JPWO2003046543A1 - 大気圧イオン化質量分析装置 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、大気圧下で試料溶液を導入イオン化し、そのイオンを高真空の質量分析計に導き質量分析する大気圧イオン化質量分析装置に関する。
背景技術
最近、環境中や食品,生体中に存在する多くの有機化合物の中から極微量の有益または有害な物質を高感度に分析するために、液体クロマトグラフ直結大気圧イオン化質量分析装置(LC/MS)が普及してきた。これは、分離手段である液体クロマトグラフ(LC)と高感度定性定量手段である大気圧イオン化質量分析装置(API−MS)が結合した装置である。LC/MSは、薬学,医学,化学,環境化学など広範な領域で使用されている。
第7図に一般的なLC/MSの模式図を示す。試料溶液は、LC1で成分ごとに分離される。分離された成分は、移動相溶媒と共にキャピラリチューブ2を経て大気圧イオン源4に導入される。大気圧イオン源の噴霧プローブ3に達した試料溶液は、高圧電源5からプローブ3に印加された高電圧により、大気中に電荷を持った微細な液滴として噴出される。この微細な液滴は大気圧イオン源内7を飛行して、大気分子と衝突し更に微細化される。最終的にイオンが大気中に放出される。これがエレクトロスプレイイオン化(ESI)である。生成したイオン6は、質量分析計の真空壁に設けられた細孔または細管8を経由して真空室12中に導入され、真空室15,19を経て質量分析計17により質量分析されマススペクトルを与える。
大気圧イオン化質量分析装置の場合、大気圧イオン源と真空装置である質量分析計の間に配置された細孔または細管は、極めて重要な役割を持っている。大気圧イオン化質量分析装置の場合、イオン化は大気圧(105Pa)で行なわれる。一方、質量分析計が動作するためには、高真空(10−3Pa以下)を必要としている。即ち、8桁の圧力差を克服してイオンを質量分析計に取り込む必要がある。このため、通常はイオンと共に導入される大量のガスを排気するために複数の大型の真空ポンプ20,21,22が用いられている。しかし、経済上、構造上から、真空ポンプの大型化,複数化には当然限界がある。そのため、大気圧イオン源から質量分析計に流入するガスの量を制限する絞りの役目をするものが用いられるようになった。大気圧イオン源と質量分析計の真空室を隔てる隔壁に設けられた細孔や細管が絞りである。USP4121099,USP4137750,USP4144451やUSP4935624には、細孔を用いた大気圧イオン化質量分析装置が開示されている。また、USP4542293やUSP5245186には細管を用いた大気圧イオン化質量分析装置が開示されている。
発明の開示
細孔,細管と複数の圧力差のある真空室を複数の真空ポンプで排気する差動排気系を用いることにより大気圧イオン源と質量分析計の結合は達成され、多くの大気圧イオン化質量分析装置が広範な分野で使用されるようになった。また、応用分野に対応した各種のクロマトグラフが大気圧イオン化質量分析装置に結合するようになった。しかし、多くのクロマトグラフとの結合は新たな問題をもたらした。それは、クロマトグラフィーにより、使用最適流量が大きく異なることである。
第1表から、MSに接続されるクロマトグラフィーの最適流量には実に5桁の差があることがわかる。これだけ大きな流量差があるにも関わらず市販のLC/MSの真空排気系の排気速度や細孔,細管の寸法は一定で、クロマトグラフィーに合わせて変更できるようにはなっていない。当然ながら、質量分析計の排気系は、最も負荷の大きい汎用のLCが接続された場合を想定して設計されている。即ち、市販のLC/MSは、大量のガスを通過できるだけのコンダクタンスを持つ細孔または細管と導入されたガスをたちどころに排気してしまう大容量差動排気系を採用するようになった。
