JPWO2004090926A1 - カラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法 - Google Patents
カラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JPWO2004090926A1 JPWO2004090926A1 JP2005505336A JP2005505336A JPWO2004090926A1 JP WO2004090926 A1 JPWO2004090926 A1 JP WO2004090926A1 JP 2005505336 A JP2005505336 A JP 2005505336A JP 2005505336 A JP2005505336 A JP 2005505336A JP WO2004090926 A1 JPWO2004090926 A1 JP WO2004090926A1
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- panel
- cleaning
- ray tube
- cathode ray
- regenerating
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Withdrawn
Links
Images
Classifications
-
- H—ELECTRICITY
- H01—ELECTRIC ELEMENTS
- H01J—ELECTRIC DISCHARGE TUBES OR DISCHARGE LAMPS
- H01J9/00—Apparatus or processes specially adapted for the manufacture, installation, removal, maintenance of electric discharge tubes, discharge lamps, or parts thereof; Recovery of material from discharge tubes or lamps
- H01J9/52—Recovery of material from discharge tubes or lamps
-
- Y—GENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
- Y02—TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
- Y02W—CLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES RELATED TO WASTEWATER TREATMENT OR WASTE MANAGEMENT
- Y02W30/00—Technologies for solid waste management
- Y02W30/50—Reuse, recycling or recovery technologies
- Y02W30/82—Recycling of waste of electrical or electronic equipment [WEEE]
Landscapes
- Engineering & Computer Science (AREA)
- Manufacturing & Machinery (AREA)
- Manufacture Of Electron Tubes, Discharge Lamp Vessels, Lead-In Wires, And The Like (AREA)
- Cleaning By Liquid Or Steam (AREA)
Abstract
カラー陰極線管パネルの内表面に形成されたグラファイト層と蛍光体層とを洗浄除去して前記パネルを再生するカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法であって、パネルの内表面を水洗浄して蛍光体層を除去し(ステップS1)、内表面からグラファイト層を除去するカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法において、グラファイト層の膜質を軟化させる剥離溶解剤で前記グラファイト層を洗浄し(ステップS2)、剥離溶解剤で膜質が軟化したグラファイト層を水洗浄して除去し(ステップS3)、剥離溶解剤が有機ポリホスホン酸化合物を含む。
Description
本発明はカラー陰極線管の構成部品であるパネルを再生処理する際に適用されるカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法に関する。
図3は、カラー陰極線管用パネルの構成を示す概略断面図である。カラー陰極線管は、パネルとファンネル等の部品から構成されている。パネル1はガラスからなり、図3に示すようにパネル1の内表面(有効面)に蛍光体層3がストライプ状あるいはドット状の所定のパターンによって形成されている。これらの蛍光体ストライプあるいはドットの隙間はグラファイト層2で黒く埋められて、いわゆるブラックマトリックスを構成している。
ところで、従来、カラー陰極線管の製造において、グラファイト層2および蛍光体層3からなる蛍光面を内表面に形成する時に不良が発生したパネル1は、一旦形成したグラファイト層2と蛍光体層3とを洗浄除去することによって、パネル1の内表面を再生し、再び蛍光面を形成する。
この場合、パネル1における内表面の平滑性を保持するために、パネル1を構成するガラスに物理的な衝撃を与えないように洗浄する必要がある。このような再生処理では、次のようなプロセスによってパネル1が再生洗浄されている。
図4は、従来のカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法の手順を示すフローチャートである。まず、パネル1の内表面を2.94×106(Pa)(30(kgf/cm2))以上から3.92×106(Pa)(40(kgf/cm2))以下程度の高圧純水で洗浄することにより、剥離し易い蛍光体層3をパネル1の内表面から予め除去する(ステップS91)。次いで、濃度が10重量%程度のフッ化水素酸を用いてパネル1の内表面を洗浄する(ステップS92)。この洗浄は、フッ化水素酸によりガラス面を腐食することにより、剥離が困難なグラファイト層2を確実に除去することを目的としている。その後、パネル1の内表面を工業用水で洗浄してパネル1の内表面に付着しているフッ化水素酸を除去する(ステップS93)。さらに、パネル1の内表面を純水で洗浄して、パネル1の内表面に付着したイオン性物質や塵等を洗い落とす(ステップS94)。最後に、再びパネル1の内表面を2.94×106(Pa)(30(kgf/cm2))以上3.92×106(Pa)(40(kgf/cm2))以下程度の高圧純水で洗浄することにより、パネル1の内表面に付着した残存異物を完全に除去する(ステップS95)。
しかしながら、上記した従来のカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法では、再生処理数によるフッ化水素酸の濃度の変動や、蛍光面を形成した後のパネルの放置時間の長さに伴って、パネル1の内表面とグラファイト層2との密着性が向上し、剥離がさらに困難になる。
図5は、従来のカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法によってパネルに発生したエッチング不良を示す図である。パネル1の内表面とグラファイト層2との密着性が向上し、剥離がさらに困難になると、図5に示すように、パネル1の内表面に凹凸が形成されるといったエッチング不良が発生するおそれがある。
すなわち、グラファイト層2の密着性が向上すると、パネル1の内表面にグラファイト層2が薄く残存してしまう。このため、フッ化水素酸を用いた処理の場合、グラファイト層2が残存している箇所と残存していない箇所とでフッ化水素酸によるガラス面の腐食速度が異なってしまうため、パネル1の内表面に凹凸が形成され、蛍光面を再形成することができない再生不適合品となるおそれがある。
さらに、フッ化水素酸は、刺激臭を有するとともに極めて毒性が強く、皮膚に触れると内部に浸透して、皮膚を著しく害するものである。しかもフッ化水素酸は、ガラスを溶解するものであり、取り扱いおよび管理に非常に注意を要する。また、フッ化水素酸は、特殊な処理が施されてから排水する必要があり、廃液処理コストの面からも不適切であった。したがって、フッ化水素酸を使用する設備が大掛かりなものになり、労働環境の安全上望ましくないものであった。
本発明の目的は、パネルの内表面にエッチング不良を発生させることなく、しかもフッ化水素酸を使用することなくカラー陰極線管用のパネルを再生洗浄することができるカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法を提供することにある。
ところで、従来、カラー陰極線管の製造において、グラファイト層2および蛍光体層3からなる蛍光面を内表面に形成する時に不良が発生したパネル1は、一旦形成したグラファイト層2と蛍光体層3とを洗浄除去することによって、パネル1の内表面を再生し、再び蛍光面を形成する。
この場合、パネル1における内表面の平滑性を保持するために、パネル1を構成するガラスに物理的な衝撃を与えないように洗浄する必要がある。このような再生処理では、次のようなプロセスによってパネル1が再生洗浄されている。
