JPWO2004048327A1 - 環状アミン類の製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、イミド類を金属触媒存在下、水素還元することにより、該金属触媒が副生する水の影響を受けることのなく環状アミン類を収率よく製造できる工業的に有利な方法を提供する。イミド類を水溶性有機溶媒(特に、溶解度パラメーター8〜11.5の水溶性有機溶媒)中、金属触媒存在下、水素還元して環状アミン類を製造する。また、本発明は、イミド類を金属触媒存在下、有機溶媒中で、水素還元して環状アミン類を製造するに際し、該金属触媒が副生する水の影響を受けることなく、且つ立体保持性よく環状アミン類を工業的に有利に製造する方法を提供する。イミド類を金属触媒存在下、有機溶媒中で、水素還元して環状アミン類を製造するに際し、生成水及び該環状アミンを連続的に又は間欠的に抜き出しながら水素還元反応を行う。さらに、本発明は、トランス−オクタヒドロイソインドールを立体異性化することによりシス−オクタヒドロイソインドールを工業的に有利に製造できる方法を提供する。トランス−オクタヒドロイソインドールを金属触媒存在下、反応温度150〜350℃、水素分圧0.001〜30MPaで立体異性化する。

Description

本発明は、環状アミン類の製造方法に関する。本発明の製造方法によって得られる環状アミン類は、染料、農薬、医薬等の製造中間体として用いられる。
また、本発明は、シス−オクタヒドロイソインドールの製造方法に関する。本発明の製造方法によって得られるシス−オクタヒドロイソインドールは、糖尿病治療薬として重要なベンジルコハク酸誘導体(特開平4−356459号公報)の製造中間体として用いられる。
従来、イミド類から水素還元による環状アミン類を製造する方法として、例えば、特開平6−298727号公報には、イミド類を金属触媒の存在下、温度100〜400℃、水素分圧0.1〜50MPaで、無溶媒又は炭化水素系若しくは芳香族系溶媒(例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等)中、還元して環状アミン類を製造する方法が開示されている。
しかしながら、上記方法においては環状アミン類を収率よく製造することはできるが、副生する水の影響により金属触媒から金属イオンが生成水中に溶出する結果、1)触媒活性が低下する、2)反応装置の内部表面が溶出金属イオンによりメッキされる、3)金属触媒が塊状となり、反応装置から触媒を抜き出せなくなる等の問題点を有し、工業的製造方法としては、必ずしも有利な方法とは言えないのが実状である。
また、上記の特開平6−298727号公報には、オクタヒドロイソインドールの製造方法が開示されている。
しかし、上記方法によりシス−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、シス−ヘキサヒドロフタルイミド等の縮合イミド類を水素還元すると、シス−オクタヒドロイソインドール(以下、「シス体」とも呼ぶ)と共にトランス−オクタヒドロイソインドール(以下、「トランス体」とも呼ぶ)が副生するため、原料イミド類の環縮合位の立体保持性(シス体/トランス体比)が低下する。副生したトランス体とシス体の沸点は非常に近く、蒸留等の分離精製が煩雑となるため立体保持性についても更なる向上が要請されている。さらに、分離されたトランス体は、必ずしもその有効な用途が確立されていないため、結局は廃棄されることとなり、資源の有効利用という観点からも好ましくない。
本発明は、イミド類から金属触媒存在下、有機溶媒中で、水素還元により環状アミン類を製造するに際し、該金属触媒が、副生する水の影響を受けることなく環状アミン類を工業的に有利に製造する方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、イミド類から金属触媒存在下、有機溶媒中で、水素還元により環状アミン類を製造するに際し、該金属触媒が、副生する水の影響を受けることなく、かつ立体保持性よく環状アミン類を工業的に有利に製造する方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、トランス−オクタヒドロイソインドールを金属触媒存在下、立体異性化することによりシス−オクタヒドロイソインドールを工業的に有利に製造する方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、テトラヒドロフタルイミド及び/又はヘキサヒドロフタルイミドを水素還元してシス−オクタヒドロイソインドール及びトランス−オクタヒドロイソインドールの混合物(以下、「シス体/トランス体混合物」とも呼ぶ)を製造した後において、所望のシス体を分離精製し、副生するトランス体を異性化反応に供してシス体/トランス体混合物に変換し、さらに所望のシス体を分離精製することにより高純度のシス体を収率良く製造する方法を提供することを目的とする。
本明細書及び請求の範囲において、亜鉛−銅酸化物等の「M1−M2酸化物」なる表記は、金属M1の酸化物と金属M2の酸化物とからなる触媒を表す。例えば、「亜鉛−銅酸化物」は、例えば、ZnOとCuOとからなる触媒を表す。同様に、亜鉛−銅−アルミニウム酸化物等の「M1−M2−M3酸化物」なる表記は、金属M1の酸化物と金属M2の酸化物と金属M3の酸化物からなる触媒を表す。例えば「亜鉛−銅−アルミニウム酸化物」は、例えば、ZnOとCuOとAlとからなる触媒を表す。
I.第1発明
本発明者らは、イミド類から金属触媒存在下、水素還元して環状アミン類を製造するに際し、特定の水溶性有機溶媒中で反応することにより、副生する水の影響を受けることなく環状アミン類を有利に製造できることを見いだし、かかる知見に基づいて上記第1発明を完成するに至った。
第1発明は、具体的には以下の環状アミン類の製造方法を提供する。
項1. 一般式(I−2)
Figure 2004048327
[式中、nは1又は2の整数を表す。A10は、
Figure 2004048327
若しくは
Figure 2004048327
で表される基(nが1の場合)、又は芳香環、シクロヘキサン環、飽和の縮合環、及びビシクロ環よりなる群から選ばれる1個若しくは2個以上の環を含有する基を表し、当該何れの環も置換基を有していてもよい。R10、R20及びR30は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜30の飽和の脂肪族炭化水素基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。]
で表される環状アミン類の製造方法であって、一般式(I−1)
Figure 2004048327
[式中、nは1又は2の整数を表す。Aは、
Figure 2004048327
若しくは
Figure 2004048327
で表される基(nが1の場合)、又は芳香環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、飽和の縮合環、及びビシクロ環よりなる群から選ばれる1個若しくは2個以上の環を含有する基を表し、当該何れの環も置換基を有していてもよい。R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜30の飽和若しくは炭素数3〜30の不飽和の脂肪族炭化水素基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。]
で表されるイミド類を、還元反応条件下で不活性な水溶性有機溶媒中、金属触媒存在下、反応温度150〜350℃、水素分圧1〜30MPaで水素還元反応に供することを特徴とする一般式(I−2)で表される環状アミン類の製造方法。
項2. 金属触媒が、銅、亜鉛、ニッケル、銅−亜鉛、銅−クロム、亜鉛−クロム、銅−亜鉛−クロム及びこれらの酸化物から選ばれた少なくとも1種の金属触媒並びにこれらにモリブデン、タングステン、マグネシウム、バリウム、アルミニウム、カルシウム、ジルコニウム、マンガン、ニッケル、ケイ素及びこれらの酸化物から選ばれた少なくとも1種を添加した変性触媒である項1に記載の環状アミン類の製造方法。
項3. 金属触媒が、銅−亜鉛酸化物、銅−亜鉛−クロム酸化物、銅−亜鉛−クロム−マグネシウム酸化物、銅−亜鉛−クロム−バリウム酸化物、銅−亜鉛−マグネシウム酸化物、銅−亜鉛−アルミニウム酸化物、銅−亜鉛−アルミニウム−バリウム酸化物、銅−亜鉛−アルミニウム−ケイ素酸化物、銅−クロム酸化物、銅−クロム−マグネシウム酸化物、銅−クロム−バリウム酸化物、銅−クロム−マンガン酸化物、銅−クロム−バリウム−マンガン酸化物及び亜鉛−クロム酸化物から選ばれた少なくとも1種である項2に記載の環状アミン類の製造方法。
項4. 水溶性有機溶媒の溶解度パラメーターが8〜11.5である項1〜3のいずれかに記載の環状アミン類の製造方法。
項5. 水溶性有機溶媒がエーテル系溶媒である項4に記載の環状アミン類の製造法。
項6. 水溶性有機溶媒が、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル及びトリエチレングリコールジメチルエーテルから選ばれた少なくとも1種である項5に記載の環状アミン類の製造法。
項7. イミド類が、1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド及び/又はヘキサヒドロフタルイミドである項1〜6のいずれかに記載の環状アミン類の製造方法。
II.第2発明
本発明者らは、イミド類から金属触媒存在下、有機溶媒中で、水素還元して環状アミン類を製造するに際し、生成水及び該環状アミン類を反応系から連続的に又は間欠的に抜き出しながら水素還元反応を行うことにより、次の(1)及び(2)の知見を得るに至った。
(1)金属触媒から生成水中への金属イオンの溶出に起因する、1)触媒活性が低下する、2)反応装置の内部表面が溶出金属イオンによりメッキされる、3)金属触媒が塊状となり、反応装置から触媒を抜き出せなくなる等の問題点が解消できることが明らかとなった。
(2)シス−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド及び/又はシス−ヘキサヒドロフタルイミドから医薬製造中間体として重要な環状アミン類のシス−オクタヒドロイソインドールを製造する場合、従来の生成水及び生成した環状アミン類を系外に抜き出さずに水素還元を行う密閉系での方法と比べて、立体保持性(シス体/トランス体比)が従来の70/30程度から90/10程度以上に格段に向上することが判明した。
第2発明は、かかる知見に基づき完成されたものであり、第2発明は、具体的には以下の環状アミン類の製造方法を提供する。
項8. 一般式(II−2)
Figure 2004048327
[式中、A20
Figure 2004048327
若しくは
Figure 2004048327
で表される基、又は芳香環、シクロヘキサン環、飽和の縮合環及びビシクロ環よりなる群から選ばれる1個若しくは2個以上の環を含有する基を表し、当該何れの環も置換基を有していてもよい。R40、R50及びR60は同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜18の飽和の脂肪族炭化水素基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。]
で表される環状アミン類の製造方法であって、一般式(II−1)
Figure 2004048327
[式中、Aは、
Figure 2004048327
若しくは
Figure 2004048327
で表される基、又は芳香環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、飽和の縮合環、及びビシクロ環よりなる群から選ばれる1個若しくは2個以上の環を含有する基を表し、当該何れの環も置換基を有していてもよい。R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜18の飽和若しくは炭素数3〜18の不飽和の脂肪族炭化水素基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。]
で表されるイミド類を、有機溶媒中、金属触媒存在下、生成する水及び生成する一般式(II−2)で表される環状アミン類を連続的に又は間欠的に抜き出しながら水素還元反応を行うことを特徴とする一般式(II−2)で表される環状アミン類の製造方法。
項9. 金属触媒が、銅、亜鉛、ニッケル、銅−亜鉛、銅−クロム、亜鉛−クロム、銅−亜鉛−クロム及びこれらの酸化物から選ばれる少なくとも1種の触媒並びにこれらにモリブデン、タングステン、マグネシウム、バリウム、アルミニウム、カルシウム、ジルコニウム、マンガン、ニッケル、ケイ素及びこれらの酸化物から選ばれる少なくとも1種を添加した変性触媒である上記項8に記載の環状アミン類の製造方法。
項10. 金属触媒が、銅−亜鉛酸化物、銅−亜鉛−クロム酸化物、銅−亜鉛−クロム−マグネシウム酸化物、銅−亜鉛−クロム−バリウム酸化物、銅−亜鉛−マグネシウム酸化物、銅−亜鉛−アルミニウム酸化物、銅−亜鉛−アルミニウム−バリウム酸化物、銅−亜鉛−アルミニウム−ケイ素酸化物、銅−クロム酸化物、銅−クロム−マグネシウム酸化物、銅−クロム−バリウム酸化物、銅−クロム−マンガン酸化物、銅−クロム−バリウム−マンガン酸化物及び亜鉛−クロム酸化物から選ばれる少なくとも1種である上記項8又は9に記載の環状アミン類の製造方法。
項11. 有機溶媒が、還元反応条件下で不活性な有機溶媒であることを特徴とする上記項8〜10のいずれかに記載の環状アミン類の製造方法。
項12. 有機溶媒が、炭素数6〜20の芳香族炭化水素、炭素数6〜20の脂環式炭化水素、炭素数6〜20の脂肪族炭化水素及びエーテル系溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種である上記項11に記載の環状アミン類の製造方法。
項13. 水素分圧が、1〜30MPaであり、反応温度が、150〜350℃である上記項8〜12のいずれかに記載の環状アミン類の製造方法。
項14. 生成水及び還元生成物の環状アミン類を水素ガスと共に連続的に又は間欠的に系外に抜き出しながら還元することを特徴とする上記項8〜13のいずれかに記載の環状アミン類の製造方法。
項15. 水素ガスを気相部へ導入し、気相部に存在する生成水及び還元生成物の環状アミン類を水素ガスと共に系外に抜き出すことを特徴とする上記項14に記載の環状アミン類の製造方法。
項16. 水素ガスを液相部に導入してバブリングさせ、液相部及び気相部に存在する生成水及び還元生成物の環状アミン類を水素ガスと共に系外に抜き出すことを特徴とする上記項14に記載の環状アミン類の製造方法。
項17. 反応中に抜き出された全部又は一部の水素ガスを還元反応に循環使用することを特徴とする上記項14〜16のいずれかに記載の環状アミン類の製造方法。
項18. イミド類が、シス−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド及び/又はシス−ヘキサヒドロフタルイミドである上記項8〜17のいずれかに記載の環状アミン類の製造方法。
III.第3発明
本発明者らの研究によると、前記特開平6−298727号公報に記載の方法においてはオクタヒドロイソインドールを収率よく製造することはできるが、シス−オクタヒドロイソインドールと共に、不要な立体異性体であるトランス−オクタヒドロイソインドールが副生すること、そのため生成物中のシス体/トランス体比率(ガスクロマトグラフィー分析のピーク面積比)は、例えば、約70/30となることが明らかとなった。シス−オクタヒドロイソインドールは蒸留等により分離精製され医薬品製造中間体として用いられるが、その前留分である副生したトランス−オクタヒドロイソインドールは立体配置が異なるため全く利用価値がなく廃棄しなければならないという問題点を有していた。
本発明者らは、従来廃棄されていたトランス−オクタヒドロイソインドールの有効利用を目的として更に検討を重ねた結果、トランス−オクタヒドロイソインドールを金属触媒存在下、立体異性化することによりシス−オクタヒドロイソインドールが得られることを見いだし、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。
第3発明は、具体的には以下の環状アミン類の製造方法を提供する。
項19. トランス−オクタヒドロイソインドールを、金属触媒存在下、反応温度150〜350℃、水素分圧0.001〜30MPaで立体異性化することを特徴とするシス−オクタヒドロイソインドールの製造方法。
項20. 金属触媒が、銅、亜鉛、ニッケル、銅−亜鉛、銅−クロム、亜鉛−クロム、銅−亜鉛−クロム及びこれらの酸化物から選ばれる1種又は2種以上の触媒並びにこれらにモリブデン、タングステン、マグネシウム、バリウム、アルミニウム、カルシウム、ジルコニウム、マンガン、ニッケル、ケイ素及びこれらの酸化物から選ばれる1種又は2種以上を添加した変性触媒である項19に記載のシス−オクタヒドロイソインドールの製造方法。
項21. 金属触媒が、銅−亜鉛酸化物、銅−亜鉛−クロム酸化物、銅−亜鉛−クロム−マグネシウム酸化物、銅−亜鉛−クロム−バリウム酸化物、銅−亜鉛−マグネシウム酸化物、銅−亜鉛−アルミニウム酸化物、銅−亜鉛−アルミニウム−バリウム酸化物、銅−亜鉛−アルミニウム−ケイ素酸化物、銅−クロム酸化物、銅−クロム−マグネシウム酸化物、銅−クロム−バリウム酸化物、銅−クロム−マンガン酸化物、銅−クロム−バリウム−マグネシウム酸化物、亜鉛−クロム酸化物から選ばれる1種又は2種以上の触媒である項19又は20に記載のシス−オクタヒドロイソインドールの製造方法。
IV.第4発明
さらに、本発明者らは、テトラヒドロフタルイミド及び/又はヘキサヒドロフタルイミドを水素還元して、シス体/トランス体のオクタヒドロイソインドール混合物を製造した後において、所望のシス−オクタヒドロイソインドールを分離精製し、副生するトランス−オクタヒドロイソインドールを立体異性化させてシス体過剰のシス体/トランス体の混合物とし、再度シス−オクタヒドロイソインドールを分離精製することにより、高純度のシス−オクタヒドロイソインドールを収率よく製造し得ることを見出した。かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。
即ち、第4発明は、具体的には以下の高純度シス−オクタヒドロイソインドールの効率的な製造方法を提供する。
項22. 高純度シス−オクタヒドロイソインドールの製造方法であって、
(1)一般式(IV−1)又は一般式(IV−2)
Figure 2004048327
[式中、一般式(IV−2)における式:−CONHCO−で示される基はシクロヘキセン環上の隣接する2個の炭素原子上に存在する。]
で表されるイミド類を、
(a)還元反応条件下で不活性な水溶性有機溶媒中、金属触媒存在下、反応温度150〜350℃、水素分圧1〜30MPaの条件で水素還元反応に供して、又は
(b)有機溶媒中、金属触媒存在下、反応温度150〜350℃、水素分圧1〜30MPaの条件で、且つ生成水及び生成するオクタヒドロイソインドールを連続的に又は間欠的に抜き出しながら行う水素還元反応に供して
シス−オクタヒドロイソインドール及びトランス−オクタヒドロイソインドールの混合物(以下、「シス体/トランス体混合物」と呼ぶ)を製造する第1工程、
(2)第1工程で得られるシス体/トランス体混合物から所望の高純度シス体を回収し、トランス体又はトランス体が主成分であるシス体/トランス体混合物を分離する第2工程、
(3)第2工程で分離されたトランス体又はトランス体が主成分であるシス体/トランス体混合物を、金属触媒存在下、反応温度150〜350℃、水素分圧0.001〜30MPaの条件で立体異性化反応に供して、シス体含量が増大したシス体/トランス体混合物を得る第3工程、及び
(4)第3工程で得られるシス体含量が増大したシス体/トランス体混合物から所望の高純度シス体を回収し、トランス体又はトランス体が主成分であるシス体/トランス体混合物を分離する第4工程、
を含む高純度シス−オクタヒドロイソインドールの製造方法。
項23. 分離されたトランス体又はトランス体が主成分であるシス体/トランス体混合物を、金属触媒存在下、反応温度150〜350℃、水素分圧0.001〜30MPaの条件で立体異性化させて、シス体含量が増大したシス体/トランス体混合物を得る工程と、該シス体/トランス体混合物から所望の高純度シス体を回収しトランス体又はトランス体が主成分であるシス体/トランス体混合物を分離する工程との一連の工程を、1回行うか又は2回以上繰り返す項22に記載の製造方法。
発明の詳細な記述
以下、本発明の第1発明〜第4発明について詳細に説明する。
I.第1発明
原料イミド化合物
上記第1発明の原料である一般式(I−1)
Figure 2004048327
[式中、n及びA1は前記に同じ。]
で表されるイミド類において、Aが環構造を有する基の場合、Aとしては芳香環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、飽和の縮合環、及びビシクロ環からなる群から選ばれる1個若しくは2個以上の環を含有する基が挙げられる。
で示される「芳香環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、飽和の縮合環、及びビシクロ環よりなる群から選ばれる1個若しくは2個以上の環を含有する基」としては、芳香環(特に、ベンゼン環、ナフタレン環)、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、飽和の縮合環(特に、デカリン)、及びビシクロ環(特にノルボルナン、ノルボルネン、7−オキサ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、7−オキサ−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン)よりなる群から選ばれる1個の環から2個の水素原子又は4個の水素原子を除いて得られる2価又は4価の基、又は、一般式(Aa)
