JP2008518319A - 生物学的機能のネットワークを解析するための方法およびシステム - Google Patents

生物学的機能のネットワークを解析するための方法およびシステム Download PDF

Info

Publication number
JP2008518319A
JP2008518319A JP2007537471A JP2007537471A JP2008518319A JP 2008518319 A JP2008518319 A JP 2008518319A JP 2007537471 A JP2007537471 A JP 2007537471A JP 2007537471 A JP2007537471 A JP 2007537471A JP 2008518319 A JP2008518319 A JP 2008518319A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
reporters
cell
biological
functional
function
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2007537471A
Other languages
English (en)
Inventor
正人 三宅
智啓 吉川
尚学 上田
淳 三宅
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
CytoPathfinder Inc
Original Assignee
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
CytoPathfinder Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST, CytoPathfinder Inc filed Critical National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Publication of JP2008518319A publication Critical patent/JP2008518319A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • GPHYSICS
    • G16INFORMATION AND COMMUNICATION TECHNOLOGY [ICT] SPECIALLY ADAPTED FOR SPECIFIC APPLICATION FIELDS
    • G16BBIOINFORMATICS, i.e. INFORMATION AND COMMUNICATION TECHNOLOGY [ICT] SPECIALLY ADAPTED FOR GENETIC OR PROTEIN-RELATED DATA PROCESSING IN COMPUTATIONAL MOLECULAR BIOLOGY
    • G16B5/00ICT specially adapted for modelling or simulations in systems biology, e.g. gene-regulatory networks, protein interaction networks or metabolic networks
    • GPHYSICS
    • G16INFORMATION AND COMMUNICATION TECHNOLOGY [ICT] SPECIALLY ADAPTED FOR SPECIFIC APPLICATION FIELDS
    • G16BBIOINFORMATICS, i.e. INFORMATION AND COMMUNICATION TECHNOLOGY [ICT] SPECIALLY ADAPTED FOR GENETIC OR PROTEIN-RELATED DATA PROCESSING IN COMPUTATIONAL MOLECULAR BIOLOGY
    • G16B20/00ICT specially adapted for functional genomics or proteomics, e.g. genotype-phenotype associations
    • G16B20/20Allele or variant detection, e.g. single nucleotide polymorphism [SNP] detection
    • GPHYSICS
    • G16INFORMATION AND COMMUNICATION TECHNOLOGY [ICT] SPECIALLY ADAPTED FOR SPECIFIC APPLICATION FIELDS
    • G16BBIOINFORMATICS, i.e. INFORMATION AND COMMUNICATION TECHNOLOGY [ICT] SPECIALLY ADAPTED FOR GENETIC OR PROTEIN-RELATED DATA PROCESSING IN COMPUTATIONAL MOLECULAR BIOLOGY
    • G16B20/00ICT specially adapted for functional genomics or proteomics, e.g. genotype-phenotype associations
    • G16B20/30Detection of binding sites or motifs
    • GPHYSICS
    • G16INFORMATION AND COMMUNICATION TECHNOLOGY [ICT] SPECIALLY ADAPTED FOR SPECIFIC APPLICATION FIELDS
    • G16BBIOINFORMATICS, i.e. INFORMATION AND COMMUNICATION TECHNOLOGY [ICT] SPECIALLY ADAPTED FOR GENETIC OR PROTEIN-RELATED DATA PROCESSING IN COMPUTATIONAL MOLECULAR BIOLOGY
    • G16B20/00ICT specially adapted for functional genomics or proteomics, e.g. genotype-phenotype associations
    • G16B20/50Mutagenesis
    • GPHYSICS
    • G16INFORMATION AND COMMUNICATION TECHNOLOGY [ICT] SPECIALLY ADAPTED FOR SPECIFIC APPLICATION FIELDS
    • G16BBIOINFORMATICS, i.e. INFORMATION AND COMMUNICATION TECHNOLOGY [ICT] SPECIALLY ADAPTED FOR GENETIC OR PROTEIN-RELATED DATA PROCESSING IN COMPUTATIONAL MOLECULAR BIOLOGY
    • G16B20/00ICT specially adapted for functional genomics or proteomics, e.g. genotype-phenotype associations

Landscapes

  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Theoretical Computer Science (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Spectroscopy & Molecular Physics (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Medical Informatics (AREA)
  • Bioinformatics & Computational Biology (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Evolutionary Biology (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Physiology (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)

Abstract

本発明は、生物学的実体(例えば、細胞)内の、生物学的機能(例えば、転写因子、構造遺伝子、細胞マーカー、細胞表面マーカー、細胞の形状、細胞小器官の形状、細胞の運動性、酵素活性、代謝産物の濃度および細胞の構成要素の局在)のネットワークを解析する方法およびシステムを提供する。詳しくは、本発明の目的は、細胞を複雑系と見なして、改変を加えずに全体的な様式で生物学的な情報を提示するシステムおよび方法を提供することである。