図4は、従来のカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法の手順を示すフローチャートである。まず、パネル1の内表面を2.94×106(Pa)(30(kgf/cm2))以上から3.92×106(Pa)(40(kgf/cm2))以下程度の高圧純水で洗浄することにより、剥離し易い蛍光体層3をパネル1の内表面から予め除去する(ステップS91)。次いで、濃度が10重量%程度のフッ化水素酸を用いてパネル1の内表面を洗浄する(ステップS92)。この洗浄は、フッ化水素酸によりガラス面を腐食することにより、剥離が困難なグラファイト層2を確実に除去することを目的としている。その後、パネル1の内表面を工業用水で洗浄してパネル1の内表面に付着しているフッ化水素酸を除去する(ステップS93)。さらに、パネル1の内表面を純水で洗浄して、パネル1の内表面に付着したイオン性物質や塵等を洗い落とす(ステップS94)。最後に、再びパネル1の内表面を2.94×106(Pa)(30(kgf/cm2))以上3.92×106(Pa)(40(kgf/cm2))以下程度の高圧純水で洗浄することにより、パネル1の内表面に付着した残存異物を完全に除去する(ステップS95)。
しかしながら、上記した従来のカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法では、再生処理数によるフッ化水素酸の濃度の変動や、蛍光面を形成した後のパネルの放置時間の長さに伴って、パネル1の内表面とグラファイト層2との密着性が向上し、剥離がさらに困難になる。
図5は、従来のカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法によってパネルに発生したエッチング不良を示す図である。パネル1の内表面とグラファイト層2との密着性が向上し、剥離がさらに困難になると、図5に示すように、パネル1の内表面に凹凸が形成されるといったエッチング不良が発生するおそれがある。
すなわち、グラファイト層2の密着性が向上すると、パネル1の内表面にグラファイト層2が薄く残存してしまう。このため、フッ化水素酸を用いた処理の場合、グラファイト層2が残存している箇所と残存していない箇所とでフッ化水素酸によるガラス面の腐食速度が異なってしまうため、パネル1の内表面に凹凸が形成され、蛍光面を再形成することができない再生不適合品となるおそれがある。
さらに、フッ化水素酸は、刺激臭を有するとともに極めて毒性が強く、皮膚に触れると内部に浸透して、皮膚を著しく害するものである。しかもフッ化水素酸は、ガラスを溶解するものであり、取り扱いおよび管理に非常に注意を要する。また、フッ化水素酸は、特殊な処理が施されてから排水する必要があり、廃液処理コストの面からも不適切であった。したがって、フッ化水素酸を使用する設備が大掛かりなものになり、労働環境の安全上望ましくないものであった。
本発明の目的は、パネルの内表面にエッチング不良を発生させることなく、しかもフッ化水素酸を使用することなくカラー陰極線管用のパネルを再生洗浄することができるカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法を提供することにある。
本発明に係るカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法は、グラファイト層と蛍光体層とが形成されたカラー陰極線管用パネルの内表面から前記蛍光体層を水洗浄して除去し、前記内表面から前記グラファイト層を除去して前記パネルを再生するカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法において、前記グラファイト層の膜質を軟化する剥離溶解剤で前記グラファイト層を洗浄し、前記剥離溶解剤で膜質が軟化した前記グラファイト層を水洗浄して前記内表面から除去し、前記剥離溶解剤が有機ポリホスホン酸化合物を含むことを特徴とする。
図1は、本実施の形態に係るカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法の手順を示すフローチャートである。
図2は、本実施の形態に係る蛍光体塗膜の剥離溶解剤の液温度と洗浄に要する時間との間の関係を示すグラフである。
図3は、カラー陰極線管用パネルの構成を示す概略断面図である。
図4は、従来のカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法の手順を示すフローチャートである。
図5は、従来のカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法によってパネルに発生したエッチング不良を示す図である。
図2は、本実施の形態に係る蛍光体塗膜の剥離溶解剤の液温度と洗浄に要する時間との間の関係を示すグラフである。
図3は、カラー陰極線管用パネルの構成を示す概略断面図である。
図4は、従来のカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法の手順を示すフローチャートである。
図5は、従来のカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法によってパネルに発生したエッチング不良を示す図である。
本実施の形態に係るカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法は、グラファイト層の膜質を軟化する剥離溶解剤でグラファイト層を洗浄し、剥離溶解剤が有機ポリホスホン酸化合物を含む。このため、剥離が困難なグラファイト層の膜質が有機ポリホスホン酸化合物を含む剥離溶解剤によって軟化するので、パネルに対するグラファイト層の物理的強度を弱めることができる。従って、物理的強度が弱められたグラファイト層を水洗浄することにより、従来技術のようにフッ化水素酸でパネル内表面を腐食することなく、グラファイト層をパネルの内表面から短時間で確実に除去することができる。その結果、不良が発生したカラー陰極線管用パネルを効率よく再生することができる。
この実施の形態では、前記剥離溶解剤は、有機酸アルカリ金属塩とアルカリ金属とをさらに含んでいることが好ましい。グラファイト層の物理的強度を、より一層弱めることができるからである。
前記有機ポリホスホン酸化合物は、ニトリロトリスメチレンホスホン酸アルカリ金属塩、エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸アルカリ金属塩、ヘキサメチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸アルカリ金属塩、フィチン酸アルカリ金属塩およびヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸アルカリ金属塩からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいることが好ましい。グラファイト層の物理的強度を、より一層弱めることができるからである。
前記有機酸アルカリ金属塩は、グリコール酸アルカリ金属塩、グルコン酸アルカリ金属塩、マレイン酸アルカリ金属塩、酒石酸アルカリ金属塩、シュウ酸アルカリ金属塩、クエン酸アルカリ金属塩およびコハク酸アルカリ金属塩からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいることが好ましい。グラファイト層の物理的強度を、より一層弱めることができるからである。
前記アルカリ金属は、カリウムおよびナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいることが好ましい。グラファイト層の物理的強度を、より一層弱めることができるからである。
前記剥離溶解剤は、界面活性剤をさらに含むことが好ましい。蛍光面全体に均一に剥離溶解剤を浸透させるためである。
前記界面活性剤は、フッ素系界面活性剤を含んでいることが好ましい。グラファイト層に残存した蛍光体層に有機ポリホスホン酸化合物が浸透し易くなるからである。
前記フッ素系界面活性剤は、フロロアルキルカルボン酸ナトリウム、パーフルオロアルキルスルホン酸ナトリウム、N−パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−(フルオロアルキルオキシ)−1−アルキルスルホン酸ナトリウム、3−(e−フルオロアルカノイル−N−エチルアミノ)−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキル−N−エチルスルホニルグリシン塩およびモノパーフルオロアルキルエチルリン酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいることが好ましい。グラファイト層に残存した蛍光体層に有機ポリホスホン酸化合物が浸透し易くなるからである。
前記界面活性剤は、非イオン界面活性剤を含んでいることが好ましい。グラファイト層を剥離する時間を短くするためである。
前記非イオン界面活性剤は、ポリオキシプロピレングリコールービスーヒドロキシエトキシポリオキシエチレンエーテルおよびエチレンジアミンN,N,N’,N’テトラ(ポリオキシプロピレングリコールヒドロキシエトキシポリオシエチレンエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいることが好ましい。グラファイト層を剥離する時間を短くするためである。
前記剥離溶解剤の液温度は、50℃以上80℃以下であることが好ましい。効率良く、短時間でパネルの内表面に対するグラファイト層の物理的強度を弱めることができる。
前記パネルの内表面へ前記剥離溶解剤を噴射することによって前記グラファイト層を洗浄することが好ましい。噴射のための設備は、量産ラインに設けることが容易だからである。
前記パネルの内表面を前記剥離溶解剤に浸漬することによって前記グラファイト層を洗浄することが好ましい。浸漬方法によれば、剥離溶解剤の必要な液量が最も少なくて済み、且つ洗浄目的範囲のグラファイト層に剥離溶解剤を確実に浸透させることができ、グラファイト層を確実に除去できる。
前記パネルの内表面へ超音波を放射しながら前記内表面を前記剥離溶解剤に浸漬することが好ましい。超音波というメカニカルな力によりグラファイト層を効率良く洗浄することができる。
前記剥離溶解剤を含ませた拭き部材によって前記パネルの内表面を擦りながら拭くことによって前記グラファイト層を洗浄することが好ましい。パネルの内表面を手作業で擦りながら拭くと、最も短時間でパネルの内表面の隅々まで確実に洗浄できる。
