JPWO2003102073A1 - ゴム組成物及びこれを用いたタイヤ - Google Patents
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Abstract
ゴム100質量部に、充填材として底部を有さないカップ形状をなす炭素網層1個以上からなる気相成長法による炭素繊維0.1〜100質量部を配合してなるゴム組成物であって、該炭素繊維の外周部に積層したカップの大口径部の炭素網層の端面が露出していることを特徴とするゴム組成物及びこれを用いたタイヤであり、高い熱伝導性を有し、かつ、力学物性など他の性能にも優れる。
Description
技術分野
本発明はゴム組成物及びこれを用いたタイヤに関し、詳しくは、熱伝導性に優れたゴム組成物及びこれを用いたタイヤに関する。
背景技術
電気電子部品、タイヤ、ベルト等の各種製品には、その特性に応じて、種々の天然ゴムや各種合成ゴムを基材としたゴム組成物が使用されている。かかる製品の性能や機能は、基材としてのゴム材料と同様に、種々配合されている充填材等の副資材や加硫条件などによっても大きく影響を受ける。
例えば、天然ゴムの補強効果を得るための充填材としてはカーボンブラックやシリカが広く知られており、熱伝導性を高めるためにはアルミナや窒化ホウ素等を、また、電気伝導性を付与するためには銅やニッケルのような金属粉や導電性カーボンを、それぞれ配合する等の手法が取られている。
しかしながら、従来知られている充填材において、高い効果を得るためには配合量を増大するしかなく、結果として、充填材の均一な分散を得ることができず性能にバラツキが出たり、粘度の上昇や物性の低下が大きくなって成型性が悪化する、得られたゴム物品の力学物性が低下して実用に供し得なくなるなどの欠点をも伴うものであった。
従来、ゴムに炭素繊維を配合したゴム組成物は知られているが(例えば、特開平9−157404号公報参照)、これまで用いられていた気相成長法による炭素繊維は、ベンゼンやメタンなどの炭化水素を700℃〜1000℃程度の温度で熱分解して得られる炭素を、超微粒の鉄やニッケルなどの触媒粒子を核として成長させた短繊維であった。これらの炭素繊維は、通常炭素網層が同心円状に成長したもの、または炭素網層が軸線に垂直に成長したものであるが、これらの従来知られている同心円状あるいは軸線に垂直に成長した炭素繊維は、一般的にゴムとの密着性がよくないという問題点があった。
本発明の目的は、比較的少量の添加によってゴムに高い熱伝導性を付与することができ、かつ、力学物性などの他の性能に悪影響を及ぼさないゴム組成物用充填剤を見出し、これを用いたゴム組成物を提供すること、又これらのゴム組成物を用いた高性能なタイヤを提供することを目的とするものである。
発明の開示
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、
(1)ゴム100質量部に、充填材として底部を有さないカップ形状をなす炭素網層1個以上からなる気相成長法による炭素繊維0.1〜100質量部を配合してなるゴム組成物であって、該炭素繊維の外周部に積層したカップの大口径部の炭素網層の端面が露出していることを特徴とするゴム組成物、
(2)前記充填材が底部を有さないカップ形状をなす炭素網層が複数個積層した気相成長法による炭素繊維であることを特徴とする上記(1)記載のゴム組成物、
(3)前記炭素繊維が、節の無い中空状をなすことを特徴とする(2)記載のゴム組成物、
(4)前記中空状をなす炭素繊維の中空部の外表面側および内表面側の炭素網層の端面が露出していることを特徴とする(3)記載のゴム組成物、
(5)前記中空部の外表面側における炭素網層の端面の2%以上が露出していることを特徴とする(4)記載のゴム組成物、
(6)前記炭素網層の端面の露出している表面の部位が、原子レベルの大きさの凹凸を呈していることを特徴とする(4)または(5)記載のゴム組成物、
(7)前記炭素網層が2500℃以上の高温で熱処理しても、黒鉛化しないことを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のゴム組成物、
(8)前記炭素繊維の直径が1〜1000nm、長さが0.1〜1000μmである(1)〜(7)のいずれかに記載のゴム組成物、
(9)前記炭素繊維の直径が5〜500nm、長さが0.5〜750μmである(1)〜(7)のいずれかに記載のゴム組成物、
(10)前記炭素繊維の直径が10〜250nm、長さが1〜500μmである(1)〜(7)のいずれかに記載のゴム組成物、
(11)前記炭素繊維以外の充填材を1〜60質量部配合することを特徴とする(1)〜(10)のいずれかに記載のゴム組成物、
(12)前記炭素繊維以外の充填材がカーボンブラックおよび/または無機充填材である(11)記載のゴム組成物、
(13)前記(1)〜(12)のいずれかに記載するゴム組成物を用いたタイヤ、
が上記目的を達成することを見出し、本発明を完成したものである。
発明を実施するための最良の形態
本発明のゴム組成物は、ゴムを基材とし、これに底部を有さないカップ形状をなす炭素網層1個以上からなる気相成長法による炭素繊維、好ましくは該底部を有さないカップ形状をなす炭素網層が複数個積層した気相成長法による炭素繊維であって、該炭素繊維の外周部に積層したカップの大口径部の炭素網層の端面が露出していることを特徴とする炭素繊維を添加することを特徴とする。
以下、本発明に用いられる炭素繊維の特徴を、図1〜21を用いて詳細に説明する。
図1は本発明に係る底部を有さないカップ形状をなす炭素網層が複数個積層した気相成長法による炭素繊維を示す模式図である。1で示す部分に底部がなく、重なるようにして、炭素網層が積層しているのが特徴である。また底部を有さないこれらの炭素網層が積層するため、本発明の炭素繊維は節のない中空状をなす。また2で示す部分が、外周部に積層したカップの大口径部の炭素網層の端面であり、この部分が後述する露出された状態であることが本発明の特徴である。さらに3及び4で示す部分が炭素繊維の中空部の外表面および内表面であって、この部分の炭素網層の端面が露出していることがさらに好ましい。
次に、図2は気相成長法により製造したヘリンボン構造を有する炭素繊維の透過型電子顕微鏡写真であり、図3は該写真の拡大図、図4はヘリンボン構造を有する炭素繊維の模式図である。ここで10は傾斜した炭素網層、14は中心孔であり、炭素網層10を覆うように、アモルファス状の余剰炭素が堆積した堆積層12が形成されている。
炭素繊維は上述した気相成長法により製造するに際し、触媒、温度領域、フローレート等の気相成長条件を制御することによって、炭素網層の積層が繊維軸に対して一定の角度で傾斜したヘリンボン(herring−bone)構造をなすものを製造することができるが、本発明の炭素繊維はこのようなヘリンボン構造を有する。
また、気相成長法で製造した炭素繊維の表面には、通常十分に結晶化していない、アモルファス状の余剰炭素が堆積した、薄い堆積層が形成される。この堆積層は活性度が低く、そのためにゴムとの密着性が劣ると考えられる。
本発明の炭素繊維は炭素網層10を覆う堆積層12が一部除かれ、炭素網層の端面(六員環端)の少なくとも一部が露出していることを特徴とする。当該露出した炭素網層10の端面は、他の原子と結びつきやすく、きわめて活性度の高いものである。本発明の炭素繊維においては、炭素網層の端面(六員環端)の少なくとも2%が露出していることが好ましく、さらには7%以上露出していることが好ましい。このことによって、本発明の炭素繊維はゴムとの密着性を向上させることができ、熱伝導性に優れるゴム組成物を得ることができる。従って上記観点から、炭素網層の端面の露出の割合は大きいほど好ましい。
