JPWO2002073670A1 - 露光方法及び装置、並びにデバイス製造方法 - Google Patents
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Abstract
露光ビームとして真空紫外域の所定の波長の広がりを持つ光を使用する場合に、投影光学系の色収差の許容範囲を定めて高解像度が得られるようにした露光方法及び装置である。真空紫外光のもとでレチクルのパターンの像を、投影光学系を介してウエハ上に投影する。その真空紫外光の中心波長をλ、その投影光学系のウエハ側の開口数をNAとして、係数α及びβを次のように表す。α=0.5×λ/NA2,β=0.03×λ/NAこの場合、その真空紫外光のスペクトル分布の標準偏差の波長幅に対するその投影光学系の軸上色収差量(Z)と倍率色収差量(Y)とが、次の関係を満たすようにする。(Z/α)2+(Y/β)2≦1
Description
技術分野
本発明は、例えば半導体素子、撮像素子(CCD等)、液晶表示素子、又は薄膜磁気ヘッド等の各種デバイスを製造するためのフォトリソグラフィ工程中で、マスクに形成されたパターンを基板上に転写する際に使用される露光方法及び装置、並びにデバイス製造方法に関する。
背景技術
半導体集積回路、液晶ディスプレイ等の電子デバイスの微細パターンを形成するためのフォトリソグラフィ工程では、形成すべきパターンを4〜5倍程度に比例拡大して描画したマスクとしてのレチクル(又はフォトマスク等)のパターンを、一括露光方式又は走査露光方式の投影露光装置を用いて被露光基板としてのウエハ(又はガラスプレート等)上に縮小転写する方法が用いられている。斯かる投影露光装置に搭載される投影光学系のウエハ側の解像度Resは、一般に次式で表わされる。
Res=k1・λ/NA …(1)
ここで、λは露光波長、NAは投影光学系の像側(ウエハ側)の開口数、k1はウエハ上に塗布された感光材料(レジスト)の性能、使用するレチクルの種類、及びレチクルへの照明条件等により決まる比例定数であり、解像度Resは、露光波長λに比例し、開口数NAに反比例する。
また、ウエハ自体の凹凸や、半導体プロセスによって生じる段差のために、ウエハ表面には或る程度の段差が存在しており、投影光学系には或る程度の焦点深度DOFが要求される。使用するレチクルの種類や照明条件によって決まる比例定数をk2とすると、焦点深度はDOFは一般に次式で表されるように、開口数の2乗に反比例する。
DOF=k2・λ/NA2 …(2)
更に、これらの投影露光装置においては、半導体集積回路等の微細化に対応するために、その露光波長がより短波長側にシフトして来ている。現在、その露光波長はKrFエキシマレーザの248nmが主流となっているが、より短波長のArFエキシマレーザの193nmも実用化段階に入りつつある。そして、波長157nmのフッ素レーザ(F2レーザ)や、波長126nmのアルゴンダイマーレーザ(Ar2レーザ)等のように、真空紫外域(VUV:Vacuum Ultraviolet)中でも更に160nm程度以下の短い波長の露光光源を使用する投影露光装置の開発も行なわれている。
また、(1)式より分かるように、短波長化のみでなく、光学系の開口数の増大(大NA化)によっても高解像度化は可能であるため、より一層大NA化した投影光学系の開発もなされている。
更に、短波長化、又は大NA化を行う他に実質的に解像度を高める技術として、レチクル上のパターンの内の、隣接する透過パターンを透過する光束の位相を180°異ならしめて解像度を向上する「位相シフトマスク」や、レチクル上の遮光パターンに僅かの透過率を与え、かつ、その部分の透過光の位相を、ガラス部分の透過光の位相に対して180°異ならしめて解像度を向上する「ハーフトーン位相シフトマスク」や、レチクルへの照明光の照明方法を最適化して解像度を向上する輪帯照明等の「変形照明技術」も開発され、実用化されている。「位相シフトマスク」や「変形照明技術」のように、露光波長や開口数を固定したままで光学系の解像度を向上する技術は、一般に超解像技術と呼ばれるが、この超解像技術によって、上記の比例定数k1の値は年々微細化し、k1を0.2以下として微細パターンを転写することも可能となってきている。
上記の如く、従来より投影露光装置においては、短波長化、大NA化、及び超解像技術の開発によって、解像度の向上が図られて来た。
これに関して、半導体集積回路の性能向上、特に動作速度の向上のためには、微細なパターンを分離する能力である解像度を向上する(微細化する)以外に、形成したパターンの線幅均一性を高めることも要求される。特にいわゆるクリティカルレイヤのパターンを形成する場合のように、極めて高い加工精度が要求される工程においては、線幅均一性を、転写されるパターンの線幅の±10%程度以内に抑える必要がある。
このように解像度、及び線幅均一性を向上させようとする場合に、投影光学系に種々の収差が残存していると、それらの収差は、その解像度や線幅均一性を劣化させる。従って、投影光学系の収差は、設計及び製造時の双方で十分小さく抑え込む必要がある。しかしながら、高解像度を得るために、露光光として真空紫外域中でも更に短い波長160nm程度以下のフッ素レーザや、アルゴンダイマーレーザ等を使用する場合、これらのレーザ光は何れも或る程度の広がりを持ったスペクトル分布を有する準単色光であり、投影光学系には、そのスペクトル分布をカバーするだけの色収差補正が要求される。
また、このような真空紫外光を露光光として用いる投影露光装置で、更に解像度を高めるために超解像技術を併用する場合には、(1)式における比例定数k1の値が小さくなるため、投影光学系においては従来よりも一層厳しい収差補正が必要となる。更に、従来の投影光学系は、通常のレチクルや通常の照明条件での使用を前提として設計されていたため、位相シフトマスクのような超解像技術で達成されるような微細パターン(比例定数k1が0.2程度の微細パターン)での光学性能は、十分ではなかった。また、従来の投影光学系においては、超解像技術を適用する際に必要となる残存収差の上限についても、十分な検討がなされていなかった。
一方、その波長域で使用可能なレンズ材料(硝材)は、実用上蛍石(CaF2結晶)などに限定されるため、投影光学系の収差の補正、特に色収差の補正が困難になる。
本発明は斯かる点に鑑み、所定のスペクトル分布を有する露光ビームを使用する場合に、高解像度が得られる露光技術を提供することを第1の目的とする。
更に本発明は、波長160nm以下若しくは真空紫外域の準単色光の露光ビームを使用した場合に、又はその露光ビームに超解像技術を併用した場合に、その超解像技術の効果を十分に発揮できるように色収差が補正されて高解像度が得られる露光技術を提供することを第2の目的とする。
発明の開示
本発明による第1の露光方法は、所定のスペクトル分布を有する露光ビームで第1物体(R)を照明し、その第1物体のパターンを投影光学系(PL)を介して第2物体上に転写する露光方法であって、その投影光学系の色収差は、そのスペクトル分布の標準偏差に応じて規定された許容範囲内であるものである。
斯かる本発明によれば、露光ビームのスペクトル分布の標準偏差によって投影光学系の色収差が規定される。本発明者によって、スペクトル分布の標準偏差を用いることによって、スペクトル分布が例えばガウス型、又はガウス型とローレンツ型との積のような種々の分布であっても、投影光学系の色収差に関して共通の許容範囲を使用できることが確かめられた。従って、高解像度の投影光学系の設計及び製造を容易に行うことができる。
この場合、その投影光学系の色収差量は、一例として軸上色収差量と倍率色収差量との少なくとも一方を含んでいる。
また、その露光ビームの中心波長をλ、その投影光学系のその第2物体側の開口数をNAとして、係数α及びβを次のように表す。
α=0.5×λ/NA2 …(3A)
β=0.03×λ/NA …(3B)
この場合、その露光ビームのスペクトル分布の標準偏差の波長幅に対するその投影光学系の軸上色収差量Zと、その露光ビームのスペクトル分布の標準偏差の波長幅に対するその投影光学系の倍率色収差量Yとが、次の関係を満たすことが望ましい。
(Z/α)2+(Y/β)2≦1 …(4)
斯かる本発明によれば、その露光ビームの波長幅に応じてその投影光学系の軸上色収差量Z、及び倍率色収差量Yが変化するが、その投影光学系の設計指針として、その露光ビームのスペクトル分布の標準偏差で定まる波長幅における軸上色収差量Z、及び倍率色収差量Yの許容値(色収差許容値)を(4)式で規定するものとした。この結果、使用する露光ビームのスペクトル分布が決定されると、本発明による色収差許容値に従って容易に光学設計を行なうことが可能になり、高解像度が得られる。
また、本発明による色収差許容値は、その第1物体として位相シフトマスクを使用する場合のような微細なパターンの転写時についても考慮してあるため、本発明によれば、位相シフトマスクを始めとする超解像技術を適用して、極めて微細なパターンを露光することが可能となる。
この場合、更に係数α1及びβ1を次のように表す。
α1=0.65×λ/NA2 …(5A)
β1=0.015×λ/NA …(5B)
この際に、上記の軸上色収差量Zと上記の倍率色収差量Yとが、更に次の関係を満たすことが望ましい。
(Z/α1)2+(Y/β1)2≦1 …(6)
これによって、更に高い解像度が得られる。
また、本発明による第2の露光方法は、波長160nm以下の露光ビームで第1物体(R)を照明し、その第1物体のパターンを投影光学系(PL)を介して第2物体(W)上に転写する露光方法であって、その露光ビームの中心波長をλ、その投影光学系のその第2物体側の開口数をNAとして、係数α及びβを上記の(3A)式、(3B)式のように表したとき、その露光ビームに対するその投影光学系の軸上色収差量Zと、その露光ビームに対するその投影光学系の倍率色収差量Yとが上記の(4)式の関係を満たすものである。
斯かる本発明においても、その投影光学系の設計指針として、軸上色収差量Z、及び倍率色収差量Yの許容値(色収差許容値)が(4)式で規定される。従って、使用する露光ビームの波長幅が決定されると、本発明による色収差許容値に従って光学設計を行なうことが可能になり、高解像度が得られる。
また、本発明による色収差許容値も、その第1物体として位相シフトマスクを使用する場合のような微細なパターンの転写時についても考慮してあるため、本発明においても、位相シフトマスクを始めとする超解像技術を適用して、極めて微細なパターンを露光することが可能となる。
この場合にも、更に係数α1及びβ1を(5A)式、(5B)式で表したとき、更に高解像度を得るために、その軸上色収差量Zとその倍率色収差量Yとが、(6)式の関係を満たすことが望ましい。
次に、本発明の第1の露光装置は、所定のスペクトル分布を有する露光ビームで第1物体(R)を照明し、その第1物体のパターンを投影光学系(PL)を介して第2物体(W)上に転写する露光装置であって、その投影光学系の色収差は、そのスペクトル分布の標準偏差に応じて規定された許容範囲内であるものである。斯かる露光装置によれば、種々のスペクトル分布の露光ビームに対して共通の設計条件で高解像度の投影光学系を設計、製造することができる。
この場合、その露光ビームの中心波長をλ、その投影光学系のその第2物体側の開口数をNAとして、係数α及びβを上記の(3A)式、(3B)式で表したとき、その露光ビームのスペクトル分布の標準偏差の波長幅に対するその投影光学系の軸上色収差量Zと、その露光ビームのスペクトル分布の標準偏差の波長幅に対するその投影光学系の倍率色収差量Yとが、上記の(4)式の関係を満たすことが望ましい。これによって、高い解像度が得られる。
更に、係数α1及びβ1を(5A)式、(5B)式で表したとき、その軸上色収差量Zとその倍率色収差量Yとが、更に、(6)式の関係を満たすことが望ましい。これによって更に高い解像度が得られる。
次に、本発明第2の露光装置は、波長160nm以下の露光ビームで第1物体(R)を照明し、その第1物体のパターンを投影光学系(PL)を介して第2物体(W)上に転写する露光装置であって、その露光ビームの中心波長をλ、その投影光学系のその第2物体側の開口数をNAとして、係数α及びβを(3A)式、(3B)式で表したとき、その露光ビームに対するその投影光学系の軸上色収差量Zと、その露光ビームに対するその投影光学系の倍率色収差量Yとが、(4)式の関係を満たすものである。本発明によれば、上記のように高解像度が得られる。
この場合にも、更に係数α1及びβ1を(5A)式、(5B)式で表したとき、更に高解像度を得るために、その軸上色収差量Zとその倍率色収差量Yとが、(6)式の関係を満たすことが望ましい。
また、その露光ビームの一例は、フッ素レーザを光源とする中心波長157nmの光束である。
また、一例として、その投影光学系が反射鏡と蛍石製のレンズとを含む反射屈折光学系である場合に、その露光ビームのスペクトル分布は、その標準偏差が、0.50pm以下であることが望ましい。そのように反射屈折系とすることで色収差補正が容易になるため、その露光ビームの波長幅は広くすることができる。