前記パネルの内表面を高圧水洗浄して前記蛍光体層を除去し、前記グラファイト層を高圧水洗浄して除去することが好ましい。高圧水で洗浄することにより、蛍光体層またはグラファイト層を確実に除去するためである。
前記パネルを回転させながら水洗浄して前記蛍光体層を除去し、前記パネルを回転させながら前記グラファイト層を水洗浄して除去することが好ましい。パネルを回転させると、パネルの全面をまんべんなく水洗浄して蛍光体層またはグラファイト層を確実に除去できるからである。
水を吹き出すノズルを揺動させながら前記蛍光体層を水洗浄して除去し、水を吹き出すノズルを揺動させながら前記グラファイト層を水洗浄して除去することが好ましい。ノズルを揺動させると、パネルの全面をまんべんなく水洗浄して蛍光体層またはグラファイト層を確実に除去できるからである。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本実施の形態に係るカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法の手順を示すフローチャートである。以下に、本発明に関するカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法を図1および図3を用いて詳細に説明する。図3に示すように、例えばストライプ状に形成されたグラファイト層2と蛍光体層3とを有するカラー陰極線管用パネルを再生洗浄するためには、まず図1に示すように、剥離溶解用の洗浄剤で処理する前に2.94×106(Pa)(30(kgf/cm2))以上3.92×106(Pa)(40(kgf/cm2))以下程度の高圧純水を用いてパネル1の内表面を予め洗浄することにより、パネル1の内表面との密着性が弱い蛍光体層3を除去する(ステップS1)。
このとき、パネル1を回転させるか、あるいは高圧水を吹き出すノズルを揺動させることにより、パネル1の全面に確実に高圧水を噴射できるようにする。また、高圧純水の温度としては、40℃以上から80℃以下程度の高温水が望ましいが、特に限定されるものではない。
次いで、図1に示すように、パネル1の内表面へ剥離溶解剤を噴射してパネル1の内表面を軽度に溶解しながら、かつ、グラファイト層2の膜質を軟化させることにより、ガラスを腐食することなくパネル1の内表面に対するグラファイト層2の物理的強度を十分に弱める(ステップS2)。
この剥離溶解剤の成分は、有機ポリホスホン酸化合物として、ニトリロトリスメチレンホスホン酸アルカリ金属塩、エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸アルカリ金属塩、ヘキサメチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸アルカリ金属塩、フィチン酸アルカリ金属塩、およびヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸アルカリ金属塩からなる群より選択される少なくとも1種であるものと、有機酸アルカリ金属塩として、グリコール酸アルカリ金属塩、グルコン酸アルカリ金属塩、マレイン酸アルカリ金属塩、酒石酸アルカリ金属塩、シュウ酸アルカリ金属塩、クエン酸アルカリ金属塩、およびコハク酸アルカリ金属塩からなる群より選択される少なくとも1種であるものと、アルカリ金属として、カリウム、ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種であるものと、界面活性剤として、フッ素系界面活性剤が、フロロアルキルカルボン酸ナトリウム、パーフルオロアルキルスルホン酸ナトリウム、N−パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−(フルオロアルキルオキシ)−1−アルキルスルホン酸ナトリウム、3−(e−フルオロアルカノイル−N−エチルアミノ)−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキル−N−エチルスルホニルグリシン塩およびモノパーフルオロアルキルエチルリン酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種であるものと、非イオン界面活性剤が、ポリオキシプロピレングリコール−ビス−ヒドロキシエトキシポリオキシエチレンエーテル、およびエチレンジアミンN,N,N’,N’テトラ(ポリオキシプロピレングリコールヒドロキシエトキシポリオシエチレンエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種を含有するものである。
このような成分を含有する剥離溶解剤によってグラファイト層2を洗浄するメカニズムを説明する。まず、界面活性剤の作用により蛍光面全体に均一に剥離溶解剤が浸透する。また、剥離溶解剤の有機酸アルカリ金属塩との反応によって、パネル1の内表面とグラファイト層2との間のプリコート層を加水分解させる。さらに、剥離溶解剤の有機酸アルカリ金属塩およびアルカリ金属との反応によって、パネル1の内表面を軽度に溶解し、且つグラファイト層2中の分散剤を分解してグラファイト層2の膜質を軟化させる。このような反応メカニズムのサイクルにより、パネル1に対するグラファイト層2の物理的強度が弱められる。
また、剥離溶解剤の組成(重量比)としては、例えば、次のものが好ましい。
1.有機ポリホスホン酸化合物 1.0〜24.0(重量%)
2.有機酸アルカリ金属塩 0.1〜 1.0(重量%)
3.アルカリ金属 0.1〜 6.0(重量%)
4.界面活性剤 0 〜 1.0(重量%)
5.脱イオン水 残余。
界面活性剤は、洗浄効率(濃度、時間、安定性、発泡抑制)をより向上させるためのサポート的な役割の添加剤であるので、界面活性剤が0重量%であっても、剥離溶解剤の組成を調整すれば本実施の形態の作用効果が得られる。
なお、本実施の形態では、以下の表1および表2の実施例1〜実施例7に示す組成で調製した剥離溶解剤を使用した。これらの実施例との比較のために表2の比較例に示す組成で調製した剥離溶解剤も使用した。
各組成の数値の単位は、重量%である。また、表1および表2の4.に示す「フタージェント100C」は、パーフルオロアルキルスルホン酸ナトリウムを意味する。「フタージェント100C」は、ネオス社の商品名である。
実施例1〜実施例7の組成で調整した剥離溶解剤でグラファイト層2を洗浄すると、パネル1に対するグラファイト層2の物理的強度が弱められ、水洗浄して内表面から剥離させ、除去することができた。表1および表2に示す完全剥離時間は、剥離溶解剤での洗浄時間と水洗浄時間との合計を示す。
これに対して、有機ポリホスホン酸化合物のヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸を含まない比較例の剥離溶解剤では、パネル1に対するグラファイト層2の物理的強度が弱まらず、60分を経過してもパネル内表面から剥離除去することができなかった。
図2は、本実施の形態に係る剥離溶解剤の液温度と洗浄に要する時間との間の関係を示すグラフである。
剥離溶解剤の液温度としては、図2に示すように、50℃以上から80℃以下程度の高温状態で処理することが、最も効率良く、短時間でパネル1の内表面に対するグラファイト層2の物理的強度を十分に弱めることができる。
なお、パネル1の内表面へ超音波を放射しながらパネル1の内表面を剥離溶解剤に浸漬することによってグラファイト層2を洗浄してもよい。また、剥離溶解剤を含ませた拭き部材によってパネル1の内表面を擦りながら拭くことによってグラファイト層2を洗浄してもよい。拭き部材には、例えばスポンジを用いることができる。
その後、図1に示すように、パネル1の内表面を2.94×106(Pa)(30(kgf/cm2))以上から3.92×106(Pa)(40(kgf/cm2))以下程度の高圧純水を用いて、水噴射させる方法で、剥離溶解剤により膜質が軟化したグラファイト層2を洗浄する(ステップS3)。このとき、パネル1を回転させるか、あるいは高圧水を吹き出すノズルを揺動させることにより、まんべんなく確実にパネル1の全面に高圧水を噴射することができるようにして、パネル1の内表面の残存付着物を完全に洗浄除去することができる。
このように、本実施の形態に係るパネル1の内表面の再生洗浄では、ガラスを腐食することなく、かつ、エッチング不良を発生させることなく、グラファイト層2および蛍光体層3を完全に除去することができる。また、高圧水洗浄との組み合わせにより、効率良く、短時間で、まんべんなく確実にパネル1の内表面を再生洗浄することができる。
このように、本実施の形態に係るカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法によれば、パネル1の内表面に形成されたグラファイト層2に剥離溶解剤を付与することにより、パネル1の内表面に対するグラファイト層2の物理的強度を十分に弱めることができる。そして、次の高圧水洗浄の工程により、グラファイト層2、および蛍光体層3の残存物を効率良く、短時間で、まんべんなく確実に洗浄除去することができ、パネルを再生することができる。しかも、本実施の形態ではガラスを腐食しない剥離溶解剤を使用するため、エッチング不良の発生を防止することができる。さらに、毒性の極めて強いフッ化水素酸を用いないため、作業環境の安全性を確保することができる。
以上のように本実施の形態によれば、グラファイト層2の膜質を軟化させる剥離溶解剤でグラファイト層2を洗浄する。このため、剥離が困難なグラファイト層2の膜質が剥離溶解剤によって軟化するので、パネル1に対するグラファイト層2の物理的強度を弱めることができる。従って、剥離溶解剤で膜質が軟化したグラファイト層2を水洗浄することにより、従来技術のようにフッ化水素酸でパネル内表面を腐食することなく、グラファイト層2をパネル1の内表面から短時間で確実に除去することができる。その結果、不良が発生したカラー陰極線管用パネルを効率よく再生することができる。