また、本発明の炭素繊維はより積極的に上記堆積層を除去することによって、さらに炭素網層の端面を露出させることができ、極めて熱伝導性に優れるゴム組成物を得ることができる。これは、後述する大気中での熱処理等により、堆積層12が除去されるのと同時に、露出する炭素網層の端面にフェノール性水酸基、カルボキシル基、キノン型カルボニル基、ラクトン基などの含酸素官能基が増大し、これら含酸素官能基が親水性、各種物質に対する親和性を高めるためと考えられる。
堆積層12を除去して、炭素網層10を露出させる方法としては種々あるが、400℃以上、好ましくは500℃以上、より一層好ましくは520℃以上530℃以下の温度で、大気中で1〜数時間加熱する方法があり、これによって堆積層12が酸化されて熱分解する。また、超臨界水により炭素繊維を洗浄する方法、塩酸又は硫酸中に浸漬し、スターラーで攪拌しつつ80℃程度に加熱する方法等によっても堆積層12を除去でき、炭素網層の端面を露出させることができる。
図5は、図1で示されるヘリンボン構造の炭素繊維を約530℃の温度で、大気中1時間熱処理した炭素繊維の透過型電子顕微鏡写真であり、図6は該写真の拡大図、図7はさらにその拡大図、図8はその模式図である。上述のような熱処理を行なうことによって、堆積層12の1部が除去され、炭素網層10の端面(炭素六員環端)が露出することがわかる。尚、残留している堆積層12もほとんど分解されていて,単に付着している程度のものと思われる。熱処理を数時間行い、また超臨界水での洗浄を併用することによって、堆積層12を100%除去することも可能である。
尚、図9はヘリンボン構造の炭素繊維(試料名;Pristine 24PS、平均外径100nm)を大気中で1時間放置したもの、それぞれ500℃、520℃、530℃、540℃で熱処理した後のラマンスペクトルであり、1360cm−1のピークおよび1580−1のピークが存在することから、これらのものは炭素繊維であるとともに、黒鉛化構造でない炭素繊維であることが確認された。
本発明に係る炭素繊維は、図5〜8に示されるように、底部を有さないカップ形状をなす1個以上の炭素網層からなるものであり、通常は数個〜数十万個積層したものであり、これらが微細粒をなすため、ゴムや樹脂への分散性が極めて良好となる。特にゴムとの複合材においては、しなやかで、かつ強度が大きいばかりでなく、ゴムとの密着性が高く、熱伝導性に優れるゴム組成物が得られる。
また、本発明の炭素繊維は節の無い中空状であることが好ましく、図5〜8に示されるように少なくとも数十nm〜数十μmの範囲で中空状をなすことが好ましい。該中空状炭素繊維においては、中空部の外表面側および内表面側の炭素網層の端面が露出していることが好ましく、その露出割合は高いほどよい。このうち、外表面においては炭素網層の2%以上が露出していることが好ましく、さらには7%以上露出していることが好ましい。
尚、中心線に対する炭素網層の傾斜角は20度〜35度程度である。
さらに本発明に係る炭素繊維は、炭素網層の端面が露出している表面の部位が、原子レベルの大きさの凹凸を呈していることが好ましい。この凹凸がゴムに対するアンカー効果を有し、ゴムとの密着性を一層優れたものとし、熱的にきわめて優れたゴム組成物とすることができる。
上記原子レベルの大きさの凹凸は炭素網面のずれた(グラインド)乱層構造(Turbostratic Structure)によるものと考えられる。この乱層構造炭素繊維では、各炭素六角網面が平行な積層構造を有しているが、各六角網面が平面方向にずれた、あるいは回転した積層構造となっていて、結晶学的規則性は有しない。
また本発明の炭素繊維は、通常の炭素繊維が2500℃以上の高温処理により黒鉛化するのに対し、2500℃以上の高温で熱処理しても、黒鉛化しない点が特徴である。このような黒鉛化処理を行なっても黒鉛化しない理由としては、黒鉛化しやすい堆積層12が除去されているためと考えられ、一方、堆積層12を除去した後に残ったヘリンボン構造の部位は黒鉛化しないためである。これは本発明の炭素繊維が熱的に安定であることを示すものである。
尚、図10は熱処理前の外径の異なるヘリンボン構造を有する炭素繊維のラマンスペクトルであり、Pristine 19PSは平均外径150nm、Pristine 24PSは平均外径100nmである。図11は同試料を3000℃で通常の黒鉛化処理をした後のラマンスペクトルであるが、両者でスペクトルに大きな変化がなく、1360cm−1のピークおよび1580−1のピークが存在することから、本発明に係る炭素繊維が通常の黒鉛化処理においては黒鉛化しないことがわかる。
本発明に係る炭素繊維の直径は1〜1000nmの範囲であることが好ましく、さらには直径が5〜500nm、特には直径が10〜250nmの範囲であることが好ましい。また、その長さとしては0.1〜1000μmの範囲であることが好ましく、さらには長さが0.5〜750μm、特には長さが1〜500μmの範囲であることが好ましい。直径及び長さをこの範囲内に調節することにより、ゴムとの親和性をより高めることができ、熱伝導性の向上に有効である。
本発明に係る炭素繊維は、例えば以下の方法で製造し得る。
ベンゼン等の炭化水素を一定の分圧で通常の反応容器に仕込み、触媒としてフェロセン等の遷移金属錯体を用い、反応温度約1100℃、反応時間20分程度とすることで、直径約100nmのヘリンボン構造の炭素繊維が得られる。原料の流量、反応温度を調節することにより、底部を有さないカップ形状をなす炭素網層が多数積層され、数十nm〜数十μmの範囲にわたって節(ブリッジ)のない中空状の炭素繊維が得られる。この炭素繊維は上述のように堆積層を有するので、少なくともその一部を上記した方法によって除去する。このように製造した炭素繊維は、底部を有さないカップ形状、すなわち断面がハの字状をなす単位炭素網層が数万〜数十万個積層している短繊維(長さ数十μm)である。この短繊維は、分子量(長さ)が大きく、水、有機溶媒等に不溶性であり、本発明に係る炭素繊維は、これらの短繊維を、単位炭素網層が1個以上、好ましくは数個〜数万個のものに分断したものである。
上記短繊維を分断して、本発明に係る炭素繊維を得る方法としては、種々あるが、例えば水あるいは溶媒を適量加えて、乳鉢を用いて適当な時間、乳棒により穏やかにすりつぶす方法が好適である。
これは、環状の炭素網層は比較的強度が高く、各炭素網層間は弱いファンデルワールス力によって結合しているため、環状単層網層はつぶれることがなく、特に弱い結合部分の炭素網層間で分離されるためである。
尚、上記短繊維を液体窒素中で乳鉢によりすりつぶすと効果的に分断ができ、好適である。液体窒素が蒸発する際、空気中の水分が吸収され、氷となり、氷とともに短繊維を乳棒によりすりつぶすことになるため、機械的ストレスが軽減され、単位繊維層間での分離が容易に行なえるためである。
当該分断の工程は、堆積層の除去前に行うこともでき、分断工程の後に堆積層の除去を行うことも可能である。
