JPWO2003100057A1 - 化学物質センサシステム - Google Patents

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Abstract

本発明は、化学物質(例えば、味覚、嗅覚を生じさせるもの)のレセプターを用いた化学物質センサに関する。より詳細には、そのようなレセプターを細胞中に導入し、その細胞を支持体上に固定することによりチップを構成し、このチップをセンサの部品として利用する。このようなセンサは、生体における嗅覚、味覚などとほぼ同様の反応を示し、解析をすることが可能であることから、人工感覚器官としても利用可能である。このセンサを利用して、診断をすることも可能となったことから、その産業上の利用価値は高い。

Description

技術分野
本発明は、化学物質の解析技術の分野にある。より詳細には、嗅覚レセプターなどの化学物質レセプターをトランスフェクトした細胞を用いる化学物質解析方法およびそのためのシステムに関する。本発明はまた、感覚受容細胞の刺激成分応答性に準じた感覚の評価システム、感覚の評価方法、および目的の感覚を誘起する刺激調合方法に関する。本発明はまた、化学物質レセプター遺伝子、化学物質レセプタータンパク質およびこれらの匂いセンサ開発のための使用に関する。本発明の嗅覚レセプター遺伝子およびタンパク質は、ヒト、動物などの感じる匂いの質と強度と同様な匂いの質と質の構成要素とそれらの強度を計測するセンサシステム,および発生している匂いからその原因成分あるいは刺激成分組成を推定するセンサシステム、および提示したい匂いを有する匂い溶液/ガスを自動的に調合するシステムに利用できる。
背景技術
外来からの刺激を検知することができるセンサの開発は、長年にわたり行われており、物理化学的手法では目を見張る発展がなされてきた。特に、視覚、聴覚に代わるセンサは、かなりの高レベルのものが開発されている。他方、しかし、化学物質を検知することができるセンサの開発は、物理化学的手法を基本としたものがほとんどで、その応用範囲は限られており、感度も再現性も高くない。
従来、化学物質の代表例として特定の匂い種に相対感度が高いセンサ材料は開発されておらず、また、脳で感じられる匂いの質と強度を評価できる匂いセンサは開発されていなかった。
ヒトが、匂い(臭い、ニオイ、におい)を感じる対象は、空気中に存在する分子状の化学物質であり、嗅覚受容細胞が、分子構造の違いに基づいて匂い分子(匂いを呈する分子)を区別した応答をすることによって、ヒトはわずかな分子構造の違いによっても異なる匂いを感じることができる。
嗅覚の受容器である嗅覚受容細胞(嗅細胞)は、鼻の奥の嗅粘膜に密集して並ぶ双極性の神経細胞であり、この嗅細胞に、嗅覚レセプターと呼ばれる匂い分子に反応する匂い受容タンパク質が高密度に存在している。嗅細胞では、刺激発生源から空気中などを拡散してくる化学物質を嗅覚レセプターによって検出し、神経信号に変換する。この神経信号が、嗅細胞から嗅球(僧帽細胞あるいは房飾細胞)、梨状皮質(錐体細胞)などの嗅皮質を介して、脳に伝達されることによって、ヒトは匂いを感じる。
ヒトが感じる匂いを定性的に表現するには、「匂いの質」と呼ばれる言葉、例えば、アロマティック、樟脳様、柑橘系果実様、草様、薬品様、甘い、重い、等の言葉が使用される。
例えば、光学異性体の関係にあるR(−)carvone(アールカルヴォン)およびS(+)carvone(エスカルヴォン)は、sweet(甘い)、herbal(草様)、fresh(フレッシュ)などの共通する匂いの質を誘起するだけでなく、各々異なる匂いの質をも誘起し、R(−)carvoneはsparemint(スペアミント)特有の匂いの質を、S(+)carvoneはcaraway(キャラウェイ様)特有の匂いの質を誘起する。
装置によって匂いを検出する場合、従来の技術では、空気に含まれる匂い物質を識別特異性が低くその特性の相違も小さな複数種のセンサを並べ、これらのセンサを匂い物質の環境中に置き(本明細書以下、呈示とも称する)、一定の時間を経てセンサ出力がある程度大きくなった時点の各センサ間の出力値を比較することにより、あるいは、その初期の応答の立ち上がりの相違の刺激依存性の比較解析を行うことにより、刺激の組成の違いを評価していた(例えば匂い物質に対しては,Nature,1982年,299巻,352−355;日経サイエンス,1991年10月号,68−76;T.IEE Japan,1993年,113巻C,621−626、特許2647798など)。
また、生物の生存は、味覚、嗅覚などを含む細胞外シグナルを認知し、そしてその細胞外シグナルに応答するそれらの能力に依存する。分子レベルにおいて、シグナルは、細胞のホメオスタシスを維持するように協同して作用し、そして増殖、分裂および分化のような活性を調節する相互作用タンパク質のネットワークを介して、認知され、そして伝達される。生物学的シグナル伝達ネットワークを通した情報伝達は、主に、シグナルに応答して動的に集合および分解し得るタンパク質−タンパク質相互作用によって媒介され、外部事象を遺伝子発現における変化のような特定の結果に連結させる一過性の回路を作製する。しかし、このようなネットワークを利用した例はまだない。
アレイ技術の進展により、種々のアッセイにおける利用が開発されつつある。最近有望となりつつ技術として、相補的な手段として、高密度トランスフェクションアレイすなわち細胞アレイの使用が提唱されている。しかし、細胞を利用したアレイの応用はまだまだ限界があり、ましてや、細胞を利用したセンサの開発への応用は全くなされていない。
従って、本発明の課題(object)は、化学物質を検知するための方法、システム、構成、デバイスおよび構成要素ならびにそれらに使用するプログラム、制御法および遺伝子などを提供することを課題とする。詳細には、特に、細胞に化学物質レセプターを発現させたシステムを構築し、そのシグナルを測定および/または分析することによって、化学物質に関する情報を効率よくかつ再現性よく提供することを1つの課題とする。
従来の方法による匂い物質などの化学物質の評価では、検出信号のセンサ種別プロフィール(例えば、匂い物質に対する出力信号波形)の相違により刺激中の匂い分子の組成が異なることは予測できても、そのプロフィールからヒトの嗅感覚を特定することはできなかった。これは、機器でのセンサ種別の信号をヒトの嗅覚で匂いを識別するために用いられている匂い成分情報に対応付けられていなかったことが原因となっている。
匂い溶液/ガスの調合に関しては、例えば、特許第2741749号公報には擬似匂い発生方法、その発生装置および擬似匂い発生媒体が開示されているが、従来は、上記に示した検出系の問題により、嗅覚機能との整合性が取れたものとして具体的な匂いに対して自動的に調合することはできなかった。
味覚など他の感覚についても同様に脳で感じられる感覚をセンサ出力から推定できる方法は開発されていなかった。
本発明の別の課題は、センサの出力信号から、匂い、味覚などのヒトが感じる感覚を表わす感覚要素の定性・定量評価を可能とする感覚評価システム、感覚評価方法、および所望の感覚の質を再現可能な刺激調合方法を提供することにある。
発明の要旨
上記課題は、化学物質レセプターをコードする核酸分子を細胞に導入し、発現することができる系をセンサに組み込むことによって解決された。
本発明は、1つの局面では、嗅覚レセプターのような化学物質レセプターが炭素原子1つ違うだけの匂い分子の長さを濃度依存的かつ比較的高い選択性を持って識別できる優れた性能を有している一方で、工学的に同様の高識別能を有するセンサ材料が開発できていない問題を、嗅覚レセプターを直接利用することにより解決しようとするものである。本発明では、例えば、特定の匂いの質に対して最も感度が高くなる嗅覚レセプターを用い、スペアミント臭、キャラウェイ臭、ミント臭、甘い香などの匂いを選択的に識別しようとすることを目的とする。
本発明者らは、嗅覚における匂い識別の仕組みについて鋭意研究を重ねた結果、嗅覚で匂いを識別するために用いられている基本原理を見い出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。生体で行われている嗅覚情報処理に準じた匂いの定性および定量的な処理を行うことによって、ヒト、動物などが感じる嗅感覚を表現することが可能となる。これは、視覚とビデオカメラ/テレビの関係にその類似例を見ることができることからも、生体の仕組みを模倣した方法は感覚量の識別および定量のために適切な方法と考える。
本発明のこの局面に関し基本概念を嗅覚を例として以下に説明する。匂い分子は生体で識別されている分子の中では最も分子量の小さいグループを形成し、識別の難しい対象となっている。マウスでは、約1,000種のアミノ酸配列の異なる嗅覚レセプターが匂い物質を識別して発生した信号群を処理することにより様々な匂いを識別することが可能となる。ヒトでは、マウスの嗅覚レセプターと共通して機能していると考えられる約347種の嗅覚レセプターによって生じる応答プロフィールに基づいて匂いの識別が行われていると現状では信じられている。
嗅覚レセプターでは、匂い分子構造を複数の部分(本明細書以下、分子間相互作用部位(サイト)とも称する)の3次元的配置に基づいて匂い分子を識別すると推定されることから、共通の分子構造を部分的に有する匂い分子Aと匂い分子Bとは、ある嗅覚レセプターでは識別できても、別の嗅覚レセプターでは識別できないということが生じる。
また、嗅覚レセプターは、低濃度では匂い分子Aおよび匂い分子Bのどちらか一方にしか応答しなくても、刺激濃度が上昇すると両者に同様に大きな応答を示すようになる。構造の非常によく似た2種の匂い分子を応答の有無で識別できる刺激濃度範囲の幅は1〜2桁という場合も少なくない。
嗅覚においては、このような嗅覚レセプターの特異性の僅かな違いを明確に区別して処理するために、第2次嗅覚中枢である梨状皮質が、相対的に弱い嗅覚レセプターの信号を抑制しながら、ある程度強い信号として送られてくる嗅覚レセプターの信号を選択的に積分加算するという、フィルターおよび加算器として機能していることが明らかになった。即ち、本発明者が行った実験によって、応答の初期に梨状皮質に到達し、梨状皮質で匂いの質を表現する役割を担っている単一神経細胞を最初に興奮させる単独あるいは組合せ加算された嗅覚レセプターの信号がそれ以降に到達する信号を抑制し、それらの信号が加算される際の寄与率を低下させていることを示す結果が得られた。感度の高い嗅覚レセプターの信号が中枢に最初に入力される信号になることは、特許2647798号公報でも利用されているが、これが単独あるいは他のセンサの信号と組合せ加算された信号として、他の信号に対して梨状皮質で抑制性に機能することは、新たに得られた研究成果である。この知見に従えば、2番目以降に、あるいは複数のセンサからの信号を加算した信号により梨状皮質の匂いの質を表現する役割を担う任意の神経細胞を最初に興奮させた以降に、中枢に信号を送り始める感度の低いセンサ(嗅覚レセプター)からの信号は、それ以前に信号の送り出しを開始していた感度の高いセンサからのその時点での信号強度に依存して、約1/2〜1/10等の適当な係数をかけられて減少された後、加算されることが望ましい。この信号の加算は、共通の匂いの質を有する匂い分子に対してある程度以上の感度を有するものを使用して、それぞれの匂いの質毎に行う。多くの場合、1種類のセンサの信号が複数の匂いの質に異なる寄与率で加算されることになる。さらに、梨状皮質で匂いの質を表現する役割を担う神経細胞が新たに神経興奮する度に他の神経細胞に入力される信号を減少させる程度を増大させて、特徴的な匂いの質の形成を促すことになる。
従って、本発明の目的は、以下の手段によって達成される。
(1)化学物質センサであって、
a)化学物質レセプター遺伝子をコードする配列を含む、核酸分子;
b)上記核酸分子が導入された細胞が配置された支持体;
c)上記化学物質レセプターに起因するシグナルを測定する手段;および
d)測定された上記シグナルの強度から、上記化学物質レセプターの活性化度を算出し、化学物質に関する情報を提供する手段、
を備える、センサ。
(2)上記核酸分子は、マーカー遺伝子をコードする配列をさらに含む、項目1に記載のセンサ。
(3)上記化学物質レセプターは、核内レセプター、細胞質レセプターおよび細胞膜レセプターからなる群より選択されるレセプターを含む、項目1に記載のセンサ。
(4)上記化学物質レセプターは、Gタンパク質共役型レセプター、キナーゼ型レセプター、イオンチャネル型レセプター、核内レセプター、ホルモンレセプター、ケモカインレセプターおよびサイトカインレセプターからなる群より選択されるレセプターを含む、項目1に記載のセンサ。
(5)上記化学物質レセプターは、嗅覚レセプターを含む、項目1に記載のセンサ。
(6)上記化学物質レセプター遺伝子は、レチノイン酸レセプター、EGFレセプター、インターロイキンレセプターおよびCSFレセプターからなる群より選択されるレセプターを含む、項目1に記載のセンサ。
(7)上記化学物質レセプター遺伝子は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94および96からなる群より選択される核酸配列またはその改変体もしくはフラグメントを含む、項目1に記載のセンサ。
(8)上記化学物質レセプター遺伝子は、少なくとも約2種類含まれる、項目1に記載のセンサ。
(9)上記化学物質レセプター遺伝子は、少なくとも約10種類含まれる、項目1に記載のセンサ。
(10)上記化学物質レセプター遺伝子は、少なくとも約20種類含まれる、項目1に記載のセンサ。
(11)上記化学物質レセプター遺伝子は、少なくとも約300種類含まれる、項目1に記載のセンサ。
(12)上記化学物質レセプター遺伝子は、マウス、ヒト、ラット、イヌおよびネコから選択される動物が有する実質的にすべての種類が含まれる、項目1に記載のセンサ。
(13)上記化学物質レセプター遺伝子は、マウス、ヒト、ラット、イヌおよびネコから選択される動物が有する実質的にすべての種類の嗅覚レセプター遺伝子が含まれる、項目1に記載のセンサ。
(14)上記マーカー遺伝子は、Gタンパク質、上記化学物質レセプター自体またはアレスチンを含む、項目2に記載のセンサ。
(15)上記マーカー遺伝子は、Gα遺伝子を含む、項目2に記載のセンサ。
(16)上記マーカー遺伝子は、Gα15、GαqまたはGαolfを含む、項目2に記載のセンサ。
(17)上記マーカー遺伝子は、Gα遺伝子、Gβ遺伝子およびGγ遺伝子を含む、項目2に記載のセンサ。
(18)上記支持体は、固相支持体を含む、項目1に記載のセンサ。
(19)上記支持体は、コーティングされているかまたはされていない、ガラス、シリコン、シリカ、ポリスチレンおよびポリマーフィルムからなる群より選択される材料を含む、項目1に記載のセンサ。
(20)上記シグナルは、細胞内カルシウム濃度、イノシトール三リン酸、サイクリックAMP、ジアシルグリセロール、サイクリックGMPおよび細胞膜電位からなる群より選択される因子を含む、項目1に記載のセンサ。
(21)上記シグナルは、細胞内カルシウム濃度であり、上記シグナル測定手段は、カルシウム濃度を電気的、化学的または生物学的に測定する手段を含む、項目1に記載のセンサ。
(22)上記マーカー遺伝子は、上記細胞にもともと存在する遺伝子とは異なる、項目2に記載のセンサ。
(23)上記細胞は、HEK293細胞、CHO、COS−7、神経芽細胞腫およびNG108−15からなる群より選択される細胞を含む、項目1に記載のセンサ。
(24)上記細胞は、実質的に1種類の細胞を含む、項目1に記載のセンサ。
(25)上記嗅覚レセプター遺伝子は、上記細胞にもともと存在する遺伝子とは異なる、項目1に記載のセンサ。
(26)上記支持体は、細胞接着分子を含む、項目1に記載のセンサ。
(27)上記細胞接着分子は、フィブロネクチン、ビトロネクチンもしくはラミニンまたはそのフラグメントもしくは改変体を含む、項目16に記載のセンサ。
(28)上記支持体上の核酸分子または細胞はアレイ化される、項目1に記載のセンサ。
(29)上記アレイ化された領域は、約200mm以下の面積を有する、項目28に記載のセンサ。
(30)上記アレイ化された領域は、長手方向が約15mm以下である、項目28に記載のセンサ。
(31)上記細胞を覆うに十分な液体をさらに含む、項目1に記載のセンサ。
(32)細胞を維持するための培地を含む、項目1に記載のセンサ。
(33)上記培地は液体培地である、項目32に記載のセンサ。
(34)上記d)情報提供手段は、
d−1)化学物質レセプターを有する細胞の刺激成分応答特異性に準じた刺激種分類法を用いて、予め指定された複数の上記センサが出力する第1の信号を加算し、感覚を表現する感覚要素の値を算出し、上記算出結果を第2の信号として出力する信号処理部;および
d−2))上記信号処理部から出力される上記第2の信号を用いて感覚の定性評価および/または定量評価を行う評価部、
を備える、項目1に記載のセンサ。
(35)上記刺激種分類法は、上記化学物質レセプターの種類に応じて分類することを特徴とする、項目34に記載のセンサ。
(36)上記信号処理部は、複数の上記センサから出力される第1の信号の中の1つが所定の値を超えた場合、上記センサ以外のセンサから出力される第1の信号を減少させ、上記減少された信号を上記第2の信号の生成に使用することを特徴とする、項目34に記載のセンサ。
(37)上記信号処理部は、
感覚要素に対応した複数対の選択部および加算部と、
上記センサの各々に対応した複数の増幅部と、
上記増幅部を制御する係数算出部とを備え、
上記選択部は、複数の上記第1の信号に、上記センサの各々に応じて指定された係数を乗じ、複数の第3の信号を生成し、
上記加算部は、対応する上記選択部から出力される複数の上記第3の信号を加算して第4の信号を生成し、
上記係数算出部は、複数の上記第4の信号の中から最大値を検出し、上記最大値を用いて各々の上記第4の信号を規格化して制御信号を算出し、
上記増幅部は、対応する上記制御信号を用いて感覚要素の強度に対応する上記第2の信号を生成することを特徴とする、
項目34に記載のセンサ。
(38)刺激の呈示を受けた場合、上記センサから出力される上記第1の信号が、無刺激で応答していない状態をゼロレベルとして、ゼロレベルから上記刺激強度または刺激の濃度に応じた所定値に向かって過渡的に立ち上がり、
これに伴って上記第3の信号が、ゼロレベルから上記刺激強度または刺激の濃度に応じた所定値に向かって過渡的に立ち上がり、
上記係数算出部は、上記第1の信号のいずれかが上記センサが刺激に応答して出力した信号であると判断した最初の時をセンサ応答開始基準時刻とし、
上記基準時刻からの経過時間として指定された所定時刻において、上記所定時刻における上記第3の信号を用いて上記増幅部を制御する上記制御信号を算出し、
次に指定された所定時刻に制御信号を算出するまでは、最後に算出した上記制御信号を用いて上記増幅部を制御することを特徴とする、
項目37に記載のセンサ。
(39)刺激の呈示を受けた場合、上記センサから出力される上記第1の信号が、無刺激で応答していない状態をゼロレベルとして、ゼロレベルから上記刺激強度または刺激の濃度に応じた所定値に向かって過渡的に立ち上がり、
これに伴って上記第3の信号が、ゼロレベルから上記刺激強度または刺激の濃度に応じた所定値に向かって過渡的に立ち上がり、
上記係数算出部は、上記第1の信号のいずれかが上記センサが刺激に応答して出力した信号であると判断した最初の時をセンサ応答開始基準時刻とし、
複数の上記第3の信号の中の所定数以上の信号が増加から減少に転じるまでの間において、
上記第3の信号が、対応する感覚要素として有意な出力値を発生し始めたと判断された時、および上記第3の信号が、上記有意な出力値と上記第3の信号に対して予め設定された最大出力値との間を複数の区間に区分する複数の境界値に達したと判断された時毎に、その時の第3の信号を用いて上記増幅部を制御する上記制御信号を算出し、
次に制御信号を算出する時までは、最後に算出した上記制御信号を用いて上記増幅部を制御することを特徴とする、
項目34に記載のセンサ。
(40)化学物質センサにおいて使用するためのチップであって、
a)化学物質レセプター遺伝子をコードする塩基配列を含む、核酸分子;および
b)上記核酸分子が導入された細胞が配置された支持体、
を備える、チップ。
(41)上記核酸分子は、マーカー遺伝子をコードする配列をさらに含む、項目40に記載のチップ。
(42)上記化学物質レセプター遺伝子に起因するシグナルを伝達する手段をさらに備える、項目40に記載のチップ。
(43)上記化学物質レセプターは、核内レセプター、細胞質レセプターおよび細胞膜レセプターからなる群より選択されるレセプターを含む、項目40に記載のチップ。
(44)上記化学物質レセプターは、Gタンパク質共役型レセプター、キナーゼ型レセプター、イオンチャネル型レセプター、核内レセプター、ホルモンレセプター、ケモカインレセプターおよびサイトカインレセプターからなる群より選択されるレセプターを含む、項目40に記載のチップ。
(45)上記化学物質レセプターは、嗅覚レセプターを含む、項目40に記載のチップ。
(46)上記化学物質レセプター遺伝子は、レチノイン酸レセプター、EGFレセプター、インターロイキンレセプターおよびCSFレセプターからなる群より選択されるレセプターを含む、項目40に記載のチップ。
(47)上記化学物質レセプター遺伝子は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94および96からなる群より選択される核酸配列またはその改変体もしくはフラグメントを含む、項目40に記載のチップ。
(48)上記化学物質レセプター遺伝子は、少なくとも約2種類含まれる、項目40に記載のチップ。
(49)上記化学物質レセプター遺伝子は、少なくとも約10種類含まれる、項目40に記載のチップ。
(50)上記化学物質レセプター遺伝子は、少なくとも約20種類含まれる、項目40に記載のチップ。
(51)上記化学物質レセプター遺伝子は、少なくとも約300種類含まれる、項目40に記載のチップ。
(52)上記化学物質レセプター遺伝子は、マウス、ヒト、ラット、イヌおよびネコから選択される動物が有するすべての種類が含まれる、項目40に記載のチップ。
(53)上記化学物質レセプター遺伝子は、マウス、ヒト、ラット、イヌおよびネコから選択される動物が有するすべての種類の嗅覚レセプター遺伝子が含まれる、項目40に記載のチップ。
(54)上記マーカー遺伝子は、Gタンパク質、上記化学物質レセプター自体またはアレスチンを含む、項目41に記載のチップ。
(55)上記マーカー遺伝子は、Gα遺伝子を含む、項目41に記載のチップ。
(56)上記マーカー遺伝子は、Gα15、GαqまたはGαolfを含む、項目41に記載のチップ。
(57)上記マーカー遺伝子は、Gα遺伝子、Gβ遺伝子およびGγ遺伝子を含む、項目41に記載のチップ。
(58)上記支持体は、固相支持体を含む、項目40に記載のチップ。
(59)上記支持体は、コーティングされているかまたはされていない、ガラス、シリコン、シリカ、ポリスチレンおよびポリマーフィルムからなる群より選択される材料を含む、項目40に記載のチップ。
(61)上記マーカー遺伝子が生成するシグナルは、細胞内カルシウム濃度、イノシトール三リン酸、サイクリックAMP、ジアシルグリセロール、サイクリックGMPおよび細胞膜電位からなる群より選択される因子を含む、項目40に記載のチップ。
(62)上記マーカー遺伝子は、上記細胞にもともと存在する遺伝子とは異なる、項目41に記載のチップ。
(63)上記細胞は、HEK293細胞、CHO、COS−7、神経芽細胞腫およびNG108−15からなる群より選択される細胞を含む、項目40に記載のチップ。
(64)上記支持体は、上記マーカーに起因するシグナルを伝達するための接続点を含む、項目40に記載のチップ。
(65)上記支持体は、電気信号、化学的信号および生物学的信号からなる群より選択される少なくとも1つの信号を伝達し得る接続点を含む、項目40に記載のチップ。
(66)上記嗅覚レセプター遺伝子は、上記細胞にもともと存在する遺伝子とは異なる、項目40に記載のチップ。
(67)上記支持体は、細胞接着分子を含む、項目40に記載のチップ。
(68)上記細胞接着分子は、フィブロネクチン、ビトロネクチンもしくはラミニンまたはそのフラグメントもしくは改変体を含む、項目67に記載のチップ。
(69)上記支持体上の核酸分子または細胞はアレイ化される、項目40に記載のチップ。
(70)上記アレイ化領域は、約200mm以下の面積を有する、項目69に記載のチップ。
(71)上記?アレイ化領域は、長手方向が約15mm以下である、項目69に記載のチップ。
(72)上記細胞を覆うに十分な液体をさらに含む、項目40に記載のチップ。
(73)細胞を維持するための培地を含む、項目40に記載のチップ。
(74)上記培地は液体培地である、項目73に記載のチップ。
(75)試料中の化学物質に関する情報を得るための方法であって、
A)化学物質レセプター遺伝子をコードする配列を含む、核酸分子が導入された、細胞を提供する工程;
B)上記細胞に目的となる化学物質を含むかまたは含むと予想される試料を提供する工程;
C)上記細胞中の上記化学物質レセプター遺伝子に起因するシグナルの上記化学物質による変化を測定する工程;および
D)測定された上記シグナルの強度変化から、上記化学物質レセプターの活性化度を算出し、化学物質の情報を提供する工程、
を包含する、方法。
(76)上記核酸分子は、マーカー遺伝子をコードする配列をさらに含む、項目75に記載の方法。
(77)上記化学物質は、嗅覚源である、項目75に記載の方法。
(78)上記化学物質レセプター遺伝子は、嗅覚物質レセプターを含む、項目75に記載の方法。
(79)上記化学物質レセプター遺伝子は、少なくとも約2種類含まれる、項目75に記載の方法。
(80)上記化学物質レセプター遺伝子は、少なくとも約10種類含まれる、項目75に記載の方法。
(81)上記化学物質レセプター遺伝子は、少なくとも約20種類含まれる、項目75に記載の方法。
(82)上記化学物質レセプター遺伝子は、少なくとも約300種類含まれる、項目75に記載の方法。
(83)上記化学物質レセプター遺伝子は、マウス、ヒト、ラット、イヌおよびネコから選択される動物が有するすべての種類が含まれる、項目75に記載の方法。
(84)上記マーカー遺伝子は、Gタンパク質を含む、項目76に記載の方法。
(85)上記マーカー遺伝子は、Gα遺伝子、上記化学物質レセプター自体またはアレスチンを含む、項目76に記載の方法。
(85)上記マーカー遺伝子は、Gα15、GαqまたはGαolfを含む、項目76に記載の方法。
(86)上記マーカー遺伝子は、Gα遺伝子、Gβ遺伝子およびGγ遺伝子を含む、項目69に記載の方法。
(87)上記細胞は、支持体に固定される、項目75に記載の方法。
(88)上記支持体は、固相支持体を含む、項目75に記載の方法。
(89)上記支持体は、コーティングされているかまたはされていない、ガラス、シリコン、シリカ、ポリスチレンおよびポリマーフィルムからなる群より選択される材料を含む、項目75に記載の方法。
(90)上記マーカー遺伝子が生成するシグナルは、細胞内カルシウム濃度、イノシトール三リン酸、サイクリックAMP、ジアシルグリセロール、サイクリックGMPおよび細胞膜電位からなる群より選択される因子を含む、項目75に記載の方法。
(91)上記マーカー遺伝子は、上記細胞にもともと存在する遺伝子とは異なる、項目76に記載の方法。
(92)上記細胞は、HEK293細胞、CHO、COS−7、神経芽細胞腫およびNG108−15からなる群より選択される細胞を含む、項目75に記載の方法。
(93)上記嗅覚レセプター遺伝子は、上記細胞にもともと存在する遺伝子とは異なる、項目75に記載の方法。
(94)上記支持体は、細胞接着分子を含む、項目75に記載の方法。
(95)上記細胞接着分子は、フィブロネクチン、ビトロネクチンもしくはラミニンまたはそのフラグメントもしくは改変体を含む、項目94に記載の方法。
(96)上記シグナルに関する情報は、細胞内カルシウム濃度、イノシトール三リン酸、サイクリックAMP、ジアシルグリセロール、サイクリックGMPおよび細胞膜電位からなる群より選択される因子のレベルの変化を包含する、項目75に記載の方法。
(97)上記情報は、リアルタイムで提示される、項目96に記載の方法。
(98)上記工程B)は、約1〜4mm/秒の流速で上記試料を上記細胞に提供する工程を包含する、項目75に記載の方法。
(99)上記工程B)は、約2〜3mm/秒の流速で上記試料を上記細胞に提供する工程を包含する、項目75に記載の方法。
(100)上記細胞は上記細胞を覆うに十分な液体をさらに含み、上記工程B)は、上記試料を上記液体中に提供する工程を包含する、項目75に記載の方法。
(101)上記細胞は上記細胞を維持するための培地をさらに含む、項目75に記載の方法。
(102)上記培地は、液体培地を含む、項目101に記載の方法。
(103)上記支持体上の核酸分子または細胞はアレイ化される、項目75に記載の方法。
(104)上記化学物質の情報と、目的となる化学物質または化学物質を含むと予想される試料に関する情報とを相関づける工程をさらに包含する、項目75に記載の方法。
(105)センサの出力信号を使用して感覚を評価する感覚評価システムであって、
A)外部からの刺激に対して各々異なる応答特性を有する複数のセンサ;
B)化学物質レセプターを有する細胞の刺激成分応答特異性に準じた刺激種分類法を用いて、予め指定された複数の上記センサが出力する第1の信号を加算し、感覚を表現する感覚要素の値を算出し、上記算出結果を第2の信号として出力する信号処理部;および
C)上記信号処理部から出力される上記第2の信号を用いて感覚の定性評価および/または定量評価を行う評価部;
を備える、感覚評価システム。
(106)上記細胞は、上記化学物質レセプターをコードする核酸配列を含む核酸分子によってトランスフェクトされたものである、項目105に記載の感覚評価システム。
(107)上記信号処理部は、複数の上記センサから出力される第1の信号の中の1つが所定の値を超えた場合、上記センサ以外のセンサから出力される第1の信号を減少させ、上記減少された信号を上記第2の信号の生成に使用することを特徴とする項目105に記載の感覚評価システム。
(108)上記信号処理部は、
感覚要素に対応した複数対の選択部および加算部と、
上記センサの各々に対応した複数の増幅部と、
上記増幅部を制御する係数算出部とを備え、
上記選択部は、複数の上記第1の信号に、上記センサの各々に応じて指定された係数を乗じ、複数の第3の信号を生成し、
上記加算部は、対応する上記選択部から出力される複数の上記第3の信号を加算して第4の信号を生成し、
上記係数算出部は、複数の上記第4の信号の中から最大値を検出し、上記最大値を用いて各々の上記第4の信号を規格化して制御信号を算出し、
上記増幅部は、対応する上記制御信号を用いて感覚要素の強度に対応する上記第2の信号を生成することを特徴とする、
項目105に記載の感覚評価システム。
(109)刺激の呈示を受けた場合、上記センサから出力される上記第1の信号が、無刺激で応答していない状態をゼロレベルとして、ゼロレベルから上記刺激強度または刺激の濃度に応じた所定値に向かって過渡的に立ち上がり、
これに伴って上記第3の信号が、ゼロレベルから上記刺激強度または刺激の濃度に応じた所定値に向かって過渡的に立ち上がり、
上記係数算出部は、上記第1の信号のいずれかが上記センサが刺激に応答して出力した信号であると判断した最初の時をセンサ応答開始基準時刻とし、
上記基準時刻からの経過時間として指定された所定時刻において、上記所定時刻における上記第3の信号を用いて上記増幅部を制御する上記制御信号を算出し、
次に指定された所定時刻に制御信号を算出するまでは、最後に算出した上記制御信号を用いて上記増幅部を制御することを特徴とする、
項目108に記載の感覚評価システム。
(110)刺激の呈示を受けた場合、上記センサから出力される上記第1の信号が、無刺激で応答していない状態をゼロレベルとして、ゼロレベルから上記刺激強度または刺激の濃度に応じた所定値に向かって過渡的に立ち上がり、
これに伴って上記第3の信号が、ゼロレベルから上記刺激強度または刺激の濃度に応じた所定値に向かって過渡的に立ち上がり、
上記係数算出部は、上記第1の信号のいずれかが上記センサが刺激に応答して出力した信号であると判断した最初の時をセンサ応答開始基準時刻とし、
複数の上記第3の信号の中の所定数以上の信号が増加から減少に転じるまでの間において、
上記第3の信号が、対応する感覚要素として有意な出力値を発生し始めたと判断された時、および上記第3の信号が、上記有意な出力値と上記第3の信号に対して予め設定された最大出力値との間を複数の区間に区分する複数の境界値に達したと判断された時毎に、その時の第3の信号を用いて上記増幅部を制御する上記制御信号を算出し、
次に制御信号を算出する時までは、最後に算出した上記制御信号を用いて上記増幅部を制御することを特徴とする、
項目108に記載の感覚評価システム。
(111)上記感覚が嗅覚および/または味覚であり、
上記化学物質レセプターは、嗅覚レセプターおよび/または味覚レセプターを含み、
上記センサが嗅覚刺激および/または味覚刺激に対して反応するセンサであることを特徴とする、
項目105に記載の感覚評価システム。
(112)外部からの刺激に対して異なる応答特性を有する複数のセンサと、これらのセンサからの出力信号を処理する信号処理部と、上記信号処理部の出力信号から感覚を評価する感覚評価システムにおいて、
上記信号処理部が、上記センサからの出力信号を、化学物質レセプターを有する細胞の刺激成分応答特異性に準じた刺激種分類法を用いて、予め指定された複数の上記センサが出力する信号を加算し、感覚を表現する感覚要素の値を算出し、上記算出結果を被評価信号として出力する第1工程と、
上記評価部が、上記被評価信号を用いて感覚の定性評価および/または定量評価を行う第2工程とを含むことを特徴とする、
感覚評価方法。
(113)上記細胞は、上記化学物質レセプターをコードする核酸配列を含む核酸分子によってトランスフェクトされたものである、項目112に記載の感覚評価方法。
(114)上記第1工程は、上記信号処理部が、複数の上記センサからの出力信号の中の1つが所定の値を超えた場合、上記センサ以外のセンサからの出力信号を減少させ、上記減少された信号を上記被評価信号の生成に使用する第3工程を含むことを特徴とする項目112に記載の感覚評価方法。
(115)上記信号処理部が、感覚要素に対応した複数対の選択部および加算部と、上記センサの各々に対応した複数の増幅部と、上記増幅部を制御する係数算出部とを備え、
上記第1工程は、
上記選択部が、複数の上記センサからの出力信号に、上記センサの各々に応じて指定された係数を乗じ、複数の信号を生成する第4工程と、
上記加算部が、対応する上記選択部から出力される上記第4工程において生成された信号を加算し、出力信号を生成する第5工程と、
上記係数算出部が、上記第5工程によって生成された信号の中から最大値を検出し、上記最大値を用いて各々の上記第5工程によって生成された信号を規格化して制御信号を算出する第6工程と、
上記増幅部が、対応する上記制御信号を用いて感覚要素の強度に対応する上記被評価信号を生成する第7工程とを含むことを特徴とする、
項目112に記載の感覚評価方法。
(116)刺激の呈示を受けた場合、上記センサの出力信号が、無刺激で応答していない状態をゼロレベルとして、ゼロレベルから上記刺激強度または刺激の濃度に応じた所定値に向かって過渡的に立ち上がる特性を有し、これに伴って上記第4工程によって生成される信号が、ゼロレベルから上記刺激強度または刺激の濃度に応じた所定値に向かって過渡的に立ち上がり、
上記第6工程は、上記係数算出部が、上記センサからの出力信号のいずれかが上記センサが刺激に応答して出力した信号であると判断した最初の時をセンサ応答開始基準時刻とし、上記基準時刻からの経過時間として指定された所定時刻において、上記所定時刻における上記第5工程において生成された信号を用いて上記増幅部を制御する上記制御信号を算出し、次に指定された所定時刻に制御信号を算出するまでは、最後に算出した上記制御信号の出力を維持する第8工程を含むことを特徴とする、
項目114に記載の感覚評価方法。
(117)刺激の呈示を受けた場合、上記センサからの出力信号が、無刺激で応答していない状態をゼロレベルとして、ゼロレベルから上記刺激強度または刺激の濃度に応じた所定値に向かって過渡的に立ち上がる特性を有し、これに伴って上記第4工程によって生成される信号が、ゼロレベルから上記刺激強度または刺激の濃度に応じた所定値に向かって過渡的に立ち上がり、
上記第6工程は、上記係数算出部が、上記センサの出力信号のいずれかが上記センサが刺激に応答して出力した信号であると判断した最初の時をセンサ応答開始基準時刻とし、複数の上記第5工程において生成された信号の中の所定数以上の信号が増加から減少に転じるまでの間において、上記第5工程において生成された信号が、対応する感覚要素として有意な出力値を発生し始めたと判断された時、および上記第5工程において生成された信号が、上記有意な出力値と上記第5工程において生成された信号に対して予め設定された最大出力値との間を複数の区間に区分する複数の境界値に達したと判断された時毎に、その時の上記第5工程において生成された信号を用いて上記増幅部を制御する上記制御信号を算出し、次に制御信号を算出する時までは、最後に算出した上記制御信号の出力を維持する第8工程を含むことを特徴とする、
項目114に記載の感覚評価方法。
(118)上記感覚が嗅覚および/または味覚であり、
上記化学物質レセプターは、嗅覚レセプターおよび/または味覚レセプターを含み、
上記センサが嗅覚刺激および/または味覚刺激に対して反応するセンサであることを特徴とする、
項目112に記載の感覚評価方法。
(119)刺激調合方法であって、上記方法は:
A)センサの出力信号を使用して感覚を評価する感覚評価システムであって、
A−1)外部からの刺激に対して各々異なる応答特性を有する複数のセンサ;
A−2)化学物質レセプターを有する細胞の刺激成分応答特異性に準じた刺激種分類法を用いて、予め指定された複数の上記センサが出力する第1の信号を加算し、感覚を表現する感覚要素の値を算出し、上記算出結果を第2の信号として出力する信号処理部;および
A−3)上記信号処理部から出力される上記第2の信号を用いて感覚の定性評価および/または定量評価を行う評価部;
を備える、感覚評価システム、を用いて所定の刺激を評価する第1工程と、
B)上記第1工程の評価結果と上記感覚評価システムによって得られた要素刺激成分に対する評価結果とを用いて、混合する要素刺激成分と対応する割合とを決定する第2工程と、
C)上記決定された要素刺激成分を上記割合で混合する第3工程と
を含むことを特徴とする刺激調合方法。
(120)上記第3工程によって混合された刺激を上記感覚評価システムを用いて評価する第4工程と、
上記第4工程の評価結果と、上記第1工程の評価結果とを比較して、新たに混合する要素刺激成分と対応する割合とを決定する第5工程と
をさらに含むことを特徴とする、
項目119に記載の刺激調合方法。
(121)外部からの刺激に対して異なる応答特性を有する複数のセンサと、これらのセンサからの出力信号を処理する信号処理部と、上記信号処理部の出力信号から感覚を評価する感覚評価システムにおいて、
コンピュータに以下の処理を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、以下の処理は、
上記信号処理部が、上記センサからの出力信号を、化学物質レセプターを有する細胞の刺激成分応答特異性に準じた刺激種分類法を用いて、予め指定された複数の上記センサが出力する信号を加算し、感覚を表現する感覚要素の値を算出し、上記算出結果を被評価信号として出力する第1手順と、
上記評価部が、上記被評価信号を用いて感覚の定性評価および/または定量評価を行う第2手順とを含む、
記録媒体。
(122)外部からの刺激に対して異なる応答特性を有する複数のセンサと、これらのセンサからの出力信号を処理する信号処理部と、上記信号処理部の出力信号から感覚を評価する感覚評価システムにおいて、
コンピュータに以下の処理を実行させるためのプログラムであって、以下の処理は、
上記信号処理部が、上記センサからの出力信号を、化学物質レセプターを有する細胞の刺激成分応答特異性に準じた刺激種分類法を用いて、予め指定された複数の上記センサが出力する信号を加算し、感覚を表現する感覚要素の値を算出し、上記算出結果を被評価信号として出力する第1手順と、
上記評価部が、上記被評価信号を用いて感覚の定性評価および/または定量評価を行う第2手順とを含む、
プログラム。
別の局面において、本発明者は、嗅覚の匂い識別の仕組みについて鋭意研究を重ねた結果、嗅覚で匂いを識別するために用いられている基本原理を見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。従って、本発明は以下も提供する。
(123)以下:
(a)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19および21からなる群より選択される配列番号に記載の塩基配列のヌクレオチドまたはそのフラグメント配列を有する、ポリヌクレオチド;
(b)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20および22からなる群より選択される配列番号に記載のアミノ酸配列のアミノ酸またはそのフラグメントをコードする、ポリヌクレオチド、
(c)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20および22からなる群より選択される配列番号に記載のアミノ酸配列のアミノ酸において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19および21からなる群より選択される配列番号に記載の塩基配列のヌクレオチドのスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20および22からなる群より選択される配列番号に記載のアミノ酸配列のアミノ酸からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
を含む、核酸分子。
(124)上記生物学的活性は、化学物質のシグナル伝達活性を含む、項目123に記載の核酸分子。
(125)以下:
(a)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19および21からなる群より選択される配列番号に記載の核酸配列のヌクレオチドもしくはそのフラグメントによってコードされる、ポリペプチド;
(b)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20および22からなる群より選択される配列番号に記載のアミノ酸配列のアミノ酸もしくはそのフラグメントを有する、ポリペプチド;
(c)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20および22からなる群より選択される配列番号に記載のアミノ酸配列のアミノ酸において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する、改変体ポリペプチド
(d)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19および21からなる群より選択される配列番号に記載の塩基配列のヌクレオチドのスプライス改変体もしくは対立遺伝子改変体によってコードされる、ポリペプチド;
(e)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20および22からなる群より選択される配列番号に記載のアミノ酸配列のアミノ酸を有するポリペプチドの、種相同体ポリペプチド;または
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリペプチドのアミノ酸配列に対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列からなり、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド。
(126)上記生物学的活性は、化学物質のシグナル伝達活性を含む、項目125に記載のポリペプチド。
(127)項目123の核酸分子または項目125のポリペプチドの、化学物質の検出のための、使用。
本発明の有用性、利点などは、以下の実施の形態の説明を参酌することによって当業者は容易に理解し実施することができることが理解される。
(配列の説明)
配列番号1:car−n272の膜貫通ドメイン3−6の核酸。
配列番号2:配列番号1に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号3:car−c5の膜貫通ドメイン3−6の核酸。
配列番号4:配列番号3に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号5:car−b161の膜貫通ドメイン3−6の核酸。
配列番号6:配列番号5に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号7:car−b153の膜貫通ドメイン3−6の核酸。
配列番号8:配列番号7に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号9:car−b85の膜貫通ドメイン2−7の核酸。
配列番号10:配列番号9に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号11:car−n266の膜貫通ドメイン2−7の核酸。
配列番号12:配列番号11に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号13:car−n266の全コード領域の核酸。
配列番号14:配列番号13に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号15:car−n272の全コード領域の核酸。
配列番号16:配列番号15に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号17:car−b85の全コード領域の核酸。
配列番号18:配列番号17に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号19:car−c5の全コード領域の核酸。
配列番号20:配列番号19に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号21:car−b161の全コード領域の核酸。
配列番号22:配列番号21に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号23:AL1プライマー。
配列番号24:P26プライマー。
配列番号25:P27プライマー。
配列番号26:Anchor Tプライマー。
配列番号27:膜貫通ドメイン2(TM2)に対するプライマー。
配列番号28:P41プライマー。
配列番号29:P42プライマー。
配列番号30:W68プライマー。
配列番号31:W69プライマー。
配列番号32:W70プライマー。
配列番号33:P8プライマー。
配列番号34:マウスの嗅覚レセプターI7(heptanal−sensitive)の核酸(Genbank登録番号(Accession Number)AF106007)。
配列番号35:配列番号34に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号36:マウスの嗅覚レセプターS1(mc9/bc9−equi−sensitive)の核酸(Genbank登録番号AF121972)。
配列番号37:配列番号36に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号38:マウスの嗅覚レセプターS50(cc9−sensitive)の核酸(Genbank登録番号AF121980)。
配列番号39:配列番号38に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号40:マウスの嗅覚レセプターS19(mc9/mh9/bc9−equi−sensitive)の核酸(Genbank登録番号AF121976)。
配列番号41:配列番号40に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号42:マウスのOR23(lyral−sensitive)(Genbank登録番号X92969のコード領域のみ)の核酸。
配列番号43:配列番号42に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号44:マウスの嗅覚レセプターについてのmOR−EV(vanillin−sensitive)の核酸(Genbank登録番号AB061229)。
配列番号45:配列番号44に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号46:マウスのor37aの核酸(Genbank登録番号AJ133424)。
配列番号47:配列番号46に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号48:マウスの嗅覚レセプターC6の核酸(Genbank登録番号AF102523)。
配列番号49:配列番号48に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号50:マウスの嗅覚レセプターF5の核酸(Genbank登録番号AF102531)。
配列番号51:配列番号50に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号52:マウスの嗅覚レセプターS6の核酸(Genbank登録番号AF121974)。
配列番号53:配列番号52に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号54:マウスの嗅覚レセプターS18の核酸(Genbank登録番号AF121975)。
配列番号55:配列番号54に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号56:マウスの嗅覚レセプターS25の核酸(Genbank登録番号AF121977)。
配列番号57:配列番号56に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号58:マウスの嗅覚レセプターS46の核酸(Genbank登録番号AF121979)。
配列番号59:配列番号58に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号60:マウスの味覚レセプターT1R2の核酸(Genbank登録番号AY032623)。
配列番号61:配列番号60に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号62:マウスの味覚レセプターT1R1の核酸(Genbank登録番号AY032622)。
配列番号63:配列番号62に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号64:TPA:ヒトの味覚レセプター(TAS1R1)の核酸(Genbank登録番号BK000153)。
配列番号65:配列番号64に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号66:ヒトの味覚レセプター(PTC)の核酸(Genbank登録番号AY258597)。
配列番号67:配列番号66に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号68:マウスのGタンパク質αサブユニットの核酸(Genbank登録番号M36778)。
配列番号69:配列番号68に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号70:マウスのGタンパク質βサブユニットの核酸(Genbank登録番号M87286)。
配列番号71:配列番号70に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号72:マウスのGタンパク質γサブユニットの核酸(Genbank登録番号U37527)。
配列番号73:配列番号72に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号74:マウスの上皮増殖因子(EGF)レセプターの核酸(Genbank登録番号BC023729)。
配列番号75:配列番号74に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号76:マウスの嗅覚レセプターG7の核酸(Genbank登録番号AF102537)。
配列番号77:配列番号76に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号78:Rattus norvegicusの嗅覚レセプターMOR106−2の核酸(Genbank登録番号XM_223984)。
配列番号79:配列番号78に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号80:マウスの嗅覚レセプターMOR8−2の核酸(Genbank登録番号NM_147111)。
配列番号81:配列番号80に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号82:マウスの嗅覚レセプターM15の核酸(Genbank登録番号AF282300)。
配列番号83:配列番号82に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号84:マウスの嗅覚レセプターK21の核酸(Genbank登録番号AF282279)。
配列番号85:配列番号84に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号86:マウスのM12嗅覚レセプターの核酸(Genbank登録番号AF283558)。
配列番号87:配列番号86に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号88:マウスの嗅覚レセプターC3の核酸(Genbank登録番号AF102522)。
配列番号89:配列番号88に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号90:マウスの嗅覚レセプター68(Olfr68)の核酸(Genbank登録番号NM_013620)。
配列番号91:配列番号90に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号92:マウスの嗅覚レセプター31(Olfr31)の核酸(Genbank登録番号XM_138899)。
