JPWO2003037945A1 - アクリロニトリル含有ブロック共重合体及び熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

アクリロニトリル含有ブロック共重合体及び熱可塑性樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

アクリロニトリル/スチレン系のブロックを有するブロック共重合体が提供される。この共重合体は、重合体ブロック(A)および(B)を含有し、該重合体ブロック(A)は、単量体(a0)を重合させることにより形成された重合体ブロックであり、該重合体ブロック(B)は、単量体(b0)を重合させることにより形成された重合体ブロックであり;該単量体(a0)は、アクリロニトリル10重量%以上50重量%未満、およびスチレン系単量体50重量%以上90重量%未満の組合せであり、該単量体(b0)は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、ブタジエン、およびイソプレンよりなる群から選択される少なくとも1種の単量体であり;該単量体(a0)および単量体(b0)の重合は、所定のチオカルボニルチオ基を有する化合物の存在下に、該単量体を可逆的付加脱離連鎖移動重合することにより行われる。このブロック共重合体は、耐油性および難燃性を有し、成形性に優れる。

Description

技術分野
本発明は、耐油性、難燃性、および成形加工性に優れたアクリロニトリル系ブロック共重合体、および該共重合体を含有する熱可塑性樹脂組成物に関する。
背景技術
アクリロニトリルを重合成分として含有する重合体は、耐油性および難燃性に優れるという利点がある。しかし、アクリロニトリルのみからなる重合体(ポリアクリロニトリル)は、耐寒性に劣る。つまり寒冷時における強度、および耐衝撃性などの物性が不充分である。さらに成形性が悪いという欠点もある。
そのため、アクリロニトリル以外の成分を含む共重合体、つまり、上記耐油性および難燃性というアクリロニトリル由来の性質とその他の成分由来の性質とを併せ持ち、耐寒性および成形性に優れる共重合体が求められている。特にブロック共重合体は、該共重合体を構成する成分の各々の単独重合体としての性質を局部的に有するため、上記共重合体として好適である。
ブロック共重合体は、種々の方法で調製されるが金属錯体を触媒して使用する原子移動ラジカル重合法が好適である。しかし、単量体としてアクリロニトリルを含む場合は、アクリロニトリルが金属錯体触媒に配位して失活するためブロック共重合体の合成が困難であった。
発明の開示
本発明の目的は、耐油性および難燃性に優れ、さらに耐寒性および成形性に優れるアクリロニトリル系ブロック共重合体を提供することにある。本発明のさらに他の目的は、含有される他の成分の性質に応じて、さらに耐候性、耐衝撃性、充分な強度、透明性、樹脂との相容性など、所望の性質を得ることの可能なアクリロニトリル系ブロック共重合体を提供することにある。本発明のさらに他の目的は、上記アクリロニトリル系ブロック共重合体を含有する熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
本発明のブロック共重合体は、重合体ブロック(A)および(B)を含有し;該重合体ブロック(A)は、単量体(a)を重合させることにより形成された重合体ブロックであり、該重合体ブロック(B)は、単量体(b)を重合させることにより形成された重合体ブロックであり;該単量体(a)は、アクリロニトリル10重量%以上50重量%未満、およびスチレン系単量体50重量%以上90重量%未満の組合せであり、該単量体(b)は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、ブタジエン、およびイソプレンよりなる群から選択される少なくとも1種の単量体であり;該単量体(a)および単量体(b)の重合が、一般式(1)で示される化合物:
Figure 2003037945
(式中、Rは炭素数1以上のp価の有機基であり;Zは水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1以上の1価の有機基であり;pは1以上の整数であり;pが2以上の場合、Zは互いに同一でもよく、異なっていてもよい)、および一般式(2)で示される化合物:
Figure 2003037945
(式中、Rは炭素数1以上の1価の有機基であり;Zは酸素原子(q=2の場合)、硫黄原子(q=2の場合)、窒素原子(q=3の場合)、または炭素数1以上のq価の有機基であり;qは2以上の整数であり、Rは互いに同一でもよく、異なっていてもよい)よりなる群から選択される少なくとも1種のチオカルボニルチオ基を有する化合物の存在下に、該単量体を可逆的付加脱離連鎖移動重合することにより行われる。
好適な実施態様においては、上記チオカルボニルチオ基を有する化合物は、以下の一般式(3)で示される化合物である:
Figure 2003037945
(式中、Arは1価の芳香族基であり;Rは水素原子、または炭素数1以上の1価の有機基であり;ArおよびRはそれぞれ互いに同一でもよく、異なっていてもよい)。
好適な実施態様においては、本発明のブロック共重合体は、以下の工程を包含するプロセスにより製造される:上記チオカルボニルチオ基を有する化合物の存在下で、単量体(a)および(b)のうちの一方を、可逆的付加脱離連鎖移動重合させて、該単量体(a)に由来する重合体(a)または該単量体(b)に由来する重合体(b)を形成する工程;該重合体(a)または(b)の存在下に、他方の単量体(b)または(a)を可逆的付加脱離連鎖移動重合させて、単量体(a)に由来する重合体ブロック(A)および単量体(b)に由来する重合体ブロック(B)を含み、かつチオカルボニルチオ基を有するブロック共重合体を得る工程;該チオカルボニルチオ基を有するブロック共重合体中のチオカルボニルチオ基を、メルカプト基またはメルカプチド基に変換する工程;および該メルカプト基またはメルカププチド基を有するブロック共重合体同士を、該メルカプト基またはメルカプチド基の反応を利用してカップリングする工程。
好適な実施態様においては、上記ブロック共重合体は、ゲルパーミエーシヨンクロマトグラフィー分析により求めた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表される分子量分布が、1.8以下である。
好適な実施態様においては、上記単量体(a)および単量体(b)のうちの少なくとも一方が、架橋性シリル基含有単量体またはエポキシ基含有単量体を含有する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記ブロック共重合体および熱可塑性樹脂を含有する。
好適な実施態様においては、上記熱可塑性樹脂は、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル含有樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびポリカーボネート系樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種である。
好適な実施態様においては、上記熱可塑性樹脂組成物は、上記熱可塑性樹脂100重量部に対し、前記ブロック共重合体を1〜1000重量部の割合で含有する。
発明を実施するための最良の形態
[I]ブロック共重合体を構成する単量体
本発明のブロック共重合体は、重合体ブロック(A)および(B)を含有するブロック共重合体であり、該重合体ブロック(A)は、単量体(a)を重合させることにより形成された重合体ブロックであり、該重合体ブロック(B)は、単量体(b)を重合させることにより形成された重合体ブロックである。
上記ブロック共重合体に含有される重合体ブロック(A)を構成する単量体(a)は、アクリロニトリル10重量%以上50重量%未満、およびスチレン系単量体50重量%以上90重量%未満の組合せである。この単量体(a)のうち、スチレン系単量体とは、芳香環にアルケニル基が結合した構造を有する化合物であり、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−メトキシスチレン、1,4−ジビニルベンゼン、インデン、1−ビニルナフタレンなどを挙げることができる。ブロック共重合体として、架橋性シリル基あるいはエポキシ基を有するブロック共重合体を製造する場合には、後述のように、架橋性シリル基を有するスチレン誘導体あるいはエポキシ基を有するスチレン誘導体が好適に用いられ得る。これらのスチレン系単量体は、単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。これらスチレン系単量体のうち、価格、入手性の点でスチレン、α−メチルスチレンが好ましく、スチレンがより好ましい。
単量体(a)としてアクリロニトリルが所定の割合で含まれることにより、ブロック共重合体の難燃性が高く、スチレン系単量体が所定の割合で含まれることによりブロック共重合体の充分な強度と成形性とが得られる。
上記ブロック共重合体に含有される重合体ブロック(B)を構成する単量体(b)は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、ブタジエン、およびイソプレンよりなる群から選択される少なくとも1種の単量体である。
上記アクリル酸エステルの例としては、次の化合物が挙げられる:アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸3−メトキシブチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、2−アクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、2−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、アクリル酸トリフルオロメチル、アクリル酸ペンタフルオロエチル、アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、アクリル酸3−ジメチルアミノエチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸ラウリル、アルキル変性ジペンタエリスリトールのアクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート、アクリル酸カルビトール、ε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールのアクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アクリル酸テトラエチレングリコール、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸トリプロピレングリコール、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジアクリレート、アクリル酸1,9−ノナンジオール、アクリル酸1,4−ブタンジオール、2−プロペノイックアシッド〔2−〔1,1−ジメチル−2−〔(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ〕エチル〕−5−エチル−1,3−ジオキサン−5−イル〕メチルエステル、アクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ペンタエリスリトールトリアクリレート、2−アクリロイルオキシプロピルハイドロジェンフタレート、3−メトキシアクリル酸メチル、アクリル酸アリルなど。ブロック共重合体として、架橋性シリル基あるいはエポキシ基を有するブロック共重合体を製造する場合には、後述のように、架橋性シリル基を有するアクリル酸エステルあるいはエポキシ基を有するアクリル酸エステルが好適に用いられ得る。
上記メタクリル酸エステルの例としては、次の化合物が挙げられる:メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコール、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸トルイル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸3−メトキシブチル、メタクリル酸2−アミノエチル、メタクリル酸トリフルオロメチル、メタクリル酸ペンタフルオロエチル、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチルなど。ブロック共重合体として、架橋性シリル基あるいはエポキシ基を有するブロック共重合体を製造する場合には、上記アクリル酸エステルの場合と同様に、架橋性シリル基を有するメタクリル酸エステルあるいはエポキシ基を有するメタクリル酸エステルが好適に用いられ得る。
上記アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルは、各々単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。上記アクリル酸エステルのうち、得られる共重合体の耐熱性、耐油性、耐候性、入手性の点で、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、およびアクリル酸2−ヒドロキシエチルが好ましく、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−メトキシエチル、およびアクリル酸2−エチルヘキシルがより好ましく、アクリル酸n−ブチルがさらに好ましい。上記メタクリル酸エステルのうち、得られる共重合体の耐熱性、耐油性、耐候性、および入手性の点で、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、およびメタクリル酸2−メトキシエチルが好ましく、メタクリル酸メチルがより好ましい。
上記単量体(b)が、アクリル酸エステル、酢酸ビニル、ブタジエン、およびイソプレンのうちの少なくとも1種でなる場合には、共重合体ブロック(B)は、ソフトセグメントを形成する。アクリル酸エステルが含有されると、得られるブロック共重合体が耐候性に優れる。このように、単量体(b)は、目的とするブロック共重合体の性質に合わせて適宜選択される。
本発明のブロック共重合体は、その強度を向上させるために、必要に応じて架橋性シリル基あるいはエポキシ基を有する。このようなブロック共重合体は、上記単量体(a)および(b)の少なくとも一方が架橋性シリル基あるいはエポキシ基を有する単量体(後述)を含有するようにし、後述のように重合反応を行うことにより形成される。
上記架橋性シリル基としては、例えば一般式(4)で示される基を挙げることができる:
Figure 2003037945
(式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、または炭素数3〜60のトリオルガノシロキシ基を示し;Xはヒドロキシル基、または加水分解性基を示し;Rが複数ある場合、それらは同一でもよく異なっていてもよく;Xが複数ある場合、それらは同一でもよく異なっていてもよく;xは0、1、2、または3であり;yは0、1、または2であり;tは0〜19の整数であり;x+ty≧1である)。
上記構造において、置換基Xの数、すなわち(x+ty)は、架橋が穏やかに、かつスムーズに進行する点で、1〜10の範囲であることが好ましく、1〜5の範囲であることがより好ましく、1〜3の範囲であることがさらに好ましい。特に、入手性の点で、一般式(5)で示される基(上記一般式(4)で示される基のうち、t=0の基)が好ましい:
Figure 2003037945
(式中、RおよびXは式(4)におけるのと同様であり、xは1、2、または3である)。
上記一般式(4)または(5)の構造において、加水分解性基としては特に限定されないが、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基などを挙げることができる。これらのうち、加水分解反応が穏やかで取り扱いやすい点で、アルコキシ基、アミド基、およびアミノオキシ基が好ましく、アルコキシ基がより好ましい。アルコキシ基としては特に限定されないが、入手性および架橋性の点で、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピル基などの炭素数6以下のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、およびエトキシ基がより好ましく、メトキシ基がさらに好ましい。
上記架橋性シリル基を有するスチレン誘導体、架橋性シリル基を有するメタクリル酸エステル、および架橋性シリル基を有するアクリル酸エステル(以下、これらを架橋性シリル基を有するビニル系単量体と総称する場合がある)としては、特に限定されないが、例えば、次の単量体が挙げられる:
〔3−(メタクリロイルオキシ)プロピル〕トリメトキシシラン、〔3−(メタクリロイルオキシ)プロピル〕ジメトキシメチルシラン、〔3−(メタクリロイルオキシ)プロピル〕トリエトキシシランなどのメタクリル酸エステル;〔3−(アクリロイルオキシ)プロピル〕トリメトキシシラン、〔3−(アクリロイルオキシ)プロピル〕ジメトキシメチルシラン、〔3−(アクリロイルオキシ)プロピル〕トリエトキシシランなどのアクリル酸エステル。これらは単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
架橋性シリル基を有するビニル系単量体を(共)重合させる際、重合体中における架橋性シリル基の含有量については特に限定されないが、強度や伸びなどの機械物性と、貯蔵時の安定性とのバランスの点で、ブロック共重合体1分子あたり1〜20個の架橋性シリル基を有することが好ましく、2〜10個の架橋性シリル基を有することがより好ましい。架橋性シリル基の含有量は、(共)重合させる際の単量体比率や単量体の反応性を勘案して調節することが可能であり、また、GPC分析、NMR分析により解析可能である。
上記エポキシ基を有するスチレン誘導体、エポキシ基を有するメタクリル酸エステル、およびエポキシ基を有するアクリル酸エステル(以下、これらをエポキシ基を有するビニル系単量体と総称する場合がある)としては、特に限定されないが、例えば以下の化合物を挙げることができる:グリシジルメタクリレート、2,3−エポキシ−2−メチルプロピルメタクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルメタクリレートなどのメタクリル酸エステル;グリシジルアクリレート、2,3−エポキシ−2−メチルプロピルアクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルアクリレートなどのアクリル酸エステルなど。これらは単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、入手性および重合活性の点で、グリシジルメタクリレートおよびグリシジルアクリレートがより好ましく、グリシジルメタクリレートがさらに好ましい。
エポキシ基を有するビニル系単量体を(共)重合させる際の、重合体中におけるエポキシ基の含有量については特に限定されないが、強度や伸びなどの機械物性と、貯蔵時の安定性とのバランスの点で、ブロック共重合体一分子あたり1〜50個のエポキシ基を有することが好ましく、2〜20個のエポキシ基を有することがより好ましい。エポキシ基の含有量は、(共)重合させる際の単量体比率や単量体の反応性を勘案して調節することが可能であり、また、GPC分析、NMR分析により解析可能である。
[II]ブロック共重合体の概要
本発明のブロック共重合体は、後述のチオカルボニルチオ基を有する化合物の存在下に、上述の単量体をラジカル重合させる(可逆的付加脱離連鎖移動重合させる)ことにより得られる。このような重合法を採用することにより、ブロック共重合体を確実に製造でき、分子量分布の小さい共重合体が得られる。可逆的付加脱離連鎖移動重合法については、次の文献に記載がある:国際特許WO98/01478号公報、国際特許WO99/05099号公報、国際特許WO99/31144号公報、Macromolecules,1998年,31巻,16号,5559〜5562ページ;Macromolecules,1999年,32巻,6号,2071〜2074ページ;Polym.Prepr.,1999年,40巻,2号,342〜343ページ;Polym,Prepr.,1999年,40巻,2号,397〜398ページ;Polym.Prepr.,1999年,40巻,2号,899〜900ページ;Polym.Prepr.,1999年 40巻,2号,1080〜1081ページ;Macromolecules,1999年,32巻,21号,6977〜6980ページ;Macromolecules,2000年,33巻,2号,243〜245ページ;Macromol.Symp.,2000年,150巻,33〜38ページなど。
チオカルボニルチオ基を有する化合物存在下のラジカル重合においては、チオカルボニルチオ基を有する化合物の量と、重合させる単量体の量との比を調節することにより、得られる重合体の重合度と分子量を制御することができる。すなわち、重合体の重合度(DP)は、単量体の転化率が100%の場合、次式で表される。
DP=単量体のモル数/チオカルボニルチオ基を有する化合物のモル数重合体の分子量は、上記DPに単量体の分子量を乗ずることにより計算できる。単量体の転化率が100%に満たない場合には、転化率を100%として計算した値に、単量体の転化率を乗ずることにより計算できる。
