JPWO2003003429A1 - 投影光学系、露光装置および方法 - Google Patents
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Abstract
たとえば蛍石のような固有複屈折を持つ光学材料を用いているにもかかわらず、複屈折の影響を実質的に受けることなく良好な光学性能を有する投影光学系。第1面(R)の縮小像を第2面(W)上に形成する投影光学系(400)。結晶軸[100]と光軸とがほぼ一致するように形成された第1群の光透過部材と、同じく結晶軸[100]と光軸とがほぼ一致するように形成された第2群の光透過部材とを備えている。第1群の光透過部材と第2群の光透過部材とは、光軸を中心として45°だけ相対的に回転した位置関係を有する。第1群の光透過部材および第2群の光透過部材の双方が、第2面側の瞳位置(20)と第2面との間の光路中に配置されている。
Description
技術分野
本発明は、投影光学系、該投影光学系を備えた露光装置および該投影光学系を用いた露光方法に関し、特に半導体素子などのマイクロデバイスをフォトリソグラフィ工程で製造する際に使用される露光装置に好適な反射屈折型の投影光学系に関するものである。
背景技術
近年、半導体素子の製造や半導体チップ実装基板の製造では、微細化がますます進んでおり、パターンを焼き付ける露光装置ではより解像力の高い投影光学系が要求されてきている。この高解像の要求を満足するには、露光光を短波長化し、且つNA(投影光学系の開口数)を大きくしなければならない。しかしながら、露光光の波長が短くなると、光の吸収のため実用に耐える光学ガラスの種類が限られてくる。
たとえば波長が200nm以下の真空紫外域の光、特にF2レーザ光(波長157nm)を露光光として用いる場合、投影光学系を構成する光透過性光学材料としては、フッ化カルシウム(蛍石:CaF2)やフッ化バリウム(BaF2)等のフッ化物結晶を多用せざるを得ない。実際には、露光光としてF2レーザ光を用いる露光装置では、基本的に蛍石だけで投影光学系を形成する設計が想定されている。蛍石は、立方晶系であり、光学的には等方的で、複屈折が実質的にないと思われていた。また、従来の可視光域の実験では、蛍石について小さい複屈折(内部応力起因のランダムなもの)しか観測されていなかった。
しかしながら、2001年5月15日に開かれたリソグラフィに関するシンポジュウム(2nd International Symposium on 157nm Lithography)において、米国NISTのJohn H.Burnettらにより、蛍石には固有複屈折(intrinsic birefringence)が存在することを実験および理論の両面から確認したことが発表された。
この発表によれば、蛍石の複屈折は、結晶軸[111]方向およびこれと等価な結晶軸[−111],[1−11],[11−1]方向、並びに結晶軸[100]方向およびこれと等価な結晶軸[010],[001]方向ではほぼ零であるが、その他の方向では実質的に零でない値を有する。特に、結晶軸[110],[−110],[101],[−101],[011],[01−1]の6方向では、波長157nmに対して最大で6.5nm/cm、波長193nmに対して最大で3.6nm/cmの複屈折の値を有する。これらの複屈折の値はランダムな複屈折の許容値とされる1nm/cmよりも実質的に大きい値であり、しかもランダムでない分だけ複数のレンズを通して複屈折の影響が蓄積する可能性がある。
従来技術では、投影光学系の設計において蛍石の複屈折性を考慮していないので、加工の容易さなどの観点から結晶軸[111]と光軸とを一致させるのが一般的である。この場合、投影光学系では、NA(開口数)が比較的大きいため、結晶軸[111]からある程度傾いた光線もレンズを通過するので、複屈折の影響により結像性能が悪化する可能性がある。
ところで、Burnettらは上述の発表において、一対の蛍石レンズの光軸と結晶軸[111]とを一致させ且つ光軸を中心として一対の蛍石レンズを60°相対的に回転させることにより、複屈折の影響を補正する手法を開示している。しかしながら、この手法では、後述するように、複屈折の影響をある程度薄めることはできるが、複屈折の影響をこれと反対方向の複屈折の影響で積極的に補正していないので、その補正効果は十分ではなかった。
また、F2レーザ光(波長157nm)を露光光として用いる場合、フォトレジストからの露光による脱ガス(アウトガス)は避けられない状況にある。したがって、従来から提案されている大きな開口数を有する投影光学系では、特段の策を講じない限り脱ガスによるレンズの汚染を回避することができない。
発明の開示
本発明の第1の目的は、たとえば蛍石のような固有複屈折を持つ光学材料を用いているにもかかわらず、複屈折の影響を実質的に受けることなく良好な光学性能を達成することにある。
本発明の第2の目的は、フォトレジストからの脱ガスによるレンズの汚染を良好に回避することにある。
上述の第2の目的を達成するために、本発明の第1発明では、複数のレンズと少なくとも1つの凹面反射鏡とを含み、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
前記第1面および前記第2面を走査方向に沿って移動させて前記第1面の像を前記第2面上に走査露光する露光装置に用いられたときに、非走査時にはスリット状または円弧状の露光領域を前記第2面上に形成し、
前記第2面側の作動距離をDwとし、前記第2面側の開口数をNwとし、前記スリット状または円弧状の露光領域における前記走査方向と直交する方向に沿った長さをEwとするとき、
0.5<(Dw・Nw)/Ew<1.4 (1)
の条件を満足することを特徴とする投影光学系を提供する。なお、本発明でいうスリット状とは、走査方向を横切る方向に延びた形状を指し、たとえば走査方向を横切る方向に延びた長方形状、台形状、六角形状などが挙げられる。
第1発明の好ましい態様によれば、前記スリット状または円弧状の露光領域は、前記投影光学系の光軸を含まないように設定され、前記第1面の第1中間像を形成するための屈折型の第1結像光学系と、少なくとも1つの負レンズと凹面反射鏡とを有し、前記第1中間像からの光束に基づいて前記第1中間像とほぼ等倍の第2中間像を前記第1中間像の形成位置の近傍に形成するための第2結像光学系と、前記第2中間像からの光束に基づいて前記第2中間像の縮小像を前記第2面上に形成するための屈折型の第3結像光学系と、前記第1結像光学系から前記第2結像光学系に至る光路中に配置された第1光路折り曲げ鏡と、前記第2結像光学系から前記第3結像光学系に至る光路中に配置された第2光路折り曲げ鏡とを備えている。この場合、前記第1光路折り曲げ鏡の有効領域および前記第2光路折り曲げ鏡の有効領域は、全体に亘って平面状に形成された反射面を有することが好ましく、前記第1光路折り曲げ鏡の有効領域と前記第2光路折り曲げ鏡の有効領域とは空間的な重なりを有することなく、前記第1面からの光束をすべて前記第2面へ導くように配置されていることが好ましい。
また、第1発明の好ましい態様によれば、前記第1結像光学系および前記第3結像光学系を構成するすべてのレンズが単一の直線状の光軸に沿って配置されている。さらに、本発明の第1発明において、前記投影光学系は、前記第1面と前記第2面との間の光路中に配置されて凹面反射鏡を含む反射屈折型の結像光学系と、前記反射屈折型の結像光学系と前記第2面との間の光路中に配置された屈折型の結像光学系と、前記第1面と前記反射屈折型の結像光学系との間の光路中に配置された第1光路折り曲げ鏡と、前記反射屈折型の結像光学系と前記屈折型の結像光学系との間の光路中に配置された第2光路折り曲げ鏡とを備えていることが好ましい。
本発明の第2発明では、複数のレンズと凹面反射鏡と該凹面反射鏡の近傍に配置された負レンズとを含み、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
前記第1面および前記第2面を走査方向に沿って移動させて前記第1面の像を前記第2面上に走査露光する露光装置に用いられたときに、非走査時には前記投影光学系の光軸を含まないように設定されたスリット状または円弧状の露光領域を前記第2面上に形成し、
前記第2面側の開口数は0.82以上であることを特徴とする投影光学系を提供する。
第2発明の好ましい態様によれば、前記凹面反射鏡および前記負レンズは、重力の方向と実質的に異なる方向の光軸に沿って配置され、前記凹面反射鏡の有効径(直径)をSとし、前記凹面反射鏡の曲率半径をRとするとき、
1.0<S/|R|<1.8 (2)
の条件を満足する。また、本発明の第2発明において、前記投影光学系は、前記第1面と前記第2面との間の光路中に配置されて凹面反射鏡を含む反射屈折型の結像光学系と、前記反射屈折型の結像光学系と前記第2面との間の光路中に配置された屈折型の結像光学系と、前記第1面と前記反射屈折型の結像光学系との間の光路中に配置された第1光路折り曲げ鏡と、前記反射屈折型の結像光学系と前記屈折型の結像光学系との間の光路中に配置された第2光路折り曲げ鏡とを備えていることが好ましい。
また、上述の第1の目的を達成するために、本発明の第3発明では、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
前記第2面側の瞳位置と前記第2面との間の光路中に配置され、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[100]または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された少なくとも1つの光透過部材を備えていることを特徴とする投影光学系を提供する。
また、上述の第1の目的を達成するために、本発明の第4発明では、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
通過する光線の光軸に対する角度の最大値が20度を超える光透過部材のうちの少なくとも1つの光透過部材は、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[100]または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成されていることを特徴とする投影光学系を提供する。
また、上述の第1の目的を達成するために、本発明の第5発明では、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[100]または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第1群の光透過部材と、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[100]または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第2群の光透過部材とを備え、
前記第1群の光透過部材と前記第2群の光透過部材とは、光軸を中心としてほぼ45°だけ相対的に回転した位置関係を有し、
前記第1群の光透過部材および前記第2群の光透過部材の双方が、前記第2面側の瞳位置と前記第2面との間の光路中に配置されていることを特徴とする投影光学系を提供する。
また、上述の第1の目的を達成するために、本発明の第6発明では、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[100]または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第1群の光透過部材と、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[100]または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第2群の光透過部材とを備え、
前記第1群の光透過部材と前記第2群の光透過部材とは、光軸を中心としてほぼ45°だけ相対的に回転した位置関係を有し、
前記第1群の光透過部材および前記第2群の光透過部材の双方において、通過する光線の光軸に対する角度の最大値が20度を超えていることを特徴とする投影光学系を提供する。
なお、本発明の第5及び第6発明において、第1群の光透過部材と第2群の光透過部材とが光軸を中心としてほぼ45°だけ相対的に回転した位置関係を有するとは、第1群の光透過部材および第2群の光透過部材における光軸とは異なる方向に向けられた所定の結晶軸(たとえば結晶軸[010]、[001]、[01−1]、または[011])同士の光軸を中心とした相対的な角度がほぼ45°であることを意味する。なお、結晶軸[100]を光軸とする場合には、光軸を中心とした複屈折の影響の回転非対称性が90°の周期で現れるため、第5及び第6発明において、光軸を中心としてほぼ45°だけ相対的に回転した位置関係を有することは、光軸を中心としてほぼ45°+(n×90°)だけ相対的に回転した位置関係を有することと同じ意味である(nは整数である)。
第5発明および第6発明の好ましい態様によれば、前記第1群の光透過部材および前記第2群の光透過部材のうちの少なくとも一方は、少なくとも1つの非球面を有する。また、前記第1群の光透過部材の光軸に沿った厚さ(中心厚)の総計をT1とし、前記第2群の光透過部材の光軸に沿った厚さの総計をT2とし、前記投影光学系を構成するすべての光透過部材の光軸に沿った厚さの総計をTAとするとき、|T1−T2|/TA<0.025の条件を満足することが好ましい。さらに、前記第1群の光透過部材と前記第2群の光透過部材とは、オプティカルコンタクトまたは接着により1つの光学部品として形成されていることが好ましい。
また、上述の第1の目的を達成するために、本発明の第7発明では、複数のレンズと凹面反射鏡と該凹面反射鏡の近傍に配置された負レンズとを含み、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
前記負レンズは、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[100]または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成されていることを特徴とする投影光学系を提供する。
また、上述の第1の目的を達成するために、本発明の第8発明では、複数のレンズと凹面反射鏡と該凹面反射鏡の近傍に配置された第1負レンズおよび第2負レンズとを含み、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
前記第1負レンズは、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[100]または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成され、
前記第2負レンズは、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[100]または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成され、
前記第1負レンズと前記第2負レンズとは、光軸を中心としてほぼ45°だけ相対的に回転した位置関係を有することを特徴とする投影光学系を提供する。
なお、本発明の第8発明において、第1負レンズと第2負レンズとが光軸を中心としてほぼ45°だけ相対的に回転した位置関係を有するとは、第1負レンズおよび第2負レンズにおける光軸とは異なる方向に向けられた所定の結晶軸(たとえば結晶軸[010]、[001]、[01−1]、または[011])同士の光軸を中心とした相対的な角度がほぼ45°であることを意味する。なお、結晶軸[100]を光軸とする場合には、光軸を中心とした複屈折の影響の回転非対称性が90°の周期で現れるため、第8発明において、光軸を中心としてほぼ45°だけ相対的に回転した位置関係を有することは、光軸を中心としてほぼ45°+(n×90°)だけ相対的に回転した位置関係を有することと同じ意味である(nは整数である)。
また、上述の第1の目的を達成するために、本発明の第9発明では、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
前記第2面側の瞳位置と前記第2面との間の光路中に配置され、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[110]または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された少なくとも1つの光透過部材を備えていることを特徴とする投影光学系を提供する。
また、上述の第1の目的を達成するために、本発明の第10発明では、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
通過する光線の光軸に対する角度の最大値が20度を超える光透過部材のうちの少なくとも1つの光透過部材は、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[110]または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成されていることを特徴とする投影光学系を提供する。
また、上述の第1の目的を達成するために、本発明の第11発明では、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[110]または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第3群の光透過部材と、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[110]または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第4群の光透過部材とを備え、
前記第3群の光透過部材と前記第4群の光透過部材とは、光軸を中心としてほぼ90°だけ相対的に回転した位置関係を有し、
前記第3群の光透過部材および前記第4群の光透過部材の双方が、前記第2面側の瞳位置と前記第2面との間の光路中に配置されていることを特徴とする投影光学系を提供する。
また、上述の第1の目的を達成するために、本発明の第12発明では、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[110]または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第3群の光透過部材と、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[110]または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第4群の光透過部材とを備え、
前記第3群の光透過部材と前記第4群の光透過部材とは、光軸を中心としてほぼ90°だけ相対的に回転した位置関係を有し、
前記第3群の光透過部材および前記第4群の光透過部材の双方において、通過する光線の光軸に対する角度の最大値が20度を超えていることを特徴とする投影光学系を提供する。
なお、本発明の第11及び第12発明において、第3群の光透過部材と第4群の光透過部材とが光軸を中心としてほぼ90°だけ相対的に回転した位置関係を有するとは、第3群の光透過部材および第4群の光透過部材における光軸とは異なる方向に向けられた所定の結晶軸(たとえば結晶軸[001]、[−111]、[−110]、または[1−11])同士の光軸を中心とした相対的な角度がほぼ90°であることを意味する。なお、結晶軸[110]を光軸とする場合には、光軸を中心とした複屈折の影響の回転非対称性が180°の周期で現れるため、第11及び第12発明において、光軸を中心としてほぼ90°だけ相対的に回転した位置関係を有することは、光軸を中心としてほぼ90°+(n×180°)だけ相対的に回転した位置関係を有することと同じ意味である(nは整数である)。
第11発明および第12発明の好ましい態様によれば、前記第3群の光透過部材および前記第4群の光透過部材のうちの少なくとも一方は、少なくとも1つの非球面を有する。また、前記第3群の光透過部材の光軸に沿った厚さ(中心厚)の総計をT3とし、前記第4群の光透過部材の光軸に沿った厚さの総計をT4とし、前記投影光学系を構成するすべての光透過部材の光軸に沿った厚さの総計をTAとするとき、|T3−T4|/TA<0.025の条件を満足することが好ましい。さらに、前記第3群の光透過部材と前記第4群の光透過部材とは、オプティカルコンタクトまたは接着により1つの光学部品として形成されていることが好ましい。
また、上述の第1の目的を達成するために、本発明の第13発明では、複数のレンズと凹面反射鏡と該凹面反射鏡の近傍に配置された負レンズとを含み、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
前記負レンズは、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[110]または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成されていることを特徴とする投影光学系を提供する。
また、上述の第1の目的を達成するために、本発明の第14発明では、複数のレンズと凹面反射鏡と該凹面反射鏡の近傍に配置された第1負レンズおよび第2負レンズとを含み、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
前記第1負レンズは、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[110]または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成され、
前記第2負レンズは、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[110]または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成され、
前記第1負レンズと前記第2負レンズとは、光軸を中心としてほぼ90°だけ相対的に回転した位置関係を有することを特徴とする投影光学系を提供する。
なお、本発明の第14発明において、第1負レンズと第2負レンズとが光軸を中心としてほぼ90°だけ相対的に回転した位置関係を有するとは、第1負レンズおよび第2負レンズにおける光軸とは異なる方向に向けられた所定の結晶軸(たとえば結晶軸[001]、[−111]、[−110]、または[1−11])同士の光軸を中心とした相対的な角度がほぼ90°であることを意味する。なお、結晶軸[110]を光軸とする場合には、光軸を中心とした複屈折の影響の回転非対称性が180°の周期で現れるため、第14発明において、光軸を中心としてほぼ90°だけ相対的に回転した位置関係を有することは、光軸を中心としてほぼ90°+(n×180°)だけ相対的に回転した位置関係を有することと同じ意味である(nは整数である)。
また、上述の第1の目的を達成するために、本発明の第15発明では、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[111]または該結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第5群の光透過部材と、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[111]または該結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第6群の光透過部材とを備え、
前記第5群の光透過部材と前記第6群の光透過部材とは、光軸を中心としてほぼ60°だけ相対的に回転した位置関係を有し、
前記第3群の光透過部材および前記第4群の光透過部材の双方が、前記第2面側の瞳位置と前記第2面との間の光路中に配置されていることを特徴とする投影光学系を提供する。
また、上述の第1の目的を達成するために、本発明の第16発明では、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[111]または該結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第5群の光透過部材と、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[111]または該結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第6群の光透過部材とを備え、
前記第5群の光透過部材と前記第6群の光透過部材とは、光軸を中心としてほぼ60°だけ相対的に回転した位置関係を有し、
前記第5群の光透過部材および前記第6群の光透過部材の双方において、通過する光線の光軸に対する角度の最大値が20度を超えていることを特徴とする投影光学系を提供する。
なお、本発明の第15及び第16発明において、第5群の光透過部材と第6群の光透過部材とが光軸を中心としてほぼ60°だけ相対的に回転した位置関係を有するとは、第5群の光透過部材および第6群の光透過部材における光軸とは異なる方向に向けられた所定の結晶軸(たとえば結晶軸[−111]、[11−1]、または[1−11])同士の光軸を中心とした相対的な角度がほぼ60°であることを意味する。なお、結晶軸[111]を光軸とする場合には、光軸を中心とした複屈折の影響の回転非対称性が120°の周期で現れるため、第11及び第12発明において、光軸を中心としてほぼ60°だけ相対的に回転した位置関係を有することは、光軸を中心としてほぼ60°+(n×120°)だけ相対的に回転した位置関係を有することと同じ意味である(nは整数である)。