また、別の例として、その投影光学系が蛍石製のレンズとフッ化バリウム製又はフッ化リチウム製のレンズとを含む光学系である場合に、その露光ビームのスペクトル分布は、その標準偏差が、0.25pm以下であることが望ましい。そのように2種類の光学材料を使用することによって、色収差補正を比較的容易に行うことができるため、その露光ビームの波長幅は比較的広くすることができる。
また、更に別の例として、その投影光学系の光学部材が蛍石製のレンズのみからなる場合に、その露光ビームのスペクトル分布は、その標準偏差が、0.10pm以下であることが望ましい。光学材料が1種類の場合には、色収差補正が困難であるため、その露光ビームのスペクトル幅を狭くする必要がある。
次に、本発明のデバイス製造方法は、本発明の露光方法を使用してデバイスパターン(R)をワークピース(W)上に転写する工程を含むものである。本発明の適用によって、真空紫外光を用いて超解像技術を併用できるようになるため、微細なデバイスを高精度に量産することができる。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明の好ましい実施の形態の一例につき図面を参照して説明する。本例は、露光ビームとして真空紫外光(VUV光)中でも更に波長が160nm以下と短い光を用いる投影露光装置で露光を行う場合に本発明を適用したものである。
図1は、本例の投影露光装置を示す概略構成図であり、この図1において、例えば半導体デバイス製造工場のクリーンルーム内に、投影露光装置の本体部が設置されている。そして、露光光源1としては、真空紫外域の発振波長157nmのF2レーザ(フッ素レーザ)光源が使用されている。F2レーザ光源から射出されるパルスレーザ光は、所定の波長幅のスペクトル分布を持つ準単色光とみなすことができる。それ以外に露光光源として、発振波長146nmのKr2レーザ(クリプトンダイマーレーザ)、発振波長126nmのAr2レーザ(アルゴンダイマーレーザ)等の光源を使用する場合にも本発明を適用することができる。更に、露光光源として、YAGレーザの高調波発生装置、又は半導体レーザの高調波発生装置等の真空紫外域の光源を使用する場合にも本発明は有効である。
露光光源1から射出された露光ビームとしての露光光ILは、ビームマッチングユニット(BMU)2、リレーレンズ4、光路折り曲げ用のミラー5、リレーレンズ6を経てオプティカル・インテグレータ(ユニフォマイザ、又はホモジナイザ)としてのフライアイレンズ7に入射して、照度分布が均一化される。フライアイレンズ7の射出面は、転写対象のレチクルRのパターン面(レチクル面)に対する光学的フーリエ変換面(照明光学系の瞳面)となっており、その射出面に開口の形状や大きさを切り替えることができる可変開口絞り8が設置されている。可変開口絞り8の開口を円形開口としてその大きさを切り替えることによって、露光光IL(照明光束)の開口数、ひいてはコヒーレンスファクタを可変として、レチクルRへの照明光束の空間的コヒーレンシィを可変とすることができる。更に、その可変開口絞り8は、開口絞り(照明系開口絞り)を輪帯状の開口絞り、更には光軸に対して偏心した複数(例えば4個)の小開口よりなる変形照明用の開口絞りに切り替えることもできる。
なお、オプティカル・インテグレータとしてロッドインテグレータ(ロッドレンズ)を使用することも可能であり、この場合には、そのロッドインテグレータの射出面はレチクル面と共役になり、その射出面に対する光学的フーリエ変換面に可変開口絞り8が配置される。
フライアイレンズ7から射出されて可変開口絞り8を通過した露光光ILは、コンデンサレンズ9を介してマスクとしてのレチクルRを照明する。実際には、コンデンサレンズ9中には結像光学系が含まれており、可変開口絞り8とレチクルRとの間にはレチクル面に対する共役面が形成され、この共役面に可変視野絞り(不図示)が設置されている。リレーレンズ4,6、ミラー5、フライアイレンズ7、可変開口絞り8、及びコンデンサレンズ9より照明光学系ILSが構成され、この照明光学系ILSは気密室としてのサブチャンバ3内に収納されている。同様にビームマッチングユニット(BMU)2も、気密室としてのサブチャンバ(不図示)内に収納されている。
図1において、レチクルRを透過した光束は、投影光学系PLを介して被露光基板としてのウエハW上にそのレチクルRのパターンを所定倍率(例えば1/4,1/5等)で縮小した像を形成する。レチクルR及びウエハWはそれぞれ本発明の第1物体及び第2物体に対応している。ウエハWは例えば半導体(シリコン等)又はSOI(silicon on insulator)等の直径が例えば200mm(8インチ)、又は300mm(12インチ)等の円板状の基板である。以下、投影光学系PLの光軸AXに平行にZ軸を取り、Z軸に垂直な平面内で図1の紙面に平行にX軸を、図1の紙面に垂直にY軸を取って説明する。
先ず、レチクルRは、レチクルベース13上にX方向に走査できるように、且つY方向に移動できるように載置されたレチクルステージ12上に真空吸着等によって保持され、レチクルステージ12の2次元的な位置は、レーザ干渉計16及びこれに対応して配置された移動鏡15によって計測され、この計測値がレチクルステージ制御系11及び装置全体の動作を統轄制御する主制御系17に供給されている。その計測値及び主制御系17からの制御情報に基づいて、レチクルステージ制御系11は、レチクルステージ12の位置及び速度を制御する。レチクルベース13、レチクルステージ12、及びこの駆動機構(不図示)等からレチクルステージ系が構成され、レチクルステージ系は、気密性の高い隔壁(気密室)としてのレチクル室10内に収納されている。
また、レチクル室10は、不図示のコラムに支持され、レチクルベース13は、レチクル室10の底面上に防振台14A,14B(実際には3台又は4台の防振台を含む)を介して載置されている。防振台14A,14Bは、エアー方式又は油圧方式の機械式のダンパーと、電磁式のアクチュエータとを含む能動型の防振装置であり、機械式のダンパーによって高周波数の振動成分が抑制され、電磁式のアクチュエータによって低周波数の振動成分が抑制される。
一方、ウエハWは、不図示のウエハホルダを介してウエハステージ(Zレベリングステージ)20上に保持され、ウエハステージ20はウエハベース21上にX方向、Y方向に移動自在に載置されている。ウエハステージ20の2次元的な位置は、レーザ干渉計24及びこれに対応して配置された移動鏡23によって計測されており、この計測値がウエハステージ制御系19及び主制御系17に供給されている。その計測値及び主制御系17からの制御情報に基づいて、ウエハステージ制御系19ウエハステージ20のX方向、Y方向の位置及び速度を制御する。また、ウエハステージ20は、不図示のオートフォーカスセンサ(斜入射方式で光学式のセンサ)からのウエハWの表面の複数の計測点でのフォーカス位置(光軸AX方向の位置)の情報に基づいて、露光中にウエハWの表面が投影光学系PLの像面に合焦されるように、サーボ方式でウエハWのフォーカス位置及びX軸、Y軸の回りの傾斜角を制御する。
また、ウエハベース21は、防振台14A,14Bと同様の能動型の防振台22A,22B(実際には3台又は4台の防振台を含む)を介して床上に載置されている。ウエハベース21、ウエハステージ20、及びこの駆動機構(不図示)等からウエハステージ系が構成され、ウエハステージ系は、気密性の高い隔壁(気密室)としてのウエハ室18内に収納されている。
露光時には、レチクルRのパターンの像を投影光学系PLを介してウエハW上の一つのショット領域に投影した状態で、レチクルRとウエハWとを投影光学系PLの倍率を速度比としてX方向に同期移動する動作と、ウエハWをX方向、Y方向にステップ移動する動作とがステップ・アンド・スキャン方式で繰り返される。この際に、1つのデバイスパターンを複数枚のレチクルのパターンの像を継ぎ合わせながら露光して形成するステップ・アンド・スティッチ方式を併用してもよい。このように本例の投影露光装置は走査露光方式であるが、本発明はステッパー等の一括露光型(静止露光型)の投影露光装置にも有効であることは言うまでもない。
さて、本例のように真空紫外光を露光光ILとする場合には、その光路から酸素、水蒸気、炭酸ガス(CO2等)、及び炭化水素系(有機物)の気体等の露光光ILに対して強い吸収率を持つ気体である「吸収性ガス」を排除する必要がある。一方、露光ビームを透過する気体、即ち本例では真空紫外域の露光光ILに対する吸収の少ない「透過性ガス」には、窒素及び希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン)、並びにそれらの混合気体がある。そして、本例の投影露光装置には、それらの透過性ガスの内から例えば必要とされる結像特性の安定性や運転コスト等に基づいて選択した「パージガス」を用いて、露光光源1から被露光基板としてのウエハWまでの露光光ILの全部の光路上の気体を置換するための気体交換機構(不図示)が備えられている。
この場合、露光波長が157nm(F2レーザ)であればそのパージガスとしてヘリウム等の希ガス、又は窒素が使用でき、露光波長が126nm(Ar2レーザ)であればそのパージガスとしてヘリウム等の希ガスが使用できる。本例では、一例として結像特性の安定性やレーザ干渉計の計測精度の安定性等を考慮して、パージガスとしてヘリウムガスを使用する。図1において、露光光源1からウエハWまでの露光光ILの光路は、それぞれ気密室としてのビームマッチングユニット2を囲むサブチャンバ、照明光学系ILSのサブチャンバ3、レチクル室10、投影光学系PL中の気密室、及びウエハ室18の内部の光路に分割されており、これらの気密室にそれぞれ内部の気体を排気するための排気管、及び上記の気体交換機構からの高純度のパージガスを供給するための給気管が接続されている。この場合、その排気管を介して回収された気体の少なくとも一部をガス純化器(不図示)に通して回収したパージガスを、上記の気密室に循環させるようにしてもよい。
なお、それらの気密室内の気体を透過性ガスで置換する代わりに、それらの気密室内を真空にしてもよい。
また、真空紫外域の露光光に対して十分な透過性を有し、且つ高性能なレンズ材料として使用可能な材質の均一性を有する光学材料は、現状では蛍石(フッ化カルシウム(CaF2)の結晶)、フッ化バリウム(BaF2)の結晶、及びフッ化リチウム(LiF)の結晶等のフッ化物結晶に限られる。但し、材料自体の製造の容易性及び加工性を考慮すると、そのような光学材料として現状で最も実用的であるのは蛍石である。
そこで、本例の投影露光装置の投影光学系PLとしては、一例としてそのレンズ材料が蛍石のみからなる屈折系を使用できる。但し、このように単一のレンズ材料から成る光学系では、色収差の補正を十分に行なうことが難しいため、露光光ILとしての準単色光のスペクトル幅をかなり狭くする必要がある。
このようにスペクトル幅を狭くすると露光光の出力(照度)が低下するため、スペクトル幅を狭くする代わりに、投影光学系PL中に反射鏡、特に凹面鏡を配置して色収差を補正するようにしてもよい。このように凹面鏡を用いた投影光学系としては、例えば国際公開公報(WO)00/39623に開示されているように、1本の光軸に沿って複数の屈折レンズと、それぞれ光軸の近傍に開口を有する2つの凹面鏡とを配置して構成される直筒型の反射屈折系や、例えば日本国特願2000−59268に開示されているように、レチクルからウエハに向かう光軸を持つ光学系と、その光軸に対してほぼ直交する光軸を持つ反射屈折光学系とを有し、内部で中間像を形成する反射屈折投影光学系などが使用できる。また、例えば日本国特開2000−47114に開示されているように、互いに交差する光軸を持つ複数の光学系を持つ反射屈折系よりなる投影光学系を、投影光学系PLとして使用することもできる。
或いは、そのように反射鏡を用いる代わりに、投影光学系PLとして、上記の蛍石のレンズと共に、上記のフッ化バリウム結晶よりなるレンズ、及びフッ化リチウム結晶よりなるレンズの少なくとも一方を併用した屈折系を用いて、これらの複数の光学材料のレンズを組み合わせて色収差を補正してもよい。又は、上記の反射屈折系において、屈折部材の光学材料として、蛍石の他に、フッ化バリウム結晶及びフッ化リチウム結晶の少なくとも一方を用いて色収差を補正してもよい。
また、本例の投影露光装置の露光光源1は、上記のようなレーザ光源に限定されるものではなく、輝線ランプやプラズマ光源のような他の光源であっても良い。但し、上記の投影光学系PLの色収差の観点から、露光光源1としては、そのスペクトル幅が或る程度の範囲内に収まった準単色光を出射する光源を使用することになる。また、露光光源1自体が、十分な単色性を持たない場合には、露光光源1からウエハWまでの間に、露光光ILの波長幅を低減するバンドパスフィルタ、回折格子、又はエタロンのような光学素子(波長狭帯化素子)を設け、ウエハWに入射する露光光ILの波長のスペクトル幅を狭くすればよい。
