JPWO2003076933A1 - 増大した密度のポリ(エチレンオキシド)のブラシ様構造表面 - Google Patents
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Abstract
センサー表面に対する結合性部位を有するポリ(エチレンオキシド)を主体とするポリマー溶液をバイオセンサー表面へ複数回接触結合させることにより得ることのできるタンパク質(例えば、BSA)の吸着が著しく低下した表面が提供される。
Description
技術分野
本発明は、バイオセンサーの分野に関し、より具体的には、生物学的流体等に含まれる被検体以外の夾雑物による非特異吸着もしくは結合を低減もしくは防止するバイオセンサー表面に関する。
背景技術
生物学的試料中に存在する被検体を検出する方法として、多種多様な検出様式をもつバイオセンサーが提案されている。そのようなバイオセンサーの中で、表面プラズモン共鳴(SPR)を利用するセンサーは、金属薄膜の表面およびその近傍における屈折率変化に対して敏感である(例えば、A.Szabo et al.,Curr.Opin.Strnct.Biol.5(1995)699−705参照)。SPRは、表面と複雑な生物学的液体との間で生じる過程のインサイチュ(in situ)での観察が可能であり、そして例えば、標識を使用することなくリアルタイムに被検体からのデータが入手できるので、動力学的および熱力学的なパラメーターを取得するのに適していることから注目を集めているセンサーの一つである。
このような表面をもつバイオセンサーチップの典型的なものとしては、アマシャム ファルマシア バイオテク(株)から入手できるBIACORE(商標)がある。このBIACOREは、末端がカルボキシル化されたデキストランのマトリックスが半透明の状態で金の薄膜上に固定されている。かような検出表面を特許請求すると思われるものとしては特許第2815120号(EP U.S.Patent No.5,242,828およびEP O 589 867 B1に対応する)公報がある。該公報によれば、HS−R−Y(Rは10原子を越える鎖の長さを有し、ヘテロ原子で中断されていてもよい炭化水素鎖であり、Yはリガンド又は生適合性多孔質マトリックスを共有結合させるための活性基である)で表される有機分子を用いて、そのチオール(またはメルカプト)基を介して金、銀などの自由金属の膜表面へ結合させて密に詰め込まれた単層で該表面を被覆し、次いで、生適合性多孔質マトリックスとして、リガンドを結合させるための官能基を有していてもよいアガロース、デキストラン、ポリエチレングリコール等からなるヒドロゲルを共有結合した表面が記載されている。
特許第3071823号(U.S.Patent No.5763191およびEP O 574 000 B1に対応)には、保持材上へ硫黄原子(メルカプト基の)を介して結合したスペーサー分子(炭素原子数1〜30のアルキレン鎖)に親水性リンカー部(鎖長4から15原子の直鎖分子)と固相反応物質(ビオチン誘導体残基)が順に共有結合した表面が記載きれている。そして、かような表面を形成するビオチニル化化合物の典型的なものとして、次式で表される化合物が記載されている。
該表面の固相反応物質を有する分子鎖は、さらに固相反応物質(すなわち、上式の例では、ビオチン誘導体残基)を有しないか、または固相反応物質も親水性リンカーも有しない希釈分子によって希釈されていてもよい。
Roberts et al.,J.Am.Chem Soc.1998,120,6548−6555には、HS−スペーサー分子(炭素原子数11のアルキレン鎖)−親水性リンカー(エチレンオキシド単位3個または6個からなる鎖)−をベースとする化合物を用い、メルカプト基を介して金表面に自己組織化単分子層(SAM)を形成することが記載されている。また、親水性リンカー部がエチレンオキシド単位3個の化合物と、エチレンオキシド単位6個(末端にオリゴペプチドのリガンドが結合している)の化合物との混合物から形成された表面は、細胞のリガンド特異的結合を促進するが、付着した細胞によるタンパク質の堆積を低減することも教示されている。また、Holmlin et al.,Langmuir,17,2841−2850(2001)には、該SAMと両性イオンを含む表面へのタンパク質の吸着の抑制について記載されている。
Pavey et al.,Biomaterials 20(1999)885−890には、ポリ(エチレンオキシド)n−ポリ(プロピレンオキシド)m−ポリ(エチレンオキシド)nのトリブロックコポリマーの様々な2種の組み合わせ物を、SPRの検出用金属薄膜上に付着させた表面が記載されている。また、こうして形成された表面では、溶液中にポリ(エチレンオキシド)鎖が伸長し、ブラシ様構造物(brush−like architecture)を形成することが示唆されている。さらに、ポリ(エチレンオキシド)の鎖長(n)が異なる2種のトリブロックコポリマーが付着した表面は、それらの1種が付着した表面より一般的にタンパク質(ウシ血清アルブミン)の吸着が低減することも示されている。
ところで、以上の先行技術文献のうち、特許第2815120号には、鎖(R)の長さが10原子を越え、好ましくは12〜30原子の例えば、疎水性のかなり大きなアルキレン鎖をもつ16−メルカプトヘキサデカノールをチオール基を介して金属表面に化学吸着させることにより、有機分子が密に詰め込まれた単層の表面が得られることが記載されている。こうして得られる単層は貯蔵安定性があり、しかも、金属表面を化学腐食から保護する有効なバリアー層となりうることも示唆されている。そして、かようなバリアー層上には、タンパク質適合性と非特異的相互作用を最小化するヒドロゲルが結合されている。したがって、該特許発明に関連する好適な態様と思われる上記BIACORE(商標)(デキストランのヒドロキシゲルを担持する)は、実用化されている。しかし、バリアー層上にヒドロキシゲルを均一に担持させるのは容易ではなく、厳密な操作が必要であり、また、タンパク質の非特異的吸着は相当に低減しているが、未だ改良の余地がある。
特許第3071823号は、上述したビオチニル化化合物の形成する表面のビオチニル(固相反応物質)が密である場合には、例えば、ビオチンと非共有結合的結合対を形成する遊離のアビジンとの結合が遅いこと等を改良するために、敢えて、ビオチニル化化合物を疎らに保持材料表面へ結合させるか、あるいはビオチニル残基を有していない希釈分子と相当するビオチニル残基を有する分子とを10:1〜2:1で用いて希釈分子とビオチニル残基(固相反応物質)を有する分子とを、共に該表面へ結合させている。かような表面また、Roberts et al.の表面は、エチレンオキシド単位約5〜6個までの親水性リンカー部を有するが、特許第2815120号のようなヒドロゲル層を有しないので、目的とするタンパク質(例えば、ストレプトアビジン)や細胞以外の夾雑タンパク質の非特異的吸着が生じうる。
Bavey et al.,はトリブロックコポリマーの疎水性ブロックであるポリ(プロピレンオキシド)ドメインを介して金属表面へ付着させるものであり、通常のポリマーコーティングと同様に安定性、均一性および再現性ある表面を得ることが困難である(U.S.Patent No.4415666も参照)。しかも、ポリ(エチレンオキシド)鎖の密度を高めることも困難である。
本発明者らの一部は、以上のような先行技術に伴う短所が解消されるか軽減された表面を提供するものとして、片末端にメルカプト(−SH)基を有し、もう一つの末端に保護されていてもよいポリ(エチレンオキシド)(以下、PEGと略記する場合あり)を主体とするポリマーを緩衝液に溶解させた後約1時間SPRのセンサーチップの金表面の接触させたところ、該表面への非特異的なタンパク質の吸着が上記市販のBIACORE(商標)のセンサーチップ表面CM5に対するのと同等以上に低減できることを見出して特許出願した(WO 01/86301参照)。
上述の特許第2815120号によれば、金属表面へ密にHS−R−Y鎖を詰め込むのに、Rが少なくとも10原子の炭化水素基であることが必要であるとされている。他方、特許第3071823号によればビオチニル化化合物が、例えば、鎖長4から15原子の親水性リンカー(エチレンオキシド単位で1〜3)を有するものを使用することによって、該化合物による鎖が疎な表面を形成している。ところが上記WO 01/86301によれば、驚くべきことに、例えば、PEG部の分子量が1000〜10000であるような長鎖のポリマーを有する点で特許第3071823号またはRoberts et al.に記載のポリマーとは全く異なる巨大分子がそのメルカプト基を介して水溶液から金属表面に効率よく結合できることが本発明者の一部により見出された。すなわち、WO 01/86301に記載のポリマーでは、溶液中の親水性PEO鎖とタンパク質との空間的な反発作用を介して、表面でのそれらの相互作用を低下させるように水和されたPEO層はフレキシブルであり可動性であると当業者に認識されているにもかかわらず、所望量(または適度な密度)のPEO鎖が表面に安定に結合されているのである。
しかし、WO 01/86301に記載の表面もBIACORE(商標)のセンサー表面と同様に、可能であれば、夾雑タンパク質の非特異的吸着がさらに低減できることが望まれるであろう。したがって、本発明は、WO 01/86301に記載の表面の、例えば、非特異的吸着において、さらなる低減がなされた表面を提供することにある。
発明の開示
理論によって拘束されるものでないが、上述のように溶液中のPEO鎖は可動性で立体的に相互に反発しあうためか、WO 01/86301に記載したような結合方法では、個に、処理時間を延長してもポリマーの結合量を有意に増大させることはできなかった。しかしながら、改めて、該結合操作を繰り返した場合には、新たに、追加のポリマーを同一表面上へより密に結合できることを見出した。しかも、こうして得られる表面は、WO 01/86301に記載された表面に比し、夾雑タンパク質(例えば、ウシ血清アルブミン(以下、BSAという))の吸着が有意に低減できることが確認できた。
したがって、本発明によれば、
(a) 一般式
[式中、
AはHS−または
基を表し、ここで、
R1、R2およびR3は独立してC1〜C6アルキル基を表し、
L1は第一の連結基または原子価結合を表し、
L2は第二の連結基または原子価結合を表し、
Xは水素原子、官能基、保護された官能基またはリガンドを表し、
pは2〜12の整数であり、
nは平均値として10以上、好ましくは、20〜10,000の整数のいずれかである]で表されるポリマーの1種または2種以上を、それらのA部を介して結合したバイオセンサー表面であって、
(b) 該表面を熱重量分析(thermogravimetric analysis)にかけて得られるデータから換算した場合の表面1nm2当たりのポリマー鎖数が0.1本以上(好ましくは0.25本以上)である、
ことを特徴とする表面が提供される。
さらに本発明によれば、上記のような表面の一部の作製方法であって、
(A) 一般式(Ia)
(式中、L1、L2、X、pおよびnは上記一般式(I)について定義したのと同義である)
で表されるポリマーの水性溶液を金、銀、銅およびアルミニウムよりなる群から選ばれる金属表面と該ポリマーの所定量が該金属表面に結合するのに十分な条件下で接触させた後、未結合ポリマーを洗浄除去する工程、