Description

(発明の分野)
本発明は、生物学的解析の分野に関し、より詳しくは、細胞のような生物学的実体の論理的な解析に関する。
生物の生存は、摂動因子(例えば、細胞外シグナル)を認知し、その摂動因子に応答する能力に依存する。分子レベルにおいて、摂動因子(例えば、シグナル)は、生物学的実体内に存在する、相互作用する因子(例えば、タンパク質または代謝産物など)のネットワークを介して、認知され、そして伝達される。これらの因子は、細胞のホメオスタシスを維持するように協同して作用し、そして増殖、分裂、分化および薬物応答のような活性を調節する。生物学的実体のネットワークを通した情報伝達は、主に、シグナルに応答して動的に集合および分解し得る、種々の機能を有する因子間の相互作用によって媒介され、外部事象を特定の内部の出力(例えば、遺伝子発現、遺伝子発現、細胞の形状、細胞小器官の形状、細胞の運動性、酵素活性、代謝産物の濃度および細胞の構成要素の局在における変化)に連結する一過性の回路を作製する。これらのネットワークの基礎となる相互作用をマップするために、多数の戦略が開発されている。これらの研究は、集合的に、Escherichia coli、Saccharomyces cervisiaeおよび他の生物について、ゲノム全体にわたるタンパク質−タンパク質相互作用の輪郭を描く豊富なデータを提供している。これらの手段は、非常に強力であるが、部分的に完成した像を提供するだけであって、おそらく、微妙な状況にある多くの相互作用(その相互作用は、それらの適切なシグナルが存在する場合にのみ、形成される)を見過ごしている。
摂動因子(例えば、siRNA、抗体、リガンド、ホルモン、薬物、タンパク質、変異または低分子)による相互作用の変化は、生物学的な表現型(例えば、細胞表現型)における大きな変化を誘発する、生物学的機能のネットワークの小さな摂動(例えば、転写因子、構造遺伝子、細胞マーカー、細胞表面マーカー、細胞の形状、細胞小器官の形状、細胞の運動性、酵素活性、代謝産物の濃度および細胞の構成要素の局在に現れるもの)を可能にする生物学的な支柱を作製し得るが、所定のシグナル伝達経路における全ての相互作用がこの力を保有するわけではないようである。従って、全体的な相互作用を同定することを目的とする補完的な戦略が興味深い。この戦略において、細胞中へ外来因子またはペプチドを人工的に導入し(これらは、内因性調節相互作用と競合し、そしてその関係を崩す(titrate−out))、それによって外部シグナルを細胞応答に連結させる正常な回路を破壊する。機能的なアッセイ(例えば、シグナルに応答した遺伝子の活性化)とこの戦略とを合わせることによって、機能的な妨害についてのスクリーニングは、調節性タンパク質−タンパク質相互作用を摂動させるペプチドを同定するために使用され得る。この戦略(しばしば、ドミナント阻害遺伝学またはドミナントネガティブ遺伝学と称される)は、いくつかのモデル生物において好首尾に使用される(ここで、ハイスループットのスクリーニング方法が、容易に適用されている)が、哺乳動物においては、その使用の程度は少ない(旧来、哺乳動物は、この型のスクリーニングの対象となりにくい)。ドミナントネガティブ戦略の1つの利点は、この戦略が機能的に関連するタンパク質−タンパク質相互作用の「支柱の点」の位置を正確に示し、それによって、外部の因子による機能的な調節を受けやすいタンパク質ネットワークの大きな網の中で、少ない数の中心点をあらわにすることである。従って、ドミナントネガティブ戦略の結果は、特定の経路を規定する調節成分に関する極めて重大な情報を提供し得、そして薬物スクリーニングプログラムによって標的化するのに適した重要な相互作用を解明し得る。
Rosetta Inpharmaticsは、種々の特許出願において、細胞の情報をプロファイルとして提供することを提案している(特許文献1〜11)。しかし、このようなプロファイルは、いずれも、別々の細胞からの情報を連続情報としてではなく、別個の情報の集合として処理しており、真の意味で、一個の(同じ)細胞に注目した情報解析を行っていないという点で限界がある。特に、このような技術では、ある変化の前後の特定の各一時点のみに注目して解析がなされており、ある一点(遺伝子)がとる時間的変化のプロセスを解析するものではない。
プロファイリング技術については、近年の技術の進歩により、細胞の構成要素を正確に測定すること、それゆえに細胞の情報のプロファイルを導出することが可能になってきている(例えば、非特許文献1〜3;特許文献12)。ゲノム全体が知られている生物では、その細胞内の全遺伝子の転写産物を解析することが可能である。ゲノムの情報が増えつつある他の生物の場合には、細胞内の多数の遺伝子を同時にモニタリングすることが可能である。
アレイ技術の進展により、薬物探索の分野などでもアレイが使用されている(例えば、非特許文献4〜5)。プロファイルを用いた解析(例えば、特許文献13を参照)およびプロファイルのクラスター化は、細胞の状態、移植、薬物の標的分子および候補ならびに/または薬物の関連機能、効力および毒性に関する情報を与える。これらの技術は理想的な薬物活性または疾病状態を表す共通のプロファイルを誘導するためにも使用できる。プロファイルの比較は、患者の疾病を初期段階で検出するのに役立ち、病気があると診断された患者のための改善された臨床結果の予測を提供する。
しかし、生物学的実体(例えば、細胞)内に存在する生物学的機能のネットワークに関する実際の情報を、単純であり、有効かつ正確な様式で提供することのできる技術は存在していない。上記の技術においては、二成分性の様式でしかデータは解析されない、言い換えれば、2つの特定のネットワーク間の関係しか解析されず、それゆえ、全体的な様式ではデータは解析されない。このようなデータに基づく解析および評価は、正確さを欠き、時折誤った解釈を導き得る。したがって、生物学的実体内の生物学的機能のネットワークの解析法を提供する方法への需要が高まっている。
国際公開01/006013号パンフレット 国際公開01/005935号パンフレット 国際公開00/39339号パンフレット 国際公開00/39338号パンフレット 国際公開00/39337号パンフレット 国際公開00/24936号パンフレット 国際公開00/17402号パンフレット 国際公開99/66067号パンフレット 国際公開99/66024号パンフレット 国際公開99/58720号パンフレット 国際公開99/59037号パンフレット 国際公開01/006013号パンフレット 米国特許第5,777,888号明細書 Schenaら、「Quantitative monitoring of gene expression patterns with a complementary DNA microarray」Science,1995年,270:467−470 Lockhartら、「Expression monitoring by hybridization to high−density oligonucleotide arrays」Nature Biotechnology,1996年,14:1675−1680 Blanchardら、「Sequence to array: Probing the genome’s secrets」Nature Biotechnology,1996年,14:1649 Martonら、「Drug target validation and identification of secondary drug target effects using Microarrays」Nat.Med.1998年 Nov;4(11):1293−301 Grayら、「Exploiting chemical libralies,structure,and genomics in the search for kinase inhibitors」Science,1998年,281:533−538
本発明は、生物学的実体(例えば、細胞)内の生物学的機能(例えば、転写因子、構造遺伝子、細胞マーカー、細胞表面マーカー、細胞の形状、細胞小器官の形状、細胞の運動性、酵素活性、代謝産物の濃度および細胞の構成要素の局在)のネットワーク解析法およびシステムを提供することを課題とする。詳しくは、本発明は、改変を加えずに、細胞を複雑なシステムとしてみなす、全体的な様式で生物学的な情報を提示するためのシステムおよび方法を提供することを課題とする。
(発明の要旨)
本発明の上記課題は、以下の工程を包含する方法を提供することによって達成された:
A)生物学的実体を少なくとも1種類の摂動因子に供する工程、
B)上記の生物学的実体内の、生物学的機能を反映する機能レポーターのうち、少なくとも2種類についての情報を得る工程、および
C)上記で得た情報を集合論による処理に供し、上記の機能レポーター間の関係を計算する工程。
以上の工程の結果、生物学的機能のネットワークの関係を作製し、そして生物学的実体内の生物学的機能のネットワーク解析システムを開発する。このシステムは、以下を備える:
A)生物学的実体に対する、少なくとも1種類の摂動因子、
B)上記の生物学的実体内の、生物学的機能を反映する機能レポーターのうち、少なくとも2種類についての情報を得るための手段、および
C)上記で得られた情報を集合論による処理に供し、上記の機能レポーター間の関係を計算し、生物学的機能のネットワークの関係を作製するための手段。
本発明は、生物学的実体(例えば、細胞)のネットワークを解析するための、単純であり、有効かつ正確な方法およびシステムを達成した。本発明を使用して、全体的なネットワークを、容易かつ徹底的に解析することができる。生物学的機能のネットワークを、このように徹底的かつ全体的に解析することは、先行技術においてなされておらず、それゆえ、本発明は、従来技術で予期されない顕著な効果を提供する。
したがって、本発明は、バイオマーカーの同定、創薬ターゲットの解析、副作用解析、細胞機能の診断、細胞パスウェイ解析、化合物の生物影響評価および感染症診断などのような種々の使用において有用である。
したがって、本発明は、以下の発明を提供する。
(1)生物学的実体における生物学的機能のネットワークを解析するための方法であって、該方法は:
A)生物学的実体を少なくとも1種類の摂動因子に供する工程、
B)該生物学的実体内の、生物学的機能を反映する機能レポーターのうち、少なくとも2種類についての情報を得る工程、および
C)該得られた情報を集合論による処理に供し、該機能レポーター間の関係を計算して、該生物学的機能のネットワークの関係を作成する工程、
を包含する、方法。
(2)前記生物学的実体が細胞である、項目1に記載の方法。
(3)前記摂動因子が、siRNA、shRNA、miRNAおよびリボザイムを含むRNA、化合物、cDNA、抗体、ポリペプチド、光、音、圧力変化、放射、熱ならびにガスからなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(4)前記摂動因子が、前記機能レポーターの機能を特異的に調節し得るsiRNAを含む、項目1に記載の方法。
(5)前記機能レポーターが測定可能なシグナルを伝達し得る、項目1に記載の方法。
(6)前記機能レポーターが、転写因子、調節遺伝子、構造遺伝子、細胞マーカー、細胞表面マーカー、細胞の形状、細胞小器官の形状、細胞の運動性、酵素活性、代謝産物の濃度および細胞の構成要素の局在からなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(7)項目1に記載の方法であって、前記集合論による処理が、前記少なくとも2種類の機能レポーターのうち、2種類の特定の機能レポーターを、以下からなる群より選択される関係へ分類する工程を包含する:
a)独立、
b)包含、および
c)共通部分、
ここで、該関係が独立であると決定される場合、該2種類の特定の機能レポーターが、前記ネットワーク内で関係を有さないと決定され、
該関係が包含であると決定される場合、該2種類の特定の機能レポーターのうちの一方が、該2種類の特定の機能レポーターのうちの他方に含まれると決定され、かつ該2種類の特定の機能レポーターのうちの一方が、該2種類の特定の機能レポーターのうちの他方の下流に位置し、
該関係が共通部分であると決定される場合、該2種類の特定の機能レポーターが、別の共通の機能から分岐した下流に位置すると決定される、
方法。
(8)前記集合論による処理が、前記機能レポーターごとに、前記摂動因子による応答の有無をマッピングする工程を包含する、項目1に記載の方法。
(9)前記レポーター間の関係の計算が、独立、包含および共通部分に分類された、各々の機能レポーター間の相関を含み、該相関の一覧を作成する工程を包含する、項目1に記載の方法。
(10)1つの細胞内パスウェイを等しく標的化するのに十分な個数の前記摂動因子が調製される、項目1に記載の方法。
(11)前記少なくとも2種類の機能レポーターについての情報は、所望の時間後の前記摂動因子の影響に基づく、項目1に記載の方法。
(12)項目1に記載の方法であって、前記影響が、閾値に関して、以下の3つの群に分類される:ポジティブな影響 = +、影響なし = 0、およびネガティブな影響 = −、方法。
(13)項目1に記載の方法であって、前記少なくとも2種類の機能レポーターについての情報は、所望の時間後の前記摂動因子の影響に基づき、ここで、前記集合論による処理は、以下の工程を包含する:
a)該影響と該機能レポーターについての閾値とを比較し、ポジティブな影響 = +、影響なし = 0、およびネガティブな影響 = −、の3つの群に分類することにより、該情報を3つのカテゴリに分類する工程、
b)該機能レポーターのうちの2種類が、同一の型の影響を有する共通の摂動因子を有するか否かを決定する工程であって、ここで、
このような共通の摂動因子が存在しない場合、該2種類の機能レポーターに対応する2種類の機能は、互いに異なる摂動因子の下に配置され、
このような共通の摂動因子が存在する場合、以下の工程c)を実施する、工程
c)該2種類の機能のうちの一方の機能に対する摂動因子の集合が、該2種類の機能のうちの他方の機能に対する摂動因子の集合に完全に包含されるか否かを決定する工程であって、ここで、
このことが真である場合、より大きな集合を有する一方の機能が、より小さな集合を有する他方の機能の下に配置され、
このことが真ではない場合、該2種類の機能が、同一の摂動因子の下に並行して配置される、工程、
d)該機能レポーターの全ての組合せを調べるか否かを決定する工程であって、ここで、
このことが真である場合、該機能の関係の全てを統合して、現時点での全体的な摂動影響ネットワークにし、
このことが真ではない場合、工程a)〜工程c)を反復する、
方法。
(14)前記3つの群が、+1、0および−1に分類される、項目13に記載の方法。
(15)前記工程a)〜工程c)が、M×N行列を作製することによって判断され、ここでMは機能レポーターの個数を指し、Nは摂動因子の個数を指す、項目13に記載の方法。
(16)実際の生物学的実験を実行することによって、前記作製されたネットワークを解析する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(17)前記解析工程が、該機能に特異的な調節因子の使用を包含する、項目16に記載の方法。
(18)前記調節因子がsiRNAである、項目17に記載の方法。
(19)前記ネットワークが、シグナル伝達経路および細胞パスウェイを含む、項目1に記載の方法。
(20)前記ネットワークが、バイオマーカーの同定、創薬ターゲットの解析、副作用解析、細胞機能の診断、細胞パスウェイ解析、化合物の生物影響評価および感染症診断からなる群より選択される使用のために使用される、項目1に記載の方法。
(21)生物学的実体内の生物学的機能のネットワーク解析システムであって、該システムは:
A)生物学的実体に対する、少なくとも1種類の摂動因子、
B)該生物学的実体内の、生物学的機能を反映する機能レポーターのうち、少なくとも2種類についての情報を得る手段、および
C)該得られた情報を集合論による処理に供し、該機能レポーター間の関係を計算して、該生物学的機能のネットワークの関係を作製する手段、
を備える、システム。
(22)前記生物学的実体が細胞である、項目21に記載のシステム。
(23)前記摂動因子が、siRNA、化合物、cDNA、抗体、ポリペプチド、光、音、圧力変化、放射、熱ならびにガスからなる群より選択される、項目21に記載のシステム。
(24)前記摂動因子が、前記機能レポーターの機能を特異的に調節し得るsiRNAを含む、項目21に記載のシステム。
(25)前記機能レポーターが測定可能なシグナルを伝達し得る、項目21に記載のシステム。
(26)前記機能レポーターが、転写因子、構造遺伝子、細胞マーカー、細胞表面マーカー、細胞の形状、細胞小器官の形状、細胞の運動性、酵素活性、代謝産物の濃度および細胞の構成要素の局在からなる群より選択される、項目21に記載のシステム。
(27)項目21に記載のシステムであって、前記集合論による処理が、前記少なくとも2種類の機能レポーターのうち、2種類の特定の機能レポーターを、以下からなる群より選択される関係へ分類する工程を包含する:
a)独立、
b)包含、および
c)共通部分、
ここで、該関係が独立であると決定される場合、該2種類の特定の機能レポーターが、前記ネットワーク内で関係を有さないと決定され、
該関係が包含であると決定される場合、該2種類の特定の機能レポーターのうちの一方が、該2種類の特定の機能レポーターのうちの他方に含まれると決定され、かつ該2種類の特定の機能レポーターのうちの一方が、該2種類の特定の機能レポーターのうちの他方の下流に位置し、
該関係が共通部分であると決定される場合、該2種類の特定の機能レポーターが、別の共通の機能から分岐した下流に位置すると決定される、
システム。
(28)前記集合論による処理が、前記機能レポーターごとに、前記摂動因子による応答の有無をマッピングする工程を包含する、項目21に記載のシステム。
(29)前記レポーター間の関係の計算が、独立、包含および共通部分に分類された、各々の機能レポーター間の相関を含み、該相関の一覧を作成する工程を包含する、項目21に記載のシステム。
(30)1つの細胞内パスウェイを等しく標的化するのに十分な個数の前記摂動因子が調製される、項目21に記載のシステム。
(31)情報を得るための前記手段は、所望の時間後の前記摂動因子の影響に基づく、前記少なくとも2種類の機能レポーターについての情報を得るための手段を備える、項目21に記載のシステム。
(32)項目21に記載のシステムであって、前記影響が、閾値に関して、以下の3つの群に分類される:ポジティブな影響 = +、影響なし = 0、およびネガティブな影響 = −、システム。
(33)項目21に記載のシステムであって、前記少なくとも2種類の機能レポーターについての情報は、所望の時間後の前記摂動因子の影響に基づき、ここで、該得られた情報を集合論による処理に供する手段は、以下の手段を備える:
a)該影響と該機能レポーターについての閾値とを比較し、ポジティブな影響 = +、影響なし = 0、およびネガティブな影響 = −、の3つの群に分類することにより、該情報を3つのカテゴリに分類するための手段、
b)該機能レポーターのうちの2種類が、同一の型の影響を有する共通の摂動因子を有するか否かを決定するための手段であって、ここで、
このような共通の摂動因子が存在しない場合、該2種類の機能レポーターに対応する2種類の機能は、互いに異なる摂動因子の下に配置され、
このような共通の摂動因子が存在する場合、以下の工程c)を実施する、手段
c)該2種類の機能のうちの一方の機能に対する摂動因子の集合が、該2種類の機能のうちの他方の機能に対する摂動因子の集合に完全に包含されるか否かを決定するための手段であって、ここで、
このことが真である場合、より大きな集合を有する一方の機能が、より小さな集合を有する他方の機能の下に配置され、
このことが真ではない場合、該2種類の機能が、同一の摂動因子の下に並行して配置される、手段、
d)該機能レポーターの全ての組合せを調べるか否かを決定するための手段であって、ここで、
このことが真である場合、該機能の関係の全てを統合して、現時点での全体的な摂動影響ネットワークにし、
このことが真ではない場合、工程a)〜工程c)を反復する、
システム。
(34)前記3つの群が、+1、0および−1に分類される、項目33に記載のシステム。
(35)前記手段a)〜手段c)が、M×N行列を作製することによって実行され、ここでMは機能レポーターの個数を指し、Nは摂動因子の個数を指す、項目33に記載のシステム。
(36)実際の生物学的実験を実行することによって、前記作製されたネットワークを解析するための手段をさらに備える、項目21に記載のシステム。
(37)前記解析するための手段が、該機能に特異的な調節因子を含む、項目36に記載のシステム。
(38)前記調節因子がsiRNAである、項目37に記載のシステム。
(39)前記ネットワークが、シグナル伝達経路を含む、項目21に記載のシステム。
(40)前記ネットワークが、バイオマーカーの同定、創薬ターゲットの解析、副作用解析、細胞機能の診断、細胞パスウェイ解析、化合物の生物影響評価および感染症診断からなる群より選択される使用のために使用される、項目21に記載のシステム。
(41)生物学的実体における生物学的機能のネットワークを解析するための方法を、コンピュータ上で実行するコンピュータプログラムであって、該方法は:
A)生物学的実体を少なくとも1種類の摂動因子に供する工程、
B)該生物学的実体内の、生物学的機能を反映する機能レポーターのうち、少なくとも2種類についての情報を得る工程、および
C)該得られた情報を集合論による処理に供し、該機能レポーター間の関係を計算して、該生物学的機能のネットワークの関係を作成する工程、
を包含する、コンピュータプログラム。
(42)生物学的実体における生物学的機能のネットワークを解析するための方法を、コンピュータ上で実行するコンピュータプログラムを含む記憶媒体であって、該方法は:
A)生物学的実体を少なくとも1種類の摂動因子に供する工程、
B)該生物学的実体内の、生物学的機能を反映する機能レポーターのうち、少なくとも2種類についての情報を得る工程、および
C)該得られた情報を集合論による処理に供し、該機能レポーター間の関係を計算して、該生物学的機能のネットワークの関係を作成する工程、
を包含する、記憶媒体。
(43)生物学的実体における生物学的機能のネットワークを解析するための方法を、コンピュータ上で実行するコンピュータプログラムを含む通信媒体であって、該方法は:
A)生物学的実体を少なくとも1種類の摂動因子に供する工程、
B)該生物学的実体内の、生物学的機能を反映する機能レポーターのうち、少なくとも2種類についての情報を得る工程、および
C)該得られた情報を集合論による処理に供し、該機能レポーター間の関係を計算して、該生物学的機能のネットワークの関係を作成する工程、
を包含する、通信媒体。
以下に、好ましい実施形態により本発明を説明する。本明細書の記載および添付の図面ならびに当該分野における周知慣用技術に基づき、本発明を適切に作製または実行することができることを、当業者は理解する。本発明の作用および効果は、容易に理解され得る。
本明細書で使用されたEGFR−siRNA、EPHA2−siRNA、EPHA3−siRNA、#075−siRNA、KIT−siRNA、#054−siRNA、RET−siRNAおよび#006−siRNAは、Amersham Biosciences Japanから以下のカタログ番号で利用可能である:EGFR siRNA:M−003114−01;KIT siRNA:M−003150−01;RET siRNA:M−003170−01;EPHA2 siRNA:M−003116−01;EPHA3 siRNA:M−003117−01;#006 siRNA:M−003171−01;#075 siRNA:M−003149−01;および#054 siRNA:M−003152−01。これらの配列は公開されていないが、同等なものを、当該分野で周知の技術を使用して調製することができる。
本明細書で使用されたc−Myc siRNAのヌクレオチド配列は、SilencerTM c−myc siRNAとしてAmbion,Inc.から入手できる。
本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞または形容詞(例えば、英語における、「a」、「an」、「the」など、および他の言語における冠詞、形容詞など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。それゆえ、「a」または「an」、「1つ以上」および「少なくとも1つ」は、本明細書において交換可能に使用され得る。また、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」および「有する(having)」が交換可能に使用され得ことにも留意されるべきである。さらに、「からなる群より選択される」化合物とは、続くリスト中の1種以上の化合物(2種以上のこれらの化合物の混合物(すなわち、組み合わせ)を含む)をいう。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
本発明の化合物、組成物、システム、デバイスおよび/または方法が開示および説明される前に、本発明は、特定の合成方法、特定の試薬または実験室技術もしくは製造技術に限定されず、それゆえ、本発明は、当然のことながら、特に言及しない限り変化し得ることが理解されるべきである。また、本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明する目的のためのみであって、限定するとは意図されないことも理解されるべきである。
(用語の定義)
以下に本明細書において特に使用される用語を定義する。
(生物学的機能)
本明細書で使用される用語「生物学的機能のネットワーク」とは、生物学的実体(例えば、遺伝子、転写因子、構造遺伝子、細胞マーカー、細胞表面マーカー、細胞の形状、細胞小器官の形状、細胞の運動性、酵素活性、代謝産物の濃度および細胞の構成要素の局在など)のパラメータのあらゆるネットワークをいう。このようなネットワークは、パラメータのパスウェイ(例えば、遺伝子およびシグナル伝達経路など)であり得るが、これに限定されない。
本明細書で使用される「パスウェイ」または「経路」とは、生物学的実体のパラメータのあらゆるパスウェイをいう。このようなパスウェイは、薬物刺激のパスウェイなどであり得るが、これに限定されない。
本明細書で使用される用語「生物学的機能」とは、生物学的実体(例えば、細胞)の生存している状態に関連するか、および/またはそれを反映する、あらゆるパラメータをいう。このような生物学的機能としては、転写因子、調節遺伝子、構造遺伝子、細胞マーカー、細胞表面マーカー、細胞の形状、細胞小器官の形状、細胞の運動性、酵素活性、代謝産物の濃度および細胞の構成要素の局在が挙げられるが、これらに限定されない。このような生物学的機能は、それに特異的な機能レポーターを使用することによって測定され得る。本明細書で使用され、生物学的機能に関する用語「特異的」とは、生物学的機能と機能レポーターとの間の関係をいい、この機能レポーターの変化は、生物学的機能の状態の変化に関する。
本明細書で使用される用語「摂動因子」とは、生物学的実体内において摂動を引き起こす、あらゆる因子をいう。このような摂動因子としては、例えば、RNA(例えば、siRNA、shRNA、miRNA、リボザイム)、化合物、cDNA、抗体、ポリペプチド、光、音、圧力変化、放射、熱およびガスなどが挙げられるが、これらに限定されない。特に、上記機能レポーターの機能を特異的に制御し得るsiRNAが好ましい。なぜなら、このようなsiRNAは、生物学的実体(例えば、細胞)内の機能を特異的に標的化するからである。
本明細書で使用される用語「機能レポーター」とは、生物学的機能のシグナルを測定可能なシグナル(例えば、光、タンパク質の発現、代謝産物の産生、色の変化、蛍光および化学発光など)に変化させる因子をいう。
本明細書で使用される用語「集合論」とは、当該分野で使用および理解される理論をいい、そして集合の性質および関係を取り扱う純粋な数学の一部門をいい、対象(「要素(element)または元(member)」)の「集合」(集合体(aggregate)または収集物(collection))の理論を数学的に公式化することである。多くの数学者は、他の全ての数学の基礎として集合論を用いる。このような集合論としては、集合内の要素の解析、ならびに包含、独立および共通部分への集合の分類などが挙げられる。
本明細書で使用される用語「集合」は、当該分野の集合論において使用され、要素の群をいう。
本明細書で使用される用語「元(member)」、「濃度(cardinality)」または「要素(element)」は、集合の基本的な単位を指すために交換可能に使用される。本発明において、機能レポーターは集合として見なされ得、これらから得られる摂動因子または情報/データ/結果は要素として見なされ得る。
本明細書で使用される用語「包含」とは、一方の集合の全ての要素が、他方の集合に含まれる場合の、これら2つの集合の関係をいう。
本明細書で使用される用語「独立」とは、一方の集合の全ての要素が、他方の集合に含まれず、かつこのことの逆もまた成り立つ場合の、これら2つの群の関係をいう。
本明細書で使用される用語「共通部分」とは、一方の集合の一部の要素が他方の集合に含まれ、かつ一方の集合の一部の要素が他方の集合に含まれず、かつこのことの逆もまた成り立つ場合の、これらの2つの集合の関係をいい、それゆえ、これらの2つの集合の間に重複する集合が存在する。
本明細書で使用される用語「ネットワークの関係」とは、ネットワークの要素の関係をいう。このような関係は、一方の要素が他方の要素に及ぼす影響の方向を示す矢印によって、要素のマップにおいて表され得る。
本明細書で使用される用語「並行」は、2つのパラメータの関係に関して使用される場合、2つのパラメータがネットワーク内の異なるパスウェイに位置する状態をいう。
本明細書で使用される用語「下流」は、2つのパラメータの関係に関して使用される場合、2つのパラメータのうちの一方が、パスウェイまたはネットワークにおいて、他方の下流に位置する状態をいう。
本明細書で使用される用語「上流」は、2つのパラメータの関係に関して使用される場合、2つのパラメータのうちの一方が、パスウェイまたはネットワークにおいて、他方の上流に位置する状態をいう。
本明細書で使用される用語「共通の」とは、2つのパラメータが、生物学的実体の機能または他の任意のパラメータに関して同一の関係にある状態をいう。
本明細書で使用される句「等しく標的化する」とは、分布している摂動因子の状態をいい、これらの導入される摂動因子は、目的の標的に対して実質的に同一の影響を有する。本発明において、生物学的実体(例えば、細胞)のネットワーク構造を変更するために、2種類以上の摂動因子を使用するが、このような等しく標的化する摂動因子を使用することが好ましい。
本明細書で使用される用語「閾値」とは、機能が活性化されるか、または抑制されるかを評価するための特異的な値をいう。このような閾値は、実験的、経験的または理論的に決められ得る。閾値は、特定の場合のために任意に選択され得る。
(生物学)
本明細書で使用される用語「生物学的実体」とは、生物学的に生存している、あらゆる実体をいう。このような生物学的実体の例としては、生存している生物、器官、組織、細胞、微生物(例えば、細菌およびウイルスなど)が挙げられる。
本明細書において使用される「細胞」は、当該分野において用いられる最も広義の意味と同様に定義され、多細胞生物の組織の構成単位であって、外界を隔離する膜構造に包まれ、内部に自己再生能を備え、遺伝情報およびその発現機構を有する生命体をいう。本明細書において使用される細胞は、天然に存在する細胞であっても、人工的に改変された細胞(例えば、融合細胞、遺伝子改変細胞)であってもよい。細胞の供給源としては、例えば、単一の細胞培養物であり得、あるいは、正常に成長したトランスジェニック動物の胚、血液、または体組織、または正常に成長した細胞株由来の細胞のような細胞混合物が挙げられるがそれらに限定されない。
本発明で用いられる細胞は、どの生物由来の細胞(たとえば、任意の種類の単細胞生物(例えば、細菌、酵母)または多細胞生物(例えば、動物(たとえば、脊椎動物、無脊椎動物)、植物(たとえば、単子葉植物、双子葉植物など)など))でもよい。例えば、脊椎動物(たとえば、メクラウナギ類、ヤツメウナギ類、軟骨魚類、硬骨魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物など)由来の細胞が用いられ、より詳細には、哺乳動物(例えば、単孔類、有袋類、貧歯類、皮翼類、翼手類、食肉類、食虫類、長鼻類、奇蹄類、偶蹄類、管歯類、有鱗類、海牛類、クジラ目、霊長類、齧歯類、ウサギ目など)由来の細胞が用いられる。1つの実施形態では、霊長類(たとえば、チンパンジー、ニホンザル、ヒト)由来の細胞、特にヒト由来の細胞が用いられるがそれに限定されない。本発明において用いられる細胞は、上記細胞は、幹細胞であってもよく体細胞であってもよい。また、そのような細胞は、付着細胞、浮遊細胞、組織形成細胞およびそれらの混合物などであり得る。そのような細胞は、移植目的に使用されるものであってもよい。
本発明により、あらゆる器官が標的化され得る。本発明により標的化される生物学的実体(例えば、組織または細胞)は、どの器官に由来してもよい。本明細書で使用される用語「器官」とは、生物個体のある機能が個体内の特定の部分に局在して営まれ,かつその部分が形態的に独立した構造体をいう。多細胞生物(例えば、動物、植物)では器官は特定の空間的配置をもついくつかの組織からなり、組織は多数の細胞からなる。そのような器官の例としては、血管系に関連する器官が挙げられる。1つの実施形態では、本発明により標的化される器官としては、皮膚、血管、角膜、腎臓、心臓、肝臓、臍帯、腸、神経、肺、胎盤、膵臓、脳、四肢末梢、網膜などが挙げられるがそれらに限定されない。多能性細胞から分化した細胞の例としては、表皮細胞、膵実質細胞、膵管細胞、肝細胞、血液細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、骨芽細胞、骨格筋芽細胞、神経細胞、血管内皮細胞、色素細胞、平滑筋細胞、脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において使用される用語「組織」(tissue)とは、多細胞生物において、実質的に同一の機能および/または形態をもつ細胞集団をいう。通常「組織」は、同じ起源を有するが、異なる起源を持つ細胞集団であっても、同一の機能および/または形態を有するのであれば、組織と呼ばれ得る。従って、本明細書で使用され得る組織は、2以上の異なる起源を有する細胞集団からなり得る。通常、組織は、器官の一部を構成する。動物の組織は,形態的、機能的または発生的根拠に基づき、上皮組織、結合組織、筋肉組織、神経組織などに区別される。植物では、組織を構成する細胞の発達段階によって分裂組織と永久組織とに大別され、また構成細胞の種類によって単一組織と複合組織とに分けるなど、いろいろな分類が行われている。
本明細書において「単離された」とは、通常の環境において天然に付随する物質が少なくとも低減されていること、好ましくは実質的に含まないことをいう。本明細書で使用される、単離された生物学的実体は、本発明により標的化され得、従って、単離された細胞とは、天然の環境において付随する他の物質(たとえば、他の細胞、タンパク質、核酸分子など)を実質的に含まない細胞をいう。核酸分子またはポリペプチドについていう場合、「単離された」とは、たとえば、組換えDNA技術により作製された場合には細胞物質または培養培地を実質的に含まず、化学合成された場合には前駆体化学物質またはその他の化学物質を実質的に含まない、核酸分子またはポリペプチドを指す。単離された核酸分子は、好ましくは、その核酸分子が由来する生物において天然に該核酸分子に隣接している(flanking)配列(即ち、該核酸の5’末端および3’末端に位置する配列)を含まない。好ましくは、単離された細胞が、本発明の解析のために使用される。
本明細書において、「樹立された」細胞とは、特定の性質(例えば、多分化能)を維持し、かつ、細胞が培養条件下で安定に増殖し続けるようになった状態をいう。本発明において、このような樹立された細胞が使用され得る。
本明細書で使用される用語「状態(state)」とは、細胞のような生物学的実体の種々のパラメータ(例えば、細胞周期、外来因子に対する応答、シグナル伝達、遺伝子発現、遺伝子の転写など)に関する状況をさす。そのような状態としては、例えば、分化状態、未分化状態、外来因子に対する細胞応答、細胞周期、増殖状態などが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書で使用される用語「遺伝子状態」とは、遺伝子に関連するあらゆる状態(例えば、発現状態、転写状態など)をいう。
本明細書において、「分化」または「細胞分化」とは、1個の細胞の分裂によって由来した娘細胞集団の中で形態的および/または機能的に質的な差をもった二つ以上のタイプの細胞が生じてくる現象をいう。従って、元来特別な特徴を検出できない細胞に由来する細胞集団(細胞系譜)が、特定のタンパク質の産生などはっきりした特徴を示すに至る過程も分化に包含される。現在では細胞分化を,ゲノム中の特定の遺伝子群が発現した状態と考えることが一般的であり、このような遺伝子発現状態をもたらす細胞内あるいは細胞外の因子または条件を探索することにより細胞分化を同定することができる。細胞分化の結果は原則として安定であって、特に動物細胞では,別のタイプの細胞に分化することは例外的にしか起こらない。
本明細書において「多能性」とは、細胞の性質をいい、1以上、好ましくは2以上の種々の組織または臓器に分化し得る能力をいう。従って、「多能性」および「未分化」は、本明細書においては特に言及しない限り互換可能に用いられる。通常、細胞の多能性は発生の間、制限され、成体では一つの組織または器官の構成細胞が別のものの細胞に変化することは少ない。従って多能性は通常失われている。とくに上皮性の細胞は他の上皮性細胞に変化しにくい。これが起きる場合通常病的な状態であり、化生(metaplasia)と呼ばれる。しかし間葉系細胞では比較的単純な刺激で他の間葉性細胞にかわり化生を起こしやすいので多能性の程度は高い。胚性幹細胞は、多能性を有する。組織幹細胞は、多能性を有する。本明細書において、多能性のうち、受精卵のように生体を構成する全ての種類の細胞に分化する能力は全能性といい、多能性は全能性の概念を包含し得る。ある細胞が多能性を有するかどうかは、たとえば、分化誘導条件下での、胚様体(Embryoid Body)の形成および分化が挙げられるがそれらに限定されない。また、生体を用いた多能性の有無についてのアッセイ法としては、免疫不全マウスへの移植による奇形種(テラトーマ)の形成、胚盤胞への注入によるキメラ胚の形成、器官の組織への細胞の移植(例えば、腹水への細胞の注入)による増殖等が挙げられるがそれらに限定されない。本明細書において、多能性のうち、受精卵のように生体を構成する全ての種類の細胞に分化する能力は「全能性」といい、多能性は全能性の概念を包含し得る。また、1つの方向にのみ分化する能力は、単能性ともいう。
本明細書において、「遺伝子」とは、遺伝形質を規定する因子をいい、これは、生物学的実体の生物学的機能である。遺伝子は、通常染色体または染色体外因子上に一定の順序に配列している。タンパク質の一次構造を規定するものを構造遺伝子といい、その発現を左右するものを調節遺伝子(たとえば、プロモーター)という。本明細書では、遺伝子は、特に言及しない限り、構造遺伝子および調節遺伝子を包含する。したがって、例えば、用語「サイクリン遺伝子」は、通常、サイクリンの構造遺伝子およびサイクリンのプロモーターの両方を包含する。本明細書では、「遺伝子」は、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」および「核酸分子」ならびに/または「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」を指すことがある。本明細書においてはまた、「遺伝子産物」は、遺伝子によって発現された「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」および「核酸分子」ならびに/または「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」を包含する。当業者であれば、遺伝子産物が何たるかはその状況に応じて理解することができる。
本明細書において配列(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。本明細書において、配列(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「類似性」とは、上記相同性において、保存的置換をポジティブ(同一)とみなした場合の、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、保存的置換がある場合は、その保存的置換の存在に応じて同一性と類似性とは異なる。また、保存的置換がない場合は、同一性と類似性とは同じ数値を示す。このような相同な遺伝子などは、ネットワークにおいて、適用可能であるならば同一の機能として使用されても、異なる摂動因子として使用されてもよい。
本明細書において使用される用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味を有し、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされたものを包含し得る。この用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)が挙げられる。この定義にはまた、例えば、アミノ酸の1または2以上のアナログを含むポリペプチド(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ペプトイド)および当該分野において公知の他の改変体が包含される。フィブロネクチンのような細胞外マトリクスタンパク質の遺伝子産物は、通常ポリペプチド形態をとる。本発明で使用されるポリペプチドは、例えば、それらのペプチドを産生する初代培養細胞またはその細胞株を培養し、続いて、培養上清からそれらのペプチドを分離または精製することによって生成され得る。あるいは、遺伝子操作技術を使用して、目的のポリペプチドをコードする遺伝子を適切な発現ベクターに組込み、このベクターにより発現宿主に形質転換し、この形質転換した細胞の培養上清から組換えポリペプチドを収集してもよい。上記の宿主細胞は、それらがペプチドの生理学的な活性を維持しながら、目的のポリペプチドを発現し得る限り、遺伝子操作技術において慣習的に使用される任意の宿主細胞(例えば、大腸菌、酵母、動物細胞など)であってもよい。このように取得された細胞から得られるポリペプチドは、それらが天然に存在するポリペプチドと実質的に同一な機能を有する限り、少なくとも1アミノ酸の置換、付加および/または欠失、あるいは、少なくとも1本の糖鎖の置換、付加および/または欠失を有し得る。