配列番号93:配列番号92に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号94:マウスの嗅覚レセプター60(Olfr60)の核酸(Genbank登録番号NM_146955)。
配列番号95:配列番号94に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号96:嗅覚レセプター42(Olfr42)の核酸(Genbank登録番号XM_138456)。
配列番号97:配列番号96に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号98:IHS発現ベクター(pBK−CMV−IHS−M4nc)。
配列番号99:配列番号98に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号100:Rho発現ベクター(pBK−CMV−Rho−M4nc)。
配列番号101:配列番号100に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号102:Pst I制限部位CTGCAGを含む配列の例。
配列番号103:Bsp EI制限部位 TCCGGAを含む配列の例。
配列番号104:実施例において用いられる、ダミー配列を伴わない、pBK−CMVベクターのためのRho−M4キメラカセット。
配列番号105:配列番号104に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号106:実施例において用いられる、ダミー配列を伴った、pBK−CMVベクターのためのRho−M4キメラカセット。
配列番号107:配列番号106に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号108:実施例において用いられる、ダミー配列を伴わない、pBK−CMVベクターのためのIHS−M4キメラカセット。
配列番号109:配列番号108に記載の核酸にコードされるタンパク質。
配列番号110:実施例において用いられる、ダミー配列を伴った、pBK−CMVベクターのためのIHS−M4キメラカセット。
配列番号111:配列番号110に記載の核酸にコードされるタンパク質。
発明の実施の形態
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など、独語の場合の「ein」、「der」、「das」、「die」などおよびその格変化形、仏語の場合の「un」、「une」、「le」、「la」など、スペイン語における「un」、「una」、「el」、「la」など、他の言語における対応する冠詞、形容詞など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
(用語の定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
(化学物質・感覚)
本明細書において「化学物質」は、当該分野において用いられる最広義の意味と同じ意味で用いられ、一定の分子構造をもつ物質をいう。例えば、化学物質としては、匂いのもととなる嗅覚源、味のもととなる味覚源、フェロモン、細胞内情報伝達物質、サイトカイン、ホルモン、有毒物質、ビタミン、栄養因子、遺伝子制御信号因子、有毒ガスなどが挙げられるがそれらに限定されない。本発明において対象となる有用な化学物質には、嗅覚源、味覚源、検体、生検試料、化学物質ライブラリー、医薬品などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「感覚」とは、生物(例えば、ヒト、サル、イヌ、マウスなどの哺乳動物など)が感じる、匂い、味などの感覚情報処理により形成される対応する感覚要素成分を統合した単一の感覚を指し、「感覚要素」とは、感覚を構成する異なる質の要素成分、例えば匂いの場合には個々の匂いの質(sweet,herbalなど)を指す。「感覚」には、五感が含まれ、これには、味覚、嗅覚、視覚、聴覚、触覚があるがそれに限定されない。
本明細書において「臭い」、「ニオイ」、「におい」、「香り」および「匂い」は互換可能に使用され、いずれも、化学物質が生物の嗅覚(代表的には鼻)を刺激して伝達される感覚のことをいう。匂いには、昆虫、動物などにおけるフェロモンも含まれる。匂いに関する感覚のことを、本明細書において「嗅覚」といい、本明細書において、「匂い」などと同様の意味で使用されることがある。
本明細書において「嗅覚源」、「嗅覚物質」および「匂い物質」は、互換可能に使用され、匂いを発生させるもとになる物質をいう。本明細書において、このような嗅覚源が分子からなる場合は、匂い分子または嗅覚分子という。従って、嗅覚として感じされることができる限り、どのような化学物質であっても嗅覚源の定義内に入る。通常、嗅覚は、空気を介して伝達されることから、嗅覚源は少なくとも揮発性を有することが好ましい。
本明細書において「味」とは、化学物質が生物の味覚(代表的には舌)を刺激して伝達される感覚のことをいう。本明細書において、このような味覚源が分子からなる場合は、味分子または味覚分子という。味に関する感覚のことを、本明細書において「味覚」といい、本明細書において、「味」と同様の意味で使用されることがある。従って、本明細書では、「味覚源」および「味覚物質」は、互換可能に使用され、味を発生させる元になる物質をいう。そのような味覚源としては、甘(あまい)、酸(すっぱい)、苦(にがい)、鹹(しおからい)、旨味(うまみ)があるがそれらに限定されない。本明細書では、広義には、辛(からい)もまた、味覚に入れることがある。
生体内において味覚をつかさどる味覚器は、味蕾を含み、この味蕾は通常、味細胞を数十個含む。この味蕾は、味神経と接続し、脳へと伝えられる。味細胞を通じて得られた味の情報は、鼓索神経、舌咽神経、上咽頭神経、大浅錐体神経を通じて脳へと伝えられる。
味細胞は、−40〜−50mV程度の細胞電位を有するといわれている。味細胞は、味細胞先端の微絨毛膜に結合すると、味細胞が脱分極し、電位変化が伝わり、電位依存性Caチャネルが開き、細胞外からCa2+が流入する。これにより、伝達物質(ノルエピネフリンなど)が味神経線維末端に向かって放出されて神経における情報が伝達される。ここでは、セカンドメッセンジャーとして、サイクリックAMP、イノシトール三リン酸などが機能するといわれる。
味細胞において、味覚レセプターが存在する。この味覚レセプターとしては、プロトンチャネル型レセプター(Hチャネル)、ナトリウムチャネル型レセプター(Naチャネル)、アミノ酸(グルタミン酸、リジンなど)レセプター、苦味物質の細胞膜レセプター、苦味物質の味受容膜、糖レセプター、人工甘味料に特異的な糖レセプター、カリウムチャネル型レセプター(Kチャネル)などが存在する。従って、本発明においてこれらのレセプターを1または複数使用することで、味情報を再現性よく、かつ、現実の情報に即して検知することができる。
苦味の受容機構は、Gタンパク質を介する経路を含む種々の経路を介することが知られる。デナトニウムなどの苦味物質は、Ca2+濃度の増大により伝達され、IPレセプターが存在する。マッドパピーなどはKチャネルを閉じて脱分極を引き起こす。これらの苦味物質は、膜を直接介する脱分極もあるといわれる。従って、苦味物質の検知は、本発明により行うことができる。
甘味の受容機構は、Gタンパク質を介する経路を含む種々の経路を介することが知られる。したがって、種々のGタンパク質をマーカーとして、cAMP、IP、Ca2+をシグナル伝達因子として利用することによって情報を検知することが可能である。甘味物質の検知は、本発明により行うことができる。
旨味(うまみ)の受容機構もまた、種々存在することが知られており、グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸などに対して各々の受容機構が存在する。グルタミン酸に対しては、グルタミン酸レセプターが存在し、これは、Gタンパク質と共役している。したがって、cAMPの濃度などを測定することで情報を検知することが可能である。このように、旨味物質の検知は、本発明により行うことができる。
鹹、酸などの味覚においても、イオンチャネルおよびレセプターが関与しており、これらのチャネルおよび/またはレセプターを利用することによって、情報を検知することが可能である。従って、本発明の対象であり得る。
本明細書において「レセプター」とは、細胞上または核内などに存在し、外界からの因子または細胞内の因子に対する結合能を有し、その結合によりシグナルが伝達される分子をいう。レセプターは通常タンパク質の形態をとる。レセプターの結合パートナーは、通常リガンドという。
本明細書において「アゴニスト」とは、ある生体作用物質(リガンド)のレセプターに結合し、その物質のもつ作用と同じ(あるいは類似の)作用を現わすは因子をいう。
本明細書において「アンタゴニスト」とは、ある生体作用物質(リガンド)のレセプターへの結合に拮抗的に働き、それ自身はそのレセプターを介した生理作用を現わさない因子をいう。拮抗薬、遮断剤(ブロッカー)、阻害剤(インヒビター)などもこのアンタゴニストに包含される。
本明細書において「化学物質レセプター」とは、化学物質をリガンドとするレセプターをいう。そのような化学物質レセプターは、核内レセプター、細胞質レセプターおよび細胞膜レセプターからなる群より選択されるレセプターが挙げられるそれらに限定されない。
好ましくは、前記化学物質レセプターは、Gタンパク質共役型レセプター、キナーゼ型レセプター、イオンチャネル型レセプター、核内レセプター、ケモカインレセプターおよびサイトカインレセプターからなる群より選択されるレセプターを包含する。
本明細書において「嗅覚レセプター」とは、嗅覚のシグナル伝達に関与するレセプターをいい、例えば、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96などに示す核酸配列に示される核酸配列によってコードされるものが挙げられるがそれらに限定されない。嗅覚レセプターのアミノ酸配列の例示としては、例えば、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97などのアミノ配列が挙げられるがそれらに限定されない。本発明では、このような配列の改変体またはフラグメントもまた、その機能(化学物質レセプターとしての機能であり、リガンドとの相互作用および下流のシグナル配列伝達作用が含まれる)が保持される限り、使用され得る。嗅覚レセプタは、通常、7回膜貫通型のタンパク質であることが知られており、膜貫通ドメイン3の細胞内にはGタンパク質と相互作用するアミノ酸配列が保存されている。他のGタンパク質共役型レセプターと区別するための特徴的な配列としては、代表的に、膜貫通ドメイン2の始まりのLHTPMY、膜貫通ドメイン3のGタンパク質と相互作用するアミノ酸配列を含む配列MAYDRYVAIC、膜貫通ドメイン7のPMLNPFなどで同定することができる。また、嗅覚レセプタの遺伝子のコード領域には、通常、イントロンを含まないという特徴も持っている。また、第2細胞外ループは比較的長く、細胞内ループは他のレセプタ群より短い傾向にあることが知られている。
本明細書において「味覚レセプター」とは、味覚のシグナル伝達に関与するレセプターをいい、配列番号60、62、64および66からなる群より選択される核酸配列に示される核酸配列によってコードされる。味覚レセプターのアミノ酸配列の例示としては、例えば、配列番号61、63、65および67からなる群より選択されるアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列が挙げられる。本発明では、このような配列の改変体またはフラグメントもまた、その機能(化学物質レセプターとしての機能であり、リガンドとの相互作用および下流のシグナル配列伝達作用が含まれる)が保持される限り、使用され得る。
本明細書では「キナーゼ型サイトカインレセプター」もまた使用され得る。そのようなキナーゼ型サイトカインレセプターとしては、例えば、EGF(上皮増殖因子)レセプターが挙げられる。そのような配列としては、例えば、配列番号74に示される配列を有する核酸配列(アミノ酸配列は配列番号75)が挙げられるがそれに限定されない。本発明では、このような配列の改変体またはフラグメントもまた、その機能(化学物質レセプターとしての機能であり、リガンドとの相互作用および下流のシグナル配列伝達作用が含まれる)が保持される限り、使用され得る。
本明細書において「シグナル」とは、信号ともいい、情報を伝える因子をいう。本明細書では、シグナルは、特に細胞内シグナル伝達(signal transduction)によって伝達される因子をいう。細胞中のレセプターでは、シグナルを受けてから機能または産物発現にいたるまでの情報の一連の伝達をいう。ステロイドホルモンなどの脂溶性物質は、核内レセプターによって伝達され、水溶性の物質(例えば、ホルモン、サイトカイン、神経伝達物質など)は、細胞膜上に特異的レセプターを有し、シグナルを細胞内に伝える。シグナルが伝わった後に、細胞は種々の応答を引き起こす。シグナルとしては、細胞内カルシウム濃度(Ca2+)、IP、ジアシルグリセロール、cAMP、cGMP、細胞膜電位などがあるがそれらに限定されない。
シグナル伝達は、レセプターの形式によって、以下の例示のように種々分類される。
1)Gタンパク質共役型レセプター:細胞膜7回貫通型レセプターであり、三量体型Gタンパク質と共役している。この型はさらにcAMPをセカンドメッセンジャーとして産生するcAMP系およびイノシトール−1,4,5−三リン酸(IP)またはジアシルグリセロール(DG)をセカンドメッセンジャーとするイノシトールリン脂質情報伝達系とに分けられる。cAMPは、いくつかの経路を単独あるいは並行して活性化することができる。嗅覚受容神経細胞をはじめとする一部の神経細胞などでは、cAMP依存性イオンチャネルを開かせ、細胞膜電位を脱分極させると同時に、このチャネルを通り細胞外からのCa2+流入が生じるために一過性の細胞内Ca2+濃度上昇が起きる。また、cAMPは、cAMP依存性のキナーゼ(Aキナーゼ)を活性化し,機能タンパク質のセリンおよび/またはスレオニン残基のリン酸化を起こし,活性を修飾する。他方IPは小胞体上のIPレセプターに結合し,Ca2+の細胞内への遊離を促し、ジアシルグリセロールはCキナーゼを活性化してホルモンなどの作用発現を促す。
2)イオンチャネル型レセプター:レセプターそのものがイオンチャネルを形成し、神経伝達物質などのアゴニストが結合するとイオンチャネルが開口する。その結果、イオンが流入/流出し、種々の生理活性を修飾する。
3)チロシンキナーゼ型レセプター:サイトカインによって使われている型。サイトカインのレセプターはチロシンキナーゼ活性をもつものが多く、アゴニスト結合によりチロシンキナーゼ活性を亢進させ、チロシン残基のリン酸化を生じる。その結果、チロシンリン酸化部位にSrc相同領域2(SH)をもつタンパク質が結合し、下流へとシグナルを伝え、作用発現が促される。
4)グアニル酸シクラーゼ型レセプター:レセプターそのものにグアニル酸シクラーゼ活性があり、レセプター刺激によりcGMPを産生する。
細胞では、Gタンパク質がシグナル伝達を担う。Gタンパク質は、αβγの3サブユニット構造をしており、αサブユニットは通常GDPと結合している。共役しているレセプターが刺激されるとGTPと結合し、三量体はαサブユニットとβγサブユニットとに分離する。これにより、酵素活性が促進または抑制され、シグナルが伝達される。
Gsと呼ばれる促進性Gタンパク質が活性化されると、cAMP合成を担うアデニル酸シクラーゼが活性化され、cAMPレベルが上昇する。Giと呼ばれる抑制性Gタンパク質が活性化されると、アデニル酸シクラーゼが抑制されたcAMPが低下する。視細胞のトランスデューシンはGiの一種であり、これが活性化されるとcGMP分解酵素であるホスホジエステラーゼが活性化されて、cGMPレベルが低下する。Gq呼ばれるGタンパク質は、活性化されると、ホスホリパーゼCが活性化されて、IPが産生される。これらの経路のいずれもが、本発明において使用され得る。
味細胞でも、Gs、Gi、GqなどのGタンパク質が存在しており、ガストデューシン、トランスデューシンなどの特異的なGタンパク質も存在する。従って、これらのタンパク質もまた、本発明のマーカーとして利用することが可能である。これらのタンパク質は、L.Buck et al.Cell,65,175(1991)、Abe K.,et al.J.Biol.Chem.268,12033(1993)などによって報告されており、本発明では、これらの味覚に特異的なGタンパク質をマーカーとして使用することが可能であるが、味覚以外の化学物質の伝達に対しても使用することが可能である。
本明細書において「マーカー」とは、外部から測定可能な因子または測定可能な標識を産生させる因子をいう。したがって、マーカーは、目的とする物質または状態についてレベルまたは頻度を反映することができる。そのようなマーカーとしては、例えば、Gタンパク質、遺伝子をコードする核酸、遺伝子産物、代謝産物、レセプター、リガンド、抗体などが挙げられるがそれらに限定されない。
通常、本明細書においてマーカーとして使用される「因子」(agent)としては、意図する目的を達成することができる限りどのような物質または他の要素(例えば、光、放射能、熱、電気(例えば、細胞膜電位)などのエネルギー)でもあってもよい。そのような物質としては、例えば、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、有機低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、蛍光物質、発光物質など)、蛍光タンパク質、発光タンパク質、これらの複合分子が挙げられるがそれらに限定されない。
したがって、本明細書においてマーカーとは、Gタンパク質のほか、細胞の状態を示す細胞内因子(例えば、遺伝子をコードする核酸、遺伝子産物(例えば、mRNA、タンパク質、翻訳後修飾タンパク質)、代謝産物、レセプターなど)に対して相互作用する因子(例えば、リガンド、抗体など、相補的な核酸)などが挙げられるがそれらに限定されない。そのようなマーカーは、好ましくは、目的とする因子に対して特異的に相互作用することが有利であり得る。そのような特異的相互作用は、特定のGタンパク質などのマーカーを特定の化学物質レセプターと共役させることによって達成され得る。そのような特異性は、例えば、類似の分子よりも目的の分子に対する相互作用の程度が有意に高い性質を言う。本発明では、好ましくは、そのようなマーカーは、細胞内部に存在するが、細胞外のものであってもよい。
本明細書において「マーカー遺伝子」とは、マーカーを産生することができる遺伝子をいう。通常、マーカー遺伝子は、タンパク質としてのマーカーをコードするか、またはマーカーを産生することができるタンパク質もしくはマーカーを最終的に産生することができるタンパク質を含むがそれに限定されない。そのような代表的なマーカー遺伝子としては、Gタンパク質などが挙げられるがそれに限定されない。
本明細書において、「Gタンパク質」とは、グアニンヌクレオチド結合性調節タンパク質をいい、GTP(グアノシン5’三リン酸)またはGDP(グアノシン5’二リン酸)と特異的に結合し、結合したGTPをGDPとリン酸とに分解する酵素活性を示すGTP結合タンパク質のである。代表的に、Gタンパク質は、ホルモン、サイトカイン、神経伝達物質などのレセプターを介した細胞内シグナル伝達経路で情報を変換し伝達する因子として機能する。3量体型Gタンパク質はα(Gα)、β(Gβ)、γ(Gγ)の3種類のサブユニットからなる。Gタンパク質は、酵母などの単純な構造を有する真核生物からヒト、マウスなどの真核生物にまで広く存在することから、本発明では、そのようなGタンパク質もまた、利用することができる。Gタンパク質の例としては、例えば、Gα(配列番号68(核酸配列)、69(アミノ酸配列))、Gβ(配列番号70)、71(アミノ酸配列)、Gγ(配列番号72(核酸配列)、配列番号73(アミノ酸配列))に記載されるものが挙げられるがそれに限定されない。Gタンパク質は、通常αβγ(Gαβγ)の複合体として存在し、膜を7回貫通する構造を有するレセプター(Gタンパク質共役型レセプター)により活性化される.細胞外の第1メッセンジャーにより活性化されたGタンパク質共役型レセプターは、Gαに結合しているGDPをGTPに交換する.GTPが結合したGαはGβγと解離し、GαとGβγは独立にあるいは相互にアデニル酸シクラーゼなど細胞内の第2メッセンジャーの量を変動する酵素、イオンチャネルの活性などを調節する.Gα自身の酵素活性によりGTPがGDPに分解されると、GαとGβγとは再び結合し不活性型の3量体Gαβγに戻る。本発明において、好ましくは、Gαタンパク質がマーカーとして使用され得る。レセプター遺伝子と直接共役しているからである。より好ましくは、Gαタンパク質、Gβタンパク質およびGγタンパク質をすべて使用することが有利であり得る。これらのタンパク質は共役されて提供されることが有利であり得る。
本明細書において「シグナルの強度」とは、シグナルの物理的なレベルをいい、そのようなレベルは、シグナルの性質に応じて、当該分野において周知の技術を用いて測定することができる。電流、電位などの電気信号であれば、電流測定器によって測定された電流、電位などの電気信号の強度、カルシウム、IPなどの濃度であれば、カルシウム、IPなどの濃度、あるいは濃度変化を反映する量を測定するアッセイまたは装置によって測定された濃度値あるいは濃度変化の相対値を評価できる量が挙げられるがそれらに限定されない。これらの信号は、パッチクランプ法などによっても測定することができる。好ましくは、カルシウム濃度は、fura−2を使用して蛍光を測定することによって定性的および定量的に測定することができる。このような試薬は、Sigma、フナコシ、同人化学などから試薬およびキットなどが市販されている。
パッチクランプ法は細胞膜上の1または複数のイオンチャネル分子の活動をリアルタイムで記録する方法である。パッチクランプ法としては、例えば、ギガシール法などがあり、多くの細胞系に適用可能である。
パッチクランプ法では、細胞表面にガラスにパッチ電極とも呼ばれる微小電極を接触させ、陰圧をかける。これによってパッチ電極と細胞の間との電気抵抗が増大し、漏れ(リーク)のない密着状態が得られる。これをギガシールという。通常10GΩ以上である。この高抵抗により、パッチ膜を流れる電流は外液中には漏れ出さず全てが電極へ流れ込むので、パッチ電極からの記録電流として計測できる。この計測方法は細胞接着記録(cell−attached recording)という。
ギガシール形成後、パッチ電極にさらに強い陰圧をかけると、パッチ膜が破壊されパッチ電極内液と細胞内部が電気的に直結する。これにより細胞の膜電位を固定した条件下で細胞膜上に存在する全イオンチャネルを流れる電流の測定ができるようになる。この測定法を全細胞記録(whole−cell recording)といい、これらの方法が利用可能である。
本明細書においてレセプターの「活性化」とは、レセプターがリガンドの結合によって下流にシグナルを伝達することができる状態になることをいう。
本明細書においてレセプターの「活性化度」とは、レセプターの活性化の程度をいい、そのような活性化の程度は、例えば、シグナルの大小によって表すことができる。
(細胞生物学)
本明細書において使用される「細胞」は、当該分野において用いられる最も広義の意味と同様に定義され、多細胞生物の組織の構成単位であって、外界を隔離する膜構造に包まれ、内部に自己再生能を備え、遺伝情報およびその発現機構を有する生命体をいう。本明細書において使用される細胞は、化学物質レセプターを有するかまたは導入することができる限り、どのような由来であっても使用することができ、天然に存在する細胞であっても、人工的に改変された細胞(例えば、融合細胞、遺伝子改変細胞)であってもよい。細胞の供給源としては、例えば、単一の細胞培養物であり得、あるいは、正常に成長したトランスジェニック動物の胚、血液、または体組織、または正常に成長した細胞株由来の細胞のような細胞混合物が挙げられるがそれらに限定されない。好ましくは、形質転換またはトランスフェクションが容易な細胞が使用される。本発明において使用される細胞は、支持体において容易に培養および/または維持され得る細胞であることが好ましい。
本発明で用いられる細胞は、どの生物由来の細胞(たとえば、任意の種類の単細胞生物(例えば、細菌、酵母)または多細胞生物(例えば、動物(たとえば、脊椎動物、無脊椎動物)、植物(たとえば、単子葉植物、双子葉植物など)など))でもよい。例えば、脊椎動物(たとえば、メクラウナギ類、ヤツメウナギ類、軟骨魚類、硬骨魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物など)由来の細胞が用いられ、より詳細には、哺乳動物(例えば、単孔類、有袋類、貧歯類、皮翼類、翼手類、食肉類、食虫類、長鼻類、奇蹄類、偶蹄類、管歯類、有鱗類、海牛類、クジラ目、霊長類、齧歯類、ウサギ目など)由来の細胞が用いられる。1つの実施形態では、霊長類(たとえば、チンパンジー、ニホンザル、ヒト)由来の細胞、特にヒト由来の細胞が用いられるがそれに限定されない。本発明において用いられる細胞は、上記細胞は、幹細胞であってもよく体細胞であってもよい。また、そのような細胞は、付着細胞、浮遊細胞、組織形成細胞およびそれらの混合物などであり得る。そのような細胞は、移植目的に使用されるものであってもよい。
本発明において、臓器が対象とされる場合、そのような臓器はどのような臓器でもよく、また本発明が対象とする組織または細胞は、生物のどの臓器または器官に由来するものでもよい。本明細書において「臓器」または「器官」とは、互換可能に用いられ、生物個体のある機能が個体内の特定の部分に局在して営まれ,かつその部分が形態的に独立性をもっている構造体をいう。一般に多細胞生物(例えば、動物、植物)では器官は特定の空間的配置をもついくつかの組織からなり、組織は多数の細胞からなる。そのような臓器または器官としては、血管系に関連する臓器または器官が挙げられる。1つの実施形態では、本発明が対象とする臓器は、皮膚、血管、角膜、腎臓、心臓、肝臓、臍帯、腸、神経、肺、胎盤、膵臓、脳、四肢末梢、網膜などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「組織」(tissue)とは、多細胞生物において、実質的に同一の機能および/または形態をもつ細胞集団をいう。通常「組織」は、同じ起源を有するが、異なる起源を持つ細胞集団であっても、同一の機能および/または形態を有するのであれば、組織と呼ばれ得る。従って、本発明の幹細胞を用いて組織を再生する場合、2以上の異なる起源を有する細胞集団が一つの組織を構成し得る。通常、組織は、臓器の一部を構成する。動物の組織は,形態的、機能的または発生的根拠に基づき、上皮組織、結合組織、筋肉組織、神経組織などに区別される。植物では、構成細胞の発達段階によって分裂組織と永久組織とに大別され、また構成細胞の種類によって単一組織と複合組織とに分けるなど、いろいろな分類が行われている。本発明では、組織を用いてセンサまたはチップを構成することもできる。
本明細書において「幹細胞」とは、自己複製能を有し、多分化能(すなわち多能性)(「pluripotency」)を有する細胞をいう。幹細胞は通常、組織が傷害を受けたときにその組織を再生することができる。本明細書では幹細胞は、胚性幹(ES)細胞または組織幹細胞(組織性幹細胞、組織特異的幹細胞または体性幹細胞ともいう)であり得るがそれらに限定されない。従って、本発明では、幹細胞もまた使用され得る。
本明細書において「体細胞」とは、卵子、精子などの生殖細胞以外の細胞であり、そのDNAを次世代に直接引き渡さない全ての細胞をいう。体細胞は通常、多能性が限定されているかまたは消失している。本明細書において使用される体細胞は、天然に存在するものであってもよく、遺伝子改変されたものであってもよい。
本明細書において「単離された」とは、通常の環境において天然に付随する物質が少なくとも低減されていること、好ましくは実質的に含まないをいう。従って、単離された細胞とは、天然の環境において付随する他の物質(たとえば、他の細胞、タンパク質、核酸など)を実質的に含まない細胞をいう。核酸またはポリペプチドについていう場合、「単離された」とは、たとえば、組換えDNA技術により作製された場合には細胞物質または培養培地を実質的に含まず、化学合成された場合には前駆体化学物質またはその他の化学物質を実質的に含まない、核酸またはポリペプチドを指す。単離された核酸は、好ましくは、その核酸が由来する生物において天然に該核酸に隣接している(flanking)配列(即ち、該核酸の5’末端および3’末端に位置する配列)を含まない。
本明細書において、「樹立された」または「確立された」細胞とは、特定の性質(例えば、多分化能)を維持し、かつ、細胞が培養条件下で安定に増殖し続けるようになった状態をいう。したがって、樹立された幹細胞は、多分化能を維持する。本発明では、安定した結果を提供することができることから、このような樹立された細胞を用いることが好ましい。
本明細書において「分化(した)細胞」とは、機能および形態が特殊化した細胞(例えば、筋細胞、神経細胞など)をいい、幹細胞とは異なり、多能性はないか、またはほとんどない。分化した細胞としては、例えば、表皮細胞、膵実質細胞、膵管細胞、肝細胞、血液細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、骨芽細胞、骨格筋芽細胞、神経細胞、血管内皮細胞、色素細胞、平滑筋細胞、脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞などが挙げられる。
本明細書において細胞の「状態」とは、細胞の種々のパラメータ(例えば、細胞周期、外来因子に対する応答、シグナル伝達、シグナル伝達因子のレベルもしくは量、細胞内イオン(例えば、カルシウムイオン)の濃度、遺伝子発現、遺伝子の転写など)に関する状況をさす。そのような状態としては、例えば、シグナル伝達状態、分化状態、未分化状態、外来因子に対する細胞応答、細胞周期、増殖状態などが挙げられるがそれらに限定されない。
(生化学・分子生物学)
本明細書において、「遺伝子」とは、遺伝形質を規定する因子をいう。通常染色体上に一定の順序に配列している。タンパク質の一次構造を規定するものを構造遺伝子といい、その発現を左右するものを調節遺伝子(たとえば、プロモーター)という。本明細書では、遺伝子は、特に言及しない限り、構造遺伝子および調節遺伝子を包含する。したがって、化学物質レセプター遺伝子というときは、通常、化学物質レセプターの構造遺伝子および化学物質レセプターのプロモーターの両方を包含するが、本発明の目的を達成することができる限り、化学物質レセプターの構造遺伝子のみをさしてもよい。本明細書において通常、遺伝子とは、調節領域、コード領域、エキソン、イントロンを含む。本明細書では、「遺伝子」は、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」ならびに/または「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」を指すことがある。本明細書においてはまた、「遺伝子産物」は、遺伝子によって発現された「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」ならびに/または「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」を包含する。当業者であれば、遺伝子産物が何たるかはその状況に応じて理解することができる。したがって、通常、本明細書において、遺伝子は、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖といった各1本鎖DNAを包含し、またその長さに何ら制限されるものではない。従って、本発明の遺伝子には、特に言及しない限り、ヒトゲノムDNAを含む2本鎖DNA、およびcDNAを含む1本鎖DNA(センス鎖)、ならびにそのセンス鎖と相補的な配列を有する1本鎖DNA(アンチセンス鎖)、およびそれらのフラグメントのいずれもが含まれる。
本明細書において配列(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。本明細書において、配列(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「類似性」とは、上記相同性において、保存的置換をポジティブ(同一)とみなした場合の、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、保存的置換がある場合は、その保存的置換の存在に応じて同一性と類似性とは異なる。また、保存的置換がない場合は、同一性と類似性とは同じ数値を示す。
本明細書では、特に言及しない限り、アミノ酸配列および塩基配列の類似性、同一性および相同性の比較は、配列分析用ツールであるFASTAにおいてデフォルトパラメータを用いて算出される。
本明細書において使用される用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされたものを包含し得る。この用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)。この定義にはまた、例えば、アミノ酸の1または2以上のアナログを含むポリペプチド(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ペプトイド)および当該分野において公知の他の改変が包含される。フィブロネクチンのような細胞外マトリクスタンパク質の遺伝子産物は、通常ポリペプチド形態をとるが、同様の機能を有する限り、ポリペプチドの改変体であってもよい。特定アミノ酸配列を有するポリペプチドは、その断片、同族体、誘導体、改変体を含む。
本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸分子」および「核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいう。この用語はまた、「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」を含む。「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、例えば、2’−O−メチル−リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスホロアミデート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine−modified cytosine)で置換された誘導体オリゴヌクレオチド、DNA中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドなどが例示される。他にそうではないと示されなければ、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列と同様に、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換体)および相補配列を包含することが企図される。具体的には、縮重コドン置換体は、1またはそれ以上の選択された(または、すべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作成することにより達成され得る(Batzerら、Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605−2608(1985);Rossoliniら、Mol.Cell.Probes 8:91−98(1994))。フィブロネクチンのような細胞外マトリクスタンパク質などの遺伝子は、通常、このポリヌクレオチド形態をとる。また、トランスフェクションの対象となる分子もこのポリヌクレオチドである。
本明細書において「ヌクレオチド」は、糖部分がリン酸エステルになっているヌクレオシドをいい、DNA、RNAなどを含み、天然のものでも非天然のものでもよい。ここで、ヌクレオシドは、塩基と糖とがN−グリコシド結合をした化合物をいう。「誘導体ヌクレオチド」または「ヌクレオチドアナログ」とは、天然に存在するヌクレオチドとは異なるがもとのヌクレオチドと同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログは、当該分野において周知である。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログの例としては、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNA)が含まれるが、これらに限定されない。DNAは、cDNA、ゲノムDNA、合成DNAを含む。
1つの実施形態において、改変体は、天然に存在する対立遺伝子変異体、天然に存在しない変異体、欠失、置換、付加、および挿入された変異体;コードされるポリペプチドの機能を実質的に変更しないポリヌクレオチド配列を意味する。
1つの実施形態において、これらアミノ酸配列の改変(変異等)は、天然において、例えば突然変異、翻訳後の修飾等により生じることもあるが、天然由来の遺伝子(例えば本発明の具体例遺伝子)を利用して人為的にこれを行なうこともできる。
1つの実施形態において、上記ポリペプチドは、対立遺伝子変異体、ホモログ、天然の変異体で少なくとも70%、好ましくは、80%、より好ましくは95%、さらにより好ましくは97%相同なものを含む。
本明細書において、「対応する」アミノ酸または核酸とは、それぞれあるポリペプチド分子またはポリヌクレオチド分子において、比較の基準となるポリペプチドまたはポリヌクレオチドにおける所定のアミノ酸と同様の作用を有するか、あるいは有することが予測されるアミノ酸または核酸をいい、特に酵素分子にあっては、活性部位中の同様の位置に存在し触媒活性に同様の寄与をするアミノ酸をいう。例えば、あるポリヌクレオチドの転写制御配列であれば、その転写制御配列の特定の部分に対応するオルソログにおける同様の部分であり得る。
本明細書において、「対応する」遺伝子(例えば、核酸分子、ポリペプチドなど)とは、ある種において、比較の基準となる種における所定の遺伝子と同様の作用を有するか、または有することが予測される遺伝子をいい、そのような作用を有する遺伝子が複数存在する場合、進化学的に同じ起源を有するものをいう。従って、ある遺伝子の対応する遺伝子は、その遺伝子のオルソログあるいは種相同体であり得る。したがって、マウス嗅覚レセプター遺伝子、マウス味覚レセプター遺伝子などの化学物質レセプターに対応する遺伝子は、他の動物においても見出すことができる。そのような対応する遺伝子は、当該分野において周知の技術を用いて同定することができる。したがって、例えば、ある動物における対応する遺伝子は、対応する遺伝子の基準となる遺伝子(例えば、マウス嗅覚レセプター遺伝子、マウス味覚レセプター遺伝子などの化学物質レセプター)の配列をクエリ配列として用いてその動物(例えばヒト、ラット、イヌ、ネコ)の配列データベースを検索することによって見出すことができる。このような対応する遺伝子は、ゲノムデータベースを利用すれば、当業者は容易に得ることができる。そのようなゲノム配列の入手方法は、当該分野において周知であり、本明細書において他の場所に記載される。本発明では、このような検索によって得られた配列も利用可能である。
本明細書において「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。本明細書において、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの長さは、上述のようにそれぞれアミノ酸または核酸の個数で表すことができるが、上述の個数は絶対的なものではなく、同じ機能(例えば、化学物質レセプターの機能)を有する限り、上限または加減としての上述の個数は、その個数の上下数個(または例えば上下10%)のものも含むことが意図される。そのような意図を表現するために、本明細書では、個数の前に「約」を付けて表現することがある。しかし、本明細書では、「約」のあるなしはその数値の解釈に影響を与えないことが理解されるべきである。本発明では、化学物質レセプターとして機能する、すなわち、リガンド(化学物質)と結合し、その結合情報を下流に伝達することができる限り、どのようなフラグメントであっても使用可能であることが理解される。
本明細書において使用される用語「生体分子」とは、生体に関連する分子をいう。本明細書において「生体」とは、生物学的な有機体をいい、動物、植物、菌類、ウイルスなどを含むがそれらに限定されない。従って、本明細書では生体分子は、生体から抽出される分子を包含するが、それに限定されず、生体に影響を与え得る分子であれば生体分子の定義に入る。したがって、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(たとえば、低分子リガンドなど)もまた生体への効果が意図され得るかぎり、生体分子の定義に入る。そのような生体分子には、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカライド、オリゴサッカライド、脂質、低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子など)、これらの複合分子(糖脂質、糖タンパク質、リポタンパク質など)などが包含されるがそれらに限定されない。生体分子にはまた、細胞への導入が企図される限り、細胞自体、組織の一部も包含され得る。通常、生体分子は、核酸、タンパク質、脂質、糖、プロテオリピッド、リポプロテイン、糖タンパク質およびプロテオグリカンなどであり得る。好ましくは、生体分子は、核酸(DNAまたはRNA)またはタンパク質を含む。別の好ましい実施形態では、生体分子は、核酸(例えば、ゲノムDNAまたはcDNA、あるいはPCRなどによって合成されたDNA)である。他の好ましい実施形態では、生体分子はタンパク質であり得る。好ましくは、そのような生体分子は、ホルモンまたはサイトカインであり得る。従って、本発明のセンサおよびシステムは、このような生体分子を測定することができる。このような生体分子を測定することによって、診断などに利用することができる。診断への応用は、従来不可能であったことであり、その効果は顕著であるといえる。
本明細書において「化学合成物」とは、通常の化学技術を用いて合成され得るすべての物質をいう。従って、化学合成物は、化学物質の範囲内にある。実質的には化学物質は、ほぼすべて合成することができる。そのような合成技術は、当該分野において周知であり、当業者は、適宜そのような技術を組み合わせて化学合成物を製造することができる。
本明細書において使用される「サイトカイン」は、当該分野において用いられる最も広義の意味と同様に定義され、細胞から産生され同じまたは異なる細胞に作用する生理活性物質をいう。サイトカインは、一般にタンパク質またはポリペプチドであり、免疫応答の制禦作用、内分泌系の調節、神経系の調節、抗腫瘍作用、抗ウイルス作用、細胞増殖の調節作用、細胞分化の調節作用などを有する。本明細書では、サイトカインはタンパク質形態または核酸形態あるいは他の形態であり得るが、実際に作用する時点においては、サイトカインは通常はタンパク質形態を意味する。本明細書において用いられる「増殖因子」とは、細胞の増殖を促進または制御する物質をいう。増殖因子は、成長因子または発育因子ともいわれる。増殖因子は、細胞培養または組織培養において、培地に添加されて血清高分子物質の作用を代替し得る。多くの増殖因子は、細胞の増殖以外に、分化状態の制御因子としても機能することが判明している。サイトカインには、代表的には、インターロイキン類、ケモカイン類、コロニー刺激因子のような造血因子、腫瘍壊死因子、インターフェロン類が含まれる。増殖因子としては、代表的には、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、肝実質細胞増殖因子(HGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)のような増殖活性を有するものが挙げられる。
本明細書では、「サイトカインレセプター」とは、上述のようなサイトカインをリガンドとするレセプターをいう。そのようなレセプターは、上述のそれぞれの因子に対して少なくともひとつ存在する。例えば、EGFにたいしてはEGFレセプターが存在している。
本明細書において使用される「ホルモン」とは、当該分野において通常用いられる最も広い意味と同じ意味で用いられ、動植物の特定の器官または細胞で作られ,産出される部位からは隔たった器官にその特異的な生理作用をあらわす生理的有機化合物をいう。そのようなホルモンとしては、成長ホルモン、性ホルモン、甲状腺ホルモンなどが挙げられるがそれらに限定されない。そのようなホルモンは、一部、上記サイトカインとそのさす範囲が重複し得る。
本明細書において「生物学的活性」とは、ある因子(例えば、ポリペプチドまたはタンパク質)が、生体内において有し得る活性のことをいい、種々の機能(例えば、転写促進活性)を発揮する活性が包含される。例えば、ある因子がアンチセンス分子である場合、その生物学的活性は、対象となる核酸分子への結合、それによる発現抑制などを包含する。例えば、ある因子が酵素である場合、その生物学的活性は、その酵素活性を包含する。別の例では、ある因子がリガンドまたはレセプターである場合、そのリガンドまたはレセプターがそれぞれ対応するレセプターまたはリガンドへの結合が生物学的活性に包含される。その生物学的活性が転写調節活性である場合は、転写レベルまたはその変動を調節する活性をいう。従って、本明細書において化学物質レセプターの生物学的活性は、その化学物質レセプターが対象とすることが知られる化学物質に対して反応し、シグナルが伝達されることである。そのような生物学的活性は、当該分野において周知の技術によって決定することができる。従って、本明細書において化学物質レセプターの生物学的活性は、対象となる化学物質レセプターが細胞において発現する条件で、その化学物質レセプターのシグナル伝達を測定する系(例えば、Gタンパク質をコードするマーカーと作動可能に連結された系)を用いて、化学物質に対する反応をシグナル伝達を測定することができる指標(例えば、物理的信号、細胞内カルシウム濃度、下流の遺伝子発現レベルなど)を測定することによって判定することができる。例えば、シグナルがカルシウム濃度である場合カルシウム濃度を測定することによって、そのような指標を測定することが可能である。
本明細書において、「ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、当該分野で慣用される周知の条件をいう。本発明のポリヌクレオチド中から選択されたポリヌクレオチドをプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより、そのようなポリヌクレオチドを得ることができる。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(saline−sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウムである)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドを意味する。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning 2nd ed.,Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1−38、DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach,Second Edition,Oxford University Press(1995)等の実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。ここで、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列からは、好ましくは、A配列のみまたはT配列のみを含む配列が除外される。「ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド」とは、上記ハイブリダイズ条件下で別のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドをいう。ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとして具体的には、本発明で具体的に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNAの塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、好ましくは80%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。
本明細書において「プローブ」とは、インビトロおよび/またはインビボなどのスクリーニングなどの生物学的実験において用いられる、検索の対象となる物質をいい、例えば、特定の塩基配列を含む核酸分子または特定のアミノ酸配列を含むペプチドなどが挙げられるがそれに限定されない。
通常プローブとして用いられる核酸分子としては、目的とする遺伝子の核酸配列と相同なまたは相補的な、少なくとも8の連続するヌクレオチド長の核酸配列を有するものが挙げられる。そのような核酸配列は、好ましくは、少なくとも9の連続するヌクレオチド長の、より好ましく10の連続するヌクレオチド長の、さらに好ましくは11の連続するヌクレオチド長の、12の連続するヌクレオチド長の、13の連続するヌクレオチド長の、14の連続するヌクレオチド長の、15の連続するヌクレオチド長の、20の連続するヌクレオチド長の、25の連続するヌクレオチド長の、30の連続するヌクレオチド長の、40の連続するヌクレオチド長の、50の連続するヌクレオチド長の、核酸配列であり得る。プローブとして使用される核酸配列には、上述の配列に対して、少なくとも70%相同な、より好ましくは、少なくとも80%相同な、さらに好ましくは、90%相同な、95%相同な核酸配列が含まれる。
本明細書において、「検索」とは、電子的にまたは生物学的あるいは他の方法により、ある核酸塩基配列を利用して、特定の機能および/または性質を有する他の核酸塩基配列を見出すことをいう。電子的な検索としては、BLAST(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403−410(1990))、FASTA(Pearson & Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 85:2444−2448(1988))、Smith and Waterman法(Smith and Waterman,J.Mol.Biol.147:195−197(1981))、およびNeedleman and Wunsch法(Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:443−453(1970))などが挙げられるがそれらに限定されない。生物学的な検索としては、ストリンジェントハイブリダイゼーション、ゲノムDNAをナイロンメンブレン等に貼り付けたマクロアレイまたはガラス板に貼り付けたマイクロアレイ(マイクロアレイアッセイ)、PCRおよびin situハイブリダイゼーションなどが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「高度にストリンジェントな条件」は、核酸配列において高度の相補性を有するDNA鎖のハイブリダイゼーションを可能にし、そしてミスマッチを有意に有するDNAのハイブリダイゼーションを除外するように設計された条件をいう。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、主に、温度、イオン強度、およびホルムアミドのような変性剤の条件によって決定される。このようなハイブリダイゼーションおよび洗浄に関する「高度にストリンジェントな条件」の例は、0.0015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム、65〜68℃、または0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム、および50%ホルムアミド、42℃である。このような高度にストリンジェントな条件については、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory(Cold Spring Harbor,N,Y.1989);およびAnderson et al.、Nucleic Acid Hybridization:a Practical approach、IV、IRL Press Limited(Oxford,England),Limited,Oxford,Englandを参照のこと。必要により、よりストリンジェントな条件(例えば、より高い温度、より低いイオン強度、より高いホルムアミド、または他の変性剤)を、使用してもよい。他の薬剤が、非特異的なハイブリダイゼーションおよび/またはバックグラウンドのハイブリダイゼーションを減少する目的で、ハイブリダイゼーション緩衝液および洗浄緩衝液に含まれ得る。そのような他の薬剤の例としては、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%ピロリン酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(NaDodSOまたはSDS)、Ficoll、Denhardt溶液、超音波処理されたサケ精子DNA(または別の非相補的DNA)および硫酸デキストランであるが、他の適切な薬剤もまた、使用され得る。これらの添加物の濃度および型は、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに実質的に影響を与えることなく変更され得る。ハイブリダイゼーション実験は、通常、pH6.8〜7.4で実施されるが;代表的なイオン強度条件において、ハイブリダイゼーションの速度は、ほとんどpH独立である。Anderson et al.、Nucleic Acid Hybridization:a Practical Approach、第4章、IRL Press Limited(Oxford,England)を参照のこと。
DNA二重鎖の安定性に影響を与える因子としては、塩基の組成、長さおよび塩基対不一致の程度が挙げられる。ハイブリダイゼーション条件は、当業者によって調整され得、これらの変数を適用させ、そして異なる配列関連性のDNAがハイブリッドを形成するのを可能にする。完全に一致したDNA二重鎖の融解温度は、以下の式によって概算され得る。