(B) 次いで、前記工程で結合させたポリマーと同一のポリマーまたは異なるポリマーであって、nの整数(すなわち、エチレンオキシド単位の数)の平均値が小さいポリマーの水性溶液を、(A)工程でもたらされた金属表面と、該表面に結合するのに十分な条件下で接触させた後、未結合ポリマーを洗浄除去する工程、ならびに
(C) こうして得られる表面に(B)工程と同様な複数(一般に、2〜6回好ましくは3〜4回)の工程を行うこと、
を含んでなる方法、も提供される。
さらなる発明として、上記表面の別の一部の作製方法であって、
(A) 一般式(Ib)
(式中、R1、R2、R3、L1、L2、X、pおよびnは上記一般式(I)について定義したのと同様である)
で表されるポリマーの有機溶媒溶液をガラス、半導体、セラミックス、金属酸化物および合金酸化物よりなる群から選ばれる材料と該ポリマーの所定量が該材料表面に付着または結合するのに十分な条件下で接触させた後、溶媒を留去し、そして未結合ポリマーを洗浄除去する工程、
(B) 次いで、前記工程で結合させたポリマーと同一のポリマーまたは異なるポリマーであって、nの整数(すなわち、エチレンオキシド単位の数)の平均値が小さいポリマーの有機溶媒溶液を、(A)工程でもたらされた材料表面と該表面に付着または結合するのに十分な条件下で接触させた後、溶媒を留去し、そして未結合ポリマーを洗浄除去する工程、ならびに
(C) こうして得られる表面に(B)工程と同様な複数の工程を行うこと、を含んでなる請求項1に記載の表面のうち、一般式(I)のAがトリアルコキシシリル基である表面の作製方法、も提供される。
また、別法として、一般式(Ia)または(Ib)におけるn数が最初のポリマーのそれより少なくとも10、好ましくは20異なる2種以上のポリマー群の混合物を用いる、上記表面の作製方法も提供される。
発明を実施するための最良の形態
本発明に従う表面におけるBSAの吸着の程度を示す△θ[°]は、例えば、Jung et al.,Langmuir 1998,14,5636に記載されるとおり、金属界面での屈折率変化により誘起される値であり、大きな値はBSAの吸着量が大きいことを示す。なお、この値は測定条件により変動する値であるが、本発明にいう△θ[°]値は、後述する「非特異的吸着試験」に従って測定される場合を前提とする。
また、本発明にいう、「ポリマーのそれぞれを一般式(I)におけるAがHS−であり、そして−L2−Xが−CH2CH2CH(OCH2CH3)2であるポリマーに相当するポリマーとして」とは、一般式(I)におけるAの定義がHS−以外であり、そして−L2−Xが−CH2CH2CH(OCH2CH3)3以外であるポリマーを、假に、それぞれをHS−および−CH2CH2CH(OCH2CH3)2のポリマーとした場合の性状を想定するものである。
一般式(I)におけるnの定義について、「nは平均値として」とか、または「nの整数が、平均値として」という語は、通常、一般式(I)で表されるポリマーがある一定の分子量分布をもつものとして製造されることを考慮したものである。後述する該ポリマーの製造例によると、実質的に単分散ポリマーが得られ、本発明ではかようなポリマーを使用することが好ましいが、それらに限定されることなく、多分散性(例え
が1.6〜2.0にある)ポリマーであっても、上記の定義に従うことを条件に使用できる。
本発明に従う表面は、主としてSPRを応用したバイオセンサー表面について特に注目しているが、所謂、生物学的に特異的に非共有結合を形成する広く、リガンドとレセプター、例えば、抗原もしくはハプテンと抗体、糖とレクチン、基質と酵素、ホルモンとその受容体、オリゴヌクレオチドとそれの相補鎖、のごとき結合対の形成を介して、表面に生じる何らかの変化がトレースできるバイオセンサー表面であればいかなるものであってもよい。トレースできるシグナルとしては、放射能、接触角、沈降、紫外分光、表面プラズモン共鳴等の変化であることができる。
本発明に表面に用いることのできるポリマーは、殆どがそれら自体公知のものであり、AがHS−を表すポリマーについては、上記WO 01/86301に記載されており、一般式(Ia)
(式中、L1、L2、X、pおよびnは上記定義したとおりである)
で表され、L1、L2、Xは、それぞれ製造方法によって、最適な基が選ばれ得る。L1およびL2は、独立して原子価結合または各種連結基であることができる。L1の具体的な連結基としては、−COO−(この基は、酸素原子を介してエチレンオキシド単位に結合する)、−O−または−S−が代表的なものである。L2の具体的な連結基は、−(CH2)q−(ここで、qは2〜6の整数である)である。
Xは、水素原子、官能基、保護された官能基であり、官能基は、上記のリガンドを共有結合しうるいかなる基であってもよい。リガンドがタンパク質またはヌクレオチドである場合を例にとれば官能基または保護された官能基としては、
または−COOHであり、Rbは独立して水素原子またはC1−C6アルキルを表し、Rcは独立してC1−C6アルキルオキシ(ケタールもしくはアセタール)または2つのRcが一緒になってオキシ(上記基は、全体としてアルデヒドもしくはホルミル基:−CHOとなる)であることができ、あるいはRcは、C1−C6アルキルで置換されていてもよいエチレン基(環状ケタールを形成する)であることができる。特に、アルデヒド(もしくはホルミル)基または保護されたアルデヒド(もしくはホルミル)基(ケタール基)が、都合よく使用できる。C1−C6アルキルは、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、n−ヘキシル等であるが、メチルであることが好ましい。
上記のWO 1/86301に記載の代表的な製造方法を反応スキームで示せば、次のとおりである。
反応スキーム1:
(なお、上記各式中、XaはX−L2であり、その他の略号は、上記と同じ意味を有する。)
また、別法として、反応スキーム2、具体的には後述する方法に従って上記一般式(Ia)のポリマーを製造することもできる。
反応スキーム2:
Aがトリアルコキシシリル基である場合の一般式(Ib):
(式中、R1、R2、R3、L1、L2、X、pおよびnは上記定義したとおりである)
で表されるポリマーも、殆どがそれ自体公知である。
具体的には、R1、R2およびR3について定義するC1−C6アルキルは、RbおよびRcについて定義したC1−C6アルキルと同じ意味を有する。一般式(Ib)においても、−Xは、上記一般式(Ia)と同義であることができるが、L1は、例えば、−O−、−NHCOO−(酸素原子を介してエチレンオキシド単位に結合する)または−N(Rd)−(RdはC1−C6アルキルである)であり、L2は−(CH2)γ−または−CO(CH2)γ−(γは2〜6の整数である)である。かようなポリマーは、例えば、以下の反応スキームに従って都合よく製造することができる。
反応スキーム3:
反応スキーム4:
反応スキーム5:
(以上の各式中の略号は、Mはカリウム、ナトリウム、リチウムを表す。)
以上のリビング重合工程は、それ自体公知の反応条件の下で実施できる(例えば、WO 96/32434、WO 97/06202、等を参照されたい。)。その他は、後述する実施例に従い、または記載されている条件を改変して実施できる。
以上のポリマーを用いる表面の形成は、限定されるものでないが、一般式(Ia)のポリマーを用いる場合は、表面の支持体(SPRセンサーでは、金属薄膜)は、金、銀、銅およびアルミニウム等の金属から選ぶのがよい。他方、一般式(Ib)のポリマーを用いる場合は、支持体は、ガラス、半導体、セラミック、金属酸化物および合金酸化物で、湿分等により、表面にヒドロキシル基を形成し、トリアルコキシシランと共有結合を形成するものから選ぶのがよい。
本発明に従う表面は、上記一般式(Ia)または(Ib)のポリマーが、それらを含有する溶液を用いて、複数回の結合処理を行うか、またはエチレンオキシド単位(平均値)の大きさの異なる2種以上のポリマーを含有する溶液を用いる結合処理を行うことにより、ほぼ同一のポリマーの一度の結合処理ではほぼ一定の飽和結合基となるのにもかかわらず、かかる一度の処理による結合量に比べ有意に結合量の増加した状態となっている。一般式(Ia)のポリマーを用いる場合は、適当な緩衝化した水溶液にポリマーを溶解し、こうして得られたポリマー溶液を適当な温度、例えば周囲温度(20〜37℃)で支持体表面と接触させる。ポリマー溶液は用いるポリマーの分子量により、最適濃度が異なるが、通常、0.1〜5mg/ml、好ましくは1mg/ml濃度として、接触はポリマー溶液と支持体表面とを接触させておき数10分から〜数時間インキュベートすることによって行う。
こうして、ポリマーの一定量が支持体表面に結合(おそらく、化学結合)する。こうして得られる表面を洗浄することにより未結合のポリマー等を表面から洗浄除去する。洗浄は、未結合のポリマーを効率よく除去できるものであればいかなる洗液でもよいが、希薄NaOH水溶液を用いるのがよい。こうして洗浄が終了した後、得られた表面に、改めて、ポリマー溶液を用いるポリマーの再度の結合処理を行う。この再度の結合処理は、最初の結合処理および洗浄処理と実質的に同一であってもよい。好ましくは、この再度の結合処理および洗浄処理はさらに、1回以上行うことが好ましい。この各再度の結合処理に用いるポリマーは、最初の処理に用いたものと同一であることができるが、ポリ(エチレンオキシド)ブロックの分子量が最初のものと、それぞれ異なっていてもよい。異なる場合は、好ましくは、再度の結合処理に用いるポリマーの方が最初の結合処理に用いるものより、分子量が小さくなるように選ぶのがよい。各再度の結合処理ごとに、徐々に分子量が小さくなるように選ぶこともできる。限定されるものでないがポリ(エチレンオキシ)ブロックの分子量を基準に、最初の結合処理と再度の結合処理とにそれぞれ用いるのに好ましい組み合わせとしては、一般式(I)または(Ia)のnが平均値として、50〜10000のいずれかの整数であるポリマーで最初の結合処理を行い、各再度の結合処理を、最初に用いたポリマーより、エチレンオキシド単位の数が10以上小さい、好ましくは50位上小さいポリマーを用いて行うことが好ましい。こうして、該表面を熱重量分析(例えば、W.P.Wuelfing et.al.,J.Am.Chem.Soc.1998,120,12696−12697参照)にかけて得られるデータから換算した場合の値が0.1本/nm2以上となる表面が都合よく得られる。
一般式(Ia)のポリマーに代え、一般式(Ib)のポリマーを用いる場合には、ポリマーは、好ましくは無水の有機溶媒(例えば、トルエン等のポリマー易溶性有機溶媒)に溶解した溶液を用い、例えば、ガラス、チタン、アルミニウム等の表面(必要があれば、水酸化処理した後)へのポリマーの結合または付着処理を行った後、溶媒を留去した後、表面に対して未反応のポリマーを該有機溶媒を用いて洗浄除去することの他は、一般式(Ia)のポリマーを用いる場合と同様に処理することにより、目的の表面を形成できる。
こうして形成された表面は、1回のポリマーの結合処理で得られる表面に比べ、より高密度なポリエチレングリコール(またはポリ(エチレンオキシド))の高分子ブラシが構築できバイオセンサー表面へ非特異的吸着を起こす試料中の夾雑タンパク質の吸着を著しく低下させることができる。さらには、より精密な生体分子間特異的相互作用の検出を可能にするであろう。
以下、具体例を参照しながら本発明をさらに詳細に説明するが、これらの例に本発明を限定することを意図するものでない。