本発明のブロック共重合体の分子量については特に限定されないが、強度、生産性、および成形加工性のバランスに優れる点で、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析により求めた重量平均分子量(Mw)が3000〜500000の範囲であることが好ましく、5000〜200000の範囲であることがより好ましい。本発明において、GPC分析ではポリスチレンゲルカラムを使用し、ポリスチレン標準試料換算で解析する。溶出液としては、ブロック重合体の溶解性に応じて、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、またはテトラヒドロフランを使用する。
本発明のブロック共重合体の分子量分布については特に限定されないが、強度、成形加工性、および成形体の均質性の点で、GPC分析により求めた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.8以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。
本発明のブロック共重合体において、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との組成比については特に限定されないが、熱可塑性樹脂と組み合わせて利用する場合に、該熱可塑性樹脂との相容性、耐衝撃性、成形加工性の点を考慮すると、重量比で(A):(B)=10:90〜90:10の範囲が好ましい。20:80〜80:20の範囲がより好ましく、30:70〜70:30の範囲がさらに好ましい。
本発明のブロック共重合体の構造は、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とを含有していればよく、特に限定されない。例えば、A−B型ジブロック共重合体、A−B−A型またはB−A−B型トリブロック共重合体、(A−B)型マルチブロック共重合体、星型ブロック共重合体、グラフト型ブロック共重合体などを挙げることができる。合成が容易であり、熱可塑性樹脂組成物としたときに良好な物性を有する点で、A−B型ジブロック共重合体、A−B−A型およびB−A−B型トリブロック共重合体が好ましく、A−B型ジブロック共重合体、A−B−A型トリブロック共重合体がより好ましい。
[III]チオカルボニルチオ基を有する化合物
ブロック共重合体を製造する際に使用するチオカルボニルチオ基を有する化合物としては、以下の一般式(1)で示される化合物(以下、本明細書中において、チオカルボニルチオ基を有する化合物(1)または化合物(1)という場合がある)および一般式(2)で示される化合物(以下、本明細書中において、チオカルボニルチオ基を有する化合物(2)または化合物(2)という場合がある)からなる群から選択される化合物を使用する:
Figure 2003037945
(式中、Rは炭素数1以上のp価の有機基であり;Zは水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1以上の1価の有機基であり;pは1以上の整数であり;pが2以上の場合、Zは互いに同一でもよく、異なっていてもよい)、
Figure 2003037945
(式中、Rは炭素数1以上の1価の有機基であり;Zは酸素原子(q=2の場合)、硫黄原子(q=2の場合)、窒素原子(q=3の場合)、または炭素数1以上のq価の有機基であり;qは2以上の整数であり、Rは互いに同一でもよく、異なっていてもよい)。
上記チオカルボニルチオ基を有する化合物(1)において、p価の有機基Rは窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、ケイ素原子、リン原子、および金属原子のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。該p価の有機基Rとしては特に限定されないが、該基を有する化合物の入手性および重合活性の点で、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20の置換アルキル基、炭素数7〜30のアラルキル基、炭素数7〜30の置換アラルキル基、およびこれら1価の置換基において1つ以上の水素原子を結合手に置き換えた、2価以上の有機置換基が好ましい。化合物の入手性の点でpは1〜6の範囲であることが好ましく、1または2であることがより好ましい。
上記有機基Rの具体例としては、下記式で示される基が挙げられるが、これらに限定されない。下記式において、Meはメチル基、Etはエチル基、Phはフェニル基、そしてAcはアセチル基を示し、nは1以上の整数であり、rは0以上の整数である。
Figure 2003037945
Figure 2003037945
Figure 2003037945
上記式中、化合物の入手性の点でnおよびrは500以下であることが好ましく、200以下であることがより好ましく、100以下であることがさらに好ましい。
上記チオカルボニルチオ基を有する化合物(1)において、Zが1価の有機基である場合、該基は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、ケイ素原子、およびリン原子のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。該1価の有機基Zとしては特に限定されないが、該基を有する化合物の入手性、および重合活性の点で、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20の置換アルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数6〜30の置換アリール基、炭素数7〜30のアラルキル基、炭素数7〜30の置換アラルキル基、炭素数7〜30のN−アルキル−N−アリールアミノ基、炭素数12〜30のN,N−ジアリールアミノ基、炭素数6〜30のチオアリール基、および炭素数1〜20のアルコキシ基が好ましい。
上記有機基Zの具体例としては、下記式で示される基が挙げられるが、これらに限定されない。下記式において、Meはメチル基、Etはエチル基、Phはフェニル基、そしてAcはアセチル基を示す。
Figure 2003037945
Figure 2003037945
上記チオカルボニルチオ基を有する化合物(2)において、1価の有機基Rは窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、ケイ素原子、リン原子、および金属原子のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。該1価の有機基Rとしては特に限定されないが、該基を有する化合物の入手性および重合活性の点で、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20の置換アルキル基、炭素数7〜30のアラルキル基、および炭素数7〜30の置換アラルキル基が好ましい。qは2〜6の範囲であることが好ましく、2であることがより好ましい。
上記有機基Rの具体例としては、下記式で示される基が挙げられるが、これらに限定されない。下記式において、Meはメチル基、Etはエチル基、Phはフェニル基、そしてAcはアセチル基を示し、nは1以上の整数であり、rは0以上の整数である。
Figure 2003037945
Figure 2003037945
上記式中、該基を有する化合物の入手性の点でnおよびrは500以下であることが好ましく、200以下であることがより好ましく、100以下であることがさらに好ましい。
上記チオカルボニルチオ基を有する化合物(2)において、Zが炭素数1以上のq価の有機基である場合、該基は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、ケイ素原子、およびリン原子のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。該q価の有機基Zとしては特に限定されないが、入手性、および重合活性の点で、下記式で示される構造が好ましい。下記式において、nは1以上の整数であり、rは0以上の整数であり、そしてsは1以上の整数である。
Figure 2003037945
上記式において、炭素数6〜20の2価の芳香環構造がより好ましい。上記式中、該基を有する化合物の入手性の点で、nおよびrは500以下であることが好ましく、200以下であることがより好ましく、100以下であることがさらに好ましい。また、入手性の点で、sは1〜30の範囲であることが好ましく、1〜10の範囲であることがより好ましい。
上記チオカルボニルチオ基を有する化合物(1)および(2)の具体例としては、下記式で示される化合物が挙げられるが、これらに限定されない。下記式において、Meはメチル基、Etはエチル基、Phはフェニル基、Acはアセチル基、そしてRは2価の有機基を示し、nは1以上の整数であり、rは0以上の整数である。
Figure 2003037945
Figure 2003037945
Figure 2003037945
Figure 2003037945
Figure 2003037945
上記チオカルボニルチオ基を有する化合物の構造において、入手性の点で、nおよびrは500以下であることが好ましく、200以下であることがより好ましく、100以下であることがさらに好ましい。上記チオカルボニルチオ基を有する化合物の構造において、2価の有機基Rとしては特に限定されないが、例えば、下記式で示される構造を挙げることができる:
Figure 2003037945
(式中、sは1以上の整数である)。上記式中、入手性の点で、sは1〜30の範囲であることが好ましく、1〜10の範囲であることがより好ましい。
上記チオカルボニルチオ基を有する化合物のうち、アクリロニトリル、スチレン系単量体、および(メタ)アクリル酸エステルの重合が効率よく進行する点で、一般式(3)
Figure 2003037945
(式中、Arは1価の芳香族基であり;Rは水素原子、または炭素数1以上の1価の有機基であり;ArおよびRはそれぞれ互いに同一でもよく、異なっていてもよい)で示される化合物が好ましく、下記式で示される化合物からなる群より選択される化合物がより好ましい:
Figure 2003037945
(式中、Meはメチル基を示し、Phはフェニル基を示す)。
[IV]ブロック共重合体の調製
[IV−1]重合反応に使用される溶媒、重合開始剤など
本発明のブロック共重合体を、チオカルボニルチオ基を有する化合物の存在下に所定の単量体を用いたラジカル重合により製造する際、その重合方法については特に限定されず、一般的に用いられている方法を適用できる。例えば、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、微細懸濁重合などを挙げることができる。中でも乳化重合、懸濁重合、微細懸濁重合などの水系の重合システムを採用すると、環境に負荷を与えない点で好ましい。いずれの方法においても、重合に供する単量体は、一括して反応器に仕込んでもよく、分割して導入してもよく、または連続添加してもよい。
上記単量体を溶液重合させる場合に使用される溶媒としては、次の溶媒が挙げられるが、それらに限定されない:ヘプタン、ヘキサン、オクタン、ミネラルスピリットなどの炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノールなどのアルコール系溶剤;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミドなどのアミド系溶剤;トルエン、キシレン、ベンゼン、スワゾール310(コスモ石油株式会社製)、スワゾール1000(コスモ石油株式会社製)、スワゾール1500(コスモ石油株式会社製)などの芳香族石油系溶剤など。これらの溶媒は単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。使用する溶媒の種類および量の決定に際しては、単量体の溶解度、得られる重合体の溶解度、十分な反応速度を達成するために適切な重合開始剤濃度や単量体濃度、チオカルボニルチオ基を有する化合物の溶解度、人体や環境に与える影響、入手性、価格などを考慮して決定すればよく、特に限定されない。架橋性シリル基、エポキシ基などを有する単量体を使用する場合には、これらに対して不活性な溶媒が好ましい。溶解度、入手性、価格の点で、工業的には、トルエン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、およびアセトンが好ましい。
本発明において、ブロック共重合体を乳化重合または微細懸濁重合により製造する場合に、使用する乳化剤としては特に限定されず、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などを使用可能である。
上記乳化剤のうちアニオン性界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、次の化合物が挙げられる:ラウリン酸カリウム、ヤシ脂肪酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸カリウムジエタノールアミン塩、オレイン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、混合脂肪酸ソーダ石けん、半硬化牛脂脂肪酸ソーダ石けん、ヒマシ油カリ石けんなどの脂肪酸石鹸;ドデシル硫酸ナトリウム、高級アルコール硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸トリエタノールアミン、ドデシル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、2−エチルヘキシル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム;ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウムなどのジアルキルスルホコハク酸ナトリウム;アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム;アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム;アルキルリン酸カリウム塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩;ポリカルボン酸型高分子アニオン;アシル(牛脂)メチルタウリン酸ナトリウム;アシル(ヤシ)メチルタウリン酸ナトリウム;ココイルイセチオン酸ナトリウム;α−スルホ脂肪酸エステルナトリウム塩;アミドエーテルスルホン酸ナトリウム;オレイルザルコシン;ラウロイルザルコシンナトリウム;ロジン酸石けんなど。
上記乳化剤のうち非イオン性界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、次の化合物が挙げられる:ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエートなどのポリオキシエチレンエステル;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンジステアレートなどのソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビットなどのポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル;グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレエートなどのグリセリン脂肪酸エステル;ポリグリセリンオレイン酸エステル、ポリグリセリンラウリン酸エステル、ポリグリセリンステアリン酸エステルなどのポリグリセリンアルキルエステル;ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド、牛脂脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミドなどのアルカノールアミド;ヒドロキシエチルラウリルアミン、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンアルキル(ヤシ)アミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンアルキル(牛脂)アミン、ポリオキシエチレンアルキル(牛脂)プロピレンジアミン、ポリオキシエチレンジオレイルアミンなどのアルキルポリエーテルアミン;ジメチルラウリルアミンオキサイド、ジメチルステアリルアミンオキサイド、ジヒドロキシエチルラウリルアミンオキサイドなどのアミンオキサイド;エチレングリコールジステアレート、ポリオキシエチレンジステアレート、ポリオキシプロピレンジステアレートなどのジステアレート;12−ヒドロキシフェニルステアリン酸;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンブロック共重合体など。
上記乳化剤のうちカチオン性界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、次の化合物が挙げられる:ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、オクタデシルアミンアセテート、テトラデシルアミンアセテートなどのアルキルアミン塩;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライドなどの第4級アンモニウム塩など。
上記乳化剤のうち両性界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、次の化合物が挙げられる:ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ジメチルラウリルベタインなどのアルキルベタイン;ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム;アミドベタイン;イミダゾリン;ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなど。
これらの乳化剤は単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。必要に応じて、後述する懸濁重合の分散剤を使用してもよい。乳化剤の使用量は特に限定されないが、乳化状態が良好で重合がスムーズに進行する点で、単量体100重量部に対して0.1〜30重量部が好ましい。単量体がエポキシ基を有する場合には、エポキシ基に対して不活性な乳化剤が好ましい。さらに、上記乳化剤のうち、乳化状態の安定性の点でアニオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤が好ましい。非イオン性界面活性剤を使用する場合には、HLBが10以上の非イオン性界面活性剤がより好ましく、HLBが15以上の非イオン性界面活性剤が特に好ましい。ここでHLBとは親水親油バランスを表す指標である。
本発明において、ブロック共重合体を懸濁重合により製造する場合、使用する分散剤としては当該分野で通常用いられる分散剤のいずれをも利用することが可能である。例えば、次の分散剤が挙げられるが、それらに限定されない:部分けん化ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリアルキレンオキサイド、アニオン性界面活性剤と分散助剤の組合せなど。これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。必要に応じて、上記乳化重合の際に用いられる乳化剤を併用してもよい。分散剤の使用量は特に限定されないが、重合がスムーズに進行する点で、使用される単量体100重量部に対して0.1〜30重量部が好ましい。
上記ブロック共重合体を製造する際のラジカル重合において使用される重合開始剤、あるいは重合開始方法については特に限定されず、当該分野で通常用いられる重合開始剤、あるいは重合開始方法を用いることができる。例えば、重合開始剤として次の化合物が挙げられるが、それらに限定されない:メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、キュメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、p−メンタンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチル−α−クミルパーオキサイド、ジ−α−クミルパーオキサイド、1,4−ビス〔(t−ブチルパーオキシ)イソプロピル〕ベンゼン、1,3−ビス〔(t−ブチルパーオキシ)イソプロピル〕ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ビス(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ビス(3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ビス(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、O−t−ブチルO−イソプロピルパーオキシカーボネート、コハク酸パーオキサイドなどの過酸化物系重合開始剤;2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、アゾクメン、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2−(t−ブチルアゾ)−2−シアノプロパン、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、ポリジメチルシロキサン系高分子アゾ重合開始剤(VPS−1001(和光純薬工業(株)製)、VPS−0501(和光純薬工業(株)製)など)のアゾ系重合開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムなどの無機過酸化物;スチレンなどの熱的にラジカル種を生成するビニル系単量体;ベンゾイン誘導体、ベンゾフェノン、アシルフォスフィンオキシド、フォトレドックス系などの光によりラジカル種を発生する化合物;亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルフォキシレート、アスコルビン酸、硫酸第一鉄などを還元剤とし、ペルオキソ二硫酸カリウム、過酸化水素、t−ブチルヒドロパーオキサイドなどを酸化剤とするレドックス型重合開始剤など。これら重合開始剤は単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。重合開始剤を使用せずに、電子線照射、エックス線照射、放射線照射などによる重合開始系を利用することも可能である。このような重合開始方法に関しては、Moad and Solomon“The Chemistry of Free Radical Polymerization”,Pergamon,London,1995,53−95ページに記載されている方法を使用可能である。
