JP4046552B2 - 架橋性シリル基含有重合体の製造方法、および硬化性組成物 - Google Patents

架橋性シリル基含有重合体の製造方法、および硬化性組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は架橋性シリル基含有重合体の製造方法、および硬化性組成物に関する。詳しくは、分子末端に架橋性シリル基を有するビニル系重合体の製造方法、および該重合体を含有する硬化性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
分子末端に架橋性シリル基を有する重合体は、硬化性組成物として、シーリング剤、接着剤、粘着剤、塗料、ポッティング剤などに利用されている。このような分子末端に架橋性シリル基を有する重合体としては、従来、ポリシロキサン系、ポリオキシプロピレン系、およびポリイソブチレン系の重合体が知られている。しかし、これらを用いた硬化性組成物は多くの問題点を有している。例えば、ポリシロキサン系重合体は、耐候性、耐熱性、耐寒性などに優れるが、耐油性、低汚染性、および塗装性、ガスバリア性に問題がある。ポリオキシプロピレン系重合体は、低汚染性、および塗装性には問題はないが、耐候性が不十分である。ポリイソブチレン系は、耐候性、低透湿性、およびガスバリア性に優れるが、粘度が高いため扱いにくく、また湿分硬化(水分による硬化)に時間がかかるなどの問題がある。
【0003】
耐熱性、耐候性、耐油性、低汚染性などに優れ、かつ取り扱いが容易な湿分硬化性組成物としては、末端に架橋性シリル基を有するアクリル系重合体を主成分とする硬化性組成物が提案されている。
【0004】
この組成物に含有されるアクリル系重合体の製造方法として、例えば、特公平3−14068号公報および特公平5−72427号公報には、架橋性シリル基を有するメルカプタン系連鎖移動剤、架橋性シリル基を有するジスルフィド系連鎖移動剤、または架橋性シリル基を有するアゾ系重合開始剤を使用して、アクリル系単量体をラジカル重合する方法が開示されている。しかしこれらの製造方法においては、重合体の末端に架橋性シリル基を確実に導入することが困難であり、満足な物性を有する硬化物を得ることはできなかった。また、架橋性シリル基が加水分解されるため、乳化重合や懸濁重合などの水系重合を行うことができず、溶液重合を行う場合においても水分管理を厳密に行う必要があるため、製造工程が煩雑となるという問題があった。
【0005】
特公平4−55444号公報には、架橋性シリル基を有するヒドロシラン類、または架橋性シリル基を有するテトラハロシラン類を連鎖移動剤として用いる方法が記載されている。しかし、この方法においても、重合体の末端に架橋性シリル基を高い収率で導入することが困難であり、満足な物性を有する硬化物を得ることはできなかった。さらに、上記と同様に、架橋性シリル基が加水分解されるため、乳化重合や懸濁重合などの水系重合を行うことができず、溶液重合を行う場合においても水分管理を厳密に行う必要があるため、製造工程が煩雑となるという問題があった。
【0006】
特開平6−211922号公報には、ヒドロキシル基含有ポリスルフィド系連鎖移動剤を、開始剤に対して大過剰に用いることにより、末端にヒドロキシル基を有するアクリル系重合体を製造し、該ヒドロキシル基を架橋性シリル基に変換する方法が開示されている。しかしこの方法においては、連鎖移動剤を大量に使用する必要があり、経済的ではなかった。
【0007】
これらの問題を解決するために、金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合法により、末端に架橋性シリル基を有するビニル系重合体を製造する方法が、特開平11−80571号公報に記載されている。しかしこの原子移動ラジカル重合法においては、金属錯体を触媒として使用するため、重合後に精製する必要があり、工程が煩雑となり生産性が低下するという問題があった。この方法においてもまた、乳化重合や懸濁重合などの水系重合の手法を適用することは困難であった。
【0008】
一方、ビニル系共重合体の製造に関しては、分子量および分子量分布を制御でき、広範囲のモノマー、および水系重合も含めた広範囲の重合方法が使用できるという点で可逆的付加脱離連鎖移動(Reversible Addition−Fragmentation Chain Transfer)重合法が優れており、例えば、WO98/01478号公報、WO99/05099号公報、WO99/31144号公報、Macromolecules,1998年,31巻,5559ページ、Macromolecules,1999年,32巻,2071ページ、Macromolecules,1999年,32巻,6977ページ、およびMacromolecules,2000年,33巻,243ページなどに、反応機構も含めその詳細が記載されている。しかしながら架橋性シリル基を導入する方法に関してはこれまで検討されておらず、また硬化性組成物に関しても検討がなされていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされ、その目的とするところは、水系重合の手法も適用可能であり、ほとんど精製する必要がなく、耐油性、耐熱性、耐候性、低汚染性、および圧縮永久歪特性に優れた架橋性シリル基含有重合体を製造する方法を提供することにある。本発明の他の目的は、上記方法により得られる架橋性シリル基含有重合体を含有し、取り扱いが容易な硬化性組成物を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明者らは検討を重ね、上記可逆的付加脱離連鎖移動重合法を応用することにより本発明を完成した。本発明は、以下に示す架橋性シリル基含有重合体の製造方法、該重合体を含有する硬化性組成物を包含する。
【0011】
本発明は、一般式(1)
【0012】
【化4】
Figure 0004046552
(式中、R1は炭素数1以上のp価の有機基であり、該p価の有機基は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、ケイ素原子、リン原子、および金属原子のうちの少なくともひとつを含んでいてもよく、高分子量体であってもよく;Z1は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1以上の1価の有機基であり、該1価の有機基は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、ケイ素原子、およびリン原子のうちの少なくともひとつを含んでいてもよく、高分子量体であってもよく;Z1が複数個存在する場合、それらは互いに同一でもよく、異なっていてもよく;pは1以上の整数である)で示される化合物、および一般式(2)
【0013】
【化5】
Figure 0004046552
(式中、R2は炭素数1以上の1価の有機基であり、該1価の有機基は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、ケイ素原子、リン原子、および金属原子のうちの少なくともひとつを含んでいてもよく、高分子量体であってもよく;Z2は酸素原子(q=2の場合)、硫黄原子(q=2の場合)、窒素原子(q=3の場合)、または炭素数1以上のq価の有機基であり、該q価の有機基は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、ケイ素原子、およびリン原子のうちの少なくともひとつを含んでいてもよく、高分子量体であってもよく;R2は互いに同一でもよく、異なっていてもよく;qは2以上の整数である)で示される化合物から選ばれる、少なくとも1種のチオカルボニルチオ基を有する化合物の存在下で、ラジカル重合可能なビニル系単量体をラジカル重合することにより、チオカルボニルチオ基を有する重合体を得る工程;
得られた重合体のチオカルボニルチオ基をメルカプト基に変換する工程;および
該メルカプト基を介して、該重合体を一分子中に架橋性シリル基とイソシアナト基とを有する化合物とカップリングさせる工程;を包含する、架橋性シリル基含有重合体の製造方法を提供する。
【0014】
好適な実施態様では、上記チオカルボニルチオ基を有する化合物は、一般式(3)で示される:
【0015】
【化6】
Figure 0004046552
(式中、R3は2価の有機基であり、該2価の有機基は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、ケイ素原子、リン原子、および金属原子のうちの少なくともひとつを含んでいてもよく、高分子量体であってもよく;Z3は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1以上の1価の有機基であり、該1価の有機基は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、ケイ素原子、およびリン原子のうちの少なくともひとつを含んでいてもよく、高分子量体であってもよく;Z3は互いに同一でもよく、異なっていてもよい)で示される化合物。
【0016】
好適な実施態様では、上記ビニル系単量体は、スチレン、α−メチルスチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリルアミド、アクリルアミド、メタクリロニトリル、アクリロニトリル、酢酸ビニル、無水マレイン酸、およびマレイミド化合物から選択される少なくとも1種の化合物である。
【0017】
好適な実施態様では、上記ビニル系単量体は、メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルから選択される少なくとも1種の化合物である。
【0018】
好適な実施態様では、上記チオカルボニルチオ基を有する重合体を、塩基、酸、および水素‐窒素結合含有化合物から選択される、少なくとも1種の化合物でなる処理剤と反応させることにより、該重合体のチオカルボニルチオ基が、メルカプト基に変換される。
【0019】
好適な実施態様では、上記処理剤は、アンモニア、沸点が100℃以下の1級アミン化合物、および沸点100℃以下の2級アミン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である。
【0020】
好適な実施態様では、上記一分子中に架橋性シリル基とイソシアナト基とを有する化合物は、一般式(4)で示される:
OCN−(CH2n−Si(R43-a(X)a (4)
(式中、R4はアルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、置換アラルキル基、またはトリオルガノシロキシ基を示し;Xはヒドロキシル基または加水分解性基を示し;nは3以上の整数であり;aは1、2、または3であり;aが1の場合、2個のR4は同一でもよく、異なっていてもよく;aが2または3の場合、該2または3個のXは同一でもよく、異なっていてもよい)。
【0021】
好適な実施態様では、上記一分子中に架橋性シリル基とイソシアナト基とを有する化合物は、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、およびγ−イソシアナトプロピルジエトキシメチルシランから選択される少なくとも1種の化合物である。
【0022】
好適な実施態様では、上記カップリングが、ウレタン化触媒を使用して行われる。
【0023】
好適な実施態様では、上記カップリングは、硫黄原子を有するスズ系ウレタン化触媒を使用して行われる。
【0024】
本発明はまた、上記のいずれかの製造方法によって得られる、架橋性シリル基含有重合体を提供する。
【0025】
本発明はさらに、上記の架橋性シリル基含有重合体を含有する、硬化性組成物を提供する。
【0026】
好適な実施態様では、上記硬化性組成物は、縮合触媒を含有する。
【0027】
【発明の実施の形態】
[架橋性シリル基含有重合体の製造の概要]
本発明においては、まずチオカルボニルチオ基を有する特定構造の化合物の存在下で、ラジカル重合可能なビニル系単量体をラジカル重合し、チオカルボニルチオ基を有する重合体を調製する。次に、得られた重合体のチオカルボニルチオ基をメルカプト基に変換し、該メルカプト基を利用して、該重合体と一分子中に架橋性シリル基とイソシアナト基とを有する化合物とをカップリングすることによって、架橋性シリル基含有重合体が製造される。
【0028】
本発明においては、一般式(1)または(2)で示されるチオカルボニルチオ基を有する化合物を連鎖移動剤として、可逆的付加脱離連鎖移動重合法により重合体が調製される。その反応スキームを以下のスキームaおよびbにそれぞれ示す。
【0029】
【化7】
Figure 0004046552
【0030】
【化8】
Figure 0004046552
