JPWO2003091430A1 - グルコース脱水素酵素βサブユニット及びそれをコードするDNA - Google Patents

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Abstract

ブルクホルデリア・セパシアKS1株由来GDHのβサブユニットのN末端シグナル配列領域の塩基配列からデザインしたプライマーを用いたインバースPCRにより、βサブユニットをコードするDNA断片を得る。

Description

技術分野
本発明は、グルコース脱水素酵素のβサブユニットを構成するチトクロームC、それをコードするDNA、及びそれらの利用に関する。グルコース脱水素酵素は、酵素電極を用いたグルコースセンサ等に有用である。
背景技術
特定の基質に対して特異的に反応する酵素を用いたバイオセンサの開発は、産業の分野を問わず盛んに行われている。その中でも特にバイオセンサの1つであるグルコースセンサは、主に医療分野で測定方法やその方法を利用した装置の開発が盛んに行われている。例えばグルコースセンサは、1962年にClarkとLyonsによってグルコースオキシダーゼと酸素電極を組み合わせたバイオセンサーの報告(L.c.Clark,J.and Lyonas,C.”Electrode systems for continuous monitoring in cardiovascular surgery.”Ann,n.y.Acad.Sci.105:20−45)が最初にされて以来、約40年ほどの歴史を有している。
このように、グルコースセンサに、酵素としてグルコースオキシダーゼが採用されてからの歴史は長い。なぜならグルコースオキシダーゼは、グルコースに対する基質特異性が高く、熱安定性に優れており、更に酵素の量産化が可能であり、生産コストが他の酵素と比べて安価である、からである。基質特異性が高いということは、酵素がグルコース以外の糖とは反応しないため、測定値に誤差を生じることなく、正確な測定が行なえるという利点に通じる。また、熱安定性に優れているということは、酵素が熱により変性し酵素活性が失活するという問題を防止することができ、長期間正確な測定が行えるという利点に通じる。
しかし、グルコースオキシダーゼは、上記の様なメリットを有している反面、例えば溶存酸素の影響を受け、測定結果に影響があるという問題も有している。
一方、グルコースオキシダーゼ以外には、グルコース脱水素酵素(以下、「グルコースデヒドロゲナーゼ」又は「GDH」ともいう)を利用したグルコースセンサの開発も行われてきた。そして、酵素も、微生物から発見されている。例えば、バチルス(Bacillus)属由来のグルコースデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.47)及びクリプトコッカス(Cryptococcus)属由来グルコースデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.119)が知られている。
前者のグルコースデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.47)は、β−D−グルコース+NAD(P)→D−δ−グルコノラクトン+NAD(P)H+Hの反応を触媒する酵素であり、後者のグルコースデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.119)は、D−グルコース+NADP→D−δ−グルコノラクトン+NADPH+Hの反応を触媒する酵素であり、前述した微生物由来のグルコースデヒドロゲナーゼは、既に市販もされている。
これらグルコースデヒドロゲナーゼは、測定サンプルの溶存酸素の影響を受けないという利点を有する。このことは、酸素分圧が低い環境下で測定を行ったり、酸素量が多く要求される高濃度サンプルを測定する場合であっても、測定結果に誤差を及ぼさずに正確に測定することができるという利点に通じる。
しかし、従来に見られるグルコースデヒドロゲナーゼは、溶存酸素の影響を受けない一方、熱安定性が悪く、基質特異性がグルコースオキシダーゼよりも劣るという問題点を有しており、センサに採用される酵素として、グルコースオキシダーゼやグルコースデヒドロゲナーゼの両欠点を補う酵素の提供が望まれていた。
尚、本発明者は Sode,K.,Tsugawa,W.,Yamazaki,T.,Watanabe,M.,Ogasawara,N.,and Tanaka,M.,(1996)Enzyme Microb.Technol.19,82−85.や、Yamazaki,T.,Tsugawa,W.,and Sode,K.,(1999)Appli Biochemi and Biotec.77−79/0325や、Yamazaki,T.,Tsugawa,W.,and Sode,K.,(1999)Biotec Lett.21,199−202において、温泉近くの土壌より採取した試料を用い、GDHについての研究結果を報告している。この試料中の微生物が産出するGDHは補酵素結合型であり、すでに至適反応温度、熱安定性、基質特異性などの酵素学的性質が明らかとなっている(前記文献)。本酵素は高い耐熱性を持つ触媒サブユニット(αサブユニット)、電子伝達サブユニット(βサブユニット)、機能不明のγサブユニットから構成されているヘテロオリゴマー酵素であり、活性のピークを45℃と75℃に持つ。また、γ、αサブユニット遺伝子はクローニングされており、上記微生物がブルクホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)に属すること、及びβサブユニットのN末端アミノ酸配列も明らかにされている(猪瀬 健、東京農工大学修士論文(2001年))。しかし、βサブユニット遺伝子の構造は未だ報告されていない。