また上記分断工程は、工業的には、上記炭素繊維をボールミリングによりグラインディング処理することが好ましい。以下にボールミリングによって炭素繊維の長さを調整する方法について詳細に説明する。ボールミルは例えばアサヒ理化製作所製のものを用いることができ、使用ボールとしては直径5mmのアルミナ製のものを用いることができる。具体例としては、例えば上記炭素繊維を1g、アルミナボール200g、蒸留水50ccをセル中に入れ、350rpmの回転速度で処理することができる。上記方法にて分断処理した際の1,3,5,10,24時間経過毎に試料を採取し、レーザー粒度分布計を用いて計測した結果を、各時間経過毎の炭素繊維の長さの分布として図12に示す。ミリング時間が経過するにつれて線長が短くなり、特に10時間経過後は、10μm以下に急激に線長が短くなる。また24時間経過後は、1μm前後に別のピークが発生しており、より細かい線長になる。尚、1μm前後のピークは、長さと直径がほとんど等しくなるため、長さと、直径とを二重にカウントしていると考えられる。
また、図13はミリング前の炭素繊維の透過型電子顕微鏡写真であり、図14、図15、図16及び図17はミリングを開始して、それぞれ2時間経過後、5時間経過後、10時間経過後及び24時間経過後の炭素繊維の透過型電子顕微鏡写真である。ミリング前の炭素繊維は数十μmの長さの炭素繊維が絡まり合っていて、嵩密度が極めて低いものになっているのに対し、ミリング時間が経過するにつれて線長が短くなり、24時間経過後はほとんど粒子状となっていることがわかる。また、24時間経過後は繊維の絡まりはほとんどみられず、嵩密度の高いものになる。
また、図18はミリング中に炭素繊維が分断される状態を示す透過型電子顕微鏡写真であり、図19、図20は図18に示す透過型電子顕微鏡写真の拡大図である。これらの図から、炭素繊維の分断は、繊維が折れるのではなく、底部を有さないカップ形状をなす炭素網層が抜け出すことによってなされることがわかる。
次に、図21は、上記のようにして、底のないカップ形状をなす炭素網層が数十個積層した状態に長さが調整された、炭素繊維の透過型電子顕微鏡写真である。該炭素繊維は、長さおよび直径が約60nmで、肉厚の薄い、空洞部の大きなチューブ状、すなわち節の無い中空状をなし、また中空部の外表面側および内表面側の炭素網層の端面が露出している。このように、底のないカップ形状をなす炭素網層が抜け出すようにして、分離され、炭素網層の形状が壊されていないことがわかる。尚、ミリングの条件によって任意の長さの炭素繊維に調整することができ、上述した本発明の好適な範囲の直径及び長さとすることが好ましい。
尚、通常の、同心円状をなすカーボンナノチューブをグラインディングすると、チューブが割れ、外表面に軸方向に亀裂が生じたり、ささくれ立ちが生じ、また、いわゆる芯が抜けたような状態が生じ、長さの調整は困難である。
次に本発明で用いられるゴムとしては、天然ゴム、汎用合成ゴム、例えば、乳化重合スチレン−ブタジエンゴム、溶液重合スチレン−ブタジエンゴム、高シス−1,4ポリブタジエンゴム、低シス−1,4ポリブタジエンゴム、高シス−1,4ポリイソプレンゴム等、ジエン系特殊ゴム、例えば、ニトリルゴム、水添ニトリルゴム、クロロプレンゴム等、オレフィン系特殊ゴム、例えば、エチレン−プロピレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン等、その他特殊ゴム、例えば、ヒドリンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム、ウレタンゴム等を挙げることができる。コストと性能とのバランスから、好ましくは、天然ゴムまたは汎用合成ゴムである。
本発明に係るゴム組成物は、イオウ、過酸化物、金属酸化物等を添加して加熱により架橋させる方法や、光重合開始剤を添加して光照射により架橋させる方法及び電子線や放射線を照射して架橋させる方法等により、加硫して使用することが好ましい。
本発明のゴム組成物は、ゴム100質量部に上記炭素繊維0.1〜100質量部を配合するものである。該炭素繊維の配合量がこの範囲内であると、十分な熱伝導性を得ることができるとともに、混合や成型等における作業性が良好となる。また、同様の観点から該炭素繊維の配合量は0.5〜50質量部の範囲であることがさらに好ましい。
本発明の組成物においては、上記炭素繊維以外にカーボンブラック及び/または無機充填材、その他の各種充填材を1〜60質量部、特には1〜40質量部配合することが好適である。ゴム組成物中にこれらの充填材が適量配合されていると、上記炭素繊維のみを添加した場合に比してより高い補強効果が得られる。
カーボンブラックとしては特に制限はなく、従来ゴム組成物の補強性充填材として慣用されているものの中から任意のものを選択して使用することができる。具体的には、FEF,SRF,HAF,ISAF,SAF等が挙げられ、ヨウ素吸着量(IA)60mg/g以上で、かつ、ジブチルフタレート吸油量(DBP)80ml/100g以上のものが好ましい。これらの中でも特に、耐摩耗性に優れるHAF,ISAF,SAFが好ましい。
前記無機充填材としては、従来ゴム工業で使用されているものを使用することができ特に限定されず、例えばγ−アルミナ,α−アルミナ等のアルミナ(Al2O3)、ベーマイト,ダイアスポ等のアルミナ一水和物(Al2O3・H2O)、ギブサイト,バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)3]、炭酸アルミニウム(Al2(CO3)3)、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n−1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al2O3)、クレー(Al2O3・2SiO2)、カオリン(Al2O3・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al2O3・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al2O3・4SiO2・2H2O)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5、Al4・3SiO4・5H2O等)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3等)、ケイ酸カルシウム(Ca2・SiO4等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al2O3・CaO・2SiO2等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム(ZrO(OH)2・nH2O)、炭酸ジルコニウム(ZrCO3)、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素,アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩等が挙げられ、これらの中でシリカや窒素吸着比表面積(N2SA)1〜20m2/gの水酸化アルミニウムが好ましく、特にシリカが好ましい。
シリカとしては特に制限はなく、従来ゴムの補強材として慣用されるものの中から任意に選択して使用することができる。例えば湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられるが、中でも沈降法による合成シリカが好ましい。
尚、ゴム組成物の混合、成型などの手法としては、通常のゴムの混合、成型に使用される公知の手法を用いることができ、特に制限はない。
本発明のゴム組成物は、上記炭素繊維を少量配合することによって、他の物性を大きく変化させることなく、また、成型加工性も損なうことなく、熱伝導性の大幅な向上が可能となるために、電気電子部品、タイヤ、ベルト、その他各種製品に幅広く使用することが可能である。尚、本発明のゴム組成物には、ゴム業界で一般に使用されている添加剤、例えば、加硫促進剤、補強材、老化防止剤、軟化剤等、通常のゴム用添加剤を適宜使用することが可能である。