まず、スキームaにおいては、チオカルボニルチオ基を有する化合物(1)の存在下で、ビニル系単量体(上記スキームにおいてAで示す)のラジカル重合を行なうことにより、チオカルボニルチオ基を有するビニル系重合体(5)が生成する(上記スキームにおいて、mは結合した単量体の数を示す)。次いで、このビニル系重合体(5)を、塩基、酸、および水素‐窒素結合含有化合物から選択される少なくとも1種の化合物でなる処理剤と反応させることにより、該共重合体のチオカルボニルチオ基が、メルカプト基に変換される。このようにしてメルカプト基を有するビニル系重合体(6)が得られる。
【0031】
次にこのメルカプト基を介して、一分子中に架橋性シリル基とイソシアナト基とを有する化合物(4)とのカップリングが行なわれる。該カップリングにより、ビニル系重合体に架橋性シリル基が導入され、架橋性シリル基含有ビニル系重合体(7)が得られる。p=2以上の場合は、架橋性シリル基を2以上有する重合体となる。
【0032】
スキームbにおいては、スキームaの場合と同様に、チオカルボニルチオ基を有する化合物(2)の存在下で、ビニル系単量体(上記スキームにおいてAで示す)のラジカル重合を行うことにより、チオカルボニルチオ基を有するビニル系重合体(8)が生成する(上記スキームにおいて、mは結合した単量体の数を示す)。さらに、処理剤と反応させることにより、メルカプト基を有するビニル系重合体(9)が得られる。次に、一分子中に架橋性シリル基とイソシアナト基とを有する化合物(4)とのカップリングによって、ビニル系重合体に架橋性シリル基が導入され、架橋性シリル基含有ビニル系重合体(10)が得られる。
【0033】
[チオカルボニルチオ基を有する化合物]
本発明で使用されるチオカルボニルチオ基を有する化合物は、一般式(1)
【0034】
【化9】
Figure 0004046552
(式中、R1は炭素数1以上のp価の有機基であり、該p価の有機基は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、ケイ素原子、リン原子、および金属原子のうちの少なくともひとつを含んでいてもよく、高分子量体であってもよく;Z1は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1以上の1価の有機基であり、該1価の有機基は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、ケイ素原子、およびリン原子のうちの少なくともひとつを含んでいてもよく、高分子量体であってもよく;Z1が複数個存在する場合、それらは互いに同一でもよく、異なっていてもよく;pは1以上の整数である)で示される化合物、および一般式(2)
【0035】
【化10】
Figure 0004046552
(式中、R2は炭素数1以上の1価の有機基であり、該1価の有機基は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、ケイ素原子、リン原子、および金属原子のうちの少なくともひとつを含んでいてもよく、高分子量体であってもよく;Z2は酸素原子(q=2の場合)、硫黄原子(q=2の場合)、窒素原子(q=3の場合)、または炭素数1以上のq価の有機基であり、該q価の有機基は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、ケイ素原子、およびリン原子のうちの少なくともひとつを含んでいてもよく、高分子量体であってもよく;R2は互いに同一でもよく、異なっていてもよく;qは2以上の整数である)で示される化合物から選択される少なくとも1種の化合物である。
【0036】
上記チオカルボニルチオ基を有する化合物(1)の構造において、R1は、特に限定されない。化合物の入手性の点で、好ましくは、R1の炭素数は、1〜20であり、そしてpは6以下である。R1の例としては、アルキル基、置換アルキル基、アラルキル基、置換アラルキル基、2価以上の脂肪族炭化水素基、2価以上の芳香族炭化水素基、芳香環を有する2価以上の脂肪族炭化水素基、脂肪族基を有する2価以上の芳香族炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価以上の脂肪族炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価以上の芳香族置換炭化水素基などがある。化合物の重合活性および入手性の点で、R1としては次の基が好ましい:ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−(2−フェニル)プロピル基、1−アセトキシエチル基、1−(4−メトキシフェニル)エチル基、エトキシカルボニルメチル基、2−(2−エトキシカルボニル)プロピル基、2−(2−シアノ)プロピル基、t−ブチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、2−〔2−(p−クロロフェニル)〕プロピル基、ビニルベンジル基、t−ブチルスルフィド基、2−カルボキシルエチル基、カルボキシルメチル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−(2−シアノ)ブチル基、または次式で示される有機基:
【0037】
【化11】
Figure 0004046552
(式中、rは0以上の整数を示し、sは1以上の整数を示す)。上記式中のrおよびsは、化合物の入手性の点で、好ましくは500以下である。
【0038】
さらにR1は、上記のように、高分子量体であってもよく、その例としては、次の基が挙げられる:ポリエチレンオキシド構造を有する炭化水素基、ポリプロピレンオキシド構造を有する炭化水素基、ポリテトラメチレンオキシド構造を有する炭化水素基、ポリエチレンテレフタレート構造を有する炭化水素基、ポリブチレンテレフタレート構造を有する炭化水素基、ポリジメチルシロキサン構造を有する炭化水素基、ポリカーボネート構造を有する炭化水素基、ポリエチレン構造を有する炭化水素基、ポリプロピレン構造を有する炭化水素基、ポリアクリロニトリル構造を有する炭化水素基など。これらの炭化水素基には酸素原子、窒素原子、および硫黄原子のうちの少なくともひとつが含まれていてもよく、シアノ基、アルコキシ基などが含まれていてもよい。これらの分子量は、通常、500以上である。以下、本発明において、基が高分子量体である場合には、該基の例としては上述の基が挙げられる。
【0039】
上記化合物(1)のZ1は、特に限定されない。化合物の入手性の点で、Z1が有機基である場合に、その炭素数は、好ましくは1〜20である。Z1としては、次の基が挙げられる:アルキル基、置換アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、置換アラルキル基、N−アリール−N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、チオアルキル基、ジアルキルホスフィニル基など。化合物の重合活性および入手性の点で、次の基が好ましい:フェニル基、メチル基、エチル基、ベンジル基、4−クロロフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、ジエトキシホスフィニル基、n−ブチル基、t−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、チオメチル基(メチルスルフィド)、フェノキシ基、チオフェニル基(フェニルスルフィド)、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N−フェニル−N−メチルアミノ基、N−フェニル−N−エチルアミノ基、チオベンジル基(ベンジルスルフィド)、ペンタフルオロフェノキシ基、または次式:
【0040】
【化12】
Figure 0004046552
で示される有機基。
【0041】
上記チオカルボニルチオ基を有する化合物(2)の構造において、R2は、特に限定されない。化合物の入手性の点で、好ましくは、R2の炭素数は、1〜20である。R2の例としては、アルキル基、置換アルキル基、アラルキル基、置換アラルキル基などがある。化合物の重合活性および入手性の点で、次の基が好ましい:ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−(2−フェニル)プロピル基、1−アセトキシエチル基、1−(4−メトキシフェニル)エチル基、エトキシカルボニルメチル基、2−(2−エトキシカルボニル)プロピル基、2−(2−シアノ)プロピル基、t−ブチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、2−〔2−(p−クロロフェニル)〕プロピル基、ビニルベンジル基、t−ブチルスルフィド基、2−カルボキシルエチル基、カルボキシルメチル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−(2−シアノ)ブチル基、または次の一般式で示される有機基:
【0042】
【化13】
Figure 0004046552
(式中、rは0以上の整数を示し、sは1以上の整数を示す)。上記式中のrおよびsは、化合物の入手性の点で、好ましくは500以下である。
【0043】
上記化合物(2)のZ2は、特に限定されないが、qは好ましくは6以下である。化合物の入手性の点で、Z2が有機基である場合に、その炭素数は、好ましくは1〜20である。Z2の例としては、2価以上の脂肪族炭化水素基、2価以上の芳香族炭化水素基、芳香環を有する2価以上の脂肪族炭化水素基、脂肪族基を有する2価以上の芳香族炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価以上の脂肪族炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価以上の芳香族置換炭化水素基などがある。化合物の重合活性および入手性の点で、次式で示される有機基が好ましい:
【0044】
【化14】
Figure 0004046552
(式中、sは1以上の整数である)。上記式中のsは、化合物の入手性の点で、好ましくは500以下である。
【0045】
本発明で使用する、チオカルボニルチオ基を有する化合物の具体例としては、次式で示される化合物が挙げられるが、これらに限定されない:
【0046】
【化15】
Figure 0004046552
【0047】
【化16】
Figure 0004046552
【0048】
【化17】
Figure 0004046552
【0049】
【化18】
Figure 0004046552
(式中、Meはメチル基、Etはエチル基、Phはフェニル基を示し、Acはアセチル基を示し、rは0以上の整数であり、sは1以上の整数である)。上記式中のrおよびsは、化合物の入手性の点で、好ましくは500以下である。
【0050】
上記チオカルボニルチオ基を有する化合物のうち、多官能性の架橋性シリル基含有重合体を製造できる点で、上記チオカルボニルチオ基を有する化合物においてpが2以上の化合物が好ましい。さらに、本発明において使用するチオカルボニルチオ基を有する化合物としては、硬化性組成物とした場合に良好な物性を示す両末端官能性(テレケリック)架橋性シリル基含有重合体を製造できる点で、次の一般式(3)で示される化合物がより好ましい:
【0051】
【化19】
Figure 0004046552
(式中、R3は2価の有機基であり、該2価の有機基は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、ケイ素原子、リン原子、および金属原子のうちの少なくともひとつを含んでいてもよく、高分子量体であってもよく;Z3は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1以上の1価の有機基であり、該1価の有機基は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、ケイ素原子、およびリン原子のうちの少なくともひとつを含んでいてもよく、高分子量体であってもよく;Z3は互いに同一でもよく、異なっていてもよい)。
【0052】
上記チオカルボニルチオ基を両末端に有する化合物(3)の構造において、R3は、特に限定されないが、化合物の入手性の点で、好ましくは、R3の炭素数は、1〜20である。重合活性および入手性の点で、次式:
【0053】
【化20】
Figure 0004046552
で示される有機基が好ましい。
【0054】
