JPWO2004049074A1 - 湿式電子写真用記録シート - Google Patents
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Abstract
Description
電子写真印刷は可変情報を扱えるのがメリットであるが、オフセットやグラビア印刷は長年の技術蓄積により非常に高品質の印刷を、安価な価格で達成しているため、品質面、価格面では劣っていた。そのため、印刷機械、印刷用紙の両面から高画質化、高速化、省電力化、そして低コスト化へ向けた技術開発が一段と進められている。印刷物には、より高精細で、色再現性の良さが求められているが、これは高速化、低コスト化とは相反する部分があり、トナーや印刷機械の性能はもちろんのこと、電子写真用記録シートに関してもトナー定着性、転移性、色再現性、走行性など、さらに厳しい品質要望が集まっている。
このような電子写真印刷方式のうち、乾式電子写真方式は、事務用複写機などに代表される方式で、画像を形成するトナーは、顔料と合成樹脂からなる固体粉末トナーを使用する。画像形成の方法は、コロナ帯電によって発生させた静電画像にトナーを吸着させ、このトナーを被転写物に加熱圧着する方式で印刷を行う。ところが、この方式はトナーを微細化すると周辺環境に飛散しやすくなり、これを吸入した場合健康上の問題を起こすため作業環境の悪化、さらに印刷物を汚すなどの問題が生じる。このため固体粉末トナーを微細化するには限界があり、高解像度が得られにくい。さらには被転写物の厚さが不均一なことから、コロナ放電による被転写物面の電荷密度にばらつきが生じ、非画線部に、かぶりと呼ばれる好ましくない画像が生じたり、ある程度高い温度で溶融固化しなければならないなどの多くの問題がある。
一方、可変情報を扱える他の有望な印刷方式にはインクジェット方式がある。インクジェット方式は、細かなインク滴を被転写物表面に噴出し、画像を形成する方式である。近年の技術進歩は凄まじく、非常に高画質となり、弱点であった耐候性も顔料タイプのインクの出現により大幅に改善されてきた。しかし、オフセット印刷などと比べてしまうと、印刷速度が遅く、高画質を得るためには比較的高価な専用紙を使用しなければならないという問題がある。
そこで、オンデマンド印刷領域で、可変情報を扱え、高画質、高速、コストなどの条件を満たすことを考えた場合、各種印刷方式の中でも、湿式電子写真方式が最も有望な方式である。これは湿式電子写真方式が、液体媒体中にトナーを分散させるため、粉体の飛散などが問題とならず、乾式電子写真方式に比べてトナーを1/10以上まで微細化できること、すなわちドットを微細にできることに加えて、色材として顔料を使用できるために耐候性や耐水性の問題がないことなどの理由による。
湿式トナーは、ブランケットロールからシートに画像を転写するときに電荷などを利用しない。湿式トナーの印刷用シートの接着性がブランケットロールよりも高いことを利用して画像を転写させる。つまり、ブランケットロールからの湿式トナーの剥離能力が重要となり接着能力を必要以上に高くできない。
このため、湿式電子写真方式の印刷の場合、シートの種類によっては印刷をしても十分なトナー強度が得られなかったり、トナー粒子が十分にシートに転写しないと言う欠点がある。このような問題を解決するため、原紙中の灰分量を規定し、かつ表面にジルコニウムを塗布したり(例えば、特開平10−171146号公報)、表面平滑性とサイズ剤を工夫したりしている例がある(例えば、特開平10−171148号公報)。これらは、普通紙(非塗工)タイプの印刷用紙に対して有効である。
ところが、印刷用塗工シートの場合、上記手法は通用せず、また市販印刷用紙で湿式電子写真印刷方式に対し十分なトナー適性を持つ物は皆無である。この問題を解決するために、顔料やバインダーの種類とバインダーの配合量を規定することによって解決しようとしている例がある(例えば、特開平9−281739号公報)。しかし、実際には、湿式トナーの定着性や転移性はさまざまな物質が複雑に関係したシート表面の物理的、化学的性質に大きく左右されており、このような手法だけでトナー定着性および転移性の向上を充分成し遂げることは難しいといえる。
シートの種類を選ばずに湿式電子写真印刷適性を与えるための手段として、一般に知られている、サファイア処理と呼ばれている手段があるが、この手法はシートの作成において後工程を必要とするためコスト的に見合わない。また、経時でシートが黄色くなると言う欠点を持つ。
これらの問題を解決するために、塗工層表面の湿式トナーと相互作用できるエリアをコントロールすることによって湿式トナー適性をもった電子写真用記録シートの作成を達成させた例がある(例えば、特開2002−343237号公報)。しかし、この手法は、白紙光沢や印刷光沢を高める上で非常に有用な顔料である、プラスチック顔料を含む塗工層への適応が難しい。これは、プラスチック顔料が湿式トナーの接着樹脂成分との濡れ性に乏しく、比表面積に関わらず接着に関わることができないためである。このため、従来技術では、プラスチック顔料を含んだ塗工層を有する場合、塗工層表面を湿式トナーへの適性を持たすようにコントロールすることが難しかった。
そこで、本発明の目的は、湿式トナーを使った湿式電子写真方式を用いて印刷した際に、優れたトナー定着性および転移性を有する湿式電子写真用記録シートを提供するものである。
すなわち、第1の発明における湿式電子写真用記録シートは、シート状基板の少なくとも片面に1層以上の塗工層を設けた湿式電子写真用記録シートにおいて、下記数式1におけるM1が、M1≧25の条件を満たすことを特徴とするものである。