この露光光の波長のスペクトル幅は、上記投影光学系PLの色収差と共に、投影光学系PLの結像特性、即ち投影露光装置の結像特性を劣化させる。投影光学系PLの色収差には、大きく分けて軸上色収差と倍率色収差とがある。これらの収差を図2を参照して説明する。
図2(A)は、投影光学系PLの軸上色収差を説明する図であり、この図2(A)において、露光波長の中心波長(これをλ1とする)の光束IL1の焦点位置をBFとするとき、その中心波長からΔλ離れた波長λ2(=λ1+Δλ)の光束IL2の焦点位置DFは、軸上色収差によって、焦点位置BFより光軸方向(Z方向)にΔZだけ離れている。これとは逆に、中心波長λ1から−Δλ離れた波長の光束の焦点位置は、焦点位置BFからZ方向に−ΔZだけ離れた位置となる。露光波長の全スペクトル分布の合成像の焦点位置は、中心波長λ1の光束IL1の焦点位置BFに一致するが、その合成像は、各波長の中心波長λ1からのずれに応じてデフォーカスした(ぼけた)像に、その波長での露光光の強度に応じて加算した像となるために、波長λ1単色の場合の像に比べて、結像特性が劣化したものとなる。
図2(B)は、投影光学系PLの倍率色収差を説明する図であり、この図2(B)において、露光波長の中心波長λ1の光束IL1の像が、光軸AXからX方向にX1だけ離れた位置31Aに形成されるとき、中心波長λ1からΔλ離れた波長λ2の光束IL2の像は、倍率色収差によって位置31AよりX方向にΔXだけ離れた位置31Bに形成される。また、中心波長λ1から−Δλ離れた波長の光束は、位置31AからX方向に−ΔX離れた位置に形成される。従って、露光波長の全スペクトル分布の合成像は、中心波長λ1での単色光の像に、各波長の中心波長λ1からのずれに応じて左右にずらした像を、その波長での露光光の強度に応じて加算した像となるために、波長λ1単色の場合の像に比べて、結像特性が劣化したものとなる。
上記のように軸上色収差と倍率色収差により生じる像の劣化は、ウエハWに転写されるパターンの線幅均一性を劣化させる。特に倍率色収差については、レチクル上のパターンの内で光軸AX近傍に配置されるパターン、及び光軸AXから放射方向に延びるパターンに対しては、その影響が現れず、光軸AXを中心とする円周に沿った方向に延びるパターンに対してのみ、その線幅を細くする作用があるため、倍率色収差は線幅均一性への影響が大きい。また、倍率色収差の線幅均一性に与える影響は、その線幅に概ね反比例して増大するため、位相シフトマスクのような超解像技術を使用してより微細な線幅のパターンを形成する場合、その影響は極めて大きなものとなる。
これに関して本願の発明者は、真空紫外光を露光光として用いると共に、位相シフトマスクを使用してより微細な線幅のパターンを形成する際の、上記色収差の影響を解析し、従来より一層微細なパターンの転写を可能とするために投影光学系に必要な色収差の許容値を導き出した。同時に、本願の発明者は、一般的な通常のマスクを使用して中程度に微細なパターンを転写するために必要な色収差の許容値をも導き出した。
以下に、図3〜図5を参照してその許容値について説明する。
図3は、以下の検討で使用した露光光のスペクトル分布を表す図であり、図3(A),(B)の横軸は、露光光の中心波長からの波長差(Δλ)を表し、縦軸は、各波長におけるスペクトルの強度SG,SLを表している。強度SG,SLは、中心波長での強度が1になるように規格化している。
スペクトル分布の幅の定義として、一般に半値全幅(FWHM:Full Width at Half Maximum)が使用されるが、図3中のスペクトルの横方向への広がりは、各スペクトル分布のFWHMが、1になるように規格化している。従って、図3(A),(B)の横軸のスケールは任意の単位であり、想定する露光光源のFWHMに依存することになる。例えば、FWHM=1pmのレーザ光源を想定すると、横軸の単位は1pmとなり、FWHM=0.2pmのレーザ光源を想定すると、横軸の単位は0.2pmとなる。
図3(A)に示したスペクトル分布Gは、いわゆるガウス型の分布であり、その関数型は、強度SGが波長差Δλの関数として以下のように表される。
SG(Δλ)=exp{−2.773×(Δλ)2} …(11)
一方、図3(B)に示したスペクトル分布Lは、ガウス型とローレンツ型との積からなる分布(以下、「ガウス・ローレンツ型」と言う)であり、その関数型は、強度SLが波長差Δλの関数として以下のように表される。
SL(Δλ)=exp{−0.226×(Δλ)2}×
{1/(1+3.560×(Δλ)2} …(12)
両分布の違いは、ガウス型のスペクトル分布Gでは、その中心波長(Δλ=0)近傍にエネルギーが集中しているのに比べ、ガウス・ローレンツ型のスペクトル分布Lでは、中心波長から離れた位置にも或る程度のエネルギーが存在していることである。そして、このようなスペクトル分布形状の違いは、露光装置で使用する露光光源の選択によって、実際に生じる程度のものである。
両スペクトル分布G,Lは、上記の通り同じFWHMを有する分布であるが、その分布の幅が異なっていることは、一見して明らかである。即ち、FWHMは、レーザスペクトル分布の広がりを、正確に表現する指標とはなり得ない。そこで、本明細書では、スペクトル分布の幅の定義として、スペクトル分布の標準偏差(σ)を採用することにする。
一般的に使用される通り、(11)式のガウス型のスペクトル分布Gでの標準偏差σSGは以下のようになる。
σSG=√[∫{SG(Δλ)×Δλ2}dΔλ/∫SG(Δλ)dΔλ] …(13)
また、(12)式のガウス・ローレンツ型のスペクトル分布Lでの標準偏差σSLは、(13)式でSG(Δλ)をSL(Δλ)で置き換えた式で表すことができる。(13)式による計算の結果、上記のスペクトル分布G,Lの標準偏差σSG,σSLは、それぞれ以下のようにFWHMに比例する。
σSG=0.425×FWHM …(14A)
σSL=0.733×FWHM …(14B)
即ち、各分布において、FWHM=q[pm]の光源を使用するなら、その光源からの光のスペクトル分布の標準偏差σSG,σSLは、それぞれ以下のようになる。
σSG=0.425×q[pm],σSL=0.733×q[pm]
このようなスペクトル分布の露光光を用いた場合における色収差の影響を以下の条件で検討した。露光光学系の条件として、露光光の中心波長は、F2レーザ(フッ素レーザ)の波長である157nmとし、投影光学系PLの像側(ウエハ側)の開口数NAは0.8とした。
色収差によって転写パターンの線幅均一性が悪化するので、各色収差条件で線幅均一性の許容値を目標線幅±10%とし、露光量変動誤差を±2.5%とした場合の、投影光学系PLの焦点深度を計算した。
図4及び図5は、このように計算された焦点深度が、実用限界である150nm以上となる領域を斜線を施して示したものである。即ち、図4(A),(B)及び図5(A),(B)における横軸は、それぞれ露光波長のスペクトル分布の標準偏差σ(σSG又はσSL)の波長幅に対する投影光学系PLの軸上色収差量Z[nm]であり、縦軸は、上記σの波長幅に対する投影光学系PLの倍率色収差量Y[nm]である。
図4(A),(B)は、上記光学条件下で、(1)式における比例定数k1=0.3に相当する線幅60nmの孤立線を、透過率6%のハーフトーン位相シフトマスクを用いてコヒーレンスファクタ=0.9の2/3輪帯照明で露光した場合の検討結果である。このためには、図1において、レチクルステージ12上のレチクルRとして透過率6%のハーフトーン位相シフトマスクを設置し、可変開口絞り8の開口形状を内径が外径の2/3で、且つ外径のコヒーレンスファクタが0.9となる輪帯に設定すればよい。そして、図4(A)は、露光光(光源)のスペクトル分布として、図3(A)に示したガウス型の分布Gを使用し、図4(B)は、図3(B)に示したガウス・ローレンツ型の分布Lを使用した結果である。
図4(A),(B)において、焦点深度が150nm以上となる実用領域は、スペクトル分布のσあたりの軸上色収差量Z(横軸)が125nmで、σあたりの倍率色収差量Y(縦軸)が0nmである横軸上の点と、σあたりの軸上色収差量Z(横軸)が0nmで、σあたりの倍率色収差量Y(縦軸)が6nmである縦軸上の点とを通る楕円形(正確には楕円形の1/4)の曲線32,33内の領域になる。そしてこの領域は、想定した2つのスペクトル分布において、即ち図4(A)と(B)とで、ほとんど共通である。また、図3(A),(B)に示した以外の様々なスペクトル分布を想定しても、その分布の幅を標準偏差σで定義し、そのσあたりの投影光学系の色収差量を評価尺度とする限り、どのようなスペクトル分布であっても、上記楕円領域内が色収差の許容範囲内となった。
この焦点深度が150nm以上となる楕円領域内を式で表記すると、以下のようになる。
(Z/125)2+(Y/6)2≦1 …(15)
なお、この色収差の許容範囲は、上記の通りの光学条件、即ち、露光波長λ=157nm、投影光学系PLの開口数NA=0.8で、k1=0.30の孤立線を露光する場合の条件である。そして、これとは異なる条件では、その露光波長λや開口数NAによって、パターンの微細度も変わるため、色収差の許容条件も異なってくる。但し、倍率色収差は転写パターンの線幅に逆比例して影響され、一方、最小転写パターンの線幅は(1)式の通り、k1×λ/NAであるため、倍率色収差の許容値は、λ/NAに比例することになる。
また、軸上色収差の許容値も、(2)式の焦点深度DOF(=k2・λ/NA2)に比例して厳しくなるため、軸上色収差の許容値は、λ/NA2に比例することになる。
従って、任意の露光波長λ及び開口数NAの投影光学系に対して、上記の楕円領域を表す式は、λ/NA2に比例する係数αと、λ/NA に比例する係数βとを用いて、以下のように表すことができる。
(Z/α)2+(Y/β)2≦1 …(16)
そして、λ=157nm,NA=0.8において、α=125,β=6となるように係数α,βの比例係数を決定すると、係数α,βは以下のようになる。
α=0.5×λ/NA2 …(17)
β=0.03×λ/NA …(18)
従って、任意の露光波長λ及び開口数NAの投影光学系が満たすべき色収差の条件は、露光光のスペクトル分布の標準偏差σの波長幅に対する軸上色収差量Zと倍率色収差量Yとが(16)式の関係を満たし、且つ係数α,βが、(17)式、(18)式の関係を満たせば良いことになる。
なお、孤立パターンと同様に、線幅60nmの線パターンを、所定のピッチ(200nm以上)で繰り返して配列することで形成されるライン・アンド・スペースパターンについても同様の検討を行なったが、図4に示した孤立線の場合が、焦点深度≧150nmの範囲が最も狭く、従って色収差に関する条件が最も厳しかった。
一般に線幅均一性が、最も厳しく要求されるパターンは、トランジスタのゲートパターン(線幅で60nmとする)であるが、ゲートパターンのピッチは、その線幅の3.5倍程度(=210nm)と比較的長いため、そのゲートパターンは孤立パターンに近いパターンとみなすことができる。従って、図4に示した孤立線での検討結果に基づいて決定された上記色収差の仕様は、現実的などのようなパターンに対しても適応可能である。
図5は、同様の光学条件下で、k1=0.18に相当する線幅35nmの線パターンを、ピッチ200nmで繰り返して並べて形成されるライン・アンド・スペースパターンを、図6に示す位相シフトマスクを用いて、且つコヒーレンスファクタ=0.3の通常照明(円形照明)で露光する条件での検討結果である。
図6は、その位相シフトマスクの一部の拡大断面図であり、その図6において、マスク基板36の表面(パターン形成面)にクロム等の遮光パターンCRがピッチP(=200nm)で形成されており、各遮光パターンCRの間隔部分に、その1つおきに位相シフタPS(マスク基板36の彫り込み部でもよい)を形成し、位相シフタPSの部分の透過光と、それ以外のマスク基板36の透過光との間に180°の位相差を生じせしめたものである。
そして、図5(A)は露光光のスペクトル分布として、図3(A)に示したガウス型の分布Gを使用し、図5(B)は、図3(B)に示したガウス・ローレンツ型の分布Lを使用した結果である。
図5(A),(B)において、焦点深度が150nm以上となる実用領域は、スペクトル分布のσあたりの軸上色収差量Z(横軸)がほぼ160nmで、σあたりの倍率色収差量Y(縦軸)が0nmである横軸上の点と、σあたりの軸上色収差量Zが0nmで、σあたりの倍率色収差量Yがほぼ3nmである縦軸上の点とを通る楕円形(正確には楕円形の1/4)の曲線34,35内の領域になる。図5の結果は、位相シフトマスクによる、より微細なパターンの露光を前提としているために、特に倍率色収差Yの許容値が、図4の結果に比べて厳しくなっている。
この条件で、焦点深度を許容範囲以上に保つための投影光学系PLの色収差の許容範囲は、図5(A),(B)に示したとおり、露光光源1のスペクトル分布の幅を標準偏差σで定義する限り、使用した露光光のスペクトル分布によらずほぼ一定で、次の範囲である。
(Z/160)2+(Y/3)2≦1 …(19)
また、上記の(16)式と同様に、任意の露光波長λ、任意の開口数NAの投影光学系に対して、係数α1,β1を用いて(19)式を書き直すと、焦点深度を許容範囲以上に保つための投影光学系PLの色収差の条件は次のようになる。