本明細書で使用される用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸分子」および「核酸」は、同一の意味を有し、任意の長さのヌクレオチドポリマーをいう。この用語はまた、「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」を含む。「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、例えば、2’−O−メチル−リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスホロアミデート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine−modified cytosine)で置換された誘導体オリゴヌクレオチド、DNA中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドなどが例示される。他にそうではないと示されなければ、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列と同様に、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換体)および相補配列を包含することが企図される。具体的には、縮重コドン置換体は、1またはそれ以上の選択された(または、すべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作成することにより達成され得る(Batzerら、Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605−2608(1985);Rossoliniら、Mol.Cell.Probes 8:91−98(1994))。フィブロネクチンのような細胞外マトリクスタンパク質などの遺伝子は、通常、このポリヌクレオチド形態をとる。また、トランスフェクションの対象となる分子もこのポリヌクレオチドである。
本明細書で使用される用語「対応する」は、機能レポーターと機能との間の関係に関して使用される場合、目的の機能レポーターに由来するシグナルが機能の状態を反映する状況をいう。したがって、機能に対応する機能レポーターのシグナルに基づいて、このような機能の状態を決定することができる。例えば、転写因子下に作動可能に連結された、蛍光タンパク質を発現する遺伝子は、その転写因子に対応する機能レポーターなどであると言われる。
本明細書において、用語「対応する」アミノ酸または核酸とは、それぞれあるポリペプチド分子またはポリヌクレオチド分子において、比較の基準となるポリペプチドまたはポリヌクレオチドにおける所定のアミノ酸と同様の作用を有するか、あるいは有することが予測されるアミノ酸または核酸をいい、特に酵素分子にあっては、活性部位中の同様の位置に存在し触媒活性に同様の寄与をするアミノ酸をいう。例えば、特定のポリヌクレオチドに対するアンチセンス分子の場合であれば、この用語は、そのアンチセンス分子の特定の部分に対応するオルソログにおける同様の部分をいう。
本明細書において、用語「対応する」遺伝子(例えば、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド分子)とは、ある種において、比較の基準となる種における所定の遺伝子と同様の作用を有するか、または有することが予測される遺伝子をいい、そのような作用を有する遺伝子が複数存在する場合、進化学的に同じ起源を有するものをいう。従って、ある遺伝子の対応する遺伝子は、その遺伝子のオルソログであり得る。したがって、マウスサイクリン遺伝子に対応する遺伝子は、他の動物においても見出すことができる。そのような対応する遺伝子は、当該分野において周知の技術を用いて同定することができる。したがって、例えば、ある動物における対応する遺伝子は、対応する遺伝子の基準となる遺伝子(例えば、マウスサイクリン遺伝子など)の配列をクエリ配列として用いてその動物(例えばヒト、ラット)の配列データベースを検索することによって見出すことができる。
本明細書において、「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここで具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。本明細書において、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの長さは、上述のようにそれぞれアミノ酸または核酸の個数で表すことができるが、上述の個数は絶対的なものではなく、同じ機能を有する限り、上限または下限としての上述の個数は、その個数の上下数個(または例えば±10%)のものも含むことが意図される。そのような意図を表現するために、本明細書では、個数の前に「約」を付けて表現することがある。しかし、本明細書では、「約」の有無はその数値の解釈に影響を与えないことが理解されるべきである。
本明細書において「生物学的活性」とは、ある因子(例えば、ポリヌクレオチドまたはタンパク質など)が、生体内において有し得る活性のことをいい、種々の機能(例えば、転写促進活性)を発揮する活性が包含される。例えば、ある因子が酵素である場合、その生物学的活性は、その酵素活性を包含する。別の例では、ある因子がリガンドである場合、そのリガンドが対応するレセプターへの結合を包含する。上記の生物学的活性は、当該分野において周知の技術によって測定することができる。
本明細書において、「検索」とは、電子的または生物学的あるいは他の方法により、ある核酸塩基配列を利用して、特定の機能および/または性質を有する他の核酸塩基配列を見出すことをいう。電子的な検索としては、BLAST(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403−410(1990))、FASTA(Pearson & Lipman, Proc.Natl.Acad.Sci., USA 85:2444−2448(1988))、Smith and Waterman法(Smith and Waterman,J.Mol.Biol.147:195−197(1981))、およびNeedleman and Wunsch法(Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:443−453(1970))などが挙げられるがそれらに限定されない。生物学的な検索としては、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下での、ゲノムDNAをナイロンメンブレン等に貼り付けたマクロアレイまたはガラス板に貼り付けたマイクロアレイ(マイクロアレイアッセイ)、PCRおよび in situハイブリダイゼーションなどが挙げられるがそれらに限定されない。このような検索は、本発明の方法またはシステムを使用して実行され得る。
本明細書において「プローブ」とは、インビトロおよび/またはインビボのスクリーニングなどの生物学的実験において用いられる、検索の対象となる物質をいい、例えば、特定の塩基配列を含む核酸分子または特定のアミノ酸配列を含むペプチドなどが挙げられるがそれらに限定されない。
通常プローブとして用いられる核酸分子としては、目的とする遺伝子の核酸配列と相同または相補的な、少なくとも8ヌクレオチド連続する長さの核酸配列を有するものが挙げられる。そのような核酸配列は、好ましくは、少なくとも9ヌクレオチド連続する長さの、より好ましく少なくとも10ヌクレオチド連続する長さの、さらに好ましくは少なくとも11ヌクレオチド連続する長さの、少なくとも12ヌクレオチド連続する長さの、少なくとも13ヌクレオチド連続する長さの、少なくとも14ヌクレオチド連続する長さの、少なくとも15ヌクレオチド連続する長さの、少なくとも20ヌクレオチド連続する長さの、少なくとも25ヌクレオチド連続する長さの、少なくとも30ヌクレオチド連続する長さの、少なくとも40ヌクレオチド連続する長さの、少なくとも50ヌクレオチド連続する長さの、核酸配列であり得る。プローブとして使用される核酸配列には、上述の配列に対して、少なくとも70%相同な、より好ましくは、少なくとも80%相同な、さらに好ましくは、少なくとも90%相同な、少なくとも95%相同な核酸配列が含まれる。
本明細書における「プライマー」とは、高分子合成酵素反応において、合成される高分子化合物の反応の開始に必要な物質をいう。核酸分子の合成反応では、合成されるべき高分子化合物の一部の配列に相補的な核酸分子(例えば、DNAまたはRNAなど)が用いられ得る。
通常プライマーとして用いられる核酸分子としては、目的とする遺伝子の核酸配列と相補的な、少なくとも8ヌクレオチド連続する長さの核酸配列を有するものが挙げられる。そのような核酸配列は、好ましくは、少なくとも9ヌクレオチド連続する長さの、より好ましく少なくとも10ヌクレオチド連続する長さの、さらに好ましくは少なくとも11ヌクレオチド連続する長さの、少なくとも12ヌクレオチド連続する長さの、少なくとも13ヌクレオチド連続する長さの、少なくとも14ヌクレオチド連続する長さの、少なくとも15ヌクレオチド連続する長さの、少なくとも16ヌクレオチド連続する長さの、少なくとも17ヌクレオチド連続する長さの、少なくとも18ヌクレオチド連続する長さの、19ヌクレオチド連続する長さの、少なくとも20ヌクレオチド連続する長さの、少なくとも25ヌクレオチド連続する長さの、少なくとも30ヌクレオチド連続する長さの、少なくとも40ヌクレオチド連続する長さの、少なくとも50ヌクレオチド連続する長さの、核酸配列であり得る。プローブとして使用される核酸配列には、上述の配列に対して、少なくとも70%相同な、より好ましくは、少なくとも80%相同な、さらに好ましくは、少なくとも90%相同な、少なくとも95%相同な核酸配列が含まれる。プライマーとして適切な配列は、合成(増幅)が意図される配列の性質によって変動し得るが、当業者は、意図される配列に応じて適宜プライマーを設計することができる。そのようなプライマーの設計は当該分野において周知であり、手動でおこなってもよくコンピュータプログラム(例えば、LASERGENE,PrimerSelect,DNAStar)を用いて行ってもよい。
本明細書において、「エピトープ」とは、抗原決定基をいう。従って、エピトープには、特定の免疫グロブリンによる認識に関与するアミノ酸残基のセット、または、T細胞の場合は、T細胞レセプタータンパク質および/もしくは主要組織適合性複合体(MHC)レセプターによる認識について必要であるアミノ酸残基のセットが包含される。この用語はまた、「抗原決定基」または「抗原決定部位」と交換可能に使用される。免疫系分野において、インビボまたはインビトロで、エピトープは、分子の特徴(例えば、一次ペプチド構造、二次ペプチド構造または三次ペプチド構造および電荷)であり、免疫グロブリン、T細胞レセプターまたはHLA分子によって認識される部位を形成する。ペプチドを含むエピトープは、エピトープに独特な空間的コンフォメーション中に3つ以上のアミノ酸を含み得る。一般に、エピトープは、少なくとも5つのこのようなアミノ酸からなり、代表的には少なくとも6つ、7つ、8つ、9つ、または10のこのようなアミノ酸からなる。エピトープの長さは、より長いほど、もとのペプチドの抗原性に類似することから一般的に好ましいが、コンフォメーションを考慮すると、必ずしもそうでないことがある。アミノ酸の空間的コンフォメーションを決定する方法は、当該分野で公知であり、例えば、X線結晶学、および2次元核磁気共鳴分光法を含む。さらに、所定のタンパク質におけるエピトープの同定は、当該分野で周知の技術を使用して容易に達成される。例えば、Geysenら(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:3998(所定の抗原における免疫原性エピトープの位置を決定するために迅速にペプチドを合成する一般的な方法);米国特許第4,708,871号(抗原のエピトープを同定し、そして化学的に合成するための手順);およびGeysenら(1986)Molecular Immunology 23:709(所定の抗体に対して高い親和性を有するペプチドを同定するための技術)を参照されたい。同じエピトープを認識する抗体は、単純な免疫アッセイにおいて同定され得る。このように、ペプチドを含むエピトープを決定する方法は、当該分野において周知であり、そのようなエピトープは、核酸またはアミノ酸の一次配列が提供されると、当業者はそのような周知慣用技術を用いて決定することができる。
従って、ペプチドを含むエピトープとして使用するためには、少なくとも3アミノ酸の長さの配列が必要であり、好ましくは、この配列は、少なくとも4アミノ酸、より好ましくは少なくとも5アミノ酸、少なくとも6アミノ酸、少なくとも7アミノ酸、少なくとも8アミノ酸、少なくとも9アミノ酸、少なくとも10アミノ酸、少なくとも15アミノ酸、少なくとも20アミノ酸、少なくとも25アミノ酸の長さの配列が必要であり得る。エピトープは、直鎖的であっても高次構造的であってもよい。
本明細書において使用される用語「生体分子」とは、生物および生物の集合体に関する分子または分子の集合体に関連する分子をいう。本明細書で使用される用語「生体」または「生物」とは、生物学的な有機体をいい、動物、植物、真菌、ウイルスなどを含むがそれらに限定されない。本発明を通して、生体分子は、生物およびその集合体から抽出される分子を包含するが、それに限定されず、生物およびその集合体に関連する分子または分子の集合体であれば生体分子の定義に入る。したがって、医薬品として利用され得る低分子量分子(たとえば、低分子量リガンドなど)もまた生物への効果が意図され得るかぎり、生体分子の定義に入る。そのような生体分子の例としては、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカライド、オリゴサッカライド、脂質、低分子量分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、低分子量の有機分子など)、これらの複合分子(糖脂質、糖タンパク質、リポタンパク質など)およびこれらの集合体などが挙げられるがそれらに限定されない。生体分子にはまた、細胞への導入が企図される限り、細胞自体、組織の一部も包含され得る。通常、生体分子は、核酸、タンパク質、脂質、糖、プロテオリピッド、リポプロテイン、糖タンパク質およびプロテオグリカンなどであり得る。好ましくは、生体分子は、核酸(DNAまたはRNA)またはタンパク質を含む。一実施形態では、生体分子は、核酸(例えば、ゲノムDNAまたはcDNA、あるいはPCRなどによって合成されたDNA)である。他の実施形態では、生体分子はタンパク質であり得る。好ましくは、そのような生体分子は、ホルモンまたはサイトカインであり得る。
本明細書において使用される「サイトカイン」は、当該分野において用いられる最も広義の意味と同様に定義され、細胞から産生され同じ細胞または異なる細胞に作用する生理活性物質をいう。サイトカインは、一般にタンパク質またはポリペプチドであり、免疫応答の制御作用、内分泌系の調節、神経系の調節、抗腫瘍作用、抗ウイルス作用、細胞増殖の調節作用、細胞分化の調節作用などを有する。本明細書では、サイトカインはタンパク質形態または核酸形態あるいは他の形態であり得るが、実際に作用する時点においては、サイトカインは通常はタンパク質である。本明細書において用いられる「増殖因子」とは、細胞の増殖を促進または制御する物質をいう。増殖因子は、「成長因子」または「発育因子」ともいわれる。増殖因子は、細胞培養または組織培養において、培地に添加されて血清高分子物質の作用を代替し得る。多くの増殖因子は、細胞の増殖以外に、分化状態の制御因子としても機能することが判明している。サイトカインには、代表的には、インターロイキン類、ケモカイン類、コロニー刺激因子のような造血因子、腫瘍壊死因子、インターフェロン類が含まれる。増殖因子としては、代表的には、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、肝実質細胞増殖因子(HGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、カルディオトロフィン(cardiotrophin)のような増殖活性を有するものが挙げられる。
本明細書において使用される「ホルモン」とは、当該分野において通常用いられる最も広い意味と同じ意味で用いられ、動植物の特定の器官または細胞で作られ,産出される部位からは隔たった器官にその特異的な生理作用をあらわす生理的有機化合物をいう。そのようなホルモンとしては、成長ホルモン、性ホルモン、甲状腺ホルモンなどが挙げられるがそれらに限定されない。そのようなホルモンは、一部、上記サイトカインとそのさす範囲が重複し得る。
本明細書において「細胞接着因子」もしくは「細胞接着分子」(cell adhesion molecule)または「接着因子」もしくは「接着分子」とは、互換可能に使用され、2つ以上の細胞の互いの結合(細胞接着)または基質と細胞との間の接着を媒介し得る分子をいう。細胞接着因子(例えば、フィブロネクチン)は、本発明で使用されるトランスフェクションアレイのために使用され得る。一般には、細胞接着因子は、以下の2つの群に分類される:細胞と細胞の接着(細胞間接着)に関する分子(cell−cell adhesion molecule)および細胞と細胞外マトリクスとの接着(細胞−基質接着)に関与する分子(cell−substrate adhesion molecule)。本発明の方法では、いずれの分子も有用であり、有効に使用することができる。従って、本明細書において細胞接着分子は、細胞−基質接着に関与する、基質タンパク質と細胞タンパク質(例えば、インテグリンなど)とを包含する。タンパク質以外の分子であっても、細胞接着を媒介する限り、細胞接着分子の概念に入り得る。
細胞間接着に関しては、カドヘリン、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する多くの分子(NCAM、L1、ICAM、ファシクリンII、IIIなど)、セレクチンなどが知られており、それぞれ特異的な分子反応を介して細胞膜に結合することも知られている。
他方、細胞−基質接着のために働く主要な細胞接着分子はインテグリンで,細胞外マトリックスに含まれる種々のタンパク質を認識し結合する。これらの細胞接着分子はすべて細胞膜表面にあり,一種のレセプター(細胞接着受容体)とみなすこともできる。従って、細胞膜にあるこのようなレセプターもまた本発明の方法において使用することができる。そのようなレセプターとしては、例えば、αインテグリン、βインテグリン、CD44,シンデカンおよびアグリカンなどが挙げられるがそれらに限定されない。細胞接着に関する技術は、上述のもののほかの知見も周知であり、例えば、細胞外マトリックス−臨床への応用− メディカルレビュー社に記載されている。
ある分子が細胞接着分子であるかどうかは、生化学的定量(SDS−PAGE法、標識コラーゲン法など)、免疫学的定量(酵素抗体法、蛍光抗体法、免疫組織学的研究)、PDR法、ハイブリダイゼーション法などのようなアッセイにおいて陽性となることを決定することにより判定することができる。このような細胞接着分子としては、コラーゲン、インテグリン、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、フィブリノゲン、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバー(例えば、CD2、CD4、CD8、ICM1、ICAM2、VCAM1)、セレクチン、カドヘリンなどが挙げられるがそれらに限定されない。このような細胞接着分子の多くは、細胞への接着と同時に細胞間相互作用による細胞活性化の補助シグナルを細胞内に伝達する。そのような補助シグナルを細胞内に伝達することができるか否かは、生化学的定量(SDS−PAGE法、標識コラーゲン法など)、免疫学的定量(酵素抗体法、蛍光抗体法、免疫組織学的検討)、PCR法、ハイブリダイゼーション法というアッセイにおいて陽性となることを決定することにより判定することができる。
細胞接着分子としては、例えば、免疫グロブリンスーパーファミリー分子(LFA−3、ICAM−1、CD2、CD4、CD8、ICAM1、ICAM2、VCAM1など);インテグリンファミリー分子(LFA−1、Mac−1、gpIIbIIIa、p150、p95、VLA1、VLA2、VLA3、VLA4、VLA5、VLA6など);セレクチンファミリー分子(L−セレクチン,E−セレクチン,P−セレクチンなど)などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「細胞外マトリクスタンパク質」とは、「細胞外マトリクス」を構成するタンパク質をいう。本明細書において「細胞外マトリクス」(ECM)とは「細胞外基質」とも呼ばれ、当該分野において通常用いられる意味と同様の意味で用いられ、上皮細胞、非上皮細胞を問わず体細胞(somatic cell)の間に存在する物質をいう。細胞外マトリクスは、組織の支持だけでなく、すべての体細胞の生存に必要な内部環境の構造体に関与する。細胞外マトリクスは一般に、結合組織細胞から産生されるが、一部は上皮細胞や内皮細胞のような基底膜を保有する細胞からも分泌される。細胞外マトリクスは、線維成分とその間を満たす基質とに大別され、線維成分としては膠原線維および弾性線維がある。基質の基本構成成分はグリコサミノグリカン(酸性ムコ多糖)であり、その大部分は非コラーゲン性タンパクと結合してプロテオグリカン(酸性ムコ多糖−タンパク複合体)の高分子を形成する。このほかに、基底膜のラミニン、弾性線維周囲のミクロフィブリル(microfibril)、線維、細胞表面のフィブロネクチンなどの糖タンパクも基質に含まれる。特殊に分化した組織でも基本構造は同一で、例えば硝子軟骨では軟骨芽細胞によって特徴的に大量のプロテオグリカンを含む軟骨基質が産生され、骨では骨芽細胞によって石灰沈着が起こる骨基質が産生される。従って、本発明において用いられる細胞外マトリクスとしては、例えば、コラーゲン、エラスチン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、弾性繊維、膠原繊維などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「レセプター」とは、細胞上または核内などに存在し、外界からの因子または細胞内の因子に対する結合能を有し、その結合によりシグナルが伝達される分子をいう。レセプターは通常タンパク質の形態をとる。レセプターの結合パートナーは、通常リガンドという。
本明細書において「アゴニスト」とは、ある生体作用物質(リガンド)のレセプターに結合し、その物質のもつ作用と同じ(あるいは類似の)作用を有する因子をいう。
本明細書において「アンタゴニスト」とは、ある生体作用物質(リガンド)のレセプターへの結合に拮抗的に働き、それ自身はそのレセプターを介した生理作用を現わさない因子をいう。拮抗薬、遮断剤(ブロッカー)、阻害剤(インヒビター)などもこのアンタゴニストに包含される。
本明細書において「因子」(agent)としては、意図する目的を達成することができる限りどのような物質または他の実体(例えば、光、放射、熱、電気などのエネルギー)でもあってもよい。そのような物質としては、例えば、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、低分子量の有機分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、低分子量の分子(例えば、薬学的に受容可能な低分子量のリガンドなど)など)、これら分子の組み合わせが挙げられるがそれらに限定されない。ポリヌクレオチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリヌクレオチドの配列に対して一定の配列相同性を(例えば、70%以上の配列同一性)もって相補性を有するポリヌクレオチド、プロモーター領域に結合する転写因子のようなポリペプチドなどが挙げられるがそれらに限定されない。ポリペプチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリペプチドに対して特異的に指向された抗体またはその誘導体あるいはその類似物(例えば、単鎖抗体)、そのポリペプチドがレセプターまたはリガンドである場合の特異的なリガンドまたはレセプター、そのポリペプチドが酵素である場合、その基質などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において特定の因子(例えば、核酸分子またはポリペプチド)に「特異的に結合する因子」とは、その核酸分子またはポリペプチドに対するその因子の結合レベルが、その核酸分子またはポリペプチド以外の核酸分子またはポリペプチドに対するその因子の結合レベルと同じかまたはそれよりも高い因子をいう。そのような因子としては、例えば、対象が核酸分子の場合、対象となる核酸分子に対して相補的な配列を有する核酸分子、対象となる核酸配列に対して結合するポリペプチド(例えば、転写因子など)などが挙げられ、対象がポリペプチドの場合、抗体、単鎖抗体、レセプター−リガンドの対のいずれか一方、酵素−基質のいずれか一方などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書で使用される用語「化合物」とは、同定可能な、あらゆる化学物質または化学分子をいい、これらとしては、低分子量の分子、ペプチド、タンパク質、糖、ヌクレオチドまたは核酸が挙げられるが、これらに限定されない。このような化合物は、天然に存在する産物であっても、合成産物であってもよい。
本明細書で使用される用語「低分子量の有機分子」とは、比較的小さな分子量を有する有機分子をいう。通常、低分子量の有機分子とは、約1,000以下の分子量の分子をいっても、1,000より大きな分子量の分子をいってもよい。低分子量の有機分子は、当該分野で公知の方法またはその組み合わせにより、通常合成できる。これらの低分子量の有機分子は生物により生成され得る。低分子量の有機分子の例としては、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、薬学的に受容可能な低分子量の分子(例えば、低分子量のリガンドなど)などが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用される用語「接触」とは、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドへ物理的に近接した、化合物の直接的な配置または間接的な配置をいう。ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、数多くの緩衝液、塩および溶液などの中に存在し得る。用語「接触」としては、核酸またはそのフラグメントによりコードされるポリペプチドを含む、ビーカー、マイクロタイタープレート、細胞培養フラスコまたはマイクロアレイ(例えば、DNAチップ)などの中に化合物を配置することが挙げられる。
本明細書において用いられる用語「抗体」とは、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、多重特異性抗体、キメラ抗体、および抗イディオタイプ抗体、ならびにそれらの断片、例えばF(ab’)2およびFab断片、ならびにその他の組換えにより生産された結合体を含む。さらにこのような抗体を、酵素、例えばアルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、αガラクトシダーゼなどに共有結合させても、組換えにより融合させてよい。抗体は、本発明において摂動因子として使用され得る。
本明細書において「抗原」とは、抗体分子によって特異的に結合され得る任意の基質をいう。本明細書において「免疫原」とは、抗原特異的免疫応答を生じるリンパ球活性化を開始し得る抗原をいう。抗原は、本発明において摂動因子として使用され得る。
あるタンパク質分子において、所定のアミノ酸は、相互作用結合能力の明らかな低下または消失なしに、例えば、カチオン性領域または基質分子の結合部位のような構造的に重要な領域において、別のアミノ酸に置換され得る。あるタンパク質の生物学的機能を規定するのは、タンパク質の相互作用能力または他の性質である。従って、特定のアミノ酸の置換がアミノ酸配列において、またはそのDNA配列のレベルにおいて行われ得、置換後もなお、もとの性質を維持するタンパク質が生じ得る。従って、生物学的活性の明らかな損失なしに、種々の改変が、本明細書において開示されたペプチドまたはこのペプチドをコードするDNAにおいて行われ得る。
上記のような改変を設計する際に、アミノ酸の疎水性指数が考慮され得る。タンパク質における相互作用的な生物学的機能を与える際の疎水性アミノ酸指数の重要性は、一般に当該分野で認められている(Kyte.JおよびDoolittle,R.F.J.Mol.Biol.157(1):105−132,1982)。アミノ酸の疎水的性質は、生成したタンパク質の二次構造に寄与し、次いでそのタンパク質と他の分子(例えば、酵素、基質、レセプター、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を規定する。各アミノ酸は、それらの疎水性および電荷の性質に基づく疎水性指数を割り当てられる。それらは:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);スレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン(−4.5))である。
あるアミノ酸を、同様の疎水性指数を有する他のアミノ酸により置換して、そして依然として同様の生物学的機能を有するタンパク質(例えば、酵素活性において等価なタンパク質)を生じさせ得ることが当該分野で周知である。このようなアミノ酸置換において、疎水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。疎水性に基づくこのようなアミノ酸の置換は効率的であることが当該分野において理解される。米国特許第4,554,101号に記載されるように、以下の親水性指数がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);およびトリプトファン(−3.4)。アミノ酸が、同様の親水性指数を有しかつ依然として生物学的等価体を与え得る別のアミノ酸に置換され得ることが理解される。このようなアミノ酸置換において、親水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。
(デバイスおよび固相支持体)
本明細書において「デバイス」とは、装置の一部または全部を構成することができる部分をいい、支持体(好ましくは固相支持体)およびその支持体に担持されるべき標的物質などから構成される。そのようなデバイスとしては、チップ、アレイ、マイクロタイタープレート、細胞培養プレート、シャーレ、フィルム、ビーズなどが挙げられるがそれらに限定されない。このようなデバイスは、本発明のシステムを構成し得る。特に、このようなデバイスは、上記の生物学的実体内の、生物学的機能を反映する少なくとも2種類の機能レポーターについての情報を得るための手段として使用され得る。
本明細書において使用される「支持体」は、生体分子のような物質を固定することができる材料(material)をいう。このような支持体は、共有結合または非共有結合を介して、本明細書で使用される生体分子に結合する能力を有するかまたはそのような能力を有するように誘導され得る、任意の固体材料から作製され得る。
支持体として使用するためのそのような材料としては、固体表面を形成し得る任意の材料が使用され得るが、例えば、ガラス、シリカ、シリコン、セラミック、二酸化珪素、プラスチック、金属(合金も含まれる)、天然および合成のポリマー(例えば、ポリスチレン、セルロース、キトサン、デキストラン、およびナイロン)などが挙げられるがそれらに限定されない。支持体は、複数の材料の層から形成されていてもよい。例えば、ガラス、石英ガラス、アルミナ、サファイア、フォルステライト、酸化珪素、炭化珪素、窒化珪素などの無機絶縁材料を使用することができる。ポリエチレン、エチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、シリコーン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホンなどの有機材料を用いることができる。本発明においてはまた、ニトロセルロース膜、ナイロン膜、PVDF膜など、ブロッティングに使用される膜を用いることもできる。支持体を構成する材料が固相である場合、本明細書において特に「固相支持体」という。本明細書において固相支持体は、プレート、マイクロウェルプレート、チップ、スライドグラス、フィルム、ビーズ、金属(表面)などの形態をとり得る。支持体はコーティングされていてもよく、コーティングされていなくてもよい。
本明細書において「液相」とは、当業者に通常理解される意味と同じ意味を有し、通常、溶液中での状態をいう。
本明細書において「固相」とは、当業者に通常理解される意味と同じ意味を有し、通常、固体の状態をいう。本明細書において液体および固体を総合して「流体」ということがある。
本明細書において使用される「基板」とは、本発明のチップまたはアレイが構築される材料(好ましくは固体)をいう。したがって、基板はプレートの概念に包含される。基板の材料としては、共有結合または非共有結合を介して、本明細書で使用される生体分子に結合する能力を有するかまたはそのような能力を有するように誘導され得る、任意の固体材料が挙げられる。
プレートおよび基板として使用するためのそのような材料としては、固体表面を形成し得る任意の材料が使用され得るが、例えば、ガラス、シリカ、シリコン、セラミック、二酸化珪素、プラスチック、金属(合金も含まれる)、天然および合成のポリマー(例えば、ポリスチレン、セルロース、キトサン、デキストラン、およびナイロン)が挙げられるがそれらに限定されない。基板は、複数の異なる材料の層から形成されていてもよい。例えば、ガラス、石英ガラス、アルミナ、サファイア、フォルステライト、炭化珪素、酸化珪素、窒化珪素などの無機絶縁材料を使用できる。また、ポリエチレン、エチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、シリコーン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン等の有機材料を用いることができる。基板として好ましい材質は、測定機器などの種々のパラメータによって変動し、当業者は、上述のような種々の材料から適切なものを適宜選択することができる。トランスフェクションアレイのためには、スライドグラスが好ましい。好ましくは、そのような基材は、コーティングされ得る。
本明細書において「コーティング」とは、固相支持体または基板について用いられるとき、その固相支持体または基板の表面上にある物質の膜を形成させることおよびそのような膜をいう。コーティングは種々の目的で行われ、例えば、固相支持体および基板の品質向上(例えば、寿命の向上、耐酸性などの耐環境性の向上)、固相支持体または基板に結合されるべき物質の親和性の向上などを目的とすることが多い。そのようなコーティングのための物質としては、種々の物質が用いられ得、上述の固相支持体および基板自体に使用される物質のほか、DNA、RNA、タンパク質、脂質などの生体物質、ポリマー(例えば、ポリ−L−リジン、MAS(松浪硝子、岸和田、日本から入手可能)、疎水性フッ素樹脂)、シラン(APS(例えば、γ−アミノプロピルシラン))、金属(例えば、金など)が使用され得るがそれらに限定されない。そのような物質の選択は当業者の技術範囲内にあり、当該分野において周知の技術を用いて場合ごとに選択することができる。一つの好ましい実施形態では、そのようなコーティングは、ポリ−L−リジン、シラン、(例えば、エポキシシランまたはメルカプトシラン、APS(γ−アミノプロピルシラン))、MAS、疎水性フッ素樹脂、金のような金属を用いることが有利であり得る。このような物質は、細胞または細胞を含む物体(例えば、生物、器官など)に適合する物質を用いることが好ましい。
本明細書において「チップ」または「マイクロチップ」は、互換可能に用いられ、多様の機能をもち、システムの一部となる超小型集積回路をいう。チップとしては、例えば、DNAチップ、プロテインチップなどが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「アレイ」とは、少なくとも1種類(例えば、1000種類以上)の標的物質を含む組成物(例えば、DNA、タンパク質、トランスフェクト混合物)が整列されて配置されたパターンまたはパターンを有する基板(例えば、チップ)をいう。アレイの中で、小さな基板(例えば、10mm×10mmなど)上にパターン化されているものはマイクロアレイというが、本明細書では、マイクロアレイとアレイとは互換可能に使用される。従って、上述の基板より大きなものにパターン化されたものでもマイクロアレイと呼ぶことがある。例えば、アレイはそれ自身固相表面または膜に固定されている所望のトランスフェクト混合物のセットで構成される。アレイは好ましくは同一のまたは異なる抗体を少なくとも10個、より好ましくは少なくとも10個、およびさらに好ましくは少なくとも10個、さらにより好ましくは少なくとも10個を含む。これらの抗体は、好ましくは表面が125×80mm、より好ましくは10×10mm上に配置される。形式としては、96ウェルマイクロタイタープレート、384ウェルマイクロタイタープレートなどのマイクロタイタープレートの大きさのものから、スライドグラス程度の大きさのものが企図される。固定される標的物質を含む組成物は、1種類であっても複数種類であってもよい。そのような種類の数は、1個〜スポット数までの任意の数であり得る。例えば限定しないが、約10種類、約100種類、約500種類、約1000種類の標的物質を含む組成物が固定され得る。
本明細書で使用される用語「トランスフェクションアレイ」とは、アレイにおける各々のスポットまたはアドレス上でのトランスフェクションを具体化するアレイをいう。このようなトランスフェクションは、本明細書に記載される技術または実施例で例示される技術を使用して実行され得る。
固相表面または膜には、上述のように任意の数の標的物質(例えば、抗体のようなタンパク質)が提供され得るが、通常、基板1つあたり、10個の生体分子まで、他の実施形態において10個の生体分子まで、10個の生体分子まで、10個の生体分子まで、10個の生体分子まで、10個の生体分子まで、または10個の生体分子までの生体分子が配置され得るが、10個の生体分子を超える標的物質を含む組成物が配置されていてもよい。これらの場合において、基板の大きさはより小さいことが好ましい。特に、標的物質を含む組成物(例えば、抗体のようなタンパク質)のスポットの大きさは、単一の生体分子のサイズと同じ小ささであり得る(これは、1nm〜2nmのオーダーであり得る)。基板の最小限の面積は、いくつかの場合において基板上の生体分子の数によって決定される。本発明では、細胞への導入が企図される標的物質を含む組成物は、通常、0.01mm〜10mmのスポット状に共有結合あるいは物理的相互作用によって配列固定されている。
アレイ上には、生体分子の「スポット」が配置され得る。本明細書において「スポット」とは、標的物質を含む組成物の一定の集合をいう。本明細書において「スポッティング」とは、ある標的物質を含む組成物のスポットをある基板またはプレートに作製することをいう。スポッティングはどのような方法でも行うことができ、例えば、ピペッティングなどによって達成され得、あるいは自動装置で行うこともでき、そのような方法は当該分野において周知である。
本明細書において使用される用語「アドレス」とは、基板上のユニークな位置をいい、他のユニークな位置から弁別可能であり得るものをいう。アドレスは、そのアドレスを伴うスポットとの関連づけに適切であり、そしてすべての各々のアドレスにおける存在物が他のアドレスにおける存在物から識別され得る(例えば、光学的)、任意の形状を採り得る。アドレスを定める形は、例えば、円状、楕円状、正方形、長方形であり得るか、または不規則な形であり得る。したがって、「アドレス」は、抽象的な概念を示し、「スポット」は具体的な概念を示すために使用され得るが、両者を区別する必要がない場合、本明細書においては、「アドレス」と「スポット」とは互換的に使用され得る。
各々のアドレスを定めるサイズは、とりわけ、その基板の大きさ、特定の基板上のアドレスの数、標的物質を含む組成物の量および/または利用可能な試薬、微粒子のサイズおよびそのアレイが使用される任意の方法のために必要な解像度の程度に依存する。大きさは、例えば、1−2nmから数cmの範囲であり得るが、そのアレイの適用に一致した任意の大きさが可能である。
アドレスを定める空間配置および形状は、そのマイクロアレイが使用される特定の適用に適合するように設計される。アドレスは、密に配置され得、広汎に分散され得るか、または特定の型の解析物に適切な所望のパターンへとサブグループ化され得る。
マイクロアレイについては、ゲノム機能研究プロトコール(実験医学別冊 ポストゲノム時代の実験講座1)、ゲノム医科学とこれからのゲノム医療(実験医学増刊)などに広く概説されている。
マイクロアレイから得られるデータは膨大であることから、クローンとスポットとの対応の管理、データ解析などを行うためのデータ解析ソフトウェアが重要である。そのようなソフトウェアとしては、各種検出システムに付属のソフトウェアが利用可能である(Ermolaeva Oら(1998)Nat.Genet.20:19−23)。また、データベースのフォーマットとしては、例えば、Affymetrixが提唱しているGATC(genetic analysis technology consortium)と呼ばれる形式が挙げられる。
微細加工については、例えば、Campbell,S.A.(1996).The Science and Engineering of Microelectronic Fabrication,Oxford University Press;Zaut,P.V.(1996).Micromicroarray Fabrication:a Practical Guide to Semiconductor Processing,Semiconductor Services;Madou,M.J.(1997).Fundamentals of Microfabrication,CRC1 5 Press;Rai−Choudhury,P.(1997).Handbook of Microlithography,Micromachining,& Microfabrication:Microlithographyなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
(検出)
本発明の細胞解析または判定方法では、細胞またはそれに相互作用する物質に起因する情報を検出することができる限り、種々の検出方法および検出手段を用いることができる。そのような検出方法および検出手段としては、例えば、目視、光学顕微鏡、共焦点顕微鏡、蛍光顕微鏡、レーザー光源を用いた読取装置、表面プラズモン共鳴(SPR)イメージング、電気信号、化学的または生化学的マーカーのいずれかあるいは複数種を用いる方法および手段を挙げることができるがそれらに限定されない。そのような検出装置としてはまた、蛍光分析装置、分光光度計、シンチレーションカウンター、CCD、ルミノメーターなども挙げられるがそれらに限定されず、生体分子を検出することができる手段であればどのようなものでもよい。
本明細書において、「マーカー」または「バイオマーカー」とは互換可能に使用され、目的とする物質または状態についてレベルまたは頻度を反映する生物学的因子をいう。そのようなマーカーとしては、例えば、遺伝子をコードする核酸、遺伝子産物、代謝産物、レセプター、リガンド、抗体などが挙げられるがそれらに限定されない。