Tm(℃)=81.5+16.6(log[Na])+0.41(%G+C)−600/N−0.72(%ホルムアミド)
ここで、Nは、形成される二重鎖の長さであり、[Na]は、ハイブリダイゼーション溶液または洗浄溶液中のナトリウムイオンのモル濃度であり、%G+Cは、ハイブリッド中の(グアニン+シトシン)塩基のパーセンテージである。不完全に一致したハイブリッドに関して、融解温度は、各1%不一致(ミスマッチ)に対して約1℃ずつ減少する。
本明細書において「中程度にストリンジェントな条件」とは、「高度にストリンジェントな条件」下で生じ得るよりも高い程度の塩基対不一致を有するDNA二重鎖が、形成し得る条件をいう。代表的な「中程度にストリンジェントな条件」の例は、0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム、50〜65℃、または0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム、および20%ホルムアミド、37〜50℃である。例として、0.015Mナトリウムイオン中、50℃の「中程度にストリンジェントな」条件は、約21%の不一致を許容する。
本明細書において「高度」にストリンジェントな条件と「中程度」にストリンジェントな条件との間に完全な区別は存在しないことがあり得ることが、当業者によって理解される。例えば、0.015Mナトリウムイオン(ホルムアミドなし)において、完全に一致した長いDNAの融解温度は、約71℃である。65℃(同じイオン強度)での洗浄において、これは、約6%不一致を許容にする。より離れた関連する配列を捕獲するために、当業者は、単に温度を低下させ得るか、またはイオン強度を上昇し得る。
約20ヌクレオチドまでのオリゴヌクレオチドプローブについて、1M NaClにおける融解温度の適切な概算は、
Tm=(1つのA−T塩基につき2℃)+(1つのG−C塩基対につき4℃)
によって提供される。なお、6×クエン酸ナトリウム塩(SSC)におけるナトリウムイオン濃度は、1Mである(Suggsら、Developmental Biology Using Purified Genes、683頁、BrownおよびFox(編)(1981)を参照のこと)。
化学物質レセプターまたはその改変体もしくはフラグメントなどのタンパク質をコードする天然の核酸は、例えば、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58などの核酸配列の一部またはその改変体を含むPCRプライマーおよびハイブリダイゼーションプローブを有するcDNAライブラリーから容易に分離される。好ましい化学物質レセプターまたはその改変体もしくはフラグメントなどをコードする核酸は、本質的に1%ウシ血清アルブミン(BSA);500mMリン酸ナトリウム(NaPO);1mM EDTA;42℃の温度で7%SDSを含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に2×SSC(600mM NaCl;60mMクエン酸ナトリウム);50℃の0.1%SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下、さらに好ましくは本質的に50℃の温度での1%ウシ血清アルブミン(BSA);500mMリン酸ナトリウム(NaPO);15%ホルムアミド;1mM EDTA;7%SDSを含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に50℃の1×SSC(300mM NaCl;30mMクエン酸ナトリウム);1%SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下、最も好ましくは本質的に50℃の温度での1%ウシ血清アルブミン(BSA);200mMリン酸ナトリウム(NaPO);15%ホルムアミド;1mM EDTA;7%SDSを含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に65℃の0.5×SSC(150mM NaCl;15mMクエン酸ナトリウム);0.1%SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下に1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58などの核酸配列の1つまたはその一部とハイブリダイズし得る。
本明細書において「プローブ」とは、インビトロおよび/またはインビボなどのスクリーニングなどの生物学的実験において用いられる、検索の対象となる物質をいい、例えば、特定の塩基配列を含む核酸分子または特定のアミノ酸配列を含むペプチドなどが挙げられるがそれに限定されない。
通常プローブとして用いられる核酸分子としては、目的とする遺伝子の核酸配列と相同なまたは相補的な、少なくとも8の連続するヌクレオチド長の核酸配列を有するものが挙げられる。そのような核酸配列は、好ましくは、少なくとも9の連続するヌクレオチド長の、より好ましくは少なくとも10の連続するヌクレオチド長の、さらに好ましくは少なくとも11の連続するヌクレオチド長の、少なくとも12の連続するヌクレオチド長の、少なくとも13の連続するヌクレオチド長の、少なくとも14の連続するヌクレオチド長の、少なくとも15の連続するヌクレオチド長の、少なくとも20の連続するヌクレオチド長の、少なくとも25の連続するヌクレオチド長の、少なくとも30の連続するヌクレオチド長の、少なくとも40の連続するヌクレオチド長の、少なくとも50の連続するヌクレオチド長の、少なくとも核酸配列であり得る。プローブとして使用される核酸配列には、上述の配列に対して、少なくとも70%相同な、より好ましくは、少なくとも80%相同な、さらに好ましくは、少なくとも90%相同な、少なくとも95%相同な核酸配列が含まれる。
本明細書における「プライマー」とは、高分子合成酵素反応において、合成される高分子化合物の反応の開始に必要な物質をいう。核酸分子の合成反応では、合成されるべき高分子化合物の一部の配列に相補的な核酸分子(例えば、DNAまたはRNAなど)が用いられ得る。
通常プライマーとして用いられる核酸分子としては、目的とする遺伝子の核酸配列と相補的な、少なくとも8の連続するヌクレオチド長の核酸配列を有するものが挙げられる。そのような核酸配列は、好ましくは、少なくとも9の連続するヌクレオチド長の、より好ましく10の連続するヌクレオチド長の、さらに好ましくは11の連続するヌクレオチド長の、12の連続するヌクレオチド長の、13の連続するヌクレオチド長の、14の連続するヌクレオチド長の、15の連続するヌクレオチド長の、16の連続するヌクレオチド長の、17の連続するヌクレオチド長の、18の連続するヌクレオチド長の、19の連続するヌクレオチド長の、20の連続するヌクレオチド長の、25の連続するヌクレオチド長の、30の連続するヌクレオチド長の、40の連続するヌクレオチド長の、50の連続するヌクレオチド長の、核酸配列であり得る。プローブとして使用される核酸配列には、上述の配列に対して、少なくとも70%相同な、より好ましくは、少なくとも80%相同な、さらに好ましくは、90%相同な、95%相同な核酸配列が含まれる。プライマーとして適切な配列は、合成(増幅)が意図される配列の性質によって変動し得るが、当業者は、意図される配列に応じて適宜プライマーを設計することができる。そのようなプライマーの設計は当該分野において周知であり、手動でおこなってもよくコンピュータプログラム(例えば、LASERGENE,PrimerSelect,DNAStar)を用いて行ってもよい。
本明細書において、「エピトープ」とは、構造の明らかな抗原決定基をいう。従って、エピトープには特定の免疫グロブリンによる認識に関与するアミノ酸残基のセット、または、T細胞の場合は、T細胞レセプタータンパク質および/もしくは主要組織適合性複合体(MHC)レセプターによる認識について必要であるアミノ酸残基のセットが包含される。この用語はまた、「抗原決定基」または「抗原決定部位」と交換可能に使用される。免疫系分野において、インビボまたはインビトロで、エピトープは、分子の特徴(例えば、一次ペプチド構造、二次ペプチド構造または三次ペプチド構造および電荷)であり、免疫グロブリン、T細胞レセプターまたはHLA分子によって認識される部位を形成する。ペプチドを含むエピトープは、エピトープに独特な空間的コンフォメーション中に3つ以上のアミノ酸を含み得る。一般に、エピトープは、少なくとも5つのこのようなアミノ酸からなり、代表的には少なくとも6つ、7つ、8つ、9つ、または10のこのようなアミノ酸からなる。エピトープの長さは、より長いほど、もとのペプチドの抗原性に類似することから一般的に好ましいが、コンフォメーションを考慮すると、必ずしもそうでないことがある。アミノ酸の空間的コンフォメーションを決定する方法は、当該分野で公知であり、例えば、X線結晶学、および2次元核磁気共鳴分光法を含む。さらに、所定のタンパク質におけるエピトープの同定は、当該分野で周知の技術を使用して容易に達成される。例えば、GeysenらProc.Natl.Acad.Sci.USA 81:3998(1984)(所定の抗原における免疫原性エピトープの位置を決定するために迅速にペプチドを合成する一般的な方法);米国特許第4,708,871号(抗原のエピトープを同定し、そして化学的に合成するための手順);およびGeysenらMolecular Immunology 23:709(1986)(所定の抗体に対して高い親和性を有するペプチドを同定するための技術)を参照されたい。同じエピトープを認識する抗体は、単純な免疫アッセイにおいて同定され得る。このように、ペプチドを含むエピトープを決定する方法は、当該分野において周知であり、そのようなエピトープは、核酸またはアミノ酸の一次配列が提供されると、当業者はそのような周知慣用技術を用いて決定することができる。
従って、ペプチドを含むエピトープとして使用するためには、少なくとも3アミノ酸の長さの配列が必要であり、好ましくは、この配列は、少なくとも4アミノ酸、より好ましくは5アミノ酸、6アミノ酸、7アミノ酸、8アミノ酸、9アミノ酸、10アミノ酸、15アミノ酸、20アミノ酸、25アミノ酸の長さの配列が必要であり得る。エピトープは、市販のキット(例えば、PepSetTM(クラボウ))を用いて当業者が容易に決定することができる。本発明では、あるシグナル伝達において役割を果たすタンパク質のエピトープを提示することによって、シグナル伝達を測定する系を利用してもよい。
本明細書においてある核酸分子またはポリペプチドに「特異的に結合する因子」とは、その核酸分子またはポリペプチドに対するその因子の結合レベルが、その核酸分子またはポリペプチド以外の核酸分子またはポリペプチドに対するその因子の結合レベルと同じかまたはそれよりも高い因子をいう。そのような因子としては、例えば、対象が核酸分子の場合、対象となる核酸分子に対して相補的な配列を有する核酸分子、対象となる核酸配列に対して結合するポリペプチド(例えば、転写因子など)などが挙げられ、対象がポリペプチドの場合、抗体、単鎖抗体、レセプター−リガンドの対のいずれか一方、酵素−基質のいずれか一方などが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書において、このような特異的に結合する因子(例えば、カルシウムに特異的に結合する因子、特定の遺伝子産物に対する抗体など)は、シグナル伝達を測定する際に利用され得る。
本明細書において用いられる用語「抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、多重特異性抗体、キメラ抗体、および抗イディオタイプ抗体、ならびにそれらの断片、例えばF(ab’)およびFabフラグメント、ならびにその他の組換えにより生産された結合体を含む。さらにこのような抗体を、酵素、例えばアルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、αガラクトシダーゼなど、に共有結合させまたは組換えにより融合させてよい。
本明細書中で使用される用語「モノクローナル抗体」は、同質な抗体集団を有する抗体組成物をいう。この用語は、それが作製される様式によって限定されない。この用語は、全免疫グロブリン分子ならびにFab分子、F(ab’)フラグメント、Fvフラグメント、およびもとのモノクローナル抗体分子の免疫学的結合特性を示す他の分子を含む。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を作製する方法は当該分野で公知であり、そして以下でより十分に記載される。
モノクローナル抗体は、当該分野で周知の標準的な技術(例えば、KohlerおよびMilstein,Nature256:495(1975))またはその改変(例えば、BuckらIn Vitro18:377(1982))を使用して調製される。代表的には、マウスまたはラットを、タンパク質キャリアに結合したタンパク質で免疫化し、追加免疫し、そして脾臓(および必要に応じていくつかの大きなリンパ節)を取り出し、そして単一細胞を解離する。必要に応じて、この脾臓細胞は、非特異的接着細胞の除去後、抗原でコーティングされたプレートまたはウェルに細胞懸濁液を適用することにより、スクリーニングされ得る。抗原に特異的なイムノグロブリンを発現するB細胞がプレートに結合し、そして懸濁液の残渣でもリンス除去されない。次いで、得られたB細胞(すなわちすべての剥離した脾臓細胞)をミエローマ細胞と融合させて、ハイブリドーマを得、このハイブリドーマを用いてモノクローナル抗体を産生させることができる。
本明細書において「抗原」(antigen)とは、抗体分子によって特異的に結合され得る任意の基質をいう。本明細書において「免疫原」(immunogen)とは、抗原特異的免疫応答を生じるリンパ球活性化を開始し得る抗原をいう。したがって、化学物質レセプターまたはその下流の産物は、抗原または免疫原として使用され、抗原抗体反応を利用して本発明のセンサを実現することができる。
(ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの改変)
本発明では、化学物質レセプターなどの機能的ポリペプチドを使用する場合、同様の機能(シグナル伝達など)が達成することができる限り、その改変体を使用してもよい。
ここで、あるタンパク質分子において、配列に含まれるあるアミノ酸は、相互作用結合能力の明らかな低下または消失なしに、例えば、カチオン性領域または基質分子の結合部位のようなタンパク質構造において他のアミノ酸に置換され得る。あるタンパク質の生物学的機能を規定するのは、タンパク質の相互作用能力および性質である。従って、特定のアミノ酸の置換がアミノ酸配列において、またはそのDNAコード配列のレベルにおいて行われ得、置換後もなお、もとの性質を維持するタンパク質が生じ得る。従って、生物学的有用性の明らかな損失なしに、種々の改変が、本明細書において開示されたペプチドまたはこのペプチドをコードする対応するDNAにおいて行われ得る。
上記のような改変を設計する際に、アミノ酸の疎水性指数が考慮され得る。タンパク質における相互作用的な生物学的機能を与える際の疎水性アミノ酸指数の重要性は、一般に当該分野で認められている(Kyte.JおよびDoolittle,R.F.J.Mol.Biol.157(1):105−132,1982)。アミノ酸の疎水的性質は、生成したタンパク質の二次構造に寄与し、次いでそのタンパク質と他の分子(例えば、酵素、基質、レセプター、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を規定する。各アミノ酸は、それらの疎水性および電荷の性質に基づく疎水性指数を割り当てられる。それらは:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);スレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン(−4.5))である。
あるアミノ酸を、同様の疎水性指数を有する他のアミノ酸により置換して、そして依然として同様の生物学的機能を有するタンパク質(例えば、酵素活性において等価なタンパク質)を生じさせ得ることが当該分野で周知である。このようなアミノ酸置換において、疎水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。疎水性に基づくこのようなアミノ酸の置換は効率的であることが当該分野において理解される。米国特許第4,554,101号に記載されるように、以下の親水性指数がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);およびトリプトファン(−3.4)。アミノ酸が同様の親水性指数を有しかつ依然として生物学的等価体を与え得る別のものに置換され得ることが理解される。このようなアミノ酸置換において、親水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。
(プロファイルおよび関連技術)
本明細書において、細胞に関する「プロファイル」とは、細胞の生物学的状態の測定の集合をいう。特に、細胞のプロファイルという場合は、プロファイルとは、「細胞構成要素」のレベルを定量的に測定したものの測定値の集合あるいは連続であり得る。細胞構成要素には、生物学的系における遺伝子発現レベル、転写レベル(転写制御配列の活性レベル)、特定の遺伝子をコードするmRNAの存在量、およびタンパク質発現レベルが含まれる。遺伝子をコードするmRNAおよび/またはタンパク質発現レベルなどの細胞の各種構成要素のレベルは、薬物による処置、他の細胞生物学的状態の刺激または振動に応答して変化することが知られている。したがって、複数のそのような「細胞構成要素」の測定は、細胞の生物学的状態に対する刺激の効果に関する情報を豊富に含むことから、このプロファイルは、細胞の分析および詳細な解析においてますます重要となっている。哺乳動物細胞においては3万以上の異なる細胞構成要素が存在する。個々の細胞のプロファイルは通常複雑である。生物学的系の所定の状態のプロファイルは、しばしば、その生物学的系が刺激に付された後で測定される。そのような刺激としては、生物学的系と関係した実験的または環境的状態があり、例えば、生物学的系の薬物候補への暴露、外因性遺伝子の導入、時間の経過、系からの遺伝子の欠失、または培養条件の変更などがある。細胞構成要素の広範囲にわたる測定、つまり細胞における遺伝子の複製または転写、およびタンパク質の発現ならびにそれらの刺激に対する応答のプロファイルは、細胞自体の調査に加えて、薬物の効果の比較および検討、疾病の診断、患者の投薬法の最適化を含めて、広範な有用性がある。さらに、それらは基本的なライフサイエンスの研究においても有用である。
本明細書において「転写制御配列」とは、遺伝子の転写レベルを調節することができる配列をいう。そのような配列は、少なくとも2ヌクレオチド長を有する。そのような配列としては、代表的に、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、ターミネーター、他のゲノム構造中構造遺伝子のフランキング配列およびエキソン以外のゲノム配列、ならびにエキソン中の配列などが挙げられるがそれらに限定されない。本発明において用いられる転写制御配列は、特定の種類に関するものではない。むしろ、転写制御配列として重要な情報は、その経時的な変動である。このような変動は、(細胞状態の変化)プロセスともいう。従って、本発明では、このような転写制御配列は、任意に選択することができる。そのような転写制御配列の中には、従来はマーカーとして使用されていなかったものを含んでいてもよい。好ましくは、転写制御配列は、転写因子に結合する能力を有する。
本明細書において「転写因子」とは、遺伝子の転写の過程を調節する因子をいう。転写因子は、主として転写開始反応を調節する因子をさす。RNAポリメラーゼをDNA上のプロモーター領域に配置するために必要な基本転写因子群、および転写領域の上流および/または下流に存在するシス作用要素に結合してRNAの合成開始頻度を調節する各種の転写調節因子に大別される。
基本転写因子群はRNAポリメラーゼの種類に応じて用意されているが,TATA結合タンパク質は全転写系に共通であるとされている。転写因子の種類は多岐にわたるが、通常、構造上DNA結合に必要な部分と転写活性化または抑制に必要な部分とからなることが多い。DNA結合部位をもちシス作用要素に結合することができる因子を総称してトランス作用因子ともいう。
転写活性化または抑制に必要な部分は、他の転写因子、基本転写因子群との相互作用に関与しており,DNAおよび/または転写開始複合体の構造変化を通して転写調節を果たしていると考えられている.これら各部の構造上の特性から転写調節因子はいくつかのグループあるいはファミリーに分類され、発生または細胞分化において重要な役割をもつ因子も多い。
そのような転写因子としては、例えば、STAT1、STAT2、STAT3、GAS、NFAT、Myc、AP1、CREB、NFκB、E2F、Rb、p53、RUNX1、RUNX2、RUNX3、Nkx−2、CF2−II、Skn−1、SRY、HFH−2、Oct−1、Oct−3 Sox−5、HNF−3b、PPARγなどが挙げられるがそれらに限定されない。本発明では、このような転写因子を利用することによって、シグナル伝達因子の活性化を調べることができることから、これらの転写因子は、本発明のセンサに応用可能である。
本明細書において「経時的」とは、時間の経過に対して何らかの行為または現象を関連付けることをいう。
本明細書において「モニター」とは、少なくとも1つのパラメータ(例えば、転写に起因する標識信号など)を指標に、細胞の状態を観測することをいう。好ましくは、モニターは、検出機器または計測機器などの機器装置を用いて行われる。より好ましくは、このような機器は、データを記録および/または処理するためにコンピュータに接続される。モニターは、固相支持体(例えば、アレイ、プレートなど)の画像データを得る工程を含み得る。あるいは、モニターは、シグナル伝達から得られる物理的データ、化学的データ、生物学的データなどを測定する工程を包含し得る。
本明細書において「リアルタイム」とは、ある状態が、実質的に同時に別の形態で表示される(例えば、ディスプレイ上の画像としてあるいはデータ処理されたグラフとして)ことをいう。そのような場合、リアルタイムは、データ処理にかかる時間だけタイムラグが生じるが、このようなタイムラグは、実質的に無視できる場合は、リアルタイムに包含される。そのようなタイムラグは、通常10秒以内であり、好ましくは1秒以内であり得るが、それらに限定されず、用途によっては、10秒を超える場合もまたリアルタイムと称することがある。
本明細書において細胞の状態の「判定」は、種々の方法を用いて行うことができる。そのような方法は、本明細書において別途説明する、数理的処理(例えば、信号処理法、多変量解析など)、経験的処理、位相の変化などを包含するが、それらに限定されない。
本明細書において「差分」とは、あるプロファイルについて、コントロールプロファイル(例えば、刺激のない場合)の値を差し引いて提示するような数理的処理をいう。
本明細書において「位相」とは、経時プロファイルについて言及されるとき、そのプロファイルが基準点(通常0とする)より増えているかまたは減っているかを判定し、それぞれ+または−として表現することおよびそれによる解析をいう。
本明細書において、得られた情報(例えば、プロファイル)と、測定対象の化学物質(嗅覚源、味覚源など)との「相関付け」とは、得られた情報(例えば、プロファイル)またはその変化の特定の情報を、化学物質(嗅覚源、味覚源など)に対応付けることをいい、そのような関係を相関関係という。
本明細書において、相関付けは、少なくとも1つの得られた情報(例えば、レセプターの活性化などに関する情報、プロファイルなど)またはその変動と、化学物質の存在、変化、種類などに関する情報とを関連付けること、例えば、少なくとも1つのパラメータレベルにおいて、定量的または定性的に対応付けることによって行うことができる。相関付けに使用される少なくとも1つのパラメータの数は、相関付けが行うことができる限り少ない数であってよく、通常少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つであり得るがそれらに限定されない。本発明では、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの少なくとも1つのパラメータを特定することによって、ほぼすべての細胞を特定するに充分であることが判明した。このような場合、少なくとも1つのパラメータと、細胞の状態とを対応付ける場合は、行列式などを利用して数学的処理を行ってもよい。1つの好ましい実施形態において、相関付けに使用する少なくとも1つのプロファイル(例えば、経時プロファイル)の数は少なくとも8つであることが有利であり得る。あるいは、ある生物が有する化学物質レセプターをすべて(例えば、嗅覚レセプターすべて、味覚レセプターすべて)を利用してもよい。ある生物が有する化学物質レセプターすべてを利用することによって、その生物が検知することができる化学物質を、原理的には、すべて解析することができるからである。
相関付けの具体的方法としては、例えば、信号処理法(ウエーブレットなどによる)、多変量解析(クラスター解析など)などを利用する方法が挙げられるがそれらに限定されない。
相関付けは、あらかじめ行っていてもよいが、チップ、センサのロットあるいは測定ごとなどにコントロールを使用して行ってもよい。
本明細書において「外来因子」とは、ある細胞について言及するとき、その細胞において通常内部に存在しない因子(例えば、物質、エネルギーなど)をいう。従って、本発明では、化学物質の概念を一部包含する。本明細書において「因子」としては、意図する目的を達成することができる限りどのような物質または他の要素(例えば、電離線、放射線、光、音波などのエネルギー)でもあってもよい。そのような物質としては、例えば、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、またはmRNA、RNAiのようなRNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、有機低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)など)、これらの複合分子が挙げられるがそれらに限定されない。外来因子は、1つ用いられてもよいが、2つ以上の組み合わせを用いてもよい。本明細書において外来因子としては、温度変化、湿度変化、電磁波、電位差、可視光線、赤外線、紫外線、X線、化学物質、圧力、重力変化、ガス分圧および浸透圧などが挙げられるがそれらに限定されない。1つの好ましい実施形態において、外来因子は、生体分子または化学物質であり得る。本発明の化学物質レセプターを利用したセンサは、基本的に化学物質を測定対象とするが、原理的にはこのような外来因子すべてを測定することができることを当業者は容易に理解することができる。
(支持体への固定)
本明細書において「細胞接着因子」もしくは「細胞接着分子」(Cell adhesion molecule)または「接着因子」もしくは「接着分子」とは、互換可能に使用され、2つ以上の細胞の互いの接近(細胞接着)または基質と細胞との間の接着を媒介する分子をいう。一般には、細胞と細胞との間の接着(細胞間接着)に関する分子(cell−cell adhesion molecule)と,細胞と細胞外マトリックスとの接着(細胞−基質接着)に関与する分子(cell−substrate adhesion molecule)に分けられる。本発明の組織片では、いずれの分子も有用であり、有効に使用することができる。従って、本明細書において細胞接着分子は、細胞−基質接着の際の基質側のタンパク質を包含するが、本明細書では、細胞側のタンパク質(例えば、インテグリンなど)も包含され、タンパク質以外の分子であっても、細胞接着を媒介する限り、本明細書における細胞接着分子または細胞接着分子の概念に入る。
細胞間接着を担う分子に関しては、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、カドヘリン、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する多くの分子(NCAM、L1、ICAM、ファシクリンII、IIIなど)、セレクチンなどが知られており、それぞれ独特な分子反応により細胞膜を結合させることも知られている。
他方、細胞−基質接着のために働く主要な細胞接着分子はインテグリンで,細胞外マトリックスに含まれる種々のタンパク質を認識し結合する。これらの細胞接着分子はすべて細胞膜表面にあり,一種のレセプター(細胞接着レセプター)とみなすこともできる。従って、細胞膜にあるこのようなレセプターもまた本発明の組織片において使用することができる。そのようなレセプターとしては、例えば、αインテグリン、βインテグリン、CD44,シンデカンおよびアグリカンなどが挙げられるがそれに限定されない。細胞接着に関する技術は、上述のもののほかの知見も周知であり、例えば、細胞外マトリックス−臨床への応用− メディカルレビュー社に記載されている。
ある分子が細胞接着分子であるかどうかは、生化学的定量(SDS−PAG法、標識コラーゲン法)、免疫学的定量(酵素抗体法、蛍光抗体法、免疫組織学的検討)PDR法、ハイブリダイゼイション法などのようなアッセイにおいて陽性となることを決定することにより判定することができる。このような細胞接着分子としては、コラーゲン、インテグリン、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、フィブリノゲン、免疫グロブリンスーパーファミリー(例えば、CD2、CD4、CD8、ICM1、ICAM2、VCAM1)、セレクチン、カドヘリンなどが挙げられるがそれに限定されない。このような細胞接着分子の多くは、細胞への接着と同時に細胞間相互作用による細胞活性化の補助シグナルを細胞内に伝達する。そのような補助シグナルを細胞内に伝達することができるかどうかは、生化学的定量(SDS−PAG法、標識コラーゲン法)、免疫学的定量(酵素抗体法、蛍光抗体法、免疫組織学的検討)PDR法、ハイブリダイゼイション法というアッセイにおいて陽性となることを決定することにより判定することができる。
細胞接着分子としては、例えば、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、コラーゲン、カドヘリン、免疫グロブリンスーパーファミリー分子(CD2、LFA−3、ICAM−1、CD2、CD4、CD8、ICM1、ICAM2、VCAM1など);インテグリンファミリー分子(LFA−1、Mac−1、gpIIbIIIa、p150、95、VLA1、VLA2、VLA3、VLA4、VLA5、VLA6など);セレクチンファミリー分子(L−セレクチン,E−セレクチン,P−セレクチンなど)などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「細胞外マトリクスタンパク質」とは「細胞外マトリクス」のうちタンパク質であるものをいう。本明細書において「細胞外マトリクス」(ECM)とは「細胞外基質」とも呼ばれ、当該分野において通常用いられる意味と同様の意味で用いられ、上皮細胞、非上皮細胞を問わず体細胞(somaticcell)の間に存在する物質をいう。細胞外マトリクスは、組織の支持だけでなく、すべての体細胞の生存に必要な内部環境の構成に関与する。細胞外マトリクスは一般に、結合組織細胞から産生されるが、一部は上皮細胞または内皮細胞のような基底膜を保有する細胞自身からも分泌される。線維成分とその間を満たす基質とに大別され、線維成分としては膠原線維および弾性線維がある。基質の基本構成成分はグリコサミノグリカン(酸性ムコ多糖)であり、その大部分は非コラーゲン性タンパクと結合してプロテオグリカン(酸性ムコ多糖−タンパク複合体)の高分子を形成する。このほかに、基底膜のラミニン、弾性線維周囲のミクロフィブリル(microfibril)、線維、細胞表面のフィブロネクチンなどの糖タンパクも基質に含まれる。特殊に分化した組織でも基本構造は同一で、例えば硝子軟骨では軟骨芽細胞によって特徴的に大量のプロテオグリカンを含む軟骨基質が産生され、骨では骨芽細胞によって石灰沈着が起こる骨基質が産生される。従って、本発明において用いられる細胞外マトリクスとしては、例えば、コラーゲン、エラスチン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、弾性繊維、膠原繊維などが挙げられるがそれに限定されない。これらの細胞外マトリクスもまた、本発明において細胞を固定させるために使用され得る。
(デバイス・固相支持体)
本明細書において「デバイス」とは、装置の一部または全部を構成することができる部分をいい、支持体(好ましくは固相支持体)およびその支持体に担持されるべき標的物質などから構成される。そのようなデバイスとしては、チップ、アレイ、マイクロタイタープレート、細胞培養プレート、シャーレ、フィルム、ビーズなどが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書では、好ましくは、センサ形態を適合され得るデバイスが利用される。本発明では、好ましくは、チップ形態がデバイスとして好ましい。
本明細書において使用される「支持体」は、生体分子のような物質を固定することができる材料(material)をいう。支持体の材料としては、共有結合かまたは非共有結合のいずれかで、本発明において使用される生体分子のような物質に結合する特性を有するかまたはそのような特性を有するように誘導体化され得る、任意の固体材料が挙げられる。
支持体として使用するためのそのような材料としては、固体表面を形成し得る任意の材料が使用され得るが、例えば、ガラス、シリカ、シリコン、セラミック、二酸化珪素、プラスチック、金属(合金も含まれる)、天然および合成のポリマー(例えば、ポリスチレン、セルロース、キトサン、デキストラン、およびナイロン)などが挙げられるがそれらに限定されない。支持体は、複数の異なる材料の層から形成されていてもよい。例えば、ガラス、石英ガラス、アルミナ、サファイア、フォルステライト、酸化珪素、炭化珪素、窒化珪素などの無機絶縁材料を使用することができる。ポリエチレン、エチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、シリコーン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホンなどの有機材料を用いることができる。本発明においてはまた、ニトロセルロース膜、ナイロン膜、PVDF膜など、ブロッティングに使用される膜を用いることもできる。支持体を構成する材料が固相である場合、本明細書において特に「固相支持体」という。本明細書において、プレート、マイクロウェルプレート、チップ、スライドグラス、フィルム、ビーズ、金属(表面)などの形態をとり得る。支持体はコーティングされていてもよく、コーティングされていなくてもよい。
本明細書において「液相」とは、当該分野において通常用いられる意味と同じ意味で用いられ、通常、溶液中での状態をいう。そのような溶液は、本明細書では、細胞を維持または生存させることができる溶液(例えば、培地)であることが好ましい。
本明細書において「固相」とは、当該分野において用いられる意味と同じ意味で用いられ、通常、固体の状態をいう。本明細書において液体および固体を総合して流体ということがある。
本明細書において使用される「基板」とは、本発明のチップまたはアレイが構築される材料(好ましくは固体)をいう。したがって、基板はプレートの概念に包含される。基板の材料としては、共有結合かまたは非共有結合のいずれかで、本発明において使用される生体分子に結合する特性を有するかまたはそのような特性を有するように誘導体化され得る、任意の固体材料が挙げられる。
プレートおよび基板として使用するためのそのような材料としては、固体表面を形成し得る任意の材料が使用され得るが、例えば、ガラス、シリカ、シリコン、セラミック、二酸化珪素、プラスチック、金属(合金も含まれる)、天然および合成のポリマー(例えば、ポリスチレン、セルロース、キトサン、デキストラン、およびナイロン)が挙げられるがそれらに限定されない。基板は、複数の異なる材料の層から形成されていてもよい。例えば、ガラス、石英ガラス、アルミナ、サファイア、フォルステライト、炭化珪素、酸化珪素、窒化珪素などの無機絶縁材料を使用できる。また、ポリエチレン、エチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、シリコーン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン等の有機材料を用いることができる。基板として好ましい材質は、測定機器などの種々のパラメータによって変動し、当業者は、上述のような種々の材料から適切なものを適宜選択することができる。トランスフェクションアレイのためには、スライドグラスが好ましい。好ましくは、そのような基材は、別の物質または同一の物質でコーティングされ得る。
本明細書において「コーティング」とは、固相支持体または基板について用いられるとき、その固相支持体または基板の表面上にある物質の膜を形成させることおよびそのような膜をいう。コーティングは種々の目的で行われ、例えば、固相支持体および基板の品質向上(例えば、寿命の向上、耐酸性などの耐環境性の向上)、固相支持体または基板に結合されるべき物質の親和性の向上などを目的とすることが多い。そのようなコーティングのための物質としては、種々の物質が用いられ得、上述の固相支持体および基板自体に使用される物質のほか、DNA、RNA、タンパク質、脂質などの生体物質、ポリマー(例えば、ポリ−L−リジン、MAS(松浪硝子、岸和田、日本から入手可能)、疎水性フッ素樹脂)、シラン(APS(例えば、γ−アミノプロピルシラン))、金属(例えば、金など)が使用され得るがそれらに限定されない。そのような物質の選択は当業者の技術範囲内にあり、当該分野において周知の技術を用いて場合ごとに選択することができる。一つの好ましい実施形態では、そのようなコーティングは、ポリ−L−リジン、シラン、(例えば、エポキシシランまたはメルカプトシラン、APS(γ−アミノプロピルシラン))、MAS、疎水性フッ素樹脂、金のような金属を用いることが有利であり得る。このような物質は、細胞または細胞を含む物体(例えば、生体、臓器など)に適合する物質を用いることが好ましい。
本明細書において「チップ」または「マイクロチップ」は、互換可能に用いられ、多様の機能をもち、システム(例えば、センサ、診断システム)の一部となる超小型集積回路をいう。チップとしては、例えば、DNAチップ、プロテインチップなどが挙げられるがそれらに限定されない。
チップには、溶液を供給するチューブが備えられ得る。このようなチューブは、目的とする試料において目的とする化学物質に有害な影響を与えない限り、どのような材質のものを利用してもよい。溶液として刺激を投与する場合は、流速は1〜4mm/秒程度、好ましくは2.5mm/秒とし、細胞が水圧による機械的刺激を受け難く、かつ、なるべく全体が短時間内に刺激できるようにする。ガス状の刺激を投与する場合は、アレイ状のセンサ部中央に検出対象のガスが導入されるようにする。このための方法は、公知の方法いずれを用いても良い。一例として、センサ部を密閉し、排気ポンプをこれに接続し弱い陰圧をかけ、外部から測定対象のガスを導入するためのチューブの開口をセンサ部近傍に固定し、ガスを細胞が漬かる溶液に導入する際に水面に当たる風により生じる液面の物理的な変動が測定信号に影響を与えないようにするために、センサアレイ上の測定領域にはカバーガラスをかけて液面を一定に保っておき、導入されたガスは一定の流速で流れている細胞を浸している無臭の溶液に細胞の上流で吹き付けさせることによりセンサ部を均一に刺激する構造としてもよい。または、別の実施形態としては、センサ部上部にカバーグラスを設置せず、信号に風による水面変動の影響が出ない程度の強さでセンサアレイに導入ガスを均一に直接当たるようにすることも可能である。この時のセンサ部の水深は1〜2mm程度の浅くかつ溶液が疎水性の刺激成分などでセンサ部から撥水しない条件にしておく。細胞の周囲を清浄に維持するために、測定後20〜30秒経過した後に、細胞周囲の溶液を目的とする化学物質を含まない溶液に交換することも必要である。
本明細書において「アレイ」とは、1以上(例えば、1000以上)の標的物質を含む組成物(例えば、DNA、タンパク質、トランスフェクト混合物)が整列されて配置されたパターンまたはパターンを有する基板(例えば、チップ)そのものをいう。アレイの中で、小さな基板(例えば、10×10mm上など)上にパターン化されているものはマイクロアレイというが、本明細書では、マイクロアレイとアレイとは互換可能に使用される。従って、上述の基板より大きなものにパターン化されたものでもマイクロアレイと呼ぶことがある。例えば、アレイはそれ自身固相表面または膜に固定されている所望のトランスフェクト混合物のセットで構成される。アレイは好ましくは同一のまたは異なる生体分子を少なくとも10個、より好ましくは少なくとも10個、およびさらに好ましくは少なくとも10個、さらにより好ましくは少なくとも10個を含む。これらの生体分子は、好ましくは表面が125×80mm、より好ましくは10×10mm上に配置される。形式としては、96ウェルマイクロタイタープレート、384ウェルマイクロタイタープレートなどのマイクロタイタープレートの大きさのものから、スライドグラス程度の大きさのものが企図される。固定される標的物質を含む組成物は、1種類であっても複数種類であってもよい。そのような種類の数は、1個〜スポット数までの任意の数であり得る。例えば、約10種類、約100種類、約500種類、約1000種類の標的物質を含む組成物が固定され得る。
基板のような固相表面または膜には、上述のように任意の数の標的物質(例えば、抗体のようなタンパク質)が配置され得るが、通常、基板1つあたり、10個の生体分子まで、他の実施形態において10個の生体分子まで、10個の生体分子まで、10個の生体分子まで、10個の生体分子まで、10個の生体分子まで、または10個の生体分子までの個の生体分子が配置され得るが、10個の生体分子を超える標的物質を含む組成物が配置されていてもよい。これらの場合において、基板の大きさはより小さいことが好ましい。特に、標的物質を含む組成物(例えば、抗体のようなタンパク質)のスポットの大きさは、単一の生体分子のサイズと同じ小さくあり得る(これは、1−2nmの桁であり得る)。最小限の基板の面積は、いくつかの場合において基板上の生体分子の数によって決定される。本発明では、細胞への導入が企図される標的物質を含む組成物は、通常、0.01mm〜10mmのスポット状に共有結合あるいは物理的相互作用によって配列固定されている。
アレイ上には、生体分子の「スポット」が配置され得る。本明細書において「スポット」とは、標的物質を含む組成物の一定の集合をいう。本明細書において「スポッティング」とは、ある標的物質を含む組成物のスポットをある基板またはプレートに作製することをいう。スポッティングはどのような方法でも行うことができ、例えば、ピペッティングなどによって達成され得、あるいは自動装置で行うこともでき、そのような方法は当該分野において周知である。
本明細書において使用される用語「アドレス」とは、基板上のユニークな位置をいい、他のユニークな位置から弁別可能であり得るものをいう。アドレスは、そのアドレスを伴うスポットとの関連づけに適切であり、そしてすべての各々のアドレスにおける存在物が他のアドレスにおける存在物から識別され得る(例えば、光学的)、任意の形状を採り得る。アドレスを定める形は、例えば、円状、楕円状、正方形、長方形であり得るか、または不規則な形であり得る。したがって、「アドレス」は、抽象的な概念を示し、「スポット」は具体的な概念を示すために使用され得るが、両者を区別する必要がない場合、本明細書においては、「アドレス」と「スポット」とは互換的に使用され得る。本明細書では、アドレスまたはスポットには、各々異なる化学物質レセプターを発現する細胞が配置されてもよく、そのうち一部または全部が同一の化学物質を発現する細胞が配置されてもよい。さらに、または、代替的に、少なくとも1つのアドレスまたはスポットには、複数の化学物質レセプターを発現する細胞が配置されてもよいがそれに限定されない。
各々のアドレスを定めるサイズは、とりわけ、その基板の大きさ、特定の基板上のアドレスの数、標的物質を含む組成物の量および/または利用可能な試薬、微粒子のサイズおよびそのアレイが使用される任意の方法のために必要な解像度の程度に依存する。大きさは、例えば、1−2nmから数cmの範囲であり得るが、そのアレイの適用に一致した任意の大きさが可能である。
検出対象となる刺激の種類、質、強度などを評価する目的に本センサーを用いる場合、刺激はガス状あるいは溶液状でセンサチップ部に導入されることが好ましい。従って、本発明の好ましい実施形態では、細胞を含む部分は、液体に覆われていることが好ましい。好ましい実施形態では、細胞は、その細胞の生存を維持または増殖を支持する培地に含まれることが好ましく、より好ましい実施形態では、その培地は液体培地であり得る。この場合、刺激は少なくともアレイの表面積程度には希釈されるため、高感度の刺激検出と精度の高い評価を行うためには、前述のアレイのより好ましいサイズ10mm×10mmよりさらに小さいサイズのアレイにすることが好ましい。また、この微小化はアレイ全体を実質的に同時と考えられる範囲内の時間的ずれをもって、刺激することを可能にすると考えられる。これは、一般の計測システムの避けられない問題として、ノイズ成分が時間によって変動する影響を最小にする効果も有していると考えられる。ただし、あまり小さ過ぎるとノイズの影響を受けやすくなるので、全ての要素センサに同時に、かつ均一に刺激が接触するために、アレイ状のセンサチップ部のサイズは、適度に小さくする。このためのアレイ状のセンサチップ部のサイズは、好ましくは、長手方向(円状の場合、直径)15mm以内、より好ましくは長手方向7.5mm以内であり、感度と安定性とが十分であれば、長手方向1mm以内が好ましいがそれに限定されない。長手方向15mm以上のものでも、刺激のアレイ内での到達の遅延が刺激導入時に毎回同じように生じるのであれば、その遅延時間と拡散による刺激濃度の低下を補正する係数あるいは定数を用いて、各要素センサの検出信号を時間と強度において補正し、同時にかつ均一に刺激されて得られた信号群として取り扱えるようにしておくが必要であり得る。また、細胞部分が液体に浸されている好ましい実施形態において、本センサーを嗅覚センサーとして用いる場合の長所は、この刺激をセンサーに投与する方法にもある。従来の嗅覚センサーの多くが、ドライな状態で刺激を計測しようとして設計され、そのために周囲の環境により異なってしまう湿度の影響を大きく受けるものになっていた。これを解決するために試料の加湿減湿によりセンサー部に導入される試料湿度を一定に保つ工夫に苦慮していた。一方、本センサーでは、センサーとなる細胞は溶液に使っているため、信号への湿度の影響は生じなくなっている。この点で大きな利点をもつ。
アドレスを定める空間配置および形状は、そのマイクロアレイが使用される特定の適用に適合するように設計される。アドレスは、密に配置され得、広汎に分散され得るか、または特定の型の分析物に適切な所望のパターンへとサブグループ化され得る。
マイクロアレイについては、ゲノム機能研究プロトコール(実験医学別冊 ポストゲノム時代の実験講座1)、ゲノム医科学とこれからのゲノム医療(実験医学増刊)などに広く概説されている。
マイクロアレイから得られるデータは膨大であることから、クローンとスポットとの対応の管理、データ解析などを行うためのデータ解析ソフトウェアが重要である。そのようなソフトウェアとしては、各種検出システムに付属のソフトウェアが利用可能である(Ermolaeva OらNat.Genet.20:19−23(1998))。また、データベースのフォーマットとしては、例えば、Affymetrixが提唱しているGATC(genetic analysis technology consortium)と呼ばれる形式が挙げられる。
(検出)
本発明の化学物質のセンサを利用した化学物質に関する情報を得るための方法では、細胞またはそれに相互作用する物質に起因する情報(物理学的信号、化学的信号、または生物学的信号)を検出することができる限り、種々の検出方法および検出手段を用いることができる。そのような検出方法および検出手段としては、例えば、目視、光学顕微鏡、共焦点顕微鏡、蛍光顕微鏡、レーザー光源を用いた読取装置、レーザ顕微鏡、多光子吸収蛍光顕微鏡、表面プラズモン共鳴(SPR)イメージング、電気信号、細胞内カルシウムを測定する手段、化学的または生化学的マーカーのいずれかあるいは複数種を検出する方法および手段またはそれらに画像処理装置を組み合わせたものを挙げることができるがそれらに限定されない。そのような検出装置としてはまた、蛍光分析装置、分光光度計、シンチレーションカウンター、CCD、SITビデオカメラ、ルミノメーターなども挙げられるがそれらに限定されず、生体分子を検出することができる手段であればどのようなものでもよい。
本明細書において「標識」とは、目的となる分子または物質を他から識別するための存在(たとえば、物質、エネルギー、電磁波など)をいう。そのような標識方法としては、RI(ラジオアイソトープ)法、蛍光法、ビオチン法、化学発光法等を挙げることができる。上記の核酸断片および相補性を示すオリゴヌクレオチドを何れも蛍光法によって標識する場合には、蛍光発光極大波長が互いに異なる蛍光物質によって標識を行う。蛍光発光極大波長の差は、10nm以上であることが好ましい。蛍光物質としては、本発明においてシグナルを検出することができる何れも用いることができるが、fura−2(カルシウム検出)、fluo−4(カルシウム検出)、シアニン色素(例えば、Cy DyeTMシリーズのCy3、Cy5等)、ローダミン6G試薬、N−アセトキシ−N2−アセチルアミノフルオレン(AAF)、AAIF(AAFのヨウ素誘導体)等を使用することが好ましい。蛍光発光極大波長の差が10nm以上である蛍光物質としては、例えば、Cy5とローダミン6G試薬との組み合わせ、Cy3とフルオレセインとの組み合わせ、ローダミン6G試薬とフルオレセインとの組み合わせ等を挙げることができる。本発明では、このような標識を利用して、使用される検出手段に検出され得るように目的とする対象を改変することができる。そのような改変は、当該分野において公知であり、当業者は標識におよび目的とする対象に応じて適宜そのような方法を実施することができる。
本明細書において「相互作用」には、疎水性相互作用、親水性相互作用、水素結合、ファンデルワールスカ、イオン性相互作用、非イオン性相互作用、静電的相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「相互作用のレベル」とは、2つの物質(細胞などを含む)の間の相互作用について言及する場合、その2つの物質の間の相互作用の程度または頻度をいう。そのような相互作用のレベルは、当該分野において周知の方法によって測定することができる。そのような方法としては、例えば、実際に相互作用し固定状態にある細胞の数を、例えば、光学顕微鏡、蛍光顕微鏡、位相差顕微鏡などを利用して、直接または間接的に(例えば、反射光強度)計数すること、細胞に特異的なマーカー、抗体、蛍光標識などで染色しその強度を測定することなどが挙げられるがそれらに限定されない。これらのレベルは、マーカーから直接または標識を介して間接的に表示することができる。このような測定値から、例えば、あるスポットにおいて実際に転写または発現する遺伝子の個数または頻度を算出することができる。
(遺伝子発現の解析)
本明細書において遺伝子発現の解析に用いられる数理処理は、例えば、生命システム解析のための数学、コロナ社、清水和幸(1999)などにおいて記載される周知技術を適用することができる。以下にそのようなもののなかから代表的な解析手法を説明する。
1つの実施形態では、そのような数理処理は、回帰分析であり得る。回帰分析としては、線形回帰(単回帰分析法、重回帰分析法、ロバスト推定法などが挙げられる)、非線形推定法などが挙げられるがそれらに限定されない。
単回帰分析法では、n組のデータ(x,y)〜(x,y)のデータ組を、y=ax+b+e(i=1,2...n)にフィットさせることによって分析が行われる。ここで、aおよびbは、モデルパラメータであり、eは直線からのずれまたは誤差である。ここで、データ点と直接との垂直方向の距離の二乗和の平均値が最小となるようにaおよびbを決めるという分析が通常行われる。このような場合、偏微分をして、連立一次方程式を立て、これを解くことによって、二乗誤差を最低にする値が求められる。このような値を、最小二乗推定値という。
次に、それぞれのデータから平均値を引いた値に対して回帰直接を求める。回帰直線として
AΣ+B=ΣY
というものを想定し、B=0を仮定した場合の回帰直線を求めることができる。このとき、(x,y)(i=1,2,...n)の中からそれぞれの平均値(xaveおよびyave)を求め、xの分散sxxおよびx、yの共分散sxyを求め、次式により回帰直線を求めることができる。
y−yave=(sxy/sxx)(x−xave)。
ここで、rxyを相関係数とすると、
Σe /n=syy(1−rxy )の関係があることから、|rxy|が1に近いほど、誤差は少なく、データは回帰直線でよく表せることを意味する。ここで、rxy=sxy/√(sxyyy)である。
別の実施形態において使用される重回帰分析法は、yが1つの独立変数ではなく、2つまたはそれ以上の変数の関数と考えられ、例えば、
y=a+a+a+...+a
であらわされるような式で表され、これを重回帰式という。ここで、aなどは(偏)回帰係数と呼ばれる。重回帰分析法では、最小二乗法を適用して、正規方程式を解くことによって、重みつき最小二乗推定が求められる。ここでも単回帰分析と同様の評価を行うことが可能である。
別の実施形態において、ロバスト推定法が用いられる。最小二乗法は、測定値に偏りがなく、その測定誤差が正規分布をし、モデルにも近似の誤差がないという前提に基づいている。しかし、ここでは、実際の測定ミス、単純ミスなどがあり得ることから、そのような信頼できないデータを、大多数の信頼できるデータから、アウトライヤー(outlier)として検出して除いたり、または統計処理をすることをロバスト推定法という。このようなロバスト推定法もまた、本発明において利用され得る。
非線形推定法もまた本明細書において用いられ得る。このような非線形推定法では、非線形モデルをベクトル方程式として表して解を求めることが可能である。