A:最上層の塗工層に用いる顔料の平均比表面積(m2/g)
S:前記湿式電子写真用シートのPPS平滑度(μmH20)
本発明において、上記数式1におけるM1が、M1≧40の条件を満たすことが好ましい。
また、本発明において、最上層の塗工量としては、5〜40g/m2であることが好ましい。
また、第2の発明における湿式電子写真用記録シートは、シート状基板の少なくとも片面に1層以上の塗工層を設けた湿式電子写真用記録シートにおいて、下記数式2のM2が、M2≧2.5の条件を満たすことを特徴とするものである。
A:最上層の塗工層に用いる顔料の平均比表面積(m2/g)
S:前記湿式電子写真用シートのPPS平滑度(μmH20)
X:最上層の塗工層に用いる顔料100質量部当たりのバインダー成分の質量部
本発明において、上記数式2におけるM2が、M2≧4の条件を満たすことが好ましい。
本発明において、数式2におけるA、S、Xは、それぞれ、A≧25、0.8≦S≦1.2、X≦10の条件を満たすことを特徴とする。
第3の発明における湿式電子写真用記録シートは、シート状基板の少なくとも片面に1層以上の塗工層を設けた湿式電子写真用記録シートにおいて、下記数式3におけるN1が、N1≧15の条件を満たすことを特徴とするものである。
B:最上層の塗工層に用いる無機顔料の平均比表面積(m2/g)
R:最上層の塗工層に用いる無機顔料の全顔料中の体積割合
T:前記湿式電子写真用シートのPPS平滑度(μmH20)
本発明において、上記数式3におけるN1が、N1≧20の条件を満たすことが好ましい。
また、本発明において、最上層の塗工量としては、5〜40g/m2であることが好ましい。
また、第4の発明における湿式電子写真用記録シートは、シート状基板の少なくとも片面に1層以上の塗工層を設けた湿式電子写真用記録シートにおいて、下記数式4のN2が、N2≧1.5の条件を満たすことを特徴とするものである。
B:最上層の塗工層に用いる無機顔料の平均比表面積(m2/g)
R:最上層の塗工層に用いる無機顔料の全顔料中の体積割合
T:前記湿式電子写真用シートのPPS平滑度(μmH20)
Y:前記電子写真用シートの最上層に用いる対顔料有効質量部数
本発明において、上記数式4におけるN2が、N2≧2.5の条件を満たすことが好ましい。
第5の発明における湿式電子写真用記録シートは、シート状基板の少なくとも片面に1層以上の塗工層を設けた湿式電子写真用記録シートにおいて、該塗工層中の顔料以外の材料の少なくとも1つが、湿式トナーの溶融樹脂成分と溶解度パラメーターの差が8以内であり、かつ塗工層固形分全体の0.5〜50.0質量%含有することを特徴とするものである。
上記本発明において、塗工層中の顔料以外の材料の少なくとも1つが、塗工層固形分全体の1.0〜15.0質量%であることが好ましい。
また、上記本発明において、塗工層中の顔料以外の材料の少なくとも1つが、湿式トナーの溶融樹脂成分と溶解度パラメーターの差が5以内であり、かつ塗工層固形分全体の1.5〜5.0質量%含有していることを特徴とすることが好ましい。
また、第6の発明における湿式電子写真用記録シートは、シート状基板の少なくとも片面に1層以上の塗工層を設けた湿式電子写真用記録シートにおいて、該塗工層中の接着剤成分の少なくとも1つが、湿式トナーの溶融樹脂成分と溶解度パラメーターの差が8以内であり、かつ接着剤成分全体の20〜100質量%使用していることを特徴とするものである。
上記本発明において、塗工層中の接着剤成分の少なくとも1つが、湿式トナーの溶融樹脂成分と溶解度パラメーターの差が5以内であり、かつ接着剤成分全体の30〜50質量%使用していることを特徴とすることが好ましい。
図2は、マット調のカオリンの塗工層表面を示す概略図である。
図3は、図1と同様のカレンダー処理をした重質炭酸カルシウムの塗工層表面を示す概略図である。
図4は、重質炭酸カルシウムのミクロな凹凸を示す概略図である。
[第1および第2の発明]
本発明者は、湿式電子写真方式におけるトナーの湿式電子写真用記録シートへの定着性および転移性について研究を重ねた結果、湿式トナーの定着性および転移性には他の印刷方式とは全く異なった塗工紙物性が必要であることを見いだした。
すなわち、塗工紙表面の顔料表面積が湿式トナーの定着性および転移性に大きく影響していることを見いだした。これは、顔料の比表面積を指標とすることができるが、顔料の比表面積と単純な比例関係にあるわけではない。
それは、湿式トナーと顔料との相互作用が塗工紙のごく表面だけで起こるためである。例えば、同じ顔料を使用している塗工紙でも、塗工紙のスーパーカレンダー処理の度合いによって、湿式トナーと相互作用できる表面積は大きく異なる(図1と図2)。例えば、図1は、グロス調のカオリンの塗工層表面を示す概略図である。図1では、カレンダー処理によってきれいに並んだカオリンの状態を表すが、この場合、上側の一部しか湿式トナーと相互作用することができない。一方、図2は、マット調のカオリンの塗工層表面を示す概略図であり、マット調のカオリンの塗工層表面を表すが、凸凹である分、湿式トナーと相互作用できる面積が多い上に、顔料間の隙間も図1に比べて多くなるので、塗工層表面に出ている部分は一層多くなる。また、カオリンと重質炭酸カルシウムでは配向性が異なるので同様のカレンダー処理をしていても、やはり湿式トナーと相互作用できる表面積は大きく異なる(図1と図3)。図3は、図1と同様のカレンダー処理をした重質炭酸カルシウムの塗工層表面を示す概略図である。図3では、図1と同様のカレンダー処理をした炭酸カルシウムの状態を表すが、顔料が不定型である分、図1の様に整列せず、湿式トナーと相互作用できる表面積が多くなっている。