Figure 2004048327
[式中、Rは、ベンゼン環又はシクロヘキサン環から3つの水素原子を除いて得られる残基を示し、Bは単結合、エーテル基(−O−)、イソプロピリデン基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基を示す。]
で表される4価の基を例示できる。
上記環はいずれも置換基として、炭素数1〜20のアルキル基を有していてもよい。特に、芳香環(特にベンゼン環、ナフタレン環)及び飽和の縮合環(特に、デカリン)は、少なくとも1個(特に1〜2個)の炭素数1〜20(特に1〜18)のアルキル基で置換されていてもよい。また、上記シクロヘキサン環及びシクロヘキセン環は、少なくとも1個(特に1〜2個)の炭素数1〜20(特に1〜18)のアルキル基で置換されていてもよい。
特に、Aとしては、次に示すような基を例示できる。
アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、特に1〜18のアルキル基)でモノ置換されていてもよいベンゼン環から2個又は4個の水素原子を除いて得られる2価又は4価の基、
Rがベンゼン環から3つの水素原子を除いて得られる残基を示し、Bが前記に同じである一般式(Aa)で示される基、
アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、特に1〜18のアルキル基)でモノ又はジ置換されていてもよいシクロヘキサン環から2個の水素原子を除いて得られる基、
Rがシクロヘキサン環から3つの水素原子を除いて得られる残基を示し、Bが前記に同じである一般式(Aa)で示される基、
アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、特に1〜18のアルキル基)でモノ又はジ置換されていてもよいシクロヘキセン環から2個の水素原子を除いて得られる基、
飽和の縮合環(特に、デカリン)から2個又は4個の水素原子を除いて得られる2価又は4価の基、又は
ノルボルナン、ノルボルネン、7−オキサ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、及び7−オキサ−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン)からなる群から選ばれるビシクロ環から2個の水素原子を除いて得られる2価の基等が挙げられる。
一般式(I−1)中のAで示される基としては、具体的には、
Figure 2004048327
Figure 2004048327
等の環構造を有する基が例示される。
一般式(I−1)のうち、Aが環構造を有する基であるイミド類の具体例を以下に示す。
芳香環(特に、ベンゼン環)を有するイミドとして、フタルイミド、4−メチルフタルイミド、4−エチルフタルイミド、4−プロピルフタルイミド、4−ブチルフタルイミド、4−ヘキシルフタルイミド、4−オクチルフタルイミド、4−ドデシルフタルイミド、4−オクタデシルフタルイミド等のC−C18アルキル基でモノ置換されていてもよいフタルイミドの他、ピロメリット酸ジイミド等のC−C18アルキル基でモノ置換されていてもよいベンゼン環から4個の水素原子を除いて得られる基を有するジイミド等が例示される。
更に、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ジイミド、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸ジイミド、3,3’,4,4’−イソプロピリデンジフェニルテトラカルボン酸ジイミド、3,3’,4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフェニルテトラカルボン酸ジイミド等のRがベンゼン環から3個の水素原子を除いて得られる基である一般式(Aa)で表される基を有するジイミド等が例示される。
シクロヘキサン環を有するイミドとして、ヘキサヒドロフタルイミド、3−メチルヘキサヒドロフタルイミド、3−エチルヘキサヒドロフタルイミド、3−プロピルヘキサヒドロフタルイミド、3−ブチルヘキサヒドロフタルイミド、3−ヘキシルヘキサヒドロフタルイミド、3−オクチルヘキサヒドロフタルイミド、3−ドデシルヘキサヒドロフタルイミド、3−オクタデシルヘキサヒドロフタルイミド、3,6−ジメチルヘキサヒドロフタルイミド、3,6−ジエチルヘキサヒドロフタルイミド、3,6−ジプロピルヘキサヒドロフタルイミド、3,6−ジブチルヘキサヒドロフタルイミド、3,6−ジヘキシルヘキサヒドロフタルイミド、3,6−ジオクチルヘキサヒドロフタルイミド、3,6−ジドデシルヘキサヒドロフタルイミド、3,6−ジオクタデシルヘキサヒドロフタルイミド、4−メチルヘキサヒドロフタルイミド、4,5−ジメチルヘキサヒドロフタルイミド等のC−C18アルキル基でモノ又はジ置換されていてもよいシクロヘキサン環から2個の水素原子を除いて得られる基を有するモノイミド;1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸ジイミド、3,3’,4,4’−ジシクロヘキサンテトラカルボン酸ジイミド、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルエーテルテトラカルボン酸ジイミド、3,3’,4,4’−イソプロピリデンジシクロヘキシルテトラカルボン酸ジイミド、3,3’,4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジシクロヘキシルテトラカルボン酸ジイミド等のRがシクロヘキサン環から3個の水素原子を除いて得られる基である一般式(Aa)で表される基を有するジイミド等が例示される。
シクロヘキセン環を有するイミド化合物として、1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、3−エチル−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、3−プロピル−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、3−ブチル−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、3−ヘキシル−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、3−オクチル−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、3−ドデシル−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、3−オクタデシル−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、3,6−ジメチル−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、4,5−ジメチル−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド、3−メチル−3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド、3−エチル−3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド、3−プロピル−3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド、3−ブチル−3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド、3−ヘキシル−3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド、3−オクチル−3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド、3−ドデシル−3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド、3−オクタデシル−3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド、3,6−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド、4−メチル−3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド、4,5−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド等のC−C18アルキル基でモノ又はジ置換されていてもよいシクロヘキセン環から2個の水素原子を除いて得られる基を有するモノイミドが例示される。
ビシクロ環を有するイミド化合物としては、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸イミド、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸イミド、7−オキサ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−1,2−ジカルボキシイミド、7−オキサ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタ−5−エン−1,2−ジカルボキシイミド等が例示される。
飽和縮合環を有するイミド化合物としては、1,2−デカリンジカルボン酸イミド、2,3−デカリンジカルボン酸イミド、1,4,5,8−デカリンテトラカルボン酸ジイミド、1,2,5,6−デカリンテトラカルボン酸ジイミド、1,2−ナフタレンジカルボン酸イミド、2,3−ナフタレンジカルボン酸イミド、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド等のデカリンから2個又は4個の水素原子を除いて得られる基を有するモノイミド又はジイミド等が例示される。
これらの上記イミド類に本発明方法を適用することによりそれぞれ対応する環状アミン類を収率よく得ることができる。なかでも、1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド(特に、シス−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド)及び/又はヘキサヒドロフタルイミド(特に、シス−ヘキサヒドロフタルイミド)から対応する環状アミンを製造する方法として好適に用いられる。
また、一般式(I−1)のうち、Aが環構造を有する基以外の場合(n=1の場合)、次に示す一般式(I−3)
Figure 2004048327
[式中、R及びRは一般式(I−1)と同義である。]
で表されるイミド類、一般式(I−4)
Figure 2004048327
[式中、R及びRは一般式(I−1)と同義である。]
で表されるイミド類、又は一般式(I−5)
Figure 2004048327
[式中、R、R及びRは一般式(I−1)と同義である。]
で示されるイミド類が挙げられる。
上記の一般式(I−3)〜(I−5)で表されるイミド類の置換基であるR、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜30の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30の不飽和脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよいアリール基である。
炭素数1〜30の飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜24の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜22の直鎖アルキル基が挙げられる。具体的には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル、ドコシル等が例示される。
炭素数3〜30の不飽和脂肪族炭化水素基としては、上記の炭素数3〜30の飽和脂肪族炭化水素基において少なくとも1個の不飽和結合(二重結合、三重結合)を有する基が挙げられ、具体的には、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、オクタデセニル、ドコセニル等が例示される。
置換基を有していてもよいアリール基のアリール基としては、炭素数6〜10の単環又は2環のアリール基が挙げられる。具体的には、フェニル、ナフチル等が例示される。該アリール基は、1〜3個(特に1〜2個)の炭素数1〜18のアルキル基で置換されていてもよい。
一般式(I−3)で表されるイミド化合物として、具体的には、スクシンイミド、2−メチルスクシンイミド、2−エチルスクシンイミド、2−プロピルスクシンイミド、2−ブチルスクシンイミド、2−ヘキシルスクシンイミド、2−オクチルスクシンイミド、2−ドデシルスクシンイミド、2−オクタデシルスクシンイミド、2,3−ジメチルスクシンイミド、2,3−ジエチルスクシンイミド、2,3−ジプロピルスクシンイミド、2,3−ジブチルスクシンイミド、2,3−ジヘキシルスクシンイミド、2,3−ジオクチルスクシンイミド、2,3−ドデシルスクシンイミド、2,3−オクタデシルスクシンイミド等が例示される。
また、一般式(I−4)で表される化合物として、具体的には、マレイミド、2−メチルマレイミド、2−エチルマレイミド、2−プロピルマレイミド、2−ブチルマレイミド、2−ヘキシルマレイミド、2−オクチルマレイミド、2−ドデシルマレイミド、2−オクタデシルマレイミド、2,3−ジメチルマレイミド、2,3−ジエチルマレイミド、2,3−ジプロピルマレイミド、2,3−ジブチルマレイミド、2,3−ジヘキシルマレイミド、2,3−ジオクチルマレイミド、2,3−ドデシルマレイミド、2,3−オクタデシルマレイミド等が例示される。
更に、一般式(I−5)で表される化合物として、具体的には、グルタルイミド、3−メチルグルタルイミド、3−エチルグルタルイミド、3−プロピルグルタルイミド、3−ブチルグルタルイミド、3−ヘキシルグルタルイミド、3−オクチルグルタルイミド、3−ドデシルグルタルイミド、3−オクタデシルグルタルイミド、2,4−ジメチルグルタルイミド、2,4−ジエチルグルタルイミド、2,4−ジプロピルグルタルイミド、2,4−ジブチルグルタルイミド、2,4−ジヘキシルグルタルイミド、2,4−ジオクチルグルタルイミド、2,4−ジドデシルグルタルイミド、2,4−ジオクタデシルグルタルイミド等が例示される。
本発明で使用する原料である一般式(I−1)で示されるイミド類は、いずれも公知であるか、又は、対応するカルボン酸(ジカルボン酸或いはテトラカルボン酸)若しくはその誘導体とアンモニア、尿素等とを用いて常法に従ってイミド化することにより容易に製造できる。
上記イミド類の純度は、100%のものであってもよいが、若干不純物を含むものであっても構わない。一般に、イミド類は、純度が90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは98重量%である。イミド類中には、水素還元条件下で目的の環状アミン類となる不純物(例えば、テトラヒドロフタルイミドの場合、二重結合の位置異性体、イミド環縮合位の立体異性体(シス体及びトランス体)等)を含んでいてもよい。その場合の該不純物の合計量が、原料イミド類総量に対して、10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下であれば特に問題はない。
金属触媒
本反応に使用する金属触媒としては、銅、亜鉛、ニッケル、銅−亜鉛、銅−クロム、亜鉛−クロム、銅−亜鉛−クロム及びこれらの酸化物から選ばれた少なくとも1種の金属触媒、並びにこれらにモリブデン、タングステン、マグネシウム、バリウム、アルミニウム、カルシウム、ジルコニウム、マンガン、ニッケル、ケイ素及びこれらの酸化物等を添加した変性触媒が例示される。又、上記触媒の混合物も使用できる。
好ましい触媒として、具体的には、銅−亜鉛酸化物、銅−亜鉛−クロム酸化物、銅−亜鉛−クロム−マグネシウム酸化物、銅−亜鉛−クロム−バリウム酸化物、銅−亜鉛−マグネシウム酸化物、銅−亜鉛−アルミニウム酸化物、銅−亜鉛−アルミニウム−バリウム酸化物、銅−亜鉛−アルミニウム−ケイ素酸化物、銅−クロム酸化物、銅−クロム−マグネシウム酸化物、銅−クロム−バリウム酸化物、銅−クロム−マンガン酸化物、銅−クロム−バリウム−マンガン酸化物、亜鉛−クロム酸化物等が例示される。
上記触媒を構成する各金属酸化物の含有比率は特に限定されないが、例えば、銅−クロム酸化物系の場合、CuO/Cr/Mn/BaO=35〜65/35〜65/0〜20/0〜20(重量比)、特に、40〜60/40〜60/0〜10/0〜10が好ましく、銅−亜鉛酸化物系触媒の場合、CuO/ZnO/Al/BaO/SiO=35〜65/35〜65/0〜20/0〜15/0〜15(重量比)特に、40〜60/40〜60/0〜15/0〜10/0〜10が好ましい。
更に、上記金属及び金属酸化物以外に、ケイソウ土、白土、グラファイト等の形成助剤を添加した触媒や上記の金属酸化物をアルミナやシリカ等の担体に担持させた触媒等が利用できる。
これらの触媒の形態は、特に限定されず、選択される形態に応じて粉末状、タブレット状等適宜選択して使用される。具体的には、回分或は連続の懸濁反応には粉末触媒が、又、固定床反応にはタブレット触媒等が用いられる。
粉末触媒の粒径は特に制限がないが、反応性及び反応後の濾過性の観点から平均粒径が1〜100μmが好ましく、特に3〜50μmが好ましい。
これらの担持触媒の製造方法は、特に限定されることはなく、例えば、含浸法、共沈法等の従来公知の方法により容易に製造できる。これら触媒は、市販されているものでもよく、特に限定されるものではない。これら触媒は、そのまま用いることもできるが、使用する前に還元処理等の適当な活性化処理をした後で反応に供することが好ましい。
有機溶媒
本発明で用いられる有機溶媒は、還元反応条件下で不活性な水溶性有機溶媒である。ここで水溶性有機溶媒とは、該有機溶媒と水とを混合した場合に有機相と水相とからなる二相系を形成しない有機溶媒(即ち、水と相溶性を有する有機溶媒)であれば特に制限は無いが、水への溶解度(20℃で水100g中に溶解する有機溶媒の重量)が20g以上である有機溶媒であれば良く、好ましくは50g以上、特に100g以上である有機溶媒が好ましい。
また、上記水溶性溶媒の中でも、本発明に有効に使用できる水溶性有機溶媒としては、その溶解度パラメーターが8〜11.5(好ましくは、8.5〜11.0)の範囲の有機溶媒が好ましい。
ここで、溶解度パラメーター(δ)とは、例えば、J.H.Hildebrand,R.L.Scott;“Solubility of Non−electrolytes”Chap.20,Rein hold(1950)に記載されているように、下記の式に従って求めることができる。
δ=(E/V)0.5
[但し、Eはモル蒸発熱(cal)を、Vは分子容(cc)を表す]
また、本発明の方法においては、H.Burrell;Off.Dig.,29,1069(1957)に記載されている溶媒の溶解度パラメーターδを用いて算出した。
かかる水溶性有機溶媒を用いることにより、反応中に生成する水との相溶性が良好となり、水と触媒との接触が減るため触媒失活を抑制することができる。溶解度パラメーターが8未満の有機溶媒では、原料イミド類及び生成する環状アミン類と相溶性が低くなる為反応率が低下し、さらに水との相溶性が低くなるため金属触媒が副生する水の影響を受け易くなる傾向が見られ、一方、溶解度パラメーターが11.5を越える有機溶媒で上記還元条件下において不活性なものは容易に入手することは困難である。
上記水溶性有機溶媒のうち、ヒドロキシル基、エステル基、アミド基、イミド基、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基等の官能基や不飽和結合を有しない還元反応条件下で不活性な水溶性有機溶媒が用いられる。
例えば、ヒドロキシル基を有する水溶性有機溶媒は、前記還元反応条件下において、生成物の環状アミン類と反応し、3級アミンが生成する。また、その他のエステル基、アミド基、イミド基、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基等の官能基や不飽和結合を有する水溶性有機溶媒を用いた場合は、該有機溶媒自身が還元されたり、又は該有機溶媒に生成水が付加したりする。このため、上記官能基を有する有機溶媒を用いることは好ましくない。
本発明で用いられる溶解度パラメーターが8〜11.5の範囲の水溶性有機溶媒としては、エーテル系溶媒、特に鎖状エーテル系溶媒や環状エーテル系溶媒が挙げられる。鎖状エーテル系溶媒としては、エーテル結合(−O−)を少なくとも2個以上(好ましくは2〜5個)有する鎖状エーテル系溶媒が好ましい。特に、一般式
O−(CHCHO)m−R
[式中、R及びRは同一又は異なって、C−Cアルキル基であり、mは1〜4の整数を表す。]
で表される溶媒が好ましい。特に、R及びRがメチルであり、mが3である溶媒、即ちトリエチレングリコールジメチルエーテルが好ましい。
