JPWO2004019971A1 - 抗アレルギー剤 - Google Patents
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Abstract
重篤な副作用を惹起することなくアレルギー疾患に伴う諸症状を効果的に緩和する抗アレルギー剤を提供することを課題とし、有効成分として、ローヤルゼリー又は精製ローヤルゼリーから採取される蛋白質、又はそれらを含有するローヤルゼリー又は精製ローヤルゼリーを含んでなる抗アレルギー剤を提供することにより解決する。
Description
本発明は、抗アレルギー剤に関するものであり、より詳細には、有効成分として、ローヤルゼリー又は精製ローヤルゼリーから採取される蛋白質、又は、それら蛋白質を含有するローヤルゼリー又は精製ローヤルゼリーを含んでなる抗アレルギー剤に関するものである。
近年、食生活などの変化に伴って、アレルギー性疾患の罹患者が増加しており、とりわけ、花粉症、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、接触過敏症などアトピー性疾患の罹患者の増加が問題となっている。従来、アレルギー疾患の治療においては、抗ヒスタミン剤やステロイド剤などの薬剤が対症療法的に投与されているけれども、これらの薬剤は長期連用による副作用が大きいという問題があった。このような状況に鑑み、アレルギー疾患における諸症状を効果的に緩和することができ、かつ、日常生活に支障をきたすことなく、長期連用し得る治療手段が望まれていた。
一方、最近、ローヤルゼリーに様々な生理活性のあることが認められ、健康食品としての関心が高まっている。ローヤルゼリーは、周知のとおり、ミツバチの巣における王台(女王バチの房)に蓄積された、働きバチの外分泌腺からの乳白色の分泌物であり、女王バチとなるべき幼虫に与えられる餌であると言われている。ローヤルゼリーの化学的組成は生産地や季節などにより、多少の差違はあるものの、水分65〜75%、蛋白質15〜20%、炭水化物10〜15%、脂肪1.7〜6%、灰分0.7〜2%含むとされている。ジェイ・シュミットゾーバ(J.Schimitzova)等は、ローヤルゼリーに含有する5種類の主要な蛋白質のcDNAを、ミツバチ(Apis mellifera)よりクローン化に成功し、それらの塩基配列及びそれらから推定されるアミノ酸配列を明らかにして、これら蛋白質をMRJP1、MRJP2、MRJP3、MRJP4、及びMRJP5(MRJP:majorroyaljellyprotein)とそれぞれ命名している。しかしながら、これら蛋白質の生理活性に関しては何ら研究がなされていない。
斯かる状況に鑑み、本発明の課題は、諸種のアレルギー疾患へ適用すると、重篤な副作用を惹起することなく、アレルギー疾患に伴う諸症状を効果的に緩和する手段を提供することを課題とするものである。
一方、最近、ローヤルゼリーに様々な生理活性のあることが認められ、健康食品としての関心が高まっている。ローヤルゼリーは、周知のとおり、ミツバチの巣における王台(女王バチの房)に蓄積された、働きバチの外分泌腺からの乳白色の分泌物であり、女王バチとなるべき幼虫に与えられる餌であると言われている。ローヤルゼリーの化学的組成は生産地や季節などにより、多少の差違はあるものの、水分65〜75%、蛋白質15〜20%、炭水化物10〜15%、脂肪1.7〜6%、灰分0.7〜2%含むとされている。ジェイ・シュミットゾーバ(J.Schimitzova)等は、ローヤルゼリーに含有する5種類の主要な蛋白質のcDNAを、ミツバチ(Apis mellifera)よりクローン化に成功し、それらの塩基配列及びそれらから推定されるアミノ酸配列を明らかにして、これら蛋白質をMRJP1、MRJP2、MRJP3、MRJP4、及びMRJP5(MRJP:majorroyaljellyprotein)とそれぞれ命名している。しかしながら、これら蛋白質の生理活性に関しては何ら研究がなされていない。
斯かる状況に鑑み、本発明の課題は、諸種のアレルギー疾患へ適用すると、重篤な副作用を惹起することなく、アレルギー疾患に伴う諸症状を効果的に緩和する手段を提供することを課題とするものである。
上記の課題を解決する目的で、本発明者がローヤルゼリーに着目し、鋭意研究したところ、ローヤルゼリーに含まれる低分子又は高分子のある種の成分、具体的には例えば、配列表における配列番号1又は2のいずれかで示される部分アミノ酸配列を有する蛋白質が、生体内においては、抗体及び/又はサイトカインの産生を著明に抑制することが判明し、重篤な副作用を惹起することなくアレルギー疾患に伴う諸症状を効果的に緩和することを確認した。
即ち、本発明は、有効成分として、ローヤルゼリー又は精製ローヤルゼリーから採取される蛋白質、又は、それら蛋白質を含有するローヤルゼリー又は精製ローヤルゼリーを含んでなる抗アレルギー剤を提供することによって、上記の課題を解決するものである。
さらに、本発明は、上記の抗アレルギー剤を含んでなる飲食物を提供することによって、上記の課題を解決するものである。
さらに、本発明は、上記の抗アレルギー剤を含んでなる化粧品を提供することによって、上記の課題を解決するものである。
さらに、本発明は、上記の抗アレルギー剤を含んでなる医薬品を提供することによって、上記の課題を解決するものである。
即ち、本発明は、有効成分として、ローヤルゼリー又は精製ローヤルゼリーから採取される蛋白質、又は、それら蛋白質を含有するローヤルゼリー又は精製ローヤルゼリーを含んでなる抗アレルギー剤を提供することによって、上記の課題を解決するものである。
さらに、本発明は、上記の抗アレルギー剤を含んでなる飲食物を提供することによって、上記の課題を解決するものである。
さらに、本発明は、上記の抗アレルギー剤を含んでなる化粧品を提供することによって、上記の課題を解決するものである。
さらに、本発明は、上記の抗アレルギー剤を含んでなる医薬品を提供することによって、上記の課題を解決するものである。
第1図は、生ローヤルゼリーに含まれる本発明の抗アレルギー蛋白質の2次元電気泳動パターンを示すものである。
第2図は、ローヤルゼリーの水溶性画分を、DEAE−5PWゲルを用いた陰イオン交換カラムクロマトグラフィーに供した際の活性蛋白質の溶出を示すクロマトグラムである。
(○:相対IL−2産生率、●:相対IL−4産生率、△:相対細胞増殖率、1:活性蛋白質1溶出フラクション、2:活性蛋白質2溶出フラクション)
第3図は、活性蛋白質1画分を、ヘパリン(Heparin)−5PWゲルを用いたアフィニティーカラムクロマトグラフィーに供した際の活性蛋白質の溶出を示すクロマトグラムである。
(○:相対IL−2産生率、●:相対IL−4産生率、△:相対細胞増殖率、1:活性蛋白質1−1溶出フラクション、2:活性蛋白質1−2溶出フラクション)
第4図は、ローヤルゼリー又はRJP70をOVA/Alumで免疫した雌性BALB/cマウスに腹腔内投与した際の、血清中の抗OVA−IgE抗体価を測定した結果を示す図である。
(●:各個体(5匹)のデータ、−:平均値、*:危険率5%以下で有意差を示すデータ)
第5図は、ローヤルゼリー又はRJP70をOVA/Alumで免疫した雌性BALB/cマウスに腹腔内投与した際の、血清中の抗OVA−IgG1抗体価を測定した結果を示す図である。
(● 各個体(5匹)のデータ、−:平均値、*:危険率5%以下で有意差を示すデータ)
第2図は、ローヤルゼリーの水溶性画分を、DEAE−5PWゲルを用いた陰イオン交換カラムクロマトグラフィーに供した際の活性蛋白質の溶出を示すクロマトグラムである。
(○:相対IL−2産生率、●:相対IL−4産生率、△:相対細胞増殖率、1:活性蛋白質1溶出フラクション、2:活性蛋白質2溶出フラクション)
第3図は、活性蛋白質1画分を、ヘパリン(Heparin)−5PWゲルを用いたアフィニティーカラムクロマトグラフィーに供した際の活性蛋白質の溶出を示すクロマトグラムである。
(○:相対IL−2産生率、●:相対IL−4産生率、△:相対細胞増殖率、1:活性蛋白質1−1溶出フラクション、2:活性蛋白質1−2溶出フラクション)
第4図は、ローヤルゼリー又はRJP70をOVA/Alumで免疫した雌性BALB/cマウスに腹腔内投与した際の、血清中の抗OVA−IgE抗体価を測定した結果を示す図である。
(●:各個体(5匹)のデータ、−:平均値、*:危険率5%以下で有意差を示すデータ)
第5図は、ローヤルゼリー又はRJP70をOVA/Alumで免疫した雌性BALB/cマウスに腹腔内投与した際の、血清中の抗OVA−IgG1抗体価を測定した結果を示す図である。
(● 各個体(5匹)のデータ、−:平均値、*:危険率5%以下で有意差を示すデータ)
本発明は、有効成分として、ローヤルゼリー又は精製ローヤルゼリーから採取される蛋白質、又は、それら蛋白質を含有するローヤルゼリー又は精製ローヤルゼリーを含んでなる抗アレルギー剤に関するものである。本発明に用いるローヤルゼリーとしては、それを分泌するミツバチの種類としては、セイヨウミツバチ(Apis mellifera)、トウヨウミツバチ(Apis cerana)、オオミツバチ(Apis dorsata)、コミツバチ(Apis florea)などが、また、その産地としては、日本、南米、北米、豪州、中国、欧州などが挙げられる。これらのローヤルゼリーは、それが、抗アレルギー作用を有する低分子又は高分子の成分、例えば、配列表における配列番号1又は2のいずれかで示される部分アミノ酸配列を有する蛋白質を含有し、未加工のままか、あるいは適宜の精製工程で処理した上で、ヒトをはじめとする哺乳類に適用したときに、アトピー性アレルギー、組織特異性アレルギー、免疫複合体型アレルギー、遅延型アレルギーなどのアレルギー性疾患の治療、予防に効果を発揮するものである限り、形態、純度、調製方法にかかわりなく、有利に用いることができる。
抗アレルギー剤の用途にもよるけれども、ローヤルゼリーの抗アレルギー作用が弱い場合には、低分子又は高分子の生理活性物質を精製するための方法を適用して精製する。本発明でいう精製ローヤルゼリーとは、生ローヤルゼリーに含まれる成分の一部を精製により部分的に除き、且つ、着目する成分の固形物当たりの含有量を高めたものを意味し、本発明においては、ローヤルゼリー水溶性蛋白質画分が好ましく用いられる。個々の精製方法としては、例えば、濾過、濃縮、乾燥、遠心分離、分別沈澱、塩析、透析、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル電気泳動、等電点電気泳動などが挙げられ、必要に応じて、これらは組み合わせて適用される。
本発明で用いるローヤルゼリーにおける抗アレルギー成分の具体例としては、例えば、配列表における配列番号1又は2のいずれかで示される部分アミノ酸配列を有する蛋白質が挙げられる。本発明でいう蛋白質とは、それが配列表における配列番号1又は2のいずれかで示される部分アミノ酸配列を有し、且つ、生体内において抗アレルギー作用を発揮するものであるかぎり、その純度、由来、調製方法は問わない。好ましい蛋白質としては、例えば、配列表における配列番号1又は2のいずれかで示される部分アミノ酸配列を有する蛋白質が挙げられ、その蛋白質は、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)による分子量が55,000乃至70,000ダルトンであって、生物作用として抗体及び/又はサイトカインの産生を抑制するという作用を有している。より好ましい蛋白質としては、例えば配列表における配列番号3又は4に示すアミノ酸配列を有するものが挙げられ、斯かるアミノ酸配列を有する蛋白質はいずれも生体において抗体及びサイトカイン産生抑制が顕著であり、しかも長期連用しても重篤な副作用を惹起することなく、アレルギー疾患に伴う諸症状を効果的に緩和するので、この発明において極めて有用である。なお、これらの蛋白質は単なる例であって、本発明でいう蛋白質は決してこれらに限定されてはならず、例えば、抗アレルギー作用を実質的に失わない範囲で配列表における配列番号3又は4のいずれかの全アミノ酸配列において、これらアミノ酸配列におけるアミノ酸の1個又は2個以上が欠失、又は他のアミノ酸で置換されるか、あるいは、配列番号3又は配列番号4のアミノ酸配列に、他のアミノ酸が1個又は2個以上挿入又は付加されたアミノ酸配列を有するものであってもよいことは言うまでもない。
本発明に用いる配列表における配列番号1又は2のいずれかで示される部分アミノ酸配列を有する抗アレルギー蛋白質は、本来、ローヤルゼリーに含有される蛋白質であり、通常、天然のローヤルゼリーから採取することにより得ることができる。本発明で用いられる抗アレルギー蛋白質は、原料としてのローヤルゼリーから、前記の精製方法の1又は複数を適宜用いて、所望のレベルにまで精製して得ることができる。本発明でいう単離若しくは部分精製された配列表における配列番号1又は2のいずれかで示される部分アミノ酸配列を有する蛋白質とは、このような各種精製方法を用いて完全に精製・単離されたもの若しくは部分的に精製されたものを意味し、いずれも本発明に有利に用いることができる。
本発明の抗アレルギー剤の有効成分である、配列表における配列番号1又は2のいずれかで示される部分アミノ酸配列を有する蛋白質は、通常、電気泳動により分子量を測定するなどして識別・定量することができる。電気泳動の方法としては、通常、還元剤存在下でのSDS−PAGE法、等電点電気泳動法又はこれらを組み合わせた2次元電気泳動が用いられる。第1図は、ローヤルゼリーの2次元電気泳動による抗アレルギー蛋白質の検出結果を示す。ローヤルゼリー中に存在する配列表における配列番号1の部分アミノ酸配列を有する蛋白質は、還元剤存在下でのSDS−PAGEにおいて分子量約70キロダルトン(kDa)のものが主であり、一部、約55kDaのものが存在する。また、ローヤルゼリー中に存在する配列表における配列番号2の部分アミノ酸配列を有する蛋白質について、同様に還元剤存在下でのSDS−PAGEにて分子量を測定すると、約55kDaである。以下、本明細書では、配列表における配列番号1の部分アミノ酸配列を有する蛋白質の内、配列表における配列番号3のアミノ酸配列を有し、且つ、約70kDaの分子量を有する蛋白質を活性蛋白質1−2又は「RJP70」と、また、配列番号2の部分アミノ酸配列を有する蛋白質の内、配列表における配列番号4のアミノ酸配列を有し、且つ、約55kDaの分子量を有する蛋白質を活性蛋白質2又は「RJP55」と呼称することがある。
前述したように、本発明に用いる抗アレルギー蛋白質RJP70は配列表における配列番号3の、また、RJP55は配列表における配列番号4のアミノ酸配列をそれぞれ有している。これらのアミノ酸配列をジェイ・シュミットゾーバ(J.Schimitzova)等著、『セルラー・アンド・モレキュラー・ライフ・サイエンシーズ(Cellular and Molecular Life Sciences)』、第54巻、1,020乃至1,030頁(1998年)で報告されているローヤルゼリーの主要蛋白質MRJP1、MRJP2、MRJP3、MRJP4、及びMRJP5のアミノ酸配列比較したところ、RJP70のN末端アミノ酸配列はMRJP3のN末端アミノ酸配列と、また、RJP55のN末端アミノ酸配列はMRJP1のN末端アミノ酸配列と完全に一致していた。更に、ジェイ・シュミットゾーバ等は、MRJP3としては分子量60、63、66、70kDaと、分子量が異なる複数の蛋白質が存在していることを報告しており、本発明に用いる配列表における配列番号1の部分アミノ酸配列を有する蛋白質にも分子量約70kDaの蛋白質(RJP70)だけでなく、同一の部分アミノ酸配列を有し、約55kDaの分子量を示す蛋白質が認められている。また、RJP55はN末端アミノ酸配列のみならず、分子量においても約55kDaと、MRJP1と一致している。また、ジェイ ・シュミットゾーバ等は、MRJP1及びMRJP3は、ローヤルゼリー蛋白質のそれぞれ約31質量%、約26質量%を占めることを明かにしている。従って、本発明に用いるRJP70及びRJP55はそれぞれMRJP3及びMRJP1と実質的に同一である可能性が高い。しかしながら、これらの蛋白質は、抗アレルギー作用などの生物作用に関しては、全く検討されていない。
本発明に用いる抗アレルギー蛋白質の調製方法としては、天然のローヤルゼリーから採取する方法以外にも、配列表における配列番号3又は4のいずれかで示されるアミノ酸配列をコードするDNAを用い、組換えDNA技術を適用することによって、抗アレルギー蛋白質を調製することもできる。ミツバチはmRNA又はゲノムDNAなどのDNAの給源として有利に用いられる。本発明でいう抗アレルギー蛋白質RJP70又はRJP55をコードするDNAの具体例としては、本発明者等による遺伝子解析の結果、クローン化された配列表における配列番号5又は6の塩基配列を有するDNAをそれぞれ挙げることができる。RJP70及びRJP55と極めて相同性の高いMRJP3及びMRJP1については、各遺伝子の塩基配列とコードされているアミノ酸配列が既に報告され、遺伝子データベース『ジェンバンク(GenBank)』に登録されており、それぞれアクセション番号Z26318(配列表の配列番号7)、AF000633(配列表の配列番号8)にて閲覧することができる。
上記のセイヨウミツバチからクローン化されたRJP70及びRJP55をコードするDNAの塩基配列(配列表における配列番号5及び6)を、MRJP3(配列番号7)及びMRJP1(配列番号8)とそれぞれ比較すると、RJP70をコードするDNAの塩基配列は計5塩基がMRJP3のものと異なっており、この相違に起因してコードされるRJP70のアミノ酸配列も計3残基が異なっている。また、RJP55をコードするDNAの塩基配列はMRJP1のものと塩基配列が完全に一致している。ただし、MRJP1の塩基配列中1134番目の塩基は不明とされているが、RJP55の塩基配列における該当箇所はチミン「t」である。RJP70とMRJP3との相違点を表1に示す。
