温度センサ27と、空気圧縮機7から酸化剤として吐出された空気の温度T2及び圧力P2をそれぞれ検出する温度センサ29及び圧力センサ31と、加湿器5により加湿されてスタック3へ流入する空気の流量F3及び圧力P3をそれぞれ検出する流量センサ35及び圧力センサ37と、加湿器5により加湿されてスタック3へ流入する水素の流量Ff及び圧力Pfをそれぞれ検出する流量センサ39及び圧力センサ41とを含む一群の検出要素を必要に応じ備える。なお、外気温(T0)センサ23は、システム1内の熱源(例えば、スタック3又はその冷却水のラジエタ)の影響を受けない位置に設置する。
制御システムCSは、上記センサ23,25,27,29,31,35,37,39,41及びセル電圧検出部21を含む検出システムDSの出力を読込み、内蔵された制御プログラムに基づいて、燃料供給系FSの可変バルブ13及びパージ弁17並びに酸化剤供給系OSの空気圧縮機7及びスロットル9を含む流体供給系FLSの能動回路要素のアクチュエータを制御するコントローラ43を有する。
スタック3は、そこに供給され更に分岐されて各ユニットセルに流入した水素及び空気をそのセル内で反応させて発電を行い、全セルで得られた電力(電流)を集め、必要に応じ駆動ユニット19へ供給する。各セルに流入した水素及び空気は互いに独立な流路を流れ、その間の反応は、流路間に設けられた電解質膜(本実施形態では固体高分子膜)を介して行われる。
各セルでの反応後に残された未使用の空気は、セル間の空気合流路を介して集められ、スタック3下流側のスロットル9を介してシステム1の系外へ排出される。また各セルでの反応後に残された未使用の水素は、セル間の水素合流路を介して集めた後、更に加湿器5の上流側へイジェクタ15を介し還流して再度発電に使用するが、状況に応じ、パージ弁17を介してシステム1の系外へ排出することもできる。
水素及び空気の各セルへの分岐路、セル内流路及びセル間の合流路は、それぞれ燃料供給系FS及び酸化剤供給系OSの受動的流体回路要素をなす。従って酸化剤供給系OSの流路内圧P2,P3は、上記スロットル9の絞り圧P4に依存して決まる。
P2=f1(P4)、P3=f2(P4)
ここに、fi(i=自然数)は表示外の変数も含む多変数の関数を表す。
空気圧縮機7から吐出される空気の温度T2は、空気圧縮機7の吸入空気温度T1と圧縮比(P0/P2)とに依存し、空気圧縮機7の下流に位置する酸化剤供給系OSの流体回路要素の温度性能Tcにより許容範囲Rtの上限Ltが制限される。
T2=f3(T1,P0/P2)=f3{T1,P0/f1(P4)}
=f4(T1,P0,P4)
T2≦Lt=f5(Tc)
一方、スタック3の出力電力(又は発電電力)Gは、その許容範囲Rgの上限Lgがスタック3の動作温度Tsに依存し、この動作温度Tsは空気圧縮機7の吐出空気温度T2に依存する。
Lg=f6(Ts)、Ts=f7(T2)、
Lg=f6{f7(T2)}=f8(T2)
従って、スタック3の出力電力Gは、その許容範囲Rgの上限Lgが上記吸入空気温度T1に依存し、酸化剤供給系OSの流体回路要素の温度性能Tcにより制限される。
Lg=f8{f4(T1,P0,P4)}=f9(T1,P0,P4)
=f9{T1,P0,f1 −1(P2)}=f10(T1,P0,P2)
G≦Lg=f11(Tc)
コントローラ43は、検出システムDSの検出データを読込み、駆動ユニット19の運転状態からスタック3の目標発電量を推定して、この発電量を達成すべく流体供給系FLSの空気圧縮機7、スロットル9及び可変バルブ13を含む能動流体回路要素の制御目標値をさだめ、現データとの比較からそれぞれの所要制御量を計算して対応した制御を行うとともに、スタック3から駆動ユニット19へ必要な電力EP(電流)が供給されるように制御する。
このため、コントローラ43は、温度センサ27で検出した吸入空気温度T1と圧力センサ25で検出した大気圧P0とに基づいて、空気圧縮機7の吐出空気の温度T2がその許容範囲Rtの上限値Ltを超えないようにスタック3の運転を制限し、必要に応じ或いは所定の状態で、その制限の度合を緩和する運転制限部45を備え、更に、空気圧縮機7の吐出空気の温度T2を上記上限値Lt以下に抑えるべく、その吐出空気の圧力P2の上限値Lpを設定し、これにより吐出空気圧P2の許容範囲Rpを規定する吐出空気圧(P2)上限設定部47を備える。この上限値Lpは、上記吸入空気温度T1及び大気圧P0に基づき設定され、この設定値を変えることにより、運転制限部45によるスタック3の運転制限の緩和がなされる。
本実施の形態は、システム1が搭載された燃料電池車両を発進時または低速走行時に加速すると、空気圧縮機7の吸入空気温度T1が走行風の影響により低下して、最終的に外気温度T0にほぼ等しくなる点に着目し、この現象を利用してスタック3の運転制限を緩和することによりシステム1の効率を向上させるようにしたもので、空気圧縮機7の吐出空気温度T2の上限値Ltを見定める際、吸入空気温度T1の過渡的な変化を考慮することにより、スタック3の過剰な運転制限を回避している。
つまり、空気圧縮機7の吸入空気温度T1及び大気圧P0を検出して吐出空気温度T2をその上限値Lt以下に維持するために吐出空気圧力P2の上限値Lpを設定してスタック3の運転を制限する際に、吸入空気温度T1の変化を算出し、低下が予測される場合には、その低下率に応じて吐出空気圧力P2の上限値Lpを補正することにより、スタック3の運転制限を緩和する処理(図3のステップS6に相当)を行い、過剰な運転制限を回避する。
ここで図2を参照して、吐出空気圧力上限値Lpの補正演算の一例を説明するが、本発明は、この例に限定されるものではない。
図2は、本システム1における空気圧縮機7の吸入空気温度T1[℃]と吐出空気圧力上限値Lp[kPa]との関係を、外気圧P0=一定の条件下で行った実験に基づき示すグラフであり、曲線Ap(実線)は運転制限非緩和時(つまり、通常の運転制限状態で)の関係に相当し、曲線Bp(破線)は基準となる(つまり実験された)過度状態における運転制限緩和時の関係に相当する。
先ず、一定の大気圧P0[kPa]下でシステム1の実機実験を行い、吸入空気温度T1[℃]と、これに対応した吐出空気温度T2をその上限値Lt[℃]以下に維持するための吐出空気圧力P2の上限値Lpa[kPa]と、の間の静的な関係(曲線Ap)を記録する。
次に、同じ大気圧P0[kPa]下で、空気圧縮機7の吸入空気温度T1を所定時間t秒間に所定の温度差だけ(例えば、図2のT11[℃]からT12[℃]まで)均等に低下させる実験を行い、その時の低下率−ΔTr[℃/s]{つまり、基準となる降温速度=(T12−T11)/t}と、この基準的過度状態(つまり、吸入空気温度T1を基準の変化率ΔTrで低下させる動的な状態)における吸入空気温度T1[℃]と吐出空気圧力上限値Lpb[kPa]との間の関係(曲線Bp)とを記録する。
そして、燃料電池車両に搭載されたシステム1の運転に際し、現在の制御サイクルにおいて検出された吸入空気温度T1と、前サイクルもしくはそれより前のサイクルとの比較から算出された吸入空気温度T1の低下率−ΔTd[℃/s]とに基づき、現サイクルでの吸入空気温度T1に対応した吐出空気圧力P2の静的な上限値Lpa[kPa]を、この静的上限値Lpaとそれに対応する標準的過度状態での動的上限値Lpbとの間の比例計算から内挿的或いは必要に応じ外挿的に求められた補正量ΔLp=(Lpb−Lpa)(ΔTd/ΔTr)により、次の式(1)のように補正し、この補正された値を実際の過度状態における吐出空気圧力上限値Lpとして設定する:
Lp=Lpa+ΔLp
=Lpa+(Lpb−Lpa)(ΔTd/ΔTr)…(1)
次に、図3〜図6を参照して、本システム1の作用を説明する。
図3はコントローラ43の制御フローチャートであり、図4及び図5は図3の制御フローチャートを補完するフローチャートであり、図6は図5のフローチャートを補完するフローチャートである。
コントローラ43は、圧力センサ25により検出された大気圧P0と、温度センサ27により検出された空気圧縮機7の吸入空気温度T1とに基づいて、システム1の運転制限を行う。より詳細には「流体供給系FLSの運転(つまり操作量及び動作)を制御することによりスタック3の運転(つまり発電動作)を制限し、必要に応じ駆動ユニット19への供給電力EPも制御する」(以下、このことを「スタック3の運転制限」と呼び、文脈によっては、単に「運転制限」若しくは「(運転の)制限」と略称する)。そして、コントローラ43が認識したシステム1の運転状況に応じ、スタック3の運転制限を緩和する処理を行う。
コントローラ43の制御サイクルCL(図3)は、スタック3の運転開始指令発令以降の各タイムスロット(例えば10[ms]の時間幅)において、図3の運転制限/緩和処理LRP1を実行する。即ち、ステップS0でこの処理LRP1に入り、ステップS7でこの処理LRP1から出る。なお、現サイクル(つまり現在のタイムスロット)における処理LRP1の結果は、次サイクル(つまり現在の次のタイムスロット)以降の処理LRP1で更改されるまで維持される。
図3に示すように、制御フローはステップS0からステップS1へ進む。
ステップS1では、現サイクルで温度センサ27により検出された空気圧縮機7の吸入空気温度T1を取得する(つまり、コントローラ43の中央処理装置が現サイクルの検出データをサンプリングしてメモリに保存し、現サイクル以降のサイクルにおける読込みに備える)。制御フローはステップS1からステップS2へ進む。
ステップS2では、現サイクルで圧力センサ25により検出された大気圧P0を取得する。制御フローはステップS2からステップS3(運転制限処理)へ進む。
ステップS3では、現サイクルで取得した吸入空気温度T1及び大気圧P0を含む保存データに基づき、図4に示す運転制限処理を行い、吐出空気圧P2の静的な上限値Lp(例えば図2のLpa)を設定する。制御フローはステップS3からステップS4(基本的な緩和許否判定処理)へ進む。
ステップS4では、図5に示す緩和許否判定処理を行って、運転制限の緩和が可能でありそれを許可すべきか或いは不可能であり拒否すべきかを判定し、緩和許可フラグFAの値(1=許可、0=拒否)を設定する。制御フローはステップS4からステップS5へ進む。
ステップS5では、ステップS4で設定された緩和許可フラグFAの値が1か0かを判断し、FA=1であれば、制御フロー(YES)がステップS5からステップS6(緩和処理)へ進み、FA=0であれば、制御フロー(NO)がステップS5からステップS7へ進む。
ステップS6では、既述の運転制限緩和処理を実行する。つまり、現サイクルでのステップS3で設定した吐出空気圧P2の静的な上限値Lpを{例えば、前述の式(1)中の静的上限値Lpaに代入することにより}補正して、現在の過度状態に対応した動的な上限値Lpを設定し、この上限値Lpに従い{即ち(P2≦動的Lp)となるように}スタック3の運転制限を行う。制御フローはステップS6からステップS7へ進む。
ここで、図4を参照して、ステップS3の運転制限処理を更に説明する。
図4に示すように、制御フローはステップS2からステップS10(制限値設定処理)へ進む。
ステップS10では、現サイクルで取得した吸入空気温度T1及び大気圧P0に基づき、吐出空気温度T2をその上限値Lt以下に維持すると推定される吐出空気圧力P2の静的な上限値Lpを演算して設定する。制御フローはステップS10からステップS12(制限実行処理)へ進む。
ステップS12では、現在従うべき吐出空気圧力上限値Lpを確認する。つまり、前サイクルで設定された緩和許可フラグFA=0であれば、現サイクルで設定した静的な上限値を現在従うべき上限値Lpとみなし、FA=1であれば、前サイクルで設定された動的な上限値と現サイクルで設定した静的な上限値との内の適宜な一方(より詳細には、前サイクル以前の運転と滑らかにつながるほう)を現在従うべき上限値Lpとみなす。そして、この上限値Lpに基づき、空気圧縮機7の吐出空気圧力P2を{(P2≦Lp)となるように}制御して、スタック3の運転を制限する。制御フローはステップS12からステップS4へ進む。
ステップS10の推定演算で使用される吐出空気温度T2及びその上限値Ltの計算は、吸入空気温度T1、大気圧P0、空気圧縮機7の全断熱効率、酸化剤供給系OSの流体回路要素の温度性能Tcに基づく吐出空気温度T2の上限値Ltなどを含む保存データを用いて行う。
なお、空気圧縮機7の吐出空気圧力P2の上限値Lpに代え吐出空気温度T2の上限値Ltを設定して、温度センサ29により検出された吐出空気温度T2がその上限値Ltを超えないように吐出空気圧力P2を制御することにより、吸入空気温度T1の過度状態におけるスタック3の運転制限の緩和を実現しても良い。
次に、図5を参照して、ステップS4の緩和許否判定処理を、更に説明する。
図5に示すように、制御フローはステップS3からステップS20へ進む。
ステップS20では、現サイクルで温度センサ23により検出された外気温度T0を取得する。制御フローはステップS20からステップS22へ進む。
ステップS22では、現サイクルで取得した吸入空気温度T1と現サイクルで取得した外気温度T0との間の温度差DT(但し、DT=T1−T0)が対応する閾値Th1を上回るか否か判定する。DT>Th1であれば、制御フロー(YES)がステップS22からステップS24(変化予測処理)へ進み、DT≦Th1であれば、制御フロー(NO)がステップS22からステップS30へ進む。
ステップS24では、図6に示す変化予測処理に従って、吸入空気温度T1の変化を予測し、吸入空気温度T1の低下が期待可能か否か判定する。制御フローはステップS24からステップS26へ進む。
ステップS26では、ステップS24の判定結果を確認する。そして、吸入空気温度T1の低下が期待できれば、制御フロー(YES)がステップS26からステップS28へ進み、吸入空気温度T1の低下が期待できなければ、制御フロー(NO)がステップS26からステップS30へ進む。
ステップS28では、緩和許可フラグFAを、FA=1に設定する。制御フローはステップS28からステップS5へ進む。
ステップS30では、緩和許可フラグFAを、FA=0に設定する。制御フローはステップS30からステップS5へ進む。
次に、図6を参照して、ステップS24の(T1)変化予測処理を、更に説明する。
図6に示すように、制御フローはステップS22からステップS40へ進む。
ステップS40では、本システム1を搭載する燃料電池車両の車速センサ60により現サイクルで検出された車速Vsを取得する。制御フローはステップS40からステップS42へ進む。
ステップS42では、現サイクルで取得した車速Vsが対応する閾値Th2(例えば、5[km/h])を下回るか否か判断する。0≦Vs<Th2であれば、制御フロー(YES)がステップS42からステップS44へ進み、Vs≧Th2であれば、制御フロー(NO)がステップS42からステップS46へ進む。
ステップS44では、車両の発進または加速に伴う走行風による吸入空気温度T1の有意な低下を現サイクル以降で期待できると判定する。制御フローはステップS44からステップS26へ進む。