上記重合開始剤の使用量については特に限定されないが、分子量分布の小さい重合体を得られる点で、重合中に発生するラジカル種の量が、チオカルボニルチオ基1モルに対して1モル以下が好ましく、0.5モル以下がより好ましく、0.2モル以下が特に好ましい。また、重合中に発生するラジカル種の量を制御するために、重合開始剤の使用量と合わせて、熱的解離する重合開始剤の場合には温度を調節したり、光や電子線などによりラジカルを発生する重合開始系の場合には照射するエネルギー量を調節したりすることが好ましい。重合を制御しやすい点で、熱的解離する重合開始剤を用い、その半減期が0.5〜50時間となるような温度で重合することが好ましく、半減期が1〜20時間となるような温度で重合することがより好ましく、半減期が5〜15時間となるような温度で重合することが特に好ましい。
[IV−2]ブロック共重合体の調製の手法
本発明のブロック共重合体を、チオカルボニルチオ基を有する化合物の存在下に所定の単量体を重合させて製造する場合、その方法については限定されない。重合方法は、逐次重合法とカップリング法とに大別される。逐次重合法は、単量体の重合により一方の重合体ブロックを形成させた後、続いて他方の重合体ブロックを単量体の重合により形成させる方法であり、カップリング法は、重合体ブロックを形成すべき2種の重合体をそれぞれ別々に合成し、両者をカップリングさせる方法である。本発明のブロック共重合体がエポキシ基または架橋性シリル基を有する重合体である場合には、カップリング反応の際にエポキシ基または架橋性シリル基が関与するおそれがあるため、通常、逐次重合法が採用される。
[IV−2−1]逐次重合法によるブロック共重合体の調製
逐次重合法は、上述のように、単量体の重合により一方の重合体ブロックを形成させた後、続いて他方の重合体ブロックを単量体の重合により形成させる方法である。この逐次重合法は、製造工程が簡便である点で好ましい。この方法においては、一方の重合体ブロックを重合後、他方の重合体ブロックを重合する前に単離してもよく、連続して重合させてもよいが、工程を簡略化できる点で連続して重合する方法の方が好ましい。重合体ブロック(A)と(B)の形成順序についても限定されないが、効率よくブロック共重合体が得られる点で、連鎖移動係数のより大きいモノマーを先に重合することが好ましい。例えば、(スチレン/アクリロニトリル)−アクリル酸エステル系ブロック共重合体の場合には(スチレン/アクリロニトリル)のブロックを先に重合することが好ましく、(スチレン/アクリロニトリル)−メタクリル酸エステル系ブロック共重合体の場合には、メタクリル酸エステルを先に重合することが好ましい。連鎖移動係数が不明の場合には、重合順序を変えて試験的に重合実験を行い、結果が良好な方を採用すればよい。
以下に、逐次重合法により、A−B型、A−B−A型、およびB−A−B型のブロック共重合体を調製する例を挙げて説明する。
A−B型のブロック共重合体は、例えば、次のスキーム1に示すように、重合体ブロック(A)を先に形成し、該重合体ブロック(A)から続いて重合体ブロック(B)を形成する方法により調製される。
Figure 2003037945
上記スキームにおいて、(1−1)で示される化合物は、チオカルボニルチオ基を有する化合物(1)のうち、p=1の化合物であり、RおよびZは、各々チオカルボニルチオ基を有する化合物(1)において記載したのと同様である。aは単量体(a)を示し、bは単量体(b)を示す。
上記スキーム1に示すように、チオカルボニルチオ基を有する化合物(1−1)の存在下に単量体(a)を重合することにより、該単量体(a)に由来する重合体(a−1)が形成される。ここで、単量体(a)は上記記載の通り、アクリロニトリル10重量%以上50重量%未満と、スチレン系単量体50重量%以上90重量%未満との混合物である。次に単量体(b)を反応させることにより、上記重合体(a−1)のチオカルボニルチオ基側末端部分から重合が進行して単量体(b)成分でなる重合体ブロック(B)が形成される。このようにして、単量体(a)に由来するブロックAと単量体(b)に由来するブロックBとを有するブロック共重合体(6)が得られる。ここで単量体(b)は、上述の通り、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、ブタジエン、およびイソプレンよりなる群から選択される少なくとも1種である。lおよびmは、単量体の重合個数である。なお先述の通り、重合体ブロック(B)を先に形成し、次に重合体ブロック(A)を形成させてもよい。
この方法によりA−B−A型、あるいはB−A−B型トリブロック共重合体を製造する場合には、例えば一分子中にチオカルボニルチオ基を2個有する化合物を用いて、上記所定の単量体を重合すればよい。このような反応の例を、スキーム2、スキーム3、およびスキーム4に示す:
Figure 2003037945
上記スキームにおいて、(1−2)で示される化合物は、チオカルボニルチオ基を有する化合物(1)のうち、p=2の化合物であり、RおよびZは、各々チオカルボニルチオ基を有する化合物(1)について記載したのと同様である。a、b、l、およびmは上記スキーム1で規定したのと同様である。スキーム2においては、単量体(a)が重合することにより、該単量体(a)に由来し、分子両末端にチオカルボニルチオ基を有する重合体(a−2)が形成される。次に単量体(b)を反応させることにより、上記重合体(a−2)のチオカルボニルチオ基部分において重合が進行して単量体(b)成分でなる重合体ブロック(B)が形成される。このようにして、単量体(a)に由来するブロックAと単量体(b)に由来するブロックBとを有する、B−A−B型のブロック共重合体(7)が得られる。
Figure 2003037945
上記スキームにおいて、(2−1)で示される化合物は、チオカルボニルチオ基を有する化合物(2)のうち、q=2の化合物であり、RおよびZは、各々チオカルボニルチオ基を有する化合物(2)において記載したのと同様である。a、b、l、およびmは上記スキーム1で規定したのと同様である。スキーム3においては、単量体(a)が重合することにより、該単量体(a)に由来し、分子中央部分に2個のチオカルボニルチオ基を有する重合体(a−3)が形成される。次に単量体(b)を反応させることにより、上記重合体(a−3)のチオカルボニルチオ基部分において重合が進行して単量体(b)成分でなる重合体ブロック(B)が形成される。このようにして、単量体(a)に由来するブロックAと単量体(b)に由来するブロックBとを有する、A−B−A型のブロック共重合体(8)が得られる。
Figure 2003037945
上記スキームにおいて、(1−3)で示される化合物は、チオカルボニルチオ基を有する化合物(1)のうち、p=1で、Z=SRの化合物である。ここで、Rは、チオカルボニルチオ基を有する化合物(1)において記載したのと同様である。a、b、l、およびmは上記スキーム1で規定したのと同様である。スキーム4においては、単量体(a)が重合することにより、該単量体(a)に由来し、分子中央部分に−S−CS−S−部分(2個のチオカルボニルチオ基に相当する)を有する重合体(a−4)が形成される。次に単量体(b)を反応させることにより、上記重合体(a−4)のチオカルボニルチオ基部分において重合が進行して単量体(b)成分でなる重合体ブロック(B)が形成される。このようにして、単量体(a)に由来するブロックAと単量体(b)に由来するブロックBとを有する、A−B−A型のブロック共重合体(9)が得られる。なお、先述の通り、上記スキーム2、3、および4において、それぞれ重合体ブロック(B)を先に形成し、次に重合体ブロック(A)を形成してもよい。
[IV−2−2]カップリング法によるブロック共重合体の調製
カップリング法は、上述のように、重合体ブロックを形成すべき2種の重合体をそれぞれ別々に合成し、両者をカップリングさせる方法である。例えば、重合体ブロック(A)を構成し得る重合体(a)を、チオカルボニルチオ基を有する化合物の存在下に単量体(a)を重合することにより調製し、これとは別に重合体ブロック(B)を構成し得る重合体(b)を、チオカルボニルチオ基を有する化合物の存在下に単量体(b)を重合することにより調製しておき、これらをカップリングさせる。カップリングに際しては、それぞれの重合体のチオカルボニルチオ基をメルカプト基またはメルカプチド基に変換し、該メルカプト基またはメルカプチド基の反応を利用してカップリングを行なう。カップリングの具体的な手法については後述する。
上記カップリング法により、A−B型ジブロック共重合体、A−B−A型あるいはB−A−B型トリブロック共重合体、(A−B)型マルチブロック共重合体、星型ブロック共重合体、グラフト型ブロック共重合体など、所望のタイプのブロック共重合体を製造することが可能である。
例えば、A−B−A型あるいはB−A−B型トリブロック共重合体を製造する際には、A−B型ジブロック共重合体を合成し、次にこれらを互いにカップリングする方法が好適である。このような方法を採用すると、分子量分布の揃ったトリブロック共重合体を確実に合成できるという利点がある。上記方法の例をスキーム5に示す。
Figure 2003037945
上記スキームにおいて、(1−1)で示される化合物は、スキーム1と同様、チオカルボニルチオ基を有する化合物(1)のうち、p=1の化合物である。RおよびZは、各々チオカルボニルチオ基を有する化合物(1)において記載したのと同様であり、a、b、l、およびmは上記スキーム1で規定したのと同様である。
スキーム5においては、スキーム1の場合と同様に、まず単量体(a)および単量体(b)が逐次重合することにより、分子末端にチオカルボニルチオ部分を有する重合体(6)が形成される。
次いで、このチオカルボニルチオ部分を有する重合体(6)中のチオカルボニルチオ基を、メルカプト基またはメルカプチド基に変換する。この変換反応は、チオカルボニルチオ部分を有する重合体(6)を所定の処理剤で処理することにより進行する。スキーム5においては、処理剤により得られるメルカプト基を有するブロック共重合体(10)を、その一例として記載している。重合体ブロックの形成順序を逆にして、B−A−B型のブロック共重合体を合成することも可能である。この処理剤および処理反応については、後述する。
次いで、該メルカプト基またはメルカプチド基を有するブロック共重合体同士を、該メルカプト基またはメルカプチド基の反応を利用してカップリングさせる。ここでのカップリングに用いられる試薬、カップリング方法については、後述する。スキーム5では、このメルカプト基の酸化により2分子のブロック共重合体(10)が結合して得られるA−B−A型のブロック共重合体(11)を、その一例として記載している。重合体ブロックの形成順序を逆にして、B−A−B型のブロック共重合体を合成することも可能である。
[IV−2−2−1]カップリング法において用いられる処理剤
カップリング法において用いられる処理剤としては、(i)酸性化合物、(ii)塩基性化合物、および(iii)水素−窒素結合含有化合物からなる群から選択される化合物が用いられる。これらの処理剤を用いて処理した場合、通常、チオカルボニルチオ基はメルカプト基に変換されるが、処理剤として(ii)の塩基性化合物を用いた場合には、非水条件で処理するなどによりメルカプチド基を形成させることもできる。
上記処理剤のうち(i)の酸性化合物としては、特に限定されないが、次の化合物が挙げられる:塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、ホウフッ化水素酸、クロロスルホン酸、ヨウ化水素酸、ヒ酸、ケイフッ化水素酸などの無機酸;p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメチルスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、メチルリン酸、エチルリン酸、n−プロピルリン酸、イソプロピルリン酸、n−ブチルリン酸、ラウリルリン酸、ステアリルリン酸、2−エチルヘキシルリン酸、イソデシルリン酸、ジメチルジチオリン酸、ジエチルジチオリン酸、ジイソプロピルジチオリン酸、フェニルホスホン酸などの有機酸;強酸性イオン交換樹脂、弱酸性イオン交換樹脂など。さらに、微量の水分と反応して酸性を示す化合物も使用可能である。このような化合物としては、特に限定されないが、次の化合物が挙げられる:無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸、無水フタル酸、無水コハク酸などの酸無水物;酢酸クロライド、安息香酸クロライドなどのハロゲン化アシル;四塩化チタン、塩化アルミニウム、塩化ケイ素などの金属ハロゲン化物;塩化チオニルなど。これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。
上記処理剤のうち(ii)の塩基性化合物としては特に限定されないが、次の化合物が挙げられる:水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、水酸化セシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛などの遷移金属水酸化物;ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、ナトリウムフェニラート、リチウムエチラート、リチウムブチラートなどのアルカリ金属アルコラート;マグネシウムメチラート、マグネシウムエチラートなどのアルカリ土類金属アルコラート;水素化ナトリウム、水素化リチウム、水素化カルシウム、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素ナトリウムなどの金属水素化物;ハイドロサルファイト、n−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、エチルマグネシウムブロマイド、フェニルマグネシウムブロマイドなどの有機金属試薬など。さらに、微量の水分と反応して塩基性化合物を生じる化合物も使用可能である。このような化合物としては、特に限定されないが、次の化合物が挙げられる:金属リチウム、金属ナトリウム、金属カリウムなどのアルカリ金属;金属マグネシウム、金属カルシウムなどのアルカリ土類金属など。
上記処理剤のうち(iii)の水素−窒素結合含有化合物としては特に限定されないが、例えば、(iii−1)アンモニア、(iii−2)ヒドラジン、(iii−3)1級アミン系化合物、(iii−4)2級アミン系化合物、(iii−5)アミド系化合物、(iii−6)アミン塩酸塩系化合物、(iii−7)水素−窒素結合含有高分子、および(iii−8)ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)が挙げられる。
上記水素−窒素結合含有化合物のうち、(iii−3)の1級アミン系化合物の具体例としては、特に限定されないが、次の化合物が挙げられる:N−(2−アミノエチル)エタノールアミン、12−アミノドデカン酸、3−アミノ−1−プロパノール、アリルアミン、イソプロピルアミン、3,3’−イミノビス(プロピルアミン)、モノエチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−(ジエチルアミノ)プロピルアミン、3−(ジブチルアミノ)プロピルアミン、n−ブチルアミン、t−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、n−プロピルアミン、3−(メチルアミノ)プロピルアミン、3−(ジメチルアミノ)プロピルアミン、N−メチル−3,3’−イミノビス(プロピルアミン)、3−メトキシプロピルアミン、2−アミノエタノール、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、N−カルボキシ−4,4’−メチレンビスシクロヘキシルアミン、1,4−ジアミノブタン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、ジアミノマレオニトリル、シクロヘキシルアミン、ATU(味の素株式会社製)、CTUグアナミン(味の素株式会社製)、二酸化チオ尿素、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン、n−ヘキシルアミン、モノメチルアミン、モノメチルヒドラジン、3−(ラウリルオキシ)プロピルアミン、アニシジン、アニリン、p−アミノアセトアニリド、p−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸エチルエステル、2−アミノ−4−クロロフェノール、2−アミノチアゾール、2−アミノチオフェノール、2−アミノ−5−ニトロベンゾニトリル、アミノフェノール、p−アミノベンズアルデヒド、4−アミノベンゾニトリル、アントラニル酸、3−イソプロポキシアニリン、4−アミノ−5−ヒドロキシ−2,7−ナフタレンスルホン酸モノナトリウム塩、6−アミノ−4−ヒドロキシ−2−ナフタレンスルホン酸、キシリジン、m−キシリレンジアミン、p−クレシジン、ジアニシジン、4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、2−アミノ−5−ナフトール−7−スルホン酸、1,4−ジアミノアントラキノン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ステファニル酸、トビアス酸、2,4,5−トリクロロアニリン、o−トリジン、トルイジン、トルイレンジアミン、ナフチオン酸ナトリウム、ニトロアニリン、m−ニトロ−p−トルイジン、o−クロロ−p−トルイジン−m−スルホン酸、フェニルヒドラジン、フェニレンジアミン、フェネチジン、フェネチルアミン、ベンジルアミン、ベンゾフェノンヒドラゾン、メシジン、メタニル酸、2−メチル−4−ニトロアニリン、ロイコ−1,4−ジアミノアントラキノン、パラミン、アミノピリジン、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−(3−アミノプロピル)モルホリン、1−アミノ−4−メチルピペラジン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ベンゾグアナミン、メラミン、o−クロロアニリン、2,5−ジクロロアニリン、3,4−ジクロロアニリン、3,5−ジクロロアニリン、2−アミノ−4−クロロ安息香酸、o−クロロ−p−ニトロアニリン、5−クロロ−2−ニトロアニリン、2,6−ジクロロ−4−ニトロアニリン、2−(2−クロロフェニル)エチルアミン、3,3’−ジクロロ−4,4’ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,4−ジフルオロアニリン、o−フルオロアニリン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランなど。
上記水素−窒素結合含有化合物のうち、(iii−4)の2級アミン系化合物の具体例としては、特に限定されないが、次の化合物が挙げられる:N−メチルエタノールアミン、ジアリルアミン、ジイソプロピルアミン、ジエチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、イミノジ酢酸、3,3’−イミノジプロピオニトリル、ビス(ヒドロキシエチル)アミン、N−エチルエチレンジアミン、エチレンイミン、ジシクロヘキシルアミン、1,1−ジメチルヒドラジン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、ジメチルアミン、N−メチル酢酸ナトリウム、N−エチルアニリン、ジフェニルアミン、ジベンジルアミン、7−アニリノ−4−ヒドロキシ−2−ナフタレンスルホン酸、N−メチルアニリン、2−メチル−4−メトキシジフェニルアミン、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1,3−ジ(4−ピペリジル)プロパン、2,5−ジメチルピペラジン、2,6−ジメチルピペラジン、3,5−ジメチルピラゾール、5,5’−ビ−1H−テトラゾール、5−フェニル−1H−テトラゾール、5−メチル−1H−テトラゾール、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、(ヒドロキシエチル)ピペラジン、ピペコリン、2−(1−ピペラジニル)ピリミジン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、N−メチルピペラジン、2−メチルピペラジン、モルホリンなど。
