JPWO2002102361A1 - ナンセンス変異に起因した疾患の治療薬 - Google Patents
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Abstract
本発明は、ナンセンス変異に起因した疾患の治療用組成物であって、本組成物には、下記式(1)で示すネガマイシンなどのジペプチド系抗生物質が含まれる。このジペプチド系抗生物質は、ゲンタマイシンなどのアミドグリコシド系抗生物質のような重篤な副作用をもたらすことなく、ナンセンス変異を読み過ごし成熟したタンパク質の発現を誘導し得る。式(1)
Description
技術分野
本発明は、ナンセンス変異により生じる疾患の治療薬、特にナンセンス変異を読み過ごしを誘導する薬剤に関する。
背景技術
多くの遺伝疾患は、翻訳の未成熟な停止を誘導して、切断型の不活性かつ不安定な産物(Atkinson,J.,and Martin,R.(1994)Mutations to nonsense codons in human genetic disease:implications for gene thrapy by nonsense suppressor tRNAs.Nucleic Acid Res 22,1327−1334)を生じるヒト遺伝子の未成熟な終止変異(stop mutation)が原因である。その一例としてデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)があるが、この疾患は筋繊維鞘におけるジストロフィン蛋白質の欠如を特徴とする男性3500人に1人が罹患するX連鎖劣性障害である。
こうした終止変異が起因する疾患の解明および治療方法の開発等のため、DMDの動物モデルであるmdxマウスが存在する。このmdxマウスは、ジストロフィン遺伝子のヌクレオチド3,185位にナンセンス変異(CAAからTAA)を有し、その結果、エキソン23位に終止コドンが形成される(Bulfiled,G.,Siller,W.G.,Wight,PA.,Moore,K.J.(1989)X chromosome−linked muscular dystrophy(mdx)in the mouse.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81,1189−1192、Sicinski,P.,Geng,Y.,Ryder−Cook,A.S.,Barnard,E.A.Darlison,M.G.,Barnard,P.J.(1989)The molecular basis of muscular dystrophy in the mdx mouse.Science 244,1578−1582)。ここで形成された終止コドンは蛋白質を未成熟な状態で終止させ、これによってジストロフィンおよびジストロフィン関連糖蛋白質複合体の発現が阻害され、筋細胞膜でのこれらタンパク質等の欠乏がもたらされる。DMDの少年の65%では、遺伝子は明らかな転位(主に欠失または重複)を含むが、残りの35%はナンセンス変異または転写スプライシング部位に影響を及ぼす他の点突然変異を有するジストロフィン遺伝子を有する。現在、DMD患者およびmdxマウスの薬理学的治療は、プレドニゾンまたはデフラザコートのようなコルチコステロイドおよびコルチコステロイドの使用を軽減する薬剤であるアザチオプリンを用いて主に行われる。しかし、コルチコステロイドの使用は副作用を伴うため、その薬剤による利益は短期間の使用に限られる(Granchelli,J.A.,Pollina,C.,Hudecki,M.S.,(2000)Pre−clinical screening of drugs using the mdx mouse.Neuromuscular Disorders.10,235−239、Griggs,R.C.,Moxley,R.T 3rd.,Mendell J.R.,Fenichel,G.M.,Brooke,M.H.,Pestronk,A.,Miller,J.P.,Cwik,V.A.,Pandya,S.,and Robinson,J.(1993)Duchenne dystrophy:randomized,controlled trial of prednisone(18 months)and azothioprine.Neurology 43,520−527)。そのため、ジストロフィン遺伝子内で未成熟な終止変異を抑制する臨床的に有用な方法を同定することは、有意な数のDMD患者に対して利益をもたらすであろう。
最近、ナンセンス変異をターゲティングした化学療法の可能性が現れつつある。アミノグリコシド系抗生物質の一つであるゲンタマイシン(GM)は、翻訳の忠実度を低下させ、このようにナンセンス変異によって引き起こされた疾患に対して利用しやすい治療を提供する。GMの投与によって、真核細胞のみならず原核細胞においても蛋白質の翻訳の際に終止コドンの抑制が起こる。GMは既に、同様にナンセンス変異が原因で起こる嚢胞性繊維症(cystic fibrosis)、ハーラー疾患(Hurler’s disease)および乳児神経セロイドリポフスチン沈着症(infant neuronal ceroid lipofuscinosis)に関するヒト患者細胞による臨床試験においても用いられている。また、GMが薬剤処置mdxマウスにおいてジストロフィン機能を回復することが報告されている(Barton−Davis,E.R.,Cordiner,L.,Shoturma,D.I.,Leiland,S.E.,Sweeney,H.L.(1999)Aminoglycoside antibiotics restore dystrophin function to skeletal muscles of mdx mice.J Clin Invest 104,375−381)。そしてGM治療は、デュシェンヌ型および肢帯筋ジストロフィーに関して現在臨床試験中である。
しかしながら、GMは、他のアミノグリコシド系抗生物質と同様に、腎障害および聴力障害のような多くの副作用を引き起こす傾向があり、また一剤の長期使用は薬剤耐性細菌の出現を促進する。
発明の開示
上述の通り、GMのようなアミノグリコシド系抗生物質は現在のところナンセンス変異が起因する疾患の治療剤として有力な候補薬剤であるが、その副作用が重篤であるために、GMとは異なる他の終止コドン読み過ごし活性を有する薬剤候補物質が要求されている。文献において、1970年に日本で発見されたジペプチド系抗生物質であるネガマイシン(メチルヒドラジノ酢酸結合δ−ヒドロキシ−β−リジン:NM)も同様に、原核細胞翻訳系において終止コドンの読み過ごしを誘発することが報告されている(Hamada,M.,Takeuchi,T.,Kondo,S.,Ikeda,Y.,Naganawa,H.,Maeda,K.,Okami,Y.,and Umezawa,H.(1970)A new antibiotic,negamycin.J Antibiot Tokyo 23,170−171、Uehara,Y.,Hori,M.,Umezawa,H.(1974)Negamycin inhibits termination of protein synthesis directed by phage f2 RNA in vitro.Biochim Biophys Acta 374,82−95)。そこで、本願発明者らは、このNMによりナンセンス変異が起因する疾患の治療薬として使用し得るかをmdxマウスを用いて解析し、NMはin vivoおよびin vitroにおいて骨格筋にジストロフィンを回復させることを見出した。また、このNMはGMと同等あるいはそれ以上に読み過ごし誘導活性が高く有効である上にGMに比べ毒性が極めて低いことを見出した。すなわち、本願発明は、これら本願発明者らの知見に基づくものであり、具体的には次の通りである。
第一の態様はジペプチド系抗生物質を含む、ナンセンス変異に起因した疾患の治療用組成物である。
第二の態様は、上記第一の態様におけるジペプチド系抗生物質が、下記式(1)で表された化合物(分子量248)またはナンセンス変異の読み過ごしを促進し得る該化合物の類似物である組成物。
式(1)
第三の態様は、上記第一または第二の態様において、ナンセンス変異に起因した疾患が、筋ジストロフィー、嚢胞性繊維症、ハーラー疾患および乳児神経セロイドリポフスチン沈着症のいずれかである、組成物である。
本発明のナンセンス変異に起因した疾患の治療用組成物には、ジペプチド系構成物質が含まれる。ジペプチド系抗生物質は従来のゲンタマイシンなどのアミノグリコシド系抗生物質のような重篤な副作用がなく、また、ナンセンス変異の読み過ごしを促進し得るため、ゲンタマイシンなどに代えて或いはゲンタマイシンなどとの併用としてナンセンス変異に起因した疾患の治療に用いることができる。
ここで「ジペプチド系抗生物質」の好適な例として、ゲンタマイシンよりも読み過ごし促進活性が高い上記式(1)で表されたネガマイシン(メチルヒドラジノ酢酸結合δ−ヒドロキシ−β−リジン:NM)を挙げることができる。また、上記「ジペプチド系抗生物質」として、ネガマイシンと構造的に類似している化合物(以下「ネガマイシン類似物」と称する)をも含めることができる。ここでネガマイシン類似物とは、ネガマイシンと構造的に類似し、ネガマイシンと同様にナンセンス変異の読み過ごしを促進し得る活性を持っていれば、抗菌活性の大小は問わない。
