JPWO2004028950A1 - エレベータドアの制御装置 - Google Patents
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Abstract
Description
詳しくは、ドアの動作経過と共に変化するモータ電流が正常時と異常時とで差が生じることに着目し、正常なドア動作時におけるモータ電流をドアの動作経過に応じて階床毎に順次実測して、演算処理しないで単純にこれを記憶させておき、実際のドア開閉中のモータ電流値と該当する階床のモータ電流値(記憶データ)とを動作経過に応じて順次比較し、両者に規定値以上の差が生じた場合にドアが異常であることを検出していた(例えば、特許文献1参照)。
なお、上記従来のエレベータドアの制御装置は、実際のドア開閉中のモータ電流値が、該当する階床毎の正常なドア動作時におけるモータ電流の経過値に所定のマージントルク(規定値)を加算して得られる値を超えることにより、ドアの異常状態を検出し、ドアを反転動作させるというものと動作上において同等であることは明らかである。
また、電気機器工学の観点から、ここでのモータ電流とはモータトルクと置き換えて考えてよいことは明らかである。さらに、制御工学の観点から、フィードバック制御を構成した系において、通常、指令と制御量は数値的に大きな差違がないと考えてよいことから、モータトルクとモータトルク指令は運用上において同等として取り扱ってもよいことは明らかである。このため、本明細書においては、これらモータ電流、モータトルク、モータトルク指令は、同等の意味を持つとして取り扱う。
[特許文献1]:特開昭54−120157号公報(第4,5頁)
上述したように、従来のエレベータドアの制御装置は、演算処理をしないで単純に記憶した実機ドアの開閉動作に伴うモータのトルク波形(モータ電流波形)やトルク指令波形に対して所定のマージントルクを加算して異常トルク検出のための異常検出トルクパターンとして使用することによって、ドア異常検出を行うものであるが、実際にはドアの開閉に伴うドア付近のゴミ、摩擦などの経年変化に起因する外乱によって、実機のトルク波形やトルク指令波形はドア開閉動作毎に変動する。このため、加算するマージントルクが小さすぎたり、異常検出トルクパターンの元になるトルク波形やトルク指令波形が不適切であったりする場合には、正しき異常検出が行われずに誤検出するという問題点があった。
即ち、演算処理をしないで単純に記憶した実機によるトルク指令パターンに加算するマージントルクを小さな値とするとトルク異常の検出感度が高くなるが、ドアの開閉に伴うドア付近のゴミ、摩擦などによるトルク変動によりトルク指令が増加した場合に異常と判断して必要のないドア反転動作を繰り返すようになる。また、逆にマージントルクを増加すると、誤動作が少なくなるのに反して、異常検出トルクパターンが大きくなる結果としてトルク指令の許容値が大きくなるために、エレベータ利用者の危険度が増すといった問題点があった。
これらの問題点の要因となるトルク変動にはドア付近のゴミ、摩擦などの短期的なトルク変動の他に、ドアパネルの変形などの経年変化による長期的なトルク変動も存在する。
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたものであり、実機のトルク波形(モータ電流波形)ないしトルク指令波形の長期的な変動や短期的な変動を考慮し、異常トルクを適切に検出する異常検出トルクパターンを作成することで異常検出精度を高めるとともに、ドア開閉動作異常の誤検出が少ないエレベータドアの制御装置を提供することを目的とする。
なお、この発明において、異常検出とは、エレベータのドア開閉動作中に、ドア部においてエレベータ利用者の人体や手指が挟まれたり、引き込まれたりするなどのドア開閉動作の異常状態に対して、ドア開閉動作の異常状態に伴うモータ電流ないしモータトルク指令またはモータトルクの増加分をモニタしながらドア開閉動作に異常があるかどうかを検出することを意味するものである。つまり、モータ電流ないしモータトルク指令またはモータトルクの異常を検出することにより、ドア開閉動作の異常状態を検出することを意味するものである。