本発明で用いうる抗アレルギー蛋白質としては、配列表における配列番号5又は6に示す塩基配列にコードされるもの以外にも、配列番号5又は6に示す塩基配列の一部を含み、且つ、配列表における配列番号1又は2のアミノ酸配列をコードするものであればよい。なお、部位特異的変異などの慣用の組換えDNA技術を適用し、斯かるDNAに塩基の欠失、置換、挿入及び/又は付加を導入することにより、斯かるDNAが本来的にコードする蛋白質の抗アレルギー作用を実質的に消失しない範囲内で当該蛋白質に1個又は2個以上のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/又は付加を導入してアミノ酸配列を改変することも有利に実施できる。抗アレルギー活性を有する蛋白質RJP70とRJP55のアミノ酸レベルでの相同性が約66%であることから、抗アレルギー活性を保持するために、アミノ酸配列の改変は全体の約35%未満にとどめるのが望ましい。
配列表における配列番号5又は6の塩基配列を有するDNAは、本発明の抗アレルギー剤の有効成分である蛋白質を組換えDNA技術によって製造するために、有利に利用できる。これらRJP70又はRJP55をコードする配列表における配列番号5又は6の塩基配列を有するDNAを人為的に発現させて、抗アレルギー蛋白質を生成させ、生成した該蛋白質を採取することにより、本発明の抗アレルギー剤の有効成分である抗アレルギー蛋白質を得ることができる。上記のDNAを人為的に発現させるためには、例えば、常法にしたがって、適当な宿主細胞を形質転換してなる形質転換体の飼育又は培養により行うことができ、また、イン・ビトロでのDNAの発現系(イン・ビトロ転写及びイン・ビトロ翻訳)を利用することも随意である。
本発明で用いるRJP70又はRJP55を組換えDNA技術を適用して製造する際、用いる形質転換体は、通常、配列表の配列番号3又は4に示されるアミノ酸配列をコードするDNA、例えば、配列表における配列番号5又は6の塩基配列を有するDNAを自律複製可能なベクターと連結して組換えDNAとし、この組換えDNAを適宜の宿主に導入することにより得ることができる。自律複製可能なベクターは、宿主の種類に応じて慣用のものから適宜選択すればよく、具体的にはpBR322、pUC18、Bluescript II SK(+)、pUB110、pTZ4、pC194、pHV14、TRp7、YEp7、及びpBS7などのプラスミドベクター、λgt・λC、λgt・λB、ρ11、φ1、及びφ105などのファージベクターや、pVL1393などのバキュロウィルスベクターが挙げられる。このうち、本発明のDNAを大腸菌で発現させるには、pUC118、pUC119、pUC18、pUC19、pBR322、Bluescript II SK(+)、λgt・λC、及びλgt・λBなどが好適である。一方、枯草菌で発現させるには、pUB110、pTZ4、pC194、ρ11、φ1、及びφ105が好適である。pHV14、TRp7、YEp7、及びpBS7は、組換えDNAを二種以上の宿主内で複製させる場合に有用である。以上のような自律複製可能なベクターは、通常、プロモーター、エンハンサー、複製起点、転写終結部位、選択配列などの、この発明のDNAが個々の宿主において発現するための、あるいは、所期の形質転換の有無を確認するための適宜塩基配列を含んでなる。以上のようなベクターとの連結には斯界で慣用の方法を適宜採用することができる。例えば、リンカーの付加やPCR法などによる制限酵素認識配列の付加、制限酵素処理、リガーゼ処理などはいずれも有用である。
上記のようなこの発明によるDNAを導入する宿主細胞としては、形質転換体の作製に斯界で慣用される、大腸菌、枯草菌、酵母、黴などの適宜の微生物や、さらには、昆虫などの無脊椎動物、植物、脊椎動物などの細胞のいずれも用いることができる。本発明に用いる蛋白質をより天然型に近い形で提供するためには、昆虫細胞を宿主とするのが比較的望ましい。前記宿主にこの発明のDNAを導入するには、例えば、リン酸−カルシウム法、エレクトロポレーション法、ウイルス感染法、さらには、必要に応じて、DEAE−デキストラン法、リポフェクション法、及びマイクロインジェクション法などを適宜適用すればよい。斯くして生成される形質転換体から目的とするのクローンを選択するには、導入されたDNAの有無や抗アレルギー蛋白質の産生能を指標として試験すればよい。なお、以上述べた組換えDNA及び形質転換体に関しては、ジェイ・サムブルック等著、『モレキュラー・クローニング、ア・ラボラトリー・マニュアル』、第2版(1989年、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー発行)に、慣用の材料及び方法が種々詳述されている。
以上のようにして得られる形質転換体は、宿主の種類やDNAの導入の際に用いたベクターの種類に応じて、適宜の条件下で培養すれば、その細胞内又は細胞外に抗アレルギー蛋白質を産生する。培養に用いる培地には、宿主細胞やベクターの種類にもよるけれども、通常、炭素源、窒素源、ミネラル、さらには、必要に応じて、アミノ酸やビタミンなどの微量栄養素を補足した通常一般の培地を使用することができる。個々の炭素源としては、例えば、澱粉、澱粉加水分解物、グルコース、果糖、蔗糖、トレハロースなどの糖源が、又、窒素源としては、例えば、アンモニア乃至アンモニア塩、尿素、硝酸塩、ペプトン、酵母エキス、脱脂大豆、コーンスティープリカー、肉エキスなどの含窒素無機乃至有機物が挙げられる。宿主細胞やベクターの種類にもよるけれども、通常、20乃至60℃、pH2乃至10に保ちつつ、約1乃至6日間培養すれば、抗アレルギー蛋白質を含む培養物が得られる。
上記の組換えDNA技術を用いて得られる本発明で用いる蛋白質は、そのままの形態で利用可能であるが、通常、使用目的に応じて適宜の操作により精製して利用される。精製方法としては、前記、天然のローヤルゼリーからの採取の場合で述べた斯界で慣用の精製方法を適宜用いることができる。
本発明に用いる配列表における配列番号1又は2のいずれかで示される部分アミノ酸配列を有する蛋白質は、抗体又はサイトカイン産生を抑制する生物活性を有する。後記する実験例で示すように、本発明者らはOVAを抗原とし、Alumをアジュバントとして免疫したマウス脾臓細胞を抗CD3抗体で刺激した際のサイトカイン産生抑制作用を指標にして、ローヤルゼリー中の蛋白質を精製することにより、ローヤルゼリーが示す抗アレルギー活性の主体となる複数の蛋白質をRJP70及びRJP55として特定することに成功した。これらの蛋白質は、天然のローヤルゼリーの場合と同様に、イン・ビトロ及びイン・ビボの試験において、動物細胞のIL−2、IL−4、IFN−γ、TNF−α、IgE、IgGなどの各種サイトカイン又は抗体の産生を抑制することから、これらサイトカイン及び抗体の産生量の増加によって引き起こされるアレルギーの発症を抑制したり、発症したアレルギー症状を緩和、治療に利用することができる。
本発明の抗アレルギー剤は、ローヤルゼリーにおける抗アレルギー成分である配列表における配列番号1又は2のいずれかで示される部分アミノ酸配列を有する蛋白質の含量が高いほど、著明な抗アレルギー作用を示す。本発明の抗アレルギー剤に含有する抗アレルギー成分は、高度に精製されたものであっても、部分精製されたものであっても、又は天然のままのものであっても良い。例えば、本発明の抗アレルギー剤は、後記実験例に記載されているサイトカイン産生抑制試験系により、蛋白質濃度2mg/mlの抗アレルギー剤を用いる場合、当該蛋白質を添加しない場合に比べてIL−2の相対産生量を80%以下、又は、IL−4の相対産生量を60%以下までに低下させることが可能な量の当該蛋白質を、抗アレルギー成分として抗アレルギー剤に含有させるのが望ましい。
本発明の抗アレルギー剤はアレルギー疾患のうち、とりわけアトピー性疾患に伴う諸症状を効果的に緩和する。アトピー性疾患とは皮膚炎、枯草熱、気管支喘息、蕁麻疹、アレルギー性鼻炎、昆虫アレルギー、ダニアレルギーなど、各器官において先天的家族性に現れる過敏性疾患を指し、免疫グロブリンE(IgE)が関与するI型アレルギー反応によって発症する疾患も含まれる。
本発明の抗アレルギー剤の使用方法について説明すると、本発明の抗アレルギー剤は経口的に使用しても非経口的に使用しても、抗アレルギー作用を発揮することができる。本発明の抗アレルギー剤の有効な摂取量又は投与量は、対象とするヒトをはじめとする哺乳動物の種類、年齢、性別などに応じて適宜決定すればよく、例えば、配列表における配列番号1又は2のいずれかで示される部分アミノ酸配列を有する蛋白質の場合、有効成分の質量換算で、体重1kgあたり、通常、0.01mg乃至100mg/回、望ましくは、0.1mg乃至50mg/回、経口的に1日1回又は数回に分けて、効果に応じて、連日又は1日以上の間隔をおいて摂取するか又は投与すればよい。摂取・投与形態としては、特に限定はなく、必要に応じて、例えば、経口経路、経管経路、経皮経路、経粘皮経路、経静脈経路などから適宜選択して使用すればよい。本発明の抗アレルギー剤を飲食物の形態にし、これを、経口抗アトピー用剤として用いる場合には、経済性などの点から、後述する実験2の試験系により、サイトカイン産生抑制活性がより高い天然のローヤルゼリーを選別し、これをそのまま用いることもできる。
また、本発明の抗アレルギー剤を、例えば、化粧品などの皮膚外用剤として皮膚に直接塗布する場合、配合するローヤルゼリー由来の抗アレルギー成分の量は、配列表における配列番号1又は2のいずれかで示される部分アミノ酸配列を有する蛋白質の質量換算で、皮膚外用剤全量中、0.001乃至10質量%、好ましくは、0.01乃至1質量%であり、1日1回又は数回に分けて、効果に応じて、連日又は1日以上の間隔をおいて直接皮膚に塗布すればよい。なお、0.001質量%未満では、その効果は発揮され難くなり、また、10質量%を越えると、配合量の割に効果がなく経済的に好ましくないことから、通常、上記の範囲で配合する。
本発明の抗アレルギー剤は、例えば、飲食物、化粧品、医薬品をはじめとする組成物の形態としても有利に利用できる。斯かる組成物には、ローヤルゼリー若しくは抗アレルギー蛋白質とともに、例えば、シソ属植物及びパフィア(Pfaffia)属植物などの加工物などの抗アレルギー作用を持つ成分も必要に応じて配合することができ、通常、例えば、飲食物分野、化粧品分野、医薬品分野などで有利に用いることができる。更に、必要に応じて、ヒトを含む哺乳類への経口的又は経皮的適用ないしは皮膚外用が許容される成分として、飲食物、化粧品、医薬品等の分野で通常使用される、例えば、水、アルコール、澱粉質、蛋白質、アミノ酸、繊維質、糖質、脂質、脂肪酸、ビタミン、ミネラル、着香料、着色料、甘味料、調味料、香辛料、防腐剤、乳化剤、界面活性剤、賦形剤、増量剤、増粘剤、保存剤などの上記で述べた以外の成分を1種又は2種以上含有させることも有利に実施できる。これらの成分は、通常、本発明の抗アレルギー剤の各々の利用分野における必要性に応じて適宜選択される。以上のような成分を含む組成物の形態には特に制限はなく、例えば、粉末、顆粒、錠剤、ペースト、ゼリー、乳液、溶液などの所望の形態で提供される。
前記糖質としては、ブドウ糖、果糖、ラクトース、トレハロース、マルトース、蔗糖、ラクトスクロース、水飴などの糖類、サイクロデキストリン、環状四糖などの環状の糖類、エリスリトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、還元水飴などの糖アルコール類、アスパルテーム、ステビア抽出物、スクラロースなどの高甘味度甘味料、プルラン、カラギーナンなどの天然多糖類、天然ガム類、合成品のカルボキシメチルセルロースなどの増粘剤などの1種又は2種以上を添加することにより、固状のものにあってはその賦形性に有利に利用できるだけでなく、本発明の抗アレルギー剤の安定化、呈味改善、風味保持などに有利に利用できる。
本発明の抗アレルギー剤を配合してなる組成物を製造するには、対象とする動物類やその摂取方法又は投与方法などを考慮して、本発明の抗アレルギー剤と、飲食物、化粧品、医薬品、医薬部外品、飼料、餌料、ペットフードなどの分野において使用可能な1種又は2種以上の成分とを、適宜の配合比率で混合し、適宜、希釈、濃縮、乾燥、濾過、遠心分離などの工程を実施して、所望の形状に成形して抗アレルギー剤を配合してなる組成物を調製すればよい。各成分を配合する順序や、当該工程を実施する時期は、本発明の抗アレルギー剤の効果が損なわれないぎり、その順序や時期に制限はない。
本発明の抗アレルギー剤を配合してなる組成物を飲食物の形態として用いる場合には、例えば、アイスクリーム、アイスキャンデー、シャーベットなどの氷菓、氷蜜などのシロップ、バタークリーム、カスタードクリーム、フラワーペースト、ピーナッツペースト、フルーツペーストなどのスプレッド及びペースト、チョコレート、ゼリー、キャンディー、グミゼリー、キャラメル、チューインガム、プリン、シュークリーム、スポンジケーキなどの洋菓子、ジャム、マーマレード、シロップ漬、糖菓などの加工果実ないしは加工野菜、まんじゅう、ういろう、あん、羊羹、水羊羹、カステラ、飴玉などの和菓子、醤油、粉末醤油、味噌、粉末味噌、マヨネーズ、ドレッシング、食酢、三杯酢、テーブルシュガー、コーヒーシュガーなどの調味料などが挙げられる。望ましい飲料の形態としては、例えば、合成酒、醸造酒、果実酒、洋酒などの酒類、ジュース、ミネラル飲料、炭酸飲料、乳酸飲料、乳酸菌飲料、スポーツドリンク、ドリンク剤、茶、紅茶、ウーロン茶、コーヒー、ココアなどの清涼飲料などが挙げられる。
化粧品の形態として用いる場合には、例えば、ローション、クリーム、乳液、ゲル、粉末、ペースト、ブロックなどの形態で、石けん、化粧石けん、肌洗い粉、洗顔クリーム、洗顔フォーム、フェイシャルリンス、ボディーシャンプー、ボディーリンス、ヘアシャンプー、ヘアリンス、髪洗い粉などの清浄用化粧品、セットローション、ヘアブロー、チック、ヘアクリーム、ポマード、ヘアスプレー、ヘアリキッド、ヘアトニック、ヘアローション、養毛料、染毛料、頭皮用トリートメント、びん付油、つや出し油、髪油、スキ油などの頭髪化粧品、化粧水、バニシングクリーム、エモリエントクリーム、エモリエントローション、パック用化粧料(ゼリー状ピールオフタイプ、ゼリー状ふきとり型、ペースト状洗い流し型、粉末状など)、クレンジングクリーム、コールドクリーム、ハンドクリーム、ハンドローション、乳液、保湿液、アフターシェービングローション、シェービングローション、プレシェーブローション、アフターシェービングクリーム、アフターシェービングフォーム、プレシェーブクリーム、化粧用油、ベビーオイルなどの基礎化粧品、ファンデーション(液状、クリーム状、固型など)、タルカムパウダー、ベビーパウダー、ボディパウダー、パヒュームパウダー、メークアップベース、おしろい(クリーム状、ペースト状、液状、固型、粉末など)、アイシャドウ、アイクリーム、マスカラ、眉墨、まつげ化粧料、頬紅、頬化粧水などのメークアップ化粧品、香水、練香水、粉末香水、オーデコロン、パフュームコロン、オードトワレなどの芳香化粧品、日焼けクリーム、日焼けローション、日焼けオイル、日焼け止めクリーム、日焼け止めローション、日焼け止めオイルなどの日焼け・日焼け止め化粧品、マニキュア、ペディキュア、ネイルカラー、ネイルラッカー、エナメルリムーバー、ネイルクリーム、爪化粧料などの爪化粧品、アイライナー化粧品、口紅、リップクリーム、練紅、リップグロスなどの口唇化粧品、練歯磨、マウスウォッシュなどの口腔化粧品、バスソルト、バスオイル、浴用化粧料などの入浴用化粧品などが挙げられる。
医薬品の形態として用いる場合には、例えば、エキス剤、エリキシル剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、眼軟膏剤、口腔粘膜貼付剤、懸濁剤、乳剤、硬膏剤、座剤、散剤、酒精剤、錠剤、シロップ剤、注射剤、チンキ剤、点眼剤、点耳剤、点鼻剤、トローチ剤、軟膏剤、芳香水剤、鼻用噴霧剤、リモナーデ剤、リニメント剤、流エキス剤、ローション剤、湿布剤、噴霧剤、塗布剤、浴剤、貼付剤、パスタ剤、パップ剤などが挙げられる。以上のような形態の本発明の抗アレルギー剤を配合してなる組成物を製造するには、目的とする製品を慣用の製造方法にしたがって製造する過程の適宜の時期に本発明の抗アレルギー剤を添加すればよい。ただし、目的とする製品の製造工程に加熱工程がある場合には、製造工程での抗アレルギー作用の減衰を防ぐために、本発明の抗アレルギー剤は、加熱工程の前に添加すべきでなく、例えば、加熱工程の後に30℃以下、望ましくは常温にまで冷却した後に添加するのが望ましい。以上のような本発明の組成物は、本発明の抗アレルギー剤を、組成物中に、通常、0.01質量%以上、望ましくは、0.1乃至100質量%含有する。
本発明の抗アレルギー剤を医薬品としてアレルギー疾患の治療、予防に用いる場合の適応症としては、例えば、前記したアトピー性疾患全般に加えて、金属アレルギー、遅延型接触皮膚炎、食物アレルギー、薬物アレルギー、化学物質過敏症などが挙げられる。また、本発明の抗アレルギー剤は、IL−2、IL−4、IFN−γやTNF−αの産生を抑制することから、自己免疫疾患、例えば、多発性硬化症、多発性筋炎、慢性関節リューマチ、リューマチ熱、強皮症、多発性結節性動脈炎、活動性慢性肝炎、萎縮性胃炎、自己免疫性溶血性貧血、無精子症、バセドウ病、ベーチェット症候群、CRTS症候群、寒冷凝集素性溶血性貧血、潰瘍性大腸炎、グッドパスチャー症候群、甲状腺機能亢進症、慢性甲状腺炎、特発性アジソン病、特発性血小板減少性紫斑病、若年性糖尿病、白血球減少症、重症筋無力症、発作性寒冷血色素尿症、悪性貧血、原発性胆汁性肝硬変症、シーグレン症候群、交換性眼炎、全身性紅斑性狼そう、ウェジナー肉芽腫症などの症状の緩和・治療にも有利に利用できる。
以上のように本発明の抗アレルギー剤は、抗アレルギー作用を示す上、摂取した生体に悪影響を与えないので、日常的に利用することにより、利用した生体において抗アレルギー作用が効果的に発揮され、重篤な副作用を惹起することなく、その生体の抵抗力の増強によるアレルギー疾患の予防、早期緩和、治療、及び健康な状態の維持などが達成される。したがって、本発明の抗アレルギー剤は、アレルギー疾患を予防・緩和・治療するための飲食物・化粧品・医薬品などとして極めて有用である。特に、化粧品として利用する場合には、皮膚疾患の予防ならびに該疾患に対する治療効果の改善などに奏効する。