発明の開示
本発明は、ブルクホルデリア属微生物のGDHβサブユニットをコードするDNA、及びその利用法を提供することを課題とする。
本発明者は、ブルクホルデリア・セパシアKS1株のGDHに関する研究をさらに進め、GDHβサブユニットをコードするDNAを単離することに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)以下の(A)または(B)に示すタンパク質。
(A)配列番号16のアミノ酸番号23〜425からなるアミノ酸配列を少なくとも有するタンパク質。
(B)配列番号16のアミノ酸番号23〜425からなるアミノ酸配列において、1〜20個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、又は付加されたアミノ酸配列を有し、グルコース脱水素酵素βサブユニットとして機能し得るタンパク質。
(2)以下の(A)又は(B)のタンパク質をコードするDNA。
(A)配列番号16のアミノ酸番号23〜425からなるアミノ酸配列を少なくとも有するタンパク質。
(B)配列番号16のアミノ酸番号23〜425からなるアミノ酸配列において、1〜20個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、又は付加されたアミノ酸配列を有し、グルコース脱水素酵素βサブユニットとして機能し得るタンパク質。
(3)以下の(a)又は(b)に示すDNAである(2)に記載のDNA。
(a)配列番号15の塩基番号187〜1398からなる塩基配列を含むDNA。
(b)配列番号15の塩基番号187〜1398からなる塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るDNA。
(4)さらに配列番号15の塩基番号121〜187からなる塩基配列を含む(3)に記載のDNA。
(5)(2)〜(4)のいずれかに記載のDNAを含有する組換えベクター。
(6)(2)〜(4)のいずれかに記載のDNA又は(5)の組換えベクターで形質転換された形質転換体。
(7)(6)に記載の形質転換体を培養して、前記DNAの発現産物としてグルコース脱水素酵素βサブユニットを産生させ、これを採取するグルコース脱水素酵素βサブユニットの製造方法。
(8)さらにブルクホルデリア・セパシアのグルコース脱水素酵素αサブユニット及びγサブユニットをコードする塩基配列を含む(3)又は(4)に記載のDNA。
(9)(8)に記載のDNAを含有する組換えベクター。
(10)(8)に記載のDNA又は(9)に記載の組換えベクターで形質転換された形質転換体。
(11)(10)に記載の形質転換体を培養して、前記DNAの発現産物としてグルコース脱水素酵素複合体を産生させ、これを採取するグルコース脱水素酵素複合体の製造方法。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、ブルクホルデリア・セパシアKS1株のGDHβサブユニットをコードするDNAを検索し、単離した。同菌株は、2000年9月25日に、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に受託番号第FERM BP−7306として寄託されている。本明細書において、GDHβサブユニットをコードするDNAを、本発明のDNA、「βサブユニット構造遺伝子」又は単に「βサブユニット遺伝子」ということがある。
本発明者らは、ブルクホルデリア・セパシアKS1株が産生するGDHは、αサブユニット、βサブユニット、及びγサブユニットを含む多量体タンパク質であることを確認している。本発明のタンパク質は、これらのサブユニットのうち、βサブユニットである。GDHの分光光度解析により、酸化型GDHの吸収波長はグルコノバクターSp.、アセトバクターsp.のデヒドロゲナーゼチトクローム複合体でできているアルコールデヒドロゲナーゼおよびアルデヒドデヒドロゲナーゼの吸収波長と類似しており、熱処理によりこの吸収は失われる。このことと、下記に示すβサブユニットの有無によるGDHの至適反応温度の相違から、βサブユニットはチトクロームCからなっていることが示唆された。
以下に、上記GDHの理化学的性質を示す。
▲1▼作用:
グルコースの脱水素反応を触媒する。
▲2▼還元条件下でのSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動において、分子量約60kDaと分子量約43kDaを示すサブユニットからなる。
▲3▼TSK gel G3000SW(東ソー(株)製)を用いたゲル濾過クロマトグラフィーにおいて、分子量約380kDaを示す。
▲4▼至適反応温度:
45℃付近 (Tris−HCl緩衝液、pH8.0)。
また、αサブユニット単独では、以下の理化学的性質を示す。
▲1▼’グルコース脱水素酵素活性を有する。
▲2▼’還元条件下でのSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動において、分子量約60kDaを示す。
▲3▼’至適反応温度:
75℃付近 (Tris−HCl緩衝液、pH8.0)。
βサブユニットは、ブルクホルデリア・セパシアKS1株の培養物から、GDH活性を指標としてGDH複合体を精製することにより、他のサブユニットとともに取得することができる。GDH活性は、公知のGDHの活性測定と同様の方法で測定することができる。具体的には、例えば次のようにして測定することができる。594μMの1−メトキシフェナジンメトサルフェート(mPMS)および5.94μMの2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(DCIP)を含む10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に、酵素試料および基質としてグルコースを基質として加え、37℃でインキュベートする。分光光度計を用いてDCIPの600nmにおける吸光度変化を追跡し、当該吸光度の減少速度を酵素反応速度とする。