(Z/α1)2+(Y/β1)2≦1 …(20)
但し、係数α1,β1は次の通りである。
α1=0.65×λ/NA2 …(21)
β1=0.015×λ/NA …(22)
従って、投影光学系PLの色収差をこの範囲に抑えることで、より一層微細な線幅のパターンの転写が可能な投影露光装置を実現することができる。
なお、位相シフトマスクを使用した、パターンのピッチが200nm以上の任意の値であるライン・アンド・スペースパターンや、線幅35nmの孤立線パターンについても、これと同様に投影光学系PLの色収差の許容値の検討を行なったが、図5に示したピッチ200nmのパターンの場合が、焦点深度が150nm以上となる範囲が最も狭く、従って色収差に関する条件が最も厳しかった。
このように、投影光学系の色収差の許容値を、露光光のスペクトル分布に依らずに決定できるのは、本発明において、スペクトル分布の幅を標準偏差σで定義しているためである。
前述の通り、スペクトル分布の幅の定義には、他にFWHMや95%純度幅(全エネルギーのうち、95%のエネルギーが分布するスペクトルの幅)等があるが、露光光のスペクトル形状が異なると、標準偏差σと、FWHMや95%純度幅との間の関係(比)は異なってくる。これは、(14A)式、(14B)式で述べたとおりである。
従って、FWHMや95%純度幅でレーザスペクトル分布の幅を定義すると、スペクトル分布の形状によって、それぞれ色収差の許容値を変更しなければならず、非常に煩雑である。
一方、標準偏差σで定義すれば、上記のように色収差の許容値をスペクトル分布の形状に依らず、一定に保つことができ、FWHMや95%純度幅で定義するよりも好都合である。
ところで、上記のように、投影光学系の色収差(軸上色収差及び倍率色収差)は、使用可能なレンズ材料や反射鏡の使用の有無によって大きく異なってくる。また、真空紫外光を露光波長とする場合には、使用可能なレンズ材料の制約が大きいため、投影光学系の色収差を十分に補正できない場合が生じる。そのような場合には、露光光のスペクトル分布自体を、上記の(16)式、(20)式を満たすように狭くする(狭帯化する)必要がある。
例えば、上記と同様な中心波長157nmを使用するNA=0.8の、実用的な露光視野を有する投影光学系の場合、露光光の波長幅1pmあたりの色収差量は、蛍石1種類のみからなる屈折光学系の場合、軸上色収差110nm、倍率色収差20nm程度が補正の限界であるので、(20)式を満たすためには、光源のスペクトル分布の標準偏差σを、0.1pm以下に抑える必要がある。
また、蛍石と、その他のレンズ材料(フッ化バリウム結晶やフッ化リチウム結晶)とをレンズ材料として使用する屈折光学系の場合には、露光光の波長幅1pm当たりの軸上色収差45nm、倍率色収差8nm程度が補正の限界となるので、(20)式を満たすためには、光源のスペクトル分布の標準偏差σを、0.25pm以下に抑える必要がある。
一方、蛍石のレンズと反射鏡(例えば凹面鏡)とを含んだ反射屈折光学系では、その色収差補正能力が向上し、軸上色収差22nm、倍率色収差4nm程度まで補正可能となるので、(20)式を満たす光源のスペクトル分布の標準偏差σを、0.50pmにまで緩和することが可能である。
なお、実際の露光では、色収差以外の様々な要因も、転写パターンの線幅均一性を悪化させる。例えばレチクル上に描画された原画パターン間の線幅の誤差や、投影光学系のその他の収差、走査型露光装置におけるレチクルとウエハとの走査露光中の位置ずれ等がその要因となる。従って、投影光学系の色収差は、上記(16)式、(20)式の条件よりも更に小さい方が望ましいことは言うまでもない。例えば、両式中の右辺は、1ではなく0.7程度である方が、線幅均一性が一層向上し好ましくなる。
次に、上記の実施の形態の投影露光装置は、複数のレンズを含んで構成される照明光学系、及び投影光学系を露光装置本体に組み込み光学調整をすると共に、多数の機械部品からなるレチクルステージやウエハステージを露光装置本体に取り付けて配線や配管を接続し、更に総合調整(電気調整、動作確認等)をすることにより製造することができる。なお、投影露光装置の製造は温度及びクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
更に、上記の実施の形態の投影露光装置を使用した半導体デバイスの製造工程の一例につき図7を参照して説明する。
図7は、半導体デバイスの製造工程の一例を示し、この図7において、まずシリコン半導体等からウエハWが製造される。その後、ウエハW上にフォトレジストを塗布し(ステップS10)、次のステップS12において、上記の実施の形態(図1)の投影露光装置のレチクルステージ上にレチクルR1をロードし、走査露光方式でレチクルR1のパターン(符号Aで表す)をウエハW上の全部のショット領域SEに転写(露光)する。なお、ウエハWは例えば直径300mmのウエハ(12インチウエハ)であり、ショット領域SEの大きさは一例として非走査方向の幅が25mmで走査方向の幅が33mmの矩形領域である。次に、ステップS14において、現像及びエッチングやイオン注入等を行うことにより、ウエハWの各ショット領域SEに所定のパターンが形成される。
次に、ステップS16において、ウエハW上にフォトレジストを塗布し、その後ステップS18において、上記の実施の形態(図1)の投影露光装置のレチクルステージ上にレチクルR2をロードし、走査露光方式でレチクルR2のパターン(符号Bで表す)をウエハW上の各ショット領域SEに転写(露光)する。そして、ステップS20において、ウエハWの現像及びエッチングやイオン注入等を行うことにより、ウエハWの各ショット領域に所定のパターンが形成される。
以上の露光工程〜パターン形成工程(ステップS16〜ステップS20)は所望の半導体デバイスを製造するのに必要な回数だけ繰り返される。そして、ウエハW上の各チップCPを1つ1つ切り離すダイシング工程(ステップS22)や、ボンディング工程、及びパッケージング工程等(ステップS24)を経ることによって、製品としての半導体デバイスSPが製造される。
なお、露光装置の用途としては半導体素子製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに形成される液晶表示素子、若しくはプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置用の露光装置や、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン、薄膜磁気ヘッド、又はDNAチップ等の各種デバイスを製造するための露光装置にも広く適用できる。更に、本発明は、各種デバイスのレチクルパターンが形成されたレチクル(フォトマスク等)をフォトリソグラフィ工程を用いて製造する際の、露光工程(露光装置)にも適用することができる。
また、本発明で使用される投影光学系の倍率は、縮小のみならず等倍又は拡大であってもよい。
そして、露光ビームとしては、DFB(Distributed feedback)半導体レーザ又はファイバレーザから発振される赤外域又は可視域の単一波長レーザを、例えばエルビウム(Er)(又はエルビウムとイッテルビウム(Yb)との両方)がドープされたファイバアンプで増幅し、且つ非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いてもよい。一例として、単一波長レーザの発振波長を1.544〜1.553μmの範囲内とすると、8倍高調波では波長193〜194nmの光、即ちArFエキシマレーザとほぼ同一波長となる紫外光が得られ、発振波長を1.57〜1.58μmの範囲内とすると、10倍高調波では波長157〜158nmの光、即ちF2レーザとほぼ同一波長となる紫外光が得られる。
また、露光光(露光ビーム)は波長100〜400nm程度の紫外光に限られるものではなく、例えばレーザプラズマ光源又はSOR(Synchrotron Orbital Radiation)リングから発生する軟X線領域(波長5〜50nm)のEUV光(Extreme Ultraviolet Light)を用いてもよい。EUV露光装置では、照明光学系及び投影光学系はそれぞれ複数の反射光学素子のみから構成される。
また、露光ビームとして電子線のような荷電粒子線を使用することも可能であり、電子線を用いる場合には光学系(投影系)として電子レンズ及び偏向器からなる電子光学系を用いればいい。なお、電子線が通過する光路は真空状態にすることはいうまでもない。
また、照明光学系や投影光学系中の屈折素子(レンズ等)用の硝材としては、上記の光学材料の他にフッ素や水素等の不純物をドープした石英や水晶等も使用することができる。
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得ることは勿論である。また、明細書、特許請求の範囲、図面、及び要約を含む2001年3月13日付け提出の日本国特願2001−70273の全ての開示内容は、そっくりそのまま引用されて本願に組み込まれている。
産業上の利用の可能性
本発明によれば、微細パターンの線幅均一性に着目して、投影光学系の色収差量を、露光ビームのスペクトル分布に対応した値以下に抑えたため、微細パターンに対しても、十分な線幅均一性を実現することが可能となる。また、投影光学系の色収差を露光ビームのスペクトル分布の標準偏差の波長幅で規定することによって、種々のスペクトル分布の露光ビームに対して許容範囲の条件を共通化できるため、高解像度の投影光学系を容易に設計、製造することができる。
また、位相シフトマスクを使用することによって、一層微細な線幅のパターンを、十分な線幅均一性で転写できる露光方法及び装置を実現することができる。
また、露光装置に搭載された投影光学系の色収差に応じて、露光ビームのスペクトル分布を狭帯化することによって、上記の線幅均一性を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の実施の形態の一例の投影露光装置を示す一部を切り欠いた構成図である。図2において、(A)は投影光学系PLの軸上色収差の説明図、(B)は投影光学系PLの倍率色収差の説明図である。図3において、(A)は露光光のガウス型のスペクトル分布を示す図、(B)は露光光のガウス・ローレンツ型のスペクトル分布を示す図である。図4は、線幅60nmの孤立線を、透過率6%のハーフトーン位相シフトマスクを用いてコヒーレンスファクタ=0.9の2/3輪帯照明で露光した場合に、焦点深度を許容範囲以上に保つための、投影光学系PLの色収差の許容範囲を示す図である。図5は、線幅35nmでピッチ200nmのライン・アンド・スペースパターンを、位相シフトマスクを用いて、且つコヒーレンスファクタ=0.3の通常照明で露光した場合に、焦点深度を許容範囲以上に保つための、投影光学系PLの色収差の許容範囲を示す図である。図6は、図5の許容範囲に対応して使用される位相シフトマスクの要部を示す拡大断面図である。図7は、本発明の実施の形態の投影露光装置を用いて半導体デバイスを製造する際の製造工程の一例を示す図である。
本発明は、例えば半導体素子、撮像素子(CCD等)、液晶表示素子、又は薄膜磁気ヘッド等の各種デバイスを製造するためのフォトリソグラフィ工程中で、マスクに形成されたパターンを基板上に転写する際に使用される露光方法及び装置、並びにデバイス製造方法に関する。
背景技術
半導体集積回路、液晶ディスプレイ等の電子デバイスの微細パターンを形成するためのフォトリソグラフィ工程では、形成すべきパターンを4〜5倍程度に比例拡大して描画したマスクとしてのレチクル(又はフォトマスク等)のパターンを、一括露光方式又は走査露光方式の投影露光装置を用いて被露光基板としてのウエハ(又はガラスプレート等)上に縮小転写する方法が用いられている。斯かる投影露光装置に搭載される投影光学系のウエハ側の解像度Resは、一般に次式で表わされる。
Res=k1・λ/NA …(1)
ここで、λは露光波長、NAは投影光学系の像側(ウエハ側)の開口数、k1はウエハ上に塗布された感光材料(レジスト)の性能、使用するレチクルの種類、及びレチクルへの照明条件等により決まる比例定数であり、解像度Resは、露光波長λに比例し、開口数NAに反比例する。
また、ウエハ自体の凹凸や、半導体プロセスによって生じる段差のために、ウエハ表面には或る程度の段差が存在しており、投影光学系には或る程度の焦点深度DOFが要求される。使用するレチクルの種類や照明条件によって決まる比例定数をk2とすると、焦点深度はDOFは一般に次式で表されるように、開口数の2乗に反比例する。
DOF=k2・λ/NA2 …(2)
更に、これらの投影露光装置においては、半導体集積回路等の微細化に対応するために、その露光波長がより短波長側にシフトして来ている。現在、その露光波長はKrFエキシマレーザの248nmが主流となっているが、より短波長のArFエキシマレーザの193nmも実用化段階に入りつつある。そして、波長157nmのフッ素レーザ(F2レーザ)や、波長126nmのアルゴンダイマーレーザ(Ar2レーザ)等のように、真空紫外域(VUV:Vacuum Ultraviolet)中でも更に160nm程度以下の短い波長の露光光源を使用する投影露光装置の開発も行なわれている。