また、環状エーテル系溶媒としては、エーテル結合(−O−)を少なくとも1個以上(好ましくは1又は2個)有するC−Cの環状エーテル系溶媒が好ましい。
上記エーテル系溶媒として、より具体的には、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等が例示される。これらの溶媒は、一種又は二種以上混合して用いることができる。
その中でも特に、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルが推奨される。
さらに、上記以外の溶解度パラメーターが8〜11.5の範囲であり本発明の製法に悪影響を与えない水溶性有機溶媒としては、ピリジン、ピペリジン、モルフォリン等の含窒素化合物が例示される。これらは、単独で又は2種以上の混合物として用いることができ、また前記エーテル系溶媒と混合して用いることもできる。
なお、本発明で用いられる溶媒は、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲で、上記の溶解度パラメーターが8〜11.5の範囲の水溶性有機溶媒に他の非水溶性有機溶媒(例えば、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、脂肪族炭化水素など)を加えた混合溶媒を用いても良い。通常、用いる溶媒中、溶解度パラメーターが8〜11.5の範囲の水溶性有機溶媒が20〜100体積%程度、好ましくは50〜100体積%程度であればよい。
還元反応
本反応に用いる水素ガスは、必ずしも高純度である必要はなく、還元反応に影響を与えない窒素やメタン等が含まれていても良い。
触媒の適用量は、通常、イミド類に対し、0.1〜100重量%、好ましくは0.5〜80重量%程度、より好ましくは1.0〜50重量%程度の範囲で選択される。
反応温度は、150〜350℃、好ましくは200〜300℃程度である。150℃未満の温度では十分な還元速度が得られず、350℃を越える温度では副反応や分解反応の原因となり、収率が低下する傾向が見られ、経済的に不利である。
反応圧力は、水素分圧で1〜30MPa、好ましくは3〜25MPa程度である。1MPa未満の水素分圧では工業的に十分な還元速度が得られず、30MPaを越える水素分圧を用いても顕著な有意性は認められず、経済的に不利である。
溶媒の使用量としては、生成水が溶媒に相溶する量であれば特に限定されないが、通常、イミド類100重量部に対して、50〜5000重量部、好ましくは100〜3000重量部、更に好ましくは200〜2000重量部の範囲が推奨される。
反応時間は、イミド類の種類、触媒量及びその他の条件によって適宜選択することができるが、通常2〜20時間、好ましくは4〜15時間である。
尚、本反応は、回分方式、連続方式を問わず可能である。
かくして得られた反応物は、通常、蒸留、溶媒抽出、再結晶、吸着剤処理等により精製される。
生成する環状アミン類
本第1発明の製法により、一般式(I−1)で表される原料のイミド類から、一般式(I−2)
Figure 2004048327
[式中、A10及びnは前記に同じ。]
で表される環状アミン類が製造される。この環状アミン類は、一般式(I−1)で表されるイミド類の2個のカルボニル基が、2個のメチレン基に還元された化合物である。なお、原料としてAに不飽和基を有する一般式(I−1)で表されるイミド類を用いた場合は、該不飽和基が水素還元された飽和基を有する一般式(I−2)で表される環状アミン類に変換される。
一般式(I−2)において、A10が環構造を有する基の場合、A10としては芳香環、シクロヘキサン環、飽和の縮合環、及びビシクロ環からなる群から選ばれる1個若しくは2個以上の環を含有する基が挙げられる。
10で示される「芳香環、シクロヘキサン環、飽和の縮合環、及びビシクロ環よりなる群から選ばれる1個若しくは2個以上の環を含有する基」としては、芳香環(特に、ベンゼン環、ナフタレン環)、シクロヘキサン環、飽和の縮合環(特に、デカリン)、及びビシクロ環(特にノルボルナン、7−オキサ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン)よりなる群から選ばれる1個の環から2個の水素原子又は4個の水素原子を除いて得られる2価又は4価の基、又は、一般式(Aa’)
Figure 2004048327
[式中、R’は、ベンゼン環又はシクロヘキサン環から3つの水素原子を除いて得られる残基を示し、B’は単結合、エーテル基(−O−)、イソプロピリデン基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基を示す。]
で表される4価の基を例示できる。
上記環はいずれも置換基として、炭素数1〜20のアルキル基を有していてもよい。特に、芳香環(特にベンゼン環、ナフタレン環)及び飽和の縮合環(特に、デカリン)は、少なくとも1個(特に1〜2個)の炭素数1〜20(特に1〜18)のアルキル基で置換されていてもよい。また、上記シクロヘキサン環は、少なくとも1個(特に1〜2個)の炭素数1〜20(特に1〜18)のアルキル基で置換されていてもよい。
特に、A10としては、次に示すような基を例示できる。
アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、特に1〜18のアルキル基)でモノ置換されていてもよいベンゼン環から2個又は4個の水素原子を除いて得られる2価又は4価の基、
R’がベンゼン環から3つの水素原子を除いて得られる残基を示し、B’が前記に同じである一般式(Aa’)で示される基、
アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、特に1〜18のアルキル基)でモノ又はジ置換されていてもよいシクロヘキサン環から2個の水素原子を除いて得られる基、
R’がシクロヘキサン環から3つの水素原子を除いて得られる残基を示し、B’が前記に同じである一般式(Aa’)で示される基、
飽和の縮合環(特に、デカリン)から2個又は4個の水素原子を除いて得られる2価又は4価の基、又は
ノルボルナン、及び7−オキサ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタンからなる群から選ばれるビシクロ環から2個の水素原子を除いて得られる2価の基等が挙げられる。
一般式(I−2)中のA10で示される基としては、具体的には、
Figure 2004048327
Figure 2004048327
等の環構造を有する基が例示される。
また、一般式(I−2)のうち、A10が環構造を有する基以外の場合(n=1の場合)、次に示す一般式(I−3’)
Figure 2004048327
[式中、R10及びR20は一般式(I−2)と同義である。]
で表される環状アミン類、又は一般式(I−5’)
Figure 2004048327
[式中、R10、R20及びR30は一般式(I−2)と同義である。]
で示される環状アミン類が挙げられる。
上記の一般式(I−3’)及び(I−5’)で表される環状アミン類の置換基であるR10、R20及びR30は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜30の飽和脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよいアリール基である。
炭素数1〜30の飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜24の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜22の直鎖アルキル基が挙げられる。具体的には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル、ドコシル等が例示される。
置換基を有していてもよいアリール基のアリール基としては、炭素数6〜10の単環又は2環のアリール基が挙げられる。具体的には、フェニル、ナフチル等が例示される。該アリール基は、1〜3個(特に1〜2個)の炭素数1〜18のアルキル基で置換されていてもよい。
本発明のように溶解度パラメーターδが特定の範囲(8〜11.5)にある水溶性有機溶媒を用いることにより、1)触媒活性が低下しない、2)反応装置の内部表面が溶出金属イオンによりメッキされない、3)金属触媒が塊状にならず反応装置からの触媒の除去が容易になるなどの利点が得られ、本発明の製造方法は工業的にも極めて価値が高い。これは、水との親和性の高い特定の溶解度パラメーターを有する溶媒を用いることにより、生成水と触媒との相互作用が低減され触媒の失活が抑制されるためと考えられる。
特に、テトラヒドロフタルイミド、ヘキサヒドロフタルイミド等のイミド類を水素還元してオクタヒドロイソインドールを製造する場合、還元反応後のオクタヒドロイソインドールには環縮合位の立体異性体(シス体及びトランス体)が存在し、そのシス体及びトランス体の比(シス体/トランス体比)が65/35〜80/20程度の混合物となる。シス体/トランス体の混合物を含む反応粗物は、通常精密蒸留を行うことにより、所望のシス体の留分とトランス体を主成分とするシス体/トランス体混合物の留分に分離される。
精密蒸留に用いる多段蒸留塔としては、その理論段数が20〜200段、好ましくは50〜150段の蒸留塔が推奨される。蒸留塔は通常用いられる方式であればよく、例えば棚段方式、充填物方式等が挙げられる。精密蒸留の精留条件は、蒸留するオクタヒドロイソインドールのシス体/トランス体の比、粗物中の不純物含有量等により適宜選択することができ、例えば、蒸留装置のボトム温度が30〜300℃、蒸留装置の塔頂圧力が常圧〜0.1kPa、還流比が1〜50で行うことができる。
この精密蒸留を用いることにより、所望の高純度のシス−オクタヒドロイソインドールを、収率20〜80%程度、好ましくは30〜80%程度で、純度99%以上、好ましくは99.5%以上、より好ましくは99.7%以上の高純度で得ることができる。なお、純度はガスクロマトグラフィー分析のピーク面積比による。
精密蒸留で分離されたトランス体を主成分とするシス体/トランス体混合物の留分は、後述する第3発明或いは第4発明の異性化反応工程の原料として用いることができる。
II.第2発明
原料イミド化合物
上記第2発明の原料である一般式(II−1)
Figure 2004048327
[式中、Aは前記に同じ。]
で表されるイミド類において、Aが環構造を有する基の場合、Aとしては芳香環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、飽和の縮合環、及びビシクロ環からなる群から選ばれる1個若しくは2個以上の環を含有する基が挙げられる。
で示される「芳香環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、飽和の縮合環、及びビシクロ環よりなる群から選ばれる1個若しくは2個以上の環を含有する基」としては、芳香環(特にベンゼン環、ナフタレン環)、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、飽和の縮合環(特に、デカリン)、及びビシクロ環(特にノルボルナン、ノルボルネン、7−オキサ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、7−オキサ−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン)よりなる群から選ばれる1個の環から2個の水素原子を除いて得られる2価の基を例示できる。
上記環はいずれも置換基として、炭素数1〜12のアルキル基を有していてもよい。特に、芳香環(特にベンゼン環、ナフタレン環)及び飽和の縮合環(特に、デカリン)は、少なくとも1個(特に1〜2個)の炭素数1〜12(特に1〜10)のアルキル基で置換されていてもよい。また、上記シクロヘキサン環およびシクロヘキセン環は、少なくとも1個(特に1〜2個)の炭素数1〜12(特に1〜10)のアルキル基で置換されていてもよい。
特に、Aとしては、次に示すような基を例示できる。
アルキル基(好ましくは炭素数1〜12、特に1〜10のアルキル基)でモノ置換されていてもよいベンゼン環から2個の水素原子を除いて得られる基、
アルキル基(好ましくは炭素数1〜12、特に1〜10のアルキル基)でモノ又はジ置換されていてもよいシクロヘキサン環から2個の水素原子を除いて得られる基、
アルキル基(好ましくは炭素数1〜12、特に1〜10のアルキル基)でモノ又はジ置換されていてもよいシクロヘキセン環から2個の水素原子を除いて得られる基、
飽和縮合環(特に、デカリン)から2個の水素原子を除いて得られる2価の基、又は
ノルボルナン、ノルボルネン、7−オキサ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、及び7−オキサ−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン)からなる群から選ばれるビシクロ環から2個の水素原子を除いて得られる2価の基等が挙げられる。
一般式(II−1)中のAで示される基としては、具体的には、
Figure 2004048327
等の環構造を有する基が例示される。
一般式(II−1)のうち、Aが環構造を有する基であるイミド類の具体例を以下に示す。
芳香環(特に、ベンゼン環)を有するイミドとして、フタルイミド、4−メチルフタルイミド、4−エチルフタルイミド、4−プロピルフタルイミド、4−ブチルフタルイミド、4−ヘキシルフタルイミド、4−オクチルフタルイミド、4−デシルフタルイミド等のC−C18アルキル基でモノ置換されていてもよいフタルイミド等が例示される。
シクロヘキサン環を有するイミドとして、ヘキサヒドロフタルイミド、3−メチルヘキサヒドロフタルイミド、3−エチルヘキサヒドロフタルイミド、3−プロピルヘキサヒドロフタルイミド、3−ブチルヘキサヒドロフタルイミド、3−ヘキシルヘキサヒドロフタルイミド、3−オクチルヘキサヒドロフタルイミド、3−デシルヘキサヒドロフタルイミド、3,6−ジメチルヘキサヒドロフタルイミド、3,6−ジエチルヘキサヒドロフタルイミド、3,6−ジプロピルヘキサヒドロフタルイミド、3,6−ジブチルヘキサヒドロフタルイミド、3,6−ジヘキシルヘキサヒドロフタルイミド、3,6−ジオクチルヘキサヒドロフタルイミド、3,6−ジデシルヘキサヒドロフタルイミド、4−メチルヘキサヒドロフタルイミド、4,5−ジメチルヘキサヒドロフタルイミド等のモノイミド等のC−C18アルキル基でモノ又はジ置換されていてもよいシクロヘキサン環から2個の水素原子を除いて得られる基を有するモノイミドが例示される。
シクロヘキセン環を有するイミド化合物として、1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、3−エチル−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、3−プロピル−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、3−ブチル−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、3−ヘキシル−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、3−オクチル−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、3−デシル−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、3,6−ジメチル−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、4,5−ジメチル−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド、3−メチル−3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド、3−エチル−3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド、3−プロピル−3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド、3−ブチル−3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド、3−ヘキシル−3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド、3−オクチル−3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド、3−デシル−3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド、3,6−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド、4−メチル−3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド、4,5−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド等のC−C18アルキル基でモノ又はジ置換されていてもよいシクロヘキセン環から2個の水素原子を除いて得られる基を有するモノイミドが例示される。
ビシクロ環を有するイミド化合物としては、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸イミド、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸イミド、7−オキサ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−1,2−ジカルボン酸イミド、7−オキサ−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−1,2−ジカルボン酸イミド等が例示される。
飽和縮合環を有するイミド化合物としては、1,2−デカリンジカルボン酸イミド、2,3−デカリンジカルボン酸イミド等が例示される。
ナフタレン環を有するイミド化合物としては、1,2−ナフタレンジカルボン酸イミド、2,3−ナフタレンジカルボン酸イミドが例示される。
これらの上記イミド類に本発明方法を適用することによりそれぞれ対応する環状アミン類を収率よく得ることができる。特に、1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド及び/又はヘキサヒドロフタルイミドから対応する環状アミンのオクタヒドロイソインドールを製造する方法として好適に用いられる。特に、シス−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド及び/又はシス−ヘキサヒドロフタルイミドから、シス−オクタヒドロイソインドールを収率よく、且つ環縮合位のシス/トランスの立体保持性よく製造する方法として好適に用いられる。
また、一般式(II−1)のうち、Aが環構造を有する基以外の場合、次に示す一般式(II−3)
Figure 2004048327
[式中、R及びRは一般式(II−1)と同義である。]
で表されるイミド類、一般式(II−4)
Figure 2004048327
[式中、R及びRは一般式(II−1)と同義である。]
で表されるイミド類、又は一般式(II−5)
Figure 2004048327
[式中、R、R及びRは一般式(II−1)と同義である。]
で示されるイミド類が挙げられる。
上記の一般式(II−3)〜(II−5)で表されるイミド類の置換基であるR、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜18の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数3〜18の不飽和脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよいアリール基である。
炭素数1〜18の飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜18の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜4の直鎖アルキル基が挙げられる。具体的には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル等が例示される。
炭素数3〜18の不飽和脂肪族炭化水素基としては、上記の炭素数3〜18の飽和脂肪族炭化水素基において少なくとも1個の不飽和結合(二重結合、三重結合)を有する基が挙げられ、具体的には、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、オクタデセニル等が例示される。
置換基を有していてもよいアリール基のアリール基としては、炭素数6〜10の単環又は2環のアリール基が挙げられる。具体的には、フェニル、ナフチル等が例示される。該アリール基は、1〜3個(特に1〜2個)の炭素数1〜18のアルキル基で置換されていてもよい。
一般式(II−3)で表されるイミド化合物としては、具体的には、スクシンイミド、2−メチルスクシンイミド、2−エチルスクシンイミド、2−プロピルスクシンイミド、2−ブチルスクシンイミド、2−ヘキシルスクシンイミド、2−オクチルスクシンイミド、2−ドデシルスクシンイミド、2−オクタデシルスクシンイミド、2,3−ジメチルスクシンイミド、2,3−ジエチルスクシンイミド、2,3−ジプロピルスクシンイミド、2,3−ジブチルスクシンイミド、2,3−ジヘキシルスクシンイミド等が例示される。
