JPWO2002083142A1 - アリールエテンスルホンアミド誘導体の新規な用途 - Google Patents
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Abstract
N−[6−メトキシ−5−(2−メトキシフェノキシ)−2−(ピリミジン−2−イル)−ピリミジン−4−イル]−2−フェニルエテンスルホンアミド又はその製薬学的に許容される塩の新規な用途。即ち、N−[6−メトキシ−5−(2−メトキシフェノキシ)−2−(ピリミジン−2−イル)−ピリミジン−4−イル]−2−フェニルエテンスルホンアミド又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する排尿困難症治療用医薬組成物。
Description
技術分野
本発明は、N−[6−メトキシ−5−(2−メトキシフェノキシ)−2−(ピリミジン−2−イル)−ピリミジン−4−イル]−2−フェニルエテンスルホンアミド又はその塩の新規な用途に係るものである。即ち、N−[6−メトキシ−5−(2−メトキシフェノキシ)−2−(ピリミジン−2−イル)−ピリミジン−4−イル]−2−フェニルエテンスルホンアミド又はその塩を有効成分とする排出障害治療用医薬組成物に係るものである。
背景技術
排尿障害は、▲1▼排尿困難・残尿の増加をきたし、最たる状態は尿閉となる尿の出にくい症状を指す排出障害と、▲2▼頻尿・尿失禁等の症状を主体とする、膀胱に十分尿をためられない症状を指す蓄尿障害とに分類される。
排尿障害の一つである排出障害は、その原因により膀胱機能によるもの、下部尿路の閉塞に伴うもの等に分類され、下部尿路の閉塞による排出障害は、尿道に原因のあるものと成人男性における前立腺に原因のあるものに分類される。前立腺に原因がある排出障害の代表的なものとして、前立腺肥大症による排出障害が挙げられる。前立腺肥大症による排出障害は、前立腺の肥大(機械的閉塞)や、α1受容体の増加等による前立腺平滑筋の過剰収縮(機能的閉塞)に伴う前立腺部尿道の前立腺による圧迫により排尿困難をきたす疾患である。
一方、尿道に原因のある排出障害は、尿道結石や、前立腺部尿道に限らない下部尿路全体に及ぶ尿道狭窄等により起こる排出障害で、前立腺の肥大や前立腺平滑筋の過剰収縮による前立腺部尿道の圧迫による排出障害とは区別される。
エンドセリン(以下「ET」という。)はアミノ酸21個よりなる内因性の生理活性ペプチドであり、アミノ酸配列がわずかに異なる、ET−1、ET−2及びET−3の3種のイソペプチドの存在が知られている。ETは、標的細胞膜上のET受容体と結合することによりその生理活性を発現し、ET受容体としては、いままでに少なくとも、ETA及びETB受容体の2種のサブタイプが存在することが知られている。ETA受容体はET−3よりもET−1及びET−2に対して高い親和性を示し、ETB受容体はET−1、ET−2及びET−3に対して同等の親和性を示す。
N−[6−メトキシ−5−(2−メトキシフェノキシ)−2−(ピリミジン−2−イル)−ピリミジン−4−イル]−2−フェニルエテンスルホンアミド(以下、「化合物A」という。)又はその塩は、国際公開第97/22595号公報に開示されており、ETA受容体に対するET−1の結合抑制作用、及びET−1誘発性の血管収縮・昇圧に対する抑制作用が具体的に開示されているが、それ以外の作用については具体的開示はない。その一方、ETが関与している可能性が指摘されている疾患として、例えば、本態性高血圧、肺性高血圧、エリスロポエチン誘発高血圧、サイクロスポリンA誘発高血圧、気管支喘息、急性腎不全、慢性腎不全、糸球体腎炎、サイクロスポリン誘発腎不全、急性心筋梗塞、不安定狭心症、慢性心不全、主としてくも膜下出血後の脳血管れん縮、脳虚血障害、尿失禁、良性前立腺肥大、動脈硬化、レイノー症候群、糖尿病性末梢循環障害、糖尿病性腎症、子癇前症、早産、消化性かいよう、肝不全、リウマチ、PTCA後の再狭窄、慢性呼吸不全、慢性閉塞性肺疾患、肺性心、急性呼吸不全、肺水腫、阻血性肝障害、成人呼吸促迫症候群、間質性肺炎、肺繊維症、緑内障、変形性関節症、慢性関節リウマチ、肝硬変、炎症性腸疾患、癌等の多数の疾患名が挙げられている。
しかしながら、排出障害、特に前立腺を含んだ下部尿路全体にわたる過剰収縮に伴う排出障害に関する開示はない。
発明の開示
本発明者は、新規な治療薬の創製を目的として、化合物A又はその塩のさらに具体的な疾患に対する治療可能性について鋭意検討を行った結果、化合物A又はその塩が、意外にも、前記国際公開第97/22595号公報に具体的に開示されていない、ET−1産生の亢進により誘発される下部尿路全体の尿道収縮に伴う排出障害の改善に有効であることを見出した。特に、前立腺肥大症における肥大した前立腺による前立腺部尿道の機械的圧迫や前立腺平滑筋の過剰収縮による排出障害のみならず、下部尿路全体のETによる収縮に伴う排出障害に対しても実際に有効であることを見出した。即ち、前立腺部尿道の前立腺による圧迫のない場合における排出障害に対しても、実際に有効であることを見出した。
詳細には、以下の通りである。
ET−1は内皮細胞以外にもヒト前立腺上皮細胞や前立腺癌細胞において産生され、前立腺平滑筋の収縮や増殖を引き起こすことが報告されている(J.Clin.End.Metab.,82(2),508−513,1997、Gen.Pharmac.,27(6),1061−1065,1996、Eur.J.Pharmacol.,349,123−128,1998)。また、α1受容体刺激薬である塩酸フェニレフリンとET−1の前立腺標本に対する収縮活性を比較するとET−1の方がより低濃度で持続的な前立腺収縮を引き起こすことも報告されている(J.Urol.,158,253−257,1997)。化合物A又はその塩は、後記の試験例1に示すように、摘出ウサギ下部尿路標本においてET−1による収縮に対して抑制作用を示した。
また、化合物A又はその塩は、後記試験例2に示すように、麻酔イヌへのET−1局所投与による前立腺部尿道内圧上昇に対し、用量依存的な抑制作用を示した。麻酔イヌにおいて、塩酸フェニレフリン(2μg/kg i.a.)及びET−1(0.4μg/kg i.a.)の局所投与は血圧及び心拍数に大きな影響を及ぼさずに前立腺部尿道内圧(PUP)を大きく上昇させた。用量反応を比較すると、PUPの最大上昇度は塩酸フェニレフリンの方が大であったが、ET−1によるPUP上昇反応の方が低濃度より発現し、より持続的であった。この結果は摘出イヌ前立腺標本におけるin vitroの報告(J.Urol.,155,1758−1761,1996)とよく一致するが、イヌとは異なり摘出ヒト前立腺標本においては、ET−1は塩酸フェニレフリンと同程度の収縮を惹起するという報告もある(J.Urol.,150,495−499,1993)。
さらに、化合物A又はその塩は、後記試験例3に示すように、麻酔イヌへのET−1静脈内投与による前立腺部尿道を含む下部尿路全体の尿道内圧上昇に対し抑制作用を示した。麻酔イヌにおいて、塩酸フェニレフリン(30μg/kg i.v.)の静脈内投与は、血圧上昇に並行して、主に前立腺部の尿道内圧を大きく上昇させるのに対し、ET−1(1μg/kg i.v.)は血圧にほとんど影響を与えずに前立腺部尿道以外の尿道を含む下部尿路の尿道内圧を上昇させた。図10に示すように、ET−1によって誘発される下部尿路全体の尿道内圧上昇は、化合物Aのカリウム塩の前投与により完全に抑制された。即ち、化合物A又はその塩は、前立腺部に限定しないETによる下部尿路全体の過剰収縮に対しても、実際に抑制作用を示した。
また、化合物A又はその塩は、後記試験例4に示すように、α1受容体遮断薬である塩酸タムスロシン存在下の麻酔イヌのET−1誘発の下部尿路の尿道内圧上昇に対して抑制作用を示した。摘出ヒト前立腺標本のET−1による収縮作用はα1受容体遮断薬で抑制されないことが知られている(J.Urol.,150,495−499,1993)。塩酸タムスロシンは麻酔イヌにおいて定常状態の前立腺部尿道内圧を低下させるが、ET−1は塩酸タムスロシン存在下においても前立腺部尿道を含む下部尿路の尿道内圧を上昇させた。塩酸タムスロシン存在下におけるET−1誘発尿道内圧の上昇は、前立腺部以外の尿道において顕著であった。
なお、化合物Aのカリウム塩は、後記の試験例5に示すように、臨床試験において排尿困難を伴う前立腺癌患者の国際前立腺症状スコア(I−PSS)を、経口投与によって改善した。