また、(1)式より分かるように、短波長化のみでなく、光学系の開口数の増大(大NA化)によっても高解像度化は可能であるため、より一層大NA化した投影光学系の開発もなされている。
更に、短波長化、又は大NA化を行う他に実質的に解像度を高める技術として、レチクル上のパターンの内の、隣接する透過パターンを透過する光束の位相を180°異ならしめて解像度を向上する「位相シフトマスク」や、レチクル上の遮光パターンに僅かの透過率を与え、かつ、その部分の透過光の位相を、ガラス部分の透過光の位相に対して180°異ならしめて解像度を向上する「ハーフトーン位相シフトマスク」や、レチクルへの照明光の照明方法を最適化して解像度を向上する輪帯照明等の「変形照明技術」も開発され、実用化されている。「位相シフトマスク」や「変形照明技術」のように、露光波長や開口数を固定したままで光学系の解像度を向上する技術は、一般に超解像技術と呼ばれるが、この超解像技術によって、上記の比例定数k1の値は年々微細化し、k1を0.2以下として微細パターンを転写することも可能となってきている。
上記の如く、従来より投影露光装置においては、短波長化、大NA化、及び超解像技術の開発によって、解像度の向上が図られて来た。
これに関して、半導体集積回路の性能向上、特に動作速度の向上のためには、微細なパターンを分離する能力である解像度を向上する(微細化する)以外に、形成したパターンの線幅均一性を高めることも要求される。特にいわゆるクリティカルレイヤのパターンを形成する場合のように、極めて高い加工精度が要求される工程においては、線幅均一性を、転写されるパターンの線幅の±10%程度以内に抑える必要がある。
このように解像度、及び線幅均一性を向上させようとする場合に、投影光学系に種々の収差が残存していると、それらの収差は、その解像度や線幅均一性を劣化させる。従って、投影光学系の収差は、設計及び製造時の双方で十分小さく抑え込む必要がある。しかしながら、高解像度を得るために、露光光として真空紫外域中でも更に短い波長160nm程度以下のフッ素レーザや、アルゴンダイマーレーザ等を使用する場合、これらのレーザ光は何れも或る程度の広がりを持ったスペクトル分布を有する準単色光であり、投影光学系には、そのスペクトル分布をカバーするだけの色収差補正が要求される。
また、このような真空紫外光を露光光として用いる投影露光装置で、更に解像度を高めるために超解像技術を併用する場合には、(1)式における比例定数k1の値が小さくなるため、投影光学系においては従来よりも一層厳しい収差補正が必要となる。更に、従来の投影光学系は、通常のレチクルや通常の照明条件での使用を前提として設計されていたため、位相シフトマスクのような超解像技術で達成されるような微細パターン(比例定数k1が0.2程度の微細パターン)での光学性能は、十分ではなかった。また、従来の投影光学系においては、超解像技術を適用する際に必要となる残存収差の上限についても、十分な検討がなされていなかった。
一方、その波長域で使用可能なレンズ材料(硝材)は、実用上蛍石(CaF2結晶)などに限定されるため、投影光学系の収差の補正、特に色収差の補正が困難になる。
本発明は斯かる点に鑑み、所定のスペクトル分布を有する露光ビームを使用する場合に、高解像度が得られる露光技術を提供することを第1の目的とする。
更に本発明は、波長160nm以下若しくは真空紫外域の準単色光の露光ビームを使用した場合に、又はその露光ビームに超解像技術を併用した場合に、その超解像技術の効果を十分に発揮できるように色収差が補正されて高解像度が得られる露光技術を提供することを第2の目的とする。
発明の開示
本発明による第1の露光方法は、所定のスペクトル分布を有する露光ビームで第1物体(R)を照明し、その第1物体のパターンを投影光学系(PL)を介して第2物体上に転写する露光方法であって、その投影光学系の色収差は、そのスペクトル分布の標準偏差に応じて規定された許容範囲内であるものである。
斯かる本発明によれば、露光ビームのスペクトル分布の標準偏差によって投影光学系の色収差が規定される。本発明者によって、スペクトル分布の標準偏差を用いることによって、スペクトル分布が例えばガウス型、又はガウス型とローレンツ型との積のような種々の分布であっても、投影光学系の色収差に関して共通の許容範囲を使用できることが確かめられた。従って、高解像度の投影光学系の設計及び製造を容易に行うことができる。
この場合、その投影光学系の色収差量は、一例として軸上色収差量と倍率色収差量との少なくとも一方を含んでいる。
また、その露光ビームの中心波長をλ、その投影光学系のその第2物体側の開口数をNAとして、係数α及びβを次のように表す。
α=0.5×λ/NA2 …(3A)
β=0.03×λ/NA …(3B)
この場合、その露光ビームのスペクトル分布の標準偏差の波長幅に対するその投影光学系の軸上色収差量Zと、その露光ビームのスペクトル分布の標準偏差の波長幅に対するその投影光学系の倍率色収差量Yとが、次の関係を満たすことが望ましい。
(Z/α)2+(Y/β)2≦1 …(4)
斯かる本発明によれば、その露光ビームの波長幅に応じてその投影光学系の軸上色収差量Z、及び倍率色収差量Yが変化するが、その投影光学系の設計指針として、その露光ビームのスペクトル分布の標準偏差で定まる波長幅における軸上色収差量Z、及び倍率色収差量Yの許容値(色収差許容値)を(4)式で規定するものとした。この結果、使用する露光ビームのスペクトル分布が決定されると、本発明による色収差許容値に従って容易に光学設計を行なうことが可能になり、高解像度が得られる。
また、本発明による色収差許容値は、その第1物体として位相シフトマスクを使用する場合のような微細なパターンの転写時についても考慮してあるため、本発明によれば、位相シフトマスクを始めとする超解像技術を適用して、極めて微細なパターンを露光することが可能となる。
この場合、更に係数α1及びβ1を次のように表す。
α1=0.65×λ/NA2 …(5A)
β1=0.015×λ/NA …(5B)
この際に、上記の軸上色収差量Zと上記の倍率色収差量Yとが、更に次の関係を満たすことが望ましい。
(Z/α1)2+(Y/β1)2≦1 …(6)
これによって、更に高い解像度が得られる。
また、本発明による第2の露光方法は、波長160nm以下の露光ビームで第1物体(R)を照明し、その第1物体のパターンを投影光学系(PL)を介して第2物体(W)上に転写する露光方法であって、その露光ビームの中心波長をλ、その投影光学系のその第2物体側の開口数をNAとして、係数α及びβを上記の(3A)式、(3B)式のように表したとき、その露光ビームに対するその投影光学系の軸上色収差量Zと、その露光ビームに対するその投影光学系の倍率色収差量Yとが上記の(4)式の関係を満たすものである。
斯かる本発明においても、その投影光学系の設計指針として、軸上色収差量Z、及び倍率色収差量Yの許容値(色収差許容値)が(4)式で規定される。従って、使用する露光ビームの波長幅が決定されると、本発明による色収差許容値に従って光学設計を行なうことが可能になり、高解像度が得られる。
また、本発明による色収差許容値も、その第1物体として位相シフトマスクを使用する場合のような微細なパターンの転写時についても考慮してあるため、本発明においても、位相シフトマスクを始めとする超解像技術を適用して、極めて微細なパターンを露光することが可能となる。
この場合にも、更に係数α1及びβ1を(5A)式、(5B)式で表したとき、更に高解像度を得るために、その軸上色収差量Zとその倍率色収差量Yとが、(6)式の関係を満たすことが望ましい。
次に、本発明の第1の露光装置は、所定のスペクトル分布を有する露光ビームで第1物体(R)を照明し、その第1物体のパターンを投影光学系(PL)を介して第2物体(W)上に転写する露光装置であって、その投影光学系の色収差は、そのスペクトル分布の標準偏差に応じて規定された許容範囲内であるものである。斯かる露光装置によれば、種々のスペクトル分布の露光ビームに対して共通の設計条件で高解像度の投影光学系を設計、製造することができる。
この場合、その露光ビームの中心波長をλ、その投影光学系のその第2物体側の開口数をNAとして、係数α及びβを上記の(3A)式、(3B)式で表したとき、その露光ビームのスペクトル分布の標準偏差の波長幅に対するその投影光学系の軸上色収差量Zと、その露光ビームのスペクトル分布の標準偏差の波長幅に対するその投影光学系の倍率色収差量Yとが、上記の(4)式の関係を満たすことが望ましい。これによって、高い解像度が得られる。
更に、係数α1及びβ1を(5A)式、(5B)式で表したとき、その軸上色収差量Zとその倍率色収差量Yとが、更に、(6)式の関係を満たすことが望ましい。これによって更に高い解像度が得られる。
次に、本発明第2の露光装置は、波長160nm以下の露光ビームで第1物体(R)を照明し、その第1物体のパターンを投影光学系(PL)を介して第2物体(W)上に転写する露光装置であって、その露光ビームの中心波長をλ、その投影光学系のその第2物体側の開口数をNAとして、係数α及びβを(3A)式、(3B)式で表したとき、その露光ビームに対するその投影光学系の軸上色収差量Zと、その露光ビームに対するその投影光学系の倍率色収差量Yとが、(4)式の関係を満たすものである。本発明によれば、上記のように高解像度が得られる。
この場合にも、更に係数α1及びβ1を(5A)式、(5B)式で表したとき、更に高解像度を得るために、その軸上色収差量Zとその倍率色収差量Yとが、(6)式の関係を満たすことが望ましい。
また、その露光ビームの一例は、フッ素レーザを光源とする中心波長157nmの光束である。
また、一例として、その投影光学系が反射鏡と蛍石製のレンズとを含む反射屈折光学系である場合に、その露光ビームのスペクトル分布は、その標準偏差が、0.50pm以下であることが望ましい。そのように反射屈折系とすることで色収差補正が容易になるため、その露光ビームの波長幅は広くすることができる。
また、別の例として、その投影光学系が蛍石製のレンズとフッ化バリウム製又はフッ化リチウム製のレンズとを含む光学系である場合に、その露光ビームのスペクトル分布は、その標準偏差が、0.25pm以下であることが望ましい。そのように2種類の光学材料を使用することによって、色収差補正を比較的容易に行うことができるため、その露光ビームの波長幅は比較的広くすることができる。
また、更に別の例として、その投影光学系の光学部材が蛍石製のレンズのみからなる場合に、その露光ビームのスペクトル分布は、その標準偏差が、0.10pm以下であることが望ましい。光学材料が1種類の場合には、色収差補正が困難であるため、その露光ビームのスペクトル幅を狭くする必要がある。
次に、本発明のデバイス製造方法は、本発明の露光方法を使用してデバイスパターン(R)をワークピース(W)上に転写する工程を含むものである。本発明の適用によって、真空紫外光を用いて超解像技術を併用できるようになるため、微細なデバイスを高精度に量産することができる。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明の好ましい実施の形態の一例につき図面を参照して説明する。本例は、露光ビームとして真空紫外光(VUV光)中でも更に波長が160nm以下と短い光を用いる投影露光装置で露光を行う場合に本発明を適用したものである。
図1は、本例の投影露光装置を示す概略構成図であり、この図1において、例えば半導体デバイス製造工場のクリーンルーム内に、投影露光装置の本体部が設置されている。そして、露光光源1としては、真空紫外域の発振波長157nmのF2レーザ(フッ素レーザ)光源が使用されている。F2レーザ光源から射出されるパルスレーザ光は、所定の波長幅のスペクトル分布を持つ準単色光とみなすことができる。それ以外に露光光源として、発振波長146nmのKr2レーザ(クリプトンダイマーレーザ)、発振波長126nmのAr2レーザ(アルゴンダイマーレーザ)等の光源を使用する場合にも本発明を適用することができる。更に、露光光源として、YAGレーザの高調波発生装置、又は半導体レーザの高調波発生装置等の真空紫外域の光源を使用する場合にも本発明は有効である。
露光光源1から射出された露光ビームとしての露光光ILは、ビームマッチングユニット(BMU)2、リレーレンズ4、光路折り曲げ用のミラー5、リレーレンズ6を経てオプティカル・インテグレータ(ユニフォマイザ、又はホモジナイザ)としてのフライアイレンズ7に入射して、照度分布が均一化される。フライアイレンズ7の射出面は、転写対象のレチクルRのパターン面(レチクル面)に対する光学的フーリエ変換面(照明光学系の瞳面)となっており、その射出面に開口の形状や大きさを切り替えることができる可変開口絞り8が設置されている。可変開口絞り8の開口を円形開口としてその大きさを切り替えることによって、露光光IL(照明光束)の開口数、ひいてはコヒーレンスファクタを可変として、レチクルRへの照明光束の空間的コヒーレンシィを可変とすることができる。更に、その可変開口絞り8は、開口絞り(照明系開口絞り)を輪帯状の開口絞り、更には光軸に対して偏心した複数(例えば4個)の小開口よりなる変形照明用の開口絞りに切り替えることもできる。