上記水素−窒素含有化合物のうち、(iii−5)のアミド系化合物の具体例としては、特に限定されないが、次の化合物が挙げられる:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アジピン酸ジヒドラジド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−t−オクチルアクリルアミド、カルボヒドラジド、グアニルチオ尿素、グリシルグリシン、N−〔3−(ジメチルアミノ)プロピル〕アクリルアミド、N−〔3−(ジメチルアミノ)プロピル〕メタクリルアミド、N,N’−エチレンビス(ステアロアミド)、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、N,N’−メチレンビス(ステアロアミド)、N−(ヒドロキシメチル)ステアロアミド、ダイアセトンアクリルアミド、チオアセトアミド、チオカルボヒドラジド、チオセミカルバジド、チオ尿素、ドデカン二酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、1,6−ヘキサメチレンビス(N,N−ジメチルセミカルバジド)、ホルムアミド、メタクリルアミド、N,N’−メチレンビス(アクリルアミド)、N−メチロールアクリルアミド、アセトアニリド、アセト酢酸o−アニシダイド、アセト酢酸アニリド、アセト酢酸m−キシリダイド、アセト酢酸o−クロロアニリド、アセト酢酸2,5−ジメトキシ−4−クロロアニリド、アセト酢酸トルイダイド、1,1,1’,1’−テトラメチル−4,4’−(メチレンジ−p−フェニレン)ジセミカルバジド、トルエンスルホンアミド、p−ヒドロキシフェニルアセトアミド、フタルイミド、イソシアヌル酸、3−カルバモイル−2−ピラジンカルボン酸、コハク酸イミド、5,5−ジメチルヒダントイン、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン、ヒダントイン、フェニルピラゾリドン、3−メチル−5−ピラゾロン、1−メチロール−5,5−ジメチルヒダントイン、3−(4−クロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素、ブロムワレリル尿素、2,6−ジフルオロベンズアミド、2,2,2−トリフルオロアセトアミドなど。
上記水素−窒素含有化合物のうち、(iii−6)のアミン塩酸塩系化合物の具体例としては、特に限定されないが、次の化合物が挙げられる:アセトアミジン塩酸塩、2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、モノメチルアミン塩酸塩、ジメチルアミン塩酸塩、モノエチルアミン塩酸塩、ジエチルアミン塩酸塩、モノプロピルアミン塩酸塩、ジプロピルアミン塩酸塩、モノブチルアミン塩酸塩、ジブチルアミン塩酸塩、塩酸セミカルバジド、塩酸グアニジン、塩酸アミノグアニジン、2−クロロエチルアミン塩酸塩、ジステアミン塩酸塩、t−ブチルヒドラジンモノ塩酸塩など。
上記水素−窒素含有化合物のうち、(iii−7)の水素−窒素結合含有高分子の具体例としては、特に限定されないが、次の化合物が挙げられる:ポリメント(株式会社日本触媒製)、ポリエチレンイミン、アミノポリアクリルアミド、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロンMXD6、ナイロン46、ポリアミドイミド、ポリアリルアミン、ポリウレタンなど。
上記水素−窒素含有化合物のうち、(iii−8)のHALSとしては、特に限定されないが、次の化合物が挙げられる:アデカスタブLA−77(旭電化工業(株)製)、Chimassorb 944LD(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、Tinuvin 144(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、アデカスタブLA−57(旭電化工業(株)製)、アデカスタブLA−67(旭電化工業(株)製)、アデカスタブLA−68(旭電化工業(株)製)、アデカスタブLA−87(旭電化工業(株)製)、Goodrite UV−3034(Goodrich社製)など。
上記処理剤のうち、装置腐食の問題がなく、中和する必要がない点で、上記(iii)の水素−窒素結合含有化合物が好ましく;処理後の精製工程を簡略化できる点で、沸点100℃以下の水素−窒素結合含有化合物、およびHALSがより好ましく;入手性の点で、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、およびHALSがさらに好ましい。
チオカルボニルチオ基を有する重合体を上記処理剤で処理する際、処理剤の使用量は特に限定されない。処理剤として(i)の酸性化合物または(ii)の塩基性化合物を使用する場合、取り扱いやすさおよび反応性の点で、該重合体100重量部に対して0.01〜100重量部が好ましく、0.05〜50重量部がより好ましく、0.1〜30重量部が特に好ましい。酸性化合物または塩基性化合物で処理した場合、重合体の安定性の点で、処理後に中和することが好ましい。処理剤として(iii)の水素−窒素結合含有化合物を使用する場合には、メルカプト基の導入率が高い点で、該重合体中のチオカルボニルチオ基1モルに対して、水素−窒素結合含有化合物を0.5〜1000モルの割合で用いるのが好ましく、1〜500モルの割合で用いるのがより好ましい。過剰の水素−窒素結合含有化合物は、回収して再利用することができる。また、過剰の処理剤をシリカやアルミナなどの吸着剤充填カラムを通して除去することもできる。
チオカルボニルチオ基を有する重合体を上記処理剤で処理する場合、その反応条件に関しては特に限定されない。例えば、重合後の反応液に処理剤を添加して処理してもよく、得られた重合体を単離した後、直接、あるいは有機溶媒に溶解させて、処理剤を添加してもよい。有機溶媒を使用する場合には、重合の説明において記載した有機溶媒を使用することができる。重合体を単離した後直接処理剤を添加する場合には、反応効率を高める点で、2軸押出機、ニーダー、プラストミル、バンバリーミキサーなどを用いて溶融混練する方法が好ましい。処理温度は特に限定されないが、処理効率が高い点で、−50〜300℃の範囲が好ましく、0〜200℃の範囲がより好ましく、30〜150℃の範囲がより好ましい。ただし、重合体に直接添加して溶融混練するような場合には上記温度範囲に関係なく、重合体の溶融温度以上、かつ分解温度未満で処理することが好ましい。このような処理により、チオカルボニルチオ基がメルカプト基またはメルカプチド基に変換される。
[IV−2−2−2]カップリングの方法
次に、上記処理により得られる、メルカプト基またはメルカプチド基を有するブロック共重合体同士を、該メルカプト基またはメルカプチド基の反応を利用してカップリングする。メルカプト基またはメルカプチド基を有する重合体をカップリングする方法としては、特に限定されないが、次の方法が挙げられる:
〈I〉メルカプト基またはメルカプチド基同士の間で結合を形成させることにより、重合体同士を直接カップリングする方法;
〈II〉メルカプト基またはメルカプチド基と結合を形成することの可能な官能基を1分子中に2個以上有する化合物を用い、該化合物を介して重合体同士をカップリングする方法;および
〈III〉重合体のメルカプト基またはメルカプチド基の部位に官能基を導入し、該官能基を利用して重合体同士をカップリングする方法。
上記〈I〉のメルカプト基またはメルカプチド基同士の間で結合を形成させる方法としては、特に限定されないが、メルカプト基を有する重合体およびメルカプチド基を有する重合体のいずれの場合においても、酸化剤の存在下、重合体間にジスルフィド結合を形成させることにより、該重合体をカップリングする方法が挙げられる。カップリング時には、反応を効率よく進める目的で、必要に応じて3級アミンおよび金属塩の少なくとも一方が添加される。最終的に架橋性シリル基を有するブロック共重合体を得たい場合には、該架橋性シリル基の安定性の点において、この〈I〉の方法が好適である。
この〈I〉の方法において使用できる酸化剤としては特に限定されないが、次の化合物が挙げられる:二酸化鉛、二酸化マンガン、過酸化カルシウム、過酸化亜鉛、過酸化バリウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化ストロンチウム、過酸化炭酸ナトリウムなどの無機過酸化物;酸化亜鉛、酸化鉛、酸化マンガン、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化第一鉄、酸化第二鉄、酸化コバルト、酸化銅、五酸化バナジウムなどの金属酸化物;重クロム酸カリウム、過塩素酸ナトリウム、過マンガン酸カリウムなどの無機酸化剤;ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、過酢酸ナトリウム、過酸化尿素などの有機過酸化物;ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、パラキノンジオキシムなどの有機酸化剤;ヘキサシアノ鉄(III)カリウム、有機酸鉄(III)、トリス(アセチルアセトナート)マンガンなどの有機金属化合物;過酸化水素;酸素(空気)など。これらは単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。これらのうち、取り扱いやすさ、および入手性の点で、二酸化鉛、過酸化亜鉛、過酸化カルシウム、過酸化バリウム、二酸化マンガン、重クロム酸塩、過酸化水素、および酸素(空気)が好ましく、二酸化鉛、過酸化亜鉛、過酸化カルシウム、過酸化バリウム、二酸化マンガン、重クロム酸塩、および酸素(空気)がより好ましく、二酸化鉛、過酸化カルシウム、および酸素(空気)がさらに好ましい。
上記酸化剤の添加量は特に限定されないが、カップリングが迅速に進行する点で、メルカプト基またはメルカプチド基を有するブロック共重合体100重量部に対して、0.01〜40重量部が好ましく、0.1〜20重量部がより好ましい。なお、酸化剤として酸素(空気)を使用する場合には、特に添加量に関して制限はない。
〈I〉の方法において必要に応じて用いられる3級アミンとしては、特に限定されないが、例えば、次の化合物が挙げられる:トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミン;N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロパン−1,3−ジアミン、テトラメチルグアニジン、N,N’−ジメチルピペラジン、ジメチルアミノエタノール、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテルなど。これらは単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。3級アミンを使用する場合、その添加量に特に限定はないが、カップリングの促進効果と添加量のバランスに優れる点で、メルカプト基またはメルカプチド基を有するブロック共重合体100重量部に対して、0.01〜30重量部が好ましく、0.1〜15重量部がより好ましい。
上記必要に応じて用いられる金属塩としては、特に限定されないが、例えば、銅、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウムなど金属の塩化物、よう化物、硫酸塩、硝酸塩などを挙げることができる。これら金属塩は単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。金属塩を使用する場合の添加量は特に限定されないが、カップリングの促進効果と添加量のバランスに優れる点で、メルカプト基またはメルカプチド基を有するブロック共重合体100重量部に対して、0.01〜30重量部が好ましく、0.1〜20重量部がより好ましい。また、この場合にも上述の3級アミンを添加することができる。
上記〈II〉のメルカプト基またはメルカプチド基と結合することの可能な官能基を1分子中に2個以上有する化合物を用い、該化合物を介して重合体同士をカップリングする方法としては、以下の方法が挙げられる。これら〈II−1〉〜〈II−7〉の方法は、メルカプト基と結合することの可能な官能基を有する化合物を用いる場合に適用され得、〈II−6〉および〈II−7〉の方法は、メルカプチド基と結合することの可能な官能基を有する化合物を用いる場合に適用され得る。
〈II−1〉イソシアナト基を1分子中に2個以上有する化合物を利用する方法;
〈II−2〉イソチオシアナト基を1分子中に2個以上有する化合物を利用する方法;
〈II−3〉不飽和基を1分子中に2個以上有する化合物を利用する方法;
〈II−4〉カルボキシル基を1分子中に2個以上有する化合物を利用する方法;
〈II−5〉エステル結合を1分子中に2個以上有する化合物を利用する方法;
〈II−6〉ハロゲン化アシル基を1分子中に2個以上有する化合物を利用する方法;および
〈II−7〉炭素−ハロゲン結合を1分子中に2個以上有する化合物を利用する方法。
〈II〉の方法のうち、上記〈II−1〉のイソシアナト基を1分子中に2個以上有する化合物を利用する方法においては、メルカプト基とイソシアナト基とが反応により結合し、その結果、該化合物を介してカップリングが進行する。反応に際しては、必要に応じて、触媒(ウレタン化触媒)が使用される。
上記イソシアナト基を一分子中に2個以上有する化合物としては、特に限定されないが、以下の化合物が挙げられる:ヘキサメチレンジイソシアナート、2,4−トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,5−ナフチレンジイソシアナート、エチレンジイソシアナート、メチレンジイソシアナート、プロピレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナートなどのジイソシアナート化合物;1,6,11−ウンデカントリイソシアナート、トリフェニルメタントリイソシアナートなどのトリイソシアナート化合物;上記化合物を多価アルコール化合物と反応させた多価イソシアナート化合物;上記化合物のイソシアヌレート変性体;上記化合物を多価アミン化合物と反応させた多価イソシアナート化合物など。これらは単独で使用してもよく、複数を組合せて使用してもよい。これらのうち、入手性、および反応性の点で、次の化合物が好適である:ヘキサメチレンジイソシアナート、2,4−トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)、およびビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン。
上記ウレタン化触媒としては、例えば、Polyurethanes:Chemistry and Technology, Part I,Table 30, Chapter 4, Saunders and Frisch, Interscience Publishers, New York, 1963に列挙されている触媒が挙げられるが、これらに限定されない。上記反応において用いられ得るウレタン化反応触媒としては、高い活性を有しているという点で次の触媒が好ましい:オクチル酸スズ、ステアリン酸スズ、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジオレイルマレート、ジブチルスズジブチルマレート、ジブチルスズジラウレート、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジラウリルオキシカルボニルジスタノキサン、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジアセチルアセトナート、ジブチルスズビス(o−フェニルフェノキサイド)、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズビストリエトキシシリケート、ジブチルスズジステアレート、ジブチルスズビスイソノニル−3−メルカプトプロピオネート、ジブチルスズビスイソオクチルチオグリコレート、ジオクチルスズオキサイド、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクチルスズジバーサテートなどのスズ触媒;トリエチルアミン、トリフェニルアミン、トリメチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジンなどの3級アミン化合物およびその類似体。
上記触媒の使用量は特に限定されないが、メルカプト基を有する重合体100重量部に対して、0.0001〜3重量部が好ましく、0.001〜0.5重量部がさらに好ましく、0.003〜0.1重量部が特に好ましい。0.0001重量部未満では十分な反応活性が得られない場合があり、3重量部を超えると、カップリングにより得られる重合体の耐熱性、耐候性、耐加水分解性などの物性を悪化させる場合がある。
上記〈II−2〉のイソチオシアナト基を1分子中に2個以上有する化合物を利用する方法において使用する、該イソチオシアナト基を有する化合物としては特に限定されないが、上記〈II−1〉の方法において使用するイソシアナト基を1分子中に2個以上有する化合物の、イソシアナト基をイソチオシアナト基に置き換えた化合物を挙げることができる。この〈II−2〉の方法においても、上記〈II−1〉の場合と同様の触媒(ウレタン化触媒)を使用することができる。
上記〈II−3〉の不飽和基を1分子中に2個以上有する化合物を利用する方法においては、メルカプト基と不飽和基とが反応により結合し、その結果、該化合物を介してカップリングが進行する。反応に際しては、必要に応じて、ラジカル発生剤が使用される。
上記方法で使用する、不飽和基を1分子中に2個以上有する化合物としては、次の化合物が挙げられるが、特にこれらの化合物に限定されない:ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、1,4−ヘプタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、ジビニルエーテル、ジアリルエーテル、アクリル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、1,2−ジビニルベンゼン、1,4−ジビニルベンゼン、1,3,5−トリビニルベンゼン、ビスフェノールAジビニルエーテル、ビスフェノールAジアリルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、アルキル変性ジペンタエリスリトールのアクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート、ε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールのアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、2−プロペノイックアシッド〔2−〔1,1−ジメチル−2−〔(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ〕エチル〕−5−エチル−1,3−ジオキサン−5−イル〕メチルエステル、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸−1,3−ブチレングリコール、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジアリルエーテル、1,5−ペンタンジオールジビニルエーテル、1,5−ペンタンジオールジアリルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジアリルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレンオキサイドジビニルエーテル、ポリエチレンオキサイドジアリルエーテル、ポリプロピレンオキサイドジビニルエーテル、ポリプロピレンオキサイドジアリルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジアリルエーテル、トリメリット酸ジビニル、トリメリット酸トリビニル、トリメリット酸ジアリル、トリメリット酸トリアリル、コハク酸ジビニル、コハク酸ジアリル、フタル酸ジビニル、フタル酸ジアリル、マレイン酸ジビニル、マレイン酸ジアリル、テレフタル酸ジビニル、テレフタル酸ジアリル、ジビニルカーボネート、ジアリルカーボネート、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート、フラン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、および窒素原子同士が2価の有機基で結合されたビスマレイミド化合物など。これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。
上記〈II−3〉の方法において用いられるラジカル発生剤としては特に限定されず、前述の重合開始剤を使用することができる。