本発明において用いられる数理処理としては、このほかに、主成分分析法、があり、二次元データの主成分分析、多次元データの主成分分析、特異値分解、一般化逆行列を利用する。あるいは、正準相関分析法、因子分析法、判別分析法、クラスター分析法などが利用され得る。
(クラスター分析による遺伝子セット分類)
多くの用途に対して、広範な条件にわたって共同で制御される基準転写制御配列のセットを見出すことが所望され得る。このような基準転写制御配列セットを同定する実施形態としては、クラスター化アルゴリズムが挙げられる(クラスター化アルゴリズムの概説は、例えば、Fukunaga、1990、Statistical Pattern Recognition、2nd ed.、Academic Press、San Diego;Anderberg、1973、Cluster Analysis for Applications、Academic Press:New York;Everitt、1974、Cluster Analysis、London:Heinemann Educ.Books;Hartigan、1975、Clustering Algorithms、New York:Wiley;SneathおよびSokal、1973、Numerical Taxonomy、Freemanを参照)。
化学物質レセプターにおける刺激または感覚要素(例えば、味覚要素、嗅覚要素)のセットは、シグナル伝達機構に基づいて定義することもできる。このような機構は、多重アラインメント分析を用いて比較し、解析することができる(Stormo and Hartzell,1989,Proc Natl Acad Sci 86:1183−1187;Hertz and Stormo,1995,Proc of 3rd Intl Conf on Bioinformatics and Genome Research,Lim and Cantor編,World Scientific Publishing Co.,Ltd.Singapore,pp.201−216)。
クラスター分析を用いる実施形態において、生物学的サンプルに種々の感覚刺激を施しながら、多数の化学物質レセプターの状態をモニターし、その結果がクラスター分析に用いられる。クラスター分析のためには、通常少なくとも約2、好ましくは少なくとも約3つ、より好ましくは少なくとも約10、さらに好ましくは少なくとも約20、さらに好ましくは約50を超え、さらに好ましくは約100を超え、もっとも好ましくは300を超える刺激または条件を用いることが有利である。クラスター分析はm×k次元を有するデータの表に対して行い、ここでmは条件または刺激の合計数であり、かつkは測定する転写制御配列の数である。
多くのクラスター化アルゴリズムがクラスター化分析に有用である。クラスター化アルゴリズムは、クラスターを形成する場合に、対象間の相違点または距離を用いることができる。ここで、距離としては、ユークリッド距離、マンハッタン距離などを用いることができる。
1つの実施形態において、本発明では、種々のクラスター連関法則が有用である。
このような方法としては、例えば、単一連関法、最近接点法などが挙げられこれらの方法は、2つの最も近い対象物間の距離を測定する。あるいは、本発明において使用され得る完全連関法は、異なるクラスターにある2つの対象物間の最大距離で距離を測定する。この方法は、遺伝子または他の細胞構成要素が天然に別個の「凝集(clump)」を形成する場合には特に有用である。
あるいは、非加重ペア群の平均が、2つの異なるクラスターにおける対象物ペア全ての間の平均距離として距離を定義する。この方法もまた、天然に別個の「凝集」を形成する遺伝子または他の細胞構成要素をクラスター化するのに非常に有用である。最後に、加重ペア群平均法も利用可能である。この方法は、それぞれのクラスターのサイズを重みとして使用することを除けば非加重ペア群平均法と同じである。この方法は、転写制御配列などのクラスターのサイズが非常に可変すると疑われる実施形態に特に有用である(SneathおよびSokal、1973,Numerical taxonomy,San Francisco:W.H.Freeman & Co.)。他のクラスター連関法則、例えば非加重および加重ペア群セントロイドおよびウオード法もまた本発明のいくつかの実施形態に有用である。例えば、Ward,1963,J.Am.Stat Assn.58:236;Hartigan,1975,Clustering algorithms,New York:Wileyを参照のこと。
ある好ましい一つの実施形態において、クラスター分析はhclustの周知技術(例えば、プログラムS−Plus,MathSoft,Inc.,Cambridge,MAからの「hclust」の周知の手順を参照のこと)を用いて行うことができる。
クラスター化セットにおける刺激の多様性が大きくなっても、本発明の方法で解析した場合は、通常少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つのプロファイルを解析しただけで、細胞の状態をほぼ解明することができるということが本発明により見出された。このような刺激条件には、異なる濃度での薬剤処理、処理後の異なる測定時間、種々の遺伝子中の遺伝的変異に対する応答、薬剤処理と変異との組合せ、ならびに増殖条件の変化(味覚源、嗅覚源、カルシウム濃度など)が含まれる。
本明細書において統計学的に「有意に異なる」とは、2つの統計量について言及されるとき、統計的有意性を伴って異なることをいう。本発明のある実施形態において、実験のセットを横断する各細胞構成要素の応答に関する実験の見出しを、モンテカルロ法で無作為化することにより、客観的試験を定義することができる。
好ましい実施形態において、客観的統計学的検定を用いてあらゆるクラスター化法またはアルゴリズムのグループ化決定の統計学的信頼性を判定することができる。好ましくは、同様の検定を、階層的および非階層的クラスター化法の双方に用いることができる。クラスターのコンパクト性は、例えば、「クラスターの平均値」からのクラスターのエレメントの距離の二乗の平均として、またより好ましくは、クラスターの平均値からのエレメントの距離の二乗の平均値の逆数として、定量的に定義される。特定のクラスターのクラスター平均値は、一般に、クラスターの全てのエレメントの応答ベクトルの平均値として定義される。しかし、特定の実施形態(クラスターの平均値に定義が疑わしい場合など)では、例えば、正規化または加重内積の絶対値を用いて、クラスター化アルゴリズムの距離関数(即ち、I=1−|r|)を評価する。通常、この平均値の定義は、応答ベクトルが反対方向を向き、上記に定義するクラスター平均値がゼロになりうる実施形態では問題を包含し得る。従って、このような実施形態では、クラスターのコンパクト性の異なる定義を選択することが好ましく、例えば限定はしないが、クラスター内のエレメントの全てのペア間の距離の二乗の平均値などがある。あるいは、クラスターのコンパクト性は、クラスターの各エレメント(例えば、細胞構成要素)からそのクラスターの他のエレメントまでの平均距離(またはより好ましくは、平均距離の逆数)を意味すると定義することができる。
本発明において用いられる統計的方法においても使用することができるその他の定義は、当業者には明らかである。
別の実施形態では、本発明によって得られる情報は、信号処理技術を用いて解析することができる。そのような信号処理技術では、相関関数を定義し、相関係数を計算し、自己相関関数および相互相関関数を定義し、これらについて、重み付けの総和が1になるように計算することによって、移動平均を求めることができる。
信号処理において、時間領域および周波数領域を考慮することが重要であり得る。自然現象、特に生命および生体の動特性解析において、リズムは重要であることが多い。ここで、ある時間関数f(t)を考えると、次の条件を満たす関数を周期関数という。
f(t)=f(t+T)
ここで、時間軸上の基準となる点、例えば、時間0の点を基準に考えると、このときの関数の値はf(0)であり、その後種々の変動を繰り返した後時刻Tの時点でf(0)と同じ値に戻ることになる。このような関数を周期関数と呼び、このような関数としては、例えば、正弦様波が代表例として挙げられる。ここで、Tを周期と呼ぶ。ここで、T時間に1回のサイクルを有することをこれは意味するが、単位時間当たりのサイクル数に置き換えて1/T(サイクル/時間)と表現してもその情報は失われない。このように単位時間当たりのサイクル数で表現される概念は周波数と呼ばれる。ここで周波数をfとしてあらわすと、
f=1/T
で表現できる。ここで、時間と周波数とは表裏の関係であり、時間を扱う場合を時間領域を扱うといい、周波数を扱う場合を周波数領域を扱うという。ここでは、電気工学的に周波数を表現することもできる。例えば、周期は、1周期を角度に直して、360°または2πラジアンとして表現することが可能である。このように表現する場合、f(サイクル/秒)は2π(ラジアン/秒)となり、これを一般にω(=2πf)とあらわして、角周波数を呼ぶ。
ここで、正弦波と余弦波とを比較すると、余弦波は正弦波に比べて90°またはπ/2ラジアン平行移動させたものになる。ここで、正弦波は余弦波の時間遅れとしてあらわすことができ、この時間の遅れを位相(phase)という。例えば、純粋な余弦波において位相を0とすると、正弦波では位相は90°となる。例えば、正弦波と余弦波とを足したものは、振幅が√2増え、位相がπ/4となる。
このような解析において、フーリエ級数および周波数解析の手法が利用され得る。また、フーリエ変換、離散フーリエ変換およびパワースペクトルを利用することも可能である。フーリエ級数展開において、ウエーブレット変換の方法などが利用され得る。このような手法は、当該分野において周知であり、生命システム解析のための数学、コロナ社、清水和幸(1999)、臨床医学のためのウェーブレット解析、医学出版、石川康宏に記載されている。
1つの例示的実施形態として、fura−2を用いた細胞内カルシウム濃度の一過性の変化を指標に、アレイ内の各レセプタ種毎の応答の程度をそのレセプタを発現した細胞の応答として計測した蛍光強度変化から評価するための解析方法を以下に説明する。まず、無刺激中にも起こりうる細胞内カルシウム濃度変化を排除するためには、多くの細胞が刺激開始から0.5〜3秒以内に、ほぼ同時に応答を開始するかどうかを指標にすることができる。このための蛍光像の計測繰り返し頻度は1/3秒に1回程度が望ましいが、用いる細胞の性質によっては2秒間隔程度の頻度でもよい場合もある。嗅覚受容細胞を直接、あるいは改変してレセプタ発現用培養細胞に用いる場合、刺激に対する応答かどうかは、380nm励起での520nmの蛍光強度変化の時間特性からも評価できる。HamanaらChem.Senses,28:87−104(2003)の論文でも説明されているように、応答の立ち上がりはロジスティック曲線(b/(1+c・exp(−a・t)))で近似され、応答の回復はn・exp(−m・t)で近似することが可能である。嗅覚受容細胞を用いた場合、この解析に適する蛍光像計測繰り返し頻度は、1/3秒に1回程度となる。ロジスティック曲線で近似できない応答あるいは、応答回復の近似曲線で得られる時定数1/mが各細胞(あるいは細胞集団毎)が示すばらつき以上に大きい変動を各細胞毎(あるいは細胞集団毎)の平均値に対して示す時は、刺激に対する正常な応答でないと判断することができる。その評価のボーダーラインとして、嗅覚受容細胞の場合、標準偏差の2倍以上を正常でないとみなすことができる。他の細胞でも類似の値になるとしてよいが、より大きな変動も許容しうる細胞種もありうるので、細胞の特性によって判断する。
前述の応答の立ち上がりを近似曲線に当てはめることができる程度の時間分解能で応答を計測する場合、その立ち上がりの動特性から応答強度を評価することも可能である。具体的には、立ち上がり速度の速い応答ほど応答強度が大きいと判断することができる。また、より一般的には、応答ピークの振幅値を刺激前の信号値との差として計算し、この振幅値に基づいて刺激の物質、性質、その濃度、強度などを評価する。この振幅値は、ピーク位置が特定できる時間分解能で計測している場合は、そのピーク値とすることが望ましいが、ピーク値ではなく、ピークに達する8割程度の時間のところの1点計測データを用いてもよい。この場合、応答が飽和状態になる刺激強度をもつ2種の成分の異なる刺激の異なる成分の違いを反映した信号になっている可能性があり、ピーク値を示す時間帯には評価困難な刺激の評価が可能になることも期待される。これは、8割程度の応答を示す時間に限定されず、5割でも、4割でも、3割でも、適用可能であり、また、3割、5割、8割、ピークと、複数の離散的な測定時間に測定したデータを用いて解析することも可能である。また、各レセプタの応答はそれぞれのレセプタに対してそのレセプタ種を発現させた単一の細胞だけから得たものを用いてもよく、各細胞毎に計算した応答を複数の細胞間で加算したデータを用いてもよく、また、同一種のレセプタを発現させた細胞集団の信号を一括して加算処理したデータを用いてもよい。ただし、レセプタ毎のS/N比を同程度にするために、各レセプタの応答を代表させる信号を発する細胞数はほぼ同じとする。さらに、励起光照射、色素の分解あるいは漏洩などにより蛍光の部分的な消光なども起こりうる。この影響を排除するために、各刺激を提示する一連の測定開始前の蛍光強度で信号の規格化を行うことが望ましい。
(表示)
本明細書において「表示」とは、本発明の方法に従って得られた情報を直接または間接的にあるいは情報処理をした形態で具現化することをいう。そのような表示の形態としては、グラフ、写真、表、アニメーションなど種々の方法があり、限定されない。そのような技術としては、例えば、METHODS IN CELL BIOLOGY,VOL.56,ed.1998,pp:185−215、A High−Resolusion Multimode Digital Microscope System(Sluder & Wolf、Salmon)において、顕微鏡を自動化し、カメラを制御するためのアプリケーションソフトウェアとともに、自動光学顕微鏡の顕微鏡、カメラ、Z軸フォーカス装置を含む、ハードウェアシステムの設計について議論されており、本発明において利用することができる。カメラによるイメージ取得は、Inoue and Spring,Video Miroscopy,2d.Edition,1997に詳細に記載されており、本明細書において参考文献として援用される。
リアルタイムの表示もまた、当該分野において周知の技術を用いて行うことができる。例えば、全てのイメージが取得され、半永久的メモリなどに格納された後、あるいはイメージの取得と実質的に同時に、適切なアプリケーションソフトウェアで処理し、処理されたデータを得ることができる。例えば、取得されたデータを処理する方法は、画像が中断されないシーケンスを、プレイバックまたはリアルタイムで表示する、焦点面における変化および連続として、照射光を示す「ムービー」または「ストリーミング」として表示することができる。
別の実施形態では、測定および表示用アプリケーションは、通常刺激付与の条件および/または得られた検出信号の記録条件を設定するためのソフトウエアを含んでいる。この測定および表示用アプリケーションによって、コンピュータは細胞に刺激を付与する手段と、細胞から検出された信号を処理する手段とを構成するだけでなく、光学観察手段(SITカメラ、画像ファイル装置など)および/または細胞培養手段の制御を行うこともできる。
パラメータ設定画面では、キーボード、タッチパネルまたはマウスなどを用いて画面上で刺激条件を入力することにより、所望の複雑な刺激条件の設定が可能である。その他、化学物質またはそれを含むと予想される試料の投入、細胞培養の温度、pHなどの諸条件の設定をキーボード、マウス、トラックパッド、タッチパネルなどを用いて行うことができる。
表示画面では、細胞から検出された情報をリアルタイムでまたは記録後に表示する。また、記録された別のプロファイルまたはそれに由来する情報を細胞の顕微鏡像に重ねて表示することもできる。記録情報の表示とともに、記録時の測定パラメータ(刺激条件、記録条件、表示条件、処理条件、細胞の諸条件、温度、pH等)もまたリアルタイムで表示することができる。温度またはpHが許容範囲を外れたときの警報機能も備えられていてもよい。
データ解析画面では、種々の数理解析、フーリエ変換、クラスター解析、FFT解析、コヒーレンス解析、コリレーション解析などの条件を設定することが可能である。一時的なプロファイル表示機能、トポグラフィー表示機能、も備えていてもよい。これらの解析結果は、記録媒体に保存されている顕微鏡像に重ねて表示することができる。
(遺伝子導入)
本明細書において、核酸分子を細胞に導入する技術は、どのような技術でもよく、例えば、形質転換、形質導入、トランスフェクションなどが挙げられる。本明細書では、トランスフェクションが好ましい。
本明細書において「トランスフェクション」とは、遺伝子DNA、プラスミドDNA、ウイルスDNA、ウイルスRNAなどを、ウイルス粒子などの形をとらない裸に近い状態で細胞の培養、または細胞の懸濁液に加えて細胞に取り込ませて遺伝子導入または感染を行うことをいう。通常トランスフェクションによって導入された遺伝子は、一過的に細胞において発現するが、永続的に取り込まれる場合もある。
そのような核酸分子の導入技術は、当該分野において周知であり、かつ、慣用されるものであり、例えば、Ausubel F.A.ら編(1988)、Current Protocols in Molecular Biology、Wiley、New York、NY;Sambrook Jら(1987)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.およびその第三版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載される。遺伝子の導入は、ノーザンブロット、ウェスタンブロット分析のような本明細書に記載される方法または他の周知慣用技術を用いて確認することができる。
本明細書において遺伝子操作について言及する場合、「ベクター」または「組み換えベクター」とは、目的のポリヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入させることができるベクターをいう。そのようなベクターとしては、原核細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物個体および植物個体などの宿主細胞において自立複製が可能、または染色体中への組込みが可能で、本発明のポリヌクレオチドの転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが例示される。ベクターのうち、クローニングに適したベクターを「クローニングベクター」という。そのようなクローニングベクターは通常、制限酵素部位を複数含むマルチプルクローニング部位を含む。そのような制限酵素部位およびマルチプルクローニング部位は、当該分野において周知であり、当業者は、目的に合わせて適宜選択して使用することができる。そのような技術は、本明細書に記載される文献(例えば、Sambrookら、前出)に記載されている。
本明細書において「発現ベクター」とは、構造遺伝子およびその発現を調節するプロモーターに加えて種々の調節エレメントが宿主の細胞中で作動し得る状態で連結されている核酸配列をいう。調節エレメントは、好ましくは、ターミネーター、薬剤耐性遺伝子のような選択マーカーおよび、エンハンサーを含み得る。生物(例えば、動物)の発現ベクターのタイプおよび使用される調節エレメントの種類が、宿主細胞に応じて変わり得ることは、当業者に周知の事項である。
原核細胞に対する組換えベクターとしては、pcDNA3(+)、pBluescript−SK(+/−)、pGEM−T、pEF−BOS、pEGFP、pHAT、pUC18、pFT−DESTTM42GATEWAY(Invitrogen)などが例示される。
動物細胞に対する組換えベクターとしては、pcDNAI/Amp、pcDNAI、pCDM8(いずれもフナコシより市販)、pAGE107[特開平3−229(Invitrogen)、pAGE103[J.Biochem.,101,1307(1987)]、pAMo、pAMoA[J.Biol.Chem.,268,22782−22787(1993)]、マウス幹細胞ウイルス(Murine Stem Cell Virus)(MSCV)に基づいたレトロウイルス型発現ベクター、pEF−BOS,pEGFPなどが例示される。
植物細胞に対する組換えベクターとしては、pPCVICEn4HPT、pCGN1548、pCGN1549、pBI221、pBI121などが挙げられるがそれらに限定されない。
また、ベクターの導入方法としては、細胞にDNAを導入する上述のような方法であればいずれも用いることができ、例えば、トランスフェクション、形質導入、形質転換など(例えば、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法など)、リポフェクション法、スフェロプラスト法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,1929(1978)]、酢酸リチウム法[J.Bacteriol.,153,163(1983)]、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75,1929(1978)記載の方法が挙げられる。
本明細書において「作動可能に連結された(る)」とは、所望の配列の発現(作動)がある転写翻訳調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)または翻訳調節配列の制御下に配置されることをいう。プロモーターが遺伝子に作動可能に連結されるためには、通常、その遺伝子のすぐ上流にプロモーターが配置されるが、必ずしも隣接して配置される必要はない。
本明細書において「ターミネーター」とは、通常遺伝子のタンパク質をコードする領域の下流に位置し、DNAがmRNAに転写される際の転写の終結、ポリA配列の付加に関与する配列をいう。ターミネーターは、mRNAの安定性に関与して遺伝子の発現量に影響を及ぼすことが知られている。
本明細書において「プロモーター」とは、遺伝子の転写の開始部位を決定し、またその頻度を直接的に調節するDNA上の領域をいい、通常RNAポリメラーゼが結合して転写を始める塩基配列である。したがって、本明細書においてある遺伝子のプロモーターの働きを有する部分を「プロモーター部分」という。プロモーターの領域は、通常、推定タンパク質コード領域の第1エキソンの上流約2kbp以内の領域であることが多いので、DNA解析用ソフトウエアを用いてゲノム塩基配列中のタンパク質コード領域を予測すれば、プロモータ領域を推定することはできる。推定プロモーター領域は、構造遺伝子ごとに変動するが、通常構造遺伝子の上流にあるが、これらに限定されず、構造遺伝子の下流にもあり得る。好ましくは、推定プロモーター領域は、第一エキソン翻訳開始点から上流約2kbp以内に存在する。プロモーターとしては、例えば、構成的プロモーター、特異的プロモーターおよび誘導性プロモーターなどが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「エンハンサー」とは、目的遺伝子の発現効率を高めるために用いられる配列をいう。そのようなエンハンサーは当該分野において周知である。エンハンサーは複数個用いられ得るが1個用いられてもよいし、用いなくともよい。
本明細書において「サイレンサー」とは、遺伝子発現を抑制し静止する機能を有する配列をいう。本発明では、サイレンサーとしてはその機能を有する限り、どのようなものを用いてもよく、サイレンサーを用いなくてもよい。
本明細書において「作動可能に連結された(る)」とは、遺伝子配列に関して言及するとき、所望の配列の発現(作動)がある転写翻訳調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、サイレンサーなど)または翻訳調節配列の制御下に配置されることをいう。プロモーターが遺伝子に作動可能に連結されるためには、通常、その遺伝子のすぐ上流にプロモーターが配置されるが、必ずしも隣接して配置される必要はない。「作動可能に連結される」とはまた、本明細書においてシグナル伝達に関して言及するときは、各々のシグナル伝達分子が直接または他の分子を介して間接的に相互作用し、シグナルの伝達に寄与することをいう。
本明細書において「遺伝子導入試薬」とは、遺伝子導入方法において、導入効率を促進するために用いられる試薬をいう。そのような遺伝子導入試薬としては、例えば、カチオン性高分子、カチオン性脂質、ポリアミン系試薬、ポリイミン系試薬、リン酸カルシウムなどが挙げられるがそれらに限定されない。トランスフェクションの際に利用される試薬の具体例としては、種々なソースから市販されている試薬が挙げられ、例えば、Effectene Transfection Reagent(cat.no.301425,Qiagen,CA),TransFastTM Transfection Reagent(E2431,Promega,WI),TfxTM−20 Reagent(E2391,Promega,WI),SuperFect Transfection Reagent(301305,Qiagen,CA),PolyFect Transfection Reagent(301105,Qiagen,CA),LipofectAMINE 2000 Reagent(11668−019,Invitrogen corporation,CA),JetPEI(×4)conc.(101−30,Polyplus−transfection,France)およびExGen 500(RO511,Fermentas Inc.,MD)などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において遺伝子発現(たとえば、mRNA発現、ポリペプチド発現)の「検出」または「定量」は、例えば、mRNAの測定および免疫学的測定方法を含む適切な方法を用いて達成され得る。あるいは、そのような遺伝子発現は、その遺伝子が相互作用する因子(例えば、シグナル伝達経路における下流の遺伝子など)の発現調節などを測定することによって観察され得る。そのような測定方法のうち、分子生物学的測定方法としては、例えば、ノーザンブロット法、ドットブロット法またはPCR法などが例示される。免疫学的測定方法としては、例えば、方法としては、マイクロタイタープレートを用いるELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などが例示される。また、定量方法としては、ELISA法またはRIA法などが例示される。アレイ(例えば、DNAアレイ、プロテインアレイ)を用いた遺伝子解析方法によっても行われ得る。DNAアレイについては、(秀潤社編、細胞工学別冊「DNAマイクロアレイと最新PCR法」)に広く概説されている。プロテインアレイについては、Nat Genet.2002 Dec;32 Suppl:526−32に詳述されている。遺伝子発現の分析法としては、上述に加えて、RT−PCR、RACE法、SSCP法、免疫沈降法、two−hybridシステム、インビトロ翻訳などが挙げられるがそれらに限定されない。そのようなさらなる分析方法は、例えば、ゲノム解析実験法・中村祐輔ラボ・マニュアル、編集・中村祐輔 羊土社(2002)などに記載されており、本明細書においてそれらの記載はすべて参考として援用される。
「発現量」とは、目的の細胞などにおいて、ポリペプチドまたはmRNAが発現される量をいう。そのような発現量としては、本発明の抗体を用いてELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などの免疫学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明ポリペプチドのタンパク質レベルでの発現量、またはノーザンブロット法、ドットブロット法、PCR法などの分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドのmRNAレベルでの発現量が挙げられる。「発現量の変化」とは、上記免疫学的測定方法または分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドのタンパク質レベルまたはmRNAレベルでの発現量が増加あるいは減少することを意味する。
(スクリーニング)
本明細書において「スクリーニング」とは、目的とするある特定の性質をもつ生物または物質などの標的を、特定の操作/評価方法で多数を含む集団の中から選抜することをいう。スクリーニングのために、本発明の方法またはシステムを使用することができる。本発明では、化学物質に対するセンサが提供されることから、任意の化学物質をスクリーニングすることができる。
本発明では、任意の化学物質(例えば、味覚源、嗅覚源など)のライブラリーを本発明のセンサ、チップ、システムまたは方法を利用することによってスクリーニングすることができる。本発明はまた、そのようなスクリーニングによって同定された化学物質またはその組み合わせを包含することが企図される。
(診断)
本明細書において「診断」とは、被検体における疾患、障害、状態などに関連する種々のパラメータを同定し、そのような疾患、障害、状態の現状を判定することをいう。本発明の方法、センサ、チップ、システムなどを用いることによって、化学物質を分析することができ、そのような情報を用いて、被検体における疾患、障害、状態、投与すべき処置または予防のための処方物または方法などの種々のパラメータを選定することができる。そのような化学物質は、対象となる被検体に由来することが好ましい。そのような化学物質を含むかまたは含むと予想される試料は、対象となる被検体から調製され得る。そのような調製物は、当該分野において周知であり、例えば、血液、体臭そのものの利用、尿、生検試料などが挙げられるがそれらに限定されない。
本発明の診断方法は、原則として、身体から出たものを利用することができることから、医師などの医療従事者の手を離れて実施することができ、産業上有用である。
(治療)
本発明はまた、上述した診断の結果を用いて、テーラーメイド治療または予防処置を被検体または患者に施すことに応用することができ、そのようなテーラーメイド治療または予防処置もまた、本発明の範囲内にある。
本明細書において「治療」とは、ある疾患または障害について、そのような状態になった場合に、そのような疾患または障害の悪化を防止、好ましくは、現状維持、より好ましくは、軽減、さらに好ましくは消長させることをいう。
本明細書において「被検体」とは、本発明の処置が適用される生物をいい、「患者」ともいわれる。患者または被検体は好ましくは、ヒトであり得る。
本明細書において「病因」とは、被検体の疾患、障害または状態(本明細書において、総称して「病変」ともいい、植物では病害ともいう)に関連する因子をいい、例えば、原因となる病原物質(病原因子)、病原体、病変細胞、病原ウイルスなどが挙げられるがそれらに限定されない。
本発明が対象とする「疾患」は、病原遺伝子が関連する任意の疾患であり得る。そのような疾患としては、癌、ウイルスまたは細菌による感染症、アレルギー、高血圧、高脂血症、糖尿病、心臓病、脳梗塞、痴呆症、肥満、動脈硬化性疾患、不妊症、精神神経疾患、白内障、早老症、紫外線放射線過敏症などが挙げられるがそれらに限定されない。
本発明が対象とする「障害」は、病原遺伝子が関連する任意の障害であり得る。
そのような疾患、障害または状態の具体例としては、例えば、循環器系疾患(貧血(例えば、再生不良性貧血(特に重症再生不良性貧血)、腎性貧血、がん性貧血、二次性貧血、不応性貧血など)、がんまたは腫瘍(例えば、白血病、多発性骨髄腫)など);神経系疾患(痴呆症、脳卒中およびその後遺症、脳腫瘍、脊髄損傷など);免疫系疾患(T細胞欠損症、白血病など);運動器・骨格系疾患(骨折、骨粗鬆症、関節の脱臼、亜脱臼、捻挫、靱帯損傷、変形性関節症、骨肉腫、ユーイング肉腫、骨形成不全症、骨軟骨異形成症など);皮膚系疾患(無毛症、黒色腫、皮膚悪性リンパ腫、血管肉腫、組織球症、水疱症、膿疱症、皮膚炎、湿疹など);内分泌系疾患(視床下部・下垂体疾患、甲状腺疾患、副甲状腺(上皮小体)疾患、副腎皮質・髄質疾患、糖代謝異常、脂質代謝異常、タンパク質代謝異常、核酸代謝異常、先天性代謝異常(フェニールケトン尿症、ガラクトース血症、ホモシスチン尿症、メープルシロップ尿症)、無アルブミン血症、アスコルビン酸合成能欠如、高ビリルビン血症、高ビリルビン尿症、カリクレイン欠損、肥満細胞欠損、尿崩症、バソプレッシン分泌異常、侏儒症、ウオルマン病(酸リパーゼ(Acid lipase)欠損症)、ムコ多糖症VI型など);呼吸器系疾患(肺疾患(例えば、肺炎、肺がんなど)、気管支疾患、肺がん、気管支がんなど);消化器系疾患(食道疾患(たとえば、食道がん)、胃・十二指腸疾患(たとえば、胃がん、十二指腸がん)、小腸疾患・大腸疾患(たとえば、大腸ポリープ、結腸がん、直腸がんなど)、胆道疾患、肝臓疾患(たとえば、肝硬変、肝炎(A型、B型、C型、D型、E型など)、劇症肝炎、慢性肝炎、原発性肝がん、アルコール性肝障害、薬物性肝障害)、膵臓疾患(急性膵炎、慢性膵炎、膵臓がん、嚢胞性膵疾患)、腹膜・腹壁・横隔膜疾患(ヘルニアなど)、ヒルシュスプラング病など);泌尿器系疾患(腎疾患(腎不全、原発性糸球体疾患、腎血管障害、尿細管機能異常、間質性腎疾患、全身性疾患による腎障害、腎がんなど)、膀胱疾患(膀胱炎、膀胱がんなど)など);生殖器系疾患(男性生殖器疾患(男性不妊、前立腺肥大症、前立腺がん、精巣がんなど)、女性生殖器疾患(女性不妊、卵巣機能障害、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮がん、子宮内膜症、卵巣がん、絨毛性疾患など)など);循環器系疾患(心不全、狭心症、心筋梗塞、不整脈、弁膜症、心筋・心膜疾患、先天性心疾患(たとえば、心房中隔欠損、心室中隔欠損、動脈管開存、ファロー四徴)、動脈疾患(たとえば、動脈硬化、動脈瘤)、静脈疾患(たとえば、静脈瘤)、リンパ管疾患(たとえば、リンパ浮腫)など)などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「がん」または「癌」は、互換可能に用いられ、異型性が強く、増殖が正常細胞より速く、周囲組織に破壊性に浸潤し得あるいは転移をおこし得る悪性腫瘍またはそのような悪性腫瘍が存在する状態をいう。本発明においては、がんは固形がんおよび造血器腫瘍を含むがそれらに限定されない。本発明のシステムを利用したがんの診断は、YamazakiらProc.Natl.Acad.Sci.USA,99:5612(2002)の報告を応用して行うことができる。
本明細書において「固形がん」は、固形の形状があるがんをいい、白血病などの造血器腫瘍とは対峙する概念である。そのような固形がんとしては、例えば、乳がん、肝がん、胃がん、肺がん、頭頸部がん、子宮頸部がん、前立腺がん、網膜芽細胞腫、悪性リンパ腫、食道がん、脳腫瘍、骨腫瘍が挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「がん治療」は、抗がん剤(例えば、化学療法剤、放射線治療など)を投与することによって行われるか、または外科的に除去などをする外科的治療を包含する。
本明細書において用いられる化学療法剤は、当該分野において周知であり、抗がん剤マニュアル第2版 塚越茂他編 中外医学社;Pharmacology;Lippincott Williams & Wilkins,Inc.に記載されている。そのような化学療法剤は、例えば、以下が挙げられるがそれに限定されない:1)アルキル化剤(DNA,タンパク質などの細胞構成成分をアルキル化して細胞毒性を示す。例えば、シクロホスファミド,ブスルファン、チオテパ、ダカルバジンが挙げられるがそれらに限定されない);2)代謝拮抗剤(おもに核酸の合成を阻害する薬剤(例えば、葉酸代謝拮抗剤としてメトトレキサートなど、プリン代謝拮抗剤として6−メルカプトプリンなど、ピリミジン代謝拮抗剤としてフルオロウラシル(5−FU)など);3)DNAトポイソメラーゼ阻害剤(例えば、カンプトテシン、エトポシド(それぞれトポイソメラーゼI、IIを阻害する));4)チューブリン作用薬(微小管形成を阻害し、細胞分裂を抑制する。ビンブラスチン、ビンクリスチンなど);5)白金化合物(DNAおよびタンパク質との結合による細胞毒性を示す。シスプラチン、カルボプラチンなど);6)抗がん抗生物質(DNAと結合し、DNA合成、RNA合成を阻害する。アドリアマイシン、ダウノルビシン、マイトマイシンC、ブレオマイシンなど);7)ホルモン剤(乳がん、子宮がん、前立腺がんなどホルモン依存性のがんに適応。タモキシフェン、リュープロレリン(LH−RH)など);8)生物製剤(アスパラギン要求性血液悪性腫瘍に対して有効なアスパラギナーゼ、直接的な抗腫瘍作用と免疫増強による間接作用を示すインターフェロンなどがある);9)免疫賦活剤(免疫応答能を増強し、間接的に抗腫瘍活性を示す。シイタケ由来の多糖体であるレンチナン、微生物由来のペプチドであるベスタチンなど)。
本明細書において「抗がん剤」とは、がん(腫瘍)細胞の増殖を選択的に抑制し、がんの薬剤および放射線治療の両方を包含する。そのような抗がん剤は当該分野において周知であり、例えば、抗がん剤マニュアル第2版 塚越茂他編 中外医学社;Pharmacology;Lippincott Williams & Wilkins,Inc.に記載されている。
本明細書において「放射線療法」または「放射線治療」とは、互換可能に使用され、電離放射線または放射性物質を利用した疾患の治療をいう。代表的な放射線療法としては、X線、γ線、電子線、陽子線、重粒子線、中性子捕捉療法が挙げられるがそれに限定されない。好ましい放射線療法としては、重粒子線が挙げられる。重粒子線を用いた療法は装置が大きく一般的でないことがある。そのような放射線療法は当該分野において周知であり、例えば、放射線検査と治療の基礎;放射線治療と集学的治療:邵啓全(滋賀医大放射線):総合消化器ケア6巻6号Page 79−89,6−7(2002.02)に記載されている。本発明において同定される薬剤耐性は、通常化学療法が想定されるが、放射線療法による耐性もまた経時プロファイルと関連付けられることから、本明細書では、放射線療法は薬剤の概念の中に入る。
本明細書において「薬学的に受容可能なキャリア」は、医薬または動物薬のような農薬を製造するときに使用される物質であり、有効成分に有害な影響を与えないものをいう。そのような薬学的に受容可能なキャリアとしては、例えば、以下が挙げられるがそれらに限定されない:抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤および/または農学的もしくは薬学的アジュバント。
本発明の処置方法において使用される薬剤の種類および量は、本発明の方法によって得られた情報(例えば、薬剤耐性レベルに関する情報)を元に、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、投与される被検体の部位の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。本発明の処置方法を被検体(または患者)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。薬剤を投与する頻度あるいは薬剤耐性をモニタリングする頻度としては、例えば、毎日−数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回−1ヶ月に1回)の投与が挙げられる。1週間−1ヶ月に1回の投与を、経過を見ながら施すことが好ましい。
本明細書において「指示書」は、本発明の診断方法などを医師、患者などに対して説明する文章を記載したものである。この指示書は、本発明のセンサの使用方法などが記載されている。この指示書は、本発明が実施される国の監督官庁(例えば、日本であれば厚生労働省、米国であれば食品医薬品局(FDA)など)が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、いわゆる添付文書(package insert)であり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インターネットで提供されるホームページ、電子メール)のような形態でも提供され得る。
必要に応じて、本発明の治療では、2種類以上の薬剤が使用され得る。2種類以上の薬剤を使用する場合、類似の性質または由来の物質を使用してもよく、異なる性質または由来の薬剤を使用してもよい。
本発明ではまた、得られた情報を元に、遺伝子治療を施すことも可能である。遺伝子治療とは、発現されたか、または発現可能な核酸の、被験体への投与により行われる治療をいう。本発明のこの実施形態において、核酸は、それらのコードされたタンパク質を産生し、そのタンパク質は治療効果を媒介する。
本発明では、いったん類似の種類(例えば、ヒトに対するマウスなど)の生物に関し、ある特定の経時プロファイルの分析結果と、細胞の状態とが相関付けられた場合、対応する経時プロファイルの分析結果と、細胞の状態とが相関付けることができることは、当業者は容易に理解する。そのような事項は、例えば、動物培養細胞マニュアル、瀬野ら編著、共立出版、1993年などに記載され支持されており、本明細書においてこのすべての記載を援用する。
本発明はまた、遺伝子治療において利用され得る。遺伝子治療とは、発現されたか、または発現可能な核酸の、被験体への投与により行われる治療をいう。本発明のこの実施形態において、核酸は、それらのコードされたタンパク質を産生し、そのタンパク質は治療効果を媒介する。
当該分野で利用可能な遺伝子治療のための任意の方法が、本発明に従って使用され得る。例示的な方法は、以下のとおりである。
遺伝子治療の方法の一般的な概説については、Goldspielら,Clinical Pharmacy 12:488−505(1993);WuおよびWu,Biotherapy 3:87−95(1991);Tolstoshev,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573−596(1993);Mulligan,Science 260:926−932(1993);ならびにMorganおよびAnderson,Ann.Rev.Biochem.62:191−217(1993);May,TIBTECH 11(5):155−215(1993)を参照のこと。遺伝子治療において使用される一般的に公知の組換えDNA技術は、Ausubelら(編),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NY(1993);およびKriegler,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,Stockton Press,NY(1990)に記載される。
(基本技術)
本明細書において使用される技術は、そうではないと具体的に指示しない限り、当該分野の技術範囲内にある、マイクロフルイディクス、微細加工、有機化学、生化学、遺伝子工学、分子生物学、微生物学、遺伝学および関連する分野における周知慣用技術を使用する。そのような技術は、例えば、以下に列挙した文献および本明細書において他の場所おいて引用した文献においても十分に説明されている。
微細加工については、例えば、Campbell,S.A.(1996).The Science and Engineering of Microelectronic Fabrication,Oxford University Press;Zaut,P.V.(1996).Micromicroarray Fabrication:a Practical Guide to Semiconductor Processing,Semiconductor Services;Madou,M.J.(1997).Fundamentals of Microfabrication,CRC1 5 Press;Rai−Choudhury,P.(1997).Handbook of Microlithography,Micromachining,& Microfabrication:Microlithographyなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Sambrook J.et al.(1989).Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001);Ausubel,F.M.(1987).Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience;Ausubel,F.M.(1989).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience;Innis,M.A.(1990).PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press;Ausubel,F.M.(1992).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Ausubel,F.M.(1995).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Innis,M.A.et al.(1995).PCR Strategies,Academic Press;Ausubel,F.M.(1999).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Wiley,and annual updates;Sninsky,J.J.et al.(1999).PCR Applications:Protocols for Functional Genomics,Academic Press、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
人工的に合成した遺伝子を作製するためのDNA合成技術および核酸化学については、例えば、Gait,M.J.(1985).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRLPress;Gait,M.J.(1990).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Eckstein,F.(1991).Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approac,IRL Press;Adams,R.L.et al.(1992).The Biochemistry of the Nucleic Acids,Chapman&Hall;Shabarova,Z.et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids,Weinheim;Blackburn,G.M.et al.(1996).Nucleic Acids in Chemistry and Biology,Oxford University Press;Hermanson,G.T.(I996).Bioconjugate Techniques,Academic Pressなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
(感覚レセプターおよびその利用)
本発明では、化学物質レセプターを利用したセンサーおよびその関連発明が提供される。
ここでは、生体で行われている嗅覚情報処理に準じた匂いの定性・定量を行えば、ヒト、動物などが感じる嗅感覚を表現することになるはずである。これは、視覚とビデオカメラ/テレビの関係にその類似例を見ることができることからも、生体の仕組みを模倣した方法は感覚量の識別と定量のために適切な方法と考えられる。
この発明の基本概念を嗅覚を例として以下に説明する。匂い分子は生体で識別されている分子の中では最も分子量の小さいグループを形成し、識別の難しい対象となっている。マウスでは、1,296種のうちで受容細胞(嗅細胞)に発現し機能していると考えられている873種類の嗅覚レセプターが匂い物質を識別して発生した信号群が脳内で処理されることにより様々な匂いを識別することができている。ヒトでは、マウスの嗅覚レセプターと共通すると思われる347種の嗅覚レセプターによって生じる応答プロフィールに基づいて匂いの識別が行われている。嗅覚レセプターでは、匂い分子の特定の複数のサイトの構造に基づいて匂い分子を識別するために、共通の分子構造を部分的に有す匂い分子Aと匂い分子Bは嗅覚レセプター1では識別できても嗅覚レセプター2では識別できないということが生じることになる。また、低濃度ではどちらか一方にしか応答しなくても刺激濃度が上昇すると両者に同様に大きな応答を示すようになってくる。識別能が高い濃度範囲は1〜2桁という場合も少なくない。このような僅かな嗅覚レセプターの特異性の違いを明確に区別するためには、生体で匂いを識別するために中心的に機能している嗅覚レセプター群と同じ特性を有するセンサ群を用いて匂いを識別すればよい。個々の嗅覚レセプターの応答感度を複数の匂い物質に対して調べた結果、その匂い物質に最も感度が高くなる嗅覚レセプターがその匂い物質が誘起する特徴的な匂いの質に最も大きな寄与をしていることが結論された。従って、特定の匂いの質に最も感度の高い嗅覚レセプターあるいは、その匂い分子結合サイトの3次元構造を模倣した匂いセンサ材料を用いることにより、特定の匂いの質を識別し検出できると考えられた。
異なる匂いの質を有する匂い分子に対して異なる相対感度を有する複数種の嗅覚レセプターの出力を比較することにより、提示された匂いの質と強度を計測・評価することが可能になる。嗅覚レセプターの応答を計測するためには、指定の嗅覚レセプター1種類と応答系関連タンパク質を発現した嗅細胞、あるいは、培養細胞を用い、匂い応答時に生じる細胞内カルシウム濃度上昇、膜電位変化などを光学的/電気的に計測する。個々の細胞での応答系関連要素タンパク質の発現量、細胞の状態による応答変動などを減少させるために、統計的に有為な数の同種応答が期待される細胞の応答の平均値を用いて、個別の匂いの質の評価を行う。嗅覚レセプターの遺伝子を組み換えて、無細胞系で応答計測する系を構築することも考えられる。
本発明は、以下のDNA配列を有す嗅覚レセプターおよび、その組み換えが機能に影響しない一部塩基の異なる多型遺伝子としての嗅覚レセプターも対象とする。
したがって、1つの局面による本発明の11種の塩基配列は:
配列番号1:car−n272の膜貫通ドメイン3−6
配列番号3:car−c5の膜貫通ドメイン3−6
配列番号5:car−b161の膜貫通ドメイン3−6
配列番号7:car−b153の膜貫通ドメイン3−6
配列番号9:car−b85の膜貫通ドメイン2−7
配列番号11:car−n266の膜貫通ドメイン2−7
配列番号13:car−n266の全コード領域
配列番号15:car−n272の全コード領域
配列番号17:car−b85の全コード領域
配列番号19:car−c5の全コード領域
配列番号21:car−b161の全コード領域
に関する。
上記説明において、配列番号1〜11の配列は、部分配列であるが嗅覚レセプターとしての機能を有する。
本発明は、嗅覚レセプターが炭素原子1つ違うだけの匂い分子の長さを濃度依存的に識別できる優れた性能を発見したという顕著な効果を奏し、その効果を直接利用するものもまた本発明の範囲内にある。異なる匂いの質に対して閾値濃度の違いは1桁前後と極めて小さい。従ってより正確な定量のためには、応答開始の相対感度を比較することが求められる。通常応答強度は小さいために、以下に測定のS/N比を上げるかと個別の要素センサの応答のばらつきを統計的に低下させる系にするかが重要である。
(感覚評価システムの説明)
以下、上記した知見に基づいて成された本発明にのうち、感覚評価システムに係る実施の形態を、添付した図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る感覚評価システムの概略構成を示すブロック図である。感覚評価システムは、複数個のセンサOR1〜ORnと、前処理部P1、係数算出部P2および増幅部P3からなる信号処理部P0と、評価部EVとを備えている。各々のセンサORi(i=1〜n)は、呈示された刺激Odに応じて信号S1(i)を出力し、この出力信号S1(i)は前処理部P1に入力する。前処理部P1は、入力する信号S1(i)(i=1〜n)に対して所定の処理を行い、複数の信号S3(j)(j=1〜m)を出力する。ここで、センサORi(i=1〜n)の数nと、信号S3(j)(j=1〜m)の数mとは同数に限らない。信号S3(j)(j=1〜m)は、係数算出部P2および増幅部P3に入力し、係数算出部P2が入力信号に対して所定の処理を行い、増幅部P2に対する制御信号C(j)(j=1〜m)を出力する。増幅部P3は、制御信号C(j)(j=1〜m)に応じて、入力する信号S3(j)(j=1〜m)を増幅し、信号S5(j)(j=1〜m)として出力する。評価部EVが、信号S5(j)(j=1〜m)を使用して、刺激Odの評価を行う。
前処理部P1、係数算出部P2および増幅部P3における処理を、図2、3に基づいて説明する。図2は前処理部P1の概略構成を示すブロック図であり、図3は係数算出部P2および増幅部P3の概略構成を示すブロック図である。
図2に示すように、前処理部P1は、対として構成される複数の選択部SA1〜SAm、および加算部J1〜Jmを備えている。ここで、各々の1対の選択部SAiおよびJiは、感覚要素(例えば、異なる匂いの質)に対応している。例えば、匂い物質を評価対象とする感覚評価システムの場合、SA1およびJ1がsweetに対応し、SA2およびJ2がherbalに対応し、SA3およびJ3がfreshに対応するように構成することができる。
選択部SAjには、全てのセンサORi(i=1〜n)の出力信号S1(i)が入力する。選択部SAjは、各々の信号S1(i)を所定の割合αj(i)で増幅し、S2j(i)=αj(i)×S1(i)として出力する。ここで、係数αj(i)は、各々の選択部SAjに対して予め外部から設定される値であり、使用するセンサORiの特性、選択部SAiおよびJiによって表わそうとする感覚要素に応じて決定される。
係数αj(i)の指定方法に関する詳細は、匂いに関して具体的に後述することとし、ここでは概要を記載する。係数αj(i)は、対応する加算部Jjがある刺激(例えば匂い分子)に特有の感覚要素を表現する場合には1とし、対応する加算部Jjが、異なる複数種類の刺激に共通する感覚要素を表現する場合には、そのセンサが最も高い感度で検出する要素刺激(例えば匂い分子種などの単一物質刺激)が単一種だけである場合、その単一種の要素刺激が誘起する複数の感覚要素の相対強度(総量で1)の内でJjにおいて表現しようとする感覚要素に対応する相対強度と同じ値を使用することができる。これは、システムの最適化を行う時に調整を行う対象であり、特有の感覚要素を強調したい場合には、係数1を2など大きな値にし、複数の要素刺激に共通する感覚要素を弱く評価したい場合は、共通する感覚要素の相対強度の総量を0.7など1以下の値を用いて処理することもできる。あるセンサは複数の要素刺激に同じ程度の感度で最も高く応答する場合には、該当する複数の要素刺激それぞれのその感覚要素に対する相対強度の内で最も小さな値を、全ての要素刺激に共通する部分として、その係数αj(i)に採用する。
