JP3871660B2 - 湿式電子写真用記録シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、湿式電子写真用記録シートに関するものであり、さらに詳しくは、シート状基材への塗工適性に優れ、湿式トナーを用いた湿式電子写真方式によるトナー定着性および転写性に優れた湿式電子写真用記録シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真方式を用いて印刷する用途は、端末PC用プリンター、ファックス、または複写機に留まらず、多品種小ロット印刷、可変情報印刷などを可能とする、いわゆる、オンデマンド印刷分野でも実用化が進み、技術的進展が目覚しい。近年では印刷速度向上に伴い、印刷部数が従来オフセット、グラビアなどの印刷でまかなわれていた領域に達しはじめた。
【0003】
電子写真印刷は可変情報を扱えるのがメリットであるが、オフセットやグラビア印刷は長年の技術蓄積により非常に高品質の印刷を、安価な価格で達成しているため、品質面、価格面では劣っていた。そのため、印刷機械、印刷用シートの両面から高画質化、高速化、省電力化、そして低コスト化へ向けた技術開発が一段と進められている。印刷物には、より高精細で、色再現性の良さが求められているが、これは高速化、低コスト化とは相反する部分があり、トナーや印刷機械の性能はもちろんのこと、電子写真用記録シートに関してもトナー定着性、転移性、色再現性、走行性など、さらに厳しい品質要望が集まっている。
【0004】
このような電子写真印刷方式のうち、乾式電子写真方式は、事務用複写機などに代表される方式で、画像を形成するトナーは、顔料と合成樹脂からなる固体粉末トナーを使用する。画像形成の方法は、コロナ帯電によって発生させた静電画像にトナーを吸着させ、このトナーを被転写物に加熱圧着する方式で印刷を行う。ところが、この方式はトナーを微細化すると周辺環境に飛散しやすくなり、これを吸入した場合健康上の問題を起こすため作業環境の悪化、さらに印刷物を汚すなどの問題が生じる。このため固体粉末トナーを微細化するには限界があり、高解像度が得られにくい。さらには被転写物の厚さが不均一なことから、コロナ放電による被転写物面の電荷密度にばらつきが生じ、非画線部に、かぶりと呼ばれる好ましくない画像が生じたり、ある程度高い温度で溶融固化しなければならないなどの多くの問題がある。
【0005】
一方、可変情報を扱える他の有望な印刷方式にはインクジェット方式がある。インクジェット方式は、細かなインク滴を被転写物表面に噴出し、画像を形成する方式である。近年の技術進歩は凄まじく、非常に高画質となり、弱点であった耐候性も顔料タイプのインクの出現により大幅に改善されてきた。しかし、オフセット印刷などと比べてしまうと、印刷速度が遅く、高画質を得るためには比較的高価な専用シートを使用しなければならないという問題がある。
【0006】
そこで、オンデマンド印刷領域で、可変情報を扱え、高画質、高速、コストなどの条件を満たすことを考えた場合、各種印刷方式の中でも、湿式電子写真方式が最も有望な方式である。これは湿式電子写真方式が、液体媒体中にトナーを分散させるため、粉体の飛散などが問題とならず、乾式電子写真方式に比べてトナーを1/10以上まで微細化できること、すなわち、ドットを微細にできることに加えて、色材として顔料を使用できるために耐候性や耐水性の問題がないことなどの理由による。
【0007】
湿式トナーは、ブランケットロールからシートに画像を転写するときに電荷などを利用しない。湿式トナーの印刷用シートの接着性がブランケットロールよりも高いことを利用して画像を転写させる。つまり、ブランケットロールからの湿式トナーの剥離能力が重要となり接着能力を必要以上に高くできない。
【0008】
このため、湿式電子写真方式の印刷の場合、印刷をしても十分なトナー強度が得られなかったり、トナー粒子が十分にシートに転写しないと言う欠点がある。このような問題を解決するため、原紙中の灰分量を規定し、かつ表面にジルコニウムを塗布したり(例えば、特許文献1参照。)、表面平滑性とサイズ剤を工夫したりしている(例えば、特許文献2参照。)例がある。これらは、普通紙(非塗工)タイプの印刷用紙に対して有効である。
【0009】
ところが、印刷用塗工シートの場合、上記手法は通用せず、また市販印刷用シートで湿式電子写真印刷方式に対し十分なトナー適性を持つ物は皆無である。この問題を解決するために、顔料やバインダーの種類とバインダーの配合量を規定することによって解決しようとしている例がある(例えば、特許文献3参照。)。しかし、実際には、湿式トナーの定着性や転写性はさまざまな物質が複雑に関係したシート表面の物理的、化学的性質に大きく左右されており、このような手法だけでトナー定着性および転移性の向上を充分成し遂げることは難しいといえる。事実、湿式トナーによる画像がブランケット胴に形成されシートに転写される間に2回転以上ブランケット胴が回転する印刷方式に対して十分適用可能な塗工シートは存在しなかった。