ステップS46では、走行風による吸入空気温度T1の低下が既に飽和状態(つまり、DT=T1−T0=0の状態)の近傍に達しており、もはや現サイクル以降で有意な低下を期待することができないと判定する。制御フローはステップS46からステップS26へ進む。
本実施の形態によれば、ステップS22で、吸入空気温度T1が外気温T0より所定温度差Th1以上高いと判断され、かつステップS44で、吸入空気温度T1の低下が現サイクル以降で期待できると判定された場合に、ステップS28で、緩和許可フラグFAがFA=1(許可)に設定される。つまり、燃料電池車両がその停止状態あるいは極低速での走行状態から発進もしくは加速して、車速Vsが次第に上昇し、吸入空気温度T1が応分に低下すると見込まれる過度的状態を検知し、そのときスタック3の運転制限を緩和しようとしているので、燃料電池車両の加速性能を前向きに支援する仕方で、システム1を運転できる。
本実施の形態によれば、空気圧縮機7の吐出空気温度T2をその上限値Lt以下に維持すべく吐出空気圧力P2の上限値Lpを設定し、吐出空気圧力P2がこの上限値Lpを上回らないように制御しているので、スタック3の運転制限を緩和しても、吐出空気温度T2が上限値Ltを上回ることがなく、従って、空気圧縮機7の吸入空気温度T1が低下する過度的状態において過剰な運転制限を回避できる。
次に第1の実施の形態の制御フローを部分的に変更した複数の変更例を説明する。これらの変更例は適宜組み合わせることができる。
〔第1の実施の形態の第1の変更例〕
次に、図7を参照して、第1の実施の形態の第1の変更例を説明する。
この変更例は、スタック3の運転制限をパラメータ変換により多様化するもので、図3のステップS3(運転制限処理)の処理内容が図4に示すフローから図7に示すフローに変わる点で、第1の実施の形態と異なる。より詳細には、図4のステップS12(制限実行処理)が図7のステップS50,S52,及びS54に置き換わる。
図7に示すように、第1の変更例の制御フローはステップS2(図3)から、ステップS10(図4の制限値設定処理)を経て、ステップS50へ進む。
ステップS50では、現在従うべき吐出空気圧力上限値Lpを確認する。制御フローはステップS50からステップS52(パラメータ変換処理)へ進む。
ステップS52では、現在従うべき吐出空気圧力上限値Lpを、スタック3の出力電力上限値(即ち、スタック3から取出可能な電力の上限値)Lgにパラメータ変換する。この上限値Lgをスタック3の出力電流で表しても良い。制御フローはステップS52からステップS54へ進む。
ステップS54では、流体供給系FLSを制御して、スタック3の出力電力(又は発電電力)GがG≦Lgとなるように、運転の制限を行う。制御フローはステップS54からステップS4(図3の緩和許否判定処理)へ進む。
ここで図8A〜8Cを参照して、図7のステップS52(パラメータ変換処理)を更に説明する。
図8Aは、空気圧縮機7の吸入空気温度T1と吐出空気圧力P2の上限値Lpとの間の関係(曲線Lpa,曲線Lpb)を実験に基づき示す、図2に対応したグラフ;図8Bは、空気圧縮機7の吐出空気圧力上限値Lpとスタック3の出力電力上限値Lgとの間の関係(曲線Cg)を実験に基づき示す、パラメータ変換(Lp→Lg)のためのグラフ;図8Cは、パラメータ変換(Lp→Lg)により得られた、空気圧縮機7の吸入空気温度T1とスタック3の出力電力上限値Lgとの間の関係(曲線Lga,曲線Lgb)を示すグラフである。
図8Aに示すように、外気圧P0=一定の条件の下に、吸入空気温度T1と吐出空気圧力上限値Lpとの間の静的な関係を示す曲線Lpaは、例えば、T1=T11でLp=Lpa1となり、T1=T12でLp=Lpa 2となる。同じ外気圧P0=一定の条件の下に、吸入空気温度T1を基準の変化率{ΔTr=(T12−T11)/t}で低下させた過度状態で、吸入空気温度T1と吐出空気圧力上限値Lpとの間の動的な関係を示す曲線Lpbは、例えば、T1=T11でLp=Lpb1となり、T1=T12でLp=Lpb2となる。
図8Bに示すように、外気圧P0=一定の条件の下に、吐出空気圧力上限値Lpと出力電力上限値Lgとの間の関係を示す曲線Cgは、ほぼリニアかつ連続で、例えば、Lp=Lpa1のときLg=Lga1となり、Lp=Lpb1のときLg=Lgb1となり、Lp=Lpa2のときLg=Lga2となり、Lp=Lpb2のときLg=Lgb2となる。つまり、スタック3の運転を制限する限界値が、曲線Cg{即ち、対応する連続写像関数Lg=f12(Lp)}により、パラメータLpからパラメータLgへ、Lpa1→Lga1、Lpb1→Lgb1、Lpa2→Lga2、Lpb2→Lgb2のように変換される。
このパラメータ変換により、図8Cに示すように、外気圧P0=一定の条件の下に、吸入空気温度T1と出力電力上限値Lgとの間の静的な関係を示す曲線Lgaが得られ、また同じ外気圧P0=一定の条件の下に、吸入空気温度T1を基準の変化率(ΔTr)で低下させた過度状態で、吸入空気温度T1と出力電力上限値Lgとの間の動的な関係を示す曲線Lgbが得られる。静的関係を示す曲線Lgaは、例えば、T1=T11でLg=Lga1となり、T1=T12でLg=Lga2となる。動的関係を示す曲線Lgbは、例えば、T1=T11でLg=Lgb1となり、T1=T12でLg=Lgb2となる。
なお、本変更例に係る運転制限処理(図7)を含む制御フローCL(図3)の実行に際し、ステップS6の緩和処理でもパラメータ変換(Lp→Lg)を行うことは差し支えない。
その場合は、図8Bの写像関数Lg=f12(Lp)により、吐出空気圧力P2の動的な上限値Lpを出力電力(又は発電電力)Gの動的な上限値Lgに変換して、G≦Lgとなるように制御することにより、運転制限の緩和を実行する。
しかしながら、図8Cに対応するデータマップが存在する場合には、動的Lpの設定同様に、燃料電池車両に搭載されたシステム1の運転に際し、現在の制御サイクルにおいて検出された吸入空気温度T1と、前サイクルもしくはそれより前のサイクルとの比較から算出された吸入空気温度T1の低下率−ΔTd[℃/s]とに基づき、現サイクルでの吸入空気温度T1に対応した出力電力Gの静的な上限値Lga[kW]を、この静的上限値Lgaとそれに対応する標準的過度状態での動的上限値Lgbとの間の比例計算から内挿的或いは必要に応じ外挿的に求められた補正量ΔLg=(Lgb−Lga)(ΔTd/ΔTr)により、次の式(2)のように補正し、この補正された値を実際の過度状態における出力電力上限値Lgとして設定するようにしてもよい:
Lg=Lga+ΔLg
=Lga+(Lgb−Lga)(ΔTd/ΔTr)…(2)
〔第1の実施の形態の第2の変更例〕
次に、図9−11を参照して、第1の実施の形態の第2の変更例を説明する。
この変更例は、スタック3の運転制限の緩和に酸化剤の圧力変化に応じた制限を加えるもので、図3のステップS4(基本的な緩和許否判定処理)の後のステップS5(許否判断)を、図9に示すステップS66(補助的な緩和許否判定処理)とステップS68(許否判断)との組合せに置き換えた点で、第1の実施の形態と異なる。図10−11は、図9のステップS66の処理内容を示すフローチャートである。
図9に示すように、第2の変更例の制御フローはステップS4(基本的な緩和許否判定処理)からステップS66(補助的な緩和許否判定処理)へ進む。