さらに、ヒト前立腺上皮細胞株がET−1産生能を有すること(J.Clin.End.Metab.,82(2),508−513,1997)、及びET−1がETA受容体を介して前立腺平滑筋細胞を増殖させること(Eur.J.Pharmacol.,349,123−128,1998)、ヒト前立腺癌細胞株がET−1産生能を有すること(Nat.Med.,1(9),944−949,1995)、及びET−1がETA受容体を介してヒト前立腺癌細胞の増殖能を示すこと(Cancer Res.,56,663−668,1996)、前立腺肥大症患者の前立腺細胞におけるET−1産生が亢進していること(Gen.Pharmac.,27(6),1061−1065,1996)、炎症性細胞がET−1産生能を有することが報告されていることから、これら報告とET−1が下部尿路を収縮させ尿道内圧を上昇させる前述の結果を併せて考えると、化合物A又はその塩は、ET産生の亢進する前立腺癌、前立腺肥大症、前立腺炎等の前立腺疾患において、前立腺を含む下部尿路全体の過剰収縮及び/又は前立腺の肥大を抑制し、これらの症状に伴う排出障害の改善に有効であると言える。
さらに、α1受容体遮断薬の臨床効果は尿流測定で40−70%の改善率であること(臨床と研究,74(2),50−53,1997)と、本発明によって示されたα1受容体遮断薬との作用機序の違いから、化合物A又はその塩は、α1受容体遮断薬との併用によってより効果を奏する排出障害治療剤であると言える。
従って、本発明の有効成分は、前立腺の肥大や過剰収縮による前立腺部尿道の前立腺による圧迫に伴う排出障害のみならず、ETによって誘発される下部尿路全体の収縮による排出障害を改善することができ、さらに、前立腺癌、前立腺肥大、前立腺炎等の前立腺疾患によるET誘発性の排出障害を改善することができる。
即ち、本発明によれば、化合物A又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する、排出障害治療用医薬組成物;ET誘発性の下部尿路収縮抑制用医薬組成物である排出障害治療用医薬組成物;前立腺疾患によるET誘発性の下部尿路収縮抑制用医薬組成物である排出障害治療用医薬組成物;前立腺癌及び/又は前立腺肥大症及び/又は前立腺炎によるET誘発性の下部尿路収縮抑制用医薬組成物である排出障害治療用医薬組成物;あるいは、α1受容体遮断薬と併用して用いられることを特徴とする排出障害治療用医薬組成物;が提供される。
また、本発明は、排出障害治療剤;ET誘発性の下部尿路収縮抑制剤である排出障害治療剤;前立腺疾患によるET誘発性の下部尿路収縮抑制剤である排出障害治療剤;前立腺癌及び/又は前立腺肥大症及び/又は前立腺炎によるET誘発性の下部尿路収縮抑制剤である排出障害治療剤;あるいは、α1受容体遮断薬と併用して用いられることを特徴とする排出障害治療剤;の製造のための化合物A又はその製薬学的に許容される塩の使用に関する。
また、本発明によれば、化合物A又はその製薬学的に許容される塩の治療有効量を患者に投与することを含む、排出障害治療方法;ET誘発性の下部尿路収縮抑制方法である排出障害治療方法;前立腺疾患によるET誘発性の下部尿路収縮抑制方法である排出障害治療方法;前立腺癌及び/又は前立腺肥大症及び/又は前立腺炎によるET誘発性の下部尿路収縮抑制方法である排出障害治療方法;あるいは、α1受容体遮断薬と併用して行われることを特徴とする排出障害治療方法が提供される。
なお、本発明の有効成分は、特に経口吸収性に優れるため、優れた経口治療薬となりうる。
本発明をさらに詳細に説明すると以下の通りである。
本明細書において、「排出障害」とは、排尿困難・残尿の増加をきたし、最たる状態は尿閉となる尿の出にくい症状を指し、即ち、尿の排出障害を意味する。
また、「下部尿路収縮抑制」とは、ET等により誘発される膀胱基部、前立腺、前立腺部尿道を含む尿道等の下部尿路全体の収縮を抑制することを意味する。
また、本発明の有効成分と併用できるα1受容体遮断薬としては、塩酸プラゾシン、塩酸テラゾシン、ウラピジル、塩酸タムスロシン、塩酸ブナゾシン、ドキサゾシン、ナフトピジル等が挙げられ、特に好ましくは塩酸タムスロシンである。
本発明の医薬の有効成分は、化合物A又はその製薬学的に許容される塩である。かかる塩とは、前記国際公開第97/22595号公報に記載された塩が挙げられ、具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、アスパラギン酸又はグルタミン酸等の有機酸との酸付加塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の無機塩基、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、リジン、オルニチン等の有機塩基との塩やアンモニウム塩等が挙げられる。特に好ましいものとしてカリウム塩が挙げられる。
また、本発明の有効成分には、各種異性体の混合物及びその単離されたもの、水和物、溶媒和物の全てが含まれる。また本発明の有効成分は結晶多形を有する場合もあり、それら結晶形の全てを包含する。
これらの化合物は前記国際公開第97/22595号公報に記載された製法により、あるいはそれに準じて容易に入手可能である。
本発明の薬剤は、経口又は非経口投与に適した有機又は無機の担体、賦形剤、その他の添加剤を用いて、常法に従って、経口固形製剤、経口液状製剤又は注射剤として調製することができる。本発明の医薬の有効成分は優れた経口吸収性を有することから、本発明の薬剤は経口製剤に適する。最も好ましいのは患者が自ら容易に服用でき、かつ、保存や持ち運びに便利な経口固形製剤である。
経口固形製剤としては、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、徐放剤等が用いられる。このような固体組成物においては、1種以上の活性物質が、少なくとも1種の不活性な希釈剤、例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、コーンスターチ、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等と混合される。組成物は常法に従って、不活性な希釈剤以外の添加剤、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、スターチ、タルク等の潤滑剤;繊維素グリコール酸カルシウム、カルメロースカルシウム等の崩壊剤;ラクトース等の安定化剤;グルタミン酸又はアスパラギン酸等の溶解補助剤;ポリエチレングリコール等の可塑剤;酸化チタン、タルク、黄色酸化鉄等の着色剤;を含有していてもよい。錠剤又は丸剤は必要によりショ糖、ゼラチン、寒天、ペクチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等の糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性のフィルムで被覆してもよい。
経口液状製剤は、薬剤学的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば精製水、エタノールを含む。この組成物は不活性な希釈剤以外に湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
静脈注射、筋肉注射、皮下注射等の注射剤としては、無菌の水性又は非水性の溶液剤、懸濁剤、乳濁剤を含有する。水性の溶液剤、懸濁剤の希釈剤としては、例えば注射用蒸留水及び生理食塩水が含まれる。非水性の溶液剤、懸濁剤の希釈剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、ポリソルベート80等がある。このような組成物は、さらに防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、例えばラクトースのような安定剤、例えばグルタミン酸やアスパラギン酸のような溶解補助剤等のような補助剤を含んでいてもよい。これらは例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。これらはまた無菌の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解して使用することもできる。
本発明の有効成分化合物の投与量は、投与ルート、疾患の症状、投与対象の年齢、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定されるが、通常経口投与の場合成人1人当たり、有効成分約0.1〜300mg/day、好ましくは1〜60mg/dayであり、これを1〜2回に分けて投与することができる。
なお、本発明の薬剤は前立腺疾患に伴う排尿困難症の治療に用いられる他の薬剤と同時に又は時間をおいて併用することができる。例えば、本発明の薬剤を併用することが可能である薬剤として、塩酸プラゾシン、塩酸テラゾシン、ウラピジル、塩酸タムスロシン、塩酸ブナゾシン、ドキサゾシン、ナフトピジル等のα1受容体遮断剤;塩酸プロピベリン、塩酸フラボキサート、塩酸オキシブチニン、トルテロジン、トロスピウム、ヒョースシアミン等の抗コリン剤や膀胱平滑筋弛緩剤;塩酸クレンブテロール等のβ受容体刺激剤;塩化ベタネコール、臭化ジスチグミン等の四級アンモニウム塩製剤;デスモプレッシン等の抗利尿ホルモン剤;塩酸アミトリプチリン、イミプラミン等の抗うつ剤やマイナートランキナイザー;八味地黄丸等の漢方製剤;L−グルタミン酸、L−アラニン、アミノ酢酸等のアミノ酸配合剤;花粉製剤;植物エキス配合剤;等が挙げられる。