第15発明および第16発明の好ましい態様によれば、前記第5群の光透過部材および前記第6群の光透過部材のうちの少なくとも一方は、少なくとも1つの非球面を有する。また、前記第5群の光透過部材の光軸に沿った厚さ(中心厚)の総計をT5とし、前記第6群の光透過部材の光軸に沿った厚さの総計をT6とし、前記投影光学系を構成するすべての光透過部材の光軸に沿った厚さの総計をTAとするとき、|T5−T6|/TA<0.025の条件を満足することが好ましい。さらに、前記第5群の光透過部材と前記第6群の光透過部材とは、オプティカルコンタクトまたは接着により1つの光学部品として形成されていることが好ましい。
また、上述の第1の目的を達成するために、本発明の第17発明では、複数のレンズと凹面反射鏡と該凹面反射鏡の近傍に配置された第1負レンズおよび第2負レンズとを含み、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
前記第1負レンズは、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[111]または該結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成され、
前記第2負レンズは、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[111]または該結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成され、
前記第1負レンズと前記第2負レンズとは、光軸を中心としてほぼ60°だけ相対的に回転した位置関係を有することを特徴とする投影光学系を提供する。
なお、本発明の第17発明において、第1負レンズと第2負レンズとが光軸を中心としてほぼ60°だけ相対的に回転した位置関係を有するとは、第1負レンズおよび第2負レンズにおける光軸とは異なる方向に向けられた所定の結晶軸(たとえば結晶軸[−111]、[11−1]、または[1−11])同士の光軸を中心とした相対的な角度がほぼ60°であることを意味する。なお、結晶軸[111]を光軸とする場合には、光軸を中心とした複屈折の影響の回転非対称性が120°の周期で現れるため、第17発明において、光軸を中心としてほぼ60°だけ相対的に回転した位置関係を有することは、光軸を中心としてほぼ60°+(n×120°)だけ相対的に回転した位置関係を有することと同じ意味である(nは整数である)。
また、上述の第1の目的を達成するために、本発明の第18発明では、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有する結晶で形成された少なくとも1つの光透過部材を備え、
前記光透過部材の表面には、第1の偏光成分の光と該第1の偏光成分の光とは異なる第2の偏光成分の光とが前記投影光学系を通過する際に、前記第1および第2の偏光成分の光の間で発生する位相差を低減させる膜が形成されることを特徴とする投影光学系を提供する。
第18発明の好ましい態様によれば、前記膜は、前記第1および第2の偏光成分の光が前記光透過部材を通過する際に発生する、前記第1および第2の偏光成分の光の間の位相差を低減することが好ましい。
また、第18発明では、前記投影光学系は、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有する結晶で形成された少なくとも2つの光透過部材を備えることが好ましく、前記少なくとも2つの光透過性部材は、前記投影光学系を通過する第1および第2の偏光成分の光の間の位相差を低減させるように、それらの結晶軸方位が定められることが好ましく、前記膜は、前記少なくとも2つの光透過性部材により低減された前記投影光学系を通過する第1および第2の偏光成分の光の間の位相差をさらに低減させることが好ましい。
また、第18発明において、前記膜は、反射防止膜を有していることが好ましい。
また、第18発明では、前記光透過部材の表面には、前記結晶で形成された結晶膜が形成されることが好ましく、前記光透過部材の結晶方位と前記結晶膜の結晶方位とが実質的に異なることが好ましい。
上述の第1の目的を達成するために、本発明の第19発明では、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有する結晶で形成された光透過部材を備え、
前記光透過部材の表面には、前記結晶で形成された結晶膜が形成され、
前記光透過部材の結晶方位と前記結晶膜の結晶方位とが実質的に異なることを特徴とする投影光学系を提供する。
第19発明の好ましい態様によれば、前記光透過部材の光軸に沿った結晶方位と前記結晶膜の前記光軸に沿った結晶方位とが実質的に異なる。あるいは、前記光透過部材の光軸に沿った結晶方位と前記結晶膜の前記光軸に沿った結晶方位とがほぼ一致し、前記光透過部材と前記結晶膜とは、前記光軸を中心として所定の角度だけ相対的に回転した位置関係を有することが好ましい。
ここで、光透過部材と結晶膜とが光軸を中心として所定の角度だけ相対的に回転した位置関係を有するとは、光透過部材および結晶膜における光軸とは異なる方向に向けられた特定の結晶軸同士の光軸を中心とした相対的な角度が所定の角度であることを意味する。
上述の第1の目的を達成するために、本発明の第20発明では、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[100]または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第1群の光透過部材と、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[110]または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第3群の光透過部材と、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[111]または該結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第5群の光透過部材とを備えていることを特徴とする投影光学系を提供する。
第3発明〜第20発明の好ましい態様によれば、前記第1面および前記第2面を走査方向に沿って移動させて前記第1面の像を前記第2面上に走査露光する露光装置に用いられ、非走査時にはスリット状または円弧状の露光領域を前記投影光学系の光軸を含まない位置に形成し、前記第1面の第1中間像を形成するための屈折型の第1結像光学系と、少なくとも1つの負レンズと凹面反射鏡とを有し、前記第1中間像からの光束に基づいて前記第1中間像とほぼ等倍の第2中間像を前記第1中間像の形成位置の近傍に形成するための第2結像光学系と、前記第2中間像からの光束に基づいて前記第2中間像の縮小像を前記第2面上に形成するための屈折型の第3結像光学系と、前記第1結像光学系から前記第2結像光学系に至る光路中に配置された第1光路折り曲げ鏡と、前記第2結像光学系から前記第3結像光学系に至る光路中に配置された第2光路折り曲げ鏡とを備えている。
なお、上述の態様において、前記第1光路折り曲げ鏡の有効領域および前記第2光路折り曲げ鏡の有効領域は、全体に亘って平面状に形成された反射面を有することが好ましく、前記第1光路折り曲げ鏡の有効領域と前記第2光路折り曲げ鏡の有効領域とは空間的な重なりを有することなく、前記第1面からの光束をすべて前記第2面へ導くように配置されていることが好ましい。また、上述の態様において、前記第1結像光学系および前記第3結像光学系を構成するすべてのレンズが単一の直線状の光軸に沿って配置されていることが好ましい。さらに、第3発明〜第20発明において、前記投影光学系は、前記第1面と前記第2面との間の光路中に配置されて凹面反射鏡を含む反射屈折型の結像光学系と、前記反射屈折型の結像光学系と前記第2面との間の光路中に配置された屈折型の結像光学系と、前記第1面と前記反射屈折型の結像光学系との間の光路中に配置された第1光路折り曲げ鏡と、前記反射屈折型の結像光学系と前記屈折型の結像光学系との間の光路中に配置された第2光路折り曲げ鏡とを備えていることが好ましい。
本発明の第21発明では、前記第1面に設定されたマスクを照明するための照明系と、
前記マスクに形成されたパターンの像を前記第2面に設定された感光性基板上に形成するための第1発明〜第20発明の投影光学系とを備えていることを特徴とする露光装置を提供する。
本発明の第22発明では、パターンが形成されたマスクを照明し、照明された前記パターンの像を第1発明〜第20発明の投影光学系を介して感光性基板上に形成することを特徴とする露光方法を提供する。
発明を実施するための最良の形態
まず、複屈折の影響を実質的に回避するための本発明の基本的手法について説明する。第1図は、蛍石の結晶軸方位について説明する図である。第1図を参照すると、蛍石の結晶軸は、立方晶系のXYZ座標系に基づいて規定される。すなわち、+X軸に沿って結晶軸[100]が、+Y軸に沿って結晶軸[010]が、+Z軸に沿って結晶軸[001]がそれぞれ規定される。
また、XZ平面において結晶軸[100]および結晶軸[001]と45°をなす方向に結晶軸[101]が、XY平面において結晶軸[100]および結晶軸[010]と45°をなす方向に結晶軸[110]が、YZ平面において結晶軸[010]および結晶軸[001]と45°をなす方向に結晶軸[011]がそれぞれ規定される。さらに、+X軸、+Y軸および+Z軸に対して等しい鋭角をなす方向に結晶軸[111]が規定される。
なお、第1図では、+X軸、+Y軸および+Z軸で規定される空間における結晶軸のみを図示しているが、他の空間においても同様に結晶軸が規定される。前述したように、蛍石では、第1図中実線で示す結晶軸[111]方向、およびこれと等価な不図示の結晶軸[−111],[1−11],[11−1]方向では、複屈折がほぼ零(最小)である。
同様に、第1図中実線で示す結晶軸[100],[010],[001]方向においても、複屈折がほぼ零(最小)である。一方、第1図中破線で示す結晶軸[110],[101],[011],およびこれと等価な不図示の結晶軸[−110],[−101],[01−1]方向では、複屈折が最大である。
以下、本発明の手法を説明する前に、前述のBurnettらの手法の補正効果について検証する。第2A図〜第2C図は、Burnettらの手法を説明する図であって、光線の入射角に対する複屈折率の分布を示している。第2A図〜第2C図では、図中破線で示す5つの同心円が1目盛り10°を表している。したがって、最も内側の円が光軸に対して入射角10°の領域を、最も外側の円が光軸に対して入射角50°の領域を表している。
また、黒丸は比較的大きな屈折率を有する複屈折のない領域を、白丸は比較的小さな屈折率を有する複屈折のない領域を、ハッチングを施した小さな円(第4C図を参照)は中間的な屈折率を有する複屈折のない領域を表している。一方、太い円および長い両矢印は複屈折のある領域における比較的大きな屈折率の方向を、細い円および短い両矢印は複屈折のある領域における比較的小さな屈折率の方向を表している。以降の第3A図〜第3C図および第4A図〜第4Cにおいても、上述の表記は同様である。
前述したように、Burnettらの手法では、一対の蛍石レンズの光軸と結晶軸[111]とを一致させ、且つ光軸を中心として一対の蛍石レンズを60°相対的に回転させる。したがって、一方の蛍石レンズにおける複屈折率の分布は第2A図に示すようになり、他方の蛍石レンズにおける複屈折率の分布は第2B図に示すようになる。その結果、一対の蛍石レンズ全体における複屈折率の分布は、第2C図に示すようになる。
この場合、第2A図および第2B図を参照すると、光軸と一致している結晶軸[111]に対応する領域は、比較的小さな屈折率を有する複屈折のない領域となる。また、結晶軸[100],[010],[001]に対応する領域は、比較的大きな屈折率を有する複屈折のない領域となる。さらに、結晶軸[110],[101],[011]に対応する領域は、周方向の偏光に対する屈折率が比較的小さく径方向の偏光に対する屈折率が比較的大きい複屈折領域となる。このように、個々のレンズでは、光軸から35.26°(結晶軸[111]と結晶軸[110]とのなす角度)の領域において、複屈折の影響を最大に受けることがわかる。
一方、第2C図を参照すると、一対の蛍石レンズを60°相対的に回転させることにより、一対の蛍石レンズ全体では、複屈折が最大である結晶軸[110],[101],[011]の影響が薄められることがわかる。しかしながら、光軸から35.26°の領域すなわち光軸から比較的近い領域において、径方向の偏光に対する屈折率よりも周方向の偏光に対する屈折率が小さい複屈折領域が残ることになる。その結果、Burnettらの手法では、複屈折の影響をある程度受けることになる。
本発明の第1の手法では、第1群のレンズ素子(光透過部材)の光軸を結晶軸[100](または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸)と一致させ、第2群のレンズ素子の光軸を結晶軸[100](または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸)と一致させ、第1群のレンズ素子と第2群のレンズ素子とを光軸を中心として45°だけ相対的に回転させる。ここで、結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸とは、結晶軸[010],[001]である。
第3A図〜第3C図は、本発明の第1の手法を説明する図であって、光線の入射角(光線と光軸とのなす角度)に対する複屈折率の分布を示している。第1の手法では、第1群のレンズ素子における複屈折率の分布は第3A図に示すようになり、第2群のレンズ素子における複屈折率の分布は第3B図に示すようになる。その結果、第1群のレンズ素子と第2群のレンズ素子との全体における複屈折率の分布は、第3C図に示すようになる。
第3A図および第3B図を参照すると、第1の手法では、光軸と一致している結晶軸[100]に対応する領域は、比較的大きな屈折率を有する複屈折のない領域となる。また、結晶軸[111],[1−11],[−11−1],[11−1]に対応する領域は、比較的小さな屈折率を有する複屈折のない領域となる。さらに、結晶軸[101],[10−1],[110],[1−10]に対応する領域は、周方向の偏光に対する屈折率が比較的大きく径方向の偏光に対する屈折率が比較的小さい複屈折領域となる。このように、各群のレンズ素子では、光軸から45°(結晶軸[100]と結晶軸[101]とのなす角度)の領域において、複屈折率の影響を最大に受けることがわかる。
一方、第3C図を参照すると、第1群のレンズ素子と第2群のレンズ素子とを光軸を中心として45°だけ相対的に回転させることにより、第1群のレンズ素子と第2群のレンズ素子との全体では、複屈折が最大である結晶軸[101],[10−1],[110],[1−10]の影響がかなり薄められ、光軸から45°の領域すなわち光軸から離れた領域において径方向の偏光に対する屈折率よりも周方向の偏光に対する屈折率が大きい複屈折領域が残ることになる。この場合、一般の投影光学系において各レンズ素子における光軸と光束との最大角度は35°〜40°程度である。したがって、第1の手法を採用することにより、結晶軸[101],[10−1],[110],[1−10]の複屈折の影響を実質的に受けることなく、良好な結像性能を確保することができる。
なお、本発明の第1の手法において、第1群のレンズ素子と第2群のレンズ素子とを光軸を中心としてほぼ45°だけ相対的に回転させるとは、第1群のレンズ素子および第2群のレンズ素子における光軸とは異なる方向に向けられる所定の結晶軸(たとえば結晶軸[010]、[001]、[011]、または[01−1])同士の光軸を中心とした相対的な角度がほぼ45°であることを意味する。たとえば第1群のレンズ素子における結晶軸[010]と、第2群のレンズ素子における結晶軸[010]との光軸を中心とした相対的な角度が45°である。
また、第3A図および第3B図からも明らかな通り、結晶軸[100]を光軸とする場合には、光軸を中心とした複屈折の影響の回転非対称性が90°の周期で現れる。したがって、第1の手法において、光軸を中心としてほぼ45°だけ相対的に回転させるということは、光軸を中心としてほぼ45°+(n×90°)だけ相対的に回転させること、すなわち45°、135°、225°、または315°...だけ相対的に回転させることと同じ意味である(ここで、nは整数である)。
なお、上述の説明において、第1群のレンズ素子および第2群のレンズ素子は、それぞれ1つまたは複数のレンズ素子を有する。そして、第1群のレンズ素子または第2群のレンズ素子が複数のレンズ素子を含む場合、複数のレンズ素子は必ずしも連続するレンズ素子ではない。レンズ素子の群の概念は、以降の第3群〜第6群のレンズ素子についても同様である。第1の手法では、第1群のレンズ素子の光軸に沿った厚さの総計T1と第2群のレンズ素子の光軸に沿った厚さの総計T2とがほぼ等しいことが好ましい。
また、第2A図および第2B図を参照すると、レンズ素子の光軸と結晶軸[111]とを一致させているので、複屈折が最大の結晶軸[110],[101],[011]に対応する領域が120°ピッチで存在し、瞳面内で3θの分布を有する複屈折の影響すなわち像面(ウエハ面)においてコマ収差が発生するような影響が現れるものと考えられる。これに対して、第3A図および第3B図を参照すると、レンズ素子の光軸と結晶軸[100]とを一致させているので、複屈折が最大の結晶軸[101],[10−1],[110],[1−10]に対応する領域が90°ピッチで存在し、瞳面内で4θの分布を有する複屈折の影響が現れる。
この場合、ウエハに投影すべきパターンにおいて縦横パターンが支配的であるため、4θの分布であれば縦横パターンに対して非点収差が発生するような影響が現れることなく、像の崩れも顕著にならない。したがって、少なくとも1つのレンズ素子の光軸と結晶軸[100](または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸)と一致させる第2の手法を採用することにより、複屈折の影響を良好に抑えて、良好な結像性能を確保することができる。
また、本発明の第3の手法では、第3群のレンズ素子の光軸を結晶軸[110](または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸)と一致させ、第4群のレンズ素子の光軸を結晶軸[110](または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸)と一致させ、第3群のレンズ素子と第4群のレンズ素子とを光軸を中心として90°だけ相対的に回転させる。ここで、結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸とは、結晶軸[−110],[101],[−101],[011],[01−1]である。
第4A図〜第4C図は、本発明の第3の手法を説明する図であって、光線の入射角に対する複屈折率の分布を示している。第3の手法では、第3群のレンズ素子における複屈折率の分布は第4A図に示すようになり、第4群のレンズ素子における複屈折率の分布は第4B図に示すようになる。その結果、第3群のレンズ素子と第4群のレンズ素子との全体における複屈折率の分布は、第4C図に示すようになる。
第4A図および第4B図を参照すると、第3の手法では、光軸と一致している結晶軸[110]に対応する領域は、一方の方向の偏光に対する屈折率が比較的大きく他方の方向(一方の方向に直交する方向)の偏光に対する屈折率が比較的小さい複屈折領域となる。また、結晶軸[100],[010]に対応する領域は、比較的大きな屈折率を有する複屈折のない領域となる。さらに、結晶軸[111],[11−1]に対応する領域は、比較的小さな屈折率を有する複屈折のない領域となる。
一方、第4C図を参照すると、第3群のレンズ素子と第4群のレンズ素子とを光軸を中心として90°だけ相対的に回転させることにより、第3群のレンズ素子と第4群のレンズ素子との全体では、複屈折が最大である結晶軸[110]の影響がほとんどなく、光軸付近は中間的な屈折率を有する複屈折のない領域となる。すなわち、第3の手法を採用すると、複屈折の影響を実質的に受けることなく、良好な結像性能を確保することができる。
なお、本発明の第3の手法において、第3群のレンズ素子と第4群のレンズ素子とを光軸を中心としてほぼ90°だけ相対的に回転させるとは、第3群のレンズ素子および第4群のレンズ素子における光軸とは異なる方向に向けられる所定の結晶軸(たとえば結晶軸[001]、[−111]、[−110]、または[1−11])同士の光軸を中心とした相対的な角度がほぼ90°であることを意味する。たとえば第3群のレンズ素子における結晶軸[001]と、第4群のレンズ素子における結晶軸[001]との光軸を中心とした相対的な角度が90°である。
また、第4A図および第4B図からも明らかな通り、結晶軸[110]を光軸とする場合には、光軸を中心とした複屈折の影響の回転非対称性が180°の周期で現れる。したがって、第3の手法において、光軸を中心としてほぼ90°だけ相対的に回転させるということは、光軸を中心としてほぼ90°+(n×180°)だけ相対的に回転させること、すなわち90°、270°...だけ相対的に回転させることと同じ意味である(ここで、nは整数である)。
第3の手法においても、第3群のレンズ素子の光軸に沿った厚さの総計T3と第4群のレンズ素子の光軸に沿った厚さの総計T4とがほぼ等しいことが好ましい。特に、第3の手法では、複屈折領域が中央部(光軸およびその近傍)にあるので、中央部の薄い負レンズに適用することがさらに好ましい。
また、前述の第2の手法において説明した理由と同様の理由により、少なくとも1つのレンズ素子の光軸と結晶軸[110](または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸)と一致させる第4の手法を採用することにより、複屈折の影響を良好に抑えて、良好な結像性能を確保することができる。
また、本発明の第5の手法として、前述のBurnettらの手法を採用する。この場合、本発明の第5の手法では、第5群のレンズ素子の光軸を結晶軸[111](または該結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸)と一致させ、第6群のレンズ素子の光軸を結晶軸[111](または該結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸)と一致させ、第5群のレンズ素子と第6群のレンズ素子とを光軸を中心として60°だけ相対的に回転させる。
前述したように、第5の手法を採用することにより、複屈折の影響を良好に抑えて、良好な結像性能を確保することができる。ここで、結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸とは、結晶軸[−111],[1−11],[11−1]である。
なお、第5の手法において、第5群のレンズ素子と第6群のレンズ素子とを光軸を中心としてほぼ60°だけ相対的に回転させるとは、第5群のレンズ素子および第6群のレンズ素子における光軸とは異なる方向に向けられる所定の結晶軸(たとえば結晶軸[−111]、[11−1]、または[1−11])同士の光軸を中心とした相対的な角度がほぼ60°であることを意味する。たとえば第5群のレンズ素子における結晶軸[−111]と、第6群のレンズ素子における結晶軸[−111]との光軸を中心とした相対的な角度が60°である。
また、第2A図および第2B図からも明らかな通り、結晶軸[111]を光軸とする場合には、光軸を中心とした複屈折の影響の回転非対称性が120°の周期で現れる。したがって、第5の手法において、光軸を中心としてほぼ60°だけ相対的に回転させるということは、光軸を中心としてほぼ60°+(n×120°)だけ相対的に回転させること、すなわち60°、180°、300°...だけ相対的に回転させることと同じ意味である(ここで、nは整数である)。
第5の手法では、第5群のレンズ素子の光軸に沿った厚さの総計T5と第6群のレンズ素子の光軸に沿った厚さの総計T6とがほぼ等しいことが好ましい。
さらに、本発明の第6の手法として、第1の手法と第3の手法と第5の手法とを部分的に組み合わせた手法を採用することができる。すなわち、第6の手法では、第1群のレンズ素子の光軸を結晶軸[100](または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸)と一致させ、第3群のレンズ素子の光軸を結晶軸[110](または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸)と一致させ、第5群のレンズ素子の光軸を結晶軸[111](または該結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸)と一致させる。この場合も、複屈折の影響を良好に抑えて、良好な結像性能を確保することができる。
本発明では、後述するように、上述の6つの手法から選択した1つの手法を、投影光学系の所定の光学部材に適用する。また、本発明では、上述の6つの手法から選択した複数の手法を組み合わせて採用することもできる。こうして、本発明では、投影光学系に蛍石のような複屈折性の光学材料を用いているにもかかわらず、複屈折の影響を実質的に受けることなく良好な結像性能を有する投影光学系を実現することができる。
なお、結晶軸[111]を光軸方向に設定したレンズにおいては、その結晶構造に起因して光軸を中心とした方位角120°毎にレンズ面の研磨誤差が現れやすい。しかしながら、上記第5の手法のように第5群のレンズ素子の光軸を結晶軸[111](または該結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸)と一致させ、第6群のレンズ素子の光軸を結晶軸[111](または該結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸)と一致させ、第5群のレンズ素子と第6群のレンズ素子とを光軸を中心として60°だけ相対的に回転させることによって、光軸を中心とした方位角120°毎のレンズ面の研磨誤差に起因する収差を第5群のレンズ素子と第6群のレンズ素子との間でほぼキャンセル(相殺)することが可能となる利点がある。