ポリマーの製造例1:アセタール−PEG−SH(Mn=2000、5000)の合成(反応スキーム1参照)
アルゴン置換した受器中に蒸留テトラヒドロフラン(THF)20mlと開始剤3,3−ジエトキシ−1−プロパノール0.2mmol(0.032ml)を加え、さらに当量のカリウムナフタレンを加えて15分撹拌することでメタル化を行った。その後、エチレンオキシド22.7mmol(1,135ml)を加え、室温で2日間撹拌し重合させた。停止剤としてN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルチオ)プロピオネート(SPDP)0.4mmol(0.125g)を少量の蒸留THFに溶解させ、この溶液に対し前記の重合反応溶液を等圧滴下漏斗にて氷冷下で滴下した。一晩撹拌して停止反応を行った後に、飽和食塩水洗浄・クロロホルム抽出、エーテル再沈、ベンゼン凍結乾燥を経て、ポリマーを回収した。回収したポリマーは1H−NMRにて構造を確認し、末端に導入されたSPDP残基の量は、2−メルカプトエタノールと反応させることによって遊離した2−チオピリドンのUV吸収によっても確認した。
PEG−SS−Py2.0×10−2mmol(100mg)を蒸留水4mlに溶解させ、さらに5倍mol量のジチオトレイトール0.1mmol(15.42mg)を加え、室温で30分撹拌した。反応後、飽和食塩水洗浄・クロロホルム抽出・エーテル再沈を経てPEG部のMn=5000のポリマー(以下、PEG5000と略記する)を回収した。回収したポリマーは1H−NMRによって構造を確認し、さらに2−ピリジルジスルフィド(2−PDS)との反応により、末端SH基の定量を行った。
さらに、上記エチレンオキシドの仕込み量を、減少させたこと以外、実質的に上記の操作を繰り返し、PEG部のMn=2000のポリマーを得た。なお、Mn値はPEGセグメントの分子量を表す。
ポリマーの製造例2:アセタール−PEG−SH(Mn=2000、5000)の合成(反応スキーム2参照)
アルゴン置換下、室温のフラスコ中、に溶媒としてTHF60mlを入れ、これに開始剤3,3−ジエトキシ−1−プロパノール1mmolとK−ナフタレン(0.3168mol/l)1mmolを撹拌しながら加え、メタル化を行った。充分撹拌後、エチレンオキシドを112.99mmol加え水冷しながら二日間撹拌し、重合を行った。
二日間撹拌後、この溶液に再メタル化を目的としてK−ナフタレン0.5mmolとトリエチルアミン4.5mmolを加えた。アルゴン置換下のナスフラスコ中にTHF溶媒10mlと停止剤として、メチルスルホニルクロライド3.5mmolを溶解させ、これに等圧滴下漏斗を用いてPEG重合溶液を滴下した。滴下後、ジエチルエーテル再沈により回収し、その後、クロロホルムと飽和食塩水で抽出を行い、無水Na2SO4により脱水、ベンゼン凍結乾燥にて回収した。
減圧乾燥されたo−エチルジチオ炭酸ナトリウム0.44mmolにアルゴン下で溶媒としてTHF50mlとジメチルホルムアミド(DMF)3.6mlを加え撹拌した。この溶液を減圧乾燥させたアセタール−PEG−MS0.2gに加え、室温で4時間反応させた。反応後、クロロホルムと飽和食塩水で抽出を行い、無水Na2SO4により脱水、ジエチルエーテル再沈により精製、ベンゼンを用いる凍結乾燥にて回収した。更に、減圧乾燥させたアセタール−PEG−ジチオカルボナート0.1gにアルゴン下で溶媒としてTHF10mlを加えた、ここにn−プロピルアミンを1.4M THF溶液になるように加え、室温で3時間撹拌し反応させた。反応後、クロロホルムと飽和食塩水で抽出を行い、無水Na2SO4により脱水、ジエチルエーテル再沈により精製、ベンゼン凍結乾燥にて、PEG部のMn=5000のポリマー(以下、PEG5000と略記する)を回収した。回収後、1H−NMRにより構造解析、GPC測定を行い、上記のアセタール−PEG−SHが得られたことを確認した。さらに、上記エチレンオキシドの仕込み量を、減少させたこと以外、実質的に上記の操作を繰り返し、PEG部のMn=2000のポリマーを得た。このポリマーを、以下、PEG2000と略記する。なお、Mn値はPEGセグメントの分子量を表す。
例1〜8:J1センサーチップ上へのPEGの固定化
上記製造例に従って得られる各ポリマーの1.0mg/ml濃度溶液(溶媒:1M NaCl含有50mMリン酸バッファー(pH7.3))を37℃下で、流速20μl/分により20分間J1センサーチップ(BIACOREから入手)の金表面に流した。その後、表面を50mM NaOH溶液で流速20μl/分により30秒間2回洗浄した。この一連の操作を固定化実験一回とし、それぞれ、以下に示す概要でポリマーの固定化を行い、各表面を得た。
非特異的吸着試験(その1)
例1〜8で得たJ1センサーチップ、未処理CM5(カルボキシメチルデキストラン(BIACOREより入手)をJ1センサーチップに吸着した)およびブロックCM5(カルボキシメチル基をブロッキングした)の各表面に1mg/ml濃度のウシ血清アルブミン(BSA)溶液[溶媒:0.15M NaCl含有10mM HEPES緩衝液(pH7.4)+3mM EDTAおよび0.005%(v/v)サーファクタントP20]を25℃で、流速20μl/分にて10分間流した。
BSA溶液注入終了3分後の表面へのBSAの結合量を各表面において測定した。なお、未処理CM5は市販のままの状態で用いたものである。他方、ブロックCM5は、▲1▼NHS/EDC混合溶液を10μl/分の流速で未処理CM5表面に10分間流し、次いで▲2▼エタノールアミン溶液を10μl/分の流速で10分間流し、最後に50mM NaOH溶液を10μl/分の流速で1分間流す洗浄を3回行ってカルボキシメチル基をブロックしたものである。結果を図1に示す。
図1より、本発明に従う表面は、BSAの吸着量は、市販の未処理CM5およびブロックCM5、さらには例1(参考)および例2(参考)に比べて著しく低下していることがわかる。
非特異的吸着試験(その2)(BSA以外のタンパクについての評価)
この試験は、PEG5000のみを固定化した表面およびPEG5000と2000の混合ブラシ表面におけるタンパクの非特異的吸着量の比較を行うことを目的として実施した。
(方法・結果)
アセタール−PEG−SH(Mn=5000)を1回固定化した表面、アセタール−PEG−SH(Mn=5000)を1回固定化した表面にさらに分子鎖長の短いアセタール−PEG−SH(Mn=2000)を3回固定化した表面をそれぞれ精製する。以上の表面に、HEPESバッファー(ビアコア製;0.15M−NaCl含有10mM HEPESバッファー(pH7.4)に3mM EDTAおよび0.005%(v/v)surfactant P20を加える。)で調整した0.1mg/mLのペプチドまたはタンパク質の溶液を、流速;20μL/分、反応時間;10分、温度25℃で流した。それぞれの溶液注入終了後、HEPESバッファーを3分間流し、その後、表面へのペプチドまたはタンパクの吸着量を各表面において測定した。選択したペプチドおよびタンパク質は表1に示したもの(フィブリノーゲン、BSA、ミオグロビン、リゾチウム、ブラジキニン、RGDS(アミノ酸の一文字表記による)を使った。コントロールとして、CM表面(BIAcore市販品)を用いた。そのまま使用したもの(normal−CM)、カルボキシ末端をエタノールアミンでブロッキングしたもの(block−CM)の2種用意した。結果を図2に示す。
アセタール−PEG−SH(Mn=5000)を1回固定化した表面では、BSAなどの分子量の大きい生体分子の非特異的吸着量は抑制されたが、RGDSなどのペプチド(低分子量のもの)の非特異的吸着はBSAより多かった。これは分子量が小さいため、PEGブラシ間に入り込む確率が高く、非特異的吸着量が増えたためと思われる。しかし、分子量2000のPEGをさらに表面に導入することによって、表面のPEG密度を増加させた表面では、ペプチドの非特異的吸着量は大幅に減少した。PEGブラシ間の隙間を鎖長の短いPEGで埋めることによって、低分子量物質の非特異的吸着を抑制した結果といえる。また、ブロッキングしたCM表面よりも、PEGブラシ表面はペプチド・タンパクの非特異的吸着を抑制した。さらに、タンパクの等電点と非特異的吸着の関係を図3に示す。この結果、normal−CM表面は、カルボキシル基を有しているため、タンパクの等電点の影響による非特異的吸着量の変化が生じたが、PEGブラシ表面およびblock−CM表面では等電点の影響はなかった。以上のことより、PEGブラシ表面におけるタンパクなどの生体分子の非特異的吸着抑制は、分子量(大きさ)、形状、荷電などの要因も考えられるが、PEGブラシの密度に大きく依存しているといえる。
混合ブラシ表面における分子認識能への影響(センサー感度への影響)の評価試験
この試験は、混合ブラシ表面において、長鎖長にリガンド物質を結合させたときの分子認識能、短鎖長にリガンド物質を結合させたときの分子認識能のデータを示す目的で行った。
(方法・結果)
各表面の作製:
(a) ビオチン化した分子量2000のPEGをほぼ同等量導入した複数の表面を調製し、その一部はアセタール−PEG5000−SHを導入し、混合ブラシ表面を調製した(ビオチン−PEG2000表面およびビオチン−PEG2000+PEG5000表面)。
(b) ビオチン化した分子量2000のPEGをほぼ同等量導入した複数の表面を調製し、その一部はさらに、アセタール−PEG2000−SHを導入することによって、ブラシ密度を増加させた表面を調製した(ビオチン−PEG2000表面およびビオチン−PEG2000+PEG2000表面)。
(c) ビオチン化した分子量5000のPEGをほぼ同等量導入した複数の表面を調製し、その一部はさらに、アセタール−PEG2000−SHを導入し、混合ブラシ表面を調製した(ビオチン−PEG5000表面およびビオチン−PEG5000+PEG2000表面)。
分子認識能:
その後、各PEGブラシ表面において同濃度のストレプトアビジン溶液(0.1mg/ml)を流し、表面におけるストレプトアビジン結合量を測定した。その結果、(a)アセタール−PEG5000を導入することによって、PEGブラシ表面へのストレプトアビジン結合量が減少した(図4(a)、(b)および(c)参照)。このことから、鎖長の長いPEG分子を表面に導入することにより、リガンド−被検体相互作用を阻害する働きがあることが示唆された。つまり、表面の構成が被検体の認識能に影響を及ぼすことがわかった。しかし、(b)鎖長が同じアセタール−PEG2000を導入しPEGブラシ密度を増加させた表面ではストレプトアビジン結合量が増加した。理由として、PEG鎖の密度が増えたことで高分子鎖が表面に対して垂直方向に伸びやすくなり、被検体との結合性(分子認識能)が上がったためと思われる。(c)bと同様、鎖長の短いアセタール−PEG2000を導入することによって、PEG鎖の密度が増加したことにより、ストレプトアビジンの結合量が増加した。
また、(b)の場合において、BSAの非特異的吸着量を比較すると、△θ=24.3×10−4(ビオチン−PEG2000表面)、△θ=15.2×10−4(アセタール−PEG2000とビオチン−PEG2000の複合表面)[°]と、混合ブラシ表面の方が少なく、非特異的吸着量の抑制からも、PEG密度が増加したと考えられる。以上の結果より、PEG表面に構築された構造により、リガンド−被検体相互作用をコントロールできることが認められる。