上記〈II−4〉のカルボキシル基を1分子中に2個以上有する化合物を利用する方法において使用する、カルボキシル基を1分子中に2個以上有する化合物としては特に限定されないが、以下の化合物を挙げることができる:アジピン酸、イタコン酸、イミノジ酢酸、エチレンジアミン四酢酸、グルタル酸、シトラコン酸、シュウ酸、酒石酸、ジパラトルオイル酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、セバシン酸、3,3’−チオジプロピオン酸、チオマレイン酸、ドデカン二酸、1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸、ブラシル酸、マロン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾールトリメリテート、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールトリメリテート、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールトリメリテート、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールトリメリテート、イミダゾール−4,5−ジカルボン酸、ケリダム酸、2,3−ピラジンジカルボン酸、葉酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、シスチン、クロレンド酸、およびトリメリット酸など。これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。
メルカプト基を有する重合体とこれら多価カルボン酸とを反応させる際、当該分野で通常用いられるエステル化触媒を用いることができる。反応中に生成する水を除去することにより、反応を効果的に進めることが可能である。例えば、生成する水をモレキュラーシーブズなどの脱水剤で除去する方法、オルトカルボン酸エステルなどと反応させて除去する方法、あるいは、トルエンなどの共沸溶媒を用いて除去する方法が適宜採用される。
上記〈II−5〉のエステル結合を1分子中に2個以上有する化合物を利用する方法においては、エステル結合とメルカプト基とが反応により結合し、その結果、該化合物を介してカップリングが進行する。反応に際しては、必要に応じて、エステル化触媒が使用される。
上記方法に使用する、エステル結合を1分子中に2個以上有する化合物としては特に限定されない。上記〈II−4〉の方法において例示したカルボキシル基を1分子中に2個以上有する化合物をエステル化した化合物を挙げることができる。例えば次のエステルがあるが、これらに限定されない:メチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、イソプロピルエステル、n−ブチルエステル、イソブチルエステル、sec−ブチルエステル、t−ブチルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ラウリルエステル、ビニルエステル、アリルエステル、フェニルエステル、ベンジルエステル、ナフチルエステル、(4−ヒドロキシフェニル)エステル、(4−メトキシフェニル)エステル、(4−ビニルフェニル)エステルなど。さらに、これら以外に、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸などの多価カルボン酸無水物;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジアリルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート化合物なども、エステル結合を1分子中に2個以上有する化合物と同等に使用可能である。これらは単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。該方法においては、反応中に水あるいはアルコールが副生するが、反応効率が高い点でこれらを反応中に除去することが好ましい。除去する手段としては、蒸留、共沸蒸留、モレキュラーシーブズなどによる吸着、オルトカルボン酸エステルなどとの反応による除去などが挙げられるが、これらに限定されない。この方法において必要に応じて用いられるエステル化触媒としては、当該分野で通常使用されるエステル化触媒のいずれもが使用可能である。
上記〈II−6〉のハロゲン化アシル基を1分子中に2個以上有する化合物を利用する方法は、上述のように、メルカプト基を有するブロック共重合体およびメルカプチド基を有するブロック共重合体のいずれの場合に対しても適用可能である。該方法において使用する、ハロゲン化アシル基を1分子中に2個以上有する化合物としては特に限定されないが、上記〈II−5〉の方法において例示した化合物(エステル結合を1分子中に2個以上有する化合物)のエステル部分を、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子で置き換えてアシル基とした化合物を挙げることができる。該方法をメルカプト基を有するブロック共重合体に対して適用する場合には、反応の進行に伴って酸が副生するが、反応効率の向上、および装置の腐食を防止する目的で、酸を除去したり中和したりすることが好ましい。該方法をメルカプチド基を有する重合体に対して適用する場合には、反応の進行に伴って塩が副生する。得られるブロック共重合体の透明性が要求される場合には、ろ過や水洗などにより精製することが好ましい。
上記〈II−7〉の炭素−ハロゲン結合を1分子中に2個以上有する化合物を利用する方法は、上述のように、メルカプト基またはメルカプチド基を有するブロック共重合体のカップリングに利用される。この炭素−ハロゲン結合を有する化合物としては、特に限定されないが、以下の化合物を挙げることができる:塩化メチレン、1,1,1−トリクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、2,5−ジクロロアニリン、3,4−ジクロロアニリン、3,5−ジクロロアニリン、2,4−ジクロロ安息香酸、2,3−ジクロロトルエン、2,4−ジクロロトルエン、2,6−ジクロロトルエン、3,4−ジクロロトルエン、2,6−ジクロロ−4−ニトロアニリン、1,4−ジクロロ−2−ニトロベンゼン、2,4−ジクロロ−1−ニトロベンゼン、o−クロロベンジルクロライド、p−クロロベンジルクロライド、2,6−ジクロロベンジルクロライド、3,4−ジクロロベンジルクロライド、2,3−ジクロロベンズアルデヒド、2,4−ジクロロベンズアルデヒド、2,6−ジクロロベンズアルデヒド、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、2,3−ジクロロベンゾイルクロライド、2,4−ジクロロベンゾイルクロライド、2,6−ジクロロベンゾイルクロライド、四塩化炭素、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジクロロ−1,4−ナフトキノン、2,6−ジクロロベンザルクロライド、2,6−ジクロロベンゾニトリル、オクタブロモジフェニルエーテル、1,1,2,2−テトラブロモエタン、1,2−ジブロモ−4−(1,2−ジブロモエチル)シクロヘキサン、1,4−ジブロモブタン、1,3−ジブロモプロパン、2,3−ジブロモ−1−プロパノール、1,5−ジブロモペンタン、デカブロモジフェニルエーテル、テトラデカブロモ−p−ジフェノキシベンゼン、テトラブロモシクロオクタン、テトラメチレンクロロブロマイド、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル−2−ヒドロキシプロピルテトラブロモフタレート、1−ブロモ−2−クロロエタン、1−ブロモ−3−クロロプロパン、1−ブロモ−6−クロロヘキサン、ブロモクロロメタン、ヘキサブロモベンゼン、ペンタメチレンクロロブロマイド、メチレンジブロマイド、ジクロロペンタフルオロプロパン、2,4−ジフルオロアニリン、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンズアミド、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、2,2,2−トリフルオロアセトアミド、トリフルオロアセトアルデヒド水和物、トリフルオロエタノール、トリフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸無水物、トリフルオロ酢酸エチルエステル、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、2−(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒド、4−(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒド、2−(トリフルオロメチル)ベンゾイルクロリド、パーフルオロオクチルイオダイド、2−パーフルオロアルキルエタノール、パーフルオロアルキルエチルアクリレート、パーフルオロプロピルビニルエーテル、パーフルオロポリアルケニルビニルエーテル、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロアセトン三水和物、ヘキサフルオロ−2−プロパノール、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレンオキサイド、1,2−ジョードエタン、1,4−ジョードベンゼンなど。これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。メルカプト基を有するブロック共重合体のカップリングにおいては、塩基性化合物を添加することにより副生する酸をトラップすると反応がスムーズに進行する。メルカプチド基を有するブロック共重合体のカップリングにおいては、副生する塩をろ過や水洗などにより取り除くことが、得られるブロック共重合体の透明性の点で好ましい。
メルカプト基またはメルカプチド基を有する重合体をカップリングする方法のうち、〈III〉の重合体のメルカプト基またはメルカプチド基の部位に官能基を導入し、該官能基を利用して重合体同士をカップリングする方法について説明する。上記官能基を導入するための化合物としては、メルカプト基と反応性を有する基およびカップリングに寄与する基を有する化合物が用いられる(後述)。
本法について、A−B型ジブロック共重合体からA−B−A型トリブロック共重合体を製造する例を挙げて以下に説明する。
Figure 2003037945
上記スキームにおいて、Rは、チオカルボニルチオ基を有する化合物(1)について記載したのと同様である。a、b、l、およびmは上述のスキーム1で規定したのと同様である。上記化合物(L)は、上述の官能基のうちのいずれかである官能基(L)、およびメルカプト基またはメルカプチド基と結合を形成することの可能な官能基を有する。同様に、上記の化合物(M)は、上記官能基のうちのいずれかである官能基(M)、およびメルカプト基またはメルカプチド基と結合を形成することの可能な官能基を有する。これらの官能基(L)および(M)は、互いに反応して結合を形成することが可能な基である。
スキーム6の、末端にメルカプト基を有するブロック共重合体(10)は、例えば、上述のスキーム5で示される工程により得られる。
上記メルカプト基またはメルカプチド基と結合を形成することの可能な官能基としては、上記〈II−1〉〜〈II−7〉の方法において用いられる化合物が有する官能基、つまり、イソシアナト基、イソチオシアナト基、不飽和基、カルボキシル基、エステル結合、ハロゲン化アシル基、炭素−ハロゲン結合などが挙げられる。
官能基(L)と官能基(M)の組み合わせについては特に限定されないが、次の組み合わせを挙げることができる:▲1▼架橋性シリル基(L1)と架橋性シリル基(M1)、▲2▼不飽和基(L2)とヒドロシリル基(M2)、▲3▼アミノ基(L3)とカルボキシル基(M3)、▲4▼アミノ基(L3)とエポキシ基(M4)、▲5▼ヒドロキシル基(L4)とエポキシ基(M4)など。
このような基を有する化合物(L)および化合物(M)の例としては特に限定されないが、以下の化合物を挙げることができる。
架橋性シリル基(L1)または(M1)を有する化合物としては、次の化合物が挙げられる:3−イソシアナトプロピルジメトキシメチルシラン、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルメトキシジメチルシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメトキシジメチルシラン、アリルジメトキシメチルシラン、アリルトリメトキシシラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルジメチルアセトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルジメチルアセトキシシランなど。不飽和基(L2)を有する化合物としては、次の化合物が挙げられる:アリルイソシアナート、4−ビニルフェニルイソシアナート、上記〈II−3〉の方法において例示した不飽和基を1分子中に2個以上有する化合物など。ヒドロシリル基(M2)を有する化合物としては、次の化合物が挙げられる:ビニルジメチルシラン、アリルジメチルシラン、ビニルジフェニルシラン、3−イソシアナトプロピルジメチルシラン、4−イソシアナトフェニルジメチルシランなど。アミノ基(L3)を有する化合物としては、次の化合物が挙げられる:アリルアミン、4−ビニルアニリン、ジアリルアミン、ε−カプロラクタム(メルカプト基と反応することによりアミノ基を生成する)など。カルボキシル基(M3)を有する化合物としては、次の化合物が挙げられる:ビニル酢酸、4−ビニル安息香酸、上記〈II−4〉の方法において例示したカルボキシル基を1分子中に2個以上有する化合物など。ヒドロキシル基(L4)を有する化合物としては、次の化合物が挙げられる:ビニルアルコール、アリルアルコール、4−ヒドロキシスチレン、ε−カプロラクトン(メルカプト基と反応することによりヒドロキシル基を生成する)など。エポキシ基(M4)を有する化合物としては、次の化合物が挙げられる:ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテルなど。
上記末端にメルカプト基を有するブロック共重合体(10)に、化合物(L)および(M)をそれぞれ反応させることにより、分子末端に官能基(L)を有するブロック共重合体(12)および分子末端に官能基(M)を有するブロック共重合体(13)が得られる。これらをカップリングすることにより、単量体(a)に由来するブロックAおよび単量体(b)に由来するブロックBを有するA−B−A型のブロック共重合体(14)が形成される。
上記カップリング反応において、その方法は特に限定されず当該分野で通常使用される反応試薬や反応条件を適用可能である。
上記▲1▼の架橋性シリル基(L1)を有するブロック共重合体(12−1)と架橋性シリル基(M1)を有するブロック共重合体(13−1)との反応については、該架橋性シリル基がアルコキシ基を含有する場合には、該アルコキシ基の加水分解反応、およびそれに続く縮合反応が行なわる。このように、架橋性シリル基の反応により、カップリング反応が進行する。
上記反応においては、当該分野で通常使用される縮合触媒を使用することができる。このような縮合触媒としては、例えば以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されない:テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネートなどのチタン酸エステル;ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルススジアセテート、オクチル酸スズ、ナフテン酸スズ、ジブチルスズビスアセチルアセトナートなどの有機スズ化合物;オクチル酸鉛などの有機鉛化合物;ブチルアミン、オクチルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、オクチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N−メチルモルホリン、1,3−ジアザビシクロ[5.4.6]ウンデセン−7−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのアミン系化合物、あるいはこれらのカルボン酸塩;過剰のポリアミンと多塩基酸から得られる低分子量ポリアミド樹脂;過剰のポリアミンとエポキシ化合物の反応生成物など。これらは単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。これら縮合触媒の使用量は特に限定されないが、反応性とコストの点でブロック共重合体100重量部に対して0.01〜10重量部の範囲が好ましい。ただし、架橋性シリル基がハロゲン原子あるいはアセトキシ基を有する場合には、副生する塩酸および酢酸が触媒として作用するため、特に縮合触媒を加えなくてもよい。
上記▲2▼の不飽和基(L2)を有するブロック共重合体(12−2)とヒドロシリル基(M2)を有するブロック共重合体(13−2)との反応においては、ヒドロシリル化反応が進行し、これにより、カップリングが行なわれる。最終的に架橋性シリル基を有するブロック共重合体を得たい場合には、該架橋性シリル基の安定性の点において、この▲2▼の方法が好ましい。
上記ヒドロシリル化反応においては、当該分野で通常使用されるヒドロシリル化触媒を使用することができる。このようなヒドロシリル化触媒としては特に限定されないが、例えば以下の化合物を挙げることができる:シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシ)−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ビス(t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンなどの過酸化物系重合開始剤;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、アゾクメン、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスジメチルバレロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2−(t−ブチルアゾ)−2−シアノプロパン、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ系重合開始剤;白金、ロジウム、コバルト、パラジウム、ニッケルなどのVIII族遷移金属元素から選ばれた金属を含む金属錯体など。
ヒドロシリル化の反応性の点から、上記触媒のうち、塩化白金酸(HPtCl・6HO)、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−オレフィン錯体、白金ビスアセチルアセトナート、Ptメタル、RhCl(PPh、RhCl、Rh/Al、RuCl、IrCl、FeCl、AlCl、PdCl・2HO、NiCl、TiClなどが好ましく、塩化白金酸(HPtCl・6HO)、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−オレフィン錯体、白金ビスアセチルアセトナートなどの白金金属含有化合物がさらに好ましく、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−オレフィン錯体が特に好ましい。ここでいう白金−ビニルシロキサン錯体とは、白金原子に対し、配位子として分子内にビニル基を含有するシロキサン、ポリシロキサン、環状シロキサンなどが配位している化合物の総称であり、上記配位子の具体例としては、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサンなどが挙げられる。白金−オレフィン錯体のオレフィン配位子の具体例としては、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、1,11−ドデカジエン、1,5−シクロオクタジエンなどが挙げられる。上記配位子の中でも、触媒活性が高いという理由から1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサンおよび1,9−デカジエンが特に好ましい。本発明で使用するヒドロシリル化触媒は単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
ヒドロシリル化触媒の使用量は特に限定されないが、不飽和基(L2)1モルに対し、10−1から10−8モルの範囲が好ましく、10−3〜10−6モルの範囲がより好ましい。10−8モルより少ないとヒドロシリル化反応によるカップリングが十分に進行しない場合があり、10−1モルより多いと経済的に不利であり、また着色などの問題が発生する場合がある。白金−ビニルシロキサン錯体および白金−オレフィン錯体については、特公平8−9006号公報などに開示されている。
上記▲3▼のアミノ基(L3)を有するブロック共重合体(12−3)とカルボキシル基(M3)を有するブロック共重合体(13−3)の反応に関しては、アミド化合物を合成する一般的な方法の反応条件を適用することが可能であり、特に限定されない。反応効率の点で、副生する水を当該分野で通常使用される方法で除去することが好ましい。
上記▲4▼のアミノ基(L3)を有するブロック共重合体(12−3)とエポキシ基(M4)を有するブロック共重合体(13−4)との反応、および▲5▼のヒドロキシル基(L4)を有するブロック共重合体(12−4)とエポキシ基(M4)を有するブロック共重合体(13−4)との反応に関しては、エポキシ基を利用する反応に関して通常適用される反応条件を用いることが可能であり、特に限定されない。