しかしながら、汎用LCやセミミクロLCの場合は、この方式により最高の性能が得られるLC/MSも、流量が極端に小さくなるミクロLCやキャピラリ電気泳動(CE)の場合には、期待通りの性能が得られない場合が多い。これは、細管を通過し排気可能なガス量に較べてミクロLCやCEの流量が極端に小さいためである。
即ち、ミクロLCやCEの場合、イオン源で気化生成したガスの容量と真空排気系の排気速度には2桁から5桁の差がある。真空ポンプの能力の方が2桁から5桁も大きく勝っている。そのため、この差分を補うようにイオン源中に導入される窒素ガスが細管に流入する。これにより噴霧により生成したイオンは細管内で100倍から100,000倍希釈されることになる。希釈されたイオンの多くは、差動排気系を通過する過程で中性ガス分子と共に拡散し排気されてしまう。これが、極低流量領域において期待通りの感度が得られない原因である。
CEとMSの結合において、CE溶出液の周囲に別の溶媒をシース流として供給し、試料溶液と共に噴霧イオン化する方法がUSP4885076に開示されている。この例では、シース流の役割が噴霧イオン化を安定化させるとしている。しかし、結果的には、試料の希釈と言う観点から見れば、この方法も感度低下を招いている可能性が高い。
本発明は、低流量領域での感度低下を防ぐと共に、流量の大幅な変化に関わらず常に高感度測定と安定な測定を可能にする大気圧イオン化質量分析装置を提供しようとするものである。
本発明はかかる問題を解決するために、試料溶液を大気圧下でイオン化する大気圧イオン源と、排気された空間でイオンの質量分析を行う質量分析部と、前記大気圧イオン源と前記質量分析部を隔てる隔壁に中空の細管とを有し、前記大気圧イオン源で生成されたイオンを前記細管を介して前記質量分析部に導き、質量分析する大気圧イオン化質量分析装置において、前記細管は、径の異なる第1の細管及び第2の細管とで構成され、第2の細管は第1の細管内に挿入され、前記大気圧イオン源で生成したイオンとガスを第2の細管を通して前記質量分析部に導入すると共に、前記第2の細管と前記第1の細管の間隙にガスを流すようにする。
また好ましくは、前記第1の細管と第2の細管の間隙に連通するガス供給配管と、当該ガス供給配管に接続されるガス供給源と、前記ガス供給配管にガスの流量調節を行う調節手段を備える。
発明を実施するための最良の形態
第2図に本発明の概略構成図を示す。
試料溶液は、LC1の試料注入口から注入され、ポンプで送出される移動相の溶液と共に、分離カラムに導入される。分離カラムにより試料は成分毎に分離される。移動相として、水,メタノール,アセトニトリルなどの有機溶媒や、それらの混合溶液が用いられる。分離された試料成分は、移動相の溶液とともに分離カラムを出て、LC/MSの大気圧イオン源4にキャピラリチューブ2を通して導入される。噴霧プローブ3の先端部には3kVから5kVの高電圧が高圧電源5から供給され印加される。ここで試料溶液は、噴霧プローブ3と同軸方向に噴出する高速の窒素ガスと高電界により、大気圧イオン源4の大気中7に帯電した微細な液滴6として噴出される。この微細な帯電液滴は、大気中のガス分子と衝突し更に微細化する。最終的にイオンが大気中7に放出される。イオンは、質量分析計の真空隔壁11を貫通する第2の細管10を経て真空室12中に導入される。真空室12は、油回転ポンプ(RP)からなる真空ポンプ20によって排気され、通常、100Pa程度の圧力に保たれる。真空室12に放出されたイオンは直進し、真空隔壁14に設けられたスキマー13の細孔を通過する。スキマー13の細孔を通過したイオンは、真空ポンプ21によって真空室12よりも高真空に排気された真空室15に導入され、ここでイオンガイド16により収束される。収束されたイオンは、質量分析計17が置かれた高真空室19に達する。高真空室19は、真空ポンプ22によって、通常、10−3Pa以下に排気される。ここで、イオンは質量分析計17により質量分析され、検出器18により検出されマススペクトルを与える。