非特異吸着抑制能についての従来技術表面の評価(比較)
従来技術としては、上述のRoberts et al.,およびHolmlin.et al.,について追試した。
この試験SAM−EO利用表面;EOセグメント9のEO鎖をSAM上に固定化した表面の非特異的吸着量を評価する目的で
(方法・結果)
自己組織化単分子層(SAM)を利用した表面におけるタンパクの非特異的吸着抑制能について検討した(Roberts et al.,の追試)。10−カルボキシ−1−デカンチオールを金表面に固定化し、その上に、NH2−EOn(n=9)−OHを結合させた。この表面に、1mg/mL−BSA溶液を流した際のタンパクの非特異的吸着量を測定した。その結果、SPR角度変化は15.8×10−4degであり、block−CM表面(22.6×10−4deg)、PEG2000(1)表面(19.6×10−4deg)レベルの非特異的吸着抑制能を示した。しかし、PEG5000および2000の複合表面(5×10−4deg以下)の方がBSAの非特異的吸着を有意に抑制した。
PEG鎖末端の官能基の変換方法
上記のポリマー製造例1および2に示される、例えば、アセタール−PEG−SHは、支持体表面に固定された状態でアセタール(またはアセタール化ホルミル基)を、例えば次の順で容易にアルデヒド(もしくはホルミル)基、アミノ基、さらにはカルボキシル基に変換できる。
(1)シャーレにアセタール−PEG−SHを固定化した金基板を入れ、0.1N HCl(pH2)溶液に浸し3時間穏やかに振盪した。
反応終了後、蒸留水にて洗浄した。
(2)シャーレに基板を入れ、200mM酢酸アンモニウム溶液(溶媒:150mM NaCl含有50mM PBS(pH7.4))に浸して1時間穏やかに振盪し、その後30分おきに200mMジメチルアミンボラン溶液(溶媒:150mM NaCl含有50mM PBS(pH7.4))を3回にわけて加えた。
反応終了後、150mM NaCl含有50mM PBS(pH7.4)にて洗浄した。
(3)0.7M無水コハク酸溶液(溶媒:THF)とトリエチルアミンを等モル混和し、シャーレに入れた基板をこの混合溶液に浸して一晩(O/N)で穏やかに振盪した。
反応終了後、THFにて洗浄後、150mM NaCl含有50mM PBS(pH7.4)で洗浄した。
非特異的吸着抑制能に関するPEG鎖末端官能基の影響の評価試験
上記の変換方法によりPEG鎖末端官能基を変換させたときのタンパク質非特異的吸着量を調べた。上述の試験においては、単独タンパク質溶液での結果であったが、より実践的な使用を考え、この試験では、牛血清(混合タンパク質溶液)を用いた。さらに、ここでは、ビアコア製以外の金チップ表面をPEG化した際のデータ[日本レーザー社の装置(SPR−MACS)を用いたデータ]を記載する。PEG化チップの非特異的吸着抑制能はビアコア製以外の場合でも同じ結果を示すことを意識してのものである。
(方法・結果)
混合ブラシ表面の作製(ビアコアではフローで固定化したが今回はディッピング方式をとった)
1M−NaCl含有50mM PBS(pH7.4)に溶解した1mg/mlアセタール−PEG−SH(Mw=5000)溶液を金基板に滴下し、30分室温で放置した。その後、1M NaCl含有50mM PBS(pH7.4)で洗浄した後、50mM NaOH溶液を滴下し30秒放置し、再び1M NaCl含有50mM PBS(pH7.4)にて3回洗浄した。これをもう一度繰り返す。次に、1M NaCl含有50mM PBS(pH7.4)に溶解した1mg/ml MeO−PEG−SH(アセタール末端ではなくメトキシ末端のPEG;反応性なし)(Mw=2000)溶液を、PEG5000を2回固定化した基板上に滴下し30min室温で放置した。その後、1M NaCl含有50mM PBS(pH7.4)で洗浄した後、50mM NaOHを滴下し30秒放置し、再び1M NaCl含有50mM PBS(pH7.4)にて3回洗浄する。これを2回繰り返した。こうして、PEG5000(2)+PEG2000(3)の修飾基板を作製した。
末端官能基を変換した混合PEGブラシ表面におけるタンパク質の非特異的吸着量の評価試験
以下の表面上に、25℃、15mg/mLのウシ胎仔血清(FBS)溶液(溶媒;0.15M−NaCl含有50mM PBS(pH7.4))を15μL/分の流速で4分間、3回流し、その後バッファー(0.15M−NaCl含有50mM PBS(pH7.4))を5分間流した際のタンパク質の吸着量を調べた。結果を図5に示す。
▲1▼〜▲4▼表面:上記の変換方法参照
▲5▼表面:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)25mgを1mlの蒸留水に溶解し、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)15mgを9mlのジオキサンに溶解し、混合する。この混合溶液に基板を浸し、穏やかに室温で30分振盪し活性化させた。その後基板をSPR装置にセットし、1Mエタノールアミン(pH8.6)を25℃、流速5μl/分で12分間、2回インジェクションしてブロッキングした。
▲6▼表面:シャーレに金基板を入れ、1mM4,4′−ジチオ二酪酸溶液(溶媒;エタノール)に浸し、30分間穏やかに振盪する。反応終了後、エタノールで2回洗浄した。
▲7▼表面:▲5▼、▲6▼表面参照
低分子量物質(ビオチン:Mw=244)の検出試験
FBSの吸着量の評価に用いた表面、▲4▼(COOH−PEG−表面)、▲6▼(SAM(4,4′−ジチオ二酪酸)表面(COOH末端表面))を用いて、ストレプトアビジンを表面に固定化し、D−ビオチンの検出を行った。
(方法・結果)
EDC25mgを1mlの蒸留水に溶解し、NHS15mgを9mlのジオキサンに溶解し、混合した。この混合溶液に各基板(上記の▲4▼(COOH−PEG−表面)、▲6▼(SAM(4,4′−ジチオ二酪酸)表面(COOH末端表面)))を浸し、穏やかに室温で30分振盪し活性化させた。その後、基板をSPR装置にセットし、25℃、5μl/分の条件下で0.1mg/mlストレプトアビジン溶液(溶媒:150mM NaCl含有50mM PBS(pH7.4))を12分間、2回インジェクトした。その後、1Mエタノールアミン(pH8.6)を1回インジェクション(12分間)して末反応の活性化エステルをブロッキングした。
これらのストレプトアビジン固定化表面に1mg/ml D−ビオチン溶液(溶媒:150mM NaCl含有50mM PBS(pH7.4))を2回インジェクション(12分間×2回)し、その後、バッファーを5分間流した後、表面へのビオチンの結合量を測定した。結果を図6に示す。
図6から、両表面とも低分子量であるビオチンの検出が可能であることが認められる。しかし、表面への非特異的吸着抑制能はPEGブラシ表面の方が高い。
混合タンパク溶液中での分子認識能についてBSA共存下におけるストレプトアビジンの検出による評価試験
(方法・結果)
アセタール−PEG−SH(Mw=5000および2000)で構築した複合表面におけるストレプトアビジンの認識能を検討した。今回は、PEG5000と2000を同時に金表面に導入したPEG5000および2000(2)(2:2)表面を用いた。
PEGを表面に固定化した後、0.01N HCl溶液を表面に流し、アセタール基をアルデヒド基に変換した。その後、ビオチンヒドラジド溶液(溶媒;50mM PBS(pH7.4))を表面に流すことでビオチンを結合させた。
ビオチン−PEG表面に、それぞれ、(i)1g/L−BSA+0.1mg/L−ストレプトアビジン溶液、(ii)0.1mg/L−ストレプトアビジン溶液、(iii)1g/L−BSA溶液を流し、表面への結合量を測定した。その結果、BSAとストレプトアビジンの濃度差が10000倍あるにもかかわらず、ビオチンPEG固定化表面は、ストレプトアビジンのみを認識し、高い分子認識能を有していることが示せた(図7(a)参照)。また、aのグラフのBSAとストレプトアビジン混合溶液を流した際のグラフの数値(i)からBSAのみを流した際の値(iii)を引いた数値、つまり(i)−(iii)の値をグラフにしたところ、ストレプトアビジン溶液を流した際のグラフとほぼ一致した(図7(b)参照)。この結果からも、PEGブラシ表面は高い分子認識能を有しているといえる。
産業上の利用可能性
本発明によれば、生物由来のタンパク質の非特異的吸着が顕著に抑制されたセンサーチップ表面が提供される。したがって、本発明はバイオアッセイ機器製造業、臨床診断業等で利用可能である。
【図面の簡単な説明】
図1は、従来技術に従う表面を包含する各表面に対するBSAの吸着試験の結果を示すグラフである。
図2は、各表面に対する分子量の異なるペプチドおよびタンパク質の吸着挙動を示すグラフである。
図3は、各表面に対する種々のタンパク質の等電点を有するタンパク質の吸着挙動を示すグラフである。
図4は、各表面上でのリガンドと被検体の相互作用の差違を示すグラフである。
図5は、各種官能基の表面に対するタンパク質の吸着挙動を示すグラフである。
図6は、PEG表面およびSAM(低分子量EO担持)表面に対するビオチンの吸着挙動を示すグラフである。
図7は、ストレプトアビジンの検出に際して、夾雑タンパク質としてのBSAの存在の影響を示すグラフである。
本発明は、バイオセンサーの分野に関し、より具体的には、生物学的流体等に含まれる被検体以外の夾雑物による非特異吸着もしくは結合を低減もしくは防止するバイオセンサー表面に関する。
背景技術
生物学的試料中に存在する被検体を検出する方法として、多種多様な検出様式をもつバイオセンサーが提案されている。そのようなバイオセンサーの中で、表面プラズモン共鳴(SPR)を利用するセンサーは、金属薄膜の表面およびその近傍における屈折率変化に対して敏感である(例えば、A.Szabo et al.,Curr.Opin.Strnct.Biol.5(1995)699−705参照)。SPRは、表面と複雑な生物学的液体との間で生じる過程のインサイチュ(in situ)での観察が可能であり、そして例えば、標識を使用することなくリアルタイムに被検体からのデータが入手できるので、動力学的および熱力学的なパラメーターを取得するのに適していることから注目を集めているセンサーの一つである。
このような表面をもつバイオセンサーチップの典型的なものとしては、アマシャム ファルマシア バイオテク(株)から入手できるBIACORE(商標)がある。このBIACOREは、末端がカルボキシル化されたデキストランのマトリックスが半透明の状態で金の薄膜上に固定されている。かような検出表面を特許請求すると思われるものとしては特許第2815120号(EP U.S.Patent No.5,242,828およびEP O 589 867 B1に対応する)公報がある。該公報によれば、HS−R−Y(Rは10原子を越える鎖の長さを有し、ヘテロ原子で中断されていてもよい炭化水素鎖であり、Yはリガンド又は生適合性多孔質マトリックスを共有結合させるための活性基である)で表される有機分子を用いて、そのチオール(またはメルカプト)基を介して金、銀などの自由金属の膜表面へ結合させて密に詰め込まれた単層で該表面を被覆し、次いで、生適合性多孔質マトリックスとして、リガンドを結合させるための官能基を有していてもよいアガロース、デキストラン、ポリエチレングリコール等からなるヒドロゲルを共有結合した表面が記載されている。