なお本実施の形態では、蛍光体層を水洗浄して除去した後、剥離溶解剤でグラファイト層を洗浄する例を示したが、本発明はこれに限定されない。蛍光体層とグラファイト層との双方を剥離溶解剤で洗浄してもよい。この場合は、剥離溶解剤の有機ポリホスホン酸化合物が、蛍光体層に含まれるポリマーおよび樹脂を分解する。
本発明は、本発明の精神および本質的な特徴を逸脱することなく他の特定の形態に具体化することができる。本願に開示された実施の形態は、あらゆる点において例示的に解釈されるべきであり、限定的に解釈されるべきではない。本発明の範囲は、前述した記載によってではなく、添付された請求の範囲によって示される。請求の範囲の意味内、および請求の範囲の均等の範囲内におけるすべての改変は、請求の範囲に包含されることが意図されている。
この実施の形態では、前記剥離溶解剤は、有機酸アルカリ金属塩とアルカリ金属とをさらに含んでいることが好ましい。グラファイト層の物理的強度を、より一層弱めることができるからである。
前記有機ポリホスホン酸化合物は、ニトリロトリスメチレンホスホン酸アルカリ金属塩、エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸アルカリ金属塩、ヘキサメチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸アルカリ金属塩、フィチン酸アルカリ金属塩およびヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸アルカリ金属塩からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいることが好ましい。グラファイト層の物理的強度を、より一層弱めることができるからである。
前記有機酸アルカリ金属塩は、グリコール酸アルカリ金属塩、グルコン酸アルカリ金属塩、マレイン酸アルカリ金属塩、酒石酸アルカリ金属塩、シュウ酸アルカリ金属塩、クエン酸アルカリ金属塩およびコハク酸アルカリ金属塩からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいることが好ましい。グラファイト層の物理的強度を、より一層弱めることができるからである。
前記アルカリ金属は、カリウムおよびナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいることが好ましい。グラファイト層の物理的強度を、より一層弱めることができるからである。
前記剥離溶解剤は、界面活性剤をさらに含むことが好ましい。蛍光面全体に均一に剥離溶解剤を浸透させるためである。
前記界面活性剤は、フッ素系界面活性剤を含んでいることが好ましい。グラファイト層に残存した蛍光体層に有機ポリホスホン酸化合物が浸透し易くなるからである。
前記フッ素系界面活性剤は、フロロアルキルカルボン酸ナトリウム、パーフルオロアルキルスルホン酸ナトリウム、N−パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−(フルオロアルキルオキシ)−1−アルキルスルホン酸ナトリウム、3−(e−フルオロアルカノイル−N−エチルアミノ)−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキル−N−エチルスルホニルグリシン塩およびモノパーフルオロアルキルエチルリン酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいることが好ましい。グラファイト層に残存した蛍光体層に有機ポリホスホン酸化合物が浸透し易くなるからである。
前記界面活性剤は、非イオン界面活性剤を含んでいることが好ましい。グラファイト層を剥離する時間を短くするためである。
前記非イオン界面活性剤は、ポリオキシプロピレングリコールービスーヒドロキシエトキシポリオキシエチレンエーテルおよびエチレンジアミンN,N,N’,N’テトラ(ポリオキシプロピレングリコールヒドロキシエトキシポリオシエチレンエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいることが好ましい。グラファイト層を剥離する時間を短くするためである。
前記剥離溶解剤の液温度は、50℃以上80℃以下であることが好ましい。効率良く、短時間でパネルの内表面に対するグラファイト層の物理的強度を弱めることができる。
前記パネルの内表面へ前記剥離溶解剤を噴射することによって前記グラファイト層を洗浄することが好ましい。噴射のための設備は、量産ラインに設けることが容易だからである。
前記パネルの内表面を前記剥離溶解剤に浸漬することによって前記グラファイト層を洗浄することが好ましい。浸漬方法によれば、剥離溶解剤の必要な液量が最も少なくて済み、且つ洗浄目的範囲のグラファイト層に剥離溶解剤を確実に浸透させることができ、グラファイト層を確実に除去できる。
前記パネルの内表面へ超音波を放射しながら前記内表面を前記剥離溶解剤に浸漬することが好ましい。超音波というメカニカルな力によりグラファイト層を効率良く洗浄することができる。
前記剥離溶解剤を含ませた拭き部材によって前記パネルの内表面を擦りながら拭くことによって前記グラファイト層を洗浄することが好ましい。パネルの内表面を手作業で擦りながら拭くと、最も短時間でパネルの内表面の隅々まで確実に洗浄できる。
前記パネルの内表面を高圧水洗浄して前記蛍光体層を除去し、前記グラファイト層を高圧水洗浄して除去することが好ましい。高圧水で洗浄することにより、蛍光体層またはグラファイト層を確実に除去するためである。
前記パネルを回転させながら水洗浄して前記蛍光体層を除去し、前記パネルを回転させながら前記グラファイト層を水洗浄して除去することが好ましい。パネルを回転させると、パネルの全面をまんべんなく水洗浄して蛍光体層またはグラファイト層を確実に除去できるからである。
水を吹き出すノズルを揺動させながら前記蛍光体層を水洗浄して除去し、水を吹き出すノズルを揺動させながら前記グラファイト層を水洗浄して除去することが好ましい。ノズルを揺動させると、パネルの全面をまんべんなく水洗浄して蛍光体層またはグラファイト層を確実に除去できるからである。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本実施の形態に係るカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法の手順を示すフローチャートである。以下に、本発明に関するカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法を図1および図3を用いて詳細に説明する。図3に示すように、例えばストライプ状に形成されたグラファイト層2と蛍光体層3とを有するカラー陰極線管用パネルを再生洗浄するためには、まず図1に示すように、剥離溶解用の洗浄剤で処理する前に2.94×106(Pa)(30(kgf/cm2))以上3.92×106(Pa)(40(kgf/cm2))以下程度の高圧純水を用いてパネル1の内表面を予め洗浄することにより、パネル1の内表面との密着性が弱い蛍光体層3を除去する(ステップS1)。
このとき、パネル1を回転させるか、あるいは高圧水を吹き出すノズルを揺動させることにより、パネル1の全面に確実に高圧水を噴射できるようにする。また、高圧純水の温度としては、40℃以上から80℃以下程度の高温水が望ましいが、特に限定されるものではない。
次いで、図1に示すように、パネル1の内表面へ剥離溶解剤を噴射してパネル1の内表面を軽度に溶解しながら、かつ、グラファイト層2の膜質を軟化させることにより、ガラスを腐食することなくパネル1の内表面に対するグラファイト層2の物理的強度を十分に弱める(ステップS2)。
この剥離溶解剤の成分は、有機ポリホスホン酸化合物として、ニトリロトリスメチレンホスホン酸アルカリ金属塩、エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸アルカリ金属塩、ヘキサメチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸アルカリ金属塩、フィチン酸アルカリ金属塩、およびヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸アルカリ金属塩からなる群より選択される少なくとも1種であるものと、有機酸アルカリ金属塩として、グリコール酸アルカリ金属塩、グルコン酸アルカリ金属塩、マレイン酸アルカリ金属塩、酒石酸アルカリ金属塩、シュウ酸アルカリ金属塩、クエン酸アルカリ金属塩、およびコハク酸アルカリ金属塩からなる群より選択される少なくとも1種であるものと、アルカリ金属として、カリウム、ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種であるものと、界面活性剤として、フッ素系界面活性剤が、フロロアルキルカルボン酸ナトリウム、パーフルオロアルキルスルホン酸ナトリウム、N−パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−(フルオロアルキルオキシ)−1−アルキルスルホン酸ナトリウム、3−(e−フルオロアルカノイル−N−エチルアミノ)−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキル−N−エチルスルホニルグリシン塩およびモノパーフルオロアルキルエチルリン酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種であるものと、非イオン界面活性剤が、ポリオキシプロピレングリコール−ビス−ヒドロキシエトキシポリオキシエチレンエーテル、およびエチレンジアミンN,N,N’,N’テトラ(ポリオキシプロピレングリコールヒドロキシエトキシポリオシエチレンエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種を含有するものである。