また、本発明によりβサブユニットをコードする遺伝子の塩基配列(配列番号15)が明らかにされたので、この塩基配列を有するDNA又は同DNAがコードするアミノ酸配列と同じアミノ酸配列をコードするDNAを適当な宿主で発現させることによってもβサブユニットを製造することができる。配列番号15のオープンリーディングフレーム(ORF)がコードし得るアミノ酸配列を、配列番号16に、示す。タンパク質から決定したβサブユニットのN末端アミノ酸配列は、配列番号16のアミノ酸番号23〜38と一致していた。したがって、アミノ酸番号1〜22はシグナルペプチドであると推定される。尚、配列番号15及び16において、第1番目のアミノ酸残基はValと記載されているが、Metである可能性が高く、また、翻訳後に脱落している可能性がある。
上記アミノ酸配列についてBLASTによるホモロジー検索を行ったところ、ラルストニア・ソアナセアルム(Ralstonia solanacearum)由来のオキシドレダクターゼ脱水素酵素のシトクロムcサブユニットと65%、グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)由来のソルビトール脱水素酵素のシトクロムcサブユニットと48%、エルビニア・シプリペディイ(Eriwinia cypripedii)由来のグルコン酸脱水素酵素のシトクロームcサブユニットと44%、パントエア・シトレア(Pantoea citrea)由来2−ケト−グルコン酸脱水素酵素のシトクロームcサブユニットと塩基配列レベルで55.7%、アミノ酸レベルで46.4%と、全体にわたって高い相同性を示していた。またこれらのシトクロームcのアミノ酸配列中には、ヘム結合モチーフ(配列番号18)配列が保存されていた。これらのことから、本発明のβサブユニットがチトクロームCであることが示された。
本発明のβサブユニットは、GDHのβサブユニットとして機能し得る限り、配列番号16のアミノ酸番号23〜425からなるアミノ酸配列において、1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜5個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、又は付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。尚、GDHのβサブユニットとして機能するとは、GDHの酵素活性を損なわずにチトクロームCとして機能することをいう。
本発明のDNAは、上記βサブユニットをコードするDNAであり、例えばブルクホルデリア・セパシアKS1株から取得することができる。本発明のDNAは、本発明を完成する過程においては、ブルクホルデリア・セパシアKS1株の染色体DNAから単離された。本発明のDNAは、例えば、配列番号13及び14に示す塩基配列を有するプライマーを用い、ブルクホルデリア・セパシアKS1株の染色体DNAを鋳型とするPCRによって、取得することができる。また、本発明によりその塩基配列及び同塩基配列によってコードされるアミノ酸配列が明らかとなったので、これらの配列に基づいて化学合成することによっても取得することができる。また、前記配列に基づいて作製したオリゴヌクレオチドをプローブとするハイブリダイゼーションによって、ブルクホルデリア・セパシアKS1株の染色体DNAから取得することもできる。また、ブルクホルデリア・セパシアの他の菌株からも、同様にしてバリアントを取得することができる。
本発明のDNAは、配列番号16のアミノ酸番号23〜425からなるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするものの他、このアミノ酸配列において、1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜5個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、又は付加されたアミノ酸配列を有し、かつ、GDHβサユニットとして機能するタンパク質をコードするものであってもよい。
本発明のDNAとしては、具体的には、配列番号15の塩基番号187〜1398からなる塩基配列を含むDNAが挙げられる。また本発明のDNAは、配列番号15又はこの配列から調製され得るプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、βサブユニットとして機能し得るタンパク質をコードするDNAであってもよい。ストリンジェントな条件としては、70%、好ましくは80%、より好ましくは90%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズする条件、具体的には、1×SSC、0.1%SDS、60℃が挙げられる。
本発明のDNA又は同DNAを含む組換えベクターを保持する形質転換体を培養して、同DNAの発現産物としてGDHβサブユニットを産生させ、これを菌体又は培養液から採取することにより、GDHβサブユニットを製造することができる。その際、本発明のGDHβサブユニットをコードするDNAは、さらにαサブユニットをコードするDNA、又はさらにγサブユニットをコードするDNAとともに発現させることによって、GDH複合体を製造することができる。γサブユニット及びαサブユニットを連続してコードするDNA断片は、配列番号18及び19に示す塩基配列を有するプライマーを用いたPCRによって、取得することができる。