大気圧イオン化質量分析装置の場合、最も重要なことは質量分析計の動作に必要な高真空(10−3Pa以下)を保ちながら、大気圧下で生成したイオンを出来るだけ多く質量分析計に取り込むことである。しかし、イオンのみを取り込む事は出来ないため、ガスも同時に大量に取り込むことになる。大気圧イオン化質量分析装置の多くは、複数の真空ポンプを圧力差を持たせて動作させる差動排気系を採用している。
この差動排気系において、大気圧から油回転ポンプ(RP)によって排気される初段の排気系の構造がもっとも重要になる。大気圧イオン源で生成したイオンを含んだガスを余すところなく質量分析計に送り込めれば、このステップでのイオン移送効率は100%といえる。
さらに、イオン移送の間に希釈,拡散によってイオンが失われることを防ぐことも重要である。高真空領域(10−3Pa以下)ならイオンは電界により容易に収束され、拡散を未然に防ぐことが出来る。一方、RPの排気する初段の圧力(100Pa)領域は粘性流領域と呼ばれ、この圧力下ではイオンを電界により収束する事が難しく、イオンは中性のガス分子と共に拡散し、RPにて排気される恐れがある。
LC/MSの場合、試料は移動相と共に液体の状態で大気圧イオン源4に供給される。試料溶液は、噴霧及び気化により気体となる。常温の水,メタノールが200℃の気体となると、それぞれ、2000倍,1000倍の体積の膨張が起きる。汎用LCの場合、最も多用される移動相の流量は1ml/minである。移動相にメタノールを用いた場合、噴霧,気化により1(l/min)の気体が毎分大気圧イオン源に供給される。この気体を大気中から細管を経由して質量分析計に取り込む。
RPにより得られる圧力は約100Paで、この圧力領域は粘性流領域と呼ばれている。この圧力領域の細管のコンダクタンスC(m3/s)は(1)式で求められる。
C=1349*(d4/L)*{(P1+P2)/2} (1)
ここで、dは細管の直径(m)、Lは細管の長さ(m)、P1とP2は細管の前後の圧力(Pa)である。
第3図に示すように、圧力P1の状態で生成されたイオンを含む試料ガスQ0のうち、細管を通過できるガスの流量Q1(m3・Pa/s)は(2)式で求まる。
Q1=C(P1−P2) (2)
これはP1≫P2の場合、近似的に(3)式のようになる。
Q1=C*P1 (3)
ここで、大気圧イオン源で生成される試料ガス量Q0と細管内を流れるガスの流量Q1の関係には、以下の3つの場合が考えられる。
A)大気圧イオン源で生成される試料ガス量Q0がQ1を上回る場合
(Q0>Q1)(第3図(1)の状態)
生成されたガスとイオンの一部のみが質量分析計に取り込まれ、他の部分(Q0−Q1)は大気圧イオン源から大気中に廃棄される。
B)大気圧イオン源で生成される試料ガス量Q0とQ1が一致した場合
(Q0=Q1)(第3図(2)の状態)
試料ガスの大部分が細管を通過できる。更に、大気圧イオン源内の窒素ガスによる希釈も極少なく出来る。
C)大気圧イオン源で生成される試料ガス量Q0がQ1を下回る場合
(Q0<Q1)(第3図(3)の状態)
生成されたガスとイオンは細管から質量分析計に取り込まれ、Q1−Q0に相当するガスが細管の入り口周辺から細管に吸引され、細管内で試料ガスを希釈することになる。
ここで、細管の直径dが0.4mm、長さLが0.12m、大気圧イオン源の圧力P1が105Pa、RPで排気された室の圧力P2が100Paとした場合、細管のコンダクタンスCは(1)式に従い以下のように求まる。
C=1349*{(4*10−4)4/(12*10−2)}*{(105+102)/2}
=1.44*10−5(m3/s)
=0.864(l/min)≒1(l/min) (4)
すなわち、直径0.4mm,長さ12cmの細管を用い、細管の前後の圧力差が1気圧(105Pa)とした場合、(2)(4)式から、一分間の流量Q1=約1(リットル・気圧/min)のガスがこの細管を通過できることが分かる。