このような成分を含有する剥離溶解剤によってグラファイト層2を洗浄するメカニズムを説明する。まず、界面活性剤の作用により蛍光面全体に均一に剥離溶解剤が浸透する。また、剥離溶解剤の有機酸アルカリ金属塩との反応によって、パネル1の内表面とグラファイト層2との間のプリコート層を加水分解させる。さらに、剥離溶解剤の有機酸アルカリ金属塩およびアルカリ金属との反応によって、パネル1の内表面を軽度に溶解し、且つグラファイト層2中の分散剤を分解してグラファイト層2の膜質を軟化させる。このような反応メカニズムのサイクルにより、パネル1に対するグラファイト層2の物理的強度が弱められる。
また、剥離溶解剤の組成(重量比)としては、例えば、次のものが好ましい。
1.有機ポリホスホン酸化合物 1.0〜24.0(重量%)
2.有機酸アルカリ金属塩 0.1〜 1.0(重量%)
3.アルカリ金属 0.1〜 6.0(重量%)
4.界面活性剤 0 〜 1.0(重量%)
5.脱イオン水 残余。
界面活性剤は、洗浄効率(濃度、時間、安定性、発泡抑制)をより向上させるためのサポート的な役割の添加剤であるので、界面活性剤が0重量%であっても、剥離溶解剤の組成を調整すれば本実施の形態の作用効果が得られる。
なお、本実施の形態では、以下の表1および表2の実施例1〜実施例7に示す組成で調製した剥離溶解剤を使用した。これらの実施例との比較のために表2の比較例に示す組成で調製した剥離溶解剤も使用した。
各組成の数値の単位は、重量%である。また、表1および表2の4.に示す「フタージェント100C」は、パーフルオロアルキルスルホン酸ナトリウムを意味する。「フタージェント100C」は、ネオス社の商品名である。
実施例1〜実施例7の組成で調整した剥離溶解剤でグラファイト層2を洗浄すると、パネル1に対するグラファイト層2の物理的強度が弱められ、水洗浄して内表面から剥離させ、除去することができた。表1および表2に示す完全剥離時間は、剥離溶解剤での洗浄時間と水洗浄時間との合計を示す。
これに対して、有機ポリホスホン酸化合物のヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸を含まない比較例の剥離溶解剤では、パネル1に対するグラファイト層2の物理的強度が弱まらず、60分を経過してもパネル内表面から剥離除去することができなかった。
図2は、本実施の形態に係る剥離溶解剤の液温度と洗浄に要する時間との間の関係を示すグラフである。
剥離溶解剤の液温度としては、図2に示すように、50℃以上から80℃以下程度の高温状態で処理することが、最も効率良く、短時間でパネル1の内表面に対するグラファイト層2の物理的強度を十分に弱めることができる。
なお、パネル1の内表面へ超音波を放射しながらパネル1の内表面を剥離溶解剤に浸漬することによってグラファイト層2を洗浄してもよい。また、剥離溶解剤を含ませた拭き部材によってパネル1の内表面を擦りながら拭くことによってグラファイト層2を洗浄してもよい。拭き部材には、例えばスポンジを用いることができる。
その後、図1に示すように、パネル1の内表面を2.94×106(Pa)(30(kgf/cm2))以上から3.92×106(Pa)(40(kgf/cm2))以下程度の高圧純水を用いて、水噴射させる方法で、剥離溶解剤により膜質が軟化したグラファイト層2を洗浄する(ステップS3)。このとき、パネル1を回転させるか、あるいは高圧水を吹き出すノズルを揺動させることにより、まんべんなく確実にパネル1の全面に高圧水を噴射することができるようにして、パネル1の内表面の残存付着物を完全に洗浄除去することができる。
このように、本実施の形態に係るパネル1の内表面の再生洗浄では、ガラスを腐食することなく、かつ、エッチング不良を発生させることなく、グラファイト層2および蛍光体層3を完全に除去することができる。また、高圧水洗浄との組み合わせにより、効率良く、短時間で、まんべんなく確実にパネル1の内表面を再生洗浄することができる。
このように、本実施の形態に係るカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法によれば、パネル1の内表面に形成されたグラファイト層2に剥離溶解剤を付与することにより、パネル1の内表面に対するグラファイト層2の物理的強度を十分に弱めることができる。そして、次の高圧水洗浄の工程により、グラファイト層2、および蛍光体層3の残存物を効率良く、短時間で、まんべんなく確実に洗浄除去することができ、パネルを再生することができる。しかも、本実施の形態ではガラスを腐食しない剥離溶解剤を使用するため、エッチング不良の発生を防止することができる。さらに、毒性の極めて強いフッ化水素酸を用いないため、作業環境の安全性を確保することができる。
以上のように本実施の形態によれば、グラファイト層2の膜質を軟化させる剥離溶解剤でグラファイト層2を洗浄する。このため、剥離が困難なグラファイト層2の膜質が剥離溶解剤によって軟化するので、パネル1に対するグラファイト層2の物理的強度を弱めることができる。従って、剥離溶解剤で膜質が軟化したグラファイト層2を水洗浄することにより、従来技術のようにフッ化水素酸でパネル内表面を腐食することなく、グラファイト層2をパネル1の内表面から短時間で確実に除去することができる。その結果、不良が発生したカラー陰極線管用パネルを効率よく再生することができる。
なお本実施の形態では、蛍光体層を水洗浄して除去した後、剥離溶解剤でグラファイト層を洗浄する例を示したが、本発明はこれに限定されない。蛍光体層とグラファイト層との双方を剥離溶解剤で洗浄してもよい。この場合は、剥離溶解剤の有機ポリホスホン酸化合物が、蛍光体層に含まれるポリマーおよび樹脂を分解する。
本発明は、本発明の精神および本質的な特徴を逸脱することなく他の特定の形態に具体化することができる。本願に開示された実施の形態は、あらゆる点において例示的に解釈されるべきであり、限定的に解釈されるべきではない。本発明の範囲は、前述した記載によってではなく、添付された請求の範囲によって示される。請求の範囲の意味内、および請求の範囲の均等の範囲内におけるすべての改変は、請求の範囲に包含されることが意図されている。
本発明によれば、パネル内表面にエッチング不良を発生させることなく、しかもフッ化水素酸を使用することなくカラー陰極線管用のパネルを再生洗浄することができるカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法を提供することができる。
本発明はカラー陰極線管の構成部品であるパネルを再生処理する際に適用されるカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法に関する。
図3は、カラー陰極線管用パネルの構成を示す概略断面図である。カラー陰極線管は、パネルとファンネル等の部品から構成されている。パネル1はガラスからなり、図3に示すようにパネル1の内表面(有効面)に蛍光体層3がストライプ状あるいはドット状の所定のパターンによって形成されている。これらの蛍光体ストライプあるいはドットの隙間はグラファイト層2で黒く埋められて、いわゆるブラックマトリックスを構成している。
ところで、従来、カラー陰極線管の製造において、グラファイト層2および蛍光体層3からなる蛍光面を内表面に形成する時に不良が発生したパネル1は、一旦形成したグラファイト層2と蛍光体層3とを洗浄除去することによって、パネル1の内表面を再生し、再び蛍光面を形成する。
この場合、パネル1における内表面の平滑性を保持するために、パネル1を構成するガラスに物理的な衝撃を与えないように洗浄する必要がある。このような再生処理では、次のようなプロセスによってパネル1が再生洗浄されている。
図4は、従来のカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法の手順を示すフローチャートである。まず、パネル1の内表面を2.94×106(Pa)(30(kgf/cm2))以上から3.92×106(Pa)(40(kgf/cm2))以下程度の高圧純水で洗浄することにより、剥離し易い蛍光体層3をパネル1の内表面から予め除去する(ステップS91)。次いで、濃度が10重量%程度のフッ化水素酸を用いてパネル1の内表面を洗浄する(ステップS92)。この洗浄は、フッ化水素酸によりガラス面を腐食することにより、剥離が困難なグラファイト層2を確実に除去することを目的としている。その後、パネル1の内表面を工業用水で洗浄してパネル1の内表面に付着しているフッ化水素酸を除去する(ステップS93)。さらに、パネル1の内表面を純水で洗浄して、パネル1の内表面に付着したイオン性物質や塵等を洗い落とす(ステップS94)。最後に、再びパネル1の内表面を2.94×106(Pa)(30(kgf/cm2))以上3.92×106(Pa)(40(kgf/cm2))以下程度の高圧純水で洗浄することにより、パネル1の内表面に付着した残存異物を完全に除去する(ステップS95)。
しかしながら、上記した従来のカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法では、再生処理数によるフッ化水素酸の濃度の変動や、蛍光面を形成した後のパネルの放置時間の長さに伴って、パネル1の内表面とグラファイト層2との密着性が向上し、剥離がさらに困難になる。
図5は、従来のカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法によってパネルに発生したエッチング不良を示す図である。パネル1の内表面とグラファイト層2との密着性が向上し、剥離がさらに困難になると、図5に示すように、パネル1の内表面に凹凸が形成されるといったエッチング不良が発生するおそれがある。
すなわち、グラファイト層2の密着性が向上すると、パネル1の内表面にグラファイト層2が薄く残存してしまう。このため、フッ化水素酸を用いた処理の場合、グラファイト層2が残存している箇所と残存していない箇所とでフッ化水素酸によるガラス面の腐食速度が異なってしまうため、パネル1の内表面に凹凸が形成され、蛍光面を再形成することができない再生不適合品となるおそれがある。