GDHβサブユニット又はGDH複合体を産生させる微生物としては、大腸菌をはじめとする腸内細菌群、シュードモナス属やグルコノバクター属などのグラム陰性細菌、バチルス・サブチリス等のバチルス属細菌をはじめとするグラム陽性細菌、サッカロマイセス・セレビシエ等の酵母、アスペルギルス・ニガー等の糸状菌が挙げられるが、これらに限られず、異種タンパク質生産に適した宿主微生物であれば用いることができる。
本発明のDNAのクローニング又は発現に使用するベクターとしては、宿主微生物内で自律的に増殖し得るプラスミド又はファージから遺伝子組換え用として構築されたものが適している。エシェリヒア・コリ用のベクターとしては、pBR322、pUC18,pUC118,pUC19,pUC119,pTrc99A,pBluescriptあるいはコスミドであるSuperCosIなどが例示される。一旦本発明のDNAのクローニングに使用したベクターより、発現等に適した他の組換えベクターへの移入は、本発明のDNAを保持する組換えベクターから制限酵素やPCR法により同DNAを回収し、他のベクター断片と結合させることにより容易に実施できる。また、これらのベクターによる微生物の形質転換は、例えばエシェリヒア属細菌ではカルシウム処理によるコンピテントセル法、バチルス属細菌ではプロトプラスト法、酵母ではKU法やKUR法、糸状菌ではマイクロマニュピレーション法等の方法によって行うことができる。また、エレクトロポレーション法も広く用いることができる。
宿主微生物への目的組換えベクターの移入の有無についての選択は、目的とするDNAを保持するベクターの薬剤耐性マーカー等を指標とすればよい。例えば、薬剤耐性マーカーに基づく選択培地で生育し、かつGDHを生成する微生物を選択すればよい。
形質転換体の培養形態は、宿主の栄養生理的性質を考慮して培養条件を選択すればよく、多くの場合は液体培養で行う。工業的には通気攪拌培養を行うのが有利である。
培地の栄養源としては、微生物の培養に通常用いられるものが広く使用され得る。炭素源としては資化可能な炭素化合物であればよく、例えば、グルコース、シュークロース、ラクトース、マルトース、ラクトース、糖蜜、ピルビン酸などが使用される。また、窒素源としては利用可能な窒素化合物であればよく、例えば、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、カゼイン加水分解物、大豆粕アルカリ抽出物などが使用される。その他、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、マグネシウム、カルシウム、カリウム、鉄、マンガン、亜鉛などの塩類、特定のアミノ酸、特定のビタミンなどが必要に応じて使用される。
培養温度は菌が生育し、本発明のタンパク質を生産する範囲で適宜変更し得るが、好ましくは20〜42℃程度である。培養時間は条件によって多少異なるが、GDHが最高収量に達する時期を見計らって適当時期に培養を完了すればよく、通常は12〜72時間程度である。培地のpHは菌が発育し、本発明のタンパク質を生産する範囲で適宜変更し得るが、好ましくはpH6.0〜9.0程度の範囲である。
培養物中の本発明のタンパク質を生産する菌体を含む培養液をそのまま採取し、利用することもできるが、一般には、常法に従って、本発明のタンパク質が培養液中に存在する場合はろ過、遠心分離などにより、本発明のタンパク質を含有する溶液と微生物菌体と分離した後に利用される。本発明のタンパク質が菌体内に存在する場合には、得られた培養物からろ過または遠心分離などの手段により菌体を採取し、次いで、この菌体を機械的方法またはリゾチームなどの酵素的方法で破壊し、また、必要に応じて、EDTA等のキレート剤及び界面活性剤を添加して本発明のタンパク質を可溶化し、水溶液として分離採取する。
上記のようにして得られたタンパク質含有溶液を、例えば減圧濃縮、膜濃縮、さらに硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウムなどの塩析処理、あるいは親水性有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、アセトンなどによる分別沈殿法により沈殿せしめればよい。また、加熱処理や等電点処理も有効な精製手段である。その後、吸着剤あるはゲルろ過剤などによるゲルろ過、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィーを適宜組み合わせることによって精製を行うことにより、精製された本発明のタンパク質を得ることができる。
カラムクロマイトグラフィーにより分離、精製し、精製酵素標品を得ることができる。該精製酵素標品は、電気泳動(SDS−PAGE)的に単一のバンドを示す程度に純化されていることが好ましいが、αサブユニット又はγサブユニットが含まれていてもよい。
上記のようにして得られた精製酵素を、例えば凍結乾燥、真空乾燥やスプレードライなどにより粉末化して流通させることが可能である。
本発明のβサブユニット及びαサブユニット、もしくは必要に応じてさらにγサブユニットからなるGDH複合体、又はそれを保持する形質転換体は、グルコースセンサの酵素電極として用いることができる。電極としては、カーボン電極、金電極、白金電極などを用い、この電極上に本発明のGDHを固定化する。固定化方法としては、架橋試薬を用いる方法、高分子マトリックス中に封入する方法、透析膜で被覆する方法、光架橋性ポリマー、導電性ポリマー、酸化還元ポリマーなどがあり、あるいはフェロセンあるいはその誘導体に代表される電子メディエーターとともにポリマー中に固定あるいは電極上に吸着固定してもよく、またこれらを組み合わせて用いてもよい。典型的には、グルタルアルデヒドを用いて本発明のグルコース脱水素酵素をカーボン電極上に固定化した後、アミン基を有する試薬で処理してグルタルアルデヒドをブロッキングする。