ネガマイシンは、例えば、放線菌M890−C2株、MF752−NF9株の培養上清から得ることができる(Hamada,M.,Takeuchi,T.,Kondo,S.,Ikeda,Y.,Naganawa,H.,Maeda,K.,Okami,Y.,and Umezawa,H.(1970)A new antibiotic,negamycin.J Antibiot Tokyo 23,170−171)。ネガマイシン類似物については、上記放線菌株あるいは他の放線菌の培養上清からナンセンス変異の読み過ごしを促進し得る活性を指標に得ることも、また、天然から調製する以外に上記ネガマイシンを人工的に修飾して調製してもよい。人工的な修飾は、ナンセンス変異の読み飛ばし促進活性を調節する目的、製剤化や標的細胞へ薬剤を輸送するドラッグデリバリーなどの目的で加えられたものであってもよい。
また、「ナンセンス変異に起因した疾患」とは、ナンセンス変異が原因して遺伝子の機能が欠失することよりに生じた疾患であれば特に限定はなく、例えば、嚢胞性線維症(CFTR)、サラセミア(Beta−globin)、胃癌(APC)、血友病(FactorVIII,IX)、肺癌、卵巣癌等(p53)、デュシェンヌ型(dystrophin)および肢帯筋ジストロフィー(γ−sarcoglycan)等、肥満(insulin receptor)、フェニルケトン尿症(Phenylalanine hydroxylase)等(Atkinson,J.,and Martin,R.(1994)Mutations to nonsense codons in human genetic disease:implications for gene therapy by nonsense suppressor tRNAs.Nucleic Acid Res 22:1327−34)を含めることができる。このうち、嚢胞性線維症(Howard et al.Biochem Soc Trans,21:846−851(1996)、Wilschanski et al.Am J Respir Crit Care Med 161:860−865(2000)、Clancy JP.et al.Am J Respir Crit Care Med,163:1683(2001))、筋ジストロフィー(Barton−Davis et al.J Clin Invest,104:375−381(1999)、Wagner KR et al,Ann Neurol 49:706−711(2001))、ハーラー症候群(Hurler Syndrome)(Kim M.Keeling,et al.Human Mol.Gene.10:291−299(2001))、乳児神経セロイドリポフスチン沈着症(Late Infanitiile Neural Ceroid lipofucinosis)(2001 lysosomal tripeptidyl−peptidase 1:Sleat DE et al Europ J Paediatr Neurol 5 Suppl A:57−62(2001))は、ゲンタマイシンの読み過ごし活性を用いて治療研究がされていることから、このゲンタマイシンに代えてネガマイシンによりこれら疾患を治療してもよい。
上記ネガマイシンを用いてナンセンス変異の読み過ごしを誘導するためには、ネガマイシンを一日体重(kg)当たり1×10−7mol/kg〜1×10−2mol/kg、好ましくは1×10−6mol/kg〜1×10−3mol/kgを効果が生じる適切な期間、投与することにより実施することができる。また、患者へ投与するための剤型は特に限定はなく、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、水剤、注射剤などとすることができる。したがって、製剤化に当たっては、治療用組成物には、主成分である上記ネガマイシンなどのジペプチド系抗生物質以外に、必要に応じて薬学的に許容され得る賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、溶解補助剤、懸濁剤、コーティング剤等の補助剤を適宜含めることができる。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に制限されるものではない。
[実施例1] ネガマイシンの調製
フラスコ培養:C培地(2.0%グルコース、2.0%澱粉、2.0%大豆エキス、0.5%乾燥酵母、35%CaCO3,0.0005%CuSO4・5H2O,0.0005MnCl2・4H2O,0.005%ZnSO4・7H2O)60mlが入った500mlフラスコ、50本それぞれに、放線菌M890−C2株を植菌し、28度にて4日間振とう培養(220rpm)を行った。培養液をパーライト(4%)でろ過し、ろ液を回収した。ろ液を陰イオンカラムクロマトグラフィー(Diaion SA10A、1.5L、OH form)に通し、0.2N HCl溶液で溶出して、K−12株に対する抗菌活性画分を回収した(500ml毎に分画、フラクション番号12〜16)。この活性画分をアンモニア水で中和し、500mlまで減圧濃縮した。次に、この濃縮液を陽イオン交換樹脂(Amberlite CG50、250ml、NH4 form)に通し、0.1%アンモニア水で展開し、K−12株に対する抗菌活性画分を回収した(18g毎の分画、フラクション番号31〜70)。この活性画分を凍結乾燥し、淡褐色粉末32.8mgを得た。この粉末を緩衝液に再懸濁し、再度、陽イオン交換樹脂(Amberlite CG50、250ml、NH4 form)に通し、同様に0.1%アンモニア水で展開してK−12株に対する抗菌活性画分を回収した(200g毎の分画、フラクション番号6)。この活性画分を凍結乾燥し白色粉末13.8mgを得た。
ジャー培養:C培地5Lが入った培養用ジャーに放線菌M890−C2株を植菌し、28度、5L/分通気にて、5日間振とう培養(300rpm)を行った。培養液を上記フラスコ培養後と同様にパーライト(4%)でろ過し、ろ液を陰イオンカラムクロマトグラフィー(Diaion SA10A、1.5L、OH form)にかけ活性画分を回収した(500ml毎に分画、フラクション番号9〜12)。この活性画分をアンモニア水で中和、500mlに減圧濃縮した。この濃縮液を陽イオン交換樹脂にかけ、蒸留水1Lで洗浄した後、0.1%アンモニア水で展開し、活性画分を回収した(200g毎に分画、水洗画分とフラクション番号1〜2)。活性画分を凍結乾燥し、褐色粉末4.8gを得た。この粉末を緩衝液に再懸濁し、再度、陽イオン交換樹脂(Amberlite CG50、250ml、NH4 form)に通し、0.1%アンモニア水で展開して活性画分を回収した(200g毎の分画、フラクション番号15〜16)。この活性画分を凍結乾燥し褐色粉末27.7mgを得た。なお、二度目の陽イオン交換樹脂による精製の際、フラクション番6〜9にも抗菌活性が確認された。
[実施例2] 筋ジストロフィーモデルマウスへのネガマイシン投与によるジストロフィン発現の回復
ジストロフィンのモデルマウスとしてmdxマウスを用意した。NMは、溶液での保存中の分解を避けるために、mdxマウスへの注射直前にPBSに溶解しミリポアを用いて濾過した。バートン−デービスら(Barton−Davis,E.R.,Cordiner,L.,Shoturma,D.I.,Leiland,S.E.,Sweeney,H.L.(1999)Aminoglycoside antibiotics restore dystrophin function to skeletal muscles of mdx mice.J Clin Invest 104,375−381)によるGM実験と半分の濃度(1.2×10−5mol/kg)をPBSに溶解したNM溶液(137mM NaCl、2.68mM KCl、8.10mM Na2HSO4、1.47mM KH2PO4)をmdxマウス(雄性7週齢、各用量6匹)に2週間毎日皮下注射した。コントロールのmdxマウス(n=6)およびC57BL/10(B10、n=6)にはPBSのみ(0.1ml)を同様に2週間毎日皮下注射した。
注射後、免疫蛍光およびエバンスブルー染色によってジストロフィンの検出を行った。免疫蛍光染色は、ジストロフィンのC末端に対する抗体を用いて、次の方法により実施した。動物をエーテルガスの過剰量によって屠殺し、前脛骨(TA)筋を摘出して、免疫組織化学のために融解イソペンタン中で凍結した。凍結後、7μmの横断面凍結切片を調製した。凍結切片をブロッキング溶液中で20%ウマ血清のPBS溶液と共に15分間プレインキュベートした後、PBSによって10分間、3回洗浄した。次に切片を室温で一次抗体(ウサギ抗ジストロフィンポリクローナル抗体、東京大学ノノムラ博士の寄贈、2%ウシ血清アルブミン[BSA]を含むPBS溶液によって200倍希釈)と共に1時間インキュベートした。一次抗体と反応させた切片をPBSによって3回10分間洗浄した後、100倍希釈したフルオレセイン標識抗ウサギIgG(アマシャムファルマシアバイオテック、東京、日本)によって切片を室温で1時間標識した。二次抗体での標識後、蛍光顕微鏡にて蛍光発光に基づきジストロフィンの検出を行った。
エバンスブルー染色は、動物全てにエバンスブルー色素(EBD:2%EBDのPBS溶液、0.1ml)を屠殺の12時間前に腹腔内投与することにより実施した。EBD染色により透過性の膜を有する変性筋繊維が可視化される(Matsuda,R.,Nishikawa,A.,Tanaka,H.(1995)Visualization of dystrophic muscle fibers in mdx mice by vital staining with Evans Blue:Evidence of apoptosis in dystrophin−deficient muscle.J Biochem 118,959−964)。