湿式トナーの定着にとって重要な要因は、湿式トナーと接することのできる塗工層表面の顔料の表面積である。顔料と接した湿式トナーは、顔料との物理・化学的な相互作用によって顔料表面に吸着する。よって、図1より図2、図2より図3の方がトナーの定着にとって有利であるといえる。これらの状態を簡単に、幅広く表す測定方法にパーカープリントサーフ平滑度(本発明ではPPS平滑度と略すこととする。)がある。PPS平滑度は、顔料の表面状態および空隙性と密接な関係にあり、本発明において、問題とする塗工紙の表面顔料の状態を上手く表すことができる。
図4は、重質炭酸カルシウムのミクロな凹凸を示す概略図であり、炭酸カルシウムのナノレベルでの凹凸を表した模式図である。図4に示すとおり、顔料にはナノレベルの凹凸も多数存在し、これによって有効な表面積は大きく変化する。これを上手く表す指標には、顔料の比表面積がある。比表面積を用いれば、粒子径や多孔質性など湿式トナーの定着に関わる要因をまとめて考えることができる。ここで言う比表面積とはBET法で測定したものとする。
まず、第1、第2の発明における湿式電子写真用記録シートにおいて、PPS平滑度をSμmH20、比表面積をAm2/gとすると、湿式トナーと相互作用することのできる表面積指数M1は、下記数式1のように表すことができる。
ここで、M1≧25の条件を満たすように塗工紙を製造すると、湿式トナー定着性および転移性に優れた塗工紙を得ることができる。M1≧40を超えると、さらに優れた定着性および転移性を得ることができる。
湿式トナーを受理する最上層の塗工量は、5〜40g/m2塗工することによってシート状基材の表面を隙間なく覆うことができる。しかし、40g/m2を超えると塗工層の強度の問題が生じる。
ところで、塗工層には通常バインダー成分を加える。バインダー成分は、顔料の表面を覆い湿式トナーと顔料の相互作用を妨害する。プラスチック製のバインダーは特にこの妨害作用が強く、湿式電子写真用記録シートを製造する上で大きな問題となる。ゆえに、プラスチック製バインダーの配合量を考慮することによって、さらに優れた湿式電子写真用記録シートを得ることができる。
ここで、顔料100質量部に対するバインダー成分の配合量をX質量部として、バインダーによる被覆を考慮した、湿式トナーと相互作用することのできる顔料表面積指数M2は下記数式2のように表すことができる。
ここで、M2≧2.5を満たすように塗工紙を製造すると湿式トナー定着性および転移性に特に優れた塗工紙を得ることができ、さらに、M1≧4の条件を超えると極めて優れた定着性および転移性を得ることができる。
上記数式1、数式2を見ても分かるとおり、湿式電子写真用記録シートにおいては、いわゆるマットコート紙は比較的定着性および転移性に優れやすいが、光沢タイプにおいて優れた定着性および転移性を得ることが難しい。しかし、各パラメーターをA≧25、0.8≦S≦1.2、X≦10を満たすように設定することによって高い光沢を持ちながら、湿式トナーの定着性および転移性に優れた湿式電子写真用記録シートを得ることができる。
[第3および第4の発明]
本発明者は、湿式電子写真方式におけるトナーの湿式電子写真用記録シートへの定着性について研究を重ねた結果、湿式トナーの定着性には他の印刷方式とは全く異なった塗工紙物性が必要であることを見いだした。すなわち、塗工紙表面の顔料表面積が湿式トナーの定着性に大きく影響していることを見いだした。これは顔料の比表面積を指標とすることができるが、顔料の比表面積と単純な比例関係にあるわけではない。それは、湿式トナーと顔料との相互作用が塗工紙のごく表面だけで起こるためである。例えば、同じ顔料を使用している塗工紙でも、塗工紙のスーパーカレンダー処理の度合いによって、湿式トナーと相互作用できる表面積は大きく異なる。さらに詳しくは、上記図1〜図4で説明したとおりである。
ところが、プラスチック顔料は湿式トナーの接着樹脂成分との親和性が極めて乏しく、プラスチック顔料はトナーの定着にはほとんど関与しないのでこれを除いて考えなくてはならない。
ここで、PPS平滑度をTμmH20、無機顔料の平均体積割合をR、無機顔料の平均比表面積をBm2/gとすると、湿式トナーと相互作用することのできる表面積指数N1は数式3のように表すことができる。
ここで、N1≧15を満たすように塗工紙を製造すると湿式トナー定着性に優れた塗工紙を得ることができる。N1≧20を超えるとさらに優れた定着性を得ることができる。
なお、無機顔料の体積割合Rは比重を用いて計算する。ここで、dnは無機顔料nの比重、Znは顔料nの全顔料に対する配合率、dmはプラスチック顔料mの比重、Zmは顔料mの全顔料に対する配合率のようにおくと、下記数式5のように表すことができる。
例えば、炭酸カルシウム50質量%(比重2.7)、カオリン30質量%(比重2.7)、プラスチック顔料20質量%(比重1.0)の塗工層の場合、下記数式6のようになる。
湿式トナー受理層の塗工量は5g/m2以上塗工することによってシート状基材の表面を隙間なく覆うことができ、好ましくなる。しかし、40g/m2を超えると塗工層の強度の問題が生じる。5g/m2未満では、湿式トナーの受理ムラが発生する。
ところで、塗工層には通常バインダー成分を加える。バインダー成分は顔料の表面を覆い湿式トナーと顔料の相互作用を妨害する。プラスチック製のバインダーは特にこの妨害作用が強く、湿式電子写真用塗工紙を製造する上で大きな問題となる。ゆえに、プラスチック製バインダーの配合量を考慮することによって、さらに優れた湿式電子写真用塗工紙を得ることができる。