上記化合物(3)のZ3は、特に限定されない。化合物の入手性の点で、Z3が有機基である場合に、その炭素数は、好ましくは1〜20である。重合活性および入手性の点で、次の基が好ましい:フェニル基、メチル基、エチル基、ベンジル基、4−クロロフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、ジエトキシホスフィニル基、n−ブチル基、t−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、チオメチル基(メチルスルフィド)、フェノキシ基、チオフェニル基(フェニルスルフィド)、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N−フェニル−N−メチルアミノ基、N−フェニル−N−エチルアミノ基、チオベンジル基(ベンジルスルフィド)、ペンタフルオロフェノキシ基、または次式:
【0055】
【化21】
Figure 0004046552
で示される有機基。
【0056】
本発明において好適に使用する、両末端官能性(テレケリック)架橋性シリル基含有重合体を製造可能な、チオカルボニルチオ基を有する化合物(3)の具体例としては、次式で示される化合物が挙げられるが、これらに限定されない:
【0057】
【化22】
Figure 0004046552
(式中、Meはメチル基、Etはエチル基、Phはフェニル基を示す)。
【0058】
本発明で使用する、チオカルボニルチオ基を有する化合物は、単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0059】
[ビニル系単量体]
本発明で使用するビニル系単量体としては、ラジカル重合可能なものであれば特に限定されず、例えば次の化合物が挙げられる:メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコール、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸トルイル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸3−メトキシブチル、メタクリル酸2−アミノエチル、2−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−メタクリロイルオキシポリピルジメトキシメチルシラン、メタクリル酸トリフルオロメチル、メタクリル酸ペンタフルオロエチル、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチルなどのメタクリル酸エステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸3−メトキシブチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、2−アクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、2−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、アクリル酸トリフルオロメチル、アクリル酸ペンタフルオロエチル、アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、アクリル酸3−ジメチルアミノエチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸t−ブチル、アルキル変性ジペンタエリスリトールのアクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート、アクリル酸カルビトール、ε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールのアクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アクリル酸テトラエチレングリコール、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸トリプロピレングリコール、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジアクリレート、アクリル酸1,9−ノナンジオール、アクリル酸1,4−ブタンジオール、2−プロペノイックアシッド〔2−〔1,1−ジメチル−2−〔(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ〕エチル〕−5−エチル−1,3−ジオキサン−5−イル〕メチルエステル、アクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ペンタエリスリトールトリアクリレート、2−アクリロイルオキシプロピルハイドロジェンフタレート、3−メトキシアクリル酸メチル、アクリル酸アリルなどのアクリル酸エステル;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレンなどの芳香族アルケニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン系化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、臭化ビニル、クロロプレンなどのハロゲン含有不飽和化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、ビニルトリフェニルシラン、ビニルトリエチルシランなどのケイ素含有不飽和化合物;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、フマル酸ジエステルなどの不飽和ジカルボン酸化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ケイ皮酸ビニル、ジビニルカーボネート、ビニルエチルカーボネート、ビニルフェニルカーボネートなどのビニルエステル化合物;酢酸アリル、プロピオン酸アリル、ピバリン酸アリル、安息香酸アリル、ケイ皮酸アリル、ジアリルカーボネート、アリルメチルカーボネート、アリルフェニルカーボネートなどのアリルエステル化合物;ビニルフェニルエーテル、ビニルエチルエーテル、ジビニルエーテル、トリメチロールプロパンモノビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールモノビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、1,4−ブタンジオールモノビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールモノビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、ポリプロピレングリコールモノビニルエーテル、ポリプロピレングリコールジビニルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、アリルフェニルエーテル、アリルエチルエーテル、ジアリルエーテル、ビニルアリルエーテル、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールモノアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、1,4−ブタンジオールモノアリルエーテル、1,4−ブタンジオールジアリルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールジアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールジアリルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどの不飽和基含有エーテル化合物;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド化合物;アクリル酸、メタクリル酸;アクロレイン、メタクロレイン;1,6−ヘプタジエン、ジアリルアンモニウム塩などの環化重合可能な単量体;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾールなど。これらは単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。複数のビニル系単量体を用いて共重合体とする場合には、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、これらの組み合わせなど、その形態については限定されない。
【0060】
上記のビニル系単量体のうち、入手性および価格の点で、スチレン、α−メチルスチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリルアミド、アクリルアミド、メタクリロニトリル、アクリロニトリル、酢酸ビニル、無水マレイン酸、またはマレイミド化合物が好ましい。得られる重合体が耐油性、耐熱性、耐候性、および低汚染性に優れる点で、メタクリル酸エステル、およびアクリル酸エステルがより好ましい。本発明の組成物を硬化させた場合に、柔軟な硬化物が得られる点で、重合体のガラス転位温度が30℃以下となるようなメタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルが特に好ましい。重合体のガラス転位温度が30℃以下となるようなアクリル酸エステルとしては、入手性および価格の点で、アクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸t−ブチルが好ましい。
【0061】
[ビニル系単量体の重合に使用される溶剤、重合開始剤、および重合方法]
本発明で使用するビニル系単量体を重合する場合、チオカルボニルチオ基を有する化合物は、重合中に反応系内に存在していればよく、その添加方法は限定されない。重合体の分子量や分子量分布を制御し、そして架橋性シリル基の導入率を高くする点で、重合開始前に、反応系内に溶解または分散させておくことが好ましい。例えば、溶液重合の場合には、溶媒またはビニル系単量体に溶解させて添加する方法が好ましく、乳化重合や懸濁重合などの水系重合の場合には、少量の溶媒に溶解させて添加する、ビニル系単量体に溶解させて添加する、またはホモジナイザーなどで予備撹拌して分散させる方法が好ましい。
【0062】
チオカルボニルチオ基を有する化合物の使用量は、特に限定されないが、その添加モル数に応じて、得られる重合体の重合度が左右されるため、必要とされる重合体の重合度あるいは数平均分子量から計算して決定すればよい。一般に、チオカルボニルチオ基のモル数と、得られる重合体の重合度については、ビニル系単量体の転化率が100%の場合、次式の関係が成立する。
重合度=(ビニル系単量体のモル数)/(チオカルボニルチオ基を有する化合物のモル数)
なお、数平均分子量は、重合度にビニル系単量体の分子量を乗ずることにより計算できる。またビニル系単量体の転化率が100%に満たない場合、転化率を乗ずることにより該当する転化率に対応する重合度を計算できる。
【0063】
本発明において、チオカルボニルチオ基を有する化合物の存在下で、ビニル系単量体をラジカル重合する際の形式については特に限定されず、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、微細懸濁重合など、当該分野で通常用いられる方法を適用可能である。
【0064】
上記ビニル系単量体を溶液重合させる場合に使用される溶剤としては、次の溶剤が挙げられるが、それらに限定されない:ヘプタン、ヘキサン、オクタン、ミネラルスピリットなどの炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノールなどのアルコール系溶剤;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル系溶剤;トルエン、キシレン、ベンゼン、スワゾール310(コスモ石油(株)製)、スワゾール1000(コスモ石油(株)製)、スワゾール1500(コスモ石油(株)製)などの芳香族石油系溶剤など。これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。使用する溶剤の種類および量の決定については、単量体の溶解度、得られる重合体の溶解度、十分な反応速度を達成するために適切な重合開始剤濃度や単量体濃度、チオカルボニルチオ基を有する化合物の溶解度、人体や環境に与える影響、入手性、価格などを考慮して決定すればよく、特に限定されない。入手性および価格の点で、工業的にはトルエンが好ましい。
【0065】