グルコースの濃度の測定は、以下のようにして行うことができる。恒温セルに緩衝液を入れ、メディエーターを加えて一定温度に維持する。メディエーターとしては、フェリシアン化カリウム、フェナジンメトサルフェートなどを用いることができる。作用電極として本発明の酵素を固定化した電極を用い、対極(例えば白金電極)および参照電極(例えばAg/AgCl電極)を用いる。カーボン電極に一定の電圧を印加して、電流が定常になった後、グルコースを含む試料を加えて電流の増加を測定する。標準濃度のグルコース溶液により作製したキャリブレーションカーブに従い、試料中のグルコースの濃度を計算することができる。
また、本発明のβサブユニットを含むGDH複合体は、グルコース等の糖類アッセイキットの構成要素とすることができる。典型的には、キットは、GDH複合体に加えて、アッセイに必要な緩衝液、メディエーター、キャリブレーションカーブ作成のためのグルコースなどの標準溶液、ならびに使用の指針を含む。本発明に従う酵素は種々の形態で、例えば、凍結乾燥された試薬として、または適切な保存溶液中の溶液として提供することができる。
実施例
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
参考例1 ブルクホルデリア・セパシアKS1株GDH αサブユニットをコードする遺伝子の単離
<1>ブルクホルデリア・セパシアKS1株からの染色体DNAの調製
ブルクホルデリア・セパシアKS1株より染色体遺伝子を常法に従って調製した。すなわち、同菌株をTL液体倍地(ポリペプトン 10g、酵母抽出液 1g、NaCl 5g、KHPO 2g、グルコース 5g;1L、pH 7.2)を用いて、34℃で一晩振盪した。増殖した菌体を遠心分離機により回収した。この菌体を10mM NaCl、20mM Tris−HCl(pH8.0)、1mM EDTA、0.5% SDS、100μg/mlのプロテイナーゼKを含む溶液に懸濁し、50℃で6時間処理した。ここに等量のフェノール−クロロホルムを加えて室温で10分間撹拌した後、遠心分離機により上清を回収した。これに終濃度0.3Mになるように酢酸ナトリウムを加え、2倍量のエタノールを重層して中間層に染色体DNAを析出させた。これをガラス棒を用いてすくいとり、70%エタノールで洗浄した後、適当量のTEバッファーに溶解させ、染色体DNA溶液とした。
<2>GDHαサブユニットのN末端アミノ酸配列の決定
実施例2と同様にして精製したGDHを凍結乾燥によって濃縮後、12.5%ポリアクリルアミドを用いたSDS−電気泳動法を用いて展開し、αサブユニットを分離した。こうして得られたαサブユニットをポリビニリデンフルオリド膜に転写した後、アミノ酸シークエンサー(島津製作所製、PPSQ−10)によりN末端アミノ酸配列の決定を行った。その結果、本酵素には配列番号3のアミノ酸配列においてアミノ酸番号2〜12からなる11残基から構成されるペプチド配列を含むことが明らかとなった。
<3>αサブユニットをコードする遺伝子のクローニング
<1>で調製したDNA1μgを制限酵素Sau3AIで限定分解した。これをCIAP(仔ウシ小腸由来アルカリホスファターゼ)処理した。一方、コスミドであるSuperCosI(ストラジーン社から入手)をBamHI処理し、T4 DNAリガーゼにより、SuperCosIにα−15株由来の染色体DNA断片をSau3AIで限定分解して得られたDNA断片を組み込んだ。得られた組換えDNAでエシェリヒア・コリXL−1Blue MR(ストラジーン社から入手)を形質転換した。形質転換体はSuperCosI上の抗生物質耐性であるネオマイシン耐性およびアンピシリン耐性にしたがって10μg/mlのネオマイシンおよび25μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地から選抜した。得られた形質転換体をLB液体培地で培養した。これらの形質転換菌体を集菌後、GDH活性測定試薬に懸濁し、グルコースに対する脱水素酵素活性を指標にクローンを選抜した。その結果、1株のグルコース脱水素酵素活性を示すクローンが得られた。
<4>サブクローニング
<3>で得られたαサブユニットをコードする遺伝子を含むコスミドSuperCosIから、目的遺伝子を含むDNA断片を調製した。同コスミドから挿入遺伝子断片を制限酵素NotIにより切り出した。このDNA断片を制限酵素XbaIで処理し、それらの断片をXbaIで消化したプラスミドpUC18に組み込んだ。各挿入断片を含むプラスミドpUC18でエシェリヒア・コリDH5αMCR株を形質転換し、アンピシリン50μg/mlを含むLB寒天培地で生じるコロニーを採取した。得られた形質転換体を液体のLB培地で培養し、それぞれの細胞のGDH活性を<3>と同様に調べた。その結果、一つの形質転換体にGDH活性を示す株が得られた。この形質転換体からプラスミドを抽出し、その挿入DNA断片を解析したところ、約8.8kbpの挿入断片が確認された。本プラスミドをpKS1と命名した。
<5>塩基配列の決定
pKS1の挿入DNA断片について、制限酵素解析及び常法に従い塩基配列を決定した。その結果、本挿入DNA断片中に、<2>で明かとなったαサブユニットのN末端アミノ酸配列をコードするDNA配列が確認され、この配列を含むオープンリーディングフレームが見つかった。決定した塩基配列および同塩基配列がコードし得るアミノ酸配列は、配列番号1および3に示す通りである。尚、後述するように、配列番号1の塩基配列のうち、塩基番号2386以降の塩基配列は、配列番号4に示すアミノ酸配列をコードしており、β−サブユニットをコードしていると推定された。