図2は、この発明の実施の形態1に係るエレベータドアの制御装置におけるトルク指令(基準トルク指令)と異常検出トルクパターンとの関係図、
図3は、この発明の実施の形態1に係るエレベータドアの制御装置におけるトルク異常検出時の動作説明図、
図4は、この発明の実施の形態1に係るエレベータドアの制御装置における戸開/戸閉動作を繰り返した際のトルク指令を示した図、
図5は、この発明の実施の形態1に係るエレベータドアの制御装置におけるサンプリングしたトルク指令の時系列データおよび基準トルク指令パターン生成のための平均値計算方法の例を示した図、
図6は、この発明の実施の形態1に係るエレベータドアの制御装置における5回の試行方向のトルク指令の時系列データを示した図、
図7は、この発明の実施の形態1に係るエレベータドアの制御装置における5回の試行方向のトルク指令の時系列データに対するメディアン処理を示す計算式の説明図、
図8は、この発明の実施の形態1に係るエレベータドアの制御装置における基準トルク指令パターン生成部の動作を示すフローチャート、
図9は、この発明の実施の形態1に係るエレベータドアの制御装置における異常検出トルクパターン生成部及び異常回避手段の動作を示すフローチャート、
図10は、この発明の実施の形態2に係るエレベータドアの制御装置の一例を示す構成図、
図11は、この発明の実施の形態2に係るエレベータドアの制御装置におけるトルク異常検出時の動作を示す説明図である。
図1は、この発明の実施の形態1におけるエレベータドアの制御装置の一例を示す構成図である。図1に示すように、エレベータドアを含むエレベータドア機構部を駆動するドア駆動用モータ1のモータ軸にはパルス発生器2が直結されており、このパルス発生器2は、ドア駆動用モータ1の位置を示すパルス情報を発生する。また、電流検出器3は、ドア駆動用モータ1の負荷電流を検出している。なお、ドア駆動用モータ1としては、例えばベクトル制御誘導モータやブラシレスDCモータなどを想定している。
速度指令部4は、所定の速度パターンに従った速度指令を出力し、加算部5は、この速度指令部4により出力された速度指令とパルス発生器2から速度変換部を介して得られる実モータ速度(帰還速度)との速度偏差を出力する。速度制御部6は、この出力された速度偏差に応じたトルク指令として、当該トルク指令に応じたモータ電流指令をドア駆動用モータ1に出力して速度制御を行っている。
より正確には、速度制御部6から出力されたモータ電流指令(トルク指令)は、加算部7で電流検出器3により検出された負荷電流との電流偏差がとられ、電流制御部8に対して出力される。電流制御部8は、入力された電流偏差に応じてドア駆動用モータ1を駆動する負荷電流を発生し、ドア駆動用モータ1の速度制御を行っている。この速度制御の際、電流制御部8は、例えばパルス発生器2からの位相情報に基づいてベクトル制御を実現している。
また、基準トルク指令パターン生成部9は、トルク指令パターン列記憶部9Aと、基準トルク指令パターン出力部9Bとを含んでいる。トルク指令パターン列記憶部9Aは、外部から入力された階床情報に基づいて各階床毎のドア開閉動作に応じた経過時間やドア位置等に対応して各階床毎にサンプリングした複数のトルク指令により形成されるトルク指令パターンを複数記憶している。
また、基準トルク指令パターン出力部9Bは、トルク指令パターン列記憶部9Aに記憶された複数のトルク指令パターンのうち、複数からなる各階床毎のトルク指令パターンにおいて共通のサンプリング毎のトルク指令に基づいて演算して得られる各階床毎の基準トルク指令パターンを生成し出力する。