なお、オプティカル・インテグレータとしてロッドインテグレータ(ロッドレンズ)を使用することも可能であり、この場合には、そのロッドインテグレータの射出面はレチクル面と共役になり、その射出面に対する光学的フーリエ変換面に可変開口絞り8が配置される。
フライアイレンズ7から射出されて可変開口絞り8を通過した露光光ILは、コンデンサレンズ9を介してマスクとしてのレチクルRを照明する。実際には、コンデンサレンズ9中には結像光学系が含まれており、可変開口絞り8とレチクルRとの間にはレチクル面に対する共役面が形成され、この共役面に可変視野絞り(不図示)が設置されている。リレーレンズ4,6、ミラー5、フライアイレンズ7、可変開口絞り8、及びコンデンサレンズ9より照明光学系ILSが構成され、この照明光学系ILSは気密室としてのサブチャンバ3内に収納されている。同様にビームマッチングユニット(BMU)2も、気密室としてのサブチャンバ(不図示)内に収納されている。
図1において、レチクルRを透過した光束は、投影光学系PLを介して被露光基板としてのウエハW上にそのレチクルRのパターンを所定倍率(例えば1/4,1/5等)で縮小した像を形成する。レチクルR及びウエハWはそれぞれ本発明の第1物体及び第2物体に対応している。ウエハWは例えば半導体(シリコン等)又はSOI(silicon on insulator)等の直径が例えば200mm(8インチ)、又は300mm(12インチ)等の円板状の基板である。以下、投影光学系PLの光軸AXに平行にZ軸を取り、Z軸に垂直な平面内で図1の紙面に平行にX軸を、図1の紙面に垂直にY軸を取って説明する。
先ず、レチクルRは、レチクルベース13上にX方向に走査できるように、且つY方向に移動できるように載置されたレチクルステージ12上に真空吸着等によって保持され、レチクルステージ12の2次元的な位置は、レーザ干渉計16及びこれに対応して配置された移動鏡15によって計測され、この計測値がレチクルステージ制御系11及び装置全体の動作を統轄制御する主制御系17に供給されている。その計測値及び主制御系17からの制御情報に基づいて、レチクルステージ制御系11は、レチクルステージ12の位置及び速度を制御する。レチクルベース13、レチクルステージ12、及びこの駆動機構(不図示)等からレチクルステージ系が構成され、レチクルステージ系は、気密性の高い隔壁(気密室)としてのレチクル室10内に収納されている。
また、レチクル室10は、不図示のコラムに支持され、レチクルベース13は、レチクル室10の底面上に防振台14A,14B(実際には3台又は4台の防振台を含む)を介して載置されている。防振台14A,14Bは、エアー方式又は油圧方式の機械式のダンパーと、電磁式のアクチュエータとを含む能動型の防振装置であり、機械式のダンパーによって高周波数の振動成分が抑制され、電磁式のアクチュエータによって低周波数の振動成分が抑制される。
一方、ウエハWは、不図示のウエハホルダを介してウエハステージ(Zレベリングステージ)20上に保持され、ウエハステージ20はウエハベース21上にX方向、Y方向に移動自在に載置されている。ウエハステージ20の2次元的な位置は、レーザ干渉計24及びこれに対応して配置された移動鏡23によって計測されており、この計測値がウエハステージ制御系19及び主制御系17に供給されている。その計測値及び主制御系17からの制御情報に基づいて、ウエハステージ制御系19ウエハステージ20のX方向、Y方向の位置及び速度を制御する。また、ウエハステージ20は、不図示のオートフォーカスセンサ(斜入射方式で光学式のセンサ)からのウエハWの表面の複数の計測点でのフォーカス位置(光軸AX方向の位置)の情報に基づいて、露光中にウエハWの表面が投影光学系PLの像面に合焦されるように、サーボ方式でウエハWのフォーカス位置及びX軸、Y軸の回りの傾斜角を制御する。
また、ウエハベース21は、防振台14A,14Bと同様の能動型の防振台22A,22B(実際には3台又は4台の防振台を含む)を介して床上に載置されている。ウエハベース21、ウエハステージ20、及びこの駆動機構(不図示)等からウエハステージ系が構成され、ウエハステージ系は、気密性の高い隔壁(気密室)としてのウエハ室18内に収納されている。
露光時には、レチクルRのパターンの像を投影光学系PLを介してウエハW上の一つのショット領域に投影した状態で、レチクルRとウエハWとを投影光学系PLの倍率を速度比としてX方向に同期移動する動作と、ウエハWをX方向、Y方向にステップ移動する動作とがステップ・アンド・スキャン方式で繰り返される。この際に、1つのデバイスパターンを複数枚のレチクルのパターンの像を継ぎ合わせながら露光して形成するステップ・アンド・スティッチ方式を併用してもよい。このように本例の投影露光装置は走査露光方式であるが、本発明はステッパー等の一括露光型(静止露光型)の投影露光装置にも有効であることは言うまでもない。
さて、本例のように真空紫外光を露光光ILとする場合には、その光路から酸素、水蒸気、炭酸ガス(CO2等)、及び炭化水素系(有機物)の気体等の露光光ILに対して強い吸収率を持つ気体である「吸収性ガス」を排除する必要がある。一方、露光ビームを透過する気体、即ち本例では真空紫外域の露光光ILに対する吸収の少ない「透過性ガス」には、窒素及び希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン)、並びにそれらの混合気体がある。そして、本例の投影露光装置には、それらの透過性ガスの内から例えば必要とされる結像特性の安定性や運転コスト等に基づいて選択した「パージガス」を用いて、露光光源1から被露光基板としてのウエハWまでの露光光ILの全部の光路上の気体を置換するための気体交換機構(不図示)が備えられている。
この場合、露光波長が157nm(F2レーザ)であればそのパージガスとしてヘリウム等の希ガス、又は窒素が使用でき、露光波長が126nm(Ar2レーザ)であればそのパージガスとしてヘリウム等の希ガスが使用できる。本例では、一例として結像特性の安定性やレーザ干渉計の計測精度の安定性等を考慮して、パージガスとしてヘリウムガスを使用する。図1において、露光光源1からウエハWまでの露光光ILの光路は、それぞれ気密室としてのビームマッチングユニット2を囲むサブチャンバ、照明光学系ILSのサブチャンバ3、レチクル室10、投影光学系PL中の気密室、及びウエハ室18の内部の光路に分割されており、これらの気密室にそれぞれ内部の気体を排気するための排気管、及び上記の気体交換機構からの高純度のパージガスを供給するための給気管が接続されている。この場合、その排気管を介して回収された気体の少なくとも一部をガス純化器(不図示)に通して回収したパージガスを、上記の気密室に循環させるようにしてもよい。
なお、それらの気密室内の気体を透過性ガスで置換する代わりに、それらの気密室内を真空にしてもよい。
また、真空紫外域の露光光に対して十分な透過性を有し、且つ高性能なレンズ材料として使用可能な材質の均一性を有する光学材料は、現状では蛍石(フッ化カルシウム(CaF2)の結晶)、フッ化バリウム(BaF2)の結晶、及びフッ化リチウム(LiF)の結晶等のフッ化物結晶に限られる。但し、材料自体の製造の容易性及び加工性を考慮すると、そのような光学材料として現状で最も実用的であるのは蛍石である。
そこで、本例の投影露光装置の投影光学系PLとしては、一例としてそのレンズ材料が蛍石のみからなる屈折系を使用できる。但し、このように単一のレンズ材料から成る光学系では、色収差の補正を十分に行なうことが難しいため、露光光ILとしての準単色光のスペクトル幅をかなり狭くする必要がある。
このようにスペクトル幅を狭くすると露光光の出力(照度)が低下するため、スペクトル幅を狭くする代わりに、投影光学系PL中に反射鏡、特に凹面鏡を配置して色収差を補正するようにしてもよい。このように凹面鏡を用いた投影光学系としては、例えば国際公開公報(WO)00/39623に開示されているように、1本の光軸に沿って複数の屈折レンズと、それぞれ光軸の近傍に開口を有する2つの凹面鏡とを配置して構成される直筒型の反射屈折系や、例えば日本国特願2000−59268に開示されているように、レチクルからウエハに向かう光軸を持つ光学系と、その光軸に対してほぼ直交する光軸を持つ反射屈折光学系とを有し、内部で中間像を形成する反射屈折投影光学系などが使用できる。また、例えば日本国特開2000−47114に開示されているように、互いに交差する光軸を持つ複数の光学系を持つ反射屈折系よりなる投影光学系を、投影光学系PLとして使用することもできる。
或いは、そのように反射鏡を用いる代わりに、投影光学系PLとして、上記の蛍石のレンズと共に、上記のフッ化バリウム結晶よりなるレンズ、及びフッ化リチウム結晶よりなるレンズの少なくとも一方を併用した屈折系を用いて、これらの複数の光学材料のレンズを組み合わせて色収差を補正してもよい。又は、上記の反射屈折系において、屈折部材の光学材料として、蛍石の他に、フッ化バリウム結晶及びフッ化リチウム結晶の少なくとも一方を用いて色収差を補正してもよい。
また、本例の投影露光装置の露光光源1は、上記のようなレーザ光源に限定されるものではなく、輝線ランプやプラズマ光源のような他の光源であっても良い。但し、上記の投影光学系PLの色収差の観点から、露光光源1としては、そのスペクトル幅が或る程度の範囲内に収まった準単色光を出射する光源を使用することになる。また、露光光源1自体が、十分な単色性を持たない場合には、露光光源1からウエハWまでの間に、露光光ILの波長幅を低減するバンドパスフィルタ、回折格子、又はエタロンのような光学素子(波長狭帯化素子)を設け、ウエハWに入射する露光光ILの波長のスペクトル幅を狭くすればよい。
この露光光の波長のスペクトル幅は、上記投影光学系PLの色収差と共に、投影光学系PLの結像特性、即ち投影露光装置の結像特性を劣化させる。投影光学系PLの色収差には、大きく分けて軸上色収差と倍率色収差とがある。これらの収差を図2を参照して説明する。
図2(A)は、投影光学系PLの軸上色収差を説明する図であり、この図2(A)において、露光波長の中心波長(これをλ1とする)の光束IL1の焦点位置をBFとするとき、その中心波長からΔλ離れた波長λ2(=λ1+Δλ)の光束IL2の焦点位置DFは、軸上色収差によって、焦点位置BFより光軸方向(Z方向)にΔZだけ離れている。これとは逆に、中心波長λ1から−Δλ離れた波長の光束の焦点位置は、焦点位置BFからZ方向に−ΔZだけ離れた位置となる。露光波長の全スペクトル分布の合成像の焦点位置は、中心波長λ1の光束IL1の焦点位置BFに一致するが、その合成像は、各波長の中心波長λ1からのずれに応じてデフォーカスした(ぼけた)像に、その波長での露光光の強度に応じて加算した像となるために、波長λ1単色の場合の像に比べて、結像特性が劣化したものとなる。
図2(B)は、投影光学系PLの倍率色収差を説明する図であり、この図2(B)において、露光波長の中心波長λ1の光束IL1の像が、光軸AXからX方向にX1だけ離れた位置31Aに形成されるとき、中心波長λ1からΔλ離れた波長λ2の光束IL2の像は、倍率色収差によって位置31AよりX方向にΔXだけ離れた位置31Bに形成される。また、中心波長λ1から−Δλ離れた波長の光束は、位置31AからX方向に−ΔX離れた位置に形成される。従って、露光波長の全スペクトル分布の合成像は、中心波長λ1での単色光の像に、各波長の中心波長λ1からのずれに応じて左右にずらした像を、その波長での露光光の強度に応じて加算した像となるために、波長λ1単色の場合の像に比べて、結像特性が劣化したものとなる。
上記のように軸上色収差と倍率色収差により生じる像の劣化は、ウエハWに転写されるパターンの線幅均一性を劣化させる。特に倍率色収差については、レチクル上のパターンの内で光軸AX近傍に配置されるパターン、及び光軸AXから放射方向に延びるパターンに対しては、その影響が現れず、光軸AXを中心とする円周に沿った方向に延びるパターンに対してのみ、その線幅を細くする作用があるため、倍率色収差は線幅均一性への影響が大きい。また、倍率色収差の線幅均一性に与える影響は、その線幅に概ね反比例して増大するため、位相シフトマスクのような超解像技術を使用してより微細な線幅のパターンを形成する場合、その影響は極めて大きなものとなる。
これに関して本願の発明者は、真空紫外光を露光光として用いると共に、位相シフトマスクを使用してより微細な線幅のパターンを形成する際の、上記色収差の影響を解析し、従来より一層微細なパターンの転写を可能とするために投影光学系に必要な色収差の許容値を導き出した。同時に、本願の発明者は、一般的な通常のマスクを使用して中程度に微細なパターンを転写するために必要な色収差の許容値をも導き出した。
以下に、図3〜図5を参照してその許容値について説明する。