本発明において、ビニル系単量体を乳化重合または微細懸濁重合させる場合、使用される乳化剤としては、次の乳化剤が挙げられるが、それらに限定されない:脂肪酸石けん、ロジン酸石けん、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム)、アルキル硫酸アンモニウム、アルキル硫酸トリエタノールアミン、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミドなどの非イオン系界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライドなどのカチオン系界面活性剤など。これらの乳化剤は単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。必要に応じて、アルキルアミン塩酸塩などのカチオン系界面活性剤を使用してもよく、後述する懸濁重合の分散剤を添加してもよい。乳化剤の使用量は特に限定されないが、通常、単量体100重量部に対して0.1〜20重量部である。
【0066】
本発明において、上記単量体を懸濁重合させる場合、使用される分散剤としては、次の分散剤が挙げられるが、それらに限定されない:部分けん化ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリアルキレンオキサイド、アニオン性界面活性剤と分散助剤との組合せなど。これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。また必要に応じて、上記乳化重合の乳化剤を併用してもよい。分散剤の使用量は特に限定されないが、通常、単量体100重量部に対して0.1〜20重量部である。
【0067】
本発明において、チオカルボニルチオ基を有する化合物の存在下において、ビニル系単量体のラジカル重合を行う際、使用される重合開始剤、あるいは重合開始方法については特に限定されず、当該分野で通常用いられる重合開始剤、あるいは重合開始方法を用いることができる。例えば、重合開始剤として次の化合物が挙げられるが、それらに限定されない:メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、p−メンタンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチル−α−クミルパーオキサイド、ジ−α−クミルパーオキサイド、1,4−ビス〔(t−ブチルパーオキシ)イソプロピル〕ベンゼン、1,3−ビス〔(t−ブチルパーオキシ)イソプロピル〕ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ビス(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ビス(3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ビス(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、O−t−ブチル−O−イソプロピルパーオキシカーボネート、コハク酸パーオキサイドなどの過酸化物系重合開始剤;2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、アゾクメン、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2−(t−ブチルアゾ)−2−シアノプロパン、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)などのアゾ系重合開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムなどの無機過酸化物;スチレンなどのように熱的にラジカル種を生成するビニル系単量体;ベンゾイン誘導体、ベンゾフェノン、アシルフォスフィンオキシド、フォトレドックス系などのように光によりラジカル種を発生する化合物;亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルフォキシレート、アスコルビン酸、硫酸第一鉄などを還元剤とし、ペルオキソ二硫酸カリウム、過酸化水素、t−ブチルヒドロパーオキサイドなどを酸化剤とするレドックス型重合開始剤など。これら重合開始剤は単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。この他に、電子線照射、エックス線照射、放射線照射などによる重合開始系を利用することも可能である。このような重合開始方法に関しては、Moad and Solomon“The Chemistry of Free Radical Polymerization”,Pergamon,London,1995,53−95ページに記載されている方法を使用可能である。
【0068】
本発明の実施において使用する重合開始剤の使用量については特に限定されないが、分子量分布の小さい重合体を得られる点で、重合中に発生するラジカル種の量が、チオカルボニルチオ基を有する化合物中のチオカルボニルチオ基1モルに対して1モル以下が好ましく、0.5モル以下がより好ましい。また、重合中に発生するラジカル種の量を制御するために、重合開始剤の使用量と合わせて、熱的解離する重合開始剤の場合には温度を調節すること、光や電子線などによりラジカルを発生する重合開始系の場合には照射するエネルギー量を調節することなどが好ましい。重合を制御しやすい点で、熱的解離する重合開始剤を用い、その半減期が0.5〜50時間となるような温度で重合することが好ましく、半減期が1〜20時間となるような温度で重合することがより好ましく、半減期が5〜15時間となるような温度で重合することが特に好ましい。
【0069】
本発明における、ビニル系単量体をラジカル重合して得られる重合体の分子量は、特に限定されず、用途に応じて設定すればよい。耐熱性、強度などと、加工性とのバランスの点で、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定により求めた数平均分子量(Mn)が1000〜1000000の範囲にあることが好ましく、3000〜500000の範囲にあることがより好ましい。本発明における、ビニル系単量体をラジカル重合して得られる重合体の分子量分布は、特に限定されないが、加工性に優れる点で、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により求めた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。
【0070】
[チオカルボニルチオ基のメルカプト基への変換方法および用いられる試薬]本発明の製造方法においては、上記チオカルボニルチオ基を有するビニル系重合体のチオカルボニルチオ基は、メルカプト基に変換される。チオカルボニルチオ基をメルカプト基に変換する際の方法については特に限定されないが、収率が高い点で、塩基、酸、および水素‐窒素結合含有化合物からなる群より選択される化合物でなる処理剤を反応させる方法を採用することが好ましい。これらの方法のうち、塩基、酸を使用する場合には、水の存在下で、加水分解反応により、チオカルボニルチオ基がメルカプト基に変換される。水素‐窒素結合含有化合物を使用する場合には、水を共存させる必要がないため好ましい。
【0071】
上記処理剤のうち、塩基としては、特に限定されないが、次の化合物が挙げられる:水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、水酸化セシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛などの遷移金属水酸化物;ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、ナトリウムフェニラート、リチウムエチラート、リチウムブチラートなどのアルカリ金属アルコラート;マグネシウムメチラート、マグネシウムエチラートなどのアルカリ土類金属アルコラート;水素化ナトリウム、水素化リチウム、水素化カルシウム、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素ナトリウムなどの金属水素化物;ハイドロサルファイト、n−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、エチルマグネシウムブロマイド、フェニルマグネシウムブロマイドなどの有機金属試薬などが挙げられる。さらに、金属リチウム、金属ナトリウム、金属カリウムなどのアルカリ金属;金属マグネシウム、金属カルシウムなどのアルカリ土類金属なども使用可能である。これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。これらのうち、入手性、価格、および反応性の点で、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、水素化ナトリウム、水素化リチウム、金属リチウム、金属ナトリウム、または金属カリウムが好ましい。これらのうち、取り扱いやすさの点では、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、ナトリウムメチラート、またはナトリウムエチラートがより好ましい。
【0072】
上記処理剤のうち、酸としては、特に限定されないが、次の化合物が挙げられる:塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、ホウフッ化水素酸、クロロスルホン酸、ヨウ化水素酸、ヒ酸、ケイフッ化水素酸などの無機酸;p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメチルスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、メチルリン酸、エチルリン酸、n−プロピルリン酸、イソプロピルリン酸、n−ブチルリン酸、ラウリルリン酸、ステアリルリン酸、2−エチルヘキシルリン酸、イソデシルリン酸、ジメチルジチオリン酸、ジエチルジチオリン酸、ジイソプロピルジチオリン酸、フェニルホスホン酸などの有機酸;強酸性イオン交換樹脂、弱酸性イオン交換樹脂など。さらに、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸、無水フタル酸、無水コハク酸などの酸無水物;ハロゲン化アシル;四塩化チタン、塩化アルミニウム、塩化ケイ素などの金属ハロゲン化物などの、微量の水分と反応して酸性を示す化合物も使用可能である。これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。これらのうち、入手性、価格、および反応性の点で、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、塩化アルミニウム、四塩化チタン、クロロスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメチルスルホン酸、酢酸、またはトリフルオロ酢酸が好ましい。
【0073】
上記処理剤のうち水素‐窒素結合含有化合物としては特に限定されないが、例えば、アンモニア、ヒドラジン、1級アミン系化合物、2級アミン系化合物、アミド系化合物、アミン塩酸塩系化合物、水素‐窒素結合含有高分子、およびヒンダードアミン系光安定剤(HALS)などが挙げられる。
【0074】