加算部Jjは、入力される信号S2j(i)を全て加算し、信号S3(j)=Σi=1〜nS2j(i)として出力する。即ち、各々の選択部SAjに、あらかじめ指定されたセンサORiの出力信号のみをセンサ特性に依存する係数を掛けて通す(係数を0と設定された信号伝達ラインに関しては、信号を通過させないことになる)ように設定しておくことによって、各々の加算部Jjにおいて入力された信号S1(1)〜S1(n)を加算する処理は、対応する感覚要素に関して、各々のセンサの寄与を総合することになる。例えば、匂い物質を評価対象とする場合、加算部J1がsweetに対応すると仮定すると、加算部J1における処理は、ヒトがsweetと感じる強度への各々のセンサの寄与を加算することに対応している。ヒトにおいては、この加算結果に対してさらに所定の処理が行われた後、ある強度でヒトはsweetと感じる。
次に、係数算出部P2および増幅部P3における処理を説明する。図3に示すように、係数算出部P2は、加算部JC、相対値決定部RE、最大値検出部MX、および規格化部NORから構成され、増幅部P3は、乗算部M1〜Mmから構成されている。
前処理部P1の出力信号S3(1)〜S3(m)は、加算部JCおよび相対値決定部REに入力する。加算部JCは、入力する信号S3(1)〜S3(m)を加算し、加算結果をSUM=Σi=1〜mS3(i)として出力する。相対値決定部REは信号SUMを使用して、入力する各々の信号S3(1)〜S3(m)の総和に占める割合、即ちS4(j)=S3(j)/SUMを生成する。この処理は、S3(1)〜S3(m)の少なくと何れか1つ以上が、センサOR1〜ORnが応答していると判断される最小値以上の値になっている場合にのみ行うものとする。信号S4(i)は、最大検出部MXおよび規格化部NORに入力する。最大値検出部MXは、入力する信号S4(1)〜S4(m)の中の最大の信号を検出し、MAXとして出力する。規格化部NORはMAXを使用して、入力する信号S4(1)〜S4(m)を規格化して、増幅部P3への制御信号C(j)=S4(j)/MAXを生成する。ここで、S3(i)の最大値をS3(X)とすると、C(j)=(S3(j)/SUM)/(S3(X)/SUM)=S3(j)/S3(X)となる。従って、S4(j)の計算を省略し、直接S3(i)の最大値S3(X)を求めて、C(j)=S3(j)/S3(X)として制御信号C(j)を求めてもよい。各々の乗算部Mj(j=1〜m)は対応する制御信号C(j)を使用して、前処理部からの対応する出力信号S3(j)を増幅し、S5(j)=C(j)×S3(j)を生成する。
この信号S5(1)〜S5(m)を用いて、評価部EVは、呈示された刺激がヒトに誘起するであろう感覚要素(例えば、匂いの質)の定性的/定量的な評価を行う。
次に、具体的に、匂い物質を評価対象とする場合の本発明に係る感覚評価システムについて説明する。
先ず、図1〜3に示した感覚評価システムが、匂い物質Odの特性を評価するシステムとして機能するように、各々のセンサORiは生体の嗅覚レセプターまたは嗅細胞に対応する機能をする。嗅覚レセプターには、数百〜数千種類があり、匂い刺激に対して異なる応答をする。即ち、各々のセンサは、匂い物質Odの種類に応じて異なる反応、即ち匂い物質Odを構成する匂い分子の特定のサイトの構造に応じた信号を出力する。敏感に応答する匂い刺激Odはセンサ毎に異なっている。このセンサとして、生体の嗅覚受容細胞を使用すること、嗅覚レセプターのアミノ酸配列を模して生成したもの等を使用することが可能である。
前処理部P1の選択部SAjおよび加算部Jjは1対として、予め決定された使用する複数の匂いの質の異なる要素成分に対応している。例えば、匂いの質の要素成分として、mint,sweet,freshを使用する場合、選択部SA1および加算部J1をmintに対応させ、選択部SA2および加算部J2をsweetに対応させ、選択部SA3および加算部J3をfreshに対応させることができる。区別して取り扱うべき匂いの質の個数、即ち構成すべき選択部SAjおよび加算部Jjの対の数は、匂い物質をどの程度に分類することを目的とするかに依存する。
上記したように、前処理部P1の各々の選択部SAjに対して指定する係数αj(i)は、使用するセンサORiの特性、選択部SAiおよびJiによって表わそうとする感覚要素、即ち匂いの質に応じて、以下に示す知見1および知見2を考慮して決定される。
匂いの質を表現する量を得るために、どのように信号を加算するかについては、梨状皮質の神経信号処理を参考にすることができ、公知論文(Nature,414:pp.173−179(2001))における1種類の嗅覚レセプターに関するデータが約千種の嗅覚レセプター全てに一般論として拡張できると仮定すると、梨状皮質の神経細胞では数十種の嗅覚レセプターの信号が加算されて、1つの信号として取り扱われていると考えられる。本発明者は、この仮定の基に実験を行い、新たに得られた研究成果として、上記したように応答の初期に梨状皮質に到達する嗅覚レセプターの信号がそれ以降に到達する信号を抑制し、それらの信号が加算される際の寄与率を低下させていること、応答が梨状皮質に到達してある待ち時間が経過した後に匂い認識が行われたことを示す信号が形成されることを見出した(以下、知見1と記す)。他の匂いの識別では、梨状皮質に最初に入力される嗅覚レセプター信号が異なるのが一般的であるので、全ての嗅覚レセプターのいずれもがどれかの匂いに対して上記の最初に到達し、最初に出力を引き起こす中心的な信号になり得る。従って、第2番目以降の梨状皮質の出力信号もその出力信号形成に寄与した信号以外の入力信号を抑制する回路を形成しようとすると考えられる。換言すれば、梨状皮質の神経細胞が出力信号を出力する程度に応じて、他の入力信号を抑制する回路が順次形成され、これらの減少させられた程度の異なる入力信号の加算に基づいて出力される複数の異なる要素感覚量の組合せによって1つの感覚量の形成が行われているということになる。
また、本発明者は、2種の匂い分子を区別できない(即ち、何れにも反応する)嗅覚レセプターが、それらの匂い分子のどちらか一方に応答し得る嗅覚レセプターの中の約半数を占め、約1/4ずつがどちらかの匂い分子により感度が高いという実験事実を見出した。この知見、および、ヒトの感覚では2種の匂い分子に特徴的な匂いの質をより強く認識し共通する匂いの質は比較的弱く認識する場合が多いことから考えて、2種の匂い分子を区別できない嗅覚レセプターからの信号は、弱く共通の匂いの質の形成に寄与すると同時に、2種の匂いの質の特徴を強調するように、応答が重なりあった部分の信号を抑制して加算効果を低下させる役割を担っていることを見出した(以下、知見2と記す)。
この知見1、2に基づいて、匂いにおける要素刺激である特定の匂い分子の複数種に対して、共通して応答するセンサの信号は、その複数の特定の要素刺激によって共通して誘起される「匂いの質」を表す感覚要素を定量評価する場合に、全て使用される。例えば、sweetなる匂いの質を構成する感覚要素を誘起する匂い分子にはR(−)carvone、S(+)carvone、menthone、geraniolなど多くのものが存在し、これらに最も感度が高くなるセンサの信号は全て、sweetに対応する「匂いの質」を構成する感覚要素を定量評価する場合に使用される。これらのセンサからの出力信号は適宜加算されて使用され得る。従って、事前に各々のセンサORiが、どの匂い分子に対してどの程度の感度で応答するか、即ちセンサORiからの出力信号レベルを調べておくことが必要であり、そのデータに基づいて、どのセンサORiの出力信号を増幅する係数αj(i)が決定される。
上記の知見1および知見2を考慮して、前処理部P1の中の選択部SAjに対して指定する係数αj(i)の決定方法をさらに具体的に説明する。
例えば、ヒトが匂い分子の1種であるpulegone(プレゴン、以下puと記す)に対してmint,sweet,fresh,herbal,その他の匂いを感じ(これを「puの匂い要素(匂いの質)にはmint,sweet,fresh,herbal,その他がある」という)、各々の相対強度が0.6,0.2,0.1,0.1,0(簡便のためにその他の強度を0とし、合計が1となる相対的な強度で表わした値)であり、センサORxがpuに対して単独で最も高感度に応答したと仮定する。また、匂い要素であるmint,sweet,fresh,herbal,その他の各々に対応して、5対の選択部SAiおよび加算部Ji(i=1〜5)が構成されていると仮定する。この場合、センサORxの出力信号S1(x)は、mint,sweet,fresh,herbal,その他の各々に対応する選択部SA1〜SA5において、0.6,0.2,0.1,0.1,0倍に増幅された後、対応する加算部J1〜J5に入力する。即ち、mintに対応する信号選択部SA1に入力したセンサORxの出力信号S1(x)は0.6倍されて加算部J1に入力し、sweetに対応する信号選択部SA2に入力したセンサORxの出力信号S1(x)は0.2倍されて加算部J2に入力する。fresh,herbal,その他に関しても同様に選択部SA3〜SA5において増幅され、対応する加算部J3〜J5に入力する。
また、Puの特異的感覚要素量を計算する、即ち他の匂い分子にないpu特有の匂いの質に対応する選択部SA6および加算部J6を設ける場合、選択部SA6には係数として1を指定する。即ち、選択部SA6に入力するセンサORxの出力信号S1(x)は、1倍されて加算部J6に入力する。
また、ヒトが匂い分子の1種であるmenthone(メントン、以下mnと記す)に対して、puと同様にmint,sweet,fresh,herbal,その他の匂いを感じ、各々の相対強度を0.5,0.3,0.2,0,0と仮定する。センサORyがpuとmnとを区別できないで検出対象とする匂い分子群の中で最も高感度に応答する、即ち、センサORyがpuとmnとを個別に呈示された場合に、他のセンサに比べて最も高感度に応答し、その応答強度が同程度であると仮定する。この場合には、上記した知見2に基づいて、係数には、pu、mnの相対強度の共通する部分の値、即ち相対強度の小さい方の値を採用する。上記のpuの相対強度を使用し、最小値を記号をmin()で表わすとすると、mintに対応する選択部SA1に入力したセンサORyの出力信号S1(y)はmin(0.6,0.5)倍、即ち0.5倍されて加算部J1に入力し、sweetに対応する選択部SA2に入力したセンサORyの出力信号S1(y)はmin(0.2,0.3)倍、即ち0.2倍されて加算部J2に入力する。同様に、fresh,herbal,その他の選択部への入力信号S1(y)に掛ける係数は、min(0.1,0.2),min(0.1,0),min(0,0)、即ち各々0.1,0,0となる。
上記のように係数αj(i)を決定することは知見2に整合していることが分かる。また、センサORyが最高感度を示す匂い分子(要素刺激)が3種類以上ある場合匂いても同様に、各々に対応する相対強度の最小値を係数αj(i)として使用する。
次に、匂い物質に反応してセンサが出力した信号から匂い物質の特性を評価するために、前処理部P1、係数算出部P2、および増幅部P3が行う処理は、図3に基づいて説明した処理と同様である。即ち、加算部JCは、入力する前処理部P1の出力信号S3(1)〜S3(m)を加算し、加算結果をSUM=Σi=1〜mS3(i)として出力する。相対値決定部REはSUMを使用して、入力する各々の信号S3(1)〜S3(m)の総和に占める割合、即ちS4(j)=S4(j)/SUMを生成する。信号S4(i)は、最大検出部MXおよび規格化部NORに入力し、最大値検出部MXが、入力する信号S4(1)〜S4(m)の中の最大の信号を検出し、MAXとして出力する。規格化部NORはMAXを使用して、入力する信号S4(1)〜S3(m)を規格化して、増幅部P3への制御信号C(j)=S4(j)/MAXを生成する。各々の乗算部Mj(j=1〜m)は対応する制御信号C(j)を使用して、前処理部P1からの対応する出力信号S3(j)を増幅し、信号S5(j)=C(j)×S3(j)を生成する。
例えば、匂い物質がセンサORiに呈示された後、前処理部P1の出力信号S3(1)〜S3(m)の中のS3(1)が最初に所定値を超えたが、その他の信号S3(2)〜S3(m)は小さい状態であると仮定すれば、相対値決定部REの出力信号は、S4(i)=S3(i)/SUMとなり、最大検出部MXの出力信号MAX=S4(1)となる。従って、制御信号C(1)=S4(1)/S4(1)=1であるが、その他の制御信号C(j)(j≠1)に関しては、C(j)=S4(j)/S4(1)=(S3(j)/SUM)/(S3(1)/SUM)=S3(j)/S3(1)となり、この値は1よりも小さい値である。即ち、最初に所定値を超えた信号S3(1)の大きさは、乗算部M1によって影響を受けずに評価部EVに入力するが、それ以外の信号S3(2)〜S3(m)は、対応する乗算部M2〜Mmによって1よりも小さい値C(j)を掛けられることによって抑制されて、評価部EVに入力する。従って、この処理は上記した知見1に整合した処理となっていることが分かる。
以上によって、知見1および知見2に整合した、匂い物質を評価対象とする感覚評価システムを実現することができ、匂い分子(要素刺激)に関する評価結果をデータベースとして感覚評価システムの記録部(図示せず)に記録しておくことによって、評価部EVが、このデータを使用して、匂い物質の定性/定量評価を行うことが可能となる。
各々のセンサが、どのような要素刺激に対してどの程度の感度で応答するかを調べるにあたって、匂いの評価においては経験に依存する個人差が存在することから、感覚量による評価(官能検査)において、刺激要素が有する感覚量の異質な要素の相対強度が正確に求められていることを保証するのは困難である。これを客観的に行うために、次の方法を用いる。即ち、嗅覚の場合、適度に強い強度(溶液刺激を用いて嗅細胞を調べる場合は0.1ミリモル、無臭無害の有機溶媒で希釈した匂い物質溶液の飽和蒸気ガスを用いる場合は、容積比濃度で0.1〜0.0001などその匂い物質に合わせて設定した適当な強度になる濃度)で様々の要素刺激に対する応答性を調べる。呈示する刺激の質の相対強度を評価したい要素刺激に対して応答する全てのセンサだけを対象にして、各々の要素刺激に応答する比率を応答の有無に基づいて計算する。この応答率が、その要素刺激の有する感覚量上の共通する質を構成する感覚要素の割合を示している。尚、複数の要素刺激に共通する感覚要素をその代表させる感覚要素がなるべく重複する部分を少なくして(理想的には直交するように)設定することが、より少ない情報量で刺激の質を正確に評価することにつながるが、一般的に直交する要素に分解することは難しく、これを多変量解析により行うことで感覚要素の設定の最適化が可能な場合がある。
上記したように、匂い物質を分類する場合には、分類の程度によって、区別して取り扱うべき匂いの質の種類が変わる。従って、例えば以下に例示する項目の中から必要なものを選んで用いることができる。匂い物質を粗く分類する場合には、以下の匂いの質の中から少数の言葉を選択し、細かく分類する場合には、多数の言葉を選択する。そして、対応する選択部および加算部を備えた感覚評価システムを構成し、予め匂い分子(要素刺激)を呈示した実験を行って選択部に指定する係数αを決定することによって、匂い物質の分類が可能となる。
(匂いの質の例)
匂いの質の例としては、例えば、アロマティック(aromatic)、樟脳様(camphoraceous)、柑橘系果実様(citrus fruity)、バナナ/パイナップル系果実様、芳香、未熟、甘い(sweet)、重い(heavy)、軽い(フレッシュ,fresh)、胸を悪くする(repulsive)、黴びた(moldy)、土臭い(earthy)、酸様の刺激性、腐敗(rancid)、薬品様、草様(herbal、木材の(woody)、檜様、松様、樹脂様(resinous)、過熱肉様、生肉臭い、生魚臭(fishy)、ニンニク様、タマネギ様、ピーマン様、ニンジン様、セロリ様、紫蘇様、胡麻様、アーモンド様(almond)、シナモン様、花様(floral)、バラ様(rose)、ジャスミン様(jasmin)、ラベンダー様(lavender)、鈴蘭様(muguet)、バニラ様(vanilla)、ペパーミント様(peppermint)、スペアミント様(spearmint)、スパイシー様(spicy)、チーズ様(cheese)、肉食動物様、草食動物様、糞様、汗様(sweaty)、アンモニア様(ammonia)、アルコール様、有機溶剤様、エーテル様、油っぽい/脂肪様(oily/fatty)、ナフタリン様、ムスク様(musky)、硫黄様、等が挙げられるがそれらに限定されない。
図1〜3に示した感覚評価システムにおいては、係数算出部P2の機能によって、刺激Odに2番目以降に反応したセンサの出力信号は抑制されたままとなる。しかし、実際の生体の匂い処理においては、匂い刺激を呈示され続けると、反応が遅かった嗅覚レセプターも徐々に出力信号を増大させ、この信号が匂い処理に使用されることとなる。従って、より実際の匂い処理に整合させるために、本感覚評価システムは、信号S3(1)〜S3(m)の中の最大の信号以外の抑制されている信号を加算し、この加算値が所定の値よりも大きくなれば、抑制されている信号を増大させる制御信号を対応する乗算部Miに出力する新たな制御部(図示せず)を備えて構成することも可能である。例えば、新たな制御部は、抑制されている信号の加算値が所定の値よりも小さい状態ではゼロレベルの制御信号C1(i)を乗算部Miに出力し、その加算値が所定の値以上になれば、抑制されている信号の中の最大の信号をS3(k)と仮定すると、信号S3(k)に対応する制御信号C1(k)のみを所定の値で乗算部Mkに出力し、その他の信号C1(i)(i≠k)をゼロのまま変化させない。そして、制御信号C1(k)を入力された乗算部Mkは、信号S3(k)を制御信号C1(k)およびC(k)を使用して決定される割合、例えば、C1(k)+C(k)倍に増幅する。これを繰り返すことによって、抑制されていたセンサの出力信号S3(i)が、刺激Odの呈示される時間の経過に伴って増大すれば、それらの抑制されていた出力信号S3(i)は、早く増大する順に、対応する乗算部において抑制が緩和され、増幅されるようになり、本感覚評価システムは、実際の生体における匂い処理とより整合した処理を行うことができるようになる。
上記したように、本発明者らは、2種の匂い分子を区別できない嗅覚レセプターからの信号は、共通の匂いの質の形成への寄与が弱く、これらの信号は抑制されて加算効果を低下させる役割を担っている(上記した知見2参照)ことを見出したが、これとは逆に、匂い刺激および嗅覚レセプターの組合わせによっては、2種の匂い分子を区別できない嗅覚レセプターからの信号が、共通の匂いの質の形成への寄与が大きく、これらの信号は増幅されて加算効果を増大させる役割を担っている場合も考えられる。従って、この場合には、区別できない複数種類の匂い分子の各々に対してヒトが感じる匂いの質の相対強度の内、匂いの質毎における最大値を選択部SAjに指定する係数αj(i)として使用する。
例えば、上記した匂い分子pu、mnに関する説明と同様に、センサORyがpuとmnとを区別できない、即ち、センサORyがpuとmnとを個別に呈示された場合に、他のセンサに比べて最も高感度に応答し、その応答強度が同程度であると仮定すると、この場合には、係数には、pu、mnの相対強度の共通する部分の値、即ち相対強度の大きい方の値を使用する。上記したpu、mnの相対強度を使用し、最大値を記号max()で表わすとすると、mintに対応する選択部SA1に入力したセンサORyの出力信号S1(y)はmax(0.6,0.5)倍、即ち0.6倍されて加算部J1に入力し、sweetに対応する選択部SA2に入力したセンサORyの出力信号S1(y)はmax(0.2,0.3)倍、即ち0.3倍されて加算部J2に入力する。同様に、fresh,herbal,その他の選択部への入力信号に掛ける係数は、max(0.1,0.2),max(0.1,0),max(0,0)、即ち各々0.2,0.1,0となる。センサORyが最高感度を示す匂い分子(要素刺激)が3種類以上ある場合においても同様に、各々に対応する相対強度の最大値を係数として使用する。この場合、係数の総和Σj=1〜mαj(i)が1を超える場合もあることから、この総和で除算し、総和が1になるように決定した係数を使用することも可能である。
以上においては、センサの過渡特性を考慮していないが、実際の嗅覚レセプターでは匂い物質を呈示された後、出力信号はゼロから刺激濃度に応じた値に向かって有限の時間をかけて立ち上がる。また、嗅覚レセプターの出力信号は、より強度の強い匂い成分に対して速く立ち上がり、特定の匂い刺激に対してより高感度に応答する嗅覚レセプターからの出力信号は、その他の嗅覚レセプターの出力信号よりも速く立ち上がる。
従って、匂い物質の呈示直後から、センサの出力信号の処理を開始することも可能ではあるが、匂い物質呈示直後においては、出力信号S3(i)はほぼゼロレベル若しくはノイズ信号レベルであることから、除算の処理は正常な結果にならない。例えば、係数算出部P2の加算部JCの出力信号SUMがほぼゼロレベルであることから、相対値決定部REでの除算結果が正常でない可能性が高い。従って、匂い物質が呈示された後、有意な出力信号S3(i)が発生した時点から処理を開始することが望ましい。例えば、評価部EVが、各センサの出力信号を連続的に観測し、何れかのセンサの出力信号が所定のレベルを超えたと判断した時点、即ち、何れかのセンサが明らかに呈示された刺激に対して信号を出力していると判断した時点から、所定の時間t、例えばt=0.2秒後(実際の脳が有意な信号と判断するのに約0.3秒かかり、嗅覚レセプターにおいては、匂い物質が呈示されてから最初の信号が有意なレベルまで立ち上がるまでに0.1秒かかると考えられ、その差の約0.2秒に相当する)に、各部、特に相対値決定部RE、最大値検出部MXに対してトリガを出力し、処理の開始を行わせるようにすることができる。
また、乗算部Miに入力する係数C(i)の設定においては、前処理部P1の出力信号S3(i)を、その中の最大値を用いて規格化した値を用いるが、その係数はどの時点の値を用いるかに依存する。従って、評価部EVがトリガを出力する時間tは0.2秒に限らず、感覚評価システムの性能を最適化するパラメータの1つとして、使用するセンサの特性に応じて調節することができる。
従って、感覚評価システムにおける処理において、過渡特性を考慮した信号処理とすることによって、実際の嗅覚レセプターのような過渡特性を有するセンサを使用した場合への対応が可能となる。
また、上記のように、各センサの出力信号を連続的に観測することによって、刺激を実際に呈示した時刻を知る必要がなくなる。さらに、この観測値を記録手段によって記録することにより、各センサの動作の確認、刺激強度の変化、各センサ出力のピーク値とピーク時刻の確認、各乗算部で信号処理部の出力を減じる係数を設定するタイミングを計るため、または各センサが担当する感覚要素量の変化の検証などに利用することができる。
また、図1に示した本発明の実施の形態に係る感覚評価システムにおいて、図4に示すように、各々のセンサORiの出力信号S1(i)を加算する加算部AD1、前処理部P1の出力信号S3(i)を加算する加算部AD2、および増幅部P3の出力信号を加算する加算部AD3を備えることも可能である。
評価部EVは、加算部AD1の加算結果の出力値OUT1をモニタすることによって、刺激が呈示されたタイミング、刺激強度変化などを判断することができる。これによって、例えば、刺激強度が低下してある設定値以下になったタイミングで、センサを洗浄(センサ付近に匂い分子を含まない無臭の空気を送付すること)することができ、呈示された刺激の影響が残り、次の刺激の検出を正確に行うことができない問題を回避することが可能となる。
また、評価部EVは、必要に応じて加算部AD3の加算結果の出力値OUT3によって、各匂いの質(感覚要素)の強度を表わす信号S5(1)〜S5(m)に対して補正する処理、例えば各信号S5(1)〜S5(m)をOUT3で除する処理を行い、その結果を用いて刺激がヒトに誘起するであろう感覚の要素量の定性的/定量的な評価を行うことが可能となる。
また、評価部は、加算部AD1〜AD3の加算結果OUT1〜OUT3を比較することにより、感覚評価システムの動作の正常さ、現状の刺激強度が識別範囲のどの辺りに位置しているかなどを評価することができる。
さらに、各々のセンサORiの出力信号S1(i)が評価部EVに直接入力する信号伝達ライン(図示せず)を備え、評価部EVが信号S1(i)を監視することによって、各々のセンサORiが正常か否かを判断するようにすることも可能である。
信号処理部の構成は、上記した実施の形態に限定されるものでなく、上記した知見1、知見2と整合する範囲内で、種々の変形、置換等が可能である。例えば、図5に示すように、信号処理部P0において乗算部M1〜MnをセンサOR1〜ORnの直後に配置して構成することも可能である。
図5は、図1に示した感覚評価システムにおいて、信号処理部P0として置換され得る別の信号処理部P0の構成を示すブロック図である。図5に示した信号処理部P0は、乗算部M1〜Mn、選択部SA1〜SAm、加算部J1〜Jm、係数分配部SC1〜SCm、係数加算部CAD1〜CADnを備えている。センサの数nと選択部SA1〜SAm、加算部J1〜Jmの数mは同数に限らない。
乗算部Miは、センサ(図示せず)の出力信号S1(i)に対して係数加算部CADiからの制御信号C2(i)に応じた係数を乗じて、信号S6(i)を生成する。信号S6(i)は選択部SA1〜SAmに入力し、選択部SA1〜SAmおよび加算部J1〜Jmによって所定の処理を受け、その結果、信号S5(i)が生成されて評価部EV(図示せず)に入力される。ここで、選択部SA1〜SAmは、図2における選択部SA1〜SAmと同様の処理を行うので、ここでは説明を省略する。また、加算部J1〜Jmは、図2における加算部J1〜Jmが行う加算処理に加えて、加算結果に所定の係数を乗じる処理を行う。
出力信号S5(j)は、係数分配部SCjに入力され、対応する選択部SAjにおいて選択されなかった信号(選択部SA1〜SAmにおいて係数として0を指定された信号)に対して、信号S5(j)に応じた所定の制御信号C1j(i)を出力する。例えば、選択部SAjにおいて、センサ1、3の出力信号に対して、係数として0が指定された場合、係数分配部SCjにおいては、センサ1、3に対応する制御信号C1j(1)、C1j(3)を0以外の所定の値で出力し、それ以外の制御信号C1j(i)(i≠1,3)を0として出力する。制御信号C1j(i)は、対応する係数加算部CADiに入力し、係数加算部CADiは、複数の制御信号C1j(i)(j=1〜m)を、必要に応じて所定の係数を掛けて加算し、この加算結果の逆数を制御信号C2(i)として出力する。必要な場合には、この加算結果の逆数に調整のための係数を掛けて制御信号C2(i)を生成してもよい。乗算部Miは、上記したように、センサの出力信号S1(i)に対して制御信号C2(i)に応じた係数を乗じて、信号S6(i)を生成する。
制御信号C2(i)があらかじめ設定された基準値以上になった場合、制御信号C2(i)の代わりに所定の基準値を用いるようにしてもよい。これは、信号を抑制する効果にも限界があることを反映させるための処置である。
また、図4に示したブロック図と同様に、図5において加算部AD1〜AD3を備えた構成とすることも可能である。
以上においては、信号がアナログ/ディジタルのいずれであるかを明確にせず説明したが、センサORnの出力信号がアナログ信号であれば、全てアナログ素子を使用して信号処理するように感覚評価システムを構成することも(例えばアナログトランジスタを主とした回路構成)、各信号伝達ラインの途中にA/D変換器を装備し、その後の信号をディジタル素子を使用して処理するように感覚評価システムを構成することも可能である。ディジタル信号として処理する場合には、例えば、規格部NORからの制御信号C(i)を4ビットデータとすれば、乗算部Miでの増幅率を1/1〜1/16(または0〜15)倍の範囲で制御することが可能である。
上記した、本発明に係る感覚評価システムを使用して、各種の匂い分子(要素刺激)に対して評価を行うことによって、匂い分子のスペクトル、即ち各匂いの質に対する強度分布を得ることができる。従って、得られた複数種類のスペクトルデータの重ね合わせによって、即ち、複数種類のスペクトルデータの各々に適当な係数を掛けて加算することによって、所望の匂いのスペクトルを得ることができる。
従って、複数種類の匂い分子を各々の種類毎に密閉保存した複数のカプセルと、該カプセルから匂い分子を開放する開放手段と、該開放手段によって開放する匂い分子の量を制御する制御手段とを備えた匂い調合システムにおいて、所望の匂いのスペクトルを形成可能な、若しくは所望の匂いのスペクトルに近似するスペクトルを形成可能な、各々の匂い分子のスペクトルに掛ける係数を計算によって求め、制御手段から各々のカプセルの開放手段に対応する計算結果の係数に応じた制御信号を伝送し、カプセルから所定量の匂い分子を開放することによって、ヒトに所望の匂いを感じさせることができる。
具体的には、目標の匂いを誘起する匂い物質(複数種類の匂い分子の混合物質)を本発明に係る感性評価システムを用いて評価し、その結果を用いて、上記したように、複数の匂いカプセルから所定の匂い分子を所定量開放し、混合して得られた匂い物質を、再び本発明に係る感性評価システムによって評価し、その結果と目標の匂いを誘起する匂い物質の評価結果とを比較して、補正を行うようにすることも可能である。即ち、その比較の結果、不足している匂いの質があれば、その匂いの質を補うために新たに追加すべき匂い分子とその量を決定し、過剰な匂いの質があれば、その匂いの質の量を減少させるために、量を減少させるべき匂い分子とその望ましい量を決定することができる。これを繰り返すことによって、目標とする匂いを誘起するために必要な匂い分子およびその必要量を精度良く決定することが可能となる。
ここで、要素刺激である匂い分子などに関して、本発明に係る感性評価システムを用いて得られた評価結果を、データベース化して使用することが望ましい。
また、匂いに限らず、味覚などその他の感覚に関しても、対応する要素刺激成分について本発明に係る感覚評価システムを使用して得られた評価データを使用することによって、刺激の調合が可能となる。
また、アレイ化する化学物質レセプターの種類とその数は、測定対象によって変えることができる。極めて限定的な匂い種を対象とする場合には、種類数を少なくすることができる。例えば、スペアミント臭とキャラウエイ臭とを識別するセンサの場合、両者の匂いの主成分となっている匂い分子であるR(−)カルボンとS(+)カルボンを識別する高感度の嗅覚レセプター2種類ずつ、識別できない高感度の嗅覚レセプター2種類、薄荷、ペパーミントの主成分である(−)メントールを高感度に識別する嗅覚レセプター1〜2種、ミント臭にもキャラウエイ臭にも含まれるリモネンを高感度に識別できる嗅覚レセプター1〜2種、これらいずれの成分にも応答しない嗅覚レセプター2種以上、合計10種あるいはそれ以上の嗅覚レセプターによりセンサを構成させることができる。スペアミント臭とキャラウエイ臭の主成分となっているR(−)カルボンとS(+)カルボンに応答する嗅覚レセプターが70種程度と推定されているので、これらに応答しない嗅覚レセプターは20〜30種もあれば両者の臭いを精度よく識別することが可能と考えられるので、多くても100種のレセプターをアレイ化すればよい。また、ヒトの嗅覚レセプターの内で機能しているものが347種と報告されているので、ヒトあるいはマウスの代表的な嗅覚レセプターを300種程度アレイ化すれば、ほぼヒトの嗅覚と同様の識別能を持たせられると考えられる。
本発明の最良の実施形態の説明
以下に好ましい実施形態の説明を記載するが、この実施形態は本発明の例示であり、本発明の範囲はそのような好ましい実施形態に限定されないことが理解されるべきである。
1つの局面において、本発明は、化学物質センサを提供する。このセンサは、a)化学物質レセプター遺伝子をコードする配列を含む、核酸分子;b)該核酸分子が導入された細胞が配置された支持体;c)該化学物質レセプター遺伝子に起因するシグナルを測定する手段;およびd)測定された該シグナルの強度から、該化学物質レセプターの活性化度を算出し、化学物質に関する情報を提供する手段、を備える。ここで、化学物質は、どのような物質でよいが、好ましくは、生体と相互作用するものであり得る。そのような生体と相互作用する化学物質としては、サイトカイン(例えば、EGF、HGF、FGFなど)、ホルモン、パラカイン、ミッドカインなどの生体情報伝達物質、味覚源(甘(あまい)、酸(すっぱい)、苦(にがい)、鹹(しおからい)、旨味(うまみ))に反応する物質(例えば、糖(グルコース、スクロースなど)、酸(クエン酸、酢酸など)、苦み物質(例えば、タンニンなど)、鹹(塩化ナトリウムなど)、旨味(グルタミン酸ナトリウムなど)が挙げられるがそれらに限定されない。辛(痛覚)もまた、味覚の一つとして考えられていることから、辛み(例えば、カプサイシンなど)もまた、化学物質に入り得る。あるいは、化学物質は、嗅覚源であり得る。そのような嗅覚源は、嗅覚レセプターの対象となり得るすべての物質を包含する。そのような化学物質は、代表的には、揮発性であり、例えば、エタノールなどの有機低分子などが挙げられるがそれらに限定されない。糖(グルコース、スクロースなど)、鹹(塩化ナトリウムなど)および旨味(グルタミン酸ナトリウムなど)に関する感覚は、Gタンパク質と共役したレセプターを介することが知られており、酸(クエン酸、酢酸など)および苦み物質(例えば、タンニンなど)は、チャネルを介してシグナルが伝達されることが知られている。匂いについては、種々の基本嗅覚源が存在し、例えば、アロマティック、樟脳様、柑橘系果実様、バナナ/パイナップル系果実様、芳香、未熟、甘い、重い、軽い(フレッシュ)、胸を悪くする、黴びた、土臭い、酸様の刺激性、腐敗、薬品様、草様、木材の、檜様、松様、樹脂様、過熱肉様、生肉臭い、生魚臭、ニンニク様、タマネギ様、ピーマン様、ニンジン様、セロリ様、紫蘇様、胡麻様、アーモンド様、シナモン様、花様、バラ様、ジャスミン様、ラベンダー様、鈴蘭様、バニラ様、ペパーミント様、スペアミント様、スパイシー様、チーズ様、肉食動物様、草食動物様、糞様、汗様、アンモニア様、アルコール様、有機溶剤様、エーテル様、油っぽい/脂肪様、ナフタリン様、ムスク様、硫黄様が挙げられるがそれらに限定されない。1つの例示的実施形態において、fresh(フレッシュ)、herbal(草様)、sweet(甘い)、caraway(キャラウェイ様)、spearmint(スペアミント)を基本嗅覚源とすることが好ましいが、それに限定されない。これらの分子認識については、日本化学会編、味とにおいの分子認識、季刊化学総説40、(1999)に詳説されている。
別の局面において、本発明は、化学物質センサにおいて使用するためのチップを提供する。このチップは、少なくともa)化学物質レセプター遺伝子をコードする塩基配列を含む、核酸分子;およびb)上記核酸分子が導入された細胞が配置された支持体、を備える。
さらに別の局面において、本発明は、試料中の化学物質に関する情報を得るための方法に関する。この方法は、A)化学物質レセプター遺伝子をコードする配列を含む、核酸分子が導入された、細胞を提供する工程;B)上記細胞に目的となる化学物質を含むかまたは含むと予想される試料を提供する工程;C)上記細胞中の上記化学物質レセプター遺伝子に起因するシグナルの上記化学物質による変化を測定する工程;およびD)測定された上記シグナルの強度変化から、上記化学物質レセプターの活性化度を算出し、化学物質の情報を提供する工程、を包含する。
以下の好ましい実施形態に関する具体的な説明は、本発明のセンサ、チップ、方法、システムなど、特に言及しない限り適用可能なすべてのカテゴリーに適用され得る。
本発明では、好ましくは、使用される核酸分子は、マーカー遺伝子をコードする配列をさらに含み得る。
本発明において、化学物質レセプター遺伝子をコードする配列と、必要に応じてマーカー遺伝子をコードする配列とを含む、核酸分子は、当該分野において周知の遺伝子工学の技術を用いて作製することができる。そのような2つの配列は、連続的に配置されていてもよく、全く別々に配置されていてもよい。このような核酸分子は、細胞内に導入されるときに発現可能なような調節配列を含み得るが、細胞内のそのような調節配列を利用することが可能な場合もあることから、そのような調節配列を最初から含んでいる必要は必ずしもない。また、このような核酸分子は、細胞への導入を容易にするために、ベクター内に含まれることが好ましい。そのようなベクターの選択は、当該分野における技術常識の範囲内にあり、本明細書において別の箇所において説明したように、当業者が適宜行うことができる。
本発明において、該核酸分子が導入(例えば、形質転換、形質導入、トランスフェクションなど)された細胞が配置された支持体は、核酸分子を導入した細胞を、支持体に固定するか、または細胞を支持体に固定した後に核酸分子を導入(例えば、形質転換、形質導入、トランスフェクションなど)することによって作製することができる。ここで、細胞は、導入された核酸分子を発現することができるものであれば、どのような細胞でも使用することができる。好ましくは、支持体の上での維持が容易な細胞が好ましい。そのような細胞としては、例えば、HEK293(HEK293T),CHO,COS−7,神経芽細胞腫(neuroblastoma),NG108−15などが挙げられるが、それらに限定されない。支持体もまた、本発明のセンサとして用いることができるものであれば、どのような材質および形状のものであってもよい。好ましくは、材質としては、生体適合性のものであることが有利である。本発明のセンサは、細胞における化学物質レセプターの生物学的活性を保持した発現を利用したメカニズムであることから、細胞の生存が必要であるからである。従って、生体適合性のものが使用されない場合は、生体適合性の材料でコーティングされることが必要であり得る。形状としては、例えば、四角形(例えば、正方形)のものが好ましい。規格化することができるからである。
本発明において、マーカー遺伝子または化学物質レセプター遺伝子に起因するシグナルを測定する手段は、測定するシグナルに応じて当該分野において周知の技術を用いて作製することができる。この測定手段は、細胞からのシグナルを感知することができる位置に配置される。シグナルが蛍光である場合は、当該分野において周知の任意の蛍光測定器が使用され得る。シグナルが電気信号である場合は、電気信号を測定する手段が使用される。シグナルがカルシウム濃度である場合は、電気信号として測定してもよく、あるいは、カルシウムイオンを測定する別の手段(特異的試薬であるfura−2など)などで蛍光として物理的に測定してもよい。シグナルが化学的信号である場合は、その化学的信号に特異的な化学反応を起こすことができる手段を利用することができる。シグナルが生物学的手段である場合は、例えば、細胞の形態変化、移動などを測定することができる手段であり得る。物理学的信号を検出する手段を用いることが好ましい。数値化し、相対的比較を行うことが容易であるからである。
本発明において、測定された上記シグナルの強度から、上記化学物質レセプターの活性化度を算出し、化学物質に関する情報を提供する手段は、上記シグナルの検出手段から得られたシグナル情報に基づいて、化学物質に関する情報を提供する計算を行う手段であり、通常、コンピュータを用いて作製され得る。シグナル強度と化学物質に関する情報との相関付けは、本明細書に記載されるアルゴリズム、または当該分野において公知のアルゴリズムあるいはそれらの組み合わせを用いて行うことができる。従って、そのようなアルゴリズムまたはその組み合わせを実現するコンピュータプログラムを格納したシステムがこのような化学物質に関する情報を提供する手段として使用することができる。このようなシステムの構築は、当該分野において周知であり、そのような技術を利用して、本発明を構成することができる。好ましくは、この化学物質に関する情報を提供する手段は、上記シグナルを、シグナルを測定する手段によって測定することができる。
本発明において、細胞内に導入される核酸分子は、マーカー遺伝子をコードする配列をさらに含むことが好ましい。そのようなマーカー遺伝子を含ませることによって、化学物質レセプターと相互作用し、化学物質レセプターからのシグナルを伝達することが容易になるからである。従って、好ましくは、マーカー遺伝子は、化学物質レセプターと共役することが好ましい。共役するとは、化学物質レセプターと、マーカー遺伝子とが共役していることは、レセプターのリガンドを刺激因子として刺激し、マーカー遺伝子が提示する標識を測定することによって確認することができる。
好ましい実施形態において化学物質レセプターは、核内レセプター、細胞質レセプターおよび細胞膜レセプターからなる群より選択されるレセプターを含む。このようなレセプターは、単一種であってもよく、複数種含んでいてもよい。あるいは、レセプターの種類は複数存在してもよい(核内レセプターと細胞膜レセプターなど)が、単一種類存在してもよい。
好ましい実施形態において、本発明のセンサおよびチップにおいて使用される化学物質レセプターは、Gタンパク質共役型レセプター、キナーゼ型レセプター、イオンチャネル型レセプター、核内レセプター、ホルモンレセプター、ケモカインレセプターおよびサイトカインレセプターからなる群より選択されるレセプターを含む。Gタンパク質共役型レセプターが好ましい。マーカー遺伝子としてGタンパク質と同時に発現させることが可能となるからであり、そのような共役によって、シグナル伝達が簡便になり、シグナルを同定することができるからである。
より好ましい実施形態において、本発明のセンサおよびチップにおいて使用される化学物質レセプターは、嗅覚レセプターまたは味覚レセプターを含む。化学物質レセプターは、両方含んでいてもよい。両方に共通するレセプターが存在し得るからである。別の実施形態では、化学物質レセプターは嗅覚レセプターを含む。味覚レセプターを使用することによって、味覚を再現することができるからである。他の実施形態では、化学物質レセプターは、嗅覚レセプターを含む。嗅覚レセプターを使用することによって、嗅覚センサを再現できるからである。
別の好ましい実施形態において、本発明では、化学物質レセプター遺伝子は、レチノイン酸レセプター、EGFレセプター、ホルモンレセプター(インターロイキンレセプター、インターフェロンレセプター、CSFレセプターなど)を含む。
1つの実施形態において、本発明において使用される化学物質レセプター遺伝子は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94および96からなる群より選択される核酸配列またはその改変体もしくはフラグメントを少なくとも1種、好ましくは少なくとも2種、より好ましくは少なくとも約10種、さらに好ましくは少なくとも約20種含む。あるいは、本発明において使用される化学物質レセプター遺伝子は、配列番号60、62、64および66からなる群より選択される核酸配列またはその改変体もしくはフラグメントを少なくとも1種、好ましくは少なくとも2種含む。好ましい実施形態において、本発明において使用される化学物質レセプター遺伝子は、配列番号13、15、17、19、21、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94および96からなる群より選択される核酸配列またはその改変体もしくはフラグメントを少なくとも1種、好ましくは少なくとも2種、より好ましくは少なくとも約10種、さらに好ましくは全部含む。好ましい実施形態において、本発明において使用される化学物質レセプター遺伝子は、配列番号13、15、17、19、21、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94および96からなる群より選択される核酸配列またはその改変体もしくはフラグメントを少なくとも1種、好ましくは少なくとも2種、より好ましくは少なくとも約10種、さらに好ましくは全部含む。
本発明において、使用される化学物質レセプターの数は、少なくとも1つあれば十分である。好ましくは、化学物質レセプター遺伝子は、少なくとも約2種類含まれ、より好ましくは、少なくとも約10種類含まれる。2種類あることで、簡便な嗅覚センサは十分に構築することができ、少なくとも10種類のレセプターを含むことによって、日常での使用に耐え得る程度に識別力を有するセンサが作製され得るからである。より好ましくは、化学物質レセプター遺伝子は、少なくとも約20種類含まれる。少なくとも約20種類の化学物質レセプターを含むことによって、ほぼすべての化学物質を識別することが可能である。もっとも好ましくは、ヒトの嗅覚レセプターの場合などで存在するほぼすべての種類、例えば、少なくとも約300種類の化学物質レセプターを利用することが有利であり得る。このように実質的に全部のセットの化学物質レセプター(例えば、嗅覚レセプター、味覚レセプター、シグナル伝達経路など)を利用することによって、生体の感覚と実質的に同一の感覚を再現することができる。このような場合、生体がその感覚において非常に敏感であるものの化学物質レセプターを利用することが有利であり得る。例えば、嗅覚が優れるといわれる、マウス、イヌなどの嗅覚レセプターの実質的にすべてのセットを利用することによって、ヒトの鼻を超える嗅覚センサを作製することができる。そのような嗅覚レセプターの実質的にすべてのセットは、ゲノム配列またはライブラリーなど、あるいは遺伝子データベースから入手可能であり、当業者は、容易に実施することができる。
従って、好ましい実施形態において、本発明において使用される化学物質レセプター遺伝子は、マウス、ヒト、ラット、イヌおよびネコから選択される動物が有する実質的にすべての種類が含まれる。
あるいは、別の好ましい実施形態では、本発明において使用される化学物質レセプター遺伝子は、マウス、ヒト、ラット、イヌおよびネコから選択される動物が有する実質的にすべての種類の嗅覚レセプター遺伝子および/または実質的にすべての味覚レセプターが含まれる。
好ましい実施形態では、本発明において使用されるマーカー遺伝子は、Gタンパク質、前記化学物質レセプター自体またはアレスチンを含む。
別の好ましい実施形態では、マーカー遺伝子は、Gα遺伝子(例えば、Gα15、Gαq、Gαolfなど)を含み、さらに好ましくは、マーカー遺伝子は、Gα遺伝子(例えば、配列番号68(核酸配列)、配列番号69(アミノ酸配列))、Gβ遺伝子(例えば、配列番号70(核酸配列)、配列番号71(アミノ酸配列))、Gγ遺伝子(例えば、配列番号72(核酸配列)、配列番号73(アミノ酸配列))をすべて含むことが有利であり得る。このGタンパク質遺伝子は、天然において共役する組のセットを用いることが有利であり得るが、それに限定されない。
本発明において使用される支持体は、どのようなものでもよいが、好ましくは、固相支持体が使用される。より好ましくは、本発明において使用される支持体は、コーティングされているかまたはされていない、ガラス、シリカ、シリコン、ポリスチレン、高分子フィルムなどを含み得る。ガラスのような強固なものを使用することが有利である。チップとしてセンサに組み込むことが容易であり、使用に耐え得る可能性が高まるからである。このような固相支持体は、好ましくはコーティングされている。コーティング材料は、細胞と生体適合性であるものが好ましい。そのようなものとしては、例えば、ポリ−L−リジン、シランなどがあるがそれに限定されず、好ましくは、シランが利用される。細胞がよりよく固定するからである。このような支持体が使用される場合は、細胞接着分子が使用されることが好ましい。そのような細胞接着分子の使用によって、細胞への遺伝子導入が容易になるからであり、細胞がより強固に支持体に固定されるからである。細胞接着分子は、フィブロネクチン、ビトロネクチンもしくはラミニンまたはそのフラグメントもしくは改変体を含み得るがそれらに限定されない。
本発明において、シグナルは、細胞内カルシウム濃度、イノシトール三リン酸、cAMP、ジアシルグリセロール、サイクリックGMP、細胞膜電位、MAPキナーゼ、PKA、PKCなどを含む。細胞内カルシウム濃度をシグナルとして利用することが好ましい。カルシウム濃度は、fura−2のような蛍光色素によって特異的に検出することができるからである。
従って、さらに好ましい実施形態において、シグナルは、細胞内カルシウム濃度であり、シグナル測定手段は、カルシウム濃度を電気的、化学的または生物学的に測定する手段、もっとも好ましくはFura−2のような蛍光物質を用いて蛍光測定器によって測定する手段であり得る。
1つの好ましい実施形態では、マーカー遺伝子は、細胞にもともと存在する遺伝子とは異なることが有利であり得る。もともと存在する遺伝子と異なるマーカー遺伝子を利用することによって、ノイズシグナルを減少させることが可能であるからである。
本発明において使用される細胞は、HEK293細胞(HEK293T),CHO,COS−7,神経芽細胞腫(neuroblastoma),NG108−15などを含む。より好ましくは、この細胞は、実質的に1種類の細胞を含む。実質的に1種の細胞を用いることによって、別のノイズを減少させ、均一でより再現性の高い結果を得ることが可能となるからである。
別の好ましい実施形態において、嗅覚レセプター遺伝子は、細胞にもともと存在する遺伝子とは異なることが有利であり得る。もともと存在する遺伝子と異なるマーカー遺伝子を利用することによって、ノイズシグナルを減少させることが可能であるからである。
好ましい実施形態では、本発明において含まれる支持体上の核酸分子、細胞などのスポットまたはアドレスは、アレイ化されることが好ましい。このような場合、センサまたはチップは、アレイと呼ばれることがあり得る。
アレイ化される場合、本発明において使用されるアレイ領域のサイズとしては、どのような大きさのものでも使用することができるが、好ましくは小さいほどよく、好ましい実施形態においては、約200mm以下の面積を有することがセンサとしての利用により適切である。そのような形態としては、四角形、より好ましくは長方形さらに好ましくは正方形あるいは円であり得る。三角形、六角形などもまた規格化の点で好ましく使用され得る。アレイ領域の長手方向の長さは、約15mm以下のものことが有利であり得、より好ましくは、長手方向の長さは約7.5mm以下が好ましい。別の好ましい実施形態では、感度および安定性の面で問題がなければ、長手方向が約1mm以下のものが有利に使用され得る。
好ましい実施形態において、本発明のチップまたはセンサは、前記細胞を覆うに十分な液体をさらに含むことが有利であり得る。
本発明は、好ましくは、細胞を維持するための培地を含む。このような培地は、チップ上に表面張力によって保持されていてもよいが、保持するための容器内に保持されていてもよい。細胞を維持するための培地を有することによって、細胞が長く生存し、センサとしての寿命が延びることから、非常に有利な形態といえる。そのような培地は、細胞によって変動し、当業者は、当該分野において周知の技術を用いて適宜適切な培地を選択することができる。そのような培地は、例えば、DMEM、RPMI1640、Ham’s12培地などが挙げられるがそれらに限定されない。この培地は、液体培地であることが好ましい。好ましくは、培地は測定対象の化学物質が含まれないか、または既知濃度を含むことが有利である。
液体培地または液体が細胞の周囲に提供されることが好ましいのは、浅い溶液層(例えば、表面張力により張り付く程度の深さ、例えば、100μm〜1mm程度)にして小さな容量でアレイ化センサの周囲を被わせ利用することによって、センサにウェットな環境が提供され、ガス状の刺激をその強度を必要以上に減少させることをなくし、それらによって、センサの湿度依存性が解消し、刺激識別能を高めることが可能になるからである。このようなウェットな環境の設定条件は、従来のウエットな環境のセンサでは指定されておらず、また従来の物理的または電子的な「鼻」または「舌」模倣センサでは、寿命、動作などに問題を生じるためにウエットな環境自体が目指されていなかった点から、本発明により始めて認識できるようになった予想外の効果ともいえる。このようなウェットなセンサは、まさしく、鼻または舌などと同様の環境を達成するものであり、その応用範囲は計り知れない。
1つの実施形態において、本発明のセンサにおいて、d)情報提供手段は、d−1)化学物質レセプターを有する細胞の刺激成分応答特異性に準じた刺激種分類法を用いて、予め指定された複数の上記センサが出力する第1の信号を加算し、感覚を表現する感覚要素の値を算出し、該算出結果を第2の信号として出力する信号処理部;およびd−2))該信号処理部から出力される上記第2の信号を用いて感覚の定性評価および/または定量評価を行う評価部を、備える。このような情報提供手段の詳細は、本明細書においてすでに別の箇所において説明したように実施可能である。このような情報解析を行うことによって、従来達成できなかった定量または定性評価を行うことが可能となった。
好ましくは、上記情報提供手段において使用される刺激種分類法は、上記化学物質レセプターの種類に応じて分類することが有利であり得る。分類することによって、より詳細にまたはより深い分析を行うことが可能である。
1つの実施形態において、本発明のセンサにおいて使用される信号処理部は、複数のセンサから出力される第1の信号の中の1つが所定の値を超えた場合、該センサ以外のセンサから出力される第1の信号を減少させ、該減少された信号を上記第2の信号の生成に使用することができる。このように分析することによって、より詳細な分析を行うことが可能である。
別の実施形態において、本発明のセンサにおいて使用される信号処理部は、感覚要素に対応した複数対の選択部および加算部と、上記センサの各々に対応した複数の増幅部と、該増幅部を制御する係数算出部とを備える。ここで、この選択部は、複数の上記第1の信号に、センサの各々に応じて指定された係数を乗じ、複数の第3の信号を生成し、上記加算部は、対応する上記選択部から出力される複数の上記第3の信号を加算して第4の信号を生成し、上記係数算出部は、複数の上記第4の信号の中から最大値を検出し、該最大値を用いて各々の上記第4の信号を規格化して制御信号を算出し、上記増幅部は、対応する上記制御信号を用いて感覚要素の強度に対応する上記第2の信号を生成する。このような工程をとることによって、規格化され、後の分析が容易となるような分析結果を提示することが可能となる。