ところで、本発明では、上述の第1の手法、第3の手法および第5の手法において、次の条件式(3)〜(5)を満足することが望ましい。
|T1−T2|/TA<0.025 (3)
|T3−T4|/TA<0.025 (4)
|T5−T6|/TA<0.025 (5)
ここで、T1〜T6は、前述したように、第1群〜第6群のレンズ素子(光透過部材)の光軸に沿った厚さ(中心厚)の総計である。また、TAは、投影光学系を構成するすべての光透過部材の光軸に沿った厚さの総計である。条件式(3)〜(5)を満足しないと、複屈折の影響が大きくなり、光学系の結像性能が悪化するので好ましくない。
次に、本発明の別の局面によれば、複数のレンズと少なくとも1つの凹面反射鏡とを含み、第1面の縮小像を第2面上に形成する反射屈折型の投影光学系において、フォトレジストからの脱ガスによるレンズの汚染を良好に回避する。この目的のため、本発明では、第1面および第2面を走査方向に沿って移動させて第1面の像を第2面上に走査露光する露光装置に用いられたときに、非走査時にはスリット状または円弧状の露光領域を第2面上に形成し、次の条件式(1)を満足する。
0.5<(Dw・Nw)/Ew<1.4 (1)
ここで、Dwは、第2面側の作動距離(最も第2面側の光学面と第2面との距離)である。また、Nwは、第2面側の開口数(像側開口数)である。さらに、Ewは、スリット状または円弧状の露光領域における非走査方向(走査方向と直交する方向)に沿った長さである。
条件式(1)は、像側作動距離と像側開口数と像視野との関係を規定している。条件式(1)の下限値を下回ると、感光性基板上に塗布されるフォトレジストからの脱ガスによる汚染が大きくなる。一方、条件式(1)の上限値を上回ると、色収差の補正が困難になるばかりでなく、光学素子の大型化を避けることができず、光学系の製造が困難になる。なお、本発明の効果をさらに良好に発揮するには、条件式(1)の下限値を0.53とし、その上限値を1.3とすることが好ましい。
また、上述の反射屈折型の投影光学系では、スリット状または円弧状の露光領域は、投影光学系の光軸を含まないように設定され、第1面の第1中間像を形成するための屈折型の第1結像光学系と、少なくとも1つの負レンズと凹面反射鏡とを有し、第1中間像からの光束に基づいて第1中間像とほぼ等倍の第2中間像を第1中間像の形成位置の近傍に形成するための第2結像光学系と、第2中間像からの光束に基づいて第2中間像の縮小像を第2面上に形成するための屈折型の第3結像光学系と、第1結像光学系から第2結像光学系に至る光路中に配置された第1光路折り曲げ鏡と、第2結像光学系から第3結像光学系に至る光路中に配置された第2光路折り曲げ鏡とを備えている。
そして、第1光路折り曲げ鏡の有効領域および第2光路折り曲げ鏡の有効領域は、全体に亘って平面状に形成された反射面を有し、第1光路折り曲げ鏡の有効領域と第2光路折り曲げ鏡の有効領域とは空間的な重なりを有することなく、第1面からの光束をすべて第2面へ導くように配置されていることが好ましい。この構成により、像側作動距離を十分確保しつつ、蛍石等の単一種類の光透過部材のみで色収差補正を良好に行うことができる。さらに、上述の反射屈折型の投影光学系では、第1結像光学系および第3結像光学系を構成するすべてのレンズが単一の直線状の光軸に沿って配置されていることが好ましい。この構成により、組み立て調整が比較的容易になり、精度良く光学系を製造することができる。
次に、さらに別の局面によれば、本発明の投影光学系は、複数のレンズと凹面反射鏡と該凹面反射鏡の近傍に配置された負レンズとを含み、第1面の縮小像を第2面上に形成する。そして、第1面および第2面を走査方向に沿って移動させて第1面の像を第2面上に走査露光する露光装置に用いられたときに、非走査時には投影光学系の光軸を含まないように設定されたスリット状または円弧状の露光領域を第2面上に形成し、第2面側の開口数は0.82以上である。
この場合、凹面反射鏡および負レンズは重力の方向と実質的に異なる方向の光軸に沿って配置され、次の条件式(2)を満足することが望ましい。条件式(2)において、Sは凹面反射鏡の有効径(直径)であり、Rは凹面反射鏡の曲率半径である。
1.0<S/|R|<1.8 (2)
条件式(2)を満足することにより、凹面反射鏡の重力による変形を小さく抑えて、製造の難易度を現実的なものとすることができる。すなわち、条件式(2)の下限値を下回ると、重力による凹面反射鏡の変形が大きく、組み立て調整や加工の難易度が高くなるので好ましくない。一方、条件式(2)の上限値を上回ると、大きな開口数を確保しつつ、色収差補正と像面湾曲補正とを両立することができなくなるので好ましくない。なお、本発明の効果をさらに良好に発揮するには、条件式(2)の下限値を1.1とし、その上限値を1.65とすることが好ましい。
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。
第5図は、本発明の実施形態にかかる投影光学系を備えた露光装置の構成を概略的に示す図である。なお、第5図において、ウエハの法線方向にZ軸を、Z軸に垂直な面内において第5図の紙面に平行にY軸を、Z軸に垂直な面内において第5図の紙面に垂直にX軸を設定している。本実施形態では、反射屈折型の投影光学系を備えた走査型の投影露光装置に本発明を適用している。
第5図を参照すると、本実施形態の露光装置は、第1面に配置されるレチクル(マスク)50を照明するための照明装置51を備えている。照明装置51は、たとえば157nmの波長光を供給するF2レーザーを有する光源、この光源からの光により所定形状(円形状、輪帯状、二極状、四極状など)の二次光源を形成するオプティカルインテグレータ、レチクル50上での照射範囲を規定するための照明視野絞りなどを有し、レチクル50上の照明領域をほぼ均一な照度分布のもとで照明する。
ここで、照明装置51内の照明光路は不活性ガスでパージされることが好ましく、本実施形態では窒素でパージしている。レチクル50はレチクルステージ53上に載置されており、レチクル50およびレチクルステージ53はケーシング52によって外部の雰囲気と隔離されている。このケーシング52の内部空間も不活性ガスでパージされることが好ましく、本実施形態では窒素でパージしている。
照明装置51により照明されたレチクル50からの光は、蛍石結晶で形成された複数のレンズ素子(1〜7,9,10,13〜18)、凹面反射鏡11、コヒーレンスファクタ(σ値)を制御するための開口絞り20などを有する投影光学系400を介して、感光性基板としてのウエハ60へ導かれ、ウエハ60上の露光領域内にレチクル50のパターン像を形成する。この投影光学系400内の投影光路は不活性ガスでパージされることが好ましく、本実施形態ではヘリウムでパージしている。
ウエハ60は、その表面が投影光学系400の像面としての第2面に位置決めされるようにウエハステージ61上に載置されており、ウエハ60およびウエハステージ61はケーシング62によって外部の雰囲気と隔離されている。このケーシング62の内部空間も不活性ガスでパージされることが好ましく、本実施形態では窒素でパージしている。そして、レチクルステージ53とウエハステージ61とを投影光学系400の倍率に応じた速度比で投影光学系400に対して走査方向であるY方向に沿って相対的に移動させつつ、レチクル50を照明することにより、ウエハ60上の露光領域内にレチクル50上のパターンが転写される。
第6図は、ウエハ上に形成される矩形状の露光領域(すなわち実効露光領域)と光軸との位置関係を示す図である。第6図に示すように、本実施形態では、光軸AX1を中心とした半径Bを有する円形状の領域(イメージサークル)IF内において、光軸AX1から−Y方向に軸外し量Aだけ離れた位置に所望の大きさを有する矩形状の実効露光領域ERが設定されている。ここで、実効露光領域ERのX方向の長さはLX(Ew)であり、そのY方向の長さはLYである。
換言すると、各実施形態では、ウエハ60において、光軸AX1から−Y方向に軸外し量Aだけ離れた位置に所望の大きさを有する矩形状の実効露光領域ERが設定され、光軸AX1を中心として実効露光領域ERを包括するように円形状のイメージサークルIFの半径Bが規定されている。したがって、図示を省略したが、これに対応して、レチクル50上では、基準光軸AXから−Y方向に軸外し量Aに対応する距離だけ離れた位置に実効露光領域ERに対応した大きさおよび形状を有する矩形状の照明領域(すなわち実効照明領域)が形成されていることになる。
再び第5図を参照すると、本実施形態の投影光学系400は、第1面に配置されたレチクル50のパターンの第1中間像を形成するための屈折型の第1結像光学系100と、凹面反射鏡11と2つの負レンズ9,10とから構成されて第1中間像とほぼ等倍の第2中間像(第1中間像のほぼ等倍像であってレチクルパターンの2次像)を形成するための第2結像光学系200と、第2中間像からの光に基づいて第2面に配置されたウエハ60上にレチクルパターンの最終像(レチクルパターンの縮小像)を形成するための屈折型の第3結像光学系300とを備えている。
なお、第1結像光学系100と第2結像光学系200との間の光路中において第1中間像の形成位置の近傍には、第1結像光学系100からの光を第2結像光学系200に向かって偏向するための第1光路折り曲げ鏡8が配置されている。また、第2結像光学系200と第3結像光学系300との間の光路中において第2中間像の形成位置の近傍には、第2結像光学系200からの光を第3結像光学系300に向かって偏向するための第2光路折り曲げ鏡12が配置されている。第1中間像および第2中間像は、第1光路折り曲げ鏡8と第2結像光学系200との間の光路中および第2結像光学系200と第2光路折り曲げ鏡12との間の光路中にそれぞれ形成される。
また、第1結像光学系100および第3結像光学系G3はともに、直線状に延びた単一の光軸すなわち基準光軸AX1を有する。基準光軸AX1は、重力方向(すなわち鉛直方向)に沿って位置決めされている。その結果、レチクル50およびウエハ60は、重力方向と直交する面すなわち水平面に沿って互いに平行に配置されている。加えて、第1結像光学系100を構成するすべてのレンズおよび第3結像光学系300を構成するすべてのレンズも、基準光軸AX1上において水平面に沿って配置されている。
一方、第2結像光学系200も直線状に延びた光軸AX2を有し、この光軸AX2は基準光軸AX1と直交するように設定されている。さらに、第1光路折り曲げ鏡8および第2光路折り曲げ鏡12はともに平面状の反射面を有し、2つの反射面を有する1つの光学部材(1つの光路折り曲げ鏡FM)として一体的に構成されている。この2つの反射面の交線(厳密にはその仮想延長面の交線)が第1結像光学系100および第3結像光学系300の光軸AX1および第2結像光学系200の光軸AX2と一点で交わるように設定されている。
本実施形態では、複数のレンズを含む屈折光学系である第1結像光学系100および第3結像光学系300で生じる色収差および正値のペッツバール和を、第2結像光学系200の凹面反射鏡11および負レンズ9,10により補償する。また、第2結像光学系200がほぼ等倍の結像倍率を有する構成により、第1中間像の近傍に第2中間像を形成することが可能となる。本実施形態では、この2つの中間像の近傍において光路分離を行うことにより、露光領域(すなわち実効露光領域)の光軸からの距離すなわち軸外し量を小さく設定することができる。これは、収差補正の点で有利となるだけでなく、光学系の小型化、光学調整、機械設計、製造コストなどの点でも有利となる。
上述したように、第2結像光学系200は、第1結像光学系100および第3結像光学系300で生じる色収差および正値のペッツバール和の補償を一手に負担する。このため、第2結像光学系200を構成する凹面反射鏡11および負レンズ9,10のパワーを共に大きく設定する必要がある。したがって、第2結像光学系200の対称性が崩れると、倍率色収差や色コマ収差のような非対称色収差の発生が大きくなり、十分な解像力を得ることができなくなってしまう。そこで、本実施形態では、第2結像光学系200の結像倍率をほぼ等倍に設定し且つその瞳位置の近傍に凹面反射鏡11を配置することのできる構成を採用することにより、良好な対称性を確保し、上述の非対称色収差の発生を防ぐことに成功している。
以下、複屈折の影響を実質的に回避する本発明の手法の本実施形態に対する適用について説明する。まず、ウエハ側(第2面側)の瞳位置に配置された開口絞り20とウエハ60との間の光路中に配置されたレンズ(16〜18)では、通過する光線の光軸に対する最大角度が大きい傾向にあり、複屈折の影響を受け易い。そこで、本実施形態では、これらのレンズ(16〜18)に対して、前述した本発明の第1手法〜第6手法を単独であるいは組み合わせて適用することにより、複屈折の影響を実質的に受けることなく良好な光学性能を確保することができる。なお、第5図では、図面の明瞭化のために開口絞り20とウエハ60との間に3つのレンズしか配置していないが、実際の設計ではさらに多くのレンズが配置される。
また、通過する光線の光軸に対する最大角度が20°を超えるようなレンズでは、その配置位置にかかわらず複屈折の影響を受け易い。そこで、本実施形態では、通過する光線の光軸に対する最大角度が20°を超えるようなレンズに対して、本発明の第1手法〜第6手法を単独であるいは組み合わせて適用することにより、複屈折の影響を実質的に受けることなく良好な光学性能を確保することができる。
さらに、像側開口数の大きい本実施形態の投影光学系では、凹面反射鏡11の近傍に配置された負レンズ9,10において、通過する光線の光軸に対する最大角度が収差補正の目的のために大きくなりがちである。そこで、本実施形態では、これらの負レンズ9,10に対して本発明の第1手法〜第5手法を適用することにより、複屈折の影響を実質的に受けることなく良好な光学性能を確保することができる。なお、凹面反射鏡11の近傍に配置された負レンズの数がさらに多い場合には、本発明の第1手法〜第6手法を単独であるいは組み合わせて適用することもできる。
なお、前述したように、本発明の第1手法、第3手法および第5手法を適用する場合、第1レンズ群、第3レンズ群および第5レンズ群と、第2レンズ群、第4レンズ群および第6レンズ群との間で、条件式(3)〜(5)を満足するように設定することが好ましい。また、本発明の第1手法、第3手法および第5手法を適用する場合、第1レンズ群(あるいは第3レンズ群、第5レンズ群)と第2レンズ群(あるいは第4レンズ群、第6レンズ群)とをオプティカルコンタクトまたは接着により1つの光学部品として形成することが好ましい。この構成により、反射防止膜を形成すべき光学面の数を最小限に抑えることができるので、特にF2レーザーを用いる光学系のように反射防止膜の材料が限られる場合には非常に有利である。
ところで、本発明の第1手法、第3手法および第5手法を適用する場合、第1レンズ群(あるいは第3レンズ群、第5レンズ群)と第2レンズ群(あるいは第4レンズ群、第6レンズ群)との間で角度指定が必要になる。そこで、本来的に角度指定が必要な非球面すなわちレンズ調整時の収差補正用非球面(回転非対称な非球面)を第1レンズ群(あるいは第3レンズ群、第5レンズ群)または第2レンズ群(あるいは第4レンズ群、第6レンズ群)に導入することが好ましい。この場合、複屈折により回転非対称なスカラ収差が発生しても、非球面の作用により補正することができる。なお、レンズ調整時の収差補正用の非球面について簡単に説明する。投影光学系を製造する際には、波面収差等の収差を計測しつつ、投影光学系を構成するレンズや反射鏡などの光学素子の位置・姿勢を調整して、投影光学系の光学性能を所望の値に追い込むことが行われる。ただし、このような光学素子の位置・姿勢の調整だけでは、ザイデルの5収差に代表される低次収差しか補正できない。そこで、計測された投影光学系の収差のうち、光学素子の位置・姿努の調整で補正できる成分を除いた残存収差を、投影光学系を構成する光学素子の表面形状を変更、すなわち非球面とすることによって補正することが行われる。このような残存収差補正用の非球面をレンズ調整時の収差補正用の非球面と呼び、典型的な非球面形状は光軸に関して回転非対称な形状となる。したがって、このレンズ調整時の収差補正用の非球面を備えた光学素子を投影光学系中へ組み込むためには、光軸を中心とした方位角を定める、すなわち角度指定を行う必要がある。
また、上述のBurnettらの手法、本発明の第1〜第6の手法を投影光学系の所定の光学部材に適用した際においても、偏光収差、すなわち投影光学系を通過する第1の偏光成分の光と当該第1の偏光成分とは異なる第2の偏光成分の光との間の位相差を完全には補正しきれない場合がある。
このとき、投影光学系を構成する光学部材のうちの1以上の光学部材の表面に、偏光収差を低減させる膜、すなわち第1および第2の偏光成分の光の間の位相差を低減させる特性を有する膜を設けることにより、さらに偏光収差を補正することが可能である。
また、本実施形態では、蛍石結晶で形成されたレンズの表面に同じく蛍石結晶で形成された結晶膜を形成し、蛍石レンズの結晶方位と結晶膜の結晶方位とが実質的に異なるように設定する手法も有効である。この場合、蛍石レンズの光軸に沿った結晶方位と結晶膜の光軸に沿った結晶方位とが実質的に異なるように設定する。あるいは、蛍石レンズの光軸に沿った結晶方位と結晶膜の光軸に沿った結晶方位とがほぼ一致し、蛍石レンズと結晶膜とが光軸を中心として所定の角度だけ相対的に回転した位置関係を有するように設定する。この構成により、複屈折の影響を実質的に受けることなく良好な光学性能を確保することができる。
以下、具体的な数値に基づく実施例を説明する。各実施例において、投影光学系を構成するすべての屈折光学部材(レンズ成分)には蛍石(CaF2結晶)を使用している。また、露光光であるF2レーザ光の発振中心波長は157.6244nmであり、157.6244nm付近においてCaF2の屈折率は、+1pmの波長変化あたり−2.6×10−6の割合で変化し、−1pmの波長変化あたり+2.6×10−6の割合で変化する。換言すると、157.6244nm付近において、CaF2の屈折率の分散(dn/dλ)は、2.6×10−6/pmである。
したがって、各実施例において、中心波長157.6244nmに対するCaF2の屈折率は1.5593067であり、157.6244nm+1pm=157.6254nmに対するCaF2の屈折率は1.5593041であり、157.6244nm−1pm=157.6234nmに対するCaF2の屈折率は1.5593093である。
また、各実施例において、非球面は、光軸に垂直な方向の高さをyとし、非球面の頂点における接平面から高さyにおける非球面上の位置までの光軸に沿った距離(サグ量)をzとし、頂点曲率半径をrとし、円錐係数をκとし、n次の非球面係数をCnとしたとき、以下の数式(a)で表される。
z=(y2/r)/[1+{1−(1+κ)・y2/r2}1/2]
+C4・y4+C6・y6+C8・y8+C10・y10
+C12・y12+C14・y14 (a)
各実施例において、非球面形状に形成されたレンズ面には面番号の右側に*印を付している。
[第1実施例]
第7図は、第1実施例にかかる投影光学系のレンズ構成を示す図である。なお、第1実施例では、波長幅が157.6244nm±1pmの露光光に対して色収差を含む諸収差が補正された投影光学系に本発明を適用している。
第7図の投影光学系において、第1結像光学系G1(第5図の100に対応)は、レチクルR(第5図の50に対応)側から順に、両凸レンズL11と、レチクル側に非球面状の凹面を向けた負メニスカスレンズL12と、レチクル側に凹面を向けた正メニスカスレンズL13と、ウエハW(第5図の60に対応)側に非球面状の凹面を向けた正メニスカスレンズL14と、レチクル側に凹面を向けた負メニスカスレンズL15と、レチクル側に凹面を向けた正メニスカスレンズL16と、レチクル側に凹面を向けた正メニスカスレンズL17と、両凸レンズL18と、ウエハ側に非球面状の凹面を向けた正メニスカスレンズL19とから構成されている。
また、第2結像光学系G2(第5図の200に対応)は、光の進行往路に沿ってレチクル側(すなわち入射側)から順に、レチクル側に非球面状の凹面を向けた負メニスカスレンズL21と、レチクル側に凹面を向けた負メニスカスレンズL22と、レチクル側に凹面を向けた凹面反射鏡CM(第5図の11に対応)とから構成されている。
さらに、第3結像光学系G3(第5図の300に対応)は、光の進行方向に沿ってレチクル側から順に、レチクル側に凹面を向けた正メニスカスレンズL31と、両凸レンズL32と、レチクル側に凸面を向けた正メニスカスレンズL33と、レチクル側に非球面状の凹面を向けた両凹レンズL34と、レチクル側に非球面状の凹面を向けた正メニスカスレンズL35と、ウエハ側に非球面状の凹面を向けた正メニスカスレンズL36と、開口絞りASと、両凸レンズL37と、レチクル側に凹面を向けた負メニスカスレンズL38と、レチクル側に平面を向けた平凸レンズL39と、両凸レンズL310と、ウエハ側に非球面状の凹面を向けた正メニスカスレンズL311と、レチクル側に凸面を向けた正メニスカスレンズL312と、ウエハ側に平面を向けた平凸レンズL313とから構成されている。
次の第1表に、第1実施例にかかる投影光学系の諸元の値を掲げる。第1表において、λは露光光の中心波長を、βは投影倍率(全系の結像倍率)を、NAは像側(ウエハ側)開口数を、BはウエハW上でのイメージサークルIFの半径を、Aは実効露光領域ERの軸外し量を、LX(Ew)は実効露光領域ERのX方向に沿った寸法(長辺の寸法)を、LYは実効露光領域ERのY方向に沿った寸法(短辺の寸法)をそれぞれ表している。
また、面番号は物体面(第1面)であるレチクル面から像面(第2面)であるウエハ面への光線の進行する方向に沿ったレチクル側からの面の順序を、rは各面の曲率半径(非球面の場合には頂点曲率半径:mm)を、dは各面の軸上間隔すなわち面間隔(mm)を、nは中心波長に対する屈折率をそれぞれ示している。なお、面間隔dは、反射される度にその符号を変えるものとする。したがって、面間隔dの符号は、第1光路折り曲げ鏡8の反射面から凹面反射鏡CMまでの光路中および第2光路折り曲げ鏡12の反射面から像面までの光路中では負とし、その他の光路中では正としている。
そして、第1結像光学系G1では、レチクル側に向かって凸面の曲率半径を正とし、凹面の曲率半径を負としている。一方、第3結像光学系G3では、レチクル側に向かって凹面の曲率半径を正とし、凸面の曲率半径を負としている。さらに、第2結像光学系G2では、光の進行往路に沿ってレチクル側(すなわち入射側)に向かって凹面の曲率半径を正とし、凸面の曲率半径を負としている。上述の第1表の表記は、以降の第2表においても同様である。
第8図は、第1実施例における横収差を示す図である。収差図において、Yは像高を、実線は中心波長157.6244nmを、破線は157.6244nm+1pm=157.6254nmを、一点鎖線は157.6244nm−1pm=157.6234nmをそれぞれ示している。収差図から明らかなように、第1実施例では、波長幅が157.624nm±1pmの露光光に対して色収差が良好に補正されていることがわかる。
[第2実施例]
第9図は、第2実施例にかかる投影光学系のレンズ構成を示す図である。なお、第2実施例においても第1実施例と同様に、波長幅が157.6244nm±1pmの露光光に対して色収差を含む諸収差が補正された投影光学系に本発明を適用している。
第9図の投影光学系において、第1結像光学系G1は、レチクル側から順に、両凸レンズL11と、レチクル側に非球面状の凹面を向けた負メニスカスレンズL12と、レチクル側に凹面を向けた正メニスカスレンズL13と、ウエハ側に非球面状の凹面を向けた正メニスカスレンズL14と、両凹レンズL15と、レチクル側に凹面を向けた正メニスカスレンズL16と、レチクル側に凹面を向けた正メニスカスレンズL17と、両凸レンズL18と、ウエハ側に非球面状の凹面を向けた正メニスカスレンズL19とから構成されている。
また、第2結像光学系G2は、光の進行往路に沿ってレチクル側(すなわち入射側)から順に、レチクル側に凹面を向けた負メニスカスレンズL21と、レチクル側に非球面状の凹面を向けた負メニスカスレンズL22と、レチクル側に凹面を向けた凹面反射鏡CMとから構成されている。
さらに、第3結像光学系G3は、光の進行方向に沿ってレチクル側から順に、レチクル側に凹面を向けた正メニスカスレンズL31と、両凸レンズL32と、レチクル側に凸面を向けた正メニスカスレンズL33と、レチクル側に非球面状の凹面を向けた両凹レンズL34と、レチクル側に非球面状の凹面を向けた正メニスカスレンズL35と、ウエハ側に非球面状の凹面を向けた正メニスカスレンズL36と、開口絞りASと、両凸レンズL37と、レチクル側に凹面を向けた負メニスカスレンズL38と、レチクル側に平面を向けた平凸レンズL39と、両凸レンズL310と、ウエハ側に非球面状の凹面を向けた正メニスカスレンズL311と、レチクル側に凸面を向けた正メニスカスレンズL312と、ウエハ側に平面を向けた平凸レンズL313とから構成されている。
次の第2表に、第2実施例にかかる投影光学系の諸元の値を掲げる。
第10図は、第2実施例における横収差を示す図である。収差図において、Yは像高を、実線は中心波長157.6244nmを、破線は157.6244nm+1pm=157.6254nmを、一点鎖線は157.6244nm−1pm=157.6234nmをそれぞれ示している。収差図から明らかなように、第2実施例においても第1実施例と同様に、波長幅が157.624nm±1pmの露光光に対して色収差が良好に補正されていることがわかる。
以上のように、各実施例では、条件式(1)を満足しているので、ウエハWに塗布されたフォトレジストからの脱ガスによるレンズの汚染を良好に回避することができる。また、各実施例では、凹面反射鏡CMおよび負レンズ(L21,L22)が重力方向と直交する方向の光軸AX2に沿って配置されているが、条件式(2)を満足しているので、凹面反射鏡CMの重力による変形を小さく抑えて、組み立て調整や加工が容易になっている。
[第3実施例]
