JPWO2003003130A1 - 電波腕時計 - Google Patents
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Abstract
Description
この発明は、ケース内に受信アンテナを組み込んだアンテナ内蔵型の電波腕時計に係り、特に、電波の透過しにくい金属製ケースを使用しつつも、時刻電波を高感度に受信可能としたアンテナ内蔵型の電波腕時計に関する。
背景技術
腕時計のケースは金属製のものが好ましいと考える消費者は少なくない。斯かる消費者の嗜好は、世代的には中高年世代に、地域的には日本やヨーロッパに多く見られる。
アンテナ内蔵型の電波腕時計においては、ケースの素材として、プラスチックやセラミック等の電波透過性材料が多く使用される。ケースの素材として、ステンレス等の金属を使用すると、時刻電波がケースを十分に透過できないことから、正常な受信動作が期待できない。ケースの素材としてプラスチックが使用されると、外観上の高級感不足を主たる原因として、アンテナ内蔵型の電波腕時計の購買層は主として若者世代に偏りがちであり、中高年世代における売れ行きはあまりはかばかしくないのが実状である。また、ケースの素材としてセラミックが使用されると、販売価格が高くなることから、売れ行きははかばかしくない。
一方、ケース外に受信アンテナを配置したアンテナ外装型の電波腕時計によれば、受信アンテナを専用のプラスチックケースに収容したり、皮革製の時計バンドに組み込む等の工夫により、ムーブメントを収容する腕時計ケースそれ自体は金属製とすることもできる。しかし、斯かるアンテナ外装型の電波腕時計は外観上のシンプルさやスマートさに欠けること、アンテナとムーブメントとの接続構造が複雑となること等の理由により、広く普及するに至らないのが実状である。
そこで、本発明者等は、電波の透過しにくい金属製ケースを使用しつつも、時刻電波を高感度に受信可能としたアンテナ内蔵型の電波腕時計を開発すべく鋭意研究を行った。その開発に至る経過は以下の通りである。
従来、通常の腕時計(電波腕時計以外の通常の腕時計)に採用されている金属製腕時計ケースの構造を示す断面図が第6図に示されている。
同図に示されるように、この金属製腕時計ケース101は、ケース輪郭を形作る金属製環状基体102と、この金属製環状基体102の表面側に位置して、透明窓板103を縁取る金属製環状窓枠(一般に『ベゼル』とも称される)104と、金属製環状基体102の裏面側に位置する金属製裏蓋105との三者を重ねて一体的に結合してなるものである。
腕時計ケース101内には、金属製文字盤106が透明窓板103に臨んで配置され、さらに金属製文字盤106と金属製裏蓋105との間の空所108にはムーブメント107が収容される。
なお、図示される金属製環状基体102としては、例えば、材質(SUS304)、肉厚(4mm)、内径(32mm)、厚みD1(6mm)のものが使用されている。また、透明窓板103としては、例えば、材質(ガラス)、肉厚(1mm)、直径(30mm)のものが使用される。また、金属製環状窓枠104としては、例えば、材質(SUS304)、肉厚(4mm)、内径(28mm)、高さ(3mm)のものが使用される。また、金属製裏蓋105としては、例えば、材質(SUS304)、肉厚(2mm)、直径(36mm)のものが使用される。また、金属製文字盤106としては、例えば、材質(Bs)、肉厚(0.6mm)、直径(30mm)のものが使用される。さらに、ムーブメント107としては、例えば、直径(26mm)、厚み(5mm)の通常の腕時計用のムーブメントが使用される。
図示される構造を前提として、通常の腕時計用ムーブメント107を電波腕時計用のアンテナ内蔵ムーブメントに代えただけでは、電波腕時計用ムーブメントは時刻電波を殆ど受信することができない。その理由は、電波腕時計用ムーブメントは、その上面側を金属製文字盤106により、その下面側を金属製裏蓋105により、さらにその周側面乃至外周を全面に亘って比較的に肉厚な金属製環状基体102により完全に取り囲まれているからである。