また、本発明の薬剤は前立腺癌や前立腺炎の治療に用いられる他の薬剤と同時に又は時間をおいて併用することができる。例えば、本発明の薬剤を併用することが可能である薬剤として、イフォスファミド、テガフール・ウラシル等の抗悪性腫瘍剤;エチニルエストラジオール等の卵胞ホルモン;ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン等の副腎皮質ホルモン;酢酸クロルマジノン等の黄体ホルモン;酢酸ゴセレリン、酢酸リュープロレリン等のLH−RHアゴニスト;シスプラチン等の抗悪性腫瘍白金錯体化合物;フルタミド、ビカルタミド、アリルエストレノール、オキセンドロン等の抗アンドロゲン剤;リン酸エストラムスチンナトリウム、ホスフェストロール等の前立腺癌治療剤;硫酸ペプロマイシン等の抗腫瘍性抗生物質;ノルフロキサシン、トシル酸トスフロキサシン、レボフロキサシン、塩酸シプロフロキサシン等のピリドンカルボン酸系抗菌剤;セフタジジム等のセフェム系抗生物質製剤等が挙げられる。
発明を実施するための最良の形態
以下、実施例及び試験例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。なお、以下の実施例、試験例において用いられる化合物1は化合物Aのカリウム塩を意味する。
実施例1:カプセル剤
表1に示す成分を混合し、カプセルに充填してカプセル剤を製造した。
試験例1 摘出ウサギ下部尿路標本におけるET−1収縮に対する抑制効果
(方法)
雄性日本白色ウサギ(3〜5kg、北山ラベス(株))を実験に供した。ウサギから前立腺、尿道及び膀胱を摘出し、輪状方向の平滑筋標本を作製した。膀胱は背側部位から膀胱基部の標本を作製した。各標本を37℃のKrebs−Henselit溶液を満たしたorgan bathに懸垂し、95%O2−5%CO2ガスを通気した。静止張力は1gとし、張力変化は等尺性に測定した。尚、ET−1の吸着を防止するためorgan bathには予めシリコン処理を施した。60分間の平衡時間をおいた後、10μM塩酸フェニレフリンで2回収縮させ、反応が一定になった後、本実験を開始した。
ET−1(0.1〜1000nM)、塩酸フェニレフリン(0.01〜100μM)、S6c(1〜1000nM)又はアセチルコリン(0.01〜1000μM)を累積的に投与し、濃度反応曲線を得た。また、化合物1(0.1〜10μM)あるいは溶媒(蒸留水)を30分間処置した後ET−1(0.1〜1000nM)を累積的に投与し、濃度反応曲線を得た。各収縮薬の収縮反応は直前に得られた塩酸フェニレフリン(10μM)による収縮を100%として示した。
ET−1による最大収縮の50%を引き起こす濃度(EC50)を回帰分析により求め、化合物1存在下におけるET−1の濃度反応曲線のEC50と溶媒処置下のET−1の濃度反応曲線のEC50から用量比を求め、得られた用量比と用いた化合物1の濃度からSchildの方法によってpA2及び傾きを決定した。
(結果)
▲1▼各収縮薬の濃度反応比較
図1に示すように、ET−1、塩酸フェニレフリン及びアセチルコリンは濃度依存的に摘出ウサギ前立腺、尿道及び膀胱基部標本を収縮させた。アセチルコリンは1000μMにおいても最大収縮に達しなかった。これら3種の標本に対するET−1の最大収縮は塩酸フェニレフリン収縮の35〜65%であったが、感受性(EC50)は約200〜300倍高かった。また、これらの標本においてはETB受容体アゴニストであるS6cによる収縮はほとんど認められず、ETB受容体を介する収縮機序は関与しないと考えられた。
▲2▼ET−1収縮に対する化合物1の作用
図2に示すように、ウサギ前立腺、尿道及び膀胱基部標本において化合物1は濃度依存的にET−1収縮の濃度反応曲線を右方へシフトさせ、そのpA2はそれぞれ6.5(傾き:1.54)、6.7(傾き:0.82)及び6.6(傾き:1.32)であった。
試験例2 麻酔イヌにおけるET−1の動脈内局所投与による前立腺部尿道内圧上昇作用
(方法)
雄性ビーグルイヌ(体重8〜15kg)をペントバルビタール麻酔下に人工呼吸を行い、血圧及び心拍数測定用、ET−1もしくは塩酸フェニレフリン投与用として左大腿動脈にサーモダイリューションカテーテル(5Fr、4ルーメン)を挿入し、化合物1投与用として左大腿静脈に7Frカテーテルを挿入した。また外尿道口より膀胱に向かって、バルーン内を水に置換した尿道内圧測定用カテーテル(サーモダイリューションカテーテル(6Fr、4ルーメン))を挿入した。手術後の循環動態の安定を待ち、バルーンを前立腺部尿道に固定して膨らませ、バルーン内の圧変化で前立腺部尿道内圧(PUP)を測定した。予め塩酸フェニレフリン(8μg/kg i.a.)で2回以上収縮させ、十分な反応が得られることを確認し、安定させた後に薬物の作用検討を行なった。
ET−1及び塩酸フェニレフリンの作用の検討には、左大腿動脈より挿入したカテーテルを用いて外腸骨動脈分岐部のわずかに上部に薬物を動脈内投与し、内腸骨動脈の支配領域に作用させることによって、ET−1(0.006〜0.8μg/kg i.a.、モル濃度で0.0025〜0.321nmol/kg i.a.)及び塩酸フェニレフリン(0.06〜8μg/kg i.a.、モル濃度で0.307〜39.3nmol/kg i.a.)の局所投与を行ない、PUP上昇作用の用量反応を比較検討した。この時、対側の外腸骨動脈に薬物が流出しないよう右大腿動脈を閉塞させておいた。
化合物1(0.1〜3mg/kg)を5分前に静脈内投与した後にET−1(0.2μg/kg)を動脈内投与してPUPを測定し、ET−1のPUP上昇作用に対する化合物1の拮抗作用の用量依存性を検討した。ET−1の用量は予備検討において、血圧等に影響を与えずに十分に尿道内圧を上昇させ、繰り返し投与が可能な0.2μg/kg i.a.の用量を用いた。
実験には塩酸フェニレフリン(8μg/kg i.a.)での前収縮においてPUPの上昇度が40cmH2O以上認められたイヌを用いた。各実験結果は、薬物投与直前のPUPから薬物投与後のPUPの上昇度で評価し、平均値±標準誤差で示した。8μg/kg i.a.、塩酸フェニレフリンの用量反応のEC50値及び化合物1の抑制作用のIC50値はLogistic回帰法により算出した。
(結果)
▲1▼ET−1及び塩酸フェニレフリンの局所投与による前立腺部尿道内圧上昇作用
図3として、内腸骨動脈の支配領域にET−1(0.4μg/kg i.a.)又は塩酸フェニレフリン(2μg/kg i.a.)を動脈内投与した時の典型例を示す。血圧及び心拍数に対しては、塩酸フェニレフリンは血圧上昇傾向かつ心拍数低下傾向を示し、ET−1は一過性の血圧低下傾向かつ心拍数増加傾向を示したが、いずれも大きな影響は及ぼさなかった。一方PUPに対しては、塩酸フェニレフリン、ET−1共に著明にPUPを上昇させた。PUPの上昇度は塩酸フェニレフリン投与の方が約2倍大きかったが、PUP上昇反応の持続時間はET−1投与の方が約3倍長かった。
図4に示すように、ET−1(0.006〜0.8μg/kg i.a.)及び塩酸フェニレフリン(0.06〜8μg/kg i.a.)はいずれも用量依存的にPUPを上昇させた。分子量の違いからモル濃度に換算したEC50値はET−1が0.08±0.03nmol/kg、塩酸フェニレフリンが7.47±2.82nmol/kgであり、ET−1は塩酸フェニレフリンより約100倍低濃度で前立腺部尿道内圧上昇作用を発現すると考えられた。また、ET−1の最大反応は塩酸フェニレフリンの43.9±5.2%であった。
▲2▼ET−1誘発の前立腺部尿道内圧上昇に対する化合物1の抑制作用
図5に示すように、麻酔イヌにおける化合物1の静脈内投与(0.03〜3mg/kg i.v.)は用量依存的にET−1(0.2μg/kg i.a.)によるPUP上昇を抑制し、そのIC50値は0.13±0.07mg/kgであった。
試験例3 麻酔イヌにおけるET−1の静脈内投与による尿道内圧上昇作用
(方法)
雄性ビーグルイヌ(体重8〜13kg)をペントバルビタール麻酔下に人工呼吸を行い、血圧及び心拍数測定用として左大腿動脈、薬物投与用として左大腿静脈にそれぞれカテーテルを挿入した。外尿道口より膀胱に向かい尿道内圧測定用カテーテル(8〜10Fr、2穴、クリエートメディック)を挿入した。そのカテーテルの一方にはシリンジによる自動注入器を、他方には圧トランスシデューサーを装着した。手術後の安定時間をおいた後、尿道内圧測定用カテーテルに生理食塩水を1.91ml/minの流速で自動注入器により尿道内に注入した。それと同時にカテーテルを自動引き抜きユニットにより25mm/minの速度で膀胱から外尿道口に向かって引き抜くことにより、図6に示すような尿道全体にわたる内圧が測定され、尿道内圧曲線(UPP)として記録された。