第3実施例にかかる投影光学系では、投影光学系を構成する等方晶系の光学材料(たとえば蛍石)が有する固有複屈折によって生じる偏光収差(すなわち所定方向に振動方向を有する第1の偏光成分の光と、当該第1の偏光方向とは異なる方向に振動方向を有する第2の偏光成分の光との位相差)を、光学材料の表面上に設けられる薄膜によって補正している。
第3実施例では、当該薄膜へ入射する光の入射状態を実際の場合と同じにするために、第11図に示される投影光学系を考える。
第11図は、第3実施例にかかる投影光学系のレンズ構成を示す図である。
第11図の投影光学系は、上述の第1および第2実施例とは異なり、直線状の光軸に沿って複数の屈折光学部材が配置された屈折型投影光学系に本発明を適用している。
第11図の投影光学系は、レチクルR側から順に、ウエハW側に凹面を向けたメニスカス負レンズL1と、レチクルR側に凹面を向けたメニスカス負レンズL2と、レチクルR側に凹面を向けた2枚のメニスカス正レンズL3、L4と、レチクルR側に凸面を向けた3枚のメニスカス正レンズL5〜L7と、ウエハW側に凹面を向けたメニスカス負レンズL8と、3枚の両凹レンズL9〜L11と、両凸レンズL12と、レチクルR側に凹面を向けたメニスカス正レンズL13と、両凸レンズL14と、開口絞りASと、両凸レンズL15と、レチクルR側に凹面を向けたメニスカス負レンズL16と、レチクルR側に凹面を向けたメニスカス正レンズL17と、ウエハW側に凹面を向けた3枚のメニスカス正レンズL18〜L20と、レチクルR側に凹面を向けた平凹レンズL21と、平行平面板L22とから構成されている。
第12図は、第3実施例にかかる投影光学系によってウエハW上に形成される矩形状の露光領域(すなわち実効露光領域)と光軸との位置関係を示す図である。第12図に示すように、第3実施例では、光軸AX1を中心とした半径Bを有する円形状の領域(イメージサークル)IF内において、光軸AX1を含む位置に所望の大きさを有する矩形状の実効露光領域ERが設定されている。ここで、実効露光領域ERのX方向の長さはLXであり、そのY方向の長さはLYである。なお、第3実施例の投影光学系における実効露光領域ERの軸外し量Aは0である。
次の第3表に、第3実施例にかかる投影光学系の諸元の値を掲げる。第3表において、λは露光光の波長を、βは投影倍率を、NAは像側(ウエハ側)開口数を、BはウエハW上でのイメージサークルIFの半径を、LXは実効露光領域ERのX方向に沿った寸法(長辺の寸法)を、LYは実効露光領域ERのY方向に沿った寸法(短辺の寸法)をそれぞれ表している。
また、面番号は物体面(第1面)であるレチクル面から像面(第2面)であるウエハ面への光線の進行する方向に沿ったレチクル側からの面の順序を、rは各面の曲率半径(非球面の場合には頂点曲率半径:mm)を、dは各面の軸上間隔すなわち面間隔(mm)を、材料は光透過性部材の材料名を、コートは、光透過性部材の表面に設けられる光学薄膜の種類を示す。なお、各面の曲率半径の欄においては、レチクル側に向かって凸面の曲率半径を正とし、凹面の曲率半径を負としている。また、コートの欄におけるIDは理想的な光学薄膜(すなわち、透過率100%であって、それを透過する光に対して位相差を与えない薄膜)を表し、REは後述する位相差低減機能を有する薄膜を表している。
第3実施例において、露光光の波長λに対する蛍石の屈折率nはn=1.55930666で与えられる。
さて、第3実施例においては、光透過部材に対する入射角度範囲が大きい最もウエハW側の2枚の光透過部材(レンズL21、L22)に関して、薄膜による偏光収差の補正効果について検討した。第3実施例では、複数の光学部材L1〜L22のうち、最もウエハW側にある2枚の光学部材L21、L22のみが固有複屈折を持つと仮定した。これらの光学部材L21、L22を形成している蛍石の固有複屈折は、結晶軸[110]の方向における露光光の波長での複屈折の値と結晶軸[100]の方向における露光光の波長での複屈折の値との差が−3.3nm/cmとしている。そして、これらの光学部材L21、L22は共にその結晶軸[111]が光軸AX1と一致するように形成され、光学部材L21、L22の結晶軸[111]とは異なる結晶軸同士が光軸AX1を中心として相対的に60度だけ回転した位置関係を有する。すなわち、光学部材L21、L22に対して本発明の第5の手法を適用している。
次に、これらの光学部材L21、L22の表面(レンズ面)に理想的な光学薄膜IDを設けた場合と、位相差低減機能を有する薄膜REを設けた場合とについて比較する。
ここで、理想的な光学薄膜とは、当該薄膜ID自体の透過率が100%であって、当該薄膜を透過する複数の偏光成分の光の間に位相差を全く与えない作用を有する仮想的な薄膜である。そして、位相差低減機能を有する薄膜REは、次の第4表で示される構成を有する。
なお、以下の第4表において、λは露光光の中心波長を表している。そして、層番号は、薄膜が設けられる基材側からの層の順序を表し、Dは各層の厚み(nm)を、nは各層の中心波長に対する屈折率をそれぞれ示している。
第13図に第4表の薄膜REの透過率の入射角特性を示し、第14図に第4表の薄膜REの位相差の入射角特性を示す。
なお、第13図において、縦軸に透過率をとり、横軸に薄膜REに対する入射角(垂直入射のとき0)をとる。そして、第13図の破線はP偏光成分(振動方向が入射面内である偏光成分、言い換えると、光軸と平行な軸を中心とした円の径方向に沿って偏光面を有する偏光成分)に対する薄膜REの透過率の入射角依存性を示し、実線はS偏光成分(振動方向が入射面と直交する面内である偏光成分、言い換えると、光軸と平行な軸を中心とした円の周方向に沿って偏光面を有する偏光成分)に対する薄膜REの透過率の入射角依存性を示す。
また、第14図においては、縦軸に薄膜REを透過した後のP偏光成分とS偏光成分との位相差(°)をとり、横軸に入射角(垂直入射のとき0)をとっている。
第13図から明らかな通り、薄膜REは、開口数NA=0.85に相当する入射角範囲(すなわちsin−1(0.85)までの入射角範囲)において98%以上の透過率を確保しており、実用上において十分に使用に耐えられる水準を示している。そして、第14図から明らかな通り、薄膜REは開口数NA=0.85に相当する入射角においてP偏光成分とS偏光成分との位相差が8度近くあり、ここにおいてP偏光成分の位相がS偏光成分に対してより進んでいる。すなわち、この薄膜REを透過する光は、入射角が大きくなるにつれてP偏光成分の光の位相がS偏光成分の光の位相に対してより進むようになる。
第3実施例のように、光透過部材(光学部材)L21、L22がともに、結晶軸[111]と一致した光軸AX1を有し、かつほぼ同じ厚みであって、それらの結晶軸[111]とは異なる結晶軸同士が光軸AX1を中心として相対的に60度だけ回転した位置関係を有する場合、これらの光学部材の対L21、L22は、入射角が大きくなるにつれてS偏光成分の光の位相がP偏光成分の光の位相に対してより進むような進相軸を有する。
ここで、上記薄膜REは、光学部材の対L21、L22と直交する進相軸を有しているので、この薄膜REによって、総合的な位相差を低減することが可能である。
第15図は、第3表に示す諸元を有する投影光学系において、最もウエハW側の光学部材の対L21、L22に薄膜REを設けた場合の波面収差と、薄膜REに代えて理想的な光学薄膜IDを設けた場合の波面収差をとの比較を示すグラフである。なお、第15図において、Xは第12図のX方向に振動方向(偏光面)を持つ偏光成分の波面収差(mλRMS)を示し、Yは第12図のY方向に振動方向(偏光面)を持つ偏光成分の波面収差(mλRMS)を示している。
この第15図を参照すると、薄膜REによる位相差補正能力が十分に高いことが明らかであり、ひいては投影光学系の光学性能(結像性能)を極めて向上することが可能であることも明らかである。
なお、上述の実施形態では、複屈折性の光学材料として蛍石を用いているが、これに限定されることなく、他の一軸性結晶、たとえばフッ化バリウム(BaF2)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化ストロンチウム(SrF2)などを用いることもできる。この場合、フッ化バリウム(BaF2)などの結晶軸方位も本発明に従って決定されることが好ましい。
上述の実施形態の露光装置では、照明装置によってレチクル(マスク)を照明し(照明工程)、投影光学系を用いてマスクに形成された転写用のパターンを感光性基板に露光する(露光工程)ことにより、マイクロデバイス(半導体素子、撮像素子、液晶表示素子、薄膜磁気ヘッド等)を製造することができる。以下、本実施形態の露光装置を用いて感光性基板としてのウエハ等に所定の回路パターンを形成することによって、マイクロデバイスとしての半導体デバイスを得る際の手法の一例につき第16図のフローチャートを参照して説明する。
先ず、第16図のステップ301において、1ロットのウエハ上に金属膜が蒸着される。次のステップ302において、その1ロットのウエハ上の金属膜上にフォトレジストが塗布される。その後、ステップ303において、本実施形態の露光装置を用いて、マスク上のパターンの像がその投影光学系を介して、その1ロットのウエハ上の各ショット領域に順次露光転写される。その後、ステップ304において、その1ロットのウエハ上のフォトレジストの現像が行われた後、ステップ305において、その1ロットのウエハ上でレジストパターンをマスクとしてエッチングを行うことによって、マスク上のパターンに対応する回路パターンが、各ウエハ上の各ショット領域に形成される。
その後、更に上のレイヤの回路パターンの形成等を行うことによって、半導体素子等のデバイスが製造される。上述の半導体デバイス製造方法によれば、極めて微細な回路パターンを有する半導体デバイスをスループット良く得ることができる。なお、ステップ301〜ステップ305では、ウエハ上に金属を蒸着し、その金属膜上にレジストを塗布、そして露光、現像、エッチングの各工程を行っているが、これらの工程に先立って、ウエハ上にシリコンの酸化膜を形成後、そのシリコンの酸化膜上にレジストを塗布、そして露光、現像、エッチング等の各工程を行っても良いことはいうまでもない。
また、本実施形態の露光装置では、プレート(ガラス基板)上に所定のパターン(回路パターン、電極パターン等)を形成することによって、マイクロデバイスとしての液晶表示素子を得ることもできる。以下、第17図のフローチャートを参照して、このときの手法の一例につき説明する。第17図において、パターン形成工程401では、本実施形態の露光装置を用いてマスクのパターンを感光性基板(レジストが塗布されたガラス基板等)に転写露光する、所謂光リソグラフィ工程が実行される。この光リソグラフィー工程によって、感光性基板上には多数の電極等を含む所定パターンが形成される。その後、露光された基板は、現像工程、エッチング工程、レチクル剥離工程等の各工程を経ることによって、基板上に所定のパターンが形成され、次のカラーフィルター形成工程402へ移行する。
次に、カラーフィルター形成工程402では、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応した3つのドットの組がマトリックス状に多数配列されたり、またはR、G、Bの3本のストライプのフィルターの組を複数水平走査線方向に配列されたりしたカラーフィルターを形成する。そして、カラーフィルター形成工程402の後に、セル組み立て工程403が実行される。セル組み立て工程403では、パターン形成工程401にて得られた所定パターンを有する基板、およびカラーフィルター形成工程402にて得られたカラーフィルター等を用いて液晶パネル(液晶セル)を組み立てる。セル組み立て工程403では、例えば、パターン形成工程401にて得られた所定パターンを有する基板とカラーフィルター形成工程402にて得られたカラーフィルターとの間に液晶を注入して、液晶パネル(液晶セル)を製造する。
その後、モジュール組み立て工程404にて、組み立てられた液晶パネル(液晶セル)の表示動作を行わせる電気回路、バックライト等の各部品を取り付けて液晶表示素子として完成させる。上述の液晶表示素子の製造方法によれば、極めて微細な回路パターンを有する液晶表示素子をスループット良く得ることができる。
なお、上述の実施形態では、露光装置に搭載される投影光学系に対して本発明を適用しているが、これに限定されることなく、他の一般的な投影光学系に対して本発明を適用することもできる。また、上述の各実施形態では、157nmの波長光を供給するF2レーザー光源を用いているが、これに限定されることなく、たとえば193nmの波長光を供給するArFエキシマレーザー光源や、126nmの波長光を供給するAr2レーザー光源、146nmの波長光を供給するKr2レーザー光源などを用いることもできる。
産業上の利用の可能性
以上説明したように、本発明にかかる各実施形態では、たとえば蛍石のような固有複屈折を持つ光学材料を用いているにもかかわらず、複屈折の影響を実質的に受けることなく良好な光学性能を有する投影光学系を実現することができる。また、フォトレジストからの脱ガスによるレンズの汚染を良好に回避することのできる投影光学系を実現することができる。したがって、本発明の投影光学系を露光装置に組み込むことにより、高解像な投影光学系を介した高精度な投影露光により、良好なマイクロデバイスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、蛍石の結晶軸方位について説明する図である。
第2A図〜第2C図は、Burnettらの手法を説明する図であって、光線の入射角に対する複屈折率の分布を示している。
第3A図〜第3C図は、本発明の第1の手法を説明する図であって、光線の入射角に対する複屈折率の分布を示している。
第4A図〜第4C図は、本発明の第3の手法を説明する図であって、光線の入射角に対する複屈折率の分布を示している。
第5図は、本発明の実施形態にかかる光学系を備えた露光装置の構成を概略的に示す図である。
第6図は、ウエハ上に形成される矩形状の露光領域(すなわち実効露光領域)と基準光軸との位置関係を示す図である。
第7図は、第1実施例にかかる投影光学系PLのレンズ構成を示す図である。
第8図は、第1実施例における横収差を示す図である。
第9図は、第2実施例にかかる投影光学系PLのレンズ構成を示す図である。
第10図は、第2実施例における横収差を示す図である。
第11図は、第3実施例にかかる投影光学系PLのレンズ構成を示す図である。
第12図は、第3実施例にかかる投影光学系PLによるウエハ上に形成される矩形状の露光領域(すなわち実効露光領域)を示す図である。
第13図は、第3実施例にかかる薄膜REの透過率の入射角度依存性を示す図である。
第14図は、第3実施例にかかる薄膜REの位相差(偏光収差)の入射角度依存性を示す図である。
第15図は、第3実施例にかかる投影光学系の波面収差を示す図である。
第16図は、マイクロデバイスとしての半導体デバイスを得る際の手法のフローチャートである。
第17図は、マイクロデバイスとしての液晶表示素子を得る際の手法のフローチャートである。
本発明は、投影光学系、該投影光学系を備えた露光装置および該投影光学系を用いた露光方法に関し、特に半導体素子などのマイクロデバイスをフォトリソグラフィ工程で製造する際に使用される露光装置に好適な反射屈折型の投影光学系に関するものである。
背景技術
近年、半導体素子の製造や半導体チップ実装基板の製造では、微細化がますます進んでおり、パターンを焼き付ける露光装置ではより解像力の高い投影光学系が要求されてきている。この高解像の要求を満足するには、露光光を短波長化し、且つNA(投影光学系の開口数)を大きくしなければならない。しかしながら、露光光の波長が短くなると、光の吸収のため実用に耐える光学ガラスの種類が限られてくる。
たとえば波長が200nm以下の真空紫外域の光、特にF2レーザ光(波長157nm)を露光光として用いる場合、投影光学系を構成する光透過性光学材料としては、フッ化カルシウム(蛍石:CaF2)やフッ化バリウム(BaF2)等のフッ化物結晶を多用せざるを得ない。実際には、露光光としてF2レーザ光を用いる露光装置では、基本的に蛍石だけで投影光学系を形成する設計が想定されている。蛍石は、立方晶系であり、光学的には等方的で、複屈折が実質的にないと思われていた。また、従来の可視光域の実験では、蛍石について小さい複屈折(内部応力起因のランダムなもの)しか観測されていなかった。
しかしながら、2001年5月15日に開かれたリソグラフィに関するシンポジュウム(2nd International Symposium on 157nm Lithography)において、米国NISTのJohn H.Burnettらにより、蛍石には固有複屈折(intrinsic birefringence)が存在することを実験および理論の両面から確認したことが発表された。
この発表によれば、蛍石の複屈折は、結晶軸[111]方向およびこれと等価な結晶軸[−111],[1−11],[11−1]方向、並びに結晶軸[100]方向およびこれと等価な結晶軸[010],[001]方向ではほぼ零であるが、その他の方向では実質的に零でない値を有する。特に、結晶軸[110],[−110],[101],[−101],[011],[01−1]の6方向では、波長157nmに対して最大で6.5nm/cm、波長193nmに対して最大で3.6nm/cmの複屈折の値を有する。これらの複屈折の値はランダムな複屈折の許容値とされる1nm/cmよりも実質的に大きい値であり、しかもランダムでない分だけ複数のレンズを通して複屈折の影響が蓄積する可能性がある。
従来技術では、投影光学系の設計において蛍石の複屈折性を考慮していないので、加工の容易さなどの観点から結晶軸[111]と光軸とを一致させるのが一般的である。この場合、投影光学系では、NA(開口数)が比較的大きいため、結晶軸[111]からある程度傾いた光線もレンズを通過するので、複屈折の影響により結像性能が悪化する可能性がある。
ところで、Burnettらは上述の発表において、一対の蛍石レンズの光軸と結晶軸[111]とを一致させ且つ光軸を中心として一対の蛍石レンズを60°相対的に回転させることにより、複屈折の影響を補正する手法を開示している。しかしながら、この手法では、後述するように、複屈折の影響をある程度薄めることはできるが、複屈折の影響をこれと反対方向の複屈折の影響で積極的に補正していないので、その補正効果は十分ではなかった。
また、F2レーザ光(波長157nm)を露光光として用いる場合、フォトレジストからの露光による脱ガス(アウトガス)は避けられない状況にある。したがって、従来から提案されている大きな開口数を有する投影光学系では、特段の策を講じない限り脱ガスによるレンズの汚染を回避することができない。
発明の開示
本発明の第1の目的は、たとえば蛍石のような固有複屈折を持つ光学材料を用いているにもかかわらず、複屈折の影響を実質的に受けることなく良好な光学性能を達成することにある。
本発明の第2の目的は、フォトレジストからの脱ガスによるレンズの汚染を良好に回避することにある。
上述の第2の目的を達成するために、本発明の第1発明では、複数のレンズと少なくとも1つの凹面反射鏡とを含み、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
前記第1面および前記第2面を走査方向に沿って移動させて前記第1面の像を前記第2面上に走査露光する露光装置に用いられたときに、非走査時にはスリット状または円弧状の露光領域を前記第2面上に形成し、
前記第2面側の作動距離をDwとし、前記第2面側の開口数をNwとし、前記スリット状または円弧状の露光領域における前記走査方向と直交する方向に沿った長さをEwとするとき、
0.5<(Dw・Nw)/Ew<1.4 (1)
の条件を満足することを特徴とする投影光学系を提供する。なお、本発明でいうスリット状とは、走査方向を横切る方向に延びた形状を指し、たとえば走査方向を横切る方向に延びた長方形状、台形状、六角形状などが挙げられる。
第1発明の好ましい態様によれば、前記スリット状または円弧状の露光領域は、前記投影光学系の光軸を含まないように設定され、前記第1面の第1中間像を形成するための屈折型の第1結像光学系と、少なくとも1つの負レンズと凹面反射鏡とを有し、前記第1中間像からの光束に基づいて前記第1中間像とほぼ等倍の第2中間像を前記第1中間像の形成位置の近傍に形成するための第2結像光学系と、前記第2中間像からの光束に基づいて前記第2中間像の縮小像を前記第2面上に形成するための屈折型の第3結像光学系と、前記第1結像光学系から前記第2結像光学系に至る光路中に配置された第1光路折り曲げ鏡と、前記第2結像光学系から前記第3結像光学系に至る光路中に配置された第2光路折り曲げ鏡とを備えている。この場合、前記第1光路折り曲げ鏡の有効領域および前記第2光路折り曲げ鏡の有効領域は、全体に亘って平面状に形成された反射面を有することが好ましく、前記第1光路折り曲げ鏡の有効領域と前記第2光路折り曲げ鏡の有効領域とは空間的な重なりを有することなく、前記第1面からの光束をすべて前記第2面へ導くように配置されていることが好ましい。
また、第1発明の好ましい態様によれば、前記第1結像光学系および前記第3結像光学系を構成するすべてのレンズが単一の直線状の光軸に沿って配置されている。さらに、本発明の第1発明において、前記投影光学系は、前記第1面と前記第2面との間の光路中に配置されて凹面反射鏡を含む反射屈折型の結像光学系と、前記反射屈折型の結像光学系と前記第2面との間の光路中に配置された屈折型の結像光学系と、前記第1面と前記反射屈折型の結像光学系との間の光路中に配置された第1光路折り曲げ鏡と、前記反射屈折型の結像光学系と前記屈折型の結像光学系との間の光路中に配置された第2光路折り曲げ鏡とを備えていることが好ましい。
本発明の第2発明では、複数のレンズと凹面反射鏡と該凹面反射鏡の近傍に配置された負レンズとを含み、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
前記第1面および前記第2面を走査方向に沿って移動させて前記第1面の像を前記第2面上に走査露光する露光装置に用いられたときに、非走査時には前記投影光学系の光軸を含まないように設定されたスリット状または円弧状の露光領域を前記第2面上に形成し、
前記第2面側の開口数は0.82以上であることを特徴とする投影光学系を提供する。
第2発明の好ましい態様によれば、前記凹面反射鏡および前記負レンズは、重力の方向と実質的に異なる方向の光軸に沿って配置され、前記凹面反射鏡の有効径(直径)をSとし、前記凹面反射鏡の曲率半径をRとするとき、
1.0<S/|R|<1.8 (2)
の条件を満足する。また、本発明の第2発明において、前記投影光学系は、前記第1面と前記第2面との間の光路中に配置されて凹面反射鏡を含む反射屈折型の結像光学系と、前記反射屈折型の結像光学系と前記第2面との間の光路中に配置された屈折型の結像光学系と、前記第1面と前記反射屈折型の結像光学系との間の光路中に配置された第1光路折り曲げ鏡と、前記反射屈折型の結像光学系と前記屈折型の結像光学系との間の光路中に配置された第2光路折り曲げ鏡とを備えていることが好ましい。
また、上述の第1の目的を達成するために、本発明の第3発明では、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
前記第2面側の瞳位置と前記第2面との間の光路中に配置され、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[100]または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された少なくとも1つの光透過部材を備えていることを特徴とする投影光学系を提供する。
また、上述の第1の目的を達成するために、本発明の第4発明では、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
通過する光線の光軸に対する角度の最大値が20度を超える光透過部材のうちの少なくとも1つの光透過部材は、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[100]または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成されていることを特徴とする投影光学系を提供する。
また、上述の第1の目的を達成するために、本発明の第5発明では、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[100]または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第1群の光透過部材と、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[100]または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第2群の光透過部材とを備え、
前記第1群の光透過部材と前記第2群の光透過部材とは、光軸を中心としてほぼ45°だけ相対的に回転した位置関係を有し、
前記第1群の光透過部材および前記第2群の光透過部材の双方が、前記第2面側の瞳位置と前記第2面との間の光路中に配置されていることを特徴とする投影光学系を提供する。
また、上述の第1の目的を達成するために、本発明の第6発明では、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[100]または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第1群の光透過部材と、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[100]または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第2群の光透過部材とを備え、
前記第1群の光透過部材と前記第2群の光透過部材とは、光軸を中心としてほぼ45°だけ相対的に回転した位置関係を有し、
前記第1群の光透過部材および前記第2群の光透過部材の双方において、通過する光線の光軸に対する角度の最大値が20度を超えていることを特徴とする投影光学系を提供する。