そこで、本発明者等は、金属製文字盤106の代わりに、電波透過性素材(例えば、ガラスやプラスチック等)からなる文字盤を使用し、かつ金属製裏蓋105の代わりに、電波透過性素材(例えば、ガラスやプラスチック等)からなる裏蓋を使用することを試みた。これにより、ムーブメントの上方、下方に位置する電波遮蔽物が除去されたことにより、時刻電波受信感度の改善はかなり見られたものの、なおも時刻電波受信感度は実用に供し得るレベルには達しなかった。
次に、本発明者等は、ムーブメント107の側方に位置する電波遮蔽物に着目して、金属製環状基体102の肉厚の薄肉化を試みた。しかし、金属製環状基体102はケースの強度を保持しかつ操作用押しボタンを貫通させて保持するものであることから、その薄肉化には限界があり、時刻電波受信感度の改善は見られたものの、なおも実用に供し得るレベルには達しなかった。
この発明は、上述の技術的背景に着目してなされたものであり、その目的とするところは、ケース本体を構成する金属製環状基体の強度並びに肉厚を所要値に維持したままで、ムーブメントの上下方向並びに側方における電波透過性を改善することにより、普通の腕時計と同様な金属製外観を呈する電波腕時計を実現することにある。
この発明の他の目的とするところは、金属製外観を呈すると共に低コストに製作することが可能な電波腕時計を提供することにある。
この発明のさらに他の目的並びに作用効果については、明細書の以下の記述を参照することにより、当業者であれば用意に理解されるであろう。
発明の開示
本発明の電波腕時計は、金属製環状基体と、金属製環状基体の表面側に位置して、透明窓板を縁取る金属製環状窓枠と、金属製環状基体の裏面側に位置して、非金属製裏蓋板を縁取る金属製環状裏蓋枠との三者を重ねて一体的に結合してなる腕時計ケースを有する。なお、ここで、金属製環状基体に言う『環状』には、腕時計ケースにおいて周知である円環状、角環状、楕円環状等々の様々な形態が含まれる。また、環状基体の外形は、実際には、時計バンドの止め金具や押しボタン等が突出されているのが一般的であり、『環状』にはそれらの様々な異形環状を全て含んでいる。
腕時計ケース内には、非金属製文字盤が透明窓板に臨んで配置される。また、非金属製文字盤と非金属製裏蓋板との間にはアンテナ内蔵ムーブメントが配置される。ここで、アンテナ内蔵ムーブメントとは、当業者にはよく知られているように、電波腕時計の製作に必要な受信アンテナ、回路基板、電池、ギアボックス等を一体的に組み付けてなる組立体である。受信アンテナとしては、通常、角棒状のフェライトコアに巻線を施してなるフェライトバーアンテナが使用される。アンテナ内蔵ムーブメントは、薄い円皿上の薄肉のプラスチック製ハウジングに収容されることもある。この場合でも、受信感度を良好なものとするために、受信アンテナはその側面をハウジングから露出させることが多い。アンテナ内蔵ムーブメントの厚みは、設計思想にもよるが、通常、受信アンテナの厚みとほぼ同等となる。すなわち、回路基板とギアボックスとの積層体の厚さによりムーブメントの最小厚さが決定される。一方、フェライトバーアンテナの厚さは、フェライトバーの断面積を増して受信感度を上げる観点からは厚い方が好ましい。そこで、実際には、フェライトバーアンテナの厚さは、回路基板とギアボックスとの積層体の厚さと一致するように設計される。以下、アンテナ内蔵ムーブメントの厚みとは、受信アンテナの厚みとほぼ同義語として理解されるべきである。
金属製環状窓枠、および/または、金属製環状裏蓋枠は、金属製環状基体側へ向けて適宜の長さ延長された延長部を有する。
ここで、『および/または』とは、1)金属製環状窓枠を金属製環状基体へ向けて下方へ延長させる場合と、2)金属製裏蓋枠を金属製環状基体へ向けて上方へ延長させる場合と、3)金属製環状窓枠を金属製環状基体へ向けて下方へ延長させかつ金属製裏蓋枠を金属製環状基体へ向けて上方へ延長させる場合と、の3通りの場合を含んでいる。
それにより、腕時計ケース内にあって、非金属製文字盤と非金属製裏蓋板との間に配置されるアンテナ内蔵ムーブメントの外周が、金属製環状基体と金属製環状窓枠の延長部、および/または、金属製環状裏蓋枠の延長部とにより、上下に領域を分割するようにして取り囲まれるようになる。