上記水素‐窒素結合含有化合物のうち、1級アミン系化合物の具体例としては、N‐(2‐アミノエチル)エタノールアミン、12‐アミノドデカン酸、3‐アミノ‐1‐プロパノール、アリルアミン、イソプロピルアミン、3,3’‐イミノビス(プロピルアミン)、モノエチルアミン、2‐エチルヘキシルアミン、3‐(2‐エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン、3‐エトキシプロピルアミン、3‐(ジエチルアミノ)プロピルアミン、3‐(ジブチルアミノ)プロピルアミン、n‐ブチルアミン、t‐ブチルアミン、sec‐ブチルアミン、n‐プロピルアミン、3‐(メチルアミノ)プロピルアミン、3‐(ジメチルアミノ)プロピルアミン、N‐メチル‐3,3’‐イミノビス(プロピルアミン)、3‐メトキシプロピルアミン、2‐アミノエタノール、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、N‐カルボキシ‐4,4’‐メチレンビスシクロヘキシルアミン、1,4‐ジアミノブタン、1,2‐ジアミノプロパン、1,3‐ジアミノプロパン、ジアミノマレオニトリル、シクロヘキシルアミン、ATU(味の素(株)製)、CTUグアナミン(味の素(株)製)、二酸化チオ尿素、2‐ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン、n‐ヘキシルアミン、モノメチルアミン、モノメチルヒドラジン、3‐(ラウリルオキシ)プロピルアミン、アニシジン、アニリン、p‐アミノアセトアニリド、p‐アミノ安息香酸、p‐アミノ安息香酸エチルエステル、2‐アミノ‐4‐クロロフェノール、2‐アミノチアゾール、2‐アミノチオフェノール、2‐アミノ‐5‐ニトロベンゾニトリル、アミノフェノール、p‐アミノベンズアルデヒド、4‐アミノベンゾニトリル、アントラニル酸、3‐イソプロポキシアニリン、4‐アミノ‐5‐ヒドロキシ‐2,7‐ナフタレンスルホン酸モノナトリウム塩、6‐アミノ‐4‐ヒドロキシ‐2‐ナフタレンスルホン酸、キシリジン、m‐キシリレンジアミン、p‐クレシジン、ジアニシジン、4,4’‐ジアミノスチルベン‐2,2’‐ジスルホン酸、2‐アミノ‐5‐ナフトール‐7‐スルホン酸、1,4‐ジアミノアントラキノン、4,4’‐ジアミノ‐3,3’‐ジエチルジフェニルメタン、4,4’‐ジアミノベンズアニリド、ジアミノジフェニルエーテル、3,3’‐ジメチル‐4,4’‐ジアミノジフェニルメタン、ステファニル酸、トビアス酸、2,4,5‐トリクロロアニリン、o‐トリジン、トルイジン、トルイレンジアミン、ナフチオン酸ナトリウム、ニトロアニリン、m‐ニトロ‐p‐トルイジン、o‐クロロ‐p‐トルイジン‐m‐スルホン酸、フェニルヒドラジン、フェニレンジアミン、フェネチジン、フェネチルアミン、ベンジルアミン、ベンゾフェノンヒドラゾン、メシジン、メタニル酸、2‐メチル‐4‐ニトロアニリン、ロイコ‐1,4‐ジアミノアントラキノン、パラミン、アミノピリジン、1‐(2‐アミノエチル)ピペラジン、N‐(3‐アミノプロピル)モルホリン、1‐アミノ‐4‐メチルピペラジン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ベンゾグアナミン、メラミン、o‐クロロアニリン、2,5‐ジクロロアニリン、3,4‐ジクロロアニリン、3,5‐ジクロロアニリン、2‐アミノ‐4‐クロロ安息香酸、o‐クロロ‐p‐ニトロアニリン、5‐クロロ‐2‐ニトロアニリン、2,6‐ジクロロ‐4‐ニトロアニリン、2‐(2‐クロロフェニル)エチルアミン、3,3’‐ジクロロ‐4,4’ジアミノジフェニルメタン、3,3’‐ジクロロ‐4,4’‐ジアミノビフェニル、2,4‐ジフルオロアニリン、o‐フルオロアニリン、N‐β‐(アミノエチル)‐γ‐アミノプロピルトリメトキシシラン、N‐β‐(アミノエチル)‐γ‐アミノプロピルメチルジメトキシシラン、およびγ‐アミノプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0075】
上記水素‐窒素結合含有化合物のうち、2級アミン系化合物の具体例としては、N‐メチルエタノールアミン、ジアリルアミン、ジイソプロピルアミン、ジエチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ‐2‐エチルヘキシルアミン、イミノジ酢酸、3,3’‐イミノジプロピオニトリル、ビス(ヒドロキシエチル)アミン、N‐エチルエチレンジアミン、エチレンイミン、ジシクロヘキシルアミン、1,1‐ジメチルヒドラジン、ジ‐n‐ブチルアミン、ジ‐t‐ブチルアミン、ジメチルアミン、N‐メチル酢酸ナトリウム、N‐エチルアニリン、ジフェニルアミン、ジベンジルアミン、7‐アニリノ‐4‐ヒドロキシ‐2‐ナフタレンスルホン酸、N‐メチルアニリン、2‐メチル‐4‐メトキシジフェニルアミン、イミダゾール、2‐メチルイミダゾール、2‐エチル‐4‐メチルイミダゾール、2‐フェニルイミダゾール、2‐ウンデシルイミダゾール、1,3‐ジ(4‐ピペリジル)プロパン、2,5‐ジメチルピペラジン、2,6‐ジメチルピペラジン、3,5‐ジメチルピラゾール、5,5’‐ビ‐1H‐テトラゾール、5‐フェニル‐1H‐テトラゾール、5‐メチル‐1H‐テトラゾール、1,2,3,4‐テトラヒドロキノリン、(ヒドロキシエチル)ピペラジン、ピペコリン、2‐(1‐ピペラジニル)ピリミジン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、N‐メチルピペラジン、2‐メチルピペラジン、およびモルホリンなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0076】
上記水素‐窒素結合含有化合物のうち、アミド系化合物の具体例としては、2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸、アジピン酸ジヒドラジド、N‐イソプロピルアクリルアミド、N‐t‐オクチルアクリルアミド、カルボヒドラジド、グアニルチオ尿素、グリシルグリシン、N‐〔3‐(ジメチルアミノ)プロピル〕アクリルアミド、N‐〔3‐(ジメチルアミノ)プロピル〕メタクリルアミド、N,N’‐エチレンビス(ステアロアミド)、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、N,N’‐メチレンビス(ステアロアミド)、N‐(ヒドロキシメチル)ステアロアミド、ダイアセトンアクリルアミド、チオアセトアミド、チオカルボヒドラジド、チオセミカルバジド、チオ尿素、ドデカン二酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、1,6‐ヘキサメチレンビス(N,N‐ジメチルセミカルバジド)、ホルムアミド、メタクリルアミド、N,N’‐メチレンビス(アクリルアミド)、N‐メチロールアクリルアミド、アセトアニリド、アセト酢酸o‐アニシダイド、アセト酢酸アニリド、アセト酢酸m‐キシリダイド、アセト酢酸o‐クロロアニリド、アセト酢酸2,5‐ジメトキシ‐4‐クロロアニリド、アセト酢酸トルイダイド、1,1,1’、1’‐テトラメチル‐4,4’‐(メチレンジ‐p‐フェニレン)ジセミカルバジド、トルエンスルホンアミド、p‐ヒドロキシフェニルアセトアミド、フタルイミド、イソシアヌル酸、3‐カルバモイル‐2‐ピラジンカルボン酸、コハク酸イミド、5,5‐ジメチルヒダントイン、1,3‐ビス(ヒドラジノカルボエチル)‐5‐イソプロピルヒダントイン、ヒダントイン、フェニルピラゾリドン、3‐メチル‐5‐ピラゾロン、1‐メチロール‐5,5‐ジメチルヒダントイン、3‐(4‐クロロフェニル)‐1,1‐ジメチル尿素、ブロムワレリル尿素、2,6‐ジフルオロベンズアミド、および2,2,2‐トリフルオロアセトアミドなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0077】
上記水素‐窒素結合含有化合物のうち、アミン塩酸塩系化合物の具体例としては、アセトアミジン塩酸塩、2,2’‐アゾビス‐(2‐アミジノプロパン)二塩酸塩、モノメチルアミン塩酸塩、ジメチルアミン塩酸塩、モノエチルアミン塩酸塩、ジエチルアミン塩酸塩、モノプロピルアミン塩酸塩、ジプロピルアミン塩酸塩、モノブチルアミン塩酸塩、ジブチルアミン塩酸塩、塩酸セミカルバジド、塩酸グアニジン、塩酸アミノグアニジン、2‐クロロエチルアミン塩酸塩、ジステアミン塩酸塩、およびt‐ブチルヒドラジンモノ塩酸塩などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0078】
上記水素‐窒素結合含有化合物のうち、水素‐窒素結合含有高分子の具体例としては、ポリメント((株)日本触媒製)、ポリエチレンイミン、アミノポリアクリルアミド、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロンMXD6、ナイロン46、ポリアミドイミド、ポリアリルアミン、およびポリウレタンなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0079】
上記水素‐窒素結合含有化合物のうち、HALSとしては、アデカスタブLA‐77(旭電化工業(株)製)、Chimassorb 944LD(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、Tinuvin 144(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、アデカスタブLA‐57(旭電化工業(株)製)、アデカスタブLA‐67(旭電化工業(株)製)、アデカスタブLA‐68(旭電化工業(株)製)、アデカスタブLA‐87(旭電化工業(株)製)、およびGoodrite UV‐3034(Goodrich社製)などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0080】
チオカルボニルチオ基を有する重合体を上記処理剤で処理する際、処理剤の使用量は特に限定されない。処理剤として酸性化合物または塩基性化合物を使用する場合、取り扱いやすさおよび反応性の点で、重合体100重量部に対して0.01〜100重量部が好ましく、0.05〜50重量部がより好ましく、0.1〜30重量部が特に好ましい。酸性化合物または塩基性化合物で処理した場合、重合体の安定性の点で、処理後に中和することが好ましい。処理剤として水素‐窒素結合含有化合物を使用する場合には、メルカプト基の導入率が高い点で、重合体中のチオカルボニルチオ基1モルに対して、水素‐窒素結合含有化合物を0.5〜1000モルの割合で用いるのが好ましく、1〜500モルの割合で用いるのがより好ましい。過剰の水素‐窒素結合含有化合物は、回収して再利用することができる。また、過剰の処理剤をシリカやアルミナなどの吸着剤重点カラムを通して除去することもできる。
【0081】
上記処理剤のうち、装置腐食の問題がなく、中和する必要がない点、および架橋性シリル基の安定性の点で、水素‐窒素結合含有化合物が好ましく、処理後の精製工程を簡略化できる点で、アンモニア、沸点100℃以下の1級アミン化合物、および沸点100℃以下の2級アミン化合物がより好ましく、入手性の点で、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、およびジエチルアミンがさらに好ましい。
【0082】
本発明において、チオカルボニルチオ基を有するビニル系重合体上記処理剤で処理する際の反応条件に関して特に限定はない。例えば、有機溶媒中に上記重合体を溶解させて上記処理剤を加える方法;水系分散液あるいは乳化液に上記処理剤を加える方法;あるいは固体または溶融状態の重合体そのものに直接上記処理剤を加える方法などが採用される。処理温度についても特に限定されないが、反応性の点で−50〜300℃が好ましく、−10〜200℃がより好ましい。
【0083】
このようにして、メルカプト基を有するビニル系重合体が得られる。
【0084】
[メルカプト基を有するビニル系重合体と、一分子中に架橋性シリル基とイソシアナト基とを有する化合物との反応]
本発明の製造方法においては、上記記載の方法などにより得られる、メルカプト基を有するビニル系重合体のメルカプト基を利用して、該重合体と、一分子中に架橋性シリル基とイソシアナト基とを有する化合物とが、カップリングされる。
【0085】
本発明において使用する、一分子中に架橋性シリル基とイソシアナト基とを有する化合物としては、特に限定されないが、入手性および価格の点で、一般式(4)で示される化合物が好ましい:
OCN−(CH2n−Si(R43-a(X)a (4)
(式中、R4はアルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、置換アラルキル基、またはトリオルガノシロキシ基を示し;Xはヒドロキシル基または加水分解性基を示し;nは3以上の整数であり;aは1、2、または3であり;aが1の場合、2個のR4は同一でもよく、異なっていてもよく;aが2または3の場合、該2または3個のXは同一でもよく、異なっていてもよい)。入手性の点で、好ましくは、R4の炭素数は1〜20であり、そしてnは3〜500である。
【0086】
上記一般式(4)の加水分解性基Xの具体例としては、以下の基が挙げられるが、これらに限定されない:水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基など。これらのうち、加水分解性が穏やかで取り扱いやすく、かつイソシアナト基と反応しにくい点で、アルコキシ基が好ましい。入手性および反応性の点で、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基など、炭素数が6以下のアルコキシ基がより好ましい。
【0087】
本発明で使用する、一分子中に架橋性シリル基とイソシアナト基とを有する化合物は、単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。これらの化合物のうち、安定性が高い点、入手性、および価格の点で、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、およびγ−イソシアナトプロピルジエトキシメチルシランがより好ましい。
【0088】