別の実施形態において、本発明のセンサでは、化学物質(例えば、味覚源、嗅覚源など)のような刺激の呈示を受けた場合、上記センサから出力される上記第1の信号が、無刺激で応答していない状態をゼロレベルとして、ゼロレベルから上記刺激強度または刺激の濃度に応じた所定値に向かって過渡的に立ち上がり、これに伴って上記第3の信号が、ゼロレベルから上記刺激強度または刺激の濃度に応じた所定値に向かって過渡的に立ち上がり、上記係数算出部は、上記第1の信号のいずれかが上記センサが刺激に応答して出力した信号であると判断した最初の時をセンサ応答開始基準時刻とし、該基準時刻からの経過時間として指定された所定時刻において、該所定時刻における上記第3の信号を用いて上記増幅部を制御する上記制御信号を算出し、次に指定された所定時刻に制御信号を算出するまでは、最後に算出した上記制御信号を用いて上記増幅部を制御する。このような工程をとることによって、より詳細な分析を行うことが可能となる。
別の実施形態において、本発明のセンサでは、化学物質(例えば、味覚源、嗅覚源など)のような刺激の呈示を受けた場合、上記センサから出力される上記第1の信号が、無刺激で応答していない状態をゼロレベルとして、ゼロレベルから上記刺激強度または刺激の濃度に応じた所定値に向かって過渡的に立ち上がり、これに伴って上記第3の信号が、ゼロレベルから上記刺激強度または刺激の濃度に応じた所定値に向かって過渡的に立ち上がり、上記係数算出部は、上記第1の信号のいずれかが上記センサが刺激に応答して出力した信号であると判断した最初の時をセンサ応答開始基準時刻とし、複数の上記第3の信号の中の所定数以上の信号が増加から減少に転じるまでの間において、 上記第3の信号が、対応する感覚要素として有意な出力値を発生し始めたと判断された時、および上記第3の信号が、上記有意な出力値と上記第3の信号に対して予め設定された最大出力値との間を複数の区間に区分する複数の境界値に達したと判断された時毎に、その時の第3の信号を用いて上記増幅部を制御する上記制御信号を算出し、次に制御信号を算出する時までは、最後に算出した上記制御信号を用いて上記増幅部を制御する。このような工程をとることによって、より詳細な、かつ、規格化された分析を提示することが可能となる。
本発明のチップでは、a)化学物質レセプター遺伝子をコードする塩基配列を含む、核酸分子;およびb)該核酸分子が導入された細胞が配置された支持体に加え、c)化学物質レセプター遺伝子に起因するシグナルを伝達する手段をさらに備えることが好ましい。このようなシグナルを伝達する手段は、シグナルの種類によって当業者が適宜選択することができる。そのようなシグナル伝達手段としては、例えば、カルシウムの存在を蛍光で示す特異的物質であるfura−2などが挙げられるがそれらに限定されない。
本発明の試料中の化学物質に関する情報を得るための方法において、A)化学物質レセプター遺伝子をコードする配列を含む、核酸分子が導入された、細胞を提供する工程は、当業者は、遺伝子工学および細胞生物学の周知技術を用いて、達成することができる。ここで、核酸分子の細胞への導入は、例えば、本明細書に記載されるように、形質転換、形質導入、トランスフェクションなどを利用して実施可能であり、好ましくはトランスフェクション試薬などを用いて行うことができる。好ましくは、細胞接着分子を添加してトランスフェクションを行うことが有利である。細胞が支持体に固定されるからである。
本発明の試料中の化学物質に関する情報を得るための方法において、B)上記細胞に目的となる化学物質を含むかまたは含むと予想される試料を提供する工程もまた、当業者が適宜実施することができる。このような提供は、対象となる試料によって、当業者が適切な方法を選択することが理解される。例えば、匂いが対象であれば、嗅覚源を含む試料を細胞と相互作用が可能な程度に近づけることが挙げられる。味であれば、味覚源を含む試料を細胞に接触させることが好ましい。
本発明の試料中の化学物質に関する情報を得るための方法において、C)上記細胞中の上記マーカー遺伝子に起因するシグナルの上記化学物質による変化を測定する工程もまた、当業者が容易に実施することができる。このような測定方法は、シグナルの性質、種類によって変動するが、当業者はそのようなシグナルの種々の条件を考慮して、適宜適切な測定方法を採用することが可能である。そのような測定方法としては、例えば、蛍光測定法、電流測定法、電位測定法、抗原抗体反応測定法などが挙げられるがそれらに限定されない。シグナルが蛍光である場合は、当該分野において周知の任意の蛍光測定器が使用され得る。シグナルが電気信号である場合は、電気信号を測定する手段が使用される。シグナルがカルシウム濃度である場合は、電気信号として測定してもよく、あるいは、カルシウムイオンを測定する別の手段(特異的試薬であるfura−2など)などで蛍光として物理的に測定してもよい。シグナルが化学的信号である場合は、その化学的信号に特異的な化学反応を起こすことができる手段を利用することができる。シグナルが生物学的手段である場合は、例えば、細胞の形態変化、移動などを測定することができる手段であり得る。物理学的信号を検出する手段を用いることが好ましい。数値化し、相対的比較を行うことが容易であるからである。
本発明の試料中の化学物質に関する情報を得るための方法において、D)測定された上記シグナルの強度変化から、上記化学物質レセプターの活性化度を算出し、化学物質の情報を提供する工程もまた、当業者が容易に実施することができる。シグナルと化学物質レセプターの活性化度は相関しており、その相関関係に基づいて、検知した化学物質に関する情報を入手することができる。従って、そのような相関関係が既知の場合は、そのような関係に基づいて情報を算出することができるが、そのような相関関係が未知であるかまたは確実を期したいときは、予め、既知量の化学物質を用いてシグナルとの標準曲線を作成することが好ましい。
本発明の試料中の化学物質に関する情報を得るための方法では、対象となる化学物質は、嗅覚源、味覚源などであり得る。嗅覚源としては、嗅覚レセプターに結合し得る実質的にすべての化学物質が対象であり得る。従って、嗅覚源が対象とされる場合は、本発明の方法において、化学物質レセプターは、嗅覚レセプターを含むことが好ましい。味覚源としては、例えば、甘、酸、苦、鹹、旨みを有する物質、グルコース、アスパルテーム、酢酸、クエン酸、酪酸、アミノ酸(例えば、リジン、グルタミン酸、グリシンなど)、キニーネ、カフェイン、塩化カリウム、塩化ナトリウム、イノシン酸、グアニル酸などが挙げられるがそれらに限定されない。従って、味覚源が対象とされる場合は、本発明の方法において、化学物質レセプターは、味覚レセプターを含むことが好ましい。
好ましい実施形態において、シグナルに関する情報は、細胞内カルシウム濃度、イノシトール三リン酸、サイクリックAMP、ジアシルグリセロールのレベルを包含する。このようなセカンドメッセンジャーのレベルを観察することによって、細胞外からの刺激を測定することができる。
本発明の方法において、B)上記細胞に目的となる化学物質を含むかまたは含むと予想される試料を提供する工程は、約1〜4mm/秒の流速で試料を細胞に提供する工程を包含する。このような速度で試料を提供することによって、センサーおよび細胞のダメージを最小限にするとともに、化学物質の拡散を最小限にすることができる。従って、より好ましくは、工程B)は、約2〜3mm/秒の流速で上記試料を上記細胞に提供する工程を包含する。もっとも好ましくは、この速度は、約2.5mm/秒であり得る。試料の提供は、細胞外の溶液(培地または他の液体)に化学物質を含む試料を加えることによって(例えば、ガスを吹き付けて溶かし込むことによって)達成され得る。このような提供方法によって、従来の匂いセンサで問題になっていた湿気の影響から開放されることが可能となる。
本発明の試料中の化学物質に関する情報を得るための方法では、上記化学物質の情報と、目的となる化学物質または化学物質を含むと予想される試料に関する情報とを相関づける工程をさらに包含する。このような相関付け工程によって、試料中に含まれる量を定量的に測定することができる。このような相関付けは、当該分野において周知の種々の技術を用いることができ、そのような技術の一部は、本明細書において記載されている。
1つの例示的な本発明の実施形態において、本発明のセンサを用いたシステムは、図20に例示される構成を有する。図20AおよびBでは、コントロール用の無臭空気供給系2036と測定対象となる化学物質(ガス)サンプリング系2034とが備えられる。ここで、これらの系では、4セットの測定チャンバ2032内のアレイ側開口部2004から蛍光などのシグナルが透過され、このシグナルは可動シャッタ2006によって開閉が調整される。ここに、本発明のチップ(アレイ形状の場合は、アレイ)が取り付けられ得る。可動シャッタは、少し上端面を高くして培養液などの液体がもれたときに排気用チューブを通じて吸引され得る。無臭空気用の活性炭2010および予備の無臭空気用の活性炭2012がコントロール用無臭空気供給系2036中に備えられる。また、細胞培地のための培地ボトル2016および廃液を溜めるための廃液溜ボトル2018とが備え付けられている。これらのボトルは、チューブを通じて測定チャンバに接続される。これらのボトルおよび/またはチューブには吸引ポンプ2014および送液ポンプ2018とが備え付けられており、適宜液体が送排出およびその調節がされ得る。モニタ2038によってその調節がなされてもよい。これらのポンプは必要に応じて、パソコン2040によって制御され得るが、手動で制御されてもよい。システムには、その中をクリーンに保つために、陰圧エアポンプ2026が設置され得る。空気排出口(示さず)にはフィルターが取り付けられてもよく、さらに、チャンバーにチューブを介して接続され得る排気用脱臭カセット2020が取り付けられ得る。このカセットは、半部程度活性炭が入り、液が入っても耐え得る材質で作製され得る。
4セットの測定チャンバは、例えば、2セットの測定対象と2セットの予備からなり、スライドさせて交換するように構成され得る。ここで、2セットの測定対象は、1セットがサンプルガスの測定に使用され、もう一方のセットはコントロール用無臭空気の測定に使用されてもよいが、他の構成で測定されてもよい。また、ボトルには、液量モニタ(例えば、光学式モニタ)2038が取り付けられてもよい。モニターはこれらのおのおのの構成部品の制御は、このシステムに作動可能に接続されたパソコン2040によって行われてもよく、手動で行えるように、システムにボタン、つまみなどが設置されてもよい。パソコン2040は、データ収集、解析、表示などが行えるように当該分野において周知の技術を利用することができる。このようなコンピュータのシステムの例示としては、例えば、図12に示す構成例を利用することができるがそれに限定されない。
内部測定部は、図20Cに示すような構成をとることができる。ここでは、シャッタ2052、レンズ2054、ビームスプリッタ2056を通じて光がカメラ2060に入り、もう一方の光学系の信号は、シャッタ2082、レンズ2084、ビームスプリッタ2086を通じて光がカメラ2060に入る。ここでは、2058、2088は測定領域を示す。測定系では、1セットでシャッタでビームスプリッタにより、測定部位に光信号を導入することができる。好ましい実施形態では、図20Bにあるように、カメラの視野を半分ずつ使用して、サンプルとコントロールとの両方のイメージを捕捉することができる。ここでは、励起用照明系として2064を使用し、ランプ2072からでた励起光は、レンズ2070を通って、ビームスプリッタ2076を反射して測定部に入る。カメラ2060は、遮光装置2062によって遮光されている。
別の局面において、本発明は、センサの出力信号を使用して感覚を評価する感覚評価システムを提供する。このシステムは、A)外部からの刺激に対して各々異なる応答特性を有する複数のセンサ;B)化学物質レセプターを有する細胞の刺激成分応答特異性に準じた刺激種分類法を用いて、予め指定された複数の上記センサが出力する第1の信号を加算し、感覚を表現する感覚要素の値を算出し、上記算出結果を第2の信号として出力する信号処理部;およびC)上記信号処理部から出力される上記第2の信号を用いて感覚の定性評価および/または定量評価を行う評価部;を備える。ここで、センサとしては、上記される本発明のセンサのほか、従来の物理化学的手法を用いた化学物質センサもまた利用することができ、あるいは、それらを組み合わせることもできる。化学物質レセプターを有する細胞は、天然のものでも人工のものでもよい。好ましくは、本明細書に記載されるような手法を用いて遺伝子を導入したものであることが有利であり得る。データの規格化を行いやすいからである。
本発明の感覚評価システムで使用される細胞は、どのような由来のものであってもよく、天然に存在するものでもよく、人工のものであってもよい。そのような細胞は好ましくは、化学物質レセプターをコードする核酸配列を含む核酸分子によってトランスフェクトされたものであることが有利であり得る。種々の化学物質レセプターを規格化された様式で調製することが可能であるからである。
好ましい実施形態において、本発明の感覚評価システムにおいて備えられる信号処理部は、複数の上記センサから出力される第1の信号の中の1つが所定の値を超えた場合、上記センサ以外のセンサから出力される第1の信号を減少させ、上記減少された信号を上記第2の信号の生成に使用する。このようにすることによって、信号を平準化し、ノイズを減少させ、規格化することが容易になる。
ここで、本発明の感覚評価システムに含まれる信号処理部は、感覚要素に対応した複数対の選択部および加算部と、上記センサの各々に対応した複数の増幅部と、該増幅部を制御する係数算出部とを備える。この場合、上記選択部は、複数の上記第1の信号に、上記センサの各々に応じて指定された係数を乗じ、複数の第3の信号を生成し、上記加算部は、対応する上記選択部から出力される複数の上記第3の信号を加算して第4の信号を生成し、上記係数算出部は、複数の上記第4の信号の中から最大値を検出し、該最大値を用いて各々の上記第4の信号を規格化して制御信号を算出し、上記増幅部は、対応する上記制御信号を用いて感覚要素の強度に対応する上記第2の信号を生成する。
1つの実施形態において、本発明の感覚評価システムでは、刺激の呈示を受けた場合、上記センサから出力される上記第1の信号が、無刺激で応答していない状態をゼロレベルとして、ゼロレベルから上記刺激強度または刺激の濃度に応じた所定値に向かって過渡的に立ち上がり、これに伴って上記第3の信号が、ゼロレベルから上記刺激強度または刺激の濃度に応じた所定値に向かって過渡的に立ち上がり、上記係数算出部は、上記第1の信号のいずれかが上記センサが刺激に応答して出力した信号であると判断した最初の時をセンサ応答開始基準時刻とし、上記基準時刻からの経過時間として指定された所定時刻において、上記所定時刻における上記第3の信号を用いて上記増幅部を制御する上記制御信号を算出し、次に指定された所定時刻に制御信号を算出するまでは、最後に算出した上記制御信号を用いて上記増幅部を制御する。
別の実施形態において、本発明の感覚評価システムでは、刺激の呈示を受けた場合、上記センサから出力される上記第1の信号が、無刺激で応答していない状態をゼロレベルとして、ゼロレベルから上記刺激強度または刺激の濃度に応じた所定値に向かって過渡的に立ち上がり、これに伴って上記第3の信号が、ゼロレベルから上記刺激強度または刺激の濃度に応じた所定値に向かって過渡的に立ち上がり、上記係数算出部は、上記第1の信号のいずれかが上記センサが刺激に応答して出力した信号であると判断した最初の時をセンサ応答開始基準時刻とし、複数の上記第3の信号の中の所定数以上の信号が増加から減少に転じるまでの間において、上記第3の信号が、対応する感覚要素として有意な出力値を発生し始めたと判断された時、および上記第3の信号が、上記有意な出力値と上記第3の信号に対して予め設定された最大出力値との間を複数の区間に区分する複数の境界値に達したと判断された時毎に、その時の第3の信号を用いて上記増幅部を制御する上記制御信号を算出し、次に制御信号を算出する時までは、最後に算出した上記制御信号を用いて上記増幅部を制御する。
1つの実施形態において、本発明の感覚評価システムは、好ましくは、嗅感覚を評価する。この場合、上記化学物質レセプターは、嗅覚レセプターを含み、上記センサが嗅覚刺激に対して反応するセンサであることが好ましい。
1つの実施形態において、本発明の感覚評価システムは、好ましくは、味感覚を評価する。この場合、化学物質レセプターは、味覚レセプターを含み、上記センサが味覚刺激に対して反応するセンサであることが好ましい。
別の局面において、本発明は、外部からの刺激に対して異なる応答特性を有する複数のセンサと、これらのセンサからの出力信号を処理する信号処理部と、該信号処理部の出力信号から感覚を評価する感覚評価システムを提供する。この感覚評価システムでは、信号処理部は、上記センサからの出力信号を、化学物質レセプターを有する細胞の刺激成分応答特異性に準じた刺激種分類法を用いて、予め指定された複数の上記センサが出力する信号を加算し、感覚を表現する感覚要素の値を算出し、上記算出結果を被評価信号として出力する第1工程と、上記評価部が、上記被評価信号を用いて感覚の定性評価および/または定量評価を行う第2工程とを含む。
本発明の感覚評価方法で使用される細胞は、どのような由来のものであってもよく、天然に存在するものでもよく、人工のものであってもよい。そのような細胞は好ましくは、化学物質レセプターをコードする核酸配列を含む核酸分子によってトランスフェクトされたものであることが有利であり得る。
好ましい実施形態において、本発明の感覚評価方法では、第1工程は、上記信号処理部が、複数の上記センサからの出力信号の中の1つが所定の値を超えた場合、上記センサ以外のセンサからの出力信号を減少させ、上記減少された信号を上記被評価信号の生成に使用する第3工程を含む。このようにすることによって、主要な刺激の性質に対応した信号要素を抽出し、主要でない刺激の性質に対応した信号要素を低減させ、感覚で認識されている主要な刺激の性質を相対的に大きな値となるように数値化することが可能になる。
好ましい実施形態において、本発明の感覚評価方法では、上記信号処理部が、感覚要素に対応した複数対の選択部および加算部と、上記センサの各々に対応した複数の増幅部と、該増幅部を制御する係数算出部とを備える。ここで、本発明の感覚評価方法の第1工程は、上記選択部が、複数の上記センサからの出力信号に、上記センサの各々に応じて指定された係数を乗じ、複数の信号を生成する第4工程と、上記加算部が、対応する上記選択部から出力される上記第4工程において生成された信号を加算し、出力信号を生成する第5工程と、上記係数算出部が、上記第5工程によって生成された信号の中から最大値を検出し、該最大値を用いて各々の上記第5工程によって生成された信号を規格化して制御信号を算出する第6工程と、上記増幅部が、対応する上記制御信号を用いて感覚要素の強度に対応する上記被評価信号を生成する第7工程とが含まれる。
1つの実施形態において、本発明の感覚評価方法では、刺激の呈示を受けた場合、上記センサの出力信号が、無刺激で応答していない状態をゼロレベルとして、ゼロレベルから上記刺激強度または刺激の濃度に応じた所定値に向かって過渡的に立ち上がる特性を有し、これに伴って上記第4工程によって生成される信号が、ゼロレベルから上記刺激強度または刺激の濃度に応じた所定値に向かって過渡的に立ち上がり、上記第6工程は、上記係数算出部が、上記センサからの出力信号のいずれかが上記センサが刺激に応答して出力した信号であると判断した最初の時をセンサ応答開始基準時刻とし、上記基準時刻からの経過時間として指定された所定時刻において、上記所定時刻における上記第5工程において生成された信号を用いて上記増幅部を制御する上記制御信号を算出し、次に指定された所定時刻に制御信号を算出するまでは、最後に算出した上記制御信号の出力を維持する第8工程が含まれる。
1つの実施形態において、本発明の感覚評価方法では、刺激の呈示を受けた場合、上記センサからの出力信号が、無刺激で応答していない状態をゼロレベルとして、ゼロレベルから上記刺激強度または刺激の濃度に応じた所定値に向かって過渡的に立ち上がる特性を有し、これに伴って上記第4工程によって生成される信号が、ゼロレベルから上記刺激強度または刺激の濃度に応じた所定値に向かって過渡的に立ち上がり、上記第6工程は、上記係数算出部が、上記センサの出力信号のいずれかが上記センサが刺激に応答して出力した信号であると判断した最初の時をセンサ応答開始基準時刻とし、複数の上記第5工程において生成された信号の中の所定数以上の信号が増加から減少に転じるまでの間において、上記第5工程において生成された信号が、対応する感覚要素として有意な出力値を発生し始めたと判断された時、および上記第5工程において生成された信号が、上記有意な出力値と上記第5工程において生成された信号に対して予め設定された最大出力値との間を複数の区間に区分する複数の境界値に達したと判断された時毎に、その時の上記第5工程において生成された信号を用いて上記増幅部を制御する上記制御信号を算出し、次に制御信号を算出する時までは、最後に算出した上記制御信号の出力を維持する第8工程が含まれる。
1つの実施形態では、本発明の感覚評価方法は、嗅覚を評価する。この場合使用される化学物質レセプターは、嗅覚レセプターを含み、センサが嗅覚刺激に対して反応するセンサであることが好ましい。
別の実施形態では、本発明の感覚評価方法は、味を評価する。この場合、化学物質レセプターは、味覚レセプターを含み、センサが味覚刺激に対して反応するセンサである。
別の局面において、本発明は、刺激調合方法を提供する。この方法は、A)センサの出力信号を使用して感覚を評価する感覚評価システムであって、A−1)外部からの刺激に対して各々異なる応答特性を有する複数のセンサ;A−2)化学物質レセプターを有する細胞の刺激成分応答特異性に準じた刺激種分類法を用いて、予め指定された複数の上記センサが出力する第1の信号を加算し、感覚を表現する感覚要素の値を算出し、上記算出結果を第2の信号として出力する信号処理部;およびA−3)上記信号処理部から出力される上記第2の信号を用いて感覚の定性評価および/または定量評価を行う評価部;を備える、感覚評価システム、を用いて所定の刺激を評価する第1工程と、B)上記第1工程の評価結果と上記感覚評価システムによって得られた要素刺激成分に対する評価結果とを用いて、混合する要素刺激成分と対応する割合とを決定する第2工程と、C)上記決定された要素刺激成分を上記割合で混合する第3工程とを含む。
好ましい実施形態では、本発明の刺激調合方法は、上記第3工程によって混合された刺激を上記感覚評価システムを用いて評価する第4工程と、上記第4工程の評価結果と、上記第1工程の評価結果とを比較して、新たに混合する要素刺激成分と対応する割合とを決定する第5工程とをさらに含む。
別の局面において、本発明は、外部からの刺激に対して異なる応答特性を有する複数のセンサと、これらのセンサからの出力信号を処理する信号処理部と、上記信号処理部の出力信号から感覚を評価する感覚評価システムにおいてコンピュータに以下の処理を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供する。この場合上記処理は、上記信号処理部が、上記センサからの出力信号を、化学物質レセプターを有する細胞の刺激成分応答特異性に準じた刺激種分類法を用いて、予め指定された複数の上記センサが出力する信号を加算し、感覚を表現する感覚要素の値を算出し、上記算出結果を被評価信号として出力する第1手順と、上記評価部が、上記被評価信号を用いて感覚の定性評価および/または定量評価を行う第2手順とを含む。記録媒体は、フロッピーディスク、MO、CD−R、CD−RW、CD−ROM、DVD−RAM、DVD−R、DVD−RW、DVD+RW、DVD−ROM、メモリーカードなどであり得るがそれらに限定されない。
他の局面において、本発明は、外部からの刺激に対して異なる応答特性を有する複数のセンサと、これらのセンサからの出力信号を処理する信号処理部と、上記信号処理部の出力信号から感覚を評価する感覚評価システムにおいて、コンピュータに以下の処理を実行させるためのプログラムを提供する。ここで、上記処理は、上記信号処理部が、上記センサからの出力信号を、化学物質レセプターを有する細胞の刺激成分応答特異性に準じた刺激種分類法を用いて、予め指定された複数の上記センサが出力する信号を加算し、感覚を表現する感覚要素の値を算出し、上記算出結果を被評価信号として出力する第1手順と、上記評価部が、上記被評価信号を用いて感覚の定性評価および/または定量評価を行う第2手順とを含む。
別の局面において、本発明は、新規嗅覚レセプターを提供する。この嗅覚レセプターをコードする核酸分子は、(a)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19および21からなる群より選択される配列番号に記載の塩基配列のヌクレオチドまたはそのフラグメント配列を有する、ポリヌクレオチド;(b)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20および22からなる群より選択される配列番号に記載のアミノ酸配列のアミノ酸またはそのフラグメントをコードする、ポリヌクレオチド、(c)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20および22からなる群より選択される配列番号に記載のアミノ酸配列のアミノ酸において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;(d)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19および21からなる群より選択される配列番号に記載の塩基配列のヌクレオチドのスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;(e)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20および22からなる群より選択される配列番号に記載のアミノ酸配列のアミノ酸からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、を含む。
好ましい実施形態において、上記生物学的活性は、化学物質のシグナル伝達活性を含む。このようなシグナル伝達活性は、伝達されたシグナルを直接または間接的に測定することによって判定され得る。
本発明の嗅覚レセプターポリペプチドは、(a)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19および21からなる群より選択される配列番号に記載の核酸配列のヌクレオチドもしくはそのフラグメントによってコードされる、ポリペプチド;(b)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20および22からなる群より選択される配列番号に記載のアミノ酸配列のアミノ酸もしくはそのフラグメントを有する、ポリペプチド;(c)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20および22からなる群より選択される配列番号に記載のアミノ酸配列のアミノ酸において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する、改変体ポリペプチド;(d)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19および21からなる群より選択される配列番号に記載の塩基配列のヌクレオチドのスプライス改変体もしくは対立遺伝子改変体によってコードされる、ポリペプチド;(e)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20および22からなる群より選択される配列番号に記載のアミノ酸配列のアミノ酸を有するポリペプチドの、種相同体ポリペプチド;または(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリペプチドのアミノ酸配列に対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列からなり、かつ、生物学的活性を有する。
好ましい実施形態では、上記生物学的活性は、化学物質のシグナル伝達活性を含む。
別の局面において、本発明は、本発明の化学物質レセプター(例えば、上記核酸分子、ポリペプチドなど)の、化学物質の検出のための、使用に関する。そのような使用における好ましい形態は、上述のチップ、センサ、システム、方法において述べたものと同様である。
別の局面において、本発明は、生体の健常状態を判定する方法を提供する。この方法は、A)化学物質レセプター遺伝子をコードする配列と、マーカー遺伝子をコードする配列とを含む、核酸分子が導入された、細胞を提供する工程;B)目的となる上記生体を、上記生体由来の少なくとも1つの化学物質が上記細胞に検知され得る程度の距離に上記細胞に近づけるまたは接触させる工程;C)上記細胞中の上記マーカー遺伝子に起因するシグナルにおける上記化学物質による変化を測定する工程;D)測定された上記シグナルの強度変化から、上記化学物質レセプターの活性化度を算出し、上記化学物質の情報を提供する工程;およびE)上記化学物質の情報から上記生体の健常状態を判定する工程、を包含する。ここで、上記核酸分子は、マーカー遺伝子を含み得る。ここで、生体を近づけたり接触させたりする工程は、周知の技術によって行うことができる。シグナルの変化の測定もまた、同様に当上記分野において周知の技術を用いて行うことができる。情報提供および健常状態の判定もまた、本明細書に記載される公知技術を組み合わせて行うことができる。
好ましい実施形態では、化学物質は、嗅覚源であり、化学物質レセプターは嗅覚レセプターを含み得る。
別の局面において、本発明は、生体の健常状態を判定するシステムを提供する。このシステムは、A)化学物質レセプター遺伝子をコードする配列と、マーカー遺伝子をコードする配列とを含む、核酸分子が導入された、細胞;B)目的となる上記生体と、上記細胞とが、上記生体由来の化学物質が上記細胞に検知され得るための孔;C)上記細胞中の上記マーカー遺伝子に起因するシグナルを測定する手段;D)測定された上記シグナルの強度変化から、上記化学物質レセプターの活性化度を算出し、上記化学物質の情報を提供する手段;およびE)上記化学物質の情報から上記生体の健常状態を判定する手段、を備える。
好ましい実施形態では、システムにおいて対象となる化学物質は、嗅覚源であり、前記化学物質レセプターは、嗅覚レセプターを含む。
以下にさらに、本発明のセンサ、チップ、システム、方法、プログラム、記録媒体などの好ましい実施形態を記載するが、本発明は、それらに限定されないことが理解される。
本発明において、結果の表示は、どのような方法を用いてもよいが、例えば、ディスプレイを用いて視覚的に表示してもよく(例えば、x軸に時間、y軸に信号強度)、あるいは、数値表として表示してもよい。あるいは、信号強度をある別の光強度としてディスプレイに表示することも可能である。
好ましくは、細胞は、固相支持体(例えば、アレイ、プレート、マイクロタイタープレートなど)に固定された状態でモニターされる。そのような固定方法は、当該分野において公知の方法または本明細書において記載される方法に基づいて行わうことができる。
好ましい実施形態において、結果は、リアルタイムで提示され得る。ここで、リアルタイムは、実質的に同時に表示することができる限り、ある程度のタイムラグが生じてもよい。許容されるタイムラグは、求められるリアルタイムの同時性によるが、例えば、最大で10秒であり、より好ましくは最大で1秒であり得る。例えば、リアルタイムの診断が必要な治療などでは、そのリアルタイム性は、例えば、最大で30秒であってもよい。
好ましい実施形態では、本発明の核酸分子は、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、他のゲノム構造中構造遺伝子のフランキング配列およびエキソン以外のゲノム配列などを含み得る。プロモーターは、構成的プロモーター、特異的プロモーターおよび誘導性プロモーターなどであり得る。プロモーターを導入することによって、ある特定の場合にのみセンサとして働くようなシステムを構築することができる。
好ましい特定の実施形態において、本発明の診断方法で判定される状態としては、例えば、がん細胞の抗がん剤に対する応答、薬剤耐性、生物時間に対する応答、健常状態、治療に対する反応、感情、発情状態などが挙げられるがそれらに限定されない。
本発明のチップは、細胞または化学物質が整列して配置される場合はアレイとも呼ばれる。
特に好ましい実施形態において、本発明では、使用される化学物質レセプターは、作動可能に連結されるマーカー遺伝子配列とともに含まれる核酸分子という形態で対象となる細胞にトランスフェクトされることが有利である。
このようなトランスフェクトは、固相上または液相中で行われ得る。ここで、トランスフェクトのために、標的物質の細胞への導入効率を上昇させるための方法が利用され得る。本発明は、通常の条件下では、ほとんど細胞に導入されない標的物質(例えば、DNA、RNA、ポリペプチド、糖鎖またはそれらの複合物質など)を、フィブロネクチンのような細胞接着分子とともに細胞に提示する(好ましくは、接触させる)ことによって、その標的物質が効率よく細胞に導入されるという作用を利用する。従って、このトランスフェクション方法は、A)標的物質(例えば、化学物質レセプターを含む核酸分子)を提供する工程;B)細胞接着分子を提供する工程を順不同に包含し、C)この標的物質およびこの細胞接着分子を細胞に接触させる工程をさらに包含する。ここで、標的物質および細胞接着分子は、一緒に提供されてもよく、別々に提供されてもよい。細胞接着分子としては、上述の本発明の標的物質の細胞内への導入の効率を上昇させるための組成物において詳述した形態が適用され得る。そのような形態は、当業者は、本明細書の記載に基づけば、適切な形態を選択し実施することができる。したがって、このような細胞接着分子としては、本発明の標的物質の細胞への導入効率を上昇させるための組成物において適用される形態を当業者が任意に選択して本発明を実施することができる。好ましくは、細胞接着分子は、細胞外マトリクスタンパク質(例えば、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニンなど)またはその改変体であり得る。
別の好ましい実施形態において、本発明における計算および判定工程は、信号処理法および多変量解析からなる群より選択される数学処理を包含する。このような数学処理は、当業者には周知であり、本明細書の記載を参酌して、容易に実施することができる。
別の局面において、本発明は、化学物質と、化学物質レセプターを有する細胞の応答とを相関付ける方法を提供する。この方法では、a)上記細胞を化学物質に曝露する工程;b)上記細胞を経時的にモニターして、上記細胞のあるシグナルについてのプロファイルを得る工程;およびc)上記化学物質と、上記プロファイルとを相関付ける工程が包含される。
本発明において相関付けがされる化学物質はどのようなものでもよい。そのような化学物質は、細胞に直接または間接的に適用可能であるものが好ましい。化学物質の曝露方法は当該分野において周知であり、その化学物質の種類などによって変動する。可溶性の物質であれば、その物質を溶媒中に溶解し、その溶液を細胞を含む培地中に滴下することによって曝露が達成される。
本発明の相関付けの方法でもまた、プロファイルの生成は、本明細書において上述のように行うことができる。
本発明の相関付けの方法における、化学物質と、プロファイルとの相関付けは、種々の方法を提供して行うことができる。簡便には、ある化学物質が接近した場合のプロファイルをパターン化し、そのプロファイルからの相違が少ない場合には、その化学物質が滴下されたと推定することができる。
好ましくは、細胞は、固相支持体(例えば、アレイ、プレート、マイクロタイタープレートなど)に固定された状態でモニターされる。そのような固定方法は、当該分野において公知の方法または本明細書において記載される方法に基づいて行わうことができる。
好ましい実施形態において、本発明の相関付け方法では、少なくとも2つの化学物質を使用して、各化学物質に対するプロファイルを得る工程を包含してもよい。このような化学物質は、ある実施形態では、少なくとも約3つ、あるいは約4つ、より好ましくは、少なくとも約10個用いられ得るがそれらに限定されない。
特定の実施形態において、本発明の相関付けの方法は、少なくとも2つのプロファイルを類別することにより、プロファイルに対応する化学物質を類別する工程を包含する。このような類別は、当業者は、本明細書の記載を参酌すれば、容易に行うことができる。このような類別により、本発明の方法を用いて、未知の化学物質の相関付けおよび同定を達成することができる。
好ましくは、本発明の方法では、細胞は、チップなどのアレイ上で培養されることが有利である。アレイ上で培養することによって、多数の細胞の観察を一度に行うことができるからである。
好ましい実施形態において、モニターは、上記アレイから画像データを得る工程を包含する。画像データを提供することによって、目視も可能になり、人間(特に、医師などの当業者)の目による判断を得ることが容易になるからである。
特に好ましい実施形態では、本発明の方法において同定されるべき化学物質は化学物質であり、そのような化学物質としては、生体分子、化学合成物または培地などが挙げられる。
このような生体分子としては、例えば、核酸、タンパク質、脂質、糖、プロテオリピッド、リポプロテイン、糖タンパク質およびプロテオグリカンなどが挙げられるがそれらに限定されない。このような生体分子は、生物に対して影響を与えることが公知であるか、未知であってもその可能性が充分に高いことから、調査対象として重要なものであると考えられる。
特に好ましくは、細胞に影響を与えることが期待される、ホルモン、サイトカイン、細胞接着因子、細胞外マトリクス、レセプターのアゴニストまたはアンタゴニストなどが調査されるべき生体分子として対象とされる。
別の局面において、本発明は、細胞のプロファイルから、細胞に与えられた未同定の化学物質を推定するための方法を提供する。本発明の方法は、a)上記細胞を複数の既知の化学物質に曝露する工程;b)上記細胞を経時的にモニターして、既知の化学物質の各々に対する上記細胞のプロファイルを得る工程;c)上記既知の化学物質の各々と、上記プロファイルの各々とを相関付ける工程;d)上記細胞を未同定の化学物質に曝露する工程;e)未同定の化学物質に関する上記細胞の同様のプロファイルを得る工程;f)上記工程(b)で得られたプロファイルの中から、上記工程(e)で得られたプロファイルに対応するプロファイルを決定する工程;およびg)上記未同定の化学物質は、上記工程(f)において決定されたプロファイルに対応する上記既知の化学物質であることを決定する工程;を包含する。
この方法において、化学物質の曝露は、本明細書において上述し、実施例において例示するように行うことができる。プロファイルの生成もまた、本明細書において上述し、実施例において例示するように行うことができる。相関付けもまた、本明細書において上述し、実施例において例示するように行うことができる。このようにして、既知の外来遺伝子に関する情報がそろったところに、未同定の化学物質について同様のモニターを行い、それらを比較して、その未同定の化学物質が既知のものであるかどうかを判定することが可能である。この場合、プロファイルがまったく同じであれば、当然に同じであると判断することが可能であるが、実質的に同じである場合もまた、既知化学物質と判定することが可能である。そのような判定は、その既知の化学物質に関する情報の量および質に依存する。そのような判定の判断は、当業者には容易であり、種々の要素を考慮して決定することができる。
別の局面において、本発明は、細胞に与えられた未同定の化学物質を推定するための方法を提供する。このような方法は、a)既知の化学物質と、上記既知の化学物質に対応する上記細胞のプロファイルとの相関関係に関するデータを提供する工程;b)上記細胞を未同定の化学物質に曝露する工程;c)上記細胞のプロファイルをさらに得る工程;d)上記工程(a)において提供された、上記プロファイルの中から、上記工程(c)において得られたプロファイルに対応するプロファイルを決定する工程;およびe)上記未同定の化学物質は、上記決定されたプロファイルに対応する上記既知の化学物質であることを決定する工程を包含する。
ここで、外来遺伝子の曝露、プロファイル生成、相関付けなどは、本明細書において上述し、実施例において例示するような技術を利用することができる。
(コンピュータを用いた実施形態の説明)
本発明の細胞状態提示方法を実行するコンピュータ構成あるいはそれを実現するシステムの例を図12を参照して示す。図12は、本発明の方法を実行するコンピュータの500の構成例を示す。
コンピュータ500は、入力部501と、CPU502と、出力部503と、メモリ504と、バス505とを備える。入力部501と、CPU502と、出力部503と、メモリ504とは、バス505によって相互に接続されている。入力部501と出力部503とは入出力装置506に接続されている。
コンピュータ500によって実行される処理の概略を説明する。
感覚判定方法および診断方法などを実行させるプログラム(以下、プログラムという)は、例えば、メモリ502に格納されている。あるいは、プログラムは、それぞれ独立してあるいは一緒に、フロッピーディスク、MO、CD−ROM、CD−R、DVD−ROM、DVD−R、メモリースティックのような任意のタイプの記録媒体に記録され得る。あるいは、アプリケーションサーバに格納されていてもよい。そのような記録媒体に記録されたプログラムは、出入力装置506(例えば、ディスクドライブ、ネットワーク(例えば、インターネット))を介してコンピュータ500のメモリ504にロードされる。CPU502がプログラムを実行することによって、コンピュータ500は、本発明の方法の処理を実行する装置として機能する。
入力部501を介して、化学物質、化学物質レセプター、細胞に関する情報などを入力する。また、測定されたプロファイルのデータも入力される。必要に応じて、既知の情報に関する情報も入力してもよい。
CPU502は、入力部501で入力された情報をもとに、プロファイルデータおよび細胞の情報から表示データを生成し、メモリ504に表示データを格納する。その後、CPU502は、これらの情報をメモリ504に格納し得る。その後、出力部503は、CPU502が選択した細胞の状態またはシグナルの変化などのプロファイルを表示データとして出力する。出力されたデータは、入出力装置506から出力され得る。
本発明が上述のようにプログラム形態として提供される場合、各々の構成要件は、本発明が方法として提供されるのと同様の詳細なまたは好ましい実施形態を適用して実施することが可能であり、そのような好ましい実施形態の選択は、当業者には容易であり、当業者は、このようなプログラムの好ましい実施形態を、本明細書の記載を参酌して容易に行うことができる。そのようなプログラムの記述形式は、当業者には周知であり、例えば、C+言語などを応用することができる。
このように、本発明は、健常状態判定、興奮状態判定、薬剤耐性、適切な抗がん剤の選択、適切な移植細胞の選択などのテーラーメイド診断および治療に応用可能である。好ましくは、本発明の診断方法は、診断結果に応じて選択した治療または予防を被検体に施す工程を包含する治療または予防方法として提供される。別の好ましい実施形態では、本発明の診断システムは、診断結果に応じて選択した治療または予防を提供する手段を備える、治療または予防システムとして提供される。
本発明の診断方法または治療方法を実行するコンピュータ構成あるいはそれを実現するシステムの例を図12を参照して示す。図12は、本発明の診断方法を実行するコンピュータの500の構成例を示す。
コンピュータ500は、入力部501と、CPU502と、出力部503と、メモリ504と、バス505とを備える。入力部501と、CPU502と、出力部503と、メモリ504とは、バス505によって相互に接続されている。入力部501と出力部503とは入出力装置506に接続されている。
コンピュータ500によって実行される相関付けの処理の概略を説明する。
相関付け方法および/または処置もしくは予防の選択を実行させるプログラム(以下、それぞれ相関付けプログラムおよび選択プログラムという)は、例えば、メモリ502に格納されている。あるいは、相関付けプログラムおよび選択プログラムは、それぞれ独立してあるいは一緒に、フロッピーディスク、MO、CD−ROM、CD−R、DVD−ROMのような任意のタイプの記録媒体に記録され得る。あるいは、アプリケーションサーバに格納されていてもよい。そのような記録媒体に記録された相関付けプログラムおよび/または選択プログラムは、出入力装置506(例えば、ディスクドライブ、ネットワーク(例えば、インターネット))を介してコンピュータ500のメモリ504にロードされる。CPU502が相関付けプログラムおよび/または選択プログラムを実行することによって、コンピュータ500は、本発明の相関付け方法および/または選択方法の処理を実行する装置として機能する。
入力部501を介して、プロファイルの分析の結果(例えば、位相など)および細胞の状態に関する情報などを入力する。必要に応じて、プロファイルと相関付けられる状態、障害または疾患などの副次的情報、処置および/または予防に関する情報も入力してもよい。
CPU502は、入力部501で入力された情報をもとに、プロファイルに関する情報と細胞の状態または被検体の状態、障害または疾患に関する情報、および必要に応じて予防または治療方法とを相関付け、メモリ504に相関データを格納する。その後、CPU502は、これらの情報をメモリ504に格納し得る。その後、出力部503は、CPU502が選択した細胞の状態に関する情報、被検体の状態、障害または疾患に関する情報、および必要に応じて予防または治療方法などを診断情報として出力する。出力されたデータは、入出力装置506から出力され得る。
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、請求の範囲によってのみ限定される。
実 施 例
以下に実施例を示して本発明をさらに詳しく説明するが、この発明は以下の例に限定されるものではない。以下の実施例において用いられる試薬、支持体などは、例外を除き、Sigma(St.Louis,USA)、和光純薬(大阪、日本)、松浪硝子(岸和田、日本)などから市販されるものを用いた。
(実施例1:化学物質レセプターの一つである嗅覚レセプターの単離)
本実施例では、化学物質レセプターの代表例として嗅覚レセプターの単離および機能解析を行った。以下にその手順を示す。このように単離した嗅覚レセプターを化学物質レセプターの代表として用いて、化学物質センサを構成する例示的な代表例を製造した。
(嗅覚レセプターの匂い分子応答特異性)
マウスの嗅覚レセプターは、匂い分子の検出・識別を行う嗅細胞に1種類ずつ発現していることが報告されている(Cell 96:713−723(1999)など)。また、嗅細胞が分布する嗅上皮は、背側から腹側に向かって1〜4の番号が付けられている4つのゾーンが存在し、それぞれの嗅覚レセプターの発現は4つのゾーンの内のいずれか1つに限定されていることが報告されている(Science 286(5440):706−711(1999)など)。嗅覚レセプターは約1,000種あると遺伝子解析から推定されているので、4つのゾーンから統計上有為な数だけサンプリングした嗅細胞の匂い分子応答性を調べれば、特定の匂い分子に応答するすべてのタイプの嗅覚レセプターを調べたことになる。そこで、本発明において、1,000種の約2.7倍となる2,740個の嗅細胞の応答性を調べた。各ゾーンに含まれる嗅覚レセプターの種類数は明らかになっていないので、全てのゾーンで統計的に有意であるとは明言できないが、少なくともゾーン1とゾーン2では1,000種が各ゾーンに均等に分布した時に一つのゾーンに存在すると考えられる250種の3倍以上の細胞をサンプリングし、最もサンプリング数の少ないゾーン3でも約320個の細胞をサンプリングしたので、ほぼすべてのタイプの嗅覚レセプターを調べたことになると考えられる。この結果、嗅覚源の代表例であるスペアミント臭であるR(−)carvoneに感度が高く選択的に応答する嗅細胞は4つ見つかり、嗅覚源の別の代表例であるキャラウェイ臭であるS(+)carvoneに感度が高く選択的に応答する嗅細胞は18個、嗅覚源の別の代表例であるミント臭を共通して持つpulegoneおよび(−)menthoneの両方に他より高感度かつお互いに同程度に応答する嗅細胞は3つ、甘い臭いで共通するR(−)carvoneおよびS(+)carvoneの両方に同程度に最も高感度に応答する嗅細胞が3つ見出された。これらの嗅細胞から単一細胞を用いたRT−PCRによって同定された遺伝子が本発明において見出され、記載されたものであり、各々、2種、2種、1種、1種である。
(嗅覚レセプター遺伝子の同定)
麻酔下で斬首安楽死させたマウスから素早く摘出した嗅上皮を小片化し、これをトリプシン処理して細胞間結合を切断した後、カバーグラスに細胞が潰れないように処理小片をそっと押し付けることで、カバーグラス上に生きたまま単離されたマウス嗅細胞が複数接着された試料を得た。これにカルシウム感受性蛍光色素fura−2を細胞内負荷した後、各種の匂い分子の溶液を投与し、嗅細胞が応答した時に生じる細胞内カルシウム濃度の一過性の上昇を細胞内のfura−2の蛍光強度変化を顕微鏡(ニコン製)ならびに高感度のSITビデオカメラおよび画像解析装置Argus−50(後2者はいずれも浜松フォトニクス社製)で計測・解析し、どの細胞がどの匂い分子にどの程度の感度で応答するかを同定した。応答が確認された嗅細胞は、顕微鏡観察下で4μlのcell lysis mix(1×MML V buffer(GIBCO BRL),0.5% NP−40,290U/ml RNAguard(Pharmacia),300U/ml Prime RNase inhibitor(Eppendorf),10μM各dNTP,200ng/ml pd(T)25−30)を含む微小ピペットで個別に採取し、PCR用チューブに移した。65°Cで1分間静置した後、各チューブには、50UのMML V reverse transcriptase(GIBCO BRL)と0.5UのAMV reverse transcriptase(GIBCO BRL)とのRT混液0.5μlを加え、37°Cで30分間逆転写反応を行わせ、65°C10分間処理して反応を停止させた。poly dA tailを形成させるために,2xTdT buffer(GIBCO BRL),1.5mM dATP,3U/μl Terminal deoxynucleotidyl transferase(GIBCO BRL)を5μl加え37°Cで15分間反応させ、65°C10分間処理して反応を停止させた。
これに、cDNAの増幅の為に、1xPCR buffer II(Perkin−Elmer),2.5mM MgCl,1mM各dNTP,0.1mg/ml BSA,0.05% Triton X−100,0.1U/μl AmpliTaq LD polymerase(Perkin−Elmer),0.05μg/μl AL1 primer(ATTggATCCAggCCgCTCTggACAAAATATgAATTC(T)24(配列番号23))の混液を100μlになるように加え、96°C3分間処理後に、96°C1分間+42°C2分間+72°C(6分+10秒延長/サイクル)間を25サイクル行い、この後72°C10分間処理した。これに5UのAmpliTaq LD polymerase(Perkin−Elmer)を加え、さらに25サイクルの処理を行った。
これを1/10希釈した1μlを1xPCR Gold buffer(Perkin−Elmer),2.5mM MgCl,2μM各degenerate primer,0.2mM各dNTP,0.05U/μl AmpliTaq Gold polymerase(Perkin−Elmer)混液49μlが入った新たなPCR用チューブに移し、嗅覚レセプター特異的なPCRを行った。PCRは、96°C3分間処理後に、96°C1分間+40°C3分間+72°C6分間を40サイクル行い、この後72°C10分間処理した。degenerateprimerとして用いた配列は、TM3−TM6(膜貫通(transmembrane;TM)3−膜貫通(transmembrane;TM)6)領域用にはP26(GCITA(C/T)GA(C/T)CGITA(C/T)GTIGCIATITG(配列番号24))とP27(ACIACIGAIAG(G/A)TGIGAI(G/C)C(G/A)CAIGT(配列番号25))であった。PCR産物はアガロースゲル電気泳動で嗅覚レセプターに対応するサイズだけを分離し、pCR2.1あるいはpCR II−TOPO vector(Invitrogen)にサブクローニングし、島津製の平板ゲルのDNAシーケンサーで配列を決定した。
逆転写酵素としてSuperScript II(GIBCO BRL)も用いた。この酵素を用いる場合は、以下の点を変更して実験を行った。4.5μlのcell lysis mix(10mM Tris−HCl[pH8.3],50mM KCl,0.05%NP−40,600U/ml RNAguard(Pharmacia),600U/ml Prime RNase inhibitor(Eppendorf),50μM各dNTP,200ng/ml Anchor T primer(TATAgAATTCgCggCCgCTCgCgA(T)24(配列番号26))、50UのMMLV reverse transcriptase(GIBCO BRL)と0.5UのAMV reverse transcriptase(GIBCO BRL)のRT混液の代わりに(171U/μl SuperScript II(GIBCO BRL),2U/μl Prime RNase inhibitor,2U/μl RNAguard)のRT混液0.5μlを用い37°C120分間(0.5μl RT混液を40分毎に追加)反応、poly dA tailを形成には5μlの3mM dATP,10mM Tris−HCl[pH8.3],1.5mM MgCl,50mM KCl,2.5U/μl Terminal deoxynucleotidyltransferase(Roche),1U/μl RNaseH(Roche)を加えて37°Cで20分間反応させ、65°C10分間処理して反応を停止させた。cDNA増幅は、(1xLA PCR Buffer II(TaKaRa),250mM各dNTP,2.5mM MgCl,20ng/μl Anchor T primer,0.05U/μl TaKaRa LA Taq(TaKaRa))25μl混液に2.5μlのpoly dA tail形成反応させた溶液を加えて、95°C2分間+37°C5分間+72°C20分間を1サイクル,95°C30秒間+67°C1分間+72°C(6分+6秒延長/サイクル)間を35サイクル,72°C10分間処理した。