参考例2 組換え大腸菌によるGDH αサブユニットの生産
αサブユニットの塩基配列が決定されたことにより、前記αサブユニットの構造遺伝子を用いてベクターを作製し、更に前記ベクターにより形質転換体の製造を行った。
先ずベクターに挿入する遺伝子を以下のように調製した。
KS1株由来のゲノム断片をテンプレートとして、所望の制限酵素部位を含むように、PCR反応により増幅した。PCR反応には次の1組のオリゴヌクレオチドプライマーを用いた。
(フォワード)
Figure 2003091430
(リバース)
Figure 2003091430
PCRにより増幅された遺伝子を制限酵素HindIIIで消化した後、発現ベクターpFLAG−CTS(SIGMA社)のクローニング部位であるHindIII部位に挿入した。得られたプラスミドをpFLAG−CTS/αと命名した。
前記プラスミドpFLAG−CTS/αでエッシェリヒア・コリDH5αMCR株を形質転換し、アンピシリン50μg/mlを含むLB寒天培地で生じるコロニーを採取した。
さらにpKS1挿入断片について、αサブユニットの上流に関してオープンリーディングフレームを検索したところ、新たに配列番号2に記載される168アミノ酸残基から構成されるポリペプチドをコードする507塩基から構成される構造遺伝子(配列番号1中塩基番号258〜761)が見出された。この構造遺伝子は、γサブユニットをコードしていると考えられた。
αサブユニットのコード領域の上流に、γサブユニットをコードする領域の存在が明らかになったことから、γサブユニットとαサブユニットが連続するポリシストロン構造の遺伝子を含む組換えベクターを作製し、同ベクターを導入した形質転換体を構築した。
先ずベクターに挿入する遺伝子を以下のように調製した。
γサブユニットの構造遺伝子およびαサブユニットの構造遺伝子が連続するKS1株由来のゲノム断片をテンプレートとして、所望の制限酵素部位を含むように、PCR反応により増幅した。PCR反応には次の1組のオリゴヌクレオチドプライマーを用いた。
(フォワード)
Figure 2003091430
(リバース)
Figure 2003091430
このPCRにより増幅された遺伝子の5’末端をNcoI、3’末端をHindIIIで消化した後、ベクターpTrc99A(Pharmacia社)のクローニング部位である、NcoI/HindIIIに挿入した。得られたプラスミドをpTrc99A/γ+αと命名した。
前記プラスミドpTrc99A/γ+αにより、エシェリヒア・コリDH5αMCR株を形質転換し、アンピシリン50μg/mlを含むLB寒天培地で生じるコロニーを採取した。
前記pKS1、pFLAG−CTS/α、pTrc99A/γ+αのそれぞれのプラスミドによって形質転換したエシェリヒア・コリDH5αMCR株を用いてαサブユニットの生産を行った。各形質転換体をアンピシリン50μg/mlを含むLB培地3mlに植菌し、37℃で12時間培養を行い、遠心分離機により細胞を集菌した。この細胞をフレンチプレス(1500kgf)で破砕した後、超遠心(4℃、160,400×g、90分)により膜画分(10mMリン酸カリウム緩衝液pH6.0)を分離した。
参考例3 GDH活性の確認
先ず前記各膜分画を用いてGDH活性の確認を行った。具体的には594μMのメチルフェナジンメトサルフェート(mPMS)および5.94μMの2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(DCIP)を含む10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)により、目視判定を行った。結果は以下のとおりである。+の数は、青色から無色への変化の程度を表す。
pFLAG−CTS/αによる形質転換体培養膜分画 +
pKS1による形質転換体培養膜分画 ++
pTrc99A/γ+αによる形質転換体培養膜分画 +++
αサブユニットのみを組みこんだpFLAG−CTS/αによる形質転換体培養膜分画のGDH活性が最も低く、効率良くベクターを構築したpTrc99A/γ+αによる形質転換体培養膜分画が最も高いGDH活性を示した。
αサブユニットの構造遺伝子のみによるベクターを用いた形質転換体でもαサブユニットは発現されるが、更にγサブユニットの構造遺伝子をαサブユニットの構造遺伝子と合わせたベクターを用いることにより、効率良くαサブユニットを得ることができた。
本発明のグルコース脱水素酵素を用いてグルコースをアッセイした。本発明のグルコース脱水素酵素(αサブユニット)を、各種濃度のグルコースで酵素活性を測定した。GDH活性の測定は594μMのメチルフェナジンメトサルフェート(mPMS)および5.94μMの2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(DCIP)を含む10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)の中で行った。酵素試料および基質としてグルコースを基質として加え37℃でインキュベートした時のDCIPの600nmの吸光度変化を分光光度計を用いて追跡し、その吸光度の減少速度を酵素反応速度とした。本発明のGDHを用いて、0.01〜1.0mMの範囲でグルコースの定量を行うことができた。
実施例1 ブルクホルデリア・セパシアKS1株GDHβサブユニットをコードする遺伝子の単離
<1>ブルクホルデリア・セパシアKS1株GDHβサブユニットの検索