一般式(II−4)で表されるイミド化合物としては、具体的には、マレイミド、2−メチルマレイミド、2−エチルマレイミド、2−プロピルマレイミド、2−ブチルマレイミド、2−ヘキシルマレイミド、2−オクチルマレイミド、2−ドデシルマレイミド、2−オクタデシルマレイミド、2,3−ジメチルマレイミド、2,3−ジエチルマレイミド、2,3−ジプロピルマレイミド、2,3−ジブチルマレイミド、2,3−ジヘキシルマレイミド、2,3−ジオクチルマレイミド、2,3−ジデシルマレイミド等が例示される。
一般式(II−5)で表されるイミド化合物としては、具体的には、グルタルイミド、3−メチルグルタルイミド、3−エチルグルタルイミド、3−プロピルグルタルイミド、3−ブチルグルタルイミド、3−ヘキシルグルタルイミド、3−オクチルグルタルイミド、3−デシルグルタルイミド、2,4−ジメチルグルタルイミド、2,4−ジエチルグルタルイミド、2,4−ジプロピルグルタルイミド、2,4−ジブチルグルタルイミド、2,4−ジヘキシルグルタルイミド、2,4−ジオクチルグルタルイミド、2,4−ジデシルグルタルイミド等が例示される。
本発明で使用する原料である一般式(II−1)で表されるイミド類は、いずれも公知であるか、又は、対応するジカルボン酸若しくはその誘導体とアンモニア、尿素等とを用いて常法に従ってイミド化することにより容易に製造できる。
上記イミド類の純度は、100%のものであってもよいが、若干不純物を含むものであっても構わない。一般に、イミド類は、純度が90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは98重量%である。イミド類中には、水素還元条件下で目的の環状アミン類となる不純物(例えば、テトラヒドロフタルイミドの場合、二重結合の位置異性体、イミド環縮合位の立体異性体(シス体及びトランス体)等)を含んでいてもよい。その場合の該不純物の合計量が、原料イミド類総量に対して、10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下であれば特に問題はない。
金属触媒
本反応に使用する金属触媒としては、銅、亜鉛、ニッケル、銅−亜鉛、銅−クロム、亜鉛−クロム、銅−亜鉛−クロム及びこれらの酸化物から選ばれた少なくとも1種の触媒、並びにこれらにモリブデン、タングステン、マグネシウム、バリウム、アルミニウム、カルシウム、ジルコニウム、マンガン、ニッケル、ケイ素及びこれらの酸化物等を添加した変性触媒が例示される。また、上記触媒の混合物も使用できる。
好ましい触媒として、具体的には、銅−亜鉛酸化物、銅−亜鉛−クロム酸化物、銅−亜鉛−クロム−マグネシウム酸化物、銅−亜鉛−クロム−バリウム酸化物、銅−亜鉛−マグネシウム酸化物、銅−亜鉛−アルミニウム酸化物、銅−亜鉛−アルミニウム−バリウム酸化物、銅−亜鉛−アルミニウム−ケイ素酸化物、銅−クロム酸化物、銅−クロム−マグネシウム酸化物、銅−クロム−バリウム酸化物、銅−クロム−マンガン酸化物、銅−クロム−バリウム−マンガン酸化物、亜鉛−クロム酸化物等が例示される。
上記触媒を構成する各金属酸化物の含有比率は特に限定されないが、例えば、銅−クロム酸化物系の場合、CuO/Cr/Mn/BaO=35〜65/35〜65/0〜20/0〜20(重量比)、特に、40〜60/40〜60/0〜10/0〜10が好ましく、銅−亜鉛酸化物系触媒の場合、CuO/ZnO/Al/BaO/SiO=35〜65/35〜65/0〜20/0〜15/0〜15(重量比)特に、40〜60/40〜60/0〜15/0〜10/0〜10が好ましい。
更に、上記金属及び金属酸化物以外に、ケイソウ土、白土、グラファイト等の形成助剤を添加した触媒や上記の金属酸化物をアルミナやシリカ等の担体に担持させた触媒等が利用できる。
これらの触媒の形態は、特に限定されず、選択される形態に応じて粉末状、タブレット状等適宜選択して使用される。具体的には、回分或は連続の懸濁反応には粉末触媒が、又、固定床反応にはタブレット触媒等が用いられる。
粉末触媒の粒径は特に制限がないが、反応性及び反応後の濾過性の観点から平均粒径が1〜100μmが好ましく、特に3〜50μmが好ましい。
これらの担持触媒の調製方法は、特に限定されないが、含浸法、共沈法等の従来公知の方法を用いることができるほか、市販されているものをそのまま使用することもできる。これらの触媒は、使用する前に還元処理等の適当な活性化処理をした後で反応に供することが好ましい。
有機溶媒
本発明において用いられる有機溶媒としては、当該還元反応に不活性なもので、夫々単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用される。
推奨される有機溶媒としては、炭素数6〜20の芳香族炭化水素、炭素数6〜20の脂環式炭化水素、炭素数6〜20の脂肪族炭化水素、エーテル系溶媒等が例示される。
より具体的には、芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ブチルベンゼン、クメン、トリメチルベンゼン、アルキル(炭素数6〜14)ベンゼン、テトラヒドロナフタレン、エクソン社製の商品名ソルベッソ#150、同ソルベッソ#200などが例示される。
脂環式炭化水素としては、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、新日本理化社製の商品名リカソルブ800、同リカソルブ900などが例示される。
脂肪族炭化水素としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、ノナンなどが例示される。
エーテル系溶媒としては、鎖状エーテル系溶媒や環状エーテル系溶媒が挙げられる。鎖状エーテル系溶媒としては、エーテル結合(−O−)を少なくとも2個以上(好ましくは2〜5個)有する鎖状エーテル系溶媒が好ましい。また、環状エーテル系溶媒としては、エーテル結合(−O−)を少なくとも1個以上(好ましくは1又は2個)有するC−Cの環状エーテル系溶媒が好ましい。
上記エーテル系溶媒として、より具体的には、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、アニソールなどが例示される。
これらのうち、特にキシレン、エチルベンゼン、クメン、トリメチルベンゼン、テトラヒドロナフタレン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル等が好ましい。
本発明に有効に使用できる有機溶媒としては、ヒドロキシル基、エステル基、アミド基、イミド基、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基等の官能基や不飽和結合を有しない、還元反応条件下で不活性な有機溶媒が用いられる。
例えば、ヒドロキシル基を有する有機溶媒は、前記還元反応条件下において、環状アミン類と反応し、対応する3級アミンが生成する。また、その他のエステル基、アミド基、イミド基、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基等の官能基や不飽和結合を有する有機溶媒を用いた場合は、該有機溶媒自身が還元されたり、又は該有機溶媒に生成水が付加したりする。このため、上記官能基を有する有機溶媒を用いることは好ましくない。
還元反応
本反応に用いる水素ガスは、必ずしも高純度である必要はなく、還元反応に影響を与えない窒素やメタン等が含まれていても良い。
触媒の使用量は、特に限定されないが、触媒量が少ないと反応に長時間を要することになるため、通常は原料イミドを基準として0.1〜100重量%、特に0.5〜80重量%、より好ましくは1.0〜50重量%程度の範囲である。
反応温度は、150〜350℃、好ましくは200〜300℃の範囲である。150℃未満の温度では実用的な還元速度が得られにくく、350℃を越える温度では副反応や分解反応の原因となり、収率が低下する傾向が見られ、経済的に不利である。
反応圧力は、水素分圧で1〜30MPa、好ましくは3〜25MPaの範囲である。1MPa未満の水素分圧では実用的な還元速度が得られにくく、30MPaを越える水素分圧を用いても顕著な有意性は認められず、経済的に不利である。
有機溶媒の使用量としては、特に限定されるものではないが、使用量が多いと原料濃度の低下により生産性効率が悪化し、また少なすぎると反応がスムーズに進行しにくくなるため、通常、原料イミド類100重量部に対して、50〜5000重量部、好ましくは100〜3000重量部、更に好ましくは200〜2000重量部の範囲が推奨される。
本発明の環状アミン類の製造方法では、反応系から水素ガスと共に生成水及び還元生成物の環状アミン類を、連続的又は間欠的に系外に抜き出すことを特徴とする。有機溶媒の種類及び/又は反応条件によっては、生成水及び還元生成物の環状アミン類を水素ガスと共に系外に抜き出す際に、有機溶媒の抜き出される量も顕著になる。かかる場合には、抜き出される有機溶媒の量に応じて適宜反応系に新しい有機溶媒を追加することが好ましい。
反応系内の生成水及び生成する環状アミン類を水素ガスと共に反応系外に抜き出す方法としては、(1)水素ガスを気相部に導入し、気相部に存在する生成水及び該環状アミン類を水素ガスと共に系外に抜き出す方法や、(2)水素ガスを液相部に導入してバブリングさせ、液相部及び気相部に存在する生成水及び該環状アミン類を水素ガスと共に系外に抜き出す方法が推奨される。このように、水素ガスの供給場所は、反応系内の気相部でも液相部でもよいが、液相部に通気する方が生成水及び該環状アミン類の抜き出し効率を高める上で好ましい。なお、上記の方法を採用した場合でも、原料のイミド類が反応系外に抜き出されることのないように、反応系外に抜き出される水素量を適宜調整する。
反応系外に抜き出される水素量(抜き出される水素含有混合ガス中の水素ガスの量)は、連続的に抜き出す場合、当該反応の圧力、温度でのガス空間移動速度(hr−1)(以下、「GHSV」という。)として、0.1〜300hr−1、好ましくは0.5〜200hr−1、より好ましくは1〜100hr−1である。かかる水素量は、反応器及び反応条件によって異なり、運転時に適宣選択される。なお、水素の抜き出し量が少なすぎると生成水と触媒の接触の機会が多くなり、触媒の失活等の悪影響を与えるため好ましくない。
水素含有混合ガスの系外への抜き出しは、上記のように連続的に行うことが好ましいが、間欠的に行ってもよい。水素含有混合ガスの抜き出し量が少ない場合、生成水及び該環状アミン類の抜き出し効率が低下する。従って、間欠的に行う場合であっても水素含有混合ガスの抜き出し量を適宜多くして生成水及び該環状アミン類の抜き出しを促進することが好ましい。
抜き出された水素含有混合ガスの処理方法としては、そのまま大気中に放出して廃棄する方法もあるが、該水素含有混合ガスから生成水、生成する環状アミン類及び有機溶媒を除いた後の未反応水素ガスの全部又は一部を循環器を用いて反応系内に循環させて再使用する方法が好ましい。抜き出された水素含有混合ガス中から生成水、環状アミン類及び有機溶媒を除去する方法は、均圧コンデンサー等を用いて冷却、凝縮させ気液分離する等の公知の方法を採用すればよい。分離された水素ガスは、水素循環器を用いて再使用することが望ましい。多量の水素ガスを廃棄することは経済的でなく、危険を伴うためである。
水素ガスを循環する場合には、循環させる水素ガスに生成水が含まれていると触媒に悪影響を与えたり、不活性ガスが蓄積すると反応系内の水素分圧の顕著な低下がみられる場合がある。このような場合、系内のガスの全部又はその一部を新しい水素ガスと置換すればよい。置換は間欠的に行ってもよいが、連続的に少量ずつ水素ガスを系に導入し、放出して行うこともできる。
本第2発明における反応系内から生成水及び還元生成物の環状アミン類を系外に抜き出す方法の具体例を以下に挙げる。例えば、電磁式攪拌機、調圧弁、水素循環機、均圧コンデンサー、気液分離器、反応器底部に設置した水素ガス導入管、有機溶媒仕込みポンプ等を備えたオートクレーブに、イミド類、溶媒、金属触媒を仕込み、水素分圧1〜30MPa程度、水素ガス空間移動速度(GHSV)0.1〜300hr−1、反応温度150〜350℃で2〜20時間還元反応を行う。反応器より水素と共に抜き出される生成水、溶媒及び環状アミン類は、均圧コンデンサーにより冷却、凝縮され、気液分離器に収容される。分離された水素ガスは、水素循環機により反応器底部から再導入される。反応消費分の水素ガスは補充される。抜き出される溶媒量相当分は、有機溶媒仕込みポンプより適宜反応器に供給される。反応終了後、得られた反応粗物を精製して環状アミン類を得る。
反応時間は、触媒量及びその他の条件によって適宜選択することができるが、通常2〜20時間、好ましくは4〜15時間である。
尚、反応設備としては、必要とされる水素圧に耐えるものであれば制限はなく、また還元反応の反応形式は回分方式に限定されるものではなく、原料の溶媒希釈溶液を連続的に供給して反応させる連続方式も採用できる。
上記の還元処理で得られる環状アミン類は、通常、蒸留、溶媒抽出、再結晶、吸着剤処理等により精製される。
生成する環状アミン類
上記第2発明の製法により、一般式(II−1)で表される原料のイミド類から、一般式(II−2)
Figure 2004048327
[式中、A20は前記に同じ。]
で表される環状アミン類が製造される。この環状アミン類は、一般式(II−1)で表されるイミド類のカルボニル基が、メチレン基に還元された化合物である。なお、原料としてAに不飽和基を有する一般式(II−1)で表されるイミド類を用いた場合は、該不飽和基が水素還元された飽和基を有する一般式(II−2)で表される環状アミン類に変換される。
一般式(II−2)において、A20が環構造を有する基の場合、A20としては芳香環、シクロヘキサン環、飽和の縮合環、及びビシクロ環からなる群から選ばれる1個若しくは2個以上の環を含有する基が挙げられる。
20で示される「芳香環、シクロヘキサン環、飽和の縮合環、及びビシクロ環よりなる群から選ばれる1個若しくは2個以上の環を含有する基」としては、芳香環(特にベンゼン環、ナフタレン環)、シクロヘキサン環、飽和の縮合環(特に、デカリン)、及びビシクロ環(特にノルボルナン、及び7−オキサ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン)よりなる群から選ばれる1個の環から2個の水素原子を除いて得られる2価の基を例示できる。
上記環はいずれも置換基として、炭素数1〜12のアルキル基を有していてもよい。特に、芳香環(特にベンゼン環、ナフタレン環)及び飽和の縮合環(特に、デカリン)は、少なくとも1個(特に1〜2個)の炭素数1〜12(特に1〜10)のアルキル基で置換されていてもよい。また、上記シクロヘキサン環は、少なくとも1個(特に1〜2個)の炭素数1〜12(特に1〜10)のアルキル基で置換されていてもよい。
特に、A20としては、次に示すような基を例示できる。
アルキル基(好ましくは炭素数1〜12、特に1〜10のアルキル基)でモノ置換されていてもよいベンゼン環から2個の水素原子を除いて得られる基、
アルキル基(好ましくは炭素数1〜12、特に1〜10のアルキル基)でモノ又はジ置換されていてもよいシクロヘキサン環から2個の水素原子を除いて得られる基、
飽和縮合環(特に、デカリン)から2個の水素原子を除いて得られる2価の基、又は
ノルボルナン、及び7−オキサ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタンからなる群から選ばれるビシクロ環から2個の水素原子を除いて得られる2価の基等が挙げられる。
一般式(II−2)中のA20で示される基としては、具体的には、
Figure 2004048327
等の環構造を有する基が例示される。
また、一般式(II−2)のうち、A20が環構造を有する基以外の場合、次に示す一般式(II−3’)
Figure 2004048327
[式中、R40及びR50は一般式(II−2)と同義である。]
で表される環状アミン類、又は一般式(II−5’)
Figure 2004048327
[式中、R40、R50及びR60は一般式(II−2)と同義である。]
で示される環状アミン類が挙げられる。
上記の一般式(II−3’)〜(II−5’)で表される環状アミン類の置換基であるR40、R50及びR60は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜18の飽和脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよいアリール基である。
炭素数1〜18の飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜18の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜4の直鎖アルキル基が挙げられる。具体的には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル等が例示される。
置換基を有していてもよいアリール基のアリール基としては、炭素数6〜10の単環又は2環のアリール基が挙げられる。具体的には、フェニル、ナフチル等が例示される。該アリール基は、1〜3個(特に1〜2個)の炭素数1〜18のアルキル基で置換されていてもよい。
このように、生成水及び該環状アミン類を連続的に又は間欠的に系外に抜き出しながら水素還元反応を行うことにより、1)触媒活性が低下しない、2)反応装置の内部表面が溶出金属イオンによりメッキされない、3)金属触媒の形状が変化しない、4)シス−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド及び/又はシス−ヘキサヒドロフタルイミドの還元において、生成水及び生成する環状アミン類を系外に抜き出さずに水素還元反応を行う従来の密閉系での方法と比べて、還元生成物であるオクタヒドロイソインドールの環縮合位の立体保持性(シス体/トランス体比)が格段に向上する。
特に、上記4)で示される様に、シス−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド及び/又はシス−ヘキサヒドロフタルイミドを水素還元してオクタヒドロイソインドールを製造する場合、トランス−オクタヒドロイソインドールへの立体異性化を極力抑制し、シス−オクタヒドロイソインドールが優先的に得られる(シス体が保持される)点は特筆すべきである。シス−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド及び/又はシス−ヘキサヒドロフタルイミドを通常の水素還元反応に付すと、還元生成物のオクタヒドロイソインドールのシス体/トランス体比は、70/30程度となる。おそらくこれが還元生成物の熱力学的平衡状態にある生成比率であると考えられる。しかし、生成水及び生成する環状アミン類を系外に抜き出しながら水素還元反応を行うことにより、生成水が速やかに系外に排出され触媒が高活性を維持できるため、イミドの還元反応が速やかに進行し続く異性化反応が抑制できると考えられる。上記の条件を用いた場合、シス体/トランス体比は、通常90/10以上、好ましくは92/8以上、より好ましくは95/5以上となり環縮合位がシスの立体が保持される。なお、シス体/トランス体比は、ガスクロマトグラフィー分析のピーク面積比による。
上記のようにして得られるオクタヒドロイソインドールのシス体/トランス体の混合物を含む反応粗物は、通常精密蒸留を行うことにより、所望のシス体の留分とトランス体を主成分とする該シス体/トランス体混合物の留分に分離される。
精密蒸留に用いる多段蒸留塔としては、その理論段数が20〜200段、好ましくは50〜150段の蒸留塔が推奨される。蒸留塔は通常用いられる方式であればよく、例えば棚段方式、充填物方式等が挙げられる。精密蒸留の精留条件は、蒸留するオクタヒドロイソインドールのシス体/トランス体の比、粗物中の不純物含有量等により適宜選択することができ、例えば、蒸留装置のボトム温度が30〜300℃、蒸留装置の塔頂圧力が常圧〜0.1kPa、還流比が1〜50で行うことができる。
この精密蒸留を用いることにより、所望の高純度のシス−オクタヒドロイソインドールを、収率20〜95%程度、好ましくは30〜95%程度、純度99%以上、好ましくは99.5%以上、より好ましくは99.7%以上の高純度で得ることができる。なお、純度はガスクロマトグラフィー分析のピーク面積比による。
精密蒸留で分離されたトランス体を主成分とする該シス体/トランス体混合物の留分は、後述する第3発明或いは第4発明の異性化反応工程の原料として用いることができる。
III.第3発明
原料オクタヒドロイソインドール
第3発明では、一般式(III−1)で表されるトランス−オクタヒドロイソインドールを、一般式(III−2)で表されるシス−オクタヒドロイソインドールに立体異性化することを特徴とする。具体的には、下記の反応式で示される。
Figure 2004048327
[式中、原料のトランス体の立体は相対配置を表す。]
本発明における原料は、異性化に用いられるトランス−オクタヒドロイソインドールは100%純度のものであってもよいが、シス−オクタヒドロイソインドールを含むものであってもよい。シス体とトランス体の比率(シス/トランス比率)としては、0/100〜60/40、好ましくは0/100〜40/60の範囲であれば特に問題はない。なお、シス体とトランス体の比率は、ガスクロマトグラフィー分析のピーク面積比を意味する。