また、膜貫通ドメイン2領域(TM2)に対するprimerとしては、CT(ATgC)CA(TC)(AC)(AC)(ATgC)CC(ATgC)ATgTA(TC)(TC)T(ATgC)TT(TC)(TC)T(配列番号27)を、膜貫通ドメイン7領域(TM7)に対するprimerとしては、P41:AA(gA)(Tg)CITTI(AgT)(AC)IACITg(CT)g(gC)ITCICA(配列番号28),P42:TC(TC)(TC)TIgTI(TC)TI(Ag)(TC)IC(Tg)gATAIATIATIgg(gA)TT(配列番号29),W68:TCI(TC)T(gA)TTIC(Tg)IAgIg(TA)(gA)TAIAT(gA)AAIgg(gA)TT(配列番号30),W69:TC(TC)TT(gA)TTIC(Tg)IAgIg(TA)(gA)TAIA(TC)IA(gC)Igg(gA)TT(配列番号31),W70:TCIT(gC)(gA)TTIC(Tg)IA(gA)I(gC)A(gA)TAIATIATIgg(gA)TT(配列番号32),P8:(gA)TTIC(Tg)IA(Ag)I(gC)(TA)(gA)TAIAT(Ag)AAIgg(gA)TT(配列番号33)を用いた。
本発明の嗅覚レセプターは、マウスのgenomic DNAをテンプレートとして、上記の配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19および21の内で対象とする遺伝子の必要な部分を含む領域の特異的な配列となる両端の適当な長さとなる部分を対象としてプライマーを作製しPCRを行うことによって目的の嗅覚レセプターの遺伝子の対応する部分を得ることができる。
次に、特定の匂いの質に対して感度の高い嗅覚レセプターを示す。
Figure 2003100057
これらの嗅覚レセプターの応答を反映した出力OUT(嗅覚レセプター種)の立ち上がりを比較し下記に示した応答の大小関係を表す条件を満たした場合に該当する匂いの強度Sが推定できる。
スペアミント臭:
【数1】
Figure 2003100057
Figure 2003100057
キャラウェイ臭:
【数2】
Figure 2003100057
ミント臭:
【数3】
Figure 2003100057
甘い匂:
【数4】
Figure 2003100057
応答測定法の一例としては、異なる6つのクラスターを形成する複数個からなる嗅細胞群に上記嗅覚レセプターを1種類ずつ発現させ、細胞にカルシウム感受性蛍光色素を取り込ませ、測定したい空気をバブリングした生理食塩水をこれらの細胞群に均等に投与した時の380nmの光で励起して発生する510nm付近の蛍光強度変化を計測し、蛍光強度のクラスター毎の減少率を比較する。これが上記の条件にあう場合、該当する応答強度が任意単位として得られる。
(実施例2:感覚評価システムとしての嗅覚システム)
以下の実施例では、上記において本発明の実施の形態として説明した感覚評価システムが、生体の匂いを識別するための嗅覚システムと整合していることを、図6〜8を参照して詳細に説明する。
図6〜8において使用している略号に対応する名称および匂い分子は以下の通りである。
sCa(S(+)−carvone):S(+)−5−isopropenyl−2−methyl−2−cyclohexenon
rCa(R(−)−carvone):R(−)−5−isopropenyl−2−methyl−2−cyclohexenon
mn((−)menthone):(2S,5R)−2−isopropyl−5−methylcyclohexanone
pu(R(+)−pulegone):(R)−p−menth−4(8)−en−3−one
ip(isopulegol):2−isopropenyl−5−methylcyclohexanol
me(menthol):2−isopropyl−5−methylcyclohexanol
lim(R(+)−limonene):(R)−1−methyl−4−(1−methylethyl)−cyelohexene
am(isoamyl acetate):3−methylbuthylacetate
va(vanillin):4−hydroxy−3−methoxybenzaldehyde
ova(o−vanillin):3−methyoxysalicylaldehyde
ge(geraniol):3,7−dimethyl−(E)−2,6−octadiene−1−ol
ne(nerol):3,7−dimethyl−(Z)−2,6−octadiene−1−ol
mc6:hexanoic acid
mc7:heptanoic acid
acid
mc9:nonanoic acid
mh6:1−hexanol
mh7:1−heptanol
mh8:1−octanol
mh9:1−nonanol
in(indole):1−H−indole
ta:triethylamine
iv(isovaleric acid):3−methylbuthylic acid
図6は、生体の2740個の嗅細胞に対して、S(+)carvoneおよびR(−)carvoneを含む複数の匂い物質を個別に呈示して、反応する嗅細胞とその応答強度を測定した結果を、S(+)carvoneとR(−)carvoneの2種の匂い物質を中心に分類した結果を示した図である。
図6は、S(+)carvone(主としてキャラウェイ様の匂いを生じる)とR(−)carvone(主としてスペアミント様の匂いを生じる)の2種の匂い物質に応答する嗅覚レセプターを網羅的に検索し、ほぼ全てに近いメンバーを見い出してそれらの匂い分子識別特性を明らかにしたものである。図6の各行は、嗅細胞の種類、即ち嗅覚レセプターを、反応する匂い分子の略号を用いて表わしたものであり、「最高感度の匂い分子」の列は、各レセプターを有する嗅細胞が最も高い感度を示した匂い分子又は匂い分子群を示しており、「準最高感度の匂い分子」の列は、各レセプターを有する嗅細胞が2番目に感度の高い匂い分子又は匂い分子群を示している。carvone(以下において、単にcarvoneと記した場合、S(+)carvoneおよびR(−)carvoneの両者を表わす)に応答した嗅細胞は263個であり、これは全体の9.6%である。
実験結果では、carvoneを識別するために機能している嗅覚レセプターは約70〜100種(全嗅細胞約1000種の約9.6%)存在し、その約1/5がS(+)carvoneに相対的に高感度で応答し、約1/5がR(−)carvoneに相対的に高感度で応答し、約2/5が両carvoneに同程度に相対的に高感度で応答し、残りの約1/5が他の匂い物質に相対的に高感度になった。
この結果は、本発明の実施の形態として説明した感覚評価システムと整合するものである。特に、図2における前処理部P1の中の選択部SAiに指定する係数αj(i)を適切に説定することにより、この実験結果に整合させることが可能である。逆に、実験結果に整合するように係数αj(i)を決定することによって、評価部EVにおいて精度よく匂い物質を特定することが可能となる。
図7は、図6に示した嗅覚レセプターがcarvone以外の匂い分子にどの程度の割合いで応答するかを、S(+)carvoneに応答する嗅覚レセプター群とR(−)carvoneに応答する嗅覚レセプター群とに関して、別々に計算した結果を示している表である。図7において、応答率(%)は、対象とした全嗅細胞数に対する、各匂い分子に対して応答した嗅細胞の数の割合であり、1行目がS(+)carvoneに応答する嗅覚レセプター群に関する値であり、2行目がR(−)carvoneに応答する嗅覚レセプター群に関する値である。即ち、図7の応答率は、S(+)carvoneとR(−)carvoneの有する匂いの質である、fresh(フレッシュ)、herbal(草様)、sweet(甘い)、caraway(キャラウェイ様)、spearmint(スペアミント)が、どの匂い分子とより強く共通しているかを示していると考えることができる。これは、刺激(匂い物質)の定性/定量評価の基準にする値であり、実際の生体が感じる感覚量(匂い)はこれらにセンサのS(+)carvoneとR(−)carvoneに対する相対感度に依存した係数が掛かった出力を処理して得られる量に近い。
図8は、S(+)carvoneとR(−)carvoneに感度の高いレセプ存在率に依存して決まる応答細胞数を示したものである。感度の高いレセプターを比較すると、S(+)carvoneとR(−)carvoneとの間の匂いの質と感度の違いを説明することができる。S(+)carvoneに1マイクロモル(μM)で応答したS(+)carvone選択的細胞は二つしかなく、脳の中で有意な信号として検出するには十分に大きくないと考えられる。濃度が10倍の10マイクロモルになると、17個のS(+)carvone選択的細胞が応答し、脳内でS(+)carvoneに特徴的な信号の形成が可能になる。一方、R(−)carvoneに対しては1マイクロモルで4つのR(−)carvone選択的細胞が応答し、ある程度有為な信号が脳に対して送られることが予想される。また、1マイクロモルで両者のcarvoneに同程度の感度で応答する細胞が3つ見られた。これらの細胞は、両者に共通する匂いの質である「甘い」あるいは「草様」の形成の核になっていると考えることができる。これらの核になる細胞(嗅覚レセプター)からの信号は、それ以外の細胞(嗅覚レセプター)からの信号を抑制することにより、個々の匂い分子に特有な匂いの質を強調し、共通する匂いの質を弱めていると考えられる。さらに、これらのことは、ヒトが、S(+)carvoneよりもR(−)carvoneに対して感度が高く、R(−)carvoneがミント臭を有しS(+)carvoneがはっきりとしたミント臭を示さないように感じることも説明できるものとなっている。
具体的に図8のデータに関して、嗅覚レセプターの出力を応答する個数として計算する場合について説明する。ここで、応答振幅が通常の1/2になっているような条件の刺激(例えば、8行目の嗅覚レセプター)では、さらに1/2倍して扱うこととする。また、図9は、ヒトが各匂い分子に対して感じる匂いの質の相対強度の一例を示している。図7に示した、匂い分子が誘起する匂いの質の関連性を考慮し、sCa(1行目)およびrCa(2行目)の値は、それぞれの最大強度の匂いの質に対する相対強度を基準とし、即ち1とし、その他の匂いの質の相対強度を表わし、3行目以下の匂い分子に関しては、各行の匂いの質の相対強度の和が1となるように各匂いの質の相対強度を決めている。以下の計算においては、図9の値を使用する。また、以下に示す各計算結果の値は、数値計算上の端数処理による誤差を含んでいるが、嗅覚レセプターの出力を応答する個数として計算する方法の説明には影響するものではない。
上記の規則に従って、1マイクロモルのrCaについて計算する。図8に示すように、rCaに応答する嗅覚レセプターは右端の列に記載されている。即ち、行目の個〜9行目の1個が応答する。従って、各行の右端に示した嗅覚レセプターの個数と、図9の対応する行の相対強度とを乗算して、各匂いの質に対する寄与を計算する。このとき、単一の匂い分子にのみ応答する嗅覚レセプターに関しては、図9の相対強度を直接使用し、複数種類の匂い分子に応答する嗅覚レセプターに関しては、最小値を使用する。例えば、図8の6行目に関しては、rCaとpuに応答することから、各匂いの質毎に、図9の2行目の値と3行目の値とを比較して小さい方の値を使用する。この場合、caraway=0,spearmint=0,mint=0.4,sweet=0.2,fresh=0.1,herbal=0.1となる。ここでは、各々の匂いの質に関する値を表わす変数として、匂いの質の名称を使用している。また、数値は、適宜端数処理した結果の数値である。
このようにして、図8の3行目〜9行目の各行について計算し、その結果を匂いの質毎に加算すると、caraway=0,spearmint=4,mint=2.65,sweet=2.05,fresh=1.2,herbal=0.4となる。さらに、これらの値から、特定の値とその特定の値を除いた総和との比率を計算する。例えば、spearmintの場合、4/(0+2.65+2.05+1.2+0.4)=0.635、mintの場合、2.65/(0+4+2.05+1.2+0.4)=0.35となる。この結果、caraway=0,spearmint=0.635,mint=0.35,sweet=0.25,fresh=0.13,herbal=0.04が得られる。これらの値の中の最大値、即ちspearmintの値0.635で規格化すると、caraway=0,spearmint=1,mint=0.55,sweet=0.39,fresh=0.21,herbal=0.06が得られる。ここで、0の場合は0.1として、以下の計算を行う。その理由は、無限に大きな抑制をかけることは不可能で1/10程度が適当と考えられるためである。
以上で得られた係数を、10マイクロモルの計算値に係数として掛ける。即ち、図8の20行目〜42行目の右端列の値(個数)と、caraway=0.1,spearmint=1,mint=0.55,sweet=0.39,fresh=0.21,herbal=0.06とを乗算する。匂いの質毎に、10マイクロモルの各行に関する計算結果と、1マイクロモルの計算値とを加算して、caraway=0.1,spearmint=13,mint=6.9,sweet=7.4,fresh=2.7,herbal=0.6となる。これらの値は、実際にヒトが感じる匂いの質の相対強度を官能評価した結果と概ね整合している。
また、sCaに関しては、1マイクロモルの嗅覚レセプターの出力は認識に十分な感覚要素量を出力する結果とならない(値は最大で2でrCaの半分である)ので、1マイクロモルの実験値および10マイクロモルの実験値を用いて計算する。その結果、caraway=19,spearmint=4,mint=4.4,sweet=21,fresh=8.7,herbal=7.3となる。この出力に応じて、抑制効果が生じているはずなので、その効果を、これらの相対強度(0.86,0.14,0.22,1,0.32,0.26)を係数として掛けて得られる値は、caraway=16.3,spearmint=0.54,mint=0.95,sweet=21.1,fresh=2.81,herbal=1.9となる。この合計値は43.6であり、一方、rCaの対応する値が30.7となるが、実際にヒトが感じる感覚強度と比較して、これらの値は大小が逆転している。従って、sCaに対しては、補正係数として0.7を掛け、caraway=11,spearmint=0.4,mint=0.7,sweet=15,fresh=2,herbal=1.3の値を得る。これらの値は、ある程度、その匂いの質の組成を説明できる値であると考えられる。
上記したように、rCaおよびsCaに関する実験データから得られた計算結果が、パラメータの最適化を図る前の段階で概ね実際にヒトが感じる匂いの質の相対強度を官能評価した結果と整合していることは、本発明に係る感覚評価システムにおける処理が実際のヒトにおける匂い処理と整合していることを示すものと考えることができる。
本発明により、匂い、味覚、感性などのヒトが感じる感覚の刺激に応答するセンサの出力信号から、それらの感覚量の定性/定量評価が可能となり、所望する任意の感覚量の質を再現可能な刺激の調合が可能となる。
これによって、ヒト、動物などの感じる匂いの質および強度と同様な匂いの質、質の構成要素およびそれらの強度を計測するセンサシステム、発生している匂いからその原因成分あるいは刺激成分組成を推定するセンサシステム、又は呈示したい匂いを有する匂い溶液/ガスを自動的に調合するシステムの開発が可能となる。また、味、感性など他の化学物質に関連する感覚に対しても同様の装置およびシステムに利用することが可能となる。
さらに、感覚機能代替機器、感覚評価技術を用いた制御装置/製造装置、感覚および判断力を有するロボットなどの開発が加速されると期待される。例示的な具体的には、匂いセンサ、匂い情報の記録/再生装置、食品製造プロセス制御システム、匂い利用医療診断装置など、これまで実現が困難と考えられていたものなどの、我々の想像を超える人に優しい工学技術の出現が期待される。
(実施例3:センサ用チップの作製)
この実施例において調製したものは以下のとおりである。
(細胞接着因子)
細胞接着分子の候補として、種々の細胞外マトリクスタンパク質およびその改変体もしくはそのフラグメントを準備した。この実施例において調製したものは以下のとおりである。細胞接着因子などは、市販のものを用いた。
1)プロネクチンF(三洋化成、京都、日本);
2)プロネクチンL(三洋化成);
3)プロネクチンPlus(三洋化成);
4)ゼラチン。
DNAとしてトランスフェクションのためのプラスミドを調製した。プラスミドとして、pEGFP−N1およびpDsRed2−N1(ともにBD Biosciences,Clontech、CA、USA)を用いた。これらのプラスミドでは、遺伝子発現はサイトメガロウイルス(CMV)の制御下にある。プラスミドDNAを、E.coli(XL1 blue、Stratgene,TX,USA)中で増幅し増幅したプラスミドDNAを複合体パートナーの一方として用いた。DNAは、DNaseもRNaseも含まない蒸留水中に溶解した。
使用したトランスフェクション試薬は以下の通りである:Effectene Transfection Reagent(cat.no.301425,Qiagen,CA),TransFastTM Transfection Reagent(E2431,Promega,WI),TfxTM−20 Reagent(E2391,Promega,WI),SuperFect Transfection Reagent(301305,Qiagen,CA),PolyFect Transfection Reagent(301105,Qiagen,CA),LipofectAMINE 2000 Reagent(11668−019,Invitrogen corporation,CA),JetPEI(×4)conc.(101−30,Polyplus−transfection,France)およびExGen 500(R0511,Fermentas Inc.,MD)。トランスフェクション試薬は、上記DNAおよび細胞接着分子にあらかじめ加えるかあるいはDNAと複合体を先に生成してから使用した。
このようにして調製した溶液を以下のトランスフェクションアレイに応用した。
(実施例4:トランスフェクションアレイ)
本実施例では、固相におけるトランスフェクション効果を観察した。そのプロトコルを以下に示す(図10および11)。
(プロトコル)
DNAの最終濃度は、1μg/μLに調整した。細胞接着分子は、ddHO中で10μg/μLのストックとして保存した。全ての希釈をPBS、ddHOまたはDMEM培地を用いて行った。希釈系列として、例えば、0.2μg/μL、0.27μg/μL、0.4μg/μL、0.53μg/μL、0.6μg/μL、0.8μg/μL、1.0μg/μL、1.07μg/μL、1.33μg/μLなどを調製した。
トランスフェクション試薬は、それぞれの製造業者が提供する指示書に従って、使用した。
プラスミドDNA:グリセロールストックから100mLのL−amp中で一晩増殖させ、Qiaprep MiniprepまたはQiagen Plasmid Purification Maxiを用いて製造業者が提供する標準プロトコールによって精製した。
本実施例では、以下の5種類の細胞を利用して、効果を確認した:ヒト間葉系幹細胞(hMSCs、PT−2501、Cambrex BioScience Walkersville,Inc.,MD)、ヒト胚性腎細胞(HEK293、RCB1637、RIKEN Cell Bank,JPN)、NIH3T3−3細胞(RCB0150,RIKEN Cell Bank,JPN)、HeLa細胞(RCB0007、RIKEN Cell Bank,JPN)およびHepG2(RCB1648、RIKEN Cell Bank,JPN)。これらは、L−glutおよびpen/strepを含むDMEM/10%IFS中で培養した。
(希釈およびDNAのスポット)
トランスフェクション試薬とDNAとを混合してDNA−トランスフェクション試薬複合体を形成させる。複合体形成にはある程度の時間が必要であることから、上記混合物を、アレイ作製機(arrayer)を用いて固相支持体(例えば、ポリ−L−リジンスライド)にスポットした。本実施例では、固相支持体として、ポリ−L−リジンスライドのほか、APSスライド、MASスライド、コーティングなしのスライドを用いた。これらは、松浪硝子(岸和田、日本)などから入手可能である。
複合体形成およびスポット固定のために、真空乾燥機中で一晩スライドを乾燥させた。乾燥時間の範囲は、2時間から1週間とした。
細胞接着分子は、上記複合体形成時に使用してもよいが、本実施例では、スポッティングの直前に使用する形態も試験した。
(混合液の調製および固相支持体への適用)
エッペンドルフチューブに、300μLのDNA濃縮緩衝液(EC緩衝液)+16μLのエンハンサーを混合した。これをボルテックスによって混合し、5分間インキュベートした。50μLのトランスフェクション試薬(Effecteneなど)を加え、そしてピペッティングによって混合した。トランスフェクション試薬を適用するために、スライドのスポットのまわりにワックス環状バリヤーを引いた。スポットのワックスで囲まれた領域に366μLの混合物を加え、室温で10から20分間インキュベートした。これにより、支持体への手動による固定が達成された。
(細胞の分配)
次に、細胞を添加するプロトコルを示す。トランスフェクトのために細胞を分配した。この分配は、通常、フード内で試薬を減圧吸引して行った。スライドを皿に置き、そしてトランスフェクションのために細胞を含む溶液を加えた。細胞の分配は、以下のとおりである。
細胞の濃度が25mL中10細胞になるように、増殖中の細胞を分配した。四角の100×100×15mmのペトリ皿または半径100mm×15mmの円形ディッシュ中で、スライド上に細胞をプレーティングした。約40時間、トランスフェクションを進行させた。これは、約2細胞周期にあたる。免疫蛍光のためにスライドを処理した。
(遺伝子導入の評価)
遺伝子導入の評価は、例えば、免疫蛍光、蛍光顕微鏡検査、レーザー走査、またはエマルジョンを用いた検出によって達成した。
可視化されるべき発現されたタンパク質が蛍光タンパク質であるなら、それらを蛍光顕微鏡検査で見てそして写真を撮ることができる。大きな発現アレイに関しては、スライドをデータ保存のためにレーザースキャナーで走査し得る。あるいは、カルシウムの場合のように、特異的な蛍光で検出可能な場合は、その蛍光を検出することによってシグナルを検出することができる。発現されたタンパク質を蛍光抗体が検出し得るなら、免疫蛍光のプロトコールを引き続いて行うことができる。
(レーザー走査および蛍光強度定量)
トランスフェクション効率を定量するために、本発明者らは、DNAマイクロアレイスキャナ(GeneTAC UC4×4、Genomic Solutions Inc.,MI)を使用した。総蛍光強度(任意の単位)を測定した後、表面積あたりの蛍光強度を計算した。
(共焦点顕走査顕微鏡による切片観察)
使用した細胞を、組織培養ディッシュに最終濃度1×10細胞/ウェルで播種し、適切な培地を用いて(ヒト間葉系細胞の場合ヒト間葉系細胞基本培地(MSCGM、BulletKit PT−3001、Cambrex BioScience Walkersville,Inc.、MD,USA)を用いた)培養した。細胞層を4%パラホルムアルデヒド溶液で固定した後、染色試薬であるSYTOおよびTexas Red−Xファロイジン(Molecular Probes Inc.,OR,USA)を細胞層に添加して、核およびFアクチンを観察する。遺伝子産物によって発色するサンプルまたは染色されたサンプルを共焦点レーザー顕微鏡(LSM510、Carl Zeiss Co.,Ltd、ピンホールサイズ=Ch1=123μm、Ch2=108μm;画像間隔=0.4)を用いて、切片像を得る。
(実施例5:嗅覚センサー)
次に、嗅覚レセプターを化学物質レセプターの代表例として、本発明のセンサに応用した実施例を示す。予備的実験を行ったところ、嗅覚レセプターでもトランスフェクションアレイを用いることが可能であることが判明した(図19)。
嗅覚レセプター発現ベクター群をレセプター種毎にスポットし、アレイ状にしたカバーグラスを信号測定用チャンバーにネジなどで固定し、その上に性質がほぼ均一な細胞を培養しておいた(図13)。信号測定用チャンバーは、公知の構造(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,96(1999):4040−4045など)にサンプルガスを導入した。その他の工夫をしたものもまた企図される。本実施例で使用したものの一例として図13に信号測定用チャンバーの中央断面図を示す。応答測定中は培養液を一定の速度で流しておいた。培養液が培養液供給チューブの開口から測定用チャンバーに供給され、測定部天井用カバーグラス上への培養液の進入を防止する壁に達するまでの区間の上部のなるべく液面に近い位置に、サンプルガスがこの区間を流れる培養液に吹き付けられるようにサンプルガス供給チューブを固定しておいた。このサンプルガス供給チューブはテフロン、ピークなど親油性の匂い物質、埃の吸着しにくい材料で作られていることが好ましかった。また、サンプルガスを導入するとき以外の時間は、チューブ内の残留サンプルガスを除去し、内部をなるべく清浄に保つために、途中に3方弁あるいは無臭空気供給チューブとの接続部での無臭空気供給チューブ側に逆止弁などを設けて無臭空気でチューブのなるべく広範な長さを洗浄できるようにしておくと効果が高かったが、必要というわけではなかった。サンプルガスを0.5〜4秒間の適当な時間だけ外部から導入するとき以外は、外部のガス採取開口に近いサンプルガス供給チューブの途中から無臭空気を導入し、チューブ内を洗浄する一方でサンプルガスと同様に培養液に吹き付け、測定チャンバー内の残留ガスの排除を促進するようにしても実施され得た。天井用カバーグラス支持用ベースはテフロンなど撥水製の不透明プラスティックで作成する。培養液の流れる流路幅は、アレイの幅の2倍程度とし、その中心にアレイが配置されるようにしておく。培養液供給チューブおよびオーバーフロー培養液吸引チューブは、測定チャンバー側の開口部から数ミリの長さ分はステンレスなど親水性が高く変形しにくい材料を用いる。両者のチューブの開口部からアレイ側に向けて、培養液が流れる天井用カバーグラス支持用ベース上の部分は親水性を十分に持たせるために、コーティングをするかレンズペーパー片などを固定した。吸引のための陰圧は、培養液の吸い込みにより生じる音による振動が測定に影響を与えない程度に調整しておいた。
一般的にベクターにより導入された遺伝子が発現する2日後には応答の測定が可能であった。天井用カバーグラスは測定時にのみ必要になるため、遺伝子を発現させるまでの培養中は設置不要であり、遺伝子が発現し蛍光変化計測系に測定用チャンバーを設置する際に、培養液進入防止壁と一体化させた天井用カバーグラス、天井用カバーグラス支持用ベースを測定用チャンバーに付加しても実施し得た。また、同遺伝子を発現させるまでの培養中は、培養液供給チューブとオーバーフロー培養液吸引チューブを用いずに培養液を交換しても実施し得た。培養液は、応答計測を行わず培養のみしている期間は、数時間〜1日に1回程度の頻度で培養液の10ml程度の分量が供給され交換されるようにした。
匂い応答の大きさは、細胞にカルシウムイオン感受性蛍光色素fura−2などを取り込ませておき、高感度ビデオカメラなど2次元撮像素子を用いることで光学的に計測することが可能であった。測定間隔は1/3秒〜1秒程度で応答の立ち上がりと回復の時定数を評価できる時間分解能を持たせることが望ましいが、平均的な応答時間曲線あるいはその理論式が得られている場合は、刺激後5秒、10秒、15秒、20秒、25秒の5秒間隔の5点での計測結果から実際の変化を推定し、得られる応答開始時期、応答立ち上がり・回復の時定数の推定値を指標として信号が匂いにより引き起こされたものか細胞の自発的活動あるいは他の異常により生じているものかなどを評価することもできた。
(実施例6:嗅覚受容細胞におけるカルシウム濃度の測定)
本実施例では、嗅覚受容細胞(olfactory receptor neuron)において、発現している嗅覚レセプターの応答をカルシウム感受性蛍光色素の蛍光強度変化の測定により調べた(図14)。蛍光強度の減少(下向きの変化)が嗅覚レセプターの応答に対応する。刺激源として、図中に示した略号の匂い分子をその上に示した濃度で培養液に加えて、バーで示す時間だけ(4秒間あるいは2秒間)細胞に投与した。3つの嗅覚レセプターは同一のものが異なる細胞に発現しているものであるが、car−b153とcar−b158とは同時に調整された細胞を用いて、同時測定によって得られた信号であり、car−b86は異なる時期に調整された異なる細胞で測定された応答であった。この例からも分かるように、同時に調製された細胞で同時に測定された応答では、応答の時間特性、細胞毎の異なる刺激に対する応答閾値濃度および応答振幅の相対値の共通性が高いが、異なる時期に調整された細胞では、多少の相違が見られた。これらの結果は、調整条件を同じにし、サンプルガスが均一に投与されるサイズにアレイ化したセンサによって匂い応答を計測することによって、最も測定の信頼性を高めることが可能になることを示している。
本実施例において使用されたこれら3種の嗅覚レセプタの遺伝子配列は調べた範囲では全く同じであったので、匂い分子に対する親和性は、これら3個の嗅覚受容細胞に発現した3種の嗅覚レセプタに対しても同じであると考えられる。実際、同時測定を行ったcar−b153発現細胞とcar−b158発現細胞の応答信号変化は、増減および対照応答と比較した相対的振幅などでよい一致性を示していることが分かるが、同時測定を行わなかったcar−b86発現細胞だけが応答性が一致しているとは判断し難くなっている。これは、アレイ化による細胞試料と投与刺激の均一性がある場合とない場合の違いに対応していると考えられる。
図14における匂い分子と略号は以下のように対応する。S(+)−carvone(sCa);R(−)−carvone(rCa);(−)menthone(mn);R(+)−pulegone(pu);isopulegol(ip);menthol(me);R(+)−limonene(lim);isoamyl acetate(am);vanillin(va);o−vanillin(ova);geraniol(ge);nerol(ne);hexanoic acid(mc6);heptanoic acid(mc7);octanoic acid(mc8);nonanoic acid(mc9);1−hexanol(mh6);1−heptanol(mh7);1−octanol(mh8);1−nonanol(mh9);indole(in);triethylamine(ta);isovaleric acid(iv);KCl(hk),potassium chloride;3−isobutyl−1−methylxanthine(ibmx)。
(実施例7:嗅覚レセプターの応答閾値)
次に、本実施例では、嗅覚受容細胞で測定した5種の嗅覚レセプターの各種匂い分子に対する応答閾値を調べた。これらのレセプター全部あるいは一部を用いてアレイセンサを作成することで、それらの有する各種匂い分子に対する相対感度を指標に対象の匂い刺激がsCaかrCaのいずれを主成分にしているか、また、第二主成分としてmnを含んでいるかどうかを各レセプターの応答を比較して評価することができる。その結果、それがスペアミント臭(rCaが7割を占める主成分となっており、mnはその1/70程度しか含まない)であるか、キャラウエイ臭(sCaが5〜6割を占める主成分でmnは殆んど含まれない)であるか、ペパーミント臭あるいは薄荷臭(meを4割程度含む主成分とし、mnを2割程度含む)であるかを評価できることになることが判明した(図15)。図15において使用されるレセプターの配列は、以下のとおりである。
car−b161 配列番号21
car−b154(car−n272) 配列番号15
car−n266 配列番号13
car−c5 配列番号19
car−b85 配列番号17。
図15からも明らかなように、各々のレセプターが特異的な指向性を有することが判明した。このような実験を、他のレセプター例えば、配列番号34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96に示す配列を有する嗅覚レセプターで行ったところ、各々が特異的な指向性を有することが明らかになる。
(実施例8:嗅覚レセプターc257の応答特性)
次に、本実施例では、嗅覚レセプターc257の応答特性を調べた。A)は嗅覚受容細胞に発現している場合、B)は株化培養細胞CHOに発現している場合である。CHOに発現している場合、感度が1桁以上低下しているために、rCaにより高感度となることは確認できるが、sCaへの応答は見られなくなった(図16)。したがって、センサアレイ上の全てを同一の細胞系で構成することが好ましいことが判明した。また、識別能については細胞種に依らずに、その嗅覚レセプターの特性が発現するとしてよいが、感受性および応答開始時期については、細胞種によりすべての匂い分子に対して同様にシフトするので、この点を注意して刺激の質を評価することが必要になる。
(実施例9:改変型嗅覚レセプターを用いたセンサ)
次に、嗅覚レセプターを一部改変したものを用いても本発明の目的を達成することができるかどうかを実証した。キメラレセプタカセットのIHSのものは、ロドプシンタグがついたCell 95:917−926(1998)Krautwurst D.らで報告されたものに、ロドプシン(Rho)タグの部分をEuropean J.Neurosci.,15:409−418(2002)Gaillard I.らの論文中で報告されていた嗅覚レセプタの発現に使われていたレセプタの前に付加する配列のうちでIHS配列の部分に置き換えたものを利用した。
ダミーシークエンス:CGCTGGTGCのところに目的の嗅覚レセプタの膜貫通ドメインII−VIIの配列を挿入した。このために、目的の嗅覚レセプタの膜貫通ドメインII−VIIの配列の端は、IIの方には制限酵素Pst Iで切断される配列CTGCAGを含む配列、例えば、ACCGAACACCGCCTGCAG(配列番号102)を付加し、VIIの方にはBsp EIで切断される配列、例えばTCCGGAを含む配列TCCGGAACAAGGAATTGA(配列番号103)などを付加しておき、ダミーシークエンスを切り出した後に入れたい嗅覚レセプタの配列をPst IとBsp EIで切断した後に挿入した。本実施例で使用した例示的なキメラレセプタのカセット(ダミー配列を含む)としては、ロドプシンタグのついたRho−M4キメラカセットおよびIHS配列をIHS−M4キメラカセットなどを用いた。ダミーを伴わない、pBK−CMVベクターのためのRho−M4キメラカセットの配列は配列番号104および105に、ダミー配列を伴った、pBK−CMVベクターのためのRho−M4キメラカセットの配列を配列番号106および107に示す。ダミーを伴わない、pBK−CMVベクターのためのIHS−M4キメラカセットの配列は配列番号108および109に、ダミー配列を伴った、pBK−CMVベクターのためのIHS−M4キメラカセットの配列を配列番号110および111に示す。
このカセットを用いて嗅覚レセプターとして配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19および21に示す配列を有する核酸分子を連結した核酸分子を作製し、CHO細胞内に発現させた。このような細胞を用いて嗅覚レセプタセンサを作製したところ、改変された嗅覚識別能を有することが示される。
(実施例10:部分配列を用いた嗅覚センサ)
部分配列を利用しても、嗅覚センサとして機能するものが作製され得ることを本実施例で実証した。核酸分子の発現には、Krautwurst,D.,Yau,K.W.and Reed,R.R.、Cell 95(7),917−926(1998)に報告されたキメラレセプタ用カセット(ロドプシンの5’端の非翻訳領域から翻訳を開始するメチオニンを含む20アミノ酸までを嗅覚レセプタM4のN末端から膜貫通ドメインIIの最初のアミノ酸までをキメラレセプタのN末側とし、嗅覚レセプタM4のC末端の膜貫通ドメインVIIの次のアミノ酸からC末端までをキメラレセプタのC末側として、その間に、目的の嗅覚レセプタの膜貫通ドメインIIからVIIまでを挿入してキメラ嗅覚レセプタとするもの)を用いる。目的の嗅覚レセプタの膜貫通ドメインIIからVIIまでを挿入してキメラ嗅覚レセプタとして培養細胞に発現させ、応答性を得ることができる。本実施例では、配列番号1、3、5および7に示す配列を用いて、このような部分配列がセンサとして機能することを確認することができる。あるいは、配列番号34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、76、78、80、82、84,86、88、90、92、94および96に示す配列のうち、膜貫通ドメインをおのおの選択して上記カセットに組み込むことにより発現したものを利用することができる。このようなカセットを用いて作製したセンサが実施可能であることも理解され得る。
(実施例11:上皮成長因子(EGF)レセプターを用いた実験)
同様の実験を、配列番号74に示すEGFレセプターを用いて実施例5のようにセンサを作製した。EGFレセプターの場合は、リン酸化を示すために蛍光標識したリン酸の挙動を見ることによってリン酸化を確認した
次に、種々のサイトカインとして、EGFのほか、HGF、FGF、コントロールとしてアルブミンを用いて刺激したところ、EGFをよく認識したことが判明した。次に、種々の化学物質を用いた系でも実施可能かどうかを確認した。同様の傾向は、HGFレセプターおよびFGFレセプターを用いたときにもそれぞれHGFおよびFGFに対する特異性の高さによって確認することができる。
(実施例12:Mercury Pathway Profiling Sysmteを利用した実験)
次に、実施例9と同様の実験を、Mercury Pathway Profiling Systemを用いて種々の化学物質の反応性を調べた。使用したベクターを図21および22に示す。このシグナル伝達経路は、図23に示すように、種々のキナーゼを経由する。この場合、化学物質などの刺激によって、図24に示すように、特定の転写因子が活性化される。このような活性化を調べることによって、刺激を特定することが可能である。
上記実施例のような反応をチップ上で行うために、各遺伝子のコントロール条件においてそれぞれの遺伝子が目的の反応を伝達するかどうかを確認した。刺激有り無しの比較を図25に示す。このように、特定の刺激について、各々の要素となる細胞が適切に反応していることが判明した。
次に複数の細胞において外来遺伝子の固相上での遺伝子導入であることと、細胞が置かれている環境を把握するセンサを構成することが可能となる。アレイ状に細胞をプリントして遺伝子発現させた様子を図26に示す。左はHEK293細胞であり、右はヒト間葉系幹細胞を示す。このように、細かいスポットでも分離して認識することが可能であることが判明した。従って、このようなチップを用いて化学物質センサを作製することが可能である。
(実験プロトコル)
(細胞供給源、培養培地、および培養条件)
この実施例では、2種類の異なる細胞株を使用した:ヒト間葉系幹細胞(hMSC、PT−2501、Cambrex BioScience Walkersville,Inc.,MD)およびヒト胚性腎細胞HEK293(RCB1637、RIKEN Cell Bank,日本)。ヒト間葉系細胞の場合、この細胞を、市販のヒト間葉細胞基底培地(MSCGM BulletKit PT−3001,Cambrex BioScience Walkersville,Inc.,MD)中で維持した。HEK293細胞の場合、これらの細胞を、10% ウシ胎仔血清(FBS、29−167−54、Lot No.2025F、Dainippon Pharmaceutical CO.,LTD.,日本)を有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、L−グルタミンおよびピルビン酸ナトリウムを有する高グルコース(4.5g/L);14246−25、Nakalai Tesque,日本)中で維持した。全ての細胞株を、37℃、5% COに制御されたインキュベーター中で培養した。hMSCを含む実験において、本発明者らは、表現型の変化を回避するために、5継代未満のヒト間葉系細胞を使用した。
(プラスミドおよびトランスフェクション試薬)
トランスフェクションの効率を評価するために、pEGFP−N1ベクターおよびpDsRed2−N1ベクター(カタログ番号6085−1、6973−1、BD Biosciences Clontech,CA)を使用した。共に遺伝子発現は、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの制御下であった。トランスフェクトされた細胞は、それぞれ、連続的にEGFPまたはDsRed2を発現した。プラスミドDNAを、Escherichia coli、XL1−blue株(200249,Stratagene,TX)を使用して増幅し、そしてEndoFree Plasmid Kit(EndoFree Plasmid Maxi Kit 12362、QIAGEN、CA)によって精製した。全ての場合において、プラスミドDNAを、DNaseおよびRNaseを含まない水に溶解した。トランスフェクション試薬は以下のようにして得た:Effectene Transfection Reagent(カタログ番号 301425、Qiagen、CA)、TransFastTM Transfection Reagent(E2431、Promega、WI)、TfxTM−20 Reagent(E2391、Promega、WI)、SuperFect Transfection Reagent(301305、Qiagen、CA)、PolyFect Transfection Reagent(301105、Qiagen、CA)、LipofectAMINE2000Reagent(11668−019、Invitrogen corporation、CA)、JetPEI(×4)conc.(101−30、Polyplus−transfection、France)、およびExGen 500(R0511、Fermentas Inc.,MD)。
(固相系トランスフェクションアレイ(SPTA)生成)
「リバーストランスフェクション」につてのプロトコルの詳細はウェブサイトhttp://staffa.wi.mit.edu/sabatini_public/reverse_transfection.htmの「Reverse Transfection Homepage」に記載されていた。本発明者らの固相系トランスフェクション(SPTA方法)において、疎水性フッ素樹脂コーティングによって分離した48平方パターン(3mm×3mm)を有する3つの型のスライドガラス(シラン処理したスライドガラス;APSスライド、およびポリ−L−リジンでコーティングしたスライドガラス;PLLスライド、およびMASでコーティングしたスライド;Matsunami Glass Ind.,LTD.,日本)を研究した。
(プラスミドDNAプリンティング溶液の調製)
SPTAを生成するための2つの異なる方法を開発した。その主な違いは、プラスミドDNAプリンティング溶液の調製にある。
(方法A)
Effectene Transfection Reagentを使用する場合、プリンティング溶液は、プラスミドDNAおよび細胞接着分子(4mg/mLの濃度で超純水に溶解したウシ血漿フィブロネクチン(カタログ番号16042−41、Nakalai Tesque、日本))を含んだ。上記の溶液を、インクジェットプリンタ(synQUADTM、Cartesian Technologies,Inc.,CA)を用いてか、または手動で0.5〜10μLチップを用いて、スライドの表面に適用した。このプリントしたスライドガラスを安全キャビネットの内側で室温にて15分間かけて乾燥させた。トランスフェクションの前に、総Effectene試薬を、DNAプリントしたスライドガラス上に静かに注ぎ、そして室温にて15分間インキュベートした。過剰のEffectene溶液を、吸引アスピレーターを用いてスライドガラスから除去し、そして安全キャビネットの内側で室温にて15分間かけて乾燥させた。得られたDNAプリントしたスライドガラスを、100mm培養ディッシュの底に置き、そして約25mLの細胞懸濁液(2〜4×10細胞/mL)を、このディッシュに静かに注いだ。次いで、このディッシュを37℃、5% COのインキュベーターに移し、2〜3日間インキュベートした。
(方法B)
他のトランスフェクション試薬(TransFastTM、TfxTM−20、SuperFect、PolyFect、LipofectAMINE 2000、JetPEI(×4)conc.またはExGen)の場合、プラスミドDNA、フィブロネクチン、およびトランスフェクション試薬を、製造業業者が配布する指示書に示される比率に従って1.5mLのマイクロチューブ中で均一に混合し、そしてチップ上にプリンティングする前に室温にて15分間インキュベートした。プリンティング溶液を、インクジェットプリンターまたは0.5〜10μLチップを用いてスライドガラスの表面上に適用した。このプリントしたスライドガラスを、安全キャビネットの内側で室温にて10分間かけて完全に乾燥させた。プリントしたスライドガラスを100mm培養ディッシュの底に置き、そして約3mLの細胞懸濁液(2〜4×10細胞/mL)を添加し、安全キャビネットの内側で室温にて15分間にわたってインキュベートした。インキュベーション後、新鮮な培地をこのディッシュに静かに注いだ。次いで、このディッシュを37℃、5% COのインキュベーターに移し、2〜3日間インキュベートした。インキュベーション後、本発明者らは、蛍光顕微鏡(IX−71、Olympus PROMARKETING,INC.,日本)を用いて、増強された蛍光タンパク質(EFP、EGFP、およびDsRed2)の発現に基づいてトランスフェクト体を観察した。位相差画像を同じ顕微鏡を用いて撮った。両プロトコルにおいて、細胞をパラホルムアルデヒド(PFA)固定方法(PBS中の4% PFA、処理時間は、室温にて10分間)を用いることによって固定した。
(レーザー走査および蛍光強度定量)
トランスフェクション効率を定量するために、本発明者らは、DNAマイクロアレイスキャナ(GeneTAC UC4×4、Genomic Solutions Inc.,MI)を使用した。総蛍光強度(任意の単位)を測定した後、表面積あたりの蛍光強度を計算した。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
産業上の利用可能性
本発明により、化学物質レセプターを利用することによって、刺激としての化学物質をより詳細に判定することが可能になった。このような判定により、診断、予防、治療に応用することが可能となり、その応用範囲は医療のみならず、食品、化粧品、農業、環境など種々の分野に及ぶ。センサの出力信号から、感覚の定性/定量評価を可能とする感覚評価システム、感覚評価方法、および刺激調合方法を提供すること。センサの出力信号を使用して感覚を評価する感覚評価システムであって、外部からの刺激に対して各々異なる応答特性を有する複数のセンサと、感覚受容細胞の刺激成分応答特異性に準じた刺激種分類法を用いて、予め指定された複数の前記センサが出力する第1の信号を加算し、感覚を表現する感覚要素の値を算出し、該算出結果を第2の信号として出力する信号処理部と、該信号処理部から出力される前記第2の信号を用いて感覚の定性評価および/または定量評価を行う評価部とを備えている。
本発明はまた、これまで工学上取り扱うことが困難であった匂いの定性・定量に道を開いたことによって、感覚機能代替機器、感覚量評価技術を用いた制御装置・製造装置、感覚および判断力を有するロボットなどの開発が加速されると期待される。特に、R(−)−carvoneとS(+)−carvoneは識別の困難な光学異性体であり、これを迅速に識別する技術となる点でも利用価値は高い。食品のミント臭の調合の良否の評価などにも利用できる。また、この技術を元にして、汎用的な匂いセンサ、匂い情報の記録・再生装置、食品製造プロセス制御システム、匂い利用医療診断装置など、これまで実現が困難と考えられていたもの、我々の想像を超える人に優しい工学技術の出現が期待される。
本発明はまた、従来困難とされてきた、スペアミント臭、キャラウェイ臭、ミント臭、甘い香の匂いを選択的に識別する。
ヒトおよび動物などの感じる匂いのうち、スペアミント臭、キャラウェイ臭、ミント臭、甘い香の検出を目的とした匂いセンサの開発を可能とするセンサとして利用できる応答特性を明らかにした嗅覚レセプターの遺伝子配列。本特許は、示された遺伝子配列情報を元に匂い識別機能を支配する匂い分子結合サイトの3次元構造の解明を加速すると期待される。また、これらの嗅覚レセプターを発現させた細胞などをセンサ要素として用いることで、スペアミント臭、キャラウェイ臭、ミント臭、甘い香の検出を可能にする匂いセンサが実現できる。食品のミント臭の調合評価および識別の困難な光学異性体としてのR(−)−carvoneとS(+)−carvoneの分離評価など種々の判定に利用できる。
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の実施の形態に係る感覚評価システムの概略構成を示すブロック図である。
図2は、図1に示した前処理部の概略構成を示すブロック図である。
図3は、図1に示した係数算出部および増幅部の概略構成を示すブロック図である。
図4は、さらなる加算部を備えた本発明の実施の形態に係る感覚評価システムの概略構成を示すブロック図である。
図5は、図1に示した信号処理部と置換され得る信号処理部の概略構成を示す示すブロック図である。
図6は、嗅細胞の応答強度を測定した結果をS(+)carvoneとR(−)carvoneの2種の匂い物質を中心に分類した結果を示した図である。
図7は、2種類の匂い分子S(+)carvoneとR(−)carvoneとに応答した嗅細胞の他の匂い分子への応答率を示している図である。
図8、S(+)carvoneとR(−)carvoneに感度の高い嗅覚レセプ存在率に依存して決まる応答細胞数を示した図である。
図9は、匂い分子が誘起する匂いの質の相対強度を示した図である。
図10は、固相系トランスフェクションアレイ(SPTA)作製方法を模式的に示した図である。この図は、固相トランスフェクションの方法論を示す。10はインクジェットプリンターの先端を示し、12は発現ベクターを含む組成物を示す。14は、ディッシュを示す。A2では、細胞培養液がディッシュに注がれる。A3において細胞培養液を注がれたディッシュは、適切な培養条件で、インキュベートされ、A−4のようにトランスフェクションアレイが完成する。
図11は、本発明のトランスフェクション法の一例の詳細な説明を示す。
図12は、本発明の方法をコンピュータにおいて実行したときの一構成例を示す。
図13は、本発明のセンサの構成例を示す。1302は、オーバーフロー培養液吸引チューブを示し、1304は天井用カバーグラスを示し、1306は培養液進入防止用壁を示し、1308はサンプルガス供給チューブを示し、1310は、培養液供給チューブを示し、1312は固定ねじを示し、1314は、Oリングを示し、1316は測定チャンバー組み立て基板を示し、1318はカバーグラスを示し、1320は培養細胞を示し、1322は培養液を示し、1324は天井用カバーグラス支持用ベースを示す。1330は蛍光変化測定器などの測定機器への接続を示す。
図14は、嗅覚受容細胞(olfactory receptor neuron)において、発現している嗅覚レセプターの応答をカルシウム感受性蛍光色素の蛍光強度変化の測定により調べた例である。A〜FおよびE’は、それぞれそのアルファベットの順序で測定した、連続測定データセットである。異なるアルファベット間(ダッシュ付きは時間的に連続したものは分けて表示される)は無臭の培養液で数分間洗浄してある。その測定方法は、次のとおりである。fura−2を取り込ませた嗅覚受容細胞群を380nmの波長の一定強度の励起光で照射することにより生じる520nmの波長の蛍光画像を、SITビデオカメラを検出器とした顕微蛍光画像処理装置で計測し、その8ビデオフレーム分を積算した蛍光画像に対応する蛍光強度データを1/3秒毎にハードディスクに記録し、記録された蛍光画像を用いて個々の細胞の細胞体のカルシウム濃度の変化を、細胞体上の5x5=25画素で検出した蛍光強度信号を加算することにより算出し得て、単一あるいは複数の濃度での23種の匂い分子に対する細胞毎の応答を個別に示したものである。アルファベットの順番は測定の順番を示している。個々のアルファベットが付された3段のトレースは、各段が3つの異なる嗅覚受容細胞の応答に対応している。嗅覚レセプタcar−b153を発現した嗅覚受容細胞1つと嗅覚レセプタcar−b158を発現した嗅覚受容細胞1つの応答は同時に計測したものであり、嗅覚レセプタcar−b86を発現した嗅覚受容細胞1つの応答は別の実験で計測したものである。また、ibmxはcAMPを介した応答性の基準応答として、hkは膜電位依存性Caチャネルを介したCa濃度上昇の基準応答として測定した。蛍光強度の減少(下向きの変化)が嗅覚レセプターの応答に対応する。刺激は、図中に示した略号の匂い分子をその上に示した濃度で培養液に加えて、バーで示す時間だけ(4秒間あるいは2秒間)細胞に投与した。
匂い分子と略号とは以下のように対応している。S(+)−カルボン(S(+)−carvone)(sCa);R(−)−カルボン(R(−)−carvone)(rCa);(−)メントン((−)menthone)(mn);R(+)−プレゴン(R(+)−pulegone)(pu);イソプレゴール(isopulegol)(ip);メントール(menthol)(me);R(+)−リモネン(R(+)−limonene)(lim);酢酸イソアミル(isoamyl acetate)(am);バニリン(vanillin)(va);o−バニリン(o−vanillin)(ova);ゲラニオール(geraniol)(ge);ネロール(nerol)(ne);ヘキサン酸(hexanoic acid)(mc6);ヘプタン酸(heptanoic acid)(mc7);オクタン酸(octanoic acid)(mc8);ノナン酸(nonanoic acid)(mc9);1−ヘキサノール(1−hexanol)(mh6);1−ヘプタノール(1−heptanol)(mh7);1−オクタノール(1−octanol)(mh8);1−ノナノール(1−nonanol)(mh9);インドール(indole)(in);トリメチルアミン(triethylamine)(ta);イソ吉草酸(isovaleric acid)(iv);KCl(hk),塩化カリウム(potassium chloride);イソブチル−1−メチルキサンチン(−isobutyl−1−methylxanthine)(ibmx).