免疫蛍光染色の結果、NM処置mdxマウス(図1E)では、ジストロフィン陽性コントロールのB10マウス(図1A)のようにジストロフィン陽性繊維が検出された。一方、NM非投与mdxマウス(図1C)では、筋繊維は全てジストロフィン陰性であった(図1C)。またEBD陽性繊維(図1B、D、F)は、対応する免疫蛍光染色では全てジストロフィン陰性であった。
薬物投与マウスにおけるジストロフィン陽性TA筋繊維の割合は、非投与mdxマウスよりも高く、薬物投与マウスとの間では既に報告されているGM(Arakawa,M.,Nakayama,Y.,Hara,T.,Shiozuka,M.,Takeda,S.,Kaga,K.,Kondo,S.,Morita,S.,Kitamura,T.,Matsuda,R.(2001)Negamycin can restore dystrophin in mdx skeletal muscle.Acta Myologica XX,154−158)に比べNM投与マウスのほうがジストロフィン陽性TA筋繊維の割合は高かった(図2)。膜透過性の増加を示した(EBD陽性)繊維の割合は、非投与動物より薬物投与動物において低く、薬物投与マウス間で比較するとGM投与マウスに比べNM処理マウスがより低いことが示された(図2)。
これら結果より、NM投与によりジストロフィンの発現を回復し得ることが示されるとともに、NMにより膜透過性を有する変性筋繊維の形成をより効果的に抑制し得ることが示された。
上記免疫蛍光染色等によって、NMがジストロフィンの発現を回復させ得ることが示されたことから、さらに詳細に、免疫沈降およびイムノブロッティングによりジストロフィンの発現を確認した。
上記NM投与またはNM非投与mdxマウスおよびB10マウスの左後肢筋(600mg)、横隔膜(100mg)および心筋(100mg)をそれぞれ、10%蔗糖および0.5mM EDTAを含むpH7.2のホモジナイズ溶液(ピロホスフェート混合液、20mM Na4P2O7、20mM NaH2PO4、および1mM MgCl2、pH7.1)15ml中、テフロンホモジナイザーを用い、最高速で1分間ホモジナイズした(Mitchell,R.D.,Palade,P.,and Fleicher,S.(1983)Purification of morphologically intact triad structures from skeletal muscle.J Cell Biol 96,1008−1016、Yoshida,M.,Suzuki,A.,Shimizu,T.,and Ozawa,E.(1992)Proteinase−sensitive sites on isolated rabbit dystrophin.J.Biochem 112,433−439)。ホモジネートをRAローター(KUBOTA)において9,000rpmで15分間遠心した。上清を回収し、さらにRAローターにおいて14,000rpmで30分間遠心して、ミクロソーム分画を作製した。ペレットを1%ジギトニン溶液(0.5M NaCl、0.5M蔗糖、0.1mM PMSF、50mMトリス塩酸、1U/mlアプロチニン、pH7.2)1mlに再溶解させた。
上記の通り調製されたmdxマウスおよびB10マウスの筋蛋白質消化試料を用い、アベら(Abe,M.,Saitoh,O.,Nakata,H.,Yoda,A.,and Matsuda,R.(1996)Expression of neurofilament proteins in proliferating C2C12 mouse skeletal muscle cells.Exp Cell Res 229,48−59)に記載された方法に従って免疫沈降を実施した。上記蛋白質消化試料をそれぞれ抗ジストロフィンモノクローナル抗体DYS2(10μl)[ノボカストラ、ニューカッスル、イギリス]と共に4℃で一晩インキュベートした。その後、さらに小麦アグルチニンセファロースCL−6B(30μl)(シグマ社、東京、日本)を加え、溶液を4℃で60分間インキュベートした。インキュベート後、4℃にて14,000rpm、5分間遠心した。遠心後、ペレットを0.2%NP−40のPBS溶液(500μl)によって3回洗浄し、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)試料緩衝液(62.5mMトリス塩酸、2%SDS、5mM EDTA、5%2−メルカプトエタノール、0.1mM PMSF、10%グリセロール、pH6.8)中で4分間沸騰させた。沸騰後、上清を回収して、蛋白質濃度をマイクロビュレット法によって決定した。
免疫沈降後の総蛋白質25μgに相当する試料を、4〜8%勾配ゲルを用いたSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)に供した。
SDS−PAGE後、イムノブロティングを行うために、蛋白質をゲルからニトロセルロースメンブレン(ゲルマンサイエンシズ)に転写した。メンブレンをブロッキング溶液(5%スキムミルクの25mMトリス塩酸[pH7.4]、137mM NaCl、2.68mM KCl、[TBS]、0.05%tween20:5%スキムミルクTBSTまたはPBST)に浸し、4℃で一晩処理した。ブロッキング後、ブロッキング溶液を用いて希釈したジストロフィン特異的抗体(抗ジストロフィンモノクローナル抗体DYS3、DYS2、100倍希釈[ノボカストラ、ニューカッスル、イギリス]、ウサギ抗ジストロフィンポリクローナル抗体、500倍希釈)と共に室温で1時間インキュベートした。5%スキムミルクTBSTまたはPBSTによって10分間、3回洗浄を行った後、メンブレンを5%スキムミルクTBSTによって1000倍または3000倍希釈したホースラディッシュペルオキシダーゼ結合二次抗体と共にインキュベートした。その後、TBSTまたはPBSTによって30分間、3回洗浄した。洗浄後のメンブレンを酵素化学発光(ECL)キット(アマシャムファルマシアバイオテック社、東京、日本)によって処理した後、X線フィルム、ハイパーフィルムECL(アマシャムファルマシアバイオテック社)に露出することによってジストロフィンの泳動パターンを可視化した。
イムノブロティングの結果、ジストロフィンのバンドは陽性コントロールB10マウスの後肢筋(図3(1)A、B、C)において予想通り検出された。また、これら陽性コントロールに比してバンド強度は低いが、NM投与mdxマウスの後肢筋においてもジストロフィンのバンドが検出された(図3(1)G、H、I)。また、後肢筋におけるジストロフィン発現結果によると、NM投与によるジストロフィン発現の回復(図3(2)A)は、正常なB10後肢筋におけるジストロフィン発現(図3(2)E)の約10%であると推定された。
[実施例3]mdx骨格筋細胞由来の不死化細胞(mdx−sk)に対するNMのジストロフィン回復効果
培養mdx骨格筋細胞におけるジストロフィンの回復を調べるために、まず、SV40T不死化mdxサテライト株であるmdx−skをmdxマウスから確立した。mdx−skの確立は、mdxマウスから採取したmdx筋芽細胞の初代培養に温度感受性型シミアンウイルス40ラージT抗原のcDNAを有するレトロウイルスベクター(ドリンクウォーター博士の寄贈)を導入することによって行った。レトロウイルスは、既に記述されているように(Morita,S.,Kojima,T.,Kitamura,T.(2000)Plat−E:an efficient and stable system for transient packaging of retroviruses.Gene Therapy 7,1063−1066)、パッケージング細胞株Plat−Eを用いることによって作製した。細胞株を20%仔ウシ胎児血清を添加したダルベッコ改変イーグル最小基本培地(DMEM)高グルコース型(4,500mg/l)中、32.5℃、CO2インキュベータにて培養、維持した。筋の分化を誘導するために、培地を分化培地(10%ウマ血清を含むイーグルMEM)に交換し、温度を39.5℃にシフトさせた。分化誘導後、細胞を増殖させて、NM(50μg/ml,2.0×10−4mol/kgまたは100μg/ml,4.0×10−4mol/kgの分化培地溶液)を加えた後、抗生物質不含培地中で7日間分化させた。C2C12細胞は生育培地で維持した後、分化培地に替えて38℃、CO2インキュベータにて培養した。
上記の通り確立されたmdx−sk細胞において、NMによりジストロフィンを回復させ得るかを調べるために、上記7日齢筋管培養物の分化培地にNMの50μg/mlおよび100μg/mlを加え、培養をさらに7日間継続した。培養(NM50μg/ml存在下)後、免疫蛍光染色によりジストロフィン回復の有無を検出した。mdx−sk細胞から培地を除去して、PBSによって2回洗浄した。細胞を100%エタノールによって15分間固定した後、0.5%トライトン−X100のPBS溶液によって10分間処理した。細胞をPBSによって10分間、3回洗浄した。ブロッキング溶液中で20%ウマ血清のPBS溶液と共に15分間プレインキュベートした後、細胞をPBSによって10分間、3回洗浄した。細胞を室温で一次抗体(ウサギ抗ジストロフィンポリクローナル抗体、東京大学ノノムラ博士の寄贈、2%ウシ血清アルブミン[BSA]を含むPBS溶液によって200倍希釈)と共に1時間インキュベートした。PBSによって10分間、3回洗浄した後、100倍希釈したフルオレセイン標識抗ウサギIgG(アマシャムファルマシアバイオテック、東京、日本)によって細胞を室温で1時間標識した後、蛍光顕微鏡を用いて調べた。