ここで、『上下に領域を分割するようにして取り囲まれる』とは、第1図(a)に示されるように、従来は金属製環状基体200だけで全面一様に隙間なく取り囲まれていたものが、本発明では、第1図(b),(c),(d)にやや誇張して示されるように、金属製環状基体300に囲まれる部分と、金属製環状窓枠301の下方延長部L1若しくは金属製環状裏蓋枠302の上方延長部L2により囲まれる部分とが生ずることを意味している。
なお、第1図(a)は、通常の腕時計ケースの構造を示すものであり、図において、200は金属製環状基体、201は金属製環状窓枠、202は金属製裏蓋、203は通常の腕時計用ムーブメント、204は透明窓板、205は金属製文字盤である。
また、第1図(b),(c),(d)は、本発明の電波腕時計ケースの構造の代表的な一例をそれぞれ示すものであり、図において、300は金属製環状基体、301は金属製環状窓枠、302は金属製環状裏蓋枠、303はアンテナ内蔵の電波時計用ムーブメント、304は透明窓板、305は非金属製文字盤、306は非金属製裏蓋板、L1は金属製環状窓枠の下方延長部、L2は金属製環状裏蓋枠の上方延長部である。
より具体的には、第1図(b)〜第1図(d)に示されるように、前述した延長部L1,L2の構成に応じて、次の3通りの取り囲み態様が考えられる。
第1の態様は、第1図(b)に示されるように、金属製環状窓枠301のみを下方に延長して下方延長部L1を形成した場合である。なお、ケース全体の厚さを変更しないとすれば、その分だけ、金属製環状基体300の厚みが薄くなるであろう。この場合、ムーブメント303の外周は、下段の幅広領域部分は金属製環状基体300により、上段の幅狭領域部分は金属製環状窓枠301の下方延長部L1により取り囲まれるであろう。
第2の態様は、第1図(d)に示されるように、金属製環状裏蓋枠302のみを上方に延長して上方延長部L2を形成した場合である。なお、この例にあっても、ケース全体の厚さを変更しないとすれば、その分だけ、金属製環状基体300の厚みが薄くなるであろう。この場合、ムーブメント303の外周は、上段の幅広領域部分は金属製環状基体300により、下段の幅狭領域部分は金属製環状裏蓋枠302の上方延長部L2により取り囲まれる。
第3の態様は、第1図(c)に示されるように、金属製環状窓枠301を下方に延長して下方延長部L1を形成するのみならず、金属製環状裏蓋枠302を上方へ延長して上方延長部L2を形成した場合である。なお、この例にあっても、ケース全体の厚さを変更しないとすれば、その分だけ、金属製環状基体300の厚みが薄くなるであろう。この場合、ムーブメント303の外周は、中段の幅広領域部分は金属製環状基体300により、上段の幅狭領域部分は金属製環状窓枠301の下方延長部L1により、下段の幅狭領域部分は金属製環状裏蓋枠302の上方延長部L2により取り囲まれる。
別の観点から見た本発明の電波腕時計は、金属製環状基体300と、金属製環状基体300の表面側に位置して、透明窓板304を縁取る金属製環状窓枠301と、金属製環状基体300の裏面側に位置して、非金属製裏蓋板306を縁取る金属製環状裏蓋枠302との三者を重ねて一体的に結合してなる腕時計ケースを有する。
腕時計ケース内には、非金属製文字盤305が透明窓板304に臨んで配置され、非金属製文字盤305と非金属製裏蓋板306との間にはアンテナ内蔵ムーブメント303が配置されている。
金属製環状基体300の厚みD1(第2図参照)はアンテナ内蔵ムーブメント303の厚みD2(D2参照)よりも薄くなるように両者の寸法関係が決められ、かつ金属製環状基体300から上下にはみ出すアンテナ内蔵ムーブメント303の上部外周及び下部外周は、金属製環状窓枠301の下方延長部L1及び金属製環状裏蓋枠302の上方延長部L2とにより取り囲まれている。
ここで、ケース輪郭を形作る金属製環状基体300と、その表面側に位置する金属製環状窓枠301の下方延長部L1と、その裏面側に位置する金属製環状裏蓋枠302の上方延長部L2とに関して、要求される肉厚を比較すると、金属製環状基体300は腕時計ケースの強度を保持し、かつ操作ボタンを貫通させるものであるから、大幅なな薄肉化は困難であるのに対して、金属製環状窓枠301の下方延長部L1並びに金属製環状裏蓋枠302の上方延長部L2は、さほど強度を要求されないため、かなりの薄肉化が可能である。そのため、それらの延長部L1,L2の肉厚を環状基体300の肉厚よりも適宜に薄肉化することにより、ムーブメント303の周側面全体としての電波透過性を改善し、電波時計が正常に動作する時刻電波受信感度を獲得することができる。