UPPに対するET−1及び塩酸フェニレフリンの作用の検討は、ET−1(1μg/kg)又は塩酸フェニレフリン(30μg/kg)を静脈内投与した後の尿道内圧を測定することにより評価した。ET−1による血圧反応は一過性の降圧の後に昇圧に転じるため、投与後約3分から尿道内圧測定を開始し、塩酸フェニレフリンは投与直後より昇圧が惹起されるため、投与直後より尿道内圧測定を開始した。
尿道内圧が定常状態まで回復したことを確認した後、更に30分後に化合物1(1mg/kg)を静脈内投与した。投与後約3分に再びET−1(1μg/kg)を静脈内投与し、単独投与時と同様に尿道内圧に対する作用を検討した。
(結果)
▲1▼ET−1及び塩酸フェニレフリンの静脈内投与による尿道内圧上昇作用
図7及び図9に示すように、麻酔イヌにおいて、ET−1(1μg/kg i.v.)は平均血圧にほとんど影響を与えずに前立腺部の尿道内圧に加えて、前立腺部以外の尿道内圧も著明に上昇させた。
一方、図8及び図9に示すように、塩酸フェニレフリン(30μg/kg i.v.)は、平均血圧の上昇を伴い、UPPのうち特に前立腺部の尿道内圧を著明に上昇させた。
▲2▼ET−1誘発の尿道内圧上昇に対する化合物1の抑制作用
図10に示すように、ET−1の静脈内投与によるUPPの上昇作用は、化合物1(1mg/kg i.v.)の前投与により完全に抑制された。
試験例4 麻酔イヌにおけるα1受容体遮断薬存在下のET−1誘発尿道内圧上昇作用
(方法)
試験例3と同様の術式によって尿道内圧曲線(UPP)を記録した。α1受容体遮断薬である塩酸タムスロシン存在下の麻酔イヌ尿道内圧に対するET−1の作用を、以下の手順で検討した。
塩酸タムスロシン(10μg/kg i.v.)を静脈内投与し、UPPに対する塩酸タムスロシンによる尿道内圧低下作用を確認した。その30分後に再び同用量の塩酸タムスロシン(10μg/kg i.v.)を静脈内投与した。投与約3分後にET−1(1μg/kg)を静脈内投与し、尿道内圧に対する塩酸タムスロシン存在下のET−1の作用を検討した。
尿道内圧が定常状態まで回復したことを確認した後、更に30分後に塩酸タムスロシン(10μg/kg i.v.)及び化合物1(1mg/kg i.v.)を静脈内投与した。投与約3分後にET−1(1μg/kg i.v.)を静脈内投与し、塩酸タムスロシン存在下のET−1誘発尿道内圧上昇に対する化合物1の作用を検討した。
(結果)
図11に示すように、麻酔イヌにおいて、塩酸タムスロシン(10μg/kg i.v.)は前立腺部尿道内圧を低下させた。ET−1(1μg/kg i.v.)は、塩酸タムスロシン存在下においても、血圧に影響を及ぼすことなく、前立腺部を含む下部尿路全体の尿道内圧を上昇させた。その尿道内圧の上昇は前立腺以外の尿道において顕著であった。塩酸タムスロシン存在下においてET−1によるUPPの上昇作用は、化合物1(1mg/kgi.v.)の前投与により完全に抑制された。
試験例5 排尿困難を伴う前立腺癌患者に化合物1を連続経口投与した際のI−PSSの変化
(方法)
前立腺癌患者18例に化合物1(2〜240mg)を4週間連続経口投与し、投与前と投与後の国際前立腺症状スコア(I−PSS)を測定した。化合物1投与前のI−PSSが8以上の前立腺癌患者10例を排尿困難を伴う症例として解析した。
(結果)
表2に示すように、化合物1は排尿困難を伴う前立腺癌患者のI−PSSを改善した。改善症例のみにおいて化合物1投与によるI−PSS低下率を算出した結果、I−PSS低下率は31.7±7.9%であった。
試験例1の結果から、化合物1がin vitroにおいて、ET誘発性の下部尿路収縮に対して抑制効果を示すことが確認された。
試験例2の結果から、化合物1がin vivoにおいて、ET誘発性の前立腺部尿道内圧上昇に対して抑制効果を示すことが確認された。
試験例3の結果から、化合物1がin vivoにおいて、ET誘発性の前立腺部に限らない下部尿路全体の尿道内圧上昇に対して抑制効果を示すこと、及び血圧に対する影響が小さいことが確認された。
これらの抑制効果により、化合物1はET−1産生系が亢進している前立腺癌、前立腺肥大症、前立腺炎等の前立腺疾患において惹起される、前立腺部尿道を含む下部尿路全体の尿道内圧の上昇による排出障害に対して、早期自覚症状改善効果を示すことが期待できる。
一方、ET−1は前立腺平滑筋細胞や前立腺癌細胞の増殖を引き起こすこと(Eur.J.Pharmacol.,349,123−128,1998、Cancer Res.,56,663−668,1996)が知られているが、化合物1の長期投与により、前立腺部の肥大に対しても有効な可能性がある。
試験例4の結果から、化合物1は排尿困難症の既存治療薬であるα1受容体遮断薬との併用によって、より効果的な排出障害改善作用が得られることが確認された。即ち、交感神経(α1受容体)系支配とET系支配が異なる機序で尿道狭窄に関与しているため、これらの尿道狭窄による排出障害に対し、併用による、より効果的な改善が期待できる。
加えて、試験例5の結果から、化合物1は排尿困難を伴う前立腺癌患者の排尿困難症に対して、経口投与によっても十分な治療効果が得られることが確認された。
産業上の利用可能性
本発明によれば、優れた排出障害治療用医薬組成物を提供できる。
即ち、ET誘発性の下部尿路収縮抑制用医薬組成物である排出障害治療用医薬組成物を提供でき、さらに、ETの亢進が見られる前立腺疾患、特に前立腺癌、前立腺肥大症、前立腺炎に伴う排出障害治療用医薬組成物を提供できる。
また、本発明によれば、前立腺疾患による排出障害に伴う頻尿改善用医薬組成物、前立腺疾患による排出障害に伴う残尿感低減用医薬組成物を提供でき、前記前立腺疾患による排出障害として、前立腺癌及び/又は前立腺肥大症及び/又は前立腺炎に伴う排出障害、前立腺癌及び/又は前立腺肥大症及び/又は前立腺炎に伴うET誘発性の排出障害を挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、各濃度におけるET−1、塩酸フェニレフリン、サラフォトキシンS6c(以下、「S6c」という。)、アセチルコリンによる、摘出ウサギa)前立腺標本、b)尿道標本、c)膀胱基部標本の収縮度を示すグラフである。
図2は、摘出ウサギa)前立腺標本、b)尿道標本、c)膀胱基部標本におけるET−1による収縮に対する、化合物Aのカリウム塩(以下、「化合物1」という。)の抑制作用を示すグラフである。
図3は、ET−1及び塩酸フェニレフリンの麻酔イヌへの局所投与における心拍数変化、血圧変化、前立腺部尿道内圧上昇作用を示すグラフである。
図4は、ET−1及び塩酸フェニレフリンの麻酔イヌへの局所投与における前立腺部尿道内圧上昇作用を示すグラフである。
図5は、麻酔イヌへのET−1局所投与による前立腺部尿道内圧上昇に対する、化合物1の抑制作用を示すグラフである。
図6は、カテーテル引き抜き法における麻酔イヌの典型的な尿道内圧の変化を示す図である。
図7は、麻酔イヌにおけるET−1静脈内投与の尿道内圧上昇作用を示すグラフである。
図8は、麻酔イヌにおける塩酸フェニレフリン静脈内投与の尿道内圧上昇作用を示すグラフである。
図9は、麻酔イヌへのET−1及び塩酸フェニレフリン静脈内投与の血圧上昇作用と前立腺部尿道内圧上昇作用を示すグラフである。
図10は、ET−1静脈内投与による麻酔イヌの尿道内圧上昇に対する、化合物1の抑制作用を示すグラフである。
図11は、α1受容体遮断薬存在下における麻酔イヌのET−1誘発尿道内圧上昇作用に対する、化合物1の抑制作用を示すグラフである。
本発明は、N−[6−メトキシ−5−(2−メトキシフェノキシ)−2−(ピリミジン−2−イル)−ピリミジン−4−イル]−2−フェニルエテンスルホンアミド又はその塩の新規な用途に係るものである。即ち、N−[6−メトキシ−5−(2−メトキシフェノキシ)−2−(ピリミジン−2−イル)−ピリミジン−4−イル]−2−フェニルエテンスルホンアミド又はその塩を有効成分とする排出障害治療用医薬組成物に係るものである。
背景技術
排尿障害は、▲1▼排尿困難・残尿の増加をきたし、最たる状態は尿閉となる尿の出にくい症状を指す排出障害と、▲2▼頻尿・尿失禁等の症状を主体とする、膀胱に十分尿をためられない症状を指す蓄尿障害とに分類される。