ここで、顔料に対するバインダー成分の有効質量部数をY部とすると、バインダーによる顔料の被覆を考慮した、湿式トナーと相互作用することのできる顔料表面積指数N2は下記数式4のように表すことができる。
ここで、N2≧1.5を満たすように塗工紙を製造すると湿式トナー定着性に特に優れた塗工紙を得ることができる。N2≧2.5を超えると極めて優れた定着性を得ることができる。
なお、顔料に対するバインダー成分の有効質量部数Yは顔料の比重を用いて下記数式7のように計算する。ここで、Xは顔料100質量部に対するバインダーの配合質量部数である。また、dnは顔料nの比重、Znは顔料nの全顔料に対する配合率のようにおく(Znは最大1とする)。
例えば、プラスチック中空顔料30質量部(配合率0.3、比重0.5)、炭酸カルシウム70質量部(配合率0.7、比重2.7)の時、顔料100質量部に対するバインダー15部の有効質量部数Yは下記数式8のようになる。
となる。
[第5および第6の発明]
本発明者は、湿式電子写真方式におけるトナーの湿式電子写真用記録シートへの定着性について研究を重ねた結果、湿式トナーの定着性や転移性には他の印刷方式とは全く異なった塗工紙物性が必要であることを見いだした。すなわち、塗工紙表面への湿式トナーへの濡れ性が定着性に大きく影響していることを見いだした。
これには、湿式トナーの接着機構が関わっている。湿式トナーの液体成分の大部分は石油系溶剤である。石油系溶剤は印刷時の熱による蒸発やシートへの吸収によって失われるので接着や転移には関与しない。接着や転移の主役になるのは接着剤として働く樹脂である。この樹脂はブランケットロールで画像を形成した段階でロールの熱によって溶融している。そしてシートと接触するとシートへ転移、固化、定着する。この作用がスムーズに働くためにはシート表面と溶融樹脂との相互作用が十分である必要がある。
シート表面と溶融樹脂の相互作用の高さには、シート表面と溶融樹脂との濡れ性が関わる。溶融した樹脂がシートのミクロな凹凸にスムーズに入り込むことが必要不可欠である。これによって両者の分子間相互作用が広い範囲で働き、つまりは、トナーがシートに十分に転写する。さらには溶融樹脂が固化した段階でアンカー効果が強く働きトナーの定着が十分に起こる。
通常、シートの塗工層の顔料成分への溶融樹脂の濡れ性は十分であるが、一般的な塗工層に含まれる他の配合物がこれを阻害する要因として働く。例えばプラスチック接着剤は溶融樹脂成分をはじき、ミクロな凹凸に入り込むのを阻害する。一方、澱粉のような多価水酸基はこういった阻害は起こしにくい。このような各種材料と溶融樹脂成分の濡れ性を判断する指標に溶解度パラメーターがある。略してSP値とも言う。溶解度パラメーターは、下記数式1で定義される各物質固有の量である。
塗工用シートの塗工層に代表的に用いられる材料のSP値を例示すると、水23.4、SBRラテックス8.0〜9.0、ポリスチレン9.1、でんぷん15〜16、ポリビニルアルコール(PVA)18.4、エチレンビニルアルコール(EVA)11〜13である。ただし、これらの値は修飾される官能基によって大きく変化する。例えば、エーテル14.5、エステル15.5、カルボニル19.6、アミン、21.1、アルコール26.7、アミド29.0、であり、これらの存在比によってSP値は大きく変化する。また、PVAはケン化度によって、変性澱粉や変性セルロースはその変性の仕方や度合いによってSP値が変化する。
湿式トナーの溶融樹脂成分として用いられる樹脂は、アミノ基やカルボキシル基を分子内に高い含有率で持つものが多く、そのSP値は20前後であることが多い。
物質間の溶解度パラメーターの値が近いほど先に述べた濡れ性は良くなる。離れるほど相溶性がなくなりはじくことになる。溶融樹脂成分のシート表面のミクロな凹凸へのスムーズな浸透を行わせるためには溶融樹脂成分の溶解度パラメーターの平均値と顔料以外の材料の溶解度パラメーターの差が8以内であることが好ましい。さらに好ましくは差が5以内であると良い。
顔料以外のすべての材料がこの範囲である必要はなく、塗工層の0.5〜50質量%以含まれているとよい。好ましくは1.0〜15.0質量%、さらに好ましくは1.5〜5.0である。0.5質量%を下回るとはじきがひどくなり、50質量%を上回ると塗工層の塗布段階で塗工液の粘度がひどく高くなり、塗布できないか、できても操業速度がひどく遅く、コストが高くなってしまう。さらには、顔料以外の成分が多すぎ、顔料の表面がほとんど露出しない状態となるので定着性や転移性が不適となる。浸透効果とシート製造操業性の最もバランスの取れた範囲が1.5〜5.0質量%である。溶解度パラメーターの差が5以内、含有量が1.5〜5.0質量%であることを同時に満たすとさらに高い効果が発現される。
ところで、塗工層内各種成分の中でも接着剤は、顔料の表面を覆うため、溶融樹脂成分のミクロな凹凸への浸透を阻害する効果が特に強い。この接着剤が溶解度パラメーターで溶融樹脂成分と差が8以内であると、湿式トナーへの適性がさらに高くなる。好ましくは5以内である。効果的な塗工層を得るためには接着剤成分全体の20〜100質量%がこの範囲であると良い。好ましくは30〜50質量%である。20質量%を下回った場合はさらに良いと特記するほどの効果は得られない。塗工層の強度や製造時の操業性を考えた場合は溶解度パラメーターの離れたプラスチック接着剤を用いることが好ましく、こういったバランスを考えた場合、接着剤成分の30〜50質量%が該当成分であるのが最もバランスの取れた範囲といえる。溶解度パラメーターの差が5以内、含有量が30〜50質量%であることを同時に満たすと最も高い効果が発現される。