本発明の好ましい実施の形態にあっては、金属製環状基体300の材質が非磁性金属又は弱磁性金属である。このような金属としては、SUS、Ti、Bs、Al、Ti合金、及びAl合金等が含まれる。このような構成によれば、材質の面からも電波透過性が助長される。
本発明の好ましい実施の形態にあっては、金属製環状窓枠301の材質が非磁性金属又は弱磁性金属である。このような金属としては、SUS、Ti、Bs、Al、Ti合金、Al合金等が含まれる。このような構成によれば、材質の面からも電波透過性が助長される。
本発明の好ましい実施の形態にあっては、金属製環状裏蓋枠302の材質が非磁性金属又は弱磁性金属である。このような金属としては、SUS、Ti、Bs、Al、Ti合金、及びAl合金等が含まれる。このような構成によれば、材質の面からも電波透過性が助長される。
本発明の好ましい実施の形態にあっては、非金属製文字盤305の材質がプラスチック又はガラスである。このような構成によれば、文字盤により電波が遮断されることがない。
本発明の好ましい実施の形態にあっては、非金属製裏蓋板306の材質がプラスチック又はガラスである。このような構成によれば、裏蓋板により電波が遮断されることがない。
本発明の好ましい実施の形態にあっては、金属製環状基体300の肉厚が2.0mm〜3.0mmの範囲であり、かつ金属製環状窓枠301及び金属製環状裏蓋枠302の肉厚が金属製環状基体300の肉厚よりも0.5mm以上に薄肉である。このようにすれば、金属製環状基体300に比べ、金属製環状窓枠301および金属製環状裏蓋枠302の電波透過性を改善できる。加えて、内径30mm〜32mm程度の通常の腕時計の場合、金属製(例えば、ステンレス製)環状基体300の肉厚を2.0mm以下にすると、押しボタンのピンが挿通されるパイプが基体300の内周側に突き出てしまうため、その分だけ基体300を大径化する必要が生ずる。逆に、金属製環状基体300の肉厚が3.0mmを越えると、受信動作に支障を来す場合がある。
本発明の好ましい実施の形態にあっては、非金属製裏蓋板306の内表面には有色被膜が形成されている。このような構成によれば、裏蓋板に高級感を付与することができる。
本発明の好ましい実施の形態にあっては、透明窓板304の材質がガラス又はプラスチックである。
発明を実施するための最良の形態
以下に、この発明にかかる電波腕時計の好適な実施の一形態を添付図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明の一実施形態である金属製電波腕時計ケースの構造を示す断面図が第2図に、側面図が第3図に、平面図が第4図に示されている。
それらの図に示されるように、本発明の電波腕時計1は、ケース輪郭を形作る金属製環状基体2と、金属製環状基体2の表面側に位置して、透明窓板3を縁取る金属製環状窓枠4と、金属製環状基体2の裏面側に位置して、非金属製裏蓋板5を縁取る金属製環状裏蓋枠6との三者を重ねて一体的に結合してなる腕時計ケースを有する。
ケース輪郭を形作る金属製環状基体2は腕時計ケースの強度を保持する目的を有すると共に、操作用押しボタン10,10を貫通させて保持する機能をも有する。環状基体2の外周適宜箇所には、腕時計バンド支持用の一対のブラケット11,11が一体に形成されている。金属製環状基体2の材質としては、電波透過性の比較的に良好な非磁性又は弱磁性金属が好ましい。このような金属としては、SUS、Ti、Bs、Al、Ti合金、及びAl合金等を挙げることができ、図示例では、肉厚3.0mmのSUS316Lが使用されている。また、環状基体2は円環状をなしており、その内径は32mm程度とされている。さらに、ムーブメント9の厚みD2が6mm程度のとき、環状基体2の厚みD1は4mm程度とされている。つまり、環状基体2の厚みD1はムーブメント9の厚みD2よりも薄く(D1<D2)なるように、寸法関係が決められている。本発明者等の鋭意研究によれば、アンテナ内蔵ムーブメント9の厚みD2が5〜7mmのとき、環状基体2の厚みD1をムーブメント9の厚みD2よりも1〜3mm程度(好ましくは、1.5mm〜2.5mm程度)薄くすることにより、良好な結果が得られた。なお、図示例に使用されるアンテナ内蔵ムーブメントは、先に、株式会社マルマンコーポレーションにより発売された電波腕時計MJW−100,200,300等に内蔵されているものと同一の構造を有する。
