JPWO2003029822A1 - 特異結合分析装置および特異結合分析方法 - Google Patents
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Abstract
高度な装置や操作を要することなく自動的に試料の希釈を行うことが可能で、さらに試料中の分析対象物の濃度に由来する影響が少なく、試料中の分析対象物を、簡便、迅速、かつ正確に定性または定量するため、空間形成部2、標識された第1の特異結合物質が保持された保持部5、および第2の特異結合物質が固定化された検出部6が配置されたユニットを少なくとも2本以上配列したストリップを用い、検出部6での特異結合反応に由来して得られる信号の強度に基づいて、試料中の分析対象物を定性または定量する。
Description
技術分野
本発明は、試料中の分析対象物質を簡便、迅速に定性または定量するための特異結合分析装置および特異結合分析方法に関する。
背景技術
近年、家庭内および地域医療の充実や、緊急性の高い臨床検査などの増加に伴い、臨床検査の専門家でなくとも、迅速、簡便で確実に測定が実施できる特異結合分析方法の開発がとみに望まれるようになってきた。
特異結合分析方法としては、抗原抗体反応を応用したイムノアッセイ、受容体を用いたレセプターアッセイ、相補的核酸配列のハイブリダイゼーションを用いた核酸プローブアッセイなど多くの方法が知られており、その特異性の高さから、臨床検査をはじめとする広い分野で繁用されている。
さらに具体的には、例えば、特異結合物質を不溶化した多孔性担体または微粒子充填型担体からなるクロマトグラフ域に、標識された特異結合物質と共に、または標識された特異結合物質とは別個に、分析対象物を含有することが予測される試料を浸透展開させる操作を含むクロマトグラフ分析法が挙げられる。この分析法はイムノアッセイの1種である。
このクロマトグラフ分析法は、クロマトグラフ域の担体の表面積が大きいため、特異結合物質を多量に不溶化でき、また特異結合反応を引き起こしうる反応分子間の衝突頻度が液相中の反応に比して大きいため、測定感度および測定時間の面から有利である。
しかし、従来の特異結合分析方法では、プロゾーン現象と呼ばれる問題が存在する。プロゾーン現象とは、特異結合反応に由来する信号強度に対する分析対象物の濃度が一義的に決定できない現象である。
特異結合分析方法では、分析対象物と特異結合物質との特異結合反応に由来して得られた信号の強度を測定することで分析対象物の定量または定性を行う。しかし、分析対象物が特異結合物質に対して過剰に存在する場合、特異結合物質と特異結合していない分析対象物が反応系に過剰に存在することになり、特異結合反応に由来して得られる信号強度は、試料中の分析対象物の量を反映しなくなる。
例えば、クロマトグラフ分析法では、標識された特異結合物質と特異結合した分析対象物と、標識された特異結合物質と特異結合していない分析対象物とが、競合して担体上に固定化された特異結合物質と特異結合反応する結果、標識材の寄与する反応に由来する信号の強度は低下する。このように、特異結合分析方法では、分析対象物を高濃度に含む試料中の分析対象物の量を低く判定する可能性がある。
そこでプロゾーン現象に影響を受けない濃度範囲に試料を希釈する方法が広く用いられているが、信号強度の減弱や、測定工程の煩雑化を招いていた。そのほか、プロゾーン現象が起こっていないか確認するために分析対象物に特異的に結合する特異結合物質を複数回加えて反応を行う方法も提案されているが、測定工程が煩雑である。
また、特異結合分析方法を用いた臨床検査は、目的によってその検査項目が異なり、場合によっては一つの臨床サンプルから複数の項目の検査(多項目測定)が求められることがある。医療施設などにおいては、大型機械を用いて日常的に臨床検査を行う場合もあるが、大型機械は一般的にコストおよびメンテナンスの面で問題があった。
さらに、臨床検査をはじめとする医療診断現場や家庭内において望まれるのは、迅速、簡便、正確さらには低価格で容易に入手可能な測定装置である。したがって特異結合分析方法を用いて試料中の分析対象物質を定性または定量する場合、簡便・迅速に特異結合反応に由来する信号を読み取る必要がある。さらに測定装置の簡素化、小型化が進めば、低価格の測定装置を開発することが可能となるため、動作行程の少ない信号測定原理が望まれている。
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑み、試料中の分析対象物の濃度に由来する影響が少なく、試料中の分析対象物を、小型で簡易な測定装置により簡便・迅速、かつ正確に定性および定量測定することができる特異結合分析方法を提供することを目的とする。
発明の開示
上記問題を解決するために、本発明は、分析対象物と、分析対象物に特異的に結合する特異結合物質との特異結合反応を用いて、試料中の分析対象物を定性または定量する特異結合分析装置であって、
前記試料を導入する導入口と、前記導入口より導入された試料を一時的に保持する空間形成部と、前記空間形成部に保持された試料が特異結合反応する場と、前記空間形成部から前記場に前記試料を排出する排出口とを有し、前記空間形成部と前記場とをそれぞれ複数個具備し、前記場毎に異なる条件で特異結合反応が起こることを特徴とする特異結合分析装置を提供する。
前記導入口は一つであることが好ましい。
ここで、前記条件とは、前記検出部で検知される信号強度を変化させ得る条件のことをいう。具体的には以下に説明する。
前記特異結合分析装置においては、前記複数個の空間形成部の内容量が互いに異なるのが好ましい。
前記特異結合物質が、少なくとも前記空間形成部または前記場に固定化されているのが好ましい。
また、前記標識材の特性(例えば粒径または材料)が前記場毎に異なるのが好ましい。
さらに、前記特異結合物質の種類が前記空間形成部または前記場毎に異なるのが好ましい。また、前記特異結合物質のアフィニティが、前記空間形成部または場毎に異なることも好ましい。加えて、前記特異結合物質の量が、前記空間形成部または場毎に異なることも好ましい。
また、前記導入口から前記空間形成部に試料が導入する速度が、前記排出口から前記場に前記試料が排出される速度より速いのが好ましい。
前記場が標識材により標識された第1の特異結合物質と第2の特異結合物質とを有し、前記第1の特異結合物質と前記第2の特異結合物質とが前記分析対象物を介して結合する特異結合反応に由来する信号に基づいて定性または定量するのが好ましい。
特に、前記第2の特異結合物質が前記場に固定化されているのが好ましい。
前記場が毛細管現象により前記試料が展開する展開層であり、前記検出部が前記展開層上に設けられ、前記第2の特異結合物質が前記検出部に固定化されているのが好ましい。
また、前記第1の特異結合物質が前記展開層上に保持されているのが好ましい。
さらに、前記試料が、前記複数個の展開層間を互いに移動しないことが好ましい。これを実現するためには、各展開層間に空間を設けたり、または各展開層間に壁を形成すればよい。かかる壁は対薬品性を有する材料で形成すればよい。
また、前記信号が呈色、蛍光または発光であるのが好ましく、本発明の特異結合分析装置はストリップ状の形状を有するのが好ましい。
また、前記第1の特異結合物質が前記場に含まれているのが好ましく、前記特異結合分析装置は、前記空間形成部に前記試料が導入されたことを認識するセンサを有するのが好ましい。
前記第1の特異結合物質および第2の特異結合物質の少なくとも一方が抗体であるのが好ましく、前記標識材が金属ゾル、染料ゾル、蛍光物質を含んだ粒子、または着色ラテックス粒子であるのが好ましい。
さらに本発明は、分析対象物を含む試料を導入する導入口と、前記導入口より導入された前記試料を一時的に保持する複数個の空間形成部と、前記空間形成部に保持された試料中の分析対象物との特異結合反応を行う複数個の場と、前記空間形成部から前記場に前記試料を排出する排出口とを有し、前記場毎に異なる条件で特異結合反応が起こることを特徴とする特異結合分析装置を用い、
前記空間形成部の内容量、前記空間形成部に保持される前記試料の希釈比および前記標識材の特性よりなる群から選択されるすくなくとも一種を調節することによって、前記試料中の分析対象物を定性または定量することを特徴とする特異結合分析方法にも関する。
前記特異結合分析方法においては、前記空間形成部の内容量を調節することで調整した、導入する前記試料の量を利用して前記試料中の分析対象物を定性または定量するのが好ましい。
また、前記空間形成部への前記試料の導入を認識するのが好ましく、また、前記空間形成部に検定用の試料を導入するのが好ましい。
また、前記空間形成部に前記第1の特異結合物質を含む溶液を担持させておき、担持させる前記溶液の量を調節することで前記試料中の分析対象物を定性または定量するのが好ましい。
また、前記特異反応結合に由来する信号の強度と前記希釈の倍率との積を解析することにより、前記試料中の分析対象物を定性または定量するのが好ましい。
また、前記場において、所定の閾値以下の信号強度を示した特異結合反応が行われる場の信号強度を解析することにより、前記試料中の分析対象物を定性または定量するのが好ましい。
また、前記閾値以下の信号強度を示した特異結合反応が行われる場の中で、最大の信号強度を示した特異結合反応が行われる部分の信号強度を解析することにより、前記試料中の分析対象物を定性または定量するのが好ましい。
また、前記閾値が、各特異結合反応が行われる部分の信号強度と分析対象物濃度との対応曲線を重ねたときに生じる交点信号強度の最小値未満であり、かつ各対応曲線の信号強度の極大値のうち、最小の信号強度未満であるのが好ましい。
さらに、前記閾値以下の信号強度を示した特異結合反応が行われる場の中で、最大の信号強度を示した特異結合反応が行われる部分の信号強度と分析対象物濃度との対応曲線を参照して試料中の分析対象物を定性または定量する際、前記閾値以下の信号強度を示した特異結合反応が行われる場の中で、最大の信号強度を示した特異結合反応が行われる部分の信号強度に対応する分析対象物濃度が複数存在した場合、その最小濃度を分析対象物濃度とみなすのが好ましい。
発明を実施するための最良の形態
本発明の特異結合分析装置は、分析対象物と、分析対象物に特異的に結合する特異結合物質との特異結合反応を用いて、試料中の分析対象物を定性または定量する特異結合分析装置であって、試料を導入する導入口と、前記導入口より導入された試料を一時的に保持する空間形成部と、前記空間形成部に保持された試料を特異結合反応が行われる場に排出する排出口とを備えるユニットを複数個有することを特徴とする。
ここで、複数個の前記空間形成部に対してそれぞれ独立に前記導入口を設けてもよい。この場合、前記空間形成部の数と前記導入口の数は同じである。また、複数個の空間形成部に対して前記導入口を一つだけ設けるのも好ましい。この場合、前記試料は単一の導入口からすべての空間形成部に供給される。
また、本発明に係る特異結合分析装置はストリップ形状を有しているのが好ましく、前記ユニットもストリップ形状を有するのが好ましい。したがって、本明細書においては、特異結合分析装置を試験ストリップと言うこともある。また、本発明の試験ストリップにおいては、空間形成部、標識された第1の特異結合物質が保持された保持部および第2の特異結合物質が固定化された検出部が配置されたユニットが少なくとも2本以上配列されていると言える。
ここで、特異結合反応が行われる場を形成する各ユニット間において、導入口、空間形成部および排出口はそれぞれ互いに分離して独立していることが好ましい。特に、前記場が展開層で構成される場合、各展開層は物理的に分離していることが好ましい。例えば、展開層間に空隙を設けたり、壁を設けたりするのが好ましい。こうすることで、複数の特異結合反応を同時に行わせることが可能になる。また、反応測定数の調節も自在である。
さらに、本発明の特異結合分析装置は、異なるユニットごとに前記空間形成部の内容量が互いに異なることを特徴とする。ここで、目的に応じて内容量を設定することが好ましい。こうすることで、試料の導入量や、流速など目的に応じた調節が可能となり、同一試料を導入した場合でも、異なる条件下での特異結合反応を同時に観察することが可能となる。
例えば、空間形成部の内容量を調節することで希釈比を調整することが可能である。この希釈比を利用することで、従来特異結合分析方法で問題となっていたプロゾーン現象を回避、また確認することが可能となる。つまり、本発明では、あらかじめ複数の空間形成部の内容量を調節しておくことで、自動的に試料の希釈を段階的に行わせることが可能となり、プロゾーン現象の影響を受けない分析対象物濃度で特異結合分析反応を行うことができる。また、段階的に希釈した試料の特異結合反応の結果を比較観察することで、プロゾーン現象を生じている濃度範囲が存在するのかを確認することができる。
空間形成部は、試料を一時的に保持するので、空間形成部の内容量を調節することで導入する試料の量を調節することができる。したがって、本発明では、試料を特異結合分析装置に正確かつ自動的に一定量分取、導入することができ、ディスペンサやスポイトなどのような定量機器を用いて試料を採取し、特異結合分析装置に導入する必要がない。よって、高度な装置や操作を要することなく、試料中の分析対象物を簡便、正確に定性または定量することが可能となる。
また、本発明の特異結合分析装置は、前記空間形成部に検定用の試料を導入することを特徴とする。検定用の試料の例として、分析装置が使用するべき検量線を決定するため標準物質や、分析装置の品質保証のための標準物質などが挙げられる。分析装置の品質保証とは、分析装置自身の応答性や、分析装置で用いる試薬の反応特性などを意味する。
定量を目的とした特異結合分析方法では、分析対象物と、分析対象物に特異的に結合する特異結合物質とを用いて特異結合反応を行うと共に、その濃度を決定するためには、分析装置作成時にあらかじめ標準物質を用いて特異結合反応を行うことで導き出された濃度換算のための検量線を使用する方法が広く用いられている。
しかし、実際は分析装置のロット間差や保存中の性能変化などの要因から、分析装置作成時に検量線は複数用意されている。このため各分析装置に適用するべき濃度換算用の検量線を決定するために、ロット毎に検量線決定用分析装置と検量線決定用標準物質とを用意しなければならない。
本発明では、例えば既知濃度の標準物質を用いて自動的に希釈系列を作成させ特異結合反応を行い、用意された反応曲線と比較することで、分析装置が品質保証可能な状態かを確認することができる。このように本発明では、検定用の試料として標準物質を用いて特異結合反応を行い、分析装置の応答性や試薬の反応特性などを調べることで、検量線決定や品質保証が可能となる。
本発明における分析対象物は、それと特異的に結合する特異結合物質が存在するものであればよく、例えば、抗体や抗原として機能する各種蛋白質、ポリペプチド、糖蛋白質、多糖類、複合糖脂質、核酸、エフェクター分子、レセプター分子、酵素、インヒビターなどが挙げられる。さらに具体的には、α−フェトプロテイン、癌胎児性抗原(CEA)、CA125、CA19−9などの腫瘍マーカーや、β2−ミクログロブリン(β2m)、フェリチンなどの各種蛋白質、糖蛋白質または複合糖脂質、エストラジオール(E2)、エストリオール(E3)、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)、黄体形成ホルモン(LH)、ヒト胎盤ラクトゲン(hPL)などの各種ホルモン、HBs抗原、HBs抗体、HBc抗原、HBc抗体、HCV抗体、HIV抗体などの各種ウイルス関連抗原またはウイルス関連抗体、各種アレルゲンおよびこれに対応するIgE抗体、麻薬性薬物、医療性薬物およびこれらの代謝産物、ウイルスおよび腫瘍関連ポリヌクレオチド配列の核酸などが挙げられる。
本発明における試料は、分析対象物が含まれると予測される液体であればよく、例えば、尿、血清、血漿、全血、唾液、涙液、髄液、乳頭などからの分泌液などが挙げられるが、粘液、体組織または細胞などの固形、ゲル状またはゾル状物を、緩衝液、抽出液または溶解液などの液体に懸濁または溶解させたものであってもよい。
本発明における特異結合物質は、分析対象物に対して特異的に結合する物質であればよく、例えば、抗体、抗原、糖蛋白質、多糖類、複合糖脂質、核酸、エフェクター分子、レセプター分子、酵素、インヒビターなどが挙げられる。
また、本発明による特異結合分析装置を用いる特異結合分析方法においては、分析対象物と、分析対象物に特異的に結合する特異結合物質とを反応させる工程において、標識材により標識された第1の特異結合物質と、第2の特異結合物質とを用い、標識された前記第1の特異結合物質と前記第2の特異結合物質とが分析対象物を介して結合させることが好ましい。
本発明における特異結合分析装置を用いる特異結合分析方法は、標識材により標識された第1の特異結合物質を含む溶液の量を調節することで試料中の分析対象物を定性または定量することを特徴とする。標識材により標識された第1の特異結合物質を含む溶液の量を調節することで、分析対象物と、分析対象物に特異的に結合する特異結合物質とを反応させる工程において、試料の希釈を行うことが可能となり、この希釈比を利用することで、従来特異結合分析方法で問題となっていたプロゾーン現象を回避および確認することが可能となる。
本発明においては、標識材の特性を特異結合反応が行われる場毎に調節することで試料中の分析対象物を定性または定量することもできる。標識材の特性とは、例えば、標識材の粒径や材料のことである。標識材の特性を変化させると、標識材から読み取ることのできる信号の種類やその強度は変化する。したがって、試料中の分析対象物濃度の解析に適した信号を発する反応場を選択することが可能となり、試料の希釈を行うことなく従来特異結合分析方法で問題となっていたプロゾーン現象の回避、確認が可能となる。また、標識材の特性を利用して、標識材により標識された第1の特異結合物質の量を特異結合反応が行われる場毎にそれぞれ調節すると、特異結合反応に参加する分析対象物と特異結合物質との構成比を特異結合反応が行われる場毎に調節することが可能となり、試料を希釈することなく、プロゾーン現象を生じない条件下での特異結合反応の観察が可能となる。このように、従来特異結合分析方法で問題となっていたプロゾーン現象の回避、確認が可能となる。
本発明においては、標識材により標識された第1の特異結合物質および/または第2の特異結合物質を特異結合反応が行われる場毎に調節することで試料中の分析対象物を定性または定量してもよい。特異結合反応が行われる場毎に、特異的に結合する分析対象物が異なる特異結合物質を配置すると、検出する分析対象物を特異結合反応が行われる場毎に調節することが可能となる。したがって、試料中に複数の分析対象物が存在する場合でも、目的に応じた分析対象物に特異的に結合する特異結合物質を特異結合反応が行われる場毎に配置することで、複数の分析対象物を同時に検出することが可能となり、臨床分野から求められている多項目測定に対応することも可能となる。
本発明における特異結合分析装置は、標識材により標識された第1の特異結合物質を含む溶液が空間形成部に封入されていてもよい。こうすることで、導入口から試料が導入され、空間形成部に保持されている間に、試料中の分析対象物は、標識材により標識された第1の特異結合物質と特異結合反応を行うことができる。さらに、空間形成部に封入する標識材により標識された第1の特異結合物質を含む溶液量を調節することで、自動的に試料の希釈を段階的に行わせることが可能となり、従来特異結合分析方法で問題となっていたプロゾーン現象を回避、また確認することが可能となる。
なお、本発明における特異結合分析装置において、各空間形成部の内容量が等しい場合、標識材により標識された第1の特異結合物質は空間形成部に封入されていなくてもよい。例えば、標識材により標識された第1の特異結合物質の量を特異結合反応が行われる場毎にそれぞれ調節すると、特異結合反応に参加する分析対象物と特異結合物質との構成比を特異結合反応が行われる場毎に調節することが可能となり、試料を希釈することなく、プロゾーン現象を生じない条件下での特異結合反応の観察が可能となり、従来特異結合分析方法で問題となっていたプロゾーン現象を回避、または確認することが可能となる。
他にも、特異結合反応が行われる場毎に標識材により標識されたアフィニティの異なる第1の特異結合物質を配置することで、アフィニティの差を利用して、特異結合反応が行われる場毎に分析対象物と特異結合物質との特異結合反応を制御することが可能となり、試料を希釈することなく、プロゾーン現象を生じない条件下での特異結合反応の観察が可能となり、従来特異結合分析方法で問題となっていたプロゾーン現象を回避、または確認することが可能となる。
また、特異結合反応が行われる場毎に、特異的に結合する分析対象物が同一であるが、その特性が異なる特異結合物質を配置することで、特性の差を利用して特異結合反応が行われる場毎に分析対象物と特異結合物質との特異結合反応を制御することができる。例えば、アフィニティの異なる特異結合物質を配置した場合、アフィニティの差を利用して、特異結合反応が行われる場毎に分析対象物と特異結合物質との特異結合反応を制御することが可能となり、試料を希釈することなく、プロゾーン現象を生じない条件下での特異結合反応の観察が可能となる。つまり、従来特異結合分析方法で問題となっていたプロゾーン現象の回避、確認が可能となる。なお、第1の特異結合物質と第2の特異結合物質の組み合わせを入れ替えるだけでも特異結合反応の制御を行うことが可能である。
さらに、本発明の特異結合分析装置においては、前記ユニットが特異結合反応に由来して得られた信号が検出される検出部を有し、前記検出部に第2の特異結合物質が実質的に固定化されていることが好ましい。ここで、第2の特異結合物質は、前記場を構成する展開層が湿潤状態にあるときにも自由に移動できないように検出部に固定化されている。このようにすると、試料の流れと共に未反応物は洗い流されるため、特異結合反応後、未反応物の分離操作を行うことなしに特異結合反応に由来する信号を検出部で検出することができる。なお、本発明の装置は、複数の検出部を有していてもよい。
本発明における展開層は、試料中の分析対象物および標識材により標識された第1の特異結合物質が展開される場である。例えば、多孔質担体やゲル担体などが挙げられる。このなかでは、ニトロセルロースが好ましい。この材料はあらかじめ増感しなくても固有に蛋白質と結合する能力を有するため、紙のような他の展開層材料に比べて優れている。抗体のような特異結合物質を直接ニトロセルロースに塗布することで、確実に固定化することができ、特異結合物質の持つ特異結合能力の妨げとなるような化学処理を全く必要としない。例えば展開層材料が紙の場合は、抗体を固定化するのにCNBr、カルボニルジイミダゾールまたは塩化トレシルなどを用いた化学結合を行うことが必要となる。
さらに、ニトロセルロースはいろいろな大きさの気孔のものを入手することができるため、試料流量など条件に合わせて展開層材料を選択することが容易になる。ニトロセルロースシートはプラスチックシートなどで裏打ちして、取り扱い上の強度を大きくするのが望ましい。これは裏打ち材料シートの上にニトロセルロースの薄膜を形成することによって容易に製造することができる。
検出部に抗体を固定化した後、展開層の抗体固定化部以外の部分をブロッキングし、展開層への非特異吸着を低減させることが好ましい。ブロッキングは蛋白質(例えば牛の血清アルブミンまたは乳蛋白質など)、ポリビニルアルコールまたはエタノールアミン、またはこれらの組み合わせなどを用いて処理することで達成される。
本発明における空間形成部は、試料を一時的に保持する空間を形成するものであればよく、さらに、その体積により試料を特異結合分析装置に正確かつ自動的に一定量分取する役割と、試料導入後のデバイス取り扱い時の汚染防止保護材としての役割も有する。例えば、ABS、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂材料のほか、金属、ガラスなどの溶液不透過性の材料を用いて構成することが可能である。
本発明における導入口は、試料を導入する口であり、排出口は空間形成部に保持された試料を特異結合反応が行われる場に試料を排出する口である。ここで、導入口から空間形成部に試料が導入する速度は、排出口から特異結合反応が行われる場に試料が排出される速度より充分速いことが好ましい。このようにすることで、導入口に接触させた試料は、毛細管現象により空間形成部に流入し、その流入量は、空間形成部の内容量と実質的に等しくなる。したがって、試料を特異結合分析装置に正確かつ自動的に一定量分取することができる。さらに、試料流入後、空間形成部において試料を一時的に保持することが可能となり、空間形成部内に試薬を封入した場合でも、試料と試薬との反応時間を確保することができる。