なお、本発明の第5及び第6発明において、第1群の光透過部材と第2群の光透過部材とが光軸を中心としてほぼ45°だけ相対的に回転した位置関係を有するとは、第1群の光透過部材および第2群の光透過部材における光軸とは異なる方向に向けられた所定の結晶軸(たとえば結晶軸[010]、[001]、[01−1]、または[011])同士の光軸を中心とした相対的な角度がほぼ45°であることを意味する。なお、結晶軸[100]を光軸とする場合には、光軸を中心とした複屈折の影響の回転非対称性が90°の周期で現れるため、第5及び第6発明において、光軸を中心としてほぼ45°だけ相対的に回転した位置関係を有することは、光軸を中心としてほぼ45°+(n×90°)だけ相対的に回転した位置関係を有することと同じ意味である(nは整数である)。
第5発明および第6発明の好ましい態様によれば、前記第1群の光透過部材および前記第2群の光透過部材のうちの少なくとも一方は、少なくとも1つの非球面を有する。また、前記第1群の光透過部材の光軸に沿った厚さ(中心厚)の総計をT1とし、前記第2群の光透過部材の光軸に沿った厚さの総計をT2とし、前記投影光学系を構成するすべての光透過部材の光軸に沿った厚さの総計をTAとするとき、|T1−T2|/TA<0.025の条件を満足することが好ましい。さらに、前記第1群の光透過部材と前記第2群の光透過部材とは、オプティカルコンタクトまたは接着により1つの光学部品として形成されていることが好ましい。
また、上述の第1の目的を達成するために、本発明の第7発明では、複数のレンズと凹面反射鏡と該凹面反射鏡の近傍に配置された負レンズとを含み、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
前記負レンズは、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[100]または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成されていることを特徴とする投影光学系を提供する。
また、上述の第1の目的を達成するために、本発明の第8発明では、複数のレンズと凹面反射鏡と該凹面反射鏡の近傍に配置された第1負レンズおよび第2負レンズとを含み、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
前記第1負レンズは、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[100]または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成され、
前記第2負レンズは、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[100]または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成され、
前記第1負レンズと前記第2負レンズとは、光軸を中心としてほぼ45°だけ相対的に回転した位置関係を有することを特徴とする投影光学系を提供する。
なお、本発明の第8発明において、第1負レンズと第2負レンズとが光軸を中心としてほぼ45°だけ相対的に回転した位置関係を有するとは、第1負レンズおよび第2負レンズにおける光軸とは異なる方向に向けられた所定の結晶軸(たとえば結晶軸[010]、[001]、[01−1]、または[011])同士の光軸を中心とした相対的な角度がほぼ45°であることを意味する。なお、結晶軸[100]を光軸とする場合には、光軸を中心とした複屈折の影響の回転非対称性が90°の周期で現れるため、第8発明において、光軸を中心としてほぼ45°だけ相対的に回転した位置関係を有することは、光軸を中心としてほぼ45°+(n×90°)だけ相対的に回転した位置関係を有することと同じ意味である(nは整数である)。
また、上述の第1の目的を達成するために、本発明の第9発明では、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
前記第2面側の瞳位置と前記第2面との間の光路中に配置され、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[110]または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された少なくとも1つの光透過部材を備えていることを特徴とする投影光学系を提供する。
また、上述の第1の目的を達成するために、本発明の第10発明では、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
通過する光線の光軸に対する角度の最大値が20度を超える光透過部材のうちの少なくとも1つの光透過部材は、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[110]または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成されていることを特徴とする投影光学系を提供する。
また、上述の第1の目的を達成するために、本発明の第11発明では、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[110]または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第3群の光透過部材と、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[110]または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第4群の光透過部材とを備え、
前記第3群の光透過部材と前記第4群の光透過部材とは、光軸を中心としてほぼ90°だけ相対的に回転した位置関係を有し、
前記第3群の光透過部材および前記第4群の光透過部材の双方が、前記第2面側の瞳位置と前記第2面との間の光路中に配置されていることを特徴とする投影光学系を提供する。
また、上述の第1の目的を達成するために、本発明の第12発明では、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[110]または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第3群の光透過部材と、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[110]または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第4群の光透過部材とを備え、
前記第3群の光透過部材と前記第4群の光透過部材とは、光軸を中心としてほぼ90°だけ相対的に回転した位置関係を有し、
前記第3群の光透過部材および前記第4群の光透過部材の双方において、通過する光線の光軸に対する角度の最大値が20度を超えていることを特徴とする投影光学系を提供する。
なお、本発明の第11及び第12発明において、第3群の光透過部材と第4群の光透過部材とが光軸を中心としてほぼ90°だけ相対的に回転した位置関係を有するとは、第3群の光透過部材および第4群の光透過部材における光軸とは異なる方向に向けられた所定の結晶軸(たとえば結晶軸[001]、[−111]、[−110]、または[1−11])同士の光軸を中心とした相対的な角度がほぼ90°であることを意味する。なお、結晶軸[110]を光軸とする場合には、光軸を中心とした複屈折の影響の回転非対称性が180°の周期で現れるため、第11及び第12発明において、光軸を中心としてほぼ90°だけ相対的に回転した位置関係を有することは、光軸を中心としてほぼ90°+(n×180°)だけ相対的に回転した位置関係を有することと同じ意味である(nは整数である)。
第11発明および第12発明の好ましい態様によれば、前記第3群の光透過部材および前記第4群の光透過部材のうちの少なくとも一方は、少なくとも1つの非球面を有する。また、前記第3群の光透過部材の光軸に沿った厚さ(中心厚)の総計をT3とし、前記第4群の光透過部材の光軸に沿った厚さの総計をT4とし、前記投影光学系を構成するすべての光透過部材の光軸に沿った厚さの総計をTAとするとき、|T3−T4|/TA<0.025の条件を満足することが好ましい。さらに、前記第3群の光透過部材と前記第4群の光透過部材とは、オプティカルコンタクトまたは接着により1つの光学部品として形成されていることが好ましい。
また、上述の第1の目的を達成するために、本発明の第13発明では、複数のレンズと凹面反射鏡と該凹面反射鏡の近傍に配置された負レンズとを含み、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
前記負レンズは、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[110]または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成されていることを特徴とする投影光学系を提供する。
また、上述の第1の目的を達成するために、本発明の第14発明では、複数のレンズと凹面反射鏡と該凹面反射鏡の近傍に配置された第1負レンズおよび第2負レンズとを含み、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
前記第1負レンズは、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[110]または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成され、
前記第2負レンズは、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[110]または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成され、
前記第1負レンズと前記第2負レンズとは、光軸を中心としてほぼ90°だけ相対的に回転した位置関係を有することを特徴とする投影光学系を提供する。
なお、本発明の第14発明において、第1負レンズと第2負レンズとが光軸を中心としてほぼ90°だけ相対的に回転した位置関係を有するとは、第1負レンズおよび第2負レンズにおける光軸とは異なる方向に向けられた所定の結晶軸(たとえば結晶軸[001]、[−111]、[−110]、または[1−11])同士の光軸を中心とした相対的な角度がほぼ90°であることを意味する。なお、結晶軸[110]を光軸とする場合には、光軸を中心とした複屈折の影響の回転非対称性が180°の周期で現れるため、第14発明において、光軸を中心としてほぼ90°だけ相対的に回転した位置関係を有することは、光軸を中心としてほぼ90°+(n×180°)だけ相対的に回転した位置関係を有することと同じ意味である(nは整数である)。
また、上述の第1の目的を達成するために、本発明の第15発明では、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[111]または該結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第5群の光透過部材と、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[111]または該結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第6群の光透過部材とを備え、
前記第5群の光透過部材と前記第6群の光透過部材とは、光軸を中心としてほぼ60°だけ相対的に回転した位置関係を有し、
前記第3群の光透過部材および前記第4群の光透過部材の双方が、前記第2面側の瞳位置と前記第2面との間の光路中に配置されていることを特徴とする投影光学系を提供する。
また、上述の第1の目的を達成するために、本発明の第16発明では、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[111]または該結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第5群の光透過部材と、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[111]または該結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第6群の光透過部材とを備え、
前記第5群の光透過部材と前記第6群の光透過部材とは、光軸を中心としてほぼ60°だけ相対的に回転した位置関係を有し、
前記第5群の光透過部材および前記第6群の光透過部材の双方において、通過する光線の光軸に対する角度の最大値が20度を超えていることを特徴とする投影光学系を提供する。
なお、本発明の第15及び第16発明において、第5群の光透過部材と第6群の光透過部材とが光軸を中心としてほぼ60°だけ相対的に回転した位置関係を有するとは、第5群の光透過部材および第6群の光透過部材における光軸とは異なる方向に向けられた所定の結晶軸(たとえば結晶軸[−111]、[11−1]、または[1−11])同士の光軸を中心とした相対的な角度がほぼ60°であることを意味する。なお、結晶軸[111]を光軸とする場合には、光軸を中心とした複屈折の影響の回転非対称性が120°の周期で現れるため、第11及び第12発明において、光軸を中心としてほぼ60°だけ相対的に回転した位置関係を有することは、光軸を中心としてほぼ60°+(n×120°)だけ相対的に回転した位置関係を有することと同じ意味である(nは整数である)。
第15発明および第16発明の好ましい態様によれば、前記第5群の光透過部材および前記第6群の光透過部材のうちの少なくとも一方は、少なくとも1つの非球面を有する。また、前記第5群の光透過部材の光軸に沿った厚さ(中心厚)の総計をT5とし、前記第6群の光透過部材の光軸に沿った厚さの総計をT6とし、前記投影光学系を構成するすべての光透過部材の光軸に沿った厚さの総計をTAとするとき、|T5−T6|/TA<0.025の条件を満足することが好ましい。さらに、前記第5群の光透過部材と前記第6群の光透過部材とは、オプティカルコンタクトまたは接着により1つの光学部品として形成されていることが好ましい。
また、上述の第1の目的を達成するために、本発明の第17発明では、複数のレンズと凹面反射鏡と該凹面反射鏡の近傍に配置された第1負レンズおよび第2負レンズとを含み、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
前記第1負レンズは、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[111]または該結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成され、
前記第2負レンズは、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[111]または該結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成され、
前記第1負レンズと前記第2負レンズとは、光軸を中心としてほぼ60°だけ相対的に回転した位置関係を有することを特徴とする投影光学系を提供する。
なお、本発明の第17発明において、第1負レンズと第2負レンズとが光軸を中心としてほぼ60°だけ相対的に回転した位置関係を有するとは、第1負レンズおよび第2負レンズにおける光軸とは異なる方向に向けられた所定の結晶軸(たとえば結晶軸[−111]、[11−1]、または[1−11])同士の光軸を中心とした相対的な角度がほぼ60°であることを意味する。なお、結晶軸[111]を光軸とする場合には、光軸を中心とした複屈折の影響の回転非対称性が120°の周期で現れるため、第17発明において、光軸を中心としてほぼ60°だけ相対的に回転した位置関係を有することは、光軸を中心としてほぼ60°+(n×120°)だけ相対的に回転した位置関係を有することと同じ意味である(nは整数である)。
また、上述の第1の目的を達成するために、本発明の第18発明では、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有する結晶で形成された少なくとも1つの光透過部材を備え、
前記光透過部材の表面には、第1の偏光成分の光と該第1の偏光成分の光とは異なる第2の偏光成分の光とが前記投影光学系を通過する際に、前記第1および第2の偏光成分の光の間で発生する位相差を低減させる膜が形成されることを特徴とする投影光学系を提供する。
第18発明の好ましい態様によれば、前記膜は、前記第1および第2の偏光成分の光が前記光透過部材を通過する際に発生する、前記第1および第2の偏光成分の光の間の位相差を低減することが好ましい。
また、第18発明では、前記投影光学系は、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有する結晶で形成された少なくとも2つの光透過部材を備えることが好ましく、前記少なくとも2つの光透過性部材は、前記投影光学系を通過する第1および第2の偏光成分の光の間の位相差を低減させるように、それらの結晶軸方位が定められることが好ましく、前記膜は、前記少なくとも2つの光透過性部材により低減された前記投影光学系を通過する第1および第2の偏光成分の光の間の位相差をさらに低減させることが好ましい。
また、第18発明において、前記膜は、反射防止膜を有していることが好ましい。
また、第18発明では、前記光透過部材の表面には、前記結晶で形成された結晶膜が形成されることが好ましく、前記光透過部材の結晶方位と前記結晶膜の結晶方位とが実質的に異なることが好ましい。
上述の第1の目的を達成するために、本発明の第19発明では、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有する結晶で形成された光透過部材を備え、
前記光透過部材の表面には、前記結晶で形成された結晶膜が形成され、
前記光透過部材の結晶方位と前記結晶膜の結晶方位とが実質的に異なることを特徴とする投影光学系を提供する。
第19発明の好ましい態様によれば、前記光透過部材の光軸に沿った結晶方位と前記結晶膜の前記光軸に沿った結晶方位とが実質的に異なる。あるいは、前記光透過部材の光軸に沿った結晶方位と前記結晶膜の前記光軸に沿った結晶方位とがほぼ一致し、前記光透過部材と前記結晶膜とは、前記光軸を中心として所定の角度だけ相対的に回転した位置関係を有することが好ましい。
ここで、光透過部材と結晶膜とが光軸を中心として所定の角度だけ相対的に回転した位置関係を有するとは、光透過部材および結晶膜における光軸とは異なる方向に向けられた特定の結晶軸同士の光軸を中心とした相対的な角度が所定の角度であることを意味する。
上述の第1の目的を達成するために、本発明の第20発明では、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[100]または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第1群の光透過部材と、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[110]または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第3群の光透過部材と、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[111]または該結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第5群の光透過部材とを備えていることを特徴とする投影光学系を提供する。
第3発明〜第20発明の好ましい態様によれば、前記第1面および前記第2面を走査方向に沿って移動させて前記第1面の像を前記第2面上に走査露光する露光装置に用いられ、非走査時にはスリット状または円弧状の露光領域を前記投影光学系の光軸を含まない位置に形成し、前記第1面の第1中間像を形成するための屈折型の第1結像光学系と、少なくとも1つの負レンズと凹面反射鏡とを有し、前記第1中間像からの光束に基づいて前記第1中間像とほぼ等倍の第2中間像を前記第1中間像の形成位置の近傍に形成するための第2結像光学系と、前記第2中間像からの光束に基づいて前記第2中間像の縮小像を前記第2面上に形成するための屈折型の第3結像光学系と、前記第1結像光学系から前記第2結像光学系に至る光路中に配置された第1光路折り曲げ鏡と、前記第2結像光学系から前記第3結像光学系に至る光路中に配置された第2光路折り曲げ鏡とを備えている。
なお、上述の態様において、前記第1光路折り曲げ鏡の有効領域および前記第2光路折り曲げ鏡の有効領域は、全体に亘って平面状に形成された反射面を有することが好ましく、前記第1光路折り曲げ鏡の有効領域と前記第2光路折り曲げ鏡の有効領域とは空間的な重なりを有することなく、前記第1面からの光束をすべて前記第2面へ導くように配置されていることが好ましい。また、上述の態様において、前記第1結像光学系および前記第3結像光学系を構成するすべてのレンズが単一の直線状の光軸に沿って配置されていることが好ましい。さらに、第3発明〜第20発明において、前記投影光学系は、前記第1面と前記第2面との間の光路中に配置されて凹面反射鏡を含む反射屈折型の結像光学系と、前記反射屈折型の結像光学系と前記第2面との間の光路中に配置された屈折型の結像光学系と、前記第1面と前記反射屈折型の結像光学系との間の光路中に配置された第1光路折り曲げ鏡と、前記反射屈折型の結像光学系と前記屈折型の結像光学系との間の光路中に配置された第2光路折り曲げ鏡とを備えていることが好ましい。
本発明の第21発明では、前記第1面に設定されたマスクを照明するための照明系と、
前記マスクに形成されたパターンの像を前記第2面に設定された感光性基板上に形成するための第1発明〜第20発明の投影光学系とを備えていることを特徴とする露光装置を提供する。
本発明の第22発明では、パターンが形成されたマスクを照明し、照明された前記パターンの像を第1発明〜第20発明の投影光学系を介して感光性基板上に形成することを特徴とする露光方法を提供する。
発明を実施するための最良の形態
まず、複屈折の影響を実質的に回避するための本発明の基本的手法について説明する。第1図は、蛍石の結晶軸方位について説明する図である。第1図を参照すると、蛍石の結晶軸は、立方晶系のXYZ座標系に基づいて規定される。すなわち、+X軸に沿って結晶軸[100]が、+Y軸に沿って結晶軸[010]が、+Z軸に沿って結晶軸[001]がそれぞれ規定される。
また、XZ平面において結晶軸[100]および結晶軸[001]と45°をなす方向に結晶軸[101]が、XY平面において結晶軸[100]および結晶軸[010]と45°をなす方向に結晶軸[110]が、YZ平面において結晶軸[010]および結晶軸[001]と45°をなす方向に結晶軸[011]がそれぞれ規定される。さらに、+X軸、+Y軸および+Z軸に対して等しい鋭角をなす方向に結晶軸[111]が規定される。
なお、第1図では、+X軸、+Y軸および+Z軸で規定される空間における結晶軸のみを図示しているが、他の空間においても同様に結晶軸が規定される。前述したように、蛍石では、第1図中実線で示す結晶軸[111]方向、およびこれと等価な不図示の結晶軸[−111],[1−11],[11−1]方向では、複屈折がほぼ零(最小)である。
同様に、第1図中実線で示す結晶軸[100],[010],[001]方向においても、複屈折がほぼ零(最小)である。一方、第1図中破線で示す結晶軸[110],[101],[011],およびこれと等価な不図示の結晶軸[−110],[−101],[01−1]方向では、複屈折が最大である。
以下、本発明の手法を説明する前に、前述のBurnettらの手法の補正効果について検証する。第2A図〜第2C図は、Burnettらの手法を説明する図であって、光線の入射角に対する複屈折率の分布を示している。第2A図〜第2C図では、図中破線で示す5つの同心円が1目盛り10°を表している。したがって、最も内側の円が光軸に対して入射角10°の領域を、最も外側の円が光軸に対して入射角50°の領域を表している。
また、黒丸は比較的大きな屈折率を有する複屈折のない領域を、白丸は比較的小さな屈折率を有する複屈折のない領域を、ハッチングを施した小さな円(第4C図を参照)は中間的な屈折率を有する複屈折のない領域を表している。一方、太い円および長い両矢印は複屈折のある領域における比較的大きな屈折率の方向を、細い円および短い両矢印は複屈折のある領域における比較的小さな屈折率の方向を表している。以降の第3A図〜第3C図および第4A図〜第4Cにおいても、上述の表記は同様である。
前述したように、Burnettらの手法では、一対の蛍石レンズの光軸と結晶軸[111]とを一致させ、且つ光軸を中心として一対の蛍石レンズを60°相対的に回転させる。したがって、一方の蛍石レンズにおける複屈折率の分布は第2A図に示すようになり、他方の蛍石レンズにおける複屈折率の分布は第2B図に示すようになる。その結果、一対の蛍石レンズ全体における複屈折率の分布は、第2C図に示すようになる。
この場合、第2A図および第2B図を参照すると、光軸と一致している結晶軸[111]に対応する領域は、比較的小さな屈折率を有する複屈折のない領域となる。また、結晶軸[100],[010],[001]に対応する領域は、比較的大きな屈折率を有する複屈折のない領域となる。さらに、結晶軸[110],[101],[011]に対応する領域は、周方向の偏光に対する屈折率が比較的小さく径方向の偏光に対する屈折率が比較的大きい複屈折領域となる。このように、個々のレンズでは、光軸から35.26°(結晶軸[111]と結晶軸[110]とのなす角度)の領域において、複屈折の影響を最大に受けることがわかる。