第2表に、LC/MSに使われるクロマトグラフィーと、それらの典型的な流量と、それに対応したコンダクタンスCを持つ細管(Q0=Q1となる細管)の例を示す。
汎用LCの場合、イオン源に導入される溶液の流量は1(ml/min)であり、気体に換算してQ0=1(l/min)程度である。内径0.4mm*長さ120mmの細管を用いれば、Q0=Q1となり、ほぼ100%の試料ガスQ0が、細管を通過して質量分析計に取り込まれることになる。
ミクロLCの場合、イオン源に導入される溶液の流量は10(μl/min)、気体に換算してQ0=10(ml 気圧/min)程度である。大気圧イオン源には試料溶液の他に、噴霧のための補助ガス,噴霧された液滴を微細化するためのバスガスなどが導入される。補助ガスやバスガスは、乾燥窒素ガスが用いられている。ミクロLCから導入された気体の流量は10(ml 気圧/min)であるから、(4)式で示した内径0.4mm*長さ120mmの細管コンダクタンスの値、約1(l/min)を大きく下回る。即ちQ0<Q1であり、第3図の(3)に示すように、この差(Q1−Q0)を埋めるべく細管には噴霧ガス,バスガスが流入してくる。その結果、試料ガスは細管の中でQ0/Q1=約1/100に希釈される。
ナノスプレイの場合は、試料ガスQ0と細管の流量Q1の関係がさらに拡大して、Q0≪Q1となり、希釈はQ0/Q1=1/100,000にも達する。希釈されたガスは差動排気系の初段の室にて拡散し、質量分析計へ到達できるイオンの数は大幅に減少する。
細管での希釈を防ぐには、大気圧イオン源に導入される試料溶液に見合ったコンダクタンスCを持つ細管を選び、装着することが考えられる。したがって、Q0=Q1になるようにすればよく、即ち、第2表の各種クロマトグラフィーに対応した細管を装着すればよいことになる。
しかしながら、この場合、大きな問題がある。通常、真空排気系は最も負荷の大きい汎用LC向きに設計されている。差動排気系の初段のRPは圧力100Paにおいて約毎分1リットル・気圧の気体を排気できる能力がある。第3図(2)で示した組み合わせは、汎用LCとそれに見合ったコンダクタンスを持った細管(0.4mm*120mm)の例である。細管を通ったガスは差動排気系初段の室(真空室12)に入り、急激な圧力低下により急速に拡散する。直進した成分のみがスキマー13の頂点に設けられた細孔から真空室15に取り込まれる。広く拡散した他の成分はRPで排気される。
第4図に示すように、ミクロLCに対応して細管の内径を0.1mmにすると、この細管のコンダクタンスCは、0.4mmの細管のコンダクタンス約1(l/min)に対して、(0.1/0.4)4倍、即ち、1000*(1/4)4=3.9(ml/min)となる。即ち、差動排気系初段の室(真空室12)に導入されるガスの容量が約4ml/minに制限されたことになる。これにより、試料ガス量Q0と細管の流量Q1はバランスする(Q0=Q1)。しかし、大排気量のRPをそのまま用いると、真空ポンプの排気能力はそのままで、真空室に導入されるガス量が1/100以下になるため、差動排気系初段の室の圧力P2は100Paから減少し、数Paの低圧と成る。細管を通ったガスQ1は差動排気系初段の室に入り、急激な圧力低下により急速に拡散するが、真空室12の圧力P2が汎用LCの場合より約2桁近い高真空のため、汎用LCの場合よりも拡散は更に増進する。したがって、ミクロLCの場合、スキマー13の頂点に設けられた細孔から真空室15に取り込まれる成分は、汎用LCの場合よりもずっと少なくなり、拡散による損失が大きくなる。CEやナノスプレイの場合は、真空室内での拡散による損失は更に大きくなる。
以上のように、単に細管の径を変更してコンダクタンスCを調整するのみでは、ミクロLCやCE,ナノスプレイなどの場合、細管内でのガスの希釈、真空室での拡散などによるイオンの損失が大きく、これが感度低下の主因となってしまう。また、細管の交換には、装置の停止を必要とし、交換,再起動など極めて能率の悪い作業となる。