Sanger Centreのブルクホルデリア・セパシアJ2315株ゲノムデータベース(http://www.sanger.ac.uk/)を用いて、KS1株由来GDHのβサブユニット遺伝子を検索した。すでに明らかにされているKS1株GDHβサブユニットのN末端配列(配列番号9)を参考に、アセトバクターSp.、グルコノバクターsp.由来のアルコール脱水素酵素(Tamaki T.et al.,Biochim Biophys Acta 1088(2):292−300(1991)、Matsushita K.,et al.,Biosci.Biotech.Biochem.,56,304−310(1992)、Takemura H.,et al.,J Bacteriol,175,6857−66(1993)、Kondo K.et al.,Appl Environ Microbiol,63,1131−8(1997))、エルビニアsp.、シュードモナスsp.由来のグルコン酸脱水素酵素(Yum DY,et al.,J Bacteriol,179,6566−72,(1997)、Matsushita K.et al.,J Biochem,85,1173−81(1979))、グルコノバイターsp.由来のソルビトール脱水素酵素(Choi,E.S.,et al.,FEMS Microbiol.Lett.,125,45−50(1995))、エルビニアsp.、パントエアsp.由来の2−ケトグルコン酸脱水素酵素(Pujol CJ et al.,J Bacteriol,182,2230−7,(2000))のシトクロームcサブユニットとホモロジーの高いアミノ酸配列(配列番号10)をデザインした。
上記アミノ酸配列を指標として、前記ブルクホルデリア・セパシアJ2315株のデーターベースからBLASTを用いてホモロジーの高いアミノ酸配列をコードしている遺伝子配列を検索した。つぎに、得られた5つの配列に対して、KS1株GDHαサブユニットのC末端配列とのホモロジーを検索した結果、2つの遺伝子断片から翻訳されるアミノ酸配列が高いホモロジー(>90%)を示した。各遺伝子断片は200〜500bpと短かったので、これらの配列に対して相同性の高い配列を、Blastを用いてブルクホルデリア・セパシアJ2315株のゲノムデーターベースから検索し、各断片をつなぎ合わせた。その結果、3110bpの断片を得た。得られた塩基配列にはGDHのC末端と思われるORFと1275bpからなるシトクロームc構造遺伝子と思われるORFが存在した(配列番号11)。同ORFがコードするアミノ酸配列を配列番号12に示す。得られたJ2315株の塩基配列と既にクローニングされているKS1株αサブユニット塩基配列を比較した結果、αサブユニット下流にはJ2315株シトクロームcのシグナルペプチドをコードする塩基配列に相同性の高い塩基配列が含まれていた。
以上のことから、参考例1で得られたブルクホルデリア・セパシアKS1株のクローニング断片中の三番目のORF(配列番号1の塩基番号2386以降)は、β−サブユニットをコードしていると推定された。また、精製されたβ−サブユニットのN末端におけるアミノ酸配列と、配列番号1中の塩基番号2452〜2466の塩基配列によって翻訳される5アミノ酸残基が一致したことからも、前記ORFはβサブユニットをコードしていると考えられた。
<2>インバースPCR法を用いたβサブユニット構造遺伝子の増幅
(1)菌体の培養及びゲノムの抽出
KS1株を5mlの完全培地(0.5% polypepton、0.3% yeast extract、0.5% NaCl)を用いて37℃で一晩振とう培養した。得られた菌体からGennomicPrepTMCells and Tissue DNA Isolation Kit(Amersham Pharmacia Biotech社)を用いてゲノムを抽出した。方法は付属のマニュアルに従った。得られたゲノムに対してフェノール/クロロホルム処理を行い、エタノール沈殿させた後、精製水に溶解した。
(2)ゲノム断片の環状化
KS1株より抽出したゲノムを、BamHI、EcoRI、HindIII、SmaI、SacIおよびXhoIで消化し、エタノール沈殿によってゲノム断片を回収した。制限酵素消化したゲノム1μgをDNAライゲーションキット(宝酒造(株))を用いて16℃で一晩ライゲーション反応を行った。
(3)PCR
KS1株GDHβサブユニットのN末端シグナル配列領域の塩基配列からデザインしたフォワードプライマー(EF1配列番号13)50pmol,リバースプライマー(ER1配列番号14)50pmol(プライマーはいずれもInvitrogen社に依託合成)、LATaq(宝バイオ(株))0.5ml、dNTP溶液8μl,10×PCR buffer 5μlに精製水を全量50μlとなるように加え、プログラムテンプコントロールシステムPC−801(ASTEC)を用いてPCRを行った。PCRの反応は、以下の条件で行った。94℃ 5分、98℃ 20秒、62℃ 30秒を30サイクルの後、72℃ 6分、72℃ 10分。
SmaIで制限酵素消化したゲノムをテンプレートとした場合において、約2.1kbpの大きさの断片がアガロース電気泳動で確認された。
<3>PCR増幅断片のシークエンシング
(1)TAクローニング
前記のインバースPCR産物をアガロースゲル電気泳動後、バンドを切り出し、Gene clean II KIT(Bio101 inc.)を用いて精製した。この断片を、pGEMR−T and pGEMR−T EASY Vector Systems(Promega)を用いて、pGEM−T Vectorにライゲーションした。ライゲーションを行ったベクターでエシェリヒア・コリDH5αを形質転換し、アンピシリン50μg/ml、X−Gal 40μg/ml、IPTG 0.1μMを含むL寒天培地を用いて一晩培養した。出現したコロニーから白色のコロニーを選択し、アンピシリン50μg/mlを含むL培地で一晩培養して、菌体からプラスドをアルカリ法により抽出した。
(2)シークエンスサンプルの調製