一方、第2C図を参照すると、一対の蛍石レンズを60°相対的に回転させることにより、一対の蛍石レンズ全体では、複屈折が最大である結晶軸[110],[101],[011]の影響が薄められることがわかる。しかしながら、光軸から35.26°の領域すなわち光軸から比較的近い領域において、径方向の偏光に対する屈折率よりも周方向の偏光に対する屈折率が小さい複屈折領域が残ることになる。その結果、Burnettらの手法では、複屈折の影響をある程度受けることになる。
本発明の第1の手法では、第1群のレンズ素子(光透過部材)の光軸を結晶軸[100](または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸)と一致させ、第2群のレンズ素子の光軸を結晶軸[100](または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸)と一致させ、第1群のレンズ素子と第2群のレンズ素子とを光軸を中心として45°だけ相対的に回転させる。ここで、結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸とは、結晶軸[010],[001]である。
第3A図〜第3C図は、本発明の第1の手法を説明する図であって、光線の入射角(光線と光軸とのなす角度)に対する複屈折率の分布を示している。第1の手法では、第1群のレンズ素子における複屈折率の分布は第3A図に示すようになり、第2群のレンズ素子における複屈折率の分布は第3B図に示すようになる。その結果、第1群のレンズ素子と第2群のレンズ素子との全体における複屈折率の分布は、第3C図に示すようになる。
第3A図および第3B図を参照すると、第1の手法では、光軸と一致している結晶軸[100]に対応する領域は、比較的大きな屈折率を有する複屈折のない領域となる。また、結晶軸[111],[1−11],[−11−1],[11−1]に対応する領域は、比較的小さな屈折率を有する複屈折のない領域となる。さらに、結晶軸[101],[10−1],[110],[1−10]に対応する領域は、周方向の偏光に対する屈折率が比較的大きく径方向の偏光に対する屈折率が比較的小さい複屈折領域となる。このように、各群のレンズ素子では、光軸から45°(結晶軸[100]と結晶軸[101]とのなす角度)の領域において、複屈折率の影響を最大に受けることがわかる。
一方、第3C図を参照すると、第1群のレンズ素子と第2群のレンズ素子とを光軸を中心として45°だけ相対的に回転させることにより、第1群のレンズ素子と第2群のレンズ素子との全体では、複屈折が最大である結晶軸[101],[10−1],[110],[1−10]の影響がかなり薄められ、光軸から45°の領域すなわち光軸から離れた領域において径方向の偏光に対する屈折率よりも周方向の偏光に対する屈折率が大きい複屈折領域が残ることになる。この場合、一般の投影光学系において各レンズ素子における光軸と光束との最大角度は35°〜40°程度である。したがって、第1の手法を採用することにより、結晶軸[101],[10−1],[110],[1−10]の複屈折の影響を実質的に受けることなく、良好な結像性能を確保することができる。
なお、本発明の第1の手法において、第1群のレンズ素子と第2群のレンズ素子とを光軸を中心としてほぼ45°だけ相対的に回転させるとは、第1群のレンズ素子および第2群のレンズ素子における光軸とは異なる方向に向けられる所定の結晶軸(たとえば結晶軸[010]、[001]、[011]、または[01−1])同士の光軸を中心とした相対的な角度がほぼ45°であることを意味する。たとえば第1群のレンズ素子における結晶軸[010]と、第2群のレンズ素子における結晶軸[010]との光軸を中心とした相対的な角度が45°である。
また、第3A図および第3B図からも明らかな通り、結晶軸[100]を光軸とする場合には、光軸を中心とした複屈折の影響の回転非対称性が90°の周期で現れる。したがって、第1の手法において、光軸を中心としてほぼ45°だけ相対的に回転させるということは、光軸を中心としてほぼ45°+(n×90°)だけ相対的に回転させること、すなわち45°、135°、225°、または315°...だけ相対的に回転させることと同じ意味である(ここで、nは整数である)。
なお、上述の説明において、第1群のレンズ素子および第2群のレンズ素子は、それぞれ1つまたは複数のレンズ素子を有する。そして、第1群のレンズ素子または第2群のレンズ素子が複数のレンズ素子を含む場合、複数のレンズ素子は必ずしも連続するレンズ素子ではない。レンズ素子の群の概念は、以降の第3群〜第6群のレンズ素子についても同様である。第1の手法では、第1群のレンズ素子の光軸に沿った厚さの総計T1と第2群のレンズ素子の光軸に沿った厚さの総計T2とがほぼ等しいことが好ましい。
また、第2A図および第2B図を参照すると、レンズ素子の光軸と結晶軸[111]とを一致させているので、複屈折が最大の結晶軸[110],[101],[011]に対応する領域が120°ピッチで存在し、瞳面内で3θの分布を有する複屈折の影響すなわち像面(ウエハ面)においてコマ収差が発生するような影響が現れるものと考えられる。これに対して、第3A図および第3B図を参照すると、レンズ素子の光軸と結晶軸[100]とを一致させているので、複屈折が最大の結晶軸[101],[10−1],[110],[1−10]に対応する領域が90°ピッチで存在し、瞳面内で4θの分布を有する複屈折の影響が現れる。
この場合、ウエハに投影すべきパターンにおいて縦横パターンが支配的であるため、4θの分布であれば縦横パターンに対して非点収差が発生するような影響が現れることなく、像の崩れも顕著にならない。したがって、少なくとも1つのレンズ素子の光軸と結晶軸[100](または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸)と一致させる第2の手法を採用することにより、複屈折の影響を良好に抑えて、良好な結像性能を確保することができる。
また、本発明の第3の手法では、第3群のレンズ素子の光軸を結晶軸[110](または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸)と一致させ、第4群のレンズ素子の光軸を結晶軸[110](または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸)と一致させ、第3群のレンズ素子と第4群のレンズ素子とを光軸を中心として90°だけ相対的に回転させる。ここで、結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸とは、結晶軸[−110],[101],[−101],[011],[01−1]である。
第4A図〜第4C図は、本発明の第3の手法を説明する図であって、光線の入射角に対する複屈折率の分布を示している。第3の手法では、第3群のレンズ素子における複屈折率の分布は第4A図に示すようになり、第4群のレンズ素子における複屈折率の分布は第4B図に示すようになる。その結果、第3群のレンズ素子と第4群のレンズ素子との全体における複屈折率の分布は、第4C図に示すようになる。
第4A図および第4B図を参照すると、第3の手法では、光軸と一致している結晶軸[110]に対応する領域は、一方の方向の偏光に対する屈折率が比較的大きく他方の方向(一方の方向に直交する方向)の偏光に対する屈折率が比較的小さい複屈折領域となる。また、結晶軸[100],[010]に対応する領域は、比較的大きな屈折率を有する複屈折のない領域となる。さらに、結晶軸[111],[11−1]に対応する領域は、比較的小さな屈折率を有する複屈折のない領域となる。
一方、第4C図を参照すると、第3群のレンズ素子と第4群のレンズ素子とを光軸を中心として90°だけ相対的に回転させることにより、第3群のレンズ素子と第4群のレンズ素子との全体では、複屈折が最大である結晶軸[110]の影響がほとんどなく、光軸付近は中間的な屈折率を有する複屈折のない領域となる。すなわち、第3の手法を採用すると、複屈折の影響を実質的に受けることなく、良好な結像性能を確保することができる。
なお、本発明の第3の手法において、第3群のレンズ素子と第4群のレンズ素子とを光軸を中心としてほぼ90°だけ相対的に回転させるとは、第3群のレンズ素子および第4群のレンズ素子における光軸とは異なる方向に向けられる所定の結晶軸(たとえば結晶軸[001]、[−111]、[−110]、または[1−11])同士の光軸を中心とした相対的な角度がほぼ90°であることを意味する。たとえば第3群のレンズ素子における結晶軸[001]と、第4群のレンズ素子における結晶軸[001]との光軸を中心とした相対的な角度が90°である。
また、第4A図および第4B図からも明らかな通り、結晶軸[110]を光軸とする場合には、光軸を中心とした複屈折の影響の回転非対称性が180°の周期で現れる。したがって、第3の手法において、光軸を中心としてほぼ90°だけ相対的に回転させるということは、光軸を中心としてほぼ90°+(n×180°)だけ相対的に回転させること、すなわち90°、270°...だけ相対的に回転させることと同じ意味である(ここで、nは整数である)。
第3の手法においても、第3群のレンズ素子の光軸に沿った厚さの総計T3と第4群のレンズ素子の光軸に沿った厚さの総計T4とがほぼ等しいことが好ましい。特に、第3の手法では、複屈折領域が中央部(光軸およびその近傍)にあるので、中央部の薄い負レンズに適用することがさらに好ましい。
また、前述の第2の手法において説明した理由と同様の理由により、少なくとも1つのレンズ素子の光軸と結晶軸[110](または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸)と一致させる第4の手法を採用することにより、複屈折の影響を良好に抑えて、良好な結像性能を確保することができる。
また、本発明の第5の手法として、前述のBurnettらの手法を採用する。この場合、本発明の第5の手法では、第5群のレンズ素子の光軸を結晶軸[111](または該結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸)と一致させ、第6群のレンズ素子の光軸を結晶軸[111](または該結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸)と一致させ、第5群のレンズ素子と第6群のレンズ素子とを光軸を中心として60°だけ相対的に回転させる。
前述したように、第5の手法を採用することにより、複屈折の影響を良好に抑えて、良好な結像性能を確保することができる。ここで、結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸とは、結晶軸[−111],[1−11],[11−1]である。
なお、第5の手法において、第5群のレンズ素子と第6群のレンズ素子とを光軸を中心としてほぼ60°だけ相対的に回転させるとは、第5群のレンズ素子および第6群のレンズ素子における光軸とは異なる方向に向けられる所定の結晶軸(たとえば結晶軸[−111]、[11−1]、または[1−11])同士の光軸を中心とした相対的な角度がほぼ60°であることを意味する。たとえば第5群のレンズ素子における結晶軸[−111]と、第6群のレンズ素子における結晶軸[−111]との光軸を中心とした相対的な角度が60°である。
また、第2A図および第2B図からも明らかな通り、結晶軸[111]を光軸とする場合には、光軸を中心とした複屈折の影響の回転非対称性が120°の周期で現れる。したがって、第5の手法において、光軸を中心としてほぼ60°だけ相対的に回転させるということは、光軸を中心としてほぼ60°+(n×120°)だけ相対的に回転させること、すなわち60°、180°、300°...だけ相対的に回転させることと同じ意味である(ここで、nは整数である)。
第5の手法では、第5群のレンズ素子の光軸に沿った厚さの総計T5と第6群のレンズ素子の光軸に沿った厚さの総計T6とがほぼ等しいことが好ましい。
さらに、本発明の第6の手法として、第1の手法と第3の手法と第5の手法とを部分的に組み合わせた手法を採用することができる。すなわち、第6の手法では、第1群のレンズ素子の光軸を結晶軸[100](または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸)と一致させ、第3群のレンズ素子の光軸を結晶軸[110](または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸)と一致させ、第5群のレンズ素子の光軸を結晶軸[111](または該結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸)と一致させる。この場合も、複屈折の影響を良好に抑えて、良好な結像性能を確保することができる。
本発明では、後述するように、上述の6つの手法から選択した1つの手法を、投影光学系の所定の光学部材に適用する。また、本発明では、上述の6つの手法から選択した複数の手法を組み合わせて採用することもできる。こうして、本発明では、投影光学系に蛍石のような複屈折性の光学材料を用いているにもかかわらず、複屈折の影響を実質的に受けることなく良好な結像性能を有する投影光学系を実現することができる。
なお、結晶軸[111]を光軸方向に設定したレンズにおいては、その結晶構造に起因して光軸を中心とした方位角120°毎にレンズ面の研磨誤差が現れやすい。しかしながら、上記第5の手法のように第5群のレンズ素子の光軸を結晶軸[111](または該結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸)と一致させ、第6群のレンズ素子の光軸を結晶軸[111](または該結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸)と一致させ、第5群のレンズ素子と第6群のレンズ素子とを光軸を中心として60°だけ相対的に回転させることによって、光軸を中心とした方位角120°毎のレンズ面の研磨誤差に起因する収差を第5群のレンズ素子と第6群のレンズ素子との間でほぼキャンセル(相殺)することが可能となる利点がある。
ところで、本発明では、上述の第1の手法、第3の手法および第5の手法において、次の条件式(3)〜(5)を満足することが望ましい。
|T1−T2|/TA<0.025 (3)
|T3−T4|/TA<0.025 (4)
|T5−T6|/TA<0.025 (5)
ここで、T1〜T6は、前述したように、第1群〜第6群のレンズ素子(光透過部材)の光軸に沿った厚さ(中心厚)の総計である。また、TAは、投影光学系を構成するすべての光透過部材の光軸に沿った厚さの総計である。条件式(3)〜(5)を満足しないと、複屈折の影響が大きくなり、光学系の結像性能が悪化するので好ましくない。
次に、本発明の別の局面によれば、複数のレンズと少なくとも1つの凹面反射鏡とを含み、第1面の縮小像を第2面上に形成する反射屈折型の投影光学系において、フォトレジストからの脱ガスによるレンズの汚染を良好に回避する。この目的のため、本発明では、第1面および第2面を走査方向に沿って移動させて第1面の像を第2面上に走査露光する露光装置に用いられたときに、非走査時にはスリット状または円弧状の露光領域を第2面上に形成し、次の条件式(1)を満足する。
0.5<(Dw・Nw)/Ew<1.4 (1)
ここで、Dwは、第2面側の作動距離(最も第2面側の光学面と第2面との距離)である。また、Nwは、第2面側の開口数(像側開口数)である。さらに、Ewは、スリット状または円弧状の露光領域における非走査方向(走査方向と直交する方向)に沿った長さである。
条件式(1)は、像側作動距離と像側開口数と像視野との関係を規定している。条件式(1)の下限値を下回ると、感光性基板上に塗布されるフォトレジストからの脱ガスによる汚染が大きくなる。一方、条件式(1)の上限値を上回ると、色収差の補正が困難になるばかりでなく、光学素子の大型化を避けることができず、光学系の製造が困難になる。なお、本発明の効果をさらに良好に発揮するには、条件式(1)の下限値を0.53とし、その上限値を1.3とすることが好ましい。
また、上述の反射屈折型の投影光学系では、スリット状または円弧状の露光領域は、投影光学系の光軸を含まないように設定され、第1面の第1中間像を形成するための屈折型の第1結像光学系と、少なくとも1つの負レンズと凹面反射鏡とを有し、第1中間像からの光束に基づいて第1中間像とほぼ等倍の第2中間像を第1中間像の形成位置の近傍に形成するための第2結像光学系と、第2中間像からの光束に基づいて第2中間像の縮小像を第2面上に形成するための屈折型の第3結像光学系と、第1結像光学系から第2結像光学系に至る光路中に配置された第1光路折り曲げ鏡と、第2結像光学系から第3結像光学系に至る光路中に配置された第2光路折り曲げ鏡とを備えている。
そして、第1光路折り曲げ鏡の有効領域および第2光路折り曲げ鏡の有効領域は、全体に亘って平面状に形成された反射面を有し、第1光路折り曲げ鏡の有効領域と第2光路折り曲げ鏡の有効領域とは空間的な重なりを有することなく、第1面からの光束をすべて第2面へ導くように配置されていることが好ましい。この構成により、像側作動距離を十分確保しつつ、蛍石等の単一種類の光透過部材のみで色収差補正を良好に行うことができる。さらに、上述の反射屈折型の投影光学系では、第1結像光学系および第3結像光学系を構成するすべてのレンズが単一の直線状の光軸に沿って配置されていることが好ましい。この構成により、組み立て調整が比較的容易になり、精度良く光学系を製造することができる。
次に、さらに別の局面によれば、本発明の投影光学系は、複数のレンズと凹面反射鏡と該凹面反射鏡の近傍に配置された負レンズとを含み、第1面の縮小像を第2面上に形成する。そして、第1面および第2面を走査方向に沿って移動させて第1面の像を第2面上に走査露光する露光装置に用いられたときに、非走査時には投影光学系の光軸を含まないように設定されたスリット状または円弧状の露光領域を第2面上に形成し、第2面側の開口数は0.82以上である。
この場合、凹面反射鏡および負レンズは重力の方向と実質的に異なる方向の光軸に沿って配置され、次の条件式(2)を満足することが望ましい。条件式(2)において、Sは凹面反射鏡の有効径(直径)であり、Rは凹面反射鏡の曲率半径である。
1.0<S/|R|<1.8 (2)
条件式(2)を満足することにより、凹面反射鏡の重力による変形を小さく抑えて、製造の難易度を現実的なものとすることができる。すなわち、条件式(2)の下限値を下回ると、重力による凹面反射鏡の変形が大きく、組み立て調整や加工の難易度が高くなるので好ましくない。一方、条件式(2)の上限値を上回ると、大きな開口数を確保しつつ、色収差補正と像面湾曲補正とを両立することができなくなるので好ましくない。なお、本発明の効果をさらに良好に発揮するには、条件式(2)の下限値を1.1とし、その上限値を1.65とすることが好ましい。
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。
第5図は、本発明の実施形態にかかる投影光学系を備えた露光装置の構成を概略的に示す図である。なお、第5図において、ウエハの法線方向にZ軸を、Z軸に垂直な面内において第5図の紙面に平行にY軸を、Z軸に垂直な面内において第5図の紙面に垂直にX軸を設定している。本実施形態では、反射屈折型の投影光学系を備えた走査型の投影露光装置に本発明を適用している。
第5図を参照すると、本実施形態の露光装置は、第1面に配置されるレチクル(マスク)50を照明するための照明装置51を備えている。照明装置51は、たとえば157nmの波長光を供給するF2レーザーを有する光源、この光源からの光により所定形状(円形状、輪帯状、二極状、四極状など)の二次光源を形成するオプティカルインテグレータ、レチクル50上での照射範囲を規定するための照明視野絞りなどを有し、レチクル50上の照明領域をほぼ均一な照度分布のもとで照明する。
ここで、照明装置51内の照明光路は不活性ガスでパージされることが好ましく、本実施形態では窒素でパージしている。レチクル50はレチクルステージ53上に載置されており、レチクル50およびレチクルステージ53はケーシング52によって外部の雰囲気と隔離されている。このケーシング52の内部空間も不活性ガスでパージされることが好ましく、本実施形態では窒素でパージしている。
照明装置51により照明されたレチクル50からの光は、蛍石結晶で形成された複数のレンズ素子(1〜7,9,10,13〜18)、凹面反射鏡11、コヒーレンスファクタ(σ値)を制御するための開口絞り20などを有する投影光学系400を介して、感光性基板としてのウエハ60へ導かれ、ウエハ60上の露光領域内にレチクル50のパターン像を形成する。この投影光学系400内の投影光路は不活性ガスでパージされることが好ましく、本実施形態ではヘリウムでパージしている。
ウエハ60は、その表面が投影光学系400の像面としての第2面に位置決めされるようにウエハステージ61上に載置されており、ウエハ60およびウエハステージ61はケーシング62によって外部の雰囲気と隔離されている。このケーシング62の内部空間も不活性ガスでパージされることが好ましく、本実施形態では窒素でパージしている。そして、レチクルステージ53とウエハステージ61とを投影光学系400の倍率に応じた速度比で投影光学系400に対して走査方向であるY方向に沿って相対的に移動させつつ、レチクル50を照明することにより、ウエハ60上の露光領域内にレチクル50上のパターンが転写される。
第6図は、ウエハ上に形成される矩形状の露光領域(すなわち実効露光領域)と光軸との位置関係を示す図である。第6図に示すように、本実施形態では、光軸AX1を中心とした半径Bを有する円形状の領域(イメージサークル)IF内において、光軸AX1から−Y方向に軸外し量Aだけ離れた位置に所望の大きさを有する矩形状の実効露光領域ERが設定されている。ここで、実効露光領域ERのX方向の長さはLX(Ew)であり、そのY方向の長さはLYである。
換言すると、各実施形態では、ウエハ60において、光軸AX1から−Y方向に軸外し量Aだけ離れた位置に所望の大きさを有する矩形状の実効露光領域ERが設定され、光軸AX1を中心として実効露光領域ERを包括するように円形状のイメージサークルIFの半径Bが規定されている。したがって、図示を省略したが、これに対応して、レチクル50上では、基準光軸AXから−Y方向に軸外し量Aに対応する距離だけ離れた位置に実効露光領域ERに対応した大きさおよび形状を有する矩形状の照明領域(すなわち実効照明領域)が形成されていることになる。
再び第5図を参照すると、本実施形態の投影光学系400は、第1面に配置されたレチクル50のパターンの第1中間像を形成するための屈折型の第1結像光学系100と、凹面反射鏡11と2つの負レンズ9,10とから構成されて第1中間像とほぼ等倍の第2中間像(第1中間像のほぼ等倍像であってレチクルパターンの2次像)を形成するための第2結像光学系200と、第2中間像からの光に基づいて第2面に配置されたウエハ60上にレチクルパターンの最終像(レチクルパターンの縮小像)を形成するための屈折型の第3結像光学系300とを備えている。
なお、第1結像光学系100と第2結像光学系200との間の光路中において第1中間像の形成位置の近傍には、第1結像光学系100からの光を第2結像光学系200に向かって偏向するための第1光路折り曲げ鏡8が配置されている。また、第2結像光学系200と第3結像光学系300との間の光路中において第2中間像の形成位置の近傍には、第2結像光学系200からの光を第3結像光学系300に向かって偏向するための第2光路折り曲げ鏡12が配置されている。第1中間像および第2中間像は、第1光路折り曲げ鏡8と第2結像光学系200との間の光路中および第2結像光学系200と第2光路折り曲げ鏡12との間の光路中にそれぞれ形成される。
また、第1結像光学系100および第3結像光学系G3はともに、直線状に延びた単一の光軸すなわち基準光軸AX1を有する。基準光軸AX1は、重力方向(すなわち鉛直方向)に沿って位置決めされている。その結果、レチクル50およびウエハ60は、重力方向と直交する面すなわち水平面に沿って互いに平行に配置されている。加えて、第1結像光学系100を構成するすべてのレンズおよび第3結像光学系300を構成するすべてのレンズも、基準光軸AX1上において水平面に沿って配置されている。
一方、第2結像光学系200も直線状に延びた光軸AX2を有し、この光軸AX2は基準光軸AX1と直交するように設定されている。さらに、第1光路折り曲げ鏡8および第2光路折り曲げ鏡12はともに平面状の反射面を有し、2つの反射面を有する1つの光学部材(1つの光路折り曲げ鏡FM)として一体的に構成されている。この2つの反射面の交線(厳密にはその仮想延長面の交線)が第1結像光学系100および第3結像光学系300の光軸AX1および第2結像光学系200の光軸AX2と一点で交わるように設定されている。
本実施形態では、複数のレンズを含む屈折光学系である第1結像光学系100および第3結像光学系300で生じる色収差および正値のペッツバール和を、第2結像光学系200の凹面反射鏡11および負レンズ9,10により補償する。また、第2結像光学系200がほぼ等倍の結像倍率を有する構成により、第1中間像の近傍に第2中間像を形成することが可能となる。本実施形態では、この2つの中間像の近傍において光路分離を行うことにより、露光領域(すなわち実効露光領域)の光軸からの距離すなわち軸外し量を小さく設定することができる。これは、収差補正の点で有利となるだけでなく、光学系の小型化、光学調整、機械設計、製造コストなどの点でも有利となる。
上述したように、第2結像光学系200は、第1結像光学系100および第3結像光学系300で生じる色収差および正値のペッツバール和の補償を一手に負担する。このため、第2結像光学系200を構成する凹面反射鏡11および負レンズ9,10のパワーを共に大きく設定する必要がある。したがって、第2結像光学系200の対称性が崩れると、倍率色収差や色コマ収差のような非対称色収差の発生が大きくなり、十分な解像力を得ることができなくなってしまう。そこで、本実施形態では、第2結像光学系200の結像倍率をほぼ等倍に設定し且つその瞳位置の近傍に凹面反射鏡11を配置することのできる構成を採用することにより、良好な対称性を確保し、上述の非対称色収差の発生を防ぐことに成功している。