湿式トナー受理層の塗工量は、5g/m2以上塗工することによってシート状基材の表面を隙間なく覆うことができ、好ましくなる。しかし、40g/m2を超えると塗工層の強度の問題が生じる。ゆえにこの範囲の塗工量の塗工層を最上層に設けることが本発明を有効に利用する上で重要となる。
上記各発明における湿式電子写真用記録シートについては、湿式電子写真用記録シートとしての使用に留まらず、乾式電子写真用記録シート、オフセット印刷用シート、インクジェット用シート、熱転写用シートなどの他の印刷方式に使用することもできる。
続いて、上記各発明における湿式電子写真用記録シートに共通する項目につき、以下に説明する。
本発明に用いられる湿式電子写真用記録シートの基材としては、木材パルプ、綿、麻、竹、サトウキビ、トウモロコシ、ケナフなどの植物繊維、羊毛、絹などの動物繊維、レーヨン、キュプラ、リヨセルなどのセルロース再生繊維、アセテートなどの半合成繊維、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリウレタン系繊維などの化学繊維、ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維などの無機繊維をシート状にしたもの、またはその上に樹脂フィルム層を設けたものが使用される。
各繊維をシート状にする製法としては、一般的な抄紙工程、湿式法、乾式法、ケミカルボンド、サーマルボンド、スパンボンド、スパンレース、ウォータージェット、メルトブロー、ニードルパンチ、ステッチブロー、フラッシュ紡糸、トウ開維などの各工程から一つ以上が適宜選ばれる。
また、これらの繊維には、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、二酸化チタン、水酸化アルミなどの各種填料、接着剤、サイズ剤、定着剤、歩留り剤、紙力増強剤などの各種配合剤を各工程、各素材に合わせて好適に配合する。
さらには、これらの繊維シートの上に樹脂コート層を設ける場合もある。
その他の基材としては、上質紙、中質紙、色上質、書籍用紙、キャスト用紙、微塗工紙、軽量コート紙、コート紙、アート紙、中質コート紙、グラビア用紙、インディア紙、コートアイボリー、ノーコートアイボリー、アートポスト、コートポスト、ノーコートカード、特板、コートボール、トレーシングペーパー、タイプ紙、PPC用紙、NIP用紙、連続伝票用紙、フォーム用紙、複写紙、ノーカーボン紙、感熱紙、インクジェット用紙、熱転写用紙、合成紙、などの紙や板紙、不織布、または各種樹脂やプラスチック、金属をフィルム状に成形したものも含まれる。
塗工する前の基材は、必要とする密度、平滑度、透気度を得るために各種表面処理やカレンダー処理を施す場合がある。
本発明において、塗工層に用いられる顔料は、特に限定されるものではなく、例えば、無機顔料としては、各種カオリン、タルク、重質炭酸カルシウム(粉砕炭酸カルシウム)などの精製した天然鉱物顔料、軽質炭酸カルシウム(合成炭酸カルシウム)、炭酸カルシウムと他の親水性有機化合物との複合合成顔料、サチンホワイト、リトポン、酸化チタン、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、焼成カオリンなど、有機顔料としては、プラスチック顔料などが挙げられる。
塗工液に用いられるバインダーとしては、天然植物から精製した澱紛、ヒドロキシエチル化澱粉、酸化澱紛、エーテル化澱紛、りん酸エステル化澱粉、酵素変性澱紛やそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉、デキストリン、マンナン、キトサン、アラビノガラクタン、グリコーゲン、イヌリン、ペクチン、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどの天然多糖類およびそのオリゴマーさらにはその変性体が挙げられる。
さらに、ガゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、コラーゲンなどの天然タンパク質およびその変性体、ポリ乳酸、ペプチドなどの合成高分子やオリゴマーが挙げられる。
加えて、スチレン−ブタジエン系、アクリル系、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニルなどの各種共重合体ラテックス、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ユリアまたはメラミン/ホルマリン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン/エピクロルヒドリンなどの水溶性合成物などが挙げられる。
これらは一種以上で使用することができる。この他、公知の天然、合成有機化合物を使用することは特に限定されない。
また、塗工液に用いられる増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ソーダ、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、ポリアクリル酸ソーダなどの水溶性高分子、ポリアクリル酸塩、スチレンマレイン酸無水共重合体などの合成重合体、珪酸塩などの無機重合体などが挙げられる。
また、必要に応じて、分散剤、消泡剤、耐水化剤、着色剤などの通常使用されている各種助剤、およびこれらの各種助剤をカチオン化したものが好適に用いられる。
本発明において、塗工層を塗工する方法は、特に限定されるものではなく、サイズプレス、ゲートロール、シムサイザーなどの各種フィルムトランスファーコーター、エアーナイフコーター、ロッドコーター、ブレードコーター、ダイレクトファウンテンコーター、スプレーコーター、キャストコーターなどの各方式を適宜使用する。