本発明における信号としては、標識材の寄与する反応によって生成し、検出可能なものであればよく、例えば、蛍光光度計で計測可能な蛍光、発光光度計で計測可能な発光、目視判定および色差計で計測可能な呈色などが挙げられる。この場合、検出部では反射された光、または検出部において発生した蛍光または発光の強度などを検出することになる。
本発明の一実施の形態において、信号強度測定装置に装着された試験ストリップに試料を導入し、または試料を導入した試験ストリップを前記信号強度測定装置に装着した後、肉眼での目視で、または、信号の性質に応じた好適な外部の計測器で、検出部における信号の変調の程度を計測する。このなかでは、前記信号強度測定装置に試験ストリップを装着した後、前記試験ストリップに試料を導入して信号の検出を行うことが好ましい。
本発明の一実施の形態においては、複数の特異結合反応が行われる場から発せられる、特異結合反応に由来する信号を、特異結合反応が行われる場毎に区別し、連続的に読み取ることで、試料中の分析対象物を定性または定量することが好ましい。こうすることで複数の特異結合反応を行う場合にも、信号の読み取りの工程に要する時間を短縮することができ、迅速な結果判定が望まれる臨床検査機器および家庭用センサに対応することが可能となる。
また、特異結合反応が行われる場および/または信号を読み取る装置が、一定方向に動くことで、特異結合反応が行われる場から発せられる信号を連続的に読み取ることが好ましい。例えば、信号を読み取ることのできる検出部を複数個並列に配置したストリップを用いた場合、信号強度測定装置を検出部に沿った方向に走査させると複数の特異結合反応から得られる信号を連続的に測定することが可能である。逆に信号強度測定装置を固定し、ストリップを走査させても同様の効果が期待できる。このようにすることで、信号強度の測定に要する装置が簡略化でき、装置の小型化・低価格化も可能となる。
さらに、本発明の特異結合分析装置を使用する際には、導入口から試料が導入されたことを認識する工程を行うのが好ましい。この工程において用いる認識手段として、例えば、試料導入前の乾燥状態の展開層の導電率と、試料導入により湿潤状態になった展開層の導電率との差異を利用することにより、試料が導入され、測定が開始したことを検知する測定開始検知器などが挙げられる。導入口から試料が導入されたことを認識した時間を基準として、測定時間の計測を開始することが好ましい。このようにすると、信号の検出時間、すなわち試料導入から信号強度測定までの時間を正確に管理することができ、測定手技による誤差を低減することができる。
また、標識された第1の特異結合物質は展開層に含まれていることが好ましい。このようにすると、試験ストリップに導入された試料は展開層を展開する際、標識された第1の特異結合物質と反応するので、試料と標識された第1の特異結合物質とを反応させる工程を簡略化することができる。
さらに、標識された第1の特異結合物質が乾燥状態であることが好ましい。このようにすると、標識された第1の特異結合物質は、展開層が乾燥状態にあるときは展開層内の保持部に保持されるが、試料の導入などによって展開層が湿潤されると、展開層内を自由に移動できる。展開層材料は帯状またはシート状として、前記展開層上において試薬を空間的に別個の区域に塗布し、試料導入時にシートまたは帯の片側または端部から他方へ浸透させる。
なお、試料は、あらかじめストリップ外で標識された第1の特異結合物質と反応させた後に、ストリップに導入してもよい。この場合、標識された第1の特異結合物質を展開層や空間形成部に含まなくてもよい。
本発明における第1の特異結合物質および第2の特異結合物質は、分析対象物に対して特異的に結合する物質であればよく、例えば、抗体、抗原、糖蛋白質、多糖類、複合糖脂質、核酸、エフェクター分子、レセプター分子、酵素、インヒビターなどが挙げられる。
このなかでは、特異性が高いという点で、第1の特異結合物質および第2の特異結合物質のうち少なくとも1つは抗体であることが好ましく、さらにはモノクローナル抗体であるのが好ましい。また、これら第1の特異結合物質および第2の特異結合物質は、分析対象物の異なるエピトープに対して特異性を持つことが好ましい。分析対象物が同一のエピトープを複数個持つときは、同一の特異結合物質を用いてもよい。
本発明における標識材としては、その存在を容易に検出できるものであれば任意の物質を用いてもよい。好適には直接標識、すなわち自然状態にあるときに裸眼で見えるか、または光学フィルタの使用および/または紫外光などの刺激を加えて蛍光を促進する方法などの使用により容易に見える物質とするのがよい。直接標識は、別の試薬を加えなくても検出可能な信号を生成するために、分析結果を瞬時に得ることができ、さらに、丈夫で安定性があるため、乾燥状態で保存される分析装置に容易に使用することができる。
直接標識として、例えば染料ゾル、金属ゾル、蛍光物質を含んだ粒子または着色ラテックス粒子のような微細な着色粒子が特に好適である。このようにすると、標識を小さな区域または容積の中に集中することができ、濃く着色された領域を形成して容易に検出可能な信号を生じることができる。これらのなかでも金コロイド粒子が最も好適である。この信号の評価は目測または必要に応じて器具を用いて行うことができる。
一方、アルカリ性フォスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼなどの酵素類のような間接標識を用いることもできる。もっとも、可視信号を検出できるようになるためには基質のような展開試薬を1種類またはそれ以上添加することが必要になるのが普通であるため、簡便性の面から間接標識は直接標識に劣る。このような展開試薬を添加する場合は、多孔質の展開層材料に試薬を含ませて、試料に溶解または分散させればよい。別の方法として、試料と展開試薬をあらかじめ混和し、結合反応が生じた後に試験ストリップに導入してもよい。
なお、標識と特異結合物質との結合は、必要に応じて共有結合または疎水結合によって行うことができる。
本発明の特異結合分析装置の好ましい態様において用いられる試験ストリップにおいて、試料中に分析対象物が存在する場合は、標識された第1の特異結合物質と検出部に固定化された第2の特異結合物質とが、分析対象物を介して結合するサンドイッチ反応が生じ、検出部において、標識された第1の特異結合物質が結合される。この検出部において結合された、標識された第1の特異結合物質からの信号の強度を測定し、信号の強度に基づいて、試料中の分析対象物を定性または定量する。
ここで、試料が検出部に向かうにつれて、標識された第1の特異結合物質も移動すればよく、検出部を越えても試料が引き続き流れるようにすることが好ましい。そのためには十分な試料を試験ストリップに導入し、検出部において結合反応に参加しない余分の標識された第1の特異結合物質が、検出部を越えて続く試料の流れによって、検出部から洗い流されるようにする。ここで、展開層材料の末端部に吸収部を設けてもよい。吸収部の材料としては、未結合の配合体を検出部から洗い流せるように十分な吸収能力を持つものであればよく、例えば、ガラス繊維濾紙GA200(東洋株式会社製)などが挙げられる。
さらに、試料中の分析対象物を定性または定量するために、信号強度と希釈倍率の積を用いて解析することが好ましい。本発明では、濃度既知の標準試料について、分析対象物の濃度と検出部での信号強度との対応関係をあらかじめアッセイして検量線を作成しておき、例えば、プロゾーン現象の影響を受けない分析対象物濃度に自動的に試料の希釈を行った被検試料について測定した信号強度から、検量線を使って被検試料中に含まれる分析対象物の濃度を決定することができる。この場合、検量線より得られる分析対象物濃度と希釈率との積が試料中の分析対象物濃度となる。
また、本発明の特異結合分析装置を用いた特異結合分析方法は、ある閾値以下の信号強度を示した特異結合反応が行われる場の信号強度を解析することにより、試料中の分析対象物を定性または定量することを特徴とする。ここで、閾値はプロゾーン現象を生じない濃度の分析対象物が示す信号強度未満であることが好ましい。こうすることで、プロゾーン現象を回避した分析対象物の定性または定量が可能となる。
さらに、ある閾値以下の信号強度を示した特異結合反応が行われる場のなかで、最大の信号強度を示した特異結合反応が行われる場の信号強度を解析することにより、試料中の分析対象物を定性または定量することが好ましい。本発明では、濃度既知の標準試料について、分析対象物の濃度と検出部での信号強度との対応関係をあらかじめアッセイして検量線を作成する。検量線を用いて分析対象物の定量を行う場合、プロゾーンが生じていない直線領域において、信号強度を濃度で除した値、つまり検量線の傾きが大きい検量線を用いることで、定量性が良くなる。
また、本発明の特異結合分析装置を用いた特異結合分析方法は、複数の特異結合反応が行われる場の信号強度を比較して分析対象物の定性または定量を行うが、ある閾値以下の信号強度を示した特異結合反応が行われる場のなかで、検量線の直線領域を比較した場合、検量線の傾きが大きいものほど大きい信号強度を示す。したがって、所定の閾値以下の信号強度を示した特異結合反応が行われる場のなかで、最大の信号強度を示した特異結合反応が行われる場の信号強度を解析することにより、より正確な試料中の分析対象物を定性または定量が可能となる。
さらに、本発明では、閾値以下の信号強度を示した特異結合反応が行われる場のなかで、最大の信号強度を示した特異結合反応が行われる場の信号強度と分析対象物濃度との対応曲線を参照して試料中の分析対象物を定性または定量する際、閾値以下の信号強度を示した特異結合反応が行われる場のなかで、最大の信号強度を示した特異結合反応が行われる場の信号強度に対応する分析対象物濃度が複数存在した場合、その最小濃度を分析対象物濃度とすることを特徴とする。また閾値は、各特異結合反応が行われる場の信号強度と分析対象物濃度との対応曲線を重ね合わせた時に生じる交点の信号強度の最小値未満であり、かつ各対応曲線の信号強度の極大値のうち、最小の信号強度未満であることを特徴とする。
本発明では、濃度既知の標準試料について、分析対象物の濃度と検出部での信号強度との対応関係をあらかじめアッセイして検量線を作成する。
本発明の特異結合分析装置を用いる特異結合分析方法は、複数の特異結合反応が行われる場の信号強度を比較して分析対象物の定性または定量を行うが、それぞれの特異結合反応が行われる場の検量線を重ね合わせたとき、検量線の中に、プロゾーン現象を生じているものが存在すると、検量線間で交点が発生する可能性が生じる。これら交点の信号強度の最小値未満であり、かつ各検量線の信号強度の極大値のうち、最小の信号強度未満を閾値として設定し、閾値以下の信号強度を示した特異結合反応が行われる場を選択し、それらの場の中で信号強度を比較して最大の信号強度を示す場を選び、その場の信号強度を解析することにより、試料中の分析対象物を定性または定量する。
本発明では、複数の特異結合反応が行われる場の対応曲線を用いて試料中の分析対象物の定性または定量を行うので、従来の単一の対応曲線を用いた特異結合分析方法に比べて定性、定量範囲が拡大する。試料中の分析対象物濃度が、それぞれの特異結合反応が行われる場の各検量線を重ね合わせたときに生じる交点の分析対象物濃度の最小値未満の場合、試料を導入した特異結合反応が行われる場の信号強度を比較すると、検量線のプロゾーンが生じていない直線領域における傾きの大きい場ほど試料中の分析対象物が示す信号強度は大きくなる。したがって、それぞれの特異結合反応が行われる場の検量線のプロゾーンが生じていない直線領域における傾きと、信号強度の関係がこのような場合、試料中の分析対象物を定性または定量する場として選択した場の、信号強度に対応する分析対象物濃度が複数存在する場合、対応する濃度の中で最小の濃度が試料中の分析対象物濃度である。
一方、試料中の分析対象物濃度が、それぞれの特異結合反応が行われる場の各検量線を重ね合わせたときに生じる交点の分析対象物濃度の最小値以上の場合、試料を導入した特異結合反応が行われる場における、試料中の分析対象物が示す信号強度の大小関係と、検量線のプロゾーンが生じていない直線領域における傾きの大小関係とが、対応しなくなる。それぞれの特異結合反応が行われる場の検量線のプロゾーンが生じていない直線領域における傾きと、信号強度の関係がこのような場合、本発明における特異結合分析装置は、試料中の分析対象物濃度が定性または定量範囲外であると判断する。この場合、さらに希釈した試料を用いるか、高濃度分析対象物対応の特異結合分析装置を用いて試料中の分析対象物を定性または定量する。
本発明では、それぞれの特異結合反応が行われる場の各検量線を重ね合わせたときに生じる交点の分析対象物濃度の最小値未満において、試料中の分析対象物濃度が定性または定量が可能であるため、この交点の分析対象物濃度の最小値が大きい装置を準備することで、試料中の分析対象物の定性、定量範囲が拡大する。またある種の臨床マーカーのように、一定範囲の正常値以上であるかどうかが問題となるような分析対象物の場合、正常値付近の値を閾値として設定することで、異常値を示しているかどうかの判断基準となり臨床上有用である。
検量線間で交点が生じていない場合、ある閾値以下の信号強度を示した特異結合反応が行われる場のなかで、検量線の直線領域の傾きが最も大きい場の信号強度を解析することで分析対象物の定性または定量を行う。この場合の閾値は、各特異結合反応が行われる場の検量線のうち、プロゾーンが生じていない直線領域における検量線の傾きが最も大きい検量線の信号強度の極大値未満とする。
このように、本発明を用いて、各特異結合反応が行われる場の信号強度の大小関係と、検量線のプロゾーンが生じていない直線領域における傾きの大小関係とを比較し、本発明を利用して設定した閾値以下の信号強度を示した特異結合反応が行われる場の中で信号強度を比較して最大の信号強度を示す場の信号強度を解析することで、従来特異結合分析反応で問題となっていたプロゾーン現象に影響を受けることなく試料中の分析対象物の定性または定量が可能となる。
実施の形態1
ここで、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
図1は本実施の形態に係る特異結合分析装置である試験ストリップを構成する単一のユニットの概略斜視図であり、図2は図1に示すユニット複数個を連結してなる本発明に係る試験ストリップの概略斜視図である。さらに図3は、解析装置と本発明の試験ストリップとの構成を示す概略断面図である。
代表例として、分析対象物としてhCGを用い、第1の特異結合物質および第2の特異結合物質として、hCGとのサンドイッチ反応に参加し得る、hCGに対するモノクローナル抗体を用い、標識材として金コロイドを用いる場合(直接標識)について説明する。
図3に示すように、ストリップは、内容量が等しい空間形成部2が配置された展開層1により構成されている。さらに展開層1において、保持部5には、第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体が、金コロイドに標識された状態で保持されており、検出部6には、第2の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体が固定化されており、展開層1の上面には、第1の電極11および第2の電極12が設けられている。また、解析装置は、光源7、光検出器8、解析器9、および試料がストリップに導入されたことを認識する手段である測定開始検知器10により構成されている。
検出部6に光源7から所定の波長(例えば520nm)の光を照射し、その反射光を光検出器8で検出した後、解析器9で解析することにより、検出部6における吸光度を測定する。測定波長は、検出部6での試料や標識材の呈色に適した波長を選べばよい。
hCGを含む試料を試験ストリップに導入する。導入口3に試料を接触させると、毛細管現象により試料が一定量空間形成部2に流入する。試料の導入により展開層1が乾燥状態から湿潤状態に変わると、展開層1における導電率が変化する。第1の電極11および第2の電極12を用いて、あらかじめ試料導入前に、展開層1の乾燥状態における導電率を測定し、試料導入時の導電率をモニターしておくことにより、展開層1における導電率変化から、測定開始検知器10において試料の導入を検知することができる。試料の導入を検知すると、その検知情報が測定開始検知器10から解析器9に送られ、試料の導入を検知した時間を0として、解析器9において測定時間の計測を開始する。
解析器9は、光源7および光検出器8を制御して、あらかじめ指定した時間に検出部6における吸光度を自動的に測定する機能を有する。空間形成部2に一時的に保持された試料は、排出口4より排出され、展開層1上を展開し、保持部5に到達し、金コロイドと結合した抗hCGモノクローナル抗体と試料中のhCGにより、標識された抗原抗体複合体が形成される。つぎに、検出部6に試料が到達すると、標識された抗原抗体複合体が固定化された抗hCGモノクローナル抗体と結合することにより、検出部6において標識された抗hCGモノクローナル抗体が捕捉され、呈色が生じる。
検出部6における標識材の吸光度は、試料中のhCG量を反映している。本発明の分析例では、あらかじめ、分析装置作成時に抜き取り検査を行い、標準物質を用いて検出部6での吸光度を測定し、さらに同ロットの分析装置を用いて各hCG濃度に対して測定した検出部6での吸光度を各hCG濃度に対してプロットした検量線を用意する。このようにして、分析装置作成時に濃度換算のための検量線を複数用意しておき、分析装置使用時に、標準物質を用いて測定を行い、標準物質が示した検出部6での吸光度から、各分析装置に適用するべき濃度換算用の検量線を決定する。この検量線を利用することで、検出部6での吸光度から、展開層1に導入した試料中のhCG濃度を計算することができる。
ここで、図19に、単一の導入口を有する本発明に係るストリップ(特異結合分析装置)の概略斜視図を示す。図19に示すように、本発明においては、ストリップをユニット複数個および1個の導入口で構成してもよい。図2に示すストリップにおいては、複数のユニットそれぞれの導入口に試料を導入しなければならないが、図19に示すストリップにおいては、1個の導入口3aに1回だけ試料を導入するだけで、毛細管現象により、各ユニットに試料を導入させることができる。なお、図19における符号が示す構成要素と、図1における符号が示す構成要素は同じである。
実施の形態2
本発明の実施の形態2も、図1〜3に示す構成を採る。
本実施の形態として、分析対象物がhCGであり、第1の特異結合物質および第2の特異結合物質を、hCGとのサンドイッチ反応に参加し得る、hCGに対するモノクローナル抗体とし、標識材として金コロイドを用いて直接標識した場合について説明する。
展開層1において、保持部5には、第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体が、金コロイドに標識された状態で保持されており、検出部6には、第2の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体が固定化されており、展開層1の上面には、第1の電極11および第2の電極12が設けられている。
ストリップにおける空間形成部2それぞれの内容量は等しいが、保持部5における金コロイドに標識された第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体の保持量が異なる展開層1により構成されている。解析装置は、光源7、光検出器8、解析器9、および試料の試験ストリップへの導入を認識する測定開始検知器10により構成される。
検出部6に光源7から所定の波長(例えば520nm)の光を照射し、その反射光を光検出器8で検出した後、解析器9で解析することにより、検出部6における吸光度を測定する。測定波長は、検出部6での試料や標識材の呈色に適した波長を選べばよい。
hCGを含む試料を試験ストリップに導入する。導入口3に試料を接触させると、毛細管現象により試料が一定量空間形成部2に流入する。試料の導入により展開層1が乾燥状態から湿潤状態に変わると、展開層1における導電率が変化する。第1の電極11および第2の電極12を用いて、あらかじめ試料導入前に、展開層1の乾燥状態における導電率を測定し、試料導入時の導電率をモニターしておくことにより、展開層1における導電率変化から、測定開始検知器10において試料の導入を検知することができる。試料の導入を検知すると、その検知情報が測定開始検知器10から解析器9に送られ、試料の導入を検知した時間を0として、解析器9において測定時間の計測を開始する。
解析器9は、光源7および光検出器8を制御して、あらかじめ指定した時間に検出部6における吸光度を自動的に測定する機能を有する。空間形成部2に一時的に保持された試料は、排出口4より排出され、展開層1上を展開し、保持部5に到達し、金コロイドと結合した抗hCGモノクローナル抗体と試料中のhCGにより、標識された抗原抗体複合体が形成される。つぎに、検出部6に試料が到達すると、標識された抗原抗体複合体が固定化された抗hCGモノクローナル抗体と結合することにより、検出部6において標識された抗hCGモノクローナル抗体が捕捉され、呈色が生じる。
検出部6における標識材の吸光度は、試料中のhCG量を反映している。本発明の分析例では、展開層1毎の空間形成部2の内容量が等しいため、展開層1に導入される試料量は等しいが、保持部5に保持された金コロイドに標識された第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体の保持量が異なるため、検出部6における吸光度は展開層1毎に異なる。したがって、試験ストリップに試料を導入すると、自動的に構成比の異なる抗原抗体反応を同時に観察することができる。
本発明では、あらかじめ展開層1毎に保持部5に保持された金コロイドに標識された第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体の保持量を調節しておくことで、特異結合反応に参加する分析対象物と特異結合物質の構成比を展開層1毎に自動的に調節することが可能であり、また分析対象物と特異結合物質の構成比の異なる特異結合反応の結果を比較観察することで、プロゾーン現象の影響を受けない構成比の展開層1における検出部6における標識材の吸光度から、検量線を利用することで、試験ストリップに導入した試料中のhCG濃度を計算することができる。
実施の形態3
本実施の形態について、図6、7および3を参照しながら詳細に説明する。
図6は本実施の形態に係る特異結合分析装置である試験ストリップを構成する単一のユニットの概略斜視図であり、図7は図6に示すユニット複数個を連結してなる本発明に係る試験ストリップの概略斜視図である。なお、本実施の形態に係る特異結合分析装置の構成は図3に示すものと同じである。
本実施の形態として、分析対象物がhCGであり、第1の特異結合物質および第2の特異結合物質を、hCGとのサンドイッチ反応に参加し得る、hCGに対するモノクローナル抗体とし、標識材として金コロイドを用いて直接標識した場合について説明する。
展開層1上に配置された空間形成部2には、金コロイドで標識された第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体溶液が封入されており、各空間形成部2に封入する抗hCGモノクローナル抗体溶液濃度や封入する抗体溶液量は自由に調節することができる。
さらに展開層1において、検出部6には、第2の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体が固定化されており、展開層1上面には、第1の電極11および第2の電極12が設けられている。また解析装置は、光源7、光検出器8、解析器9、および試料が試験ストリップに導入されたことを認識する手段である測定開始検知器10により構成されている。検出部6に光源7から所定の波長(例えば520nm)の光を照射し、その反射光を光検出器8で検出した後、解析器9で解析することにより、検出部6における吸光度を測定する。測定波長は、検出部6での試料や標識材の呈色に適した波長を選べばよい。
hCGを含む試料を試験試薬用のストリップに導入する。導入口3に試料を接触させると、毛細管現象により試料が空間形成部2に流入する。試料の導入により展開層1が乾燥状態から湿潤状態に変わると、展開層1における導電率が変化する。第1の電極11および第2の電極12を用いて、あらかじめ試料導入前に、展開層1の乾燥状態における導電率を測定し、試料導入時の導電率をモニターしておくことにより、展開層1における導電率変化から、測定開始検知器10において試料の導入を検知することができる。試料の導入を検知すると、その検知情報が測定開始検知器10から解析器9に送られ、試料の導入を検知した時間を0として、解析器9において測定時間の計測を開始する。