以下、複屈折の影響を実質的に回避する本発明の手法の本実施形態に対する適用について説明する。まず、ウエハ側(第2面側)の瞳位置に配置された開口絞り20とウエハ60との間の光路中に配置されたレンズ(16〜18)では、通過する光線の光軸に対する最大角度が大きい傾向にあり、複屈折の影響を受け易い。そこで、本実施形態では、これらのレンズ(16〜18)に対して、前述した本発明の第1手法〜第6手法を単独であるいは組み合わせて適用することにより、複屈折の影響を実質的に受けることなく良好な光学性能を確保することができる。なお、第5図では、図面の明瞭化のために開口絞り20とウエハ60との間に3つのレンズしか配置していないが、実際の設計ではさらに多くのレンズが配置される。
また、通過する光線の光軸に対する最大角度が20°を超えるようなレンズでは、その配置位置にかかわらず複屈折の影響を受け易い。そこで、本実施形態では、通過する光線の光軸に対する最大角度が20°を超えるようなレンズに対して、本発明の第1手法〜第6手法を単独であるいは組み合わせて適用することにより、複屈折の影響を実質的に受けることなく良好な光学性能を確保することができる。
さらに、像側開口数の大きい本実施形態の投影光学系では、凹面反射鏡11の近傍に配置された負レンズ9,10において、通過する光線の光軸に対する最大角度が収差補正の目的のために大きくなりがちである。そこで、本実施形態では、これらの負レンズ9,10に対して本発明の第1手法〜第5手法を適用することにより、複屈折の影響を実質的に受けることなく良好な光学性能を確保することができる。なお、凹面反射鏡11の近傍に配置された負レンズの数がさらに多い場合には、本発明の第1手法〜第6手法を単独であるいは組み合わせて適用することもできる。
なお、前述したように、本発明の第1手法、第3手法および第5手法を適用する場合、第1レンズ群、第3レンズ群および第5レンズ群と、第2レンズ群、第4レンズ群および第6レンズ群との間で、条件式(3)〜(5)を満足するように設定することが好ましい。また、本発明の第1手法、第3手法および第5手法を適用する場合、第1レンズ群(あるいは第3レンズ群、第5レンズ群)と第2レンズ群(あるいは第4レンズ群、第6レンズ群)とをオプティカルコンタクトまたは接着により1つの光学部品として形成することが好ましい。この構成により、反射防止膜を形成すべき光学面の数を最小限に抑えることができるので、特にF2レーザーを用いる光学系のように反射防止膜の材料が限られる場合には非常に有利である。
ところで、本発明の第1手法、第3手法および第5手法を適用する場合、第1レンズ群(あるいは第3レンズ群、第5レンズ群)と第2レンズ群(あるいは第4レンズ群、第6レンズ群)との間で角度指定が必要になる。そこで、本来的に角度指定が必要な非球面すなわちレンズ調整時の収差補正用非球面(回転非対称な非球面)を第1レンズ群(あるいは第3レンズ群、第5レンズ群)または第2レンズ群(あるいは第4レンズ群、第6レンズ群)に導入することが好ましい。この場合、複屈折により回転非対称なスカラ収差が発生しても、非球面の作用により補正することができる。なお、レンズ調整時の収差補正用の非球面について簡単に説明する。投影光学系を製造する際には、波面収差等の収差を計測しつつ、投影光学系を構成するレンズや反射鏡などの光学素子の位置・姿勢を調整して、投影光学系の光学性能を所望の値に追い込むことが行われる。ただし、このような光学素子の位置・姿勢の調整だけでは、ザイデルの5収差に代表される低次収差しか補正できない。そこで、計測された投影光学系の収差のうち、光学素子の位置・姿努の調整で補正できる成分を除いた残存収差を、投影光学系を構成する光学素子の表面形状を変更、すなわち非球面とすることによって補正することが行われる。このような残存収差補正用の非球面をレンズ調整時の収差補正用の非球面と呼び、典型的な非球面形状は光軸に関して回転非対称な形状となる。したがって、このレンズ調整時の収差補正用の非球面を備えた光学素子を投影光学系中へ組み込むためには、光軸を中心とした方位角を定める、すなわち角度指定を行う必要がある。
また、上述のBurnettらの手法、本発明の第1〜第6の手法を投影光学系の所定の光学部材に適用した際においても、偏光収差、すなわち投影光学系を通過する第1の偏光成分の光と当該第1の偏光成分とは異なる第2の偏光成分の光との間の位相差を完全には補正しきれない場合がある。
このとき、投影光学系を構成する光学部材のうちの1以上の光学部材の表面に、偏光収差を低減させる膜、すなわち第1および第2の偏光成分の光の間の位相差を低減させる特性を有する膜を設けることにより、さらに偏光収差を補正することが可能である。
また、本実施形態では、蛍石結晶で形成されたレンズの表面に同じく蛍石結晶で形成された結晶膜を形成し、蛍石レンズの結晶方位と結晶膜の結晶方位とが実質的に異なるように設定する手法も有効である。この場合、蛍石レンズの光軸に沿った結晶方位と結晶膜の光軸に沿った結晶方位とが実質的に異なるように設定する。あるいは、蛍石レンズの光軸に沿った結晶方位と結晶膜の光軸に沿った結晶方位とがほぼ一致し、蛍石レンズと結晶膜とが光軸を中心として所定の角度だけ相対的に回転した位置関係を有するように設定する。この構成により、複屈折の影響を実質的に受けることなく良好な光学性能を確保することができる。
以下、具体的な数値に基づく実施例を説明する。各実施例において、投影光学系を構成するすべての屈折光学部材(レンズ成分)には蛍石(CaF2結晶)を使用している。また、露光光であるF2レーザ光の発振中心波長は157.6244nmであり、157.6244nm付近においてCaF2の屈折率は、+1pmの波長変化あたり−2.6×10−6の割合で変化し、−1pmの波長変化あたり+2.6×10−6の割合で変化する。換言すると、157.6244nm付近において、CaF2の屈折率の分散(dn/dλ)は、2.6×10−6/pmである。
したがって、各実施例において、中心波長157.6244nmに対するCaF2の屈折率は1.5593067であり、157.6244nm+1pm=157.6254nmに対するCaF2の屈折率は1.5593041であり、157.6244nm−1pm=157.6234nmに対するCaF2の屈折率は1.5593093である。
また、各実施例において、非球面は、光軸に垂直な方向の高さをyとし、非球面の頂点における接平面から高さyにおける非球面上の位置までの光軸に沿った距離(サグ量)をzとし、頂点曲率半径をrとし、円錐係数をκとし、n次の非球面係数をCnとしたとき、以下の数式(a)で表される。
z=(y2/r)/[1+{1−(1+κ)・y2/r2}1/2]
+C4・y4+C6・y6+C8・y8+C10・y10
+C12・y12+C14・y14 (a)
各実施例において、非球面形状に形成されたレンズ面には面番号の右側に*印を付している。
[第1実施例]
第7図は、第1実施例にかかる投影光学系のレンズ構成を示す図である。なお、第1実施例では、波長幅が157.6244nm±1pmの露光光に対して色収差を含む諸収差が補正された投影光学系に本発明を適用している。
第7図の投影光学系において、第1結像光学系G1(第5図の100に対応)は、レチクルR(第5図の50に対応)側から順に、両凸レンズL11と、レチクル側に非球面状の凹面を向けた負メニスカスレンズL12と、レチクル側に凹面を向けた正メニスカスレンズL13と、ウエハW(第5図の60に対応)側に非球面状の凹面を向けた正メニスカスレンズL14と、レチクル側に凹面を向けた負メニスカスレンズL15と、レチクル側に凹面を向けた正メニスカスレンズL16と、レチクル側に凹面を向けた正メニスカスレンズL17と、両凸レンズL18と、ウエハ側に非球面状の凹面を向けた正メニスカスレンズL19とから構成されている。
また、第2結像光学系G2(第5図の200に対応)は、光の進行往路に沿ってレチクル側(すなわち入射側)から順に、レチクル側に非球面状の凹面を向けた負メニスカスレンズL21と、レチクル側に凹面を向けた負メニスカスレンズL22と、レチクル側に凹面を向けた凹面反射鏡CM(第5図の11に対応)とから構成されている。
さらに、第3結像光学系G3(第5図の300に対応)は、光の進行方向に沿ってレチクル側から順に、レチクル側に凹面を向けた正メニスカスレンズL31と、両凸レンズL32と、レチクル側に凸面を向けた正メニスカスレンズL33と、レチクル側に非球面状の凹面を向けた両凹レンズL34と、レチクル側に非球面状の凹面を向けた正メニスカスレンズL35と、ウエハ側に非球面状の凹面を向けた正メニスカスレンズL36と、開口絞りASと、両凸レンズL37と、レチクル側に凹面を向けた負メニスカスレンズL38と、レチクル側に平面を向けた平凸レンズL39と、両凸レンズL310と、ウエハ側に非球面状の凹面を向けた正メニスカスレンズL311と、レチクル側に凸面を向けた正メニスカスレンズL312と、ウエハ側に平面を向けた平凸レンズL313とから構成されている。
次の第1表に、第1実施例にかかる投影光学系の諸元の値を掲げる。第1表において、λは露光光の中心波長を、βは投影倍率(全系の結像倍率)を、NAは像側(ウエハ側)開口数を、BはウエハW上でのイメージサークルIFの半径を、Aは実効露光領域ERの軸外し量を、LX(Ew)は実効露光領域ERのX方向に沿った寸法(長辺の寸法)を、LYは実効露光領域ERのY方向に沿った寸法(短辺の寸法)をそれぞれ表している。
また、面番号は物体面(第1面)であるレチクル面から像面(第2面)であるウエハ面への光線の進行する方向に沿ったレチクル側からの面の順序を、rは各面の曲率半径(非球面の場合には頂点曲率半径:mm)を、dは各面の軸上間隔すなわち面間隔(mm)を、nは中心波長に対する屈折率をそれぞれ示している。なお、面間隔dは、反射される度にその符号を変えるものとする。したがって、面間隔dの符号は、第1光路折り曲げ鏡8の反射面から凹面反射鏡CMまでの光路中および第2光路折り曲げ鏡12の反射面から像面までの光路中では負とし、その他の光路中では正としている。
そして、第1結像光学系G1では、レチクル側に向かって凸面の曲率半径を正とし、凹面の曲率半径を負としている。一方、第3結像光学系G3では、レチクル側に向かって凹面の曲率半径を正とし、凸面の曲率半径を負としている。さらに、第2結像光学系G2では、光の進行往路に沿ってレチクル側(すなわち入射側)に向かって凹面の曲率半径を正とし、凸面の曲率半径を負としている。上述の第1表の表記は、以降の第2表においても同様である。
第8図は、第1実施例における横収差を示す図である。収差図において、Yは像高を、実線は中心波長157.6244nmを、破線は157.6244nm+1pm=157.6254nmを、一点鎖線は157.6244nm−1pm=157.6234nmをそれぞれ示している。収差図から明らかなように、第1実施例では、波長幅が157.624nm±1pmの露光光に対して色収差が良好に補正されていることがわかる。
[第2実施例]
第9図は、第2実施例にかかる投影光学系のレンズ構成を示す図である。なお、第2実施例においても第1実施例と同様に、波長幅が157.6244nm±1pmの露光光に対して色収差を含む諸収差が補正された投影光学系に本発明を適用している。
第9図の投影光学系において、第1結像光学系G1は、レチクル側から順に、両凸レンズL11と、レチクル側に非球面状の凹面を向けた負メニスカスレンズL12と、レチクル側に凹面を向けた正メニスカスレンズL13と、ウエハ側に非球面状の凹面を向けた正メニスカスレンズL14と、両凹レンズL15と、レチクル側に凹面を向けた正メニスカスレンズL16と、レチクル側に凹面を向けた正メニスカスレンズL17と、両凸レンズL18と、ウエハ側に非球面状の凹面を向けた正メニスカスレンズL19とから構成されている。
また、第2結像光学系G2は、光の進行往路に沿ってレチクル側(すなわち入射側)から順に、レチクル側に凹面を向けた負メニスカスレンズL21と、レチクル側に非球面状の凹面を向けた負メニスカスレンズL22と、レチクル側に凹面を向けた凹面反射鏡CMとから構成されている。
さらに、第3結像光学系G3は、光の進行方向に沿ってレチクル側から順に、レチクル側に凹面を向けた正メニスカスレンズL31と、両凸レンズL32と、レチクル側に凸面を向けた正メニスカスレンズL33と、レチクル側に非球面状の凹面を向けた両凹レンズL34と、レチクル側に非球面状の凹面を向けた正メニスカスレンズL35と、ウエハ側に非球面状の凹面を向けた正メニスカスレンズL36と、開口絞りASと、両凸レンズL37と、レチクル側に凹面を向けた負メニスカスレンズL38と、レチクル側に平面を向けた平凸レンズL39と、両凸レンズL310と、ウエハ側に非球面状の凹面を向けた正メニスカスレンズL311と、レチクル側に凸面を向けた正メニスカスレンズL312と、ウエハ側に平面を向けた平凸レンズL313とから構成されている。
次の第2表に、第2実施例にかかる投影光学系の諸元の値を掲げる。
第10図は、第2実施例における横収差を示す図である。収差図において、Yは像高を、実線は中心波長157.6244nmを、破線は157.6244nm+1pm=157.6254nmを、一点鎖線は157.6244nm−1pm=157.6234nmをそれぞれ示している。収差図から明らかなように、第2実施例においても第1実施例と同様に、波長幅が157.624nm±1pmの露光光に対して色収差が良好に補正されていることがわかる。
以上のように、各実施例では、条件式(1)を満足しているので、ウエハWに塗布されたフォトレジストからの脱ガスによるレンズの汚染を良好に回避することができる。また、各実施例では、凹面反射鏡CMおよび負レンズ(L21,L22)が重力方向と直交する方向の光軸AX2に沿って配置されているが、条件式(2)を満足しているので、凹面反射鏡CMの重力による変形を小さく抑えて、組み立て調整や加工が容易になっている。
[第3実施例]
第3実施例にかかる投影光学系では、投影光学系を構成する等方晶系の光学材料(たとえば蛍石)が有する固有複屈折によって生じる偏光収差(すなわち所定方向に振動方向を有する第1の偏光成分の光と、当該第1の偏光方向とは異なる方向に振動方向を有する第2の偏光成分の光との位相差)を、光学材料の表面上に設けられる薄膜によって補正している。
第3実施例では、当該薄膜へ入射する光の入射状態を実際の場合と同じにするために、第11図に示される投影光学系を考える。
第11図は、第3実施例にかかる投影光学系のレンズ構成を示す図である。
第11図の投影光学系は、上述の第1および第2実施例とは異なり、直線状の光軸に沿って複数の屈折光学部材が配置された屈折型投影光学系に本発明を適用している。
第11図の投影光学系は、レチクルR側から順に、ウエハW側に凹面を向けたメニスカス負レンズL1と、レチクルR側に凹面を向けたメニスカス負レンズL2と、レチクルR側に凹面を向けた2枚のメニスカス正レンズL3、L4と、レチクルR側に凸面を向けた3枚のメニスカス正レンズL5〜L7と、ウエハW側に凹面を向けたメニスカス負レンズL8と、3枚の両凹レンズL9〜L11と、両凸レンズL12と、レチクルR側に凹面を向けたメニスカス正レンズL13と、両凸レンズL14と、開口絞りASと、両凸レンズL15と、レチクルR側に凹面を向けたメニスカス負レンズL16と、レチクルR側に凹面を向けたメニスカス正レンズL17と、ウエハW側に凹面を向けた3枚のメニスカス正レンズL18〜L20と、レチクルR側に凹面を向けた平凹レンズL21と、平行平面板L22とから構成されている。
第12図は、第3実施例にかかる投影光学系によってウエハW上に形成される矩形状の露光領域(すなわち実効露光領域)と光軸との位置関係を示す図である。第12図に示すように、第3実施例では、光軸AX1を中心とした半径Bを有する円形状の領域(イメージサークル)IF内において、光軸AX1を含む位置に所望の大きさを有する矩形状の実効露光領域ERが設定されている。ここで、実効露光領域ERのX方向の長さはLXであり、そのY方向の長さはLYである。なお、第3実施例の投影光学系における実効露光領域ERの軸外し量Aは0である。
次の第3表に、第3実施例にかかる投影光学系の諸元の値を掲げる。第3表において、λは露光光の波長を、βは投影倍率を、NAは像側(ウエハ側)開口数を、BはウエハW上でのイメージサークルIFの半径を、LXは実効露光領域ERのX方向に沿った寸法(長辺の寸法)を、LYは実効露光領域ERのY方向に沿った寸法(短辺の寸法)をそれぞれ表している。
また、面番号は物体面(第1面)であるレチクル面から像面(第2面)であるウエハ面への光線の進行する方向に沿ったレチクル側からの面の順序を、rは各面の曲率半径(非球面の場合には頂点曲率半径:mm)を、dは各面の軸上間隔すなわち面間隔(mm)を、材料は光透過性部材の材料名を、コートは、光透過性部材の表面に設けられる光学薄膜の種類を示す。なお、各面の曲率半径の欄においては、レチクル側に向かって凸面の曲率半径を正とし、凹面の曲率半径を負としている。また、コートの欄におけるIDは理想的な光学薄膜(すなわち、透過率100%であって、それを透過する光に対して位相差を与えない薄膜)を表し、REは後述する位相差低減機能を有する薄膜を表している。
第3実施例において、露光光の波長λに対する蛍石の屈折率nはn=1.55930666で与えられる。
さて、第3実施例においては、光透過部材に対する入射角度範囲が大きい最もウエハW側の2枚の光透過部材(レンズL21、L22)に関して、薄膜による偏光収差の補正効果について検討した。第3実施例では、複数の光学部材L1〜L22のうち、最もウエハW側にある2枚の光学部材L21、L22のみが固有複屈折を持つと仮定した。これらの光学部材L21、L22を形成している蛍石の固有複屈折は、結晶軸[110]の方向における露光光の波長での複屈折の値と結晶軸[100]の方向における露光光の波長での複屈折の値との差が−3.3nm/cmとしている。そして、これらの光学部材L21、L22は共にその結晶軸[111]が光軸AX1と一致するように形成され、光学部材L21、L22の結晶軸[111]とは異なる結晶軸同士が光軸AX1を中心として相対的に60度だけ回転した位置関係を有する。すなわち、光学部材L21、L22に対して本発明の第5の手法を適用している。
次に、これらの光学部材L21、L22の表面(レンズ面)に理想的な光学薄膜IDを設けた場合と、位相差低減機能を有する薄膜REを設けた場合とについて比較する。
ここで、理想的な光学薄膜とは、当該薄膜ID自体の透過率が100%であって、当該薄膜を透過する複数の偏光成分の光の間に位相差を全く与えない作用を有する仮想的な薄膜である。そして、位相差低減機能を有する薄膜REは、次の第4表で示される構成を有する。
なお、以下の第4表において、λは露光光の中心波長を表している。そして、層番号は、薄膜が設けられる基材側からの層の順序を表し、Dは各層の厚み(nm)を、nは各層の中心波長に対する屈折率をそれぞれ示している。
第13図に第4表の薄膜REの透過率の入射角特性を示し、第14図に第4表の薄膜REの位相差の入射角特性を示す。
なお、第13図において、縦軸に透過率をとり、横軸に薄膜REに対する入射角(垂直入射のとき0)をとる。そして、第13図の破線はP偏光成分(振動方向が入射面内である偏光成分、言い換えると、光軸と平行な軸を中心とした円の径方向に沿って偏光面を有する偏光成分)に対する薄膜REの透過率の入射角依存性を示し、実線はS偏光成分(振動方向が入射面と直交する面内である偏光成分、言い換えると、光軸と平行な軸を中心とした円の周方向に沿って偏光面を有する偏光成分)に対する薄膜REの透過率の入射角依存性を示す。
また、第14図においては、縦軸に薄膜REを透過した後のP偏光成分とS偏光成分との位相差(°)をとり、横軸に入射角(垂直入射のとき0)をとっている。
第13図から明らかな通り、薄膜REは、開口数NA=0.85に相当する入射角範囲(すなわちsin−1(0.85)までの入射角範囲)において98%以上の透過率を確保しており、実用上において十分に使用に耐えられる水準を示している。そして、第14図から明らかな通り、薄膜REは開口数NA=0.85に相当する入射角においてP偏光成分とS偏光成分との位相差が8度近くあり、ここにおいてP偏光成分の位相がS偏光成分に対してより進んでいる。すなわち、この薄膜REを透過する光は、入射角が大きくなるにつれてP偏光成分の光の位相がS偏光成分の光の位相に対してより進むようになる。
第3実施例のように、光透過部材(光学部材)L21、L22がともに、結晶軸[111]と一致した光軸AX1を有し、かつほぼ同じ厚みであって、それらの結晶軸[111]とは異なる結晶軸同士が光軸AX1を中心として相対的に60度だけ回転した位置関係を有する場合、これらの光学部材の対L21、L22は、入射角が大きくなるにつれてS偏光成分の光の位相がP偏光成分の光の位相に対してより進むような進相軸を有する。
ここで、上記薄膜REは、光学部材の対L21、L22と直交する進相軸を有しているので、この薄膜REによって、総合的な位相差を低減することが可能である。
第15図は、第3表に示す諸元を有する投影光学系において、最もウエハW側の光学部材の対L21、L22に薄膜REを設けた場合の波面収差と、薄膜REに代えて理想的な光学薄膜IDを設けた場合の波面収差をとの比較を示すグラフである。なお、第15図において、Xは第12図のX方向に振動方向(偏光面)を持つ偏光成分の波面収差(mλRMS)を示し、Yは第12図のY方向に振動方向(偏光面)を持つ偏光成分の波面収差(mλRMS)を示している。
この第15図を参照すると、薄膜REによる位相差補正能力が十分に高いことが明らかであり、ひいては投影光学系の光学性能(結像性能)を極めて向上することが可能であることも明らかである。
なお、上述の実施形態では、複屈折性の光学材料として蛍石を用いているが、これに限定されることなく、他の一軸性結晶、たとえばフッ化バリウム(BaF2)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化ストロンチウム(SrF2)などを用いることもできる。この場合、フッ化バリウム(BaF2)などの結晶軸方位も本発明に従って決定されることが好ましい。
上述の実施形態の露光装置では、照明装置によってレチクル(マスク)を照明し(照明工程)、投影光学系を用いてマスクに形成された転写用のパターンを感光性基板に露光する(露光工程)ことにより、マイクロデバイス(半導体素子、撮像素子、液晶表示素子、薄膜磁気ヘッド等)を製造することができる。以下、本実施形態の露光装置を用いて感光性基板としてのウエハ等に所定の回路パターンを形成することによって、マイクロデバイスとしての半導体デバイスを得る際の手法の一例につき第16図のフローチャートを参照して説明する。
先ず、第16図のステップ301において、1ロットのウエハ上に金属膜が蒸着される。次のステップ302において、その1ロットのウエハ上の金属膜上にフォトレジストが塗布される。その後、ステップ303において、本実施形態の露光装置を用いて、マスク上のパターンの像がその投影光学系を介して、その1ロットのウエハ上の各ショット領域に順次露光転写される。その後、ステップ304において、その1ロットのウエハ上のフォトレジストの現像が行われた後、ステップ305において、その1ロットのウエハ上でレジストパターンをマスクとしてエッチングを行うことによって、マスク上のパターンに対応する回路パターンが、各ウエハ上の各ショット領域に形成される。
その後、更に上のレイヤの回路パターンの形成等を行うことによって、半導体素子等のデバイスが製造される。上述の半導体デバイス製造方法によれば、極めて微細な回路パターンを有する半導体デバイスをスループット良く得ることができる。なお、ステップ301〜ステップ305では、ウエハ上に金属を蒸着し、その金属膜上にレジストを塗布、そして露光、現像、エッチングの各工程を行っているが、これらの工程に先立って、ウエハ上にシリコンの酸化膜を形成後、そのシリコンの酸化膜上にレジストを塗布、そして露光、現像、エッチング等の各工程を行っても良いことはいうまでもない。
また、本実施形態の露光装置では、プレート(ガラス基板)上に所定のパターン(回路パターン、電極パターン等)を形成することによって、マイクロデバイスとしての液晶表示素子を得ることもできる。以下、第17図のフローチャートを参照して、このときの手法の一例につき説明する。第17図において、パターン形成工程401では、本実施形態の露光装置を用いてマスクのパターンを感光性基板(レジストが塗布されたガラス基板等)に転写露光する、所謂光リソグラフィ工程が実行される。この光リソグラフィー工程によって、感光性基板上には多数の電極等を含む所定パターンが形成される。その後、露光された基板は、現像工程、エッチング工程、レチクル剥離工程等の各工程を経ることによって、基板上に所定のパターンが形成され、次のカラーフィルター形成工程402へ移行する。
次に、カラーフィルター形成工程402では、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応した3つのドットの組がマトリックス状に多数配列されたり、またはR、G、Bの3本のストライプのフィルターの組を複数水平走査線方向に配列されたりしたカラーフィルターを形成する。そして、カラーフィルター形成工程402の後に、セル組み立て工程403が実行される。セル組み立て工程403では、パターン形成工程401にて得られた所定パターンを有する基板、およびカラーフィルター形成工程402にて得られたカラーフィルター等を用いて液晶パネル(液晶セル)を組み立てる。セル組み立て工程403では、例えば、パターン形成工程401にて得られた所定パターンを有する基板とカラーフィルター形成工程402にて得られたカラーフィルターとの間に液晶を注入して、液晶パネル(液晶セル)を製造する。
その後、モジュール組み立て工程404にて、組み立てられた液晶パネル(液晶セル)の表示動作を行わせる電気回路、バックライト等の各部品を取り付けて液晶表示素子として完成させる。上述の液晶表示素子の製造方法によれば、極めて微細な回路パターンを有する液晶表示素子をスループット良く得ることができる。