異性化原料のオクタヒドロイソインドールとしては、例えば、特開平6−298727号公報等に記載の従来公知の製造方法により容易に得ることができる。或いは、シス−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド及び/又はシス−ヘキサヒドロフタルイミドを第1発明や第2発明の方法で水素還元した後に、所望のシス−オクタヒドロイソインドールを回収した残りのトランス体リッチのシス/トランス混合−オクタヒドロイソインドールを、異性化原料に用いることもできる。
金属触媒
本反応に使用する金属触媒としては、銅、亜鉛、ニッケル、銅−亜鉛、銅−クロム、亜鉛−クロム、銅−亜鉛−クロム及びこれらの酸化物から選ばれる1種又は2種以上の触媒並びにこれらにモリブデン、タングステン、マグネシウム、バリウム、アルミニウム、カルシウム、ジルコニウム、マンガン、ニッケル、ケイ素及びこれらの酸化物から選ばれる1種又は2種以上を添加した変性触媒が例示される。
具体的には、銅−亜鉛酸化物、銅−亜鉛−クロム酸化物、銅−亜鉛−クロム−マグネシウム酸化物、銅−亜鉛−クロム−バリウム酸化物、銅−亜鉛−マグネシウム酸化物、銅−亜鉛−アルミニウム酸化物、銅−亜鉛−アルミニウム−バリウム酸化物、銅−亜鉛−アルミニウム−ケイ素酸化物、銅−クロム酸化物、銅−クロム−マグネシウム酸化物、銅−クロム−バリウム酸化物、銅−クロム−マンガン酸化物、銅−クロム−マンガン−バリウム酸化物、銅−クロム−バリウム−マグネシウム酸化物、亜鉛−クロム酸化物等が好適に用いられる。
上記触媒を構成する各金属酸化物の含有比率は特に限定されないが、例えば、銅−クロム酸化物系の場合、CuO/Cr/Mn/BaO=35〜65/35〜65/0〜20/0〜20(重量比)、特に、40〜60/40〜60/0〜10/0〜10が好ましく、銅−亜鉛酸化物系触媒の場合、CuO/ZnO/Al/BaO/SiO=35〜65/35〜65/0〜20/0〜15/0〜15(重量比)特に、40〜60/40〜60/0〜15/0〜10/0〜10が好ましい。
触媒の形態は、無担持でも担体に担持したものでもよいが、無担持で用いると活性が高くなるため好ましい。担体に担持する場合、担体としては一般的に用いられている活性炭、ケイソウ土、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、ゼオライト等が挙げられ、特に限定されない。
これらの触媒の形態は、特に限定されず、選択される形態に応じて粉末状、タブレット状等適宜選択して使用される。具体的には、回分或は連続の懸濁反応には粉末触媒が、又、固定床反応にはタブレット触媒等が用いられる。
粉末触媒の粒径は特に制限がないが、反応性及び反応後の濾過性の観点から平均粒径が1〜100μmが好ましく、特に3〜50μmが好ましい。
担持触媒の場合、その調製方法は特に限定されないが、含浸法、共沈法等の従来公知の方法を用いることができるほか、市販されているものをそのまま使用することもできる。これらの金属触媒は、そのまま使用することもできるが、使用する前に還元処理等の適当な活性化処理をした後で反応に供することもできる。
溶媒
本反応では、無溶媒で反応を行っても、有機溶媒中で反応を行ってもよい。使用できる有機溶媒としては、使用する金属触媒にもよるが、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、脂肪族炭化水素、エーテル系溶媒等を用いることができる。
具体的には、芳香族炭化水素として、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ブチルベンゼン、クメン、トリメチルベンゼン、アルキル(炭素数6〜14)ベンゼン、テトラヒドロナフタレン、エクソン化学社製の商品名ソルベッソ#150、同ソルベッソ#200などが例示される。
脂環式炭化水素として、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、新日本理化株式会社製の商品名リカソルブ800、同リカソルブ900などが例示される。
脂肪族炭化水素として、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、ノナンなどが例示される。
エーテル系溶媒として、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、アニソールなどが例示される。
これらのうち、キシレン、エチルベンゼン、クメン、トリメチルベンゼン、テトラヒドロナフタレン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテルが好ましい。
立体異性化反応
本発明の異性化反応に用いる水素ガスは、必ずしも高純度である必要はなく、異性化反応に影響を与えない窒素やメタン等が含まれていてもよい。
触媒の適用量は、通常、異性化原料のオクタヒドロイソインドールに対し、0.05〜50重量%、好ましくは、0.1〜30重量%程度、より好ましくは0.5〜20重量%の範囲が反応速度と経済性の点から推奨される。
反応温度は、用いる触媒の種類や量により適宜選択されるが、150〜350℃、好ましくは200〜300℃程度である。150℃未満の温度では十分な異性化速度が得られず、350℃を越える温度では副反応や分解反応の原因となり、収率が低下する傾向が見られ、経済的に不利である。
反応圧力は、水素分圧で0.001〜30MPa、好ましくは0.5〜20MPa程度である。0.001MPa未満の水素分圧では工業的に十分な異性化速度が得られず、30MPaを越える水素分圧を用いても顕著な有意性は認められず、経済的に不利である。
有機溶媒の使用量としては、特に限定されるものではないが、使用量が多いと生産性が悪くなる。通常、異性化原料のオクタヒドロイソインドール100重量部に対して、0〜1000重量部、好ましくは0〜500重量部の範囲が推奨される。
反応時間は、触媒量及びその他の条件によって適宜選択することができるが、通常0.5〜30時間、好ましくは1〜15時間である。
本発明の異性化方法としては、特に限定されることはないが、上記金属触媒を反応溶液中に分散させて行う液相懸濁床による方法、金属触媒を反応器中に固定させ、これに反応溶液を作用させる固定床流通反応による方法などが採用される。例えば、懸濁床の場合、耐圧容器に金属触媒、異性化原料及び必要に応じて溶媒を仕込み、空間を水素で置換した後、所定の温度で所定時間攪拌する方法が挙げられる。
上記異性化反応を実施することにより、異性化原料のオクタヒドロイソインドール中のトランス体をシス体に異性化することができることからシス−オクタヒドロイソインドール含量の高い異性化反応生成物を得ることができる。本発明の異性化反応により、シス体/トランス体の比は、通常68/32〜82/18程度にすることができる。
こうして得られた異性化反応生成物は、触媒を濾過した後、蒸留、溶媒抽出、再結晶、吸着剤処理等の従来公知の精製方法を用いることにより、より高純度のシス−オクタヒドロイソインドールが得られる。
具体的には、オクタヒドロイソインドールのシス体/トランス体の混合物は、通常精密蒸留を行うことにより、所望のシス体の留分とトランス体を主成分とする該シス体/トランス体混合物の留分とに分離される。
精密蒸留に用いる多段蒸留塔としては、その理論段数が20〜200段、好ましくは50〜150段の蒸留塔が推奨される。蒸留塔は通常用いられる方式であればよく、例えば棚段方式、充填物方式等が挙げられる。精密蒸留の精留条件は、蒸留するオクタヒドロイソインドールのシス体/トランス体の比、粗物中の不純物含有量等により適宜選択することができ、例えば、蒸留装置のボトム温度が30〜300℃、蒸留装置の塔頂圧力が常圧〜0.1kPa、還流比が1〜50で行うことができる。
この精密蒸留を用いることにより、所望のシス−オクタヒドロイソインドールを、収率20〜80%程度、好ましくは30〜82%程度、純度99%以上、好ましくは99.5%以上、より好ましくは99.7%以上の高純度で得ることができる。なお、純度はガスクロマトグラフィー分析のピーク面積比による。
精密蒸留で分離されたトランス体を主成分とする該シス体/トランス体混合物の留分は、再度上記第3発明の異性化反応に供したり、或いは後述する第4発明の異性化反応工程の原料として用いることができる。
IV.第4発明
第4発明では、テトラヒドロフタルイミド及び/又はヘキサヒドロフタルイミドを水素還元して所望のシス−オクタヒドロイソインドールを回収し、副生するトランス−オクタヒドロイソインドールを異性化反応に供してシス体/トランス体混合物に変換し、さらに所望のシス体を分離精製して、トランス体をリサイクルして、所望のシス体を高純度かつ高収率で製造する方法を提供する。
具体的には、第4発明の高純度シス−オクタヒドロイソインドールの製造方法は、下記の(1)〜(4)の工程からなる。
(1)一般式(IV−1)又は一般式(IV−2)
Figure 2004048327
[式中、一般式(IV−2)における式:−CONHCO−で示される基はシクロヘキセン環上の隣接する2個の炭素原子上に存在する。]
で表されるイミド類を、
(a)還元反応条件下で不活性な水溶性有機溶媒中、金属触媒存在下、反応温度150〜350℃、水素分圧1〜30MPaの条件で水素還元反応に供して、又は
(b)有機溶媒中、金属触媒存在下、反応温度150〜350℃、水素分圧1〜30MPaの条件で、且つ生成水及び生成するオクタヒドロイソインドールを連続的に又は間欠的に抜き出しながら行う水素還元反応に供して
シス−オクタヒドロイソインドール及びトランス−オクタヒドロイソインドールの混合物(以下、「シス体/トランス体混合物」と呼ぶ)を製造する第1工程、
(2)第1工程で得られるシス体/トランス体混合物から所望の高純度シス体を回収し、トランス体又はトランス体が主成分であるトランス体/シス体混合物を分離する第2工程、
(3)第2工程で分離されたトランス体又はトランス体が主成分であるトランス体/シス体混合物を、金属触媒存在下、反応温度150〜350℃、水素分圧0.001〜30MPaの条件で立体異性化反応に供して、シス体含量が増大したシス体/トランス体混合物を得る第3工程、及び
(4)第3工程で得られるシス体含量が増大したシス体/トランス体混合物から所望の高純度シス体を回収し、トランス体又はトランス体が主成分であるトランス体/シス体混合物を分離する第4工程。
以下、上記の第1工程から第4工程について詳細に説明する。
(1)第1工程
第1工程は、一般式(IV−1)で表されるヘキサヒドロフタルイミド及び/又は一般式(IV−2)で表されるテトラヒドロフタルイミドを、上述の工程(a)、又は工程(b)を用いて水素還元することにより、シス−オクタヒドロイソインドール及びトランス−オクタヒドロイソインドールの混合物(シス体/トランス体混合物)を製造する。
原料
原料となる上記一般式(IV−1)で表されるヘキサヒドロフタルイミド及び一般式(IV−2)で表されるテトラヒドロフタルイミドは、いずれも公知の方法により製造される。ヘキサヒドロフタルイミドは、シス体、トランス体、或いは両者の混合物であってもよいが、シス−オクタヒドロイソインドールを優位に取得する観点から、シス体が好ましく選択される。また、テトラヒドロフタルイミドも、二重結合の位置異性体や立体構造異性体のいずれをも採用することができるが、シス−オクタヒドロイソインドールを優位に取得する観点から、シス−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミドが好ましく選択される。
好ましい原料であるシス−ヘキサヒドロフタルイミド及びシス−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミドの製造方法としては、次のような方法が例示される。
Figure 2004048327
まず、ブタジエンと無水マレイン酸を、常法のディールズ−アルダー反応に供して化合物(V−1)を得る。これを常法により還元(例えば、H−Pd/C)することにより、化合物(V−2)を得る。続いて、化合物(V−1)又は化合物(V−2)にアンモニア等を作用させて酸無水物をイミド化し、それぞれシス−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド(IV−2a)cis又はシス−ヘキサヒドロフタルイミド(IV−1)cisを得る。なお、化合物(IV−1)cisは、化合物(IV−2a)cisを常法により還元(例えば、H−Pd/C)して得ることもできる。かくして得られるシス−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド(IV−2a)cis及び/又はシス−ヘキサヒドロフタルイミド(IV−1)cisは、本発明の原料として用いられる。
<工程(a)>
工程(a)は前述の第1発明と同様にして実施することができる。具体的には以下の通りである。
金属触媒
本反応に使用する金属触媒としては、銅、亜鉛、ニッケル、銅−亜鉛、銅−クロム、亜鉛−クロム、銅−亜鉛−クロム及びこれらの酸化物から選ばれた少なくとも1種の金属触媒、並びにこれらにモリブデン、タングステン、マグネシウム、バリウム、アルミニウム、カルシウム、ジルコニウム、マンガン、ニッケル、ケイ素及びこれらの酸化物等を添加した変性触媒が例示される。又、上記触媒の混合物も使用できる。
好ましい触媒として、具体的には、銅−亜鉛酸化物、銅−亜鉛−クロム酸化物、銅−亜鉛−クロム−マグネシウム酸化物、銅−亜鉛−クロム−バリウム酸化物、銅−亜鉛−マグネシウム酸化物、銅−亜鉛−アルミニウム酸化物、銅−亜鉛−アルミニウム−バリウム酸化物、銅−亜鉛−アルミニウム−ケイ素酸化物、銅−クロム酸化物、銅−クロム−マグネシウム酸化物、銅−クロム−バリウム酸化物、銅−クロム−マンガン酸化物、銅−クロム−バリウム−マンガン酸化物、亜鉛−クロム酸化物等が例示される。
上記触媒を構成する各金属酸化物の含有比率は特に限定されないが、例えば、銅−クロム酸化物系の場合、CuO/Cr/Mn/BaO=35〜65/35〜65/0〜20/0〜20(重量比)、特に、40〜60/40〜60/0〜10/0〜10が好ましく、銅−亜鉛酸化物系触媒の場合、CuO/ZnO/Al/BaO/SiO=35〜65/35〜65/0〜20/0〜15/0〜15(重量比)特に、40〜60/40〜60/0〜15/0〜10/0〜10が好ましい。
更に、上記金属及び金属酸化物以外に、ケイソウ土、白土、グラファイト等の形成助剤を添加した触媒や上記の金属酸化物をアルミナやシリカ等の担体に担持させた触媒等が利用できる。
これらの触媒の形態は、特に限定されず、選択される形態に応じて粉末状、タブレット状等適宜選択して使用される。具体的には、回分或は連続の懸濁反応には粉末触媒が、又、固定床反応にはタブレット触媒等が用いられる。
粉末触媒の粒径は特に制限がないが、反応性及び反応後の濾過性の観点から平均粒径が1〜100μmが好ましく、特に3〜50μmが好ましい。
これらの担持触媒の製造方法は、特に限定されることはなく、例えば、含浸法、共沈法等の従来公知の方法により容易に製造できる。これら触媒は、市販されているものでもよく、特に限定されるものではない。これら触媒は、そのまま用いることもできるが、使用する前に還元処理等の適当な活性化処理をした後で反応に供することが好ましい。
有機溶媒
本発明で用いられる有機溶媒は、還元反応条件下で不活性な水溶性有機溶媒である。ここで水溶性有機溶媒とは、該有機溶媒と水とを混合した場合に有機相と水相とからなる二相系を形成しない有機溶媒(即ち、水と相溶性を有する有機溶媒)であれば特に制限は無いが、水への溶解度(20℃で水100g中に溶解する有機溶媒の重量)が20g以上である有機溶媒であれば良く、好ましくは50g以上、特に100g以上である有機溶媒が好ましい。
また、上記水溶性溶媒の中でも、本発明に有効に使用できる水溶性有機溶媒としては、その溶解度パラメーターが8〜11.5(好ましくは、8.5〜11.0)の範囲の有機溶媒が好ましい。
ここで、溶解度パラメーター(δ)とは、例えば、J.H.Hildebrand,R.L.Scott;“Solubility of Non−electrolytes”Chap.20,Rein hold(1950)に記載されているように、下記の式に従って求めることができる。
δ=(E/V)0.5
[但し、Eはモル蒸発熱(cal)を、Vは分子容(cc)を表す]
また、本発明の方法においては、H.Burrell;Off.Dig.,29,1069(1957)に記載されている溶媒の溶解度パラメーターδを用いて算出した。
かかる水溶性有機溶媒を用いることにより、反応中に生成する水との相溶性が良好となり、水と触媒との接触が減るため触媒失活を抑制することができる。溶解度パラメーターが8未満の有機溶媒では、原料イミド類及び生成する環状アミン類と相溶性が低くなる為反応率が低下し、さらに水との相溶性が低くなるため金属触媒が副生する水の影響を受け易くなる傾向が見られ、一方、溶解度パラメーターが11.5を越える有機溶媒で上記還元条件下において不活性なものは容易に入手することは困難である。
上記水溶性有機溶媒のうち、ヒドロキシル基、エステル基、アミド基、イミド基、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基等の官能基や不飽和結合を有しない還元反応条件下で不活性な水溶性有機溶媒が用いられる。
例えば、ヒドロキシル基を有する水溶性有機溶媒は、前記還元反応条件下において、生成物の環状アミン類と反応し、3級アミンが生成する。また、その他のエステル基、アミド基、イミド基、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基等の官能基や不飽和結合を有する水溶性有機溶媒を用いた場合は、該有機溶媒自身が還元されたり、又は該有機溶媒に生成水が付加したりする。このため、上記官能基を有する有機溶媒を用いることは好ましくない。
本発明で用いられる溶解度パラメーターが8〜11.5の範囲の水溶性有機溶媒としては、エーテル系溶媒、特に鎖状エーテル系溶媒や環状エーテル系溶媒が挙げられる。鎖状エーテル系溶媒としては、エーテル結合(−O−)を少なくとも2個以上(好ましくは2〜5個)有する鎖状エーテル系溶媒が好ましい。特に、一般式
O−(CHCHO)m−R
[式中、R及びRは同一又は異なって、C−Cアルキル基であり、mは1〜4の整数を表す。]
で表される溶媒が好ましい。特に、R及びRがメチルであり、mが3である溶媒、即ちトリエチレングリコールジメチルエーテルが好ましい。
また、環状エーテル系溶媒としては、エーテル結合(−O−)を少なくとも1個以上(好ましくは1又は2個)有するC−Cの環状エーテル系溶媒が好ましい。
上記エーテル系溶媒として、より具体的には、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等が例示される。これらの溶媒は、一種又は二種以上混合して用いることができる。
その中でも特に、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルが推奨される。
さらに、上記以外の溶解度パラメーターが8〜11.5の範囲であり本発明の製法に悪影響を与えない水溶性有機溶媒としては、ピリジン、ピペリジン、モルフォリン等の含窒素化合物が例示される。これらは、単独で又は2種以上の混合物として用いることができ、また前記エーテル系溶媒と混合して用いることもできる。
なお、本発明で用いられる溶媒は、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲で、上記の溶解度パラメーターが8〜11.5の範囲の水溶性有機溶媒に他の非水溶性有機溶媒(例えば、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、脂肪族炭化水素など)を加えた混合溶媒を用いても良い。通常、用いる溶媒中、溶解度パラメーターが8〜11.5の範囲の水溶性有機溶媒が20〜100体積%程度、好ましくは50〜100体積%程度であればよい。
還元反応
本反応に用いる水素ガスは、必ずしも高純度である必要はなく、還元反応に影響を与えない窒素やメタン等が含まれていても良い。
触媒の適用量は、通常、イミド類に対し、0.1〜100重量%、好ましくは0.5〜80重量%程度、より好ましくは1.0〜50重量%程度の範囲で選択される。
反応温度は、150〜350℃、好ましくは200〜300℃程度である。150℃未満の温度では十分な還元速度が得られず、350℃を越える温度では副反応や分解反応の原因となり、収率が低下する傾向が見られ、経済的に不利である。
反応圧力は、水素分圧で1〜30MPa、好ましくは3〜25MPa程度である。1MPa未満の水素分圧では工業的に十分な還元速度が得られず、30MPaを越える水素分圧を用いても顕著な有意性は認められず、経済的に不利である。
溶媒の使用量としては、生成水が溶媒に相溶する量であれば特に限定されないが、通常、イミド類100重量部に対して、50〜5000重量部、好ましくは100〜3000重量部、更に好ましくは200〜2000重量部の範囲が推奨される。
反応時間は、イミド類の種類、触媒量及びその他の条件によって適宜選択することができるが、通常2〜20時間、好ましくは4〜15時間である。
尚、本反応は、回分方式、連続方式を問わず可能である。
かくして、一般式(IV−1)で表されるヘキサヒドロフタルイミド及び一般式(IV−2)で表されるテトラヒドロフタルイミドは、下記に示す様に、シス−オクタヒドロイソインドール(IV−3)cis及びトランス−オクタヒドロイソインドール(IV−3)transに変換される。そのシス体及びトランス体の比(シス体/トランス体比)は、68/32〜82/18程度の混合物となる。
Figure 2004048327
<工程(b)>
工程(b)は前述の第2発明と同様にして実施することができる。具体的には以下の通りである。
金属触媒