したがって、本明細書において細胞の状態に関連するマーカーとは、転写制御因子のほか、細胞の状態を示す細胞内因子(例えば、遺伝子をコードする核酸、遺伝子産物(例えば、mRNA、タンパク質、翻訳後修飾タンパク質)、代謝産物、レセプターなど)に対して相互作用する因子(例えば、リガンド、抗体など、相補的な核酸)などが挙げられるがそれらに限定されない。本発明において、このようなマーカーは、続いて解析される情報を生成するために使用され得る。そのようなマーカーは、好ましくは、目的とする因子に対して相互作用し得る。本明細書で、マーカーに関連して使用される用語「特異性」とは、他の類似の分子よりも目的の分子に対する相互作用の程度が有意に高いマーカーの性質をいう。本発明では、好ましくは、そのようなマーカーは、細胞内部に存在するが、細胞外のものであってもよい。
本明細書において「標識」とは、目的となる分子または物質を他から識別するための因子(たとえば、物質、エネルギー、電磁波など)をいう。そのような標識方法としては、RI(ラジオアイソトープ)法、蛍光法、ビオチン法、化学発光法等を挙げることができる。上記の核酸断片および相補性を示すオリゴヌクレオチドを何れも蛍光法によって標識する場合には、蛍光発光極大波長が互いに異なる蛍光物質によって標識を行う。蛍光発光極大波長の差は、10nm以上であることが好ましい。蛍光物質としては、核酸の塩基部分と結合できるものであれば何れも用いることができるが、シアニン色素(例えば、CyDyeTMシリーズのCy3、Cy5等)、ローダミン6G試薬、N−アセトキシ−N2−アセチルアミノフルオレン(AAF)、AAIF(AAFのヨウ素誘導体)等を使用することが好ましい。蛍光発光極大波長の差が10nm以上である蛍光物質としては、例えば、Cy5とローダミン6G試薬との組み合わせ、Cy3とフルオレセインとの組み合わせ、ローダミン6G試薬とフルオレセインとの組み合わせ等を挙げることができる。本発明では、このような標識を利用して、検出手段に検出され得るように目的とするサンプルを改変することができる。そのような改変は、当該分野において公知であり、当業者は標識におよび目的とする対象に応じて適宜そのような方法を実施することができる。
本明細書において「相互作用」には、疎水性相互作用、親水性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、イオン性相互作用、非イオン性相互作用、静電的相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「相互作用のレベル」とは、2つの物質(細胞などを含む)の間の相互作用について言及する場合、その2つの物質の間の相互作用の程度または頻度をいう。そのような相互作用のレベルは、当該分野において周知の方法によって測定することができる。そのような方法としては、例えば、実際に相互作用し固定状態にある細胞の数を、例えば、光学顕微鏡、蛍光顕微鏡、位相差顕微鏡などを利用して、直接または間接的に(例えば、反射光強度)計数すること、細胞に特異的なマーカー、抗体、蛍光標識などで染色しその強度を測定することなどが挙げられるがそれらに限定されない。これらのレベルは、マーカーから直接または標識を介して間接的に表示することができる。このような測定値から、例えば、あるスポットにおいて実際に転写または発現する遺伝子の個数または頻度を計算することができる。
(提示および表示)
本明細書において「表示」(ディスプレイ)および「提示」とは、互換可能に使用され、本発明の方法に従って得られたプロファイルまたはそれに由来する情報を直接または間接的にあるいは情報処理をした形態で具現化することをいう。そのような表示の形態としては、グラフ、写真、表、アニメーションなど種々の方法があり、限定されない。そのような技術としては、例えば、METHODS IN CELL BIOLOGY, VOL. 56, ed. 1998, pp:185−215、A High−Resolusion Multimode Digital Microscope System(Sluder & Wolf、Salmon)において、顕微鏡を自動化し、カメラを制御するためのアプリケーションソフトウェアとともに、自動光学顕微鏡の顕微鏡、カメラ、Z軸フォーカス装置を含む、ハードウェアシステムの設計について議論されており、本発明において利用することができる。カメラによるイメージ取得は、Inoue and Spring, Video Miroscopy, 2d. Edition, 1997に詳細に記載されており、本明細書において参考文献として援用される。リアルタイムの表示もまた、当該分野において周知の技術を用いて行うことができる。例えば、全てのイメージが取得され、半永久的メモリに格納された後、あるいはイメージの取得と実質的に同時に、適切なアプリケーションソフトウェアで処理し、処理されたデータを得ることができる。例えば、取得されたデータを処理する方法は、画像が中断されないシーケンスをプレイバックする、あるいは、リアルタイムで表示する、焦点面における変化および継続として、照射光を示す「ムービー」として表示することができる。
別の実施形態では、測定および表示用アプリケーションは、通常刺激付与の条件や得られた検出信号の記録条件を設定するためのソフトウエアを含んでいる。この測定および表示用アプリケーションによって、コンピュータは細胞に刺激を付与する手段と、細胞から検出された信号を処理する手段とを構成するだけでなく、光学観察手段(SITカメラ及び画像ファイル装置)および/または細胞培養手段の制御を行うこともできる。
パラメータ設定画面では、キーボード、タッチパネルまたはマウスなどを用いて画面上で刺激条件を入力することにより、所望の複雑な刺激条件の設定が可能である。その他、細胞培養の温度、pHなどの諸条件の設定をキーボード、マウスなどを用いて行うことができる。表示画面では、細胞から検出されたネットワークについての情報またはそれから得られる情報をリアルタイムでまたは記録後に表示する。また、細胞の記録された別の情報またはそれに由来する情報を、細胞の顕微鏡像に重ねて表示することもできる。記録情報に加えて、記録時の測定パラメータ(刺激条件、記録条件、表示条件、処理条件、細胞の諸条件、温度、pH等)もまたリアルタイムで表示することができる。温度またはpHが許容範囲を外れたときの警報機能も備えられていてもよい。
データ解析画面では、本発明で使用される集合論に加えて、種々の数理解析、フーリエ変換、クラスター解析、FFT解析、コヒーレンス解析、コリレーション解析などの条件を設定することが可能である。一時的なネットワーク情報表示機能、トポグラフィー表示機能なども備えていてもよい。これらの解析結果は、記録媒体に保存されている顕微鏡像に重ねて表示することができる。
(遺伝子導入)
本明細書において、核酸分子を細胞に導入する技術は、どのような技術でもよく、例えば、形質転換、形質導入、トランスフェクションなどが挙げられる。本明細書では、トランスフェクションが好ましい。
本明細書において「トランスフェクション」とは、遺伝子DNA、プラスミドDNA、ウイルスDNA、ウイルスRNAなどを、ウイルス粒子などの形をとらない裸に近い状態で細胞の培養、または細胞の懸濁液に加えて細胞に取り込ませて遺伝子導入または感染を行うことをいう。通常トランスフェクションによって導入された遺伝子は、一過的に細胞において発現するが、永続的に取り込まれる場合もある。
そのような核酸分子の導入技術は、当該分野において周知であり、かつ、慣用されるものであり、例えば、Ausubel F.A.ら編(1988)、Current Protocols in Molecular Biology、Wiley、New York、NY;Sambrook Jら(1987)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.およびその第三版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載される。遺伝子の導入は、ノーザンブロット分析、ウェスタンブロット分析のような本明細書に記載される方法または他の周知慣用技術を用いて確認することができる。
本明細書において遺伝子について言及する場合、「ベクター」または「組み換えベクター」とは、目的のポリヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入させるベクターをいう。そのようなベクターとしては、原核細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物個体および植物個体などの宿主細胞において自立複製が可能、または染色体中への組込みが可能で、本発明のポリヌクレオチドの転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが例示される。ベクターのうち、クローニングに適したベクターを「クローニングベクター」という。そのようなクローニングベクターは通常、制限酵素部位を複数含むマルチクローニング部位を含む。そのような制限酵素部位およびマルチクローニング部位は、当該分野において周知であり、当業者は、目的に合わせて適宜選択して使用することができる。そのような技術は、本明細書に記載される文献(例えば、Sambrookら、前出)に記載されている。
本明細書において「発現ベクター」とは、構造遺伝子およびその発現を調節するプロモーターに加えて種々の調節エレメントが宿主の細胞中で作動し得る状態で連結されている核酸配列をいう。調節エレメントは、好ましくは、ターミネーター、薬剤耐性遺伝子のような選択マーカーおよび、エンハンサーを含み得る。
原核細胞に対する組換えベクターとしては、pcDNA3(+)、pBluescript−SK(+/−)、pGEM−T、pEF−BOS、pEGFP、pHAT、pUC18、pFT−DESTTM42GATEWAY(Invitrogen)などが挙げられるが、これらに限定されない。
動物細胞に対する組換えベクターとしては、pcDNAI/Amp、pcDNAI、pCDM8(いずれもフナコシより市販)、pAGE107[特開平3−229(Invitrogen)、pAGE103[J.Biochem.,101,1307(1987)]、pAMo、pAMoA[J.Biol.Chem.,268,22782−22787(1993)]、マウス幹細胞ウイルス(Murine Stem Cell Virus)(MSCV)に基づいたレトロウイルス型発現ベクター、pEF−BOS、pEGFPなどが挙げられるが、これらに限定されない。
植物細胞に対する組換えベクターとしては、pPCVICEn4HPT、pCGN1548、pCGN1549、pBI221、pBI121などが挙げられるがそれらに限定されない。
また、ベクターの導入方法としては、細胞にDNAを導入する上述のような方法であればいずれも用いることができ、例えば、トランスフェクション、形質導入、形質転換など(例えば、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法など)、リポフェクション法、スフェロプラスト法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,1929(1978)]、酢酸リチウム法[J.Bacteriol.,153,163(1983)]、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75,1929(1978)記載の方法が挙げられる。
本明細書において「遺伝子導入試薬」とは、遺伝子導入方法において、導入効率を促進するために用いられる試薬をいう。そのような遺伝子導入試薬としては、例えば、カチオン性高分子、カチオン性脂質、ポリアミン系試薬、ポリイミン系試薬、リン酸カルシウムなどが挙げられるがそれらに限定されない。トランスフェクションの際に利用される試薬の具体例としては、種々な供給源から市販されている試薬が挙げられ、例えば、Effectene Transfection Reagent(cat.no.301425,Qiagen,CA),TransFastTM Transfection Reagent(E2431,Promega,WI),TfxTM−20 Reagent(E2391,Promega,WI),SuperFect Transfection Reagent(301305,Qiagen,CA),PolyFect Transfection Reagent(301105,Qiagen,CA),LipofectAMINE 2000 Reagent(11668−019,Invitrogen corporation,CA),JetPEI(×4)conc.(101−30,Polyplus−transfection,France)およびExGen 500(R0511,Fermentas Inc.,MD)などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において遺伝子発現(たとえば、mRNA発現、ポリペプチド発現)の「検出」または「定量」は、例えば、mRNAの測定および免疫学的測定方法を含む適切な方法を用いて達成され得る。分子生物学的測定方法としては、例えば、ノーザンブロット法、ドットブロット法またはPCR法などが例示される。免疫学的測定方法としては、例えば、方法としては、マイクロタイタープレートを用いるELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などが例示される。また、定量方法としては、ELISA法またはRIA法などが例示される。アレイ(例えば、DNAアレイ、プロテインアレイ)を用いた遺伝子解析方法によっても行われ得る。DNAアレイについては、(秀潤社編、細胞工学別冊「DNAマイクロアレイと最新PCR法」)に広く概説されている。プロテインアレイについては、Nat Genet.2002 Dec;32 Suppl:526−32に詳述されている。遺伝子発現の解析法としては、上述に加えて、RT−PCR、RACE法、SSCP法、免疫沈降法、two−hybridシステム、インビトロ翻訳などが挙げられるがそれらに限定されない。そのようなさらなる解析方法は、例えば、ゲノム解析実験法・中村祐輔ラボ・マニュアル、編集・中村祐輔 羊土社(2002)などに記載されており、本明細書においてそれらの記載はすべて参考として援用される。
本明細書で使用される、用語「発現量」とは、目的の細胞などにおいて、ポリペプチドまたはmRNAが発現される量をいう。用語「発現レベル」は、抗体を用いてELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などの免疫学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価されるポリペプチドのタンパク質の発現レベル、またはノーザンブロット法、ドットブロット法、PCR法などの分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドの発現のmRNAレベルを包含する。「発現レベルの変化」とは、上記免疫学的測定方法または分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価されるポリペプチドのタンパク質レベルまたはmRNAレベルでの発現量が増加あるいは減少することを意味する。
(スクリーニング)
本明細書において「スクリーニング」とは、目的とするある特定の性質をもつ生物または物質などの標的を、特定の操作/評価方法で多数の成分を含む集団の中から選抜することをいう。スクリーニングのために、本発明の因子(例えば、抗体)、ポリペプチドまたは核酸分子を使用することができる。
本明細書において、免疫反応を利用してスクリーニングを行うことを、「免疫表現型分類(immunophenotyping)」ともいう。この場合、抗体または単鎖抗体は、細胞株および生物学的サンプルの免疫表現型分類のために利用され得る。遺伝子の転写産物・翻訳産物は、細胞特異的マーカーとして、あるいはより詳細には、特定の細胞型の分化および/または成熟の種々の段階で示差的に発現される細胞マーカーとして有用である。特異的エピトープ、またはエピトープの組み合わせに対して指向されるモノクローナル抗体は、マーカーを発現する細胞集団のスクリーニングを可能とする。種々の技術が、マーカーを発現する細胞集団をスクリーニングするために、モノクローナル抗体を用いて利用され得、そしてその技術には、抗体でコーティングされた磁気ビーズを用いる磁気分離、固体マトリクス(すなわち、プレート)に付着した抗体を用いる「パニング(panning)」、ならびにフローサイトメトリーが挙げられる(例えば、米国特許第5,985,660号;およびMorrisonら、Cell,96:737−49(1999)を参照)。
これらの技術は、ヒト臍帯血において見出され得るような細胞増殖および/または分化を起こし得るかまたは未分化状態への改変処置を行ったような細胞集団のような、未分化の細胞(例えば、胚性幹細胞、組織幹細胞など)を含む細胞集団についてスクリーニングするために利用され得る。
(診断)
本明細書において「診断」とは、被験体における疾患、障害、状態などに関連する種々のパラメータを同定し、そのような疾患、障害、状態の現状を判定することをいう。本発明の方法、装置、システムを用いることによって、細胞ネットワーク、薬物耐性レベル、バイオマーカーの同定、創薬ターゲットの解析、副作用解析、細胞機能の診断、細胞パスウェイ解析、化合物の生物影響評価および感染症診断などを解析することができる。そのような情報を用いて、被験体における疾患、障害、状態、処置または予防のための処方物または方法などの種々のパラメータを選定することができる。
本発明の診断方法は、原則として、身体から出たものを利用することができ、医師などの医療従事者の手を離れて実施することができることから、産業上有用である。
(治療)
本明細書において「治療」とは、ある疾患または障害について、そのような状態になった場合に、そのような疾患または障害の悪化を防止、好ましくは、現状維持、より好ましくは、軽減、さらに好ましくは消長させることをいう。
本明細書において「被験体」とは、本発明の処置が適用される生物をいい、「患者」ともいわれる。患者または被験体は好ましくは、ヒトであり得る。
本明細書において、用語「病因」または「病原体」とは、被験体の疾患、障害または状態(本明細書において、総称して「病変」ともいい、植物では「病害」ともいう)に関連する因子をいい、例えば、原因となる病原物質(病原因子)、病原体、病変細胞、病原ウイルスなどが挙げられるがそれらに限定されない。
本発明が対象とする「疾患」は、病原遺伝子が関連する任意の疾患であり得る。そのような疾患としては、癌、ウイルスまたは細菌による感染症、アレルギー、高血圧、高脂血症、糖尿病、心臓病、脳梗塞、痴呆症、肥満、動脈硬化性疾患、不妊症、精神神経疾患、白内障、早老症、紫外線放射線過敏症などが挙げられるがそれらに限定されない。
本発明が対象とする「障害」は、病原遺伝子が関連する任意の障害であり得る。
そのような疾患、障害または状態の具体例としては、例えば、循環器系疾患(貧血(例えば、再生不良性貧血(特に重症再生不良性貧血)、腎性貧血、がん性貧血、二次性貧血、不応性貧血など)、がんまたは腫瘍(例えば、白血病、多発性骨髄腫)など);神経系疾患(痴呆症、脳卒中およびその後遺症、脳腫瘍、脊髄損傷など);免疫系疾患(T細胞欠損症、白血病など);運動器・骨格系疾患(骨折、骨粗鬆症、関節の脱臼、亜脱臼、捻挫、靱帯損傷、変形性関節症、骨肉腫、ユーイング肉腫、骨形成不全症、骨軟骨異形成症など);皮膚系疾患(無毛症、黒色腫、皮膚悪性リンパ腫、血管肉腫、組織球症、水疱症、膿疱症、皮膚炎、湿疹など);内分泌系疾患(視床下部・下垂体疾患、甲状腺疾患、副甲状腺(上皮小体)疾患、副腎皮質・髄質疾患、糖代謝異常、脂質代謝異常、タンパク質代謝異常、核酸代謝異常、先天性代謝異常(フェニールケトン尿症、ガラクトース血症、ホモシスチン尿症、メープルシロップ尿症)、無アルブミン血症、アスコルビン酸合成能欠如、高ビリルビン血症、高ビリルビン尿症、カリクレイン欠損、肥満細胞欠損、尿崩症、バソプレッシン分泌異常、侏儒症、ウオルマン病(酸リパーゼ(Acid lipase)欠損症)、ムコ多糖症VI型など);呼吸器系疾患(肺疾患(例えば、肺炎、肺がんなど)、気管支疾患、肺がん、気管支がんなど);消化器系疾患(食道疾患(たとえば、食道がん)、胃・十二指腸疾患(たとえば、胃がん、十二指腸がん)、小腸疾患・大腸疾患(たとえば、大腸ポリープ、結腸がん、直腸がんなど)、胆道疾患、肝臓疾患(たとえば、肝硬変、肝炎(A型、B型、C型、D型、E型など)、劇症肝炎、慢性肝炎、原発性肝がん、アルコール性肝障害、薬物性肝障害)、膵臓疾患(急性膵炎、慢性膵炎、膵臓がん、嚢胞性膵疾患)、腹膜・腹壁・横隔膜疾患(ヘルニアなど)、ヒルシュスプラング病など);泌尿器系疾患(腎疾患(腎不全、原発性糸球体疾患、腎血管障害、尿細管機能異常、間質性腎疾患、全身性疾患による腎障害、腎がんなど)、膀胱疾患(膀胱炎、膀胱がんなど)など);生殖器系疾患(男性生殖器疾患(男性不妊、前立腺肥大症、前立腺がん、精巣がんなど)、女性生殖器疾患(女性不妊、卵巣機能障害、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮がん、子宮内膜症、卵巣がん、絨毛性疾患など)など);循環器系疾患(心不全、狭心症、心筋梗塞、不整脈、弁膜症、心筋・心膜疾患、先天性心疾患(たとえば、心房中隔欠損、心室中隔欠損、動脈管開存、ファロー四徴)、動脈疾患(たとえば、動脈硬化、動脈瘤)、静脈疾患(たとえば、静脈瘤)、リンパ管疾患(たとえば、リンパ浮腫)など)などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「薬学的に受容可能なキャリア」は、医薬、動物薬または農薬を製造するときに使用される物質であり、有効成分に有害な影響を与えないものをいう。そのような薬学的に受容可能なキャリアとしては、例えば、以下が挙げられるがそれらに限定されない:抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤および/または農学的もしくは薬学的アジュバント。
本発明の処置方法において使用される薬剤の種類および量は、本発明の方法によって得られた情報(例えば、薬剤耐性レベルに関する情報)を元に、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、細胞の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。本発明の処置方法を被験体(または患者)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。頻度の例としては、例えば、毎日−数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回−1ヶ月に1回)の投与が挙げられる。1週間−1ヶ月に1回の投与を、経過を見ながら施すことが好ましい。
本明細書において「指示書」は、本発明のテイラーメイド治療方法などを医師、患者など投与を行う人に対して記載したものである。この指示書は、本発明の医薬などを例えば、放射線治療直後または直前(例えば、24時間以内など)に投与することを指示する文言が記載されている。この指示書は、本発明が実施される国の監督官庁(例えば、日本であれば厚生労働省、米国であれば食品医薬品局(FDA)など)が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、いわゆる添付文書(package insert)であり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インターネットで提供されるホームページ、電子メール)のような形態でも提供され得る。
必要に応じて、本発明の治療では、2種類以上の薬剤が使用され得る。2種類以上の薬剤を使用する場合、類似の性質または由来の物質を使用してもよく、異なる性質または由来の薬剤を使用してもよい。このような2種類以上の薬剤を投与する方法のための薬剤耐性レベルに関する情報も、本発明の方法によって入手することができる。
本発明ではまた、得られた薬剤耐性に関する情報を元に、遺伝子治療を施すことも可能である。本明細書で使用される用語「遺伝子治療」とは、発現されたか、または発現可能な核酸の、被験体への投与により行われる治療をいう。本発明のこの実施形態において、核酸は、それらのコードされたタンパク質を産生し、そのタンパク質は治療効果を媒介する。
本発明では、いったん類似の種類(例えば、ヒトに対するマウスなど)の生物に関し、ある特定の情報の解析結果と、生物学的実体(例えば、細胞)の状態とが相関付けられた場合、対応する情報の分析結果と、生物学的実体(例えば、細胞)の状態とが相関付けることができることは、当業者は容易に理解する。そのような事項は、例えば、動物培養細胞マニュアル、瀬野ら編著、共立出版、1993年などに記載され支持されており、本明細書においてこのすべての記載を援用する。
本発明はまた、ネットワーク解析の結果のこのようなある特定の情報に基づいて、遺伝子治療に応用され得る。
当該分野で利用可能な遺伝子治療のための任意の方法が、本発明に従って使用され得る。例示的な方法は、以下のとおりである。
遺伝子治療の方法の一般的な概説については、Goldspielら,Clinical Pharmacy 12:488−505(1993);WuおよびWu,Biotherapy 3:87−95(1991);Tolstoshev,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573−596(1993);Mulligan,Science 260:926−932(1993);ならびにMorganおよびAnderson,Ann.Rev.Biochem.62:191−217(1993);May,TIBTECH 11(5):155−215(1993)を参照のこと。遺伝子治療において使用される一般的に公知の組換えDNA技術は、Ausubelら(編),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NY(1993);およびKriegler,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,Stockton Press,NY(1990)に記載される。
(基本技術)
本明細書において使用される技術は、そうではないと具体的に指示しない限り、当該分野の技術範囲内にある、流体工学(fluidics)、微細加工、有機化学、生化学、遺伝子工学、分子生物学、微生物学、遺伝学および関連する分野における周知慣用技術を使用する。そのような技術は、例えば、以下に列挙した文献および本明細書において他の場所おいて引用した文献においても十分に説明されている。
微細加工については、例えば、Campbell,S.A.(1996).The Science and Engineering of Microelectronic Fabrication,Oxford University Press;Zaut,P.V.(1996).Microarray Fabrication:a Practical Guide to Semiconductor Processing,Semiconductor Services;Madou,M.J.(1997).Fundamentals of Microfabrication,CRC1 5 Press;Rai−Choudhury,P.(1997).Handbook of Microlithography,Micromachining,& Microfabrication:Microlithographyなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Sambrook J.et al.(1989).Molecular Cloning: A Laboratory Manual,Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001);Ausubel,F.M.(1987).Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience;Ausubel,F.M.(1989).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience;Innis,M.A.(1990).PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications,Academic Press;Ausubel,F.M.(1992).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Ausubel,F.M.(1995).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Innis,M.A.et al.(1995).PCR Strategies,Academic Press;Ausubel,F.M.(1999).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Wiley,and annual updates;Sninsky,J.J.et al.(1999).PCR Applications: Protocols for Functional Genomics,Academic Press、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
人工的に合成した遺伝子を作製するためのDNA合成技術および核酸化学については、例えば、Gait,M.J.(1985).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Gait,M.J.(1990).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Eckstein,F.(1991).Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approac,IRL Press;Adams,R.L.et al.(1992).The Biochemistry of the Nucleic Acids,Chapman&Hall;Shabarova,Z.et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids,Weinheim;Blackburn,G.M.et al.(1996).Nucleic Acids in Chemistry and Biology,Oxford University Press;Hermanson,G.T.(I996).Bioconjugate Techniques,Academic Pressなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
(RNAi)
本明細書で使用される用語「RNAi」とは、RNA interferenceの略称で、二本鎖RNA(dsRNAともいう)のようなRNAiを引き起こす因子を細胞に導入することにより、相同なmRNAが特異的に分解され、遺伝子産物の合成が抑制される現象およびそれに用いられる技術をいう。本明細書においてRNAiはまた、場合によっては、RNAiを引き起こす因子と同義に用いられ得る。
本明細書において「RNAiを引き起こす因子」とは、RNAiを引き起こすことができる任意の因子をいう。本明細書において「遺伝子のRNAiを引き起こす因子」とは、その遺伝子に関するRNAiを引き起こし、RNAiがもたらす効果(例えば、その遺伝子の発現抑制など)が達成されることをいう。そのようなRNAiを引き起こす因子としては、例えば、標的遺伝子の核酸配列の一部に対して少なくとも約70%の相同性を有する配列またはストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を含む、少なくとも10ヌクレオチド長の二本鎖部分を含むRNAまたはその改変体が挙げられるがそれに限定されない。ここで、この因子は、好ましくは、3’突出末端を含み、より好ましくは、3’突出末端は、2ヌクレオチド長以上のDNA(例えば、2〜4ヌクレオチド長のDNA)であり得る。
理論に束縛されることを望まないが、RNAiが働く機構として考えられるものの一つとして、dsRNAのようなRNAiを引き起こす分子が細胞に導入されると、比較的長い(例えば、40塩基対以上)RNAの場合、ヘリカーゼドメインを持つダイサー(Dicer)と呼ばれるRNaseIII様のヌクレアーゼがATP存在下で、その分子を3’末端から約20塩基対ずつ切り出し、短鎖dsRNA(siRNAとも呼ばれる)を生じる。本明細書において「siRNA」とは、short interfering RNAの略称であり、人工的に化学合成されるかまたは生化学的に合成されたものか、あるいは生物体内で合成されたものか、あるいは約40塩基以上の二本鎖RNAが体内で分解されてできた10塩基対以上の短鎖二本鎖RNAをいい、通常、5’−リン酸、3’−OHの構造を有しており、3’末端は約2塩基突出している。このsiRNAに特異的なタンパク質が結合して、RISC(RNA−induced−silencing−complex)が形成される。この複合体は、siRNAと同じ配列を有するmRNAを認識して結合し、RNaseIII様の酵素活性によってsiRNAの中央部でmRNAを切断する。siRNAの配列と標的として切断するmRNAの配列の関係については、100%一致することが好ましい。しかし、siRNAの中央から外れた位置についての塩基の変異については、完全にRNAiによる切断活性がなくなるのではなく、部分的な活性が残存する。他方、siRNAの中央部の塩基の変異は影響が大きく、RNAiによるmRNAの切断活性が極度に低下する。このような性質を利用して、変異をもつmRNAについては、その変異を中央に配したsiRNAを合成し、細胞内に導入することで特異的に変異を含むmRNAだけを分解することができる。従って、本発明では、siRNAそのものをRNAiを引き起こす因子として用いることができるし、siRNAを生成するような因子(例えば、代表的に約40塩基以上のdsRNA)をそのような因子として用いることができる。
また、いかなる理論にも束縛されることを望まないが、siRNAは、上記経路とは別に、siRNAのアンチセンス鎖がmRNAに結合してRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRP)のプライマーとして作用し、dsRNAが合成され、このdsRNAが再びダイサーの基質となり、新たなsiRNAを生じて作用を増幅することも企図される。従って、本発明では、siRNA自体およびsiRNAが生じるような因子もまた、有用である。実際に、昆虫などでは、例えば35分子のdsRNA分子が、1,000コピー以上ある細胞内のmRNAをほぼ完全に分解することから、siRNA自体およびsiRNAが生じるような因子が有用であることが理解される。
本発明においてsiRNAと呼ばれる、約20塩基前後(例えば、代表的には約21〜23塩基長)またはそれ未満の長さの二本鎖RNAを用いることができる。このようなsiRNAは、細胞に発現させることにより遺伝子発現を抑制し、そのsiRNAの標的となる病原遺伝子の発現を抑えることから、疾患の治療、予防、予後などに使用することができる。
本発明において用いられるsiRNAは、RNAiを引き起こすことができる限り、どのような形態を採っていてもよい。
別の実施形態において、本発明のRNAiを引き起こし得る因子は、3’末端に突出部を有する短いヘアピン構造(shRNA;short hairpin RNA)であり得る。本明細書において「shRNA」とは、一本鎖RNAで部分的に回文状の塩基配列を含むことにより、分子内で二本鎖構造をとり、ヘアピンのような構造となる約20塩基対以上の分子をいう。そのようなshRNAは、人工的に化学合成される。あるいは、そのようなshRNAは、センス鎖およびアンチセンス鎖のDNA配列を逆向きに連結したヘアピン構造のDNAをT7 RNAポリメラーゼによりインビトロでRNAを合成することによって生成することができる。理論に束縛されることは希望しないが、そのようなshRNAは、細胞内に導入された後、細胞内で約20塩基(代表的には例えば、21塩基、22塩基、23塩基)の長さに分解され、siRNAと同様にRNAiを引き起こし、本発明の処置効果があることが理解されるべきである。このような効果は、昆虫、植物、動物(哺乳動物を含む)など広汎な生物において発揮されることが理解されるべきである。このように、shRNAは、siRNAと同様にRNAiを引き起こすことから、本発明の有効成分として用いることができる。shRNAはまた、好ましくは、3’突出末端を有し得る。二本鎖部分の長さは特に限定されないが、好ましくは約10ヌクレオチド長以上、より好ましくは約20ヌクレオチド長以上であり得る。ここで、3’突出末端は、好ましくはDNAであり得、より好ましくは少なくとも2ヌクレオチド長以上のDNAであり得、さらに好ましくは2〜4ヌクレオチド長のDNAであり得る。
本発明において用いられるRNAiを引き起こし得る因子は、人工的に合成した(例えば、化学的または生化学的)ものでも、天然に存在するものでも用いることができ、この両者の間で本発明の効果に本質的な違いは生じない。化学的に合成したものでは、液体クロマトグラフィーなどにより精製をすることが好ましい。
本発明において用いられるRNAiを引き起こし得る因子は、インビトロで合成することもできる。この合成系において、T7 RNAポリメラーゼおよびT7プロモーターを用いて、鋳型DNAからアンチセンスおよびセンスのRNAを合成する。これらをインビトロでアニーリングした後、細胞に導入すると、上述のような機構を通じてRNAiが引き起こされ、本発明の効果が達成される。ここでは、例えば、リン酸カルシウム法でそのようなRNAを細胞内に導入することができる。
本発明のRNAiを引き起こし得る因子の例としては、mRNAとハイブリダイズし得る一本鎖、あるいはそれらのすべての類似の核酸アナログのような因子も挙げられる。そのような因子もまた、本発明の方法および組成物において有用である。
(集合論)
上記されるように、本明細書で使用される用語「集合論」とは、当該分野で使用および理解される理論であって、集合の性質および関係を取り扱う純粋数学の一部門をいう。多くの数学者は、他の全ての数学の基礎として集合論を用いる。このような集合論としては、集合(集合体(aggregate)または収集物(collection))内の対象(「要素(element)または元(member)」)の解析、ならびに包含、独立および共通部分へのこれらの集合の分類などが挙げられる。集合論は当該分野において周知であり、当業者は以下を参照し得る:Cantor,G.,1932,Gesammelte Abhandlungen,Berlin:Springer−Verlag;Ulam,S.,1930,’Zur Masstheorie in der allgemeinen Mengenlehre’,Fund.Math.,16,140−150;Godel,K.,1940,‘The consistency of the axiom of choice and the generalized continuum hypothesis’,Ann.Math.Studies,3;Scott,D.,1961,‘Measurable cardinals and constructible sets’,Bull.Acad.Pol.Sci.,9,521−524;Cohen,P.,1966,Set theory and the continuum hypothesis,New York:Benjamin;Jensen,R.,1972,‘The fine structure of the constructible hierarchy’,Ann.Math.Logic,4,229−308;Martin,D.およびSteel,J.,1989,‘A proof of projective determinacy’,J.Amer.Math.Soc.,2,71−125;Hrbacek,K.およびJech,T.,1999,Introduction to Set theory,New York:Marcel Dekker,Inc,http://plato.stanford.edu/entries/set−theory/primer.htmlなど。
集合論における術語は、メンバーシップ(membership)と呼ばれる、共通の根元的関係に基づく。AはBの元である(記号では、A∈B)または集合Bはその要素としてAを包含すると言い表す。集合がその要素により決定されることが理解される。言い換えると、2つの集合は、それらが厳密に同一の要素を有する場合、等しいとみなされる。実際に、数の集合、点の集合、関数の集合、他の集合の集合などが考慮される。理論では、対象間を必ずしも分類する必要はない。集合を考慮することのみが必要とされる。
メンバーシップ関係を使用すると、たいていの集合に関する他の概念(例えば、合併集合(和集合)および共通部分(積集合)を導くことができる。例えば、集合Cの元が厳密に、Aの元またはBの元のいずれかである対象の場合、集合Cは、2つの集合AおよびBの合併集合である。集合Cは一意的に決定される。なぜなら、その要素が何たるかを既に特定したからである。集合論の術語により定義され得る(すなわち、関係∈のみが使用される)集合について、より複雑な演算が存在するが、ここではそのようなものには触れない。以下、別の演算について言及する。すなわち、(非順序)対{A,B}は、その要素として厳密に集合AおよびBを有する。(A=Bであるならば、「対」は厳密には1種類の元であり、これは単集合{A}と呼ばれる)。合併集合および対形成の演算を組み合わせることにより、任意の有限の集合の並びからこれらの集合を元として含む集合{A,B,C,D,…,K,L,M}が生成され得る。また、空集合、すなわち、要素を含まない集合についても言及すべきである。(空集合は、その特性により一意的に決定される。なぜなら、要素を含まない、唯一の集合だからである。このことは、集合が、その要素により決定されるという理解の帰結である)。略式で集合を扱う場合、集合についてのこのような演算は、自明であり、公理的アプローチを用いると、このような演算が適用可能であることが自明なこととして仮定される。例えば、任意の集合AおよびBについて、集合{A,B}が存在するとことは自明であると仮定される。十分な表現力を集合論に与えるために、上述のものよりも包括的な構築公理を仮定する必要がある。その処理原則は、選び出すことが可能な対象は、集合を構成し得るということである。
aおよびbが集合である場合、非順序対{a,b}では、その要素が厳密にaおよびbである集合である。aとbを一緒に並べた場合ときの「順序」はなんら役割を果たすものではなく、すなわち、{a,b}={b,a}である。多くの応用例においては、どの集合が「第一(一番目)」のもので、どの集合が「第二(二番目)」のものであるかを「読み取り」得るように、aとbの対をとる必要がある。(a,b)とする場合、このaとbとの順序対を意味する。ここで、aは、対(a,b)の第一番目の要素であり、bは、第二番目の要素である。