得られたプラスミドをRNase処理し、これに0.6倍量の20% PEG6000/2.5M NaClを加え、氷上に1時間放置した。その後15000r.p.m、4℃で15分間遠心分離し、ペレットを得た。これを70%エタノールで洗浄し、ペレットを真空乾燥させた。これを精製水に溶解した。
(3)DNA塩基配列の解析
(2)で得られたプラスミドの挿入断片の塩基配列を、ABI PRISMTM310 Genetic Analzer(PERKIN−ELMER Applised Biosystems)を用いて解析した。ベクターのマルチクローニングサイトからM13プライマーを用いて挿入断片の一部の配列を決定した結果、これまでに解析されているβサブユニットN末端を含む塩基配列が確認された。この配列を手がかりにプライマーを順次作製して用い、挿入断片の塩基配列を決定した。結果を配列番号15に示す。また、この塩基配列に含まれるORFがコードするアミノ酸配列を配列番号16に示す。
βサブユニットは、全部で425個のアミノ酸残基から構成されており、すでに得られているN末端アミノ酸配列と比較して、そのうち22残基はシグナルペプチドであると考えらる。アミノ酸配列から計算される分子量は45,276Daであり、シグナルペプチドを除いた分子量42,731Daは、SDS−PAGEから求められたKS1株GDHβサブユニットの分子量43kDaとほぼ同等の値であった。βサブユニットのアミノ酸配列中には、シトクロームcにおいてヘムとの結合モチーフ(配列番号18)が3ヶ所に確認された。このORFはαサブユニット構造遺伝子のORFのすぐ下流に位置し、開始コドンの上流にSD配列と思われる配列が存在した。
得られたアミノ酸配列についてBLASTによるホモロジー検索を行ったところ、ラルストニア・ソアナセアルム(Ralstonia solanacearum)由来のオキシドレダクターゼ脱水素酵素のシトクロムcサブユニットと65%、グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)由来のソルビトール脱水素酵素のシトクロムcサブユニットと48%、エルビニア・シプリペディイ(Eriwinia cypripedii)由来のグルコン酸脱水素酵素のシトクロームcサブユニットと44%、パントエア・シトレア(Pantoea citrea)由来2−ケト−グルコン酸脱水素酵素のシトクロームcサブユニットとアミノ酸レベルて46.4%と、全体にわたって高い相同性を示していた。またこれらのシトクロームcのアミノ酸配列中には、ヘム結合モチーフ(配列番号18)配列が保存されていた。
尚、KS1株のGDHβサブユニット構造遺伝子は、J2315株のGDHβサブユニット構造遺伝子と、塩基配列レベルで92.0%、アミノ酸レベルで92.2%の相同性を有している。
産業上の利用の可能性
本発明により、ブルクホルデリア属微生物のGDHβサブユニット及びそれをコードするDNAが提供される。
【配列表】
Figure 2003091430
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Claims (11)

  1. 以下の(A)または(B)に示すタンパク質。
    (A)配列番号16のアミノ酸番号23〜425からなるアミノ酸配列を少なくとも有するタンパク質。
    (B)配列番号16のアミノ酸番号23〜425からなるアミノ酸配列において、1〜20個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、又は付加されたアミノ酸配列を有し、グルコース脱水素酵素βサブユニットとして機能し得るタンパク質。
  2. 以下の(A)又は(B)のタンパク質をコードするDNA。
    (A)配列番号16のアミノ酸番号23〜425からなるアミノ酸配列を少なくとも有するタンパク質。
    (B)配列番号16のアミノ酸番号23〜425からなるアミノ酸配列において、1〜20個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、又は付加されたアミノ酸配列を有し、グルコース脱水素酵素βサブユニットとして機能し得るタンパク質。
  3. 以下の(a)又は(b)に示すDNAである請求項2に記載のDNA。
    (a)配列番号15の塩基番号187〜1398からなる塩基配列を含むDNA。
    (b)配列番号15の塩基番号187〜1398からなる塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るDNA。
  4. さらに配列番号15の塩基番号121〜187からなる塩基配列を含む請求項3に記載のDNA。
  5. 請求項2〜4のいずれか一項に記載のDNAを含有する組換えベクター。
  6. 請求項2〜4のいずれか一項に記載のDNA又は請求項5に記載の組換えベクターで形質転換された形質転換体。
  7. 請求項6に記載の形質転換体を培養して、前記DNAの発現産物としてグルコース脱水素酵素βサブユニットを産生させ、これを採取するグルコース脱水素酵素βサブユニットの製造方法。
  8. さらにブルクホルデリア・セパシアのグルコース脱水素酵素αサブユニット及びγサブユニットをコードする塩基配列を含む請求項3又は4に記載のDNA。
  9. 請求項8に記載のDNAを含有する組換えベクター。
  10. 請求項8に記載のDNA又は請求項9に記載の組換えベクターで形質転換された形質転換体。
  11. 請求項10に記載の形質転換体を培養して、前記DNAの発現産物としてグルコース脱水素酵素複合体を産生させ、これを採取するグルコース脱水素酵素複合体の製造方法。
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