さらに、フッ化水素酸は、刺激臭を有するとともに極めて毒性が強く、皮膚に触れると内部に浸透して、皮膚を著しく害するものである。しかもフッ化水素酸は、ガラスを溶解するものであり、取り扱いおよび管理に非常に注意を要する。また、フッ化水素酸は、特殊な処理が施されてから排水する必要があり、廃液処理コストの面からも不適切であった。したがって、フッ化水素酸を使用する設備が大掛かりなものになり、労働環境の安全上望ましくないものであった。
本発明の目的は、パネルの内表面にエッチング不良を発生させることなく、しかもフッ化水素酸を使用することなくカラー陰極線管用のパネルを再生洗浄することができるカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法を提供することにある。
本発明に係るカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法は、グラファイト層と蛍光体層とが形成されたカラー陰極線管用パネルの内表面から前記蛍光体層を水洗浄して除去し、前記内表面から前記グラファイト層を除去して前記パネルを再生するカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法において、前記グラファイト層の膜質を軟化する剥離溶解剤で前記グラファイト層を洗浄し、前記剥離溶解剤で膜質が軟化した前記グラファイト層を水洗浄して前記内表面から除去し、前記剥離溶解剤が有機ポリホスホン酸化合物を含むことを特徴とする。
本実施の形態に係るカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法は、グラファイト層の膜質を軟化する剥離溶解剤でグラファイト層を洗浄し、剥離溶解剤が有機ポリホスホン酸化合物を含む。このため、剥離が困難なグラファイト層の膜質が有機ポリホスホン酸化合物を含む剥離溶解剤によって軟化するので、パネルに対するグラファイト層の物理的強度を弱めることができる。従って、物理的強度が弱められたグラファイト層を水洗浄することにより、従来技術のようにフッ化水素酸でパネル内表面を腐食することなく、グラファイト層をパネルの内表面から短時間で確実に除去することができる。その結果、不良が発生したカラー陰極線管用パネルを効率よく再生することができる。
この実施の形態では、前記剥離溶解剤は、有機酸アルカリ金属塩とアルカリ金属とをさらに含んでいることが好ましい。グラファイト層の物理的強度を、より一層弱めることができるからである。
前記有機ポリホスホン酸化合物は、ニトリロトリスメチレンホスホン酸アルカリ金属塩、エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸アルカリ金属塩、ヘキサメチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸アルカリ金属塩、フィチン酸アルカリ金属塩およびヒドロキシエチリデンー1,1−ジホスホン酸アルカリ金属塩からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいることが好ましい。グラファイト層の物理的強度を、より一層弱めることができるからである。
前記有機酸アルカリ金属塩は、グリコール酸アルカリ金属塩、グルコン酸アルカリ金属塩、マレイン酸アルカリ金属塩、酒石酸アルカリ金属塩、シュウ酸アルカリ金属塩、クエン酸アルカリ金属塩およびコハク酸アルカリ金属塩からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいることが好ましい。グラファイト層の物理的強度を、より一層弱めることができるからである。
前記アルカリ金属は、カリウムおよびナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいることが好ましい。グラファイト層の物理的強度を、より一層弱めることができるからである。
前記剥離溶解剤は、界面活性剤をさらに含むことが好ましい。蛍光面全体に均一に剥離溶解剤を浸透させるためである。
前記界面活性剤は、フッ素系界面活性剤を含んでいることが好ましい。グラファイト層に残存した蛍光体層に有機ポリホスホン酸化合物が浸透し易くなるからである。
前記フッ素系界面活性剤は、フロロアルキルカルボン酸ナトリウム、パーフルオロアルキルスルホン酸ナトリウム、N−パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−(フルオロアルキルオキシ)−1−アルキルスルホン酸ナトリウム、3−(e―フルオロアルカノイルーN−エチルアミノ)−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルーN−エチルスルホニルグリシン塩およびモノパーフルオロアルキルエチルリン酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいることが好ましい。グラファイト層に残存した蛍光体層に有機ポリホスホン酸化合物が浸透し易くなるからである。
前記界面活性剤は、非イオン界面活性剤を含んでいることが好ましい。グラファイト層を剥離する時間を短くするためである。
前記非イオン界面活性剤は、ポリオキシプロピレングリコールービスーヒドロキシエトキシポリオキシエチレンエーテルおよびエチレンジアミンN,N,N’,N’テトラ(ポリオキシプロピレングリコールヒドロキシエトキシポリオシエチレンエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいることが好ましい。グラファイト層を剥離する時間を短くするためである。
前記剥離溶解剤の液温度は、50℃以上80℃以下であることが好ましい。効率良く、短時間でパネルの内表面に対するグラファイト層の物理的強度を弱めることができる。
前記パネルの内表面へ前記剥離溶解剤を噴射することによって前記グラファイト層を洗浄することが好ましい。噴射のための設備は、量産ラインに設けることが容易だからである。
前記パネルの内表面を前記剥離溶解剤に浸漬することによって前記グラファイト層を洗浄することが好ましい。浸漬方法によれば、剥離溶解剤の必要な液量が最も少なくて済み、且つ洗浄目的範囲のグラファイト層に剥離溶解剤を確実に浸透させることができ、グラファイト層を確実に除去できる。
前記パネルの内表面へ超音波を放射しながら前記内表面を前記剥離溶解剤に浸漬することが好ましい。超音波というメカニカルな力によりグラファイト層を効率良く洗浄することができる。
前記剥離溶解剤を含ませた拭き部材によって前記パネルの内表面を擦りながら拭くことによって前記グラファイト層を洗浄することが好ましい。パネルの内表面を手作業で擦りながら拭くと、最も短時間でパネルの内表面の隅々まで確実に洗浄できる。
前記パネルの内表面を高圧水洗浄して前記蛍光体層を除去し、前記グラファイト層を高圧水洗浄して除去することが好ましい。高圧水で洗浄することにより、蛍光体層またはグラファイト層を確実に除去するためである。
前記パネルを回転させながら水洗浄して前記蛍光体層を除去し、前記パネルを回転させながら前記グラファイト層を水洗浄して除去することが好ましい。パネルを回転させると、パネルの全面をまんべんなく水洗浄して蛍光体層またはグラファイト層を確実に除去できるからである。
水を吹き出すノズルを揺動させながら前記蛍光体層を水洗浄して除去し、水を吹き出すノズルを揺動させながら前記グラファイト層を水洗浄して除去することが好ましい。ノズルを揺動させると、パネルの全面をまんべんなく水洗浄して蛍光体層またはグラファイト層を確実に除去できるからである。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本実施の形態に係るカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法の手順を示すフローチャートである。以下に、本発明に関するカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法を図1および図3を用いて詳細に説明する。図3に示すように、例えばストライプ状に形成されたグラファイト層2と蛍光体層3とを有するカラー陰極線管用パネルを再生洗浄するためには、まず図1に示すように、剥離溶解用の洗浄剤で処理する前に2.94×106(Pa)(30(kgf/cm2))以上3.92×106(Pa)(40(kgf/cm2))以下程度の高圧純水を用いてパネル1の内表面を予め洗浄することにより、パネル1の内表面との密着性が弱い蛍光体層3を除去する(ステップS1)。
このとき、パネル1を回転させるか、あるいは高圧水を吹き出すノズルを揺動させることにより、パネル1の全面に確実に高圧水を噴射できるようにする。また、高圧純水の温度としては、40℃以上から80℃以下程度の高温水が望ましいが、特に限定されるものではない。
次いで、図1に示すように、パネル1の内表面へ剥離溶解剤を噴射してパネル1の内表面を軽度に溶解しながら、かつ、グラファイト層2の膜質を軟化させることにより、ガラスを腐食することなくパネル1の内表面に対するグラファイト層2の物理的強度を十分に弱める(ステップS2)。