上記一分子中に架橋性シリル基とイソシアナト基とを有する化合物の使用量は、特に限定されない。カップリング後の重合体を含む硬化性組成物として硬化させた場合に十分な物性を得られる点で、上記重合体のメルカプト基1モルに対して、イソシアナト基換算で0.4〜50モルが好ましく、0.5〜30モルがより好ましく、0.8〜20モルが特に好ましい。一分子中に架橋性シリル基とイソシアナト基とを有する化合物を、重合体のメルカプト基に対して過剰に用いた場合も、過剰の化合物は、該重合体を含む硬化性組成物とした場合にシランカップリング剤として作用するため、特に除去したり精製したりする必要はない。
【0089】
本発明の製造方法においては、重合体のメルカプト基と、一分子中に架橋性シリル基とイソシアナト基とを有する化合物中のイソシアナト基とをカップリングさせて、チオウレタン結合(−SC(=O)NH−、あるいは−OC(=S)NH−)を形成することにより、該重合体に架橋性シリル基が導入される。この反応の際、反応効率を向上させる目的で、必要に応じて、ウレタン化触媒を使用することができる。
【0090】
本発明で使用できるウレタン化触媒としては、当該分野で通常用いられる化合物を使用することができる。例えば、Polyurethanes: Chemistry and Technology, Part I, Table 30, Chapter 4, Saunders and Frisch, Interscience Publishers, New York, 1963に記載されている触媒を挙げることができるが、これらに限定されない。これらは単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。これらの当該分野で通常用いられるウレタン化触媒のうち、触媒としての活性が高い点で、以下の化合物が好ましい:オクチル酸スズ、ステアリン酸スズ、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジオレイルマレート、ジブチルスズジブチルマレート、ジブチルスズジラウレート、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジラウリルオキシカルボニルジスタノキサン、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジアセチルアセトナート、ジブチルスズビス(o−フェニルフェノキサイド)、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズビストリエトキシシリケート、ジブチルスズジステアレート、ジブチルスズビスイソノニル−3−メルカプトプロピオネート、ジブチルスズビスイソオクチルチオグリコレート、ジオクチルスズオキサイド、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジアセテート、およびジオクチルスズジバーサテートなどのスズ系ウレタン化触媒など。さらに、貯蔵安定性の点で、ジブチルスズビスイソノニル−3−メルカプトプロピオネート、ジブチルスズビスイソオクチルチオグリコレートなどの、硫黄原子を含有するスズ系ウレタン化触媒がより好ましい。
【0091】
本発明においてウレタン化触媒を使用する場合、その使用量は特に限定されないが、ビニル系重合体100重量部に対して、0.0001〜0.5重量部が好ましく、0.001〜0.1重量部がさらに好ましい。0.0001重量部より少ないと十分な反応活性が得られない場合がある。0.5重量部より多いと、得られるビニル系重合体および硬化性組成物、ならびに組成物を硬化して得られる硬化物の耐熱性、耐候性、耐加水分解性、貯蔵安定性などの物性を悪化させる場合がある。
【0092】
本発明において、重合体中のメルカプト基と、一分子中に架橋性シリル基とイソシアナト基とを有する化合物のイソシアナト基とをカップリングさせる際、触媒あるいは基質を均一に溶解させる目的で、また反応系の温度制御あるいは反応効率を高めるため溶媒を用いることができる。これらの目的のために適当な溶媒としては、例えば、次の溶媒が挙げられるが、これらに限定されない:ヘキサン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ドデシルベンゼンなどの炭化水素化合物類;クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素化合物類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類など。これらは単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。これらの溶媒を使用する際、イソシアナト基および架橋性シリル基の関与する副反応を抑制できる点で、含有水分量が500ppm以下の溶媒が好ましく、200ppm以下の溶媒がより好ましい。
【0093】
このようにして、本発明の架橋性シリル基含有重合体が得られる。
【0094】
[架橋性シリル含有重合体]
本発明により得られる架橋性シリル基含有重合体は、その物性に応じて種々の目的に利用され得る。例えば、以下の用途に用いられるが、これらに限定されない:シーリング剤、接着剤、粘着剤、弾性接着剤、粘接着剤、ホットメルト接着剤、反応性ホットメルト接着剤、反応性熱可塑性エラストマー、反応性合成ゴム、反応性熱可塑性樹脂;ホース、シート、フィルム、平板、波板、パイプ、窓枠、靴底、スポーツ用品、繊維、玩具、自動車部品、ガスケット、パッキン、発泡体、人工大理石、ガラス代替樹脂、容器、ボトル、ボトルキャップ、人工頭髪、人工皮膚、柱、壁材、床材、グリップ、ドア、電気機器筐体、レンズ、光学部品、電気回路基盤、電子部品、電線被覆材などの各種成形体;アスファルト改質剤、樹脂改質剤、ゴム改質剤、セメント改質剤などの改質剤;塗料、コーティング剤;電子部品のポッティング剤など。
【0095】
上記の用途のうち、シーリング剤、接着剤、粘着剤などのように、最終的に得られる硬化物にゴム的性質が求められる場合には、該架橋性シリル基含有重合体としては、ガラス転位温度が30℃以下の重合体が好ましい。このような架橋性シリル基含有重合体は、分子中に、例えば、アクリル酸n−ブチル単独重合体、アクリル酸n−ブチルを主成分とする共重合体などをその成分として有していることが好ましい。架橋性シリル基含有重合体としては、最終的に得られる硬化物の強度が高いという点で、両末端に架橋性シリル基を有していることがより好ましい。 上記の用途のうち、架橋性シリル基含有重合体を反応性ホットメルト接着剤、反応性熱可塑性エラストマーなどに用いる場合には、該架橋性シリル基含有重合体は、成形性などに優れるという熱可塑性エラストマーの物性を有しながら、成形後または接着後に硬化し、耐熱性、圧縮永久歪特性に優れた硬化物を形成する架橋性シリル基含有重合体が好ましい。このような架橋性シリル基含有重合体を調製するには、例えば、ハードセグメントとソフトセグメントとを有する当該分野で通常用いられる熱可塑性エラストマーに、上記の反応により架橋性シリル基を導入すればよい。このような熱可塑性エラストマーとしては、例えば、以下の重合体が挙げられるが、これらに限定されない:メタクリル酸メチル−アクリル酸n−ブチル−メタクリル酸メチルトリブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレントリブロック共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸n−ブチルジブロック共重合体、スチレン−ブタジエンジブロック共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリルマルチブロック共重合体など。
【0096】
上記の用途のうち、架橋性シリル基含有重合体を反応性合成ゴムとして用いる場合には、該架橋性シリル基含有重合体としては、当該分野で通常用いられる合成ゴムに、架橋性シリル基が導入された重合体が挙げられる。このような合成ゴムとしては、次のものを挙げることができるが、これらに限定されない:ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリイソプレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ポリアクリル酸n−ブチル、メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチル共重合体、アクリル酸ブチル−ブタジエン−スチレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体など。これらの合成ゴムを用いて調製される架橋性シリル基含有重合体(反応性合成ゴム)は、従来の合成ゴムに比べて、耐熱性、熱安定性、および圧縮永久歪特性に優れる。
【0097】
上記の用途のうち、架橋性シリル基含有重合体を反応性熱可塑性樹脂として用いる場合には、該架橋性シリル基含有重合体としては、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂などの当該分野で通常用いられる熱可塑性樹脂に架橋性シリル基が導入された重合体を挙げることができるが、これらに限定されない。このような熱可塑性樹脂を用いて調製される架橋性シリル基含有重合体(反応性熱可塑性樹脂)は、成形性に優れるなど従来の熱可塑性樹脂の長所を有しつつ、耐熱性、熱安定性、および圧縮永久歪特性に優れる樹脂である。
【0098】
[硬化性組成物に含有される添加剤]
上記架橋性シリル基含有重合体を有する本発明の硬化性組成物は、各種物性を調整する目的で、必要に応じて1種類以上の添加剤が含有され得る。添加剤としては、可塑剤、チキソトロピー向上剤、耐熱性向上剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)、帯電防止剤、難燃剤、着色剤、発泡剤、滑剤、防カビ剤、結晶核剤、加硫促進剤、老化防止剤、加硫剤、スコーチ防止剤、素練促進剤、粘着付与剤、ラテックス凝固剤、加工助剤、無機系充填剤、シランカップリング剤、ゴム系材料などが挙げられる。これらの添加剤は、架橋性シリル基含有重合体の種類や組成、硬化性組成物が使用される用途などに応じて、適宜最適なものが選択される。
【0099】
[縮合触媒]
上記架橋性シリル基含有重合体を含む本発明の硬化性組成物は、必要に応じて、縮合触媒を含有する。特に、硬化性組成物が、シーリング剤、接着剤、粘着剤、塗料、反応性ホットメルト接着剤、反応性熱可塑性樹脂、反応性熱可塑性エラストマーなどの、湿分硬化性組成物として使用される場合には、縮合触媒を含有させることが好ましい。縮合触媒とは、架橋性シリル基同士がカップリングしてシロキサン結合を形成する反応を触媒する化合物である。縮合触媒としては、次の化合物が挙げられるが、それらに限定されない:テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネートなどのチタン酸エステル;ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジメトキシド、オクチル酸スズ、ナフテン酸スズなどの有機スズ化合物;オクチル酸鉛などの鉛化合物;ブチルアミン、オクチルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N−メチルモルホリン、1,3−ジアザビシクロ[5.4.6]ウンデセン−7などのアミン化合物;上記アミン化合物のカルボン酸塩;過剰のポリアミンと多塩基酸から得られる低分子量ポリアミド樹脂;過剰のポリアミンとエポキシ化合物との反応生成物;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのアミノ基を有するシランカップリング剤など。これらは単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。これらの縮合触媒のうち、活性が高い点で有機スズ化合物が好ましい。
【0100】
本発明の硬化性組成物における、縮合触媒の使用量は特に限定されない。反応活性の点で、架橋性シリル基含有重合体に対して0〜10重量%の割合の縮合触媒を使用することが好ましい。架橋性シリル基含有重合体を製造する際にウレタン化触媒を用いた場合、ウレタン化触媒は縮合触媒としても作用するため、特に縮合触媒を添加しなくてもよい。
【0101】
[硬化性組成物]
本発明の硬化性組成物は、どのような形態で提供されてもよい。例えば、代表的には、次の硬化性組成物が挙げられる:組成物の全ての成分をあらかじめ混合し、密封保存し、所望の場所に適用後に空気中の水分により硬化する1成分型硬化性組成物;および架橋性シリル基含有重合体、硬化触媒、水などの成分の混合物と、硬化剤とをそれぞれ別に準備しておき、使用前に混合する2成分型硬化性組成物。
【0102】