図3は、以下の検討で使用した露光光のスペクトル分布を表す図であり、図3(A),(B)の横軸は、露光光の中心波長からの波長差(Δλ)を表し、縦軸は、各波長におけるスペクトルの強度SG,SLを表している。強度SG,SLは、中心波長での強度が1になるように規格化している。
スペクトル分布の幅の定義として、一般に半値全幅(FWHM:Full Width at Half Maximum)が使用されるが、図3中のスペクトルの横方向への広がりは、各スペクトル分布のFWHMが、1になるように規格化している。従って、図3(A),(B)の横軸のスケールは任意の単位であり、想定する露光光源のFWHMに依存することになる。例えば、FWHM=1pmのレーザ光源を想定すると、横軸の単位は1pmとなり、FWHM=0.2pmのレーザ光源を想定すると、横軸の単位は0.2pmとなる。
図3(A)に示したスペクトル分布Gは、いわゆるガウス型の分布であり、その関数型は、強度SGが波長差Δλの関数として以下のように表される。
SG(Δλ)=exp{−2.773×(Δλ)2} …(11)
一方、図3(B)に示したスペクトル分布Lは、ガウス型とローレンツ型との積からなる分布(以下、「ガウス・ローレンツ型」と言う)であり、その関数型は、強度SLが波長差Δλの関数として以下のように表される。
SL(Δλ)=exp{−0.226×(Δλ)2}×
{1/(1+3.560×(Δλ)2} …(12)
両分布の違いは、ガウス型のスペクトル分布Gでは、その中心波長(Δλ=0)近傍にエネルギーが集中しているのに比べ、ガウス・ローレンツ型のスペクトル分布Lでは、中心波長から離れた位置にも或る程度のエネルギーが存在していることである。そして、このようなスペクトル分布形状の違いは、露光装置で使用する露光光源の選択によって、実際に生じる程度のものである。
両スペクトル分布G,Lは、上記の通り同じFWHMを有する分布であるが、その分布の幅が異なっていることは、一見して明らかである。即ち、FWHMは、レーザスペクトル分布の広がりを、正確に表現する指標とはなり得ない。そこで、本明細書では、スペクトル分布の幅の定義として、スペクトル分布の標準偏差(σ)を採用することにする。
一般的に使用される通り、(11)式のガウス型のスペクトル分布Gでの標準偏差σSGは以下のようになる。
σSG=√[∫{SG(Δλ)×Δλ2}dΔλ/∫SG(Δλ)dΔλ] …(13)
また、(12)式のガウス・ローレンツ型のスペクトル分布Lでの標準偏差σSLは、(13)式でSG(Δλ)をSL(Δλ)で置き換えた式で表すことができる。(13)式による計算の結果、上記のスペクトル分布G,Lの標準偏差σSG,σSLは、それぞれ以下のようにFWHMに比例する。
σSG=0.425×FWHM …(14A)
σSL=0.733×FWHM …(14B)
即ち、各分布において、FWHM=q[pm]の光源を使用するなら、その光源からの光のスペクトル分布の標準偏差σSG,σSLは、それぞれ以下のようになる。
σSG=0.425×q[pm],σSL=0.733×q[pm]
このようなスペクトル分布の露光光を用いた場合における色収差の影響を以下の条件で検討した。露光光学系の条件として、露光光の中心波長は、F2レーザ(フッ素レーザ)の波長である157nmとし、投影光学系PLの像側(ウエハ側)の開口数NAは0.8とした。
色収差によって転写パターンの線幅均一性が悪化するので、各色収差条件で線幅均一性の許容値を目標線幅±10%とし、露光量変動誤差を±2.5%とした場合の、投影光学系PLの焦点深度を計算した。
図4及び図5は、このように計算された焦点深度が、実用限界である150nm以上となる領域を斜線を施して示したものである。即ち、図4(A),(B)及び図5(A),(B)における横軸は、それぞれ露光波長のスペクトル分布の標準偏差σ(σSG又はσSL)の波長幅に対する投影光学系PLの軸上色収差量Z[nm]であり、縦軸は、上記σの波長幅に対する投影光学系PLの倍率色収差量Y[nm]である。
図4(A),(B)は、上記光学条件下で、(1)式における比例定数k1=0.3に相当する線幅60nmの孤立線を、透過率6%のハーフトーン位相シフトマスクを用いてコヒーレンスファクタ=0.9の2/3輪帯照明で露光した場合の検討結果である。このためには、図1において、レチクルステージ12上のレチクルRとして透過率6%のハーフトーン位相シフトマスクを設置し、可変開口絞り8の開口形状を内径が外径の2/3で、且つ外径のコヒーレンスファクタが0.9となる輪帯に設定すればよい。そして、図4(A)は、露光光(光源)のスペクトル分布として、図3(A)に示したガウス型の分布Gを使用し、図4(B)は、図3(B)に示したガウス・ローレンツ型の分布Lを使用した結果である。
図4(A),(B)において、焦点深度が150nm以上となる実用領域は、スペクトル分布のσあたりの軸上色収差量Z(横軸)が125nmで、σあたりの倍率色収差量Y(縦軸)が0nmである横軸上の点と、σあたりの軸上色収差量Z(横軸)が0nmで、σあたりの倍率色収差量Y(縦軸)が6nmである縦軸上の点とを通る楕円形(正確には楕円形の1/4)の曲線32,33内の領域になる。そしてこの領域は、想定した2つのスペクトル分布において、即ち図4(A)と(B)とで、ほとんど共通である。また、図3(A),(B)に示した以外の様々なスペクトル分布を想定しても、その分布の幅を標準偏差σで定義し、そのσあたりの投影光学系の色収差量を評価尺度とする限り、どのようなスペクトル分布であっても、上記楕円領域内が色収差の許容範囲内となった。
この焦点深度が150nm以上となる楕円領域内を式で表記すると、以下のようになる。
(Z/125)2+(Y/6)2≦1 …(15)
なお、この色収差の許容範囲は、上記の通りの光学条件、即ち、露光波長λ=157nm、投影光学系PLの開口数NA=0.8で、k1=0.30の孤立線を露光する場合の条件である。そして、これとは異なる条件では、その露光波長λや開口数NAによって、パターンの微細度も変わるため、色収差の許容条件も異なってくる。但し、倍率色収差は転写パターンの線幅に逆比例して影響され、一方、最小転写パターンの線幅は(1)式の通り、k1×λ/NAであるため、倍率色収差の許容値は、λ/NAに比例することになる。
また、軸上色収差の許容値も、(2)式の焦点深度DOF(=k2・λ/NA2)に比例して厳しくなるため、軸上色収差の許容値は、λ/NA2に比例することになる。
従って、任意の露光波長λ及び開口数NAの投影光学系に対して、上記の楕円領域を表す式は、λ/NA2に比例する係数αと、λ/NA に比例する係数βとを用いて、以下のように表すことができる。
(Z/α)2+(Y/β)2≦1 …(16)
そして、λ=157nm,NA=0.8において、α=125,β=6となるように係数α,βの比例係数を決定すると、係数α,βは以下のようになる。
α=0.5×λ/NA2 …(17)
β=0.03×λ/NA …(18)
従って、任意の露光波長λ及び開口数NAの投影光学系が満たすべき色収差の条件は、露光光のスペクトル分布の標準偏差σの波長幅に対する軸上色収差量Zと倍率色収差量Yとが(16)式の関係を満たし、且つ係数α,βが、(17)式、(18)式の関係を満たせば良いことになる。
なお、孤立パターンと同様に、線幅60nmの線パターンを、所定のピッチ(200nm以上)で繰り返して配列することで形成されるライン・アンド・スペースパターンについても同様の検討を行なったが、図4に示した孤立線の場合が、焦点深度≧150nmの範囲が最も狭く、従って色収差に関する条件が最も厳しかった。
一般に線幅均一性が、最も厳しく要求されるパターンは、トランジスタのゲートパターン(線幅で60nmとする)であるが、ゲートパターンのピッチは、その線幅の3.5倍程度(=210nm)と比較的長いため、そのゲートパターンは孤立パターンに近いパターンとみなすことができる。従って、図4に示した孤立線での検討結果に基づいて決定された上記色収差の仕様は、現実的などのようなパターンに対しても適応可能である。
図5は、同様の光学条件下で、k1=0.18に相当する線幅35nmの線パターンを、ピッチ200nmで繰り返して並べて形成されるライン・アンド・スペースパターンを、図6に示す位相シフトマスクを用いて、且つコヒーレンスファクタ=0.3の通常照明(円形照明)で露光する条件での検討結果である。
図6は、その位相シフトマスクの一部の拡大断面図であり、その図6において、マスク基板36の表面(パターン形成面)にクロム等の遮光パターンCRがピッチP(=200nm)で形成されており、各遮光パターンCRの間隔部分に、その1つおきに位相シフタPS(マスク基板36の彫り込み部でもよい)を形成し、位相シフタPSの部分の透過光と、それ以外のマスク基板36の透過光との間に180°の位相差を生じせしめたものである。
そして、図5(A)は露光光のスペクトル分布として、図3(A)に示したガウス型の分布Gを使用し、図5(B)は、図3(B)に示したガウス・ローレンツ型の分布Lを使用した結果である。
図5(A),(B)において、焦点深度が150nm以上となる実用領域は、スペクトル分布のσあたりの軸上色収差量Z(横軸)がほぼ160nmで、σあたりの倍率色収差量Y(縦軸)が0nmである横軸上の点と、σあたりの軸上色収差量Zが0nmで、σあたりの倍率色収差量Yがほぼ3nmである縦軸上の点とを通る楕円形(正確には楕円形の1/4)の曲線34,35内の領域になる。図5の結果は、位相シフトマスクによる、より微細なパターンの露光を前提としているために、特に倍率色収差Yの許容値が、図4の結果に比べて厳しくなっている。
この条件で、焦点深度を許容範囲以上に保つための投影光学系PLの色収差の許容範囲は、図5(A),(B)に示したとおり、露光光源1のスペクトル分布の幅を標準偏差σで定義する限り、使用した露光光のスペクトル分布によらずほぼ一定で、次の範囲である。
(Z/160)2+(Y/3)2≦1 …(19)
また、上記の(16)式と同様に、任意の露光波長λ、任意の開口数NAの投影光学系に対して、係数α1,β1を用いて(19)式を書き直すと、焦点深度を許容範囲以上に保つための投影光学系PLの色収差の条件は次のようになる。
(Z/α1)2+(Y/β1)2≦1 …(20)
但し、係数α1,β1は次の通りである。
α1=0.65×λ/NA2 …(21)
β1=0.015×λ/NA …(22)
従って、投影光学系PLの色収差をこの範囲に抑えることで、より一層微細な線幅のパターンの転写が可能な投影露光装置を実現することができる。
なお、位相シフトマスクを使用した、パターンのピッチが200nm以上の任意の値であるライン・アンド・スペースパターンや、線幅35nmの孤立線パターンについても、これと同様に投影光学系PLの色収差の許容値の検討を行なったが、図5に示したピッチ200nmのパターンの場合が、焦点深度が150nm以上となる範囲が最も狭く、従って色収差に関する条件が最も厳しかった。
このように、投影光学系の色収差の許容値を、露光光のスペクトル分布に依らずに決定できるのは、本発明において、スペクトル分布の幅を標準偏差σで定義しているためである。
前述の通り、スペクトル分布の幅の定義には、他にFWHMや95%純度幅(全エネルギーのうち、95%のエネルギーが分布するスペクトルの幅)等があるが、露光光のスペクトル形状が異なると、標準偏差σと、FWHMや95%純度幅との間の関係(比)は異なってくる。これは、(14A)式、(14B)式で述べたとおりである。
従って、FWHMや95%純度幅でレーザスペクトル分布の幅を定義すると、スペクトル分布の形状によって、それぞれ色収差の許容値を変更しなければならず、非常に煩雑である。
一方、標準偏差σで定義すれば、上記のように色収差の許容値をスペクトル分布の形状に依らず、一定に保つことができ、FWHMや95%純度幅で定義するよりも好都合である。
ところで、上記のように、投影光学系の色収差(軸上色収差及び倍率色収差)は、使用可能なレンズ材料や反射鏡の使用の有無によって大きく異なってくる。また、真空紫外光を露光波長とする場合には、使用可能なレンズ材料の制約が大きいため、投影光学系の色収差を十分に補正できない場合が生じる。そのような場合には、露光光のスペクトル分布自体を、上記の(16)式、(20)式を満たすように狭くする(狭帯化する)必要がある。
例えば、上記と同様な中心波長157nmを使用するNA=0.8の、実用的な露光視野を有する投影光学系の場合、露光光の波長幅1pmあたりの色収差量は、蛍石1種類のみからなる屈折光学系の場合、軸上色収差110nm、倍率色収差20nm程度が補正の限界であるので、(20)式を満たすためには、光源のスペクトル分布の標準偏差σを、0.1pm以下に抑える必要がある。
また、蛍石と、その他のレンズ材料(フッ化バリウム結晶やフッ化リチウム結晶)とをレンズ材料として使用する屈折光学系の場合には、露光光の波長幅1pm当たりの軸上色収差45nm、倍率色収差8nm程度が補正の限界となるので、(20)式を満たすためには、光源のスペクトル分布の標準偏差σを、0.25pm以下に抑える必要がある。