最近、ローヤルゼリーが、抗アレルギー作用を発揮することがエイチ・オカ等『バイオセラピー(Biotherapy)』、第14巻、145頁乃至150頁(2000年)や、エム・カタオカ等『ナチュラル・メディシンズ(Natural Medicines)』、第55巻、174頁乃至180頁(2001年)によって報告されている。しかしながら、これらの報告は、ローヤルゼリーが有する抗アレルギー作用の主体となる物質が、ローヤルゼリーに含まれる蛋白質、糖質、脂質、又はそれら以外の物質のいずれであるか全く言及していない。したがって、抗アレルギー作用の主体物質が配列表における配列番号1又は2のいずれかで示される部分アミノ酸配列を有する蛋白質であること、及び、サイトカイン産生抑制活性が後記する実験2の試験方法によって高いと認められたローヤルゼリーは、経口投与により、後記実験7で示したように著明な抗アトピー作用を発揮することについてを明らかにしたのは本発明をもって嚆矢とする。
以下に、本発明に用いるローヤルゼリー及び抗アレルギー蛋白質について、具体的な実験例をあげて本発明をさらに詳しく説明する。
実験1:ローヤルゼリー水溶性蛋白質画分の調製
凍結保存していた生ローヤルゼリー(ブラジル産)25gを室温にて融解し、20mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)に懸濁した後、低分子物質を除去するために同緩衝液5Lに対して透析した。次いで、得られた透析内液を遠心分離(12,000rpm、15分)することにより不溶性物質を除去し、さらにポアサイズ0.22μmのフィルターでろ過して、ローヤルゼリー水溶性蛋白質画分を得た。
実験2:マウス脾臓細胞を用いたサイトカイン産生抑制及び細胞増殖抑制活性の測定
OVAを抗原とし、Alumをアジュバントとして3回免疫したBALB/cマウスより回収した脾臓細胞を5×106個/mlに調製し、抗CD3抗体(5μg/ml)で固相化した96ウェルのマイクロプレートに、100μlずつ播きこんだ。次いで、実験1で用いた生ローヤルゼリー又は実験1で得たローヤルゼリー水溶性蛋白質画分を、蛋白質濃度2.0mg/ml及び4.0mg/mlに調製し、これを50μlずつ添加した。更に、各ウェルに培地を50μl添加し、総液量200μlとした。40時間培養した後に培養上清液を回収し、IL−2、IL−4の各サイトカイン量を常法の、固相酵素免疫測定法(ELISA法)にて測定した。ローヤルゼリー水溶性蛋白質画分の代わりにリン酸緩衝生理食塩水(以下、本明細書では単にPBS(−)と略称する。)を用いて同様に行ったものを対照とした。対照のサイトカイン産生量を100%として生ローヤルゼリー及びローヤルゼリー水溶性蛋白質画分の相対的なサイトカイン産生量をパーセントで表した。結果を表2に示した。
表2の結果から明らかなように、試験した生ローヤルゼリー及びローヤルゼリー水溶性蛋白質画分は用量依存的にIL−2、IL−4の産生を抑制した。生ローヤルゼリーの場合、蛋白質濃度2.0mg/mlのときのIL−2相対産生率及びIL−4相対産生率はそれぞれ103%、73%であった。ローヤルゼリー水溶性蛋白質画分の場合、蛋白質濃度2.0mg/mlのときのIL−2相対産生率及びIL−4相対質産生率はそれぞれ76%、54%であった。これらの結果から、透析、遠心分離などの精製操作を加え、蛋白質以外の糖質などの水溶性低分子物質及び不溶性物質を除くことにより、生ローヤルゼリーに比べて蛋白質当りのサイトカイン産生抑制活性(抗アレルギー活性)を高めたローヤルゼリー標品が得られることが判明した。
実験3:生ローヤルゼリーからの抗アレルギー活性蛋白質の精製及びその理化学的性質
実験3−1:生ローヤルゼリーからの抗アレルギー活性蛋白質の精製
実験2で認められたOVA/Alumで免疫したマウス脾臓細胞のサイトカイン産生抑制活性を指標として、生ローヤルゼリーから抗アレルギー活性蛋白質を精製した。また、同時に細胞増殖能を、酸化−還元インディケーターである色素(トレック・ダイアグノスティック社製、商品名『アラマー・ブルー(alamar Blue)』)を用いて544nmを励起波長とし、590nmを測定波長として蛍光強度を測定した。実験1で得たローヤルゼリー水溶性蛋白質画分を、『DEAE−5PW』ゲル(株式会社東ソー製)を用いた陰イオン交換カラムクロマトグラフィー(ゲル量54ml)に供したところ、サイトカイン産生抑制活性及び細胞増殖抑制活性を有する蛋白質はDEAE−5PWゲルに吸着した。蛋白質の溶出を280nmの吸光度を測定することにより追跡しながら、吸着した蛋白質を食塩濃度0Mから0.3Mに上昇するリニアグラジエントで溶出させ、第2図に示すように食塩濃度約0.08M付近で溶出する活性蛋白質(第2図における太線1)と、0.17乃至0.25M付近に溶出する活性蛋白質(第2図における太線2)の2種の蛋白質を分離、回収した。便宜上、本明細書では、前者を「活性蛋白質1」と、後者を「活性蛋白質2」と称する。以下、これらを別々の精製工程により精製した結果を示す。
実験3−2:活性蛋白質1の精製
実験3−1で得た活性蛋白質1を含有するフラクションを食塩濃度0.01Mの20mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)に対して透析し、その透析内液を『リソース(Resource)Q』ゲル(アマシャム・バイオサイエンス社製)を用いた陰イオン交換カラムクロマトグラフィー(ゲル量6ml)に供した。活性蛋白質1はリソースQゲルに吸着し、食塩濃度0Mから0.5Mに上昇するリニアグラジエントで溶出させたところ、食塩濃度約0.1M付近で溶出した。活性画分を回収し、その食塩濃度を0.05Mに調製するために、同食塩濃度の緩衝液に対して透析し、その透析内液を『ヘパリン(Heparin)−5PW』ゲル(株式会社東ソー製)を用いたアフィニティカラムクロマトグラフィー(ゲル量3.3ml)に供した。その結果を第3図に示す。活性蛋白質1はヘパリン−5PWゲルに吸着し、食塩濃度0Mから1Mに上昇するリニアグラジエントで溶出させ、実験2及び実験3−1の方法でサイトカイン産生抑制及び細胞増殖抑制活性を有する画分を調べたところ、第3図における太線1で示される食塩濃度約0.15M付近で溶出する活性蛋白質(以下、本明細書では、これを「活性蛋白質1−1」と称する)と、第3図における太線2で示される約0.35M付近に溶出する活性蛋白質(以下、本明細書では、これを「活性蛋白質1−2」と称する)の2種が検出された。両者は後述するように同一のN末端アミノ酸配列を有しており、活性蛋白質1−2が活性蛋白質1−1よりも分子量が大きく比活性も高いことから、活性蛋白質1−2を選択し、更に精製した。活性蛋白質1−2を含有するフラクションを『スーパーデックス(Superdex)200』ゲル(アマシャム・バイオサイエンス社製)を用いたゲルろ過カラムクロマトグラフィー(ゲル量320ml)に供し、1.5倍濃度のPBS(リン酸緩衝液)を用いて溶出した。この活性画分を回収し、OVA/Alumで免疫したマウス脾臓細胞のサイトカイン産生抑制及び細胞増殖抑制活性を有する精製活性蛋白質1を得た。活性蛋白質1の各精製ステップに於ける蛋白量、比活性を表3に示す。(但し、表3中、ヘパリン−5PW回収区以降は活性蛋白質1−2の数値を表す。)
得られた精製活性蛋白質1を還元剤ジチオスレイトール(DTT)存在下でゲル濃度10%(w/v)のSDS−PAGEに供し、精製標品の純度を検定したところ、蛋白質バンドは単一で、純度の高い標品であった。
実験3−3:活性蛋白質1の理化学的性質
(1)分子量
実験3−2で得たOVA/Alumで免疫したマウス脾臓細胞のサイトカイン産生抑制及び細胞増殖抑制活性を有する精製活性蛋白質1−2と、同じく実験3−2で得た部分精製活性蛋白質1−1を実験3−2と同様に還元剤DTT存在下でのSDS−PAGEに供し、同時に泳動した分子量マーカー(アマシャム・バイオサイエンス社製、商品名『LMWエレクトロフォレシス・キャリブレーション・キット(LMW Electorophoresis Caribration Kit)』)と比較して当該活性蛋白質の分子量を測定したところ、活性蛋白質1−2は分子量約70kDaに相当する位置に、また、活性蛋白質1−1は分子量約55kDaに相当する位置に、それぞれ蛋白質バンドが検出された。
(2)N末端アミノ酸配列
実験3−2で得た活性蛋白質1−2精製標品及び活性蛋白質1−1部分精製標品のN末端アミノ酸配列10残基を、常法により、プロテインシーケンサー(アプライド・バイオシステムズ社製、モデル473A)を用いて分析したところ、両者とも同一の、配列表における配列番号1のN末端アミノ酸配列を有していた。両者の内、約70kDaの分子量を有する活性蛋白質1−2を本発明者はRJP70と命名した。
実験3−4:活性蛋白質2の精製
実験3−1で得た活性蛋白質2を含有するフラクションを食塩濃度0.01Mの20mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)に対して透析し、その透析内液を『リソース(Resource)Q』ゲル(アマシャム・バイオサイエンス社製)を用いた陰イオン交換カラムクロマトグラフィー(ゲル量6ml)に供した。活性蛋白質2はリソースQゲルに吸着し、食塩濃度0.1Mから0.4Mに上昇するステップグラジエントで溶出させた。活性画分を回収し、活性蛋白質2を含有するフラクションを『スーパーデックス(Superdex)200』ゲル(アマシャム・ファルマシア・バイオテク製)を用いたゲルろ過カラムクロマトグラフィー(ゲル量320ml)に供し、1.5倍濃度のPBS(−)を用いて溶出した。活性画分は2つ認められたものの、両者は還元剤存在下でのSDS−PAGEにおいて同一の約55kDaの分子量を示し、同一の蛋白質が単量体と多量体として分離したと考えられた。この活性画分を両方まとめて回収し、OVA/Alumで免疫したマウス脾臓細胞のサイトカイン産生抑制及び細胞増殖抑制活性を有する精製活性蛋白質2を得た。活性蛋白質2の各精製ステップに於ける蛋白質量、比活性を表4に示す。
精製活性蛋白質2を還元剤DTT存在下でゲル濃度10%(w/v)のSDS−PAGEに供し、精製標品の純度を検定したところ、蛋白質バンドは単一で、純度の高い標品であった。
実験3−5:活性蛋白質2の理化学的性質
(1)分子量
実験3−4で得た精製活性蛋白質2を実験3−3と同様に還元剤DTT存在下でのSDS−PAGEに供したところ、分子量約55kDaに相当する位置に蛋白質バンドが検出された。
(2)N末端アミノ酸配列
実験3−4で得た精製活性蛋白質2のN末端アミノ酸配列を、常法により、プロテインシーケンサー(アプライド・バイオシステムズ社製、モデル473A)を用いて25残基分析したところ、配列表における配列番号2のN末端アミノ酸配列を有していた。活性蛋白質2を本発明者はRJP55と命名した。
実験4:RJP70精製標品のサイトカイン産生抑制作用
実験3−2で得たRJP70精製標品を用いて、段階希釈法により、11.7、23.4、46.9、93.8、188、及び375μg/mlの濃度の溶液を調製し、実験2と同様に、RJP70精製標品のマウス脾臓細胞に対するサイトカイン産生抑制作用を調べた。また、実験3−1と同様の方法で細胞増殖能を調べた。結果を表5に示した。
表5から明らかなように、RJP70精製標品は用量依存的にIL−2及びIL−4の産生を抑制し、且つ、細胞の増殖を抑制した。
実験5:RJP70精製標品のT細胞又はマクロファージに対する作用と細胞障害性
実験5−1:RJP70精製標品のT細胞に対する作用と細胞障害性
RJP70のT細胞に対する直接的な作用と細胞障害性を調べるためにマウス脾臓細胞から精製したCD4+T細胞を抗CD3抗体で刺激する試験系で活性を確認した。実験2の方法で調製したBALB/cマウス脾臓細胞を10(v/v)%ウシ胎仔血清(FCS)を含むRPMI1640培地に懸濁し、FCSでコートしたシャーレで37℃、1時間保持し、接着性の細胞を除去した。続いて、ヤギ抗マウスIgでコートしたシャーレを同様に用いて、B細胞を除去した。更に、抗マウスCD4抗血清でコートしたシャーレに接着する細胞を回収することにより、CD4+T細胞を得た(CD4+T細胞含量91乃至93%)。
実験3−2の方法で得たRJP70精製標品と、このCD4+T細胞を用い、実験2と同様にしてサイトカイン産生抑制作用を調べた。RJP70精製標品を段階希釈法により、31.3、62.5、125、250μg/mlの濃度の溶液を調製し、IL−2、IL−4及びIFN−γの産生抑制作用を調べた。RJP70精製標品に代えてPBS(−)を用いた以外は同様に処理したものを対照とし、対照のサイトカイン産生量を100としたときの相対値を算出した。また、トリパンブルー色素排除法により、用いたCD4+T細胞の生細胞と死細胞の数を調べ、次式で生存細胞比率(%)を求め、細胞障害性の指標とした。結果を表6に示した。
表6から明らかなように、RJP70はCD4+T細胞を用いた系でもマウス脾臓細胞の系(実験4)とほぼ同様な傾向でIL−2、IL−4の産生を抑制し、また、IFN−γの産生も抑制した。このとき、生存細胞の比率は対照と同等であり、RJP70に細胞障害性は認められなかった。
実験5−2:RJP70精製標品のマクロファージに対する作用と細胞障害性
RJP70のマクロファージに対する直接的な作用と細胞障害性を調べるために、マウス腹腔から採取したマクロファージをリポポリサッカライド(LPS)及びIFN−γで刺激する試験系で活性を確認した。マウス末梢マクロファージを調製するために、3%ブリューウェルのチオグリコレート培地をBALB/cマウスの腹腔に2ml注射し、3乃至4日後に腹水を採取した。腹水を10(v/v)%ウシ胎児血清を含むRPMI1640培地で希釈して、細胞濃度1×106個/mlにした後、プラスチック製シャーレに10mlずつ播種した。5%炭酸ガス雰囲気中で37℃で2時間培養した後、培地を除去して、2回上記培地で濯ぎ、シャーレに付着しなかった細胞を除去し、シャーレに残った付着細胞を上記培地でセルスクレーパーを用いて回収し、マクロファージとして今後の実験に用いた。実験3−2の方法で得たRJP70精製標品と、このマクロファージを用い、実験2と同様にしてサイトカイン産生抑制作用を調べた。RJP70精製標品を段階希釈法により、150、300、600μg/mlの濃度の溶液を調製し、TNF−α及びIL−6の産生抑制作用を調べた。RJP70精製標品に代えてPBS(−)を用いた以外は同様に処理したものを対照とし、対照のサイトカイン産生量を100としたときの相対値を算出した。また、トリパンブルー色素排除法により、用いたマクロファージの生細胞と死細胞の数を調べ、上記数式1で生存細胞比率(%)を求め、細胞障害性の指標とした。結果を表7に示した。
表7から明らかなように、RJP70はマクロファージを用いた系において、LPS及びIFN−γ存在下でのTNF−αの産生を抑制した。一方、同じ炎症性サイトカインとして分類されるIL−6の産生を抑制しなかった。このとき、生存細胞の比率は対照と同等であり、RJP70に細胞障害性は認められなかった。
実験6: ローヤルゼリー及びRJP70精製標品の抗体産生抑制作用
ローヤルゼリー又はRJP70の投与が、OVA/Alumで免疫したマウスの抗体産生に及ぼす影響を調べた。雌性BALB/cマウス(7週齢、日本チャールスリバー株式会社)各5匹に対し、一週間おきに3回、OVA2μg/Alum3mgを腹腔内投与にて免疫した。ローヤルゼリーは実験1で用いたものを使用し、PBS(−)に溶解したものをマウス1匹当たり1回に50μgとなるように、また、RJP70は実験3−2の方法で得たものを使用し、同じくPBS(−)に溶解した精製標品をマウス1匹当たり1回に0.5、5、50μgとなるようにして、3回行われた各免疫操作(OVA/Alum投与)の2日前、6時間前の2回にわたり、計6回、腹腔内投与した。また、対照としてPBS(−)を用いて同様に行った。試験群を表8にまとめた。
3回目の免疫から一週間後に採血し、血清中の各種抗体濃度を酵素免疫測定法(EIA法)により測定した。抗OVA−IgE抗体価はキャプチャードEIA法により測定し、標準血清(640U/ml)を用いて作成した検量線より算出した。また、抗OVA−IgG1抗体価は間接EIA法により測定し、標準血清(128,000U/ml)を用いて作成した検量線より算出した。各測定値の統計処理は対照群と試験群の間で分散性を検討し、T検定或いはウェルヒ(Welch)法により有意差検定を行った。1群5匹での各測定値の中に他とかけ離れた値がある場合にはスミルノフ(Smirnov)の棄却検定に従った。測定した結果を、抗OVA−IgE抗体価について第4図に、また、抗OVA−IgG1抗体価について第5図に示した。
第4図から明らかなように、ローヤルゼリーとRJP70のいずれにも抗OVA−IgE抗体価を低下させる作用が認められた。ローヤルゼリー投与群の抗OVA−IgE抗体価は対照(PBS(−)投与群)と比較して、61%の有意な抑制が認められた。また、RJP70精製標品投与群では投与量に依存して抗OVA−IgE抗体価が低くなり、その抑制率は0.5μg/匹投与群で13%、5μg/匹投与群で39%、50μg/匹投与群で67%であった。また、第5図から明らかなように、抗OVA−IgG1抗体価もIgEの場合とほぼ同様に、ローヤルゼリー投与群及びRJP70精製標品のすべての投与群で46〜82%の有意な抑制が認められた。
以上の結果より、本発明に用いるローヤルゼリー及びRJP70にはIgE、IgG1抗体の産生を抑制する作用があり、アレルギー反応を抑制することが確認された。
実験7:アトピー性皮膚炎の発症抑制作用