この問題を解決するには、真空室12に導入されるガス量が変わっても、差動排気系の初段の室(真空室12)の圧力を一定に保てば、真空室12におけるイオンの損失をほぼ同じにすることが出来る。それには真空ポンプ20の排気速度を、導入されるガス量に対応して制御することが考えられる。100Pa程度の圧力を排気する真空ポンプとしては油回転ポンプ(RP)がある。RPの排気速度を外部より制御する事は困難であるが、RPと真空室間にゲートバルブ等を備え、排気コンダクタンスを変更することは出来る。しかし、この手法では、最適圧力条件を求めることは困難である。更に、高価なゲートバルブを必要とするため、経済的にも有利な方法とはいえない。
そこで本発明では、細管を流れるガスの流量を、大気圧イオン源で発生するガス量に無関係にほぼ一定とし、さらに、差動排気系の初段の室(真空室12)におけるRPの排気速度も変更しない手法を示す。
第1図に本発明の主要部分である、大気圧イオン源4と真空室12の拡大図を示す。
本発明においては、大気圧イオン源4と真空室12を結ぶ細管は、大きな内径(0.4mm)の第1の細管8と、第1の細管8の内径よりも小さな外径(0.3mm)の第2の細管10で構成される。第1の細管8内に第2の細管10を挿入する二重管構造である。第2の細管10は、金属性でもフューズドシリカキャピラリでも良い。フューズドシリカキャピラリは入手しやすく、安価で使いやすい。
大気圧側には、第1の細管8と第2の細管10を固定するシールナット30と、第1の細管8と第2の細管10の間の空間に、乾燥窒素ガス9を流すガス導入配管31が配置される。この窒素ガスの流量をニードルバルブ24などにより外部から制御できるようにしておけば、真空室12の圧力を最適なものに保つことが出来る。また、導入する窒素ガスを加熱するヒータ23をガス導入配管31上に配置すれば、第2の細管10を効率よく加熱することも出来る。
また、第1及び第2の細管8,10を加熱するために、ヒータ32を内蔵した金属ブロック33が、第1の細管8を被覆している。
第2の細管10は、第1の細管8よりも長く、シールナット30により金属ブロック33に固定される。第2の細管10の大気圧側の先端部40は、大気圧イオン源4の大気中7に突き出ている。そのため、第2の細管10は、噴霧プローブ3から噴霧されたガスとイオン6を吸引出来るようになっている。第1の細管8は、シールナット30により、大気中7とは連通せず、ガス導入配管31とのみ連通する。
第1及び第2の細管8,10は、大気圧イオン源4と差動排気系の初段の室となる真空室12の間を隔てる隔壁11を貫くように配置されている。噴霧成分のガスとイオンは、第2の細管10中を流れ、窒素ガスや他のガスによる希釈は極力受けないようになっている。窒素ガス9は、第1の細管8と第2の細管10の間隙を流れ、真空ポンプ20により排気された真空室12に放出される。ここで窒素ガスは圧力の急激な減少により、急速に拡散する。分子の拡散速度が音速に達すると、そこに衝撃波が形成される。そのため、細管の末端41から樽状の衝撃波35と前方にはマッハデスク36が形成される。真空室12と隣接した真空室15を隔てる隔壁14上に設けられたスキマー13の先端部は、マッハデスクの中に挿入されるように配置される。スキマー13の先端部に設けられた細孔39からイオンをサンプリングする。