一方、蛍石のレンズと反射鏡(例えば凹面鏡)とを含んだ反射屈折光学系では、その色収差補正能力が向上し、軸上色収差22nm、倍率色収差4nm程度まで補正可能となるので、(20)式を満たす光源のスペクトル分布の標準偏差σを、0.50pmにまで緩和することが可能である。
なお、実際の露光では、色収差以外の様々な要因も、転写パターンの線幅均一性を悪化させる。例えばレチクル上に描画された原画パターン間の線幅の誤差や、投影光学系のその他の収差、走査型露光装置におけるレチクルとウエハとの走査露光中の位置ずれ等がその要因となる。従って、投影光学系の色収差は、上記(16)式、(20)式の条件よりも更に小さい方が望ましいことは言うまでもない。例えば、両式中の右辺は、1ではなく0.7程度である方が、線幅均一性が一層向上し好ましくなる。
次に、上記の実施の形態の投影露光装置は、複数のレンズを含んで構成される照明光学系、及び投影光学系を露光装置本体に組み込み光学調整をすると共に、多数の機械部品からなるレチクルステージやウエハステージを露光装置本体に取り付けて配線や配管を接続し、更に総合調整(電気調整、動作確認等)をすることにより製造することができる。なお、投影露光装置の製造は温度及びクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
更に、上記の実施の形態の投影露光装置を使用した半導体デバイスの製造工程の一例につき図7を参照して説明する。
図7は、半導体デバイスの製造工程の一例を示し、この図7において、まずシリコン半導体等からウエハWが製造される。その後、ウエハW上にフォトレジストを塗布し(ステップS10)、次のステップS12において、上記の実施の形態(図1)の投影露光装置のレチクルステージ上にレチクルR1をロードし、走査露光方式でレチクルR1のパターン(符号Aで表す)をウエハW上の全部のショット領域SEに転写(露光)する。なお、ウエハWは例えば直径300mmのウエハ(12インチウエハ)であり、ショット領域SEの大きさは一例として非走査方向の幅が25mmで走査方向の幅が33mmの矩形領域である。次に、ステップS14において、現像及びエッチングやイオン注入等を行うことにより、ウエハWの各ショット領域SEに所定のパターンが形成される。
次に、ステップS16において、ウエハW上にフォトレジストを塗布し、その後ステップS18において、上記の実施の形態(図1)の投影露光装置のレチクルステージ上にレチクルR2をロードし、走査露光方式でレチクルR2のパターン(符号Bで表す)をウエハW上の各ショット領域SEに転写(露光)する。そして、ステップS20において、ウエハWの現像及びエッチングやイオン注入等を行うことにより、ウエハWの各ショット領域に所定のパターンが形成される。
以上の露光工程〜パターン形成工程(ステップS16〜ステップS20)は所望の半導体デバイスを製造するのに必要な回数だけ繰り返される。そして、ウエハW上の各チップCPを1つ1つ切り離すダイシング工程(ステップS22)や、ボンディング工程、及びパッケージング工程等(ステップS24)を経ることによって、製品としての半導体デバイスSPが製造される。
なお、露光装置の用途としては半導体素子製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに形成される液晶表示素子、若しくはプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置用の露光装置や、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン、薄膜磁気ヘッド、又はDNAチップ等の各種デバイスを製造するための露光装置にも広く適用できる。更に、本発明は、各種デバイスのレチクルパターンが形成されたレチクル(フォトマスク等)をフォトリソグラフィ工程を用いて製造する際の、露光工程(露光装置)にも適用することができる。
また、本発明で使用される投影光学系の倍率は、縮小のみならず等倍又は拡大であってもよい。
そして、露光ビームとしては、DFB(Distributed feedback)半導体レーザ又はファイバレーザから発振される赤外域又は可視域の単一波長レーザを、例えばエルビウム(Er)(又はエルビウムとイッテルビウム(Yb)との両方)がドープされたファイバアンプで増幅し、且つ非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いてもよい。一例として、単一波長レーザの発振波長を1.544〜1.553μmの範囲内とすると、8倍高調波では波長193〜194nmの光、即ちArFエキシマレーザとほぼ同一波長となる紫外光が得られ、発振波長を1.57〜1.58μmの範囲内とすると、10倍高調波では波長157〜158nmの光、即ちF2レーザとほぼ同一波長となる紫外光が得られる。
また、露光光(露光ビーム)は波長100〜400nm程度の紫外光に限られるものではなく、例えばレーザプラズマ光源又はSOR(Synchrotron Orbital Radiation)リングから発生する軟X線領域(波長5〜50nm)のEUV光(Extreme Ultraviolet Light)を用いてもよい。EUV露光装置では、照明光学系及び投影光学系はそれぞれ複数の反射光学素子のみから構成される。
また、露光ビームとして電子線のような荷電粒子線を使用することも可能であり、電子線を用いる場合には光学系(投影系)として電子レンズ及び偏向器からなる電子光学系を用いればいい。なお、電子線が通過する光路は真空状態にすることはいうまでもない。
また、照明光学系や投影光学系中の屈折素子(レンズ等)用の硝材としては、上記の光学材料の他にフッ素や水素等の不純物をドープした石英や水晶等も使用することができる。
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得ることは勿論である。また、明細書、特許請求の範囲、図面、及び要約を含む2001年3月13日付け提出の日本国特願2001−70273の全ての開示内容は、そっくりそのまま引用されて本願に組み込まれている。
産業上の利用の可能性
本発明によれば、微細パターンの線幅均一性に着目して、投影光学系の色収差量を、露光ビームのスペクトル分布に対応した値以下に抑えたため、微細パターンに対しても、十分な線幅均一性を実現することが可能となる。また、投影光学系の色収差を露光ビームのスペクトル分布の標準偏差の波長幅で規定することによって、種々のスペクトル分布の露光ビームに対して許容範囲の条件を共通化できるため、高解像度の投影光学系を容易に設計、製造することができる。
また、位相シフトマスクを使用することによって、一層微細な線幅のパターンを、十分な線幅均一性で転写できる露光方法及び装置を実現することができる。
また、露光装置に搭載された投影光学系の色収差に応じて、露光ビームのスペクトル分布を狭帯化することによって、上記の線幅均一性を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の実施の形態の一例の投影露光装置を示す一部を切り欠いた構成図である。図2において、(A)は投影光学系PLの軸上色収差の説明図、(B)は投影光学系PLの倍率色収差の説明図である。図3において、(A)は露光光のガウス型のスペクトル分布を示す図、(B)は露光光のガウス・ローレンツ型のスペクトル分布を示す図である。図4は、線幅60nmの孤立線を、透過率6%のハーフトーン位相シフトマスクを用いてコヒーレンスファクタ=0.9の2/3輪帯照明で露光した場合に、焦点深度を許容範囲以上に保つための、投影光学系PLの色収差の許容範囲を示す図である。図5は、線幅35nmでピッチ200nmのライン・アンド・スペースパターンを、位相シフトマスクを用いて、且つコヒーレンスファクタ=0.3の通常照明で露光した場合に、焦点深度を許容範囲以上に保つための、投影光学系PLの色収差の許容範囲を示す図である。図6は、図5の許容範囲に対応して使用される位相シフトマスクの要部を示す拡大断面図である。図7は、本発明の実施の形態の投影露光装置を用いて半導体デバイスを製造する際の製造工程の一例を示す図である。
Claims (17)
- 所定のスペクトル分布を有する露光ビームで第1物体を照明し、前記第1物体のパターンを投影光学系を介して第2物体上に転写する露光方法であって、
前記投影光学系の色収差は、前記スペクトル分布の標準偏差に応じて規定された許容範囲内であることを特徴とする露光方法。 - 前記投影光学系の色収差量は、軸上色収差量と倍率色収差量との少なくとも一方を含むことを特徴とする請求の範囲1に記載の露光方法。
- 前記露光ビームの中心波長をλ、前記投影光学系の前記第2物体側の開口数をNAとして、
係数α及びβを次のように表したとき、
α=0.5×λ/NA2
β=0.03×λ/NA
前記露光ビームのスペクトル分布の標準偏差の波長幅に対する前記投影光学系の軸上色収差量Zと、前記露光ビームのスペクトル分布の標準偏差の波長幅に対する前記投影光学系の倍率色収差量Yとが、
(Z/α)2+(Y/β)2≦1
の関係を満たすことを特徴とする請求の範囲1に記載の露光方法。 - 係数α1及びβ1を次のように表したとき、
α1=0.65×λ/NA2
β1=0.015×λ/NA
前記軸上色収差量Zと前記倍率色収差量Yとが、更に、
(Z/α1)2+(Y/β1)2≦1
の関係を満たすことを特徴とする請求の範囲3に記載の露光方法。 - 波長160nm以下の露光ビームで第1物体を照明し、前記第1物体のパターンを投影光学系を介して第2物体上に転写する露光方法であって、
前記露光ビームの中心波長をλ、前記投影光学系の前記第2物体側の開口数をNAとして、
係数α及びβを次のように表したとき、
α=0.5×λ/NA2
β=0.03×λ/NA
前記露光ビームに対する前記投影光学系の軸上色収差量Zと、前記露光ビームに対する前記投影光学系の倍率色収差量Yとが、
(Z/α)2+(Y/β)2≦1
の関係を満たすことを特徴とする露光方法。 - 所定のスペクトル分布を有する露光ビームで第1物体を照明し、前記第1物体のパターンを投影光学系を介して第2物体上に転写する露光装置であって、
前記投影光学系の色収差は、前記スペクトル分布の標準偏差に応じて規定された許容範囲内であることを特徴とする露光装置。 - 前記露光ビームの中心波長をλ、前記投影光学系の前記第2物体側の開口数をNAとして、
係数α及びβを次のように表したとき、
α=0.5×λ/NA2
β=0.03×λ/NA
前記露光ビームのスペクトル分布の標準偏差の波長幅に対する前記投影光学系の軸上色収差量Zと、前記露光ビームのスペクトル分布の標準偏差の波長幅に対する前記投影光学系の倍率色収差量Yとが、
(Z/α)2+(Y/β)2≦1
の関係を満たすことを特徴とする請求の範囲6に記載の露光装置。 - 係数α1及びβ1を次のように表したとき、
α1=0.65×λ/NA2
β1=0.015×λ/NA
前記軸上色収差量Zと前記倍率色収差量Yとが、更に、
(Z/α1)2+(Y/β1)2≦1
の関係を満たすことを特徴とする請求の範囲7に記載の露光装置。 - 波長160nm以下の露光ビームで第1物体を照明し、前記第1物体のパターンを投影光学系を介して第2物体上に転写する露光装置であって、
前記露光ビームの中心波長をλ、前記投影光学系の前記第2物体側の開口数をNAとして、
係数α及びβを次のように表したとき、
α=0.5×λ/NA2
β=0.03×λ/NA
前記露光ビームに対する前記投影光学系の軸上色収差量Zと、前記露光ビームに対する前記投影光学系の倍率色収差量Yとが、
(Z/α)2+(Y/β)2≦1
の関係を満たすことを特徴とする露光装置。 - 前記露光ビームは、フッ素レーザを光源とする中心波長157nmの光束であることを特徴とする請求の範囲6〜9の何れか一項に記載の露光装置。
- 前記投影光学系は、反射鏡と蛍石製のレンズとを含むことを特徴とする請求の範囲10に記載の露光装置。
- 前記露光ビームのスペクトル分布の標準偏差が、0.50pm以下であることを特徴とする請求の範囲11に記載の露光装置。
- 前記投影光学系は、蛍石製のレンズとフッ化バリウム又はフッ化リチウム製のレンズとを含むことを特徴とする請求の範囲10に記載の投影露光装置。
- 前記露光ビームのスペクトル分布の標準偏差が、0.25pm以下であることを特徴とする請求の範囲13に記載の露光装置。
- 前記投影光学系は、その光学部材が蛍石製のレンズのみからなることを特徴とする請求の範囲10に記載の露光装置。
- 前記露光ビームのスペクトル分布の標準偏差が、0.10pm以下であることを特徴とする請求の範囲15に記載の露光装置。
- 請求の範囲1〜5の何れか一項に記載の露光方法を使用してデバイスパターンをワークピース上に転写する工程を含むことを特徴とするデバイス製造方法。
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2002
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