ステップS66では、図10−11のフローに従って補助的な緩和許否判定処理を実行し、図10に示す判定フラグFB{FB=1(許可)又はFB=0(拒否)}と、図11に示す判定フラグFC{FC=1(許可)又はFC=0(拒否)}との値を設定する。制御フローはステップS66からステップS68へ進む。
ステップS68では、フラグFA(図5)とフラグFBとフラグFCとのAND(論理積:FA∩FB∩FC)が1か否かを判断する。この論理積が1であれば、制御フロー(YES)がステップS68からステップS6(図3の緩和処理)へ進む。
上記論理積が1でなければ(つまり、FA∩FB∩FC=0なら)、制御フロー(NO)がステップS68からステップS7(図3)へ進み、現サイクルでの運転制限/緩和処理LRP1(図3)から出る。
ここで、図10を参照して、ステップS66の緩和許否判定処理を更に説明する。
図10に示すように、本変更例の制御フローはステップS4(基本的な緩和許否判定処理)からステップS80(圧力変化演算処理)へ進む。
ステップS80では、図11に示すフローに従って、現サイクルで取得した吐出空気圧P2(経過サイクル数n=0)及び前サイクル以前に取得した吐出空気圧P2(経過サイクル数n≧1)を含む吐出空気圧P2のデータの全集合{P2(0≦n)}の中から、適宜な2つのP2データを含む所定サイズの部分集合{P2(0≦n≦N:Nは所定の自然数)}、を選択し、その集合要素間の圧力変化DP2を演算する処理が実行される。制御フローはステップS80からステップS82(緩和許否判断)へ進む。
ステップS82では、上記部分集合{P2(0≦n≦N)}の要素の大小比較に基づく論理演算により、前記圧力変化DP2が吐出空気圧P2の上昇側での変化か否かを判断する。上昇側での変化であれば、制御フロー(YES)がステップS82からステップS84へ進む。そうでなければ、制御フロー(NO)がステップS82からステップS86へ進む。
なお、ステップS80における圧力変化DP2の演算を、上記部分集合{P2(0≦n≦N)}の要素の代数的差分又は数値微分として行い、その符号(正又は負)からステップS82の判断を行うようにしても良い。
ステップS84では、フラグFBの値を1(許可)に設定する。制御フローはステップS84からステップS68(図9)へ進む。
ステップS86では、フラグFBの値を0(拒否)に設定する。制御フローはステップS86からステップS68(図9)へ進む。
ここで、図11を参照して、ステップS80の圧力変化(DP2)演算処理を更に説明する。
図11に示すように、本変更例の制御フローはステップS4(基本的な緩和許否判定処理)からステップS91(データ取得)へ進む。
ステップS91では、図1のセンサー31により現サイクルで検出した吐出空気圧P2(n=0)を取得する。制御フローはステップS91からステップS92(データ選択)へ進む。
ステップS92では、それまでに取得され(従ってメモリ中に保存され)た吐出空気圧P2のデータの全集合{P2(0≦n)}の中から、適宜な2つのP2データ{本変更例ではP2(n=0)及びP2(n=1)}を含むN+1個のデータからなる部分集合{P2(0≦n≦N:本変更例ではN=2)、つまりP2(n=0),P2(n=1),及びP2(n=2)}、を選択し、その集合要素間の圧力変化DP2を次の要領で計算する。
P2(n=0)−P2(n=1)≧0の場合は、
DP2=P2(n=0)−P2(n=1)
一方、P2(n=0)−P2(n=1)<0の場合には、
P2(n=0)−P2(n=2)≧0なら、
DP2={P2(n=0)−P2(n=2)}/2。
P2(n=0)−P2(n=2)<0なら、
DP2=0。
なお、前記部分集合{P2(0≦n≦N)}のサイズN=1とし、圧力変化DP2を
DP2=|P2(n=0)−P2(n=1)|
としても良い。
上記圧力変化DP2は、吐出空気圧力P2のタイムスロット当たりの変化率を示す。
そして、制御フローはステップS93からステップS94(緩和許否判断)へ進む。
ステップS94では、圧力変化DP2が所定の閾値Th3未満か否か判断する。圧力変化DP2が閾値Th3未満(即ち、DP2<Th3)であれば、制御フロー(YES)がステップS94からステップS95へ進む。そうでなければ(つまり、DP2≧Th3なら)、制御フロー(NO)がステップS94からステップS96へ進む。
ステップS95では、フラグFCの値を1(許可)に設定する。制御フローはステップS95からステップS82(図10)へ進む。
ステップS96では、フラグFCの値を0(拒否)に設定する。制御フローはステップS96からステップS82(図10)へ進む。
本変更例によれば、吐出空気圧力P2が所定の変化率(Th3)以上(FC=0)で上昇(FB=1)すると、FB∩FC=0となって、運転制限の緩和が拒否{FA∩FB∩FC=FA∩(FB∩FC)=0}されるので、吐出空気温度T2を上限値Lt以下に維持してスタック3の運転を行うことが容易となる。
〔第1の実施の形態の第3の変更例〕
次に、図12−14を参照して、第1の実施の形態の第3の変更例を説明する。
この変更例は、スタック3の運転制限の緩和に空気圧縮機7の吸入空気の温度変化に応じた制限を加えるもので、図3のステップS4(基本的な緩和許否判定処理)の後のステップS5(許否判断)を、図12に示すステップS106(補助的な緩和許否判定処理)とステップS108(許否判断)との組合せに置き換えた点で、第1の実施の形態と異なる。図13−14は、図12のステップS106の処理内容を示すフローチャートである。
図12に示すように、第3の変更例の制御フローはステップS4(基本的な緩和許否判定処理)からステップS106(補助的な緩和許否判定処理)へ進む。
ステップS106では、図13−14のフローに従って補助的な緩和許否判定処理を実行し、図13に示す判定フラグFD{FD=1(許可)又はFD=0(拒否)}と、図14に示す判定フラグFE{FE=1(許可)又はFE=0(拒否)}との値を設定する。制御フローはステップS106からステップS108へ進む。
ステップS108では、フラグFA(図5)とフラグFDとフラグFEとのAND(論理積:FA∩FD∩FE)が1か否かを判断する。この論理積が1であれば、制御フロー(YES)がステップS108からステップS6(図3の緩和処理)へ進む。
上記論理積が1でなければ(つまり、FA∩FD∩FE=0なら)、制御フロー(NO)がステップS108からステップS7(図3)へ進み、現サイクルでの運転制限/緩和処理LRP1(図3)から出る。
ここで、図13を参照して、ステップS106の緩和許否判定処理を更に説明する。
図13に示すように、本変更例の制御フローはステップS4(基本的な緩和許否判定処理)からステップS110(温度変化演算処理)へ進む。
ステップS110では、図14に示すフローに従って、現サイクルのステップS1(図3)で取得した吸入空気温度T1(経過サイクル数m=0)及び前サイクル以前に取得した吸入空気温度T1(経過サイクル数m≧1)を含む吸入空気温度T1のデータの全集合{T1(0≦m)}の中から、適宜な2つのT1データを含む所定サイズの部分集合{T1(0≦m≦M:Mは所定の自然数)}、を選択し、その集合要素間の温度変化DT1を演算する処理が実行される。制御フローはステップS110からステップS112(緩和許否判断)へ進む。
ステップS112では、上記部分集合{T1(0≦m≦M)}の要素の大小比較に基づく論理演算により、前記温度変化DT1が吸入空気温度T1の下降側での変化か否かを判断する。下降側での変化であれば、制御フロー(YES)がステップS112からステップS114へ進む。そうでなければ、制御フロー(NO)がステップS112からステップS116へ進む。