なお、上述の実施形態では、露光装置に搭載される投影光学系に対して本発明を適用しているが、これに限定されることなく、他の一般的な投影光学系に対して本発明を適用することもできる。また、上述の各実施形態では、157nmの波長光を供給するF2レーザー光源を用いているが、これに限定されることなく、たとえば193nmの波長光を供給するArFエキシマレーザー光源や、126nmの波長光を供給するAr2レーザー光源、146nmの波長光を供給するKr2レーザー光源などを用いることもできる。
産業上の利用の可能性
以上説明したように、本発明にかかる各実施形態では、たとえば蛍石のような固有複屈折を持つ光学材料を用いているにもかかわらず、複屈折の影響を実質的に受けることなく良好な光学性能を有する投影光学系を実現することができる。また、フォトレジストからの脱ガスによるレンズの汚染を良好に回避することのできる投影光学系を実現することができる。したがって、本発明の投影光学系を露光装置に組み込むことにより、高解像な投影光学系を介した高精度な投影露光により、良好なマイクロデバイスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、蛍石の結晶軸方位について説明する図である。
第2A図〜第2C図は、Burnettらの手法を説明する図であって、光線の入射角に対する複屈折率の分布を示している。
第3A図〜第3C図は、本発明の第1の手法を説明する図であって、光線の入射角に対する複屈折率の分布を示している。
第4A図〜第4C図は、本発明の第3の手法を説明する図であって、光線の入射角に対する複屈折率の分布を示している。
第5図は、本発明の実施形態にかかる光学系を備えた露光装置の構成を概略的に示す図である。
第6図は、ウエハ上に形成される矩形状の露光領域(すなわち実効露光領域)と基準光軸との位置関係を示す図である。
第7図は、第1実施例にかかる投影光学系PLのレンズ構成を示す図である。
第8図は、第1実施例における横収差を示す図である。
第9図は、第2実施例にかかる投影光学系PLのレンズ構成を示す図である。
第10図は、第2実施例における横収差を示す図である。
第11図は、第3実施例にかかる投影光学系PLのレンズ構成を示す図である。
第12図は、第3実施例にかかる投影光学系PLによるウエハ上に形成される矩形状の露光領域(すなわち実効露光領域)を示す図である。
第13図は、第3実施例にかかる薄膜REの透過率の入射角度依存性を示す図である。
第14図は、第3実施例にかかる薄膜REの位相差(偏光収差)の入射角度依存性を示す図である。
第15図は、第3実施例にかかる投影光学系の波面収差を示す図である。
第16図は、マイクロデバイスとしての半導体デバイスを得る際の手法のフローチャートである。
第17図は、マイクロデバイスとしての液晶表示素子を得る際の手法のフローチャートである。
Claims (44)
- 複数のレンズと少なくとも1つの凹面反射鏡とを含み、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
前記第1面および前記第2面を走査方向に沿って移動させて前記第1面の像を前記第2面上に走査露光する露光装置に用いられたときに、非走査時にはスリット状または円弧状の露光領域を前記第2面上に形成し、
前記第2面側の作動距離をDwとし、前記第2面側の開口数をNwとし、前記スリット状または円弧状の露光領域における前記走査方向と直交する方向に沿った長さをEwとするとき、
0.5<(Dw・Nw)/Ew<1.4 (1)
の条件を満足することを特徴とする投影光学系。 - 請求の範囲第1項に記載の投影光学系において、
前記スリット状または円弧状の露光領域は、前記投影光学系の光軸を含まないように設定され、
前記第1面の第1中間像を形成するための屈折型の第1結像光学系と、
少なくとも1つの負レンズと凹面反射鏡とを有し、前記第1中間像からの光束に基づいて前記第1中間像とほぼ等倍の第2中間像を前記第1中間像の形成位置の近傍に形成するための第2結像光学系と、
前記第2中間像からの光束に基づいて前記第2中間像の縮小像を前記第2面上に形成するための屈折型の第3結像光学系と、
前記第1結像光学系から前記第2結像光学系に至る光路中に配置された第1光路折り曲げ鏡と、
前記第2結像光学系から前記第3結像光学系に至る光路中に配置された第2光路折り曲げ鏡とを備えていることを特徴とする投影光学系。 - 請求の範囲第2項に記載の投影光学系において、
前記第1結像光学系および前記第3結像光学系を構成するすべてのレンズが単一の直線状の光軸に沿って配置されていることを特徴とする投影光学系。 - 複数のレンズと凹面反射鏡と該凹面反射鏡の近傍に配置された負レンズとを含み、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
前記第1面および前記第2面を走査方向に沿って移動させて前記第1面の像を前記第2面上に走査露光する露光装置に用いられたときに、非走査時には前記投影光学系の光軸を含まないように設定されたスリット状または円弧状の露光領域を前記第2面上に形成し、
前記第2面側の開口数は0.82以上であることを特徴とする投影光学系。 - 請求の範囲第4項に記載の投影光学系において、
前記凹面反射鏡および前記負レンズは、重力の方向と実質的に異なる方向の光軸に沿って配置され、
前記凹面反射鏡の有効径(直径)をSとし、前記凹面反射鏡の曲率半径をRとするとき、
1.0<S/|R|<1.8 (2)
の条件を満足することを特徴とする記載の投影光学系。 - 第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
前記第2面側の瞳位置と前記第2面との間の光路中に配置され、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[100]または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された少なくとも1つの光透過部材を備えていることを特徴とする投影光学系。 - 第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
通過する光線の光軸に対する角度の最大値が20度を超える光透過部材のうちの少なくとも1つの光透過部材は、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[100]または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成されていることを特徴とする投影光学系。 - 第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[100]または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第1群の光透過部材と、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[100]または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第2群の光透過部材とを備え、
前記第1群の光透過部材と前記第2群の光透過部材とは、光軸を中心としてほぼ45°だけ相対的に回転した位置関係を有し、
前記第1群の光透過部材および前記第2群の光透過部材の双方が、前記第2面側の瞳位置と前記第2面との間の光路中に配置されていることを特徴とする投影光学系。 - 第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[100]または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第1群の光透過部材と、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[100]または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第2群の光透過部材とを備え、
前記第1群の光透過部材と前記第2群の光透過部材とは、光軸を中心としてほぼ45°だけ相対的に回転した位置関係を有し、
前記第1群の光透過部材および前記第2群の光透過部材の双方において、通過する光線の光軸に対する角度の最大値が20度を超えていることを特徴とする投影光学系。 - 請求の範囲第8項または第9項に記載の投影光学系において、
前記第1群の光透過部材および前記第2群の光透過部材のうちの少なくとも一方は、少なくとも1つの非球面を有することを特徴とする投影光学系。 - 請求の範囲第8項または第9項に記載の投影光学系において、
前記第1群の光透過部材の光軸に沿った厚さ(中心厚)の総計をT1とし、前記第2群の光透過部材の光軸に沿った厚さの総計をT2とし、前記投影光学系を構成するすべての光透過部材の光軸に沿った厚さの総計をTAとするとき、
|T1−T2|/TA<0.025 (3)
の条件を満足することを特徴とする投影光学系。 - 請求の範囲第8項または第9項に記載の投影光学系において、
前記第1群の光透過部材と前記第2群の光透過部材とは、オプティカルコンタクトまたは接着により1つの光学部品として形成されていることを特徴とする投影光学系。 - 複数のレンズと凹面反射鏡と該凹面反射鏡の近傍に配置された負レンズとを含み、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
前記負レンズは、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[100]または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成されていることを特徴とする投影光学系。 - 複数のレンズと凹面反射鏡と該凹面反射鏡の近傍に配置された第1負レンズおよび第2負レンズとを含み、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
前記第1負レンズは、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[100]または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成され、
前記第2負レンズは、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[100]または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成され、
前記第1負レンズと前記第2負レンズとは、光軸を中心としてほぼ45°だけ相対的に回転した位置関係を有することを特徴とする投影光学系。 - 第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
前記第2面側の瞳位置と前記第2面との間の光路中に配置され、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[110]または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された少なくとも1つの光透過部材を備えていることを特徴とする投影光学系。 - 第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
通過する光線の光軸に対する角度の最大値が20度を超える光透過部材のうちの少なくとも1つの光透過部材は、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[110]または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成されていることを特徴とする投影光学系。 - 第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[110]または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第3群の光透過部材と、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[110]または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第4群の光透過部材とを備え、
前記第3群の光透過部材と前記第4群の光透過部材とは、光軸を中心としてほぼ90°だけ相対的に回転した位置関係を有し、
前記第3群の光透過部材および前記第4群の光透過部材の双方が、前記第2面側の瞳位置と前記第2面との間の光路中に配置されていることを特徴とする投影光学系。 - 第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[110]または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第3群の光透過部材と、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[110]または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第4群の光透過部材とを備え、
前記第3群の光透過部材と前記第4群の光透過部材とは、光軸を中心としてほぼ90°だけ相対的に回転した位置関係を有し、
前記第3群の光透過部材および前記第4群の光透過部材の双方において、通過する光線の光軸に対する角度の最大値が20度を超えていることを特徴とする投影光学系。 - 請求の範囲第17項または第18項に記載の投影光学系において、
前記第3群の光透過部材および前記第4群の光透過部材のうちの少なくとも一方は、少なくとも1つの非球面を有することを特徴とする投影光学系。 - 請求の範囲第17項または第18項に記載の投影光学系において、
前記第3群の光透過部材の光軸に沿った厚さ(中心厚)の総計をT3とし、前記第4群の光透過部材の光軸に沿った厚さの総計をT4とし、前記投影光学系を構成するすべての光透過部材の光軸に沿った厚さの総計をTAとするとき、
|T3−T4|/TA<0.025 (4)
の条件を満足することを特徴とする投影光学系。 - 請求の範囲第17項または第18項に記載の投影光学系において、
前記第3群の光透過部材と前記第4群の光透過部材とは、オプティカルコンタクトまたは接着により1つの光学部品として形成されていることを特徴とする投影光学系。 - 複数のレンズと凹面反射鏡と該凹面反射鏡の近傍に配置された負レンズとを含み、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
前記負レンズは、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[110]または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成されていることを特徴とする投影光学系。 - 複数のレンズと凹面反射鏡と該凹面反射鏡の近傍に配置された第1負レンズおよび第2負レンズとを含み、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
前記第1負レンズは、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[110]または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成され、
前記第2負レンズは、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[110]または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成され、
前記第1負レンズと前記第2負レンズとは、光軸を中心としてほぼ90°だけ相対的に回転した位置関係を有することを特徴とする投影光学系。 - 第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[111]または該結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第5群の光透過部材と、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[111]または該結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第6群の光透過部材とを備え、
前記第5群の光透過部材と前記第6群の光透過部材とは、光軸を中心としてほぼ60°だけ相対的に回転した位置関係を有し、
前記第3群の光透過部材および前記第4群の光透過部材の双方が、前記第2面側の瞳位置と前記第2面との間の光路中に配置されていることを特徴とする投影光学系。 - 第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[111]または該結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第5群の光透過部材と、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[111]または該結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第6群の光透過部材とを備え、
前記第5群の光透過部材と前記第6群の光透過部材とは、光軸を中心としてほぼ60°だけ相対的に回転した位置関係を有し、
前記第5群の光透過部材および前記第6群の光透過部材の双方において、通過する光線の光軸に対する角度の最大値が20度を超えていることを特徴とする投影光学系。 - 請求の範囲第24項または第25項に記載の投影光学系において、
前記第5群の光透過部材および前記第6群の光透過部材のうちの少なくとも一方は、少なくとも1つの非球面を有することを特徴とする投影光学系。 - 請求の範囲第24項または第25項に記載の投影光学系において、
前記第5群の光透過部材の光軸に沿った厚さ(中心厚)の総計をT5とし、前記第6群の光透過部材の光軸に沿った厚さの総計をT6とし、前記投影光学系を構成するすべての光透過部材の光軸に沿った厚さの総計をTAとするとき、
|T5−T6|/TA<0.025 (5)
の条件を満足することを特徴とする投影光学系。 - 請求の範囲第24項または第25項に記載の投影光学系において、
前記第5群の光透過部材と前記第6群の光透過部材とは、オプティカルコンタクトまたは接着により1つの光学部品として形成されていることを特徴とする投影光学系。 - 複数のレンズと凹面反射鏡と該凹面反射鏡の近傍に配置された第1負レンズおよび第2負レンズとを含み、第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
前記第1負レンズは、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[111]または該結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成され、
前記第2負レンズは、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[111]または該結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成され、
前記第1負レンズと前記第2負レンズとは、光軸を中心としてほぼ60°だけ相対的に回転した位置関係を有することを特徴とする投影光学系。 - 第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有する結晶で形成された少なくとも1つの光透過部材を備え、
前記光透過部材の表面には、第1の偏光成分の光と該第1の偏光成分の光とは異なる第2の偏光成分の光とが前記投影光学系を通過する際に、前記第1および第2の偏光成分の光の間で発生する位相差を低減させる膜が形成されることを特徴とする投影光学系。 - 請求の範囲第30項に記載の投影光学系において、
前記膜は、前記第1および第2の偏光成分の光が前記光透過部材を通過する際に発生する、前記第1および第2の偏光成分の光の間の位相差を低減することを特徴とする投影光学系。 - 請求の範囲第30項または第31項に記載の投影光学系において、
前記投影光学系は、波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有する結晶で形成された少なくとも2つの光透過部材を備え、
前記少なくとも2つの光透過性部材は、前記投影光学系を通過する第1および第2の偏光成分の光の間の位相差を低減させるように、それらの結晶軸方位が定められ、
前記膜は、前記少なくとも2つの光透過性部材により低減された前記投影光学系を通過する第1および第2の偏光成分の光の間の位相差をさらに低減させることを特徴とする投影光学系。 - 請求の範囲第30項または第31項に記載の投影光学系において、
前記膜は、反射防止膜を有することを特徴とする投影光学系。 - 請求の範囲第30項または第31項に記載の投影光学系において、
前記光透過部材の表面には、前記結晶で形成された結晶膜が形成され、
前記光透過部材の結晶方位と前記結晶膜の結晶方位とが実質的に異なることを特徴とする投影光学系。 - 第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有する結晶で形成された光透過部材を備え、
前記光透過部材の表面には、前記結晶で形成された結晶膜が形成され、
前記光透過部材の結晶方位と前記結晶膜の結晶方位とが実質的に異なることを特徴とする投影光学系。 - 請求の範囲第34項または第35項に記載の投影光学系において、
前記光透過部材の光軸に沿った結晶方位と前記結晶膜の前記光軸に沿った結晶方位とが実質的に異なることを特徴とする投影光学系。 - 請求の範囲第34項または第35項に記載の投影光学系において、
前記光透過部材の光軸に沿った結晶方位と前記結晶膜の前記光軸に沿った結晶方位とがほぼ一致し、
前記光透過部材と前記結晶膜とは、前記光軸を中心として所定の角度だけ相対的に回転した位置関係を有することを特徴とする投影光学系。 - 第1面の縮小像を第2面上に形成する投影光学系において、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[100]または該結晶軸[100]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第1群の光透過部材と、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[110]または該結晶軸[110]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第3群の光透過部材と、
波長が200nm以下の光を実質的に透過させる特性を有し、結晶軸[111]または該結晶軸[111]と光学的に等価な結晶軸と光軸とがほぼ一致するように形成された第5群の光透過部材とを備えていることを特徴とする投影光学系。 - 前記第1面および前記第2面を走査方向に沿って移動させて前記第1面の像を前記第2面上に走査露光する露光装置に用いられ、
非走査時にはスリット状または円弧状の露光領域を前記投影光学系の光軸を含まない位置に形成し、
前記第1面の第1中間像を形成するための屈折型の第1結像光学系と、
少なくとも1つの負レンズと凹面反射鏡とを有し、前記第1中間像からの光束に基づいて前記第1中間像とほぼ等倍の第2中間像を前記第1中間像の形成位置の近傍に形成するための第2結像光学系と、
前記第2中間像からの光束に基づいて前記第2中間像の縮小像を前記第2面上に形成するための屈折型の第3結像光学系と、
前記第1結像光学系から前記第2結像光学系に至る光路中に配置された第1光路折り曲げ鏡と、
前記第2結像光学系から前記第3結像光学系に至る光路中に配置された第2光路折り曲げ鏡とを備えていることを特徴とする請求の範囲第6項乃至第9項、第13項乃至第18項、第22項乃至第30項、第35項および第38項のいずれか1項に記載の投影光学系。 - 請求の範囲第10項に記載の投影光学系において、
前記第1群の光透過部材の光軸に沿った厚さ(中心厚)の総計をT1とし、前記第2群の光透過部材の光軸に沿った厚さの総計をT2とし、前記投影光学系を構成するすべての光透過部材の光軸に沿った厚さの総計をTAとするとき、
|T1−T2|/TA<0.025 (3)
の条件を満足することを特徴とする投影光学系。 - 請求の範囲第19項に記載の投影光学系において、
前記第3群の光透過部材の光軸に沿った厚さ(中心厚)の総計をT3とし、前記第4群の光透過部材の光軸に沿った厚さの総計をT4とし、前記投影光学系を構成するすべての光透過部材の光軸に沿った厚さの総計をTAとするとき、
|T3−T4|/TA<0.025 (4)
の条件を満足することを特徴とする投影光学系。 - 請求の範囲第26項に記載の投影光学系において、
前記第5群の光透過部材の光軸に沿った厚さ(中心厚)の総計をT5とし、前記第6群の光透過部材の光軸に沿った厚さの総計をT6とし、前記投影光学系を構成するすべての光透過部材の光軸に沿った厚さの総計をTAとするとき、
|T5−T6|/TA<0.025 (5)
の条件を満足することを特徴とする投影光学系。 - 前記第1面に設定されたマスクを照明するための照明系と、
前記マスクに形成されたパターンの像を前記第2面に設定された感光性基板上に形成するための請求の範囲第1項乃至第42項のいずれか1項に記載の投影光学系とを備えていることを特徴とする露光装置。 - 前記第1面に設定されたマスクを照明する工程と、
請求の範囲第1項乃至第42項のいずれか1項に記載の投影光学系を用いて、前記マスクに形成されたパターンの像を前記第2面に設定された感光性基板上に形成する工程とを備えていることを特徴とする露光方法。
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