特許第3071823号(U.S.Patent No.5763191およびEP O 574 000 B1に対応)には、保持材上へ硫黄原子(メルカプト基の)を介して結合したスペーサー分子(炭素原子数1〜30のアルキレン鎖)に親水性リンカー部(鎖長4から15原子の直鎖分子)と固相反応物質(ビオチン誘導体残基)が順に共有結合した表面が記載きれている。そして、かような表面を形成するビオチニル化化合物の典型的なものとして、次式で表される化合物が記載されている。
該表面の固相反応物質を有する分子鎖は、さらに固相反応物質(すなわち、上式の例では、ビオチン誘導体残基)を有しないか、または固相反応物質も親水性リンカーも有しない希釈分子によって希釈されていてもよい。
Roberts et al.,J.Am.Chem Soc.1998,120,6548−6555には、HS−スペーサー分子(炭素原子数11のアルキレン鎖)−親水性リンカー(エチレンオキシド単位3個または6個からなる鎖)−をベースとする化合物を用い、メルカプト基を介して金表面に自己組織化単分子層(SAM)を形成することが記載されている。また、親水性リンカー部がエチレンオキシド単位3個の化合物と、エチレンオキシド単位6個(末端にオリゴペプチドのリガンドが結合している)の化合物との混合物から形成された表面は、細胞のリガンド特異的結合を促進するが、付着した細胞によるタンパク質の堆積を低減することも教示されている。また、Holmlin et al.,Langmuir,17,2841−2850(2001)には、該SAMと両性イオンを含む表面へのタンパク質の吸着の抑制について記載されている。
Pavey et al.,Biomaterials 20(1999)885−890には、ポリ(エチレンオキシド)n−ポリ(プロピレンオキシド)m−ポリ(エチレンオキシド)nのトリブロックコポリマーの様々な2種の組み合わせ物を、SPRの検出用金属薄膜上に付着させた表面が記載されている。また、こうして形成された表面では、溶液中にポリ(エチレンオキシド)鎖が伸長し、ブラシ様構造物(brush−like architecture)を形成することが示唆されている。さらに、ポリ(エチレンオキシド)の鎖長(n)が異なる2種のトリブロックコポリマーが付着した表面は、それらの1種が付着した表面より一般的にタンパク質(ウシ血清アルブミン)の吸着が低減することも示されている。
ところで、以上の先行技術文献のうち、特許第2815120号には、鎖(R)の長さが10原子を越え、好ましくは12〜30原子の例えば、疎水性のかなり大きなアルキレン鎖をもつ16−メルカプトヘキサデカノールをチオール基を介して金属表面に化学吸着させることにより、有機分子が密に詰め込まれた単層の表面が得られることが記載されている。こうして得られる単層は貯蔵安定性があり、しかも、金属表面を化学腐食から保護する有効なバリアー層となりうることも示唆されている。そして、かようなバリアー層上には、タンパク質適合性と非特異的相互作用を最小化するヒドロゲルが結合されている。したがって、該特許発明に関連する好適な態様と思われる上記BIACORE(商標)(デキストランのヒドロキシゲルを担持する)は、実用化されている。しかし、バリアー層上にヒドロキシゲルを均一に担持させるのは容易ではなく、厳密な操作が必要であり、また、タンパク質の非特異的吸着は相当に低減しているが、未だ改良の余地がある。
特許第3071823号は、上述したビオチニル化化合物の形成する表面のビオチニル(固相反応物質)が密である場合には、例えば、ビオチンと非共有結合的結合対を形成する遊離のアビジンとの結合が遅いこと等を改良するために、敢えて、ビオチニル化化合物を疎らに保持材料表面へ結合させるか、あるいはビオチニル残基を有していない希釈分子と相当するビオチニル残基を有する分子とを10:1〜2:1で用いて希釈分子とビオチニル残基(固相反応物質)を有する分子とを、共に該表面へ結合させている。かような表面また、Roberts et al.の表面は、エチレンオキシド単位約5〜6個までの親水性リンカー部を有するが、特許第2815120号のようなヒドロゲル層を有しないので、目的とするタンパク質(例えば、ストレプトアビジン)や細胞以外の夾雑タンパク質の非特異的吸着が生じうる。
Bavey et al.,はトリブロックコポリマーの疎水性ブロックであるポリ(プロピレンオキシド)ドメインを介して金属表面へ付着させるものであり、通常のポリマーコーティングと同様に安定性、均一性および再現性ある表面を得ることが困難である(U.S.Patent No.4415666も参照)。しかも、ポリ(エチレンオキシド)鎖の密度を高めることも困難である。
本発明者らの一部は、以上のような先行技術に伴う短所が解消されるか軽減された表面を提供するものとして、片末端にメルカプト(−SH)基を有し、もう一つの末端に保護されていてもよいポリ(エチレンオキシド)(以下、PEGと略記する場合あり)を主体とするポリマーを緩衝液に溶解させた後約1時間SPRのセンサーチップの金表面の接触させたところ、該表面への非特異的なタンパク質の吸着が上記市販のBIACORE(商標)のセンサーチップ表面CM5に対するのと同等以上に低減できることを見出して特許出願した(WO 01/86301参照)。
上述の特許第2815120号によれば、金属表面へ密にHS−R−Y鎖を詰め込むのに、Rが少なくとも10原子の炭化水素基であることが必要であるとされている。他方、特許第3071823号によればビオチニル化化合物が、例えば、鎖長4から15原子の親水性リンカー(エチレンオキシド単位で1〜3)を有するものを使用することによって、該化合物による鎖が疎な表面を形成している。ところが上記WO 01/86301によれば、驚くべきことに、例えば、PEG部の分子量が1000〜10000であるような長鎖のポリマーを有する点で特許第3071823号またはRoberts et al.に記載のポリマーとは全く異なる巨大分子がそのメルカプト基を介して水溶液から金属表面に効率よく結合できることが本発明者の一部により見出された。すなわち、WO 01/86301に記載のポリマーでは、溶液中の親水性PEO鎖とタンパク質との空間的な反発作用を介して、表面でのそれらの相互作用を低下させるように水和されたPEO層はフレキシブルであり可動性であると当業者に認識されているにもかかわらず、所望量(または適度な密度)のPEO鎖が表面に安定に結合されているのである。
しかし、WO 01/86301に記載の表面もBIACORE(商標)のセンサー表面と同様に、可能であれば、夾雑タンパク質の非特異的吸着がさらに低減できることが望まれるであろう。したがって、本発明は、WO 01/86301に記載の表面の、例えば、非特異的吸着において、さらなる低減がなされた表面を提供することにある。
発明の開示
理論によって拘束されるものでないが、上述のように溶液中のPEO鎖は可動性で立体的に相互に反発しあうためか、WO 01/86301に記載したような結合方法では、個に、処理時間を延長してもポリマーの結合量を有意に増大させることはできなかった。しかしながら、改めて、該結合操作を繰り返した場合には、新たに、追加のポリマーを同一表面上へより密に結合できることを見出した。しかも、こうして得られる表面は、WO 01/86301に記載された表面に比し、夾雑タンパク質(例えば、ウシ血清アルブミン(以下、BSAという))の吸着が有意に低減できることが確認できた。
したがって、本発明によれば、
(a) 一般式
[式中、
AはHS−または
基を表し、ここで、
R1、R2およびR3は独立してC1〜C6アルキル基を表し、
L1は第一の連結基または原子価結合を表し、
L2は第二の連結基または原子価結合を表し、
Xは水素原子、官能基、保護された官能基またはリガンドを表し、
pは2〜12の整数であり、
nは平均値として10以上、好ましくは、20〜10,000の整数のいずれかである]で表されるポリマーの1種または2種以上を、それらのA部を介して結合したバイオセンサー表面であって、
(b) 該表面を熱重量分析(thermogravimetric analysis)にかけて得られるデータから換算した場合の表面1nm2当たりのポリマー鎖数が0.1本以上(好ましくは0.25本以上)である、
ことを特徴とする表面が提供される。
さらに本発明によれば、上記のような表面の一部の作製方法であって、
(A) 一般式(Ia)
(式中、L1、L2、X、pおよびnは上記一般式(I)について定義したのと同義である)
で表されるポリマーの水性溶液を金、銀、銅およびアルミニウムよりなる群から選ばれる金属表面と該ポリマーの所定量が該金属表面に結合するのに十分な条件下で接触させた後、未結合ポリマーを洗浄除去する工程、
(B) 次いで、前記工程で結合させたポリマーと同一のポリマーまたは異なるポリマーであって、nの整数(すなわち、エチレンオキシド単位の数)の平均値が小さいポリマーの水性溶液を、(A)工程でもたらされた金属表面と、該表面に結合するのに十分な条件下で接触させた後、未結合ポリマーを洗浄除去する工程、ならびに
(C) こうして得られる表面に(B)工程と同様な複数(一般に、2〜6回好ましくは3〜4回)の工程を行うこと、
を含んでなる方法、も提供される。
さらなる発明として、上記表面の別の一部の作製方法であって、
(A) 一般式(Ib)
(式中、R1、R2、R3、L1、L2、X、pおよびnは上記一般式(I)について定義したのと同様である)
で表されるポリマーの有機溶媒溶液をガラス、半導体、セラミックス、金属酸化物および合金酸化物よりなる群から選ばれる材料と該ポリマーの所定量が該材料表面に付着または結合するのに十分な条件下で接触させた後、溶媒を留去し、そして未結合ポリマーを洗浄除去する工程、
(B) 次いで、前記工程で結合させたポリマーと同一のポリマーまたは異なるポリマーであって、nの整数(すなわち、エチレンオキシド単位の数)の平均値が小さいポリマーの有機溶媒溶液を、(A)工程でもたらされた材料表面と該表面に付着または結合するのに十分な条件下で接触させた後、溶媒を留去し、そして未結合ポリマーを洗浄除去する工程、ならびに
(C) こうして得られる表面に(B)工程と同様な複数の工程を行うこと、を含んでなる請求項1に記載の表面のうち、一般式(I)のAがトリアルコキシシリル基である表面の作製方法、も提供される。
また、別法として、一般式(Ia)または(Ib)におけるn数が最初のポリマーのそれより少なくとも10、好ましくは20異なる2種以上のポリマー群の混合物を用いる、上記表面の作製方法も提供される。
発明を実施するための最良の形態
本発明に従う表面におけるBSAの吸着の程度を示す△θ[°]は、例えば、Jung et al.,Langmuir 1998,14,5636に記載されるとおり、金属界面での屈折率変化により誘起される値であり、大きな値はBSAの吸着量が大きいことを示す。なお、この値は測定条件により変動する値であるが、本発明にいう△θ[°]値は、後述する「非特異的吸着試験」に従って測定される場合を前提とする。
また、本発明にいう、「ポリマーのそれぞれを一般式(I)におけるAがHS−であり、そして−L2−Xが−CH2CH2CH(OCH2CH3)2であるポリマーに相当するポリマーとして」とは、一般式(I)におけるAの定義がHS−以外であり、そして−L2−Xが−CH2CH2CH(OCH2CH3)3以外であるポリマーを、假に、それぞれをHS−および−CH2CH2CH(OCH2CH3)2のポリマーとした場合の性状を想定するものである。