本反応に使用する金属触媒としては、銅、亜鉛、ニッケル、銅−亜鉛、銅−クロム、亜鉛−クロム、銅−亜鉛−クロム及びこれらの酸化物から選ばれた少なくとも1種の金属触媒、並びにこれらにモリブデン、タングステン、マグネシウム、バリウム、アルミニウム、カルシウム、ジルコニウム、マンガン、ニッケル、ケイ素及びこれらの酸化物等を添加した変性触媒が例示される。又、上記触媒の混合物も使用できる。
好ましい触媒として、具体的には、銅−亜鉛酸化物、銅−亜鉛−クロム酸化物、銅−亜鉛−クロム−マグネシウム酸化物、銅−亜鉛−クロム−バリウム酸化物、銅−亜鉛−マグネシウム酸化物、銅−亜鉛−アルミニウム酸化物、銅−亜鉛−アルミニウム−バリウム酸化物、銅−亜鉛−アルミニウム−ケイ素酸化物、銅−クロム酸化物、銅−クロム−マグネシウム酸化物、銅−クロム−バリウム酸化物、銅−クロム−マンガン酸化物、銅−クロム−バリウム−マンガン酸化物、亜鉛−クロム酸化物等が例示される。
上記触媒を構成する各金属酸化物の含有比率は特に限定されないが、例えば、銅−クロム酸化物系の場合、CuO/Cr/Mn/BaO=35〜65/35〜65/0〜20/0〜20(重量比)、特に、40〜60/40〜60/0〜10/0〜10が好ましく、銅−亜鉛酸化物系触媒の場合、CuO/ZnO/Al/BaO/SiO=35〜65/35〜65/0〜20/0〜15/0〜15(重量比)特に、40〜60/40〜60/0〜15/0〜10/0〜10が好ましい。
更に、上記金属及び金属酸化物以外に、ケイソウ土、白土、グラファイト等の形成助剤を添加した触媒や上記の金属酸化物をアルミナやシリカ等の担体に担持させた触媒等が利用できる。
これらの触媒の形態は、特に限定されず、選択される形態に応じて粉末状、タブレット状等適宜選択して使用される。具体的には、回分或は連続の懸濁反応には粉末触媒が、又、固定床反応にはタブレット触媒等が用いられる。
粉末触媒の粒径は特に制限がないが、反応性及び反応後の濾過性の観点から平均粒径が1〜100μmが好ましく、特に3〜50μmが好ましい。
これらの担持触媒の製造方法は、特に限定されることはなく、例えば、含浸法、共沈法等の従来公知の方法により容易に製造できる。これら触媒は、市販されているものでもよく、特に限定されるものではない。これら触媒は、そのまま用いることもできるが、使用する前に還元処理等の適当な活性化処理をした後で反応に供することが好ましい。
有機溶媒
本発明において用いられる有機溶媒としては、当該還元反応に不活性なもので、夫々単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用される。
推奨される有機溶媒としては、炭素数6〜20の芳香族炭化水素、炭素数6〜20の脂環式炭化水素、炭素数6〜20の脂肪族炭化水素、エーテル系溶媒等が例示される。
より具体的には、芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ブチルベンゼン、クメン、トリメチルベンゼン、アルキル(炭素数6〜14)ベンゼン、テトラヒドロナフタレン、エクソン社製の商品名ソルベッソ#150、同ソルベッソ#200などが例示される。
脂環式炭化水素としては、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、新日本理化社製の商品名リカソルブ800、同リカソルブ900などが例示される。
脂肪族炭化水素としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、ノナンなどが例示される。
エーテル系溶媒としては、鎖状エーテル系溶媒や環状エーテル系溶媒が挙げられる。鎖状エーテル系溶媒としては、エーテル結合(−O−)を少なくとも2個以上(好ましくは2〜5個)有する鎖状エーテル系溶媒が好ましい。また、環状エーテル系溶媒としては、エーテル結合(−O−)を少なくとも1個以上(好ましくは1又は2個)有するC−Cの環状エーテル系溶媒が好ましい。
上記エーテル系溶媒として、より具体的には、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、アニソールなどが例示される。
これらのうち、特にキシレン、エチルベンゼン、クメン、トリメチルベンゼン、テトラヒドロナフタレン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル等が好ましい。
本発明に有効に使用できる有機溶媒としては、また、上記工程(a)で用いられる水溶性有機溶媒をも好適に用いることができる。該水溶性有機溶媒として、原料イミド類及び生成するオクタヒドロイソインドールと相溶性を有し、且つその溶解度パラメーターが8〜11.5(好ましくは、8.5〜11.0)の範囲の有機溶媒が好ましい。溶解度パラメーターが8〜11.5の具体的な水溶性有機溶媒は、上記工程(a)で用いられるものが例示される。
本発明に有効に使用できる有機溶媒としては、ヒドロキシル基、エステル基、アミド基、イミド基、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基等の官能基や不飽和結合を有しない、還元反応条件下で不活性な有機溶媒が用いられる。
例えば、ヒドロキシル基を有する有機溶媒は、前記還元反応条件下において、環状アミン類と反応し、対応する3級アミンが生成する。また、その他のエステル基、アミド基、イミド基、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基等の官能基や不飽和結合を有する有機溶媒を用いた場合は、該有機溶媒自身が還元されたり、又は該有機溶媒に生成水が付加したりする。このため、上記官能基を有する有機溶媒を用いることは好ましくない。
還元反応
本反応に用いる水素ガスは、必ずしも高純度である必要はなく、還元反応に影響を与えない窒素やメタン等が含まれていても良い。
触媒の使用量は、特に限定されないが、触媒量が少ないと反応に長時間を要することになるため、通常は原料イミドを基準として0.1〜100重量%、特に0.5〜80重量%、より好ましくは1.0〜50重量%程度の範囲である。
反応温度は、150〜350℃、好ましくは200〜300℃の範囲である。150℃未満の温度では実用的な還元速度が得られにくく、350℃を越える温度では副反応や分解反応の原因となり、収率が低下する傾向が見られ、経済的に不利である。
反応圧力は、水素分圧で1〜30MPa、好ましくは3〜25MPaの範囲である。1MPa未満の水素分圧では実用的な還元速度が得られにくく、30MPaを越える水素分圧を用いても顕著な有意性は認められず、経済的に不利である。
有機溶媒の使用量としては、特に限定されるものではないが、使用量が多いと原料濃度の低下により生産性効率が悪化し、また少なすぎると反応がスムーズに進行しにくくなるため、通常、原料イミド類100重量部に対して、50〜5000重量部、好ましくは100〜3000重量部、更に好ましくは200〜2000重量部の範囲が推奨される。
本発明のオクタヒドロイソインドールの製造方法では、反応系から水素ガスと共に生成水及び還元生成物のオクタヒドロイソインドールを、連続的又は間欠的に系外に抜き出すことを特徴とする。有機溶媒の種類及び/又は反応条件によっては、生成水及び還元生成物のオクタヒドロイソインドールを水素ガスと共に系外に抜き出す際に、有機溶媒の抜き出される量も顕著になる。かかる場合には、抜き出される有機溶媒の量に応じて適宜反応系に新しい有機溶媒を追加することが好ましい。
反応系内の生成水及び生成するオクタヒドロイソインドールを水素ガスと共に反応系外に抜き出す方法としては、(1)水素ガスを気相部に導入し、気相部に存在する生成水及びオクタヒドロイソインドールを水素ガスと共に系外に抜き出す方法や、(2)水素ガスを液相部に導入してバブリングさせ、液相部及び気相部に存在する生成水及びオクタヒドロイソインドールを水素ガスと共に系外に抜き出す方法が推奨される。このように、水素ガスの供給場所は、反応系内の気相部でも液相部でもよいが、液相部に通気する方が生成水及びオクタヒドロイソインドールの抜き出し効率を高める上で好ましい。なお、上記の方法を採用した場合でも、原料のイミド類が反応系外に抜き出されることのないように、反応系外に抜き出される水素量を適宜調整する。
反応系外に抜き出される水素量(抜き出される水素含有混合ガス中の水素ガスの量)は、連続的に抜き出す場合、当該反応の温度、圧力でのガス空間移動速度(hr−1)(以下、「GHSV」という。)として、0.1〜300hr−1、好ましくは0.5〜200hr−1、より好ましくは1〜100hr−1である。かかる水素量は、反応器及び反応条件によって異なり、運転時に適宣選択される。なお、水素の抜き出し量が少なすぎると生成水と触媒の接触の機会が多くなり、触媒の失活等の悪影響を与えるため好ましくない。
水素含有混合ガスの系外への抜き出しは、上記のように連続的に行うことが好ましいが、間欠的に行ってもよい。水素含有混合ガスの抜き出し量が少ない場合、生成水及びオクタヒドロイソインドールの抜き出し効率が低下する。従って、間欠的に行う場合であっても水素含有混合ガスの抜き出し量を適宜多くして生成水及びオクタヒドロイソインドールの抜き出しを促進することが好ましい。
抜き出された水素含有混合ガスの処理方法としては、そのまま大気中に放出して廃棄する方法もあるが、該水素含有混合ガスから生成水、生成するオクタヒドロイソインドール及び有機溶媒を除いた後の未反応水素ガスの全部又は一部を循環器を用いて反応系内に循環させて再使用する方法が好ましい。抜き出された水素含有混合ガス中から生成水、オクタヒドロイソインドール及び有機溶媒を除去する方法は、均圧コンデンサー等を用いて冷却、凝縮させ気液分離する等の公知の方法を採用すればよい。分離された水素ガスは、水素循環器を用いて再使用することが望ましい。多量の水素ガスを廃棄することは経済的でなく、危険を伴うためである。
水素ガスを循環する場合には、循環させる水素ガスに生成水が含まれていると触媒に悪影響を与えたり、不活性ガスが蓄積すると反応系内の水素分圧の顕著な低下がみられる場合がある。このような場合、系内のガスの全部又はその一部を新しい水素ガスと置換すればよい。置換は間欠的に行ってもよいが、連続的に少量ずつ水素ガスを系に導入し、放出して行うこともできる。
反応系内から生成水及び還元生成物のオクタヒドロイソインドールを系外に抜き出す方法の具体例を以下に挙げる。例えば、電磁式攪拌機、調圧弁、水素循環機、均圧コンデンサー、気液分離器、反応器底部に設置した水素ガス導入管、有機溶媒仕込みポンプ等を備えたオートクレーブに、イミド類、溶媒、金属触媒を仕込み、水素分圧1〜30MPa程度、水素ガス空間移動速度(GHSV)0.1〜300hr−1、反応温度150〜350℃で2〜20時間還元反応を行う。反応器より水素と共に抜き出される生成水、溶媒及びオクタヒドロイソインドールは、均圧コンデンサーにより冷却、凝縮され、気液分離器に収容される。分離された水素ガスは、水素循環機により反応器底部から再導入される。反応消費分の水素ガスは補充される。抜き出される溶媒量相当分は、有機溶媒仕込みポンプより適宜反応器に供給される。反応終了後、得られた反応粗物を精製してオクタヒドロイソインドールを得る。
反応時間は、触媒量及びその他の条件によって適宜選択することができるが、通常2〜20時間、好ましくは4〜15時間である。
尚、反応設備としては、必要とされる水素圧に耐えるものであれば制限はなく、また還元反応の反応形式は回分方式に限定されるものではなく、原料の溶媒希釈溶液を連続的に供給して反応させる連続方式も採用できる。
上記の還元処理で得られるオクタヒドロイソインドールは、通常、蒸留、溶媒抽出、再結晶、吸着剤処理等により精製される。
このように、生成水及びオクタヒドロイソインドールを連続的に又は間欠的に系外に抜き出しながら水素還元反応を行うことにより、1)触媒活性が低下しない、2)反応装置の内部表面が溶出金属イオンによりメッキされない、3)金属触媒の形状が変化しない、4)シス−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド及び/又はシス−ヘキサヒドロフタルイミドの還元において、生成水及び生成する環状アミン類を系外に抜き出さずに水素還元反応を行う従来の密閉系での方法と比べて、還元生成物であるオクタヒドロイソインドールの環縮合位の立体保持性(シス体/トランス体比)が格段に向上する。
かくして、一般式(IV−1)で表されるヘキサヒドロフタルイミド及び一般式(IV−2)で表されるテトラヒドロフタルイミドは、シス−オクタヒドロイソインドール(IV−3)cis及びトランス−オクタヒドロイソインドール(IV−3)transに変換される。そのシス体及びトランス体の比(シス体/トランス体比)が90/10以上、好ましくは92/8以上、より好ましくは95/5以上の混合物となる。
(2)第2工程
第1工程で得られるオクタヒドロイソインドールのシス体/トランス体混合物から、所望の高純度のシス体を回収し、トランス体又はトランス体が主成分であるトランス体/シス体混合物を分離する。
該混合物から、通常、蒸留、再結晶(有機酸塩にした後に再結晶する等)、吸着剤処理等によりシス体が精製され、回収される。高純度のシス体を得る観点から、蒸留(特に精密蒸留)を採用することが推奨される。
具体的な精密蒸留の操作を以下に示す。精密蒸留に用いる多段蒸留塔としては、その理論段数が20〜200段、好ましくは50〜150段の蒸留塔が推奨される。蒸留塔は通常用いられる方式であればよく、例えば棚段方式、充填物方式等が挙げられる。精密蒸留の精留条件は、蒸留するオクタヒドロイソインドールのシス体/トランス体の比、粗物中の不純物含有量等により適宜選択することができ、例えば、蒸留装置のボトム温度が30〜300℃、蒸留装置の塔頂圧力が常圧〜0.1kPa、還流比が1〜50で行うことができる。
上記の操作により、所望の高純度シス体の留分とトランス体又はトランス体を主成分とするトランス体/シス体混合物の留分に分離される。この精密蒸留を用いることにより、所望のシス−オクタヒドロイソインドールを、99%以上、好ましくは99.5%以上、より好ましくは99.7%以上の高い純度で得ることができる。なお、純度はガスクロマトグラフィー分析のピーク面積比による。
(3)第3工程
第2工程で分離されたトランス体又はトランス体が主成分であるトランス体/シス体混合物を、金属触媒存在下、反応温度150〜350℃、水素分圧0.001〜30MPaの条件で立体異性化反応に供して、シス体含量が増大したシス体/トランス体混合物を得る。
本工程における原料であるトランス体又はトランス体が主成分であるトランス体/シス体混合物とは、トランス−オクタヒドロイソインドールは100%純度のものであってもよく、又はシス−オクタヒドロイソインドールを含むものであってもよいという意味である。シス体とトランス体の比率(シス/トランス比率)が、0/100〜60/40、好ましくは0/100〜40/60の範囲にある混合物であれば特に問題はない。なお、シス体とトランス体の比率は、ガスクロマトグラフィー分析のピーク面積比を意味する。
金属触媒
本反応に使用する金属触媒としては、銅、亜鉛、ニッケル、銅−亜鉛、銅−クロム、亜鉛−クロム、銅−亜鉛−クロム及びこれらの酸化物から選ばれる1種又は2種以上の触媒並びにこれらにモリブデン、タングステン、マグネシウム、バリウム、アルミニウム、カルシウム、ジルコニウム、マンガン、ニッケル、ケイ素及びこれらの酸化物から選ばれる1種又は2種以上を添加した変性触媒が例示される。
具体的には、銅−亜鉛酸化物、銅−亜鉛−クロム酸化物、銅−亜鉛−クロム−マグネシウム酸化物、銅−亜鉛−クロム−バリウム酸化物、銅−亜鉛−マグネシウム酸化物、銅−亜鉛−アルミニウム酸化物、銅−亜鉛−アルミニウム−バリウム酸化物、銅−亜鉛−アルミニウム−ケイ素酸化物、銅−クロム酸化物、銅−クロム−マグネシウム酸化物、銅−クロム−バリウム酸化物、銅−クロム−マンガン酸化物、銅−クロム−マンガン−バリウム酸化物、銅−クロム−バリウム−マグネシウム酸化物、亜鉛−クロム酸化物等が好適に用いられる。
上記触媒を構成する各金属酸化物の含有比率は特に限定されないが、例えば、銅−クロム酸化物系の場合、CuO/Cr/Mn/BaO=35〜65/35〜65/0〜20/0〜20(重量比)、特に、40〜60/40〜60/0〜10/0〜10が好ましく、銅−亜鉛酸化物系触媒の場合、CuO/ZnO/Al/BaO/SiO=35〜65/35〜65/0〜20/0〜15/0〜15(重量比)特に、40〜60/40〜60/0〜15/0〜10/0〜10が好ましい。
触媒の形態は、無担持でも担体に担持したものでもよいが、無担持で用いると活性が高くなるため好ましい。担体に担持する場合、担体としては一般的に用いられている活性炭、ケイソウ土、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、ゼオライト等が挙げられ、特に限定されない。
これらの触媒の形態は、特に限定されず、選択される形態に応じて粉末状、タブレット状等適宜選択して使用される。具体的には、回分或は連続の懸濁反応には粉末触媒が、又、固定床反応にはタブレット触媒等が用いられる。
粉末触媒の粒径は特に制限がないが、反応性及び反応後の濾過性の観点から平均粒径が1〜100μmが好ましく、特に3〜50μmが好ましい。
担持触媒の場合、その調製方法は特に限定されないが、含浸法、共沈法等の従来公知の方法を用いることができるほか、市販されているものをそのまま使用することもできる。これらの金属触媒は、そのまま使用することもできるが、使用する前に還元処理等の適当な活性化処理をした後で反応に供することもできる。
溶媒
本反応では、無溶媒で反応を行っても、有機溶媒中で反応を行ってもよい。使用できる有機溶媒としては、使用する金属触媒にもよるが、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、脂肪族炭化水素、エーテル系溶媒等を用いることができる。
具体的には、芳香族炭化水素として、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ブチルベンゼン、クメン、トリメチルベンゼン、アルキル(炭素数6〜14)ベンゼン、テトラヒドロナフタレン、エクソン化学社製の商品名ソルベッソ#150、同ソルベッソ#200などが例示される。
脂環式炭化水素として、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、新日本理化株式会社製の商品名リカソルブ800、同リカソルブ900などが例示される。
脂肪族炭化水素として、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、ノナンなどが例示される。
エーテル系溶媒として、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、アニソールなどが例示される。
これらのうち、キシレン、エチルベンゼン、クメン、トリメチルベンゼン、テトラヒドロナフタレン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテルが好ましい。
立体異性化反応
本発明の異性化反応に用いる水素ガスは、必ずしも高純度である必要はなく、異性化反応に影響を与えない窒素やメタン等が含まれていてもよい。
触媒の適用量は、通常、異性化原料のオクタヒドロイソインドールに対し、0.05〜50重量%、好ましくは、0.1〜30重量%程度、より好ましくは0.5〜20重量%の範囲が反応速度と経済性の点から推奨される。
反応温度は、用いる触媒の種類や量により適宜選択されるが、150〜350℃、好ましくは200〜300℃程度である。150℃未満の温度では十分な異性化速度が得られず、350℃を越える温度では副反応や分解反応の原因となり、収率が低下する傾向が見られ、経済的に不利である。
反応圧力は、水素分圧で0.001〜30MPa、好ましくは0.5〜20MPa程度である。0.001MPa未満の水素分圧では工業的に十分な異性化速度が得られず、30MPaを越える水素分圧を用いても顕著な有意性は認められず、経済的に不利である。
有機溶媒の使用量としては、特に限定されるものではないが、使用量が多いと生産性が悪くなる。通常、異性化原料のオクタヒドロイソインドール100重量部に対して、0〜1000重量部、好ましくは0〜500重量部の範囲が推奨される。
反応時間は、触媒量及びその他の条件によって適宜選択することができるが、通常0.5〜30時間、好ましくは1〜15時間である。
本発明の異性化方法としては、特に限定されることはないが、上記金属触媒を反応溶液中に分散させて行う液相懸濁床による方法、金属触媒を反応器中に固定させ、これに反応溶液を作用させる固定床流通反応による方法などが採用される。例えば、懸濁床の場合、耐圧容器に金属触媒、異性化原料及び必要に応じて溶媒を仕込み、空間を水素で置換した後、所定の温度で所定時間攪拌する方法が挙げられる。
上記異性化反応を実施することにより、異性化原料のオクタヒドロイソインドール中のトランス体をシス体に異性化することができることからシス−オクタヒドロイソインドール含量の高い異性化反応生成物を得ることができる。本発明の異性化反応により、シス体/トランス体の比は、通常68/32〜82/18程度にすることができる。
(4)第4工程
第3工程で得られるシス体含量が増大したシス体/トランス体混合物から所望の高純度シス体を回収し、トランス体又はトランス体が主成分であるトランス体/シス体混合物を分離する。
該混合物から、通常、蒸留、再結晶(有機酸塩にした後に再結晶する等)、吸着剤処理等によりシス体が精製され、回収される。高純度のシス体を得る観点から、蒸留(特に精密蒸留)を採用することが推奨される。