【0010】
また、このような湿式電子写真用印刷方式では、ロングランの印刷をしていくと非画像部にトナーの汚れが蓄積していく。この非画像部の汚れは、印刷の操業性を低下させるために非常に問題となるが、非画像部に汚れをためにくい塗工シートは未だ皆無であった。
【0011】
シートの種類を選ばずに湿式電子写真印刷適性を与えるための手段として、一般に知られている”サファイア処理”と呼ばれている手段があるが、この手法はシートの作成において後工程を必要とするためコスト的に見合わない。また、経時でトナー定着性が下がったり、シートが黄色くなるという欠点を持つ。
【0012】
これらの問題を解決するために、塗工層表面の湿式トナーと相互作用できるエリアをコントロールすることによって湿式トナー適性をもった電子写真用記録シートの作成を達成させた例がある(例えば、特願2002−343237号)。しかし、この手法では塗工適性が十分でないことがあった。
【0013】
【特許文献1】
特開平10−171146号公報
【特許文献2】
特開平10−171148号公報
【特許文献3】
特開平9−281739号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
今後の印刷物の高品位化を達成し、さらに高速印刷、後工程の操業性を考え合わせると、湿式トナーとの定着性に優れた湿式電子写真用記録シートは強く求められる。本発明の目的は、シート状基材への塗工適性に優れ、湿式トナーを用いた湿式電子写真方式によるトナー定着性および転写性に優れた湿式電子写真用記録シートを提供するものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の問題を解決すべく鋭意研究した結果、以下のような湿式電子写真用記録シートを発明するに至った。
【0016】
すなわち、本発明の湿式電子写真用記録シートは、シート状基材の少なくとも片面に1層以上の塗工層を設けた湿式電子写真用記録シートにおいて、該塗工層における接着剤成分の20質量%以上が鹸化度80%以上、平均重合度が100〜800のポリビニルアルコールであり、かつ顔料成分として3〜15質量%の有機顔料を含有し、他に炭酸カルシウムを70質量%以上含有することを特徴とするものである。
【0017】
本発明において、接着剤成分の40〜60質量%が、ポリビニルアルコールであることが好ましい。
【0018】
また、本発明において、ポリビニルアルコールの平均重合度が、180〜500であることが好ましい。
【0019】
また、本発明において、接着剤成分が、塗工層成分総量の5〜9質量%であることが好ましい。
【0021】
さらに、本発明において、炭酸カルシウムの95質量%以上が、2μm以下の粒子径を有することが好ましい。
【0022】
加えて、本発明において、湿式電子写真用記録シートが、湿式トナーによる画像がブランケット胴に形成され、該シートに転写される間に2回転以上ブランケット胴が回転する印刷方式に用いられることがより好ましい。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の湿式電子写真用記録シートについて、詳細に説明する。
【0024】
本発明者は、湿式電子写真方式における湿式電子写真用記録シートのトナー定着性について鋭意研究を重ねた結果、高い塗工適性を維持しながら湿式トナーの定着性および転写性を発揮するには、他の塗工シートとは全く異なった新たな塗工シート特性が必要であることを見いだした。すなわち、使用する材料を厳密に制御することによってこれらが達成されることを見いだした。
【0025】
湿式トナーと顔料との相互作用は塗工シートのごく表面だけで起こる。湿式トナーの定着にとって重要な要因は、湿式トナーと接することのできる塗工層表面の顔料の表面積である。顔料と接した湿式トナーは、顔料との物理・化学的な相互作用によって顔料表面に吸着する。ところで、塗工層には、通常、接着剤成分を加える。接着剤成分は顔料の表面を覆い、湿式トナーと顔料の相互作用を妨害する。プラスチック製のバインダーは特にこの妨害作用が強く、湿式電子写真用記録シートを製造する上で大きな問題となる。
【0026】