解析器9は、光源7および光検出器8を制御して、あらかじめ指定した時間に検出部6における吸光度を自動的に測定する機能を有する。空間形成部2に流入した試料は、空間形成部2に封入された金コロイドで標識された第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体溶液と接触して両者は混合され、金コロイドと結合した抗hCGモノクローナル抗体と試料中のhCGにより、標識された抗原抗体複合体が形成される。空間形成部2に一時的に保持された試料は、排出口4より排出され、展開層1上を展開し、検出部6に試料が到達すると、標識された抗原抗体複合体が固定化された抗hCGモノクローナル抗体と結合することにより、検出部6において標識された抗hCGモノクローナル抗体が捕捉され、呈色が生じる。
検出部6における標識材の吸光度は、試料中のhCG量を反映している。本発明の分析例では、あらかじめ、分析装置作成時に抜き取り検査を行い、標準物質を用いて検出部6での吸光度を測定し、さらに、同ロットの分析装置を用いて各hCG濃度について測定した検出部6での吸光度を各hCG濃度に対してプロットした検量線を用意する。このようにして、分析装置作成時に濃度換算のための検量線を複数用意しておき、分析装置使用時に、標準物質を用いて測定を行い、標準物質が示した検出部6での吸光度から、各分析装置に適用するべき濃度換算用の検量線を決定する。この検量線を利用することで、検出部6での吸光度から、展開層1に導入した試料中のhCG濃度を計算することができる。
ついで、定量を行いたいhCGを含む試料を複数の空間形成部2を有する同ロットの試験試薬用のストリップに導入する。ストリップにおける各空間形成部2に封入されている総抗hCGモノクローナル抗体量は一定であるが、各空間形成部2に封入されている抗hCGモノクローナル抗体溶液濃度や封入されている溶液量は異なる。導入口3に試料を接触させると、毛細管現象により試料が空間形成部2に流入するが、各空間形成部2に封入されている金コロイドで標識された第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体溶液量が異なるため、流入する試料量は、空間形成部2毎に異なる。各空間形成部2に封入されている総抗hCGモノクローナル抗体量は一定であるため、複数の空間形成部2を有する試験ストリップに試料を導入すると、自動的に希釈を行った試料についての特異結合反応を同時に観察することができる。
本発明では、あらかじめ空間形成部2に封入されている溶液量を調節しておくことで、自動的に試料の希釈を段階的に行わせることが可能であり、また段階的に希釈した試料の検出部6での吸光度を比較観察することで、プロゾーン現象を生じている濃度範囲が存在するのかを確認することができる。さらに、プロゾーン現象の影響を受けていない濃度に希釈した試料の検出部6での吸光度から、検量線を利用することで、展開層1に導入した試料中のhCG濃度を計算することができる。この場合、検量線より得られる分析対象物濃度と希釈率との積が試料中の分析対象物濃度となる。
実施の形態4(アフィニティー)
本実施の形態における試験試薬用のストリップは、検出部6に固定化された第2の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体のアフィニティーが検出部毎に互いに異なる展開層1により構成されている以外は、上記実施の形態2と同じである。
hCGを含む試料をストリップに導入すると、検出部6における標識材の吸光度は、試料中のhCG量を反映する。本発明の分析例では、アフィニティーの異なる抗hCGモノクローナル抗体を用意し、第2の特異結合物質として検出部6に固定化するため、検出部6における吸光度は展開層1毎に異なる。したがって、試験ストリップに試料を導入すると、自動的に信号強度の異なる抗原抗体反応を同時に観察することができる。
本実施の形態によれば、あらかじめ展開層1毎に検出部6に固定化された第2の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体のアフィニティーを調節しておくことで、特異結合反応に参加する分析対象物と特異結合物質との相互作用の強さを展開層1毎に調節することが可能であり、また分析対象物と特異結合物質との相互作用の強さの異なる特異結合反応の結果を比較観察することで、プロゾーン現象の影響を受けないアフィニティーの抗体を固定化した展開層1における検出部6における標識材の吸光度から、検量線を利用することで、試験ストリップに導入した試料中のhCG濃度を計算することができる。
実施の形態5(粒径)
本実施の形態では、粒径の異なる金コロイドで標識した抗hCGモノクローナル抗体溶液をそれぞれ所定の波長(例えば520nm)の吸光度で一定になるよう調節し、各空間形成部2に同量ずつ封入した展開層1から構成されている以外は、上記実施の形態3と同じ試験試薬用のストリップを用いる。
定量を行いたいhCGを含む試料を複数個の空間形成部2を有する同ロットの試験試薬用のストリップに導入する。標識材である金コロイドの粒径が異なると、封入される標識材の個数や抗体数は、空間形成部2毎に異なる。金コロイドの粒径に起因する立体障害、標識材の個数および抗体数などの違いから、ストリップに試料を導入すると、各展開層1毎に構成比の異なる抗原抗体反応が観察される。よって複数の空間形成部2を有するストリップに試料を導入すると、検出部6での信号強度の異なる特異結合反応を同時に観察することができる。
本実施の形態では、標識材の特性を利用して、特異結合反応に参加する分析対象物と特異結合物質の構成比を展開層1毎に自動的に調節することが可能であり、また分析対象物と特異結合物質の構成比の異なる特異結合反応の結果を比較観察することで、プロゾーン現象の影響を受けない構成比の展開層1における検出部6における標識材の吸光度から、検量線を利用することで、試験ストリップに導入した試料中のhCG濃度を計算することができる。
本実施の形態では、あらかじめ、濃度既知の標準試料を用いて、分析対象物の濃度と検出部での信号強度の対応関係をアッセイし、標識材の特性を利用することで、展開層1毎にプロゾーン現象が生じる分析対象物の濃度が異なるように調節しておく。なお、各空間形成部2に封入する特異結合物質の溶液の量は一定である必要はない。また、特異結合物質の溶液の量の調節に用いる方法は、吸光度を用いる方法に限定されるものではない。さらに標識剤の特性も粒径に限らず、各標識材に応じて種々の特性を適宜利用することができる。
実施の形態6(走査)
本実施の形態においては、実施の形態3と同様にして、hCGを含む試料をストリップに導入して、検出部6を呈色させる。そして、光源7および光検出器8を検出部6に沿った方向に走査させることで、検出部6における信号強度を連続的に測定する。なお、光源7および光検出器8を固定し、ストリップを一定方向に走査させても同様の効果を得ることができる。展開層1は、間隙を設けて並列に配置されているため、複数の検出部6における信号強度を連続的に測定したときも、展開層1毎に信号強度を区別することができる。
図12は、展開層1の幅方向における検出部6の信号強度の分布状況を解析して描いた曲線の概略図である。この曲線は、展開層1または、光源7および光検出器8を走査させながら展開層1上に光源7から光を照射し、光検出器8が検出した反射光を解析器9で解析して描いたものである。この曲線は、縦軸が信号強度を、横軸が検出部の領域を表している。なお、本実施の形態では、ストリップ、または光源7および光検出器8を検出部6に沿った方向に走査させて検出部6における反射光を連続的に測定して信号強度を得る。この曲線の高さhを特異結合反応に基づく信号の強度として測定する。ここで、この曲線の面積Sを、特異結合反応に基づく信号の強度としてもよい。検出部6における標識材の吸光度は、試料中のhCG量を反映している。
本実施の形態の分析例では、あらかじめ、分析装置作成時に抜き取り検査を行い、標準物質を用いて検出部6での吸光度を測定し、さらに、同ロットの分析装置を用いて各hCG濃度について測定した検出部6での吸光度を各hCG濃度に対してプロットした検量線を用意する。このようにして、分析装置作成時に濃度換算のための検量線を複数用意しておき、分析装置使用時に、標準物質を用いて測定を行い、標準物質が示した検出部6での吸光度から、各分析装置に適用するべき濃度換算用の検量線を決定する。この検量線を利用することで、検出部6での吸光度から、展開層1に導入した試料中のhCG濃度を計算することができる。
実施の形態7(走査+アフィニティー)
本実施の形態においては、実施の形態4と同様にして、hCGを含む試料をストリップに導入して、検出部6を呈色させる。そして、光源7および光検出器8を検出部6に沿った方向に走査させることで、検出部6における信号強度を連続的に測定する。なお、光源7および光検出器8を固定し、試験ストリップを一定方向に走査させても同様の効果を得ることができる。展開層1は、間隙を設けて並列に配置されているため、複数の検出部6における信号強度を連続的に測定したときも、展開層1毎に信号強度を区別することができる。
検出部6における標識材の吸光度は、試料中のhCG量を反映している。本発明の分析例では、アフィニティーの異なる抗hCGモノクローナル抗体を用意し、第2の特異結合物質として検出部6に固定化するため、検出部6における吸光度は展開層1毎に異なる。したがって、試験ストリップに試料を導入すると、自動的に信号強度の異なる抗原抗体反応を同時に観察することができる。
本実施の形態では、あらかじめ展開層1毎に検出部6に固定化された第2の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体のアフィニティーを調節しておくことで、特異結合反応に参加する分析対象物と特異結合物質との相互作用の強さを展開層1毎に調節することが可能であり、また分析対象物と特異結合物質との相互作用の強さの異なる特異結合反応の結果を比較観察することで、プロゾーン現象の影響を受けないアフィニティーの抗体を固定化した展開層1における検出部6における標識材の吸光度から、検量線を利用することで、試験ストリップに導入した試料中のhCG濃度を計算することができる。
本実施の形態では、あらかじめ、濃度既知の標準試料を用いて、分析対象物の濃度と検出部での信号強度の対応関係をアッセイし、特異結合物質の特性を利用することで、展開層1毎にプロゾーン現象が生じる分析対象物濃度が異なるように調節しておく。なお、本発明の実施の形態では、制御が容易であるため、モノクローナル抗体のアフィニティーの差を利用する場合を記載したが、特異結合物質の特性はアフィニティーに限定されるものではない。
実施の形態8(走査+粒径)
本実施の形態においては、実施の形態6と同様にして、定量を行いたいhCGを含む試料を複数の空間形成部2を有する同ロットのストリップに導入する。ここでは、ストリップは、粒径の異なる金コロイドで標識した抗hCGモノクローナル抗体溶液をそれぞれ所定の波長(例えば520nm)の吸光度で一定になるよう調節し、各空間形成部2に同量封入した展開層1から構成されている。そのため、標識材である金コロイドの粒径が異なると、封入される標識材の個数や抗体数は、空間形成部2毎に異なる。金コロイドの粒径に起因する立体障害や標識材の個数、抗体数の違いから、試験ストリップに試料を導入すると、各展開層1毎に構成比の異なる抗原抗体反応が観察される。よって複数の空間形成部2を有する試験ストリップに試料を導入すると、検出部6での信号強度の異なる特異結合反応を同時に観察することができる。
本実施の形態では、標識材の特性を利用して、特異結合反応に参加する分析対象物と特異結合物質の構成比を展開層1毎に自動的に調節することが可能であり、また分析対象物と特異結合物質の構成比の異なる特異結合反応の結果を比較観察することで、プロゾーン現象の影響を受けない構成比の展開層1における検出部6における標識材の吸光度から、検量線を利用することで、試験ストリップに導入した試料中のhCG濃度を計算することができる。
本実施の形態では、あらかじめ、濃度既知の標準試料を用いて、分析対象物の濃度と検出部での信号強度の対応関係をアッセイし、標識材の特性を利用することで、展開層1毎にプロゾーン現象が生じる分析対象物濃度が異なるように調節しておく。なお、各空間形成部2に封入する特異結合物質溶液量は一定量である必要はない。また、特異結合物質溶液量の調節に用いる手法も吸光度に限定されるものではない。さらに標識剤の特性も粒径に限らず、各標識剤に応じて適宜利用される。
以下に、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
実施例1
図1〜3に係る特異結合分析装置を用いる上記実施の形態1に沿って、本実施例を行った。ただし、図2に示す5つのユニットを有するストリップを用いた。第1の特異結合物質および第2の特異結合物質として、hCGとのサンドイッチ反応に参加し得る、hCGに対するモノクローナル抗体を用い、標識材として金コロイドを用いて第1の特異結合物質を直接標識した。試料として既知量のhCGを加えた尿を用い、検出部6に520nmの光を照射したときに光検出器8で得られた信号強度の測定を行い、試料中のhCG濃度の定量測定を行った。試料としては、hCG濃度が50IU/L、100IU/L、250IU/L、500IU/Lまたは1000IU/Lである尿を用いた。これらの試料を、5つのユニットのそれぞれの導入口3から導入した。
また、展開層1における導電率変化から、試料の導入を測定開始検知器10により検知し、その検知開始時間を0として測定時間を計測した。50μlの体積を有する空間形成部2を用いた。試料を導入口3に接触させてから5秒以内で試料は空間形成部2を満たし、試料が試験ストリップを展開し終えるのに3分要した。このように試料導入速度は試料排出速度より充分早かった。空間形成部2の体積は、特に限定されるものでなく、試料、分析装置等により適宜設定される。
図4は、試料を試験ストリップに導入してから5分後の、検出部6における520nmでの信号強度を測定したグラフである。各hCG濃度について、信号強度は濃度依存的に増加しており、直線関係にあることがわかる。図には示していないが、検定器で実質上hCG濃度0とされる試料を試験ストリップに導入したときの検出部6における520nmでの信号強度は0であった。このように、図4を検量線として用いることにより、試料中のhCG濃度を定量性良く測定することができる。
実施例2
図1〜3に係る特異結合分析装置を用いる上記実施の形態2に沿って、本実施例を行った。ただし、ここではユニットを2つ有する試験ストリップを用いた。第1の特異結合物質および第2の特異結合物質として、hCGとのサンドイッチ反応に参加し得る、hCGに対するモノクローナル抗体を用い、標識材として金コロイドを用いて第1の特異結合物質を直接標識した。試料としてhCGを既知量加えた尿を用い、検出部において520nmでの信号強度を測定した。試料としては、hCG濃度が100IU/L、500IU/L、1000IU/L、1500IU/L、2000IU/L、または2500IU/Lである尿を用いた。
また、展開層1における導電率変化から、試料の導入を測定開始検知器10により検知し、その時間を0として測定時間を計測した。第1のユニットの保持部における金コロイドを用いて直接標識した第1の特異結合物質の保持量は、第2のユニットの保持量の1/10倍になるよう調節した。すなわち、図2においては単一のユニットが5個連結された状態になっているが、本実施例では2つのユニット(第1のユニットおよび第2のユニット)を連結させた形態のものを用いた。つまり、前記6種類のhCG濃度の試料を第1のユニットおよび第2のユニットそれぞれに導入した。
図5は、第1のユニットと第2のユニットにおけるhCG濃度と、試料導入検出から5分後に測定した検出部6における520nmでの信号強度との関係を表したグラフである。
第1のユニットでの試料導入検出から5分後の信号強度は、hCG濃度が低濃度(hCG濃度=100IU/L、500IU/L、1000IU/L、1500IU/L)のときは、濃度の増加とともに増加しているが、hCG濃度が2000IU/L以上の高濃度になると、逆に濃度の増加とともに減少しており、濃度域によっては、1つの信号強度に対応するhCG濃度が複数存在することがわかる。
つまり、この場合、試料中のhCGが過剰に存在するため、金コロイドで標識された第1の特異結合物質と特異結合していないhCGと、金コロイドで標識された第1の特異結合物質と特異結合したhCGとが、検出部6における第2の特異結合物質との特異結合反応において競合する結果、検出部6で結合される金コロイドで標識された第1の特異結合物質の量が減少し、金コロイドの寄与する信号強度は低下し、検出部6で検出される信号強度は、試料中のhCGの量を反映しなくなっている。
第2のユニットでは、各hCG濃度について、信号強度は濃度依存的に増加しており、直線関係にあることがわかる。図には示していないが、検定器で実質上hCG濃度0とされる試料を第2のユニットに導入したときの検出部6における520nmでの信号強度は0であった。これは、第2のユニットでは、金コロイドに標識された第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体の保持部5における保持量を増加させたことにより、第1のユニットで観察されたプロゾーン現象の原因となった金コロイドで標識された第1の特異結合物質と特異結合していないhCGの量が減少し、プロゾーン現象の影響が回避されたことを意味する。
このように、あらかじめユニット毎に保持部5に保持された金コロイドに標識された第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体の保持量を調節し、特異結合反応に参加する分析対象物と特異結合物質の構成比をユニットごとに自動的に調節することで、プロゾーン現象の影響を受けない構成比の展開層1上の検出部6における標識材の吸光度から、検量線を利用し、試験ストリップに導入した試料中のhCG濃度を計算することができる。表1に、図5から導き出した第1のユニットと第2のユニットの検出部6における信号強度の比を表した。
信号強度の比は、hCG濃度が低濃度(hCG濃度=100IU/L、500IU/L、1000IU/L、1500IU/L)のときはほぼ一定であるが、hCG濃度が2000IU/L以上の高濃度になると、濃度の増加とともに減少している。したがって、ユニットごとに保持部5に保持された金コロイドに標識された第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体の保持量を調節した試験ストリップに、試料を導入し、検出部6における信号強度の比を計算し、比較観察することで、プロゾーン現象が生じているのかが確認できる。
実施例3
図3、6および7に係る特異結合分析装置を用いる上記実施の形態3に沿って、本実施例を行った。ただし、図7におけるユニットの数は5つであるが、ここではユニットの数を6つとした。第1の特異結合物質および第2の特異結合物質として、hCGとのサンドイッチ反応に参加し得る、hCGに対するモノクローナル抗体を用い、標識材として金コロイドを用いて第1の特異結合物質を直接標識した。ここでは、すべての空間形成部2に第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体の溶液を同量ずつ封入した。試料としてhCGを既知量加えた尿を用い、検出部において520nmでの信号強度を測定した。
ここで、試料としては、hCG濃度が100IU/L、500IU/L、1000IU/L、1500IU/L、2000IU/L、または2500IU/Lである尿を用いた。これらの試料を6つのユニットのそれぞれの導入口3から導入した。また、展開層1における導電率変化から、試料の導入を測定開始検知器10により検知し、その時間を0として測定時間を計測した。
図8は、6つのユニットを含むストリップにおいて、hCG濃度と、試料導入検出から5分後に測定した検出部6における520nmでの信号強度との関係を表すグラフである。試料導入検出から5分後の信号強度は、hCG濃度が低濃度(hCG濃度=100IU/L、500IU/L、1000IU/L、1500IU/L)のときは、濃度の増加とともに、増加しているが、hCG濃度が2000IU/L以上の高濃度になると、逆に濃度の増加とともに減少しており、濃度域によっては、1つの信号強度に対応するhCG濃度が複数存在することがわかる。
つまり、この場合、試料中のhCGが過剰に存在するため、金コロイドで標識された第1の特異結合物質と特異結合していないhCGと、金コロイドで標識された第1の特異結合物質と特異結合したhCGとが、検出部6における第2の特異結合物質との特異結合反応において競合する結果、検出部6で結合される金コロイドで標識された第1の特異結合物質の量が減少し、金コロイドの寄与する信号強度は低下し、検出部6で検出される信号強度は、試料中のhCGの量を反映しなくなっている。
つぎに、試料として、hCG濃度が2500IU/Lである尿を、空間形成部2を5つ有する試験ストリップのそれぞれのユニットに導入した。各空間形成部2に封入されている総抗hCGモノクローナル抗体量は一定であるが、各空間形成部2に封入されている抗hCGモノクローナル抗体溶液濃度や封入されている抗体溶液量は異なるものを用い、具体的には、展開層1に展開される試料の最終hCG濃度が、それぞれ、100IU/L、500IU/L、1000IU/L、1500IU/L、2000IU/Lとなるように抗hCGモノクローナル抗体溶液を調整し、空間形成部2に封入した。
本発明では、導入口3に試料を接触させると、毛細管現象により試料が一定量流入するが、各空間形成部2に封入されている金コロイドで標識された第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体溶液量が異なるため、流入する試料量は、空間形成部2毎に異なった。各空間形成部2に封入されている総抗hCGモノクローナル抗体量は一定であるため、複数の空間形成部2を有する試験ストリップに試料を導入すると、自動的に希釈を行った試料についての特異結合反応を同時に観察することができた。
試料導入検出から5分後に検出部6における520nmでの信号強度を測定した結果、試料の希釈が正確に行えていることを確認できた。また、hCG濃度が低濃度(hCG濃度=100IU/L、500IU/L、1000IU/L、1500IU/L)のときは、濃度の増加とともに、信号強度は増加しているが、hCG濃度が2000IU/Lのときは、信号強度が減少していた。
このように本発明では、あらかじめ空間形成部2に封入されている溶液量を調節しておくことで、自動的に試料の希釈を段階的に行わせることが可能である。
実施例4
つぎに、単一のユニットを3つ連結させた形態の特異結合分析装置を用いた。この場合、ユニットA、ユニットB、ユニットCそれぞれに空間形成部2が設けられる。これらユニットA、ユニットB、ユニットCそれぞれについて、試料として既知濃度のhCGを含む試料を用いて検出部6における信号強度を測定することで得られた検量線を重ね合わせたグラフを図9に示した。検量線A、検量線Bおよび検量線Cを、それぞれユニットA、ユニットBおよびユニットCに対応させた。
ユニットA、ユニットBおよびユニットCについて、各空間形成部2に封入されている金コロイドで標識された抗hCGモノクローナル抗体溶液量以外の条件は同じとした。ユニットA、ユニットBおよびユニットCの、各空間形成部2に封入されている総抗hCGモノクローナル抗体量は一定であるが、各空間形成部2に封入されている抗体溶液量は、ユニットA、ユニットBおよびユニットCの順に少なくした。
hCGを含む試料を空間形成部2に導入すると、封入されている抗体溶液量が多いほど試料が希釈されるため、検量線のプロゾーンが生じていない直線領域における傾きの大きさは、ユニットC、ユニットBおよびユニットAの順に大きかった。各検量線A、BおよびCにおいて、hCG濃度が低濃度のときは、濃度の増加とともに信号強度は増加しているが、hCG濃度が高濃度になると、プロゾーン現象が観察された。