基準トルク指令パターン出力部9Bから出力された各階床毎の基準トルク指令パターンは異常検出トルクパターン生成部10へ入力される。異常検出トルクパターン生成部10は、入力された基準トルク指令パターンに対して所定のマージントルクを加算して、速度制御部6により出力されたトルク指令が異常であるか否かを検出する基準となる異常検出トルクパターンを生成する。
また、異常回避手段11は、内部にトルク異常検出部12を含む。このトルク異常検出部12は、速度制御部6から出力されるトルク指令を入力するとともに、異常検出トルクパターン生成部10により生成された異常検出トルクパターンを読み取り、トルク指令が異常検出トルクパターンを超えたときにドア開閉動作が異常であることを検出する。ドア開閉異常を検出したトルク異常検出部12は、速度指令部4に対して異常回避指令を出力し、この異常回避指令を受けた速度指令部4は、出力する速度指令を減速させ、さらにエレベータドアを反転動作させる新たな速度指令(反転速度指令)にして出力する。
即ち、異常回避手段11は、トルク指令が異常検出トルクパターンを超えた場合に速度指令を減速させて異常状態を回避するものである。または、速度指令を減速させた後、さらにエレベータドアを反転動作させて異常状態を回避するものである。
次に、本実施の形態1に係るエレベータドアの制御装置の異常検出トルクパターン生成部10とトルク異常検出部12の動作について説明する。図2は、戸開時の基準トルク指令パターンと異常検出トルクパターンとの関係を示す説明図であり、図3は、トルク異常検出部12の動作を示す説明図である。
基準トルク指令パターン生成部9は、図2における基準トルク指令パターンを、速度制御部6が各階床においてドアを開閉する毎に出力するトルク指令より生成する。ここでは、例えば5回の開閉を行った場合のトルク指令データを後述するメディアン処理・単純平均処理・忘却係数付き加算平均処理等の演算処理により基準トルク指令パターンを生成する。異常検出トルクパターン生成部10は、生成された基準トルク指令パターンに所定のマージントルクを加算して図2に示す異常検出トルクパターンを生成する。
また、図3に示す例のように、ドア開閉異常の結果によりトルク指令が上昇して異常検出トルクパターンを超えると、トルク異常検出部12は、異常であることを検出して、ドアの反転動作を速度指令部4に対して指示する。
なお、図2及び図3では、一例を示す意味で、戸開時のドア動作を想定した図を示したが、この発明は戸開時のドア動作に限定する必要がなく、戸閉時のドア動作についても同様の基準トルク指令パターン生成部10とトルク異常検出部12の構成を実現できるものである。
本実施の形態1におけるエレベータドアの制御装置では、後述するように、複数回のドア開閉試行(開閉繰り返し)によってトルク指令パターンを入力して、入力したトルク指令を演算処理することにより、長期的にも短期的にも突発的な外乱の影響を過度に受けない基準トルク指令パターンを求めるようにしている。なお、最も適切な基準トルク指令パターンとは、正常時のトルク指令パターンの代表値であり、異常検出感度を偏らせないトルク指令パターンであると言える。したがって、前述したドアの開閉に伴うドア付近のゴミ、摩擦などによるトルク変動に対して、異常検出感度を偏らせないために、複数回のドア開閉試行によるトルク指令パターンの変動の中心値、即ち平均値を用いることが適当であることが分かる。
但し、トルク指令パターンに関して繰り返し方向に対しての平均値を計算する場合には、次に述べるような繰り返し回数中の突発的な外乱による影響を除去することも重要な課題であることに注意を払う必要がある。
図4は、戸開、戸閉動作を繰り返した際のトルク指令を示す説明図である。図4では、横軸にパルス検出器2の出力するパルスをカウントしたもの(すなわちドア位置)を表し、縦軸にトルク指令を表しており、戸開、戸閉動作を一昼夜繰り返すことで2次元図化したものである。また、この図4は、一昼夜戸開、戸閉動作を繰り返した際に、作業者がドアに誤って触れてしまったミス(突発的な外乱による波形歪み)を含んだ波形となっている。