接着剤成分の中でも水酸基が十分に多いポリビニルアルコールは、湿式トナーの接着剤成分との相性が比較的良いため、顔料と湿式トナーの接着の妨害作用が小さい。ただし、妨害作用を十分小さくするためには鹸化度が80%以上であることが必要である。これは水酸基が湿式トナーの接着剤成分との相性が良いためである。
【0027】
よって、塗工層中の接着剤成分の20質量%以上に鹸化度が80%以上であるポリビニルアルコール(以下、単にポリビニルアルコールと略す。)を使用することで品質が向上する。効果をさらに発揮するには、40質量%以上であればよい。40質量%以下では効果が比較的小さく、20質量%以下では本発明に相当する効果とはならない。
【0028】
ここで言うポリビニルアルコールとは、慣用的にポリビニルアルコールと述べていくが、化学的には化学式1で示すように、(−CH2CH−)基にアルコール側鎖を主に含む構造を有している高分子化合物のことを指す。アルコール側鎖は間にリンカーが挟まる構造であっても、水酸基であっても、それらの混合であってもよい。また、主構造単位が上記構造であれば、他にいかなる構造を有していてもよい。
【0029】
【化1】
【0030】
また、ここで言う80%以上の鹸化度とは、ポリビニルアルコールの高分子式量中の30%以上が水酸基の式量であることと言い直すことができる。よって、上記で述べる量以上に水酸基が含有すれば、その製法によらず、すべて応用することができる。
【0031】
しかし、ポリビニルアルコールは粘度が高く、20質量%以上加えると塗工液の濃度を相当下げなければならず、塗工速度が下がる、必要塗工量が併せにくくなる、乾燥負荷が大きくなる、カレンダー不可が大きくなるなど、操業性に悪影響を及ぼす。しかし、重合度が100〜800の間のポリビニルアルコールを使用することでこれらの悪影響はほとんどなくなる。ポリビニルアルコールの接着剤に占める割合が60質量%以上であると、わずかながら操業性や塗工面の面質に悪影響がでるために、最も効果的であるのは40〜60質量%である。ポリビニルアルコールの操業性に与える悪影響をより小さくするにはポリビニルアルコールの重合度を180〜500の間にするとよい。
【0032】
このようなポリビニルアルコールは、例えば、日本合成化学社製のNL−05、NL−04、NL−04Lなどが挙げられる。
【0033】
しかし、いくらポリビニルアルコールが湿式トナーと相性がいいとはいえ、接着剤は顔料と湿式トナーの相互作用を妨害する存在には他ならないので、その含有量はできるだけ少ない方がよい。よって、接着剤全体の該塗工層中含有量を5〜9質量%の範囲内にすることにより、湿式トナーの定着性を向上させることができる。9質量%を超えたあたりから、湿式トナー定着性は比例的に下がっていく。また5質量%を下回ると塗工層に必要な強度を与えることが難しくなる。
【0034】
顔料は湿式トナーとの相性が比較的良いが、顔料の中でも炭酸カルシウムが最も良い。カオリンやタルクなどは相性が比較的悪く、シリカ、アルミナ、サチンホワイトなどは相性がよいが操業性を非常に悪くする。よって、炭酸カルシウムを顔料成分の70質量%以上にすることは効果的である。70質量%以下では効果が低くなる。
【0035】
さらに、炭酸カルシウムを微細化した方が湿式トナーと相互作用する面積が広がるのでよい。具体的には、炭酸カルシウムの95質量%以上を2μm以下の粒子径とすることが効果的である。
【0036】
ここで言う炭酸カルシウムは、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムなど主成分がCaCO3であれば種類を問わない。例えば、白石カルシウム社製のセタカーブ−HG、イメリスミネラルズジャパン社製のカービタル95、奥多摩工業社製のタマパールTP−121などが代表的なものとして挙げられる。
【0037】
ただし、このままでは炭酸カルシウムの含有量が多いので、顔料間に挟まる緩衝効果を示すものが少なく、ストリーク、石筍、凝集物によるフィルターの目詰まりなど、操業性に悪影響を及ぼす。よって、炭酸カルシウム以外の顔料成分に緩衝効果が高い有機顔料を顔料成分の3質量%以上加えることでこれらの悪影響を抑えることができる。ただし、有機顔料は、湿式トナーとほとんど相互作用を示さず、15質量%より多く加えると定着性に悪影響がでる。
【0038】
ここで言う有機顔料には、例えば、ロームアンドハース社製のHP−91、日本ゼオン社製のV1005が効果的なものとして挙げられる。
【0039】
泡立ちや潤滑効果などの目的で加える消泡剤や潤滑剤などの界面活性剤成分は顔料の表面に油膜を形成するので湿式トナーの定着に悪影響を及ぼす。よって、これらの総量での添加量は全体の1質量%以下にすることが好ましい。
【0040】