検量線Aと検量線Bの交点(C1、S1)、検量線Bと検量線Cの交点(C2、S2)、検量線Aと検量線Cの交点(C3、S3)のうち、最小の信号強度S3未満であり、かつ各検量線の信号強度の極大値のうち、最小の信号強度S4未満であるS5を閾値として設定した。hCGを含む試料Xと試料Yと試料Zとをストリップに展開したときの検出部6における信号強度はそれぞれ、ユニットA、ユニットBおよびユニットCの順に(XA、XB、XC)、(YA、YB、YC)および(ZA、ZB、ZC)であった。
試料Xにおいて、信号強度の大きさは、XA<XB<XCであり、かつXC<S5であった。本発明においては、閾値S5以下の信号強度を示した場(ユニットA、B、C)の中で、最大の信号強度を示したユニットCで示された信号強度XCを用いて試料中のhCG濃度を測定することができた。試料中のhCG濃度が、各検量線A、BおよびCを重ね合わせたときに生じる交点のhCG濃度の最小値C2未満の場合、試料を導入した特異結合反応が行われる場の信号強度を比較すると、検量線のプロゾーンが生じていない直線領域における傾きの大きい場ほど試料中のhCGが示す信号強度は大きくなった。
このように試料を導入した特異結合反応が行われる場における、試料中の分析対象物が示す信号強度の大小関係と、プロゾーンが生じていない直線領域における検量線の傾きの大小関係とが対応している場合、検量線Cから得られる信号強度XCに対応する信号強度CX1、CX2のうち最小の濃度CX1が試料中のhCG濃度となった。この場合、検量線Cより得られる分析対象物濃度CX1と希釈率との積が試料中の分析対象物濃度となった。
試料Yにおいて、信号強度の大きさはYA<YB<YCでありかつYB<S5<YCであった。本発明では、閾値S5以下の信号強度を示した場(ユニットA、B)の中で、最大の信号強度を示したユニットBで示された信号強度YBを用いて試料中のhCG濃度を測定することができた。このように試料を導入した特異結合反応が行われる場における、試料中の分析対象物が示す信号強度の大小関係と、プロゾーンが生じていない直線領域における検量線の傾きの大小関係とが対応している場合、検量線Bから得られる信号強度YBに対応する信号強度CY1およびCY2のうち、最小の濃度CY1が試料中のhCG濃度となる。この場合、検量線Cより得られる分析対象物濃度CY1と希釈率との積が試料中の分析対象物濃度となる。試料Zにおいて、信号強度の大きさは、ZC<ZB<ZAかつZB<S5<ZAであった。
このように、試料を導入した特異結合反応が行われる場における、試料中の分析対象物が示す信号強度の大小関係と、プロゾーンが生じていない直線領域における検量線の傾きの大小関係とが対応していない場合、つまり、試料中のhCG濃度が、各検量線A、BおよびCを重ね合わせたときに生じる交点のhCG濃度の最小値C2以上の場合、本発明における特異結合分析装置は、試料中のhCG濃度が定性または定量範囲外であると判断できた。この場合、試料Zをさらに希釈するか、高濃度hCG対応の特異結合分析装置を用いて試料中のhCGを定性または定量した。
このように、試験ストリップを構成する各展開層1の段階的に希釈した試料の検出部6での吸光度の大小関係と、プロゾーンが生じていない直線領域における検量線の傾きの大小関係とを比較し、本発明を利用して設定した閾値以下の信号強度を示した特異結合反応が行われる場の中で信号強度を比較して最大の信号強度を示す場の信号強度を解析することで、従来特異結合分析反応で問題となっていたプロゾーン現象に影響を受けることなく試料中の分析対象物の定性または定量が可能となる。この場合、検量線より得られる分析対象物濃度と希釈率との積が試料中の分析対象物濃度となる。
実施例5(アフィニティー)
図1〜3に係る特異結合分析装置を用いる上記実施の形態4に沿って、本実施例を行った。したがって、第1のユニットおよび第2のユニットを有するストリップを用意し、第1のユニットおよび第2のユニットの検出部6にそれぞれアフィニティーの異なる(1011M−1および1010M−1)抗hCGモノクローナル抗体を固定化した以外は、実施例2と同様の操作を行った。
図10は、第1のユニットと第2のユニットにおけるhCG濃度と、試料導入検出から5分後に測定した検出部6における520nmでの信号強度との関係を表したグラフである。
第1のユニットでの試料導入検出から5分後の信号強度は、hCG濃度が低濃度(hCG濃度=100IU/L、500IU/L、1000IU/L、1500IU/L)のときは、濃度の増加とともに、増加しているが、hCG濃度が2000IU/L以上の高濃度になると、逆に濃度の増加とともに減少しており、濃度域によっては、1つの信号強度に対応するhCG濃度が複数存在することがわかる。
また、第2のユニットでは、各hCG濃度について、信号強度は濃度依存的に増加しており、直線関係にあることがわかる。図には示していないが、検定器で実質上hCG濃度0とされる試料をストリップに導入したときの検出部6における520nmでの信号強度は0であった。これは、第2のユニットでは、第1のユニットに固定化したものよりアフィニティーの低い抗体を用いたため、分析対象物との相互作用の強さが弱くなり、検出部6における特異結合反応によって捕捉される分析対象物と、検出部から試料の流れとともに洗い流される分析対象物とのバランスが変化することで、プロゾーンの影響を受ける分析対象物濃度が展開層1より高濃度側に移動し、その結果第2のユニットではプロゾーン現象の影響が回避されたことを意味する。
このことから、あらかじめユニット毎に検出部6に固定化する抗hCGモノクローナル抗体のアフィニティーを調節し、分析対象物との相互作用の強さを調節することで、プロゾーン現象の影響を受けないアフィニティーの抗体を固定化したユニット上の検出部6における標識材の吸光度から、検量線を利用することで、試験ストリップに導入した試料中のhCG濃度を計算することができることがわかる。
実施例6
つぎに、実施例4と同様に単一のユニットを3つ連結させた形態の特異結合分析装置を用い、実施例5と同様の操作を行った。これらユニットA、ユニットB、ユニットCそれぞれについて、試料として既知濃度のhCGを含む試料を用いて検出部6における信号強度を測定することで得られた検量線を重ね合わせたグラフを作製したところ、図9に示したグラフと同じものが得られた。
したがって、本実施例においても、上記実施例4と同様に、ストリップを構成する各ユニットの検出部6での吸光度の大小関係と、プロゾーンが生じていない直線領域における検量線の傾きの大小関係とを比較し、本発明を利用して設定した閾値以下の信号強度を示した特異結合反応が行われる場の中で信号強度を比較して最大の信号強度を示す場の信号強度を解析することで、従来特異結合分析反応で問題となっていたプロゾーン現象に影響を受けることなく試料中の分析対象物の定性または定量が可能となる。
実施例7(粒径)
標識材である金コロイドの粒径を変化させる実施の形態5に沿って、実施例5と同様の操作を行った。
なお、試料として、hCG濃度が100IU/L、250IU/L、500IU/L、1000IU/L、1500IU/L、2000IU/L、または2500IU/Lである尿を用いた。
第1のユニットおよび第2のユニットからなるストリップを用意し、各ユニットの第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体の標識材として、それぞれ20nmと70nmの粒径の金コロイドを用いた。520nmの吸光度を一定にした、各金コロイドで標識した抗hCGモノクローナル抗体溶液を各空間形成部に同量ずつ封入した。
図11は、第1のユニットおよび第2のユニットにおけるhCG濃度と、試料導入検出から5分後に測定した検出部6における520nmでの信号強度との関係を表したグラフである。第2のユニットでは、試料導入検出から5分後の信号強度は、hCG濃度が低濃度(hCG濃度=100IU/L、250IU/L、500IU/Lおよび1000IU/L)のときは、濃度の増加とともに増加している。しかし、hCG濃度が1500IU/L以上の高濃度になると、逆に濃度の増加とともに前記信号強度が減少している。つまり、濃度域によっては1つの信号強度に対応するhCG濃度が複数存在する。
この場合、試料中のhCGが過剰に存在するため、金コロイドで標識された第1の特異結合物質と特異結合していないhCGと、金コロイドで標識された第1の特異結合物質と特異結合したhCGとが、検出部6における第2の特異結合物質との特異結合反応において競合する。その結果として、検出部6で結合される金コロイドで標識された第1の特異結合物質の量が減少し、金コロイドの寄与する信号強度は低下し、検出部6で検出される信号強度は、試料中のhCGの量を反映しなくなっている。
第1のユニットでは、各hCG濃度について、信号強度は濃度依存的に増加しており、直線関係が形成されていることがわかる。図示していないが、検定器で実質上hCG濃度0とされる試料を試験ストリップに導入したときの検出部6における520nmでの信号強度は0であった。これは、第1のユニットでは、標識材である金コロイドの粒径を小さくしたことにより、空間形成部に封入された第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体数が増加し、第2のユニットで観察されたプロゾーン現象の原因となった金コロイドで標識された第1の特異結合物質と特異結合していないhCGの量が減少し、プロゾーン現象の影響が回避されたことを意味する。
このことから、あらかじめ標識材の特性を調節しておくことで、ユニット毎に金コロイドに標識された第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体数を調節し、特異結合反応に参加する分析対象物と特異結合物質の構成比をユニット毎に自動的に調節することで、プロゾーン現象の影響を受けない構成比のユニット上の検出部6における標識材の吸光度から、検量線を利用し、ストリップに導入した試料中のhCG濃度を計算できることがわかる。
実施例8(走査)
図1〜3に係る特異結合分析装置を用いる上記実施の形態6に沿って、第1の特異結合物質および第2の特異結合物質として、hCGとのサンドイッチ反応に参加し得る、hCGに対するモノクローナル抗体を用い、標識材として金コロイドを用いて第1の特異結合物質を直接標識した。試料としてhCGを既知量加えた尿を用い、検出部において520nmでの信号強度を測定した。試料としては、hCG濃度が、100IU/L、250IU/L、500IU/L、または1000IU/Lである尿を用いた。また、展開層1における導電率変化から、試料の導入を測定開始検知器10により検知し、その時間を0として測定時間を計測した。
図13に、4本のユニットを並列に配置することで構成されたストリップにて、試料導入検出から5分後に測定した検出部6における520nmでの信号強度の分布状況を表した。図からわかるように、展開層1は、間隙を設けて並列に配置されているため、複数の検出部6における信号強度を連続的に測定したときも、ユニット毎に信号強度を区別することができる。
図14は、図13の曲線の高さを各ユニット毎の検出部における信号強度としたときの、hCG濃度と、試料導入検出から5分後に測定した検出部6における520nmでの信号強度との関係を表したグラフである。各hCG濃度について、信号強度は濃度依存的に増加しており、直線関係にあることがわかる。図には示していないが、検定器で実質上hCG濃度0とされる試料を試験ストリップに導入したときの検出部6における520nmでの信号強度は0であった。
実施例9(走査+アフィニティー)
図1〜3に係る特異結合分析装置を用いる上記実施の形態7に沿って、第1の特異結合物質及び第2の特異結合物質として、hCGとのサンドイッチ反応に参加し得る、hCGに対するモノクローナル抗体を用い、標識材として金コロイドを用いて第1の特異結合物質を直接標識した。試料としてhCGを既知量加えた尿を用い、検出部において520nmでの信号強度を測定した。試料としては、hCG濃度が、100IU/L、500IU/L、1000IU/L、1500IU/L、2000IU/L、または2500IU/Lである尿を用いた。
また、展開層1における導電率変化から、試料の導入を測定開始検知器10により検知し、その時間を0として測定時間を計測した。第1のユニットおよび第2のユニットからなるストリップを用意し、ユニット1および2の検出部6にそれぞれアフィニティーの異なる(1011M−1、1010M−1)抗hCGモノクローナル抗体を固定化した。
図15の(a)〜(f)は、2本のユニットを並列に配置することで構成されたストリップにおいて、hCG濃度の異なる試料導入検出から5分後に測定した検出部6における520nmでの信号強度の分布状況を表したものである。図からもわかるように、第1のユニットは、間隙を設けて並列に配置されているため、複数の検出部6における信号強度を連続的に測定したときも、第1のユニット毎に信号強度を区別することができる。
図16は、図15の曲線の高さを各ユニット毎の検出部における信号強度としたときの、hCG濃度と、試料導入検出から5分後に測定した検出部6における520nmでの信号強度との関係を表したグラフである。
第1のユニットでの試料導入検出から5分後の信号強度は、hCG濃度が低濃度(hCG濃度=100IU/L、500IU/L、1000IU/L、1500IU/L)のときは、濃度の増加とともに、増加しているが、hCG濃度が2000IU/L以上の高濃度になると、逆に濃度の増加とともに減少しており、濃度域によっては、1つの信号強度に対応するhCG濃度が複数存在することがわかる。
つまりこの場合、試料中のhCGが過剰に存在するため、金コロイドで標識された第1の特異結合物質と特異結合していないhCGと、金コロイドで標識された第1の特異結合物質と特異結合したhCGとが、検出部6における第2の特異結合物質との特異結合反応において競合する結果、検出部6で結合される金コロイドで標識された第1の特異結合物質の量が減少し、金コロイドの寄与する信号強度は低下し、検出部6で検出される信号強度は、試料中のhCGの量を反映しなくなっている。
第2のユニットでは、各hCG濃度について、信号強度は濃度依存的に増加しており、直線関係にあることがわかる。図には示していないが、検定器で実質上hCG濃度0とされる試料を試験ストリップに導入したときの検出部6における520nmでの信号強度は0であった。これは、第2のユニットでは、第1のユニットに固定化したものよりアフィニティーの低い抗体を用いたため、分析対象物との相互作用の強さが弱くなり、検出部6における特異結合反応によって捕捉される分析対象物と、検出部から試料の流れとともに洗い流される分析対象物とのバランスが変化する。そして、プロゾーンの影響を受ける分析対象物濃度が展開層1より高濃度側に移動し、その結果、第2のユニットではプロゾーン現象の影響が回避されたことを意味する。
このことから、あらかじめユニット毎に検出部6に固定化する抗hCGモノクローナル抗体のアフィニティーを調節し、分析対象物との相互作用の強さを調節することで、プロゾーン現象の影響を受けないアフィニティーの抗体を固定化したユニット上の検出部6における標識材の吸光度から、検量線を利用することで、試験ストリップに導入した試料中のhCG濃度を計算することができることがわかる。
実施例10(走査+粒径)
図1〜3に係る特異結合分析装置を用いる上記実施の形態8に沿って、第1の特異結合物質および第2の特異結合物質として、hCGとのサンドイッチ反応に参加し得る、hCGに対するモノクローナル抗体を用い、標識材として金コロイドを用いて第1の特異結合物質を直接標識した。試料としてhCGを既知量加えた尿を用い、検出部において520nmでの信号強度を測定した。試料としては、hCG濃度が100IU/L、250IU/L、500IU/L、1000IU/L、1500IU/L、2000IU/L、または2500IU/Lである尿を用いた。
また、展開層における導電率変化から、試料の導入を測定開始検知器10により検知し、その時間を0として測定時間を計測した。第1のユニットおよび第2のユニットからなる試験ストリップを用意し、各ユニットの第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体の標識材として、それぞれ20nmと70nmの粒径の金コロイドを用いた。また、520nmの吸光度を一定にした、各金コロイドで標識した抗hCGモノクローナル抗体溶液を各空間形成部に同量封入している。
図17の(a)〜(g)は、2本のユニットを並列に配置することで構成された試験ストリップにおいて、試料導入検出から5分後に測定した検出部6における520nmでの信号強度の分布状況を表したものである。図からもわかるように、ユニットは、間隙を設けて並列に配置されているため、複数の検出部6における信号強度を連続的に測定したときも、ユニット毎に信号強度を区別することができる。
図18は、図17の曲線の高さを各ユニット毎の検出部における信号強度としたときの、hCG濃度と、試料導入検出から5分後に測定した検出部6における520nmでの信号強度との関係を表したグラフである。第2のユニットでの試料導入検出から5分後の信号強度は、hCG濃度が低濃度(hCG濃度=100IU/L、250IU/L、500IU/L、1000IU/L)のときは、濃度の増加とともに、増加しているが、hCG濃度が1500IU/L以上の高濃度になると、逆に濃度の増加とともに減少しており、濃度域によっては、1つの信号強度に対応するhCG濃度が複数存在することがわかる。
つまりこの場合、試料中のhCGが過剰に存在するため、金コロイドで標識された第1の特異結合物質と特異結合していないhCGと、金コロイドで標識された第1の特異結合物質と特異結合したhCGとが、検出部6における第2の特異結合物質との特異結合反応において競合する結果、検出部6で結合される金コロイドで標識された第1の特異結合物質の量が減少し、金コロイドの寄与する信号強度は低下し、検出部6で検出される信号強度は、試料中のhCGの量を反映しなくなっている。
第1のユニットでは、各hCG濃度について、信号強度は濃度依存的に増加しており、直線関係にあることがわかる。図には示していないが、検定器で実質上hCG濃度0とされる試料をストリップに導入したときの検出部6における520nmでの信号強度は0であった。これは、第1のユニットでは、標識材である金コロイドの粒径を小さくしたことにより、空間形成部に封入された第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体数が増加し、第2のユニットで観察されたプロゾーン現象の原因となった金コロイドで標識された第1の特異結合物質と特異結合していないhCGの量が減少し、プロゾーン現象の影響が回避されたことを意味する。
このことから、あらかじめ標識材の特性を調節しておくことで、ユニット毎に金コロイドに標識された第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体数を調節し、特異結合反応に参加する分析対象物と特異結合物質の構成比をユニット毎に自動的に調節することで、プロゾーン現象の影響を受けない構成比のユニット上の検出部6における標識材の吸光度から、検量線を利用することで、試験ストリップに導入した試料中のhCG濃度を計算することができることがわかる。
産業上の利用の可能性
以上のように、本発明によれば、高度な装置や操作を要することなく、自動的に試料の希釈を行わせることが可能で、さらに試料中の分析対象物の濃度に由来する影響が少なく、試料中の分析対象物を、小型で簡易な測定装置により簡便・迅速、かつ正確に定性および定量することができる特異結合分析装置および特異結合分析方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明における単一のユニットからなるストリップの構成を示す概略斜視図である。
図2は、図1に示すユニット複数個が配列されてなるストリップ(本発明の特異結合分析装置)の構成を示す概略斜視図である。
図3は、解析装置を含む本発明の特異結合分析装置の構成を示す概略断面図である。
図4は、実施例1において測定した検出部における520nmでの信号強度と、hCG濃度との関係を示したグラフである。
図5は、実施例2において測定した検出部における520nmでの信号強度と、hCG濃度との関係を示したグラフである。
図6は、本発明における単一のユニットからなるストリップの構成を示す概略斜視図である。
図7は、図6に示すユニット複数個が配列されてなるストリップ(本発明の特異結合分析装置)の構成を示す概略斜視図である。
図8は、実施例3において測定した検出部における520nmでの信号強度と、hCG濃度との関係を示したグラフである。
図9は、実施例4において測定した検出部における520nmでの信号強度と、hCG濃度との関係を示したグラフを重ね合わせたグラフである。
図10は、実施例5において測定した検出部における520nmでの信号強度と、hCG濃度との関係を示したグラフである。
図11は、実施例7において測定した検出部における520nmでの信号強度と、hCG濃度との関係を示したグラフである。
図12は、展開層1の幅方向における検出部6の信号強度の分布状況を解析して描いた曲線の概略図である。
図13は、実施例8の4本のユニットを並列に配置することで構成されたストリップにおいて、試料導入検出から5分後に測定した検出部6における520nmでの信号強度の分布状況を表した図である。
図14は、図13の曲線の高さを各ユニット毎の検出部における信号強度としたときの、hCG濃度と試料導入検出から5分後に測定した検出部6における520nmでの信号強度との関係を表したグラフである。
図15は、実施例9の2本のユニットを並列に配置することで構成されたストリップにおいて、hCG濃度の異なる試料導入検出から5分後に測定した検出部6における520nmでの信号強度の分布状況を表した図である。
図16は、図15の曲線の高さを各ユニット毎の検出部における信号強度としたときの、hCG濃度と、試料導入検出から5分後に測定した検出部6における520nmでの信号強度との関係を表したグラフである。
図17は、実施例10の2本のユニットを並列に配置することで構成されたストリップにおいて、試料導入検出から5分後に測定した検出部6における520nmでの信号強度の分布状況を表した図である。
図18は、図17の曲線の高さを各ユニット毎の検出部における信号強度としたときの、hCG濃度と、試料導入検出から5分後に測定した検出部6における520nmでの信号強度との関係を表したグラフである。
図19は、配列されたユニット複数個で構成され、単一の導入口を有するストリップ(本発明の特異結合分析装置)の構成を示す概略斜視図である。
本発明は、試料中の分析対象物質を簡便、迅速に定性または定量するための特異結合分析装置および特異結合分析方法に関する。
背景技術
近年、家庭内および地域医療の充実や、緊急性の高い臨床検査などの増加に伴い、臨床検査の専門家でなくとも、迅速、簡便で確実に測定が実施できる特異結合分析方法の開発がとみに望まれるようになってきた。
特異結合分析方法としては、抗原抗体反応を応用したイムノアッセイ、受容体を用いたレセプターアッセイ、相補的核酸配列のハイブリダイゼーションを用いた核酸プローブアッセイなど多くの方法が知られており、その特異性の高さから、臨床検査をはじめとする広い分野で繁用されている。
さらに具体的には、例えば、特異結合物質を不溶化した多孔性担体または微粒子充填型担体からなるクロマトグラフ域に、標識された特異結合物質と共に、または標識された特異結合物質とは別個に、分析対象物を含有することが予測される試料を浸透展開させる操作を含むクロマトグラフ分析法が挙げられる。この分析法はイムノアッセイの1種である。
このクロマトグラフ分析法は、クロマトグラフ域の担体の表面積が大きいため、特異結合物質を多量に不溶化でき、また特異結合反応を引き起こしうる反応分子間の衝突頻度が液相中の反応に比して大きいため、測定感度および測定時間の面から有利である。
しかし、従来の特異結合分析方法では、プロゾーン現象と呼ばれる問題が存在する。プロゾーン現象とは、特異結合反応に由来する信号強度に対する分析対象物の濃度が一義的に決定できない現象である。
特異結合分析方法では、分析対象物と特異結合物質との特異結合反応に由来して得られた信号の強度を測定することで分析対象物の定量または定性を行う。しかし、分析対象物が特異結合物質に対して過剰に存在する場合、特異結合物質と特異結合していない分析対象物が反応系に過剰に存在することになり、特異結合反応に由来して得られる信号強度は、試料中の分析対象物の量を反映しなくなる。
例えば、クロマトグラフ分析法では、標識された特異結合物質と特異結合した分析対象物と、標識された特異結合物質と特異結合していない分析対象物とが、競合して担体上に固定化された特異結合物質と特異結合反応する結果、標識材の寄与する反応に由来する信号の強度は低下する。このように、特異結合分析方法では、分析対象物を高濃度に含む試料中の分析対象物の量を低く判定する可能性がある。