この結果から、異常検出感度を偏らせない基準トルク指令パターンを生成するには、波形の変動だけでなく、突発的な外乱の影響もさらに考慮してトルク指令の平均値を計算することが必要であることが分かる。平均値を計算するには、トルク指令の繰り返し波形である時系列データを複数回採取する必要がある。
以下に、基準トルク指令パターンを生成して記憶する基準トルク指令パターン生成部9の動作について説明する。
ここでは、図5に示すように、ドアの開閉時の時間方向の他に、戸開、戸閉の回数の方向を試行方向と定義して説明する。適切な基準トルク指令パターンを生成するための平均値計算方法としては、図5に示す2つの計算方法、即ち、(1)試行方向単純平均処理と(2)試行方向忘却係数付き加算平均処理がある。ただし、試行方向単純平均処理と試行方向忘却係数付き加算平均処理による計算では、両者とも明らかに試行方向に対する線形フィルタによる平均計算を行っているため、突発的な外乱の影響を過度に受けやすいという性質を有する。そこで、突発的な外乱の影響を小さくするためにはそれぞれ平均回数をかなり多くとるか、或いは忘却係数を極端に小さくする工夫が必要であるが、しかしながら、これらの計算では、突発的な外乱の影響を除去することはあまり容易ではない。
そこで、本実施の形態1によるエレベータドアの制御装置では、median(中央値)を出力するメディアンフィルタと呼ばれる非線形フィルタを用いたメディアン処理を行う。このメディアンフィルタとは、画像処理に用いられるノイズ除去方法として知られる多数決フィルタの一つであり、突発的な外乱の影響を容易に除去できるという特徴を持つ。
ここで、メディアンフィルタの動作について詳細に説明する。図6に示すように、5回の試行方向の時系列データで現されるトルク指令A、B、C、D、Eがあるとする。例えば、1回目の時系列データAでは、a(1)、a(2)、a(3)、a(4)、a(5)、a(6)、a(7)などのようにデータが時系列に並んでいるとする。すなわち、カッコ内の数字はサンプリング番号を意味する数字である。
このように5回の試行方向のトルク指令の時系列データがあった場合のメディアン処理は、図7に示す数式により計算される。ここで、カッコ内の数字iは、サンプリング番号を意味し、median[ ]とは、[ ]内のデータをソートして(昇順に並べて)、そのソート結果においての中間順位にある数値(中間値)を取り出すという演算を実行する演算子を意味する。
この演算により、本来、ドア開閉異常と見なすべきでない突発的な外乱、例えばドアに作業者が触れてしまった場合などによる突発的な外乱の影響が簡単に除去できることになる。なぜならば、外乱の影響は、最大値や最小値に現れるため、適切な基準トルク指令パターンを生成するためのトルク指令の平均的計算方法の計算結果として中間値を用いることにより、その計算結果においてドア開閉異常と見なすべきでない突発的な外乱の影響が除去できることになる。以上のように、基準トルク指令パターン生成部9では、上述のメディアンフィルタを用いて、トルク指令パターンの変動の中心値を計算することで、ドア開閉異常と見なすべきでない突発的な外乱の影響を除去できるため、異常検出感度を偏らせない適切な基準トルク指令パターンが生成できる。
即ち、本実施の形態1に係るエレベータドアの制御装置における基準トルク指令パターン生成部9は、記憶された複数回分のトルク指令パターンの共通のサンプリング毎のトルク指令をメディアン処理することにより基準トルク指令パターンを求めるものである。
また、メディアン処理に代えて、単純平均処理、または、忘却係数付き加算平均処理により基準トルク指令パターンを求めてもよい。但し、このときはそれぞれの平均処理において平均回数をかなり多くとるかあるいは忘却係数を極端に小さくする必要がある。