(実施例)
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
[物性評価法]
実施例1〜6及び比較例1で得られるゴムシートについて、熱伝導性を評価した。具体的には、京都電子(株)製、迅速熱伝導率計QTM−500を用いて測定した熱伝導率により評価した。
実施例1
原料にベンゼンを用い、20℃の蒸気圧となる分圧で、水素気流により反応器に流量0.3L/hでチャンバーに送り込んだ。触媒はフェロセンを用い、185℃で気化させ、3×10−7mol/sの濃度でチャンバーに送り込んだ。反応温度は1100℃、反応時間が20分で、直径が約100nmのヘリンボン構造の底部を有さないカップ積層型炭素繊維A(以下「炭素繊維A」という)が得られた。
該炭素繊維A及び各種添加剤を第1表に示す配合内容にて、天然ゴム(NR)に配合し、以下に示す混練り条件およびシート作製条件に従い加硫ゴム組成物のシートを作製した。尚、第1表中の配合量は全て質量部を表す。熱伝導率を第1表に示す。
(1)混練条件
ラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて、天然ゴム(NR)を70℃にて50rpmで3分間素練りした後、第1表に示す、加硫促進剤および硫黄を除く各添加剤を投入して、70℃にて50rpmで更に混合した(ノンプロ配合)。得られた混合物を取り出して、冷却、秤量した後、残りの加硫促進剤および硫黄を投入し、プラベンダーを用いて、50℃にて50rpmで再度混合した(プロ配合)。
(2)シート作製条件
混練りした混合物を高温プレスを用いて150℃×15分にて加硫して、1mm厚の加硫ゴムシートを作製した。
実施例2
炭素繊維A及び各種添加剤を第1表に示す配合内容で配合した以外は実施例1と同様にして加硫ゴム組成物のシートを作製した。評価結果を第1表に示す。
実施例3
実施例1の炭素繊維において、あらかじめ絡み合いをほぐした底部を有しないカップ積層型炭素繊維(以下「炭素繊維B」という)を用いた以外は実施例1と同様にして加硫ゴム組成物のシートを作製した。評価結果を第1表に示す。
実施例4
炭素繊維B及び各種添加剤を第1表に示す配合内容で配合した以外は実施例1と同様にして加硫ゴム組成物のシートを作製した。評価結果を第1表に示す。
実施例5及び6
炭素繊維Aを上述の分断工程によって、50〜200nm、長さ0.05〜10μmの底部を有しないカップ積層型炭素繊維C(以下「炭素繊維C」という)を得た。炭素繊維C及び各種添加剤を第1表に示す配合内容で配合した以外は実施例1と同様にして加硫ゴム組成物のシートを作製した。評価結果を第1表に示す。
比較例1
炭素繊維を含有せず各種添加剤を第1表に示す配合内容で配合した以外は実施例1と同様にして加硫ゴム組成物のシートを作製した。評価結果を第1表に示す。
*1炭素繊維A;直径50〜200nm、長さ5〜200μm
*2炭素繊維B;直径50〜200nm、長さ5〜200μm、あらかじめ絡み合いをほぐしたもの
*3炭素繊維C;直径50〜200nm、長さ0.05〜10μm
本発明に係る気相成長法による炭素繊維では、外周部に積層したカップの大口径部の炭素網層の端面が露出しているので、該端面の活性度が高く、ゴム等のゴム組成物との密着性に優れ、ゴム組成物の好適な材料となる。また、底部を有さないカップ形状をなす、ヘリンボン構造の傾斜した炭素網層の端面を、層状に露出させることにより、この露出した炭素網層の端面(六員環端)をきわめて活性度の高いものとすることができる。このためゴムとの密着性に優れ、その結果として、熱伝導性に優れるゴム組成物の材料を提供することができる。さらに堆積層が除去され、炭素網層の端面が層状に露出された表面は、各層の端面が不揃いで、原子の大きさレベルでの凹凸を呈しており、このことがまたゴム等のゴム組成品に対するアンカー効果となり、ゴムとの密着性が一層優れ、熱伝導的に極めて優れたゴム組成物が提供される。
本発明のゴム組成物によれば、少量の添加であっても、他の諸物性を大きく変化させることなく、また、成型加工性を損なうこともなく、熱伝導性の大幅な向上効果を得ることができる。従って、本発明の加硫ゴム組成物は、電気電子部品、タイヤ、ベルト、その他各種製品に幅広く使用することが可能であり、特にタイヤに使用した場合には、その放熱効果により発熱を抑制することが可能となり好適である。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明に係る底部を有さないカップ形状をなす炭素網層が複数個積層した気相成長法による炭素繊維を示す模式図である。
図2は、実施例1に基づいて気相成長法によって製造したヘリンボン構造の炭素繊維の透過型電子顕微鏡写真である。
図3は、図2の拡大図である。
図4は、図3の模式図である。
図5は、図2に示す炭素繊維を約530℃の温度で、大気中1時間熱処理したヘリンボン構造の炭素繊維の透過型電子顕微鏡写真である。
図6は、図5の拡大図である。
図7は、図6の拡大図である。
図8は、図7の模式図である。
図9は、ヘリンボン構造の炭素繊維(試料名;Pristine 24PS)を大気中で、1時間、それぞれ500℃、520℃、530℃、540℃で熱処理した後の、炭素繊維のラマンスペクトルである。
図10は、熱処理前の外径の異なるヘリンボン構造を有する炭素繊維のラマンスペクトルであり、Pristine 19PSは平均外径150nm、Pristine 24PSは平均外径100nmである。
図11は、Pristine 19PS及びPristine 24PSを3000℃で通常の黒鉛化処理をした後のラマンスペクトルである。
図12は、ボールミリングでグラインディングした際の、経過時間毎の炭素繊維長の分布を示すグラフである。
図13は、ボールミリング開始前の炭素繊維の電子顕微鏡写真である。
図14は、ボールミリング開始2時間後の炭素繊維の電子顕微鏡写真である。
図15は、ボールミリング開始5時間後の炭素繊維の電子顕微鏡写真である。
図16は、ボールミリング開始10時間後の炭素繊維の電子顕微鏡写真である。
図17は、ボールミリング開始24時間後の炭素繊維の電子顕微鏡写真である。
図18は、ボールミリング中、カップ状をなす炭素網層が離脱し始めている状態を示す透過型電子顕微鏡写真である。
図19は、図18の拡大図である。
図20は、図19の拡大図である。
図21は、底部を有さないカップ形状をなす炭素網層が数十個積層された炭素繊維に分離された状態を示す透過型電子顕微鏡写真である。
(符号の説明)
1:底部
2:外周部に積層したカップの大口径部の炭素網層の端面
3:炭素繊維の中空部の外表面
4:炭素繊維の中空部の内表面
10:炭素網層
12:堆積層
14:中心孔
16:原子レベルの大きさの凹凸
本発明はゴム組成物及びこれを用いたタイヤに関し、詳しくは、熱伝導性に優れたゴム組成物及びこれを用いたタイヤに関する。
背景技術
電気電子部品、タイヤ、ベルト等の各種製品には、その特性に応じて、種々の天然ゴムや各種合成ゴムを基材としたゴム組成物が使用されている。かかる製品の性能や機能は、基材としてのゴム材料と同様に、種々配合されている充填材等の副資材や加硫条件などによっても大きく影響を受ける。
例えば、天然ゴムの補強効果を得るための充填材としてはカーボンブラックやシリカが広く知られており、熱伝導性を高めるためにはアルミナや窒化ホウ素等を、また、電気伝導性を付与するためには銅やニッケルのような金属粉や導電性カーボンを、それぞれ配合する等の手法が取られている。