これらの手段を用いて製造した湿式電子写真用シートは、湿式トナーがブランケット胴に画像を形成してからシートに転写するまでの間に、ブランケット胴が2回転以上する印刷方式に適用すると、適用しないものに比べてより高い印刷適性を発揮することができる。このような印刷方式には、HP-indigo press w3200などのロール給紙タイプの印刷機が挙げられる。
【0041】
湿式トナー受理層の塗工量としては、5g/m2以上塗工することによってシート状基材の表面を隙間なく覆うことができ、好ましくなる。しかし、40g/m2を超えると塗工層の強度の問題が生じる。また、5g/m2未満では、湿式トナーの転写(受理)ムラが発生して好ましくない。
【0042】
本発明における湿式電子写真用記録シートは、湿式電子写真用記録シートとしての使用に留まらず、乾式電子写真用記録シート、オフセット印刷用シート、インクジェット用シート、熱転写用シートなどの他の印刷方式に使用することもできる。
【0043】
本発明に用いられる湿式電子写真用記録シートの基材としては、木材パルプ、綿、麻、竹、サトウキビ、トウモロコシ、ケナフなどの植物繊維、羊毛、絹などの動物繊維、レーヨン、キュプラ、リヨセルなどのセルロース再生繊維、アセテートなどの半合成繊維、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリビニールアルコール系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリウレタン系繊維などの化学繊維、ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維などの無機繊維をシート状にしたもの、またはその上に樹脂フィルム層を設けたものが使用される。
【0044】
各繊維をシート状にする製法としては、一般的な抄紙工程、湿式法、乾式法、ケミカルボンド、サーマルボンド、スパンボンド、スパンレース、ウォータージェット、メルトブロー、ニードルパンチ、ステッチブロー、フラッシュ紡糸、トウ開維などの各工程から一つ以上が適宜選ばれる。
【0045】
また、これらの繊維には、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、二酸化チタン、水酸化アルミなどの各種填料、バインダー、サイズ剤、定着剤、歩留り剤、紙力増強剤などの各種配合剤を各工程、各素材に合わせて好適に配合する。さらには、これらの繊維シートの上に樹脂コート層を設ける場合もある。
【0046】
その他の基材としては、上質紙、中質紙、色上質、書籍用紙、キャスト用紙、微塗工紙、軽量コート紙、コート紙、アート紙、中質コート紙、グラビア用紙、インディア紙、コートアイボリー、ノーコートアイボリー、アートポスト、コートポスト、ノーコートカード、特板、コートボール、トレーシングペーパー、タイプ紙、PPC用紙、NIP用紙、連続伝票用紙、フォーム用紙、複写紙、ノーカーボン紙、感熱紙、インクジェット用紙、熱転写用紙、合成紙、などの紙や板紙、不織布、または各種樹脂やプラスチック、金属をフィルム状に成形したものも含まれる。
【0047】
塗工する前の基材は、必要とする密度、平滑度、透気度を得るために各種表面処理やカレンダー処理を施す場合がある。
【0048】
本発明において、塗工層に用いられる顔料は、特に限定されるものではなく、例えば、各種カオリン、タルク、重質炭酸カルシウム(粉砕炭酸カルシウム)などの精製した天然鉱物顔料、軽質炭酸カルシウム(合成炭酸カルシウム)、炭酸カルシウムと他の親水性有機化合物との複合合成顔料、サチンホワイト、リトポン、酸化チタン、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、焼成カオリン、プラスチック顔料などが挙げられる。
【0049】
塗工液に用いられるバインダーとしては、天然植物から精製した澱紛、ヒドロキシエチル化澱粉、酸化澱紛、エーテル化澱紛、りん酸エステル化澱粉、酵素変性澱紛やそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉、デキストリン、マンナン、キトサン、アラビノガラクタン、グリコーゲン、イヌリン、ペクチン、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどの天然多糖類およびそのオリゴマーさらにはその変性体が挙げられる。
【0050】
さらに、ガゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、コラーゲンなどの天然タンパク質およびその変性体、ポリ乳酸、ペプチドなどの合成高分子やオリゴマーが挙げられる。