本発明によれば、チオカルボニルチオ基を有する化合物を用いて所望の重合体成分を有する架橋性シリル基含有重合体を簡便に調製することが可能である。これにより、所望の性質を有する架橋性シリル基含有重合体を調製し、種々の硬化性組成物を調製することが可能である。例えば、以下の用途の組成物とすることが可能であるが、これらに限定されない:シーリング剤、接着剤、粘着剤、弾性接着剤、粘接着剤、ホットメルト接着剤、反応性ホットメルト接着剤、反応性熱可塑性エラストマー、反応性合成ゴム、反応性熱可塑性樹脂;ホース、シート、フィルム、平板、波板、パイプ、窓枠、靴底、スポーツ用品、繊維、玩具、自動車部品、ガスケット、パッキン、発泡体、人工大理石、ガラス代替樹脂、容器、ボトル、ボトルキャップ、人工頭髪、人工皮膚、柱、壁材、床材、グリップ、ドア、電気機器筐体、レンズ、光学部品、電気回路基盤、電子部品、電線被覆材などの各種成形体;アスファルト改質剤、樹脂改質剤、ゴム改質剤、セメント改質剤、表面改質剤などの改質剤;塗料、コーティング剤;シランカップリング剤、樹脂改質用・高分子製造用・樹脂製造用・接着剤改質用・粘着剤改質用などの用途に使用するマクロモノマー、電子部品のポッティング剤など。
【0103】
【実施例】
以下に本発明を実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0104】
以下の説明において、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、および分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定により求めた。GPC測定においては、クロロホルムを溶出液とし、ポリスチレンゲルカラムを使用し、ポリスチレン換算で解析した。
【0105】
アイゾット衝撃強度は、ASTM D256−56に記載の方法に準拠し、Vノッチ付き試料を用い、n=5で測定した値の平均値を採用した。ガードナー強度は、ASTM D3029−84−GBに記載の方法に準拠し、700gのおもりを用い、23℃においてn=40で測定した。溶融粘度は、JIS K−7199に記載の方法に準拠し、キャピラリー・レオメーターを使用して、1216s-1のせん断速度で測定した。スパイラルフローは、シリンダー温度250℃、金型温度70℃で、射出圧力608kgf/cm2に設定して3mm厚の角型スパイラル成形品を射出成形により形成し、その長さ(mm)で成形流動性を評価した。
【0106】
(実施例1)
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、および還流冷却管を備えた1L反応器に、ビニル系単量体としてアクリル酸n−ブチル181g、重合開始剤として1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)40mg、チオカルボニルチオ基を有する化合物として式(11)
【0107】
【化23】
Figure 0004046552
で示される化合物635mg、および溶剤としてトルエン300mLを入れ、系内を窒素置換した。反応液を撹拌しながら90℃で5時間加熱した。反応液からトルエンを減圧留去し、Mw=77000、Mn=56900、Mw/Mn=1.35の重合体110gを得た。1H NMR測定の結果、該重合体は、チオカルボニルチオ基がポリアクリル酸n−ブチルの両末端に導入されており、導入率は両末端基準で93%であることを確認した。
【0108】
こうして得られた、両末端にチオカルボニルチオ基を有するポリアクリル酸n−ブチル110gをトルエン400mLに溶解し、処理剤としてモノエチルアミン30gを添加して10℃で5時間撹拌した。残存するモノエチルアミンおよびトルエンを減圧留去して、重合体を得た。得られた重合体の1H NMR測定の結果、該重合体はメルカプト基を両末端に有するポリアクリル酸n−ブチルであり、メルカプト基の導入率が両末端基準で90%であることを確認した。
【0109】
こうして得られた、両末端にメルカプト基を有するポリアクリル酸n−ブチル105gを脱水トルエン400mLに溶解し、窒素雰囲気で、ウレタン化触媒としてジブチルスズビスイソオクチルチオグリコレート10mgおよび一分子中に架橋性シリル基とイソシアナト基を有する化合物としてγ−イソシアナトプロピルジメトキシメチルシラン800mgを添加し、80℃で8時間加熱撹拌した。トルエンを減圧留去し、両末端にジメトキシメチルシリル基を有するポリアクリル酸n−ブチルを得た。
【0110】
得られた両末端にジメトキシメチルシリル基を有するポリアクリル酸n−ブチル100重量部に対し、硬化触媒としてジブチルスズジメトキシドを1重量部加えて混合し、型枠に流し込んで減圧脱泡したのち、空気中で室温で4日間放置し、ゴム弾性を有する均一なシート状硬化物を得た。シート状硬化物から2(1/3)号型ダンベル試験片を打ちぬき、島津製オートグラフを用いて、引張試験を行った(測定条件:23℃、200mm/min)。破断強度は0.45MPa、破断伸びは29%であった。
【0111】
次に、上記と同様に、両末端にジメトキシメチルシリル基を有するポリアクリル酸n−ブチル100重量部に対し、ジブチルスズジメトキシドを1重量部加えて混合し、これを用いて、厚さが1〜2mmとなるように大理石の表面に塗布して、2枚の大理石板を接着した。塗布後、50℃にて20時間加熱して硬化させた。サンシャインウェザオメーター(スガ試験機(株)製)を用いて、紫外線照射を1000時間実施した結果、ひびわれ、剥離などの変形、および変色は認められず、接着はがれもなく、また石材に対する汚染も観察されなかった。
【0112】
(実施例2)
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、および還流冷却管を備えた1L反応器に、ビニル系単量体としてアクリル酸n−ブチル181g、重合開始剤として1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)40mg、チオカルボニルチオ基を有する化合物として式(11)
【0113】
【化24】
Figure 0004046552
で示される化合物1.40g、および溶剤としてトルエン300mLを入れ、系内を窒素置換した。反応液を撹拌しながら90℃で40時間加熱した。反応液をサンプリングし、GPC測定よりMw=56500、Mn=41100、Mw/Mn=1.37の重合体が生成していることを確認した。さらに、1H NMR測定より、この重合体は、チオカルボニルチオ基がポリアクリル酸n−ブチルの両末端に導入された重合体であり、導入率は両末端基準で90%であることを確認した。
【0114】
続いて、処理剤としてジエチルアミン30gを添加して30℃で8時間撹拌した。残存するジエチルアミンおよびトルエンを減圧留去して、重合体を得た。得られた重合体の1H NMR測定の結果、該重合体は、メルカプト基を両末端に有するポリアクリル酸n−ブチルであり、メルカプト基の導入率が両末端基準で89%であることを確認した。
【0115】
こうして得られた両末端にメルカプト基を有するポリアクリル酸n−ブチル150gをトルエン300mLに溶解し、窒素雰囲気でウレタン化触媒としてジブチルスズビスイソオクチルチオグリコレート12mgおよび一分子中に架橋性シリル基とイソシアナト基を有する化合物としてγ−イソシアナトプロピルジメトキシメチルシラン1.35gを添加し、80℃で8時間加熱撹拌した。トルエンを減圧留去し、両末端にジメトキシメチルシリル基を有するポリアクリル酸n−ブチルを得た。
【0116】
こうして得られた両末端にジメトキシメチルシリル基を有するポリアクリル酸n−ブチル100重量部に対し、硬化触媒としてジブチルスズビスアセチルアセトナート U−220((株)日東化成製)を1重量部および水を0.5重量部添加し、よく混合した後型枠に流し込み、減圧脱泡した。室温で2日間放置した後50℃で20時間加熱し、ゴム弾性を有する均一なシート状硬化物を得た。シート状硬化物から2(1/3)号型ダンベル試験片を打ちぬき、島津製オートグラフを用いて、引張試験を行った(測定条件:23℃、200mm/min)。破断強度は0.47MPa、破断伸びは35%であった。
【0117】
(実施例3)
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却管、および滴下ろうとを備えた1L反応器に、乳化剤としてドデシルスルホン酸ナトリウム410mgおよび蒸留水400gを入れ、80℃に加熱撹拌しながら窒素置換した。次に、チオカルボニルチオ基を有する化合物として式(12)
【0118】
【化25】
Figure 0004046552
で示される化合物1.08gを、ビニル系単量体であるアクリル酸n−ブチル25.6gに溶解して添加し、80℃で20分間、窒素気流下で撹拌した後、重合開始剤として4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)432mgを蒸留水25gと共に添加した。80℃で30分撹拌した時点で、滴下ろうとからビニル単量体としてアクリル酸n−ブチル51.3gとアクリル酸2−メトキシエチル52.1gとの混合溶液を、1時間30分かけて滴下した。さらに80℃で4時間撹拌した後、乳化液を室温まで冷却し、塩析、ろ過、および洗浄を行い、両末端にチオカルボニルチオ基を有するアクリル酸n−ブチル−アクリル酸2−メトキシエチルランダム共重合体を得た。GPC分析、および1H NMR分析より、この重合体はMw=64700、Mn=56300、Mw/Mn=1.15であり、チオカルボニルチオ基の導入率は、両末端基準で94%であることを確認した。
【0119】
このチオカルボニルチオ基を両末端に有する重合体80gを、トルエン100mLに溶解し、処理剤としてモノエチルアミン10gを加えて5℃で10時間撹拌することにより、メルカプト基を両末端に有するアクリル酸n−ブチル−アクリル酸2−メトキシエチル ランダム共重合体を得た。
【0120】
残存するモノエチルアミンおよびトルエンを減圧留去した後、重合体を脱水テトラヒドロフラン150mLに溶解し、硬化触媒としても使用可能なウレタン化触媒としてジブチルスズビスアセチルアセトナート U−220((株)日東化成製)4mg、および一分子中に架橋性シリル基とイソシアナト基を有する化合物としてγ−イソシアナトプロピルジメトキシメチルシラン550mgを添加し、80℃で5時間加熱撹拌した。テトラヒドロフランを留去し、両末端にジメトキシメチルシリル基を有するアクリル酸n−ブチル−アクリル酸2−メトキシエチル ランダム共重合体を得た。
【0121】
こうして得られた共重合体を型枠に流し込み、減圧脱泡した。室温で7日間放置した後50℃で10時間加熱し、ゴム弾性を有する均一なシート状硬化物を得た。シート状硬化物から2(1/3)号型ダンベル試験片を打ちぬき、島津製オートグラフを用いて、引張試験を行った(測定条件:23℃、200mm/min)。破断強度は0.41MPa、破断伸びは64%であった。
【0122】
(実施例4)
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、および還流冷却管を備えた200mL反応器に、ビニル系単量体としてスチレン45.1gとチオカルボニルチオ基を有する化合物として式(13)
【0123】
【化26】
Figure 0004046552
で示される化合物273mgを秤取し、系内を窒素置換した。100℃で20時間加熱撹拌し、サンプリングしてGPC測定を行ったところ、Mw=35500、Mn=25800、Mw/Mn=1.38の重合体の生成を確認した。この重合体は4本の枝を持つ星状重合体であり、1H NMR測定より、それぞれの末端にチオカルボニルチオ基を有することを確認した。チオカルボニルチオ基の導入率は、全末端基準で78%であった。
【0124】
トルエン100mLを加え、処理剤としてモノメチルアミン2.5gを添加して0℃で15時間加熱撹拌した。溶媒を減圧留去して得られた重合体は、4本の枝を持つ星状重合体であり、1H NMR測定より、それぞれの末端にメルカプト基を有することを確認した。メルカプト基の導入率は全末端基準で72%であった。
【0125】
モノメチルアミンを減圧留去した後、トルエン30mLを追加し、窒素雰囲気で、ウレタン化触媒としてジブチルスズビスイソオクチルチオグリコレート5mgおよび一分子中に架橋性シリル基とイソシアナト基を有する化合物としてγ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン1.10gを添加し、80℃で8時間加熱撹拌した。トルエンを減圧留去し、末端にトリメトキシシリル基を有する星状ポリスチレンを得た。
【0126】
こうして得られた末端にトリメトキシシリル基を有する星状ポリスチレンは、従来のポリスチレン樹脂と同様に成形可能であった。得られた成形体は、従来のポリスチレン樹脂と比較して熱変形温度が30℃以上高く、耐熱性、熱安定性に優れていた。
【0127】