免疫蛍光染色の結果、NM非処理筋管では蛍光発光がほとんど観察されずジストロフィンの発現は見られないが(図4B,D)、一方、NM処理筋管では強い蛍光発光が観察され、ジストロフィンの発現が確認された(図4A,C)
また、上記培養細胞((NM(100μg/ml,4.0×10−4mol/kg)条件下)を用いたイムノブロットによりジストロフィンの検出も行った。まず、蛋白質を消化するために、Mdx−sk筋管(各10cmゼラチンコーティング皿)およびC2C12筋管を氷中にプールして、ホモジナイゼーション溶液(HS:20mMトリス塩酸[pH7.6]、150mM NaCl、1%ノニデットP−40[NP−40]、100μg/ml DNアーゼ、1mMフェニルメチルスルホニルフルオライド[PMSF]、1μg/ml N−トシル−L−フェニルアラニルクロロメチルケトン[TPCK]、1μg/ml N−トシル−L−リシルクロロメチルケトン[TLCK]、200U/mlアプロチニン、5mMエチレンジアミン四酢酸[EDTA])500μl中でホモジナイズした。
上記mdx−sk筋管蛋白質消化物を用い、実施例2と同様にアベら(前掲)に記載された方法に従って免疫沈降を実施した。mdx−skおよびC2C12筋管蛋白質消化物をそれぞれ9,000rpmで遠心後、上清を回収した。上清を抗ジストロフィンモノクローナル抗体DYS2(3μl)または抗ジストロフィンモノクローナル抗体MANDRA1(3μl)(シグマ社、東京、日本)と共に室温(RT)で60分間インキュベートした。プロテインAセファロースCL−4B(30μl)(シグマ社、東京、日本)を加えて、室温でさらに60分間インキュベートして、溶液を14,000rpmで5分間遠心した。ペレットを0.2%NP−40/PBS溶液(500μl)によって3回洗浄し、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)緩衝液中で5分間沸騰させた。
各10cm皿あたりの免疫沈降後の総蛋白質に相当する試料を、4〜8%勾配ゲルにてSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を行った。PAGE後は、実施例2と同様の方法で、ニトロセルロースメンブレン(ゲルマンサイエンシズ)への転写した後、特異的抗体(抗ジストロフィンモノクローナル抗体DYS3、DYS2、100倍希釈[ノボカストラ、ニューカッスル、イギリス]、ウサギ抗ジストロフィンポリクローナル抗体、500倍希釈)を用いてイムノブロッティングを行った。最終的にメンブレンをX線フィルムへの露光等を行うことにより、ジストロフィンの泳動パターンを可視化した。
イムノブロッティングによりジストロフィンの発現を可視化した結果、NM非処理のmdx−sk筋管サンプルでは427kDaの位置にバンドが全く検出されないが、NM処理したmdx−sk筋管サンプルでは(図5A,B)、ジストロフィン陽性C2C12筋管サンプル(図5D)と同様に427kDaの位置にジストロフィン発現によるバンドが明確に検出された。
[実施例4]NMの毒性試験
一般的にGMのようなアミノグリコシド系抗生物質は、重度の副作用に関連している。これらの抗生物質は、細菌感染症の治療のために日常的に用いられているが、それらはしばしば腎毒性と耳毒性を引き起こす。われわれは、薬物投与マウスにおける体重変化と聴力活性とを測定することによってNMの毒性を調べた。
薬物投与による体重変化の測定は、雄性mdxマウス(7週齢、各用量についてマウス4匹)にNM1.2×10−5mol/kg(有効量の1倍)、1.2×10−4mol/kg(10倍量)、6.0×10−4mol/kg(50倍量)、または1.2×10−3mol/kg(100倍量)を14日間毎日注射し、各マウスの体重を毎日測定することにより実施した。対照試験として、同様にmdxマウス(7週齢、各用量マウス2匹)にGM(1.2×10−3mol/kg[100倍量])を注射し、各マウスの体重を毎日測定した。
耳毒性の測定は、MdxマウスにNMまたはGMの1.2×10−4mol/kgを7日間毎日注射し、最後の注射の1日後にシャピロら(Shapiro,S.M.,Moller,A.R.,Shiu,G.K.Brain−stem auditory evoked potentials in rats with high−dose pentbarbital.(1984)Electroencephalogr Clin Neurophysiol 58,266−276)に従って聴性脳幹反応により聴力閾値を測定することにより実施した。
まず、聴性脳幹反応の評価によると、80dN以下の聴力の喪失はGM投与マウスに限って認められたが、NM投与マウスでは認められなかったことが示された(図7)。また、体重変化の測定では、コントロールのマウスと同様にNMの低用量(最小有効量の1倍および10倍)を投与したマウスの体重は連続的に増加した(図6におけるNM1、NM10)。しかし、NMの高用量(50倍および100倍)を投与したマウスでは体重は減少した(図6におけるNM50、NM100)。但し、NMの最高用量が致死的でなかったことは注目すべき点である。この結果とは対照的に、従来のGMの高用量(1.2×10−3mol/kg/日[100倍])では、投与したマウス全てが4時間以内に死亡した(図示せず)。このことは、NMはGMに比して毒性が極めて低いことを示している。
産業上の利用の可能性
上述の通り、本発明によればナンセンス変異によるジストロフィン発現欠損をin vitroおよびin vivoで回復させ得ることを明らかにした。そして、この発現回復の効果は従来のゲンタマイシンに比べ高く、かつ、ゲンタマイシンのような重篤な副作用をもたらさないことをも示した。従って、本発明の組成物は、筋ジストロフィー、嚢胞性繊維症、ハーラー症候群などのナンセンス変異が起因する疾患の治療薬として、ゲンタマイシンに代えてあるいはゲンタマイシンとの併用として、有効に利用し得る。
【図面の簡単な説明】
図1はネガマイシン投与および無投与mdx TA筋におけるジストロフィンの発現の有無と筋変性の割合を示す写真である。免疫蛍光とEBD染色は材料と方法に記載した通りに実施した。パネルA、CおよびEはそれぞれ、B10対照マウス、非投与mdxマウス、およびNM投与mdxマウスの抗ジストロフィン抗体を用いて免疫蛍光染色の結果を示す。パネルB、DおよびFはそれぞれ、B10対照マウス、非投与mdxマウス、およびNM投与mdxマウスのEBD染色パターンを示す。バーは100μm。
図2は抗生物質投与マウスのTA筋繊維におけるジストロフィン発現(免疫蛍光陽性繊維)および変性筋繊維(EBD色素陽性繊維)の割合を示すグラフである。黒色バー(図中「dys」として示す)はジストロフィン陽性繊維の割合を示し、灰色バー(図中「EB」として示す)はエバンスブルー陽性繊維の割合を示す。「NM」はMdxマウス(7週齢、各6匹)にNM1.2×10−5mol/kg/日のPBS溶液を、「GM」はGM1.2×10−5mol/kg/日のPBS溶液を、2週間皮下注射した。対照「mdx」マウス(n=6)およびC57BL/10(「B10」)(n=6)マウスにはPBS(0.1ml)のみを注射した。各マウスについて筋繊維約350〜550個を計数した(n=6)。バーは平均値±標準偏差を示す。
図3はジストロフィン発現をイムノブロティングにより解析した結果を示す写真である。(1)は、B10対照マウス(レーンA、B、C)、対照mdxマウス(レーンD、E、F)、NM投与mdxマウス(レーンG、H、I)におけるジストロフィンのイムノブロットの結果を示す。各マウス、左のレーンから後肢筋(A、D、およびG)、横隔膜(B、E、およびH)、心筋(C、F、およびI)におけるジストロフィン発現を示す。
(2)は後肢筋におけるジストロフィンのイムノブロットの結果を示す。レーンA:NM投与mdxマウス、B:試料緩衝液、C:NM投与mdx(Aの100倍)、D:NM非投与対照mdxマウス、E:B10対照マウス。
図4は培養mdx骨格筋細胞(mdx−sk)におけるジストロフィン発現の結果を示す写真である。CおよびDはそれぞれ、AおよびBに示す細胞のジストロフィン発現結果を示す。A、NM(ネガマイシン50μg/ml)処理筋管の位相差顕微鏡写真;B、NM非処理筋管の位相差顕微鏡写真;C、NM(ネガマイシン50μg/ml)処理筋管のジストロフィン染色;D、NM非処理筋管のジストロフィン染色。バーは40μmである。
図5は培養mdx骨格筋細胞(mdx−sk)におけるジストロフィン(427kDa)のイムノブロットの結果を示す写真である。AおよびBはNM(100μg/ml)を7日間処理した筋管のイムノブロットであり、Cは無処理mdx筋管、DはC2C12筋管のイムノブロットである。
図6はNM投与の際のmdxマウスの体重変化を表すグラフである。ネガマイシン投与mdxマウス(NM1:◆):NM1.2×10−5mol/kg投与、NM10(■):NM1.2×10−4mol/kg投与、NM50(▲):NM6.0×10−4mol/kg投与、NM100(×):NM1.2×10−3mol/kg投与、対照mdxマウス(実線■):NM非投与。