Nc/Ngaマウス(雌、5週齢、日本チャールスリバー社販売)に対して、ピクリルクロライドを塗布することによりアトピー性皮膚炎と酷似する皮膚炎を誘発させて作成したアトピー性皮膚炎モデルマウスを用いて、実験1で用いた生ローヤルゼリー及び実験3−2の方法で得たRJP70のアトピー性皮膚炎の発症抑制作用を調べた。まず、バリカンで剃毛したマウスの腹部及び胸部にエタノール:アセトン(容量比4:1)の混合液に5%(w/v)の濃度に溶解したピクリルクロライド溶液を塗布して初回感作を行った。初回感作より4日めにオリーブ油に1%(w/v)の濃度に溶解したピクリルクロライド溶液を麻酔したマウス背部及び耳介に塗布した。その後、1週間おきにさらに計5回、同溶液を背部及び耳介に塗布した。実験1で用いた生ローヤルゼリー(1.0mg/マウス)又は実験3−2の方法で得たRJP70精製標品(0.3mg/マウス)を、胃ゾンデを用いて初期感作の3日前より1日に1回、週5回、6週間、10匹のマウスに経口投与した。対照としてPBS(−)を同様に10匹のマウスに経口投与した。ピクリルクロライドによる初回感作から3週めより週に2回、皮膚症状(掻痒症、発赤・出血、浮腫、擦傷・組織欠損、痂皮形成・乾燥)を肉眼にて判定し、評価した。
生ローヤルゼリー投与群及びRJP70投与群は対照群と比べて有意に症状が軽く、アトピー性皮膚炎の発症を抑制していた。この結果は本発明に用いるローヤルゼリー及び抗アレルギー蛋白質RJP70が、アトピー性のアレルギー症状を緩和する作用を有する物質であることを示している。
実験8:急性毒性試験
5質量%アラビアガムを含む生理食塩水にRJP70又はRJP55の適量をそれぞれ溶解した後、常法に従いろ過除菌した。これらを体重20乃至25gのddYマウス(10匹/群)の腹腔内に注射投与するか、胃ゾンデにより経口投与した後、7日間に亙って経過を観察した。その結果、いずれの試料、いずれの投与経路によっても、試みた最大投与量である10mg/kg体重においても死亡例が認められなかった。この結果は本発明に用いる抗アレルギー蛋白質RJP70及びRJP55が、ヒトを含む哺乳類に常用しても安全な物質であることを示している。
実験9:RJP70及びRJP55をコードするDNA(cDNA)のクローニング
実験9−1:ミツバチからの全RNAの調製
全RNAの調製は、通常のグアニジンチオシアネート/酸性フェノール:クロロフォルム法を採用したRNA調製キット(アンビオン社製、商品名『トータリーRNAキット(TOTALLY RNA kit)』)を用い、キットに添付された説明書に従って行った。まず、セイヨウミツバチ(Apis mellifera L.)の成虫12匹の頭部を変性溶液に浸し、ホモジナイザーで破砕して抽出液10mlを得た。等量のフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(容量混合比25:24:1)溶液を加えて混和し、遠心分離して得た上層部分に、0.1倍量の3M酢酸ナトリウム(pH4.5)、抽出液と等量の酸性フェノール:クロロホルム溶液の順に添加・攪拌し、遠心分離して上層部分を回収した。これに、イソプロパノール液を加えて−20℃で1時間保持し、遠心して得られた沈殿物を、70%(v/v)エタノール水溶液で洗浄・乾燥後、300μlの0.1mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)溶液で溶解した。70℃で10分間熱処理後、150μlの7.5M塩化リチウムと50mM EDTAを含む溶液を添加し、−20℃で1時間保持した。遠心後の沈殿物は、70%(v/v)エタノール水溶液で洗浄・乾燥後、0.5mM EDTAを含むジエチルピロカーボネート(DEPC)処理水に溶解し、186μgの全RNAを調製した。
実験9−2:RJP70をコードするcDNAのクローニング
実験9−1で得た全RNA(1μg/μl)を5μl、0.2μg/μlのランダムヘキサマーを5μl、及びDEPC処理水50μlを0.5ml容チューブに入れ、サーマルサイクラー(パーキンエルマー社製、商品名『DNAサーマルサイクラー480』)を用いて、70℃で5分間加熱後、4℃に急冷させた。これに、5倍濃度RT−PCR反応液を20μl、100mMジチオトレイトールを10μl、25mM dNTPを5μl、200U/μlのモロニーマウス白血病ウィルス(M−MLV)逆転写酵素(インビトロジェン社製)を5μl加え、25℃で10分間、42℃で30分間、99℃で5分間保持して逆転写反応を行い、第1ストランドcDNAを含む水溶液を得た。次いで、ジェンバンクデータベースより入手したMRJP3のcDNA塩基配列の情報に基づき合成した、配列表における配列番号9の塩基配列を有するセンスプライマーと、配列表における配列番号10の塩基配列を有するアンチセンスプライマーを用いて常法に従い、PCRによる増幅を行った。逆転写反応産物2μlに、宝酒造社製の10倍濃度ExTaq反応液を5μl、ExTaqポリメラーゼ(2.5U/μl)を1μl、2.5mM dNTPを4μl、上記センスプライマー(100ng/μl)を1μl、上記アンチセンスプライマー(100ng/μl)を1μl加え、滅菌水で50μlとした。反応は、94℃で30秒間、61℃で30秒間、72℃で3分間の順で35サイクル行った。PCR産物を0.9%アガロースゲル電気泳動に供したところ、約1,600bp付近に増幅されたDNA断片のバンドが検出された。常法により、この増幅DNA断片をゲルから抽出し、回収した。この一部を、クローニングキット(ストラタジーン社製、『pCR−Script SK(+) Cloning Kit』)を用い、添付の説明書に従って操作して、プラスミドベクター『pCR−Script Cam SK(+)』との連結反応に供した。連結反応産物の一部で、大腸菌コンピテントセル(ストラタジーン社製、『XL10−Gold Kan』)を、添付の説明書に従って操作し、形質転換した。形質転換した大腸菌は、30μg/mlクロラムフェニコールを含んだLB(1%塩化ナトリウム、1%トリプトン、0.5%酵母エキス)−2%寒天平板培地に接種し、37℃にて16時間培養した。出現したコロニーを、30μg/mlクロラムフェニコールを含むLB液体培地に接種し、37℃で16時間振とう培養し、常法により、菌体より組換えDNAを調製した。通常のジデオキシ法により、DNAシーケンサー(アプライドバイオシステムズ社製、モデル373A)を用いて塩基配列解析を行ったところ、RJP70cDNAは配列表における配列番号5の塩基配列を有していた。なお、配列表における配列番号3のアミノ酸配列は、配列表における配列番号5の塩基配列に並記したアミノ酸配列から分泌シグナル配列に相当する20アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を除いた、成熟型蛋白質のアミノ酸配列である。
実験9−3:RJP55をコードするcDNAのクローニング
ジェンバンクデータベースより入手したMRJP1のcDNA塩基配列の情報に基づき合成した、配列表における配列番号11の塩基配列を有するセンスプライマーと、配列表における配列番号12の塩基配列を有するアンチセンスプライマーを用い、PCR反応を94℃で30秒間、46℃で30秒間、72℃で3分間の順で5サイクル、引き続き、94℃で30秒間、61℃で30秒間、72℃で3分間の順で35サイクル行った以外は、実験9−2と同様にしてRJP55cDNAをクローニングし、塩基配列解析を行った。クローニングしたRJP55cDNAは配列表における配列番号6の塩基配列を有していた。なお、配列表における配列番号4のアミノ酸配列は、配列表における配列番号6の塩基配列に並記したアミノ酸配列から開始コドンATGがコードするメチオニンを1残基除いた、成熟型蛋白質のアミノ酸配列である。
実験10:組換えDNA技術による抗アレルギー蛋白質の生産
実験10−1:RJP70組換えバキュロウィルスの調製
実験9−2で得たRJP70の完全長cDNAについて、BD ファーミンジェン社製の『BDバキュロゴールド・トランスフェクション・キット(BD BaculoGold Transfection Kit)』を用い、昆虫細胞での蛋白質発現用組換えバキュロウィルスを調製した。実験9−2で得られた組換えDNAは、制限酵素NotI及びBamHIにて消化後、0.9%(w/v)アガロース電気泳動を行い、1,600bp付近のRJP70cDNA断片をゲルより抽出・精製した。これを、宝酒造社製の『ライゲーション・キット バージョン2』を用いて、バキュロウィルス・トランスファーベクター『pVL1393』のポリヘドリン・プロモーター下流のBamHI−NotI部位に連結させた。連結反応産物の一部で、宝酒造社製の大腸菌コンピテントセル『JM109』株を、添付の説明書に従って操作し、形質転換した。形質転換した大腸菌は、40μg/mlアンピシリンを含んだLB−2%寒天平板培地に接種し、37℃にて16時間培養した。出現したコロニーを、40μg/mlのアンピシリン含有LB液体培地に接種し、37℃で16時間振とう培養後、常法により、菌体から組換えDNAを調製し、RJP70cDNAの挿入を確認後、RJP70組換えベクター『pVL1393−rjp70−4』を作製した。次に、キットの添付説明書の操作方法に従い、Sf9昆虫細胞(ATCC CRL−1711、ヨトウガ由来)を用いて、組換えウィルスの作製を行った。Sf9は、10%(v/v)FCS添加のTC100培地(インビトロジェン社製)を用い、6穴プレートに1×106個/ウェルで播種し、10分間付着させ、上清除去後、0.5mlのトランスフェクション・バッファーA液(10%(v/v)FCS合有グレース培地)に置換した。これに、あらかじめ1.5μgの『pVL1393−rjp70−4』と0.25μgの『BDバキュロゴールド・バキュロウィルスDNA』を混合して5分間反応させた後に、0.5mlのトランスフェクション・バッファーB液(125mM塩化カルシウム、140mM塩化ナトリウム、25mM HEPES,pH7.1)を添加した混合液を、0.5ml/ウェルで添加し、27℃で4時間感染させた。対照として、野性型バキュロウィルスを含むバッファーB液を同様の方法で0.5ml/ウェルで別途Sf9昆虫細胞に添加し、感染させた。次に、各ウェルを10%(v/v)FCS添加TC−100培地で1回洗浄後、同培地2mlを添加し、更に27℃で6日間培養を行った。各培養液を1,000rpmで5分間遠心分離して上清を回収し、RJP70組換えバキュロウィルス調製液あるいはウィルスコントロール液とした。更にそれぞれのウィルスの力価を上げるため、Sf9細胞1×107個に上記の調製液を50乃至200μl添加し、27℃で1週間感染させ、遠心分離して得た上清を、蛋白質発現用のRJP70組換えウィルス液及びウィルスコントロール(野生型ウィルス)液として調製した。
実験10−2:RJP70組換え蛋白質の調製
蛋白質発現用細胞として、昆虫細胞株(インビトロジェン社製、イラクサギンウワバ由来、『High Five』)を用いた。昆虫細胞株は、L−グルタミン(最終濃度1mg/ml)を添加したエクスプレスファイブ無血清培地(インビトロジェン社製)を用いて1×108個/10mlに調製し、実験10−1で得たRJP70組換えウィルス液を200μl添加し、10分毎に攪拌しながら1時間感染させた。次に、エクスプレスファイブ無血清培地を40ml添加後、27℃で1週間培養を行った。培養上清は、15,000rpmで30分間遠心分離してウィルスを除去し、分画分子量30キロダルトンの限外ろ過膜(ミリポア社製、商品名『ウルトラフリー15 UFV2BTK10<30000』)で遠心濃縮し、続いて『セファデックス(Sephadex)G−25M』ゲル充填カラム(アマシャムバイオサイエンス社製、商品名『PD−10』)を用いて1.5倍濃度のPBS(−)に交換し、アッセイに使用可能な組換えRJP70液を調製した(回収した培養上清の20倍濃縮液)。また、RJP70組換えウィルスの替わりにウィルスコントロール液を用いた以外は上記と同様に操作して、対照として用いる試料液を調製した。
実験10−3:組換えRJP70のサイトカイン産生抑制活性
実験2で示した活性測定方法により、組換えRJP70のIL−2及びIL−4産生抑制作用を調べた。実験10−2で得た組換えRJP70液及び対照に、それぞれ0.5倍量の滅菌水を加えたものを原液として活性測定を行い、対照のサイトカイン産生量を100%とした時の相対値を算出して、RJP70の活性を評価した。結果を表8に示した。
表8から明らかなように、組換えRJP70液は、用量依存的にIL−2及びIL−4の産生を抑制した。このことはRJP70蛋白質が抗アレルギー作用を有することを示している。
以下に、具体的な実施例をあげて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1:抗アレルギー剤
市販のα,α−トレハロースの含水結晶(株式会社林原商事販売、登録商標『トレハ』)8.5質量部と、実験3−2の方法で精製し、実験3−2で物理化学的性質を明らかにしているRJP70精製標品の凍結真空乾燥品1.5質量部とを均一に混合し、粉砕機を用いて粉末にした。この粉末を0.42mmφメッシュの篩を通過したものを回収し、本発明の抗アレルギー剤を得た。実験2に準じて試験し、当該抗アレルギー剤がサイトカインの産生を抑制することを確認した後、常温で10日間保存して再度実験2に準じて試験し、安定してサイトカインの産生を抑制する抗アレルギー作用を示すことを確認した。
当該抗アレルギー剤を打錠機を用いて1錠あたり約200mgの錠剤に成形した。本品は、常温保存の後も安定して抗アレルギー作用を示す、簡便に利用できかつ著効を示す抗アレルギー剤である。本品は、まろやかな甘味を示すので、日常的に利用する健康食品としても有用である。
実施例2:抗アレルギー剤
以下の成分を以下の配合で均一に混合した後、実施例1に準じて操作して、粉末形態の本発明の抗アレルギー剤を調製した。なお、RJP70及びRJP55に関しては実験3−2及び3−4の方法で精製し、実験3−3及び3−5で物理化学的性質を明らかにしている精製標品を凍結真空乾燥して得た蛋白質としての質量部で混合した。調製後、実験2に準じて試験し、当該抗アレルギー剤が常温保存後も安定してサイトカインの産生を抑制し、抗アレルギー作用を示すことを確認した。
α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、登録商標『トレハ』)
7.7質量部
RJP70精製標品の凍結乾燥粉末 1.0質量部
RJP55精製標品の凍結乾燥粉末 0.4質量部
糖転移ヘスペリジン(株式会社林原商事販売、商品名『αGヘスペリジンPS』)
4質量部
プルラン(株式会社林原商事販売、商品名『プルランPF−20』)
0.5質量部
この抗アレルギー剤を、打錠機を用いて1錠あたり約300mgの錠剤に成形した。本品は、常温保存の後も安定して抗アレルギー作用を示す、簡便に利用できかつ著効を示す抗アレルギー剤である。本品は、まろやかな甘味を示すので、日常的に利用する健康食品としても有用である。
実施例3:抗アレルギー剤
以下の成分を以下の配合で均一に混合した後、実施例1に準じて操作して、粉末の形態の本発明の抗アレルギー剤を調製した。なお、部分精製ローヤルゼリーとしては、実験3−1の方法で『DEAE−5PW』ゲル(株式会社東ソー製)を用いた陰イオン交換カラムクロマトグラフィーにて部分精製した活性蛋白質1画分を凍結真空乾燥して得た蛋白質としての質量部で混合した。調製後、実験2に準じて試験し、当該抗アレルギー剤が常温保存後も安定してサイトカインの産生を抑制し、抗アレルギー作用を示すことを確認した。
無水結晶マルトース(株式会社林原商事販売、商品名『ファイントース』)
7.5質量部
部分精製ローヤルゼリーの凍結乾燥粉末 1.5質量部
マルチトール 0.8質量部
L−トリプトファン 0.2質量部
本品は、常温保存の後も安定して抗アレルギー作用を示す、簡便に利用できかつ著効を示す抗アレルギー剤である。本品は、まろやかな甘味を示すので、日常的に利用する健康食品としても有用である。
実施例4:健康飲料
無水結晶マルトース((株)林原商事販売、商品名『ファイントース』)500質量部、実施例3の抗アレルギー剤100質量部、粉末卵黄190質量部、脱脂粉乳200質量部、塩化ナトリウム4.4質量部、塩化カリウム1.85質量部、硫酸マグネシウム4質量部、チアミン0.01質量部、アスコルビン酸ナトリウム0.1質量部、ビタミンEアセテート0.6質量部及びニコチン酸アミド0.04質量部からなる配合物を調製した。この配合物25質量部を精製水150質量部に均一に分散・溶解させ、150gずつ褐色ガラス瓶に封入した。
本品は、抗アレルギー作用を安定して示す上、栄養源が補足されているので、健康維持、成長促進、アレルギーの予防、症状の緩和、治療の促進などを目的とする健康飲料として有利に利用できる。なお、本品は、ヒトのみならず、家畜などの動物のための経口摂取又は経管投与用組成物としても有利に利用できる。
実施例5:チューインガム
ガムベース3質量部を柔らかくなる程度に加熱溶融し、これに無水結晶マルチトール(株式会社林原商事販売、商品名『結晶マビット』2質量部とキシリトール2質量部及び実施例2で得た抗アレルギー剤4質量部とを加え、更に適量の香料と着色料とを混合した。常法によってロールにより練り合わせている間に実験3−2の方法で得たRJP70を0.5質量部加え、更に練り合わせた後、成形、包装して製品を得た。
本品はテクスチャー、呈味、風味良好であり、抗アレルギー作用をも有するため、日常的に利用するチューインガムとして有利に利用できる。
実施例6:皮膚外用クリーム
以下の成分を、以下の配合にしたがって、常法により加熱しつつ混合した。
モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン 2.0質量部
自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 5.0質量部
べヘニン酸エイコサニル 1.0質量部
流動パラフィン 1.9質量部
トリオクタン酸トリメチロールプロパン 10.0質量部
上記の混合物に、抗アレルギー剤を除く以下の成分を以下の配合にしたがって添加・混合し、30℃以下にまで冷却した後に、さらに抗アレルギー剤を以下の配合で加え、ホモジナイザーにより乳化して、皮膚外用クリームを製造した。