なお、このような寸法関係は今までの腕時計ケースの常識を大きく覆すものである。なぜなら、そもそも、環状基体2の本来の機能は、ムーブメント9の全周を取り囲んで、ムーブメント9を機械的な衝撃等から保護するものであるから、環状基体2の厚みD1、換言すれば腕時計ケースの深さは、ムーブメント9がすっぽりと収まる程度の十分な深さを有するものでなければならない、とするのが今までの時計業界の当業者の常識であったのである。
透明窓板3を縁取る金属製環状窓枠(ベゼル)4の材質としては、電波透過性の比較的に良好な非磁性又は弱磁性金属の採用が好ましい。このような金属としては、SUS、Ti、Bs、Al、Ti合金、及びAl合金等を挙げることができ、図示例では、肉厚2.0mm程度のSUS316Lが使用されている。透明窓板3の材質としては、ガラスやプラスチックを任意に選択して採用することができる。
非金属製裏蓋板5を縁取る金属製環状裏蓋枠6の材質としては、電波透過性の比較的に良好な非磁性又は弱磁性金属の採用が好ましい。このような金属としては、SUS、Ti、Bs、Al、Ti合金、及びAl合金等を挙げることができ、図示例では、肉厚2.0mm程度のSUS316Lが使用されている。非金属製裏蓋板5の材質としては、ガラスやプラスチックを任意に選択して採用することができる。また、非金属製裏蓋板5の内側の表面には例えば金属色や黒色等の着色被膜が形成され、外観体裁上の高級感が付与されている。
腕時計ケース内には、非金属製文字盤7が透明窓板3に臨んで配置される。また、非金属製文字盤7と非金属製裏蓋板5との間の空所8には、電波腕時計として機能するためのアンテナ内蔵ムーブメント9が収容される。
非金属製文字盤7の材質としては、ガラスやプラスチック等を任意に選択して採用することができる。また、アンテナ内蔵ムーブメント9は図示例では厚さD2が略6mm、外径25mm程度の円盤状をしている。
すなわち、このムーブメントは、比較的に薄いプラスチック製の円皿形ハウジングを有する。このハウジングの円周の一部は直線的にカットされて、ここに棒状の磁気長波アンテナであるフェライトバーアンテナが配置されている。このフェライトバーアンテナは、円皿状ハウジングに対して接線方向へ向けて配置されている。
本発明の電波腕時計1において使用されるアンテナ内蔵ムーブメント9の構造の一例が第7図〜第10図に示されている。第7図及び第8図はアンテナ内蔵ムーブメント9を上面(文字盤側)から見た図、第9図はアンテナ内蔵ムーブメント9を下面(裏蓋側)から見た平面図、第10図はアンテナ内蔵ムーブメント9を側面から見た図である。
フェライトバーアンテナ701はハウジング704の外周付近に配置され、両端をハウジング704に把持されて接線方向へ向けて配置されている。ここでアンテナ701は上面、下面、及び外周側の側面の3面がハウジング704から外部に露出されている。なお、701aはコイル、701bはアンテナコアを構成するフェライトバーである。円皿状のプラスチック製のハウジング704の下面(裏蓋側)は開放されており、内部にはモーターコイル702、ギヤボックス703、バッテリー705、水晶振動子707a,707b、回路基板(PCB)708などが収められている。このうちバッテリー705はバッテリーホルダー706で固定されている。また、ハウジング704の上面(文字盤側)には、モーターコイル702から発生する高周波ノイズを遮蔽するための薄いステンレス製シールド板709が配置される。第10図はアンテナ内蔵ムーブメント9を側面(6時方向)から眺めた図であるが、アンテナ内蔵ムーブメント9の厚みD2はアンテナ701の厚みD3とほぼ同じであることがわかる。
第2図に戻って、金属製環状窓枠4は、その下面全周に沿って金属製環状基体2へ向けて下方へと適宜の長さだけ延出された延長部4aを有する。図示例では、延長部4aの長さは1mm程度とされている。また、延長部4aの肉厚は2mm程度とされている。