(実施例5)
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却管、および滴下ろうとを備えた1L反応器に、チオカルボニルチオ基を有する化合物として式(12)
【0128】
【化27】
Figure 0004046552
で示される化合物7.5g、ビニル系単量体としてアクリロニトリル20gとスチレン40g、および重合開始剤として2,2’‐アゾビスイソブチロニトリル2.11gを入れ、さらに滴下ろうとに溶媒としてトルエン500g、ビニル系単量体としてアクリロニトリル130gとスチレン260gとを入れ、反応器内を窒素置換した。
【0129】
反応器内の溶液を70℃で1時間加熱撹拌した時点で、滴下ろうとからアクリロニトリルとスチレンの溶液を5時間かけて滴下し、滴下終了後さらに70℃で10時間撹拌した。サンプリングしてGPC分析、および1H NMR分析を行い、Mw=27000、Mn=22300、Mw/Mn=1.21の、末端にチオカルボニルチオ基を有するアクリロニトリル‐スチレン ランダム共重合体の生成を確認した。組成比はアクリロニトリル:スチレン=34:66(重量比)であり、チオカルボニルチオ基の導入率は末端基準で93%であった。
【0130】
この溶液を室温まで冷却した後、処理剤としてジエチルアミン50gを添加し、室温で10時間撹拌した。過剰のジエチルアミンを減圧留去した後、反応液をメタノール4Lに注いでポリマーを析出させた。得られたポリマーを減圧乾燥後、脱水トルエン500mLに溶解し、窒素雰囲気で、ウレタン化触媒としてジブチルスズビスイソオクチルチオグリコレート20mg、および一分子中に架橋性シリル基とイソシアナト基とを有する化合物としてγ‐イソシアナトプロピルジメトキシメチルシラン6.0gを添加し、50℃で6時間撹拌した後、トルエンを減圧留去して、両末端にジメトキシメチルシリル基を有するアクリロニトリル‐スチレン共重合体を得た。この共重合体は熱可塑性樹脂として成形可能であった。
【0131】
(実施例6)
塩化ビニル樹脂 S1008(鐘淵化学工業(株)製)100重量部、安定剤としてジブチルスズマレエート2.5重量部、滑剤としてヘキスト ワックスE(ヘキスト ジャパン(株)製)0.5重量部、加工助剤としてPA−20(鐘淵化学工業(株)製)2.0重量部、および着色剤として酸化チタン3.0重量部の混合物に対し、実施例1で得られた架橋性シリル基含有重合体12重量部、およびジブチルスズビスアセチルアセトナート0.2重量部を配合し、設定温度180℃で5分間ロール混練し、シート化した。得られたシートを設定温度190℃で熱プレス成形し、厚さ5mmの物性評価用の成形体を作成した。23℃で測定したアイゾット衝撃強度を表1に示す。
【0132】
(実施例7〜10)
架橋性シリル基含有重合体として、それぞれ実施例2〜5で得られた架橋性シリル基含有重合体を用いたこと以外は、実施例6と同様に成形体を作成し、アイゾット衝撃強度を測定した。結果を表1に示す。
【0133】
(比較例1)
実施例6において、架橋性シリル基含有重合体を配合せずに、同様の成形体を作成し、アイゾット衝撃強度を測定した。結果を表1に示す。
【0134】
【表1】
Figure 0004046552
表1より、本発明の架橋性シリル基含有重合体が、樹脂改質剤として耐衝撃性改良に効果が高いことがわかる。
【0135】
(実施例11)
メタクリル樹脂 パラペットG1000((株)クラレ製)84重量部に対し、実施例1で得られた架橋性シリル基含有重合体16重量部、およびジブチルスズジメトキシド0.5重量部を配合し、ベント付き二軸押出機(32mm、L/D=25.5)を用い、設定温度230℃で押出混練し、ペレット化した。得られたペレットを80℃で15時間乾燥後、設定温度230℃で射出成形し、物性評価用の平板状成形体(120×120×3mm)を作成した。この成形体のガードナー強度を表2に示す。
【0136】
(実施例12および13)
架橋性シリル基含有重合体として、それぞれ実施例2および3で得られた架橋性シリル基含有重合体を用いたこと以外は、実施例11と同様に成形体を作成し、ガードナー衝撃強度を測定した。結果を表2に示す。
【0137】
(比較例2)
実施例11において、架橋性シリル基含有重合体を配合せずに同様の成形体を作成し、ガードナー強度を測定した。結果を表2に示す。
【0138】
【表2】
Figure 0004046552
表2より、本発明の架橋性シリル基含有重合体を樹脂改質剤として使用した場合、耐衝撃性が大幅に改善されることがわかる。
【0139】
(実施例14)
熱可塑性樹脂として、ポリカーボネート樹脂 レキサン141R−111(日本ジーイ−プラスチックス(株)製)95重量部、そして安定剤としてトパノールCA((株)リプレ製)0.3重量部、およびアデカスタブPEP−36(旭電化工業(株)製)0.3重量部を準備し、これらに、実施例1で得られた架橋性シリル基含有重合体を5重量部およびジブチルスズジアセテートを0.1重量部配合し、ベント付き二軸押出機(32mm、L/D=25.5)を用いて設定温度280℃で押出混練し、ペレット化した。得られたペレットを80℃で15時間乾燥後、設定温度280℃で射出成形し、物性評価用の成形体(厚さ1/4インチ)を作成した。得られた成形体の0℃におけるアイゾット衝撃強度、ペレットの280℃における溶融粘度を表3に示す。この成形体の目視による透明度評価(◎…透明度高い、○…透明度普通、△…少し不透明、×…不透明)を行った結果をあわせて表3に示す。
【0140】
(実施例15および16)
架橋性シリル基含有重合体として、それぞれ実施例2および3で得られた架橋性シリル基含有重合体を用いたこと以外は、実施例14と同様に成形体を作成し、評価を行った。結果を表3に示す。
【0141】
(比較例3)
実施例14において、架橋性シリル基含有重合体を配合せずに同様の成形体を作成し、実施例14と同じ評価を行った。結果を表3に示す。
【0142】
【表3】
Figure 0004046552
表3より、本発明の架橋性シリル基含有重合体を樹脂改質剤として使用した場合、成形体の耐衝撃性、成形性が大幅に改善され、透明度が大きく損なわれないことがわかる。
【0143】
(実施例17)
ポリブチレンテレフタレート樹脂 ジュラネックス2002(ポリプラスチック(株)製)80重量部、そして安定剤としてトパノールCA((株)リプレ製)0.3重量部、およびHALSとしてアデカスタブPEP−36(旭電化工業(株)製)0.3重量部を準備し、これらに実施例1で得られた架橋性シリル基含有重合体を20重量部およびジブチルスズジアセチルアセトナート0.2重量部を配合し、ベント付き二軸押出機(32mm、L/D=25.5)を用いて設定温度245℃で押出混練し、ペレット化した。得られたペレットを80℃で15時間乾燥後、設定温度250℃で射出成形し、物性評価用の成形体(厚さ1/8インチ)を作成した。この成形体の23℃におけるアイゾット衝撃強度、スパイラルフロー、および目視による透明度評価(◎…透明度高い、○…透明度普通、△…少し不透明、×…不透明)を表4に示す。
【0144】
(実施例18および19)
架橋性シリル基含有重合体として、それぞれ実施例2および3で得られた架橋性シリル基含有重合体を用いたこと以外は、実施例17と同様に成形体を作成し、評価を行った。結果を表4に示す。
【0145】
(比較例4)
上記実施例17において、架橋性シリル基含有重合体を配合せずに、同様に成形体を作成した。23℃におけるアイゾット衝撃強度、スパイラルフロー、および目視による透明度評価を表4に示す。
【0146】
【表4】
Figure 0004046552
実施例17〜19、および比較例4より、本発明の架橋性シリル基含有重合体を樹脂改質剤として使用した場合、耐衝撃性、成形性が大幅に改善され、透明度が大きく損なわれないことがわかる。
【0147】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、架橋性シリル基を有するビニル系重合体を簡便に製造することが可能であり、しかも精製工程を簡略化できるため、製造コストを低く抑えることができる。さらに本発明によれば、溶液重合のみならず、乳化重合、懸濁重合などの水系重合の手法にも適用可能であり、工業的に製造する場合において安全性が高く、製造コストを低く抑えることができる。この架橋性シリル基含有重合体を含有する硬化性組成物は、耐油性、耐熱性、耐候性、低汚染性、および圧縮永久歪特性に優れ、取り扱いが容易である。上記架橋性シリル基含有重合体を樹脂改質剤として用いた場合には、得られる成形体の耐衝撃性および成形性が大幅に改善され、透明性にも優れる。

Claims (12)

  1. 一般式(3)
    Figure 0004046552
    (式中、R 3 は2価の有機基であり、該2価の有機基は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、ケイ素原子、リン原子、および金属原子のうちの少なくともひとつを含んでいてもよく、高分子量体であってもよく;Z 3 は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1以上の1価の有機基であり、該1価の有機基は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、ケイ素原子、およびリン原子のうちの少なくともひとつを含んでいてもよく、高分子量体であってもよく;Z 3 は互いに同一でもよく、異なっていてもよい)で示される、少なくとも1種のチオカルボニルチオ基を有する化合物の存在下で、ラジカル重合可能なビニル系単量体をラジカル重合することにより、チオカルボニルチオ基を有する重合体を得る工程;得られた重合体のチオカルボニルチオ基をメルカプト基に変換する工程;および該メルカプト基を介して、該重合体を一分子中に架橋性シリル基とイソシアナト基とを有する化合物とカップリングさせる工程;を包含する、架橋性シリル基含有重合体の製造方法。
  2. 前記ビニル系単量体が、スチレン、α−メチルスチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリルアミド、アクリルアミド、メタクリロニトリル、アクリロニトリル、酢酸ビニル、無水マレイン酸、およびマレイミド化合物から選択される少なくとも1種の化合物である、請求項に記載の製造方法。
  3. 前記ビニル系単量体が、メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルから選択される少なくとも1種の化合物である、請求項1または2のいずれか1項に記載の製造方法。
  4. 前記チオカルボニルチオ基を有する重合体を、塩基、酸、および水素‐窒素結合含有化合物から選択される、少なくとも1種の化合物でなる処理剤と反応させることにより、該重合体のチオカルボニルチオ基が、メルカプト基に変換される、請求項1からのいずれかに記載の製造方法。
  5. 前記処理剤が、アンモニア、沸点が100℃以下の1級アミン化合物、および沸点100℃以下の2級アミン化合物から選択される少なくとも1種の化合物である、請求項に記載の製造方法。
  6. 前記一分子中に架橋性シリル基とイソシアナト基とを有する化合物が、一般式(4)で示される、請求項1からのいずれか1項に記載の製造方法:
    OCN−(CH2n−Si(R43-a(X)a (4)
    (式中、R4はアルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、置換アラルキル基、またはトリオルガノシロキシ基を示し;Xはヒドロキシル基または加水分解性基を示し;nは3以上の整数であり;aは1、2、または3であり;aが1の場合、2個のR4は同一でもよく、異なっていてもよく;aが2または3の場合、該2または3個のXは同一でもよく、異なっていてもよい)。
  7. 前記一分子中に架橋性シリル基とイソシアナト基とを有する化合物が、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、およびγ−イソシアナトプロピルジエトキシメチルシランから選択される少なくとも1種の化合物である、請求項に記載の製造方法。
  8. 前記カップリングが、ウレタン化触媒を使用して行われる、請求項1からのいずれか1項に記載の製造方法。
  9. 前記カップリングが、硫黄原子を有するスズ系ウレタン化触媒を使用して行われる、請求項に記載の製造方法。
  10. 請求項1からのいずれか1項に記載の製造方法によって得られる、架橋性シリル基含有重合体。
  11. 請求項10に記載の架橋性シリル基含有重合体を含有する、硬化性組成物。
  12. 縮合触媒を含有する、請求項11に記載の硬化性組成物。
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