1,3−ブチレングリコール 5.0質量部
乳酸ナトリウム液 10.0質量部
パラオキシ安息香酸メチル 0.1質量部
モモ葉エキス 1.5質量部
精製水 62.2質量部
実施例1の方法で得た抗アレルギー剤粉末 1.0質量部
本クリームは、優れた保湿性を示す上、アトピー性皮膚炎などのアレルギー症状を緩和するので、皮膚外用クリームとして有用である。
実施例7:液剤
生理食塩水に実験3−2の方法で精製し、実験3−3で物理化学的性質を明らかにしているRJP70精製標品を濃度0.1質量%になるよう溶解した後、溶液を常法にしたがって精密ろ過により滅菌して液剤を得た。
本品は花粉症などのアレルギー疾患を緩和・治療するための注射剤、点眼剤、点鼻剤などとして有用である。
実施例8:トローチ錠
以下の成分を以下の配合で均一に混合した後、実施例1に準じて操作して、粉末の形態の本発明の抗アレルギー剤を調製した。調製後、実験2に準じて試験し、当該抗アレルギー剤が常温保存後も安定してサイトカインの産生を抑制し、抗アレルギー作用を示すことを確認した。
無水結晶マルトース(株式会社林原商事販売、商品名『ファイントース』)
30質量部
澱粉 30質量部
実験3−2の方法で得たRJP70精製標品の凍結乾燥粉末
10質量部
結晶セルロース 19質量部
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 10質量部
ステアリン酸マグネシウム 1質量部
当該抗アレルギー剤を、打錠機を用いて直径16mm、厚さ4mmの1錠あたり約1.0gのトローチ剤に成形した。本品は、常温保存の後も安定して抗アレルギー作用を示す、簡便に利用できかつ著効を示すトローチ剤である。本品は、まろやかな甘味を示すので、アトピー性アレルギーの予防、症状の緩和、治療の促進などを目的として日常的に利用する経口抗アトピー用トローチ剤として有用である。
実施例9:錠剤
無水結晶マルトース(株式会社林原商事販売、商品名『ファイントース』)9質量部と、実験2の試験方法によりサイトカイン産生抑制活性が高レベルで認められた生ローヤルゼリー(ブラジル産)1質量部とを均一に混合し、この混合物を25℃で一夜静置した後、粉砕機を用いて粉末にした。この粉末を0.42mmφメッシュの篩を通したものを回収し、本発明の抗アレルギー剤を得た。
当該抗アレルギー剤を打錠機を用いて1錠あたり約300mgの錠剤に成形した。本品は、常温保存の後も安定して抗アレルギー作用を示す、簡便に利用できかつ著効を示す抗アレルギー剤である。本品は、まろやかな甘味を示すので、アトピー性アレルギーの予防、症状の緩和、治療の促進などを目的として日常的に利用する経口抗アトピー用剤として有用である。
抗アレルギー剤の用途にもよるけれども、ローヤルゼリーの抗アレルギー作用が弱い場合には、低分子又は高分子の生理活性物質を精製するための方法を適用して精製する。本発明でいう精製ローヤルゼリーとは、生ローヤルゼリーに含まれる成分の一部を精製により部分的に除き、且つ、着目する成分の固形物当たりの含有量を高めたものを意味し、本発明においては、ローヤルゼリー水溶性蛋白質画分が好ましく用いられる。個々の精製方法としては、例えば、濾過、濃縮、乾燥、遠心分離、分別沈澱、塩析、透析、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル電気泳動、等電点電気泳動などが挙げられ、必要に応じて、これらは組み合わせて適用される。
本発明で用いるローヤルゼリーにおける抗アレルギー成分の具体例としては、例えば、配列表における配列番号1又は2のいずれかで示される部分アミノ酸配列を有する蛋白質が挙げられる。本発明でいう蛋白質とは、それが配列表における配列番号1又は2のいずれかで示される部分アミノ酸配列を有し、且つ、生体内において抗アレルギー作用を発揮するものであるかぎり、その純度、由来、調製方法は問わない。好ましい蛋白質としては、例えば、配列表における配列番号1又は2のいずれかで示される部分アミノ酸配列を有する蛋白質が挙げられ、その蛋白質は、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)による分子量が55,000乃至70,000ダルトンであって、生物作用として抗体及び/又はサイトカインの産生を抑制するという作用を有している。より好ましい蛋白質としては、例えば配列表における配列番号3又は4に示すアミノ酸配列を有するものが挙げられ、斯かるアミノ酸配列を有する蛋白質はいずれも生体において抗体及びサイトカイン産生抑制が顕著であり、しかも長期連用しても重篤な副作用を惹起することなく、アレルギー疾患に伴う諸症状を効果的に緩和するので、この発明において極めて有用である。なお、これらの蛋白質は単なる例であって、本発明でいう蛋白質は決してこれらに限定されてはならず、例えば、抗アレルギー作用を実質的に失わない範囲で配列表における配列番号3又は4のいずれかの全アミノ酸配列において、これらアミノ酸配列におけるアミノ酸の1個又は2個以上が欠失、又は他のアミノ酸で置換されるか、あるいは、配列番号3又は配列番号4のアミノ酸配列に、他のアミノ酸が1個又は2個以上挿入又は付加されたアミノ酸配列を有するものであってもよいことは言うまでもない。
本発明に用いる配列表における配列番号1又は2のいずれかで示される部分アミノ酸配列を有する抗アレルギー蛋白質は、本来、ローヤルゼリーに含有される蛋白質であり、通常、天然のローヤルゼリーから採取することにより得ることができる。本発明で用いられる抗アレルギー蛋白質は、原料としてのローヤルゼリーから、前記の精製方法の1又は複数を適宜用いて、所望のレベルにまで精製して得ることができる。本発明でいう単離若しくは部分精製された配列表における配列番号1又は2のいずれかで示される部分アミノ酸配列を有する蛋白質とは、このような各種精製方法を用いて完全に精製・単離されたもの若しくは部分的に精製されたものを意味し、いずれも本発明に有利に用いることができる。
本発明の抗アレルギー剤の有効成分である、配列表における配列番号1又は2のいずれかで示される部分アミノ酸配列を有する蛋白質は、通常、電気泳動により分子量を測定するなどして識別・定量することができる。電気泳動の方法としては、通常、還元剤存在下でのSDS−PAGE法、等電点電気泳動法又はこれらを組み合わせた2次元電気泳動が用いられる。第1図は、ローヤルゼリーの2次元電気泳動による抗アレルギー蛋白質の検出結果を示す。ローヤルゼリー中に存在する配列表における配列番号1の部分アミノ酸配列を有する蛋白質は、還元剤存在下でのSDS−PAGEにおいて分子量約70キロダルトン(kDa)のものが主であり、一部、約55kDaのものが存在する。また、ローヤルゼリー中に存在する配列表における配列番号2の部分アミノ酸配列を有する蛋白質について、同様に還元剤存在下でのSDS−PAGEにて分子量を測定すると、約55kDaである。以下、本明細書では、配列表における配列番号1の部分アミノ酸配列を有する蛋白質の内、配列表における配列番号3のアミノ酸配列を有し、且つ、約70kDaの分子量を有する蛋白質を活性蛋白質1−2又は「RJP70」と、また、配列番号2の部分アミノ酸配列を有する蛋白質の内、配列表における配列番号4のアミノ酸配列を有し、且つ、約55kDaの分子量を有する蛋白質を活性蛋白質2又は「RJP55」と呼称することがある。
前述したように、本発明に用いる抗アレルギー蛋白質RJP70は配列表における配列番号3の、また、RJP55は配列表における配列番号4のアミノ酸配列をそれぞれ有している。これらのアミノ酸配列をジェイ・シュミットゾーバ(J.Schimitzova)等著、『セルラー・アンド・モレキュラー・ライフ・サイエンシーズ(Cellular and Molecular Life Sciences)』、第54巻、1,020乃至1,030頁(1998年)で報告されているローヤルゼリーの主要蛋白質MRJP1、MRJP2、MRJP3、MRJP4、及びMRJP5のアミノ酸配列比較したところ、RJP70のN末端アミノ酸配列はMRJP3のN末端アミノ酸配列と、また、RJP55のN末端アミノ酸配列はMRJP1のN末端アミノ酸配列と完全に一致していた。更に、ジェイ・シュミットゾーバ等は、MRJP3としては分子量60、63、66、70kDaと、分子量が異なる複数の蛋白質が存在していることを報告しており、本発明に用いる配列表における配列番号1の部分アミノ酸配列を有する蛋白質にも分子量約70kDaの蛋白質(RJP70)だけでなく、同一の部分アミノ酸配列を有し、約55kDaの分子量を示す蛋白質が認められている。また、RJP55はN末端アミノ酸配列のみならず、分子量においても約55kDaと、MRJP1と一致している。また、ジェイ ・シュミットゾーバ等は、MRJP1及びMRJP3は、ローヤルゼリー蛋白質のそれぞれ約31質量%、約26質量%を占めることを明かにしている。従って、本発明に用いるRJP70及びRJP55はそれぞれMRJP3及びMRJP1と実質的に同一である可能性が高い。しかしながら、これらの蛋白質は、抗アレルギー作用などの生物作用に関しては、全く検討されていない。
本発明に用いる抗アレルギー蛋白質の調製方法としては、天然のローヤルゼリーから採取する方法以外にも、配列表における配列番号3又は4のいずれかで示されるアミノ酸配列をコードするDNAを用い、組換えDNA技術を適用することによって、抗アレルギー蛋白質を調製することもできる。ミツバチはmRNA又はゲノムDNAなどのDNAの給源として有利に用いられる。本発明でいう抗アレルギー蛋白質RJP70又はRJP55をコードするDNAの具体例としては、本発明者等による遺伝子解析の結果、クローン化された配列表における配列番号5又は6の塩基配列を有するDNAをそれぞれ挙げることができる。RJP70及びRJP55と極めて相同性の高いMRJP3及びMRJP1については、各遺伝子の塩基配列とコードされているアミノ酸配列が既に報告され、遺伝子データベース『ジェンバンク(GenBank)』に登録されており、それぞれアクセション番号Z26318(配列表の配列番号7)、AF000633(配列表の配列番号8)にて閲覧することができる。
上記のセイヨウミツバチからクローン化されたRJP70及びRJP55をコードするDNAの塩基配列(配列表における配列番号5及び6)を、MRJP3(配列番号7)及びMRJP1(配列番号8)とそれぞれ比較すると、RJP70をコードするDNAの塩基配列は計5塩基がMRJP3のものと異なっており、この相違に起因してコードされるRJP70のアミノ酸配列も計3残基が異なっている。また、RJP55をコードするDNAの塩基配列はMRJP1のものと塩基配列が完全に一致している。ただし、MRJP1の塩基配列中1134番目の塩基は不明とされているが、RJP55の塩基配列における該当箇所はチミン「t」である。RJP70とMRJP3との相違点を表1に示す。
本発明で用いうる抗アレルギー蛋白質としては、配列表における配列番号5又は6に示す塩基配列にコードされるもの以外にも、配列番号5又は6に示す塩基配列の一部を含み、且つ、配列表における配列番号1又は2のアミノ酸配列をコードするものであればよい。なお、部位特異的変異などの慣用の組換えDNA技術を適用し、斯かるDNAに塩基の欠失、置換、挿入及び/又は付加を導入することにより、斯かるDNAが本来的にコードする蛋白質の抗アレルギー作用を実質的に消失しない範囲内で当該蛋白質に1個又は2個以上のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/又は付加を導入してアミノ酸配列を改変することも有利に実施できる。抗アレルギー活性を有する蛋白質RJP70とRJP55のアミノ酸レベルでの相同性が約66%であることから、抗アレルギー活性を保持するために、アミノ酸配列の改変は全体の約35%未満にとどめるのが望ましい。
配列表における配列番号5又は6の塩基配列を有するDNAは、本発明の抗アレルギー剤の有効成分である蛋白質を組換えDNA技術によって製造するために、有利に利用できる。これらRJP70又はRJP55をコードする配列表における配列番号5又は6の塩基配列を有するDNAを人為的に発現させて、抗アレルギー蛋白質を生成させ、生成した該蛋白質を採取することにより、本発明の抗アレルギー剤の有効成分である抗アレルギー蛋白質を得ることができる。上記のDNAを人為的に発現させるためには、例えば、常法にしたがって、適当な宿主細胞を形質転換してなる形質転換体の飼育又は培養により行うことができ、また、イン・ビトロでのDNAの発現系(イン・ビトロ転写及びイン・ビトロ翻訳)を利用することも随意である。
本発明で用いるRJP70又はRJP55を組換えDNA技術を適用して製造する際、用いる形質転換体は、通常、配列表の配列番号3又は4に示されるアミノ酸配列をコードするDNA、例えば、配列表における配列番号5又は6の塩基配列を有するDNAを自律複製可能なベクターと連結して組換えDNAとし、この組換えDNAを適宜の宿主に導入することにより得ることができる。自律複製可能なベクターは、宿主の種類に応じて慣用のものから適宜選択すればよく、具体的にはpBR322、pUC18、Bluescript II SK(+)、pUB110、pTZ4、pC194、pHV14、TRp7、YEp7、及びpBS7などのプラスミドベクター、λgt・λC、λgt・λB、ρ11、φ1、及びφ105などのファージベクターや、pVL1393などのバキュロウィルスベクターが挙げられる。このうち、本発明のDNAを大腸菌で発現させるには、pUC118、pUC119、pUC18、pUC19、pBR322、Bluescript II SK(+)、λgt・λC、及びλgt・λBなどが好適である。一方、枯草菌で発現させるには、pUB110、pTZ4、pC194、ρ11、φ1、及びφ105が好適である。pHV14、TRp7、YEp7、及びpBS7は、組換えDNAを二種以上の宿主内で複製させる場合に有用である。以上のような自律複製可能なベクターは、通常、プロモーター、エンハンサー、複製起点、転写終結部位、選択配列などの、この発明のDNAが個々の宿主において発現するための、あるいは、所期の形質転換の有無を確認するための適宜塩基配列を含んでなる。以上のようなベクターとの連結には斯界で慣用の方法を適宜採用することができる。例えば、リンカーの付加やPCR法などによる制限酵素認識配列の付加、制限酵素処理、リガーゼ処理などはいずれも有用である。
上記のようなこの発明によるDNAを導入する宿主細胞としては、形質転換体の作製に斯界で慣用される、大腸菌、枯草菌、酵母、黴などの適宜の微生物や、さらには、昆虫などの無脊椎動物、植物、脊椎動物などの細胞のいずれも用いることができる。本発明に用いる蛋白質をより天然型に近い形で提供するためには、昆虫細胞を宿主とするのが比較的望ましい。前記宿主にこの発明のDNAを導入するには、例えば、リン酸−カルシウム法、エレクトロポレーション法、ウイルス感染法、さらには、必要に応じて、DEAE−デキストラン法、リポフェクション法、及びマイクロインジェクション法などを適宜適用すればよい。斯くして生成される形質転換体から目的とするのクローンを選択するには、導入されたDNAの有無や抗アレルギー蛋白質の産生能を指標として試験すればよい。なお、以上述べた組換えDNA及び形質転換体に関しては、ジェイ・サムブルック等著、『モレキュラー・クローニング、ア・ラボラトリー・マニュアル』、第2版(1989年、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー発行)に、慣用の材料及び方法が種々詳述されている。
以上のようにして得られる形質転換体は、宿主の種類やDNAの導入の際に用いたベクターの種類に応じて、適宜の条件下で培養すれば、その細胞内又は細胞外に抗アレルギー蛋白質を産生する。培養に用いる培地には、宿主細胞やベクターの種類にもよるけれども、通常、炭素源、窒素源、ミネラル、さらには、必要に応じて、アミノ酸やビタミンなどの微量栄養素を補足した通常一般の培地を使用することができる。個々の炭素源としては、例えば、澱粉、澱粉加水分解物、グルコース、果糖、蔗糖、トレハロースなどの糖源が、又、窒素源としては、例えば、アンモニア乃至アンモニア塩、尿素、硝酸塩、ペプトン、酵母エキス、脱脂大豆、コーンスティープリカー、肉エキスなどの含窒素無機乃至有機物が挙げられる。宿主細胞やベクターの種類にもよるけれども、通常、20乃至60℃、pH2乃至10に保ちつつ、約1乃至6日間培養すれば、抗アレルギー蛋白質を含む培養物が得られる。
上記の組換えDNA技術を用いて得られる本発明で用いる蛋白質は、そのままの形態で利用可能であるが、通常、使用目的に応じて適宜の操作により精製して利用される。精製方法としては、前記、天然のローヤルゼリーからの採取の場合で述べた斯界で慣用の精製方法を適宜用いることができる。
本発明に用いる配列表における配列番号1又は2のいずれかで示される部分アミノ酸配列を有する蛋白質は、抗体又はサイトカイン産生を抑制する生物活性を有する。後記する実験例で示すように、本発明者らはOVAを抗原とし、Alumをアジュバントとして免疫したマウス脾臓細胞を抗CD3抗体で刺激した際のサイトカイン産生抑制作用を指標にして、ローヤルゼリー中の蛋白質を精製することにより、ローヤルゼリーが示す抗アレルギー活性の主体となる複数の蛋白質をRJP70及びRJP55として特定することに成功した。これらの蛋白質は、天然のローヤルゼリーの場合と同様に、イン・ビトロ及びイン・ビボの試験において、動物細胞のIL−2、IL−4、IFN−γ、TNF−α、IgE、IgGなどの各種サイトカイン又は抗体の産生を抑制することから、これらサイトカイン及び抗体の産生量の増加によって引き起こされるアレルギーの発症を抑制したり、発症したアレルギー症状を緩和、治療に利用することができる。