上記カップリング反応〈I〉〜〈III〉のいずれにおいても、反応を効率よく進めるために有機溶媒を使用することができる。このような有機溶媒としては、メルカプト基、メルカプチド基、その他使用する化合物中の官能基に対して不活性な溶媒を使用可能であり、次の溶剤が挙げられるが、これらに限定されない:ヘプタン、オクタン、ミネラルスピリットなどの炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル系溶剤;トルエン、キシレン、スワゾール310(コスモ石油(株)製)、スワゾール1000(コスモ石油(株)製)、スワゾール1500(コスモ石油(株)製)などの芳香族石油系溶剤など。これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。反応温度についても特に限定されないが、反応活性の点で、0〜200℃の範囲が好ましい。
上記のようにして、本発明のブロック共重合体が製造される。上述の逐次重合法またはカップリング法を適宜採用して、A−B型ブロック共重合体、A−B−A型ブロック共重合体、B−A−B型ブロック共重合体、(A−B)型マルチブロック共重合体、星型ブロック共重合体、グラフト型ブロック共重合体など所望のタイプのブロック共重合体が得られる。
[V]熱可塑性樹脂組成物
本発明の熱可塑性樹脂樹脂組成物は、上記ブロック共重合体、熱可塑性樹脂、および必要に応じて硬化触媒、架橋剤、硬化促進剤、各種添加剤などを含有する。
上記熱可塑性樹脂としては、次の樹脂が挙げられるが、それらに限定されない:サーリン(デュポン社製)、ハイミラン(三井デュポンポリケミカル社製)などのアイオノマー樹脂;ポリアクリル酸ヒドラジド;イソブチレン−無水マレイン酸共重合体;アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体(AAS)、アクリロニトリル−EPDM−スチレン共重合体(AES)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン樹脂(ACS)、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリロニトリル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリロニトリル共重合体などのアクリロニトリル含有樹脂;カネカエンプレックス(鐘淵化学工業(株)製)などのABS−塩化ビニル系自己消化性樹脂;カネカMUH(鐘淵化学工業(株)製)などのABS系耐熱樹脂;メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS);エチレン−塩化ビニル共重合体;エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA);変性エチレン−酢酸ビニル共重合体;塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体;エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニルグラフト共重合体;エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH);塩素化ポリ塩化ビニル;塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどの塩素化オレフィン樹脂;カルボキシビニルポリマー;ケトン樹脂;ノルボルネン樹脂;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化エチレン−プロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、低融点エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニルなどのふっ素系樹脂;ポリアセタール;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、共重合ポリアミド、ポリアミドMXD6、ポリアミド46、メトキシメチル化ポリアミド、ポリアミドイミドなどのポリアミド系樹脂;ポリアリレート(PAR);ポリイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミドなどのポリイミド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのオレフィン系樹脂;ポリエチレンオキサイドなどのポリエーテル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン;ポリ塩化ビニル(PVC);ポリカーボネート(PC)などのポリカーボネート系樹脂;ポリ酢酸ビニル;ポリスチレン(PS)、ポリパラメチルスチレンなどのスチレン系樹脂;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリアミンサルホン;ポリパラビニルフェノール;ポリアリルアミン;ポリビニルアルコール(PVA);ポリビニルエーテル;ポリビニルブチラール(PVB);ポリビニルホルマール(PVF);ポリフェニレンエーテル;変性ポリフェニレンエーテル;ポリフェニレンサルファイド;ポリメチルペンテン;ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などのアクリル系樹脂;各種液晶ポリマーなど。これらは単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
これらのうち汎用性が高く、入手性、価格、および得られる樹脂組成物の成形加工性が良好である点で、次の樹脂が好ましい:オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル含有樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびポリカーボネート系樹脂。
上記組成物に含有され得る硬化触媒は、例えば、架橋性シリル基またはエポキシ基を有するブロック共重合体の場合に、成形・加工時に、あるいは成形・加工後に架橋反応を促進する目的で用いられる。このような架橋により、熱可塑性樹脂組成物の耐熱性、強度、圧縮永久歪などを向上させることができる。
架橋性シリル基を有する共重合体に対して使用する硬化触媒としては、上記ブロック共重合体を架橋性シリル基同士の反応によりカップリングさせて製造する場合に用いられる縮合触媒を用いることができる。硬化触媒の含有量などの条件も上記縮合触媒の場合と同様である。またエポキシ基を有する共重合体に対して硬化触媒を使用する場合、エポキシ樹脂に通常用いられる触媒を使用することができる。
上記組成物に含有され得る架橋剤のうち、エポキシ基を有する共重合体に対して使用する架橋剤としては、エポキシ基の反応において一般的に知られている化合物を使用可能であり特に限定されないが、例えば、次の化合物が挙げられる:〈i〉1分子中に2個以上のヒドロキシル基を有する化合物、〈ii〉1分子中に2個以上の1級アミノ基、または2級アミノ基を有する化合物、〈iii〉1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物、〈vi〉1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物の酸無水物、〈v〉1分子中にヒドロキシル基、1級アミノ基、2級アミノ基、カルボキシル基から選ばれる異なる2種以上の官能基を有する化合物など。
上記架橋剤のうち、〈i〉の1分子中に2個以上のヒドロキシル基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば以下の化合物を挙げることができる:3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、イソプレングリコール、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、グルコン酸ソーダ、グリセロールα−モノクロロヒドリン、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−ジヒドロキシアセトン、1,4−ジヒドロキシ−1,4−ブタンジスルホン酸二ナトリウム、酒石酸、酒石酸ジイソプロピル、1−チオグリセロール、チオジグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ヘキシレングリコール、ペンタエリスリトール、1,5−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリプロピレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、カテコール、1,4−ジヒドロキシアントラキノン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,5−トリメチルハイドロキノン、ハイドロキノン、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビスフェノールA、p−ヒドロキシフェネチルアルコール、4−t−ブチルカテコール、2−t−ブチルハイドロキノン、プロトカテキュ酸、フロログルシノール、没食子酸ラウリル、レゾルシン、ロイコ−1,4−ジヒドロキシアントラキノン、1,1’−ビ−2−ナフトール、コウジ酸、N−メチルジエタノールアミン、シトラジン酸など。これらは単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
上記架橋剤のうち、〈ii〉の1分子中に2個以上の1級アミノ基、または2級アミノ基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば以下の化合物を挙げることができる:ヒドラジン、1,2−ジアミノエタン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、アジピン酸ジヒドラジド、N−(2−アミノエチル)エタノールアミン、3,3’−イミノビス(プロピルアミン)、3−(メチルアミノ)プロピルアミン、N−メチル−3,3’−イミノビス(プロピルアミン)、N−エチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、N−カルボキシ−4,4’−メチレンビスシクロヘキシルアミン、カルボジヒドラジド、塩酸グアニジン、硝酸グアニジン、炭酸グアニジン、リン酸グアニジン、スルファミン酸グアニジン、塩酸アミノグアニジン、硫酸アミノグアニジン、重炭酸アミノグアニジン、グアニルチオ尿素、リン酸グアニル尿素、硫酸グアニル尿素、ジアミノマレオニトリル、ジシアンジアミド、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオクサスピロ[5.5]ウンデカン、CTUグアナミン、チオカルボヒドラジド、チオセミカルバジド、チオ尿素、ドデカン二酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、二酸化チオ尿素、1,6−ヘキサメチレンビス(N,N−ジメチルセミカルバジド)、ポリエチレンイミン、ホルムアミジン、ホルムアミジン酢酸塩、モノメチルヒドラジン、m−キシリレンジアミン、ジアニシジン、4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、1,4−ジアミノアントラキノン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,1,1’,1’−テトラメチル−4,4’−(メチレンジ−p−フェニレン)ジセミカルバジド、o−トリジン、m−トルイレンジアミン、フェニルヒドラジン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ロイコ−1,4−ジアミノアントラキノン、アミドール、パラミン、アセトアルデヒドアンモニア、アセトグアナミン、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、イソシアヌル酸、2,4−ジアミノ−6−(2−メチル−1−イミダゾリル)−エチル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2−ウンデシル−1−イミダゾリルエチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2−エチル−4−メチル−1−イミダゾリルエチル)−1,3,5−トリアジン、1,3−ジ(4−ピペリジル)プロパン、5,5−ジメチルヒダントイン、2,5−ジメチルピペラジン、シス−2,6−ジメチルピペラジン、5,5’−ビ−1H−テトラゾール、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン、ヒダントイン、ピペラジン、ベンゾグアナミン、2−メチルピペラジン、メラミン、硫酸グアナゾール、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、エポキシ樹脂と脂肪族ポリアミンの付加物など。これらは単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
上記〈iii〉の1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば以下の化合物を挙げることができる:アジピン酸、イタコン酸、イミノジ酢酸、エチレンジアミン四酢酸、グルタル酸、シトラコン酸、シュウ酸、酒石酸、ジパラトルオイル酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、セバシン酸、3,3’−チオジプロピオン酸、チオマレイン酸、ドデカン二酸、1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸、ブラシル酸、マロン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾールトリメリテート、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールトリメリテート、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールトリメリテート、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールトリメリテート、イミダゾール−4,5−ジカルボン酸、ケリダム酸、2,3−ピラジンジカルボン酸、葉酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、シスチン、クロレンド酸、およびトリメリット酸など。これらは単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
上記〈iv〉の1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物の酸無水物としては、特に限定されないが、例えば以下の化合物を挙げることができる:無水フタル酸、無水マレイン酸、無水フマル酸、無水コハク酸、メチルナジック酸無水物、メチルテトラヒドロ酸無水物など。これらは単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
上記〈v〉のヒドロキシル基、1級アミノ基、2級アミノ基、およびカルボキシル基のうち、異なる2種以上の官能基を有する化合物としては、例えば、リンゴ酸、酒石酸、各種アミノ酸などがある。上記〈i〉〜〈iv〉の化合物の他、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂、多価メルカプタン化合物などを架橋剤として使用することも可能である。
上記架橋剤のうち、エポキシ基との反応性に優れる点、および入手性の点で、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、メチルテトラヒドロ酸無水物、およびビスフェノールAが好ましい。
上記架橋剤の使用量は特に限定されないが、架橋反応が効率よく進行する点で、エポキシ基1モルに対してエポキシ基と反応する官能基が0.2〜2モルの範囲となる量が好ましく、0.5〜1.5モルの範囲となる量がより好ましく、0.8〜1.2モルの範囲となる量がさらに好ましい。
本発明の組成物に含有され得る硬化促進剤としては特に限定されず、一般的に使用されている化合物を用いることができる。例えば上記架橋剤として一分子中に2個以上のヒドロキシル基を有する化合物を用いる場合には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基性化合物を使用することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に必要に応じて含有される添加剤としては、特に限定されないが、安定剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、HALS、帯電防止剤、難燃剤、着色剤、発泡剤、滑剤、防カビ剤、老化防止剤、粘着付与剤、加工助剤、無機系充填剤などを挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、上記熱可塑性樹脂およびブロック共重合体の含有割合は、必要とされる機械特性などの物性に応じて決定すればよく、特に限定されない。成形加工性と、強度、伸びなどの物性とのバランスに優れる点で、通常、熱可塑性樹脂100重量部に対し、ブロック共重合体が1〜1000重量部、好ましくは3〜500重量部、より好ましくは5〜200重量部の割合で含有される。
上記熱可塑性樹脂組成物の各成分を混合する方法としては特に限定されない。例えば、ブロック共重合体を有機溶媒を用いて溶液とし、あるいは水系乳化液として、他の成分と混合する方法;溶融混練する方法などを挙げることができる。溶液、あるいは乳化液を用いる場合には、反応後の溶液、または乳化液を利用することができるので、配合の工程を簡略化することが可能である。例えば、ブロック共重合体を溶液重合により調製した溶液中に、熱可塑性樹脂を混合する方法、ブロック共重合体を乳化重合により調製した乳化液に、熱可塑性樹脂を分散混合させる方法などを挙げることができる。添加剤が重合に悪影響を及ぼさない場合には、重合前、あるいは重合中に添加剤を添加してもよい。工業的には設備が安価である点で、溶融混練する方法が好適である。
上記溶融混練の方法も特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂、ブロック共重合体などの各成分をタンブラー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダーなどで混合し、続いて押出機、バンバリーミキサー、ロールなどで混練する方法;あるいは二軸押出機、プラストミル、ニーダーなどで直接混練する方法などが挙げられる。コストおよび生産性の点で、二軸押出機などで連続的に溶融混練する方法が好ましい。ブロック共重合体がエポキシ基や架橋性シリル基などの架橋性基を有する場合には、溶融混練しながら架橋を行う、動的加硫を適用することも可能である。
混練温度は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂の種類や組成、ブロック共重合体の種類、熱可塑性樹脂とブロック共重合体との配合比、含有される添加剤の種類や量などに応じて適宜決定され得る。通常、室温〜300℃の範囲で調節される。特に、熱可塑性樹脂およびブロック共重合体のガラス転移温度以上、あるいは溶融温度以上の温度で溶融混練すると、短時間で混合することができるので好ましい。
実施例
以下に本発明を実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
本実施例において、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、および分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により求めた。GPC測定においてはWaters社製GPCシステムを使用し、カラムはポリスチレンゲルカラム Shodex K−806およびK−805(昭和電工(株)製)を用い、クロロホルムを溶出液とし、ポリスチレン換算で解析した。
NMR測定装置はAMX−400(ブルッカー社製)を使用した。
硫黄元素分析は、酸素フラスコ燃焼法により実施した。吸収液として過酸化水素水を使用し、イオンクロマトグラフィ(ダイオネクス社製 DX−500 GP40、ED40)により定量した。
(実施例1) (スチレン/アクリロニトリル)−アクリル酸n−ブチルジブロック共重合体の製造
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、および還流冷却管を備えた1L反応器に、単量体としてスチレン150gおよびアクリロニトリル76.5g、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.83g、チオカルボニルチオ基を有する化合物として次式で示される化合物:
Figure 2003037945
(式中、Meはメチル基、Phはフェニル基を示す)4.15g、そしてトルエン325gを入れ、系内を窒素置換した。この溶液を撹拌しながら70℃に保ち、8時間後に加熱を中止した。この反応液を室温まで冷却してからメタノール2Lに注いで沈殿物を生成させて、スチレン/アクリロニトリル共重合体を得た。この共重合体のGPC分析の結果、該重合体は、Mw=9900、Mn=8800、Mw/Mn=1.13であった。H NMR分析、および硫黄元素分析より、重合体の末端にチオカルボニルチオ基が存在することを確認した(導入率98%)。スチレン部分とアクリロニトリル部分との組成比は、重量でスチレン:アクリロニトリル=72:28であった。