排尿障害の一つである排出障害は、その原因により膀胱機能によるもの、下部尿路の閉塞に伴うもの等に分類され、下部尿路の閉塞による排出障害は、尿道に原因のあるものと成人男性における前立腺に原因のあるものに分類される。前立腺に原因がある排出障害の代表的なものとして、前立腺肥大症による排出障害が挙げられる。前立腺肥大症による排出障害は、前立腺の肥大(機械的閉塞)や、α1受容体の増加等による前立腺平滑筋の過剰収縮(機能的閉塞)に伴う前立腺部尿道の前立腺による圧迫により排尿困難をきたす疾患である。
一方、尿道に原因のある排出障害は、尿道結石や、前立腺部尿道に限らない下部尿路全体に及ぶ尿道狭窄等により起こる排出障害で、前立腺の肥大や前立腺平滑筋の過剰収縮による前立腺部尿道の圧迫による排出障害とは区別される。
エンドセリン(以下「ET」という。)はアミノ酸21個よりなる内因性の生理活性ペプチドであり、アミノ酸配列がわずかに異なる、ET−1、ET−2及びET−3の3種のイソペプチドの存在が知られている。ETは、標的細胞膜上のET受容体と結合することによりその生理活性を発現し、ET受容体としては、いままでに少なくとも、ETA及びETB受容体の2種のサブタイプが存在することが知られている。ETA受容体はET−3よりもET−1及びET−2に対して高い親和性を示し、ETB受容体はET−1、ET−2及びET−3に対して同等の親和性を示す。
N−[6−メトキシ−5−(2−メトキシフェノキシ)−2−(ピリミジン−2−イル)−ピリミジン−4−イル]−2−フェニルエテンスルホンアミド(以下、「化合物A」という。)又はその塩は、国際公開第97/22595号公報に開示されており、ETA受容体に対するET−1の結合抑制作用、及びET−1誘発性の血管収縮・昇圧に対する抑制作用が具体的に開示されているが、それ以外の作用については具体的開示はない。その一方、ETが関与している可能性が指摘されている疾患として、例えば、本態性高血圧、肺性高血圧、エリスロポエチン誘発高血圧、サイクロスポリンA誘発高血圧、気管支喘息、急性腎不全、慢性腎不全、糸球体腎炎、サイクロスポリン誘発腎不全、急性心筋梗塞、不安定狭心症、慢性心不全、主としてくも膜下出血後の脳血管れん縮、脳虚血障害、尿失禁、良性前立腺肥大、動脈硬化、レイノー症候群、糖尿病性末梢循環障害、糖尿病性腎症、子癇前症、早産、消化性かいよう、肝不全、リウマチ、PTCA後の再狭窄、慢性呼吸不全、慢性閉塞性肺疾患、肺性心、急性呼吸不全、肺水腫、阻血性肝障害、成人呼吸促迫症候群、間質性肺炎、肺繊維症、緑内障、変形性関節症、慢性関節リウマチ、肝硬変、炎症性腸疾患、癌等の多数の疾患名が挙げられている。
しかしながら、排出障害、特に前立腺を含んだ下部尿路全体にわたる過剰収縮に伴う排出障害に関する開示はない。
発明の開示
本発明者は、新規な治療薬の創製を目的として、化合物A又はその塩のさらに具体的な疾患に対する治療可能性について鋭意検討を行った結果、化合物A又はその塩が、意外にも、前記国際公開第97/22595号公報に具体的に開示されていない、ET−1産生の亢進により誘発される下部尿路全体の尿道収縮に伴う排出障害の改善に有効であることを見出した。特に、前立腺肥大症における肥大した前立腺による前立腺部尿道の機械的圧迫や前立腺平滑筋の過剰収縮による排出障害のみならず、下部尿路全体のETによる収縮に伴う排出障害に対しても実際に有効であることを見出した。即ち、前立腺部尿道の前立腺による圧迫のない場合における排出障害に対しても、実際に有効であることを見出した。
詳細には、以下の通りである。
ET−1は内皮細胞以外にもヒト前立腺上皮細胞や前立腺癌細胞において産生され、前立腺平滑筋の収縮や増殖を引き起こすことが報告されている(J.Clin.End.Metab.,82(2),508−513,1997、Gen.Pharmac.,27(6),1061−1065,1996、Eur.J.Pharmacol.,349,123−128,1998)。また、α1受容体刺激薬である塩酸フェニレフリンとET−1の前立腺標本に対する収縮活性を比較するとET−1の方がより低濃度で持続的な前立腺収縮を引き起こすことも報告されている(J.Urol.,158,253−257,1997)。化合物A又はその塩は、後記の試験例1に示すように、摘出ウサギ下部尿路標本においてET−1による収縮に対して抑制作用を示した。
また、化合物A又はその塩は、後記試験例2に示すように、麻酔イヌへのET−1局所投与による前立腺部尿道内圧上昇に対し、用量依存的な抑制作用を示した。麻酔イヌにおいて、塩酸フェニレフリン(2μg/kg i.a.)及びET−1(0.4μg/kg i.a.)の局所投与は血圧及び心拍数に大きな影響を及ぼさずに前立腺部尿道内圧(PUP)を大きく上昇させた。用量反応を比較すると、PUPの最大上昇度は塩酸フェニレフリンの方が大であったが、ET−1によるPUP上昇反応の方が低濃度より発現し、より持続的であった。この結果は摘出イヌ前立腺標本におけるin vitroの報告(J.Urol.,155,1758−1761,1996)とよく一致するが、イヌとは異なり摘出ヒト前立腺標本においては、ET−1は塩酸フェニレフリンと同程度の収縮を惹起するという報告もある(J.Urol.,150,495−499,1993)。
さらに、化合物A又はその塩は、後記試験例3に示すように、麻酔イヌへのET−1静脈内投与による前立腺部尿道を含む下部尿路全体の尿道内圧上昇に対し抑制作用を示した。麻酔イヌにおいて、塩酸フェニレフリン(30μg/kg i.v.)の静脈内投与は、血圧上昇に並行して、主に前立腺部の尿道内圧を大きく上昇させるのに対し、ET−1(1μg/kg i.v.)は血圧にほとんど影響を与えずに前立腺部尿道以外の尿道を含む下部尿路の尿道内圧を上昇させた。図10に示すように、ET−1によって誘発される下部尿路全体の尿道内圧上昇は、化合物Aのカリウム塩の前投与により完全に抑制された。即ち、化合物A又はその塩は、前立腺部に限定しないETによる下部尿路全体の過剰収縮に対しても、実際に抑制作用を示した。
また、化合物A又はその塩は、後記試験例4に示すように、α1受容体遮断薬である塩酸タムスロシン存在下の麻酔イヌのET−1誘発の下部尿路の尿道内圧上昇に対して抑制作用を示した。摘出ヒト前立腺標本のET−1による収縮作用はα1受容体遮断薬で抑制されないことが知られている(J.Urol.,150,495−499,1993)。塩酸タムスロシンは麻酔イヌにおいて定常状態の前立腺部尿道内圧を低下させるが、ET−1は塩酸タムスロシン存在下においても前立腺部尿道を含む下部尿路の尿道内圧を上昇させた。塩酸タムスロシン存在下におけるET−1誘発尿道内圧の上昇は、前立腺部以外の尿道において顕著であった。
なお、化合物Aのカリウム塩は、後記の試験例5に示すように、臨床試験において排尿困難を伴う前立腺癌患者の国際前立腺症状スコア(I−PSS)を、経口投与によって改善した。
さらに、ヒト前立腺上皮細胞株がET−1産生能を有すること(J.Clin.End.Metab.,82(2),508−513,1997)、及びET−1がETA受容体を介して前立腺平滑筋細胞を増殖させること(Eur.J.Pharmacol.,349,123−128,1998)、ヒト前立腺癌細胞株がET−1産生能を有すること(Nat.Med.,1(9),944−949,1995)、及びET−1がETA受容体を介してヒト前立腺癌細胞の増殖能を示すこと(Cancer Res.,56,663−668,1996)、前立腺肥大症患者の前立腺細胞におけるET−1産生が亢進していること(Gen.Pharmac.,27(6),1061−1065,1996)、炎症性細胞がET−1産生能を有することが報告されていることから、これら報告とET−1が下部尿路を収縮させ尿道内圧を上昇させる前述の結果を併せて考えると、化合物A又はその塩は、ET産生の亢進する前立腺癌、前立腺肥大症、前立腺炎等の前立腺疾患において、前立腺を含む下部尿路全体の過剰収縮及び/又は前立腺の肥大を抑制し、これらの症状に伴う排出障害の改善に有効であると言える。
さらに、α1受容体遮断薬の臨床効果は尿流測定で40−70%の改善率であること(臨床と研究,74(2),50−53,1997)と、本発明によって示されたα1受容体遮断薬との作用機序の違いから、化合物A又はその塩は、α1受容体遮断薬との併用によってより効果を奏する排出障害治療剤であると言える。
従って、本発明の有効成分は、前立腺の肥大や過剰収縮による前立腺部尿道の前立腺による圧迫に伴う排出障害のみならず、ETによって誘発される下部尿路全体の収縮による排出障害を改善することができ、さらに、前立腺癌、前立腺肥大、前立腺炎等の前立腺疾患によるET誘発性の排出障害を改善することができる。
即ち、本発明によれば、化合物A又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する、排出障害治療用医薬組成物;ET誘発性の下部尿路収縮抑制用医薬組成物である排出障害治療用医薬組成物;前立腺疾患によるET誘発性の下部尿路収縮抑制用医薬組成物である排出障害治療用医薬組成物;前立腺癌及び/又は前立腺肥大症及び/又は前立腺炎によるET誘発性の下部尿路収縮抑制用医薬組成物である排出障害治療用医薬組成物;あるいは、α1受容体遮断薬と併用して用いられることを特徴とする排出障害治療用医薬組成物;が提供される。