本発明の抗アレルギー剤は、ローヤルゼリーにおける抗アレルギー成分である配列表における配列番号1又は2のいずれかで示される部分アミノ酸配列を有する蛋白質の含量が高いほど、著明な抗アレルギー作用を示す。本発明の抗アレルギー剤に含有する抗アレルギー成分は、高度に精製されたものであっても、部分精製されたものであっても、又は天然のままのものであっても良い。例えば、本発明の抗アレルギー剤は、後記実験例に記載されているサイトカイン産生抑制試験系により、蛋白質濃度2mg/mlの抗アレルギー剤を用いる場合、当該蛋白質を添加しない場合に比べてIL−2の相対産生量を80%以下、又は、IL−4の相対産生量を60%以下までに低下させることが可能な量の当該蛋白質を、抗アレルギー成分として抗アレルギー剤に含有させるのが望ましい。
本発明の抗アレルギー剤はアレルギー疾患のうち、とりわけアトピー性疾患に伴う諸症状を効果的に緩和する。アトピー性疾患とは皮膚炎、枯草熱、気管支喘息、蕁麻疹、アレルギー性鼻炎、昆虫アレルギー、ダニアレルギーなど、各器官において先天的家族性に現れる過敏性疾患を指し、免疫グロブリンE(IgE)が関与するI型アレルギー反応によって発症する疾患も含まれる。
本発明の抗アレルギー剤の使用方法について説明すると、本発明の抗アレルギー剤は経口的に使用しても非経口的に使用しても、抗アレルギー作用を発揮することができる。本発明の抗アレルギー剤の有効な摂取量又は投与量は、対象とするヒトをはじめとする哺乳動物の種類、年齢、性別などに応じて適宜決定すればよく、例えば、配列表における配列番号1又は2のいずれかで示される部分アミノ酸配列を有する蛋白質の場合、有効成分の質量換算で、体重1kgあたり、通常、0.01mg乃至100mg/回、望ましくは、0.1mg乃至50mg/回、経口的に1日1回又は数回に分けて、効果に応じて、連日又は1日以上の間隔をおいて摂取するか又は投与すればよい。摂取・投与形態としては、特に限定はなく、必要に応じて、例えば、経口経路、経管経路、経皮経路、経粘皮経路、経静脈経路などから適宜選択して使用すればよい。本発明の抗アレルギー剤を飲食物の形態にし、これを、経口抗アトピー用剤として用いる場合には、経済性などの点から、後述する実験2の試験系により、サイトカイン産生抑制活性がより高い天然のローヤルゼリーを選別し、これをそのまま用いることもできる。
また、本発明の抗アレルギー剤を、例えば、化粧品などの皮膚外用剤として皮膚に直接塗布する場合、配合するローヤルゼリー由来の抗アレルギー成分の量は、配列表における配列番号1又は2のいずれかで示される部分アミノ酸配列を有する蛋白質の質量換算で、皮膚外用剤全量中、0.001乃至10質量%、好ましくは、0.01乃至1質量%であり、1日1回又は数回に分けて、効果に応じて、連日又は1日以上の間隔をおいて直接皮膚に塗布すればよい。なお、0.001質量%未満では、その効果は発揮され難くなり、また、10質量%を越えると、配合量の割に効果がなく経済的に好ましくないことから、通常、上記の範囲で配合する。
本発明の抗アレルギー剤は、例えば、飲食物、化粧品、医薬品をはじめとする組成物の形態としても有利に利用できる。斯かる組成物には、ローヤルゼリー若しくは抗アレルギー蛋白質とともに、例えば、シソ属植物及びパフィア(Pfaffia)属植物などの加工物などの抗アレルギー作用を持つ成分も必要に応じて配合することができ、通常、例えば、飲食物分野、化粧品分野、医薬品分野などで有利に用いることができる。更に、必要に応じて、ヒトを含む哺乳類への経口的又は経皮的適用ないしは皮膚外用が許容される成分として、飲食物、化粧品、医薬品等の分野で通常使用される、例えば、水、アルコール、澱粉質、蛋白質、アミノ酸、繊維質、糖質、脂質、脂肪酸、ビタミン、ミネラル、着香料、着色料、甘味料、調味料、香辛料、防腐剤、乳化剤、界面活性剤、賦形剤、増量剤、増粘剤、保存剤などの上記で述べた以外の成分を1種又は2種以上含有させることも有利に実施できる。これらの成分は、通常、本発明の抗アレルギー剤の各々の利用分野における必要性に応じて適宜選択される。以上のような成分を含む組成物の形態には特に制限はなく、例えば、粉末、顆粒、錠剤、ペースト、ゼリー、乳液、溶液などの所望の形態で提供される。
前記糖質としては、ブドウ糖、果糖、ラクトース、トレハロース、マルトース、蔗糖、ラクトスクロース、水飴などの糖類、サイクロデキストリン、環状四糖などの環状の糖類、エリスリトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、還元水飴などの糖アルコール類、アスパルテーム、ステビア抽出物、スクラロースなどの高甘味度甘味料、プルラン、カラギーナンなどの天然多糖類、天然ガム類、合成品のカルボキシメチルセルロースなどの増粘剤などの1種又は2種以上を添加することにより、固状のものにあってはその賦形性に有利に利用できるだけでなく、本発明の抗アレルギー剤の安定化、呈味改善、風味保持などに有利に利用できる。
本発明の抗アレルギー剤を配合してなる組成物を製造するには、対象とする動物類やその摂取方法又は投与方法などを考慮して、本発明の抗アレルギー剤と、飲食物、化粧品、医薬品、医薬部外品、飼料、餌料、ペットフードなどの分野において使用可能な1種又は2種以上の成分とを、適宜の配合比率で混合し、適宜、希釈、濃縮、乾燥、濾過、遠心分離などの工程を実施して、所望の形状に成形して抗アレルギー剤を配合してなる組成物を調製すればよい。各成分を配合する順序や、当該工程を実施する時期は、本発明の抗アレルギー剤の効果が損なわれないぎり、その順序や時期に制限はない。
本発明の抗アレルギー剤を配合してなる組成物を飲食物の形態として用いる場合には、例えば、アイスクリーム、アイスキャンデー、シャーベットなどの氷菓、氷蜜などのシロップ、バタークリーム、カスタードクリーム、フラワーペースト、ピーナッツペースト、フルーツペーストなどのスプレッド及びペースト、チョコレート、ゼリー、キャンディー、グミゼリー、キャラメル、チューインガム、プリン、シュークリーム、スポンジケーキなどの洋菓子、ジャム、マーマレード、シロップ漬、糖菓などの加工果実ないしは加工野菜、まんじゅう、ういろう、あん、羊羹、水羊羹、カステラ、飴玉などの和菓子、醤油、粉末醤油、味噌、粉末味噌、マヨネーズ、ドレッシング、食酢、三杯酢、テーブルシュガー、コーヒーシュガーなどの調味料などが挙げられる。望ましい飲料の形態としては、例えば、合成酒、醸造酒、果実酒、洋酒などの酒類、ジュース、ミネラル飲料、炭酸飲料、乳酸飲料、乳酸菌飲料、スポーツドリンク、ドリンク剤、茶、紅茶、ウーロン茶、コーヒー、ココアなどの清涼飲料などが挙げられる。
化粧品の形態として用いる場合には、例えば、ローション、クリーム、乳液、ゲル、粉末、ペースト、ブロックなどの形態で、石けん、化粧石けん、肌洗い粉、洗顔クリーム、洗顔フォーム、フェイシャルリンス、ボディーシャンプー、ボディーリンス、ヘアシャンプー、ヘアリンス、髪洗い粉などの清浄用化粧品、セットローション、ヘアブロー、チック、ヘアクリーム、ポマード、ヘアスプレー、ヘアリキッド、ヘアトニック、ヘアローション、養毛料、染毛料、頭皮用トリートメント、びん付油、つや出し油、髪油、スキ油などの頭髪化粧品、化粧水、バニシングクリーム、エモリエントクリーム、エモリエントローション、パック用化粧料(ゼリー状ピールオフタイプ、ゼリー状ふきとり型、ペースト状洗い流し型、粉末状など)、クレンジングクリーム、コールドクリーム、ハンドクリーム、ハンドローション、乳液、保湿液、アフターシェービングローション、シェービングローション、プレシェーブローション、アフターシェービングクリーム、アフターシェービングフォーム、プレシェーブクリーム、化粧用油、ベビーオイルなどの基礎化粧品、ファンデーション(液状、クリーム状、固型など)、タルカムパウダー、ベビーパウダー、ボディパウダー、パヒュームパウダー、メークアップベース、おしろい(クリーム状、ペースト状、液状、固型、粉末など)、アイシャドウ、アイクリーム、マスカラ、眉墨、まつげ化粧料、頬紅、頬化粧水などのメークアップ化粧品、香水、練香水、粉末香水、オーデコロン、パフュームコロン、オードトワレなどの芳香化粧品、日焼けクリーム、日焼けローション、日焼けオイル、日焼け止めクリーム、日焼け止めローション、日焼け止めオイルなどの日焼け・日焼け止め化粧品、マニキュア、ペディキュア、ネイルカラー、ネイルラッカー、エナメルリムーバー、ネイルクリーム、爪化粧料などの爪化粧品、アイライナー化粧品、口紅、リップクリーム、練紅、リップグロスなどの口唇化粧品、練歯磨、マウスウォッシュなどの口腔化粧品、バスソルト、バスオイル、浴用化粧料などの入浴用化粧品などが挙げられる。
医薬品の形態として用いる場合には、例えば、エキス剤、エリキシル剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、眼軟膏剤、口腔粘膜貼付剤、懸濁剤、乳剤、硬膏剤、座剤、散剤、酒精剤、錠剤、シロップ剤、注射剤、チンキ剤、点眼剤、点耳剤、点鼻剤、トローチ剤、軟膏剤、芳香水剤、鼻用噴霧剤、リモナーデ剤、リニメント剤、流エキス剤、ローション剤、湿布剤、噴霧剤、塗布剤、浴剤、貼付剤、パスタ剤、パップ剤などが挙げられる。以上のような形態の本発明の抗アレルギー剤を配合してなる組成物を製造するには、目的とする製品を慣用の製造方法にしたがって製造する過程の適宜の時期に本発明の抗アレルギー剤を添加すればよい。ただし、目的とする製品の製造工程に加熱工程がある場合には、製造工程での抗アレルギー作用の減衰を防ぐために、本発明の抗アレルギー剤は、加熱工程の前に添加すべきでなく、例えば、加熱工程の後に30℃以下、望ましくは常温にまで冷却した後に添加するのが望ましい。以上のような本発明の組成物は、本発明の抗アレルギー剤を、組成物中に、通常、0.01質量%以上、望ましくは、0.1乃至100質量%含有する。
本発明の抗アレルギー剤を医薬品としてアレルギー疾患の治療、予防に用いる場合の適応症としては、例えば、前記したアトピー性疾患全般に加えて、金属アレルギー、遅延型接触皮膚炎、食物アレルギー、薬物アレルギー、化学物質過敏症などが挙げられる。また、本発明の抗アレルギー剤は、IL−2、IL−4、IFN−γやTNF−αの産生を抑制することから、自己免疫疾患、例えば、多発性硬化症、多発性筋炎、慢性関節リューマチ、リューマチ熱、強皮症、多発性結節性動脈炎、活動性慢性肝炎、萎縮性胃炎、自己免疫性溶血性貧血、無精子症、バセドウ病、ベーチェット症候群、CRTS症候群、寒冷凝集素性溶血性貧血、潰瘍性大腸炎、グッドパスチャー症候群、甲状腺機能亢進症、慢性甲状腺炎、特発性アジソン病、特発性血小板減少性紫斑病、若年性糖尿病、白血球減少症、重症筋無力症、発作性寒冷血色素尿症、悪性貧血、原発性胆汁性肝硬変症、シーグレン症候群、交換性眼炎、全身性紅斑性狼そう、ウェジナー肉芽腫症などの症状の緩和・治療にも有利に利用できる。
以上のように本発明の抗アレルギー剤は、抗アレルギー作用を示す上、摂取した生体に悪影響を与えないので、日常的に利用することにより、利用した生体において抗アレルギー作用が効果的に発揮され、重篤な副作用を惹起することなく、その生体の抵抗力の増強によるアレルギー疾患の予防、早期緩和、治療、及び健康な状態の維持などが達成される。したがって、本発明の抗アレルギー剤は、アレルギー疾患を予防・緩和・治療するための飲食物・化粧品・医薬品などとして極めて有用である。特に、化粧品として利用する場合には、皮膚疾患の予防ならびに該疾患に対する治療効果の改善などに奏効する。
最近、ローヤルゼリーが、抗アレルギー作用を発揮することがエイチ・オカ等『バイオセラピー(Biotherapy)』、第14巻、145頁乃至150頁(2000年)や、エム・カタオカ等『ナチュラル・メディシンズ(Natural Medicines)』、第55巻、174頁乃至180頁(2001年)によって報告されている。しかしながら、これらの報告は、ローヤルゼリーが有する抗アレルギー作用の主体となる物質が、ローヤルゼリーに含まれる蛋白質、糖質、脂質、又はそれら以外の物質のいずれであるか全く言及していない。したがって、抗アレルギー作用の主体物質が配列表における配列番号1又は2のいずれかで示される部分アミノ酸配列を有する蛋白質であること、及び、サイトカイン産生抑制活性が後記する実験2の試験方法によって高いと認められたローヤルゼリーは、経口投与により、後記実験7で示したように著明な抗アトピー作用を発揮することについてを明らかにしたのは本発明をもって嚆矢とする。
以下に、本発明に用いるローヤルゼリー及び抗アレルギー蛋白質について、具体的な実験例をあげて本発明をさらに詳しく説明する。
実験1:ローヤルゼリー水溶性蛋白質画分の調製
凍結保存していた生ローヤルゼリー(ブラジル産)25gを室温にて融解し、20mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)に懸濁した後、低分子物質を除去するために同緩衝液5Lに対して透析した。次いで、得られた透析内液を遠心分離(12,000rpm、15分)することにより不溶性物質を除去し、さらにポアサイズ0.22μmのフィルターでろ過して、ローヤルゼリー水溶性蛋白質画分を得た。
実験2:マウス脾臓細胞を用いたサイトカイン産生抑制及び細胞増殖抑制活性の測定
OVAを抗原とし、Alumをアジュバントとして3回免疫したBALB/cマウスより回収した脾臓細胞を5×106個/mlに調製し、抗CD3抗体(5μg/ml)で固相化した96ウェルのマイクロプレートに、100μlずつ播きこんだ。次いで、実験1で用いた生ローヤルゼリー又は実験1で得たローヤルゼリー水溶性蛋白質画分を、蛋白質濃度2.0mg/ml及び4.0mg/mlに調製し、これを50μlずつ添加した。更に、各ウェルに培地を50μl添加し、総液量200μlとした。40時間培養した後に培養上清液を回収し、IL−2、IL−4の各サイトカイン量を常法の、固相酵素免疫測定法(ELISA法)にて測定した。ローヤルゼリー水溶性蛋白質画分の代わりにリン酸緩衝生理食塩水(以下、本明細書では単にPBS(−)と略称する。)を用いて同様に行ったものを対照とした。対照のサイトカイン産生量を100%として生ローヤルゼリー及びローヤルゼリー水溶性蛋白質画分の相対的なサイトカイン産生量をパーセントで表した。結果を表2に示した。
表2の結果から明らかなように、試験した生ローヤルゼリー及びローヤルゼリー水溶性蛋白質画分は用量依存的にIL−2、IL−4の産生を抑制した。生ローヤルゼリーの場合、蛋白質濃度2.0mg/mlのときのIL−2相対産生率及びIL−4相対産生率はそれぞれ103%、73%であった。ローヤルゼリー水溶性蛋白質画分の場合、蛋白質濃度2.0mg/mlのときのIL−2相対産生率及びIL−4相対質産生率はそれぞれ76%、54%であった。これらの結果から、透析、遠心分離などの精製操作を加え、蛋白質以外の糖質などの水溶性低分子物質及び不溶性物質を除くことにより、生ローヤルゼリーに比べて蛋白質当りのサイトカイン産生抑制活性(抗アレルギー活性)を高めたローヤルゼリー標品が得られることが判明した。
実験3:生ローヤルゼリーからの抗アレルギー活性蛋白質の精製及びその理化学的性質
実験3−1:生ローヤルゼリーからの抗アレルギー活性蛋白質の精製
実験2で認められたOVA/Alumで免疫したマウス脾臓細胞のサイトカイン産生抑制活性を指標として、生ローヤルゼリーから抗アレルギー活性蛋白質を精製した。また、同時に細胞増殖能を、酸化−還元インディケーターである色素(トレック・ダイアグノスティック社製、商品名『アラマー・ブルー(alamar Blue)』)を用いて544nmを励起波長とし、590nmを測定波長として蛍光強度を測定した。実験1で得たローヤルゼリー水溶性蛋白質画分を、『DEAE−5PW』ゲル(株式会社東ソー製)を用いた陰イオン交換カラムクロマトグラフィー(ゲル量54ml)に供したところ、サイトカイン産生抑制活性及び細胞増殖抑制活性を有する蛋白質はDEAE−5PWゲルに吸着した。蛋白質の溶出を280nmの吸光度を測定することにより追跡しながら、吸着した蛋白質を食塩濃度0Mから0.3Mに上昇するリニアグラジエントで溶出させ、第2図に示すように食塩濃度約0.08M付近で溶出する活性蛋白質(第2図における太線1)と、0.17乃至0.25M付近に溶出する活性蛋白質(第2図における太線2)の2種の蛋白質を分離、回収した。便宜上、本明細書では、前者を「活性蛋白質1」と、後者を「活性蛋白質2」と称する。以下、これらを別々の精製工程により精製した結果を示す。
実験3−2:活性蛋白質1の精製
実験3−1で得た活性蛋白質1を含有するフラクションを食塩濃度0.01Mの20mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)に対して透析し、その透析内液を『リソース(Resource)Q』ゲル(アマシャム・バイオサイエンス社製)を用いた陰イオン交換カラムクロマトグラフィー(ゲル量6ml)に供した。活性蛋白質1はリソースQゲルに吸着し、食塩濃度0Mから0.5Mに上昇するリニアグラジエントで溶出させたところ、食塩濃度約0.1M付近で溶出した。活性画分を回収し、その食塩濃度を0.05Mに調製するために、同食塩濃度の緩衝液に対して透析し、その透析内液を『ヘパリン(Heparin)−5PW』ゲル(株式会社東ソー製)を用いたアフィニティカラムクロマトグラフィー(ゲル量3.3ml)に供した。その結果を第3図に示す。活性蛋白質1はヘパリン−5PWゲルに吸着し、食塩濃度0Mから1Mに上昇するリニアグラジエントで溶出させ、実験2及び実験3−1の方法でサイトカイン産生抑制及び細胞増殖抑制活性を有する画分を調べたところ、第3図における太線1で示される食塩濃度約0.15M付近で溶出する活性蛋白質(以下、本明細書では、これを「活性蛋白質1−1」と称する)と、第3図における太線2で示される約0.35M付近に溶出する活性蛋白質(以下、本明細書では、これを「活性蛋白質1−2」と称する)の2種が検出された。両者は後述するように同一のN末端アミノ酸配列を有しており、活性蛋白質1−2が活性蛋白質1−1よりも分子量が大きく比活性も高いことから、活性蛋白質1−2を選択し、更に精製した。活性蛋白質1−2を含有するフラクションを『スーパーデックス(Superdex)200』ゲル(アマシャム・バイオサイエンス社製)を用いたゲルろ過カラムクロマトグラフィー(ゲル量320ml)に供し、1.5倍濃度のPBS(リン酸緩衝液)を用いて溶出した。この活性画分を回収し、OVA/Alumで免疫したマウス脾臓細胞のサイトカイン産生抑制及び細胞増殖抑制活性を有する精製活性蛋白質1を得た。活性蛋白質1の各精製ステップに於ける蛋白量、比活性を表3に示す。(但し、表3中、ヘパリン−5PW回収区以降は活性蛋白質1−2の数値を表す。)