具体的な精密蒸留の操作は、第2工程で示した操作に従って行うことができる。これにより、所望の高純度シス体の留分とトランス体を主成分とする該シス体/トランス体混合物の留分とに分離することができる。この精密蒸留を用いることにより、所望のシス−オクタヒドロイソインドールを、99%以上、好ましくは99.5%以上、より好ましくは99.7%以上の高い純度で得ることができる。なお、純度はガスクロマトグラフィー分析のピーク面積比による。
以上のように、第4発明によれば、原料のテトラヒドロフタルイミド及び/又はヘキサヒドロフタルイミドから、高い収率と高い純度のシス−オクタヒドロイソインドールを製造することができる。例えば、第1工程の工程(a)、第2工程、第3工程及び第4工程を採用することにより、原料のテトラヒドロフタルイミド及び/又はヘキサヒドロフタルイミドから、収率25%程度以上、好ましくは30〜90%程度で、純度99%以上、好ましくは99.5%以上、より好ましくは99.7%以上の高純度のシス−オクタヒドロイソインドールを製造することができる。また、第1工程の工程(b)、第2工程、第3工程及び第4工程を採用することにより、原料のテトラヒドロフタルイミド及び/又はヘキサヒドロフタルイミドから、収率75%程度以上、好ましくは80〜90%程度で、純度99%以上、好ましくは99.5%以上、より好ましくは99.7%以上の高純度のシス−オクタヒドロイソインドールを製造することができる。
さらに、上記の第2工程及び/又は第4工程で分離されたトランス体又はトランス体が主成分であるシス体/トランス体混合物を、金属触媒存在下、反応温度150〜350℃、水素分圧0.001〜30MPaの条件で立体異性化させて、シス体含量が増大したシス体/トランス体混合物を得る工程と、該シス体/トランス体混合物から所望の高純度シス体を回収しトランス体又はトランス体が主成分であるシス体/トランス体混合物を分離する工程との一連の工程を、1回行うか又は2回以上繰り返すことにより、シス−オクタヒドロイソインドールを高い収率で回収することもできる。ここで用いられる立体異性化反応は、上記の第3工程に従って実施することができ、シス体の分離回収工程は上記第2工程又は第4工程に従って実施することができる。これにより、トランス体を余すところなく所望のシス体に変換し、高純度シス体として高収率で取得することが可能となる。
以下、実施例を掲げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、オクタヒドロイソインドールの純度及びシス体とトランス体の比(以下、シス/トランス比と言う。)は、ガスクロマトグラフ分析のピーク面積比である。なお、ガスクロマトグラフ分析は、島津製作所製GC−14Bを用いて以下の条件で行った。
検出器:FID
キャピラリーカラム:J&W Schientific製DB−1701 長さ30m、内径0.53mm、膜厚1μm
キャリアーガス:ヘリウム
I.第1発明
実施例I−1
電磁式攪拌機を備えた500mlのオートクレーブに、1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド10g、テトラヒドロフラン(溶解度パラメータδ:9.5)100g及び銅−クロム−バリウム−マンガン酸化物触媒0.3gを仕込み、系を水素で置換した後、水素で加圧し、230℃、18MPaで4時間、還元反応を行った。室温まで冷却し、触媒を濾別した後、得られた濾液を塩酸酸性にし、水50mlで3回抽出した。
次いで、抽出した水層を水酸化ナトリウムでアルカリ性にもどし、エーテル50mlで3回抽出し、得られたエーテル層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、エーテルを減圧留去し、オクタヒドロイソインドールを収率91%で得た。
反応後、オートクレーブにメッキされた痕跡は確認されず、濾別した触媒中に塊状となった触媒は認められなかった。
実施例I−2
実施例I−1と同様の反応器に1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド10g、トリエチレングリコールジメチルエーテル(溶解度パラメータδ:8.7)100g及び銅−亜鉛酸化物触媒0.5gを仕込み、実施例I−1と同様にして250℃、5MPaで10時間、還元反応を行った。以下、実施例I−1と同様に処理してオクタヒドロイソインドールを収率88%で得た。
反応後、オートクレーブにメッキされた痕跡は確認されず、濾別した触媒中に塊状となった触媒は認められなかった。
実施例I−3
実施例I−1と同様の反応器にヘキサヒドロフタルイミド10g、1,4−ジオキサン(溶解度パラメータδ:10.0)100g及び銅−クロム酸化物触媒0.3gを仕込み、実施例I−1と同様にして280℃、20MPaで4時間、還元反応を行った。以下、実施例I−1と同様に処理してオクタヒドロイソインドールを収率90%で得た。
反応後、オートクレーブにメッキされた痕跡は確認されず、濾別した触媒中に塊状となった触媒は認められなかった。
実施例I−4
実施例I−1と同様の反応器にフタルイミド10g、ジエチレングリコールジメチルエーテル(溶解度パラメータδ:9.4)150g及び銅−亜鉛酸化物触媒1.5gを仕込み、実施例I−1と同様にして250℃、20MPaで5時間、還元反応を行った。以下、実施例I−1と同様に処理して3,4−ベンゾピロリジンを収率52%で得た。
反応後、オートクレーブにメッキされた痕跡は確認されず、濾別した触媒中に塊状となった触媒は認められなかった。
実施例I−5
実施例I−1と同様の反応器に2−オクチルスクシンイミド10g、エチレングリコールジメチルエーテル(溶解度パラメータδ:8.4)100g及び銅−亜鉛酸化物触媒1.0gを仕込み、実施例I−1と同様にして230℃、20MPaで4時間、還元反応を行った。以下、実施例I−1と同様に処理して3−オクチルピロリジンを収率43%で得た。
反応後、オートクレーブにメッキされた痕跡は確認されず、濾別した触媒中に塊状となった触媒は認められなかった。
実施例I−6
実施例I−1と同様の反応器に5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸イミド10g、トリエチレングリコールジメチルエーテル(溶解度パラメータδ:8.7)100g及び銅−亜鉛−アルミニウム酸化物触媒1.0gを仕込み、実施例I−1と同様にして250℃、18MPaで4時間、還元反応を行った。以下、実施例I−1と同様に処理して、対応するピロリジン誘導体を収率74%で得た。
反応後、オートクレーブにメッキされた痕跡は確認されず、濾別した触媒中に塊状となった触媒は認められなかった。
実施例I−7
実施例I−1と同様の反応器に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ジイミド10g、テトラヒドロフラン(溶解度パラメータδ:9.5)及び銅−クロム−マンガン酸化物触媒2.0gを仕込み、実施例I−1と同様にして250℃、20MPaで7時間、還元反応を行った。以下、実施例I−1と同様に処理して対応するジピロリジン誘導体を収率51%で得た。
反応後、オートクレーブにメッキされた痕跡は確認されず、濾別した触媒中に塊状となった触媒は認められなかった。
実施例I−8
実施例I−1と同様の反応器に3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルエーテルテトラカルボン酸ジイミド10g、1,4−ジオキサン(溶解度パラメータδ:10.0)100g及び銅−亜鉛酸化物触媒1.5gを仕込み、実施例I−1と同様にして230℃、20MPaで5時間、還元反応を行った。以下、実施例I−1と同様に処理してジピロリジン誘導体を収率49%で得た。
反応後、オートクレーブにメッキされた痕跡は確認されず、濾別した触媒中に塊状となった触媒は認められなかった。
実施例I−9
電磁式撹拌機を備えた内容積30Lのオートクレーブに、シス−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド900g、トリエチレングリコールジメチルエーテル(溶解度パラメータδ:8.7)8000g及び銅−亜鉛−アルミニウム−バリウム酸化物触媒(触媒組成(wt%):CuO/ZnO/Al/BaO=44/45/6/5)90gを仕込み、系を水素で置換した後、水素で加圧し、250℃、5MPaで8時間、還元反応を行った。室温まで冷却し、触媒を濾別し、反応粗物を得た。
反応後のオートクレーブ内部表面がメッキされた痕跡は確認されず、濾別した触媒中に塊状となった触媒は認められなかった。
反応粗物のガスクロマトグラフィー分析の結果、オクタヒドロイソインドールのシス体/トランス体の比は73/27であった。
この反応粗物を、理論段数100段の精密蒸留装置を用いて、塔頂圧力2.7kPa、還流比30の条件で蒸留し、シス−オクタヒドロイソインドール382g(純度99.8%、収率51.2%)及びシス/トランス混合−オクタヒドロイソインドール270g(シス体/トランス体=35/65)を得た。
実施例I−10
実施例I−9と同様の反応器にシス−ヘキサヒドロフタルイミド900g、トリエチレングリコールジメチルエーテル(溶解度パラメータδ:8.7)8000g及び銅−亜鉛−アルミニウム−ケイ素酸化物触媒(触媒組成(wt%):CuO/ZnO/Al/SiO=44/45/6/5)90gを仕込み、実施例I−9と同様にして250℃、5MPaで8時間、還元は反応を行った。以下、実施例I−9と同様に処理して、反応粗物を得た。
反応粗物のガスクロマトグラフィー分析の結果、オクタヒドロイソインドールのシス体/トランス体の比は72/28であった。
反応後、オートクレーブにメッキされた痕跡は確認されず、濾別した触媒中に塊状となった触媒は認められなかった。
反応粗物を実施例I−9と同様に蒸留し、シス−オクタヒドロイソインドール373g(純度99.8%、収率50.7%)及びシス/トランス混合−オクタヒドロイソインドール274g(シス体/トランス体=34/66)を得た。
比較例I−1
実施例I−1と同様の反応器に1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド10g、キシレン(溶解度パラメータδ:9.0)100g及び銅−クロム−バリウム−マンガン酸化物触媒0.5gを仕込み、実施例I−1と同様にして230℃、18MPaで8時間、還元反応を行った。以下、実施例I−1と同様に処理してオクタヒドロイソインドールを収率86%で得た。
反応後、オートクレーブにメッキされた痕跡が認められ、濾別した触媒中に塊状となった触媒が多数認められた。
比較例I−2
実施例I−1と同様の反応器に1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド10g、シクロヘキサン(溶解度パラメータδ:8.2)100g及び銅−亜鉛酸化物触媒0.5gを仕込み、実施例I−1と同様にして250℃、5MPaで22時間、還元反応を行った。以下、実施例I−1と同様に処理してオクタヒドロイソインドールを収率82%で得た。
反応後、オートクレーブにメッキされた痕跡が認められ、濾別した触媒中に塊状となった触媒が多数認められた。
II.第2発明
実施例II−1
電磁式攪拌機、調圧弁、水素循環機、均圧コンデンサー、気液分離器、反応器底部に設置した水素ガス導入管及び有機溶媒仕込みポンプを備えた内容積30Lのオートクレーブに、シス−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド900g、キシレン8000g及び銅−クロム−バリウム−マンガン酸化物触媒18gを仕込み、水素分圧18MPa、ガス空間移動速度(GHSV)9.6hr−1、反応温度250℃で4時間、還元反応を行った。
反応器より抜き出される生成水、キシレン及びオクタヒドロイソインドールは、均圧コンデンサーにより冷却、凝縮させ、気液分離器に収容した。分離された水素ガスは、反応消費分の水素ガスを補充した後、水素循環機により反応器底部から再導入した。また、留出したキシレン量相当分は有機溶媒仕込みポンプより適宜反応器に供給した。
反応終了後、反応粗物を蒸留精製してオクタヒドロイソインドール700g(収率93.9%)を得た。得られたオクタヒドロイソインドールはガスクロマトグラフィー分析の結果、シス体/トランス体の比は95/5であった。
反応後のオートクレーブ内部表面がメッキされた痕跡は確認されず、また、濾別した触媒中に塊状となった触媒は認められなかった。
実施例II−2
実施例II−1と同様の反応器にヘキサヒドロフタルイミド900g、トリメチルシクロヘキサン8000g及び銅−亜鉛酸化物触媒45gを仕込み、水素分圧5MPa、GHSV30.4hr−1、反応温度280℃で10時間、還元反応を実施例II−1と同様に行った。以下、実施例II−1と同様に処理を行い、オクタヒドロイソインドール685g(収率93.1%)を得た。
得られたオクタヒドロイソインドールはガスクロマトグラフィー分析の結果、シス体/トランス体の比は93/7であった。
反応後のオートクレーブ内部表面がメッキされた痕跡は確認されず、また、濾別した触媒中に塊状となった触媒は認められなかった。
実施例II−3
実施例II−1と同様の反応器に2−オクチルスクシンイミド900g、テトラヒドロナフタレン8000g及び銅−クロム−バリウム−マンガン酸化物触媒36gを仕込み、水素分圧20MPa、GHSV9.2hr−1、反応温度230℃で5時間、還元反応を実施例II−1と同様に行った。以下、実施例II−1と同様に処理を行い、3−オクチルピロリジン564g(収率72.3%)を得た。
反応後のオートクレーブ内部表面がメッキされた痕跡は確認されず、また、濾別した触媒中に塊状となった触媒は認められなかった。
実施例II−4
実施例II−1と同様の反応器にフタルイミド900g、ジエチレングリコールジメチルエーテル8000g及び銅−亜鉛酸化物触媒27gを仕込み、水素分圧20MPa、GHSV7.2hr−1、反応温度250℃で6時間、還元反応を実施例II−1と同様に行った。以下、実施例II−1と同様に処理を行い、3,4−ベンゾピロリジン474g(収率65.1%)を得た。
反応後のオートクレーブ内部表面がメッキされた痕跡は確認されず、また、濾別した触媒中に塊状となった触媒は認められなかった。
実施例II−5
実施例II−1と同様の反応器に3−メチルグルタルイミド900g、デカヒドロナフタレン8000g及び銅−クロム酸化物触媒36gを仕込み、水素分圧18MPa、GHSV5.6hr−1、反応温度280℃で5時間、還元反応を実施例II−1と同様に行った。以下、実施例II−1と同様に処理を行い、4−メチルピペリジン361g(収率51.5%)を得た。
反応後のオートクレーブ内部表面がメッキされた痕跡は確認されず、また、濾別した触媒中に塊状となった触媒は認められなかった。
実施例II−6
実施例II−1と同様の反応器に5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸イミド900g、トリエチレングリコールジブチルエーテル8000g及び銅−クロム酸化物触媒18gを仕込み、水素分圧10MPa、GHSV17.2hr 、反応温度250℃で8時間、還元反応を実施例II−1と同様に行った。以下、実施例II−1と同様に処理を行い、対応するピロリジン誘導体が577g(収率76.3%)を得た。
反応後のオートクレーブ内部表面がメッキされた痕跡は確認されず、また、濾別した触媒中に塊状となった触媒は認められなかった。
実施例II−7
実施例II−1と同様の反応容器にシス−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド900g、トリエチレングリコールジメチルエーテル8000g及び銅−亜鉛−アルミニウム−ケイ素酸化物触媒(触媒組成(wt%):CuO/ZnO/Al/SiO=44/45/6/5)45gを仕込み、水素分圧5MPa、GHSV28.7hr−1、反応温度250℃で5時間、還元反応を実施例II−1と同様に行った。
反応後のオートクレーブ内部表面がメッキされた痕跡は確認されず、また、濾別した触媒中に塊状となった触媒は認められなかった。
反応粗物のガスクロマトグラフィー分析の結果、オクタヒドロイソインドールのシス体/トランス体の比は94/6であった。
この反応粗物を理論段数100段の精密蒸留装置を用いて、塔頂圧力2.7kPa、還流比30の条件で蒸留し、シス−オクタヒドロイソインドール600g(純度99.8%、収率80.5%)及びシス/トランス混合−オクタヒドロイソインドール56g(シス体/トランス体=35/65)を得た。
実施例II−8
実施例II−1と同様の反応器にシス−ヘキサヒドロフタルイミド900g、トリエチレングリコールジメチルエーテル8000g及び銅−亜鉛−アルミニウム−バリウム酸化物触媒(触媒組成(wt%):CuO/ZnO/Al/BaO=44/45/6/5)45gを仕込み、水素分圧5MPa、GHSV28.7hr−1、反応温度250℃で5時間、還元反応を実施例II−1と同様に行った。
反応後のオートクレーブ内部表面がメッキされた痕跡は確認されず、また、濾別した触媒中に塊状となった触媒は認められなかった。
反応粗物のガスクロマトグラフィー分析の結果、オクタヒドロイソインドールのシス体/トランス体の比は93/7であった。
この反応粗物を、実施例II−1と同様に蒸留し、シス−オクタヒドロイソインドール600g(純度99.8%、収率81.6%)及びシス/トランス混合−オクタヒドロイソインドール73g(シス体/トランス体=37/63)を得た。
比較例II−1
電磁式攪拌機を備えた30Lのオートクレーブに、シス−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド900g、キシレン8000g及び銅−クロム−バリウム−マンガン酸化物触媒18gを仕込み、水素分圧18MPa、反応温度250℃で8時間、還元反応を水素循環を行わないで密閉系で行った。室温まで冷却し、還元反応粗物中の触媒を濾別した後、得られた還元反応粗物を蒸留精製してオクタヒドロイソインドール610g(収率81.8%)を得た。
得られたオクタヒドロイソインドールはガスクロマトグラフィー分析の結果、シス体/トランス体の比は72/28であった。
反応後のオートクレーブ内部表面がメッキされた痕跡が認められ、また、濾別した触媒中に塊状となった触媒が多数認められた。
比較例II−2
比較例II−1と同様の反応器にシス−ヘキサヒドロフタルイミド900g、ジメチルシクロヘキサン8000g及び銅−亜鉛酸化物触媒45gを仕込み、水素分圧5MPa、反応温度280℃で18時間、還元反応を比較例II−1と同様に行った。以下、比較例II−1と同様に処理を行いオクタヒドロイソインドール590g(収率80.2%)を得た。
得られたオクタヒドロイソインドールはガスクロマトグラフィー分析の結果、シス体/トランス体の比は70/30であった。
反応後のオートクレーブ内部表面がメッキされた痕跡が認められ、また、濾別した触媒中に塊状となった触媒が多数認められた。
比較例II−3
比較例II−1と同様の反応器に2−オクチルスクシンイミド900g、キシレン8000g及び銅−クロム酸化物触媒27gを仕込み、水素分圧20MPa、反応温度250℃で6時間、還元反応を比較例II−1と同様に行った。以下、比較例II−1と同様に処理を行い3−オクチルピロリジン378g(収率48.4%)を得た。
反応後のオートクレーブ内部表面がメッキされた痕跡が認められ、また、濾別した触媒中に塊状となった触媒が多数認められた。
比較例II−4
比較例II−1と同様の反応器に3−メチルグルタルイミド900g、シクロヘキサン8000g及び銅−クロム−バリウム−マンガン酸化物触媒45gを仕込み、水素分圧5MPa、反応温度280℃で8時間、還元反応を比較例II−1と同様に行った。以下、比較例II−1と同様に処理を行い4−メチルピペリジン250g(収率35.6%)を得た。
反応後のオートクレーブ内部表面がメッキされた痕跡が認められ、また、濾別した触媒中に塊状となった触媒が多数認められた。
比較例II−5
比較例II−1と同様の反応器に5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸イミド900g、トルエン8000g及び銅−クロム酸化物触媒18gを仕込み、水素分圧10MPa、反応温度250℃で8時間、還元反応を比較例II−1と同様に行った。以下、比較例II−1と同様に処理を行い、対応するピロリジン誘導体が387g(収率51.2%)を得た。
反応後のオートクレーブ内部表面がメッキされた痕跡が認められ、また、濾別した触媒中に塊状となった触媒が多数認められた。
III.第3発明
実施例III−1
電磁式攪拌機を備えた500mlのオートクレーブに、オクタヒドロイソインドール100g(シス/トランス比=35/65)及び銅−クロム−マンガン−バリウム酸化物触媒1gを仕込み、系内を水素置換した後、水素圧力1MPa、反応温度250℃で7時間、異性化反応を行った。室温まで冷却し、触媒を濾別した後、得られた異性化反応生成物のガスクロマトグラフ分析の結果、オクタヒドロイソインドールの純度は88.2%、シス/トランス比は71/29であった。
実施例III−2
実施例III−1と同様の反応器に、オクタヒドロイソインドール100g(シス/トランス比=2/98)、トルエン30g及び銅−クロム−バリウム−マンガン酸化物触媒2gを仕込み、系内を水素置換した後、水素圧力1MPa、反応温度220℃で10時間、異性化反応を行った。室温まで冷却し、触媒を濾別した後、得られた異性化反応生成物のガスクロマトグラフ分析の結果、オクタヒドロイソインドールの純度は82.1%、シス/トランス比は70/30であった。
実施例III−3