図7は抗生物質投与マウスの聴性脳幹反応による聴力測定結果を示す。A、B、Cはそれぞれ抗生物質未投与マウス、NM投与マウス、GM投与マウスにおける結果である。
本発明は、ナンセンス変異により生じる疾患の治療薬、特にナンセンス変異を読み過ごしを誘導する薬剤に関する。
背景技術
多くの遺伝疾患は、翻訳の未成熟な停止を誘導して、切断型の不活性かつ不安定な産物(Atkinson,J.,and Martin,R.(1994)Mutations to nonsense codons in human genetic disease:implications for gene thrapy by nonsense suppressor tRNAs.Nucleic Acid Res 22,1327−1334)を生じるヒト遺伝子の未成熟な終止変異(stop mutation)が原因である。その一例としてデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)があるが、この疾患は筋繊維鞘におけるジストロフィン蛋白質の欠如を特徴とする男性3500人に1人が罹患するX連鎖劣性障害である。
こうした終止変異が起因する疾患の解明および治療方法の開発等のため、DMDの動物モデルであるmdxマウスが存在する。このmdxマウスは、ジストロフィン遺伝子のヌクレオチド3,185位にナンセンス変異(CAAからTAA)を有し、その結果、エキソン23位に終止コドンが形成される(Bulfiled,G.,Siller,W.G.,Wight,PA.,Moore,K.J.(1989)X chromosome−linked muscular dystrophy(mdx)in the mouse.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81,1189−1192、Sicinski,P.,Geng,Y.,Ryder−Cook,A.S.,Barnard,E.A.Darlison,M.G.,Barnard,P.J.(1989)The molecular basis of muscular dystrophy in the mdx mouse.Science 244,1578−1582)。ここで形成された終止コドンは蛋白質を未成熟な状態で終止させ、これによってジストロフィンおよびジストロフィン関連糖蛋白質複合体の発現が阻害され、筋細胞膜でのこれらタンパク質等の欠乏がもたらされる。DMDの少年の65%では、遺伝子は明らかな転位(主に欠失または重複)を含むが、残りの35%はナンセンス変異または転写スプライシング部位に影響を及ぼす他の点突然変異を有するジストロフィン遺伝子を有する。現在、DMD患者およびmdxマウスの薬理学的治療は、プレドニゾンまたはデフラザコートのようなコルチコステロイドおよびコルチコステロイドの使用を軽減する薬剤であるアザチオプリンを用いて主に行われる。しかし、コルチコステロイドの使用は副作用を伴うため、その薬剤による利益は短期間の使用に限られる(Granchelli,J.A.,Pollina,C.,Hudecki,M.S.,(2000)Pre−clinical screening of drugs using the mdx mouse.Neuromuscular Disorders.10,235−239、Griggs,R.C.,Moxley,R.T 3rd.,Mendell J.R.,Fenichel,G.M.,Brooke,M.H.,Pestronk,A.,Miller,J.P.,Cwik,V.A.,Pandya,S.,and Robinson,J.(1993)Duchenne dystrophy:randomized,controlled trial of prednisone(18 months)and azothioprine.Neurology 43,520−527)。そのため、ジストロフィン遺伝子内で未成熟な終止変異を抑制する臨床的に有用な方法を同定することは、有意な数のDMD患者に対して利益をもたらすであろう。
最近、ナンセンス変異をターゲティングした化学療法の可能性が現れつつある。アミノグリコシド系抗生物質の一つであるゲンタマイシン(GM)は、翻訳の忠実度を低下させ、このようにナンセンス変異によって引き起こされた疾患に対して利用しやすい治療を提供する。GMの投与によって、真核細胞のみならず原核細胞においても蛋白質の翻訳の際に終止コドンの抑制が起こる。GMは既に、同様にナンセンス変異が原因で起こる嚢胞性繊維症(cystic fibrosis)、ハーラー疾患(Hurler’s disease)および乳児神経セロイドリポフスチン沈着症(infant neuronal ceroid lipofuscinosis)に関するヒト患者細胞による臨床試験においても用いられている。また、GMが薬剤処置mdxマウスにおいてジストロフィン機能を回復することが報告されている(Barton−Davis,E.R.,Cordiner,L.,Shoturma,D.I.,Leiland,S.E.,Sweeney,H.L.(1999)Aminoglycoside antibiotics restore dystrophin function to skeletal muscles of mdx mice.J Clin Invest 104,375−381)。そしてGM治療は、デュシェンヌ型および肢帯筋ジストロフィーに関して現在臨床試験中である。
しかしながら、GMは、他のアミノグリコシド系抗生物質と同様に、腎障害および聴力障害のような多くの副作用を引き起こす傾向があり、また一剤の長期使用は薬剤耐性細菌の出現を促進する。
発明の開示
上述の通り、GMのようなアミノグリコシド系抗生物質は現在のところナンセンス変異が起因する疾患の治療剤として有力な候補薬剤であるが、その副作用が重篤であるために、GMとは異なる他の終止コドン読み過ごし活性を有する薬剤候補物質が要求されている。文献において、1970年に日本で発見されたジペプチド系抗生物質であるネガマイシン(メチルヒドラジノ酢酸結合δ−ヒドロキシ−β−リジン:NM)も同様に、原核細胞翻訳系において終止コドンの読み過ごしを誘発することが報告されている(Hamada,M.,Takeuchi,T.,Kondo,S.,Ikeda,Y.,Naganawa,H.,Maeda,K.,Okami,Y.,and Umezawa,H.(1970)A new antibiotic,negamycin.J Antibiot Tokyo 23,170−171、Uehara,Y.,Hori,M.,Umezawa,H.(1974)Negamycin inhibits termination of protein synthesis directed by phage f2 RNA in vitro.Biochim Biophys Acta 374,82−95)。そこで、本願発明者らは、このNMによりナンセンス変異が起因する疾患の治療薬として使用し得るかをmdxマウスを用いて解析し、NMはin vivoおよびin vitroにおいて骨格筋にジストロフィンを回復させることを見出した。また、このNMはGMと同等あるいはそれ以上に読み過ごし誘導活性が高く有効である上にGMに比べ毒性が極めて低いことを見出した。すなわち、本願発明は、これら本願発明者らの知見に基づくものであり、具体的には次の通りである。
第一の態様はジペプチド系抗生物質を含む、ナンセンス変異に起因した疾患の治療用組成物である。
第二の態様は、上記第一の態様におけるジペプチド系抗生物質が、下記式(1)で表された化合物(分子量248)またはナンセンス変異の読み過ごしを促進し得る該化合物の類似物である組成物。
式(1)
第三の態様は、上記第一または第二の態様において、ナンセンス変異に起因した疾患が、筋ジストロフィー、嚢胞性繊維症、ハーラー疾患および乳児神経セロイドリポフスチン沈着症のいずれかである、組成物である。
本発明のナンセンス変異に起因した疾患の治療用組成物には、ジペプチド系構成物質が含まれる。ジペプチド系抗生物質は従来のゲンタマイシンなどのアミノグリコシド系抗生物質のような重篤な副作用がなく、また、ナンセンス変異の読み過ごしを促進し得るため、ゲンタマイシンなどに代えて或いはゲンタマイシンなどとの併用としてナンセンス変異に起因した疾患の治療に用いることができる。
ここで「ジペプチド系抗生物質」の好適な例として、ゲンタマイシンよりも読み過ごし促進活性が高い上記式(1)で表されたネガマイシン(メチルヒドラジノ酢酸結合δ−ヒドロキシ−β−リジン:NM)を挙げることができる。また、上記「ジペプチド系抗生物質」として、ネガマイシンと構造的に類似している化合物(以下「ネガマイシン類似物」と称する)をも含めることができる。ここでネガマイシン類似物とは、ネガマイシンと構造的に類似し、ネガマイシンと同様にナンセンス変異の読み過ごしを促進し得る活性を持っていれば、抗菌活性の大小は問わない。
ネガマイシンは、例えば、放線菌M890−C2株、MF752−NF9株の培養上清から得ることができる(Hamada,M.,Takeuchi,T.,Kondo,S.,Ikeda,Y.,Naganawa,H.,Maeda,K.,Okami,Y.,and Umezawa,H.(1970)A new antibiotic,negamycin.J Antibiot Tokyo 23,170−171)。ネガマイシン類似物については、上記放線菌株あるいは他の放線菌の培養上清からナンセンス変異の読み過ごしを促進し得る活性を指標に得ることも、また、天然から調製する以外に上記ネガマイシンを人工的に修飾して調製してもよい。人工的な修飾は、ナンセンス変異の読み飛ばし促進活性を調節する目的、製剤化や標的細胞へ薬剤を輸送するドラッグデリバリーなどの目的で加えられたものであってもよい。