得られた精製活性蛋白質1を還元剤ジチオスレイトール(DTT)存在下でゲル濃度10%(w/v)のSDS−PAGEに供し、精製標品の純度を検定したところ、蛋白質バンドは単一で、純度の高い標品であった。
実験3−3:活性蛋白質1の理化学的性質
(1)分子量
実験3−2で得たOVA/Alumで免疫したマウス脾臓細胞のサイトカイン産生抑制及び細胞増殖抑制活性を有する精製活性蛋白質1−2と、同じく実験3−2で得た部分精製活性蛋白質1−1を実験3−2と同様に還元剤DTT存在下でのSDS−PAGEに供し、同時に泳動した分子量マーカー(アマシャム・バイオサイエンス社製、商品名『LMWエレクトロフォレシス・キャリブレーション・キット(LMW Electorophoresis Caribration Kit)』)と比較して当該活性蛋白質の分子量を測定したところ、活性蛋白質1−2は分子量約70kDaに相当する位置に、また、活性蛋白質1−1は分子量約55kDaに相当する位置に、それぞれ蛋白質バンドが検出された。
(2)N末端アミノ酸配列
実験3−2で得た活性蛋白質1−2精製標品及び活性蛋白質1−1部分精製標品のN末端アミノ酸配列10残基を、常法により、プロテインシーケンサー(アプライド・バイオシステムズ社製、モデル473A)を用いて分析したところ、両者とも同一の、配列表における配列番号1のN末端アミノ酸配列を有していた。両者の内、約70kDaの分子量を有する活性蛋白質1−2を本発明者はRJP70と命名した。
実験3−4:活性蛋白質2の精製
実験3−1で得た活性蛋白質2を含有するフラクションを食塩濃度0.01Mの20mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)に対して透析し、その透析内液を『リソース(Resource)Q』ゲル(アマシャム・バイオサイエンス社製)を用いた陰イオン交換カラムクロマトグラフィー(ゲル量6ml)に供した。活性蛋白質2はリソースQゲルに吸着し、食塩濃度0.1Mから0.4Mに上昇するステップグラジエントで溶出させた。活性画分を回収し、活性蛋白質2を含有するフラクションを『スーパーデックス(Superdex)200』ゲル(アマシャム・ファルマシア・バイオテク製)を用いたゲルろ過カラムクロマトグラフィー(ゲル量320ml)に供し、1.5倍濃度のPBS(−)を用いて溶出した。活性画分は2つ認められたものの、両者は還元剤存在下でのSDS−PAGEにおいて同一の約55kDaの分子量を示し、同一の蛋白質が単量体と多量体として分離したと考えられた。この活性画分を両方まとめて回収し、OVA/Alumで免疫したマウス脾臓細胞のサイトカイン産生抑制及び細胞増殖抑制活性を有する精製活性蛋白質2を得た。活性蛋白質2の各精製ステップに於ける蛋白質量、比活性を表4に示す。
精製活性蛋白質2を還元剤DTT存在下でゲル濃度10%(w/v)のSDS−PAGEに供し、精製標品の純度を検定したところ、蛋白質バンドは単一で、純度の高い標品であった。
実験3−5:活性蛋白質2の理化学的性質
(1)分子量
実験3−4で得た精製活性蛋白質2を実験3−3と同様に還元剤DTT存在下でのSDS−PAGEに供したところ、分子量約55kDaに相当する位置に蛋白質バンドが検出された。
(2)N末端アミノ酸配列
実験3−4で得た精製活性蛋白質2のN末端アミノ酸配列を、常法により、プロテインシーケンサー(アプライド・バイオシステムズ社製、モデル473A)を用いて25残基分析したところ、配列表における配列番号2のN末端アミノ酸配列を有していた。活性蛋白質2を本発明者はRJP55と命名した。
実験4:RJP70精製標品のサイトカイン産生抑制作用
実験3−2で得たRJP70精製標品を用いて、段階希釈法により、11.7、23.4、46.9、93.8、188、及び375μg/mlの濃度の溶液を調製し、実験2と同様に、RJP70精製標品のマウス脾臓細胞に対するサイトカイン産生抑制作用を調べた。また、実験3−1と同様の方法で細胞増殖能を調べた。結果を表5に示した。
表5から明らかなように、RJP70精製標品は用量依存的にIL−2及びIL−4の産生を抑制し、且つ、細胞の増殖を抑制した。
実験5:RJP70精製標品のT細胞又はマクロファージに対する作用と細胞障害性
実験5−1:RJP70精製標品のT細胞に対する作用と細胞障害性
RJP70のT細胞に対する直接的な作用と細胞障害性を調べるためにマウス脾臓細胞から精製したCD4+T細胞を抗CD3抗体で刺激する試験系で活性を確認した。実験2の方法で調製したBALB/cマウス脾臓細胞を10(v/v)%ウシ胎仔血清(FCS)を含むRPMI1640培地に懸濁し、FCSでコートしたシャーレで37℃、1時間保持し、接着性の細胞を除去した。続いて、ヤギ抗マウスIgでコートしたシャーレを同様に用いて、B細胞を除去した。更に、抗マウスCD4抗血清でコートしたシャーレに接着する細胞を回収することにより、CD4+T細胞を得た(CD4+T細胞含量91乃至93%)。
実験3−2の方法で得たRJP70精製標品と、このCD4+T細胞を用い、実験2と同様にしてサイトカイン産生抑制作用を調べた。RJP70精製標品を段階希釈法により、31.3、62.5、125、250μg/mlの濃度の溶液を調製し、IL−2、IL−4及びIFN−γの産生抑制作用を調べた。RJP70精製標品に代えてPBS(−)を用いた以外は同様に処理したものを対照とし、対照のサイトカイン産生量を100としたときの相対値を算出した。また、トリパンブルー色素排除法により、用いたCD4+T細胞の生細胞と死細胞の数を調べ、次式で生存細胞比率(%)を求め、細胞障害性の指標とした。結果を表6に示した。
表6から明らかなように、RJP70はCD4+T細胞を用いた系でもマウス脾臓細胞の系(実験4)とほぼ同様な傾向でIL−2、IL−4の産生を抑制し、また、IFN−γの産生も抑制した。このとき、生存細胞の比率は対照と同等であり、RJP70に細胞障害性は認められなかった。
実験5−2:RJP70精製標品のマクロファージに対する作用と細胞障害性
RJP70のマクロファージに対する直接的な作用と細胞障害性を調べるために、マウス腹腔から採取したマクロファージをリポポリサッカライド(LPS)及びIFN−γで刺激する試験系で活性を確認した。マウス末梢マクロファージを調製するために、3%ブリューウェルのチオグリコレート培地をBALB/cマウスの腹腔に2ml注射し、3乃至4日後に腹水を採取した。腹水を10(v/v)%ウシ胎児血清を含むRPMI1640培地で希釈して、細胞濃度1×106個/mlにした後、プラスチック製シャーレに10mlずつ播種した。5%炭酸ガス雰囲気中で37℃で2時間培養した後、培地を除去して、2回上記培地で濯ぎ、シャーレに付着しなかった細胞を除去し、シャーレに残った付着細胞を上記培地でセルスクレーパーを用いて回収し、マクロファージとして今後の実験に用いた。実験3−2の方法で得たRJP70精製標品と、このマクロファージを用い、実験2と同様にしてサイトカイン産生抑制作用を調べた。RJP70精製標品を段階希釈法により、150、300、600μg/mlの濃度の溶液を調製し、TNF−α及びIL−6の産生抑制作用を調べた。RJP70精製標品に代えてPBS(−)を用いた以外は同様に処理したものを対照とし、対照のサイトカイン産生量を100としたときの相対値を算出した。また、トリパンブルー色素排除法により、用いたマクロファージの生細胞と死細胞の数を調べ、上記数式1で生存細胞比率(%)を求め、細胞障害性の指標とした。結果を表7に示した。
表7から明らかなように、RJP70はマクロファージを用いた系において、LPS及びIFN−γ存在下でのTNF−αの産生を抑制した。一方、同じ炎症性サイトカインとして分類されるIL−6の産生を抑制しなかった。このとき、生存細胞の比率は対照と同等であり、RJP70に細胞障害性は認められなかった。
実験6: ローヤルゼリー及びRJP70精製標品の抗体産生抑制作用
ローヤルゼリー又はRJP70の投与が、OVA/Alumで免疫したマウスの抗体産生に及ぼす影響を調べた。雌性BALB/cマウス(7週齢、日本チャールスリバー株式会社)各5匹に対し、一週間おきに3回、OVA2μg/Alum3mgを腹腔内投与にて免疫した。ローヤルゼリーは実験1で用いたものを使用し、PBS(−)に溶解したものをマウス1匹当たり1回に50μgとなるように、また、RJP70は実験3−2の方法で得たものを使用し、同じくPBS(−)に溶解した精製標品をマウス1匹当たり1回に0.5、5、50μgとなるようにして、3回行われた各免疫操作(OVA/Alum投与)の2日前、6時間前の2回にわたり、計6回、腹腔内投与した。また、対照としてPBS(−)を用いて同様に行った。試験群を表8にまとめた。
3回目の免疫から一週間後に採血し、血清中の各種抗体濃度を酵素免疫測定法(EIA法)により測定した。抗OVA−IgE抗体価はキャプチャードEIA法により測定し、標準血清(640U/ml)を用いて作成した検量線より算出した。また、抗OVA−IgG1抗体価は間接EIA法により測定し、標準血清(128,000U/ml)を用いて作成した検量線より算出した。各測定値の統計処理は対照群と試験群の間で分散性を検討し、T検定或いはウェルヒ(Welch)法により有意差検定を行った。1群5匹での各測定値の中に他とかけ離れた値がある場合にはスミルノフ(Smirnov)の棄却検定に従った。測定した結果を、抗OVA−IgE抗体価について第4図に、また、抗OVA−IgG1抗体価について第5図に示した。
第4図から明らかなように、ローヤルゼリーとRJP70のいずれにも抗OVA−IgE抗体価を低下させる作用が認められた。ローヤルゼリー投与群の抗OVA−IgE抗体価は対照(PBS(−)投与群)と比較して、61%の有意な抑制が認められた。また、RJP70精製標品投与群では投与量に依存して抗OVA−IgE抗体価が低くなり、その抑制率は0.5μg/匹投与群で13%、5μg/匹投与群で39%、50μg/匹投与群で67%であった。また、第5図から明らかなように、抗OVA−IgG1抗体価もIgEの場合とほぼ同様に、ローヤルゼリー投与群及びRJP70精製標品のすべての投与群で46〜82%の有意な抑制が認められた。
以上の結果より、本発明に用いるローヤルゼリー及びRJP70にはIgE、IgG1抗体の産生を抑制する作用があり、アレルギー反応を抑制することが確認された。
実験7:アトピー性皮膚炎の発症抑制作用
Nc/Ngaマウス(雌、5週齢、日本チャールスリバー社販売)に対して、ピクリルクロライドを塗布することによりアトピー性皮膚炎と酷似する皮膚炎を誘発させて作成したアトピー性皮膚炎モデルマウスを用いて、実験1で用いた生ローヤルゼリー及び実験3−2の方法で得たRJP70のアトピー性皮膚炎の発症抑制作用を調べた。まず、バリカンで剃毛したマウスの腹部及び胸部にエタノール:アセトン(容量比4:1)の混合液に5%(w/v)の濃度に溶解したピクリルクロライド溶液を塗布して初回感作を行った。初回感作より4日めにオリーブ油に1%(w/v)の濃度に溶解したピクリルクロライド溶液を麻酔したマウス背部及び耳介に塗布した。その後、1週間おきにさらに計5回、同溶液を背部及び耳介に塗布した。実験1で用いた生ローヤルゼリー(1.0mg/マウス)又は実験3−2の方法で得たRJP70精製標品(0.3mg/マウス)を、胃ゾンデを用いて初期感作の3日前より1日に1回、週5回、6週間、10匹のマウスに経口投与した。対照としてPBS(−)を同様に10匹のマウスに経口投与した。ピクリルクロライドによる初回感作から3週めより週に2回、皮膚症状(掻痒症、発赤・出血、浮腫、擦傷・組織欠損、痂皮形成・乾燥)を肉眼にて判定し、評価した。
生ローヤルゼリー投与群及びRJP70投与群は対照群と比べて有意に症状が軽く、アトピー性皮膚炎の発症を抑制していた。この結果は本発明に用いるローヤルゼリー及び抗アレルギー蛋白質RJP70が、アトピー性のアレルギー症状を緩和する作用を有する物質であることを示している。
実験8:急性毒性試験
5質量%アラビアガムを含む生理食塩水にRJP70又はRJP55の適量をそれぞれ溶解した後、常法に従いろ過除菌した。これらを体重20乃至25gのddYマウス(10匹/群)の腹腔内に注射投与するか、胃ゾンデにより経口投与した後、7日間に亙って経過を観察した。その結果、いずれの試料、いずれの投与経路によっても、試みた最大投与量である10mg/kg体重においても死亡例が認められなかった。この結果は本発明に用いる抗アレルギー蛋白質RJP70及びRJP55が、ヒトを含む哺乳類に常用しても安全な物質であることを示している。
実験9:RJP70及びRJP55をコードするDNA(cDNA)のクローニング
実験9−1:ミツバチからの全RNAの調製
全RNAの調製は、通常のグアニジンチオシアネート/酸性フェノール:クロロフォルム法を採用したRNA調製キット(アンビオン社製、商品名『トータリーRNAキット(TOTALLY RNA kit)』)を用い、キットに添付された説明書に従って行った。まず、セイヨウミツバチ(Apis mellifera L.)の成虫12匹の頭部を変性溶液に浸し、ホモジナイザーで破砕して抽出液10mlを得た。等量のフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(容量混合比25:24:1)溶液を加えて混和し、遠心分離して得た上層部分に、0.1倍量の3M酢酸ナトリウム(pH4.5)、抽出液と等量の酸性フェノール:クロロホルム溶液の順に添加・攪拌し、遠心分離して上層部分を回収した。これに、イソプロパノール液を加えて−20℃で1時間保持し、遠心して得られた沈殿物を、70%(v/v)エタノール水溶液で洗浄・乾燥後、300μlの0.1mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)溶液で溶解した。70℃で10分間熱処理後、150μlの7.5M塩化リチウムと50mM EDTAを含む溶液を添加し、−20℃で1時間保持した。遠心後の沈殿物は、70%(v/v)エタノール水溶液で洗浄・乾燥後、0.5mM EDTAを含むジエチルピロカーボネート(DEPC)処理水に溶解し、186μgの全RNAを調製した。
実験9−2:RJP70をコードするcDNAのクローニング
実験9−1で得た全RNA(1μg/μl)を5μl、0.2μg/μlのランダムヘキサマーを5μl、及びDEPC処理水50μlを0.5ml容チューブに入れ、サーマルサイクラー(パーキンエルマー社製、商品名『DNAサーマルサイクラー480』)を用いて、70℃で5分間加熱後、4℃に急冷させた。これに、5倍濃度RT−PCR反応液を20μl、100mMジチオトレイトールを10μl、25mM dNTPを5μl、200U/μlのモロニーマウス白血病ウィルス(M−MLV)逆転写酵素(インビトロジェン社製)を5μl加え、25℃で10分間、42℃で30分間、99℃で5分間保持して逆転写反応を行い、第1ストランドcDNAを含む水溶液を得た。次いで、ジェンバンクデータベースより入手したMRJP3のcDNA塩基配列の情報に基づき合成した、配列表における配列番号9の塩基配列を有するセンスプライマーと、配列表における配列番号10の塩基配列を有するアンチセンスプライマーを用いて常法に従い、PCRによる増幅を行った。逆転写反応産物2μlに、宝酒造社製の10倍濃度ExTaq反応液を5μl、ExTaqポリメラーゼ(2.5U/μl)を1μl、2.5mM dNTPを4μl、上記センスプライマー(100ng/μl)を1μl、上記アンチセンスプライマー(100ng/μl)を1μl加え、滅菌水で50μlとした。反応は、94℃で30秒間、61℃で30秒間、72℃で3分間の順で35サイクル行った。PCR産物を0.9%アガロースゲル電気泳動に供したところ、約1,600bp付近に増幅されたDNA断片のバンドが検出された。常法により、この増幅DNA断片をゲルから抽出し、回収した。この一部を、クローニングキット(ストラタジーン社製、『pCR−Script SK(+) Cloning Kit』)を用い、添付の説明書に従って操作して、プラスミドベクター『pCR−Script Cam SK(+)』との連結反応に供した。連結反応産物の一部で、大腸菌コンピテントセル(ストラタジーン社製、『XL10−Gold Kan』)を、添付の説明書に従って操作し、形質転換した。形質転換した大腸菌は、30μg/mlクロラムフェニコールを含んだLB(1%塩化ナトリウム、1%トリプトン、0.5%酵母エキス)−2%寒天平板培地に接種し、37℃にて16時間培養した。出現したコロニーを、30μg/mlクロラムフェニコールを含むLB液体培地に接種し、37℃で16時間振とう培養し、常法により、菌体より組換えDNAを調製した。通常のジデオキシ法により、DNAシーケンサー(アプライドバイオシステムズ社製、モデル373A)を用いて塩基配列解析を行ったところ、RJP70cDNAは配列表における配列番号5の塩基配列を有していた。なお、配列表における配列番号3のアミノ酸配列は、配列表における配列番号5の塩基配列に並記したアミノ酸配列から分泌シグナル配列に相当する20アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を除いた、成熟型蛋白質のアミノ酸配列である。
実験9−3:RJP55をコードするcDNAのクローニング