さらに、一連の操業で、塗工、乾燥された塗工紙は要求される、密度、平滑度、透気度、外観を得るために、必要に応じてカレンダー処理などの各種仕上げ処理が施される。
[第1の発明]
実施例1〜13および比較例1〜3
下記の配合にて、実施例1〜13および比較例1〜3の湿式電子写真用記録シートを作製した。
<原紙>
LBKP(濾水度330〜440mlcsf) 70部
NBKP(濾水度390〜490mlcsf) 30部
軽質炭酸カルシウム(*原紙中灰分で表示) *8部
市販カチオン化澱粉 1.0部
市販カチオン系ポリアクリルアミド歩留まり向上剤 0.03部
パルプ、内添薬品を上記の配合で調製し、坪量70g/m2の原紙を抄造した。
この原紙に対して、サイズプレスにより両面0.80g/m2の酸化澱粉を付着させ、塗工用原紙を得た。
<塗工液>
顔料の配合は表1に掲げた。その他の配合は以下のとおりである。
スチレンブタジエン系ラテックスバインダー
(平均粒子径100nm、ゲル含有量40%、Tg5℃) 10部
市販燐酸エステル化澱粉 3部
市販ポリアクリル酸系分散剤 適当量
市販カルボキシメチルセルロース系増粘剤(CMC) 0.1部
水酸化ナトリウムにてpH9.6に調整
上記の各種塗工液を調製し、ファウンテン/ブレードコーターを用いて表2に記載した塗工量により上記塗工用原紙に塗工し、スーパーカレンダー処理を施して湿式電子写真用記録シートを得た。
上記実施例1〜13および比較例1〜3により得られた湿式電子写真用記録シートについて、下記の測定方法により測定し、その評価結果を表2に掲げた。
1.印刷
湿式電子写真用転写機としてIndigo社製「E−print1000」を使って印刷を行った。評価に使用するための印刷画像としては、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各4色についてベタ印字部があるような画像を出力するようにした。ベタ印字部の印刷面積としては、最低でも一辺が3cm以上の四角形になるようにした。
上記で述べたように「E−print1000」によって印刷したブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色のベタ印刷部について以下のような定着評価を行った。
2.テープ剥離
印刷後、24時間経過した印刷サンプルに幅18mmのニチバン社製セロハン粘着テープ「セロテープ No.405」を各色の印刷部に貼りむらが無いように貼りつけ、180度剥離で約5mm/秒の速さでゆっくりとテープを剥がした。剥離後のトナーの紙への定着度合いを目視により判定し、以下の基準で5段階評価を行った。「△」以上を発明の対称とした。
◎:各色共にトナーが紙の上に大部分残っている。
○:各色共にトナーが残っているが、テープ剥離後の印刷部の印刷濃度が下がるのがわかる。
△:一部の色でトナーが紙から剥がれ、印刷部に白く抜けた部分がある。
×:各色共にトナーが紙から剥がれ、印刷部の白く抜けた部分が目立つ。
3.こすれ
こすれ評価は、JIS P8147「紙および板紙の摩擦係数試験方法」の水平法を応用した。各実施例および比較例について、水平板には、白紙の湿式電子写真用記録シートを取り付け、おもりには、上記の印刷機で印刷された印刷部がある該記録シートを取り付けた。そして、印刷部がある該転写紙をおもりに貼りつける場合、印刷部の印刷された面が、水平板に取り付けられた白紙の該記録シートと擦りあうようにした。
以上のように、試験片を水平板、おもりに貼りつけた後は、JIS P8147に記載されている条件でおもりを水平板の上で滑らせる。「摩擦試験」においては、一つの試験片の組み合わせで一度だけ、水平板上でおもりを滑らせるが、本評価においては、一つの試験片の組み合わせで50回、おもりを水平板の上で滑らせた。使用した試験片は印刷後24時間経過したものを使用した。
その後、おもりに取り付けられた印刷部を観察し、紙同士の擦れによるトナーの脱落度合いを観察した。印刷部のトナーの残り具合いを目視により判定し、以下の基準で4段階評価を行った。「△」以上を発明の対称とした。
◎:各色共に印刷部の濃度低下がほどんと認められない。
○:各色共にわずかながら印刷濃度が下がるのがわかる。
△:各色共に印刷濃度が下がるのがわかる。
×:各色共に印刷濃度が下がるのがわかり、部分的に白く抜けた部分がある。
4.消しゴム剥離
印刷後、24時間後に各色の印刷部を未使用消しゴム「トンボ鉛筆、PE−01A」の角を利用して、均一の力で5往復させた。往復後のトナーの紙への定着度合いを目視により判定し、以下の基準で4段階評価を行った。「○」以上を発明の対称とした。
◎:各色共にトナーが紙から剥離しない。
○:一部に紙から剥離するトナーが存在するが2割未満である。
△:5割未満でトナーが紙から剥がれ、一部に白く抜けた部分がある。
×:各色とも紙からトナーが容易に剥がれ、白く抜けた部分が目立つ。
5.転移性
湿式電子写真用転写機としてIndigo社製「E−print1000」を使って印刷を行った後、プリントクリーナーで掃除を行い、プリントクリーナーの汚れ方で転移性を判断した。「△」以上を発明の対象とした。
◎:全く汚れない。
○:ごく小さい汚れが付着する。
△:小さい汚れが付着する。
×:はっきりと汚れる。
6.白紙光沢
白紙光沢については、グロスメーターにて、光沢を75°−75°反射率で評価した。特に、A、S、Xが、それぞれ、A≧25、0.8≦S≦1.2、X≦10の条件を満す場合には、○以上を発明の対象とした。
○(良好) :70%以上