本研究における対象のいずれにおいても、その順序対は集合であるべきである。2要素からなる順序対の第一番目の要素が等しくかつ第二番目の要素が等しい場合にのみ、この順序対が等しいように定義されなければならない。このことは、特にa≠bである場合、(a,b)≠(b,a)であることを担保するものである。
定義:(a,b)={{a},{a,b}}
a≠bである場合、(a,b)は、2つの要素、単集合{a}および非順序対{a,b}を有する。{a}の要素に鑑みると、第一番目の要素が見出される。そのため、第二番目要素は、{a,b}のうち残りの一方の要素である。
a=bである場合、(a,a)={{a},{a,a}}={{a}}は、要素を一つのみ有する。いずれの場合においても、集合(a,b)から、両方の順序を一意的に「読み取る」ことができることは自明であろう。その記述は、以下の定理によりさらに正確なものとなる。
定理:a=a′かつb=b′である場合にのみ、(a,b)=(a′,b′)である。
証明:a=a′かつb=b′である場合、もちろん、(a,b)={{a},{a,b}}={{a′},{a′,b′}}=(a′,b′)である。別の解釈はより複雑なものである。{{a},{a,b}}={{a′},{a′,b′}}を仮定する。a≠bであるならば、{a}={a′}、かつ{a,b}={a′,b′}である。ゆえに、まずa=a′であり、次に{a,b}={a,b′}は、b=b′を意味する。a=bであるならば、{{a},{a,a}}={{a}}である。ゆえに、{a}={a′}であり、{a}={a′,b′}であり、そしてa=a′=b′が得られ、ゆえに、この場合においてもa=a′かつb=b′となる。
任意に順序対を用いる場合、順序付けた3つの要素(triple)は、
(a,b,c)=((a,b),c)、
さらに、順序付けた4つの要素(quadruple)は、
(a,b,c,d)=((a,b,c),d)、
などと定義付けることが可能である。
また、以下のように順序付けた「1タプル(1要素からなる集合)」を定義することができる:
(a)=a。
2項関係は、その関係にある対象の全ての順序対を特定することによって決定され、どのような性質によってそれらの順序対の集合が決定されるかということは問題ではない。
以下の定義を導く。
定義:Rの全ての要素が順序対である場合、すなわち任意のz∈Rであり、z=(x,y)であるようなxとyとが存在する場合、集合Rは2項関係である。
(x,y)∈Rの代わりに、xRyと慣用的に表す。xRyが適用できる場合、xとyはR関係にあるといわれる。
yの一部とR関係にあるxの全ての集合は、Rの定義域と呼ばれ、「dom R」と示される。
従って、dom R={x|xRyであるようなyが存在する}。
dom Rは、Rに存在する順序対における一番目の要素全ての集合である。
一部のxに関してxがyとR関係にあるようなy全ての集合は、Rの値域と呼ばれ、「ran R」と示される。
従って、ran R={y|xRyであるようなxが存在する}。
数学において解釈される場合、関数は、関数の定義域の任意の対象aに固有の対象b(aにおける関数の値)を割り当てる、手順または規則である。従って、関数は、特別な形の関係を表すものであって、この関係は、その定義域における全ての対象aの一つひとつが、その値域にある1つの対象(すなわち、aにおけるその関数の値)と関連付けられる関係である。
定義:2項関係Fは、任意のa、b1およびb2に関して、aFb1およびaFb2がb1=b2を意味する場合、関数(または写像、対応)と呼ばれる。
言い換えると、dom Fにある全てaのそれぞれについて、aFbであるような唯一のbが存在する場合にのみ、2項関係Fは関数である。この固有のbは、aにおけるFの値と呼ばれ、F(a)またはFaと示される。[domFがaを要素として含まない場合、F(a)は定義されない]。Fが、dom F=A、かつran F⊆Bであるときの関数である場合、関数Fに関して、以下のような表記法が慣用的に使用される:
したがって、関数Fの値域は、{F(a)|a∈A}または{Fa}a∈Aと示され得る。
以下のように、外延性公理が関数に適用され得る。
補助定理:FおよびGが関数であるとすると、
全てのx∈dom Fに対して、dom F=dom G、かつF(x)=G(x)
であるときかつその場合に限り、F=Gである。
a1∈dom f、a2∈dom f、かつa1≠a2がf(a1)≠f(a2)を意味する場合、関数fは1対1であるまたは単射であると呼称される。言い換えると、
a1∈dom f、a2∈dom f、かつf(a1)=f(a2)であるなら、
a1=a2である。
公理的集合論の枠組みの中で数学を展開するためには、自然数を定義する必要がある。自然数は、「0,1,2,3,…,15,…,515」などのように直感的に理解される。そして、要素を有さない集合、1つ、2つまたは3つの要素を有する集合の例は、容易に与えられ得る。
数としてのゼロ(0)を定義するために、要素を有さない集合の全ての代表が選択される。しかしながら、これは難しいことではない。なぜなら、このような集合は1つしか存在しないからである。以下が定義される:
1つの要素を有する集合(単集合)については、以下:
であり;一般的に、{x}である。以下のように、代表を選択することができる:既に1つの特定の対象(すなわち、0)を定義したので、当然{0}が選択される。ゆえに、以下が定義される:
次に、2つの要素を有する集合を以下のように考える:
すでに、定義された0と1と明確にされており、かつ0≠1である。その集合の要素が、先に定義された数0および1である、特定の2つの要素からなる集合を以下のように選択する:
如何にしてこの過程を連続させるかは、以下のように自明である:
この概念によると、自然数nは、それより小さな自然数の全てからなる集合、すなわち、{0、1、…、n−1}としてのみ定義される。この様式において、nは、n個の要素からなる特定集合である。
この概念は、依然として根本的な欠陥を有する。0、1、2、3、4および5が定義され、これらによって15を定義することは容易であるが、そう簡単に515を定義することはできない。しかし、このような定義を連ねたところで、一般的に自然数とはいかなるものであるかということを示さない。「集合nは、…であるならば、自然数である」といった形式での命題が必要である。ただ単に、「集合nの要素が、それより小さな自然数の全てからなるならば、集合nは自然数である」とすることはできない。なぜなら、このような「定義」は、まさにこれから定義付けようとしている概念を包含しているからである。
ここで、再度、最初のいくつかの数の構築を観察する。2={0,1}を定義した。3を得るために、2に第三の要素(すなわち、2自身)を付加する必要があった。すなわち、
3=2∪{2}={0,1}∪{2}。
同様に、
4=3∪{3}={0,1,2}∪{3};
5=4∪{4}など。
自然数nが与えられた場合、要素をさらに1つ(すなわち、「n」自身)をnに付加することにより、「次の」数を得る。この手順は、1および2に対してさえも機能する。すなわち、1=0∪{0}、そして、2=1∪{1}である。しかし、当然のことながら、0(最小の自然数)に対しては、機能しない。
これらの考察は以下を示唆する。
定義:集合xの後者(successor)は、集合S(x)=x∪{x}である。
直感的に、自然数nの後者S(n)は、「1つ大きな」数n+1である。これにしたがうS(n)に関して、より示唆的に富む表記法n+1を使用する。のちほど、自然数の加算を(後者の概念を利用することで)実際にn+1がnと1との和に等しくなるように定義する。その時点まで、これは単に表記法であり、これにより加算の性質を仮定も意味もしない。
ここで、自然数の直感的な理解を以下にまとめることができる:
(1)0は自然数である。
(2)nが自然数であるならば、その後者であるn+1もまた自然数である。
(3)(1)と(2)とを適用すること(すなわち、0から始めて、後者を反復して適用すること、すなわち、0、0+1=1、1+1=2、2+1=3、3+1=4、4+1=5、などにより、全ての自然数が得られる。
定義:集合Iは、以下であるならば、帰納的であるとされる:
1.0∈I、
2.n∈Iであるならば、(n+1)∈I。
帰納的集合は、0と、各々の要素とともに、その後者もまた含む。(3)にしたがって、帰納的集合は全ての自然数を含むはずである。(3)の正確な意味は、自然数の集合が、自然数以外の他の要素を含まない帰納的集合(すなわち、最小の帰納的集合)であるということである。このことは、以下の定義を導く。
定義:全ての自然数の集合は、集合={x|全ての帰納的集合Iに関して、x∈I}である。
この集合の要素は、いわゆる自然数であり、それゆえ、集合xがあらゆる帰納的集合に属するときかつその場合に限り、集合xは自然数である。
純粋集合論の観点から、集合についての最も基本的な疑問は、それがどれ程の要素を有するか、ということである。個数について何も知ることなく、「集合AおよびBが、同一の個数の要素を有する」との命題を明確にし得ることが原則として判断される。
定義:定義域Aと値域Bとによる、1対1関数が存在する場合、集合AおよびBは同一の濃度を有する。このことを|A|=|B|により表す。
定義:AからBの上への1対1写像が存在する場合、Aの濃度はBの濃度以下である(表記法:|A|≦|B|)。
|A|≦|B|は、Bのある部分集合Cに関して、|A|=|C|であることを意味することに留意すること。|A|≦|B|であって、|A|=|B|ではない(すなわち、Bの部分集合上へのAの1対1写像が存在するが、AからBの上への1対1写像は存在しない)ことを意味するために、|A|<|B|とも記述する。
補助定理
1.|A|≦|B|かつ|A|=|C|ならば、|C|≦|B|である。
2.|A|≦|B|かつ|B|=|C|ならば、|A|≦|C|である。
3.|A|≦|A|。
4.|A|≦|B|かつ|B|≦|C|ならば、|A|≦|C|である。
カントール−ベルンシュタイン(Cantor−Bernstein)の定理:
|X|≦|Y|かつ|Y|≦|X|ならば、|X|=|Y|である。
有限集合は、その大きさが自然数である集合として定義され得る。
定義:集合であるSが、ある自然数nと同一の濃度を有する場合、Sは有限である。したがって、|S|=nを定義し、Sはn個の要素を有するという。有限でないならば、集合は無限である。
先に記載されるように、集合論は、本発明の解析に適用され得る。
例えば、試験結果は、Excel(登録商標)フォーマットのファイルでまとめられ得、ここで、機能レポーター(例えば、転写因子レポーター)と摂動因子(例えば、siRNA)はx−y様式でプロットされ、それらの各々の組み合わせに対応する値が、そのファイルに記入される。実測値を、基準値と比較しても、目的の閾値(例えば、スクランブルsiRNAを使用することにより得られる結果)と比較してもよい。これらの値は、3つの値(例えば、+、0および−)へ正規化され得る。これらの値は、以下のように評価される:例えば、閾値の80%以下である場合、これは「−1」へ正規化され、閾値の80%と120%との間である場合、「0」へ正規化され、そして閾値の120%以上である場合、「+1」へ正規化される。正規化行列または縮退行列を使用して、より単純な様式で摂動因子(例えば、siRNA)がレポーターに及ぼす影響を分析し、各々のレポーターに対する影響を与える摂動因子の集合を取得し得る。例示的な表を以下に示す。
(好ましい実施形態の説明)
以下に、実施形態により本発明を説明するが、以下に記載される実施形態は、例示目的に限り提供される。したがって、本発明の技術範囲は、それらの実施形態により限定されず、添付の特許請求の範囲により限定される。
一局面において、本発明は、生物学的実体における生物学的機能のネットワークを解析するための方法を提供する。この本発明の方法は、以下の工程を包含する:
A)生物学的実体を少なくとも1種類の摂動因子に供する工程、
B)該生物学的実体内の、生物学的機能を反映する機能レポーターのうち、少なくとも2種類についての情報を得る工程、および
C)該得られた情報を集合論による処理に供し、該機能レポーター間の関係を計算して、該生物学的機能のネットワークの関係を作成する工程。
生物学的実体を少なくとも1種類の摂動因子に供する工程は、摂動因子がこの実体に伝達され、目的の影響を達成する限り、あらゆる様式で実施され得、使用される摂動の型に依存する。
少なくとも2種類の機能レポーターについての情報を得る工程は、このようなレポーターのシグナルが測定され得る限り、あらゆる様式で実施され得る。好ましくは、レポーターは、摂動因子が影響を有する場合に、測定可能なシグナル(例えば、光、蛍光およびタンパク質の発現など)を放出する。したがって、好ましくは、機能レポーターは測定可能なシグナルを伝達し得る。
集合論を実行することができる限り、データを集合論に供する工程が実行され得る。
好ましくは、本発明で使用される生物学的実体は細胞である。
本発明で使用される摂動因子は、生物学的実体またはシステムへ摂動または変化を与える、あらゆる因子(例えば、siRNA、shRNA、miRNAおよびリボザイムを含むRNA、化合物、cDNA、抗体、ポリペプチド、光、音、圧力変化、放射、熱ならびにガスなど)であり得る。好ましくは、上記機能レポーターの機能を特異的に制御し得るsiRNAである。
本発明で使用される機能レポーターとしては、転写因子、調節遺伝子、構造遺伝子、細胞マーカー、細胞表面マーカー、細胞の形状、細胞小器官の形状、細胞の運動性、酵素活性、代謝産物の濃度および細胞の構成要素の局在が挙げられるが、これらに限定されない。
特定の実施形態において、本発明で使用される集合論による処理は、少なくとも2種類の機能レポーターのうち、2種類の特定の機能レポーターを、以下からなる群より選択される関係へ分類する工程を包含する:
a)独立、
b)包含、および
c)共通部分、
ここで、この関係が独立であると決定される場合、この2種類の特定の機能レポーターが、ネットワーク内で関係を有さないと決定され、
この関係が包含であると決定される場合、この2種類の特定の機能レポーターのうちの一方が、この2種類の特定の機能レポーターのうちの他方に含まれると決定され、かつこの2種類の特定の機能レポーターのうちの一方が、この2種類の特定の機能レポーターのうちの他方の下流に位置し、
この関係が共通部分であると決定される場合、この2種類の特定の機能レポーターが、別の共通の機能から分岐した下流に位置すると決定される。
本発明において、集合が集合論にしたがって分析され得る限り、集合論のあらゆる数学的処理が使用され得る。本発明の特定の実施形態において、集合論による処理は、機能レポーターごとに、摂動因子による応答の有無をマッピングする工程を包含する。
本発明の特定の実施形態において、集合論による処理は、機能レポーター間の関係の計算を包含し得、この計算は、独立、包含および共通部分に分類された、各々の機能レポーター間の相関を含み、この相関の一覧を作成する工程を包含する。この計算は、行列を使用することによって実行され得る。
本発明の好ましい実施形態において、本発明で使用される摂動因子は、1つの細胞内パスウェイを等しく標的化するのに十分な個数であるように、有利に調製される。本発明において、2種類以上の摂動因子を通常使用して、生物学的実体(例えば、細胞)のネットワークを変更する。等しく標的化する摂動因子を使用することが好ましい。生物学的機能を構成する基本的な要素は、環境刺激に応答して、ネットワーク(例えば、分子ネットワーク)内で変更される。言い換えると、いかなる特定の理論に拘束されるのも望まないが、生物学的機能における多様性の存在が、生物学的実体(例えば、細胞)内のこのようなネットワークもまた多様性を有することを示していることが考えられる。したがって、生物学的実体(例えば、細胞)の状態におけるM個の変化を調べるために、N個の摂動因子が生物学的実体に与えられ得、ネットワーク解析(例えば、分子ネットワーク解析)、または多様性を有する状態の個数の分析が可能になる。さらに、固定のMに関して分析が実行される場合、好ましくは、場合の数(または組み合わせの数)がネットワーク解析(例えば、細胞内ネットワーク解析)に十分であるように、十分な個数Nの摂動因子が使用される。さらに、等しく標的化する摂動因子は、ネットワークに偏った影響を及ぼすことなく、ネットワーク構造に変化を引き起こすとみなされる。したがって、好ましくは、このような等しく標的化する摂動因子が使用され、より好ましくは、ある数のこのような摂動因子が使用される。このような数は、本明細書の開示から当業者に容易に理解される。
本発明で分析される、少なくとも2種類の機能レポーターについての情報は、所望の時間後の上記摂動因子の影響に基づき得る。本明細書で使用される、このような所望の時間は、実行されるべき分析の環境および目的などに基づいて選択され得る。例えば、細胞に対する因子の影響が観察される場合、数十分〜数時間、または数日までが通常使用され得る。
特定の実施形態において、使用される摂動因子により得られる影響は、閾値に関して、以下の3つの群に分類される:ポジティブな影響 = +(好ましくは、+1)、影響なし = 0、およびネガティブな影響 = −(好ましくは、−1)。
本発明の好ましい実施形態において、少なくとも2種類の機能レポーターについての情報は、所望の時間後の摂動因子の影響に基づき、ここで、集合論による処理は、以下の工程を包含する:
a)影響と機能レポーターについての閾値とを比較し、ポジティブな影響 = +(好ましくは、+1)、影響なし = 0、およびネガティブな影響 = −(好ましくは、−1)、の3つの群に分類することにより、この情報を3つのカテゴリに分類する工程、
b)機能レポーターのうちの2種類が、同一の型の影響を有する共通の摂動因子を有するか否かを決定する工程であって、ここで、
このような共通の摂動因子が存在しない場合、これらの2種類の機能レポーターに対応する2種類の機能は、互いに異なる摂動因子の下に配置され、
このような共通の摂動因子が存在する場合、以下の工程c)を実施する、工程
c)これらの2種類の機能のうちの一方の機能に対する摂動因子の集合が、これらの2種類の機能のうちの他方の機能に対する摂動因子の集合に完全に包含されるか否かを決定する工程であって、ここで、
このことが真である場合、より大きな集合を有する一方の機能が、より小さな集合を有する他方の機能の下に配置され、
このことが真ではない場合、これらの2種類の機能が、同一の摂動因子の下に並行して配置される、工程、
d)これらの機能レポーターの全ての組合せを調べるか否かを決定する工程であって、ここで、
このことが真である場合、これらの機能の関係の全てを統合して、現時点での全体的な摂動影響ネットワークにし、
このことが真ではない場合、工程a)〜工程c)を反復する。これらの工程は、目的の処理および工程を実行するコンピュータプログラムを備えるコンピュータ上で実行され得る。
本発明の好ましい実施形態において、上記の工程a)〜工程c)は、M×N行列を作製することによって判断され、ここでMは機能レポーターの個数を指し、Nは摂動因子の個数を指す。このような行列を使用することにより、標準的な行列計算処理によって、集合論を容易に処理することができる。
本発明のさらなる実施形態において、本発明は、実際の生物学的実験を実行することにより、作製されたネットワークを分析する工程をさらに包含する。好ましくは、このような分析は、機能に特異的な調節因子(例えば、siRNA、抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、インヒビター、アクチベーター、リガンドおよびレセプターなど)の使用を包含する。好ましくは、siRNAを使用する。
本発明は、ネットワーク(例えば、シグナル伝達経路および細胞パスウェイなど)を分析するために使用され得る。
本発明は、バイオマーカーの同定、創薬ターゲットの解析、副作用解析、細胞機能の診断、細胞パスウェイ解析、化合物の生物影響評価および感染症診断などに有用である。
本発明の別の局面において、本発明は、生物学的実体内の生物学的機能のネットワーク解析システムを提供し、このシステムは以下を備える:
A)生物学的実体に対する、少なくとも1種類の摂動因子、
B)上記生物学的実体内の、生物学的機能を反映する機能レポーターのうち、少なくとも2種類についての情報を得る手段、および
C)得られた情報を集合論による処理に供し、機能レポーター間の関係を計算して、生物学的機能のネットワークの関係を作製する手段。本発明のシステムにおいて、摂動因子は、別個に供給され得る。したがって、一実施形態において、本発明は、以下の手段のみを備える:
B)上記生物学的実体内の、生物学的機能を反映する機能レポーターのうち、少なくとも2種類についての情報を得る手段、および
C)得られた情報を集合論による処理に供し、機能レポーター間の関係を計算して、生物学的機能のネットワークの関係を作製する手段。
上記生物学的実体内の、生物学的機能を反映する機能レポーターのうち、少なくとも2種類についての情報を得る手段は、トランスフェクションアレイとして提供され得るが、本発明はこれに限定されない。このようなトランスフェクションアレイは、本明細書の別の箇所に広範に記載され、以下の実施例において例示される。
得られた情報を集合論による処理に供し、機能レポーター間の関係を計算して、生物学的機能のネットワークの関係を作製する手段は、コンピュータプログラムとして提供され得るが、本発明はこれに限定されない。集合論は当該分野において公知であるように、集合論に基づいて、このような計算を実行する、あらゆるコンピュータプログラムが本発明において使用され得ることが理解される。
上記の方法について、任意の他の特定の実施形態が、必要に応じて、本発明のシステムに使用され得、かつ適用可能であることを当業者が理解することに留意すべきである。
本発明のさらなる局面において、本発明は、生物学的実体における生物学的機能のネットワークを解析するための方法を、コンピュータ上で実行するコンピュータプログラムを提供し、この方法は、以下の工程を包含する:
A)生物学的実体を少なくとも1種類の摂動因子に供する工程、
B)上記生物学的実体内の、生物学的機能を反映する機能レポーターのうち、少なくとも2種類についての情報を得る工程、および
C)得られた情報を集合論による処理に供し、機能レポーター間の関係を計算して、生物学的機能のネットワークの関係を作成する工程。
上記の方法およびシステムについて、任意の他の特定の実施形態が、必要に応じて、本発明のコンピュータプログラムに使用され得、かつ適用可能であることを当業者が理解することに留意すべきである。
生物学的実体内の生物学的機能のネットワークを分析する本発明の方法を実行するコンピュータ構成あるいはそれを実現するシステムを図10に示す。図10は、生物学的実体内の生物学的機能のネットワークを分析する本発明の方法を実行するコンピュータの500の構成例を示す。
コンピュータ500は、入力部501と、CPU502と、出力部503と、メモリ504と、バス505とを備える。入力部501と、CPU502と、出力部503と、メモリ504とは、バス505によって相互に接続されている。入力部501と出力部503とは入出力装置506に接続されている。
コンピュータ500によって実行される、生物学的実体内の生物学的機能のネットワークを分析する処理の概略を以下に説明する。
生物学的実体内の生物学的機能のネットワークを分析する方法を実行するプログラムは、例えば、メモリ502に格納されている。あるいは、この方法のために必要な情報は、それぞれ独立してあるいは一緒に、フロッピー(登録商標)ディスク、MO、CD−ROM、CD−R、DVD−ROMのような任意のタイプの記録媒体に記録され得る。あるいは、アプリケーションサーバに格納されていてもよい。そのような記録媒体に格納された情報またはデータは、出入力装置506(例えば、ディスクドライブ、ネットワーク(例えば、インターネット))を介してコンピュータ500のメモリ504にロードされる。CPU502がこのプログラムを実行することによって、コンピュータ500は、生物学的実体内の生物学的機能のネットワークを分析する本発明の方法を実行する装置として機能する。
入力部501を介して、細胞に関する情報などを入力する。また、測定されたプロファイルのデータも入力される。必要に応じて、既知の情報も入力してもよい。
CPU502は、入力部501によるデータおよび細胞についての情報をもとに、表示データを生成し、メモリ504に表示データを格納する。その後、CPU502は、これらの情報をメモリ504に格納し得る。その後、出力部503は、CPU502が分析したネットワークを表示データとして出力する。出力されたデータは、入出力装置506から出力され得る。
本発明のなお異なる局面において、本発明は、生物学的実体における生物学的機能のネットワークを解析するための方法を、コンピュータ上で実行するコンピュータプログラムを含む記憶媒体を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:
A)生物学的実体を少なくとも1種類の摂動因子に供する工程、
B)上記生物学的実体内の、生物学的機能を反映する機能レポーターのうち、少なくとも2種類についての情報を得る工程、および
C)得られた情報を集合論による処理に供し、機能レポーター間の関係を計算して、生物学的機能のネットワークの関係を作成する工程。
上記の方法、システムおよびコンピュータプログラムについて、任意の他の特定の実施形態が、必要に応じて、本発明の記憶媒体に使用され得、かつ適用可能であることを当業者が理解することに留意すべきである。このような記憶媒体は、どんな記録媒体(例えば、CD−ROM、フレキシブルディスク、CD−R、CD−RW、MO、ミニディスク、DVD−ROM、DVD−R、メモリースティック、ハードディスクなど)でもよい。
本発明のなおさらなる局面において、本発明は、生物学的実体における生物学的機能のネットワークを解析するための方法を、コンピュータ上で実行するコンピュータプログラムを含む通信媒体を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:
A)生物学的実体を少なくとも1種類の摂動因子に供する工程、
B)上記生物学的実体内の、生物学的機能を反映する機能レポーターのうち、少なくとも2種類についての情報を得る工程、および
C)得られた情報を集合論による処理に供し、機能レポーター間の関係を計算して、生物学的機能のネットワークの関係を作成する工程。
上記の方法、システム、コンピュータプログラムおよび記憶媒体について、任意の他の特定の実施形態が、必要に応じて、本発明の通信媒体に使用され得、かつ適用可能であることを当業者が理解することに留意すべきである。このような通信媒体の例としては、ネットワーク(例えば、イントラネットおよびインターネットなど)が挙げられるが、これらに限定されない。
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、以下の実施例は、例示の目的のみに提供される。従って、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲以外には限定されない。当業者は、以下の実施例から、適宜細胞、支持体、生物学的因子、塩、正に荷電した物質、負に荷電した物質、アクチン作用物質などを選択し、本発明を作製または実施することができることが理解される。
以下に実施例を示して本発明をさらに詳しく説明するが、この発明は以下の例に限定されるものではない。以下の実施例において用いられる試薬、支持体などは、例外を除き、Sigma(St.Louis,USA、和光純薬(大阪、日本)、松浪硝子(岸和田、日本)などから市販されるものを用いた。
(実施例1:試薬)
以下の処方物を、実施例1で調製した。フィブロネクチンなどは市販されている。フラグメントおよび改変体を、遺伝工学技術により取得した:
1)フィブロネクチン(配列番号52);
2)プロネクチンF(三洋化成、京都、日本);
3)プロネクチンL(三洋化成);
4)プロネクチンPlus(三洋化成);
5)ゼラチン。
DNAとしてトランスフェクションのためのプラスミドを調製した。プラスミドpEGFP−N1、プラスミドpDsRed2−N1、ならびに他の転写因子およびキナーゼをコードする遺伝子を含むプラスミド(BD Biosciences,Clontech、CA、USAから利用可能)を用いた。これらのプラスミドにおいては、遺伝子発現は、サイトメガロイウルス(CMV)の制御下においた。プラスミドDNAを、E.coli(XL1 blue、Stratgene,TX,USA)中で増幅し、増幅したプラスミドDNAを複合体パートナーとして用いた。DNAは、DNaseもRNaseも含まない蒸留水中に溶解した。
shRNAおよび/またはsiRNAもまた、公知の技術にしたがって調製した。
以下のトランスフェクション試薬を使用した:Effectene Transfection Reagent(cat.no.301425,Qiagen,CA)、TransFastTM Transfection Reagent(E2431,Promega,WI)、TfxTM−20 Reagent(E2391,Promega,WI)、SuperFect Transfection Reagent(301305,Qiagen,CA)、PolyFect Transfection Reagent(301105,Qiagen,CA)、LipofectAMINE 2000 Reagent(11668−019,Invitrogen corporation,CA)、JetPEI(×4)conc.(101−30,Polyplus−transfection,France)およびExGen 500(R0511,Fermentas Inc.,MD)。これらのトランスフェクション試薬は、上記DNAおよびアクチン作用物質にあらかじめ加えるかあるいはDNAと複合体を先に生成してから使用した。
このようにして調製した溶液を以下のトランスフェクションアレイを用いたアッセイに用いた。
(実施例2:トランスフェクションアレイ−間葉系幹細胞を用いた実証)
本実施例では、固相におけるトランスフェクション効率の改善を観察した。そのプロトコールを以下に示す。
(プロトコール)
DNAの最終濃度は、1μg/μLに調整した。アクチン作用物質は、ddHO中で10μg/μLのストックとして保存した。全ての希釈をPBS、ddHOまたはダルベッコMEM培地を用いて行った。希釈系列として、例えば、0.2μg/μL、0.27μg/μL、0.4μg/μL、0.53μg/μL、0.6μg/μL、0.8μg/μL、1.0μg/μL、1.07μg/μL、1.33μg/μL、などを調製した。
トランスフェクション試薬は、それぞれの製造業者が提供する指示書に従って、使用した。
プラスミドDNA:グリセロールストックから100mLのL−amp中で一晩増殖させ、Qiaprep MiniprepまたはQiagen Plasmid Purification Maxiを用いて製造業者が提供する標準プロトコールによって精製した。
本実施例では、以下の5種類の細胞を利用して、効果を確認した:ヒト間葉系幹細胞(hMSCs、PT−2501、Cambrex BioScience Walkersville,Inc.,MD)、ヒト胚性腎細胞(HEK293、RCB1637、RIKEN Cell Bank,JPN)、NIH3T3−3細胞(RCB0150,RIKEN Cell Bank,JPN)、HeLa細胞(RCB0007、RIKEN Cell Bank,JPN)およびHepG2(RCB1648、RIKEN Cell Bank,JPN)。これらは、L−glutおよびpen/strepを含むDMEM/10%IFS中で培養した。
(希釈およびDNAのスポット)
トランスフェクション試薬とDNAとを混合してDNA−トランスフェクション試薬複合体を形成させた。複合体形成にはある程度の時間が必要であることから、上記混合物を、アレイ作製機(arrayer)を用いて固相支持体(例えば、ポリ−L−リジンスライド)にスポットした。実施例2では、固相支持体として、ポリ−L−リジンスライドのほか、APSスライド、MASスライド、コーティングなしのスライドを用いた。これらは、松浪硝子(岸和田、日本)などから入手可能である。
複合体形成およびスポット固定のために、真空乾燥機中で一晩スライドを乾燥させた。乾燥時間の範囲は、2時間から1週間とした。
フィブロネクチンなどは、上記複合体形成時に使用してもよいが、実施例2では、スポッティングの直前に使用した。
(混合液の調製および固相支持体への適用)
エッペンドルフチューブに、300μLのDNA濃縮緩衝液(EC緩衝液)+16μLのエンハンサーを混合した。これをボルテックスによって混合し、5分間インキュベートした。50μLのトランスフェクション試薬(Effecteneなど)を加え、そしてピペッティングによって混合した。トランスフェクション試薬を適用するために、スライドのスポットのまわりにワックス環状バリヤーを引いた。ワックスで囲まれたスポット領域に366μLの混合物を加え、室温で10分間〜20分間インキュベートした。これにより、支持体への手動による固定が達成された。
(細胞の分配)
次に、細胞を添加するプロトコールを示す。トランスフェクトのために細胞を分配した。この分配は、通常、フード内で減圧吸引して行った。スライドを皿に置き、そしてトランスフェクションのために細胞を含む溶液を加えた。細胞の分配は、以下のとおりである。
細胞の濃度が25mL中10細胞になるように、増殖中の細胞を分配した。100×100×15mmの四角形のペトリ皿または半径100mm×15mmの円形ディッシュ中で、スライド上に細胞をプレーティングした。約40時間、トランスフェクションを進行させた。これは、約2細胞周期にあたる。免疫蛍光のためにスライドを処理した。アレイの例については、図4左上のパネルを参照のこと。
(遺伝子導入の評価)
遺伝子導入の評価は、例えば、免疫蛍光、蛍光顕微鏡検査、レーザー走査、放射性標識および感受性フィルムまたはエマルジョンを用いた検出によって達成した。
可視化されるべき発現タンパク質が蛍光タンパク質であるなら、それらを蛍光顕微鏡検査で見、そして写真を撮ることができる。大型の発現アレイに関しては、スライドをデータ保存のためにレーザースキャナーで走査し得る。発現されたタンパク質を蛍光抗体が検出し得るなら、免疫蛍光のプロトコールを引き続いて行うことができる。検出が放射能に基づくなら、スライドを上記で示したように接着し得、そしてフィルムまたはエマルジョンを用いたオートラジオグラフィーによって放射能を検出することができる。
(レーザー走査および蛍光強度定量)
トランスフェクション効率を定量するために、本発明者らは、DNAマイクロアレイスキャナ(GeneTAC UC4×4、Genomic Solutions Inc.,MI)を使用した。総蛍光強度(任意の単位)を測定した後、単位表面積あたりの蛍光強度を計算した。
(共焦点顕走査顕微鏡による切片観察)
細胞を、組織培養ディッシュに最終濃度1×10細胞/ウェルで播種し、適切な培地(ヒト間葉系細胞基本培地(MSCGM、BulletKit PT−3001、Cambrex BioScience Walkersville,Inc.、MD,USA)により培養した。細胞層を4%パラホルムアルデヒド溶液で固定した後、染色試薬であるSYTOおよびTexas Red−Xファロイジン(Molecular Probes Inc.,OR,USA)を細胞層に添加して、核およびFアクチンを観察した。遺伝子産物によって発光するサンプルまたは染色されたサンプルを共焦点レーザー顕微鏡(LSM510、Carl Zeiss Co.,Lrd、ピンホールサイズ=Ch1=123μm、Ch2=108μm;画像間隔=0.4)を用いて、切片像を得た。
(実験プロトコール)
(細胞供給源、培養培地、および培養条件)
この実施例では、5種類の異なる細胞株を使用した:ヒト間葉系幹細胞(hMSC、PT−2501、Cambrex BioScience Walkersville,Inc.,MD)、ヒト胚性腎細胞HEK293(RCB1637、RIKEN Cell Bank,JPN)、NIH3T3−3(RCB0150、RIKEN Cell Bank,JPN)、HeLa(RCB0007、RIKEN Cell Bank,JPN)、およびHepG2(RCB1648、RIKEN Cell Bank,JPN)。ヒトMSC細胞の場合、この細胞を、市販のヒト間葉細胞基本培地(MSCGM BulletKit PT−3001,Cambrex BioScience Walkersville,Inc.,MD)中で維持した。HEK293細胞、NIH3T3−3細胞、HeLa細胞およびHepG2細胞の場合、これらの細胞を、10% ウシ胎仔血清(FBS、29−167−54、Lot No.2025F、Dainippon Pharmaceutical CO.,LTD.,JPN)を有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、L−グルタミンおよびピルビン酸ナトリウムを有する高グルコース(4.5g/L);14246−25、Nakalai Tesque,JPN)中で維持した。全ての細胞を、37℃、5% COに制御されたインキュベーター中で培養した。hMSCを含む実験において、本発明者らは、表現型の変化を回避するために、5継代未満のhMSCを使用した。
(プラスミドおよびトランスフェクション試薬)
トランスフェクションの効率を評価するために、pEGFP−N1ベクターおよびpDsRed2−N1ベクター(カタログ番号6085−1、6973−1、BD Biosciences Clontech,CA)を使用した。共に遺伝子発現は、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの制御下であった。トランスフェクトされた細胞は、それぞれ、連続的にEGFPまたはDsRed2を発現した。プラスミドDNAを、Escherichia coli、XL1−blue株(200249,Stratagene,TX)を使用して増幅し、そしてEndoFree Plasmid Kit(EndoFree Plasmid Maxi Kit 12362、QIAGEN、CA)によって精製した。全ての場合において、プラスミドDNAを、DNaseおよびRNaseを含まない水に溶解した。トランスフェクション試薬は以下のようにして得た:Effectene Transfection Reagent(カタログ番号301425、Qiagen、CA)、TransFastTM Transfection Reagent(E2431、Promega、WI)、TfxTM−20 Reagent(E2391、Promega、WI)、SuperFect Transfection Reagent(301305、Qiagen、CA)、PolyFect Transfection Reagent(301105、Qiagen、CA)、LipofectAMINE 2000 Reagent(11668−019、Invitrogen corporation、CA)、JetPEI(×4)conc.(101−30、Polyplus−transfection、France)、およびExGen 500(R0511、Fermentas Inc.,MD)。
(固相系トランスフェクションアレイ(SPTA)生成)
「リバーストランスフェクション」についてのプロトコールの詳細は、ウェブサイト http://staffa.wi.mit.edu/sabatini_public/reverse_transfection.htm の「Reverse Transfection Homepage」またはJ.Ziauddin,D.M.Sabatini,Nature,411,2001,107;および、R.W.Zu,S.N.Bailey,D.M.Sabatini,Trends in Cell Biology,Vol.12,No.10,485に記載されていた。本発明者らの固相系トランスフェクション(SPTA方法)において、疎水性フッ素樹脂コーティングによって区分した48平方パターン(3mm×3mm)を有する3つの型のスライドガラス(シラン処理したスライドガラス;APSスライド、およびポリ−L−リジンでコーティングしたスライドガラス;PLLスライド、およびMASでコーティングしたスライド;Matsunami Glass Ind.,LTD.,JPN)を研究した。
(プラスミドDNAプリンティング溶液の調製)
SPTAを生成するための2つの異なる方法を開発した。その主な違いは、プラスミドDNAプリンティング溶液の調製にある。
(方法A)
Effectene Transfection Reagentを使用する場合、プリンティング溶液は、プラスミドDNAおよび細胞接着分子(4mg/mLの濃度で超純水に溶解したウシ血漿フィブロネクチン(カタログ番号16042−41、Nakalai Tesque、JPN))を含んだ。上記の溶液を、インクジェットプリンタ(synQUADTM、Cartesian Technologies,Inc.,CA)を用いてか、または手動で0.5〜10μLチップを用いて、スライドの表面に適用した。このプリントしたスライドガラスを安全キャビネットの内側で室温にて15分間かけて乾燥させた。トランスフェクションの前に、全てのEffectene試薬を、DNAプリントしたスライドガラス上に静かに注ぎ、そして室温にて15分間インキュベートした。過剰のEffectene溶液を、吸引アスピレーターを用いてスライドガラスから除去し、そして安全キャビネットの内側で室温にて15分間かけて乾燥させた。得られたDNAプリントしたスライドガラスを、100mm培養ディッシュの底に置き、そして約25mLの細胞懸濁液(2〜4×10細胞/mL)を、このディッシュに静かに注いだ。次いで、このディッシュを37℃、5% COのインキュベーターに移し、2〜3日間インキュベートした。
(方法B)
他のトランスフェクション試薬(TransFastTM、TfxTM−20、SuperFect、PolyFect、LipofectAMINE 2000、JetPEI(×4)conc.またはExGen)の場合、プラスミドDNA、フィブロネクチン、およびトランスフェクション試薬を、製造業業者が配布する指示書に示される比率に従って1.5mLのマイクロチューブ中で均一に混合し、室温で15分間インキュベートしてから、チップ上にプリンティングした。プリンティング溶液を、インクジェットプリンターまたは0.5〜10μLチップを用いてスライドガラスの表面上に適用した。このプリントしたスライドガラスを、安全キャビネットの内側で室温にて10分間かけて完全に乾燥させた。プリントしたスライドガラスを100mm培養ディッシュの底に置き、そして約3mLの細胞懸濁液(2〜4×10細胞/mL)を添加し、安全キャビネットの内側で室温にて15分間にわたってインキュベートした。インキュベーション後、新鮮な培地をこのディッシュに静かに注いだ。次いで、このディッシュを37℃、5% COのインキュベーターに移し、2〜3日間インキュベートした。インキュベーション後、本発明者らは、蛍光顕微鏡(IX−71、Olympus PROMARKETING,INC.,JPN)を用いて、増強された蛍光タンパク質(EFP、EGFP、およびDsRed2)の発現に基づいてトランスフェクト体を観察した。位相差画像を同じ顕微鏡を用いて撮った。両プロトコールにおいて、細胞をパラホルムアルデヒド(PFA)固定方法(PBS中の4% PFA、処理時間は、室温にて10分間)を用いることによって固定した。
(レーザー走査および蛍光強度定量)
トランスフェクション効率を定量するために、本発明者らは、DNAマイクロアレイスキャナ(GeneTAC UC4×4、Genomic Solutions Inc.,MI)を使用した。総蛍光強度(任意の単位)を測定した後、表面積あたりの蛍光強度を計算した。
(ヒト間葉系幹細胞の固相系トランスフェクションアレイ)