そこでプロゾーン現象に影響を受けない濃度範囲に試料を希釈する方法が広く用いられているが、信号強度の減弱や、測定工程の煩雑化を招いていた。そのほか、プロゾーン現象が起こっていないか確認するために分析対象物に特異的に結合する特異結合物質を複数回加えて反応を行う方法も提案されているが、測定工程が煩雑である。
また、特異結合分析方法を用いた臨床検査は、目的によってその検査項目が異なり、場合によっては一つの臨床サンプルから複数の項目の検査(多項目測定)が求められることがある。医療施設などにおいては、大型機械を用いて日常的に臨床検査を行う場合もあるが、大型機械は一般的にコストおよびメンテナンスの面で問題があった。
さらに、臨床検査をはじめとする医療診断現場や家庭内において望まれるのは、迅速、簡便、正確さらには低価格で容易に入手可能な測定装置である。したがって特異結合分析方法を用いて試料中の分析対象物質を定性または定量する場合、簡便・迅速に特異結合反応に由来する信号を読み取る必要がある。さらに測定装置の簡素化、小型化が進めば、低価格の測定装置を開発することが可能となるため、動作行程の少ない信号測定原理が望まれている。
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑み、試料中の分析対象物の濃度に由来する影響が少なく、試料中の分析対象物を、小型で簡易な測定装置により簡便・迅速、かつ正確に定性および定量測定することができる特異結合分析方法を提供することを目的とする。
発明の開示
上記問題を解決するために、本発明は、分析対象物と、分析対象物に特異的に結合する特異結合物質との特異結合反応を用いて、試料中の分析対象物を定性または定量する特異結合分析装置であって、
前記試料を導入する導入口と、前記導入口より導入された試料を一時的に保持する空間形成部と、前記空間形成部に保持された試料が特異結合反応する場と、前記空間形成部から前記場に前記試料を排出する排出口とを有し、前記空間形成部と前記場とをそれぞれ複数個具備し、前記場毎に異なる条件で特異結合反応が起こることを特徴とする特異結合分析装置を提供する。
前記導入口は一つであることが好ましい。
ここで、前記条件とは、前記検出部で検知される信号強度を変化させ得る条件のことをいう。具体的には以下に説明する。
前記特異結合分析装置においては、前記複数個の空間形成部の内容量が互いに異なるのが好ましい。
前記特異結合物質が、少なくとも前記空間形成部または前記場に固定化されているのが好ましい。
また、前記標識材の特性(例えば粒径または材料)が前記場毎に異なるのが好ましい。
さらに、前記特異結合物質の種類が前記空間形成部または前記場毎に異なるのが好ましい。また、前記特異結合物質のアフィニティが、前記空間形成部または場毎に異なることも好ましい。加えて、前記特異結合物質の量が、前記空間形成部または場毎に異なることも好ましい。
また、前記導入口から前記空間形成部に試料が導入する速度が、前記排出口から前記場に前記試料が排出される速度より速いのが好ましい。
前記場が標識材により標識された第1の特異結合物質と第2の特異結合物質とを有し、前記第1の特異結合物質と前記第2の特異結合物質とが前記分析対象物を介して結合する特異結合反応に由来する信号に基づいて定性または定量するのが好ましい。
特に、前記第2の特異結合物質が前記場に固定化されているのが好ましい。
前記場が毛細管現象により前記試料が展開する展開層であり、前記検出部が前記展開層上に設けられ、前記第2の特異結合物質が前記検出部に固定化されているのが好ましい。
また、前記第1の特異結合物質が前記展開層上に保持されているのが好ましい。
さらに、前記試料が、前記複数個の展開層間を互いに移動しないことが好ましい。これを実現するためには、各展開層間に空間を設けたり、または各展開層間に壁を形成すればよい。かかる壁は対薬品性を有する材料で形成すればよい。
また、前記信号が呈色、蛍光または発光であるのが好ましく、本発明の特異結合分析装置はストリップ状の形状を有するのが好ましい。
また、前記第1の特異結合物質が前記場に含まれているのが好ましく、前記特異結合分析装置は、前記空間形成部に前記試料が導入されたことを認識するセンサを有するのが好ましい。
前記第1の特異結合物質および第2の特異結合物質の少なくとも一方が抗体であるのが好ましく、前記標識材が金属ゾル、染料ゾル、蛍光物質を含んだ粒子、または着色ラテックス粒子であるのが好ましい。
さらに本発明は、分析対象物を含む試料を導入する導入口と、前記導入口より導入された前記試料を一時的に保持する複数個の空間形成部と、前記空間形成部に保持された試料中の分析対象物との特異結合反応を行う複数個の場と、前記空間形成部から前記場に前記試料を排出する排出口とを有し、前記場毎に異なる条件で特異結合反応が起こることを特徴とする特異結合分析装置を用い、
前記空間形成部の内容量、前記空間形成部に保持される前記試料の希釈比および前記標識材の特性よりなる群から選択されるすくなくとも一種を調節することによって、前記試料中の分析対象物を定性または定量することを特徴とする特異結合分析方法にも関する。
前記特異結合分析方法においては、前記空間形成部の内容量を調節することで調整した、導入する前記試料の量を利用して前記試料中の分析対象物を定性または定量するのが好ましい。
また、前記空間形成部への前記試料の導入を認識するのが好ましく、また、前記空間形成部に検定用の試料を導入するのが好ましい。
また、前記空間形成部に前記第1の特異結合物質を含む溶液を担持させておき、担持させる前記溶液の量を調節することで前記試料中の分析対象物を定性または定量するのが好ましい。
また、前記特異反応結合に由来する信号の強度と前記希釈の倍率との積を解析することにより、前記試料中の分析対象物を定性または定量するのが好ましい。
また、前記場において、所定の閾値以下の信号強度を示した特異結合反応が行われる場の信号強度を解析することにより、前記試料中の分析対象物を定性または定量するのが好ましい。
また、前記閾値以下の信号強度を示した特異結合反応が行われる場の中で、最大の信号強度を示した特異結合反応が行われる部分の信号強度を解析することにより、前記試料中の分析対象物を定性または定量するのが好ましい。
また、前記閾値が、各特異結合反応が行われる部分の信号強度と分析対象物濃度との対応曲線を重ねたときに生じる交点信号強度の最小値未満であり、かつ各対応曲線の信号強度の極大値のうち、最小の信号強度未満であるのが好ましい。
さらに、前記閾値以下の信号強度を示した特異結合反応が行われる場の中で、最大の信号強度を示した特異結合反応が行われる部分の信号強度と分析対象物濃度との対応曲線を参照して試料中の分析対象物を定性または定量する際、前記閾値以下の信号強度を示した特異結合反応が行われる場の中で、最大の信号強度を示した特異結合反応が行われる部分の信号強度に対応する分析対象物濃度が複数存在した場合、その最小濃度を分析対象物濃度とみなすのが好ましい。
発明を実施するための最良の形態
本発明の特異結合分析装置は、分析対象物と、分析対象物に特異的に結合する特異結合物質との特異結合反応を用いて、試料中の分析対象物を定性または定量する特異結合分析装置であって、試料を導入する導入口と、前記導入口より導入された試料を一時的に保持する空間形成部と、前記空間形成部に保持された試料を特異結合反応が行われる場に排出する排出口とを備えるユニットを複数個有することを特徴とする。
ここで、複数個の前記空間形成部に対してそれぞれ独立に前記導入口を設けてもよい。この場合、前記空間形成部の数と前記導入口の数は同じである。また、複数個の空間形成部に対して前記導入口を一つだけ設けるのも好ましい。この場合、前記試料は単一の導入口からすべての空間形成部に供給される。
また、本発明に係る特異結合分析装置はストリップ形状を有しているのが好ましく、前記ユニットもストリップ形状を有するのが好ましい。したがって、本明細書においては、特異結合分析装置を試験ストリップと言うこともある。また、本発明の試験ストリップにおいては、空間形成部、標識された第1の特異結合物質が保持された保持部および第2の特異結合物質が固定化された検出部が配置されたユニットが少なくとも2本以上配列されていると言える。
ここで、特異結合反応が行われる場を形成する各ユニット間において、導入口、空間形成部および排出口はそれぞれ互いに分離して独立していることが好ましい。特に、前記場が展開層で構成される場合、各展開層は物理的に分離していることが好ましい。例えば、展開層間に空隙を設けたり、壁を設けたりするのが好ましい。こうすることで、複数の特異結合反応を同時に行わせることが可能になる。また、反応測定数の調節も自在である。
さらに、本発明の特異結合分析装置は、異なるユニットごとに前記空間形成部の内容量が互いに異なることを特徴とする。ここで、目的に応じて内容量を設定することが好ましい。こうすることで、試料の導入量や、流速など目的に応じた調節が可能となり、同一試料を導入した場合でも、異なる条件下での特異結合反応を同時に観察することが可能となる。
例えば、空間形成部の内容量を調節することで希釈比を調整することが可能である。この希釈比を利用することで、従来特異結合分析方法で問題となっていたプロゾーン現象を回避、また確認することが可能となる。つまり、本発明では、あらかじめ複数の空間形成部の内容量を調節しておくことで、自動的に試料の希釈を段階的に行わせることが可能となり、プロゾーン現象の影響を受けない分析対象物濃度で特異結合分析反応を行うことができる。また、段階的に希釈した試料の特異結合反応の結果を比較観察することで、プロゾーン現象を生じている濃度範囲が存在するのかを確認することができる。
空間形成部は、試料を一時的に保持するので、空間形成部の内容量を調節することで導入する試料の量を調節することができる。したがって、本発明では、試料を特異結合分析装置に正確かつ自動的に一定量分取、導入することができ、ディスペンサやスポイトなどのような定量機器を用いて試料を採取し、特異結合分析装置に導入する必要がない。よって、高度な装置や操作を要することなく、試料中の分析対象物を簡便、正確に定性または定量することが可能となる。
また、本発明の特異結合分析装置は、前記空間形成部に検定用の試料を導入することを特徴とする。検定用の試料の例として、分析装置が使用するべき検量線を決定するため標準物質や、分析装置の品質保証のための標準物質などが挙げられる。分析装置の品質保証とは、分析装置自身の応答性や、分析装置で用いる試薬の反応特性などを意味する。
定量を目的とした特異結合分析方法では、分析対象物と、分析対象物に特異的に結合する特異結合物質とを用いて特異結合反応を行うと共に、その濃度を決定するためには、分析装置作成時にあらかじめ標準物質を用いて特異結合反応を行うことで導き出された濃度換算のための検量線を使用する方法が広く用いられている。
しかし、実際は分析装置のロット間差や保存中の性能変化などの要因から、分析装置作成時に検量線は複数用意されている。このため各分析装置に適用するべき濃度換算用の検量線を決定するために、ロット毎に検量線決定用分析装置と検量線決定用標準物質とを用意しなければならない。
本発明では、例えば既知濃度の標準物質を用いて自動的に希釈系列を作成させ特異結合反応を行い、用意された反応曲線と比較することで、分析装置が品質保証可能な状態かを確認することができる。このように本発明では、検定用の試料として標準物質を用いて特異結合反応を行い、分析装置の応答性や試薬の反応特性などを調べることで、検量線決定や品質保証が可能となる。
本発明における分析対象物は、それと特異的に結合する特異結合物質が存在するものであればよく、例えば、抗体や抗原として機能する各種蛋白質、ポリペプチド、糖蛋白質、多糖類、複合糖脂質、核酸、エフェクター分子、レセプター分子、酵素、インヒビターなどが挙げられる。さらに具体的には、α−フェトプロテイン、癌胎児性抗原(CEA)、CA125、CA19−9などの腫瘍マーカーや、β2−ミクログロブリン(β2m)、フェリチンなどの各種蛋白質、糖蛋白質または複合糖脂質、エストラジオール(E2)、エストリオール(E3)、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)、黄体形成ホルモン(LH)、ヒト胎盤ラクトゲン(hPL)などの各種ホルモン、HBs抗原、HBs抗体、HBc抗原、HBc抗体、HCV抗体、HIV抗体などの各種ウイルス関連抗原またはウイルス関連抗体、各種アレルゲンおよびこれに対応するIgE抗体、麻薬性薬物、医療性薬物およびこれらの代謝産物、ウイルスおよび腫瘍関連ポリヌクレオチド配列の核酸などが挙げられる。
本発明における試料は、分析対象物が含まれると予測される液体であればよく、例えば、尿、血清、血漿、全血、唾液、涙液、髄液、乳頭などからの分泌液などが挙げられるが、粘液、体組織または細胞などの固形、ゲル状またはゾル状物を、緩衝液、抽出液または溶解液などの液体に懸濁または溶解させたものであってもよい。
本発明における特異結合物質は、分析対象物に対して特異的に結合する物質であればよく、例えば、抗体、抗原、糖蛋白質、多糖類、複合糖脂質、核酸、エフェクター分子、レセプター分子、酵素、インヒビターなどが挙げられる。
また、本発明による特異結合分析装置を用いる特異結合分析方法においては、分析対象物と、分析対象物に特異的に結合する特異結合物質とを反応させる工程において、標識材により標識された第1の特異結合物質と、第2の特異結合物質とを用い、標識された前記第1の特異結合物質と前記第2の特異結合物質とが分析対象物を介して結合させることが好ましい。
本発明における特異結合分析装置を用いる特異結合分析方法は、標識材により標識された第1の特異結合物質を含む溶液の量を調節することで試料中の分析対象物を定性または定量することを特徴とする。標識材により標識された第1の特異結合物質を含む溶液の量を調節することで、分析対象物と、分析対象物に特異的に結合する特異結合物質とを反応させる工程において、試料の希釈を行うことが可能となり、この希釈比を利用することで、従来特異結合分析方法で問題となっていたプロゾーン現象を回避および確認することが可能となる。
本発明においては、標識材の特性を特異結合反応が行われる場毎に調節することで試料中の分析対象物を定性または定量することもできる。標識材の特性とは、例えば、標識材の粒径や材料のことである。標識材の特性を変化させると、標識材から読み取ることのできる信号の種類やその強度は変化する。したがって、試料中の分析対象物濃度の解析に適した信号を発する反応場を選択することが可能となり、試料の希釈を行うことなく従来特異結合分析方法で問題となっていたプロゾーン現象の回避、確認が可能となる。また、標識材の特性を利用して、標識材により標識された第1の特異結合物質の量を特異結合反応が行われる場毎にそれぞれ調節すると、特異結合反応に参加する分析対象物と特異結合物質との構成比を特異結合反応が行われる場毎に調節することが可能となり、試料を希釈することなく、プロゾーン現象を生じない条件下での特異結合反応の観察が可能となる。このように、従来特異結合分析方法で問題となっていたプロゾーン現象の回避、確認が可能となる。
本発明においては、標識材により標識された第1の特異結合物質および/または第2の特異結合物質を特異結合反応が行われる場毎に調節することで試料中の分析対象物を定性または定量してもよい。特異結合反応が行われる場毎に、特異的に結合する分析対象物が異なる特異結合物質を配置すると、検出する分析対象物を特異結合反応が行われる場毎に調節することが可能となる。したがって、試料中に複数の分析対象物が存在する場合でも、目的に応じた分析対象物に特異的に結合する特異結合物質を特異結合反応が行われる場毎に配置することで、複数の分析対象物を同時に検出することが可能となり、臨床分野から求められている多項目測定に対応することも可能となる。
本発明における特異結合分析装置は、標識材により標識された第1の特異結合物質を含む溶液が空間形成部に封入されていてもよい。こうすることで、導入口から試料が導入され、空間形成部に保持されている間に、試料中の分析対象物は、標識材により標識された第1の特異結合物質と特異結合反応を行うことができる。さらに、空間形成部に封入する標識材により標識された第1の特異結合物質を含む溶液量を調節することで、自動的に試料の希釈を段階的に行わせることが可能となり、従来特異結合分析方法で問題となっていたプロゾーン現象を回避、また確認することが可能となる。
なお、本発明における特異結合分析装置において、各空間形成部の内容量が等しい場合、標識材により標識された第1の特異結合物質は空間形成部に封入されていなくてもよい。例えば、標識材により標識された第1の特異結合物質の量を特異結合反応が行われる場毎にそれぞれ調節すると、特異結合反応に参加する分析対象物と特異結合物質との構成比を特異結合反応が行われる場毎に調節することが可能となり、試料を希釈することなく、プロゾーン現象を生じない条件下での特異結合反応の観察が可能となり、従来特異結合分析方法で問題となっていたプロゾーン現象を回避、または確認することが可能となる。
他にも、特異結合反応が行われる場毎に標識材により標識されたアフィニティの異なる第1の特異結合物質を配置することで、アフィニティの差を利用して、特異結合反応が行われる場毎に分析対象物と特異結合物質との特異結合反応を制御することが可能となり、試料を希釈することなく、プロゾーン現象を生じない条件下での特異結合反応の観察が可能となり、従来特異結合分析方法で問題となっていたプロゾーン現象を回避、または確認することが可能となる。
また、特異結合反応が行われる場毎に、特異的に結合する分析対象物が同一であるが、その特性が異なる特異結合物質を配置することで、特性の差を利用して特異結合反応が行われる場毎に分析対象物と特異結合物質との特異結合反応を制御することができる。例えば、アフィニティの異なる特異結合物質を配置した場合、アフィニティの差を利用して、特異結合反応が行われる場毎に分析対象物と特異結合物質との特異結合反応を制御することが可能となり、試料を希釈することなく、プロゾーン現象を生じない条件下での特異結合反応の観察が可能となる。つまり、従来特異結合分析方法で問題となっていたプロゾーン現象の回避、確認が可能となる。なお、第1の特異結合物質と第2の特異結合物質の組み合わせを入れ替えるだけでも特異結合反応の制御を行うことが可能である。
さらに、本発明の特異結合分析装置においては、前記ユニットが特異結合反応に由来して得られた信号が検出される検出部を有し、前記検出部に第2の特異結合物質が実質的に固定化されていることが好ましい。ここで、第2の特異結合物質は、前記場を構成する展開層が湿潤状態にあるときにも自由に移動できないように検出部に固定化されている。このようにすると、試料の流れと共に未反応物は洗い流されるため、特異結合反応後、未反応物の分離操作を行うことなしに特異結合反応に由来する信号を検出部で検出することができる。なお、本発明の装置は、複数の検出部を有していてもよい。
本発明における展開層は、試料中の分析対象物および標識材により標識された第1の特異結合物質が展開される場である。例えば、多孔質担体やゲル担体などが挙げられる。このなかでは、ニトロセルロースが好ましい。この材料はあらかじめ増感しなくても固有に蛋白質と結合する能力を有するため、紙のような他の展開層材料に比べて優れている。抗体のような特異結合物質を直接ニトロセルロースに塗布することで、確実に固定化することができ、特異結合物質の持つ特異結合能力の妨げとなるような化学処理を全く必要としない。例えば展開層材料が紙の場合は、抗体を固定化するのにCNBr、カルボニルジイミダゾールまたは塩化トレシルなどを用いた化学結合を行うことが必要となる。
さらに、ニトロセルロースはいろいろな大きさの気孔のものを入手することができるため、試料流量など条件に合わせて展開層材料を選択することが容易になる。ニトロセルロースシートはプラスチックシートなどで裏打ちして、取り扱い上の強度を大きくするのが望ましい。これは裏打ち材料シートの上にニトロセルロースの薄膜を形成することによって容易に製造することができる。
検出部に抗体を固定化した後、展開層の抗体固定化部以外の部分をブロッキングし、展開層への非特異吸着を低減させることが好ましい。ブロッキングは蛋白質(例えば牛の血清アルブミンまたは乳蛋白質など)、ポリビニルアルコールまたはエタノールアミン、またはこれらの組み合わせなどを用いて処理することで達成される。
本発明における空間形成部は、試料を一時的に保持する空間を形成するものであればよく、さらに、その体積により試料を特異結合分析装置に正確かつ自動的に一定量分取する役割と、試料導入後のデバイス取り扱い時の汚染防止保護材としての役割も有する。例えば、ABS、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂材料のほか、金属、ガラスなどの溶液不透過性の材料を用いて構成することが可能である。
本発明における導入口は、試料を導入する口であり、排出口は空間形成部に保持された試料を特異結合反応が行われる場に試料を排出する口である。ここで、導入口から空間形成部に試料が導入する速度は、排出口から特異結合反応が行われる場に試料が排出される速度より充分速いことが好ましい。このようにすることで、導入口に接触させた試料は、毛細管現象により空間形成部に流入し、その流入量は、空間形成部の内容量と実質的に等しくなる。したがって、試料を特異結合分析装置に正確かつ自動的に一定量分取することができる。さらに、試料流入後、空間形成部において試料を一時的に保持することが可能となり、空間形成部内に試薬を封入した場合でも、試料と試薬との反応時間を確保することができる。
本発明における信号としては、標識材の寄与する反応によって生成し、検出可能なものであればよく、例えば、蛍光光度計で計測可能な蛍光、発光光度計で計測可能な発光、目視判定および色差計で計測可能な呈色などが挙げられる。この場合、検出部では反射された光、または検出部において発生した蛍光または発光の強度などを検出することになる。
本発明の一実施の形態において、信号強度測定装置に装着された試験ストリップに試料を導入し、または試料を導入した試験ストリップを前記信号強度測定装置に装着した後、肉眼での目視で、または、信号の性質に応じた好適な外部の計測器で、検出部における信号の変調の程度を計測する。このなかでは、前記信号強度測定装置に試験ストリップを装着した後、前記試験ストリップに試料を導入して信号の検出を行うことが好ましい。
本発明の一実施の形態においては、複数の特異結合反応が行われる場から発せられる、特異結合反応に由来する信号を、特異結合反応が行われる場毎に区別し、連続的に読み取ることで、試料中の分析対象物を定性または定量することが好ましい。こうすることで複数の特異結合反応を行う場合にも、信号の読み取りの工程に要する時間を短縮することができ、迅速な結果判定が望まれる臨床検査機器および家庭用センサに対応することが可能となる。
また、特異結合反応が行われる場および/または信号を読み取る装置が、一定方向に動くことで、特異結合反応が行われる場から発せられる信号を連続的に読み取ることが好ましい。例えば、信号を読み取ることのできる検出部を複数個並列に配置したストリップを用いた場合、信号強度測定装置を検出部に沿った方向に走査させると複数の特異結合反応から得られる信号を連続的に測定することが可能である。逆に信号強度測定装置を固定し、ストリップを走査させても同様の効果が期待できる。このようにすることで、信号強度の測定に要する装置が簡略化でき、装置の小型化・低価格化も可能となる。
さらに、本発明の特異結合分析装置を使用する際には、導入口から試料が導入されたことを認識する工程を行うのが好ましい。この工程において用いる認識手段として、例えば、試料導入前の乾燥状態の展開層の導電率と、試料導入により湿潤状態になった展開層の導電率との差異を利用することにより、試料が導入され、測定が開始したことを検知する測定開始検知器などが挙げられる。導入口から試料が導入されたことを認識した時間を基準として、測定時間の計測を開始することが好ましい。このようにすると、信号の検出時間、すなわち試料導入から信号強度測定までの時間を正確に管理することができ、測定手技による誤差を低減することができる。
また、標識された第1の特異結合物質は展開層に含まれていることが好ましい。このようにすると、試験ストリップに導入された試料は展開層を展開する際、標識された第1の特異結合物質と反応するので、試料と標識された第1の特異結合物質とを反応させる工程を簡略化することができる。