△(普通) :70%以下
<評価結果>
比較例1〜3のようにM1≧25を満たしていない塗工紙は湿式トナーに対して適性を持つことができない。一方、すべての実施例のようにM1≧25を満たした湿式電子写真用記録シートは湿式トナーに対して適性を持つ。実施例1、2と実施例3〜6を比べて分かるようにM1≧40を超えると更に良い湿式トナー適性を持つ。実施例7〜13を比較するとわかるように塗工量が4g/m2を下回ったり40g/m2を上回ったりすると、一部に好ましくない物性がでる。ゆえに、塗工量は5〜40g/m2であることが好ましい。
[第2の発明]
<塗工液>
顔料の配合およびバインダーの配合は表3に掲げた。バインダーにはスチレンブタジエン系ラテックスバインダー(平均粒子径100nm、ゲル含有量40質量%、Tg5℃)及び市販燐酸エステル化澱粉を使用した。その他の配合は以下の通りである。
市販ポリアクリル酸系分散剤 適当量
市販カルボキシメチルセルロース系増粘剤(CMC) 0.1部
水酸化ナトリウムにてpH9.6に調整
上記実施例14〜23により得られた湿式電子写真用記録シートについて、上記の測定方法により測定し、その評価結果を表4に掲げた。
<評価結果>
実施例14、15を比較するとわかるようにM1≧25に加えてM2≧2.5の値も規定値を満たすと非常によい湿式トナー適性を持つ。さらに、実施例16〜20のようにM2≧4.0を満たすと極めて良くなる。一方、実施例21〜23を比較するとわかるようにA≧25、0.8≦S≦1.2、X≦10を満たすことにより白紙光沢に優れた湿式電子写真用記録シートを得ることができる。
[第3の発明]
実施例24〜33および比較例4〜6
下記の配合にて、実施例24〜33および比較例4〜6の湿式電子写真用記録シートを作製した。
<原紙>
LBKP(濾水度330〜440mlcsf) 70部
NBKP(濾水度390〜490mlcsf) 30部
軽質炭酸カルシウム(*原紙中灰分で表示) *8部
市販カチオン化澱粉 1.0部
市販カチオン系ポリアクリルアミド歩留まり向上剤 0.03部
パルプ、内添薬品を上記の配合で調製し、坪量70g/m2の原紙を抄造した。
この原紙に対して、サイズプレスにより両面0.80g/m2の酸化澱粉を付着させ、塗工用原紙を得た。
<塗工液>
顔料の配合は表5に掲げた。その他の配合は以下のとおりである。
スチレンブタジエン系ラテックスバインダー
(平均粒子径100nm、ゲル含有量40%、Tg5℃) 10部
市販燐酸エステル化澱粉 3部
市販ポリアクリル酸系分散剤 適当量
市販カルボキシメチルセルロース系増粘剤(CMC) 0.1部
水酸化ナトリウムにてpH9.6に調整
上記の各種塗工液を調製し、ファウンテン/ブレードコーターを用いて表6に記載した塗工量により上記塗工用原紙に塗工し、スーパーカレンダー処理を施して湿式電子写真用記録シートを得た。
上記実施例24〜33および比較例4〜6により得られた湿式電子写真用記録シートについて、上述した測定方法により測定し、その評価結果を表6に掲げた。
<評価結果>
比較例4〜6のようにN1≧15を満たしていない塗工紙は湿式トナーに対して適性を持つことができない。一方、すべての実施例のようにN1≧15を満たした湿式電子写真用記録シートは湿式トナーに対して適性を持つ。実施例24、25と実施例26を比べて分かるようにN1≧20を超えるとさらに良い湿式トナー適性を持つ。実施例27〜33を比較するとわかるように塗工量が4g/m2を下回ったり40g/m2を上回ったりすると、一部に好ましくない物性がでる。ゆえに、塗工量は5〜40g/m2であることが好ましい。
[第4の発明]
<塗工液>
顔料の配合およびバインダーの配合は表7に掲げた。バインダーにはスチレンブタジエン系ラテックスバインダー(平均粒子径100nm、ゲル含有量40質量%、Tg5℃)及び市販燐酸エステル化澱粉を使用した。その他の配合は以下の通りである。
市販ポリアクリル酸系分散剤 適当量
市販カルボキシメチルセルロース系増粘剤(CMC) 0.1部
水酸化ナトリウムにてpH9.6に調整
上記実施例34〜40により得られた湿式電子写真用記録シートについて、上記の測定方法により測定し、その評価結果を表8に掲げた。
<評価結果>
実施例34、35を比較するとわかるようにN1≧15に加えてN2≧1.5の値も規定値を満たすと非常によい湿式トナー適性を持つ。さらに、実施例36〜40のようにN2≧2.5を満たすと極めて良い湿式電子写真用記録シートを得ることができる。
[第5の発明]
実施例41〜56および比較例7〜10
下記の配合にて、実施例41〜66および比較例7〜10の湿式電子写真用記録シートを作製した。
<原紙配合>
LBKP(濾水度330〜440mlcsf) 70部
NBKP(濾水度390〜490mlcsf) 30部
<内添薬品>
軽質炭酸カルシウム(*原紙中灰分で表示) *8部
市販カチオン化澱粉 1.0部
市販カチオン系ポリアクリルアミド歩留まり向上剤 0.03部
パルプ、内添薬品を上記の配合で調製し、坪量70g/m2の原紙を抄造した。
この原紙に対して、サイズプレスにより両面0.80g/m2の酸化澱粉を付着させ塗工用原紙を得た。
<塗工液の配合>
下記に表9に記載以外の配合を示す。その他に関しては表9のとおりである。溶媒は水またはエチルアルコール、およびそれらの混合溶媒を使用した。なお、分散剤やCMC、水酸化ナトリウムの溶解度パラメーターの値は量が少なく、影響がないものと仮定できる。
市販炭酸カルシウム顔料 100部
市販ポリアクリル酸系分散剤 適当量
市販スチレンブタジエン系ラテックス
(平均粒子径100nm、ゲル含有量40%、Tg5℃) 10部