また、本発明は、排出障害治療剤;ET誘発性の下部尿路収縮抑制剤である排出障害治療剤;前立腺疾患によるET誘発性の下部尿路収縮抑制剤である排出障害治療剤;前立腺癌及び/又は前立腺肥大症及び/又は前立腺炎によるET誘発性の下部尿路収縮抑制剤である排出障害治療剤;あるいは、α1受容体遮断薬と併用して用いられることを特徴とする排出障害治療剤;の製造のための化合物A又はその製薬学的に許容される塩の使用に関する。
また、本発明によれば、化合物A又はその製薬学的に許容される塩の治療有効量を患者に投与することを含む、排出障害治療方法;ET誘発性の下部尿路収縮抑制方法である排出障害治療方法;前立腺疾患によるET誘発性の下部尿路収縮抑制方法である排出障害治療方法;前立腺癌及び/又は前立腺肥大症及び/又は前立腺炎によるET誘発性の下部尿路収縮抑制方法である排出障害治療方法;あるいは、α1受容体遮断薬と併用して行われることを特徴とする排出障害治療方法が提供される。
なお、本発明の有効成分は、特に経口吸収性に優れるため、優れた経口治療薬となりうる。
本発明をさらに詳細に説明すると以下の通りである。
本明細書において、「排出障害」とは、排尿困難・残尿の増加をきたし、最たる状態は尿閉となる尿の出にくい症状を指し、即ち、尿の排出障害を意味する。
また、「下部尿路収縮抑制」とは、ET等により誘発される膀胱基部、前立腺、前立腺部尿道を含む尿道等の下部尿路全体の収縮を抑制することを意味する。
また、本発明の有効成分と併用できるα1受容体遮断薬としては、塩酸プラゾシン、塩酸テラゾシン、ウラピジル、塩酸タムスロシン、塩酸ブナゾシン、ドキサゾシン、ナフトピジル等が挙げられ、特に好ましくは塩酸タムスロシンである。
本発明の医薬の有効成分は、化合物A又はその製薬学的に許容される塩である。かかる塩とは、前記国際公開第97/22595号公報に記載された塩が挙げられ、具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、アスパラギン酸又はグルタミン酸等の有機酸との酸付加塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の無機塩基、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、リジン、オルニチン等の有機塩基との塩やアンモニウム塩等が挙げられる。特に好ましいものとしてカリウム塩が挙げられる。
また、本発明の有効成分には、各種異性体の混合物及びその単離されたもの、水和物、溶媒和物の全てが含まれる。また本発明の有効成分は結晶多形を有する場合もあり、それら結晶形の全てを包含する。
これらの化合物は前記国際公開第97/22595号公報に記載された製法により、あるいはそれに準じて容易に入手可能である。
本発明の薬剤は、経口又は非経口投与に適した有機又は無機の担体、賦形剤、その他の添加剤を用いて、常法に従って、経口固形製剤、経口液状製剤又は注射剤として調製することができる。本発明の医薬の有効成分は優れた経口吸収性を有することから、本発明の薬剤は経口製剤に適する。最も好ましいのは患者が自ら容易に服用でき、かつ、保存や持ち運びに便利な経口固形製剤である。
経口固形製剤としては、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、徐放剤等が用いられる。このような固体組成物においては、1種以上の活性物質が、少なくとも1種の不活性な希釈剤、例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、コーンスターチ、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等と混合される。組成物は常法に従って、不活性な希釈剤以外の添加剤、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、スターチ、タルク等の潤滑剤;繊維素グリコール酸カルシウム、カルメロースカルシウム等の崩壊剤;ラクトース等の安定化剤;グルタミン酸又はアスパラギン酸等の溶解補助剤;ポリエチレングリコール等の可塑剤;酸化チタン、タルク、黄色酸化鉄等の着色剤;を含有していてもよい。錠剤又は丸剤は必要によりショ糖、ゼラチン、寒天、ペクチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等の糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性のフィルムで被覆してもよい。
経口液状製剤は、薬剤学的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば精製水、エタノールを含む。この組成物は不活性な希釈剤以外に湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
静脈注射、筋肉注射、皮下注射等の注射剤としては、無菌の水性又は非水性の溶液剤、懸濁剤、乳濁剤を含有する。水性の溶液剤、懸濁剤の希釈剤としては、例えば注射用蒸留水及び生理食塩水が含まれる。非水性の溶液剤、懸濁剤の希釈剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、ポリソルベート80等がある。このような組成物は、さらに防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、例えばラクトースのような安定剤、例えばグルタミン酸やアスパラギン酸のような溶解補助剤等のような補助剤を含んでいてもよい。これらは例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。これらはまた無菌の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解して使用することもできる。
本発明の有効成分化合物の投与量は、投与ルート、疾患の症状、投与対象の年齢、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定されるが、通常経口投与の場合成人1人当たり、有効成分約0.1〜300mg/day、好ましくは1〜60mg/dayであり、これを1〜2回に分けて投与することができる。
なお、本発明の薬剤は前立腺疾患に伴う排尿困難症の治療に用いられる他の薬剤と同時に又は時間をおいて併用することができる。例えば、本発明の薬剤を併用することが可能である薬剤として、塩酸プラゾシン、塩酸テラゾシン、ウラピジル、塩酸タムスロシン、塩酸ブナゾシン、ドキサゾシン、ナフトピジル等のα1受容体遮断剤;塩酸プロピベリン、塩酸フラボキサート、塩酸オキシブチニン、トルテロジン、トロスピウム、ヒョースシアミン等の抗コリン剤や膀胱平滑筋弛緩剤;塩酸クレンブテロール等のβ受容体刺激剤;塩化ベタネコール、臭化ジスチグミン等の四級アンモニウム塩製剤;デスモプレッシン等の抗利尿ホルモン剤;塩酸アミトリプチリン、イミプラミン等の抗うつ剤やマイナートランキナイザー;八味地黄丸等の漢方製剤;L−グルタミン酸、L−アラニン、アミノ酢酸等のアミノ酸配合剤;花粉製剤;植物エキス配合剤;等が挙げられる。
また、本発明の薬剤は前立腺癌や前立腺炎の治療に用いられる他の薬剤と同時に又は時間をおいて併用することができる。例えば、本発明の薬剤を併用することが可能である薬剤として、イフォスファミド、テガフール・ウラシル等の抗悪性腫瘍剤;エチニルエストラジオール等の卵胞ホルモン;ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン等の副腎皮質ホルモン;酢酸クロルマジノン等の黄体ホルモン;酢酸ゴセレリン、酢酸リュープロレリン等のLH−RHアゴニスト;シスプラチン等の抗悪性腫瘍白金錯体化合物;フルタミド、ビカルタミド、アリルエストレノール、オキセンドロン等の抗アンドロゲン剤;リン酸エストラムスチンナトリウム、ホスフェストロール等の前立腺癌治療剤;硫酸ペプロマイシン等の抗腫瘍性抗生物質;ノルフロキサシン、トシル酸トスフロキサシン、レボフロキサシン、塩酸シプロフロキサシン等のピリドンカルボン酸系抗菌剤;セフタジジム等のセフェム系抗生物質製剤等が挙げられる。
発明を実施するための最良の形態
以下、実施例及び試験例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。なお、以下の実施例、試験例において用いられる化合物1は化合物Aのカリウム塩を意味する。
実施例1:カプセル剤
表1に示す成分を混合し、カプセルに充填してカプセル剤を製造した。