一般式(I)におけるnの定義について、「nは平均値として」とか、または「nの整数が、平均値として」という語は、通常、一般式(I)で表されるポリマーがある一定の分子量分布をもつものとして製造されることを考慮したものである。後述する該ポリマーの製造例によると、実質的に単分散ポリマーが得られ、本発明ではかようなポリマーを使用することが好ましいが、それらに限定されることなく、多分散性(例え
が1.6〜2.0にある)ポリマーであっても、上記の定義に従うことを条件に使用できる。
本発明に従う表面は、主としてSPRを応用したバイオセンサー表面について特に注目しているが、所謂、生物学的に特異的に非共有結合を形成する広く、リガンドとレセプター、例えば、抗原もしくはハプテンと抗体、糖とレクチン、基質と酵素、ホルモンとその受容体、オリゴヌクレオチドとそれの相補鎖、のごとき結合対の形成を介して、表面に生じる何らかの変化がトレースできるバイオセンサー表面であればいかなるものであってもよい。トレースできるシグナルとしては、放射能、接触角、沈降、紫外分光、表面プラズモン共鳴等の変化であることができる。
本発明に表面に用いることのできるポリマーは、殆どがそれら自体公知のものであり、AがHS−を表すポリマーについては、上記WO 01/86301に記載されており、一般式(Ia)
(式中、L1、L2、X、pおよびnは上記定義したとおりである)
で表され、L1、L2、Xは、それぞれ製造方法によって、最適な基が選ばれ得る。L1およびL2は、独立して原子価結合または各種連結基であることができる。L1の具体的な連結基としては、−COO−(この基は、酸素原子を介してエチレンオキシド単位に結合する)、−O−または−S−が代表的なものである。L2の具体的な連結基は、−(CH2)q−(ここで、qは2〜6の整数である)である。
Xは、水素原子、官能基、保護された官能基であり、官能基は、上記のリガンドを共有結合しうるいかなる基であってもよい。リガンドがタンパク質またはヌクレオチドである場合を例にとれば官能基または保護された官能基としては、
または−COOHであり、Rbは独立して水素原子またはC1−C6アルキルを表し、Rcは独立してC1−C6アルキルオキシ(ケタールもしくはアセタール)または2つのRcが一緒になってオキシ(上記基は、全体としてアルデヒドもしくはホルミル基:−CHOとなる)であることができ、あるいはRcは、C1−C6アルキルで置換されていてもよいエチレン基(環状ケタールを形成する)であることができる。特に、アルデヒド(もしくはホルミル)基または保護されたアルデヒド(もしくはホルミル)基(ケタール基)が、都合よく使用できる。C1−C6アルキルは、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、n−ヘキシル等であるが、メチルであることが好ましい。
上記のWO 1/86301に記載の代表的な製造方法を反応スキームで示せば、次のとおりである。
反応スキーム1:
(なお、上記各式中、XaはX−L2であり、その他の略号は、上記と同じ意味を有する。)
また、別法として、反応スキーム2、具体的には後述する方法に従って上記一般式(Ia)のポリマーを製造することもできる。
反応スキーム2:
Aがトリアルコキシシリル基である場合の一般式(Ib):
(式中、R1、R2、R3、L1、L2、X、pおよびnは上記定義したとおりである)
で表されるポリマーも、殆どがそれ自体公知である。
具体的には、R1、R2およびR3について定義するC1−C6アルキルは、RbおよびRcについて定義したC1−C6アルキルと同じ意味を有する。一般式(Ib)においても、−Xは、上記一般式(Ia)と同義であることができるが、L1は、例えば、−O−、−NHCOO−(酸素原子を介してエチレンオキシド単位に結合する)または−N(Rd)−(RdはC1−C6アルキルである)であり、L2は−(CH2)γ−または−CO(CH2)γ−(γは2〜6の整数である)である。かようなポリマーは、例えば、以下の反応スキームに従って都合よく製造することができる。
反応スキーム3:
反応スキーム4:
反応スキーム5:
(以上の各式中の略号は、Mはカリウム、ナトリウム、リチウムを表す。)
以上のリビング重合工程は、それ自体公知の反応条件の下で実施できる(例えば、WO 96/32434、WO 97/06202、等を参照されたい。)。その他は、後述する実施例に従い、または記載されている条件を改変して実施できる。
以上のポリマーを用いる表面の形成は、限定されるものでないが、一般式(Ia)のポリマーを用いる場合は、表面の支持体(SPRセンサーでは、金属薄膜)は、金、銀、銅およびアルミニウム等の金属から選ぶのがよい。他方、一般式(Ib)のポリマーを用いる場合は、支持体は、ガラス、半導体、セラミック、金属酸化物および合金酸化物で、湿分等により、表面にヒドロキシル基を形成し、トリアルコキシシランと共有結合を形成するものから選ぶのがよい。
本発明に従う表面は、上記一般式(Ia)または(Ib)のポリマーが、それらを含有する溶液を用いて、複数回の結合処理を行うか、またはエチレンオキシド単位(平均値)の大きさの異なる2種以上のポリマーを含有する溶液を用いる結合処理を行うことにより、ほぼ同一のポリマーの一度の結合処理ではほぼ一定の飽和結合基となるのにもかかわらず、かかる一度の処理による結合量に比べ有意に結合量の増加した状態となっている。一般式(Ia)のポリマーを用いる場合は、適当な緩衝化した水溶液にポリマーを溶解し、こうして得られたポリマー溶液を適当な温度、例えば周囲温度(20〜37℃)で支持体表面と接触させる。ポリマー溶液は用いるポリマーの分子量により、最適濃度が異なるが、通常、0.1〜5mg/ml、好ましくは1mg/ml濃度として、接触はポリマー溶液と支持体表面とを接触させておき数10分から〜数時間インキュベートすることによって行う。
こうして、ポリマーの一定量が支持体表面に結合(おそらく、化学結合)する。こうして得られる表面を洗浄することにより未結合のポリマー等を表面から洗浄除去する。洗浄は、未結合のポリマーを効率よく除去できるものであればいかなる洗液でもよいが、希薄NaOH水溶液を用いるのがよい。こうして洗浄が終了した後、得られた表面に、改めて、ポリマー溶液を用いるポリマーの再度の結合処理を行う。この再度の結合処理は、最初の結合処理および洗浄処理と実質的に同一であってもよい。好ましくは、この再度の結合処理および洗浄処理はさらに、1回以上行うことが好ましい。この各再度の結合処理に用いるポリマーは、最初の処理に用いたものと同一であることができるが、ポリ(エチレンオキシド)ブロックの分子量が最初のものと、それぞれ異なっていてもよい。異なる場合は、好ましくは、再度の結合処理に用いるポリマーの方が最初の結合処理に用いるものより、分子量が小さくなるように選ぶのがよい。各再度の結合処理ごとに、徐々に分子量が小さくなるように選ぶこともできる。限定されるものでないがポリ(エチレンオキシ)ブロックの分子量を基準に、最初の結合処理と再度の結合処理とにそれぞれ用いるのに好ましい組み合わせとしては、一般式(I)または(Ia)のnが平均値として、50〜10000のいずれかの整数であるポリマーで最初の結合処理を行い、各再度の結合処理を、最初に用いたポリマーより、エチレンオキシド単位の数が10以上小さい、好ましくは50位上小さいポリマーを用いて行うことが好ましい。こうして、該表面を熱重量分析(例えば、W.P.Wuelfing et.al.,J.Am.Chem.Soc.1998,120,12696−12697参照)にかけて得られるデータから換算した場合の値が0.1本/nm2以上となる表面が都合よく得られる。
一般式(Ia)のポリマーに代え、一般式(Ib)のポリマーを用いる場合には、ポリマーは、好ましくは無水の有機溶媒(例えば、トルエン等のポリマー易溶性有機溶媒)に溶解した溶液を用い、例えば、ガラス、チタン、アルミニウム等の表面(必要があれば、水酸化処理した後)へのポリマーの結合または付着処理を行った後、溶媒を留去した後、表面に対して未反応のポリマーを該有機溶媒を用いて洗浄除去することの他は、一般式(Ia)のポリマーを用いる場合と同様に処理することにより、目的の表面を形成できる。
こうして形成された表面は、1回のポリマーの結合処理で得られる表面に比べ、より高密度なポリエチレングリコール(またはポリ(エチレンオキシド))の高分子ブラシが構築できバイオセンサー表面へ非特異的吸着を起こす試料中の夾雑タンパク質の吸着を著しく低下させることができる。さらには、より精密な生体分子間特異的相互作用の検出を可能にするであろう。
以下、具体例を参照しながら本発明をさらに詳細に説明するが、これらの例に本発明を限定することを意図するものでない。
ポリマーの製造例1:アセタール−PEG−SH(Mn=2000、5000)の合成(反応スキーム1参照)
アルゴン置換した受器中に蒸留テトラヒドロフラン(THF)20mlと開始剤3,3−ジエトキシ−1−プロパノール0.2mmol(0.032ml)を加え、さらに当量のカリウムナフタレンを加えて15分撹拌することでメタル化を行った。その後、エチレンオキシド22.7mmol(1,135ml)を加え、室温で2日間撹拌し重合させた。停止剤としてN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルチオ)プロピオネート(SPDP)0.4mmol(0.125g)を少量の蒸留THFに溶解させ、この溶液に対し前記の重合反応溶液を等圧滴下漏斗にて氷冷下で滴下した。一晩撹拌して停止反応を行った後に、飽和食塩水洗浄・クロロホルム抽出、エーテル再沈、ベンゼン凍結乾燥を経て、ポリマーを回収した。回収したポリマーは1H−NMRにて構造を確認し、末端に導入されたSPDP残基の量は、2−メルカプトエタノールと反応させることによって遊離した2−チオピリドンのUV吸収によっても確認した。
PEG−SS−Py2.0×10−2mmol(100mg)を蒸留水4mlに溶解させ、さらに5倍mol量のジチオトレイトール0.1mmol(15.42mg)を加え、室温で30分撹拌した。反応後、飽和食塩水洗浄・クロロホルム抽出・エーテル再沈を経てPEG部のMn=5000のポリマー(以下、PEG5000と略記する)を回収した。回収したポリマーは1H−NMRによって構造を確認し、さらに2−ピリジルジスルフィド(2−PDS)との反応により、末端SH基の定量を行った。
さらに、上記エチレンオキシドの仕込み量を、減少させたこと以外、実質的に上記の操作を繰り返し、PEG部のMn=2000のポリマーを得た。なお、Mn値はPEGセグメントの分子量を表す。
ポリマーの製造例2:アセタール−PEG−SH(Mn=2000、5000)の合成(反応スキーム2参照)
アルゴン置換下、室温のフラスコ中、に溶媒としてTHF60mlを入れ、これに開始剤3,3−ジエトキシ−1−プロパノール1mmolとK−ナフタレン(0.3168mol/l)1mmolを撹拌しながら加え、メタル化を行った。充分撹拌後、エチレンオキシドを112.99mmol加え水冷しながら二日間撹拌し、重合を行った。