また、「ナンセンス変異に起因した疾患」とは、ナンセンス変異が原因して遺伝子の機能が欠失することよりに生じた疾患であれば特に限定はなく、例えば、嚢胞性線維症(CFTR)、サラセミア(Beta−globin)、胃癌(APC)、血友病(FactorVIII,IX)、肺癌、卵巣癌等(p53)、デュシェンヌ型(dystrophin)および肢帯筋ジストロフィー(γ−sarcoglycan)等、肥満(insulin receptor)、フェニルケトン尿症(Phenylalanine hydroxylase)等(Atkinson,J.,and Martin,R.(1994)Mutations to nonsense codons in human genetic disease:implications for gene therapy by nonsense suppressor tRNAs.Nucleic Acid Res 22:1327−34)を含めることができる。このうち、嚢胞性線維症(Howard et al.Biochem Soc Trans,21:846−851(1996)、Wilschanski et al.Am J Respir Crit Care Med 161:860−865(2000)、Clancy JP.et al.Am J Respir Crit Care Med,163:1683(2001))、筋ジストロフィー(Barton−Davis et al.J Clin Invest,104:375−381(1999)、Wagner KR et al,Ann Neurol 49:706−711(2001))、ハーラー症候群(Hurler Syndrome)(Kim M.Keeling,et al.Human Mol.Gene.10:291−299(2001))、乳児神経セロイドリポフスチン沈着症(Late Infanitiile Neural Ceroid lipofucinosis)(2001 lysosomal tripeptidyl−peptidase 1:Sleat DE et al Europ J Paediatr Neurol 5 Suppl A:57−62(2001))は、ゲンタマイシンの読み過ごし活性を用いて治療研究がされていることから、このゲンタマイシンに代えてネガマイシンによりこれら疾患を治療してもよい。
上記ネガマイシンを用いてナンセンス変異の読み過ごしを誘導するためには、ネガマイシンを一日体重(kg)当たり1×10−7mol/kg〜1×10−2mol/kg、好ましくは1×10−6mol/kg〜1×10−3mol/kgを効果が生じる適切な期間、投与することにより実施することができる。また、患者へ投与するための剤型は特に限定はなく、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、水剤、注射剤などとすることができる。したがって、製剤化に当たっては、治療用組成物には、主成分である上記ネガマイシンなどのジペプチド系抗生物質以外に、必要に応じて薬学的に許容され得る賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、溶解補助剤、懸濁剤、コーティング剤等の補助剤を適宜含めることができる。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に制限されるものではない。
[実施例1] ネガマイシンの調製
フラスコ培養:C培地(2.0%グルコース、2.0%澱粉、2.0%大豆エキス、0.5%乾燥酵母、35%CaCO3,0.0005%CuSO4・5H2O,0.0005MnCl2・4H2O,0.005%ZnSO4・7H2O)60mlが入った500mlフラスコ、50本それぞれに、放線菌M890−C2株を植菌し、28度にて4日間振とう培養(220rpm)を行った。培養液をパーライト(4%)でろ過し、ろ液を回収した。ろ液を陰イオンカラムクロマトグラフィー(Diaion SA10A、1.5L、OH form)に通し、0.2N HCl溶液で溶出して、K−12株に対する抗菌活性画分を回収した(500ml毎に分画、フラクション番号12〜16)。この活性画分をアンモニア水で中和し、500mlまで減圧濃縮した。次に、この濃縮液を陽イオン交換樹脂(Amberlite CG50、250ml、NH4 form)に通し、0.1%アンモニア水で展開し、K−12株に対する抗菌活性画分を回収した(18g毎の分画、フラクション番号31〜70)。この活性画分を凍結乾燥し、淡褐色粉末32.8mgを得た。この粉末を緩衝液に再懸濁し、再度、陽イオン交換樹脂(Amberlite CG50、250ml、NH4 form)に通し、同様に0.1%アンモニア水で展開してK−12株に対する抗菌活性画分を回収した(200g毎の分画、フラクション番号6)。この活性画分を凍結乾燥し白色粉末13.8mgを得た。
ジャー培養:C培地5Lが入った培養用ジャーに放線菌M890−C2株を植菌し、28度、5L/分通気にて、5日間振とう培養(300rpm)を行った。培養液を上記フラスコ培養後と同様にパーライト(4%)でろ過し、ろ液を陰イオンカラムクロマトグラフィー(Diaion SA10A、1.5L、OH form)にかけ活性画分を回収した(500ml毎に分画、フラクション番号9〜12)。この活性画分をアンモニア水で中和、500mlに減圧濃縮した。この濃縮液を陽イオン交換樹脂にかけ、蒸留水1Lで洗浄した後、0.1%アンモニア水で展開し、活性画分を回収した(200g毎に分画、水洗画分とフラクション番号1〜2)。活性画分を凍結乾燥し、褐色粉末4.8gを得た。この粉末を緩衝液に再懸濁し、再度、陽イオン交換樹脂(Amberlite CG50、250ml、NH4 form)に通し、0.1%アンモニア水で展開して活性画分を回収した(200g毎の分画、フラクション番号15〜16)。この活性画分を凍結乾燥し褐色粉末27.7mgを得た。なお、二度目の陽イオン交換樹脂による精製の際、フラクション番6〜9にも抗菌活性が確認された。
[実施例2] 筋ジストロフィーモデルマウスへのネガマイシン投与によるジストロフィン発現の回復
ジストロフィンのモデルマウスとしてmdxマウスを用意した。NMは、溶液での保存中の分解を避けるために、mdxマウスへの注射直前にPBSに溶解しミリポアを用いて濾過した。バートン−デービスら(Barton−Davis,E.R.,Cordiner,L.,Shoturma,D.I.,Leiland,S.E.,Sweeney,H.L.(1999)Aminoglycoside antibiotics restore dystrophin function to skeletal muscles of mdx mice.J Clin Invest 104,375−381)によるGM実験と半分の濃度(1.2×10−5mol/kg)をPBSに溶解したNM溶液(137mM NaCl、2.68mM KCl、8.10mM Na2HSO4、1.47mM KH2PO4)をmdxマウス(雄性7週齢、各用量6匹)に2週間毎日皮下注射した。コントロールのmdxマウス(n=6)およびC57BL/10(B10、n=6)にはPBSのみ(0.1ml)を同様に2週間毎日皮下注射した。
注射後、免疫蛍光およびエバンスブルー染色によってジストロフィンの検出を行った。免疫蛍光染色は、ジストロフィンのC末端に対する抗体を用いて、次の方法により実施した。動物をエーテルガスの過剰量によって屠殺し、前脛骨(TA)筋を摘出して、免疫組織化学のために融解イソペンタン中で凍結した。凍結後、7μmの横断面凍結切片を調製した。凍結切片をブロッキング溶液中で20%ウマ血清のPBS溶液と共に15分間プレインキュベートした後、PBSによって10分間、3回洗浄した。次に切片を室温で一次抗体(ウサギ抗ジストロフィンポリクローナル抗体、東京大学ノノムラ博士の寄贈、2%ウシ血清アルブミン[BSA]を含むPBS溶液によって200倍希釈)と共に1時間インキュベートした。一次抗体と反応させた切片をPBSによって3回10分間洗浄した後、100倍希釈したフルオレセイン標識抗ウサギIgG(アマシャムファルマシアバイオテック、東京、日本)によって切片を室温で1時間標識した。二次抗体での標識後、蛍光顕微鏡にて蛍光発光に基づきジストロフィンの検出を行った。
エバンスブルー染色は、動物全てにエバンスブルー色素(EBD:2%EBDのPBS溶液、0.1ml)を屠殺の12時間前に腹腔内投与することにより実施した。EBD染色により透過性の膜を有する変性筋繊維が可視化される(Matsuda,R.,Nishikawa,A.,Tanaka,H.(1995)Visualization of dystrophic muscle fibers in mdx mice by vital staining with Evans Blue:Evidence of apoptosis in dystrophin−deficient muscle.J Biochem 118,959−964)。