しかしながら、従来知られている充填材において、高い効果を得るためには配合量を増大するしかなく、結果として、充填材の均一な分散を得ることができず性能にバラツキが出たり、粘度の上昇や物性の低下が大きくなって成型性が悪化する、得られたゴム物品の力学物性が低下して実用に供し得なくなるなどの欠点をも伴うものであった。
従来、ゴムに炭素繊維を配合したゴム組成物は知られているが(例えば、特開平9−157404号公報参照)、これまで用いられていた気相成長法による炭素繊維は、ベンゼンやメタンなどの炭化水素を700℃〜1000℃程度の温度で熱分解して得られる炭素を、超微粒の鉄やニッケルなどの触媒粒子を核として成長させた短繊維であった。これらの炭素繊維は、通常炭素網層が同心円状に成長したもの、または炭素網層が軸線に垂直に成長したものであるが、これらの従来知られている同心円状あるいは軸線に垂直に成長した炭素繊維は、一般的にゴムとの密着性がよくないという問題点があった。
本発明の目的は、比較的少量の添加によってゴムに高い熱伝導性を付与することができ、かつ、力学物性などの他の性能に悪影響を及ぼさないゴム組成物用充填剤を見出し、これを用いたゴム組成物を提供すること、又これらのゴム組成物を用いた高性能なタイヤを提供することを目的とするものである。
発明の開示
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、
(1)ゴム100質量部に、充填材として底部を有さないカップ形状をなす炭素網層1個以上からなる気相成長法による炭素繊維0.1〜100質量部を配合してなるゴム組成物であって、該炭素繊維の外周部に積層したカップの大口径部の炭素網層の端面が露出していることを特徴とするゴム組成物、
(2)前記充填材が底部を有さないカップ形状をなす炭素網層が複数個積層した気相成長法による炭素繊維であることを特徴とする上記(1)記載のゴム組成物、
(3)前記炭素繊維が、節の無い中空状をなすことを特徴とする(2)記載のゴム組成物、
(4)前記中空状をなす炭素繊維の中空部の外表面側および内表面側の炭素網層の端面が露出していることを特徴とする(3)記載のゴム組成物、
(5)前記中空部の外表面側における炭素網層の端面の2%以上が露出していることを特徴とする(4)記載のゴム組成物、
(6)前記炭素網層の端面の露出している表面の部位が、原子レベルの大きさの凹凸を呈していることを特徴とする(4)または(5)記載のゴム組成物、
(7)前記炭素網層が2500℃以上の高温で熱処理しても、黒鉛化しないことを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のゴム組成物、
(8)前記炭素繊維の直径が1〜1000nm、長さが0.1〜1000μmである(1)〜(7)のいずれかに記載のゴム組成物、
(9)前記炭素繊維の直径が5〜500nm、長さが0.5〜750μmである(1)〜(7)のいずれかに記載のゴム組成物、
(10)前記炭素繊維の直径が10〜250nm、長さが1〜500μmである(1)〜(7)のいずれかに記載のゴム組成物、
(11)前記炭素繊維以外の充填材を1〜60質量部配合することを特徴とする(1)〜(10)のいずれかに記載のゴム組成物、
(12)前記炭素繊維以外の充填材がカーボンブラックおよび/または無機充填材である(11)記載のゴム組成物、
(13)前記(1)〜(12)のいずれかに記載するゴム組成物を用いたタイヤ、
が上記目的を達成することを見出し、本発明を完成したものである。
発明を実施するための最良の形態
本発明のゴム組成物は、ゴムを基材とし、これに底部を有さないカップ形状をなす炭素網層1個以上からなる気相成長法による炭素繊維、好ましくは該底部を有さないカップ形状をなす炭素網層が複数個積層した気相成長法による炭素繊維であって、該炭素繊維の外周部に積層したカップの大口径部の炭素網層の端面が露出していることを特徴とする炭素繊維を添加することを特徴とする。
以下、本発明に用いられる炭素繊維の特徴を、図1〜21を用いて詳細に説明する。
図1は本発明に係る底部を有さないカップ形状をなす炭素網層が複数個積層した気相成長法による炭素繊維を示す模式図である。1で示す部分に底部がなく、重なるようにして、炭素網層が積層しているのが特徴である。また底部を有さないこれらの炭素網層が積層するため、本発明の炭素繊維は節のない中空状をなす。また2で示す部分が、外周部に積層したカップの大口径部の炭素網層の端面であり、この部分が後述する露出された状態であることが本発明の特徴である。さらに3及び4で示す部分が炭素繊維の中空部の外表面および内表面であって、この部分の炭素網層の端面が露出していることがさらに好ましい。
次に、図2は気相成長法により製造したヘリンボン構造を有する炭素繊維の透過型電子顕微鏡写真であり、図3は該写真の拡大図、図4はヘリンボン構造を有する炭素繊維の模式図である。ここで10は傾斜した炭素網層、14は中心孔であり、炭素網層10を覆うように、アモルファス状の余剰炭素が堆積した堆積層12が形成されている。
炭素繊維は上述した気相成長法により製造するに際し、触媒、温度領域、フローレート等の気相成長条件を制御することによって、炭素網層の積層が繊維軸に対して一定の角度で傾斜したヘリンボン(herring−bone)構造をなすものを製造することができるが、本発明の炭素繊維はこのようなヘリンボン構造を有する。
また、気相成長法で製造した炭素繊維の表面には、通常十分に結晶化していない、アモルファス状の余剰炭素が堆積した、薄い堆積層が形成される。この堆積層は活性度が低く、そのためにゴムとの密着性が劣ると考えられる。
本発明の炭素繊維は炭素網層10を覆う堆積層12が一部除かれ、炭素網層の端面(六員環端)の少なくとも一部が露出していることを特徴とする。当該露出した炭素網層10の端面は、他の原子と結びつきやすく、きわめて活性度の高いものである。本発明の炭素繊維においては、炭素網層の端面(六員環端)の少なくとも2%が露出していることが好ましく、さらには7%以上露出していることが好ましい。このことによって、本発明の炭素繊維はゴムとの密着性を向上させることができ、熱伝導性に優れるゴム組成物を得ることができる。従って上記観点から、炭素網層の端面の露出の割合は大きいほど好ましい。
また、本発明の炭素繊維はより積極的に上記堆積層を除去することによって、さらに炭素網層の端面を露出させることができ、極めて熱伝導性に優れるゴム組成物を得ることができる。これは、後述する大気中での熱処理等により、堆積層12が除去されるのと同時に、露出する炭素網層の端面にフェノール性水酸基、カルボキシル基、キノン型カルボニル基、ラクトン基などの含酸素官能基が増大し、これら含酸素官能基が親水性、各種物質に対する親和性を高めるためと考えられる。
堆積層12を除去して、炭素網層10を露出させる方法としては種々あるが、400℃以上、好ましくは500℃以上、より一層好ましくは520℃以上530℃以下の温度で、大気中で1〜数時間加熱する方法があり、これによって堆積層12が酸化されて熱分解する。また、超臨界水により炭素繊維を洗浄する方法、塩酸又は硫酸中に浸漬し、スターラーで攪拌しつつ80℃程度に加熱する方法等によっても堆積層12を除去でき、炭素網層の端面を露出させることができる。
図5は、図1で示されるヘリンボン構造の炭素繊維を約530℃の温度で、大気中1時間熱処理した炭素繊維の透過型電子顕微鏡写真であり、図6は該写真の拡大図、図7はさらにその拡大図、図8はその模式図である。上述のような熱処理を行なうことによって、堆積層12の1部が除去され、炭素網層10の端面(炭素六員環端)が露出することがわかる。尚、残留している堆積層12もほとんど分解されていて,単に付着している程度のものと思われる。熱処理を数時間行い、また超臨界水での洗浄を併用することによって、堆積層12を100%除去することも可能である。