この剥離溶解剤の成分は、有機ポリホスホン酸化合物として、ニトリロトリスメチレンホスホン酸アルカリ金属塩、エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸アルカリ金属塩、ヘキサメチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸アルカリ金属塩、フィチン酸アルカリ金属塩、およびヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸アルカリ金属塩からなる群より選択される少なくとも1種であるものと、有機酸アルカリ金属塩として、グリコール酸アルカリ金属塩、グルコン酸アルカリ金属塩、マレイン酸アルカリ金属塩、酒石酸アルカリ金属塩、シュウ酸アルカリ金属塩、クエン酸アルカリ金属塩、およびコハク酸アルカリ金属塩からなる群より選択される少なくとも1種であるものと、アルカリ金属として、カリウム、ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種であるものと、界面活性剤として、フッ素系界面活性剤が、フロロアルキルカルボン酸ナトリウム、パーフルオロアルキルスルホン酸ナトリウム、N−パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−(フルオロアルキルオキシ)−1−アルキルスルホン酸ナトリウム、3−(e―フルオロアルカノイルーN−エチルアミノ)−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキル−N−エチルスルホニルグリシン塩およびモノパーフルオロアルキルエチルリン酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種であるものと、非イオン界面活性剤が、ポリオキシプロピレングリコール−ビス−ヒドロキシエトキシポリオキシエチレンエーテル、およびエチレンジアミンN,N,N’,N’テトラ(ポリオキシプロピレングリコールヒドロキシエトキシポリオシエチレンエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種を含有するものである。
このような成分を含有する剥離溶解剤によってグラファイト層2を洗浄するメカニズムを説明する。まず、界面活性剤の作用により蛍光面全体に均一に剥離溶解剤が浸透する。また、剥離溶解剤の有機酸アルカリ金属塩との反応によって、パネル1の内表面とグラファイト層2との間のプリコート層を加水分解させる。さらに、剥離溶解剤の有機酸アルカリ金属塩およびアルカリ金属との反応によって、パネル1の内表面を軽度に溶解し、且つグラファイト層2中の分散剤を分解してグラファイト層2の膜質を軟化させる。このような反応メカニズムのサイクルにより、パネル1に対するグラファイト層2の物理的強度が弱められる。
また、剥離溶解剤の組成(重量比)としては、例えば、次のものが好ましい。
1.有機ポリホスホン酸化合物 1.0〜24.0(重量%)
2.有機酸アルカリ金属塩 0.1〜 1.0(重量%)
3.アルカリ金属 0.1〜 6.0(重量%)
4.界面活性剤 0 〜 1.0(重量%)
5.脱イオン水 残余。
2.有機酸アルカリ金属塩 0.1〜 1.0(重量%)
3.アルカリ金属 0.1〜 6.0(重量%)
4.界面活性剤 0 〜 1.0(重量%)
5.脱イオン水 残余。
界面活性剤は、洗浄効率(濃度、時間、安定性、発泡抑制)をより向上させるためのサポート的な役割の添加剤であるので、界面活性剤が0重量%であっても、剥離溶解剤の組成を調整すれば本実施の形態の作用効果が得られる。
なお、本実施の形態では、以下の表1および表2の実施例1〜実施例7に示す組成で調製した剥離溶解剤を使用した。これらの実施例との比較のために表2の比較例に示す組成で調製した剥離溶解剤も使用した。
各組成の数値の単位は、重量%である。また、表1および表2の4.に示す「フタージェント100C」は、パーフルオロアルキルスルホン酸ナトリウムを意味する。「フタージェント100C」は、ネオス社の商品名である。
実施例1〜実施例7の組成で調整した剥離溶解剤でグラファイト層2を洗浄すると、パネル1に対するグラファイト層2の物理的強度が弱められ、水洗浄して内表面から剥離させ、除去することができた。表1および表2に示す完全剥離時間は、剥離溶解剤での洗浄時間と水洗浄時間との合計を示す。
これに対して、有機ポリホスホン酸化合物のヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸を含まない比較例の剥離溶解剤では、パネル1に対するグラファイト層2の物理的強度が弱まらず、60分を経過してもパネル内表面から剥離除去することができなかった。
図2は、本実施の形態に係る剥離溶解剤の液温度と洗浄に要する時間との間の関係を示すグラフである。
剥離溶解剤の液温度としては、図2に示すように、50℃以上から80℃以下程度の高温状態で処理することが、最も効率良く、短時間でパネル1の内表面に対するグラファイト層2の物理的強度を十分に弱めることができる。
なお、パネル1の内表面へ超音波を放射しながらパネル1の内表面を剥離溶解剤に浸漬することによってグラファイト層2を洗浄してもよい。また、剥離溶解剤を含ませた拭き部材によってパネル1の内表面を擦りながら拭くことによってグラファイト層2を洗浄してもよい。拭き部材には、例えばスポンジを用いることができる。
その後、図1に示すように、パネル1の内表面を2.94×106(Pa)(30(kgf/cm2))以上から3.92×106(Pa)(40(kgf/cm2))以下程度の高圧純水を用いて、水噴射させる方法で、剥離溶解剤により膜質が軟化したグラファイト層2を洗浄する(ステップS3)。このとき、パネル1を回転させるか、あるいは高圧水を吹き出すノズルを揺動させることにより、まんべんなく確実にパネル1の全面に高圧水を噴射することができるようにして、パネル1の内表面の残存付着物を完全に洗浄除去することができる。
このように、本実施の形態に係るパネル1の内表面の再生洗浄では、ガラスを腐食することなく、かつ、エッチング不良を発生させることなく、グラファイト層2および蛍光体層3を完全に除去することができる。また、高圧水洗浄との組み合わせにより、効率良く、短時間で、まんべんなく確実にパネル1の内表面を再生洗浄することができる。
このように、本実施の形態に係るカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法によれば、パネル1の内表面に形成されたグラファイト層2に剥離溶解剤を付与することにより、パネル1の内表面に対するグラファイト層2の物理的強度を十分に弱めることができる。そして、次の高圧水洗浄の工程により、グラファイト層2、および蛍光体層3の残存物を効率良く、短時間で、まんべんなく確実に洗浄除去することができ、パネルを再生することができる。しかも、本実施の形態ではガラスを腐食しない剥離溶解剤を使用するため、エッチング不良の発生を防止することができる。さらに、毒性の極めて強いフッ化水素酸を用いないため、作業環境の安全性を確保することができる。
以上のように本実施の形態によれば、グラファイト層2の膜質を軟化させる剥離溶解剤でグラファイト層2を洗浄する。このため、剥離が困難なグラファイト層2の膜質が剥離溶解剤によって軟化するので、パネル1に対するグラファイト層2の物理的強度を弱めることができる。従って、剥離溶解剤で膜質が軟化したグラファイト層2を水洗浄することにより、従来技術のようにフッ化水素酸でパネル内表面を腐食することなく、グラファイト層2をパネル1の内表面から短時間で確実に除去することができる。その結果、不良が発生したカラー陰極線管用パネルを効率よく再生することができる。
なお本実施の形態では、蛍光体層を水洗浄して除去した後、剥離溶解剤でグラファイト層を洗浄する例を示したが、本発明はこれに限定されない。蛍光体層とグラファイト層との双方を剥離溶解剤で洗浄してもよい。この場合は、剥離溶解剤の有機ポリホスホン酸化合物が、蛍光体層に含まれるポリマーおよび樹脂を分解する。
本発明は、本発明の精神および本質的な特徴を逸脱することなく他の特定の形態に具体化することができる。本願に開示された実施の形態は、あらゆる点において例示的に解釈されるべきであり、限定的に解釈されるべきではない。本発明の範囲は、前述した記載によってではなく、添付された請求の範囲によって示される。請求の範囲の意味内、および請求の範囲の均等の範囲内におけるすべての改変は、請求の範囲に包含されることが意図されている。
本発明によれば、パネル内表面にエッチング不良を発生させることなく、しかもフッ化水素酸を使用することなくカラー陰極線管用のパネルを再生洗浄することができるカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法を提供することができる。
Claims (18)
- グラファイト層と蛍光体層とが形成されたカラー陰極線管用パネルの内表面から前記蛍光体層を水洗浄して除去し、
前記内表面から前記グラファイト層を除去して前記パネルを再生するカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法において、
前記グラファイト層の膜質を軟化する剥離溶解剤で前記グラファイト層を洗浄し、
前記剥離溶解剤で膜質が軟化した前記グラファイト層を水洗浄して前記内表面から除去し、
前記剥離溶解剤が有機ポリホスホン酸化合物を含むことを特徴とするカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法。 - 前記剥離溶解剤は、有機酸アルカリ金属塩とアルカリ金属とをさらに含む請求の範囲1記載のカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法。
- 前記有機ポリホスホン酸化合物は、ニトリロトリスメチレンホスホン酸アルカリ金属塩、エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸アルカリ金属塩、ヘキサメチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸アルカリ金属塩、フィチン酸アルカリ金属塩およびヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸アルカリ金属塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む請求の範囲1記載のカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法。
- 前記有機酸アルカリ金属塩は、グリコール酸アルカリ金属塩、グルコン酸アルカリ金属塩、マレイン酸アルカリ金属塩、酒石酸アルカリ金属塩、シュウ酸アルカリ金属塩、クエン酸アルカリ金属塩およびコハク酸アルカリ金属塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む請求の範囲2記載のカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法。