加えてスチレン−ブタジエン系、アクリル系、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニルなどの各種共重合体ラテックス、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ユリアまたはメラミン/ホルマリン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン/エピクロルヒドリンなどの水溶性合成物などがあげれれる。これらは一種以上で使用することができる。この他、公知の天然、合成有機化合物を使用することは特に限定されない。
【0051】
また、塗工液に用いられる増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ソーダ、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、ポリアクリル酸ソーダなどの水溶性高分子、ポリアクリル酸塩、スチレンマレイン酸無水共重合体などの合成重合体、珪酸塩などの無機重合体などが挙げられる。
【0052】
また、必要に応じて、分散剤、消泡剤、耐水化剤、着色剤などの通常使用されている各種助剤、およびこれらの各種助剤をカチオン化したものが好適に用いられる。
【0053】
本発明において、塗工層を塗工する方法は、特に限定されるものではなく、サイズプレス、ゲートロール、シムサイザーなどの各種フィルムトランスファーコーター、エアーナイフコーター、ロッドコーター、ブレードコーター、ダイレクトファウンテンコーター、スプレーコーター、キャストコーターなどの各方式を適宜使用する。
【0054】
さらに、一連の操業で、塗工、乾燥された塗工シートは要求される、密度、平滑度、透気度、外観を得るために、必要に応じてカレンダー処理などの各種仕上げ処理が施される。
【0055】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、実施例において示す「部」および「%」は、特に明示しない限り、質量部および質量%を示す。
【0056】
実施例1〜11、参考例1〜21、および比較例1〜6
下記の配合にて、実施例1〜11、参考例1〜21、および比較例1〜6の湿式電子写真用記録シートを作製した。
【0057】
<原紙>
LBKP(濾水度330〜440mlcsf) 70部
NBKP(濾水度390〜490mlcsf) 30部
軽質炭酸カルシウム(*原紙中灰分で表示) *8部
市販カチオン化澱粉 1.0部
市販カチオン系ポリアクリルアミド歩留まり向上剤 0.03部
パルプ、内添薬品を上記の配合で調整し、坪量70g/m2の原紙を抄造した。
【0058】
この原紙に対して、サイズプレスにより両面0.80g/m2の酸化澱粉を付着させ、塗工用原紙を得た。
【0059】
<塗工液>
顔料の配合は表1に、接着剤の配合は表2に掲げた。その他の配合は以下のとおりである。
市販ポリアクリル酸系分散剤 適当量
市販カルボキシメチルセルロース系増粘剤(CMC) 0.1部
水酸化ナトリウムにてpH9.6に調整
なお、表1中の重カル、軽カル、中空、密実、表2中のPVA、SBRとは以下の材料を指す。
重カル:市販重質炭酸カルシウム
軽カル:市販軽質炭酸カルシウム
中空:市販中空有機顔料
密実:市販密実型有機顔料
PVA:市販ポリビニルアルコール
SBR:市販スチレンブタジエン系ラテックスバインダー
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
上記の各種塗工液を調整し、ファウンテン/ブレードコーターを用いて各面15g/m2の塗工量により上記塗工用原紙に両面塗工し、スーパーカレンダー処理を施して湿式電子写真用記録シートを得た。
【0063】
上記実施例1〜11、参考例1〜21、および比較例1〜6により得られた湿式電子写真用記録シートについて、下記の測定方法により測定し、その評価結果を表3に掲げた。
【0064】
1.印刷
湿式電子写真用枚葉転写機として、HP社製「E−print1000」、巻き取り式印刷機として、HP社製「HP-indigo press w3200」を用いて評価を行った。評価に使用するための印刷画像としては、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各4色についてベタ印字部があるような画像を出力するようにした。ベタ印字部の印刷面積としては、最低でも一辺が3cm以上の四角形になるようにした。印刷したブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色のベタ印刷部について以下の2〜5のような定着評価を行った。なお、表の評価結果はこれらの評価結果を平均したものである。なお、平均評価結果の「△」以上を発明の対称とした。