多様な種類の細胞に分化するヒト間葉系幹細胞(hMSC)の能力は、組織再生および組織復活を標的とする研究にとって特に興味深いものになっている。特に、これらの細胞の形質転換に関する遺伝子解析は、hMSCの多能性を制御する因子を解明する上で、関心が高まっている。hMSCの研究は、所望の遺伝物質を用いたトランスフェクションが不可能な点にある。
固相系トランスフェクションにより、インビボ遺伝子送達のために使用され得る「トランスフェクションパッチ」、ならびにhMSCにおけるハイスループット遺伝子機能研究のための固相系トランスフェクションアレイ(SPTA)が達成され得ることを実証した。
哺乳動物細胞をトランスフェクトするための多数の標準的な方法が存在するが、遺伝物質のhMSCへの導入については、HEK293、HeLaなどの細胞株と比較して不便かつ困難であることが知られている。従来使用されるウイルスベクター送達またはエレクトロポレーションのいずれも重要であるが、潜在的な毒性(ウイルス方法)、ゲノムスケールハイスループット解析の困難性、およびインビボ研究に対して(エレクトロポレーションに関して)適用性が制限を受けることのような不便さが存在する。
固相支持体に簡便に固定することができかつ徐放性および細胞親和性を保持した固相支持体固定系を本発明者らが開発したことにより、上述の欠点のほとんどを克服し得、かつ集合論による、生物学的実体(例えば、細胞)のネットワークの分析を達成した。
本実施例の結果、いくつかの重要な効果が達成された:トランスフェクション効率が高いこと(その結果、統計学的に有意な細胞集団が研究され得る)、異なるDNA分子を有する領域間の相互夾雑が低いこと(その結果、個々の遺伝子の効果が、別々に研究され得る)、トランスフェクト細胞の生存が長期化したこと、ハイスループットであり互換性のあって簡便な検出方法。これらの基準を全て満たすSPTAは、さらなる研究のための適切な基盤となる。
チップ上での高いトランスフェクション効率の達成のために重要な点は、使用されるコーティング剤である。ガラス製のチップを用いた場合、PLLが、トランスフェクション効率および相互夾雑の両方に関して、(以下に記載されるように)最良の結果を提供することを発見した。フィブロネクチンコーティングしない場合(他のすべての実験条件は一定に保った)、トランスフェクト体はほとんど観察されなかった。完全に立証したわけではないが、フィブロネクチンの役割は細胞接着プロセスを加速することであることがほぼ確実であり(データは示していない)、それゆえに、表面から解離したDNAを拡散させてしまう時間を制限する。
(実施例3:RNAiトランスフェクションマイクロアレイ)
実施例2に記載されるようにアレイを作製した。遺伝物質として、プラスミドDNA(pDNA)とshRNAとの混合物を使用した。この混合物の組成を、表2に示す。
したがって、本発明の方法が、shRNAを使用して分析するためのあらゆる細胞に適用可能であることが明らかとなった。
(実施例4:siRNAを用いるRNAiマイクロアレイの使用)
次に、shRNAの代わりにsiRNAを使用して、実施例2に記載されるプロトコールに従い、RNAiトランスフェクションマイクロアレイを構築した。
表2に記載される、転写因子に対する機能レポーターおよびフィブロネクチンを使用して、転写因子(SRE、TRE、E2F、p53、Rb、アクチン、NFAT、NFkB、STAT3、RARE、PMA、ISRA、HSE、Myc、AP1、GAS、ERE、GREおよびCREを含む)に対するsiRNAを合成した。EGFPに対するsiRNAをコントロールとして使用し、各々のsiRNAが、その標的転写因子をノックアウトするか否かを評価した。スクランブル(scramble)RNAを、ネガティブコントロールとして使用し、それらの比率を評価した。
以下の表は、本実施例で使用されたsiRNAにより標的化される転写因子を示す。
本実施例で使用した機能レポーターは、以下の通りである:
各々の細胞を固相系トランスフェクションに供し、2日間培養した。蛍光画像スキャナーを使用して画像を取得し、蛍光レベルを定量化した。詳細には、以下のように実行した:
以下の試薬を混合して、トランスフェクションアレイ上にDNAを「プリンティング」した。
バブルジェット(登録商標)DNAプリンター(Cartesian Dispensing Systems,Ann Arbor,MI,USA製)を使用して、上記で調製したスライドガラス上にDNA混合物をプリンティングした。このアッセイのために、19種類のレポーターと26種類のsiRNAとの全ての組み合わせを調製し、各々の組み合わせにつき4つのスポットをトランスフェクションアレイに作り、本実施例用のトランスフェクションアレイを作製した。
HeLa細胞(ヒト子宮頸癌細胞株)およびHepG2(ヒト肝癌細胞株)を、それぞれ2×10細胞/mLで播種し、COインキュベーターで48時間培養した。
細胞の培養後、DNAマイクロアレイ用のスキャナー(ArrayWoRx(商標名),Applied Precision,LLC,Issaquah,Washington,USA)を使用して、EGFP発現の蛍光画像を取得した。これらの画像を、画像分析ソフトウェア(ImaGene;BioDiscovery;El Segundo,CA USA)を用いて分析し、EGFPの蛍光強度を整数値にした。
Scramble II Duplex(ネガティブコントロール)の場合の強度に対する、相対強度の比率を計算した。ネガティブコントロールの120%以上の相対強度はアップレギュレーションとみなし、ネガティブコントロールの80%以下の相対強度はダウンレギュレーションとみなし、これらの間(すなわち、80%<相対強度<120%)の相対強度を変化なしとみなした。HeLa細胞およびHepG2細胞の結果を以下に示す。
HeLa細胞についてのネットワークを正規化した行列を以下に示す。
HepG2細胞についてのネットワークを正規化した行列を以下に示す。
例示的な結果を図5と図7とにまとめた。
図5と図7とに示されるように、RNAiを使用した場合、各々の遺伝子の発現は、種々の様式で特異的に抑制された。したがって、RNAiに適用可能な、多数の遺伝物質を有するアレイを実現することができ、かつ、細胞に対するRNAiの影響は集合論を使用して解析可能であることを実証した。
(実施例5:集合論を用いた数理解析)
次に、実施例2〜4に記載の技術を使用して得たデータに基づき、集合論を用いる分析を行った。ここでは、解析のためにHeLa細胞とHepG2細胞とを使用した。HeLa細胞とHepG2細胞とに対し、転写因子SRE、TRE、E2F、p53、Rb、アクチン、NFAT、NFkB、STAT3、RARE、PMA、ISRA、HSE、Myc、AP1、GAS、ERE、GREおよびCREを使用した。
(数理解析技術)
本明細書で使用した数理解析技術を図1および図9に示す。図1は、本発明の一実施形態に従う解析の模式図を示す。AおよびBは、生物学的実体(例えば、細胞)の機能を反映する集合とみなされ得る機能レポーターを指す。使用される摂動因子は、集合A内に位置するか、集合B内に位置するか、集合Aと集合Bとの共通部分内に位置するか、集合Aまたは集合Bの外側に位置する。i)は、機能A(集合A)と機能B(集合B)とに対する摂動因子が存在しない場合を示す。i)では、機能Aと機能Bとは異なる摂動因子の下で位置づけられている。ii)は、機能Aおよび機能Bに関して摂動因子が存在しており、機能Bに包含される全ての摂動因子がまた、機能Aにも包含される場合を示している。ii)において、機能Bは、機能Aの下流に位置する。iii)は、共通の摂動因子が存在する場合を示すが、そのうちのあるものは機能Aにのみ包含され、あるものは機能Bにのみ包含される。iii)では、機能Aと機能Bとは、共通の摂動因子の下に並行して位置する。iv)とv)とは、3種類の機能が関与する場合を示す。これらは、2種類の機能の場合と同様な様式で説明され得る。原理的には、2種類の機能の全ての機能を統合することにより、全ての機能についての全体的なネットワークを作成する。図9は、本発明の例示的な実施形態の模式的なフローチャートを示す。このフローチャートは、コンピューター上で実行され得る。
コントロール条件(細胞、追加要因、培養条件など)下で、siRNAに対するレポーターを使用して、アッセイを実行した。以下の解析については、実施例4に記載の条件を使用した。
機能レポーターとsiRNAとの組み合わせ行列の計算に用いた行列を、図11に示す。各々の列は、Excel(登録商標)シートに対応する列と行とを表す。
実際に使用したトランスフェクションアレイを、図12に示す。図12は、HeLaアレイを走査した画像(16ビット TIFF画像)を示す。各々の混合溶液を、下部パネルのようにプリントし、細胞の播種後、アレイスキャナーを使用して、画像を得た(上部のパネルを参照のこと)。
例示的な結果を図5と図7とにまとめる。この様式でDNAを比較した場合に限り、誘導因子を添加すると、大半の転写因子が誘導された。
次に、siRNAの活性を、+、0および−を含む3つの群に分類した。結果は、行列を使用して表現され得る。図1に示されるスキームを用いる集合論に従って、これらの影響を解析した。この場合では、siRNAがパラメータ(例えば、細胞形態、神経突起成長および遺伝子発現など)に及ぼす影響を比較した。目的の影響を観察するのに十分な特定の時間が経過してから、任意の時点において測定を実行してもよい。例えば、本実施例において、特定の時間として1時間と6時間とを選んだ。
結果を図6と図8とに示す。図6に示すように、HeLa細胞では、SREは、ネットワークの最下流に位置し、その上流にp53、E2F、RbおよびTREが位置する。アクチンは、E2FとRbとの上流に位置し、そのRbは、上流にアクチン、NFATおよびSTAT3を有する。NFkBは、NFATの上流であり、NFkBの上流にはRAREが存在する。STAT3は、その上流にAP1とHSEとを有し、そのAP1は、PMAとISREとの上流に位置する。CREは、使用したパラメータのネットワークの最上流に位置し、その直下にGRE、RARE、AP1およびMycを有する。GASとEREとは関連するパラメータを有さず、したがって、これらは解析したネットワークでは独立している。
図8に示すように、HepG2細胞では、CREが、分析したネットワークの最上流に位置し、その下流にはGRE、ISIRおよびSREが存在する。SREの下流には、PMA、STAT3およびRAREが存在し、RbおよびE2Fは、HSE、アクチン、TRE、p53、NFATおよびSTAT3の下流に位置する。STAT3は、SREの下流に位置する。PMAは、AP1の上流に位置し、AP1の下流にはHSEが存在する。NFkBおよびMycは、RAREの下流に位置する。EREとGASとは関連するパラメータを有さず、したがって、これらは、解析したネットワークでは独立している。
確証実験のために、HeLa細胞およびHepG2細胞における、CREに対するsiRNAの影響を分析した。その結果を矢印で示す。矢印は、CREに対するsiRNAの添加により阻害効果が生じた転写因子を示し、したがって、これらの因子がネットワーク内においてCREにきわめて近接することを示唆する。
結論として、集合論を適用する本発明により、生物学的実体(例えば、細胞)のネットワークを正確に解析することができる。未だかつて、集合論を使用して、生物学的機能(特に、生物学的機能のネットワーク)を解析した事例はなかった。従って、集合論を使用することで、生物学的実体におけるパラメータのネットワークの関係を正確に構築することが可能であるとの知見は、特筆すべき顕著な結果である。
(実施例6:マイクロRNA)
次に、マイクロRNA(miRNA)をコードする核酸分子を使用して、細胞のネットワークを作製した。miRNAとして、miRNA−23を使用した。上記の実施例と同様なプロトコールを使用した。
マイクロRNAは、18塩基〜25塩基の非翻訳性(非コード)RNA(タンパク質に翻訳されない)であり、最初に線虫で見出され、その後、動植物において広範に保存されていることが明らかとなった。miRNAが、線虫および植物における発生および分化に関与していることが報告されている。このことから、動物も同様なプロセスを有することが示唆されている。現在までに、200種類以上のmiRNAが報告されている。
H.Kawasaki、K.Taira、Nature 423,838−842(2003)は、miRNA−23の標的がHes1遺伝子(Hes1は、ニューロンへの幹細胞の分化を抑制するリプレッサー転写因子である)であることを報告した。miRNA−23は、この遺伝子の翻訳終止コドンの近傍に存在し、不完全な相補的な塩基対合(77%)を形成する。このような不完全な相補的な塩基対合は、miRNAの機能に重要であり、実際に、合成miRNA−23をNT2ヒト胚性腫瘍細胞に導入した場合に、Hes1の発現を抑制し得ることが既に見出されている。この活性は、siRNAなどを使用することによってノックアウトされ得る。
上記の原理にしたがって、miRNAを作製する。
このようなシステムを使用して、miRNAに関して上記で説明されたものと同様な様式で、集合論により解析し得ることが実証され得る。
(実施例7:生体系−リボザイム)
次に、リボザイムを使用して、細胞のネットワークを作製した。薬学雑誌 123(5) 305−313(2003)に記載されるリボザイムを使用した。上記の実施例と同様なプロトコールを使用した。
テトラヒメナのグループIイントロンがRNA鎖の部位特異的な切断および結合反応を触媒することから、リボザイムが発見された。リボザイムとは、このような酵素活性を有するRNAをいう。リボザイムの例としては、ハンマーヘッド型リボザイムおよびヘアピン型リボザイムなどが挙げられる。
このようなシステムを使用して、miRNAに関して上記で説明されたものと同様な様式で、集合論によって分析することができることが実証され得る。
(実施例8:薬物スクリーニング)
次に、化合物ライブラリを使用して、薬物をスクリーニングする。疾患モデルの細胞(例えば、癌細胞、正常細胞および幹細胞)を、スクリーニングに用いる。1,000種類の化合物を含むライブラリを摂動因子として使用する。パラメータ(例えば、転写因子、調節遺伝子、構造遺伝子、細胞マーカー、細胞表面マーカー、細胞の形状、細胞小器官の形状、細胞の運動性、酵素活性、代謝産物の濃度および細胞の構成要素の局在)が選択される。例示的なパラメータは、制癌剤および糖尿病に対する薬などである。
これらのパラメータを、それぞれ適切な様式で測定し、それらについての情報を収集する。収集した情報を、上記の集合論に基づいて解析する。
これらの結果を解析することにより、どの化合物が薬物の最有力候補になりそうかを明らかにし、それを薬物スクリーニングに使用することが可能になる。
したがって、本発明は、新規の薬物を同定することにも有用である。
(実施例9:バイオマーカーの同定)
本発明は、バイオマーカーの同定に使用することができる。一般に、バイオマーカーとは、生物学的な情報を定量化またはデジタル化する指標であり、そのようなものとしては、糖尿病のバイオマーカーとしての血中グルコースレベル、TNFαおよびPAI−1などが挙げられ、これらは徐々に臨床的に使用され始めている。生物学的な情報のデジタル化は、摂動因子が細胞に及ぼす影響、および種々の細胞(癌、正常細胞および幹細胞など)内の特徴的なネットワーク構造を特定することにおいて解釈され得る。
この点に関して、siRNAを薬物の発見のための標的として使用することができ、そして、同定されたsiRNAは、薬物の開発に使用することができる。
したがって、本実施例は、摂動因子(例えば、siRNAなど)の機能レポーターとして種々のバイオマーカーを使用する。本実施例で同定された、特定の機能レポーターは、目的とする特定の細胞についてのバイオマーカーとして使用することができる。
(実施例10:有害な影響の分析および細胞機能の診断)
本発明を使用して、薬物の有害な影響を分析すること、および/または細胞もしくは他の生物学的実体を診断すること(感染症の診断が挙げられる)もできる。細胞パスウェイを解析することもできる。
本実施例において、摂動因子によるネットワーク構造の変化は、カタログ形式で分類され、正常な細胞と異常な細胞とを見分けるための評価基準を提供する。さらに、細胞機能を特徴付けるネットワーク構造を取得することにより、細胞機能を評価する方法を実行することができる。
例えば、種々の器官に由来する種々の細胞に薬物を投与した場合に、(薬物を投与していない)正常なネットワーク構造と比較することにより、影響(薬物が生物学的実体(例えば、細胞)に及ぼす有害な影響が挙げられる)の評価が可能である。さらに、ネットワークデータベース(ネットワーク構造のカタログおよび公知のデータベース(例えば、KEGGシグナル伝達ゲートウェイ)の情報などが挙げられる)を使用して、細胞機能を特徴付けることもできる。細胞機能に影響を及ぼす摂動因子を、これらのデータベースにより作成したマップにマッピングすることにより、細胞機能を特徴付けるパスウェイの解析が可能となる。
(実施例11:化合物の生物学的評価)
摂動因子には、単一の標的を有するものに限らず、多くの標的を有するものも存在するので、薬物スクリーニングに使用される化合物および/またはsiRNAを組み合わせて、生物学的影響が評価され得る。これらの化合物および/またはsiRNAを使用する場合、これらの因子が複数のものを標的化し、ネットワークを構成する複数の機能に影響を及ぼすことを考慮しなければならない。本実施例により得られる、このようなネットワーク構造への影響はまた、化合物が生物学的実体に及ぼす影響を分析するのに有用である。
(実施例12:神経突起生成における、チロシンキナーゼの機能上の役割を分析する合理的アプローチ)
本実施例では、ヒト神経芽細胞腫であるSHSY5Yを使用して、本発明の方法から得られた情報に基づき、ニューロン様細胞への分化を観察した。
レチノイン酸の存在下で、SHSY5Y細胞はコリンアセチルトランスフェラーゼを発現し、その神経突起を伸長させる。NGFの存在下で、この細胞はチロシンヒドロキシラーゼを発現し、やはりその神経突起を伸長させる。
したがって、細胞の事象へのシグナル伝達経路において、チロシンキナーゼは、「弁」として重要な役割を果たす。
本実施例では、膨大な数のチロシンキナーゼの中でも、どのチロシンキナーゼがコリンアセチルトランスフェラーゼ誘導、チロシンヒドロキシラーゼ発現および神経突起伸長事象を引き起こすのかを研究する。
(実験)
(材料と方法)
使用した細胞:SH−SY5Y(ATCC No:CRL−2266)
使用した試薬:
レチノイン酸(オールトランス型、Sigma−Aldrich,Prod.No.R 2625)
NGF(Sigma 2.5S #N−6009)
イーグル最小必須培地、ウシ胎仔血清、グルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシンを、BioWhittaker,Walkersville,MDから購入した。
(細胞培養)
細胞培養
ヒト神経芽細胞腫(SHSY5Y)細胞を、10%(v/v)ウシ胎仔血清(FBS)、2%(v/v)グルタミンおよび1%(v/v)ペニシリン/ストレプトマイシン(10% 培地)を補充したイーグル最小必須培地(EMEM)(以後、増殖培地と呼ぶ)内で維持した。細胞を、37°C、5%二酸化炭素の加湿雰囲気中でインキュベートした。
(分化)
Yamada Y.ら、Neurosci Lett.2004 Jun 24;364(1):11−15にしたがって、分化を実行した。簡潔に述べると、100ng/mlのNGFまたは10μgのレチノイン酸を培養培地に添加し、SHSY5Y細胞を分化させた。通常、レチノイン酸を添加すると、細胞は、図13に例示されるコリン作用性のニューロン様細胞に分化する。NGFを添加すると、細胞は、図13に例示されるドーパミン作用性のニューロン様細胞に分化する。
(トランスフェクションマイクロアレイ)
トランスフェクションマイクロアレイ実験を、上記の実施例にしたがって実行した。
(オンチップ画像に基づく、チロシンキナーゼに標的化するsiRNAによる神経突起成長阻害の定量化)
種々の型のキナーゼを分析するために、チロシンキナーゼに特異的なsiRNAを使用した。siRNAを、上記の実施例にしたがって調製した。
神経突起成長の測定は、Neurosci Lett.2005 Apr 11;378(1):40−3.Epub 2005 Jan 7にしたがう、画像に基づく神経突起成長の頻度の定量化によった。簡潔に述べると、このプロトコールは以下の通りである。
ラット褐色細胞腫(PC12)細胞(Tischler,A.S.およびL.A.Greene.1975.Nerve growth factor−induced process formation by cultured rat pheochromocytoma cells.Nature (Lond.).258:341−342)を、10% 熱失活させたウマ血清、5% 新生仔ウシ血清、グルタミン(2mM)およびペニシリン/ストレプトマイシン(100U/ml)を補充した、4.5g/l グルコース含有DME中で単層培養で増殖させ、10継代未満のPC12細胞を使用した。PC12細胞を、NGFにより「活性化(primed)」した(Greene,L.A.1977.「A quantitative bioassay for nerve growth factor(NGF)activity employing a clonal pheochromocytoma cell line.」Brain Res.133:350−353;Greene,L.A.、D.E.BursteinおよびM.M.Black.1982.「The role of transcription−dependent priming in nerve growth factor promoted neureite outgrowth.」Dev.Biol.91:305−316に記載される)。増殖過程についての研究のために、NGFで活性化させたPC12細胞を継代し、これを小口径の9インチパスツールピペットに通して粉砕し、機械的にその神経突起を剥離させた。増殖培地で3回洗った後、50ng/ml NGF含有増殖培地またはNGF非含有増殖培地により、細胞を10細胞/mlの濃度に再懸濁し、この細胞懸濁物100μlを1ウェル(表面積0.28cm)ごとに添加した。
固定後、神経フィラメント100タンパク質に対するフルオレセイン標識抗体、またはチューブリンに対するDM1A抗体による染色(4時間)を行った。IN Cell Analyzer 1000(Amersham Bioscicences)を用い、プレートあたり3分で画像を取得した。
(画像の取得)
1392×1040ピクセル、12ビットの精度、400m秒の露光により画像を取得した。1枚の96ウェルプレート全体の画像の取得に要する総時間(移動/焦点を合わせる/取得)は、約3分であった。蛍光外(epifluorescence)(4×および10×の対物レンズ)およびDIC(10×)の両方の光学系を使用した。
(手動のスコア付け)
熟達した技術者2人で、MCIDTM Elite画像解析ソフトウェアを使用して神経突起および細胞本体を追跡した。最小の長さのパラメータと目視評価とを合わせ、神経突起を他の構造と見分けた。
(自動のスコア付け)
分析の前に規定されたスコア付けパラメータ(神経突起の最小の幅および最大の幅、神経突起の最小の長さ、条件ごとの平均の細胞の大きさ)の設定を機械に入力した。この事前の規定の処理に要する時間は、約1時間であった。
(結果)
結果を図14に示す。図14は、神経突起の全長/核の個数、対、チロシンキナーゼに標的化するsiRNA(85種類)のグラフである。
(神経突起生成における、チロシンキナーゼの機能上の役割を分析する合理的アプローチ)
神経突起生成における、チロシンキナーゼの機能上の役割を分析する合理的アプローチを図15で概説する。図15A(左上)のように、レチノイン酸(RA)存在下で、siRNAが神経突起伸長を阻害した集合(以後、RA集合)と、NGF存在下で、siRNAが神経突起伸長を阻害した集合(以後、NGF集合)とは、別個に(独立して)存在し、それゆえ、コリンアセチルトランスフェラーゼ(コリン作用性のニューロン様細胞への分化)により誘発されるパスウェイと、チロシンヒドロキシラーゼ(ドーパミン作用性のニューロン様細胞への分化)により誘発されるパスウェイとは、互いに独立している。コリン作用性のニューロン様細胞を、抗コリンアセチルトランスフェラーゼ抗体を使用して、そしてドーパミン作用性のニューロン様細胞を、抗チロシンヒドロキシラーゼ抗体(両者の抗体はClontechから市販されている)を使用して、それぞれ同定した。
RA集合とNGF集合とが重複する元を有する場合、このパスウェイは、図15Bのように解釈され、RAのシグナルとNGFシグナルとは、神経突起方向へ向かう同一のパスウェイに統合される。
図15Cに示すように、NGF集合がRA集合に包含される場合、NGFシグナル伝達(チロシンヒドロホスフェート(hydrophosphate))が、RAシグナル伝達(コリンアセチルトランスフェラーゼ)の上流に位置し、最終的に神経突起成長に至ると解釈される。
図15Dに示すように、RA集合がNGF集合に包含される場合、RAシグナル伝達(コリンアセチルトランスフェラーゼ)が、NGFシグナル伝達(チロシンヒドロホスフェート)の上流に位置し、最終的に神経突起成長に至ると解釈される。
上記の分析を実行することにより、細胞ベースのsiRNAアッセイの包括的なデータから得た合理的な関係により多くのキナーゼを明らかにした(図16)。図16は、FGFR1、FGFR2およびKDRに対するsiRNAが、RAの存在下では神経突起伸長を阻害したが、NGFの存在下では阻害しなかったことを示す。EPHB1、EPHB2、EPHB3、NTRK2、PDGFRAおよびINSRは、NGFの存在下では神経突起伸長を阻害したが、RAの存在下では阻害しなかった。さらに、EGFR、EPHA2、EPHA2、KITおよびRETに対するsiRNAは、RAおよびNGFのどちらの存在下においても神経突起伸長を阻害した。
(RTKタンパク質のノックダウン)
チロシンキナーゼの機能をさらに分析するために、チロシンキナーゼに対する種々のsiRNAを使用してノックダウン実験を実施した。上記のプロトコールまたは当該分野の一般知識にしたがって、siRNAを設計した。図17は、EGFR−siRNA、EPHA2−siRNA、EPHA3−siRNA、#075−siRNA、KIT−siRNA、#054−siRNA、RET−siRNAおよび#006−siRNAの結果を示す。EGFR、EPHA2、EPHA3、#075、KIT、#054、RETおよび#006の完全なヌクレオチド配列を、配列表に示す(それぞれ配列番号78、配列番号80、配列番号82、配列番号84、配列番号86、配列番号88、配列番号90および配列番号92)。EGFR、EPHA2、EPHA3、#075、KIT、#054、RETおよび#006の完全なアミノ酸配列を、配列表(それぞれ配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91および配列番号93)に示す。
レセプター型チロシンキナーゼの特異的なリガンドの存在下での神経突起伸長も調べた。特異的な因子を含まないFBSをコントロールとして用い、RA−FBS、NGF、EphrinB2、BDNF、PDGF、インシュリン、VEGF、FGF1、FGF2、EGF、SCF、EphrinA3、GDNFおよびNeurturinを調べた。図18は、各々の因子に曝露した場合の、神経突起を保持する細胞のパーセンテージを示す。RAの部分集合は、KDR、FGFR1およびFGFR2を包含し、これらはそれぞれ、リガンドであるVEGF、FGF1およびFGF2に対応するレセプターである。NGFの部分集合は、EPHB1、EPHB2、EPHB3、NTRK2、PDFGRAおよびINSRを包含し、これらはそれぞれ、リガンドであるEphrinB2、EphrinB2、EphrinB2、BDNF、PDGFおよびインシュリンに対応するレセプターである。RAの部分集合とNGFの部分集合との共通部分の部分集合は、EGFR、KIT、EPHA2、EPHA3およびRETを包含し、これらはそれぞれ、リガンドであるEGF、SCF、EpherinA3、EPhrinA3およびGFNF/Neurturinに対応するレセプターである。
次に、レセプター型チロシンキナーゼに対する各々のリガンドの存在下での、マーカー酵素の発現を研究した。まず、ChAT、THおよびβ−アクチン(コントロール)により亢進された、各々のリガンドの発現を調べた。各々のリガンドの発現の強度をまず示し(ウェットのデータ;図19、上部のパネル)、相対的な発現レベルでも示す(図19、下部パネル)。示すように、RAとVEGF、FGF1およびFGF2とは強く相関し、これらのリガンドがコリン作用性であることを示す一方で、NGFとNGF、Ephrin B2、BDNF、PDGF、インシュリンおよびEpherin A3とは強く相関し、これらのリガンドがドーパミン作用性であることを示す。
まとめると、図20(合理的な関係と生物学的な結果との比較)に示すように、本発明の集合論による分析に基づいて、種々のキナーゼを生物学的な有意性の部分集合に分類する。具体的には、FGFR1とFGFR2とは、統合される前のRAシグナル伝達経路の上流に位置するものに分類され、EPHB1とEPHB2とEPHB3とNTRK2とPDGFRAとINSRとは、NGFシグナル伝達経路の上流に位置するものに分類される。EGFRとKITとRETとは、統合された後でかつ神経突起伸長を促進する前の経路の下流に位置するものに分類される。
本発明の特定の好ましい実施形態を説明してきたが、上記に添付された特許請求の範囲を除いて、このような実施形態により、本発明の範囲は限定されない。本明細書の記述を読むことにより、本発明の範囲および意図から逸脱することなく、種々のほかの改変および等価物が当業者に明らかになり、かつ容易に作製され得る。本明細書に引用された全ての特許、公開特許出願および刊行物は、あたかもその全体が示されるように、参考として援用される。
本発明により、驚くほど少ない因子を観察することによって、細胞の状態を判定することが可能になった。このような判定により、診断、予防、治療に応用することが可能となり、その応用範囲は医療のみならず、食品工学、化粧品工学、農業工学、環境工学など種々の分野に及ぶ。
図1は、本発明の一実施形態にしたがう分析の模式図を示す。AとBとは、生物学的実体(例えば、細胞)の機能を反映する機能レポーター(集合)をいう。使用される摂動因子は、集合A内に位置するか、集合B内に位置するか、集合Aと集合Bとの共通部分内に位置するか、集合Aまたは集合Bの外側に位置する。i)は、機能A(集合A)と機能B(集合B)とに対する摂動因子が存在しない場合を示す。i)では、機能Aと機能Bとは異なる摂動因子下にある。ii)は、機能Aと機能Bとに対する摂動因子が存在する場合を示し、この場合において、機能Bに包含されるべき全ての摂動因子はまた、機能Aにも包含される。ii)において、機能Bは、機能Aの下流に位置する。iii)は、共通の摂動因子が存在する場合を示すが、そのうちのあるものは機能Aにのみ包含され、あるものは機能Bにのみ包含される。iii)では、機能Aと機能Bとは、共通の摂動因子の下に並行して位置する。iv)とv)とは、3種類の機能が関与する場合を示す。これらは、2種類の機能の場合と同様な様式で説明され得る。原理的には、2種類の機能の全ての機能を統合することにより、全ての機能についての全体的なネットワークを作製する。 図2では、RNAiおよび機能レポーターを用いてパスウェイ解析がなされる本発明の例示的なスキームを示す。RNAiライブラリ(siRNAライブラリ)を使用して、細胞機能に対する阻害効果(例えば、代謝産物、遺伝子発現レベルなどの変化)を測定する。機能A、BおよびCは、特定の機能に影響を及ぼす摂動因子(siRNA)を包含する。 図3は、図2のスキームの解析結果を示す。1種類のRNAiにより阻害される共通の遺伝子および共通して阻害されない遺伝子を同定することにより、特定の機能に特異的な遺伝子(例えば、「A」特異的遺伝子など)を同定することができる。このようなRNAi阻害実験の結果から、細胞内パスウェイ構造が計算される。 図4は、細胞パスウェイ解析用のトランスフェクションデバイスを使用する、本発明の一実施形態である。左上のパネルは、本発明で代表的に使用されるチップ型デバイスの一覧を示す。左下では、RNAiおよび機能レポーターを使用して、どのようにしてネットワーク(例えば、生物学的実体のパスウェイ)を解析するかを示す。 図5は、生物学的実体としてHeLa細胞を使用する一実施例における、摂動因子の結果を表すグラフである。Y軸は発現レベルを示し、本実施例では閾値を80%に設定する。X軸上の矢印は、使用した機能レポーター(例えば、CRE、AP1、GRE、ISRE、Myc、RAREおよびアクチン)に反映される機能を示す。 図6は、HeLa細胞の転写ネットワーク解析の結果およびその確証を示す。全体的なネットワークを、この解析で使用した転写因子(遺伝子)により示す。下向きの矢印は、CRE特異的なsiRNAによりCREが阻害される場合にダウンレギュレートされる遺伝子を示す。 図7は、生物学的実体としてHepG2細胞を使用する一実施例における、摂動因子に関する結果を表すグラフである。Y軸は発現レベルを示し、本実施例では閾値を80%に設定する。X軸上の矢印は、使用した機能レポーター(例えば、CRE、ISRE、Myc、SREおよびRARE)に反映される機能を示す。 図8は、HepG2細胞の転写ネットワーク解析の結果およびその確証を示す。全体的なネットワークを、この解析で使用した転写因子(遺伝子)により示す。下向きの矢印は、CRE特異的なsiRNAによりCREが阻害される場合にダウンレギュレートされる遺伝子を示す。 図9は、本発明の例示的な実施形態についての模式的なフローチャートを示す。このフローチャートは、コンピューター上で実行され得る。 図10は、本発明の例示的なコンピュータシステムである。 図11は、機能レポーターとsiRNAとの組み合わせ行列の例である。 図12は、HeLaアレイを走査した画像(16ビット TIFF画像)である。各々の混合溶液を、下部パネルのようにプリントし、細胞の播種後、アレイスキャナーを使用して、画像を得た(上部のパネルを参照のこと)。 図13は、ヒト神経芽細胞腫SHSY5Yの神経突起生成を示す。SH−SY5Yを培養し、これらにRAを添加すると、コリン作用性のニューロン様細胞に分化し、NGFを添加すると、ドーパミン作用性のニューロン様細胞に分化した。この実験では、1512個のスポット/siRNAのチップを研究した。 図14は、神経突起の全長/核の個数、対、チロシンキナーゼに標的化するsiRNA(85種類)のグラフである。 図15は、神経突起生成におけるチロシンキナーゼの機能上の役割を解析する合理的アプローチの概要である。図15A(左上)のように、レチノイン酸(RA)存在下で、siRNAが神経突起伸長を阻害した集合(以後、RA集合)と、NGF存在下で、siRNAが神経突起伸長を阻害した集合(以後、NGF集合)とは、別個に(独立して)存在する。図15Bは(右上)、RA集合とNGF集合とが重複する元を有する場合を示す。図15C(左下)は、NGF集合がRA集合に包含される場合を示す。図15D(左下)は、RA集合がNGF集合に包含される場合を示す。 図16は、細胞ベースのsiRNAアッセイの包括的なデータから得た合理的な関係により多くのキナーゼを明らかにしたことを示す。 図17は、EGFR−siRNA、EPHA2−siRNA、EPHA3−siRNA、#075−siRNA、KIT−siRNA、#054−siRNA、RET−siRNAおよび#006−siRNAの結果を示す。 図18は、各々の因子に曝露した場合の、神経突起を保持する細胞のパーセンテージを示す。 図19は、レセプター型チロシンキナーゼに対する各々のリガンドの存在下での、マーカー酵素の発現を示す。 図20は、合理的な関係と生物学的な結果との比較である。
(配列表の説明)
配列番号1は、c−Mycのヌクレオチド配列(遺伝子登録番号:V00568)を示す。
配列番号2は、c−Mycのアミノ酸配列(遺伝子登録番号:V00568)を示す。
配列番号3は、c−Fosのヌクレオチド配列(遺伝子登録番号:K00650)を示す。
配列番号4は、c−Fosのアミノ酸配列(遺伝子登録番号:K00650)を示す。
配列番号5は、c−Junのヌクレオチド配列(遺伝子登録番号:J04111)を示す。
配列番号6は、c−Junのアミノ酸配列(遺伝子登録番号:J04111)を示す。
配列番号7は、CREBのヌクレオチド配列(遺伝子登録番号:M27691)を示す。
配列番号8は、CREBのアミノ酸配列(遺伝子登録番号:M27691)を示す。
配列番号9は、E2Fのヌクレオチド配列(遺伝子登録番号:M96577)を示す。
配列番号10は、E2Fのアミノ酸配列(遺伝子登録番号:M96577)を示す。
配列番号11は、ERのヌクレオチド配列(遺伝子登録番号:M12674)を示す。
配列番号12は、ERのアミノ酸配列(遺伝子登録番号:M12674)を示す。
配列番号13は、GRのヌクレオチド配列(遺伝子登録番号:M10901)を示す。
配列番号14は、GRのアミノ酸配列(遺伝子登録番号:M10901)を示す。
配列番号15は、HSF−1のヌクレオチド配列(遺伝子登録番号:NM_005526)を示す。
配列番号16は、HSF−1のアミノ酸配列(遺伝子登録番号:NM_005526)を示す。
配列番号17は、HSF−2のヌクレオチド配列(遺伝子登録番号:M65217)を示す。
配列番号18は、HSF−2のアミノ酸配列(遺伝子登録番号:M65217)を示す。
配列番号19は、HSF−4のヌクレオチド配列(遺伝子登録番号:D87673)を示す。
配列番号20は、HSF−4のアミノ酸配列(遺伝子登録番号:D87673)を示す。
配列番号21は、IkBaのヌクレオチド配列(遺伝子登録番号:M69043)を示す。
配列番号22は、IkBaのアミノ酸配列(遺伝子登録番号:M69043)を示す。
配列番号23は、NFAT3のヌクレオチド配列(遺伝子登録番号:L41066)を示す。
配列番号24は、NFAT3のアミノ酸配列(遺伝子登録番号:L41066)を示す。
配列番号25は、NFkBのヌクレオチド配列(遺伝子登録番号:S76638)を示す。
配列番号26は、NFkBのアミノ酸配列(遺伝子登録番号:S76638)を示す。
配列番号27は、RARAのヌクレオチド配列(遺伝子登録番号:NM_000964)を示す。
配列番号28は、RARAのアミノ酸配列(遺伝子登録番号:NM_000964)を示す。
配列番号29は、RARAのヌクレオチド配列(遺伝子登録番号:NM_000965)を示す。
配列番号30は、RARAのアミノ酸配列(遺伝子登録番号:NM_000965)を示す。
配列番号31は、RARB1のヌクレオチド配列(遺伝子登録番号:NM_016152)を示す。
配列番号32は、RARB1のアミノ酸配列(遺伝子登録番号:NM_016152)を示す。
配列番号33は、RARB2のヌクレオチド配列(遺伝子登録番号:M57707)を示す。
配列番号34は、RARB2のアミノ酸配列(遺伝子登録番号:M57707)を示す。
配列番号35は、RARGのヌクレオチド配列(遺伝子登録番号:M15400)を示す。
配列番号36は、RARGのアミノ酸配列(遺伝子登録番号:M15400)を示す。
配列番号37は、Rbのヌクレオチド配列(遺伝子登録番号:J03161)を示す。
配列番号38は、Rbのアミノ酸配列(遺伝子登録番号:J03161)を示す。
配列番号39は、SRFのヌクレオチド配列(遺伝子登録番号:M97935)を示す。
配列番号40は、SRFのアミノ酸配列(遺伝子登録番号:M97935)を示す。
配列番号41は、STAT1aのヌクレオチド配列(遺伝子登録番号:M97936)を示す。
配列番号42は、STAT1aのアミノ酸配列(遺伝子登録番号:M97936)を示す。
配列番号43は、STAT1bのヌクレオチド配列(遺伝子登録番号:M97934)を示す。
配列番号44は、STAT1bのアミノ酸配列(遺伝子登録番号:M97934)を示す。
配列番号45は、STAT2のヌクレオチド配列(遺伝子登録番号:L29277)を示す。
配列番号46は、STAT2のアミノ酸配列(遺伝子登録番号:L29277)を示す。
配列番号47は、STAT3のヌクレオチド配列(遺伝子登録番号:Y00479)を示す。
配列番号48は、STAT3のアミノ酸配列(遺伝子登録番号:Y00479)を示す。
配列番号49は、P53のヌクレオチド配列(遺伝子登録番号:AF307851)を示す。
配列番号50は、Scrambleのアミノ酸配列(遺伝子登録番号:AF307851)を示す。
配列番号51は、フィブロネクチンのヌクレオチド配列を示す。
配列番号52は、フィブロネクチンのアミノ酸配列を示す。
配列番号53は、c−Fos siRNAのヌクレオチド配列を示す。
配列番号54は、c−Jun siRNAのヌクレオチド配列を示す。
配列番号55は、CREB siRNAのヌクレオチド配列を示す。
配列番号56は、E2F siRNAのヌクレオチド配列を示す。
配列番号57は、ER siRNAのヌクレオチド配列を示す。
配列番号58は、GR siRNAのヌクレオチド配列を示す。
配列番号59は、HSF−1 siRNAのヌクレオチド配列を示す。
配列番号60は、HSF−2 siRNAのヌクレオチド配列を示す。
配列番号61は、HSF−4 siRNAのヌクレオチド配列を示す。
配列番号62は、IkBa siRNAのヌクレオチド配列を示す。
配列番号63は、NFAT3 siRNAのヌクレオチド配列を示す。
配列番号64は、NFkB siRNAのヌクレオチド配列を示す。
配列番号65は、RARA siRNAのヌクレオチド配列を示す。
配列番号66は、RARB1 siRNAのヌクレオチド配列を示す。
配列番号67は、RARB2 siRNAのヌクレオチド配列を示す。
配列番号68は、RARG siRNAのヌクレオチド配列を示す。
配列番号69は、Rb siRNAのヌクレオチド配列を示す。
配列番号70は、SRF siRNAのヌクレオチド配列を示す。
配列番号71は、STAT1a siRNAのヌクレオチド配列を示す。
配列番号72は、STAT1b siRNAのヌクレオチド配列を示す。
配列番号73は、STAT2 siRNAのヌクレオチド配列を示す。
配列番号74は、STAT3 siRNAのヌクレオチド配列を示す。
配列番号75は、TR siRNAのヌクレオチド配列を示す。
配列番号76は、p53 siRNAのヌクレオチド配列を示す。
配列番号77は、scramble II Duplexのヌクレオチド配列(遺伝子登録番号:AF307851)を示す。
配列番号78は、キナーゼEGFRのヌクレオチド配列を示す。
配列番号79は、キナーゼEGFRのアミノ酸配列を示す。
配列番号80は、キナーゼEPHA2のヌクレオチド配列を示す。
配列番号81は、キナーゼEPHA2のアミノ酸配列を示す。
配列番号82は、キナーゼEPHA3のヌクレオチド配列を示す。
配列番号83は、キナーゼEPHA3のアミノ酸配列を示す。
配列番号84は、キナーゼ#075のヌクレオチド配列を示す。
配列番号85は、キナーゼ#075のアミノ酸配列を示す。
配列番号86は、キナーゼKITのヌクレオチド配列を示す。
配列番号87は、キナーゼKITのアミノ酸配列を示す。
配列番号88は、キナーゼ#054のヌクレオチド配列を示す。
配列番号89は、キナーゼ#054のアミノ酸配列を示す。
配列番号90は、キナーゼRETのヌクレオチド配列を示す。
配列番号91は、キナーゼRETのアミノ酸配列を示す。
配列番号92は、キナーゼ#006のヌクレオチド配列を示す。
配列番号93は、キナーゼ#006のアミノ酸配列を示す。