二日間撹拌後、この溶液に再メタル化を目的としてK−ナフタレン0.5mmolとトリエチルアミン4.5mmolを加えた。アルゴン置換下のナスフラスコ中にTHF溶媒10mlと停止剤として、メチルスルホニルクロライド3.5mmolを溶解させ、これに等圧滴下漏斗を用いてPEG重合溶液を滴下した。滴下後、ジエチルエーテル再沈により回収し、その後、クロロホルムと飽和食塩水で抽出を行い、無水Na2SO4により脱水、ベンゼン凍結乾燥にて回収した。
減圧乾燥されたo−エチルジチオ炭酸ナトリウム0.44mmolにアルゴン下で溶媒としてTHF50mlとジメチルホルムアミド(DMF)3.6mlを加え撹拌した。この溶液を減圧乾燥させたアセタール−PEG−MS0.2gに加え、室温で4時間反応させた。反応後、クロロホルムと飽和食塩水で抽出を行い、無水Na2SO4により脱水、ジエチルエーテル再沈により精製、ベンゼンを用いる凍結乾燥にて回収した。更に、減圧乾燥させたアセタール−PEG−ジチオカルボナート0.1gにアルゴン下で溶媒としてTHF10mlを加えた、ここにn−プロピルアミンを1.4M THF溶液になるように加え、室温で3時間撹拌し反応させた。反応後、クロロホルムと飽和食塩水で抽出を行い、無水Na2SO4により脱水、ジエチルエーテル再沈により精製、ベンゼン凍結乾燥にて、PEG部のMn=5000のポリマー(以下、PEG5000と略記する)を回収した。回収後、1H−NMRにより構造解析、GPC測定を行い、上記のアセタール−PEG−SHが得られたことを確認した。さらに、上記エチレンオキシドの仕込み量を、減少させたこと以外、実質的に上記の操作を繰り返し、PEG部のMn=2000のポリマーを得た。このポリマーを、以下、PEG2000と略記する。なお、Mn値はPEGセグメントの分子量を表す。
例1〜8:J1センサーチップ上へのPEGの固定化
上記製造例に従って得られる各ポリマーの1.0mg/ml濃度溶液(溶媒:1M NaCl含有50mMリン酸バッファー(pH7.3))を37℃下で、流速20μl/分により20分間J1センサーチップ(BIACOREから入手)の金表面に流した。その後、表面を50mM NaOH溶液で流速20μl/分により30秒間2回洗浄した。この一連の操作を固定化実験一回とし、それぞれ、以下に示す概要でポリマーの固定化を行い、各表面を得た。
非特異的吸着試験(その1)
例1〜8で得たJ1センサーチップ、未処理CM5(カルボキシメチルデキストラン(BIACOREより入手)をJ1センサーチップに吸着した)およびブロックCM5(カルボキシメチル基をブロッキングした)の各表面に1mg/ml濃度のウシ血清アルブミン(BSA)溶液[溶媒:0.15M NaCl含有10mM HEPES緩衝液(pH7.4)+3mM EDTAおよび0.005%(v/v)サーファクタントP20]を25℃で、流速20μl/分にて10分間流した。
BSA溶液注入終了3分後の表面へのBSAの結合量を各表面において測定した。なお、未処理CM5は市販のままの状態で用いたものである。他方、ブロックCM5は、▲1▼NHS/EDC混合溶液を10μl/分の流速で未処理CM5表面に10分間流し、次いで▲2▼エタノールアミン溶液を10μl/分の流速で10分間流し、最後に50mM NaOH溶液を10μl/分の流速で1分間流す洗浄を3回行ってカルボキシメチル基をブロックしたものである。結果を図1に示す。
図1より、本発明に従う表面は、BSAの吸着量は、市販の未処理CM5およびブロックCM5、さらには例1(参考)および例2(参考)に比べて著しく低下していることがわかる。
非特異的吸着試験(その2)(BSA以外のタンパクについての評価)
この試験は、PEG5000のみを固定化した表面およびPEG5000と2000の混合ブラシ表面におけるタンパクの非特異的吸着量の比較を行うことを目的として実施した。
(方法・結果)
アセタール−PEG−SH(Mn=5000)を1回固定化した表面、アセタール−PEG−SH(Mn=5000)を1回固定化した表面にさらに分子鎖長の短いアセタール−PEG−SH(Mn=2000)を3回固定化した表面をそれぞれ精製する。以上の表面に、HEPESバッファー(ビアコア製;0.15M−NaCl含有10mM HEPESバッファー(pH7.4)に3mM EDTAおよび0.005%(v/v)surfactant P20を加える。)で調整した0.1mg/mLのペプチドまたはタンパク質の溶液を、流速;20μL/分、反応時間;10分、温度25℃で流した。それぞれの溶液注入終了後、HEPESバッファーを3分間流し、その後、表面へのペプチドまたはタンパクの吸着量を各表面において測定した。選択したペプチドおよびタンパク質は表1に示したもの(フィブリノーゲン、BSA、ミオグロビン、リゾチウム、ブラジキニン、RGDS(アミノ酸の一文字表記による)を使った。コントロールとして、CM表面(BIAcore市販品)を用いた。そのまま使用したもの(normal−CM)、カルボキシ末端をエタノールアミンでブロッキングしたもの(block−CM)の2種用意した。結果を図2に示す。
アセタール−PEG−SH(Mn=5000)を1回固定化した表面では、BSAなどの分子量の大きい生体分子の非特異的吸着量は抑制されたが、RGDSなどのペプチド(低分子量のもの)の非特異的吸着はBSAより多かった。これは分子量が小さいため、PEGブラシ間に入り込む確率が高く、非特異的吸着量が増えたためと思われる。しかし、分子量2000のPEGをさらに表面に導入することによって、表面のPEG密度を増加させた表面では、ペプチドの非特異的吸着量は大幅に減少した。PEGブラシ間の隙間を鎖長の短いPEGで埋めることによって、低分子量物質の非特異的吸着を抑制した結果といえる。また、ブロッキングしたCM表面よりも、PEGブラシ表面はペプチド・タンパクの非特異的吸着を抑制した。さらに、タンパクの等電点と非特異的吸着の関係を図3に示す。この結果、normal−CM表面は、カルボキシル基を有しているため、タンパクの等電点の影響による非特異的吸着量の変化が生じたが、PEGブラシ表面およびblock−CM表面では等電点の影響はなかった。以上のことより、PEGブラシ表面におけるタンパクなどの生体分子の非特異的吸着抑制は、分子量(大きさ)、形状、荷電などの要因も考えられるが、PEGブラシの密度に大きく依存しているといえる。
混合ブラシ表面における分子認識能への影響(センサー感度への影響)の評価試験
この試験は、混合ブラシ表面において、長鎖長にリガンド物質を結合させたときの分子認識能、短鎖長にリガンド物質を結合させたときの分子認識能のデータを示す目的で行った。
(方法・結果)
各表面の作製:
(a) ビオチン化した分子量2000のPEGをほぼ同等量導入した複数の表面を調製し、その一部はアセタール−PEG5000−SHを導入し、混合ブラシ表面を調製した(ビオチン−PEG2000表面およびビオチン−PEG2000+PEG5000表面)。
(b) ビオチン化した分子量2000のPEGをほぼ同等量導入した複数の表面を調製し、その一部はさらに、アセタール−PEG2000−SHを導入することによって、ブラシ密度を増加させた表面を調製した(ビオチン−PEG2000表面およびビオチン−PEG2000+PEG2000表面)。
(c) ビオチン化した分子量5000のPEGをほぼ同等量導入した複数の表面を調製し、その一部はさらに、アセタール−PEG2000−SHを導入し、混合ブラシ表面を調製した(ビオチン−PEG5000表面およびビオチン−PEG5000+PEG2000表面)。
分子認識能:
その後、各PEGブラシ表面において同濃度のストレプトアビジン溶液(0.1mg/ml)を流し、表面におけるストレプトアビジン結合量を測定した。その結果、(a)アセタール−PEG5000を導入することによって、PEGブラシ表面へのストレプトアビジン結合量が減少した(図4(a)、(b)および(c)参照)。このことから、鎖長の長いPEG分子を表面に導入することにより、リガンド−被検体相互作用を阻害する働きがあることが示唆された。つまり、表面の構成が被検体の認識能に影響を及ぼすことがわかった。しかし、(b)鎖長が同じアセタール−PEG2000を導入しPEGブラシ密度を増加させた表面ではストレプトアビジン結合量が増加した。理由として、PEG鎖の密度が増えたことで高分子鎖が表面に対して垂直方向に伸びやすくなり、被検体との結合性(分子認識能)が上がったためと思われる。(c)bと同様、鎖長の短いアセタール−PEG2000を導入することによって、PEG鎖の密度が増加したことにより、ストレプトアビジンの結合量が増加した。
また、(b)の場合において、BSAの非特異的吸着量を比較すると、△θ=24.3×10−4(ビオチン−PEG2000表面)、△θ=15.2×10−4(アセタール−PEG2000とビオチン−PEG2000の複合表面)[°]と、混合ブラシ表面の方が少なく、非特異的吸着量の抑制からも、PEG密度が増加したと考えられる。以上の結果より、PEG表面に構築された構造により、リガンド−被検体相互作用をコントロールできることが認められる。
非特異吸着抑制能についての従来技術表面の評価(比較)
従来技術としては、上述のRoberts et al.,およびHolmlin.et al.,について追試した。
この試験SAM−EO利用表面;EOセグメント9のEO鎖をSAM上に固定化した表面の非特異的吸着量を評価する目的で
(方法・結果)
自己組織化単分子層(SAM)を利用した表面におけるタンパクの非特異的吸着抑制能について検討した(Roberts et al.,の追試)。10−カルボキシ−1−デカンチオールを金表面に固定化し、その上に、NH2−EOn(n=9)−OHを結合させた。この表面に、1mg/mL−BSA溶液を流した際のタンパクの非特異的吸着量を測定した。その結果、SPR角度変化は15.8×10−4degであり、block−CM表面(22.6×10−4deg)、PEG2000(1)表面(19.6×10−4deg)レベルの非特異的吸着抑制能を示した。しかし、PEG5000および2000の複合表面(5×10−4deg以下)の方がBSAの非特異的吸着を有意に抑制した。
PEG鎖末端の官能基の変換方法
上記のポリマー製造例1および2に示される、例えば、アセタール−PEG−SHは、支持体表面に固定された状態でアセタール(またはアセタール化ホルミル基)を、例えば次の順で容易にアルデヒド(もしくはホルミル)基、アミノ基、さらにはカルボキシル基に変換できる。
(1)シャーレにアセタール−PEG−SHを固定化した金基板を入れ、0.1N HCl(pH2)溶液に浸し3時間穏やかに振盪した。
反応終了後、蒸留水にて洗浄した。
(2)シャーレに基板を入れ、200mM酢酸アンモニウム溶液(溶媒:150mM NaCl含有50mM PBS(pH7.4))に浸して1時間穏やかに振盪し、その後30分おきに200mMジメチルアミンボラン溶液(溶媒:150mM NaCl含有50mM PBS(pH7.4))を3回にわけて加えた。
反応終了後、150mM NaCl含有50mM PBS(pH7.4)にて洗浄した。
(3)0.7M無水コハク酸溶液(溶媒:THF)とトリエチルアミンを等モル混和し、シャーレに入れた基板をこの混合溶液に浸して一晩(O/N)で穏やかに振盪した。
反応終了後、THFにて洗浄後、150mM NaCl含有50mM PBS(pH7.4)で洗浄した。
非特異的吸着抑制能に関するPEG鎖末端官能基の影響の評価試験