こうして得られた重合体85gを、撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、および還流冷却管を備えた500mL反応器に入れ、単量体としてアクリル酸n−ブチル170g、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.26g、およびトルエン270mLを加えて溶液とした。系内を窒素置換し、70℃で13時間撹拌した。溶媒を留去した後、エタノール200mLを加えて上澄み液を除去し、不溶分を乾燥させた。このエタノール不溶分のH NMR分析より、片末端にチオカルボニルチオ基を有する(スチレン/アクリロニトリル)−アクリル酸n−ブチルジブロック共重合体が得られ、該共重合体中の各成分の組成比は、重量比でスチレン:アクリロニトリル:アクリル酸n−ブチル=28:11:61であることを確認した。この共重合体のGPC分析の結果、該重合体は、Mw=28700、Mn=22300、Mw/Mn=1.29であった。
得られた重合体を5MPaの圧力で130℃にて2分間プレス成形し、厚さ3mmのシートを作製した。このシートより5mm×10mmのテストピースを切り出し、JIS3号油に120℃で72時間浸漬した。浸漬前後における重量変化を測定して膨潤率を算出し、これを耐油性評価の基準とした。結果を表1に示す。
これとは別に、耐熱性の評価を次のようにして行った。上記得られたシートから10mm×50mmのテストピースを切り出し、オーブンで80℃にて60日間加熱した後の黄変度を評価した。評価は目視で行い、変化が認められない場合を○、黄変が認められる場合を△、褐色もしくはそれ以上の濃色に変化したことが認められる場合を×とした。
次に、耐寒性の評価を次のようにして行った。上記得られたシートから30mm×30mmのテストピースを2枚切り出し、これを重ねて25℃およびマイナス30℃における硬度(ショアA)を、JIS K6253に準拠してIRHDポケット硬さ計を用いて測定し、その差を算出した。この値が小さいほど寒冷環境における物性変化が少なく耐寒性に優れると言える。結果を表1に示す。後述の実施例2〜5、および比較例1〜3についての結果も併せて表1に示す。
(実施例2) (スチレン/アクリロニトリル)−アクリル酸n−ブチルジブロック共重合体の製造
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、および還流冷却管を備えた200mL反応器に、単量体としてスチレン30.0gおよびアクリロニトリル15.3g、チオカルボニルチオ基を有する化合物として次式で示される化合物:
Figure 2003037945
(式中、Meはメチル基、Phはフェニル基を示す)0.829g、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.166g、そして溶媒としてトルエン65.0gを仕込み、反応器内を窒素置換した。70℃で8時間撹拌した後、反応溶液をメタノール500mLに注ぎ込み、重合体を沈殿として析出させた。GPC分析の結果、該重合体は、Mw=9900、Mn=8800、Mw/Mn=1.12であった。H NMR分析より、組成比は、スチレン:アクリロニトリル=72:28(重量比)であり、末端にチオカルボニルチオ基が存在することを確認した(導入率100%)。
こうして得られたスチレン−アクリロニトリル共重合体10.0gを、チオカルボニルチオ基を有する重合体として、撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、および滴下ろうとを備えた100mL反応器に仕込み、溶媒としてトルエン32.2gを加えて溶解させた。単量体としてアクリル酸n−ブチル16.7g、および重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.05gを添加し、反応器内を窒素置換した。70℃で10時間撹拌した後、反応溶液をメタノール250mLに注ぎ込み、重合体を沈殿として析出させた。得られた重合体は、(スチレン/アクリロニトリル)−アクリル酸n−ブチルジブロック共重合体であった。GPC分析の結果、該重合体は、Mw=17400、Mn=14800、Mw/Mn=1.18であった。H NMR分析の結果、組成比は、スチレン:アクリロニトリル:アクリル酸n−ブチル=41:16:43(重量比)であることを確認した。
得られたブロック共重合体の耐油性、耐熱性(黄変度)、および耐寒性の評価を実施例1と同様の方法により行った。
(実施例3) (スチレン/アクリロニトリル)−アクリル酸n−ブチルジブロック共重合体の製造
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、および還流冷却管を備えた2L反応器に、単量体としてスチレン342.0gとアクリロニトリル58.1g、チオカルボニルチオ基を有する化合物として次式で示される化合物:
Figure 2003037945
(式中、Meはメチル基、Phはフェニル基を示す)1.88g、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.365g、および溶媒としてトルエン540gを仕込み、反応器内を窒素置換した。70℃で11時間撹拌した後、反応液をメタノール3.5Lに注ぎ込み、重合体を沈殿として析出させた。GPC分析より、該重合体は、Mw=27500、Mn=23400、Mw/Mn=1.18であり、H NMR分析より、組成比は、スチレン:アクリロニトリル=84:16(重量比)であることを確認した。H NMR分析より、末端にチオカルボニルチオ基を有することを確認した(導入率99%)。
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、および還流冷却管を備えた2L反応器に、上記重合体140.2gを仕込み、溶媒としてトルエン494gを添加して溶解した。単量体としてアクリル酸n−ブチル234.0g、および重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.247gを添加し、反応器内を窒素置換した。70℃で22時間撹拌した後、反応溶液をメタノール2.5Lに注ぎ込み、重合体を沈殿として析出させた。GPC分析より、該重合体は、Mw=58700、Mn=42100、Mw/Mn=1.40であった。H NMR分析より、末端にチオカルボニルチオ基を有する(スチレン/アクリロニトリル)−アクリル酸n−ブチルジブロック共重合体であり、スチレン:アクリロニトリル:アクリル酸n−ブチル=46:9:45(重量比)であることを確認した。
得られたブロック共重合体の耐油性、耐熱性(黄変度)、および耐寒性の評価を実施例1と同様の方法により行った。
(実施例4) (スチレン/アクリロニトリル)−アクリル酸n−ブチルジブロック共重合体の製造
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、滴下ろうと、および還流冷却管を備えた2L反応器に、蒸留水490g、および乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム0.60gを入れ、80℃で撹拌しながら反応器内を窒素置換した。単量体としてスチレン80.0gおよびアクリロニトリル20.0g、そしてチオカルボニルチオ基を有する化合物として次式で示される化合物:
Figure 2003037945
(式中、Meはメチル基、Phはフェニル基を示す)1.10gを添加し、乳化液とした。次に重合開始剤として4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)0.85gを蒸留水25gと共に添加した。80℃で4時間撹拌した時点でサンプリングし、単量体の転化率90%で重合体が生成していることを確認した。GPC分析の結果、該重合体は、Mw=25400、Mn=22000、Mw/Mn=1.16であった。H NMR分析より、組成がスチレン:アクリロニトリル=80:20(重量比)の共重合体であることを確認した。
さらに80℃で1時間撹拌した後、滴下ろうとに単量体としてアクリル酸n−ブチル60.0gを入れ、これを1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに80℃で5時間撹拌した後、室温まで冷却した。炭酸カルシウムを加えて塩析し、(スチレン/アクリロニトリル)−アクリル酸n−ブチルジブロック共重合体を得た。GPC分析の結果、該重合体は、Mw=41700、Mn=33500、Mw/Mn=1.25であった。H NMR分析の結果、組成は、スチレン:アクリロニトリル:アクリル酸n−ブチル=51:13:36(重量比)であった。
得られたブロック共重合体の耐油性、耐熱性(黄変度)、および耐寒性の評価を実施例1と同様の方法により行った。
(実施例5) (スチレン/アクリロニトリル)−アクリル酸n−ブチル−(スチレン/アクリロニトリル)トリブロック共重合体の製造
実施例4と同様に操作し、Mw=42200、Mn=34100、Mw/Mn=1.24の末端にチオカルボニルチオ基を有する(スチレン/アクリロニトリル)−アクリル酸n−ブチルジブロック共重合体を得た。各成分の組成比は、スチレン:アクリロニトリル:アクリル酸n−ブチル=50:13:37(重量比)であった。
このジブロック共重合体100gを、撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、および還流冷却管を備えた1L反応器に入れ、アセトン250mLを加えて溶解した。反応器内を窒素置換した後、処理剤としてジエチルアミン20gを添加し、50℃で20時間撹拌した。反応溶液をn−ヘキサン700mLに注いで重合体を沈殿として析出させた。H NMR分析および硫黄元素分析により、重合体末端のチオカルボニルチオ基が定量的にメルカプト基に変換されたことを確認した。
こうして得られた末端にメルカプト基を有する(スチレン/アクリロニトリル)−アクリル酸n−ブチルジブロック共重合体100重量部に対して二酸化鉛8重量部を加え、ラボプラストミルを用いて130℃で15分間混練した。得られた樹脂をオーブンに入れて80℃で10時間加熱した。GPC分析の結果、該樹脂は、Mw=85400、Mn=62200、Mw/Mn=1.37であり、上記ジブロック共重合体同士がカップリングした(スチレン/アクリロニトリル)−アクリル酸n−ブチル−(スチレン/アクリロニトリル)トリブロック共重合体であることを確認した。各成分の重量比はカップリング前と同じであった。
得られたブロック共重合体の耐油性、耐熱性(黄変度)、および耐寒性の評価を実施例1と同様の方法により行った。
(比較例1)
水添スチレン−イソプレンブロック共重合体(セプトン2007;クラレ(株)製)について、実施例1と同様の方法により耐油性、耐熱性(黄変度)、および耐寒性の評価を行った。
(比較例2)
スチレン−ブタジエンブロック共重合体(クレイトンD1118;シェルジャパン(株)製)について、実施例1と同様の方法により耐油性、耐熱性(黄変度)、および耐寒性の評価を行った。
(比較例3)
アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(Nipol1041;日本ゼオン(株)製)について、実施例1と同様の方法により耐油性、耐熱性(黄変度)、および耐寒性の評価を行った。
Figure 2003037945
表1より、本発明のブロック共重合体は、耐油性、耐熱性(黄変度)、および耐寒性のいずれについても充分なレベルであることがわかる。比較例1のスチレン系エラストマーは耐寒性に優れるが耐油性と耐熱性に劣り、比較例3のニトリルゴムは耐油性に優れるが耐寒性に劣ることが明らかである。
(実施例6) 架橋性シリル基含有(スチレン/アクリロニトリル)−アクリル酸n−ブチルジブロック共重合体の製造
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、および還流冷却管を備えた200mL反応器に、単量体としてスチレン60.0gおよびアクリロニトリル30.1g、チオカルボニルチオ基を有する化合物として次式で示される化合物:
Figure 2003037945
(式中、Meはメチル基、Phはフェニル基を示す)1.65g、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.31g、そして、溶媒としてトルエン150gを仕込み、反応器内を窒素置換した。70℃で10時間撹拌した後、反応溶液をメタノール700mLに注ぎ込み、重合体を沈殿として析出させた。GPC分析の結果、該重合体は、Mw=10000、Mn=8800、Mw/Mn=1.14であった。H NMR分析より、組成比は、スチレン:アクリロニトリル=71:29(重量比)であり、末端にチオカルボニルチオ基が存在することを確認した(導入率100%)。
こうして得られたスチレン/アクリロニトリル共重合体50.1gを、チオカルボニルチオ基を有する重合体として、撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、および滴下ろうとを備えた500mL反応器に仕込み、溶媒としてトルエン200gを加えて溶解させた。単量体としてアクリル酸n−ブチル78.3g、(3−アクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン5.2g、および重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.25gを添加し、反応器内を窒素置換した。70℃で10時間撹拌した後、反応溶液をメタノール500mLに注ぎ込み、重合体を沈殿として析出させた。得られた重合体は、(スチレン/アクリロニトリル)−(アクリル酸n−ブチル/(3−アクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン)ジブロック共重合体であった。GPC分析の結果、該重合体は、Mw=17400、Mn=14100、Mw/Mn=1.23であった。H NMR分析の結果、組成比は、スチレン:アクリロニトリル:アクリル酸n−ブチル:(3−アクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン=41:16:42:1(重量比)であることを確認した。
得られたブロック共重合体100重量部に対し、硬化触媒としてジブチルスズビスアセチルアセトナート0.5重量部を配合し、ラボプラストミルで130℃、50rpmの条件で5分間混練した後、5MPaの圧力で130℃にて2分間プレス成形することにより、厚さ3mmのシートを作製した。このシートを50℃のオーブンで24時間加熱養生させた。得られたシートよりダンベル状試験片を打ち抜き、JIS K6251に準拠して引張破断強度(TB)を25℃で測定した。
次に、シートから打ち抜いたダンベル状試験片をJIS3号油に120℃で72時間浸漬した後、TBを測定した。浸漬前のTBに対する浸漬後のTBを強度保持率とし、この強度保持率(%)を耐油性評価の基準とした。
これとは別に、JIS K6262に準拠して圧縮永久歪(70℃×22時間)を測定した。さらにJIS K6269に準拠して酸素指数(LOI)を測定し、これを難燃性評価の基準とした。これらの結果を表2に示す。後述の実施例7〜9、および比較例4〜5の結果についても併せて表2に示す。
(実施例7) 架橋性シリル基含有(スチレン/アクリロニトリル)−アクリル酸n−ブチル−(スチレン/アクリロニトリル)トリブロック共重合体の製造
実施例6の方法により、まず(スチレン/アクリロニトリル)−(アクリル酸n−ブチル/(3−アクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン)ジブロック共重合体を合成した。このジブロック共重合体はMw=19300、Mn=13300、Mw/Mn=1.45であり、各成分の組成比はスチレン:アクリロニトリル:アクリル酸n−ブチル:(3−アクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン=39:16:44:1(重量比)であった。
このジブロック共重合体100重量部をアセトン200重量部に溶解し、窒素雰囲気下で処理剤としてジエチルアミン5重量部を添加し、50℃で12時間撹拌した。反応液をサンプリングしてH NMR分析を行い、重合体末端のチオカルボニルチオ基がメルカプト基に定量的に変換されたことを確認した。
続いてこの溶液に酸化剤として二酸化鉛2重量部を添加し、50℃で10時間撹拌した。反応液をサンプリングしてGPC分析を行った。その結果、2分子のブロック共重合体同士がカップリングして、Mw=40200、Mn=23100、Mw/Mn=1.74のトリブロック共重合体が形成されていることを確認した。
得られたトリブロック共重合体を用いて実施例6と同様にシートを作製し、TB、耐油性(強度保持率)、圧縮永久歪、およびLOIについて評価を行った。
(実施例8) (メタクリル酸メチル/(3−メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン)−(スチレン/アクリロニトリル)−アクリル酸n−ブチルトリブロック共重合体の製造
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、および還流冷却管を備えた500mL反応器に、単量体としてメタクリル酸メチル10.1gおよび(3−メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン2.2g、チオカルボニルチオ基を有する化合物として次式で示される化合物:
Figure 2003037945
(式中、Meはメチル基、Phはフェニル基を示す)2.25g、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.517g、そして溶媒としてトルエン50gを仕込み、反応器内を窒素置換した。70℃で7時間撹拌した後反応溶液をサンプリングし、メタクリル酸メチルの転化率が90%、そして(3−メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシランの転化率が94%であることを確認した。
続いてこの反応器に、スチレン121.3g、アクリロニトリル58.8g、およびトルエン200gの混合溶液(窒素置換済み)を、キャヌラを用いてゆっくり滴下した。滴下には2時間かけ、その間反応溶液は70℃で撹拌した。さらに70℃で4時間、75℃で6時間撹拌した後、反応溶液をメタノール2.5Lに注いで重合体を沈殿として析出させた。得られた重合体のGPC分析とNMR分析より、Mw=26700、Mn=21700、Mw/Mn=1.23、各成分の組成比はメタクリル酸メチル:(3−メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン:スチレン:アクリロニトリル=6:1:63:30(重量比)であることを確認した。またこの重合体は末端にチオカルボニルチオ基を有していた。
こうして得られた重合体のうち110gを、撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、滴下ろうと、および還流冷却管を備えた500mL反応器に入れ、アセトン20gとトルエン130gとの混合溶媒に溶解させた。単量体としてアクリル酸n−ブチル40.5g、および重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.222gを添加し、反応器内を窒素置換した後70℃で2時間撹拌した。次に滴下ろうとから単量体としてアクリル酸n−ブチル219.6gを2時間かけて滴下した。反応溶液をさらに70℃で3時間、75℃で8時間撹拌した後、メタノール2Lに注いで重合体を沈殿させた。得られた重合体のGPC分析より、Mw=77600、Mn=48700、Mw/Mn=1.59であることを確認し、NMR分析より、各成分の組成比はメタクリル酸メチル:(3−メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン:スチレン:アクリロニトリル:アクリル酸n−ブチル=2.5:0.4:26.7:12.8:57.6(重量比)であることを確認した。
得られたトリブロック共重合体を用いて実施例6と同様にシートを作製し、TB、耐油性(強度保持率)、圧縮永久歪、およびLOIについて評価を行った。
(実施例9) (メタクリル酸メチル/(3−メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン)−(スチレン/アクリロニトリル)−アクリル酸n−ブチル−(スチレン/アクリロニトリル)−(メタクリル酸メチル/(3−メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン)ペンタブロック共重合体の製造
実施例8の方法により、(メタクリル酸メチル/(3−メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン)−(スチレン/アクリロニトリル)−アクリル酸n−ブチルトリブロック共重合体をまず製造した。この重合体はMw=68500、Mn=45900、Mw/Mn=1.49であり、各成分の組成比はメタクリル酸メチル:(3−メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン:スチレン:アクリロニトリル:アクリル酸n−ブチル=3.0:0.6:31.2:13.3:51.9(重量比)であった。撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、および還流冷却管を備えた500mL反応器に、この重合体140gを入れ、溶媒としてアセトン300g、および処理剤としてジエチルアミン22.2gを加えて窒素雰囲気で50℃で20時間撹拌した。サンプリングして得られた重合体のNMR分析と硫黄含有量元素分析より、重合体末端のチオカルボニルチオ基がメルカプト基に変換されていることを確認した。