なお、ステップS110における温度変化DT1の演算を、上記部分集合{T1(0≦m≦M)}の要素の代数的差分又は数値微分として行い、その符号(正又は負)からステップS112の判断を行うようにしても良い。
ステップS114では、フラグFDの値を1(許可)に設定する。制御フローはステップS114からステップS108(図12)へ進む。
ステップS116では、フラグFDの値を0(拒否)に設定する。制御フローはステップS116からステップS108(図12)へ進む。
ここで、図14を参照して、ステップS110の温度変化(DT1)演算処理を更に説明する。
図14に示すように、本変更例の制御フローはステップS4(基本的な緩和許否判定処理)からステップS122(データ選択)へ進む。
ステップS122では、それまでに取得され(従ってメモリ中に保存され)た吸入空気温度T1のデータの全集合{T1(0≦m)}の中から、適宜な2つのT1データ{本変更例ではT1(m=0)及びT1(m=1)}を含むM+1個のデータからなる部分集合{T1(0≦m≦M:本変更例ではM=2)、つまりT1(m=0),T1(m=1),及びT1(m=2)}、を選択する。制御フローはステップS122からステップS123(DT1計算)へ進む。
ステップS123では、上記部分集合{T1(m=0),T1(m=1),T1(m=2)}の要素間の温度変化DT1を次の要領で計算する。
T1(m=0)−T1(m=1)≦0の場合は、
DT1=T1(m=1)−T1(m=0)
一方、T1(m=0)−T1(m=1)>0の場合には、
T1(m=0)−T1(m=2)≦0なら、
DT1={T1(m=2)−T1(m=0)}/2。
T1(m=0)−T1(m=2)>0なら、
DT1=0。
なお、前記部分集合{T1(0≦m≦M)}のサイズM=1とし、温度変化DT1を
DT1=|T1(m=0)−T1(m=1)|
としても良い。
上記温度変化DT1は、吸入空気温度T1のタイムスロット当たりの変化率を示す。
そして、制御フローはステップS123からステップS124(緩和許否判断)へ進む。
ステップS124では、温度変化DT1が所定の閾値Th4を越えるか否か判断する。温度変化DT1が閾値Th4を越える(即ち、DT1>Th4)であれば、制御フロー(YES)がステップS124からステップS125へ進む。そうでなければ(つまり、DT1≦Th4なら)、制御フロー(NO)がステップS124からステップS126へ進む。
ステップS125では、フラグFEの値を1(許可)に設定する。制御フローはステップS125からステップS112(図13)へ進む。
ステップS126では、フラグFEの値を0(拒否)に設定する。制御フローはステップS126からステップS112(図13)へ進む。
本変更例によれば、吸入空気温度T1が所定の変化率(Th4)以下(FE=0)で下降(FD=1)すると、FD∩FE=0となって、運転制限の緩和が拒否{FA∩FD∩FE=FA∩(FD∩FE)=0}されるので、吐出空気温度T2を上限値Lt以下に維持してスタック3を運転することが容易となる。
〔第1の実施の形態の第4の変更例〕
次に、図15を参照して、第1の実施の形態の第4の変更例を説明する。
この変更例は、第3の変更例における運転制限の緩和期間を酸化剤供給系OSの昇温慣性に応じて延長するもので、図15に示すように、空気温度(T1)の変化に基づく緩和拒否時(NO)の制御フロー(図14)に、(温度制限による)拒否開始からの経過時間teが所定の閾値(Th5)未満であるか判断するステップS130を設け、閾値未満(te<Th5)の間は緩和許可(YES)側にフローを戻すようにした点で、第3の変更例と異なる。
上記経過時間teは、吐出空気温度T2がその上限値Ltを上回って(T2>Lt)いる時間と見なせるにもかかわらず、その時間teが闘値(Th5)に達するまではフローが緩和許可(YES)側に戻るので、以下、この時間teを緩和許可の延長時間と呼ぶ。
図15に示すように、本変更例の制御フローは、ステップS123でDT1計算を実行した後、ステップS124へ進んで緩和の許否を判断し、判断の結果が緩和許可(YES)であれば、ステップS124からステップS125へ進み、許可フラグFEを1に設定して、次のステップS112(図13)へ進む。
ステップS124での判断の結果が緩和拒否(NO)であれば、ステップS130へ進み、上記延長時間teが閾値(Th5)未満であるか否か判断する。
延長時間teが閾値未満(te<Th5)であれば、制御フロー(YES)がステップS130からステップS125(FE=1)へ進む。
延長時間teが閾値以上(te≧Th5)になると、制御フロー(NO)がステップS130からステップS126へ進み、許可フラグFEを0に設定する。制御フローはステップS126からステップS112(図13)へ進む。
なお、上記閾値(Th5)は、酸化剤供給系OSを構成する空気圧縮機7以降の流体回路要素及び関連部材について、その熱伝達率及び熱容量に基づく昇温速度を計算し、最も耐熱温度が低い要素又は部材の温度を考慮して設定するが、実験的に定めても良い。
本変更例によれば、コントローラ43は、運転制限の緩和に伴い、空気圧縮機7の吐出空気温度T2が上限値Ltを上回っても、酸化剤供給系OSを構成する空気圧縮機7以降の流体回路素子及び関連部材のいずれかがその耐熱温度まで昇温しない限り、運転制限の緩和を許可するように動作する。
この点、吐出空気温度T2の上限値Ltは、酸化剤供給系OSの流体回路要素の温度性能Tc(図1)に基づき設定される。
従って、酸化剤供給系OSを構成する空気圧縮機7,加湿器5,及びスタック3を含む機材各一の耐熱温度を比較し、最も耐熱温度が低い機材(例えば、ユニットセル)を基準として全機材一律に上限値Ltが設定されるので、空気圧縮機7の吐出空気温度T2がこの上限値Ltを越えても、それにより流路の温度が上がって、基準となる機材が耐熱温度に達するまでにはそれなりの時間がかかる。本変更例は、この時間を見込んで過度状態での運転制限を緩和しているので、それによりいずれかの機材の性能が劣化することはない。
〔第1の実施の形態の第5の変更例〕
次に、図16を参照して、第1の実施の形態の第5の変更例を説明する。
この変更例は、第1の実施の形態における運転制限の緩和期間を酸化剤供給系OSの昇温慣性に応じて延長するもので、図16に示すように、現サイクルにおける空気温度(T1)の変化及び以降のサイクルにおける変化の予測に基づく緩和拒否時(NO)の制御フロー(図5)に、(温度制限による)拒否開始からの経過時間teが所定の閾値(Th6)未満であるか判断するステップS140を設け、閾値未満(te<Th6)の間は緩和許可(YES)側にフローを戻すようにした点で、第1の実施の形態と異なる。
上記経過時間teも緩和許可の延長時間に相当するので、以下、そう呼称する。
図16に示すように、本変更例の制御フローは、ステップS22で吸入空気温度T1と外気温度T0との温度差DTが閾値Th1を上回る否か判断し、上回る(YES)と判断すれば、ステップS24へ進んで吸入空気温度(T1)の変化予測処理を実行する。そして、ステップS26へ進んで吸入空気温度(T1)の低下を期待できるか否か判断し、低下期待可能(YES)と判断すれば、ステップS28へ進み、緩和許可フラグFAを1に設定して、次の緩和許否判断ステップS5(図2)へ進む。
ステップS22で温度差DTが閾値Th1を上回らない(NO)と判断した場合、又はステップS26で吸入空気温度(T1)の低下を期待できない(NO)と判断した場合は、制御フローがステップS140へ進み、上記延長時間teが閾値(Th6)未満であるか否か判断する。