- 前記アルカリ金属は、カリウムおよびナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種を含む請求の範囲2記載のカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法。
- 前記剥離溶解剤は、界面活性剤をさらに含む請求の範囲2記載のカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法。
- 前記界面活性剤は、フッ素系界面活性剤を含む請求の範囲6記載のカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法。
- 前記フッ素系界面活性剤は、フロロアルキルカルボン酸ナトリウム、パーフルオロアルキルスルホン酸ナトリウム、N−パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−(フルオロアルキルオキシ)−1−アルキルスルホン酸ナトリウム、3−(e−フルオロアルカノイル−N−エチルアミノ)−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキル−N−エチルスルホニルグリシン塩およびモノパーフルオロアルキルエチルリン酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種を含む請求の範囲7記載のカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法。
- 前記界面活性剤は、非イオン界面活性剤を含む請求の範囲6記載のカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法。
- 前記非イオン界面活性剤は、ポリオキシプロピレングリコール−ビス−ヒドロキシエトキシポリオキシエチレンエーテルおよびエチレンジアミンN,N,N’,N’テトラ(ポリオキシプロピレングリコールヒドロキシエトキシポリオシエチレンエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種を含む請求の範囲9記載のカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法。
- 前記剥離溶解剤の液温度は、50℃以上80℃以下である請求の範囲1記載のカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法。
- 前記パネルの内表面へ前記剥離溶解剤を噴射することによって前記グラファイト層を洗浄する請求の範囲1記載のカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法。
- 前記パネルの内表面を前記剥離溶解剤に浸漬することによって前記グラファイト層を洗浄する請求の範囲1記載のカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法。
- 前記パネルの内表面へ超音波を放射しながら前記内表面を前記剥離溶解剤に浸漬する請求の範囲12記載のカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法。
- 前記剥離溶解剤を含ませた拭き部材によって前記パネルの内表面を擦りながら拭くことによって前記グラファイト層を洗浄する請求の範囲1記載のカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法。
- 前記蛍光体層を高圧水洗浄して除去し、
前記グラファイト層を高圧水洗浄して除去する請求の範囲1記載のカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法。 - 前記パネルを回転させながら前記蛍光体層を水洗浄して除去し、
前記パネルを回転させながら前記グラファイト層を水洗浄して除去する請求の範囲1記載のカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法。 - 水を吹き出すノズルを揺動させながら前記蛍光体層を水洗浄して除去し、
水を吹き出すノズルを揺動させながら前記グラファイト層を水洗浄して除去する請求の範囲1記載のカラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法。
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003106924 | 2003-04-10 | ||
JP2003106924 | 2003-04-10 | ||
PCT/JP2004/005211 WO2004090926A1 (ja) | 2003-04-10 | 2004-04-12 | カラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPWO2004090926A1 true JPWO2004090926A1 (ja) | 2006-07-06 |
Family
ID=33156926
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2005505336A Withdrawn JPWO2004090926A1 (ja) | 2003-04-10 | 2004-04-12 | カラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法 |
Country Status (2)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPWO2004090926A1 (ja) |
WO (1) | WO2004090926A1 (ja) |
Family Cites Families (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH0737509A (ja) * | 1993-07-24 | 1995-02-07 | Sony Corp | カラーブラウン管パネルの再生方法 |
JP2000225550A (ja) * | 1999-02-08 | 2000-08-15 | Mitsubishi Electric Corp | カラーブラウン管ガラスパネルの再生方法及び再生装置 |
JP2003213297A (ja) * | 2002-01-25 | 2003-07-30 | Katayama Kagaku Kogyo Kk | 蛍光体塗膜の剥離溶解用洗浄剤 |
-
2004
- 2004-04-12 JP JP2005505336A patent/JPWO2004090926A1/ja not_active Withdrawn
- 2004-04-12 WO PCT/JP2004/005211 patent/WO2004090926A1/ja active Application Filing
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
WO2004090926A1 (ja) | 2004-10-21 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP3441715B2 (ja) | 水性リンス組成物及びそれを用いた方法 | |
CN110449398B (zh) | 一种掩膜版精密再生工艺及其系统 | |
JP4952257B2 (ja) | 半導体製造装置用部材の洗浄用組成物及びそれを用いた洗浄方法 | |
KR101573778B1 (ko) | 모바일용 유리 기판의 재생 방법 | |
JPWO2004090926A1 (ja) | カラー陰極線管用パネルの再生洗浄方法 | |
CN110571134A (zh) | 一种挡板上钼及其氧化物的清洗工艺 | |
CN110459461A (zh) | 一种硅基底的清洗方法 | |
JP2002273358A (ja) | 光学素子の洗浄方法 | |
JP2003213297A (ja) | 蛍光体塗膜の剥離溶解用洗浄剤 | |
CN113414167A (zh) | 表面活性剂及其制备方法、陶瓷件清洗方法 | |
JP4055923B2 (ja) | Ito膜除去用組成物及びこれを用いたito膜除去方法 | |
JP5365031B2 (ja) | 半導体製造装置部品の洗浄方法 | |
JP2008153271A (ja) | 使用済み治具の洗浄方法および洗浄組成物 | |
JP4832825B2 (ja) | プラスチックレンズの製造方法 | |
JP4758725B2 (ja) | 洗浄剤 | |
JPH06187909A (ja) | ブラウン管用ガラスパネルの洗浄方法 | |
KR20080027610A (ko) | 스테인레스 스틸용 세정제 | |
US20030158057A1 (en) | Cleaning material of color cathode ray tube panel and the cleaning method using the same | |
JP5463740B2 (ja) | 研磨した石英ガラス基板の洗浄方法 | |
CN115029697A (zh) | 一种酸蚀液及其应用 | |
JP2001172054A (ja) | ガラス物品及びその製造方法 | |
JPH09118995A (ja) | 金属乾燥法 | |
KR20240054599A (ko) | 유리소재 회로기판의 디스플레이 모듈 제조방법 | |
JP3491656B2 (ja) | 金属の乾燥前処理剤および乾燥方法 | |
JPH1149533A (ja) | カラーフィルタ用ガラス基板の再生方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20070703 |