免疫蛍光染色の結果、NM処置mdxマウス(図1E)では、ジストロフィン陽性コントロールのB10マウス(図1A)のようにジストロフィン陽性繊維が検出された。一方、NM非投与mdxマウス(図1C)では、筋繊維は全てジストロフィン陰性であった(図1C)。またEBD陽性繊維(図1B、D、F)は、対応する免疫蛍光染色では全てジストロフィン陰性であった。
薬物投与マウスにおけるジストロフィン陽性TA筋繊維の割合は、非投与mdxマウスよりも高く、薬物投与マウスとの間では既に報告されているGM(Arakawa,M.,Nakayama,Y.,Hara,T.,Shiozuka,M.,Takeda,S.,Kaga,K.,Kondo,S.,Morita,S.,Kitamura,T.,Matsuda,R.(2001)Negamycin can restore dystrophin in mdx skeletal muscle.Acta Myologica XX,154−158)に比べNM投与マウスのほうがジストロフィン陽性TA筋繊維の割合は高かった(図2)。膜透過性の増加を示した(EBD陽性)繊維の割合は、非投与動物より薬物投与動物において低く、薬物投与マウス間で比較するとGM投与マウスに比べNM処理マウスがより低いことが示された(図2)。
これら結果より、NM投与によりジストロフィンの発現を回復し得ることが示されるとともに、NMにより膜透過性を有する変性筋繊維の形成をより効果的に抑制し得ることが示された。
上記免疫蛍光染色等によって、NMがジストロフィンの発現を回復させ得ることが示されたことから、さらに詳細に、免疫沈降およびイムノブロッティングによりジストロフィンの発現を確認した。
上記NM投与またはNM非投与mdxマウスおよびB10マウスの左後肢筋(600mg)、横隔膜(100mg)および心筋(100mg)をそれぞれ、10%蔗糖および0.5mM EDTAを含むpH7.2のホモジナイズ溶液(ピロホスフェート混合液、20mM Na4P2O7、20mM NaH2PO4、および1mM MgCl2、pH7.1)15ml中、テフロンホモジナイザーを用い、最高速で1分間ホモジナイズした(Mitchell,R.D.,Palade,P.,and Fleicher,S.(1983)Purification of morphologically intact triad structures from skeletal muscle.J Cell Biol 96,1008−1016、Yoshida,M.,Suzuki,A.,Shimizu,T.,and Ozawa,E.(1992)Proteinase−sensitive sites on isolated rabbit dystrophin.J.Biochem 112,433−439)。ホモジネートをRAローター(KUBOTA)において9,000rpmで15分間遠心した。上清を回収し、さらにRAローターにおいて14,000rpmで30分間遠心して、ミクロソーム分画を作製した。ペレットを1%ジギトニン溶液(0.5M NaCl、0.5M蔗糖、0.1mM PMSF、50mMトリス塩酸、1U/mlアプロチニン、pH7.2)1mlに再溶解させた。
上記の通り調製されたmdxマウスおよびB10マウスの筋蛋白質消化試料を用い、アベら(Abe,M.,Saitoh,O.,Nakata,H.,Yoda,A.,and Matsuda,R.(1996)Expression of neurofilament proteins in proliferating C2C12 mouse skeletal muscle cells.Exp Cell Res 229,48−59)に記載された方法に従って免疫沈降を実施した。上記蛋白質消化試料をそれぞれ抗ジストロフィンモノクローナル抗体DYS2(10μl)[ノボカストラ、ニューカッスル、イギリス]と共に4℃で一晩インキュベートした。その後、さらに小麦アグルチニンセファロースCL−6B(30μl)(シグマ社、東京、日本)を加え、溶液を4℃で60分間インキュベートした。インキュベート後、4℃にて14,000rpm、5分間遠心した。遠心後、ペレットを0.2%NP−40のPBS溶液(500μl)によって3回洗浄し、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)試料緩衝液(62.5mMトリス塩酸、2%SDS、5mM EDTA、5%2−メルカプトエタノール、0.1mM PMSF、10%グリセロール、pH6.8)中で4分間沸騰させた。沸騰後、上清を回収して、蛋白質濃度をマイクロビュレット法によって決定した。
免疫沈降後の総蛋白質25μgに相当する試料を、4〜8%勾配ゲルを用いたSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)に供した。
SDS−PAGE後、イムノブロティングを行うために、蛋白質をゲルからニトロセルロースメンブレン(ゲルマンサイエンシズ)に転写した。メンブレンをブロッキング溶液(5%スキムミルクの25mMトリス塩酸[pH7.4]、137mM NaCl、2.68mM KCl、[TBS]、0.05%tween20:5%スキムミルクTBSTまたはPBST)に浸し、4℃で一晩処理した。ブロッキング後、ブロッキング溶液を用いて希釈したジストロフィン特異的抗体(抗ジストロフィンモノクローナル抗体DYS3、DYS2、100倍希釈[ノボカストラ、ニューカッスル、イギリス]、ウサギ抗ジストロフィンポリクローナル抗体、500倍希釈)と共に室温で1時間インキュベートした。5%スキムミルクTBSTまたはPBSTによって10分間、3回洗浄を行った後、メンブレンを5%スキムミルクTBSTによって1000倍または3000倍希釈したホースラディッシュペルオキシダーゼ結合二次抗体と共にインキュベートした。その後、TBSTまたはPBSTによって30分間、3回洗浄した。洗浄後のメンブレンを酵素化学発光(ECL)キット(アマシャムファルマシアバイオテック社、東京、日本)によって処理した後、X線フィルム、ハイパーフィルムECL(アマシャムファルマシアバイオテック社)に露出することによってジストロフィンの泳動パターンを可視化した。
イムノブロティングの結果、ジストロフィンのバンドは陽性コントロールB10マウスの後肢筋(図3(1)A、B、C)において予想通り検出された。また、これら陽性コントロールに比してバンド強度は低いが、NM投与mdxマウスの後肢筋においてもジストロフィンのバンドが検出された(図3(1)G、H、I)。また、後肢筋におけるジストロフィン発現結果によると、NM投与によるジストロフィン発現の回復(図3(2)A)は、正常なB10後肢筋におけるジストロフィン発現(図3(2)E)の約10%であると推定された。
[実施例3]mdx骨格筋細胞由来の不死化細胞(mdx−sk)に対するNMのジストロフィン回復効果
培養mdx骨格筋細胞におけるジストロフィンの回復を調べるために、まず、SV40T不死化mdxサテライト株であるmdx−skをmdxマウスから確立した。mdx−skの確立は、mdxマウスから採取したmdx筋芽細胞の初代培養に温度感受性型シミアンウイルス40ラージT抗原のcDNAを有するレトロウイルスベクター(ドリンクウォーター博士の寄贈)を導入することによって行った。レトロウイルスは、既に記述されているように(Morita,S.,Kojima,T.,Kitamura,T.(2000)Plat−E:an efficient and stable system for transient packaging of retroviruses.Gene Therapy 7,1063−1066)、パッケージング細胞株Plat−Eを用いることによって作製した。細胞株を20%仔ウシ胎児血清を添加したダルベッコ改変イーグル最小基本培地(DMEM)高グルコース型(4,500mg/l)中、32.5℃、CO2インキュベータにて培養、維持した。筋の分化を誘導するために、培地を分化培地(10%ウマ血清を含むイーグルMEM)に交換し、温度を39.5℃にシフトさせた。分化誘導後、細胞を増殖させて、NM(50μg/ml,2.0×10−4mol/kgまたは100μg/ml,4.0×10−4mol/kgの分化培地溶液)を加えた後、抗生物質不含培地中で7日間分化させた。C2C12細胞は生育培地で維持した後、分化培地に替えて38℃、CO2インキュベータにて培養した。
上記の通り確立されたmdx−sk細胞において、NMによりジストロフィンを回復させ得るかを調べるために、上記7日齢筋管培養物の分化培地にNMの50μg/mlおよび100μg/mlを加え、培養をさらに7日間継続した。培養(NM50μg/ml存在下)後、免疫蛍光染色によりジストロフィン回復の有無を検出した。mdx−sk細胞から培地を除去して、PBSによって2回洗浄した。細胞を100%エタノールによって15分間固定した後、0.5%トライトン−X100のPBS溶液によって10分間処理した。細胞をPBSによって10分間、3回洗浄した。ブロッキング溶液中で20%ウマ血清のPBS溶液と共に15分間プレインキュベートした後、細胞をPBSによって10分間、3回洗浄した。細胞を室温で一次抗体(ウサギ抗ジストロフィンポリクローナル抗体、東京大学ノノムラ博士の寄贈、2%ウシ血清アルブミン[BSA]を含むPBS溶液によって200倍希釈)と共に1時間インキュベートした。PBSによって10分間、3回洗浄した後、100倍希釈したフルオレセイン標識抗ウサギIgG(アマシャムファルマシアバイオテック、東京、日本)によって細胞を室温で1時間標識した後、蛍光顕微鏡を用いて調べた。