ジェンバンクデータベースより入手したMRJP1のcDNA塩基配列の情報に基づき合成した、配列表における配列番号11の塩基配列を有するセンスプライマーと、配列表における配列番号12の塩基配列を有するアンチセンスプライマーを用い、PCR反応を94℃で30秒間、46℃で30秒間、72℃で3分間の順で5サイクル、引き続き、94℃で30秒間、61℃で30秒間、72℃で3分間の順で35サイクル行った以外は、実験9−2と同様にしてRJP55cDNAをクローニングし、塩基配列解析を行った。クローニングしたRJP55cDNAは配列表における配列番号6の塩基配列を有していた。なお、配列表における配列番号4のアミノ酸配列は、配列表における配列番号6の塩基配列に並記したアミノ酸配列から開始コドンATGがコードするメチオニンを1残基除いた、成熟型蛋白質のアミノ酸配列である。
実験10:組換えDNA技術による抗アレルギー蛋白質の生産
実験10−1:RJP70組換えバキュロウィルスの調製
実験9−2で得たRJP70の完全長cDNAについて、BD ファーミンジェン社製の『BDバキュロゴールド・トランスフェクション・キット(BD BaculoGold Transfection Kit)』を用い、昆虫細胞での蛋白質発現用組換えバキュロウィルスを調製した。実験9−2で得られた組換えDNAは、制限酵素NotI及びBamHIにて消化後、0.9%(w/v)アガロース電気泳動を行い、1,600bp付近のRJP70cDNA断片をゲルより抽出・精製した。これを、宝酒造社製の『ライゲーション・キット バージョン2』を用いて、バキュロウィルス・トランスファーベクター『pVL1393』のポリヘドリン・プロモーター下流のBamHI−NotI部位に連結させた。連結反応産物の一部で、宝酒造社製の大腸菌コンピテントセル『JM109』株を、添付の説明書に従って操作し、形質転換した。形質転換した大腸菌は、40μg/mlアンピシリンを含んだLB−2%寒天平板培地に接種し、37℃にて16時間培養した。出現したコロニーを、40μg/mlのアンピシリン含有LB液体培地に接種し、37℃で16時間振とう培養後、常法により、菌体から組換えDNAを調製し、RJP70cDNAの挿入を確認後、RJP70組換えベクター『pVL1393−rjp70−4』を作製した。次に、キットの添付説明書の操作方法に従い、Sf9昆虫細胞(ATCC CRL−1711、ヨトウガ由来)を用いて、組換えウィルスの作製を行った。Sf9は、10%(v/v)FCS添加のTC100培地(インビトロジェン社製)を用い、6穴プレートに1×106個/ウェルで播種し、10分間付着させ、上清除去後、0.5mlのトランスフェクション・バッファーA液(10%(v/v)FCS合有グレース培地)に置換した。これに、あらかじめ1.5μgの『pVL1393−rjp70−4』と0.25μgの『BDバキュロゴールド・バキュロウィルスDNA』を混合して5分間反応させた後に、0.5mlのトランスフェクション・バッファーB液(125mM塩化カルシウム、140mM塩化ナトリウム、25mM HEPES,pH7.1)を添加した混合液を、0.5ml/ウェルで添加し、27℃で4時間感染させた。対照として、野性型バキュロウィルスを含むバッファーB液を同様の方法で0.5ml/ウェルで別途Sf9昆虫細胞に添加し、感染させた。次に、各ウェルを10%(v/v)FCS添加TC−100培地で1回洗浄後、同培地2mlを添加し、更に27℃で6日間培養を行った。各培養液を1,000rpmで5分間遠心分離して上清を回収し、RJP70組換えバキュロウィルス調製液あるいはウィルスコントロール液とした。更にそれぞれのウィルスの力価を上げるため、Sf9細胞1×107個に上記の調製液を50乃至200μl添加し、27℃で1週間感染させ、遠心分離して得た上清を、蛋白質発現用のRJP70組換えウィルス液及びウィルスコントロール(野生型ウィルス)液として調製した。
実験10−2:RJP70組換え蛋白質の調製
蛋白質発現用細胞として、昆虫細胞株(インビトロジェン社製、イラクサギンウワバ由来、『High Five』)を用いた。昆虫細胞株は、L−グルタミン(最終濃度1mg/ml)を添加したエクスプレスファイブ無血清培地(インビトロジェン社製)を用いて1×108個/10mlに調製し、実験10−1で得たRJP70組換えウィルス液を200μl添加し、10分毎に攪拌しながら1時間感染させた。次に、エクスプレスファイブ無血清培地を40ml添加後、27℃で1週間培養を行った。培養上清は、15,000rpmで30分間遠心分離してウィルスを除去し、分画分子量30キロダルトンの限外ろ過膜(ミリポア社製、商品名『ウルトラフリー15 UFV2BTK10<30000』)で遠心濃縮し、続いて『セファデックス(Sephadex)G−25M』ゲル充填カラム(アマシャムバイオサイエンス社製、商品名『PD−10』)を用いて1.5倍濃度のPBS(−)に交換し、アッセイに使用可能な組換えRJP70液を調製した(回収した培養上清の20倍濃縮液)。また、RJP70組換えウィルスの替わりにウィルスコントロール液を用いた以外は上記と同様に操作して、対照として用いる試料液を調製した。
実験10−3:組換えRJP70のサイトカイン産生抑制活性
実験2で示した活性測定方法により、組換えRJP70のIL−2及びIL−4産生抑制作用を調べた。実験10−2で得た組換えRJP70液及び対照に、それぞれ0.5倍量の滅菌水を加えたものを原液として活性測定を行い、対照のサイトカイン産生量を100%とした時の相対値を算出して、RJP70の活性を評価した。結果を表8に示した。
表8から明らかなように、組換えRJP70液は、用量依存的にIL−2及びIL−4の産生を抑制した。このことはRJP70蛋白質が抗アレルギー作用を有することを示している。
以下に、具体的な実施例をあげて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1:抗アレルギー剤
市販のα,α−トレハロースの含水結晶(株式会社林原商事販売、登録商標『トレハ』)8.5質量部と、実験3−2の方法で精製し、実験3−2で物理化学的性質を明らかにしているRJP70精製標品の凍結真空乾燥品1.5質量部とを均一に混合し、粉砕機を用いて粉末にした。この粉末を0.42mmφメッシュの篩を通過したものを回収し、本発明の抗アレルギー剤を得た。実験2に準じて試験し、当該抗アレルギー剤がサイトカインの産生を抑制することを確認した後、常温で10日間保存して再度実験2に準じて試験し、安定してサイトカインの産生を抑制する抗アレルギー作用を示すことを確認した。
当該抗アレルギー剤を打錠機を用いて1錠あたり約200mgの錠剤に成形した。本品は、常温保存の後も安定して抗アレルギー作用を示す、簡便に利用できかつ著効を示す抗アレルギー剤である。本品は、まろやかな甘味を示すので、日常的に利用する健康食品としても有用である。
実施例2:抗アレルギー剤
以下の成分を以下の配合で均一に混合した後、実施例1に準じて操作して、粉末形態の本発明の抗アレルギー剤を調製した。なお、RJP70及びRJP55に関しては実験3−2及び3−4の方法で精製し、実験3−3及び3−5で物理化学的性質を明らかにしている精製標品を凍結真空乾燥して得た蛋白質としての質量部で混合した。調製後、実験2に準じて試験し、当該抗アレルギー剤が常温保存後も安定してサイトカインの産生を抑制し、抗アレルギー作用を示すことを確認した。
α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、登録商標『トレハ』)
7.7質量部
RJP70精製標品の凍結乾燥粉末 1.0質量部
RJP55精製標品の凍結乾燥粉末 0.4質量部
糖転移ヘスペリジン(株式会社林原商事販売、商品名『αGヘスペリジンPS』)
4質量部
プルラン(株式会社林原商事販売、商品名『プルランPF−20』)
0.5質量部
この抗アレルギー剤を、打錠機を用いて1錠あたり約300mgの錠剤に成形した。本品は、常温保存の後も安定して抗アレルギー作用を示す、簡便に利用できかつ著効を示す抗アレルギー剤である。本品は、まろやかな甘味を示すので、日常的に利用する健康食品としても有用である。
実施例3:抗アレルギー剤
以下の成分を以下の配合で均一に混合した後、実施例1に準じて操作して、粉末の形態の本発明の抗アレルギー剤を調製した。なお、部分精製ローヤルゼリーとしては、実験3−1の方法で『DEAE−5PW』ゲル(株式会社東ソー製)を用いた陰イオン交換カラムクロマトグラフィーにて部分精製した活性蛋白質1画分を凍結真空乾燥して得た蛋白質としての質量部で混合した。調製後、実験2に準じて試験し、当該抗アレルギー剤が常温保存後も安定してサイトカインの産生を抑制し、抗アレルギー作用を示すことを確認した。
無水結晶マルトース(株式会社林原商事販売、商品名『ファイントース』)
7.5質量部
部分精製ローヤルゼリーの凍結乾燥粉末 1.5質量部
マルチトール 0.8質量部
L−トリプトファン 0.2質量部
本品は、常温保存の後も安定して抗アレルギー作用を示す、簡便に利用できかつ著効を示す抗アレルギー剤である。本品は、まろやかな甘味を示すので、日常的に利用する健康食品としても有用である。
実施例4:健康飲料
無水結晶マルトース((株)林原商事販売、商品名『ファイントース』)500質量部、実施例3の抗アレルギー剤100質量部、粉末卵黄190質量部、脱脂粉乳200質量部、塩化ナトリウム4.4質量部、塩化カリウム1.85質量部、硫酸マグネシウム4質量部、チアミン0.01質量部、アスコルビン酸ナトリウム0.1質量部、ビタミンEアセテート0.6質量部及びニコチン酸アミド0.04質量部からなる配合物を調製した。この配合物25質量部を精製水150質量部に均一に分散・溶解させ、150gずつ褐色ガラス瓶に封入した。
本品は、抗アレルギー作用を安定して示す上、栄養源が補足されているので、健康維持、成長促進、アレルギーの予防、症状の緩和、治療の促進などを目的とする健康飲料として有利に利用できる。なお、本品は、ヒトのみならず、家畜などの動物のための経口摂取又は経管投与用組成物としても有利に利用できる。
実施例5:チューインガム
ガムベース3質量部を柔らかくなる程度に加熱溶融し、これに無水結晶マルチトール(株式会社林原商事販売、商品名『結晶マビット』2質量部とキシリトール2質量部及び実施例2で得た抗アレルギー剤4質量部とを加え、更に適量の香料と着色料とを混合した。常法によってロールにより練り合わせている間に実験3−2の方法で得たRJP70を0.5質量部加え、更に練り合わせた後、成形、包装して製品を得た。
本品はテクスチャー、呈味、風味良好であり、抗アレルギー作用をも有するため、日常的に利用するチューインガムとして有利に利用できる。
実施例6:皮膚外用クリーム
以下の成分を、以下の配合にしたがって、常法により加熱しつつ混合した。
モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン 2.0質量部
自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 5.0質量部
べヘニン酸エイコサニル 1.0質量部
流動パラフィン 1.9質量部
トリオクタン酸トリメチロールプロパン 10.0質量部
上記の混合物に、抗アレルギー剤を除く以下の成分を以下の配合にしたがって添加・混合し、30℃以下にまで冷却した後に、さらに抗アレルギー剤を以下の配合で加え、ホモジナイザーにより乳化して、皮膚外用クリームを製造した。
1,3−ブチレングリコール 5.0質量部
乳酸ナトリウム液 10.0質量部
パラオキシ安息香酸メチル 0.1質量部
モモ葉エキス 1.5質量部
精製水 62.2質量部
実施例1の方法で得た抗アレルギー剤粉末 1.0質量部
本クリームは、優れた保湿性を示す上、アトピー性皮膚炎などのアレルギー症状を緩和するので、皮膚外用クリームとして有用である。
実施例7:液剤
生理食塩水に実験3−2の方法で精製し、実験3−3で物理化学的性質を明らかにしているRJP70精製標品を濃度0.1質量%になるよう溶解した後、溶液を常法にしたがって精密ろ過により滅菌して液剤を得た。
本品は花粉症などのアレルギー疾患を緩和・治療するための注射剤、点眼剤、点鼻剤などとして有用である。
実施例8:トローチ錠
以下の成分を以下の配合で均一に混合した後、実施例1に準じて操作して、粉末の形態の本発明の抗アレルギー剤を調製した。調製後、実験2に準じて試験し、当該抗アレルギー剤が常温保存後も安定してサイトカインの産生を抑制し、抗アレルギー作用を示すことを確認した。
無水結晶マルトース(株式会社林原商事販売、商品名『ファイントース』)
30質量部
澱粉 30質量部
実験3−2の方法で得たRJP70精製標品の凍結乾燥粉末
10質量部
結晶セルロース 19質量部
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 10質量部
ステアリン酸マグネシウム 1質量部
当該抗アレルギー剤を、打錠機を用いて直径16mm、厚さ4mmの1錠あたり約1.0gのトローチ剤に成形した。本品は、常温保存の後も安定して抗アレルギー作用を示す、簡便に利用できかつ著効を示すトローチ剤である。本品は、まろやかな甘味を示すので、アトピー性アレルギーの予防、症状の緩和、治療の促進などを目的として日常的に利用する経口抗アトピー用トローチ剤として有用である。
実施例9:錠剤
無水結晶マルトース(株式会社林原商事販売、商品名『ファイントース』)9質量部と、実験2の試験方法によりサイトカイン産生抑制活性が高レベルで認められた生ローヤルゼリー(ブラジル産)1質量部とを均一に混合し、この混合物を25℃で一夜静置した後、粉砕機を用いて粉末にした。この粉末を0.42mmφメッシュの篩を通したものを回収し、本発明の抗アレルギー剤を得た。
当該抗アレルギー剤を打錠機を用いて1錠あたり約300mgの錠剤に成形した。本品は、常温保存の後も安定して抗アレルギー作用を示す、簡便に利用できかつ著効を示す抗アレルギー剤である。本品は、まろやかな甘味を示すので、アトピー性アレルギーの予防、症状の緩和、治療の促進などを目的として日常的に利用する経口抗アトピー用剤として有用である。
以上説明したように、本発明は、ローヤルゼリー又は精製ローヤルゼリーから採取される蛋白質、又は、それら蛋白質を含有するローヤルゼリー又は精製ローヤルゼリーが、ヒトを含む哺乳類に対して、顕著に抗体産生及びサイトカイン産生を抑制することにより抗アレルギー作用を示すという全く独自の知見に基づき、抗アレルギー作用を有する蛋白質又はそれらを含有するローヤルゼリー又は精製ローヤルゼリーを用いた抗アレルギー剤としての用途を開発するものである。本発明の抗アレルギー剤は、重篤な副作用の懸念がないので、ヒトを含む哺乳類が簡便かつ快適に、アトピー性疾患をはじめとするアレルギー疾患、自己免疫疾患の諸症状の予防・緩和・治療のために利用することができる。また、以上のような特長を有する本発明の抗アレルギー剤は、飲食物、化粧品、医薬品としての形態で利用することも有利に実施できる。
本発明は、斯くも顕著な作用効果を奏する発明であり、斯界に貢献すること誠に多大な意義のある発明である。
本発明は、斯くも顕著な作用効果を奏する発明であり、斯界に貢献すること誠に多大な意義のある発明である。
Claims (13)
- 有効成分として、配列表における番号番号1で示されるアミノ酸配列を有する蛋白質、又は、抗アレルギー作用を実質的に失わない範囲で、配列表における番号番号3で示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基が1個又は2個以上が欠失、置換、挿入、付加された蛋白質を含んでなる抗アレルギー剤。
- 有効成分として、配列表における番号番号2で示されるアミノ酸配列を有する蛋白質、又は、抗アレルギー作用を実質的に失わない範囲で、配列表における番号番号4で示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基が1個又は2個以上が欠失、置換、挿入、付加された蛋白質を含んでなる抗アレルギー剤。
- ローヤルゼリー又は精製ローヤルゼリーを含んでなる抗アレルギー剤。
- 請求の範囲第3項に記載の精製ローヤルゼリーが、ローヤルゼリー水溶性蛋白質画分であることを特徴とする抗アレルギー剤。
- 2mg/mlの蛋白質濃度の試料を用いた本明細書記載のサイトカイン産生抑制試験において、蛋白質無添加の場合に対し、インターロイキン2の相対産生量を80%以下、又は、インターロイキン4の相対産生量を60%以下まで低下させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の抗アレルギー剤。
- 配列表における番号番号3で示されるアミノ酸配列を有する蛋白質、又は、抗アレルギー作用を実質的に失わない範囲で、配列表における番号番号3で示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基が1個又は2個以上が欠失、置換、挿入、付加された蛋白質を含んでなる組成物を用いることを特徴とするアレルギー抑制方法。
- 配列表における配列番号4で示されるアミノ酸配列を有する蛋白質、又は、抗アレルギー作用を実質的に失わない範囲で、配列表における番号番号4で示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基が1個又は2個以上が欠失、置換、挿入、付加された蛋白質を含んでなる組成物を用いることを特徴とするアレルギー抑制方法。
- 請求の範囲第6項又は第7項に記載の組成物が、ローヤルゼリー又は精製ローヤルゼリーであることを特徴とするアレルギー抑制方法。
- 請求の範囲第8項に記載の精製ローヤルゼリーが、ローヤルゼリーの水溶性蛋白質画分であることを特徴とするアレルギー抑制方法。
- 有効成分としての請求の範囲第6項又は第7項に記載の蛋白質を、1日あたり0.01mg乃至100mg/kg体重で摂取又は投与することを特徴とする請求の範囲第6項、第7項、第8項又は第9項に記載のアレルギー抑制方法。
- 請求の範囲第1項、第2項、第3項又は第4項に記載の抗アレルギー剤を含んでなる飲食物。
- 請求の範囲第1項、第2項、第3項又は第4項に記載の抗アレルギー剤を含んでなる化粧品。
- 請求の範囲第1項、第2項、第3項又は第4項に記載の抗アレルギー剤を含んでなる医薬品。
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