金属製環状裏蓋枠6は、その上面全周に沿って金属製環状基体2へ向けて上方へと適宜の長さだけ延出された延長部6aを有する。図示例では、延長部6aの長さは1mm程度とされている。また、延長部6aの肉厚は2mm程度とされている。
一方、金属製環状基体2の厚みD1は、延長部4aと延長部6aとが延出された分だけ減少されており、全体としてのケース厚みは従前のものと殆ど変わらないようにされている。
それにより、腕時計ケース内にあって、非金属製文字盤7と非金属製裏蓋板5との間に配置されるアンテナ内蔵ムーブメント9の外周は、金属製環状基体2と金属製環状窓枠4の下方延長部4aと金属製環状裏蓋枠6の上方延長部6aとにより、上下に領域を3分割するようにして取り囲まれるようになる。
ここで、『上下に領域を3分割するようにして取り囲まれる』とは、第6図に示されるように、従来は金属製環状基体102だけで全面一様に隙間なく取り囲まれていたものが、本発明では第2図に示されるように、金属製環状基体2に取り囲まれる部分と、金属製環状窓枠4の下方延長部4aに取り囲まれる部分と、金属製環状裏蓋枠6の上方延長部6aにより取り囲まれる部分とが生ずることを意味している。
より具体的には、ムーブメント9の外周は、中段の幅広領域部分は金属製環状基体2により、上段の幅狭領域部分は金属製環状窓枠4の下方延長部4aにより、下段の幅狭領域部分は金属製環状裏蓋枠6の上方延長部6aにより取り囲まれる。
ここで、ケース輪郭を形作る金属製環状基体2と、その表面側に位置する金属製環状窓枠4の下方延長部4aと、その裏面側に位置する金属製環状裏蓋枠6の上方延長部6aとに関して、要求される肉厚を比較すると、金属製環状基体2は腕時計ケースの強度を保持する関係から、大幅な薄肉化は困難であるのに対して、金属製環状窓枠4の下方延長部4a並びに金属製環状裏蓋枠6の上方延長部6aは、さほど強度を要求されないため、かなりの薄肉化が可能である。そのため、それらの延長部4a,6aの肉厚を環状基体2の肉厚よりも薄肉化することにより、ムーブメント収容空所8の周側面全体としての電波透過性を大幅に改善し、電波腕時計が正常に動作する時刻電波受信感度を獲得することができる。
なお、以上の実施形態では、金属製環状窓枠4と金属製環状裏蓋枠6との双方から延長部4a,6aを突出されたが、本発明においては、金属製環状窓枠4と金属製環状裏蓋枠6とのいずれか一方のみから延長部を突出させてもよい。
すなわち、本発明にあっては、延長部の構成に応じて、次の3通りの取り囲み態様が考えられる。
第1の態様は、金属製環状窓枠4のみを下方に延長して延長部4aを形成した場合である。なお、ケース全体の厚さを変更しないとすれば、その分だけ、金属製環状基体2の高さが低く(厚みが薄く)なるであろう。この場合、ムーブメント9の外周は、下段の幅広領域部分は金属製環状基体2により、上段の幅狭領域部分は金属製環状窓枠4の下方延長部4aにより取り囲まれる(第1図(b)参照)。
第2の態様は、金属製環状裏蓋枠6のみを上方に延長して延長部6aを形成した場合である。なお、ケース全体の厚さを変更しないとすれば、その分だけ、金属製環状基体2の高さが低く(厚みが薄く)なるであろう。この場合、ムーブメント9の外周は、上段の幅広領域部分は金属製環状基体2により、下段の幅狭領域部分は金属製環状裏蓋枠6の上方延長部6aにより取り囲まれる(第1図(d)参照)。
第3の態様は、金属製環状窓枠4を下方に延長して延長部4aを形成するのみならず、金属製環状裏蓋枠6を上方へ延長して延長部6aを形成した上述の場合である。なお、ケース全体の厚さを変更しないとすれば、その分だけ、金属製環状基体の高さが低く(厚みが薄く)なるであろう。この場合、ムーブメント9の外周は、中段の幅広領域部分は金属製環状基体2により、上段の幅狭領域部分は金属製環状窓枠の下方延長部4aにより、下段の幅狭領域部分は金属製環状裏蓋枠の上方延長部6aにより取り囲まれる(第1図(c)参照)。
次に、本発明の実施例である電波腕時計と比較例である幾つかの電波腕時計とを用いて、本発明の実施品による効果を検証する。
[本発明の係る電波腕時計の実施例]