さらに、標識された第1の特異結合物質が乾燥状態であることが好ましい。このようにすると、標識された第1の特異結合物質は、展開層が乾燥状態にあるときは展開層内の保持部に保持されるが、試料の導入などによって展開層が湿潤されると、展開層内を自由に移動できる。展開層材料は帯状またはシート状として、前記展開層上において試薬を空間的に別個の区域に塗布し、試料導入時にシートまたは帯の片側または端部から他方へ浸透させる。
なお、試料は、あらかじめストリップ外で標識された第1の特異結合物質と反応させた後に、ストリップに導入してもよい。この場合、標識された第1の特異結合物質を展開層や空間形成部に含まなくてもよい。
本発明における第1の特異結合物質および第2の特異結合物質は、分析対象物に対して特異的に結合する物質であればよく、例えば、抗体、抗原、糖蛋白質、多糖類、複合糖脂質、核酸、エフェクター分子、レセプター分子、酵素、インヒビターなどが挙げられる。
このなかでは、特異性が高いという点で、第1の特異結合物質および第2の特異結合物質のうち少なくとも1つは抗体であることが好ましく、さらにはモノクローナル抗体であるのが好ましい。また、これら第1の特異結合物質および第2の特異結合物質は、分析対象物の異なるエピトープに対して特異性を持つことが好ましい。分析対象物が同一のエピトープを複数個持つときは、同一の特異結合物質を用いてもよい。
本発明における標識材としては、その存在を容易に検出できるものであれば任意の物質を用いてもよい。好適には直接標識、すなわち自然状態にあるときに裸眼で見えるか、または光学フィルタの使用および/または紫外光などの刺激を加えて蛍光を促進する方法などの使用により容易に見える物質とするのがよい。直接標識は、別の試薬を加えなくても検出可能な信号を生成するために、分析結果を瞬時に得ることができ、さらに、丈夫で安定性があるため、乾燥状態で保存される分析装置に容易に使用することができる。
直接標識として、例えば染料ゾル、金属ゾル、蛍光物質を含んだ粒子または着色ラテックス粒子のような微細な着色粒子が特に好適である。このようにすると、標識を小さな区域または容積の中に集中することができ、濃く着色された領域を形成して容易に検出可能な信号を生じることができる。これらのなかでも金コロイド粒子が最も好適である。この信号の評価は目測または必要に応じて器具を用いて行うことができる。
一方、アルカリ性フォスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼなどの酵素類のような間接標識を用いることもできる。もっとも、可視信号を検出できるようになるためには基質のような展開試薬を1種類またはそれ以上添加することが必要になるのが普通であるため、簡便性の面から間接標識は直接標識に劣る。このような展開試薬を添加する場合は、多孔質の展開層材料に試薬を含ませて、試料に溶解または分散させればよい。別の方法として、試料と展開試薬をあらかじめ混和し、結合反応が生じた後に試験ストリップに導入してもよい。
なお、標識と特異結合物質との結合は、必要に応じて共有結合または疎水結合によって行うことができる。
本発明の特異結合分析装置の好ましい態様において用いられる試験ストリップにおいて、試料中に分析対象物が存在する場合は、標識された第1の特異結合物質と検出部に固定化された第2の特異結合物質とが、分析対象物を介して結合するサンドイッチ反応が生じ、検出部において、標識された第1の特異結合物質が結合される。この検出部において結合された、標識された第1の特異結合物質からの信号の強度を測定し、信号の強度に基づいて、試料中の分析対象物を定性または定量する。
ここで、試料が検出部に向かうにつれて、標識された第1の特異結合物質も移動すればよく、検出部を越えても試料が引き続き流れるようにすることが好ましい。そのためには十分な試料を試験ストリップに導入し、検出部において結合反応に参加しない余分の標識された第1の特異結合物質が、検出部を越えて続く試料の流れによって、検出部から洗い流されるようにする。ここで、展開層材料の末端部に吸収部を設けてもよい。吸収部の材料としては、未結合の配合体を検出部から洗い流せるように十分な吸収能力を持つものであればよく、例えば、ガラス繊維濾紙GA200(東洋株式会社製)などが挙げられる。
さらに、試料中の分析対象物を定性または定量するために、信号強度と希釈倍率の積を用いて解析することが好ましい。本発明では、濃度既知の標準試料について、分析対象物の濃度と検出部での信号強度との対応関係をあらかじめアッセイして検量線を作成しておき、例えば、プロゾーン現象の影響を受けない分析対象物濃度に自動的に試料の希釈を行った被検試料について測定した信号強度から、検量線を使って被検試料中に含まれる分析対象物の濃度を決定することができる。この場合、検量線より得られる分析対象物濃度と希釈率との積が試料中の分析対象物濃度となる。
また、本発明の特異結合分析装置を用いた特異結合分析方法は、ある閾値以下の信号強度を示した特異結合反応が行われる場の信号強度を解析することにより、試料中の分析対象物を定性または定量することを特徴とする。ここで、閾値はプロゾーン現象を生じない濃度の分析対象物が示す信号強度未満であることが好ましい。こうすることで、プロゾーン現象を回避した分析対象物の定性または定量が可能となる。
さらに、ある閾値以下の信号強度を示した特異結合反応が行われる場のなかで、最大の信号強度を示した特異結合反応が行われる場の信号強度を解析することにより、試料中の分析対象物を定性または定量することが好ましい。本発明では、濃度既知の標準試料について、分析対象物の濃度と検出部での信号強度との対応関係をあらかじめアッセイして検量線を作成する。検量線を用いて分析対象物の定量を行う場合、プロゾーンが生じていない直線領域において、信号強度を濃度で除した値、つまり検量線の傾きが大きい検量線を用いることで、定量性が良くなる。
また、本発明の特異結合分析装置を用いた特異結合分析方法は、複数の特異結合反応が行われる場の信号強度を比較して分析対象物の定性または定量を行うが、ある閾値以下の信号強度を示した特異結合反応が行われる場のなかで、検量線の直線領域を比較した場合、検量線の傾きが大きいものほど大きい信号強度を示す。したがって、所定の閾値以下の信号強度を示した特異結合反応が行われる場のなかで、最大の信号強度を示した特異結合反応が行われる場の信号強度を解析することにより、より正確な試料中の分析対象物を定性または定量が可能となる。
さらに、本発明では、閾値以下の信号強度を示した特異結合反応が行われる場のなかで、最大の信号強度を示した特異結合反応が行われる場の信号強度と分析対象物濃度との対応曲線を参照して試料中の分析対象物を定性または定量する際、閾値以下の信号強度を示した特異結合反応が行われる場のなかで、最大の信号強度を示した特異結合反応が行われる場の信号強度に対応する分析対象物濃度が複数存在した場合、その最小濃度を分析対象物濃度とすることを特徴とする。また閾値は、各特異結合反応が行われる場の信号強度と分析対象物濃度との対応曲線を重ね合わせた時に生じる交点の信号強度の最小値未満であり、かつ各対応曲線の信号強度の極大値のうち、最小の信号強度未満であることを特徴とする。
本発明では、濃度既知の標準試料について、分析対象物の濃度と検出部での信号強度との対応関係をあらかじめアッセイして検量線を作成する。
本発明の特異結合分析装置を用いる特異結合分析方法は、複数の特異結合反応が行われる場の信号強度を比較して分析対象物の定性または定量を行うが、それぞれの特異結合反応が行われる場の検量線を重ね合わせたとき、検量線の中に、プロゾーン現象を生じているものが存在すると、検量線間で交点が発生する可能性が生じる。これら交点の信号強度の最小値未満であり、かつ各検量線の信号強度の極大値のうち、最小の信号強度未満を閾値として設定し、閾値以下の信号強度を示した特異結合反応が行われる場を選択し、それらの場の中で信号強度を比較して最大の信号強度を示す場を選び、その場の信号強度を解析することにより、試料中の分析対象物を定性または定量する。
本発明では、複数の特異結合反応が行われる場の対応曲線を用いて試料中の分析対象物の定性または定量を行うので、従来の単一の対応曲線を用いた特異結合分析方法に比べて定性、定量範囲が拡大する。試料中の分析対象物濃度が、それぞれの特異結合反応が行われる場の各検量線を重ね合わせたときに生じる交点の分析対象物濃度の最小値未満の場合、試料を導入した特異結合反応が行われる場の信号強度を比較すると、検量線のプロゾーンが生じていない直線領域における傾きの大きい場ほど試料中の分析対象物が示す信号強度は大きくなる。したがって、それぞれの特異結合反応が行われる場の検量線のプロゾーンが生じていない直線領域における傾きと、信号強度の関係がこのような場合、試料中の分析対象物を定性または定量する場として選択した場の、信号強度に対応する分析対象物濃度が複数存在する場合、対応する濃度の中で最小の濃度が試料中の分析対象物濃度である。
一方、試料中の分析対象物濃度が、それぞれの特異結合反応が行われる場の各検量線を重ね合わせたときに生じる交点の分析対象物濃度の最小値以上の場合、試料を導入した特異結合反応が行われる場における、試料中の分析対象物が示す信号強度の大小関係と、検量線のプロゾーンが生じていない直線領域における傾きの大小関係とが、対応しなくなる。それぞれの特異結合反応が行われる場の検量線のプロゾーンが生じていない直線領域における傾きと、信号強度の関係がこのような場合、本発明における特異結合分析装置は、試料中の分析対象物濃度が定性または定量範囲外であると判断する。この場合、さらに希釈した試料を用いるか、高濃度分析対象物対応の特異結合分析装置を用いて試料中の分析対象物を定性または定量する。
本発明では、それぞれの特異結合反応が行われる場の各検量線を重ね合わせたときに生じる交点の分析対象物濃度の最小値未満において、試料中の分析対象物濃度が定性または定量が可能であるため、この交点の分析対象物濃度の最小値が大きい装置を準備することで、試料中の分析対象物の定性、定量範囲が拡大する。またある種の臨床マーカーのように、一定範囲の正常値以上であるかどうかが問題となるような分析対象物の場合、正常値付近の値を閾値として設定することで、異常値を示しているかどうかの判断基準となり臨床上有用である。
検量線間で交点が生じていない場合、ある閾値以下の信号強度を示した特異結合反応が行われる場のなかで、検量線の直線領域の傾きが最も大きい場の信号強度を解析することで分析対象物の定性または定量を行う。この場合の閾値は、各特異結合反応が行われる場の検量線のうち、プロゾーンが生じていない直線領域における検量線の傾きが最も大きい検量線の信号強度の極大値未満とする。
このように、本発明を用いて、各特異結合反応が行われる場の信号強度の大小関係と、検量線のプロゾーンが生じていない直線領域における傾きの大小関係とを比較し、本発明を利用して設定した閾値以下の信号強度を示した特異結合反応が行われる場の中で信号強度を比較して最大の信号強度を示す場の信号強度を解析することで、従来特異結合分析反応で問題となっていたプロゾーン現象に影響を受けることなく試料中の分析対象物の定性または定量が可能となる。
実施の形態1
ここで、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
図1は本実施の形態に係る特異結合分析装置である試験ストリップを構成する単一のユニットの概略斜視図であり、図2は図1に示すユニット複数個を連結してなる本発明に係る試験ストリップの概略斜視図である。さらに図3は、解析装置と本発明の試験ストリップとの構成を示す概略断面図である。
代表例として、分析対象物としてhCGを用い、第1の特異結合物質および第2の特異結合物質として、hCGとのサンドイッチ反応に参加し得る、hCGに対するモノクローナル抗体を用い、標識材として金コロイドを用いる場合(直接標識)について説明する。
図3に示すように、ストリップは、内容量が等しい空間形成部2が配置された展開層1により構成されている。さらに展開層1において、保持部5には、第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体が、金コロイドに標識された状態で保持されており、検出部6には、第2の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体が固定化されており、展開層1の上面には、第1の電極11および第2の電極12が設けられている。また、解析装置は、光源7、光検出器8、解析器9、および試料がストリップに導入されたことを認識する手段である測定開始検知器10により構成されている。
検出部6に光源7から所定の波長(例えば520nm)の光を照射し、その反射光を光検出器8で検出した後、解析器9で解析することにより、検出部6における吸光度を測定する。測定波長は、検出部6での試料や標識材の呈色に適した波長を選べばよい。
hCGを含む試料を試験ストリップに導入する。導入口3に試料を接触させると、毛細管現象により試料が一定量空間形成部2に流入する。試料の導入により展開層1が乾燥状態から湿潤状態に変わると、展開層1における導電率が変化する。第1の電極11および第2の電極12を用いて、あらかじめ試料導入前に、展開層1の乾燥状態における導電率を測定し、試料導入時の導電率をモニターしておくことにより、展開層1における導電率変化から、測定開始検知器10において試料の導入を検知することができる。試料の導入を検知すると、その検知情報が測定開始検知器10から解析器9に送られ、試料の導入を検知した時間を0として、解析器9において測定時間の計測を開始する。
解析器9は、光源7および光検出器8を制御して、あらかじめ指定した時間に検出部6における吸光度を自動的に測定する機能を有する。空間形成部2に一時的に保持された試料は、排出口4より排出され、展開層1上を展開し、保持部5に到達し、金コロイドと結合した抗hCGモノクローナル抗体と試料中のhCGにより、標識された抗原抗体複合体が形成される。つぎに、検出部6に試料が到達すると、標識された抗原抗体複合体が固定化された抗hCGモノクローナル抗体と結合することにより、検出部6において標識された抗hCGモノクローナル抗体が捕捉され、呈色が生じる。
検出部6における標識材の吸光度は、試料中のhCG量を反映している。本発明の分析例では、あらかじめ、分析装置作成時に抜き取り検査を行い、標準物質を用いて検出部6での吸光度を測定し、さらに同ロットの分析装置を用いて各hCG濃度に対して測定した検出部6での吸光度を各hCG濃度に対してプロットした検量線を用意する。このようにして、分析装置作成時に濃度換算のための検量線を複数用意しておき、分析装置使用時に、標準物質を用いて測定を行い、標準物質が示した検出部6での吸光度から、各分析装置に適用するべき濃度換算用の検量線を決定する。この検量線を利用することで、検出部6での吸光度から、展開層1に導入した試料中のhCG濃度を計算することができる。
ここで、図19に、単一の導入口を有する本発明に係るストリップ(特異結合分析装置)の概略斜視図を示す。図19に示すように、本発明においては、ストリップをユニット複数個および1個の導入口で構成してもよい。図2に示すストリップにおいては、複数のユニットそれぞれの導入口に試料を導入しなければならないが、図19に示すストリップにおいては、1個の導入口3aに1回だけ試料を導入するだけで、毛細管現象により、各ユニットに試料を導入させることができる。なお、図19における符号が示す構成要素と、図1における符号が示す構成要素は同じである。
実施の形態2
本発明の実施の形態2も、図1〜3に示す構成を採る。
本実施の形態として、分析対象物がhCGであり、第1の特異結合物質および第2の特異結合物質を、hCGとのサンドイッチ反応に参加し得る、hCGに対するモノクローナル抗体とし、標識材として金コロイドを用いて直接標識した場合について説明する。
展開層1において、保持部5には、第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体が、金コロイドに標識された状態で保持されており、検出部6には、第2の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体が固定化されており、展開層1の上面には、第1の電極11および第2の電極12が設けられている。
ストリップにおける空間形成部2それぞれの内容量は等しいが、保持部5における金コロイドに標識された第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体の保持量が異なる展開層1により構成されている。解析装置は、光源7、光検出器8、解析器9、および試料の試験ストリップへの導入を認識する測定開始検知器10により構成される。
検出部6に光源7から所定の波長(例えば520nm)の光を照射し、その反射光を光検出器8で検出した後、解析器9で解析することにより、検出部6における吸光度を測定する。測定波長は、検出部6での試料や標識材の呈色に適した波長を選べばよい。
hCGを含む試料を試験ストリップに導入する。導入口3に試料を接触させると、毛細管現象により試料が一定量空間形成部2に流入する。試料の導入により展開層1が乾燥状態から湿潤状態に変わると、展開層1における導電率が変化する。第1の電極11および第2の電極12を用いて、あらかじめ試料導入前に、展開層1の乾燥状態における導電率を測定し、試料導入時の導電率をモニターしておくことにより、展開層1における導電率変化から、測定開始検知器10において試料の導入を検知することができる。試料の導入を検知すると、その検知情報が測定開始検知器10から解析器9に送られ、試料の導入を検知した時間を0として、解析器9において測定時間の計測を開始する。
解析器9は、光源7および光検出器8を制御して、あらかじめ指定した時間に検出部6における吸光度を自動的に測定する機能を有する。空間形成部2に一時的に保持された試料は、排出口4より排出され、展開層1上を展開し、保持部5に到達し、金コロイドと結合した抗hCGモノクローナル抗体と試料中のhCGにより、標識された抗原抗体複合体が形成される。つぎに、検出部6に試料が到達すると、標識された抗原抗体複合体が固定化された抗hCGモノクローナル抗体と結合することにより、検出部6において標識された抗hCGモノクローナル抗体が捕捉され、呈色が生じる。
検出部6における標識材の吸光度は、試料中のhCG量を反映している。本発明の分析例では、展開層1毎の空間形成部2の内容量が等しいため、展開層1に導入される試料量は等しいが、保持部5に保持された金コロイドに標識された第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体の保持量が異なるため、検出部6における吸光度は展開層1毎に異なる。したがって、試験ストリップに試料を導入すると、自動的に構成比の異なる抗原抗体反応を同時に観察することができる。
本発明では、あらかじめ展開層1毎に保持部5に保持された金コロイドに標識された第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体の保持量を調節しておくことで、特異結合反応に参加する分析対象物と特異結合物質の構成比を展開層1毎に自動的に調節することが可能であり、また分析対象物と特異結合物質の構成比の異なる特異結合反応の結果を比較観察することで、プロゾーン現象の影響を受けない構成比の展開層1における検出部6における標識材の吸光度から、検量線を利用することで、試験ストリップに導入した試料中のhCG濃度を計算することができる。
実施の形態3
本実施の形態について、図6、7および3を参照しながら詳細に説明する。
図6は本実施の形態に係る特異結合分析装置である試験ストリップを構成する単一のユニットの概略斜視図であり、図7は図6に示すユニット複数個を連結してなる本発明に係る試験ストリップの概略斜視図である。なお、本実施の形態に係る特異結合分析装置の構成は図3に示すものと同じである。
本実施の形態として、分析対象物がhCGであり、第1の特異結合物質および第2の特異結合物質を、hCGとのサンドイッチ反応に参加し得る、hCGに対するモノクローナル抗体とし、標識材として金コロイドを用いて直接標識した場合について説明する。
展開層1上に配置された空間形成部2には、金コロイドで標識された第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体溶液が封入されており、各空間形成部2に封入する抗hCGモノクローナル抗体溶液濃度や封入する抗体溶液量は自由に調節することができる。
さらに展開層1において、検出部6には、第2の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体が固定化されており、展開層1上面には、第1の電極11および第2の電極12が設けられている。また解析装置は、光源7、光検出器8、解析器9、および試料が試験ストリップに導入されたことを認識する手段である測定開始検知器10により構成されている。検出部6に光源7から所定の波長(例えば520nm)の光を照射し、その反射光を光検出器8で検出した後、解析器9で解析することにより、検出部6における吸光度を測定する。測定波長は、検出部6での試料や標識材の呈色に適した波長を選べばよい。
hCGを含む試料を試験試薬用のストリップに導入する。導入口3に試料を接触させると、毛細管現象により試料が空間形成部2に流入する。試料の導入により展開層1が乾燥状態から湿潤状態に変わると、展開層1における導電率が変化する。第1の電極11および第2の電極12を用いて、あらかじめ試料導入前に、展開層1の乾燥状態における導電率を測定し、試料導入時の導電率をモニターしておくことにより、展開層1における導電率変化から、測定開始検知器10において試料の導入を検知することができる。試料の導入を検知すると、その検知情報が測定開始検知器10から解析器9に送られ、試料の導入を検知した時間を0として、解析器9において測定時間の計測を開始する。
解析器9は、光源7および光検出器8を制御して、あらかじめ指定した時間に検出部6における吸光度を自動的に測定する機能を有する。空間形成部2に流入した試料は、空間形成部2に封入された金コロイドで標識された第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体溶液と接触して両者は混合され、金コロイドと結合した抗hCGモノクローナル抗体と試料中のhCGにより、標識された抗原抗体複合体が形成される。空間形成部2に一時的に保持された試料は、排出口4より排出され、展開層1上を展開し、検出部6に試料が到達すると、標識された抗原抗体複合体が固定化された抗hCGモノクローナル抗体と結合することにより、検出部6において標識された抗hCGモノクローナル抗体が捕捉され、呈色が生じる。
検出部6における標識材の吸光度は、試料中のhCG量を反映している。本発明の分析例では、あらかじめ、分析装置作成時に抜き取り検査を行い、標準物質を用いて検出部6での吸光度を測定し、さらに、同ロットの分析装置を用いて各hCG濃度について測定した検出部6での吸光度を各hCG濃度に対してプロットした検量線を用意する。このようにして、分析装置作成時に濃度換算のための検量線を複数用意しておき、分析装置使用時に、標準物質を用いて測定を行い、標準物質が示した検出部6での吸光度から、各分析装置に適用するべき濃度換算用の検量線を決定する。この検量線を利用することで、検出部6での吸光度から、展開層1に導入した試料中のhCG濃度を計算することができる。
ついで、定量を行いたいhCGを含む試料を複数の空間形成部2を有する同ロットの試験試薬用のストリップに導入する。ストリップにおける各空間形成部2に封入されている総抗hCGモノクローナル抗体量は一定であるが、各空間形成部2に封入されている抗hCGモノクローナル抗体溶液濃度や封入されている溶液量は異なる。導入口3に試料を接触させると、毛細管現象により試料が空間形成部2に流入するが、各空間形成部2に封入されている金コロイドで標識された第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体溶液量が異なるため、流入する試料量は、空間形成部2毎に異なる。各空間形成部2に封入されている総抗hCGモノクローナル抗体量は一定であるため、複数の空間形成部2を有する試験ストリップに試料を導入すると、自動的に希釈を行った試料についての特異結合反応を同時に観察することができる。