次に、基準トルク指令パターン生成部9にメディアン処理を用いた場合の具体的な動作についてその一例を説明する。図8は、基準トルク指令パターン生成部9の動作を示すフローチャートである。基準トルク指令パターン生成部9は、階床の認識を行い(ステップS1)、ドアの開閉のためのトルク指令を通常の線形フィルタなどによりフィルタ処理することによりトルク指令波形を滑らかにし(ステップS2)、全開〜全閉の位置を例えばモータ角度で32分割してそれぞれの点でのトルク指令(a(1)、a(2)〜a(32))をバッファリングする(ステップS3)。
次に、試行方向(戸開と戸閉それぞれ独立)に5回分のデータを採取したかを確認し(ステップS4)、図6に示す5回分のデータを採取すると、図7に示すメディアン処理により5回×32点のデータの中央値(メディアン)をとり(ステップS5)、32点からなる基準トルク指令パターンをEEPROM(電気的に消去/書込み可能なROM)に保存する(ステップS6)。
ここでは、5回の試行方向(戸開と戸閉それぞれ独立)のトルク指令パターンデータを採取して、基準トルク指令パターンを生成する基準トルク指令パターン生成部の動作について説明したが、厳密にはエレベータの運行時の各階床毎に独立に、ここで述べたことが適用されることとなることに注意が必要である。
さらに、移動平均フィルタ計算のように随時最新データを含むように試行方向5回分の時系列データを毎回データ更新しながらメディアン処理を行うことにより、短期的及び長期的なトルク指令の変動に見合った適切な基準トルク指令パターンを生成する。この結果、短期的なトルク指令の変動については変動の中心値を取ることによりその変動を除去し、また長期的なトルク指令の変動についてはやはり変動の中心値を取ることによりその変動を取り込むことで考慮できることになる。また、メディアン処理は毎回データを更新するのではなくて、定期的に5回のデータを採取してデータの更新(5回、10回、15回などのように5回毎に1度だけ更新)を行うようにしてもよい。
次に、異常検出トルクパターン生成部10の動作について説明する。なお、ここでは、異常検出トルクパターンを求める場合の基準トルク指令パターンに加算するマージントルクとしては、ドア開閉位置毎に戸端で一定の力となるように計算した値を用いている。
図9は、異常検出トルクパターン生成部10及び異常回避手段11の動作についてその一例を示すフローチャートである。異常検出トルクパターン生成部10は、図8におけるステップS6でEEPROMに保存された32点の基準トルク指令パターンを読み込み(ステップS10)、基準トルク指令パターンの各点に、例えば戸端10kgf分に相当するトルクのマージン(マージントルク)を加算し(ステップS11)、加算した32点のデータの隣り合う3点のうち大きいものをその位置でのデータとして採用する加工を行い(ステップS12)、点間を直線にて補間して異常検出トルクパターンを決定する(ステップS13)。
次に、異常回避手段11のトルク異常検出部12は、トルク指令と異常検出トルクパターンとを比較して(ステップS14)、トルク指令が異常検出パターンを上回るとき若しくは等しいときに戸開閉動作が異常であると判断して戸反転動作を行い(ステップS15)、トルク指令が異常検出パターンを下回っている場合にはドア動作は正常であると判断して開閉動作を継続する。
以上のように、本実施の形態1に係るエレベータドアの制御装置によれば、実機のトルク指令パターンを基に、短期的及び長期的なトルク指令の変動を考慮しながら、さらにドア開閉異常と見なすべきでない突発的な外乱の影響を排除して異常検出トルクパターンを生成することができるので、異常検出感度を偏らせず、また異常検出トルクパターンを生成するときの所定のマージントルクをいたずらに大きくとる必要がなくなり、結果としてドアの異常検出精度を高めることができ、安全性の高いエレベータドアが提供できるようになる。
実施の形態2.