第2図に示される断面構造を前提として、ケース(環状基体の業界通用語)2、ベゼル(環状窓枠の業界通用語)4、及び裏蓋枠6としては、SUS316Lを使用した。ケース2の厚みD1を4mmとし、ムーブメント9の厚みD2を6mmとした。裏蓋板5としてガラス板を使用した。ベゼル4を下方に1mm延長して下方延長部4aを形成した。環状裏蓋枠6を上方へ1mm延長して上方延長部6aを形成した。ケース2の肉厚を強度維持を前提として薄肉化して3mmとした。文字盤7としてプラスチック板又はガラス板を使用した。透明窓板3としてガラス板を使用した。なお、下方延長部4a並びに上方延長部6aの肉厚をそれぞれ2mmとした。
[比較例1]
これは、通常(電波時計ではない)の金属製腕時計のケースにアンテナ内蔵ムーブメントを収容しかつ文字盤106にガラスを使用したものである。すなわち、第6図に示される断面構造を前提とすれば、ケース102、ベゼル104、及び裏蓋105としては、SUS304を使用した。ケース102としては、従前のものをそのまま使用した。そのため、ケース102の厚みD1はムーブメント107の厚みD2よりも厚い(D1>D2)ままとした。文字盤106としてブラスチック板又はガラス板を使用した。透明窓板103としてガラス板を使用した。
[比較例2]
これは、通常の金属製腕時計のケースにアンテナ内蔵ムーブメントを収容し、文字盤106にプラスチック板又はガラス板を使用し、さらに裏蓋板105にガラスを使用したものである。すなわち、第6図に示される断面構造を前提とすれば、ケース102、ベゼル104、及び環状裏蓋枠(第2図の符号6参照)としては、SUS316Lを使用した。ケース102は、従前のものをそのまま使用した。そのため、ケース102の厚みD1はムーブメント107の厚みD2よりも厚い(D1>D2)ままとした。文字盤106としてプラスチック板又はガラス板を使用した。透明窓板3としてガラス板を使用した。裏蓋板(第2図の符号5参照)としてガラス板を使用した。
[試験方法]
第5図に示されるように、シールドボックス(外部から全ての電波を遮断可能な容器)12内に上記の実施品乃至比較品(比較例1,2)をひとつひとつ入れ、時刻電波発生器13により発生させた60KHzの時刻電波の電界強度を変化させ、それぞれの比較例が時刻電波を受信したときの電界強度の数値により受信性能を試験した。なお、第5図(a)は内部の平面図、第5図(b)は内部の立面図であり、14はアンテナ、15は測定対象物置き台、16は測定対象物(試験対象時計)である。
[試験結果]
試験対象 電界強度(dBμV/m)
実施例 42
比較例1 63
比較例2 50dB以上
なお、ここでは、電界強度の数値が小さい方が受信性能が高いこと(受信し易いこと)を示している。
[結論]
実施例の場合には、想定される受信地域の全域において、良好な受信性能が得られ、電波時計として十分に実用に供せられることが確認された。外装材料として金属が使用されているため、消費者の嗜好する高級感が十分に得られた。加えて、セラミック材料等を使用する場合に比べて低コストで製作できた。
比較例1及び2の場合には、良好な受信性能は得られず、実用に供せられないことが確認された。
以上の実施形態で説明した電波腕時計によれば、ムーブメントにおいて良好な受信電波強度を獲得することができることに加えて、装着状態では隠れて見えない裏蓋部分を除き、その全周を金属により取り囲まれていることから、外観上の高級感に優れ、さらに従前の金属製腕時計ケースと同様の加工技術で比較的に安価に製作することができるため、この種の電波腕時計の広く一般への普及にも資するものである。
産業上の利用可能性
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、ケース本体を構成する金属製環状基体の強度並びに肉厚を所要値に維持したままで、ムーブメントの上下並びに外周面における電波透過性を改善することにより、普通の腕時計と同様な金属製外観を呈する電波腕時計を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の特徴を示す概念図であり、第2図は、本発明の金属製電波腕時計ケースの構造を示す断面図であり、第3図は、本発明の金属製電波腕時計ケースの構造を示す側面図であり、第4図は、本発明の金属製電波腕時計ケースの構造を示す平面図であり、第5図は、本発明品の受信状態試験のための装置の構成を示す説明図であり、第6図は、通常の金属製腕時計ケースの構造を示す断面図であり、第7図は、アンテナ内蔵ムーブメントをその上面(文字盤側)から見た図であり、第8図は、アンテナ内蔵ムーブメントにシールド板を重ねた状態をその上面(文字盤側)から見た図であり、第9図は、アンテナ内蔵ムーブメントをその下面(裏蓋側)から見た図であり、第10図は、アンテナ内蔵ムーブメントをその側面から見た図である。