図15は、嗅覚受容細胞で測定した嗅覚レセプターの各種匂い分子に対する応答閾値を示す。
図16は、嗅覚レセプターc257の応答特性を示す。A)は嗅覚受容細胞に発現している場合、B)は株化培養細胞CHOに発現している場合を示す。嗅覚レセプターc257の応答を示す。B−1は、機能的レセプターが発現された細胞を示す。B−2は、レセプターが発現されていない細胞を示す。
図17は、嗅覚レセプター遺伝子を用いて細胞をチップ上でトランスフェクトして作製した本発明の例示的センサを示す。
図18は、嗅覚のシグナル応答の模式図を示す。カルシウムイオンは、fura−2、fluo−4などの色素蛍光変化あるいはカルシウム濃度感受性蛍光タンパク質の蛍光変化などで計測することができる。1800は細胞を示し、1802は細胞膜の不活性型レセプタータンパク質を示し、1804はシグナルを示し、1806は小胞体を示し、1808は核を示し、1810は細胞外シグナル分子を示し、1812は活性化したレセプタータンパク質を示し、1814はイノシトール三リン酸を示す。
図19は、本発明の例示的センサを用いて測定した化学物質(r−カルボン、s−カルボン)での実験結果例を示す。
図20は、本発明のシステムの構成例である。図20AおよびBは、本発明のセンサシステム例を示す。図20Cは、内部測定部の例示図を示す。
図21は、Mercury Pathway Profiling systemの模式図を示す。
図22は、Mercury Pathway Profiling systemで用いられるベクターのリストである。
図23Aは、Mercury Pathway Profiling systemで用いられるシグナル伝達経路を示す図である。
図23Bは、Mercury Pathway Profiling systemで用いられるシグナル伝達経路において活性化されたときの様子を示す図である。
図24は、Mercury Pathway Profiling systemにおいて発現プロファイルの変化を示す例示図である。
図25は、Mercury Pathway Profiling systemを用いて刺激によって反応が惹起されることを確認する実験である。
図26は、Mercury Pathway Profiling systemを用いて実際に細胞を用いてセンサを作製した例である。
(符号の説明)
Od1〜Odn センサ
P0 信号処理部
P1 前処理部
P2 係数算出部
P3 増幅部
EV 評価部
SA1〜SAm 選択部
J1〜Jm、JC、AD1〜AD3 加算部
RE 相対値決定部
MX 最大値検出部
NOR 規格化部
M1〜Mm 乗算部

Claims (127)

  1. 化学物質センサであって、
    a)化学物質レセプター遺伝子をコードする配列を含む、核酸分子;
    b)該核酸分子が導入された細胞が配置された支持体;
    c)該化学物質レセプターに起因するシグナルを測定する手段;および
    d)測定された該シグナルの強度から、該化学物質レセプターの活性化度を算出し、化学物質に関する情報を提供する手段、
    を備える、センサ。
  2. 前記核酸分子は、マーカー遺伝子をコードする配列をさらに含む、請求項1に記載のセンサ。
  3. 前記化学物質レセプターは、核内レセプター、細胞質レセプターおよび細胞膜レセプターからなる群より選択されるレセプターを含む、請求項1に記載のセンサ。
  4. 前記化学物質レセプターは、Gタンパク質共役型レセプター、キナーゼ型レセプター、イオンチャネル型レセプター、核内レセプター、ホルモンレセプター、ケモカインレセプターおよびサイトカインレセプターからなる群より選択されるレセプターを含む、請求項1に記載のセンサ。
  5. 前記化学物質レセプターは、嗅覚レセプターを含む、請求項1に記載のセンサ。
  6. 前記化学物質レセプター遺伝子は、レチノイン酸レセプター、EGFレセプター、インターロイキンレセプターおよびCSFレセプターからなる群より選択されるレセプターを含む、請求項1に記載のセンサ。
  7. 前記化学物質レセプター遺伝子は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94および96からなる群より選択される核酸配列またはその改変体もしくはフラグメントを含む、請求項1に記載のセンサ。
  8. 前記化学物質レセプター遺伝子は、少なくとも約2種類含まれる、請求項1に記載のセンサ。
  9. 前記化学物質レセプター遺伝子は、少なくとも約10種類含まれる、請求項1に記載のセンサ。
  10. 前記化学物質レセプター遺伝子は、少なくとも約20種類含まれる、請求項1に記載のセンサ。
  11. 前記化学物質レセプター遺伝子は、少なくとも約300種類含まれる、請求項1に記載のセンサ。
  12. 前記化学物質レセプター遺伝子は、マウス、ヒト、ラット、イヌおよびネコから選択される動物が有する実質的にすべての種類が含まれる、請求項1に記載のセンサ。
  13. 前記化学物質レセプター遺伝子は、マウス、ヒト、ラット、イヌおよびネコから選択される動物が有する実質的にすべての種類の嗅覚レセプター遺伝子が含まれる、請求項1に記載のセンサ。
  14. 前記マーカー遺伝子は、Gタンパク質、前記化学物質レセプター自体またはアレスチンを含む、請求項2に記載のセンサ。
  15. 前記マーカー遺伝子は、Gα遺伝子を含む、請求項2に記載のセンサ。
  16. 前記マーカー遺伝子は、Gα15、GαqまたはGαolfを含む、請求項2に記載のセンサ。
  17. 前記マーカー遺伝子は、Gα遺伝子、Gβ遺伝子およびGγ遺伝子を含む、請求項2に記載のセンサ。
  18. 前記支持体は、固相支持体を含む、請求項1に記載のセンサ。
  19. 前記支持体は、コーティングされているかまたはされていない、ガラス、シリコン、シリカ、ポリスチレンおよびポリマーフィルムからなる群より選択される材料を含む、請求項1に記載のセンサ。
  20. 前記シグナルは、細胞内カルシウム濃度、イノシトール三リン酸、サイクリックAMP、ジアシルグリセロール、サイクリックGMPおよび細胞膜電位からなる群より選択される因子を含む、請求項1に記載のセンサ。
  21. 前記シグナルは、細胞内カルシウム濃度であり、前記シグナル測定手段は、カルシウム濃度を電気的、化学的または生物学的に測定する手段を含む、請求項1に記載のセンサ。
  22. 前記マーカー遺伝子は、前記細胞にもともと存在する遺伝子とは異なる、請求項2に記載のセンサ。
  23. 前記細胞は、HEK293細胞、CHO、COS−7、神経芽細胞腫およびNG108−15からなる群より選択される細胞を含む、請求項1に記載のセンサ。
  24. 前記細胞は、実質的に1種類の細胞を含む、請求項1に記載のセンサ。
  25. 前記嗅覚レセプター遺伝子は、前記細胞にもともと存在する遺伝子とは異なる、請求項1に記載のセンサ。
  26. 前記支持体は、細胞接着分子を含む、請求項1に記載のセンサ。
  27. 前記細胞接着分子は、フィブロネクチン、ビトロネクチンもしくはラミニンまたはそのフラグメントもしくは改変体を含む、請求項16に記載のセンサ。
  28. 前記支持体上の核酸分子または細胞はアレイ化される、請求項1に記載のセンサ。
  29. 前記アレイ化された領域は、約200mm以下の面積を有する、請求項28に記載のセンサ。
  30. 前記アレイ化された領域は、長手方向が約15mm以下である、請求項28に記載のセンサ。
  31. 前記細胞を覆うに十分な液体をさらに含む、請求項1に記載のセンサ。
  32. 細胞を維持するための培地を含む、請求項1に記載のセンサ。
  33. 前記培地は液体培地である、請求項32に記載のセンサ。
  34. 前記d)情報提供手段は、
    d−1)化学物質レセプターを有する細胞の刺激成分応答特異性に準じた刺激種分類法を用いて、予め指定された複数の前記センサが出力する第1の信号を加算し、感覚を表現する感覚要素の値を算出し、該算出結果を第2の信号として出力する信号処理部;および
    d−2))該信号処理部から出力される前記第2の信号を用いて感覚の定性評価および/または定量評価を行う評価部、
    を備える、請求項1に記載のセンサ。
  35. 前記刺激種分類法は、前記化学物質レセプターの種類に応じて分類することを特徴とする、請求項34に記載のセンサ。
  36. 前記信号処理部は、複数の前記センサから出力される第1の信号の中の1つが所定の値を超えた場合、該センサ以外のセンサから出力される第1の信号を減少させ、該減少された信号を前記第2の信号の生成に使用することを特徴とする、請求項34に記載のセンサ。
  37. 前記信号処理部は、
    感覚要素に対応した複数対の選択部および加算部と、
    前記センサの各々に対応した複数の増幅部と、
    該増幅部を制御する係数算出部とを備え、
    前記選択部は、複数の前記第1の信号に、前記センサの各々に応じて指定された係数を乗じ、複数の第3の信号を生成し、
    前記加算部は、対応する前記選択部から出力される複数の前記第3の信号を加算して第4の信号を生成し、
    前記係数算出部は、複数の前記第4の信号の中から最大値を検出し、該最大値を用いて各々の前記第4の信号を規格化して制御信号を算出し、
    前記増幅部は、対応する前記制御信号を用いて感覚要素の強度に対応する前記第2の信号を生成することを特徴とする、
    請求項34に記載のセンサ。
  38. 刺激の呈示を受けた場合、前記センサから出力される前記第1の信号が、無刺激で応答していない状態をゼロレベルとして、ゼロレベルから前記刺激強度または刺激の濃度に応じた所定値に向かって過渡的に立ち上がり、
    これに伴って前記第3の信号が、ゼロレベルから前記刺激強度または刺激の濃度に応じた所定値に向かって過渡的に立ち上がり、
    前記係数算出部は、前記第1の信号のいずれかが前記センサが刺激に応答して出力した信号であると判断した最初の時をセンサ応答開始基準時刻とし、
    該基準時刻からの経過時間として指定された所定時刻において、該所定時刻における前記第3の信号を用いて前記増幅部を制御する前記制御信号を算出し、
    次に指定された所定時刻に制御信号を算出するまでは、最後に算出した前記制御信号を用いて前記増幅部を制御することを特徴とする、
    請求項37に記載のセンサ。
  39. 刺激の呈示を受けた場合、前記センサから出力される前記第1の信号が、無刺激で応答していない状態をゼロレベルとして、ゼロレベルから前記刺激強度または刺激の濃度に応じた所定値に向かって過渡的に立ち上がり、
    これに伴って前記第3の信号が、ゼロレベルから前記刺激強度または刺激の濃度に応じた所定値に向かって過渡的に立ち上がり、
    前記係数算出部は、前記第1の信号のいずれかが前記センサが刺激に応答して出力した信号であると判断した最初の時をセンサ応答開始基準時刻とし、
    複数の前記第3の信号の中の所定数以上の信号が増加から減少に転じるまでの間において、
    前記第3の信号が、対応する感覚要素として有意な出力値を発生し始めたと判断された時、および前記第3の信号が、前記有意な出力値と前記第3の信号に対して予め設定された最大出力値との間を複数の区間に区分する複数の境界値に達したと判断された時毎に、その時の第3の信号を用いて前記増幅部を制御する前記制御信号を算出し、
    次に制御信号を算出する時までは、最後に算出した前記制御信号を用いて前記増幅部を制御することを特徴とする、
    請求項34に記載のセンサ。
  40. 化学物質センサにおいて使用するためのチップであって、
    a)化学物質レセプター遺伝子をコードする塩基配列を含む、核酸分子;および
    b)該核酸分子が導入された細胞が配置された支持体、
    を備える、チップ。
  41. 前記核酸分子は、マーカー遺伝子をコードする配列をさらに含む、請求項40に記載のチップ。
  42. 前記化学物質レセプター遺伝子に起因するシグナルを伝達する手段をさらに備える、請求項40に記載のチップ。
  43. 前記化学物質レセプターは、核内レセプター、細胞質レセプターおよび細胞膜レセプターからなる群より選択されるレセプターを含む、請求項40に記載のチップ。
  44. 前記化学物質レセプターは、Gタンパク質共役型レセプター、キナーゼ型レセプター、イオンチャネル型レセプター、核内レセプター、ホルモンレセプター、ケモカインレセプターおよびサイトカインレセプターからなる群より選択されるレセプターを含む、請求項40に記載のチップ。
  45. 前記化学物質レセプターは、嗅覚レセプターを含む、請求項40に記載のチップ。
  46. 前記化学物質レセプター遺伝子は、レチノイン酸レセプター、EGFレセプター、インターロイキンレセプターおよびCSFレセプターからなる群より選択されるレセプターを含む、請求項40に記載のチップ。
  47. 前記化学物質レセプター遺伝子は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94および96からなる群より選択される核酸配列またはその改変体もしくはフラグメントを含む、請求項40に記載のチップ。
  48. 前記化学物質レセプター遺伝子は、少なくとも約2種類含まれる、請求項40に記載のチップ。
  49. 前記化学物質レセプター遺伝子は、少なくとも約10種類含まれる、請求項40に記載のチップ。
  50. 前記化学物質レセプター遺伝子は、少なくとも約20種類含まれる、請求項40に記載のチップ。
  51. 前記化学物質レセプター遺伝子は、少なくとも約300種類含まれる、請求項40に記載のチップ。
  52. 前記化学物質レセプター遺伝子は、マウス、ヒト、ラット、イヌおよびネコから選択される動物が有するすべての種類が含まれる、請求項40に記載のチップ。
  53. 前記化学物質レセプター遺伝子は、マウス、ヒト、ラット、イヌおよびネコから選択される動物が有するすべての種類の嗅覚レセプター遺伝子が含まれる、請求項40に記載のチップ。
  54. 前記マーカー遺伝子は、Gタンパク質、前記化学物質レセプター自体またはアレスチンを含む、請求項41に記載のチップ。
  55. 前記マーカー遺伝子は、Gα遺伝子を含む、請求項41に記載のチップ。
  56. 前記マーカー遺伝子は、Gα15、GαqまたはGαolfを含む、請求項41に記載のチップ。
  57. 前記マーカー遺伝子は、Gα遺伝子、Gβ遺伝子およびGγ遺伝子を含む、請求項41に記載のチップ。
  58. 前記支持体は、固相支持体を含む、請求項40に記載のチップ。
  59. 前記支持体は、コーティングされているかまたはされていない、ガラス、シリコン、シリカ、ポリスチレンおよびポリマーフィルムからなる群より選択される材料を含む、請求項40に記載のチップ。
  60. 前記マーカー遺伝子が生成するシグナルは、細胞内カルシウム濃度、イノシトール三リン酸、サイクリックAMP、ジアシルグリセロール、サイクリックGMPおよび細胞膜電位からなる群より選択される因子を含む、請求項41に記載のチップ。
  61. 前記マーカー遺伝子は、前記細胞にもともと存在する遺伝子とは異なる、請求項41に記載のチップ。
  62. 前記細胞は、HEK293細胞、CHO、COS−7、神経芽細胞腫およびNG108−15からなる群より選択される細胞を含む、請求項40に記載のチップ。
  63. 前記支持体は、前記マーカーに起因するシグナルを伝達するための接続点を含む、請求項41に記載のチップ。
  64. 前記支持体は、電気信号、化学的信号および生物学的信号からなる群より選択される少なくとも1つの信号を伝達し得る接続点を含む、請求項40に記載のチップ。
  65. 前記嗅覚レセプター遺伝子は、前記細胞にもともと存在する遺伝子とは異なる、請求項40に記載のチップ。
  66. 前記支持体は、細胞接着分子を含む、請求項40に記載のチップ。
  67. 前記細胞接着分子は、フィブロネクチン、ビトロネクチンもしくはラミニンまたはそのフラグメントもしくは改変体を含む、請求項66に記載のチップ。
  68. 前記支持体上の核酸分子または細胞はアレイ化される、請求項40に記載のチップ。
  69. 前記アレイ化された領域は、約200mm以下の面積を有する、請求項68に記載のチップ。
  70. 前記アレイ化された領域は、長手方向が約15mm以下である、請求項68に記載のチップ。
  71. 前記細胞を覆うに十分な液体をさらに含む、請求項40に記載のチップ。
  72. 細胞を維持するための培地を含む、請求項40に記載のチップ。
  73. 前記培地は液体培地である、請求項72に記載のチップ。
  74. 試料中の化学物質に関する情報を得るための方法であって、
    A)化学物質レセプター遺伝子をコードする配列を含む、核酸分子が導入された、細胞を提供する工程;
    B)該細胞に目的となる化学物質を含むかまたは含むと予想される試料を提供する工程;
    C)該細胞中の該化学物質レセプター遺伝子に起因するシグナルの該化学物質による変化を測定する工程;および
    D)測定された該シグナルの強度変化から、該化学物質レセプターの活性化度を算出し、化学物質の情報を提供する工程、
    を包含する、方法。
  75. 前記核酸分子は、マーカー遺伝子をコードする配列をさらに含む、請求項74に記載の方法。
  76. 前記化学物質は、嗅覚源である、請求項74に記載の方法。
  77. 前記化学物質レセプター遺伝子は、嗅覚物質レセプターを含む、請求項74に記載の方法。
  78. 前記化学物質レセプター遺伝子は、少なくとも約2種類含まれる、請求項74に記載の方法。
  79. 前記化学物質レセプター遺伝子は、少なくとも約10種類含まれる、請求項74に記載の方法。
  80. 前記化学物質レセプター遺伝子は、少なくとも約20種類含まれる、請求項74に記載の方法。
  81. 前記化学物質レセプター遺伝子は、少なくとも約300種類含まれる、請求項74に記載の方法。
  82. 前記化学物質レセプター遺伝子は、マウス、ヒト、ラット、イヌおよびネコから選択される動物が有するすべての種類が含まれる、請求項74に記載の方法。
  83. 前記マーカー遺伝子は、Gタンパク質を含む、請求項75に記載の方法。
  84. 前記マーカー遺伝子は、Gα遺伝子、前記化学物質レセプター自体またはアレスチンを含む、請求項75に記載の方法。
  85. 前記マーカー遺伝子は、Gα15、GαqまたはGαolfを含む、請求項75に記載の方法。
  86. 前記マーカー遺伝子は、Gα遺伝子、Gβ遺伝子およびGγ遺伝子を含む、請求項75に記載の方法。
  87. 前記細胞は、支持体に固定される、請求項74に記載の方法。
  88. 前記支持体は、固相支持体を含む、請求項74に記載の方法。
  89. 前記支持体は、コーティングされているかまたはされていない、ガラス、シリコン、シリカ、ポリスチレンおよびポリマーフィルムからなる群より選択される材料を含む、請求項74に記載の方法。
  90. 前記マーカー遺伝子が生成するシグナルは、細胞内カルシウム濃度、イノシトール三リン酸、サイクリックAMP、ジアシルグリセロール、サイクリックGMPおよび細胞膜電位からなる群より選択される因子を含む、請求項75に記載の方法。
  91. 前記マーカー遺伝子は、前記細胞にもともと存在する遺伝子とは異なる、請求項75に記載の方法。
  92. 前記細胞は、HEK293細胞、CHO、COS−7、神経芽細胞腫およびNG108−15からなる群より選択される細胞を含む、請求項74に記載の方法。
  93. 前記嗅覚レセプター遺伝子は、前記細胞にもともと存在する遺伝子とは異なる、請求項74に記載の方法。
  94. 前記支持体は、細胞接着分子を含む、請求項74に記載の方法。
  95. 前記細胞接着分子は、フィブロネクチン、ビトロネクチンもしくはラミニンまたはそのフラグメントもしくは改変体を含む、請求項94に記載の方法。
  96. 前記シグナルに関する情報は、細胞内カルシウム濃度、イノシトール三リン酸、サイクリックAMP、ジアシルグリセロール、サイクリックGMPおよび細胞膜電位からなる群より選択される因子のレベルの変化を包含する、請求項74に記載の方法。
  97. 前記情報は、リアルタイムで提示される、請求項96に記載の方法。
  98. 前記工程B)は、約1〜4mm/秒の流速で前記試料を前記細胞に提供する工程を包含する、請求項74に記載の方法。
  99. 前記工程B)は、約2〜3mm/秒の流速で前記試料を前記細胞に提供する工程を包含する、請求項74に記載の方法。
  100. 前記細胞は該細胞を覆うに十分な液体をさらに含み、前記工程B)は、前記試料を該液体中に提供する工程を包含する、請求項74に記載の方法。
  101. 前記細胞は該細胞を維持するための培地をさらに含む、請求項74に記載の方法。
  102. 前記培地は、液体培地を含む、請求項101に記載の方法。
  103. 前記支持体上の核酸分子または細胞はアレイ化される、請求項74に記載の方法。
  104. 前記化学物質の情報と、目的となる化学物質または化学物質を含むと予想される試料に関する情報とを相関づける工程をさらに包含する、請求項74に記載の方法。
  105. センサの出力信号を使用して感覚を評価する感覚評価システムであって、
    A)外部からの刺激に対して各々異なる応答特性を有する複数のセンサ;
    B)化学物質レセプターを有する細胞の刺激成分応答特異性に準じた刺激種分類法を用いて、予め指定された複数の前記センサが出力する第1の信号を加算し、感覚を表現する感覚要素の値を算出し、該算出結果を第2の信号として出力する信号処理部;および
    C)該信号処理部から出力される前記第2の信号を用いて感覚の定性評価および/または定量評価を行う評価部;
    を備える、感覚評価システム。
  106. 前記細胞は、前記化学物質レセプターをコードする核酸配列を含む核酸分子によってトランスフェクトされたものである、請求項105に記載の感覚評価システム。
  107. 前記信号処理部は、複数の前記センサから出力される第1の信号の中の1つが所定の値を超えた場合、該センサ以外のセンサから出力される第1の信号を減少させ、該減少された信号を前記第2の信号の生成に使用することを特徴とする請求項105に記載の感覚評価システム。
  108. 前記信号処理部は、
    感覚要素に対応した複数対の選択部および加算部と、
    前記センサの各々に対応した複数の増幅部と、
    該増幅部を制御する係数算出部とを備え、
    前記選択部は、複数の前記第1の信号に、前記センサの各々に応じて指定された係数を乗じ、複数の第3の信号を生成し、
    前記加算部は、対応する前記選択部から出力される複数の前記第3の信号を加算して第4の信号を生成し、
    前記係数算出部は、複数の前記第4の信号の中から最大値を検出し、該最大値を用いて各々の前記第4の信号を規格化して制御信号を算出し、
    前記増幅部は、対応する前記制御信号を用いて感覚要素の強度に対応する前記第2の信号を生成することを特徴とする、
    請求項105に記載の感覚評価システム。
  109. 刺激の呈示を受けた場合、前記センサから出力される前記第1の信号が、無刺激で応答していない状態をゼロレベルとして、ゼロレベルから前記刺激強度または刺激の濃度に応じた所定値に向かって過渡的に立ち上がり、
    これに伴って前記第3の信号が、ゼロレベルから前記刺激強度または刺激の濃度に応じた所定値に向かって過渡的に立ち上がり、
    前記係数算出部は、前記第1の信号のいずれかが前記センサが刺激に応答して出力した信号であると判断した最初の時をセンサ応答開始基準時刻とし、
    該基準時刻からの経過時間として指定された所定時刻において、該所定時刻における前記第3の信号を用いて前記増幅部を制御する前記制御信号を算出し、
    次に指定された所定時刻に制御信号を算出するまでは、最後に算出した前記制御信号を用いて前記増幅部を制御することを特徴とする、
    請求項108に記載の感覚評価システム。
  110. 刺激の呈示を受けた場合、前記センサから出力される前記第1の信号が、無刺激で応答していない状態をゼロレベルとして、ゼロレベルから前記刺激強度または刺激の濃度に応じた所定値に向かって過渡的に立ち上がり、
    これに伴って前記第3の信号が、ゼロレベルから前記刺激強度または刺激の濃度に応じた所定値に向かって過渡的に立ち上がり、
    前記係数算出部は、前記第1の信号のいずれかが前記センサが刺激に応答して出力した信号であると判断した最初の時をセンサ応答開始基準時刻とし、
    複数の前記第3の信号の中の所定数以上の信号が増加から減少に転じるまでの間において、
    前記第3の信号が、対応する感覚要素として有意な出力値を発生し始めたと判断された時、および前記第3の信号が、前記有意な出力値と前記第3の信号に対して予め設定された最大出力値との間を複数の区間に区分する複数の境界値に達したと判断された時毎に、その時の第3の信号を用いて前記増幅部を制御する前記制御信号を算出し、
    次に制御信号を算出する時までは、最後に算出した前記制御信号を用いて前記増幅部を制御することを特徴とする、
    請求項108に記載の感覚評価システム。
  111. 前記感覚が嗅覚であり、
    前記化学物質レセプターは、嗅覚レセプターを含み、
    前記センサが嗅覚刺激に対して反応するセンサであることを特徴とする、
    請求項105に記載の感覚評価システム。
  112. 外部からの刺激に対して異なる応答特性を有する複数のセンサと、これらのセンサからの出力信号を処理する信号処理部と、該信号処理部の出力信号から感覚を評価する感覚評価システムにおいて、
    前記信号処理部が、前記センサからの出力信号を、化学物質レセプターを有する細胞の刺激成分応答特異性に準じた刺激種分類法を用いて、予め指定された複数の前記センサが出力する信号を加算し、感覚を表現する感覚要素の値を算出し、該算出結果を被評価信号として出力する第1工程と、
    前記評価部が、前記被評価信号を用いて感覚の定性評価および/または定量評価を行う第2工程とを含むことを特徴とする、
    感覚評価方法。
  113. 前記細胞は、前記化学物質レセプターをコードする核酸配列を含む核酸分子によってトランスフェクトされたものである、請求項112に記載の感覚評価方法。
  114. 前記第1工程は、前記信号処理部が、複数の前記センサからの出力信号の中の1つが所定の値を超えた場合、該センサ以外のセンサからの出力信号を減少させ、該減少された信号を前記被評価信号の生成に使用する第3工程を含むことを特徴とする請求項112に記載の感覚評価方法。
  115. 前記信号処理部が、感覚要素に対応した複数対の選択部および加算部と、前記センサの各々に対応した複数の増幅部と、該増幅部を制御する係数算出部とを備え、
    前記第1工程は、
    前記選択部が、複数の前記センサからの出力信号に、前記センサの各々に応じて指定された係数を乗じ、複数の信号を生成する第4工程と、
    前記加算部が、対応する前記選択部から出力される前記第4工程において生成された信号を加算し、出力信号を生成する第5工程と、
    前記係数算出部が、前記第5工程によって生成された信号の中から最大値を検出し、該最大値を用いて各々の前記第5工程によって生成された信号を規格化して制御信号を算出する第6工程と、
    前記増幅部が、対応する前記制御信号を用いて感覚要素の強度に対応する前記被評価信号を生成する第7工程とを含むことを特徴とする、
    請求項112に記載の感覚評価方法。
  116. 刺激の呈示を受けた場合、前記センサの出力信号が、無刺激で応答していない状態をゼロレベルとして、ゼロレベルから前記刺激強度または刺激の濃度に応じた所定値に向かって過渡的に立ち上がる特性を有し、これに伴って前記第4工程によって生成される信号が、ゼロレベルから前記刺激強度または刺激の濃度に応じた所定値に向かって過渡的に立ち上がり、
    前記第6工程は、前記係数算出部が、前記センサからの出力信号のいずれかが前記センサが刺激に応答して出力した信号であると判断した最初の時をセンサ応答開始基準時刻とし、該基準時刻からの経過時間として指定された所定時刻において、該所定時刻における前記第5工程において生成された信号を用いて前記増幅部を制御する前記制御信号を算出し、次に指定された所定時刻に制御信号を算出するまでは、最後に算出した前記制御信号の出力を維持する第8工程を含むことを特徴とする、
    請求項114に記載の感覚評価方法。
  117. 刺激の呈示を受けた場合、前記センサからの出力信号が、無刺激で応答していない状態をゼロレベルとして、ゼロレベルから前記刺激強度または刺激の濃度に応じた所定値に向かって過渡的に立ち上がる特性を有し、これに伴って前記第4工程によって生成される信号が、ゼロレベルから前記刺激強度または刺激の濃度に応じた所定値に向かって過渡的に立ち上がり、
    前記第6工程は、前記係数算出部が、前記センサの出力信号のいずれかが前記センサが刺激に応答して出力した信号であると判断した最初の時をセンサ応答開始基準時刻とし、複数の前記第5工程において生成された信号の中の所定数以上の信号が増加から減少に転じるまでの間において、前記第5工程において生成された信号が、対応する感覚要素として有意な出力値を発生し始めたと判断された時、および前記第5工程において生成された信号が、前記有意な出力値と前記第5工程において生成された信号に対して予め設定された最大出力値との間を複数の区間に区分する複数の境界値に達したと判断された時毎に、その時の前記第5工程において生成された信号を用いて前記増幅部を制御する前記制御信号を算出し、次に制御信号を算出する時までは、最後に算出した前記制御信号の出力を維持する第8工程を含むことを特徴とする、
    請求項114に記載の感覚評価方法。
  118. 前記感覚が嗅覚であり、
    前記化学物質レセプターは、嗅覚レセプターを含み、
    前記センサが嗅覚刺激に対して反応するセンサであることを特徴とする、
    請求項112に記載の感覚評価方法。
  119. 刺激調合方法であって、該方法は:
    A)センサの出力信号を使用して感覚を評価する感覚評価システムであって、
    A−1)外部からの刺激に対して各々異なる応答特性を有する複数のセンサ;
    A−2)化学物質レセプターを有する細胞の刺激成分応答特異性に準じた刺激種分類法を用いて、予め指定された複数の前記センサが出力する第1の信号を加算し、感覚を表現する感覚要素の値を算出し、該算出結果を第2の信号として出力する信号処理部;および
    A−3)該信号処理部から出力される前記第2の信号を用いて感覚の定性評価および/または定量評価を行う評価部;
    を備える、感覚評価システム、を用いて所定の刺激を評価する第1工程と、
    B)該第1工程の評価結果と前記感覚評価システムによって得られた要素刺激成分に対する評価結果とを用いて、混合する要素刺激成分と対応する割合とを決定する第2工程と、
    C)前記決定された要素刺激成分を前記割合で混合する第3工程と
    を含むことを特徴とする刺激調合方法。
  120. 前記第3工程によって混合された刺激を前記感覚評価システムを用いて評価する第4工程と、
    該第4工程の評価結果と、前記第1工程の評価結果とを比較して、新たに混合する要素刺激成分と対応する割合とを決定する第5工程と
    をさらに含むことを特徴とする、
    請求項119に記載の刺激調合方法。
  121. 外部からの刺激に対して異なる応答特性を有する複数のセンサと、これらのセンサからの出力信号を処理する信号処理部と、該信号処理部の出力信号から感覚を評価する感覚評価システムにおいて、
    コンピュータに以下の処理を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、以下の処理は、
    該信号処理部が、該センサからの出力信号を、化学物質レセプターを有する細胞の刺激成分応答特異性に準じた刺激種分類法を用いて、予め指定された複数の該センサが出力する信号を加算し、感覚を表現する感覚要素の値を算出し、該算出結果を被評価信号として出力する第1手順と、
    該評価部が、該被評価信号を用いて感覚の定性評価および/または定量評価を行う第2手順とを含む、
    記録媒体。
  122. 外部からの刺激に対して異なる応答特性を有する複数のセンサと、これらのセンサからの出力信号を処理する信号処理部と、該信号処理部の出力信号から感覚を評価する感覚評価システムにおいて、
    コンピュータに以下の処理を実行させるためのプログラムであって、以下の処理は、
    該信号処理部が、該センサからの出力信号を、化学物質レセプターを有する細胞の刺激成分応答特異性に準じた刺激種分類法を用いて、予め指定された複数の該センサが出力する信号を加算し、感覚を表現する感覚要素の値を算出し、該算出結果を被評価信号として出力する第1手順と、
    該評価部が、該被評価信号を用いて感覚の定性評価および/または定量評価を行う第2手順とを含む、
    プログラム。
  123. 以下:
    (a)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19および21からなる群より選択される配列番号に記載の塩基配列のヌクレオチドまたはそのフラグメント配列を有する、ポリヌクレオチド;
    (b)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20および22からなる群より選択される配列番号に記載のアミノ酸配列のアミノ酸またはそのフラグメントをコードする、ポリヌクレオチド、
    (c)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20および22からなる群より選択される配列番号に記載のアミノ酸配列のアミノ酸において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
    (d)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19および21からなる群より選択される配列番号に記載の塩基配列のヌクレオチドのスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;
    (e)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20および22からなる群より選択される配列番号に記載のアミノ酸配列のアミノ酸からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
    (f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
    (g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
    を含む、核酸分子。
  124. 前記生物学的活性は、化学物質のシグナル伝達活性を含む、請求項123に記載の核酸分子。
  125. 以下:
    (a)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19および21からなる群より選択される配列番号に記載の核酸配列のヌクレオチドもしくはそのフラグメントによってコードされる、ポリペプチド;
    (b)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20および22からなる群より選択される配列番号に記載のアミノ酸配列のアミノ酸もしくはそのフラグメントを有する、ポリペプチド;
    (c)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20および22からなる群より選択される配列番号に記載のアミノ酸配列のアミノ酸において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する、改変体ポリペプチド
    (d)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19および21からなる群より選択される配列番号に記載の塩基配列のヌクレオチドのスプライス改変体もしくは対立遺伝子改変体によってコードされる、ポリペプチド;
    (e)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20および22からなる群より選択される配列番号に記載のアミノ酸配列のアミノ酸を有するポリペプチドの、種相同体ポリペプチド;または
    (f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリペプチドのアミノ酸配列に対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列からなり、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド。
  126. 前記生物学的活性は、化学物質のシグナル伝達活性を含む、請求項125に記載のポリペプチド。
  127. 請求項123の核酸分子または請求項125のポリペプチドの、化学物質の検出のための、使用。
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