Claims (43)

  1. 生物学的実体における生物学的機能のネットワークを解析するための方法であって、該方法は:
    A)生物学的実体を少なくとも1種類の摂動因子に供する工程、
    B)該生物学的実体内の、生物学的機能を反映する機能レポーターのうち、少なくとも2種類についての情報を得る工程、および
    C)該得られた情報を集合論による処理に供し、該機能レポーター間の関係を計算して、該生物学的機能のネットワークの関係を作成する工程、
    を包含する、方法。
  2. 前記生物学的実体が細胞である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記摂動因子が、siRNA、shRNA、miRNAおよびリボザイムを含むRNA、化合物、cDNA、抗体、ポリペプチド、光、音、圧力変化、放射、熱ならびにガスからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
  4. 前記摂動因子が、前記機能レポーターの機能を特異的に調節し得るsiRNAを含む、請求項1に記載の方法。
  5. 前記機能レポーターが測定可能なシグナルを伝達し得る、請求項1に記載の方法。
  6. 前記機能レポーターが、転写因子、調節遺伝子、構造遺伝子、細胞マーカー、細胞表面マーカー、細胞の形状、細胞小器官の形状、細胞の運動性、酵素活性、代謝産物の濃度および細胞の構成要素の局在からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
  7. 請求項1に記載の方法であって、前記集合論による処理が、前記少なくとも2種類の機能レポーターのうち、2種類の特定の機能レポーターを、
    a)独立、
    b)包含、および
    c)共通部分、
    からなる群より選択される関係へ分類する工程を包含し、
    ここで、該関係が独立であると決定される場合、該2種類の特定の機能レポーターが、前記ネットワーク内で関係を有さないと決定され、
    該関係が包含であると決定される場合、該2種類の特定の機能レポーターのうちの一方が、該2種類の特定の機能レポーターのうちの他方に含まれると決定され、かつ該2種類の特定の機能レポーターのうちの一方が、該2種類の特定の機能レポーターのうちの他方の下流に位置し、
    該関係が共通部分であると決定される場合、該2種類の特定の機能レポーターが、別の共通の機能から分岐した下流に位置すると決定される、
    方法。
  8. 前記集合論による処理が、前記機能レポーターごとに、前記摂動因子による応答の有無をマッピングする工程を包含する、請求項1に記載の方法。
  9. 前記レポーター間の関係の計算が、独立、包含および共通部分に分類された、各々の機能レポーター間の相関を含み、該相関の一覧を作成する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
  10. 1つの細胞内パスウェイを等しく標的化するのに十分な個数の前記摂動因子が調製される、請求項1に記載の方法。
  11. 前記少なくとも2種類の機能レポーターについての情報は、所望の時間後の前記摂動因子の影響に基づく、請求項1に記載の方法。
  12. 請求項1に記載の方法であって、前記影響が、閾値に関して、以下の3つの群:
    ポジティブな影響=+;
    影響なし=0および
    ネガティブな影響=−
    に分類される、方法。
  13. 請求項1に記載の方法であって、前記少なくとも2種類の機能レポーターについての情報は、所望の時間後の前記摂動因子の影響に基づき、ここで、前記集合論による処理は、以下の工程を包含する:
    a)該影響と該機能レポーターについての閾値とを比較し、
    ポジティブな影響=+、影響なし=0、およびネガティブな影響=−
    の3つの群に分類することにより、該情報を3つのカテゴリに分類する工程、
    b)該機能レポーターのうちの2種類が、同一の型の影響を有する共通の摂動因子を有するか否かを決定する工程であって、ここで、
    このような共通の摂動因子が存在しない場合、該2種類の機能レポーターに対応する2種類の機能は、互いに異なる摂動因子の下に配置され、
    このような共通の摂動因子が存在する場合、以下の工程c)を実施する、工程
    c)該2種類の機能のうちの一方の機能に対する摂動因子の集合が、該2種類の機能のうちの他方の機能に対する摂動因子の集合に完全に包含されるか否かを決定する工程であって、ここで、
    このことが真である場合、より大きな集合を有する一方の機能が、より小さな集合を有する他方の機能の下に配置され、
    このことが真ではない場合、該2種類の機能が、同一の摂動因子の下に並行して配置される、工程、
    d)該機能レポーターの全ての組合せを調べるか否かを決定する工程であって、ここで、
    このことが真である場合、該機能の関係の全てを統合して、現時点での全体的な摂動影響ネットワークにし、
    このことが真ではない場合、工程a)〜工程c)を反復する、
    方法。
  14. 前記3つの群が、+1、0および−1に分類される、請求項13に記載の方法。
  15. 前記工程a)〜工程c)が、M×N行列を作製することによって判断され、ここでMは機能レポーターの個数を指し、Nは摂動因子の個数を指す、請求項13に記載の方法。
  16. 実際の生物学的実験を実行することによって、前記作製されたネットワークを解析する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
  17. 前記解析工程が、該機能に特異的な調節因子の使用を包含する、請求項16に記載の方法。
  18. 前記調節因子がsiRNAである、請求項17に記載の方法。
  19. 前記ネットワークが、シグナル伝達経路および細胞パスウェイを含む、請求項1に記載の方法。
  20. 前記ネットワークが、バイオマーカーの同定、創薬ターゲットの解析、副作用解析、細胞機能の診断、細胞パスウェイ解析、化合物の生物影響評価および感染症診断からなる群より選択される使用のために使用される、請求項1に記載の方法。
  21. 生物学的実体内の生物学的機能のネットワーク解析システムであって、該システムは:
    A)生物学的実体に対する、少なくとも1種類の摂動因子、
    B)該生物学的実体内の、生物学的機能を反映する機能レポーターのうち、少なくとも2種類についての情報を得る手段、および
    C)該得られた情報を集合論による処理に供し、該機能レポーター間の関係を計算して、該生物学的機能のネットワークの関係を作製する手段、
    を備える、システム。
  22. 前記生物学的実体が細胞である、請求項21に記載のシステム。
  23. 前記摂動因子が、siRNA、化合物、cDNA、抗体、ポリペプチド、光、音、圧力変化、放射、熱ならびにガスからなる群より選択される、請求項21に記載のシステム。
  24. 前記摂動因子が、前記機能レポーターの機能を特異的に調節し得るsiRNAを含む、請求項21に記載のシステム。
  25. 前記機能レポーターが測定可能なシグナルを伝達し得る、請求項21に記載のシステム。
  26. 前記機能レポーターが、転写因子、構造遺伝子、細胞マーカー、細胞表面マーカー、細胞の形状、細胞小器官の形状、細胞の運動性、酵素活性、代謝産物の濃度および細胞の構成要素の局在からなる群より選択される、請求項21に記載のシステム。
  27. 請求項21に記載のシステムであって、前記集合論による処理が、前記少なくとも2種類の機能レポーターのうち、2種類の特定の機能レポーターを、以下からなる群より選択される関係へ分類する工程を包含する:
    a)独立、
    b)包含、および
    c)共通部分、
    ここで、該関係が独立であると決定される場合、該2種類の特定の機能レポーターが、前記ネットワーク内で関係を有さないと決定され、
    該関係が包含であると決定される場合、該2種類の特定の機能レポーターのうちの一方が、該2種類の特定の機能レポーターのうちの他方に含まれると決定され、かつ該2種類の特定の機能レポーターのうちの一方が、該2種類の特定の機能レポーターのうちの他方の下流に位置し、
    該関係が共通部分であると決定される場合、該2種類の特定の機能レポーターが、別の共通の機能から分岐した下流に位置すると決定される、
    システム。
  28. 前記集合論による処理が、前記機能レポーターごとに、前記摂動因子による応答の有無をマッピングする工程を包含する、請求項21に記載のシステム。
  29. 前記レポーター間の関係の計算が、独立、包含および共通部分に分類された、各々の機能レポーター間の相関を含み、該相関の一覧を作成する工程を包含する、請求項21に記載のシステム。
  30. 1つの細胞内パスウェイを等しく標的化するのに十分な個数の前記摂動因子が調製される、請求項21に記載のシステム。
  31. 情報を得るための前記手段は、所望の時間後の前記摂動因子の影響に基づく、前記少なくとも2種類の機能レポーターについての情報を得るための手段を備える、請求項21に記載のシステム。
  32. 請求項21に記載のシステムであって、前記影響が、閾値に関して、ポジティブな影響=+、影響なし=0、およびネガティブな影響=−の3つの群に分類される、システム。
  33. 請求項21に記載のシステムであって、前記少なくとも2種類の機能レポーターについての情報は、所望の時間後の前記摂動因子の影響に基づき、ここで、該得られた情報を集合論による処理に供する手段は、以下の手段を備える:
    a)該影響と該機能レポーターについての閾値とを比較し、ポジティブな影響=+、影響なし=0、およびネガティブな影響=−の3つの群に分類することにより、該情報を3つのカテゴリに分類するための手段、
    b)該機能レポーターのうちの2種類が、同一の型の影響を有する共通の摂動因子を有するか否かを決定するための手段であって、ここで、
    このような共通の摂動因子が存在しない場合、該2種類の機能レポーターに対応する2種類の機能は、互いに異なる摂動因子の下に配置され、
    このような共通の摂動因子が存在する場合、以下の工程c)を実施する、手段
    c)該2種類の機能のうちの一方の機能に対する摂動因子の集合が、該2種類の機能のうちの他方の機能に対する摂動因子の集合に完全に包含されるか否かを決定するための手段であって、ここで、
    このことが真である場合、より大きな集合を有する一方の機能が、より小さな集合を有する他方の機能の下に配置され、
    このことが真ではない場合、該2種類の機能が、同一の摂動因子の下に並行して配置される、手段、
    d)該機能レポーターの全ての組合せを調べるか否かを決定するための手段であって、ここで、
    このことが真である場合、該機能の関係の全てを統合して、現時点での全体的な摂動影響ネットワークにし、
    このことが真ではない場合、工程a)〜工程c)を反復する、
    システム。
  34. 前記3つの群が、+1、0および−1に分類される、請求項33に記載のシステム。
  35. 前記手段a)〜手段c)が、M×N行列を作製することによって実行され、ここでMは機能レポーターの個数を指し、Nは摂動因子の個数を指す、請求項33に記載のシステム。
  36. 実際の生物学的実験を実行することによって、前記作製されたネットワークを解析するための手段をさらに備える、請求項21に記載のシステム。
  37. 前記解析するための手段が、該機能に特異的な調節因子を含む、請求項36に記載のシステム。
  38. 前記調節因子がsiRNAである、請求項37に記載のシステム。
  39. 前記ネットワークが、シグナル伝達経路を含む、請求項21に記載のシステム。
  40. 前記ネットワークが、バイオマーカーの同定、創薬ターゲットの解析、副作用解析、細胞機能の診断、細胞パスウェイ解析、化合物の生物影響評価および感染症診断からなる群より選択される使用のために使用される、請求項21に記載のシステム。
  41. 生物学的実体における生物学的機能のネットワークを解析するための方法を、コンピュータ上で実行するコンピュータプログラムであって、該方法は:
    A)生物学的実体を少なくとも1種類の摂動因子に供する工程、
    B)該生物学的実体内の、生物学的機能を反映する機能レポーターのうち、少なくとも2種類についての情報を得る工程、および
    C)該得られた情報を集合論による処理に供し、該機能レポーター間の関係を計算して、該生物学的機能のネットワークの関係を作成する工程、
    を包含する、コンピュータプログラム。
  42. 生物学的実体における生物学的機能のネットワークを解析するための方法を、コンピュータ上で実行するコンピュータプログラムを含む記憶媒体であって、該方法は:
    A)生物学的実体を少なくとも1種類の摂動因子に供する工程、
    B)該生物学的実体内の、生物学的機能を反映する機能レポーターのうち、少なくとも2種類についての情報を得る工程、および
    C)該得られた情報を集合論による処理に供し、該機能レポーター間の関係を計算して、該生物学的機能のネットワークの関係を作成する工程、
    を包含する、記憶媒体。
  43. 生物学的実体における生物学的機能のネットワークを解析するための方法を、コンピュータ上で実行するコンピュータプログラムを含む通信媒体であって、該方法は:
    A)生物学的実体を少なくとも1種類の摂動因子に供する工程、
    B)該生物学的実体内の、生物学的機能を反映する機能レポーターのうち、少なくとも2種類についての情報を得る工程、および
    C)該得られた情報を集合論による処理に供し、該機能レポーター間の関係を計算して、該生物学的機能のネットワークの関係を作成する工程、
    を包含する、通信媒体。
JP2007537471A 2004-10-29 2005-10-28 生物学的機能のネットワークを解析するための方法およびシステム Pending JP2008518319A (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US62331104P 2004-10-29 2004-10-29
PCT/IB2005/053537 WO2006046217A2 (en) 2004-10-29 2005-10-28 Methods and systems for analyzing a network of biological functions