続いてこの溶液を60℃で5時間攪拌して過剰のジエチルアミンを留去した後、酸化剤として過酸化カルシウム5gを粉末で加え、窒素ガス導入管から空気を吹き込みながら50℃で5時間撹拌した。反応混合物をろ過した後、ろ液をメタノール2.5Lに注いで重合体を沈殿として析出させた。該重合体のGPC分析より、2分子のブロック共重合体同士がカップリングして、Mw=135500、Mn=76400、Mw/Mn=1.77のブロック共重合体が形成されていることを確認した。各成分の組成比はカップリング前と同一であった。
得られたブロック共重合体を用いて実施例6と同様にシートを作製し、TB、耐油性(強度保持率)、圧縮永久歪、およびLOIを評価した。結果を表2に示す。
(比較例4)
水添スチレン−イソプレンブロック共重合体(セプトン2007(クラレ(株)製))について、実施例6と同様にTB、耐油性、圧縮永久歪、およびLOIの評価を行った。
(比較例5)
スチレン−ブタジエンブロック共重合体(クレイトンD1118(シェルジャパン(株)製)について、実施例6と同様にTB、耐油性、圧縮永久歪、およびLOIの評価を行った。
Figure 2003037945
表2より、本発明のブロック共重合体は、強度、圧縮永久歪、耐油性、および難燃性に優れることがわかる。
(実施例10) (スチレン/アクリロニトリル)−メタクリル酸メチルジブロック共重合体の製造
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、および還流冷却管を備えた100mL反応器に、単量体としてメタクリル酸メチル48.2g、チオカルボニルチオ基を有する化合物として次式で示される化合物:
Figure 2003037945
(式中、Meはメチル基、Phはフェニル基を示す)0.418g、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.127g、そして、溶媒としてトルエン50.0gを仕込み、反応器内を窒素置換した。70℃で11時間撹拌した後、反応溶液をメタノール500mLに注いで重合体を沈殿として析出させた。GPC分析により、該重合体は、Mw=28900、Mn=24600、Mw/Mn=1.17のポリ(メタクリル酸メチル)であることを確認し、H NMR分析により末端にチオカルボニルチオ基を有することを確認した。
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、および還流冷却管を備えた200mL反応器に、単量体としてスチレン10.1g、アクリロニトリル5.1g、チオカルボニルチオ基を有する重合体として上記ポリ(メタクリル酸メチル)10.0g、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.041g、および溶媒としてトルエン50.1gを入れ、室温で溶解させた。反応器内を窒素置換し、75℃で8.5時間撹拌した後、反応溶液をメタノール400mLに注いで重合体を沈殿として析出させた。得られた重合体は末端にチオカルボニルチオ基を有し、Mw=49200、Mn=29700、Mw/Mn=1.66であった。H NMR分析の結果、各成分の組成比はメタクリル酸メチル:スチレン:アクリロニトリル=53:35:12であった。
上記重合体の、塩化ビニル樹脂の成形性改良剤としての特性評価を行うため、以下のようにゲル化時間の測定を行った。塩化ビニル樹脂S1007(鐘淵化学工業(株)製)100重量部、安定剤としてジ−n−オクチル錫−S,S’−ビス(イソオクチルメルカプトアセテート)1重量部、滑剤としてポリエチレンワックス1重量部、および上記ブロック共重合体5重量部を配合し、この配合物56gをラボプラストミル(60ml)を用いて140℃、30rpmの条件で混練した。トルクをモニターし、混練開始からトルクがピーク値を示すまでの時間を測定し、これをゲル化時間とした。ゲル化時間を表3に示す。ゲル化時間が短いほど成形性に優れる。後述の実施例11〜13、および比較例6〜7の結果も併せて表3に示す。
(実施例11) (スチレン/アクリロニトリル)−メタクリル酸メチルジブロック共重合体の製造
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、および還流冷却管を備えた500mL反応器に、単量体としてメタクリル酸メチル150.6g、チオカルボニルチオ基を有する化合物として次式で示される化合物:
Figure 2003037945
(式中、Meはメチル基、Phはフェニル基を示す)1.217g、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.313g、および溶媒としてトルエン150.2gを仕込み、反応器内を窒素置換した。70℃で14時間撹拌した後、反応溶液をメタノール2.2Lに注いで重合体を沈殿として析出させた。GPC分析により、該重合体は、Mw=32700、Mn=26400、Mw/Mn=1.24のポリ(メタクリル酸メチル)であることを確認し、H NMR分析により末端にチオカルボニルチオ基を有することを確認した。
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、および還流冷却管を備えた500mL反応器に、単量体としてスチレン51.3g、アクリロニトリル51.9g、チオカルボニルチオ基を有する重合体として上記ポリ(メタクリル酸メチル)75.6g、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.26g、および溶媒としてトルエン227.2gを入れ、室温で溶解させた。反応器内を窒素置換し、70℃で13時間撹拌した後、反応溶液をメタノール2.5Lに注いで重合体を沈殿として析出させた。得られた重合体は末端にチオカルボニルチオ基を有し、Mw=68800、Mn=44700、Mw/Mn=1.54であった。H NMR分析の結果、各成分の組成比はメタクリル酸メチル:スチレン:アクリロニトリル=60:29:11であった。
実施例10と同様に、塩化ビニル樹脂のゲル化時間を測定し、成形性を評価した。
(実施例12) エポキシ基含有メタクリル酸メチル−(スチレン/アクリロニトリル)ジブロック共重合体の製造
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、滴下ろうと、および還流冷却管を備えた300mL反応器に、単量体としてメタクリル酸メチル50.5gおよびメタクリル酸グリシジル10.4g、チオカルボニルチオ基を有する化合物として次式で示される化合物:
Figure 2003037945
(式中、Meはメチル基、Phはフェニル基を示す)0.985g、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.207g、そして溶媒としてトルエン150gを仕込み、反応器内を窒素置換した。70℃で10時間撹拌した後サンプリングし、Mw=19300、Mn=15900、Mw/Mn=1.22、メタクリル酸メチル:メタクリル酸グリシジル=81:19(重量比)の重合体の生成を確認した。
続いて滴下ろうとから単量体としてスチレン73.2gおよびアクリロニトリル65.4gの混合液(窒素置換済み)を滴下した。滴下は2時間30分かけて行い、その間反応溶液は70℃で撹拌した。滴下終了後さらに75℃で6時間撹拌を続けた後、反応溶液をヘキサン1Lに注いで重合体を沈殿として析出させた。得られた(メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル)−(スチレン/アクリロニトリル)ジブロック共重合体は、Mw=43300、Mn=29400、Mw/Mn=1.47であり、その組成は、メタクリル酸メチル:メタクリル酸グリシジル:スチレン:アクリロニトリル=44:10:31:15(重量比)であることを確認した。
実施例10と同様に、塩化ビニル樹脂のゲル化時間を測定し、成形性を評価した。
(実施例13) (スチレン/アクリロニトリル)−メタクリル酸メチル−(スチレン/アクリロニトリル)トリブロック共重合体の製造
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、滴下ろうと、および還流冷却管を備えた2L反応器に、蒸留水500g、および乳化剤としてビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム0.4gを入れ、80℃で撹拌しながら反応器内を窒素置換した。単量体としてメタクリル酸メチルを用い、このメタクリル酸メチル100.5gに、チオカルボニルチオ基を有する化合物として次式で示される化合物:
Figure 2003037945
(式中、Meはメチル基を示し、Phはフェニル基を示す)3.12gを溶解させた溶液を、滴下ろうとからゆっくり滴下した。得られた乳化液に重合開始剤として4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)(純度75%)0.824gを添加し、80℃で4時間撹拌した。サンプリングによりMw=17400、Mn=14700、Mw/Mn=1.18のポリメタクリル酸メチルの生成を確認した。
続いて滴下ろうとから、単量体としてスチレン85.5gおよびアクリロニトリル31.3gの混合液をゆっくり滴下した。滴下には2時間かけ、その間反応液は80℃で撹拌した。滴下終了後、反応液を85℃で5時間撹拌し、得られた乳化液に炭酸カルシウムを加えて塩析することにより重合体を単離した。得られた重合体はMw=44500、Mn=30100、Mw/Mn=1.48であり、スチレン:アクリロニトリル:メタクリル酸メチル=37:10:53(重量比)の、(スチレン/アクリロニトリル)−メタクリル酸メチル−(スチレン/アクリロニトリル)トリブロック共重合体であることを確認した。
実施例10と同様に、塩化ビニル樹脂のゲル化時間を測定し、成形性を評価した。
(比較例6)
塩化ビニル樹脂S1007(鐘淵化学工業(株)製)100重量部、安定剤としてジ−n−オクチル錫−S,S’−ビス(イソオクチルメルカプトアセテート)1重量部、滑剤としてポリエチレンワックス1重量部、および加工助剤としてPA−20(鐘淵化学工業(株)製)5重量部を配合し、この配合物56gをラボプラストミル(60ml)を用いて140℃、30rpmの条件で混練した。トルクをモニターし、混練開始からトルクがピーク値を示すまでの時間を測定し、これをゲル化時間とした。
(比較例7)
比較例6において、加工助剤を使用せずに同様の実験を実施した。30分以上混練を続けてもゲル化が認められなかった。
Figure 2003037945
表3より、本発明のブロック共重合体を塩化ビニル樹脂の成形性改良剤として使用した場合、ゲル化時間が短縮され、成形性に優れることがわかる。
(実施例14)
熱可塑性樹脂としてポリカーボネート樹脂(レキサン141R−111;日本ジーイープラスチックス(株)製)95重量部、フェノール系酸化防止剤としてトパノールCA((株)リプレ製)0.3重量部、HALSとしてアデカスタブPEP−36(旭電化工業(株)製)0.3重量部、および実施例1で得られたブロック共重合体5重量部を配合し、ベント付二軸押出機(32mm、L/D=25.5)を用いて設定温度280℃で混練押出し、ペレット化した。得られたペレットを80℃で15時間乾燥後、設定温度280℃、金型温度60℃で射出成形し、JIS K7110に準拠したアイゾット衝撃強度試験評価用の成形体(厚さ1/4インチ)を作製した。ペレットの280℃における溶融粘度、成形体の0℃におけるアイゾット衝撃強度、および目視による成形体の透明度評価を行った。結果を表4に示す。透明度評価においては、成形体が透明である場合を○、半透明である場合を△、不透明である場合を×とした。後述の実施例15〜20および比較例8〜10の結果も併せて表4に示す。
(実施例15〜20)
実施例1のブロック共重合体の代わりに実施例2〜7で得られたブロック共重合体をそれぞれ使用し、実施例14と同様に操作し、評価を行った。
(比較例8)
実施例1のブロック共重合体の代わりに、スチレン−アクリロニトリル共重合体(エスチレンAS−30;東洋スチレン(株)製)を用いて、実施例14と同様の評価を行った。
(比較例9)
実施例1のブロック共重合体の代わりに、加工助剤としてPA−20(鐘淵化学工業(株)製)を用いて、実施例14と同様の評価を行った。
(比較例10)
実施例1のブロック体を配合しなかったこと以外は、実施例14と同様に操作し、評価を行った。
Figure 2003037945
表4より、本発明のブロック共重合体を熱可塑性樹脂に配合することにより、成形性を改良でき、透明性を保ったまま耐衝撃性を向上させることができることがわかる。
(実施例21)
ポリエステル樹脂に対する改良剤としての性能評価のため、以下の実験を実施した。ポリエチレンテレフタレート樹脂(PBK2;鐘紡合繊(株)製)100重量部に、実施例12のエポキシ基含有ブロック共重合体10重量部を配合し、ラボプラストミルで280℃、30rpmの条件で溶融混練した。混練開始3分後にトルク値を測定し、水2重量部を添加し、さらに3分間混練後にトルク値の測定を行った。水添加前のトルク値に対する、水添加3分後のトルク値の比を算出し、これをトルク維持率とした。トルク維持率は89%であり、ブロック共重合体を含有することによりポリエチレンテレフタレート樹脂の加水分解が抑制されていることがわかる。
(比較例11)
実施例21において、実施例12のブロック共重合体を配合せずに、ポリエチレンテレフタレート樹脂単独で同様の評価を行った。トルク維持率は61%であった。これは、水によりポリエチレンテレフタレート樹脂の加水分解が起こっているためと考えられる。
産業上の利用可能性
本発明によれば、このように、アクリロニトリル/スチレン系のブロックを有するブロック共重合体が得られる。この共重合体は、アクリロニトリルに起因する耐油性および難燃性の性質を有し、さらに耐寒性が良好であり、成形性に優れる。
従来、原子移動ラジカル重合法によりアクリロニトリルを含有するブロック共重合体を製造しようとした場合には、触媒の金属錯体にアクリロニトリルが配位して失活するためブロック共重合体の合成が困難であった。しかし、本発明により、チオカルボニル基を有する化合物の存在下における重合により、アクリロニトリル系のブロック共重合体が容易に製造され、得られた共重合体は分子量分布も比較的均一である。
ブロック共重合体中の重合体ブロック(A)と(B)の組成比を調節することにより、あるいは該ブロック共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物において、熱可塑性樹脂とブロック共重合体との配合比を調節することにより種々の性質の樹脂あるいは樹脂組成物を得ることが可能である。つまり、硬質樹脂から軟質エラストマーまで、幅広い物性が実現可能である。
本発明のブロック共重合体は他の樹脂との相溶性が良好である。例えば、スチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミドなどとの相溶性が良好である。特に、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミドなどの極性樹脂を含む組成物においては相溶性が良好であり、これらの樹脂の改質剤として利用される。該ブロック共重合体およびこれらの樹脂を含有する組成物は、良好な相溶性に起因して優れた透明性を有する。透明性についてはまた、ブロック共重合体の構造、分子量、重合体ブロック(A)および(B)の組成比などを変更することにより、調節することも可能である。このように、本発明ブロック共重合体および熱可塑性樹脂組成物においては、上記種々のファクターを調節することにより、所望の耐候性、耐熱性、耐衝撃性、強度、圧縮永久歪などを有する共重合体あるいは組成物を得ることが可能である。
上記特徴を活かし、本発明のブロック共重合体あるいは熱可塑性樹脂組成物は、各種成形体、被覆材、粘着剤、接着剤、ホットメルト接着剤、相容化剤、塗料、塗料添加剤、樹脂改質剤、ゴム改質剤、シール材、制振材料、塗料、ポッティング材、シーリング材、電線被覆材料、壁材、床材、代替ガラスなどの用途に使用可能である。本発明の熱可塑性樹脂組成物の成形方法としては、通常用いられる種々の方法を適用可能であり、例えば、押出し成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、真空成形、射出成形などが挙げられ、目的に応じて適宜成形される。本発明の組成物により得られる成形体は特に限定されず、次に示すような成形体が挙げられる:フィルム、シート、テープ、ホース、チューブ、ガスケット、パッキン、グリップ、容器、、繊維、パイプ、継手、平板、波板、柱、玩具、靴底、スポーツ用品、窓枠、ドア、容器、自動車部品、電気機器筐体、レンズ、光学部品、電子回路基板、電子部品、ボトル、ボトルキャップなど。

Claims (8)

  1. 重合体ブロック(A)および(B)を含有するブロック共重合体であって、
    該重合体ブロック(A)が、単量体(a)を重合させることにより形成された重合体ブロックであり、該重合体ブロック(B)が、単量体(b)を重合させることにより形成された重合体ブロックであり、
    該単量体(a)が、アクリロニトリル10重量%以上50重量%未満、およびスチレン系単量体50重量%以上90重量%未満の組合せであり、
    該単量体(b)が、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、ブタジエン、およびイソプレンよりなる群から選択される少なくとも1種の単量体であり;
    該単量体(a)および単量体(b)の重合が、一般式(1)で示される化合物:
    Figure 2003037945
    (式中、Rは炭素数1以上のp価の有機基であり;Zは水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1以上の1価の有機基であり;pは1以上の整数であり;pが2以上の場合、Zは互いに同一でもよく、異なっていてもよい)、および一般式(2)で示される化合物:
    Figure 2003037945
    (式中、Rは炭素数1以上の1価の有機基であり;Zは酸素原子(q=2の場合)、硫黄原子(q=2の場合)、窒素原子(q=3の場合)、または炭素数1以上のq価の有機基であり;qは2以上の整数であり、Rは互いに同一でもよく、異なっていてもよい)よりなる群から選択される少なくとも1種のチオカルボニルチオ基を有する化合物の存在下に、該単量体を可逆的付加脱離連鎖移動重合することにより行われる、
    ブロック共重合体。
  2. 前記チオカルボニルチオ基を有する化合物が、以下の一般式(3)で示される化合物である、請求項1に記載のブロック共重合体:
    Figure 2003037945
    (式中、Arは1価の芳香族基であり;Rは水素原子、または炭素数1以上の1価の有機基であり;ArおよびRはそれぞれ互いに同一でもよく、異なっていてもよい)。
  3. 以下の工程を包含するプロセスにより製造される、請求項1または2のいずれかに記載のブロック共重合体:
    前記チオカルボニルチオ基を有する化合物の存在下で、単量体(a)および(b)のうちの一方を、可逆的付加脱離連鎖移動重合させて、該単量体(a)に由来する重合体(a)または該単量体(b)に由来する重合体(b)を形成する工程;
    該重合体(a)または(b)の存在下に、他方の単量体(b)または(a)を可逆的付加脱離連鎖移動重合させて、単量体(a)に由来する重合体ブロック(A)および単量体(b)に由来する重合体ブロック(B)を含み、かつチオカルボニルチオ基を有するブロック共重合体を得る工程;
    該チオカルボニルチオ基を有するブロック共重合体中のチオカルボニルチオ基を、メルカプト基またはメルカプチド基に変換する工程;および
    該メルカプト基またはメルカププチド基を有するブロック共重合体同士を、該メルカプト基またはメルカプチド基の反応を利用してカップリングする工程。
  4. ゲルパーミエーシヨンクロマトグラフィー分析により求めた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表される分子量分布が、1.8以下である、請求項1から3のいずれかに記載のブロック共重合体。
  5. 前記単量体(a)および単量体(b)のうちの少なくとも一方が、架橋性シリル基含有単量体またはエポキシ基含有単量体を含有する、請求項1から4のいずれかに記載のブロック共重合体。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載のブロック共重合体および熱可塑性樹脂を含有する、熱可塑性樹脂組成物。
  7. 前記熱可塑性樹脂が、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル含有樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびポリカーボネート系樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項6に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  8. 前記熱可塑性樹脂100重量部に対し、前記ブロック共重合体を1〜1000重量部の割合で含有する、請求項6または7に記載の熱可塑性樹脂組成物。
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