本発明では、あらかじめ空間形成部2に封入されている溶液量を調節しておくことで、自動的に試料の希釈を段階的に行わせることが可能であり、また段階的に希釈した試料の検出部6での吸光度を比較観察することで、プロゾーン現象を生じている濃度範囲が存在するのかを確認することができる。さらに、プロゾーン現象の影響を受けていない濃度に希釈した試料の検出部6での吸光度から、検量線を利用することで、展開層1に導入した試料中のhCG濃度を計算することができる。この場合、検量線より得られる分析対象物濃度と希釈率との積が試料中の分析対象物濃度となる。
実施の形態4(アフィニティー)
本実施の形態における試験試薬用のストリップは、検出部6に固定化された第2の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体のアフィニティーが検出部毎に互いに異なる展開層1により構成されている以外は、上記実施の形態2と同じである。
hCGを含む試料をストリップに導入すると、検出部6における標識材の吸光度は、試料中のhCG量を反映する。本発明の分析例では、アフィニティーの異なる抗hCGモノクローナル抗体を用意し、第2の特異結合物質として検出部6に固定化するため、検出部6における吸光度は展開層1毎に異なる。したがって、試験ストリップに試料を導入すると、自動的に信号強度の異なる抗原抗体反応を同時に観察することができる。
本実施の形態によれば、あらかじめ展開層1毎に検出部6に固定化された第2の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体のアフィニティーを調節しておくことで、特異結合反応に参加する分析対象物と特異結合物質との相互作用の強さを展開層1毎に調節することが可能であり、また分析対象物と特異結合物質との相互作用の強さの異なる特異結合反応の結果を比較観察することで、プロゾーン現象の影響を受けないアフィニティーの抗体を固定化した展開層1における検出部6における標識材の吸光度から、検量線を利用することで、試験ストリップに導入した試料中のhCG濃度を計算することができる。
実施の形態5(粒径)
本実施の形態では、粒径の異なる金コロイドで標識した抗hCGモノクローナル抗体溶液をそれぞれ所定の波長(例えば520nm)の吸光度で一定になるよう調節し、各空間形成部2に同量ずつ封入した展開層1から構成されている以外は、上記実施の形態3と同じ試験試薬用のストリップを用いる。
定量を行いたいhCGを含む試料を複数個の空間形成部2を有する同ロットの試験試薬用のストリップに導入する。標識材である金コロイドの粒径が異なると、封入される標識材の個数や抗体数は、空間形成部2毎に異なる。金コロイドの粒径に起因する立体障害、標識材の個数および抗体数などの違いから、ストリップに試料を導入すると、各展開層1毎に構成比の異なる抗原抗体反応が観察される。よって複数の空間形成部2を有するストリップに試料を導入すると、検出部6での信号強度の異なる特異結合反応を同時に観察することができる。
本実施の形態では、標識材の特性を利用して、特異結合反応に参加する分析対象物と特異結合物質の構成比を展開層1毎に自動的に調節することが可能であり、また分析対象物と特異結合物質の構成比の異なる特異結合反応の結果を比較観察することで、プロゾーン現象の影響を受けない構成比の展開層1における検出部6における標識材の吸光度から、検量線を利用することで、試験ストリップに導入した試料中のhCG濃度を計算することができる。
本実施の形態では、あらかじめ、濃度既知の標準試料を用いて、分析対象物の濃度と検出部での信号強度の対応関係をアッセイし、標識材の特性を利用することで、展開層1毎にプロゾーン現象が生じる分析対象物の濃度が異なるように調節しておく。なお、各空間形成部2に封入する特異結合物質の溶液の量は一定である必要はない。また、特異結合物質の溶液の量の調節に用いる方法は、吸光度を用いる方法に限定されるものではない。さらに標識剤の特性も粒径に限らず、各標識材に応じて種々の特性を適宜利用することができる。
実施の形態6(走査)
本実施の形態においては、実施の形態3と同様にして、hCGを含む試料をストリップに導入して、検出部6を呈色させる。そして、光源7および光検出器8を検出部6に沿った方向に走査させることで、検出部6における信号強度を連続的に測定する。なお、光源7および光検出器8を固定し、ストリップを一定方向に走査させても同様の効果を得ることができる。展開層1は、間隙を設けて並列に配置されているため、複数の検出部6における信号強度を連続的に測定したときも、展開層1毎に信号強度を区別することができる。
図12は、展開層1の幅方向における検出部6の信号強度の分布状況を解析して描いた曲線の概略図である。この曲線は、展開層1または、光源7および光検出器8を走査させながら展開層1上に光源7から光を照射し、光検出器8が検出した反射光を解析器9で解析して描いたものである。この曲線は、縦軸が信号強度を、横軸が検出部の領域を表している。なお、本実施の形態では、ストリップ、または光源7および光検出器8を検出部6に沿った方向に走査させて検出部6における反射光を連続的に測定して信号強度を得る。この曲線の高さhを特異結合反応に基づく信号の強度として測定する。ここで、この曲線の面積Sを、特異結合反応に基づく信号の強度としてもよい。検出部6における標識材の吸光度は、試料中のhCG量を反映している。
本実施の形態の分析例では、あらかじめ、分析装置作成時に抜き取り検査を行い、標準物質を用いて検出部6での吸光度を測定し、さらに、同ロットの分析装置を用いて各hCG濃度について測定した検出部6での吸光度を各hCG濃度に対してプロットした検量線を用意する。このようにして、分析装置作成時に濃度換算のための検量線を複数用意しておき、分析装置使用時に、標準物質を用いて測定を行い、標準物質が示した検出部6での吸光度から、各分析装置に適用するべき濃度換算用の検量線を決定する。この検量線を利用することで、検出部6での吸光度から、展開層1に導入した試料中のhCG濃度を計算することができる。
実施の形態7(走査+アフィニティー)
本実施の形態においては、実施の形態4と同様にして、hCGを含む試料をストリップに導入して、検出部6を呈色させる。そして、光源7および光検出器8を検出部6に沿った方向に走査させることで、検出部6における信号強度を連続的に測定する。なお、光源7および光検出器8を固定し、試験ストリップを一定方向に走査させても同様の効果を得ることができる。展開層1は、間隙を設けて並列に配置されているため、複数の検出部6における信号強度を連続的に測定したときも、展開層1毎に信号強度を区別することができる。
検出部6における標識材の吸光度は、試料中のhCG量を反映している。本発明の分析例では、アフィニティーの異なる抗hCGモノクローナル抗体を用意し、第2の特異結合物質として検出部6に固定化するため、検出部6における吸光度は展開層1毎に異なる。したがって、試験ストリップに試料を導入すると、自動的に信号強度の異なる抗原抗体反応を同時に観察することができる。
本実施の形態では、あらかじめ展開層1毎に検出部6に固定化された第2の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体のアフィニティーを調節しておくことで、特異結合反応に参加する分析対象物と特異結合物質との相互作用の強さを展開層1毎に調節することが可能であり、また分析対象物と特異結合物質との相互作用の強さの異なる特異結合反応の結果を比較観察することで、プロゾーン現象の影響を受けないアフィニティーの抗体を固定化した展開層1における検出部6における標識材の吸光度から、検量線を利用することで、試験ストリップに導入した試料中のhCG濃度を計算することができる。
本実施の形態では、あらかじめ、濃度既知の標準試料を用いて、分析対象物の濃度と検出部での信号強度の対応関係をアッセイし、特異結合物質の特性を利用することで、展開層1毎にプロゾーン現象が生じる分析対象物濃度が異なるように調節しておく。なお、本発明の実施の形態では、制御が容易であるため、モノクローナル抗体のアフィニティーの差を利用する場合を記載したが、特異結合物質の特性はアフィニティーに限定されるものではない。
実施の形態8(走査+粒径)
本実施の形態においては、実施の形態6と同様にして、定量を行いたいhCGを含む試料を複数の空間形成部2を有する同ロットのストリップに導入する。ここでは、ストリップは、粒径の異なる金コロイドで標識した抗hCGモノクローナル抗体溶液をそれぞれ所定の波長(例えば520nm)の吸光度で一定になるよう調節し、各空間形成部2に同量封入した展開層1から構成されている。そのため、標識材である金コロイドの粒径が異なると、封入される標識材の個数や抗体数は、空間形成部2毎に異なる。金コロイドの粒径に起因する立体障害や標識材の個数、抗体数の違いから、試験ストリップに試料を導入すると、各展開層1毎に構成比の異なる抗原抗体反応が観察される。よって複数の空間形成部2を有する試験ストリップに試料を導入すると、検出部6での信号強度の異なる特異結合反応を同時に観察することができる。
本実施の形態では、標識材の特性を利用して、特異結合反応に参加する分析対象物と特異結合物質の構成比を展開層1毎に自動的に調節することが可能であり、また分析対象物と特異結合物質の構成比の異なる特異結合反応の結果を比較観察することで、プロゾーン現象の影響を受けない構成比の展開層1における検出部6における標識材の吸光度から、検量線を利用することで、試験ストリップに導入した試料中のhCG濃度を計算することができる。
本実施の形態では、あらかじめ、濃度既知の標準試料を用いて、分析対象物の濃度と検出部での信号強度の対応関係をアッセイし、標識材の特性を利用することで、展開層1毎にプロゾーン現象が生じる分析対象物濃度が異なるように調節しておく。なお、各空間形成部2に封入する特異結合物質溶液量は一定量である必要はない。また、特異結合物質溶液量の調節に用いる手法も吸光度に限定されるものではない。さらに標識剤の特性も粒径に限らず、各標識剤に応じて適宜利用される。
以下に、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
実施例1
図1〜3に係る特異結合分析装置を用いる上記実施の形態1に沿って、本実施例を行った。ただし、図2に示す5つのユニットを有するストリップを用いた。第1の特異結合物質および第2の特異結合物質として、hCGとのサンドイッチ反応に参加し得る、hCGに対するモノクローナル抗体を用い、標識材として金コロイドを用いて第1の特異結合物質を直接標識した。試料として既知量のhCGを加えた尿を用い、検出部6に520nmの光を照射したときに光検出器8で得られた信号強度の測定を行い、試料中のhCG濃度の定量測定を行った。試料としては、hCG濃度が50IU/L、100IU/L、250IU/L、500IU/Lまたは1000IU/Lである尿を用いた。これらの試料を、5つのユニットのそれぞれの導入口3から導入した。
また、展開層1における導電率変化から、試料の導入を測定開始検知器10により検知し、その検知開始時間を0として測定時間を計測した。50μlの体積を有する空間形成部2を用いた。試料を導入口3に接触させてから5秒以内で試料は空間形成部2を満たし、試料が試験ストリップを展開し終えるのに3分要した。このように試料導入速度は試料排出速度より充分早かった。空間形成部2の体積は、特に限定されるものでなく、試料、分析装置等により適宜設定される。
図4は、試料を試験ストリップに導入してから5分後の、検出部6における520nmでの信号強度を測定したグラフである。各hCG濃度について、信号強度は濃度依存的に増加しており、直線関係にあることがわかる。図には示していないが、検定器で実質上hCG濃度0とされる試料を試験ストリップに導入したときの検出部6における520nmでの信号強度は0であった。このように、図4を検量線として用いることにより、試料中のhCG濃度を定量性良く測定することができる。
実施例2
図1〜3に係る特異結合分析装置を用いる上記実施の形態2に沿って、本実施例を行った。ただし、ここではユニットを2つ有する試験ストリップを用いた。第1の特異結合物質および第2の特異結合物質として、hCGとのサンドイッチ反応に参加し得る、hCGに対するモノクローナル抗体を用い、標識材として金コロイドを用いて第1の特異結合物質を直接標識した。試料としてhCGを既知量加えた尿を用い、検出部において520nmでの信号強度を測定した。試料としては、hCG濃度が100IU/L、500IU/L、1000IU/L、1500IU/L、2000IU/L、または2500IU/Lである尿を用いた。
また、展開層1における導電率変化から、試料の導入を測定開始検知器10により検知し、その時間を0として測定時間を計測した。第1のユニットの保持部における金コロイドを用いて直接標識した第1の特異結合物質の保持量は、第2のユニットの保持量の1/10倍になるよう調節した。すなわち、図2においては単一のユニットが5個連結された状態になっているが、本実施例では2つのユニット(第1のユニットおよび第2のユニット)を連結させた形態のものを用いた。つまり、前記6種類のhCG濃度の試料を第1のユニットおよび第2のユニットそれぞれに導入した。
図5は、第1のユニットと第2のユニットにおけるhCG濃度と、試料導入検出から5分後に測定した検出部6における520nmでの信号強度との関係を表したグラフである。
第1のユニットでの試料導入検出から5分後の信号強度は、hCG濃度が低濃度(hCG濃度=100IU/L、500IU/L、1000IU/L、1500IU/L)のときは、濃度の増加とともに増加しているが、hCG濃度が2000IU/L以上の高濃度になると、逆に濃度の増加とともに減少しており、濃度域によっては、1つの信号強度に対応するhCG濃度が複数存在することがわかる。
つまり、この場合、試料中のhCGが過剰に存在するため、金コロイドで標識された第1の特異結合物質と特異結合していないhCGと、金コロイドで標識された第1の特異結合物質と特異結合したhCGとが、検出部6における第2の特異結合物質との特異結合反応において競合する結果、検出部6で結合される金コロイドで標識された第1の特異結合物質の量が減少し、金コロイドの寄与する信号強度は低下し、検出部6で検出される信号強度は、試料中のhCGの量を反映しなくなっている。
第2のユニットでは、各hCG濃度について、信号強度は濃度依存的に増加しており、直線関係にあることがわかる。図には示していないが、検定器で実質上hCG濃度0とされる試料を第2のユニットに導入したときの検出部6における520nmでの信号強度は0であった。これは、第2のユニットでは、金コロイドに標識された第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体の保持部5における保持量を増加させたことにより、第1のユニットで観察されたプロゾーン現象の原因となった金コロイドで標識された第1の特異結合物質と特異結合していないhCGの量が減少し、プロゾーン現象の影響が回避されたことを意味する。
このように、あらかじめユニット毎に保持部5に保持された金コロイドに標識された第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体の保持量を調節し、特異結合反応に参加する分析対象物と特異結合物質の構成比をユニットごとに自動的に調節することで、プロゾーン現象の影響を受けない構成比の展開層1上の検出部6における標識材の吸光度から、検量線を利用し、試験ストリップに導入した試料中のhCG濃度を計算することができる。表1に、図5から導き出した第1のユニットと第2のユニットの検出部6における信号強度の比を表した。
信号強度の比は、hCG濃度が低濃度(hCG濃度=100IU/L、500IU/L、1000IU/L、1500IU/L)のときはほぼ一定であるが、hCG濃度が2000IU/L以上の高濃度になると、濃度の増加とともに減少している。したがって、ユニットごとに保持部5に保持された金コロイドに標識された第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体の保持量を調節した試験ストリップに、試料を導入し、検出部6における信号強度の比を計算し、比較観察することで、プロゾーン現象が生じているのかが確認できる。
実施例3
図3、6および7に係る特異結合分析装置を用いる上記実施の形態3に沿って、本実施例を行った。ただし、図7におけるユニットの数は5つであるが、ここではユニットの数を6つとした。第1の特異結合物質および第2の特異結合物質として、hCGとのサンドイッチ反応に参加し得る、hCGに対するモノクローナル抗体を用い、標識材として金コロイドを用いて第1の特異結合物質を直接標識した。ここでは、すべての空間形成部2に第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体の溶液を同量ずつ封入した。試料としてhCGを既知量加えた尿を用い、検出部において520nmでの信号強度を測定した。
ここで、試料としては、hCG濃度が100IU/L、500IU/L、1000IU/L、1500IU/L、2000IU/L、または2500IU/Lである尿を用いた。これらの試料を6つのユニットのそれぞれの導入口3から導入した。また、展開層1における導電率変化から、試料の導入を測定開始検知器10により検知し、その時間を0として測定時間を計測した。
図8は、6つのユニットを含むストリップにおいて、hCG濃度と、試料導入検出から5分後に測定した検出部6における520nmでの信号強度との関係を表すグラフである。試料導入検出から5分後の信号強度は、hCG濃度が低濃度(hCG濃度=100IU/L、500IU/L、1000IU/L、1500IU/L)のときは、濃度の増加とともに、増加しているが、hCG濃度が2000IU/L以上の高濃度になると、逆に濃度の増加とともに減少しており、濃度域によっては、1つの信号強度に対応するhCG濃度が複数存在することがわかる。
つまり、この場合、試料中のhCGが過剰に存在するため、金コロイドで標識された第1の特異結合物質と特異結合していないhCGと、金コロイドで標識された第1の特異結合物質と特異結合したhCGとが、検出部6における第2の特異結合物質との特異結合反応において競合する結果、検出部6で結合される金コロイドで標識された第1の特異結合物質の量が減少し、金コロイドの寄与する信号強度は低下し、検出部6で検出される信号強度は、試料中のhCGの量を反映しなくなっている。
つぎに、試料として、hCG濃度が2500IU/Lである尿を、空間形成部2を5つ有する試験ストリップのそれぞれのユニットに導入した。各空間形成部2に封入されている総抗hCGモノクローナル抗体量は一定であるが、各空間形成部2に封入されている抗hCGモノクローナル抗体溶液濃度や封入されている抗体溶液量は異なるものを用い、具体的には、展開層1に展開される試料の最終hCG濃度が、それぞれ、100IU/L、500IU/L、1000IU/L、1500IU/L、2000IU/Lとなるように抗hCGモノクローナル抗体溶液を調整し、空間形成部2に封入した。
本発明では、導入口3に試料を接触させると、毛細管現象により試料が一定量流入するが、各空間形成部2に封入されている金コロイドで標識された第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体溶液量が異なるため、流入する試料量は、空間形成部2毎に異なった。各空間形成部2に封入されている総抗hCGモノクローナル抗体量は一定であるため、複数の空間形成部2を有する試験ストリップに試料を導入すると、自動的に希釈を行った試料についての特異結合反応を同時に観察することができた。
試料導入検出から5分後に検出部6における520nmでの信号強度を測定した結果、試料の希釈が正確に行えていることを確認できた。また、hCG濃度が低濃度(hCG濃度=100IU/L、500IU/L、1000IU/L、1500IU/L)のときは、濃度の増加とともに、信号強度は増加しているが、hCG濃度が2000IU/Lのときは、信号強度が減少していた。
このように本発明では、あらかじめ空間形成部2に封入されている溶液量を調節しておくことで、自動的に試料の希釈を段階的に行わせることが可能である。
実施例4
つぎに、単一のユニットを3つ連結させた形態の特異結合分析装置を用いた。この場合、ユニットA、ユニットB、ユニットCそれぞれに空間形成部2が設けられる。これらユニットA、ユニットB、ユニットCそれぞれについて、試料として既知濃度のhCGを含む試料を用いて検出部6における信号強度を測定することで得られた検量線を重ね合わせたグラフを図9に示した。検量線A、検量線Bおよび検量線Cを、それぞれユニットA、ユニットBおよびユニットCに対応させた。
ユニットA、ユニットBおよびユニットCについて、各空間形成部2に封入されている金コロイドで標識された抗hCGモノクローナル抗体溶液量以外の条件は同じとした。ユニットA、ユニットBおよびユニットCの、各空間形成部2に封入されている総抗hCGモノクローナル抗体量は一定であるが、各空間形成部2に封入されている抗体溶液量は、ユニットA、ユニットBおよびユニットCの順に少なくした。
hCGを含む試料を空間形成部2に導入すると、封入されている抗体溶液量が多いほど試料が希釈されるため、検量線のプロゾーンが生じていない直線領域における傾きの大きさは、ユニットC、ユニットBおよびユニットAの順に大きかった。各検量線A、BおよびCにおいて、hCG濃度が低濃度のときは、濃度の増加とともに信号強度は増加しているが、hCG濃度が高濃度になると、プロゾーン現象が観察された。
検量線Aと検量線Bの交点(C1、S1)、検量線Bと検量線Cの交点(C2、S2)、検量線Aと検量線Cの交点(C3、S3)のうち、最小の信号強度S3未満であり、かつ各検量線の信号強度の極大値のうち、最小の信号強度S4未満であるS5を閾値として設定した。hCGを含む試料Xと試料Yと試料Zとをストリップに展開したときの検出部6における信号強度はそれぞれ、ユニットA、ユニットBおよびユニットCの順に(XA、XB、XC)、(YA、YB、YC)および(ZA、ZB、ZC)であった。
試料Xにおいて、信号強度の大きさは、XA<XB<XCであり、かつXC<S5であった。本発明においては、閾値S5以下の信号強度を示した場(ユニットA、B、C)の中で、最大の信号強度を示したユニットCで示された信号強度XCを用いて試料中のhCG濃度を測定することができた。試料中のhCG濃度が、各検量線A、BおよびCを重ね合わせたときに生じる交点のhCG濃度の最小値C2未満の場合、試料を導入した特異結合反応が行われる場の信号強度を比較すると、検量線のプロゾーンが生じていない直線領域における傾きの大きい場ほど試料中のhCGが示す信号強度は大きくなった。
このように試料を導入した特異結合反応が行われる場における、試料中の分析対象物が示す信号強度の大小関係と、プロゾーンが生じていない直線領域における検量線の傾きの大小関係とが対応している場合、検量線Cから得られる信号強度XCに対応する信号強度CX1、CX2のうち最小の濃度CX1が試料中のhCG濃度となった。この場合、検量線Cより得られる分析対象物濃度CX1と希釈率との積が試料中の分析対象物濃度となった。
試料Yにおいて、信号強度の大きさはYA<YB<YCでありかつYB<S5<YCであった。本発明では、閾値S5以下の信号強度を示した場(ユニットA、B)の中で、最大の信号強度を示したユニットBで示された信号強度YBを用いて試料中のhCG濃度を測定することができた。このように試料を導入した特異結合反応が行われる場における、試料中の分析対象物が示す信号強度の大小関係と、プロゾーンが生じていない直線領域における検量線の傾きの大小関係とが対応している場合、検量線Bから得られる信号強度YBに対応する信号強度CY1およびCY2のうち、最小の濃度CY1が試料中のhCG濃度となる。この場合、検量線Cより得られる分析対象物濃度CY1と希釈率との積が試料中の分析対象物濃度となる。試料Zにおいて、信号強度の大きさは、ZC<ZB<ZAかつZB<S5<ZAであった。
このように、試料を導入した特異結合反応が行われる場における、試料中の分析対象物が示す信号強度の大小関係と、プロゾーンが生じていない直線領域における検量線の傾きの大小関係とが対応していない場合、つまり、試料中のhCG濃度が、各検量線A、BおよびCを重ね合わせたときに生じる交点のhCG濃度の最小値C2以上の場合、本発明における特異結合分析装置は、試料中のhCG濃度が定性または定量範囲外であると判断できた。この場合、試料Zをさらに希釈するか、高濃度hCG対応の特異結合分析装置を用いて試料中のhCGを定性または定量した。