第2の細管10の末端部41は、第1の細管8の末端34よりスキマー13側に突き出ている。そのため、第2の細管10の末端は、形成された樽状衝撃波内37に位置するようになる。樽状衝撃波内37のガス分子は断熱的に膨張と拡散をするため、整然と下流38に向け並進運動を行う。そのため、この領域(樽状衝撃波内37)は、特に“Silence Zone”と呼ばれている。一方、衝撃波35やマッハデスク36においては、ガス分子は断熱圧縮され、衝撃波35を超えた領域は、ランダムな熱運動の領域となる。第6図に示すように、第2の細管10の出口が樽状衝撃波内37中に位置しているため、第2の細管10を通り樽状衝撃波内37中に放出されたイオン流の拡散は最小にとどめることが出来る。並進運動をしている周囲の窒素ガスは、イオン流のシースガスとして働き、拡散希釈を極力小さく出来る。そのため、イオン流は樽状衝撃波内37中を下流に向け直線状に移動し、スキマー13の先端部の細孔39から次の真空室15を経て質量分析計が置かれた高真空室19に送り込まれ質量分析計17により質量分析される。一方、第1の細管8から放出された窒素ガスの大半はスキマー13により排除され、真空ポンプ20により排気される。
本発明のように、イオンを含む試料ガス用の細管と、窒素ガス用の細管を独立させることにより、微小流量の試料ガスの場合は、従来の一つの細管の場合と異なり、細管内で微小流のガスを希釈せずに真空室12に送り込むことができる。第5図に、単一の細管を有する従来の構造でのガスの流れ(第5図(1))と、本発明の構造でのガスの流れ(第5図(2))を示す。第5図(1)の場合、試料ガス流量と細管内の流量の関係は、Q0′≪Q1である。第5図(2)の場合、試料ガス流量と細管内の流量の関係は、Q0′=Q1′≪Q2である。したがって、第5図(2)に示す本発明の構造の場合、真空室12に導入されるガスの大半は、第1の細管8と第2の細管10の間を流れる窒素ガスである。そのため、この窒素ガスの流量を制御しておけば、真空室12の圧力を最適なものに保つことが出来る。窒素ガスの流量の制御は、ニードルバルブ24を調整することで簡単に行える。結果として、細管内での希釈や真空室12での拡散排気によるイオンの損失を防ぐことが出来る。
また、本発明の構造によれば、MSの真空ポンプの動作を停止することなく、第2の細管10を容易に交換することが出来る。第2の細管10を交換する場合、装置の真空排気は継続したまま、シールナット30を緩め、第2の細管10を引き抜けば良い。その際に空気が第1の細管8から吸引されるが、質量分析計の真空には影響を与えない。新しい第2の細管10をシールナット30に装着して、再び第1の細管8に挿入し、2つの細管間に窒素ガスを流せば、第2の細管10の交換は完了する。真空の安定と細管温度の安定化のため30分ほど待てばLC/MS測定が再開できる。
実際の測定でよく遭遇するトラブルは、第2の細管10が試料の析出やゴミなどにより詰まることである。この場合も本発明によれば、装置全体を停止させたり、真空ポンプを停止させる必要はなく、簡単に第2の細管10を取り替えることが出来る。
また、この第2の細管10の交換容易性を利用して、接続されるLCの流量に応じて第2の細管10を最適なものに変更することで、イオンの透過効率を向上させることが出来る。
例えば、第2表に示したように、セミミクロLCが接続される場合、内径0.2mm以下の第2の細管10を選択し装着する。ミクロLCが接続される場合、内径0.1mm以下の第2の細管10を選択し装着する。CE(ナノスプレイ)が接続される場合、内径0.02mm以下の第2の細管10を選択し装着する。そして、微調整として、ニードルバルブ24で窒素ガスの量を調整することで、常に最適な状態にすることが出来る。尚、汎用LCを接続する場合は、第2の細管10を除去し、第1の細管8のみの状態にして測定を行えばよい。
以上、大気圧イオン源としてESIイオン源について記述してきたが、本発明は他の大気圧イオン源、例えば大気圧化学イオン化イオン源(APCIイオン源)にも適用できる。この場合、流量が大きく異なるクロマトグラフィーとAPCIの組み合わせになる。APCIは、気化,イオン化の後、ESIと同じ動作をするため、本発明を適応できる。
また、本発明においては質量分析計を特に限定しない。現在広く使用される四重極MS(QMS),イオントラップ,磁場型MS,TOFMSなどに適応できる。