【0065】
2.テープ剥離
枚葉式、巻き取り式共に、印刷後24時間経過した印刷サンプルに幅18mmのニチバン社製セロハン粘着テープ「セロテープ No.405」を各色の印刷部に貼りむらが無いように貼りつけ、180度剥離で約5mm/秒の速さでゆっくりとテープを剥がした。剥離後のトナーのシートへの定着度合いを目視により判定し、以下の基準で6段階評価を行った。
◎◎:各色全くトナーが剥離しない。
◎:各色共にトナーがシートの上に大部分残っている。
○:各色共にトナーが残っているが、テープ剥離後の印刷部の印刷濃度が下がるのがわかる。
△:一部の色でトナーがシートから剥がれ、印刷部に白く抜けた部分がある。
×:各色共にトナーがシートから剥がれ、印刷部の白く抜けた部分が目立つ。
××:印刷時にトナーがシートにきちんと転移しない(印刷サンプルが作成できない)。
【0066】
3.こすれ
こすれ評価は、JIS P8147「紙および板紙の摩擦係数試験方法」の水平法を応用した。各実施例および比較例について、水平板には、白紙の湿式電子写真用記録シートを取り付け、おもりには、上記の印刷機で印刷された印刷部がある該記録シートを取り付けた。そして、印刷部がある該記録シートをおもりに貼りつける場合、印刷部の印刷された面が、水平板に取り付けられた白紙の該記録シートと擦りあうようにした。
【0067】
以上のように、試験片を水平板、おもりに貼りつけた後は、JIS P8147に記載されている条件でおもりを水平板の上で滑らせる。「摩擦試験」においては、一つの試験片の組み合わせで一度だけ、水平板上でおもりを滑らせるが、本評価においては、一つの試験片の組み合わせで50回、おもりを水平板の上で滑らせた。使用した試験片は印刷後24時間経過したものを使用した。
【0068】
その後、おもりに取り付けられた印刷部を観察し、シート同士の擦れによるトナーの脱落度合いを観察した。印刷部のトナーの残り具合いを目視により判定し、以下の基準で6段階評価を行った。
◎◎:各色共に印刷部の濃度低下が全く認められない。
◎:各色共に印刷部の濃度低下がほどんと認められない。
○:各色共にわずかながら印刷濃度が下がるのがわかる。
△:各色共に印刷濃度が下がるのがわかる。
×:各色共に印刷濃度が下がるのがわかり、部分的に白く抜けた部分がある。
××:印刷時にトナーがシートにきちんと転移しない(印刷サンプルが作成できない)。
【0069】
4.消しゴム剥離
印刷後、24時間後に各色の印刷部を未使用消しゴム「トンボ鉛筆、PEー01A」の角を利用して、均一の力で5往復させた。往復後のトナーのシートへの定着度合いを目視により判定し、以下の基準で6段階評価を行った。
◎◎:各色共にトナーがシートから全く剥離しない。
◎:各色共にトナーがシートからほとんど剥離しない。
○:一部にシートから剥離するトナーが存在するが2割未満である。
△:5割未満でトナーがシートから剥がれ、一部に白く抜けた部分がある。
×:各色ともシートからトナーが容易に剥がれ、白く抜けた部分が目立つ。
××:印刷時にトナーがシートにきちんと転移しない(印刷サンプルが作成できない)。
【0070】
5.転移性
各印刷機で500部以上印刷を行った後、プリントクリーナーで掃除を行い、プリントクリーナーの汚れ方で転移性を判断した。
◎◎:全く汚れない。
◎:ほとんど汚れない。
○:ごく小さい汚れが付着する。
△:小さい汚れが付着する。
×:はっきりと汚れる。
××:印刷時にトナーがシートにきちんと転移しない(印刷サンプルが作成できない)。
【0071】
6.塗工適性
先に述べた配合で調液した各塗液をブレードコーターで塗布したときに、面質の良いサンプルを製造できる条件に従い、以下の基準で6段階評価した。
◎◎:塗工速度800m/min以上、ストリーク発生、1本/分以下。
◎:塗工速度800m/min以上、ストリーク発生、1本〜3本/分。
○:塗工速度500〜800m/min、ストリーク発生、1本〜3 本/分。
△:塗工速度300〜500m/min、ストリーク発生、1本〜3 本/分。
×:塗工速度300m/min以下。
××:塗工できない。
【0072】
7.塗工層強度
作成した湿式電子写真シートをTV20のオフセットインキを用いてRI印刷試験器で2回印刷し、剥け具合を目視で判断し、下記の基準で4段階評価した。
◎:塗工層がほとんど剥離しない。
○:塗工層が全体の5%以下の面積部分で剥離する。