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2008518319A true JP2008518319A (ja) 2008-05-29

Family

ID=36228158

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007537471A Pending JP2008518319A (ja) 2004-10-29 2005-10-28 生物学的機能のネットワークを解析するための方法およびシステム

Country Status (6)

Country Link
US (1) US20070174009A1 (ja)
EP (1) EP1805682A2 (ja)
JP (1) JP2008518319A (ja)
AU (1) AU2005298309A1 (ja)
CA (1) CA2595627A1 (ja)
WO (1) WO2006046217A2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5024823B2 (ja) * 2007-05-30 2012-09-12 独立行政法人産業技術総合研究所 細胞運動性評価セルチップ
EP2887245A1 (en) * 2013-12-20 2015-06-24 Dassault Systèmes A computer-implemented method for designing a biological model

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2003027262A2 (en) * 2001-09-26 2003-04-03 Gni Kk Biological discovery using gene regulatory networks generated from multiple-disruption expression libraries
JP2004334722A (ja) * 2003-05-09 2004-11-25 Nec Corp 推定支援システム

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US5777888A (en) * 1995-08-09 1998-07-07 Regents Of The University Of California Systems for generating and analyzing stimulus-response output signal matrices
US20030130798A1 (en) * 2000-11-14 2003-07-10 The Institute For Systems Biology Multiparameter integration methods for the analysis of biological networks
US20050154535A1 (en) * 2004-01-09 2005-07-14 Genstruct, Inc. Method, system and apparatus for assembling and using biological knowledge

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2003027262A2 (en) * 2001-09-26 2003-04-03 Gni Kk Biological discovery using gene regulatory networks generated from multiple-disruption expression libraries
JP2004334722A (ja) * 2003-05-09 2004-11-25 Nec Corp 推定支援システム

Also Published As

Publication number Publication date
AU2005298309A1 (en) 2006-05-04
WO2006046217A9 (en) 2007-07-12
WO2006046217A2 (en) 2006-05-04
CA2595627A1 (en) 2006-05-04
EP1805682A2 (en) 2007-07-11
WO2006046217A8 (en) 2007-04-12
US20070174009A1 (en) 2007-07-26

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US20090012766A1 (en) Event Sequencer
EP1764717A1 (en) Cell network analysis system
JP2010207222A (ja) デジタル細胞
Dräger et al. A CRISPRi/a platform in human iPSC-derived microglia uncovers regulators of disease states
Batish et al. Neuronal mRNAs travel singly into dendrites
US20070054266A1 (en) Chemical sensor system
Porazinski et al. YAP is essential for tissue tension to ensure vertebrate 3D body shape
Ziauddin et al. Microarrays of cells expressing defined cDNAs
Kuschel et al. Cell adhesion profiling using extracellular matrix protein microarrays
CN115698335A (zh) 使用机器学习模型预测疾病结果
Alkasalias et al. RhoA knockout fibroblasts lose tumor-inhibitory capacity in vitro and promote tumor growth in vivo
TWI831766B (zh) 用於區別對靶標之效應的系統及方法
US20080108513A1 (en) Cellular Arrays
Hurtig et al. The patterned assembly and stepwise Vps4-mediated disassembly of composite ESCRT-III polymers drives archaeal cell division
Smits et al. Maternal recognition of pregnancy in the horse: Are microRNAs the secret messengers?
JP2008518319A (ja) 生物学的機能のネットワークを解析するための方法およびシステム
US20090004171A1 (en) Compound profiling method
Farah et al. Spatially organized cellular communities form the developing human heart
JP2006522605A (ja) 経時的細胞解析法
Yu et al. Exosomal miR-205-5p Improves Endometrial Receptivity by Upregulating E-Cadherin Expression through ZEB1 Inhibition
Starkuviene et al. High-Density Cell Arrays for Genome-Scale Phenotypic Screening
Ren et al. Intelligence as proxy phenotype providing insight into the heterogeneity of schizophrenia
Kong et al. Endogenous retrovirus HERVH-derived lncRNA UCA1 controls human trophoblast development
CN117881797A (zh) Rna翻译状态的单细胞分析
Simola et al. Post-transcriptional Control in Mammalian Dendrites

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20080206

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20080319

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20091228

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20100420