本発明によれば、流量の大きく異なるクロマトグトグラフィー対応し、常に高感度分析が達成できる大気圧イオン化質量分析装置を提供することができる。更に、メインテナンスの大幅な簡素化も達成することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の概略構成図である。
第2図は、大気圧イオン源4と真空室12の拡大図である。
第3図は、試料流量の差異による動作の違いを説明するための図である。
第4図は、細管を細くした場合の動作を説明するための図である。
第5図は、細管が単独の場合と複数の場合の差異を説明するための図である。
第6図は、本発明の動作を説明するための図である。
第7図は、従来技術によるLC/MSの概略構成図である。
Claims (15)
- 試料溶液を大気圧下でイオン化する大気圧イオン源と、排気された空間でイオンの質量分析を行う質量分析部と、前記大気圧イオン源と前記質量分析部を隔てる隔壁に中空の細管とを有し、前記大気圧イオン源で生成されたイオンを前記細管を介して前記質量分析部に導き、質量分析する大気圧イオン化質量分析装置において、
前記細管は、径の異なる第1の細管及び第2の細管とで構成され、第2の細管は第1の細管内に挿入され、前記大気圧イオン源で生成したイオンとガスを第2の細管を通して前記質量分析部に導入すると共に、前記第2の細管と前記第1の細管の間隙にガスを流すことを特徴とする大気圧イオン化質量分析装置。 - 請求項1において、
前記第1の細管と第2の細管の間隙に連通するガス供給配管と、当該ガス供給配管に接続されるガス供給源と、前記ガス供給配管にガスの流量調節を行う調節手段を備えたことを特徴とする大気圧イオン化質量分析装置。 - 請求項2において、
前記ガス供給配管にガスの加熱を行う加熱手段を備えたことを特徴とする大気圧イオン化質量分析装置。 - 請求項1において、
前記第2の細管の前記質量分析部側の端部は、前記第1の細管の質量分析部側の端部よりも質量分析部側に突き出ていることを特徴とする大気圧イオン化質量分析装置。 - 請求項1において、
前記第2の細管の大気圧イオン源側の端部は、前記第1の細管の大気圧側の端部よりも大気圧イオン源側に突き出ていることを特徴とする大気圧イオン化質量分析装置。 - 請求項5において、
前記第1の細管は、前記大気圧イオン源側の空間と連通していないことを特徴とする大気圧イオン化質量分析装置。 - 請求項1において、
前記第2の細管は、フューズドシリカキャピラリであることを特徴とする大気圧イオン化質量分析装置。 - 請求項1において、
前記第2の細管は、前記第1の細管が前記隔壁に設置された状態で、取り外し交換可能であることを特徴とする大気圧イオン化質量分析装置。 - 請求項1において、
前記第1の細管と第2の細管の外周を被覆し、且つ加熱を行う加熱手段を備えたことを特徴とする大気圧イオン化質量分析装置。 - 請求項2において、
前記試料溶液の流量が0.3ml/min以上の場合、前記第2の細管を除去した状態で測定を行うことを特徴とする大気圧イオン化質量分析装置。 - 請求項2において、
前記試料溶液の流量が0.3ml/min以下の場合、前記第2の細管の内径を0.2mm以下として測定を行うことを特徴とする大気圧イオン化質量分析装置。 - 請求項2において、
前記試料溶液の流量が0.01ml/min以下の場合、前記第2の細管の内径を0.1mm以下として測定を行うことを特徴とする大気圧イオン化質量分析装置。 - 請求項2において、
前記試料溶液の流量が0.001ml/min以下の場合、前記第2の細管の内径を0.02mm以下として測定を行うことを特徴とする大気圧イオン化質量分析装置。 - 請求項1において、
前記大気圧イオン源は、ESIイオン源であることを特徴とする大気圧イオン化質量分析装置。 - 請求項1において、
前記大気圧イオン源は、APCIイオン源であることを特徴とする大気圧イオン化質量分析装置。
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