延長時間teが閾値未満(te<Th6)であれば、制御フロー(YES)がステップS140からステップS28(FA=1)へ進む。
延長時間teが閾値以上(te≧Th6)になると、制御フロー(NO)がステップS140からステップS30へ進み、許可フラグFAを0に設定する。制御フローはステップS30からステップS5(図2)へ進む。
上記閾値(Th6)も、酸化剤供給系OSを構成する空気圧縮機7以降の流体回路要素及び関連部材について、その熱伝達率及び熱容量に基づく昇温速度を計算し、最も耐熱温度が低い要素又は部材の温度を考慮して設定するが、実験的に定めても良い。
本変更例によれば、コントローラ43は、運転制限の緩和に伴い、空気圧縮機7の吐出空気温度T2が上限値Ltを上回っても、酸化剤供給系OSを構成する空気圧縮機7以降の流体回路素子及び関連部材のいずれかがその耐熱温度まで昇温しない限り、運転制限を緩和して、スタック3から取出す電力EP(又は電流)の増加を許容するように動作する。
本変更例によれば、過渡状態における運転制限の緩和を、上限値Lp以下の吐出空気圧P2に対し所定の時間定格を限度として継続するようにしているので、その間、吐出空気温度T2を上限値Lt以下に抑えた状態で、スタック3の出力電力EP(又は電流)を増加させることができ、過剰な運転制限を回避できる。
〔第2の実施の形態〕
次に、図17を参照して、本発明の第2の実施の形態を説明する。図17は第2の実施の形態に係る運転制限/緩和処理LRP2を示す制御フローチャートである。
この実施の形態は、図3のステップS3(運転制限処理)を図17のステップS203に変更し、図3のステップS6(制限緩和処理)を図17のステップS206及びS208に変更した点で、第1の実施の形態と異なる。
図17に示すように、第2の実施の形態の制御フローは、ステップS0(図3)からステップS1へ進んで吸入空気温度T1を取得し、更にステップS2へ進んで大気圧P0を取得した後、ステップS203(Lp設定処理)へ進む。
ステップS203では、図4のステップS10同様に、現サイクルで取得した吸入空気温度T1及び大気圧P0に基づき、吐出空気温度T2をその上限値Lt以下に維持すると推定される吐出空気圧力P2の静的な上限値Lpを演算して設定する。
制御フローはステップS203からステップS4(基本的な緩和許否判定処理)へ進み、ここで図5に示す緩和許否判定処理を行って、運転制限の緩和が可能でありそれを許可すべきか或いは不可能であり拒否すべきかを判定し、緩和許可フラグFAの値(1=許可、0=拒否)を設定する。
制御フローはステップS4からステップS5へ進み、ここで緩和許可フラグFAの値が1か0かを判断する。FA=1であれば、制御フロー(YES)がステップS5からステップS206(Lp緩和処理)へ進み、FA=0であれば、制御フロー(NO)がステップS5からステップS208(制限実行)へ進む。
ステップS206では、図3のステップS6におけると同様に、ステップS203で設定した吐出空気圧P2の静的な上限値Lpを現在の過度状態に対応した動的な上限値Lpに補正することにより、Lpの値を緩和(即ち、大きく)する。制御フローはステップS206からステップS208へ進む。
ステップS208では、現在の上限値Lp(つまり、FA=0[緩和拒否]なら静的Lp、FA=1[緩和許可]なら動的Lp)に従い、P2≦Lpとなるようにスタック3の運転制限を行う。制御フローはステップS208からステップS7(図3)へ進む。
本実施の形態によれば、図4(第1の実施の形態)のステップS12における運転制限の実行(P2≦Lp)が省略され、従って「現在従うべき上限値Lpの確認」が不要になる。
本実施の形態と第1の実施の形態の変更例とを適宜組み合わせることは差し支えない。
〔第3の実施の形態〕
次に、図18を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る燃料電池システム301の構成を説明する。図18は燃料電池システム301のブロック図である。第1の実施の形態(図1)と同じ要素又は機能は同じ参照番号で表し、理解を容易にする。
燃料電池システム301は、このシステム301が搭載された燃料電池車両Vの駆動ユニット19及びその他の電気負荷へ供給される電力EPを発電する燃料電池スタック3と、このスタック3の運転に必要な流体(即ちユーティリティ)を供給する流体供給系FLSと、スタック3及び流体供給系FLSの運転(操作/動作)状態並びに車両Vの運転(操作/動作)状態に関する情報を収集する情報システムDS3と、この情報システムDS3から得た情報に基づき流体供給系FLSを制御することによりスタック3の発電を制御する制御システムCS3とを備える。
情報システムDS3は、スタック3の運転状態に関する情報を収集するスタック情報収集系DS31と、流体供給系FLSの運転状態に関する情報を収集する流体供給情報収集系DS32とを含み、更に、車両Vの運転情報ISを制御システムCS3のコントローラ343にインターフェースするインフォメーションプロバイダIPを備える。
インフォメーションプロバイダIPでインターフェースされる運転情報ISは、例えば、車両Vのアクセルペダル50の操作量(開度)AOを検出するペダルセンサ51の検出データ、車両Vの車速Vsを検出する車速センサー60の検出データ、及び車両Vの駆動ユニット19を成すメインモータ19aの動作に関する情報DCを含む。
従って、運転情報ISには、例えば、アクセル開度AO、車速Vs、及びモータ動作情報DCが含まれ、このモータ動作情報DCには、燃料電池スタック3から駆動ユニット19のメインモータ19aへ入力され(消費され)る電力EP1に関する情報、メインモータ19aの毎分回転数KTに関する情報、及びメインモータ19aから車両Vのパワトレインへ出力される駆動トルクTQに関する情報が含まれる。
スタック3から車両Vのメインモータ19a以外の電気負荷(例えば、ヒータを含む乗員室又は貨物室空調装置等)に供給され(消費され)る電力EP2に関する情報を、運転情報ISに含めても良い。
スタック情報収集系DS31は、スタック3の動作状態WCを検出するスタック検出系SD(図1のDS1)を含み、この検出系SDは、スタック3のユニットセルの電圧、スタック3の動作温度を推定するデータとなる冷媒循環系の冷媒温度、及びスタック3の出力電力EPを算定するデータとなるスタック出力電流を検出する。
流体供給情報収集系DS32は、流体供給系FLSの運転状態を検出する流体状態検出系(図1のDS2)を含む。
制御システムCS3のコントローラ343は次の3つの制御部を含む。
1.第1の制御部345
この制御部は、流体供給系FLSの静的な(つまり通常の)運転状態に関する情報に基づきスタック3の運転を制限するパラメータLpの値を設定し、その制限値Lpに従いスタック3の運転を制限する。これは、第1の実施の形態(図1)において運転制限部45と上限設定部47の静的制限値(Lp)設定機能部分とを組み合わせたものに相当する。
2.第2の制御部347
この制御部は、第1の制御部345で設定された制限値Lpを流体供給系FLSの動的な(つまり過度的な)運転状態に関する情報に基づき補正する処理(以下、「第1の補正」と呼ぶ。)を行うことにより、(第1の制御部345による)スタック3の運転制限を緩和する。これは、第1の実施の形態(図1)における上限設定部47の動的制限値(Lp)設定機能部分に相当する。
3.第3の制御部349