上記の変換方法によりPEG鎖末端官能基を変換させたときのタンパク質非特異的吸着量を調べた。上述の試験においては、単独タンパク質溶液での結果であったが、より実践的な使用を考え、この試験では、牛血清(混合タンパク質溶液)を用いた。さらに、ここでは、ビアコア製以外の金チップ表面をPEG化した際のデータ[日本レーザー社の装置(SPR−MACS)を用いたデータ]を記載する。PEG化チップの非特異的吸着抑制能はビアコア製以外の場合でも同じ結果を示すことを意識してのものである。
(方法・結果)
混合ブラシ表面の作製(ビアコアではフローで固定化したが今回はディッピング方式をとった)
1M−NaCl含有50mM PBS(pH7.4)に溶解した1mg/mlアセタール−PEG−SH(Mw=5000)溶液を金基板に滴下し、30分室温で放置した。その後、1M NaCl含有50mM PBS(pH7.4)で洗浄した後、50mM NaOH溶液を滴下し30秒放置し、再び1M NaCl含有50mM PBS(pH7.4)にて3回洗浄した。これをもう一度繰り返す。次に、1M NaCl含有50mM PBS(pH7.4)に溶解した1mg/ml MeO−PEG−SH(アセタール末端ではなくメトキシ末端のPEG;反応性なし)(Mw=2000)溶液を、PEG5000を2回固定化した基板上に滴下し30min室温で放置した。その後、1M NaCl含有50mM PBS(pH7.4)で洗浄した後、50mM NaOHを滴下し30秒放置し、再び1M NaCl含有50mM PBS(pH7.4)にて3回洗浄する。これを2回繰り返した。こうして、PEG5000(2)+PEG2000(3)の修飾基板を作製した。
末端官能基を変換した混合PEGブラシ表面におけるタンパク質の非特異的吸着量の評価試験
以下の表面上に、25℃、15mg/mLのウシ胎仔血清(FBS)溶液(溶媒;0.15M−NaCl含有50mM PBS(pH7.4))を15μL/分の流速で4分間、3回流し、その後バッファー(0.15M−NaCl含有50mM PBS(pH7.4))を5分間流した際のタンパク質の吸着量を調べた。結果を図5に示す。
▲1▼〜▲4▼表面:上記の変換方法参照
▲5▼表面:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)25mgを1mlの蒸留水に溶解し、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)15mgを9mlのジオキサンに溶解し、混合する。この混合溶液に基板を浸し、穏やかに室温で30分振盪し活性化させた。その後基板をSPR装置にセットし、1Mエタノールアミン(pH8.6)を25℃、流速5μl/分で12分間、2回インジェクションしてブロッキングした。
▲6▼表面:シャーレに金基板を入れ、1mM4,4′−ジチオ二酪酸溶液(溶媒;エタノール)に浸し、30分間穏やかに振盪する。反応終了後、エタノールで2回洗浄した。
▲7▼表面:▲5▼、▲6▼表面参照
低分子量物質(ビオチン:Mw=244)の検出試験
FBSの吸着量の評価に用いた表面、▲4▼(COOH−PEG−表面)、▲6▼(SAM(4,4′−ジチオ二酪酸)表面(COOH末端表面))を用いて、ストレプトアビジンを表面に固定化し、D−ビオチンの検出を行った。
(方法・結果)
EDC25mgを1mlの蒸留水に溶解し、NHS15mgを9mlのジオキサンに溶解し、混合した。この混合溶液に各基板(上記の▲4▼(COOH−PEG−表面)、▲6▼(SAM(4,4′−ジチオ二酪酸)表面(COOH末端表面)))を浸し、穏やかに室温で30分振盪し活性化させた。その後、基板をSPR装置にセットし、25℃、5μl/分の条件下で0.1mg/mlストレプトアビジン溶液(溶媒:150mM NaCl含有50mM PBS(pH7.4))を12分間、2回インジェクトした。その後、1Mエタノールアミン(pH8.6)を1回インジェクション(12分間)して末反応の活性化エステルをブロッキングした。
これらのストレプトアビジン固定化表面に1mg/ml D−ビオチン溶液(溶媒:150mM NaCl含有50mM PBS(pH7.4))を2回インジェクション(12分間×2回)し、その後、バッファーを5分間流した後、表面へのビオチンの結合量を測定した。結果を図6に示す。
図6から、両表面とも低分子量であるビオチンの検出が可能であることが認められる。しかし、表面への非特異的吸着抑制能はPEGブラシ表面の方が高い。
混合タンパク溶液中での分子認識能についてBSA共存下におけるストレプトアビジンの検出による評価試験
(方法・結果)
アセタール−PEG−SH(Mw=5000および2000)で構築した複合表面におけるストレプトアビジンの認識能を検討した。今回は、PEG5000と2000を同時に金表面に導入したPEG5000および2000(2)(2:2)表面を用いた。
PEGを表面に固定化した後、0.01N HCl溶液を表面に流し、アセタール基をアルデヒド基に変換した。その後、ビオチンヒドラジド溶液(溶媒;50mM PBS(pH7.4))を表面に流すことでビオチンを結合させた。
ビオチン−PEG表面に、それぞれ、(i)1g/L−BSA+0.1mg/L−ストレプトアビジン溶液、(ii)0.1mg/L−ストレプトアビジン溶液、(iii)1g/L−BSA溶液を流し、表面への結合量を測定した。その結果、BSAとストレプトアビジンの濃度差が10000倍あるにもかかわらず、ビオチンPEG固定化表面は、ストレプトアビジンのみを認識し、高い分子認識能を有していることが示せた(図7(a)参照)。また、aのグラフのBSAとストレプトアビジン混合溶液を流した際のグラフの数値(i)からBSAのみを流した際の値(iii)を引いた数値、つまり(i)−(iii)の値をグラフにしたところ、ストレプトアビジン溶液を流した際のグラフとほぼ一致した(図7(b)参照)。この結果からも、PEGブラシ表面は高い分子認識能を有しているといえる。
産業上の利用可能性
本発明によれば、生物由来のタンパク質の非特異的吸着が顕著に抑制されたセンサーチップ表面が提供される。したがって、本発明はバイオアッセイ機器製造業、臨床診断業等で利用可能である。
【図面の簡単な説明】
図1は、従来技術に従う表面を包含する各表面に対するBSAの吸着試験の結果を示すグラフである。
図2は、各表面に対する分子量の異なるペプチドおよびタンパク質の吸着挙動を示すグラフである。
図3は、各表面に対する種々のタンパク質の等電点を有するタンパク質の吸着挙動を示すグラフである。
図4は、各表面上でのリガンドと被検体の相互作用の差違を示すグラフである。
図5は、各種官能基の表面に対するタンパク質の吸着挙動を示すグラフである。
図6は、PEG表面およびSAM(低分子量EO担持)表面に対するビオチンの吸着挙動を示すグラフである。
図7は、ストレプトアビジンの検出に際して、夾雑タンパク質としてのBSAの存在の影響を示すグラフである。
Claims (13)
- 該ポリマー鎖数の換算値が0.25本/nm2以上である請求項1記載の表面。
- 表面の支持体が金、銀、銅およびアルミニウムからなる群から選ばれる材料で作製されており、そして該ポリマー鎖数の換算値が0.25本/nm2以上である請求項1記載の表面。
- 表面の支持体がガラス、半導体、セラミック、金属酸化物および合金酸化物よりなる群から選ばれる材料で作製されており、そして一般式(I)におけるAが(CH3O)3Si−基であり、L1が−O−、−NHCOO−(この基は、酸素原子を介してエチレンオキシド単位に結合する)または−N(Rd)−(ここで、RdはC1〜C6アルキルである)であり、L2が原子価結合、−(CH2)γ−または−CO(CH2)γ−(ここで、γは2〜6の整数である)であり、そしてXが水素原子、
または−COOHであり、Rbは独立して水素原子またはC1〜C6アルキルオキシを表し、Rcは独立してC1〜C6アルキルオキシまたは2つのRcが一緒になってオキシもしくはC1〜C6アルキルで置換されていてもよいエチレン基を形成する、請求項1に記載の表面。 - 一般式(I)におけるnが平均値として10〜60のいずれかの整数であるポリマーとnが平均値として50〜1000のいずれかの整数であるポリマーとの2種以上のポリマーが組み合わさった請求項1に記載の表面。
- 表面を熱重量分析にかけて得られるデータから換算した場合の表面1nm2当たりのポリマー鎖数が0.1本以上であり、
一般式(I)におけるAがHS基であり、L1が
(この基は、酸素原子を介してエチレンオキシド単位に結合する)、−O−または−S−であり、L2が原子価結合または
(ここで、qは2〜6の整数である)であり、そしてXが水素原子、
または−COOHであり(ここで、Rbは独立して水素原子またはC1〜C6アルキルを表し、Rcは独立してC1〜C6アルキルオキシまたは2つのRcが一緒になってオキシもしくはC1〜C6アルキルで置換されていてもよいエチレン基を形成する)、かつ
nが平均値として10〜60のいずれかの整数であるポリマーとnが平均値として50〜10000のいずれかの整数であるポリマーとの2種以上のポリマーが組み合わさるように選ばれ、そして
支持体表面が金、銀、銅およびアルミニウムからなる群から選ばれる材料で作製されている請求項1記載の表面。 - (A) 一般式(Ia)
(式中、L1、L2、X、pおよびnは請求項1における一般式(I)について定義したのと同義である)
で表されるポリマーの水性溶液を金、銀、銅およびアルミニウムよりなる群から選ばれる金属表面と該ポリマーの所定量が該金属表面に結合するのに十分な条件下で接触させた後、未結合ポリマーを洗浄除去する工程、
(B) 次いで、前記工程で結合させたポリマーと同一のポリマーまたは異なるポリマーであって、nの整数(すなわち、エチレンオキシド単位の数)の平均値が小さいポリマーの水性溶液を、(A)工程でもたらされた金属表面と、該表面に結合するのに十分な条件下で接触させた後、未結合ポリマーを洗浄除去する工程、ならびに
(C) こうして得られる表面に(B)工程と同様な複数の工程を行うこと、を含んでなる請求項1に記載の表面のうち、一般式(I)のAがHS−である表面の作製方法。 - (B)工程以降が(A)工程と異なるポリマーを用いて行われ、(A)工程では、一般式(I)におけるnが平均値として50〜10,000のいずれかであるポリマーが使用され、(B)工程以降では(A)工程で用いたポリマーよりエチレンオキシド単位の数が10以上小さいポリマーが使用される請求項9記載の方法。
- (A) 一般式(Ib)
(式中、R1、R2、R3、L1、L2、X、pおよびnは請求項1における一般式(I)について定義したのと同様である)
で表されるポリマーの有機溶媒溶液をガラス、半導体、セラミックス、金属酸化物および合金酸化物よりなる群から選ばれる材料と該ポリマーの所定量が該材料表面に付着または結合するのに十分な条件下で接触させた後、溶媒を留去し、そして未結合ポリマーを洗浄除去する工程、
(B) 次いで、前記工程で結合させたポリマーと同一のポリマーまたは異なるポリマーであって、nの整数(すなわち、エチレンオキシド単位の数)の平均値が小さいポリマーの有機溶媒溶液を、(A)工程でもたらされた材料表面と該表面に付着または結合するのに十分な条件下で接触させた後、溶媒を留去し、そして未結合ポリマーを洗浄除去する工程、ならびに
(C) こうして得られる表面に(B)工程と同様な複数の工程を行うこと、を含んでなる請求項1に記載の表面のうち、一般式(I)のAがトリアルコキシシリル基である表面の作製方法。
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