市販カルボキシメチルセルロース系増粘剤(CMC) 0.01部
水酸化ナトリウムにてpH9.6に調整
上記の各種塗工液を調製し、ファウンテン/ブレードコーターで7g/m2の塗工量で塗工し、スーパーカレンダー処理を施して湿式電子写真用記録シートを得た。塗工時の塗工しやすさを官能的に評価した。「△」以上を発明の対象とした。
「◎」:調液後、非常にスムーズに塗工できる。
「○」:調液後、そのままスムーズに塗工できる。
「△」:調液後、何かしらの対策を行えば塗工る。
「×」:塗工不可能か、ほとんど塗工できない。
上記の実施例41〜56および比較例7〜10により得られた湿式電子写真用記録シートについて、上述した測定方法により測定し、その評価結果を表10に掲げた。なお、印刷に使用したインクの溶融樹脂成分の溶解度パラメーターの平均値は20である。
<評価結果>
比較例7、8のように湿式トナーの溶融樹脂成分の平均溶解度パラメーターとの差が8以内の溶解度パラメーターを持つ顔料以外の材料を既定値以上含まないと湿式トナー適性はほとんどない。それに対して、実施例41およびその他の実施例のように0.5質量%以上含むことによって湿式トナー適性が得られることがわかる。一方、実施例47および比較例10からわかるように、50質量%を超えると操業性がひどくなり、適性を持たなくなる。実施例42、43および45、46を比較してわかるように、該当化合物が1.5〜15.0質量%の範囲内であると好ましい結果が得られる。実施例44と比較例9から、溶解度パラメーターの差が8以上になると湿式トナー適性がなくなる。実施例48〜56を比較してわかるように、溶解度パラメーターの差が5以内、かつ1.5〜15質量%では、さらに好ましい結果を得る。
[第6の発明]
<塗工液の配合>
下記表11に記載以外の配合を示す。その他に関しては表11のとおりである。変性澱粉は、天然コーンスターチをDMF/無水酢酸/ピリジンによるアセチル化処理により各値の溶解度パラメーターのものを合成した。PVAなどは市販品(ケン化度100%)、プラスチック接着剤はスチレンブタジエン系ラテックス接着剤(平均粒子径100nm、ゲル含有量40%、Tg5℃)を使用。溶媒は水またはエチルアルコール、およびそれらの混合溶媒を使用した。なお、分散剤やCMC、水酸化ナトリウムの溶解度パラメーターの値は量が少なく、影響がないものと仮定できる。
市販炭酸カルシウム顔料 100部
市販ポリアクリル酸系分散剤 適当量
市販カルボキシメチルセルロース系増粘剤(CMC) 0.01部
水酸化ナトリウムにてpH9.6に調整
上記実施例により得られた湿式電子写真用記録シートについて、上述した測定方法により測定し、その評価結果を表12に掲げた。
<評価結果>
実施例57〜59を較べた場合、接着剤含有比率中の該当化合物の量が20質量%では好ましい結果が得られ、さらに、実施例60〜69のように該当化合物の接着剤含有比率が30〜50質量%、かつ溶解度パラメーターの差が5以内では特に優れた湿式トナー適性を有することがわかる。これらのように、本発明で規定するように湿式電子写真用記録シートを作製することにより、優れた結果が得られることがわかる。
Claims (16)
- 数式1におけるM1が、M1≧40の条件を満たすことを特徴とする請求項1記載の湿式電子写真用記録シート。
- 最上層の塗工量が、5〜40g/m2であることを特徴とする請求項1または2記載の湿式電子写真用記録シート。
- 数式2におけるM2が、M2≧4の条件を満たすことを特徴とする請求項4記載の湿式電子写真用記録シート。
- 数式2におけるA、S、Xが、それぞれ、A≧25、0.8≦S≦1.2、X≦10の条件を満たすことを特徴とする請求項4または5記載の湿式電子写真用記録シート。
- 数式3におけるN1が、N1≧20の条件を満たすことを特徴とする請求項7記載の湿式電子写真用記録シート。
- 最上層の塗工量が、5〜40g/m2であることを特徴とする請求項7または8記載の湿式電子写真用記録シート。
- 数式4におけるN2が、N2≧2.5の条件を満たすことを特徴とする請求項4記載の湿式電子写真用記録シート
- シート状基板の少なくとも片面に1層以上の塗工層を設けた湿式電子写真用記録シートにおいて、該塗工層中の顔料以外の材料の少なくとも1つが、湿式トナーの溶融樹脂成分と溶解度パラメーターの差が8以内であり、かつ塗工層固形分全体の0.5〜50.0質量%含有することを特徴とする湿式電子写真用記録シート。
- 塗工層中の顔料以外の材料の少なくとも1つが、塗工層固形分全体の1.0〜15.0質量%含有していることを特徴とする請求項12記載の湿式電子写真用記録シート。
- 塗工層中の顔料以外の材料の少なくとも1つが、湿式トナーの溶融樹脂成分と溶解度パラメーターの差が5以内であり、かつ塗工層固形分全体の1.5〜5.0質量%含有していることを特徴とする請求項12または13記載の湿式電子写真用記録シート。
- シート状基板の少なくとも片面に1層以上の塗工層を設けた湿式電子写真用記録シートにおいて、該塗工層中の接着剤成分の少なくとも1つが、湿式トナーの溶融樹脂成分と溶解度パラメーターの差が8以内であり、かつ接着剤成分全体の20〜100質量%使用していることを特徴とする請求項12〜14記載の湿式電子写真用記録シート。
- 塗工層中の接着剤成分の少なくとも1つが、湿式トナーの溶融樹脂成分と溶解度パラメーターの差が5以内であり、かつ接着剤成分全体の30〜50質量%使用していることを特徴とする請求項15記載の湿式電子写真用記録シート。
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