この制御部は、第2の制御部347で第1の補正がなされた制限値Lpを車両Vの運転状態に関する情報に基づき補正する処理(以下、「第2の補正」と呼ぶ。)を行うことにより、(第1の制御部345による)スタック3の運転制限の緩和を補完する。
なお、本実施の形態では、スタック3の運転を制限するパラメータとして、空気圧縮機7の吐出空気圧P2に許容される変動の範囲Rpの(所与条件下での)上限値Lpを用いるが、これと変換可能な他のパラメータ、例えば、吐出空気温度上限値Lt又は発電電力上限値Lgに置き換えても良い。
ここで、図19〜図21を参照し、燃料電池車両Vと燃料電池システム301との特殊な関係を説明する。
理解を容易にするため、駆動モータ19aの入力電流に対応して消費される電力E1をスタック3の出力電力EPとみなす(つまり、EP2≒0)。従って、スタック3は、モータ19aの駆動電流に対応した大きさの電力EPを出力することが要求される。
図19は、車両Vの駆動モータ19aの回転数KTと出力トルクTQとの関係(実線)、及び回転数KTと電力EPとの関係(破線)を示している。
モータ19aのトルクTQは、低速回転時に比較的安定して大きく、回転数KTの上昇に伴い漸減して、限界速度に至り出力不能となる。スタック3に要求される電力EPは、回転数KTが初速から上昇するに連れて増大し、中速域から高速域にかけて安定し、限界速度近くで急減する。
図20は、車両Vの低速域でアクセルペダル50を踏込んだ際に生じるアクセル開度AOの時間変化と、それに対応してメインモータ19aが要求する電力EP、並びに、空気圧縮機7の吐出空気の圧力P2及び温度T2の時間変化とを示す。一方、図21は、車両Vの中−高速域でアクセルペダル50を踏込んだ際に生じるにアクセル開度AOの時間変化と、それに対応してメインモータ19aが要求する電力EP、並びに、空気圧縮機7の吐出空気の圧力P2及び温度T2の時間変化とを示す。
図20及び図21に示されるように、アクセル開度AOは、踏込速度に対応した踏込時間tfで最大となり、その状態を維持する。
メインモータ19aがスタック3に要求する出力電力EPは、その立上げが、車両Vの中−高速域(図21)では緩勾配になり、低速域(図20)では急勾配になる。これに合わせ、吐出空気の圧力P2及び温度T2も、車両Vの中−高速域(図21)では比較的なだらかに立上がるが、低速域(図20)ではオーバーシュートして立上がる。
本実施の形態は、前記第1の制御部345によるスタック3の運転の制限を、前記第2の制御部347の「第1の補正」により緩和し、更に、この制限の緩和を、上記オーバーシュートの発生条件及び度合を考慮した前記第3の制御部349の「第2の補正」により補完して、オーバーシュートによる制限緩和の減殺分を補償する。
「第1の補正」による制限の緩和は、そのための補正係数(以下、「第1の補正係数」と呼ぶ。)k0を運転の制限のためのパラメータLpに乗じて行い、「第2の補正」による緩和の補完は、そのための補正係数(以下、「第2の補正係数」と呼ぶ。)kxを緩和された制限値Lpに乗じて行う。
第1及び第2の補正係数k0及びkxは、それぞれ、乗算単位(=1)に等しい基数部と、条件により変動する小数部との和として次のように表される:
k0 = 1(基数部) + x1(小数部)、
kx = 1(基数部) + x2(小数部)。
ここで、図22を参照し、第1の補正係数k0と、第2の補正係数kxとを説明する。
図22は、車両Vのメインモータ19aの回転数KTとメインモータ19aが要求する電力EPとの関係(破線)と、回転数KTと第1の補正係数k0との関係(点線)と、回転数KTと第2の補正係数kxとの関係(実線)とを示す。なお、この図22では、比較の便宜上、第1の補正係数k0の大きさを、第2の補正係数kxの基数部に合わせ、縮尺して示す。
第1の補正係数k0は、燃料電池システム301(より詳細には、流体供給系FLS)の運転状態を表す情報収集系DS32からの情報に依存した値を取るが、図22に示されるように、車両Vのメインモータ19aの回転数KTには依存しない。つまり、
k0 = 1 + x1(DS32からの情報に依存した少数値)。
なお、この小数部x1が零値の場合にも、補正係数k0は意味がある。つまり、流体供給系FLSの温度性能は決まっているので、小数部x1が小さいほど、第2の補正係数kxの自由度が増して、緩和の補完をより効果的に行え、x1=0は最も効果的な補完を許容する。
一方、第2の補正係数kxは、燃料電池システム301(より詳細には、流体供給系FLS)の運転状態には依存しないが、図22に示されるように、車両Vの運転状態を表すインフォメーションプロバイダIPからの情報(この場合、メインモータ19aの回転数KT)に依存した値を取る。つまり、
kx = 1 + x2(IPからの情報に依存した少数値)。
この補正係数kxも、その小数部x2が零値の場合に、意味を持つ。つまり、小数部x2が小さいほど、第1の補正係数k0の自由度が増して、制限の緩和をより効果的に行え、x2=0は最も効果的な緩和を許容する。
本実施の態様では、図22から明らかなように、第2の補正係数kxの小数部(x2)が、車両Vの低速域では所定の正値となり、低速域から中速域への過渡領域で単調減少し、中〜高速域で零値となる。
次に、図23を参照して、コントローラ343の制御フローを説明する。図23は第3の実施の形態に係る運転制限/緩和処理LRP3を示す制御フローチャートである。
図23に示すように、第3の実施の形態の制御フローは、ステップS0(図3)からステップS1へ進んで吸入空気温度T1を取得し、更にステップS2へ進んで大気圧P0を取得して、ステップS203(図17のLp設定処理)へ進み、ここで、吸入空気温度T1及び大気圧P0に基づき、吐出空気温度T2をその上限値Lt以下に維持すると推定される吐出空気圧力P2の静的な上限値Lpを演算して設定した後、ステップS304(基本的な緩和許否判定処理)へ進む。
ステップS304では、図5に示す緩和許否判定処理を行って、運転制限の緩和が可能でありそれを許可すべきか或いは不可能であり拒否すべきかを判定し、緩和許可フラグFAの値(1=許可、0=拒否)を設定する。
制御フローはステップS304からステップS5(緩和拒否判断)へ進み、ここで緩和許可フラグFAの値が1か0かを判断する。FA=1であれば、制御フロー(YES)がステップS5からステップS306(第1の補正処理)へ進み、FA=0であれば、制御フロー(NO)がステップS5からステップS208(図17の制限実行)へ進む。
ステップS306では、ステップS203で設定した吐出空気圧P2の静的な上限値Lpを、これに(図3のステップS6におけると同様)流体供給系FLSの現在の運転状態に対応した第1の補正係数k0を乗じることにより、動的な上限値Lpに補正する。これにより、Lpの値が緩和される(即ち、大きくなる)。制御フローはステップS306からステップS309(第2の補正処理)へ進む。
ステップS309では、ステップS306で制限を緩和した吐出空気圧P2の上限値Lpを、これに車両Vの現在の運転状態に対応した第2の補正係数kxを乗じることにより、更に補正する。これにより、運転制限の緩和が補完される(即ち、車両Vの運転状態に応じて制限値Lpが更に大きくなる)。制御フローはステップS309からステップS208(図17の制限実行)へ進む。
ステップS208では、現在の上限値Lp(つまり、FA=0[緩和拒否]なら静的Lp、FA=1[緩和許可]なら補完された動的Lp)に従い、P2≦Lpとなるようにスタック3の運転制限を行う。制御フローはステップS208からステップS7(図3)へ進む。