△:塗工層が全体の5〜10%の面積部分で剥離する。
×:塗工層が全体の10%以上の面積部分で剥離する。
【0073】
【表3】
【0074】
<評価結果>
比較例1、4のようにポリビニルアルコールの鹸化度が80%を下回ると、湿式印刷適性が出ない。比較例1、2、5のようにポリビニルアルコールが接着剤成分の20質量%を下回る場合も同様である。一方、比較例1〜3のようにポリビニルアルコールの平均重合度が800を上回ると、塗工適性が出ない。また、ポリビニルアルコールの平均重合度が100を下回ると塗工層強度が出ない。それに対して、すべての実施例のように、鹸化度、平均重合度、対接着剤含有量が本発明の範囲に入ることによって、塗工適性、強度、印刷適性のすべてを満足させることができる。
【0075】
参考例1、2のようにポリビニルアルコールの鹸化度が80以上であれば印刷適性を満足する。参考例1、3〜7のように、ポリビニルアルコールの対接着剤含有量が20質量%以上であれば印刷適性を満足するが、40質量%以上である方がより高い印刷適性を得ることができる。ただ、60質量%を超えると塗工適性が下がるので、最も良い範囲は40〜60質量%となる。
【0076】
参考例1、8〜12のようにポリビニルアルコールの平均重合度が100〜800の範囲であれば、塗工層強度を満足させながら、塗工適性を満足させることができるが、参考例9、10のように塗工適性、強度のバランスを最も満足させる範囲は平均重合度180〜500である。
【0077】
参考例13〜15のように接着剤対塗工層含有量は5〜9質量%の範囲で印刷適性が最も高い。参考例1のようにこれを上回ると印刷適性が若干落ち、また参考例16のようにこれを下回ると強度が若干落ちる。
【0078】
実施例1〜5のように炭酸カルシウムの対顔料含有量が70質量%を超え、かつ有機顔料が3〜15質量%であると、印刷適性に悪影響を与えることなく、塗工適性を挙げることができる。実施例2、3のように有機顔料の種類は問わない。参考例17のように炭酸カルシウムの条件を満たすだけでは、塗工適性は上がらず、参考例18のように有機顔料の条件を満たすだけでは印刷適性が若干下がる。また、参考例20のように中空粒子が規定量を超えると、印刷適性が若干下がり、参考例19のように中空粒子が規定量以下では塗工適性が上がらない。実施例4、5のようにこれらの条件を満たしつつ、炭酸カルシウムの2μm以下の粒子の含有量が95%を超えると、さらに印刷適性を上げることができる。実施例6のようにこの効果は炭酸カルシウムの種類を問わないが、参考例21のように炭酸カルシウム以外の顔料では印刷適性が下がる。
【0079】
実施例7〜11のように本発明における好ましい条件を複合的にそろえることで塗工適性、印刷適性を非常に高いレベルで発揮することができる。
【0080】
比較例、実施例を見るとわかるように巻き取り式印刷適性は枚葉適性に比べ高いレベルを要求される。よって、本発明を本実施例で使用した巻き取り印刷機のような、湿式トナーによる画像がブランケット胴に形成されシートに転写される間に2回転以上ブランケット胴が回転する印刷方式に利用することは非常に効果があるといえる。
【0081】
【発明の効果】
以上の結果より、本発明の湿式電子写真用記録シートは、本発明で示す条件を満足させることで、シート状基材への塗工適性に優れ、湿式トナーを用いた湿式電子写真方式によるトナー定着性および転写性に優れた効果が得られる。
Claims (5)
- シート状基材の少なくとも片面に1層以上の塗工層を設けた湿式電子写真用記録シートにおいて、該塗工層における接着剤成分の20質量%以上が鹸化度80%以上、平均重合度が100〜800のポリビニルアルコールであり、かつ顔料成分として3〜15質量%の有機顔料を含有し、他に炭酸カルシウムを70質量%以上含有することを特徴とする湿式電子写真用記録シート。
- 接着剤成分の40〜60質量%が、ポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1記載の湿式電子写真用記録シート。
- ポリビニルアルコールの平均重合度が、180〜500であることを特徴とする請求項1または2記載の湿式電子写真用記録シート。
- 接着剤成分が、塗工層成分総量の5〜9質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の湿式電子写真用記録シート。
- 炭酸カルシウムの95質量%以上が、2μm以下の粒子径を有することを特徴とする請求項1記載の湿式電子写真用記録シート。
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