尚、図9はヘリンボン構造の炭素繊維(試料名;Pristine 24PS、平均外径100nm)を大気中で1時間放置したもの、それぞれ500℃、520℃、530℃、540℃で熱処理した後のラマンスペクトルであり、1360cm−1のピークおよび1580−1のピークが存在することから、これらのものは炭素繊維であるとともに、黒鉛化構造でない炭素繊維であることが確認された。
本発明に係る炭素繊維は、図5〜8に示されるように、底部を有さないカップ形状をなす1個以上の炭素網層からなるものであり、通常は数個〜数十万個積層したものであり、これらが微細粒をなすため、ゴムや樹脂への分散性が極めて良好となる。特にゴムとの複合材においては、しなやかで、かつ強度が大きいばかりでなく、ゴムとの密着性が高く、熱伝導性に優れるゴム組成物が得られる。
また、本発明の炭素繊維は節の無い中空状であることが好ましく、図5〜8に示されるように少なくとも数十nm〜数十μmの範囲で中空状をなすことが好ましい。該中空状炭素繊維においては、中空部の外表面側および内表面側の炭素網層の端面が露出していることが好ましく、その露出割合は高いほどよい。このうち、外表面においては炭素網層の2%以上が露出していることが好ましく、さらには7%以上露出していることが好ましい。
尚、中心線に対する炭素網層の傾斜角は20度〜35度程度である。
さらに本発明に係る炭素繊維は、炭素網層の端面が露出している表面の部位が、原子レベルの大きさの凹凸を呈していることが好ましい。この凹凸がゴムに対するアンカー効果を有し、ゴムとの密着性を一層優れたものとし、熱的にきわめて優れたゴム組成物とすることができる。
上記原子レベルの大きさの凹凸は炭素網面のずれた(グラインド)乱層構造(Turbostratic Structure)によるものと考えられる。この乱層構造炭素繊維では、各炭素六角網面が平行な積層構造を有しているが、各六角網面が平面方向にずれた、あるいは回転した積層構造となっていて、結晶学的規則性は有しない。
また本発明の炭素繊維は、通常の炭素繊維が2500℃以上の高温処理により黒鉛化するのに対し、2500℃以上の高温で熱処理しても、黒鉛化しない点が特徴である。このような黒鉛化処理を行なっても黒鉛化しない理由としては、黒鉛化しやすい堆積層12が除去されているためと考えられ、一方、堆積層12を除去した後に残ったヘリンボン構造の部位は黒鉛化しないためである。これは本発明の炭素繊維が熱的に安定であることを示すものである。
尚、図10は熱処理前の外径の異なるヘリンボン構造を有する炭素繊維のラマンスペクトルであり、Pristine 19PSは平均外径150nm、Pristine 24PSは平均外径100nmである。図11は同試料を3000℃で通常の黒鉛化処理をした後のラマンスペクトルであるが、両者でスペクトルに大きな変化がなく、1360cm−1のピークおよび1580−1のピークが存在することから、本発明に係る炭素繊維が通常の黒鉛化処理においては黒鉛化しないことがわかる。
本発明に係る炭素繊維の直径は1〜1000nmの範囲であることが好ましく、さらには直径が5〜500nm、特には直径が10〜250nmの範囲であることが好ましい。また、その長さとしては0.1〜1000μmの範囲であることが好ましく、さらには長さが0.5〜750μm、特には長さが1〜500μmの範囲であることが好ましい。直径及び長さをこの範囲内に調節することにより、ゴムとの親和性をより高めることができ、熱伝導性の向上に有効である。
本発明に係る炭素繊維は、例えば以下の方法で製造し得る。
ベンゼン等の炭化水素を一定の分圧で通常の反応容器に仕込み、触媒としてフェロセン等の遷移金属錯体を用い、反応温度約1100℃、反応時間20分程度とすることで、直径約100nmのヘリンボン構造の炭素繊維が得られる。原料の流量、反応温度を調節することにより、底部を有さないカップ形状をなす炭素網層が多数積層され、数十nm〜数十μmの範囲にわたって節(ブリッジ)のない中空状の炭素繊維が得られる。この炭素繊維は上述のように堆積層を有するので、少なくともその一部を上記した方法によって除去する。このように製造した炭素繊維は、底部を有さないカップ形状、すなわち断面がハの字状をなす単位炭素網層が数万〜数十万個積層している短繊維(長さ数十μm)である。この短繊維は、分子量(長さ)が大きく、水、有機溶媒等に不溶性であり、本発明に係る炭素繊維は、これらの短繊維を、単位炭素網層が1個以上、好ましくは数個〜数万個のものに分断したものである。
上記短繊維を分断して、本発明に係る炭素繊維を得る方法としては、種々あるが、例えば水あるいは溶媒を適量加えて、乳鉢を用いて適当な時間、乳棒により穏やかにすりつぶす方法が好適である。
これは、環状の炭素網層は比較的強度が高く、各炭素網層間は弱いファンデルワールス力によって結合しているため、環状単層網層はつぶれることがなく、特に弱い結合部分の炭素網層間で分離されるためである。
尚、上記短繊維を液体窒素中で乳鉢によりすりつぶすと効果的に分断ができ、好適である。液体窒素が蒸発する際、空気中の水分が吸収され、氷となり、氷とともに短繊維を乳棒によりすりつぶすことになるため、機械的ストレスが軽減され、単位繊維層間での分離が容易に行なえるためである。
当該分断の工程は、堆積層の除去前に行うこともでき、分断工程の後に堆積層の除去を行うことも可能である。
また上記分断工程は、工業的には、上記炭素繊維をボールミリングによりグラインディング処理することが好ましい。以下にボールミリングによって炭素繊維の長さを調整する方法について詳細に説明する。ボールミルは例えばアサヒ理化製作所製のものを用いることができ、使用ボールとしては直径5mmのアルミナ製のものを用いることができる。具体例としては、例えば上記炭素繊維を1g、アルミナボール200g、蒸留水50ccをセル中に入れ、350rpmの回転速度で処理することができる。上記方法にて分断処理した際の1,3,5,10,24時間経過毎に試料を採取し、レーザー粒度分布計を用いて計測した結果を、各時間経過毎の炭素繊維の長さの分布として図12に示す。ミリング時間が経過するにつれて線長が短くなり、特に10時間経過後は、10μm以下に急激に線長が短くなる。また24時間経過後は、1μm前後に別のピークが発生しており、より細かい線長になる。尚、1μm前後のピークは、長さと直径がほとんど等しくなるため、長さと、直径とを二重にカウントしていると考えられる。
また、図13はミリング前の炭素繊維の透過型電子顕微鏡写真であり、図14、図15、図16及び図17はミリングを開始して、それぞれ2時間経過後、5時間経過後、10時間経過後及び24時間経過後の炭素繊維の透過型電子顕微鏡写真である。ミリング前の炭素繊維は数十μmの長さの炭素繊維が絡まり合っていて、嵩密度が極めて低いものになっているのに対し、ミリング時間が経過するにつれて線長が短くなり、24時間経過後はほとんど粒子状となっていることがわかる。また、24時間経過後は繊維の絡まりはほとんどみられず、嵩密度の高いものになる。
また、図18はミリング中に炭素繊維が分断される状態を示す透過型電子顕微鏡写真であり、図19、図20は図18に示す透過型電子顕微鏡写真の拡大図である。これらの図から、炭素繊維の分断は、繊維が折れるのではなく、底部を有さないカップ形状をなす炭素網層が抜け出すことによってなされることがわかる。