本実施の形態によれば、車両Vの発進又は低速走行時にアクセルペダル50を踏み、空気圧縮機7の吸入空気温度T1が低下して、第1の制御部345による運転の制限を緩和することが許可され、第2の制御部347が制限値Lpを緩和する際、その緩和を第3の制御部349が更に補完して、オーバーシュートによる制限緩和の減殺分を補償するので、制限の緩和をより効果的に遂行できる。
本実施の形態と第1又は第2の実施の形態若しくはその変更例とを適宜組み合わせることは差し支えない。
ここで、日本特願2003−112956号を参照することにより、その内容を本明細書に組込む。
以上、本発明の最適な実施の形態を説明したが、この説明は例示的なものであり、当業者であれば、本発明の請求の範囲又は精神を逸脱することなく、実施の態様を変更可能なことをここに記す。
本発明に係る燃料電池システムによれば、大気圧と空気圧縮機の吸入空気温度の検出値に基づき、空気圧縮機の吐出空気温度が上限値を超えないように、燃料電池スタックの運転を制限する一方、スタックの流体供給系又は車両の運転状態に応じて、スタックの運転制限を緩和し、状況に応じその緩和を補完しているので、スタックの過剰な運転制限を回避でき、スタックの出力性能を確保できる。
Claims (19)
- 水素を含む燃料ガスと酸素を含む酸化ガスとの供給を受けて発電する燃料電池と、
前記燃料電池に空気を供給する空気供給部と、
前記空気供給部が吸入する空気の温度を検出する吸入空気温度検出部と、
大気圧を検出する大気圧検出部と、
前記燃料電池の運転を制御する制御装置とを備えた燃料電池システムであって、
前記制御装置は、前記吸入空気温度検出部が検出した吸入空気温度と前記大気圧検出部が検出した大気圧とに基づいて、前記空気供給部が吐出する空気の温度が所定の上限値を超えないように前記燃料電池の運転を制限し、所定の状態においては前記運転の制限を緩和する運転制限部を備える
燃料電池システム。 - 前記制御装置は、前記吸入空気温度検出部が検出した吸入空気温度と前記大気圧検出部が検出した大気圧とに基づいて、前記空気供給部が吐出する空気の温度が所定の上限値を超えないように前記空気供給部の吐出圧力の上限値を設定する吐出圧力上限値設定部を備え、前記運転制限部は、前記吐出圧力の上限値を上回らないように前記空気供給部の吐出圧力を制御する請求項1に記載の燃料電池システム。
- 前記制御装置は、前記吐出圧力上限値設定部より求められた吐出圧力上限値に基づいて、燃料電池から取出し可能な上限電力あるいは上限電流を算出し、前記運転制限部はこの上限電力あるいは上限電流を上回らないように発電を制御する請求項2に記載の燃料電池システム。
- 前記空気供給部が吐出する空気の温度を検出する吐出空気温度検出部を備え、前記運転制限部は、前記吐出空気温度検出部が検出した吐出空気温度が所定値を上回らないように前記空気供給部を制御する請求項1に記載の燃料電池システム。
- 外気温度を検出する外気温度検出部と、吸入空気温度の変化を予測する吸入空気温度変化予測部とを備え、前記吸入空気温度検出部が検出した吸入空気温度が外気温度に対し所定量以上高く、かつ前記吸入空気温度変化予測部が吸入空気温度の低下を予測したときに、過渡的に運転の制限を緩和する請求項1に記載の燃料電池システム。
- 前記吸入空気温度変化予測部は、車両の停止または極低速の状態から発進または加速状態を検出する請求項5に記載の燃料電池システム。
- 前記空気供給部の吐出空気圧力が、所定の変化率以上で上昇しているときに、運転制限の緩和を拒否する請求項5に記載の燃料電池システム。
- 前記空気供給部の吸入空気温度が所定の経過時間で所定量以上低下しなかったときに、運転制限の緩和を拒否する請求項5に記載の燃料電池システム。
- 前記吐出空気温度の上限値は、前記空気供給部または燃料電池または燃料電池に供給する空気を加湿する加湿器のうち、最も耐熱温度が低いものに基づいて設定された温度である請求項1に記載の燃料電池システム。
- 前記運転制限の緩和は、前記空気圧縮機及びその下流の構成品の熱容量に基づき、前記構成品の温度が耐熱温度に上昇するまでの時間に対しなされる請求項2に記載の燃料電池システム。
- 前記運転制限の緩和は、前記空気圧縮機及びその下流の構成品の熱容量に基づき、前記構成品の温度が耐熱温度に上昇するまでの時間に対しなされる請求項4に記載の燃料電池システム。
- 前記運転制限の緩和は、制限された吐出空気圧力に対し時間定格として許される間、取出し電力あるいは電流を増加させる請求項3に記載の燃料電池システム。
- 酸化剤を含むユーティリティを供給する供給系と、
前記供給系から供給されたユーティリティを用いて発電する燃料電池と、
前記供給系を制御して前記燃料電池を運転するコントローラとを備えてなり、
前記コントローラは、
前記酸化剤の供給条件を制限する第1の制御部と、
前記供給系の運転状況に応じて前記供給条件の制限を緩和する第2の制御部と
を有する
燃料電池システム。 - 前記第1の制御部は前記供給条件を制限する制限値を有し、前記第2の制御部は前記制限値を補正することにより前記制限を緩和する請求項13に記載の燃料電池システム。
- 前記燃料電池を主電源とする移動体を備え、前記コントローラは、前記移動体の運転状況に応じて前記制限の緩和を補完する第3の制御部を有する請求項13に記載の燃料電池システム。
- 水素を含む燃料ガスと酸素を含む酸化ガスとの供給を受けて発電する燃料電池と、
前記燃料電池に空気を供給する空気供給手段と、
前記空気供給手段が吸入する空気の温度を検出する吸入空気温度検出手段と、
大気圧を検出する大気圧検出手段と、
前記燃料電池の運転を制御する制御装置とを備えた燃料電池システムであって、
前記制御装置は、前記吸入空気温度検出手段が検出した吸入空気温度と前記大気圧検出手段が検出した大気圧とに基づいて、前記空気供給手段が吐出する空気の温度が所定の上限値を超えないように前記燃料電池の運転を制限し、所定の状態においては前記運転の制限を緩和する運転制限手段を備える
燃料電池システム。 - 酸化剤を含むユーティリティを供給する供給系と、
前記供給系から供給されたユーティリティを用いて発電する燃料電池と、
前記供給系を制御して前記燃料電池を運転するコントローラとを備えてなり、
前記コントローラは、
前記酸化剤の供給条件を制限する第1の制御段手段と、
前記供給系の運転状況に応じて前記供給条件の制限を緩和する第2の制御手段と
を有する
燃料電池システム。 - 水素を含む燃料ガスと酸素を含む酸化ガスとの供給を受けて発電する燃料電池と、前記燃料電池に空気を供給する空気供給部と、前記空気供給部が吸入する空気の温度を検出する吸入空気温度検出部と、大気圧を検出する大気圧検出部と、前記燃料電池の運転を制御する制御装置とを備える燃料電池システムの制御方法であって、
前記吸入空気温度検出部が検出した吸入空気温度と前記大気圧検出部が検出した大気圧とに基づいで、前記空気供給部が吐出する空気の温度が所定の上限値を超えないように前記燃料電池の運転を制限し、所定の状態においては前記運転の制限を緩和する
燃料電池システムの制御方法。 - 酸化剤を含むユーティリティを供給する供給系と、前記供給系から供給されたユーティリティを用いて発電する燃料電池とを備え、前記供給系を制御して前記燃料電池を運転する燃料電池システムの制御方法であって、
前記酸化剤の供給条件を制限し、
前記供給系の運転状況に応じて前記供給条件の制限を緩和する
燃料電池システムの制御方法。
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