実施例III−1と同様の反応器に、オクタヒドロイソインドール100g(シス/トランス比=35/65)及び銅−亜鉛酸化物触媒3gを仕込み、系内を水素置換した後、水素圧力10MPa、反応温度250℃で7時間、異性化反応を行った。室温まで冷却し、触媒を濾別した後、得られた異性化反応生成物のガスクロマトグラフ分析の結果、オクタヒドロイソインドールの純度は81.7%、シス/トランス比は71/29であった。
実施例III−4
実施例III−1と同様の反応器に、オクタヒドロイソインドール100g(シス/トランス比=2/98)、キシレン30g及び銅−亜鉛酸化物触媒5gを仕込み、系内を水素置換した後、水素圧力5MPa、反応温度240℃で8時間、異性化反応を行った。室温まで冷却し、触媒を濾別した後、得られた異性化反応生成物のガスクロマトグラフ分析の結果、オクタヒドロイソインドールの純度は83.5%、シス/トランス比は71/29であった。
実施例III−5
実施例III−1と同様の反応器に、オクタヒドロイソインドール100g(シス/トランス比=35/65)及び銅−亜鉛−アルミニウム酸化物触媒1gを仕込み、系内を水素置換した後、水素圧力1MPa、反応温度240℃で8時間、異性化反応を行った。室温まで冷却し、触媒を濾別した後、得られた異性化反応生成物のガスクロマトグラフ分析の結果、オクタヒドロイソインドールの純度は83.4%、シス/トランス比は70/30であった。
実施例III−6
実施例III−1と同様の反応器に、オクタヒドロイソインドール100g(シス/トランス比=2/98)、トリエチレングリコールジメチルエーテル20g及び銅−亜鉛−アルミニウム酸化物触媒3gを仕込み、系内を水素置換した後、水素圧力1MPa、反応温度250℃で7時間、異性化反応を行った。室温まで冷却し、触媒を濾別した後、得られた異性化反応生成物のガスクロマトグラフ分析の結果、オクタヒドロイソインドールの純度は82.4%、シス/トランス比は69/31であった。
実施例III−7
実施例III−1と同様の反応容器に、オクタヒドロイソインドール100g(シス/トランス比=35/65)、トリエチレングリコールジメチルエーテル20g及び銅−亜鉛−アルミニウム−バリウム酸化物触媒(触媒組成(wt%):CuO/ZnO/Al/BaO=44/45/6/5)3gを仕込み、系内を水素置換した後、水素分圧1MPa、反応温度250℃で6時間、異性化反応を行った。室温まで冷却し、触媒を濾別した後、得られた異性化反応粗物のガスクロマトグラフィー分析の結果、オクタヒドロイソインドールのシス/トランス比は72/28であった。
この異性化反応粗物を、理論段数100段の精密蒸留装置を用いて、塔頂圧力2.7kPa、還流比30の条件で蒸留し、シス−オクタヒドロイソインドール40.5g(純度99.8%、収率40.5%)及びシス/トランス混合−オクタヒドロイソインドール32.0g(シス体/トランス体=36/64)を得た。
実施例III−8
実施例III−1と同様の反応器に、オクタヒドロイソインドール100g(シス/トランス比=35/65)、トリエチレングリコールジメチルエーテル20g及び銅−亜鉛−アルミニウム−ケイ素酸化物触媒(触媒組成(wt%):CuO/ZnO/Al/SiO=44/45/6/5)3gを仕込み、系内を水素置換した後、水素分圧1MPa、反応温度250℃で6時間、異性化反応を行った。室温まで冷却し、触媒を濾別した後、得られた異性化反応粗物のガスクロマトグラフィー分析の結果、オクタヒドロイソインドールのシス/トランス比は71/29であった。
この異性化反応粗物を、理論段数100段の精密蒸留装置を用いて、塔頂圧力2.7kPa、還流比30の条件で蒸留し、シス−オクタヒドロイソインドール37.4g(純度99.8%、収率37.4%)及びシス/トランス混合−オクタヒドロイソインドール32.0g(シス体/トランス体=37/63)を得た。
IV.第4発明
実施例IV−1
(1)電磁式撹拌機を備えた内容積30Lのオートクレーブに、シス−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド900g、トリエチレングリコールジメチルエーテル8000g及び銅−亜鉛−アルミニウム−ケイ素酸化物触媒(触媒組成(wt%):CuO/ZnO/Al/SiO=44/45/6/5)90gを仕込み、系を水素で置換した後、水素で加圧し、250℃、5MPaで8時間、還元反応を行った。室温まで冷却し、触媒を濾別し、反応粗物を得た。
反応後のオートクレーブ内部表面がメッキされた痕跡は確認されず、濾別した触媒中に塊状となった触媒は認められなかった。
反応粗物のガスクロマトグラフィー分析の結果、オクタヒドロイソインドールのシス体/トランス体の比は72/28であった。
この反応粗物を、理論段数100段の精密蒸留装置を用いて、塔頂圧力2.7kPa、還流比30の条件で蒸留し、シス−オクタヒドロイソインドール375g(純度99.8%、収率50.3%)及びシス/トランス混合−オクタヒドロイソインドール280g(シス体/トランス体=35/65)を得た。
(2)電磁式撹拌機を備えた内容積1.5Lのオートクレーブに、上記(1)で得られたシス/トランス混合−オクタヒドロイソインドール280g(シス/トランス比=35/65)、トリエチレングリコールジメチルエーテル56g及び銅−亜鉛−アルミニウム−ケイ素酸化物触媒(触媒組成(wt%):CuO/ZnO/Al/SiO=44/45/6/5)9gを仕込み、系内を水素で置換した後、水素圧力1MPa、反応温度250℃で6時間、異性化反応を行った。室温まで冷却し、触媒を濾別した後、得られた異性化反応粗物のガスクロマトグラフィー分析の結果、シス/トランス比は71/29であった。
この異性化反応粗物を、理論段数100段の精密蒸留装置を用いて、塔頂圧力2.7kPa、還流比30の条件で蒸留し、シス−オクタヒドロイソインドール123g(純度99.8%、収率43.9%)及びシス/トランス混合−オクタヒドロイソインドール97g(シス体/トランス体=35/65)を得た。
上記(1)及び(2)で得られたシス−オクタヒドロイソインドールは、合計498g、総収率66.8%であった。
実施例IV−2
(1)電磁式撹拌機、調圧弁、水素循環器、均圧コンデンサー、気液分離器、反応器底部に設置した水素ガス導入管及び有機溶媒仕込みポンプを備えた内容積30Lのオートクレーブに、シス−ヘキサヒドロフタルイミド900g、トリエチレングリコールジメチルエーテル8000g及び銅−亜鉛−アルミニウム−バリウム酸化物触媒(触媒組成(wt%):CuO/ZnO/Al/BaO=44/45/6/5)90gを仕込み、水素分圧5MPa、GHSV34.5hr−1、反応温度250℃で4時間、還元反応を行った。
反応容器より抜き出された生成水、トリエチレングリコールジメチルエーテル及びオクタヒドロイソインドールは、均圧コンデンサーにより冷却、濃縮させ、気液分離器に収容した。分離された水素ガスは、反応消費分の水素ガスを補充した後、水素循環器により反応器底部から再導入した。また、留出したトリエチレングリコールジメチルエーテル量相当分は、有機溶媒仕込みポンプより適宜反応器に供給した。
反応後のオートクレーブ内部表面がメッキされた痕跡は確認されず、また、触媒中に塊状となった触媒は認められなかった。
反応粗物のガスクロマトグラフィー分析の結果、オクタヒドロイソインドールのシス体/トランス体の比は90/10であった。
この反応粗物を、理論段数100段の精密蒸留装置を用いて、塔頂圧力2.7kPa、還流比30の条件で蒸留し、シス−オクタヒドロイソインドール583g(純度99.8%、収率79.2%)及びシス/トランス混合−オクタヒドロイソインドール97g(シス体/トランス体=34/66)を得た。
(2)電磁式撹拌機を備えた内容積500mLのオートクレーブに、上記(1)で得られたシス/トランス混合−オクタヒドロイソインドール97g(シス/トランス比=34/66)、トリエチレングリコールジメチルエーテル10g及び銅−亜鉛−アルミニウム−バリウム酸化物触媒(触媒組成(wt%):CuO/ZnO/Al/BaO=44/45/6/5)3gを仕込み、系内を水素で置換した後、水素圧力1MPa、反応温度250℃で6時間、異性化反応を行った。室温まで冷却し、触媒を濾別した後、得られた異性化反応粗物のガスクロマトグラフィー分析の結果、シス/トランス比は70/30であった。
この異性化反応粗物を、理論段数100段の精密蒸留装置を用いて、塔頂圧力2.7kPa、還流比30の条件で蒸留し、シス−オクタヒドロイソインドール35.9g(純度99.8%、収率37.0%)及びシス/トランス混合−オクタヒドロイソインドール31.6g(シス体/トランス体=36/64)を得た。
上記(1)及び(2)で得られたシス−オクタヒドロイソインドールは、合計618.9g、総収率84.1%であった。
発明の効果
本発明方法により、イミド類を水溶性有機溶媒中、金属触媒存在下、水素還元することにより、該金属触媒が副生する水の影響を受けることがなく工業的に有利な条件下で環状アミン類を収率よく製造することができる。
本発明方法により、イミド類から金属触媒存在下に水素還元して環状アミン類を製造する際に、該金属触媒が、副生する水の影響を受けることなく、且つ立体保持性よく環状アミン類を工業的に有利に製造できる。
本発明方法によりトランス−オクタヒドロイソインドールを金属触媒存在下、立体異性化することにより医薬品製造中間体として重要なシス−オクタヒドロイソインドールを工業的に有利に製造することができ、本発明の工業的意義は極めて大きい。
さらに、本発明により、テトラヒドロフタルイミド、ヘキサヒドロフタルイミド等のイミド類を水素還元してオクタヒドロイソインドールのシス体/トランス体混合物を製造した後において、所望のシス体の分離回収、副生するトランス体の立体異性化、所望のシス体の分離回収を行い、高純度のシス体を収率良く製造することができる。

Claims (23)

  1. 高純度シス−オクタヒドロイソインドールの製造方法であって、
    (1)一般式(IV−1)又は一般式(IV−2)
    Figure 2004048327
    [式中、一般式(IV−2)における式:−CONHCO−で示される基はシクロヘキセン環上の隣接する2個の炭素原子上に存在する。]
    で表されるイミド類を、
    (a)還元反応条件下で不活性な水溶性有機溶媒中、金属触媒存在下、反応温度150〜350℃、水素分圧1〜30MPaの条件で水素還元反応に供して、又は
    (b)有機溶媒中、金属触媒存在下、反応温度150〜350℃、水素分圧1〜30MPaの条件で、且つ生成水及び生成するオクタヒドロイソインドールを連続的に又は間欠的に抜き出しながら行う水素還元反応に供して
    シス−オクタヒドロイソインドール及びトランス−オクタヒドロイソインドールの混合物(以下、「シス体/トランス体混合物」と呼ぶ)を製造する第1工程、
    (2)第1工程で得られるシス体/トランス体混合物から所望の高純度シス体を回収し、トランス体又はトランス体が主成分であるトランス体/シス体混合物を分離する第2工程、
    (3)第2工程で分離されたトランス体又はトランス体が主成分であるトランス体/シス体混合物を、金属触媒存在下、反応温度150〜350℃、水素分圧0.001〜30MPaの条件で立体異性化反応に供して、シス体含量が増大したシス体/トランス体混合物を得る第3工程、及び
    (4)第3工程で得られるシス体含量が増大したシス体/トランス体混合物から所望の高純度シス体を回収し、トランス体又はトランス体が主成分であるトランス体/シス体混合物を分離する第4工程、
    を含む高純度シス−オクタヒドロイソインドールの製造方法。
  2. 分離されたトランス体又はトランス体が主成分であるトランス体/シス体混合物を、金属触媒存在下、反応温度150〜350℃、水素分圧0.001〜30MPaの条件で立体異性化させて、シス体含量が増大したシス体/トランス体混合物を得る工程と、該シス体/トランス体混合物から所望の高純度シス体を回収しトランス体又はトランス体が主成分であるトランス体/シス体混合物を分離する工程との一連の工程を、1回行うか又は2回以上繰り返す請求項1に記載の製造方法。
  3. 一般式(I−2)
    Figure 2004048327
    [式中、nは1又は2の整数を表す。A10は、
    Figure 2004048327
    若しくは
    Figure 2004048327
    で表される基(nが1の場合)、又は芳香環、シクロヘキサン環)飽和の縮合環、及びビシクロ環よりなる群から選ばれる1個若しくは2個以上の環を含有する基を表し、当該何れの環も置換基を有していてもよい。R10、R20及びR30は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜30の飽和の脂肪族炭化水素基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。]
    で表される環状アミン類の製造方法であって、一般式(I−1)
    Figure 2004048327
    [式中、nは1又は2の整数を表す。Aは、
    Figure 2004048327
    若しくは
    Figure 2004048327
    で表される基(nが1の場合)、又は芳香環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、飽和の縮合環、及びビシクロ環よりなる群から選ばれる1個若しくは2個以上の環を含有する基を表し、当該何れの環も置換基を有していてもよい。R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜30の飽和若しくは炭素数3〜30の不飽和の脂肪族炭化水素基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。]
    で表されるイミド類を、還元反応条件下で不活性な水溶性有機溶媒中、金属触媒存在下、反応温度150〜350℃、水素分圧1〜30MPaで水素還元反応に供することを特徴とする一般式(I−2)で表される環状アミン類の製造方法。
  4. 金属触媒が、銅、亜鉛、ニッケル、銅−亜鉛、銅−クロム、亜鉛−クロム、銅−亜鉛−クロム及びこれらの酸化物から選ばれた少なくとも1種の金属触媒並びにこれらにモリブデン、タングステン、マグネシウム、バリウム、アルミニウム、カルシウム、ジルコニウム、マンガン、ニッケル、ケイ素及びこれらの酸化物から選ばれた少なくとも1種を添加した変性触媒である請求項3に記載の環状アミン類の製造方法。
  5. 金属触媒が、銅−亜鉛酸化物、銅−亜鉛−クロム酸化物、銅−亜鉛−クロム−マグネシウム酸化物、銅−亜鉛−クロム−バリウム酸化物、銅−亜鉛−マグネシウム酸化物、銅−亜鉛−アルミニウム酸化物、銅−亜鉛−アルミニウム−バリウム酸化物、銅−亜鉛−アルミニウム−ケイ素酸化物、銅−クロム酸化物、銅−クロム−マグネシウム酸化物、銅−クロム−バリウム酸化物、銅−クロム−マンガン酸化物、銅−クロム−バリウム−マンガン酸化物及び亜鉛−クロム酸化物から選ばれた少なくとも1種である請求項4に記載の環状アミン類の製造方法。
  6. 水溶性有機溶媒の溶解度パラメーターが8〜11.5である請求項3に記載の環状アミン類の製造方法。
  7. 水溶性有機溶媒がエーテル系溶媒である請求項6に記載の環状アミン類の製造法。
  8. 水溶性有機溶媒が、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル及びトリエチレングリコールジメチルエーテルから選ばれた少なくとも1種である請求項7に記載の環状アミン類の製造法。
  9. イミド類が、1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド及び/又はヘキサヒドロフタルイミドである請求項3に記載の環状アミン類の製造方法。
  10. 一般式(II−2)
    Figure 2004048327
    [式中、A20
    Figure 2004048327
    若しくは
    Figure 2004048327
    で表される基、又は芳香環、シクロヘキサン環、飽和の縮合環及びビシクロ環よりなる群から選ばれる1個若しくは2個以上の環を含有する基を表し、当該何れの環も置換基を有していてもよい。R40、R50及びR60は同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜18の飽和の脂肪族炭化水素基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。]
    で表される環状アミン類の製造方法であって、一般式(II−1)
    Figure 2004048327
    [式中、Aは、
    Figure 2004048327
    若しくは
    Figure 2004048327
    で表される基、又は芳香環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、飽和の縮合環、及びビシクロ環よりなる群から選ばれる1個若しくは2個以上の環を含有する基を表し、当該何れの環も置換基を有していてもよい。R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜18の飽和若しくは炭素数3〜18の不飽和の脂肪族炭化水素基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。]
    で表されるイミド類を、有機溶媒中、金属触媒存在下、生成する水及び生成する一般式(I−2)で表される環状アミン類を連続的に又は間欠的に抜き出しながら水素還元反応を行うことを特徴とする一般式(I−2)で表される環状アミン類の製造方法。
  11. 金属触媒が、銅、亜鉛、ニッケル、銅−亜鉛、銅−クロム、亜鉛−クロム、銅−亜鉛−クロム及びこれらの酸化物から選ばれる少なくとも1種の触媒並びにこれらにモリブデン、タングステン、マグネシウム、バリウム、アルミニウム、カルシウム、ジルコニウム、マンガン、ニッケル、ケイ素及びこれらの酸化物から選ばれる少なくとも1種を添加した変性触媒である上記請求項10に記載の環状アミン類の製造方法。
  12. 金属触媒が、銅−亜鉛酸化物、銅−亜鉛−クロム酸化物、銅−亜鉛−クロム−マグネシウム酸化物、銅−亜鉛−クロム−バリウム酸化物、銅−亜鉛−マグネシウム酸化物、銅−亜鉛−アルミニウム酸化物、銅−亜鉛−アルミニウム−バリウム酸化物、銅−亜鉛−アルミニウム−ケイ素酸化物、銅−クロム酸化物、銅−クロム−マグネシウム酸化物、銅−クロム−バリウム酸化物、銅−クロム−マンガン酸化物、銅−クロム−バリウム−マンガン酸化物及び亜鉛−クロム酸化物から選ばれる少なくとも1種である上記請求項11に記載の環状アミン類の製造方法。
  13. 有機溶媒が、還元反応条件下で不活性な有機溶媒であることを特徴とする上記請求項10に記載の環状アミン類の製造方法。
  14. 有機溶媒が、炭素数6〜20の芳香族炭化水素、炭素数6〜20の脂環式炭化水素、炭素数6〜20の脂肪族炭化水素及びエーテル系溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種である上記請求項13に記載の環状アミン類の製造方法。
  15. 水素分圧が、1〜30MPaであり、反応温度が、150〜350℃である上記請求項10に記載の環状アミン類の製造方法。
  16. 生成水及び還元生成物の環状アミン類を水素ガスと共に連続的に又は間欠的に系外に抜き出しながら還元することを特徴とする上記請求項10に記載の環状アミン類の製造方法。
  17. 水素ガスを気相部へ導入し、気相部に存在する生成水及び還元生成物の環状アミン類を水素ガスと共に系外に抜き出すことを特徴とする上記請求項16に記載の環状アミン類の製造方法。
  18. 水素ガスを液相部に導入してバブリングさせ、液相部及び気相部に存在する生成水及び還元生成物の環状アミン類を水素ガスと共に系外に抜き出すことを特徴とする上記請求項16に記載の環状アミン類の製造方法。
  19. 反応中に抜き出された全部又は一部の水素ガスを還元反応に循環使用することを特徴とする上記請求項16に記載の環状アミン類の製造方法。
  20. イミド類が、シス−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド及び/又はシス−ヘキサヒドロフタルイミドである上記請求項10に記載の環状アミン類の製造方法。
  21. トランス−オクタヒドロイソインドールを、金属触媒存在下、反応温度150〜350℃、水素分圧0.001〜30MPaで立体異性化することを特徴とするシス−オクタヒドロイソインドールの製造方法。
  22. 金属触媒が、銅、亜鉛、ニッケル、銅−亜鉛、銅−クロム、亜鉛−クロム、銅−亜鉛−クロム及びこれらの酸化物から選ばれる1種又は2種以上の触媒並びにこれらにモリブデン、タングステン、マグネシウム、バリウム、アルミニウム、カルシウム、ジルコニウム、マンガン、ニッケル、ケイ素及びこれらの酸化物から選ばれる1種又は2種以上を添加した変性触媒である請求項21に記載のシス−オクタヒドロイソインドールの製造方法。
  23. 金属触媒が、銅−亜鉛酸化物、銅−亜鉛−クロム酸化物、銅−亜鉛−クロム−マグネシウム酸化物、銅−亜鉛−クロム−バリウム酸化物、銅−亜鉛−マグネシウム酸化物、銅−亜鉛−アルミニウム酸化物、銅−亜鉛−アルミニウム−バリウム酸化物、銅−亜鉛−アルミニウム−ケイ素酸化物、銅−クロム酸化物、銅−クロム−マグネシウム酸化物、銅−クロム−バリウム酸化物、銅−クロム−マンガン酸化物、銅−クロム−バリウム−マグネシウム酸化物、亜鉛−クロム酸化物から選ばれる1種又は2種以上の触媒である請求項22に記載のシス−オクタヒドロイソインドールの製造方法。
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