このように、試験ストリップを構成する各展開層1の段階的に希釈した試料の検出部6での吸光度の大小関係と、プロゾーンが生じていない直線領域における検量線の傾きの大小関係とを比較し、本発明を利用して設定した閾値以下の信号強度を示した特異結合反応が行われる場の中で信号強度を比較して最大の信号強度を示す場の信号強度を解析することで、従来特異結合分析反応で問題となっていたプロゾーン現象に影響を受けることなく試料中の分析対象物の定性または定量が可能となる。この場合、検量線より得られる分析対象物濃度と希釈率との積が試料中の分析対象物濃度となる。
実施例5(アフィニティー)
図1〜3に係る特異結合分析装置を用いる上記実施の形態4に沿って、本実施例を行った。したがって、第1のユニットおよび第2のユニットを有するストリップを用意し、第1のユニットおよび第2のユニットの検出部6にそれぞれアフィニティーの異なる(1011M−1および1010M−1)抗hCGモノクローナル抗体を固定化した以外は、実施例2と同様の操作を行った。
図10は、第1のユニットと第2のユニットにおけるhCG濃度と、試料導入検出から5分後に測定した検出部6における520nmでの信号強度との関係を表したグラフである。
第1のユニットでの試料導入検出から5分後の信号強度は、hCG濃度が低濃度(hCG濃度=100IU/L、500IU/L、1000IU/L、1500IU/L)のときは、濃度の増加とともに、増加しているが、hCG濃度が2000IU/L以上の高濃度になると、逆に濃度の増加とともに減少しており、濃度域によっては、1つの信号強度に対応するhCG濃度が複数存在することがわかる。
また、第2のユニットでは、各hCG濃度について、信号強度は濃度依存的に増加しており、直線関係にあることがわかる。図には示していないが、検定器で実質上hCG濃度0とされる試料をストリップに導入したときの検出部6における520nmでの信号強度は0であった。これは、第2のユニットでは、第1のユニットに固定化したものよりアフィニティーの低い抗体を用いたため、分析対象物との相互作用の強さが弱くなり、検出部6における特異結合反応によって捕捉される分析対象物と、検出部から試料の流れとともに洗い流される分析対象物とのバランスが変化することで、プロゾーンの影響を受ける分析対象物濃度が展開層1より高濃度側に移動し、その結果第2のユニットではプロゾーン現象の影響が回避されたことを意味する。
このことから、あらかじめユニット毎に検出部6に固定化する抗hCGモノクローナル抗体のアフィニティーを調節し、分析対象物との相互作用の強さを調節することで、プロゾーン現象の影響を受けないアフィニティーの抗体を固定化したユニット上の検出部6における標識材の吸光度から、検量線を利用することで、試験ストリップに導入した試料中のhCG濃度を計算することができることがわかる。
実施例6
つぎに、実施例4と同様に単一のユニットを3つ連結させた形態の特異結合分析装置を用い、実施例5と同様の操作を行った。これらユニットA、ユニットB、ユニットCそれぞれについて、試料として既知濃度のhCGを含む試料を用いて検出部6における信号強度を測定することで得られた検量線を重ね合わせたグラフを作製したところ、図9に示したグラフと同じものが得られた。
したがって、本実施例においても、上記実施例4と同様に、ストリップを構成する各ユニットの検出部6での吸光度の大小関係と、プロゾーンが生じていない直線領域における検量線の傾きの大小関係とを比較し、本発明を利用して設定した閾値以下の信号強度を示した特異結合反応が行われる場の中で信号強度を比較して最大の信号強度を示す場の信号強度を解析することで、従来特異結合分析反応で問題となっていたプロゾーン現象に影響を受けることなく試料中の分析対象物の定性または定量が可能となる。
実施例7(粒径)
標識材である金コロイドの粒径を変化させる実施の形態5に沿って、実施例5と同様の操作を行った。
なお、試料として、hCG濃度が100IU/L、250IU/L、500IU/L、1000IU/L、1500IU/L、2000IU/L、または2500IU/Lである尿を用いた。
第1のユニットおよび第2のユニットからなるストリップを用意し、各ユニットの第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体の標識材として、それぞれ20nmと70nmの粒径の金コロイドを用いた。520nmの吸光度を一定にした、各金コロイドで標識した抗hCGモノクローナル抗体溶液を各空間形成部に同量ずつ封入した。
図11は、第1のユニットおよび第2のユニットにおけるhCG濃度と、試料導入検出から5分後に測定した検出部6における520nmでの信号強度との関係を表したグラフである。第2のユニットでは、試料導入検出から5分後の信号強度は、hCG濃度が低濃度(hCG濃度=100IU/L、250IU/L、500IU/Lおよび1000IU/L)のときは、濃度の増加とともに増加している。しかし、hCG濃度が1500IU/L以上の高濃度になると、逆に濃度の増加とともに前記信号強度が減少している。つまり、濃度域によっては1つの信号強度に対応するhCG濃度が複数存在する。
この場合、試料中のhCGが過剰に存在するため、金コロイドで標識された第1の特異結合物質と特異結合していないhCGと、金コロイドで標識された第1の特異結合物質と特異結合したhCGとが、検出部6における第2の特異結合物質との特異結合反応において競合する。その結果として、検出部6で結合される金コロイドで標識された第1の特異結合物質の量が減少し、金コロイドの寄与する信号強度は低下し、検出部6で検出される信号強度は、試料中のhCGの量を反映しなくなっている。
第1のユニットでは、各hCG濃度について、信号強度は濃度依存的に増加しており、直線関係が形成されていることがわかる。図示していないが、検定器で実質上hCG濃度0とされる試料を試験ストリップに導入したときの検出部6における520nmでの信号強度は0であった。これは、第1のユニットでは、標識材である金コロイドの粒径を小さくしたことにより、空間形成部に封入された第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体数が増加し、第2のユニットで観察されたプロゾーン現象の原因となった金コロイドで標識された第1の特異結合物質と特異結合していないhCGの量が減少し、プロゾーン現象の影響が回避されたことを意味する。
このことから、あらかじめ標識材の特性を調節しておくことで、ユニット毎に金コロイドに標識された第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体数を調節し、特異結合反応に参加する分析対象物と特異結合物質の構成比をユニット毎に自動的に調節することで、プロゾーン現象の影響を受けない構成比のユニット上の検出部6における標識材の吸光度から、検量線を利用し、ストリップに導入した試料中のhCG濃度を計算できることがわかる。
実施例8(走査)
図1〜3に係る特異結合分析装置を用いる上記実施の形態6に沿って、第1の特異結合物質および第2の特異結合物質として、hCGとのサンドイッチ反応に参加し得る、hCGに対するモノクローナル抗体を用い、標識材として金コロイドを用いて第1の特異結合物質を直接標識した。試料としてhCGを既知量加えた尿を用い、検出部において520nmでの信号強度を測定した。試料としては、hCG濃度が、100IU/L、250IU/L、500IU/L、または1000IU/Lである尿を用いた。また、展開層1における導電率変化から、試料の導入を測定開始検知器10により検知し、その時間を0として測定時間を計測した。
図13に、4本のユニットを並列に配置することで構成されたストリップにて、試料導入検出から5分後に測定した検出部6における520nmでの信号強度の分布状況を表した。図からわかるように、展開層1は、間隙を設けて並列に配置されているため、複数の検出部6における信号強度を連続的に測定したときも、ユニット毎に信号強度を区別することができる。
図14は、図13の曲線の高さを各ユニット毎の検出部における信号強度としたときの、hCG濃度と、試料導入検出から5分後に測定した検出部6における520nmでの信号強度との関係を表したグラフである。各hCG濃度について、信号強度は濃度依存的に増加しており、直線関係にあることがわかる。図には示していないが、検定器で実質上hCG濃度0とされる試料を試験ストリップに導入したときの検出部6における520nmでの信号強度は0であった。
実施例9(走査+アフィニティー)
図1〜3に係る特異結合分析装置を用いる上記実施の形態7に沿って、第1の特異結合物質及び第2の特異結合物質として、hCGとのサンドイッチ反応に参加し得る、hCGに対するモノクローナル抗体を用い、標識材として金コロイドを用いて第1の特異結合物質を直接標識した。試料としてhCGを既知量加えた尿を用い、検出部において520nmでの信号強度を測定した。試料としては、hCG濃度が、100IU/L、500IU/L、1000IU/L、1500IU/L、2000IU/L、または2500IU/Lである尿を用いた。
また、展開層1における導電率変化から、試料の導入を測定開始検知器10により検知し、その時間を0として測定時間を計測した。第1のユニットおよび第2のユニットからなるストリップを用意し、ユニット1および2の検出部6にそれぞれアフィニティーの異なる(1011M−1、1010M−1)抗hCGモノクローナル抗体を固定化した。
図15の(a)〜(f)は、2本のユニットを並列に配置することで構成されたストリップにおいて、hCG濃度の異なる試料導入検出から5分後に測定した検出部6における520nmでの信号強度の分布状況を表したものである。図からもわかるように、第1のユニットは、間隙を設けて並列に配置されているため、複数の検出部6における信号強度を連続的に測定したときも、第1のユニット毎に信号強度を区別することができる。
図16は、図15の曲線の高さを各ユニット毎の検出部における信号強度としたときの、hCG濃度と、試料導入検出から5分後に測定した検出部6における520nmでの信号強度との関係を表したグラフである。
第1のユニットでの試料導入検出から5分後の信号強度は、hCG濃度が低濃度(hCG濃度=100IU/L、500IU/L、1000IU/L、1500IU/L)のときは、濃度の増加とともに、増加しているが、hCG濃度が2000IU/L以上の高濃度になると、逆に濃度の増加とともに減少しており、濃度域によっては、1つの信号強度に対応するhCG濃度が複数存在することがわかる。
つまりこの場合、試料中のhCGが過剰に存在するため、金コロイドで標識された第1の特異結合物質と特異結合していないhCGと、金コロイドで標識された第1の特異結合物質と特異結合したhCGとが、検出部6における第2の特異結合物質との特異結合反応において競合する結果、検出部6で結合される金コロイドで標識された第1の特異結合物質の量が減少し、金コロイドの寄与する信号強度は低下し、検出部6で検出される信号強度は、試料中のhCGの量を反映しなくなっている。
第2のユニットでは、各hCG濃度について、信号強度は濃度依存的に増加しており、直線関係にあることがわかる。図には示していないが、検定器で実質上hCG濃度0とされる試料を試験ストリップに導入したときの検出部6における520nmでの信号強度は0であった。これは、第2のユニットでは、第1のユニットに固定化したものよりアフィニティーの低い抗体を用いたため、分析対象物との相互作用の強さが弱くなり、検出部6における特異結合反応によって捕捉される分析対象物と、検出部から試料の流れとともに洗い流される分析対象物とのバランスが変化する。そして、プロゾーンの影響を受ける分析対象物濃度が展開層1より高濃度側に移動し、その結果、第2のユニットではプロゾーン現象の影響が回避されたことを意味する。
このことから、あらかじめユニット毎に検出部6に固定化する抗hCGモノクローナル抗体のアフィニティーを調節し、分析対象物との相互作用の強さを調節することで、プロゾーン現象の影響を受けないアフィニティーの抗体を固定化したユニット上の検出部6における標識材の吸光度から、検量線を利用することで、試験ストリップに導入した試料中のhCG濃度を計算することができることがわかる。
実施例10(走査+粒径)
図1〜3に係る特異結合分析装置を用いる上記実施の形態8に沿って、第1の特異結合物質および第2の特異結合物質として、hCGとのサンドイッチ反応に参加し得る、hCGに対するモノクローナル抗体を用い、標識材として金コロイドを用いて第1の特異結合物質を直接標識した。試料としてhCGを既知量加えた尿を用い、検出部において520nmでの信号強度を測定した。試料としては、hCG濃度が100IU/L、250IU/L、500IU/L、1000IU/L、1500IU/L、2000IU/L、または2500IU/Lである尿を用いた。
また、展開層における導電率変化から、試料の導入を測定開始検知器10により検知し、その時間を0として測定時間を計測した。第1のユニットおよび第2のユニットからなる試験ストリップを用意し、各ユニットの第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体の標識材として、それぞれ20nmと70nmの粒径の金コロイドを用いた。また、520nmの吸光度を一定にした、各金コロイドで標識した抗hCGモノクローナル抗体溶液を各空間形成部に同量封入している。
図17の(a)〜(g)は、2本のユニットを並列に配置することで構成された試験ストリップにおいて、試料導入検出から5分後に測定した検出部6における520nmでの信号強度の分布状況を表したものである。図からもわかるように、ユニットは、間隙を設けて並列に配置されているため、複数の検出部6における信号強度を連続的に測定したときも、ユニット毎に信号強度を区別することができる。
図18は、図17の曲線の高さを各ユニット毎の検出部における信号強度としたときの、hCG濃度と、試料導入検出から5分後に測定した検出部6における520nmでの信号強度との関係を表したグラフである。第2のユニットでの試料導入検出から5分後の信号強度は、hCG濃度が低濃度(hCG濃度=100IU/L、250IU/L、500IU/L、1000IU/L)のときは、濃度の増加とともに、増加しているが、hCG濃度が1500IU/L以上の高濃度になると、逆に濃度の増加とともに減少しており、濃度域によっては、1つの信号強度に対応するhCG濃度が複数存在することがわかる。
つまりこの場合、試料中のhCGが過剰に存在するため、金コロイドで標識された第1の特異結合物質と特異結合していないhCGと、金コロイドで標識された第1の特異結合物質と特異結合したhCGとが、検出部6における第2の特異結合物質との特異結合反応において競合する結果、検出部6で結合される金コロイドで標識された第1の特異結合物質の量が減少し、金コロイドの寄与する信号強度は低下し、検出部6で検出される信号強度は、試料中のhCGの量を反映しなくなっている。
第1のユニットでは、各hCG濃度について、信号強度は濃度依存的に増加しており、直線関係にあることがわかる。図には示していないが、検定器で実質上hCG濃度0とされる試料をストリップに導入したときの検出部6における520nmでの信号強度は0であった。これは、第1のユニットでは、標識材である金コロイドの粒径を小さくしたことにより、空間形成部に封入された第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体数が増加し、第2のユニットで観察されたプロゾーン現象の原因となった金コロイドで標識された第1の特異結合物質と特異結合していないhCGの量が減少し、プロゾーン現象の影響が回避されたことを意味する。
このことから、あらかじめ標識材の特性を調節しておくことで、ユニット毎に金コロイドに標識された第1の特異結合物質である抗hCGモノクローナル抗体数を調節し、特異結合反応に参加する分析対象物と特異結合物質の構成比をユニット毎に自動的に調節することで、プロゾーン現象の影響を受けない構成比のユニット上の検出部6における標識材の吸光度から、検量線を利用することで、試験ストリップに導入した試料中のhCG濃度を計算することができることがわかる。
産業上の利用の可能性
以上のように、本発明によれば、高度な装置や操作を要することなく、自動的に試料の希釈を行わせることが可能で、さらに試料中の分析対象物の濃度に由来する影響が少なく、試料中の分析対象物を、小型で簡易な測定装置により簡便・迅速、かつ正確に定性および定量することができる特異結合分析装置および特異結合分析方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明における単一のユニットからなるストリップの構成を示す概略斜視図である。
図2は、図1に示すユニット複数個が配列されてなるストリップ(本発明の特異結合分析装置)の構成を示す概略斜視図である。
図3は、解析装置を含む本発明の特異結合分析装置の構成を示す概略断面図である。
図4は、実施例1において測定した検出部における520nmでの信号強度と、hCG濃度との関係を示したグラフである。
図5は、実施例2において測定した検出部における520nmでの信号強度と、hCG濃度との関係を示したグラフである。
図6は、本発明における単一のユニットからなるストリップの構成を示す概略斜視図である。
図7は、図6に示すユニット複数個が配列されてなるストリップ(本発明の特異結合分析装置)の構成を示す概略斜視図である。
図8は、実施例3において測定した検出部における520nmでの信号強度と、hCG濃度との関係を示したグラフである。
図9は、実施例4において測定した検出部における520nmでの信号強度と、hCG濃度との関係を示したグラフを重ね合わせたグラフである。
図10は、実施例5において測定した検出部における520nmでの信号強度と、hCG濃度との関係を示したグラフである。
図11は、実施例7において測定した検出部における520nmでの信号強度と、hCG濃度との関係を示したグラフである。
図12は、展開層1の幅方向における検出部6の信号強度の分布状況を解析して描いた曲線の概略図である。
図13は、実施例8の4本のユニットを並列に配置することで構成されたストリップにおいて、試料導入検出から5分後に測定した検出部6における520nmでの信号強度の分布状況を表した図である。
図14は、図13の曲線の高さを各ユニット毎の検出部における信号強度としたときの、hCG濃度と試料導入検出から5分後に測定した検出部6における520nmでの信号強度との関係を表したグラフである。
図15は、実施例9の2本のユニットを並列に配置することで構成されたストリップにおいて、hCG濃度の異なる試料導入検出から5分後に測定した検出部6における520nmでの信号強度の分布状況を表した図である。
図16は、図15の曲線の高さを各ユニット毎の検出部における信号強度としたときの、hCG濃度と、試料導入検出から5分後に測定した検出部6における520nmでの信号強度との関係を表したグラフである。
図17は、実施例10の2本のユニットを並列に配置することで構成されたストリップにおいて、試料導入検出から5分後に測定した検出部6における520nmでの信号強度の分布状況を表した図である。
図18は、図17の曲線の高さを各ユニット毎の検出部における信号強度としたときの、hCG濃度と、試料導入検出から5分後に測定した検出部6における520nmでの信号強度との関係を表したグラフである。
図19は、配列されたユニット複数個で構成され、単一の導入口を有するストリップ(本発明の特異結合分析装置)の構成を示す概略斜視図である。
Claims (20)
- 分析対象物と、分析対象物に特異的に結合する特異結合物質との特異結合反応を用いて、試料中の分析対象物を定性または定量する特異結合分析装置であって、
前記試料を導入する導入口と、前記導入口より導入された試料を一時的に保持する空間形成部と、前記空間形成部に保持された試料が特異結合反応する場と、前記空間形成部から前記場に前記試料を排出する排出口とを有し、
前記空間形成部と前記場とをそれぞれ複数個具備し、
前記場毎に異なる条件で特異結合反応が起こることを特徴とする特異結合分析装置。 - 前記導入口が一つであることを特徴とする請求の範囲第1項記載の特異結合分析装置。
- 前記空間形成部毎にその内容量が互いに異なることを特徴とする請求の範囲第1項記載の特異結合分析装置。
- 前記導入口から前記空間形成部に試料が導入する速度が、前記排出口から前記場に前記試料が排出される速度より速いことを特徴とする請求の範囲第1項または第2項記載の特異結合分析装置。
- 前記場が標識材により標識された第1の特異結合物質と第2の特異結合物質とを有し、前記第1の特異結合物質と前記第2の特異結合物質とが前記分析対象物を介して結合する特異結合反応に由来する信号に基づいて定性または定量することを特徴とする請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載の特異結合分析装置。
- 前記標識材の特性が前記場毎に異なることを特徴とする請求の範囲第5項記載の特異結合分析装置。
- 前記標識材の特性が前記標識材の粒径または材料であることを特徴とする請求の範囲第6項記載の特異結合分析装置。
- 前記場が毛細管現象により前記試料が展開する展開層であり、前記検出部が前記展開層上に設けられ、前記第2の特異結合物質が前記検出部に固定化されていることを特徴とする請求の範囲第5項〜第7項のいずれかに記載の特異結合分析装置。
- 前記第1の特異結合物質が前記展開層上に保持されていることを特徴とする請求の範囲第8項記載の特異結合分析装置。
- 前記試料が、複数の前記展開層間を移動しないことを特徴とする請求の範囲第8項記載の特異結合分析装置。
- 前記複数の場から発する特異結合に由来する信号を、前記場毎に区別し、かつ連続的に読み取る装置を具備することを特徴とする請求の範囲第1項〜第10項のいずれかに記載の特異結合分析装置。
- 分析対象物を含む試料を導入する導入口と、前記導入口より導入された前記試料を一時的に保持する複数個の空間形成部と、前記空間形成部に保持された試料中の分析対象物との特異結合反応を行う複数個の場と、前記空間形成部から前記場に前記試料を排出する排出口とを有し、前記場毎に異なる条件で特異結合反応が起こることを特徴とする特異結合分析装置を用い、
前記空間形成部の内容量、前記空間形成部に保持される前記試料の希釈比および前記標識材の特性よりなる群から選択されるすくなくとも一種を調節することによって、前記試料中の分析対象物を定性または定量することを特徴とする特異結合分析方法。 - 前記標識材の特性が粒径または材料であることを特徴とする請求の範囲第12項記載の特異結合分析方法。
- 前記空間形成部に第1の特異結合物質を含む溶液を担持させておき、担持させる前記溶液の量を調節することで前記試料中の分析対象物を定性または定量することを特徴とする請求の範囲第12項記載の特異結合分析方法。
- 前記特異反応結合に由来する信号の強度と前記希釈の倍率との積を解析することにより、前記試料中の分析対象物を定性または定量することを特徴とする請求の範囲第12項記載の特異結合分析方法。
- 前記場において、所定の閾値以下の信号強度を示した特異結合反応が行われる部分の信号強度を解析することにより、前記試料中の分析対象物を定性または定量することを特徴とする請求の範囲第12項記載の特異結合分析方法。
- 前記閾値以下の信号強度を示した特異結合反応が行われる場の中で、最大の信号強度を示した特異結合反応が行われる部分の信号強度を解析することにより、前記試料中の分析対象物を定性または定量することを特徴とする請求の範囲第15項記載の特異結合分析方法。
- 前記閾値が、各特異結合反応が行われる部分の信号強度と分析対象物濃度との対応曲線を重ねたときに生じる交点信号強度の最小値未満であり、かつ各対応曲線の信号強度の極大値のうち、最小の信号強度未満であることを特徴とする請求の範囲第16項または第17項記載の特異結合分析方法。
- 前記閾値以下の信号強度を示した特異結合反応が行われる場の中で、最大の信号強度を示した特異結合反応が行われる部分の信号強度と分析対象物濃度との対応曲線を参照して試料中の分析対象物を定性または定量する際、前記閾値以下の信号強度を示した特異結合反応が行われる場の中で、最大の信号強度を示した特異結合反応が行われる部分の信号強度に対応する分析対象物濃度が複数存在した場合、その最小濃度を分析対象物濃度とみなすことを特徴とする請求の範囲第16項〜第18項のいずれかに記載の特異結合分析方法。
- 前記複数の場から発する特異結合に由来する信号を、前記場毎に区別し、かつ連続的に読みとることによって、前記試料中の分析対象物の定性または定量を行うことを特徴とする請求の範囲第12項記載の特異結合分析方法。
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