次に、図21は、上記のようにして、底のないカップ形状をなす炭素網層が数十個積層した状態に長さが調整された、炭素繊維の透過型電子顕微鏡写真である。該炭素繊維は、長さおよび直径が約60nmで、肉厚の薄い、空洞部の大きなチューブ状、すなわち節の無い中空状をなし、また中空部の外表面側および内表面側の炭素網層の端面が露出している。このように、底のないカップ形状をなす炭素網層が抜け出すようにして、分離され、炭素網層の形状が壊されていないことがわかる。尚、ミリングの条件によって任意の長さの炭素繊維に調整することができ、上述した本発明の好適な範囲の直径及び長さとすることが好ましい。
尚、通常の、同心円状をなすカーボンナノチューブをグラインディングすると、チューブが割れ、外表面に軸方向に亀裂が生じたり、ささくれ立ちが生じ、また、いわゆる芯が抜けたような状態が生じ、長さの調整は困難である。
次に本発明で用いられるゴムとしては、天然ゴム、汎用合成ゴム、例えば、乳化重合スチレン−ブタジエンゴム、溶液重合スチレン−ブタジエンゴム、高シス−1,4ポリブタジエンゴム、低シス−1,4ポリブタジエンゴム、高シス−1,4ポリイソプレンゴム等、ジエン系特殊ゴム、例えば、ニトリルゴム、水添ニトリルゴム、クロロプレンゴム等、オレフィン系特殊ゴム、例えば、エチレン−プロピレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン等、その他特殊ゴム、例えば、ヒドリンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム、ウレタンゴム等を挙げることができる。コストと性能とのバランスから、好ましくは、天然ゴムまたは汎用合成ゴムである。
本発明に係るゴム組成物は、イオウ、過酸化物、金属酸化物等を添加して加熱により架橋させる方法や、光重合開始剤を添加して光照射により架橋させる方法及び電子線や放射線を照射して架橋させる方法等により、加硫して使用することが好ましい。
本発明のゴム組成物は、ゴム100質量部に上記炭素繊維0.1〜100質量部を配合するものである。該炭素繊維の配合量がこの範囲内であると、十分な熱伝導性を得ることができるとともに、混合や成型等における作業性が良好となる。また、同様の観点から該炭素繊維の配合量は0.5〜50質量部の範囲であることがさらに好ましい。
本発明の組成物においては、上記炭素繊維以外にカーボンブラック及び/または無機充填材、その他の各種充填材を1〜60質量部、特には1〜40質量部配合することが好適である。ゴム組成物中にこれらの充填材が適量配合されていると、上記炭素繊維のみを添加した場合に比してより高い補強効果が得られる。
カーボンブラックとしては特に制限はなく、従来ゴム組成物の補強性充填材として慣用されているものの中から任意のものを選択して使用することができる。具体的には、FEF,SRF,HAF,ISAF,SAF等が挙げられ、ヨウ素吸着量(IA)60mg/g以上で、かつ、ジブチルフタレート吸油量(DBP)80ml/100g以上のものが好ましい。これらの中でも特に、耐摩耗性に優れるHAF,ISAF,SAFが好ましい。
前記無機充填材としては、従来ゴム工業で使用されているものを使用することができ特に限定されず、例えばγ−アルミナ,α−アルミナ等のアルミナ(Al2O3)、ベーマイト,ダイアスポ等のアルミナ一水和物(Al2O3・H2O)、ギブサイト,バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)3]、炭酸アルミニウム(Al2(CO3)3)、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n−1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al2O3)、クレー(Al2O3・2SiO2)、カオリン(Al2O3・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al2O3・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al2O3・4SiO2・2H2O)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5、Al4・3SiO4・5H2O等)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3等)、ケイ酸カルシウム(Ca2・SiO4等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al2O3・CaO・2SiO2等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム(ZrO(OH)2・nH2O)、炭酸ジルコニウム(ZrCO3)、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素,アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩等が挙げられ、これらの中でシリカや窒素吸着比表面積(N2SA)1〜20m2/gの水酸化アルミニウムが好ましく、特にシリカが好ましい。
シリカとしては特に制限はなく、従来ゴムの補強材として慣用されるものの中から任意に選択して使用することができる。例えば湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられるが、中でも沈降法による合成シリカが好ましい。
尚、ゴム組成物の混合、成型などの手法としては、通常のゴムの混合、成型に使用される公知の手法を用いることができ、特に制限はない。
本発明のゴム組成物は、上記炭素繊維を少量配合することによって、他の物性を大きく変化させることなく、また、成型加工性も損なうことなく、熱伝導性の大幅な向上が可能となるために、電気電子部品、タイヤ、ベルト、その他各種製品に幅広く使用することが可能である。尚、本発明のゴム組成物には、ゴム業界で一般に使用されている添加剤、例えば、加硫促進剤、補強材、老化防止剤、軟化剤等、通常のゴム用添加剤を適宜使用することが可能である。
(実施例)
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
[物性評価法]
実施例1〜6及び比較例1で得られるゴムシートについて、熱伝導性を評価した。具体的には、京都電子(株)製、迅速熱伝導率計QTM−500を用いて測定した熱伝導率により評価した。
実施例1
原料にベンゼンを用い、20℃の蒸気圧となる分圧で、水素気流により反応器に流量0.3L/hでチャンバーに送り込んだ。触媒はフェロセンを用い、185℃で気化させ、3×10−7mol/sの濃度でチャンバーに送り込んだ。反応温度は1100℃、反応時間が20分で、直径が約100nmのヘリンボン構造の底部を有さないカップ積層型炭素繊維A(以下「炭素繊維A」という)が得られた。
該炭素繊維A及び各種添加剤を第1表に示す配合内容にて、天然ゴム(NR)に配合し、以下に示す混練り条件およびシート作製条件に従い加硫ゴム組成物のシートを作製した。尚、第1表中の配合量は全て質量部を表す。熱伝導率を第1表に示す。
(1)混練条件
ラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて、天然ゴム(NR)を70℃にて50rpmで3分間素練りした後、第1表に示す、加硫促進剤および硫黄を除く各添加剤を投入して、70℃にて50rpmで更に混合した(ノンプロ配合)。得られた混合物を取り出して、冷却、秤量した後、残りの加硫促進剤および硫黄を投入し、プラベンダーを用いて、50℃にて50rpmで再度混合した(プロ配合)。