図10は、この発明の実施の形態2におけるエレベータドアの制御装置の一例を示す構成図である。図10において、図1に示す実施の形態1と異なる点は、異常回避手段11Aとして、トルク指令の補正計算に関する手段である異常トルク指令補正手段13が新たに追加されている点である。その他は上記実施の形態1におけるエレベータドアの制御装置の構成と同等もしくは等価な構成であるため、説明を省略する。
本実施の形態2におけるエレベータドアの制御装置では、上記実施の形態1と同様にして、トルク異常検出部12において、トルク指令と異常検出トルクパターンとを比較してトルク異常を検出し、トルク指令の異常が検出された場合に、異常回避手段11Aは、異常を回避するための異常回避指令を速度指令部4へ出力し、速度指令部4は、速度指令を減速、さらにエレベータドアの駆動手段を反転動作させる新たな速度指令にして出力する。
しかしながら、上記速度指令の変更が実際に応答するまでのドア制御装置の応答遅れが少なからず発生する。また、トルク指令に重畳したパルス状ノイズが存在する場合にトルク指令が不用意に異常検出トルクパターンを超えて正しい異常検出ができないという問題点があった。本実施の形態2におけるエレベータドアの制御装置は、かかる問題点を考慮した実施の形態に係るものである。
異常トルク指令補正手段13は、速度制御部6により出力されたトルク指令と、異常検出トルクパターン生成部10により生成された異常検出トルクパターンとの偏差に基づいて後述する補正式により補正トルク指令を算出する補正トルク指令算出部13A、およびトルク指令が異常検出トルクパターンよりも大きいとき速度制御部6より出力されるトルク指令から補正トルク指令算出部13Aにより算出された補正トルク指令に切換えて出力し、一方、トルク指令が異常検出トルクパターン以下であるとき速度制御部6より出力されるトルク指令を出力する出力トルク指令切換え部13Bを含んでいる。
即ち、異常回避手段11A内部では、具体的には以下の補正式により、異常検出トルクパターンとトルク指令の大小関係に基づき補正トルク指令、或いは速度指令部6からの出力であるトルク指令を新トルク指令として発生している。
(1)異常時(異常検出トルクパターン≦トルク指令のとき)
補正トルク指令=異常検出トルクパターン
+(トルク指令−異常検出トルクパターン)×係数(ε)
ここで、トルク指令は補正前のトルク指令、補正トルク指令は補正後のトルク指令、係数εは0≦ε<1である。
(2)正常時(異常検出トルクパターン>トルク指令のとき)
新トルク指令=トルク指令
すなわち、係数εは、トルク指令(補正前トルク指令)が異常検出トルクパターンを超えた場合、超えた量についての圧縮率の意味を持つ。係数εにより異常検出における異常判断を変えることなく、異常検出確認時間またはエレベータドアの反転動作等に関する応答遅れに対応する時間をもとに予め設定した時間内において、異常検出トルクパターンとトルク指令(補正前トルク指令)の大小関係を維持しながらトルク指令を抑制することを実現する。なお、最大許容トルクとトルク変動のそれぞれの大きさを考慮に入れながら、係数εの具体的な値を決定する必要がある。
また、例えば異常検出確認時間またはエレベータドアの反転動作等に関する応答遅れに対応する時間をもとに予め設定した時間内の異常検出トルクパターンについてはトルク指令を沿わせるように制限してもよい。この場合には、上記係数ε=0とした場合に相当する。
次に、図11は、本実施の形態2におけるエレベータドアの制御装置の動作説明図である。この図11は、上記の構成を備えたことにより、異常検出確認時間(またはエレベータドアの反転動作等に関する応答遅れに対応する時間である予め設定した時間)T内では、異常発生時のトルク指令パターンは、異常回避手段11Aの内部におけるトルク指令値の補正計算により圧縮された補正トルク指令となっていることを示す図である。
また、図11は、ある所定の時間である異常検出確認時間内において、補正前トルク指令が継続して異常検出トルクパターンを超えた場合にはじめて異常であると判断し、その後、ドア動作が異常回避動作である反転動作に移行していることを示す図である。
即ち、本実施の形態2に係るエレベータドアの制御装置における異常回避手段11Aは、トルク指令が異常検出トルクパターンを超えた場合に、ある所定の時間内は異常検出トルクパターンをわずかに上回る程度にトルク指令を抑制することにより、ノイズ等の影響による誤検出に伴う不用意な異常回避動作を防止することができ、また、トルク指令が過大になることを防ぐことができる。