Claims (11)
- 金属製環状基体と、
金属製環状基体の表面側に位置して、透明窓板を縁取る金属製環状窓枠と、
金属製環状基体の裏面側に位置して、非金属製裏蓋板を縁取る金属製環状裏蓋枠との三者を重ねて一体的に結合してなる腕時計ケースを有し、
腕時計ケース内には、非金属製文字盤が透明窓板に臨んで配置され、
非金属製文字盤と非金属製裏蓋板との間にはアンテナ内蔵ムーブメントが配置された電波腕時計であって、
金属製環状窓枠、および/または、金属製環状裏蓋枠は、金属製環状基体側へ向けて適宜の長さ延長された延長部を有し、
それにより、腕時計ケース内にあって、非金属製文字盤と非金属製裏蓋板との間に配置されるアンテナ内蔵ムーブメントの外周が、金属製環状基体と金属製環状窓枠の延長部、および/または、金属製環状裏蓋枠の延長部とにより、上下に領域を分割するようにして、取り囲まれるようにした電波腕時計。 - 金属製環状窓枠の下方延長部および金属製環状裏蓋枠の上方延長部の肉厚は金属製環状基体の肉厚よりも薄肉である請求の範囲第項1項又は第2項に記載の電波腕時計。
- 金属製環状基体と、
金属製環状基体の表面側に位置して、透明窓板を縁取る金属製環状窓枠と、
金属製環状基体の裏面側に位置して、非金属製裏蓋板を縁取る金属製環状裏蓋枠との三者を重ねて一体的に結合してなる腕時計ケースを有し、
腕時計ケース内には、非金属製文字盤が透明窓板に臨んで配置され、
非金属製文字盤と非金属製裏蓋板との間にはアンテナ内蔵ムーブメントが配置された電波腕時計であって、
金属製環状基体の厚みはアンテナ内蔵ムーブメントの厚みよりも薄くなるように両者の寸法関係が決められ、かつ金属製環状基体から上下にはみ出すアンテナ内蔵ムーブメントの上部外周及び下部外周は、金属製環状窓枠の下方延長部及び金属製環状裏蓋枠の上方延長部とにより取り囲まれている、電波腕時計。 - 金属製環状基体の材質が、非磁性金属又は弱磁性金属である請求の範囲第項1項〜第3項のいずれかに記載の電波腕時計。
- 金属製環状窓枠の材質が、非磁性金属又は弱磁性金属である請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載の電波腕時計。
- 金属製環状裏蓋枠の材質が、非磁性金属又は弱磁性金属である請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載の電波腕時計。
- 非金属製文字盤の材質が、プラスチック又はガラスである請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載の電波腕時計。
- 非金属製裏蓋板の材質が、プラスチック又はガラスである請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載の電波腕時計。
- 金属製環状基体の肉厚が2.0mm〜3.0mmの範囲であり、かつ金属製環状窓枠の下方延長部及び金属製裏蓋枠の上方延長部の肉厚が金属製環状基体の肉厚よりも0.5mm以上薄肉化されている請求の範囲第3項に記載の電波腕時計。
- 非金属製裏蓋板の内表面には金属色を有する被膜、又は各種の塗装被膜が形成されている請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載の電波腕時計。
- 透明窓板の材質がプラスチック又はガラスである請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載の電波腕時計。
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