(2)シート作製条件
混練りした混合物を高温プレスを用いて150℃×15分にて加硫して、1mm厚の加硫ゴムシートを作製した。
実施例2
炭素繊維A及び各種添加剤を第1表に示す配合内容で配合した以外は実施例1と同様にして加硫ゴム組成物のシートを作製した。評価結果を第1表に示す。
実施例3
実施例1の炭素繊維において、あらかじめ絡み合いをほぐした底部を有しないカップ積層型炭素繊維(以下「炭素繊維B」という)を用いた以外は実施例1と同様にして加硫ゴム組成物のシートを作製した。評価結果を第1表に示す。
実施例4
炭素繊維B及び各種添加剤を第1表に示す配合内容で配合した以外は実施例1と同様にして加硫ゴム組成物のシートを作製した。評価結果を第1表に示す。
実施例5及び6
炭素繊維Aを上述の分断工程によって、50〜200nm、長さ0.05〜10μmの底部を有しないカップ積層型炭素繊維C(以下「炭素繊維C」という)を得た。炭素繊維C及び各種添加剤を第1表に示す配合内容で配合した以外は実施例1と同様にして加硫ゴム組成物のシートを作製した。評価結果を第1表に示す。
比較例1
炭素繊維を含有せず各種添加剤を第1表に示す配合内容で配合した以外は実施例1と同様にして加硫ゴム組成物のシートを作製した。評価結果を第1表に示す。
*1炭素繊維A;直径50〜200nm、長さ5〜200μm
*2炭素繊維B;直径50〜200nm、長さ5〜200μm、あらかじめ絡み合いをほぐしたもの
*3炭素繊維C;直径50〜200nm、長さ0.05〜10μm
本発明に係る気相成長法による炭素繊維では、外周部に積層したカップの大口径部の炭素網層の端面が露出しているので、該端面の活性度が高く、ゴム等のゴム組成物との密着性に優れ、ゴム組成物の好適な材料となる。また、底部を有さないカップ形状をなす、ヘリンボン構造の傾斜した炭素網層の端面を、層状に露出させることにより、この露出した炭素網層の端面(六員環端)をきわめて活性度の高いものとすることができる。このためゴムとの密着性に優れ、その結果として、熱伝導性に優れるゴム組成物の材料を提供することができる。さらに堆積層が除去され、炭素網層の端面が層状に露出された表面は、各層の端面が不揃いで、原子の大きさレベルでの凹凸を呈しており、このことがまたゴム等のゴム組成品に対するアンカー効果となり、ゴムとの密着性が一層優れ、熱伝導的に極めて優れたゴム組成物が提供される。
本発明のゴム組成物によれば、少量の添加であっても、他の諸物性を大きく変化させることなく、また、成型加工性を損なうこともなく、熱伝導性の大幅な向上効果を得ることができる。従って、本発明の加硫ゴム組成物は、電気電子部品、タイヤ、ベルト、その他各種製品に幅広く使用することが可能であり、特にタイヤに使用した場合には、その放熱効果により発熱を抑制することが可能となり好適である。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明に係る底部を有さないカップ形状をなす炭素網層が複数個積層した気相成長法による炭素繊維を示す模式図である。
図2は、実施例1に基づいて気相成長法によって製造したヘリンボン構造の炭素繊維の透過型電子顕微鏡写真である。
図3は、図2の拡大図である。
図4は、図3の模式図である。
図5は、図2に示す炭素繊維を約530℃の温度で、大気中1時間熱処理したヘリンボン構造の炭素繊維の透過型電子顕微鏡写真である。
図6は、図5の拡大図である。
図7は、図6の拡大図である。
図8は、図7の模式図である。
図9は、ヘリンボン構造の炭素繊維(試料名;Pristine 24PS)を大気中で、1時間、それぞれ500℃、520℃、530℃、540℃で熱処理した後の、炭素繊維のラマンスペクトルである。
図10は、熱処理前の外径の異なるヘリンボン構造を有する炭素繊維のラマンスペクトルであり、Pristine 19PSは平均外径150nm、Pristine 24PSは平均外径100nmである。
図11は、Pristine 19PS及びPristine 24PSを3000℃で通常の黒鉛化処理をした後のラマンスペクトルである。
図12は、ボールミリングでグラインディングした際の、経過時間毎の炭素繊維長の分布を示すグラフである。
図13は、ボールミリング開始前の炭素繊維の電子顕微鏡写真である。
図14は、ボールミリング開始2時間後の炭素繊維の電子顕微鏡写真である。
図15は、ボールミリング開始5時間後の炭素繊維の電子顕微鏡写真である。
図16は、ボールミリング開始10時間後の炭素繊維の電子顕微鏡写真である。
図17は、ボールミリング開始24時間後の炭素繊維の電子顕微鏡写真である。
図18は、ボールミリング中、カップ状をなす炭素網層が離脱し始めている状態を示す透過型電子顕微鏡写真である。
図19は、図18の拡大図である。
図20は、図19の拡大図である。
図21は、底部を有さないカップ形状をなす炭素網層が数十個積層された炭素繊維に分離された状態を示す透過型電子顕微鏡写真である。
(符号の説明)
1:底部
2:外周部に積層したカップの大口径部の炭素網層の端面
3:炭素繊維の中空部の外表面
4:炭素繊維の中空部の内表面
10:炭素網層
12:堆積層
14:中心孔
16:原子レベルの大きさの凹凸
Claims (13)
- ゴム100質量部に、充填材として底部を有さないカップ形状をなす炭素網層1個以上からなる気相成長法による炭素繊維0.1〜100質量部を配合してなるゴム組成物であって、該炭素繊維の外周部に積層したカップの大口径部の炭素網層の端面が露出していることを特徴とするゴム組成物。
- 前記充填材が底部を有さないカップ形状をなす炭素網層が複数個積層した気相成長法による炭素繊維であることを特徴とする請求項1記載のゴム組成物。
- 前記炭素繊維が、節の無い中空状をなすことを特徴とする請求項2記載のゴム組成物。
- 前記中空状をなす炭素繊維の中空部の外表面側および内表面側の炭素網層の端面が露出していることを特徴とする請求項3記載のゴム組成物。
- 前記中空部の外表面側における炭素網層の端面の2%以上が露出していることを特徴とする請求項4記載のゴム組成物。
- 前記炭素網層の端面の露出している表面の部位が、原子レベルの大きさの凹凸を呈していることを特徴とする請求項4または5記載のゴム組成物。
- 前記炭素網層が2500℃以上の高温で熱処理しても、黒鉛化しないことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のゴム組成物。
- 前記炭素繊維の直径が1〜1000nm、長さが0.1〜1000μmである請求項1〜7のいずれかに記載のゴム組成物。
- 前記炭素繊維の直径が5〜500nm、長さが0.5〜750μmである請求項1〜7のいずれかに記載のゴム組成物。
- 前記炭素繊維の直径が10〜250nm、長さが1〜500μmである請求項1〜7のいずれかに記載のゴム組成物。
- 前記炭素繊維以外の充填材を1〜60質量部配合することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のゴム組成物。
- 前記炭素繊維以外の充填材がカーボンブラックおよび/または無機充填材である請求項11記載のゴム組成物。
- 請求項1〜12のいずれかに記載するゴム組成物を用いたタイヤ。
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