以上のように、本実施の形態2におけるエレベータドアの制御装置によれば、上述したような補正トルク指令の発生により、異常回避手段11Aでは、異常検出トルクパターンをトルク指令が超えた場合に、異常検出トルクパターンをわずかに上回る程度にトルク指令を抑制することができ、過大なトルク発生による急激なドアの開閉動作を抑制することができる。
また、トルク指令に重畳したパルス状ノイズが存在したときには、トルク指令は不用意に異常検出トルクパターンを超え、正しい異常検出ができないという問題があったが、本実施の形態2によるエレベータドアの制御装置では、トルク指令に重畳したパルス状ノイズがたとえ存在しても、例えば、トルク指令がある所定の時間(異常検出確認時間)の間、異常検出トルクパターンを超えたときにはじめてドア開閉動作異常であると検出するという異常検出確認時間を設定することにより、確実な異常検出が可能となるとともに、異常回避手段11Aが動作するまでの異常検出確認時間中の過大なトルク発生が抑制できる。以上のことからドアの開閉時の異常を精度良く確実に検出し、かつ異常を回避可能な高いドアの安全性が実現できる。
Claims (8)
- 速度指令に応じたトルク指令をエレベータドアの駆動手段に出力して前記エレベータドアの開閉制御を行うエレベータドアの制御装置において、
前記トルク指令のパターンを複数回分収集し演算処理して基準トルク指令パターンを生成する基準トルク指令パターン生成部と、
前記基準トルク指令パターンに基づいて前記トルク指令の異常を検出するトルク異常検出部と
を備えたことを特徴とするエレベータドアの制御装置。 - 請求項1に記載のエレベータドアの制御装置において、
前記基準トルク指令パターン生成部は、各階床毎のエレベータドアに対応して前記基準トルク指令パターンをそれぞれ生成し、
前記トルク異常検出部は、前記各階床毎の基準トルク指令パターンに基づいて各階床のエレベータドア毎に前記トルク指令の異常を検出する
ことを特徴とするエレベータドアの制御装置。 - 請求項1に記載のエレベータドアの制御装置において、
前記基準トルク指令パターンに所定のマージントルクを加算して前記トルク指令の異常を検出するための異常検出トルクパターンを生成する異常検出トルクパターン生成部をさらに備え、
前記トルク異常検出部は、前記トルク指令が前記異常検出トルクパターンを超えたとき異常を検出する
ことを特徴とするエレベータドアの制御装置。 - 請求項1に記載のエレベータドアの制御装置において、
前記基準トルク指令パターン生成部は、前記エレベータドアの開閉動作に応じてサンプリングした前記複数回分のトルク指令パターンを記憶し、この記憶された複数回分のトルク指令パターンの共通のサンプリング毎のトルク指令に基づいて演算処理して前記基準トルク指令パターンを生成する
ことを特徴とするエレベータドアの制御装置。 - 請求項4に記載のエレベータドアの制御装置において、
前記基準トルク指令パターン生成部は、記憶された複数回分のトルク指令パターンの共通のサンプリング毎のトルク指令をメディアン処理することにより前記基準トルク指令パターンを生成する
ことを特徴とするエレベータドアの制御装置。 - 請求項1に記載のエレベータドアの制御装置において、
前記トルク異常検出部による異常検出に基づいて前記速度指令を減速させる異常回避手段を備えた
ことを特徴とするエレベータドアの制御装置。 - 請求項6に記載のエレベータドアの制御装置において、
前記異常回避手段は、前記速度指令を減速させた後、さらに前記速度指令を、前記エレベータドアを反転動作させる反転速度指令に変える
ことを特徴とするエレベータドアの制御装置。 - 請求項3ないし7のいずれか1項に記載のエレベータドアの制御装置において、
前記トルク異常検出部により異常が検出されている間は、前記異常検出トルクパターンに基づいて前記トルク指令を補正する異常トルク指令補正部をさらに備えた
ことを特徴とするエレベータドアの制御装置。
Applications Claiming Priority (3)
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