免疫蛍光染色の結果、NM非処理筋管では蛍光発光がほとんど観察されずジストロフィンの発現は見られないが(図4B,D)、一方、NM処理筋管では強い蛍光発光が観察され、ジストロフィンの発現が確認された(図4A,C)
また、上記培養細胞((NM(100μg/ml,4.0×10−4mol/kg)条件下)を用いたイムノブロットによりジストロフィンの検出も行った。まず、蛋白質を消化するために、Mdx−sk筋管(各10cmゼラチンコーティング皿)およびC2C12筋管を氷中にプールして、ホモジナイゼーション溶液(HS:20mMトリス塩酸[pH7.6]、150mM NaCl、1%ノニデットP−40[NP−40]、100μg/ml DNアーゼ、1mMフェニルメチルスルホニルフルオライド[PMSF]、1μg/ml N−トシル−L−フェニルアラニルクロロメチルケトン[TPCK]、1μg/ml N−トシル−L−リシルクロロメチルケトン[TLCK]、200U/mlアプロチニン、5mMエチレンジアミン四酢酸[EDTA])500μl中でホモジナイズした。
上記mdx−sk筋管蛋白質消化物を用い、実施例2と同様にアベら(前掲)に記載された方法に従って免疫沈降を実施した。mdx−skおよびC2C12筋管蛋白質消化物をそれぞれ9,000rpmで遠心後、上清を回収した。上清を抗ジストロフィンモノクローナル抗体DYS2(3μl)または抗ジストロフィンモノクローナル抗体MANDRA1(3μl)(シグマ社、東京、日本)と共に室温(RT)で60分間インキュベートした。プロテインAセファロースCL−4B(30μl)(シグマ社、東京、日本)を加えて、室温でさらに60分間インキュベートして、溶液を14,000rpmで5分間遠心した。ペレットを0.2%NP−40/PBS溶液(500μl)によって3回洗浄し、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)緩衝液中で5分間沸騰させた。
各10cm皿あたりの免疫沈降後の総蛋白質に相当する試料を、4〜8%勾配ゲルにてSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を行った。PAGE後は、実施例2と同様の方法で、ニトロセルロースメンブレン(ゲルマンサイエンシズ)への転写した後、特異的抗体(抗ジストロフィンモノクローナル抗体DYS3、DYS2、100倍希釈[ノボカストラ、ニューカッスル、イギリス]、ウサギ抗ジストロフィンポリクローナル抗体、500倍希釈)を用いてイムノブロッティングを行った。最終的にメンブレンをX線フィルムへの露光等を行うことにより、ジストロフィンの泳動パターンを可視化した。
イムノブロッティングによりジストロフィンの発現を可視化した結果、NM非処理のmdx−sk筋管サンプルでは427kDaの位置にバンドが全く検出されないが、NM処理したmdx−sk筋管サンプルでは(図5A,B)、ジストロフィン陽性C2C12筋管サンプル(図5D)と同様に427kDaの位置にジストロフィン発現によるバンドが明確に検出された。
[実施例4]NMの毒性試験
一般的にGMのようなアミノグリコシド系抗生物質は、重度の副作用に関連している。これらの抗生物質は、細菌感染症の治療のために日常的に用いられているが、それらはしばしば腎毒性と耳毒性を引き起こす。われわれは、薬物投与マウスにおける体重変化と聴力活性とを測定することによってNMの毒性を調べた。
薬物投与による体重変化の測定は、雄性mdxマウス(7週齢、各用量についてマウス4匹)にNM1.2×10−5mol/kg(有効量の1倍)、1.2×10−4mol/kg(10倍量)、6.0×10−4mol/kg(50倍量)、または1.2×10−3mol/kg(100倍量)を14日間毎日注射し、各マウスの体重を毎日測定することにより実施した。対照試験として、同様にmdxマウス(7週齢、各用量マウス2匹)にGM(1.2×10−3mol/kg[100倍量])を注射し、各マウスの体重を毎日測定した。
耳毒性の測定は、MdxマウスにNMまたはGMの1.2×10−4mol/kgを7日間毎日注射し、最後の注射の1日後にシャピロら(Shapiro,S.M.,Moller,A.R.,Shiu,G.K.Brain−stem auditory evoked potentials in rats with high−dose pentbarbital.(1984)Electroencephalogr Clin Neurophysiol 58,266−276)に従って聴性脳幹反応により聴力閾値を測定することにより実施した。
まず、聴性脳幹反応の評価によると、80dN以下の聴力の喪失はGM投与マウスに限って認められたが、NM投与マウスでは認められなかったことが示された(図7)。また、体重変化の測定では、コントロールのマウスと同様にNMの低用量(最小有効量の1倍および10倍)を投与したマウスの体重は連続的に増加した(図6におけるNM1、NM10)。しかし、NMの高用量(50倍および100倍)を投与したマウスでは体重は減少した(図6におけるNM50、NM100)。但し、NMの最高用量が致死的でなかったことは注目すべき点である。この結果とは対照的に、従来のGMの高用量(1.2×10−3mol/kg/日[100倍])では、投与したマウス全てが4時間以内に死亡した(図示せず)。このことは、NMはGMに比して毒性が極めて低いことを示している。
産業上の利用の可能性
上述の通り、本発明によればナンセンス変異によるジストロフィン発現欠損をin vitroおよびin vivoで回復させ得ることを明らかにした。そして、この発現回復の効果は従来のゲンタマイシンに比べ高く、かつ、ゲンタマイシンのような重篤な副作用をもたらさないことをも示した。従って、本発明の組成物は、筋ジストロフィー、嚢胞性繊維症、ハーラー症候群などのナンセンス変異が起因する疾患の治療薬として、ゲンタマイシンに代えてあるいはゲンタマイシンとの併用として、有効に利用し得る。
【図面の簡単な説明】
図1はネガマイシン投与および無投与mdx TA筋におけるジストロフィンの発現の有無と筋変性の割合を示す写真である。免疫蛍光とEBD染色は材料と方法に記載した通りに実施した。パネルA、CおよびEはそれぞれ、B10対照マウス、非投与mdxマウス、およびNM投与mdxマウスの抗ジストロフィン抗体を用いて免疫蛍光染色の結果を示す。パネルB、DおよびFはそれぞれ、B10対照マウス、非投与mdxマウス、およびNM投与mdxマウスのEBD染色パターンを示す。バーは100μm。
図2は抗生物質投与マウスのTA筋繊維におけるジストロフィン発現(免疫蛍光陽性繊維)および変性筋繊維(EBD色素陽性繊維)の割合を示すグラフである。黒色バー(図中「dys」として示す)はジストロフィン陽性繊維の割合を示し、灰色バー(図中「EB」として示す)はエバンスブルー陽性繊維の割合を示す。「NM」はMdxマウス(7週齢、各6匹)にNM1.2×10−5mol/kg/日のPBS溶液を、「GM」はGM1.2×10−5mol/kg/日のPBS溶液を、2週間皮下注射した。対照「mdx」マウス(n=6)およびC57BL/10(「B10」)(n=6)マウスにはPBS(0.1ml)のみを注射した。各マウスについて筋繊維約350〜550個を計数した(n=6)。バーは平均値±標準偏差を示す。
図3はジストロフィン発現をイムノブロティングにより解析した結果を示す写真である。(1)は、B10対照マウス(レーンA、B、C)、対照mdxマウス(レーンD、E、F)、NM投与mdxマウス(レーンG、H、I)におけるジストロフィンのイムノブロットの結果を示す。各マウス、左のレーンから後肢筋(A、D、およびG)、横隔膜(B、E、およびH)、心筋(C、F、およびI)におけるジストロフィン発現を示す。
(2)は後肢筋におけるジストロフィンのイムノブロットの結果を示す。レーンA:NM投与mdxマウス、B:試料緩衝液、C:NM投与mdx(Aの100倍)、D:NM非投与対照mdxマウス、E:B10対照マウス。
図4は培養mdx骨格筋細胞(mdx−sk)におけるジストロフィン発現の結果を示す写真である。CおよびDはそれぞれ、AおよびBに示す細胞のジストロフィン発現結果を示す。A、NM(ネガマイシン50μg/ml)処理筋管の位相差顕微鏡写真;B、NM非処理筋管の位相差顕微鏡写真;C、NM(ネガマイシン50μg/ml)処理筋管のジストロフィン染色;D、NM非処理筋管のジストロフィン染色。バーは40μmである。
図5は培養mdx骨格筋細胞(mdx−sk)におけるジストロフィン(427kDa)のイムノブロットの結果を示す写真である。AおよびBはNM(100μg/ml)を7日間処理した筋管のイムノブロットであり、Cは無処理mdx筋管、DはC2C12筋管のイムノブロットである。
図6はNM投与の際のmdxマウスの体重変化を表すグラフである。ネガマイシン投与mdxマウス(NM1:◆):NM1.2×10−5mol/kg投与、NM10(■):NM1.2×10−4mol/kg投与、NM50(▲):NM6.0×10−4mol/kg投与、NM100(×):NM1.2×10−3mol/kg投与、対照mdxマウス(実線■):NM非投与。
図7は抗生物質投与マウスの聴性脳幹反応による聴力測定結果を示す。A、B、Cはそれぞれ抗生物質未投与マウス、NM投与マウス、GM投与マウスにおける結果である。
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