試験例1 摘出ウサギ下部尿路標本におけるET−1収縮に対する抑制効果
(方法)
雄性日本白色ウサギ(3〜5kg、北山ラベス(株))を実験に供した。ウサギから前立腺、尿道及び膀胱を摘出し、輪状方向の平滑筋標本を作製した。膀胱は背側部位から膀胱基部の標本を作製した。各標本を37℃のKrebs−Henselit溶液を満たしたorgan bathに懸垂し、95%O2−5%CO2ガスを通気した。静止張力は1gとし、張力変化は等尺性に測定した。尚、ET−1の吸着を防止するためorgan bathには予めシリコン処理を施した。60分間の平衡時間をおいた後、10μM塩酸フェニレフリンで2回収縮させ、反応が一定になった後、本実験を開始した。
ET−1(0.1〜1000nM)、塩酸フェニレフリン(0.01〜100μM)、S6c(1〜1000nM)又はアセチルコリン(0.01〜1000μM)を累積的に投与し、濃度反応曲線を得た。また、化合物1(0.1〜10μM)あるいは溶媒(蒸留水)を30分間処置した後ET−1(0.1〜1000nM)を累積的に投与し、濃度反応曲線を得た。各収縮薬の収縮反応は直前に得られた塩酸フェニレフリン(10μM)による収縮を100%として示した。
ET−1による最大収縮の50%を引き起こす濃度(EC50)を回帰分析により求め、化合物1存在下におけるET−1の濃度反応曲線のEC50と溶媒処置下のET−1の濃度反応曲線のEC50から用量比を求め、得られた用量比と用いた化合物1の濃度からSchildの方法によってpA2及び傾きを決定した。
(結果)
▲1▼各収縮薬の濃度反応比較
図1に示すように、ET−1、塩酸フェニレフリン及びアセチルコリンは濃度依存的に摘出ウサギ前立腺、尿道及び膀胱基部標本を収縮させた。アセチルコリンは1000μMにおいても最大収縮に達しなかった。これら3種の標本に対するET−1の最大収縮は塩酸フェニレフリン収縮の35〜65%であったが、感受性(EC50)は約200〜300倍高かった。また、これらの標本においてはETB受容体アゴニストであるS6cによる収縮はほとんど認められず、ETB受容体を介する収縮機序は関与しないと考えられた。
▲2▼ET−1収縮に対する化合物1の作用
図2に示すように、ウサギ前立腺、尿道及び膀胱基部標本において化合物1は濃度依存的にET−1収縮の濃度反応曲線を右方へシフトさせ、そのpA2はそれぞれ6.5(傾き:1.54)、6.7(傾き:0.82)及び6.6(傾き:1.32)であった。
試験例2 麻酔イヌにおけるET−1の動脈内局所投与による前立腺部尿道内圧上昇作用
(方法)
雄性ビーグルイヌ(体重8〜15kg)をペントバルビタール麻酔下に人工呼吸を行い、血圧及び心拍数測定用、ET−1もしくは塩酸フェニレフリン投与用として左大腿動脈にサーモダイリューションカテーテル(5Fr、4ルーメン)を挿入し、化合物1投与用として左大腿静脈に7Frカテーテルを挿入した。また外尿道口より膀胱に向かって、バルーン内を水に置換した尿道内圧測定用カテーテル(サーモダイリューションカテーテル(6Fr、4ルーメン))を挿入した。手術後の循環動態の安定を待ち、バルーンを前立腺部尿道に固定して膨らませ、バルーン内の圧変化で前立腺部尿道内圧(PUP)を測定した。予め塩酸フェニレフリン(8μg/kg i.a.)で2回以上収縮させ、十分な反応が得られることを確認し、安定させた後に薬物の作用検討を行なった。
ET−1及び塩酸フェニレフリンの作用の検討には、左大腿動脈より挿入したカテーテルを用いて外腸骨動脈分岐部のわずかに上部に薬物を動脈内投与し、内腸骨動脈の支配領域に作用させることによって、ET−1(0.006〜0.8μg/kg i.a.、モル濃度で0.0025〜0.321nmol/kg i.a.)及び塩酸フェニレフリン(0.06〜8μg/kg i.a.、モル濃度で0.307〜39.3nmol/kg i.a.)の局所投与を行ない、PUP上昇作用の用量反応を比較検討した。この時、対側の外腸骨動脈に薬物が流出しないよう右大腿動脈を閉塞させておいた。
化合物1(0.1〜3mg/kg)を5分前に静脈内投与した後にET−1(0.2μg/kg)を動脈内投与してPUPを測定し、ET−1のPUP上昇作用に対する化合物1の拮抗作用の用量依存性を検討した。ET−1の用量は予備検討において、血圧等に影響を与えずに十分に尿道内圧を上昇させ、繰り返し投与が可能な0.2μg/kg i.a.の用量を用いた。
実験には塩酸フェニレフリン(8μg/kg i.a.)での前収縮においてPUPの上昇度が40cmH2O以上認められたイヌを用いた。各実験結果は、薬物投与直前のPUPから薬物投与後のPUPの上昇度で評価し、平均値±標準誤差で示した。8μg/kg i.a.、塩酸フェニレフリンの用量反応のEC50値及び化合物1の抑制作用のIC50値はLogistic回帰法により算出した。
(結果)
▲1▼ET−1及び塩酸フェニレフリンの局所投与による前立腺部尿道内圧上昇作用
図3として、内腸骨動脈の支配領域にET−1(0.4μg/kg i.a.)又は塩酸フェニレフリン(2μg/kg i.a.)を動脈内投与した時の典型例を示す。血圧及び心拍数に対しては、塩酸フェニレフリンは血圧上昇傾向かつ心拍数低下傾向を示し、ET−1は一過性の血圧低下傾向かつ心拍数増加傾向を示したが、いずれも大きな影響は及ぼさなかった。一方PUPに対しては、塩酸フェニレフリン、ET−1共に著明にPUPを上昇させた。PUPの上昇度は塩酸フェニレフリン投与の方が約2倍大きかったが、PUP上昇反応の持続時間はET−1投与の方が約3倍長かった。
図4に示すように、ET−1(0.006〜0.8μg/kg i.a.)及び塩酸フェニレフリン(0.06〜8μg/kg i.a.)はいずれも用量依存的にPUPを上昇させた。分子量の違いからモル濃度に換算したEC50値はET−1が0.08±0.03nmol/kg、塩酸フェニレフリンが7.47±2.82nmol/kgであり、ET−1は塩酸フェニレフリンより約100倍低濃度で前立腺部尿道内圧上昇作用を発現すると考えられた。また、ET−1の最大反応は塩酸フェニレフリンの43.9±5.2%であった。
▲2▼ET−1誘発の前立腺部尿道内圧上昇に対する化合物1の抑制作用
図5に示すように、麻酔イヌにおける化合物1の静脈内投与(0.03〜3mg/kg i.v.)は用量依存的にET−1(0.2μg/kg i.a.)によるPUP上昇を抑制し、そのIC50値は0.13±0.07mg/kgであった。
試験例3 麻酔イヌにおけるET−1の静脈内投与による尿道内圧上昇作用
(方法)
雄性ビーグルイヌ(体重8〜13kg)をペントバルビタール麻酔下に人工呼吸を行い、血圧及び心拍数測定用として左大腿動脈、薬物投与用として左大腿静脈にそれぞれカテーテルを挿入した。外尿道口より膀胱に向かい尿道内圧測定用カテーテル(8〜10Fr、2穴、クリエートメディック)を挿入した。そのカテーテルの一方にはシリンジによる自動注入器を、他方には圧トランスシデューサーを装着した。手術後の安定時間をおいた後、尿道内圧測定用カテーテルに生理食塩水を1.91ml/minの流速で自動注入器により尿道内に注入した。それと同時にカテーテルを自動引き抜きユニットにより25mm/minの速度で膀胱から外尿道口に向かって引き抜くことにより、図6に示すような尿道全体にわたる内圧が測定され、尿道内圧曲線(UPP)として記録された。
UPPに対するET−1及び塩酸フェニレフリンの作用の検討は、ET−1(1μg/kg)又は塩酸フェニレフリン(30μg/kg)を静脈内投与した後の尿道内圧を測定することにより評価した。ET−1による血圧反応は一過性の降圧の後に昇圧に転じるため、投与後約3分から尿道内圧測定を開始し、塩酸フェニレフリンは投与直後より昇圧が惹起されるため、投与直後より尿道内圧測定を開始した。
尿道内圧が定常状態まで回復したことを確認した後、更に30分後に化合物1(1mg/kg)を静脈内投与した。投与後約3分に再びET−1(1μg/kg)を静脈内投与し、単独投与時と同様に尿道内圧に対する作用を検討した。
(結果)
▲1▼ET−1及び塩酸フェニレフリンの静脈内投与による尿道内圧上昇作用
図7及び図9に示すように、麻酔イヌにおいて、ET−1(1μg/kg i.v.)は平均血圧にほとんど影響を与えずに前立腺部の尿道内圧に加えて、前立腺部以外の尿道内圧も著明に上昇させた。
一方、図8及び図9に示すように、塩酸フェニレフリン(30μg/kg i.v.)は、平均血圧の上昇を伴い、UPPのうち特に前立腺部の尿道内圧を著明に上昇させた。
▲2▼ET−1誘発の尿道内圧上昇に対する化合物1の抑制作用
図10に示すように、ET−1の静脈内投与によるUPPの上昇作用は、化合物1(1mg/kg i.v.)の前投与により完全に抑制された。
試験例4 麻酔イヌにおけるα1受容体遮断薬存在下のET−1誘発尿道内圧上昇作用
(方法)
試験例3と同様の術式によって尿道内圧曲線(UPP)を記録した。α1受容体遮断薬である塩酸タムスロシン存在下の麻酔イヌ尿道内圧に対するET−1の作用を、以下の手順で検討した。
塩酸タムスロシン(10μg/kg i.v.)を静脈内投与し、UPPに対する塩酸タムスロシンによる尿道内圧低下作用を確認した。その30分後に再び同用量の塩酸タムスロシン(10μg/kg i.v.)を静脈内投与した。投与約3分後にET−1(1μg/kg)を静脈内投与し、尿道内圧に対する塩酸タムスロシン存在下のET−1の作用を検討した。
尿道内圧が定常状態まで回復したことを確認した後、更に30分後に塩酸タムスロシン(10μg/kg i.v.)及び化合物1(1mg/kg i.v.)を静脈内投与した。投与約3分後にET−1(1μg/kg i.v.)を静脈内投与し、塩酸タムスロシン存在下のET−1誘発尿道内圧上昇に対する化合物1の作用を検討した。
(結果)
図11に示すように、麻酔イヌにおいて、塩酸タムスロシン(10μg/kg i.v.)は前立腺部尿道内圧を低下させた。ET−1(1μg/kg i.v.)は、塩酸タムスロシン存在下においても、血圧に影響を及ぼすことなく、前立腺部を含む下部尿路全体の尿道内圧を上昇させた。その尿道内圧の上昇は前立腺以外の尿道において顕著であった。塩酸タムスロシン存在下においてET−1によるUPPの上昇作用は、化合物1(1mg/kgi.v.)の前投与により完全に抑制された。
試験例5 排尿困難を伴う前立腺癌患者に化合物1を連続経口投与した際のI−PSSの変化
(方法)
前立腺癌患者18例に化合物1(2〜240mg)を4週間連続経口投与し、投与前と投与後の国際前立腺症状スコア(I−PSS)を測定した。化合物1投与前のI−PSSが8以上の前立腺癌患者10例を排尿困難を伴う症例として解析した。
(結果)
表2に示すように、化合物1は排尿困難を伴う前立腺癌患者のI−PSSを改善した。改善症例のみにおいて化合物1投与によるI−PSS低下率を算出した結果、I−PSS低下率は31.7±7.9%であった。
試験例1の結果から、化合物1がin vitroにおいて、ET誘発性の下部尿路収縮に対して抑制効果を示すことが確認された。
試験例2の結果から、化合物1がin vivoにおいて、ET誘発性の前立腺部尿道内圧上昇に対して抑制効果を示すことが確認された。
試験例3の結果から、化合物1がin vivoにおいて、ET誘発性の前立腺部に限らない下部尿路全体の尿道内圧上昇に対して抑制効果を示すこと、及び血圧に対する影響が小さいことが確認された。
これらの抑制効果により、化合物1はET−1産生系が亢進している前立腺癌、前立腺肥大症、前立腺炎等の前立腺疾患において惹起される、前立腺部尿道を含む下部尿路全体の尿道内圧の上昇による排出障害に対して、早期自覚症状改善効果を示すことが期待できる。
一方、ET−1は前立腺平滑筋細胞や前立腺癌細胞の増殖を引き起こすこと(Eur.J.Pharmacol.,349,123−128,1998、Cancer Res.,56,663−668,1996)が知られているが、化合物1の長期投与により、前立腺部の肥大に対しても有効な可能性がある。
試験例4の結果から、化合物1は排尿困難症の既存治療薬であるα1受容体遮断薬との併用によって、より効果的な排出障害改善作用が得られることが確認された。即ち、交感神経(α1受容体)系支配とET系支配が異なる機序で尿道狭窄に関与しているため、これらの尿道狭窄による排出障害に対し、併用による、より効果的な改善が期待できる。
加えて、試験例5の結果から、化合物1は排尿困難を伴う前立腺癌患者の排尿困難症に対して、経口投与によっても十分な治療効果が得られることが確認された。
産業上の利用可能性
本発明によれば、優れた排出障害治療用医薬組成物を提供できる。
即ち、ET誘発性の下部尿路収縮抑制用医薬組成物である排出障害治療用医薬組成物を提供でき、さらに、ETの亢進が見られる前立腺疾患、特に前立腺癌、前立腺肥大症、前立腺炎に伴う排出障害治療用医薬組成物を提供できる。
また、本発明によれば、前立腺疾患による排出障害に伴う頻尿改善用医薬組成物、前立腺疾患による排出障害に伴う残尿感低減用医薬組成物を提供でき、前記前立腺疾患による排出障害として、前立腺癌及び/又は前立腺肥大症及び/又は前立腺炎に伴う排出障害、前立腺癌及び/又は前立腺肥大症及び/又は前立腺炎に伴うET誘発性の排出障害を挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、各濃度におけるET−1、塩酸フェニレフリン、サラフォトキシンS6c(以下、「S6c」という。)、アセチルコリンによる、摘出ウサギa)前立腺標本、b)尿道標本、c)膀胱基部標本の収縮度を示すグラフである。
図2は、摘出ウサギa)前立腺標本、b)尿道標本、c)膀胱基部標本におけるET−1による収縮に対する、化合物Aのカリウム塩(以下、「化合物1」という。)の抑制作用を示すグラフである。
図3は、ET−1及び塩酸フェニレフリンの麻酔イヌへの局所投与における心拍数変化、血圧変化、前立腺部尿道内圧上昇作用を示すグラフである。
図4は、ET−1及び塩酸フェニレフリンの麻酔イヌへの局所投与における前立腺部尿道内圧上昇作用を示すグラフである。
図5は、麻酔イヌへのET−1局所投与による前立腺部尿道内圧上昇に対する、化合物1の抑制作用を示すグラフである。
図6は、カテーテル引き抜き法における麻酔イヌの典型的な尿道内圧の変化を示す図である。
図7は、麻酔イヌにおけるET−1静脈内投与の尿道内圧上昇作用を示すグラフである。
図8は、麻酔イヌにおける塩酸フェニレフリン静脈内投与の尿道内圧上昇作用を示すグラフである。
図9は、麻酔イヌへのET−1及び塩酸フェニレフリン静脈内投与の血圧上昇作用と前立腺部尿道内圧上昇作用を示すグラフである。
図10は、ET−1静脈内投与による麻酔イヌの尿道内圧上昇に対する、化合物1の抑制作用を示すグラフである。
図11は、α1受容体遮断薬存在下における麻酔イヌのET−1誘発尿道内圧上昇作用に対する、化合物1の抑制作用を示すグラフである。
Claims (18)
- N−[6−メトキシ−5−(2−メトキシフェノキシ)−2−(ピリミジン−2−イル)−ピリミジン−4−イル]−2−フェニルエテンスルホンアミド又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する排出障害治療用医薬組成物。
- エンドセリン誘発性の下部尿路収縮抑制用医薬組成物である、請求の範囲1記載の排出障害治療用医薬組成物。
- エンドセリン誘発が前立腺疾患によるエンドセリン誘発であることを特徴とする、請求の範囲2記載の排出障害治療用医薬組成物。
- 前立腺疾患が前立腺癌、前立腺肥大症及び前立腺炎からなる群より選択される1以上の前立腺疾患である、請求の範囲3記載の排出障害治療用医薬組成物。
- α1受容体遮断薬と併用して用いられることを特徴とする、請求の範囲1乃至4記載のいずれかの排出障害治療用医薬組成物。
- 経口投与剤である、請求の範囲1乃至5記載のいずれかの排出障害治療用医薬組成物。
- 排出障害治療剤の製造のための、N−[6−メトキシ−5−(2−メトキシフェノキシ)−2−(ピリミジン−2−イル)−ピリミジン−4−イル]−2−フェニルエテンスルホンアミド又はその製薬学的に許容される塩の使用。
- 排出障害治療剤がエンドセリン誘発性の下部尿路収縮抑制剤である排出障害治療剤である、請求の範囲7記載の使用。
- エンドセリン誘発が前立腺疾患によるエンドセリン誘発である、請求の範囲8記載の使用。
- 前立腺疾患が前立腺癌、前立腺肥大症及び前立腺炎からなる群より選択される1以上の前立腺疾患である、請求の範囲9記載の使用。
- α1受容体遮断薬と併用して用いられることを特徴とする、請求の範囲7乃至10記載のいずれかの使用。
- 経口投与剤である、請求の範囲7乃至11記載のいずれかの使用。
- N−[6−メトキシ−5−(2−メトキシフェノキシ)−2−(ピリミジン−2−イル)−ピリミジン−4−イル]−2−フェニルエテンスルホンアミド又はその製薬学的に許容される塩の治療有効量を患者に投与することを含む排出障害治療方法。
- エンドセリン誘発性の下部尿路収縮抑制方法である、請求の範囲13記載の排出障害治療方法。
- エンドセリン誘発が前立腺疾患によるエンドセリン誘発であることを特徴とする、請求の範囲14記載の排出障害治療方法。
- 前立腺疾患が前立腺癌、前立腺肥大症及び前立腺炎からなる群より選択される1以上の前立腺疾患である、請求の範囲15記載の排出障害治療方法。
- α1受容体遮断薬と併用して用いられることを特徴とする、請求の範囲13乃至16記載のいずれかの排出障害治療方法。
- 経口投与による、請求の範囲12乃至17記載のいずれかの排出障害治療方法。
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