JPWO2002041000A1 - 膜結合型マトリックスメタロプロテアーゼの免疫学的測定法 - Google Patents
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Abstract
簡単な操作および試薬を用い、感度並びに精度良く、迅速にMT1−MMPを定量したり、MT1−MMPの酵素活性を測定できるようにする。抗MT1−MMP抗体を用いたMT1−MMPの免疫学的定量法およびそれに用いる試薬、さらには(i)界面活性剤及び/又は還元剤を用いて細胞膜から遊離し及び/又は可溶化したMT1−MMPおよび(ii)自律的に可溶化したMT1−MMPから成る群から選ばれたものを免疫学的に定量する方法およびそれに用いる試薬、さらには固相化MT1−MMPなどを用いることにより、MT1−MMPを定量したり、MT1−MMPの酵素活性を測定でき、さらにはMT1−MMPの発現を促進または阻害する化合物やMT1−MMPの酵素活性を促進または阻害する化合物をスクリーニングでき、有用な医薬の開発研究が容易になる。また癌または癌転移検査薬としても有用である。
Description
技術分野
本発明は、膜結合型マトリックスメタロプロテアーゼ(MT−MMP)に対する抗体(抗MT−MMP抗体)を用いた免疫学的定量法およびそれに用いる試薬に関する。また、本発明は、(i)界面活性剤及び/又は還元剤を用いて細胞膜から遊離し及び/又は可溶化したMT−MMPおよび(ii)自律的に可溶化したMT−MMPから成る群から選ばれたものを免疫学的に定量する方法およびそれに用いる試薬に関する。特には、本発明は、(a)界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを用いて細胞膜から遊離し及び/又は可溶化したMT−MMPあるいは(b)自律的に可溶化したMT−MMPを、MT−MMPに対する抗体(例えば、抗MT1−MMP抗体)を用いて免疫学的に定量する方法に関する。そして、本発明は、(A)MT−MMPの発現を変化させる因子及び(B)MT−MMPの酵素活性を変化させる因子の検索方法およびその因子を含有する医薬に関する。一方では、本発明は、界面活性剤及び/又は還元剤を用いてMT1−MMPなどのMT−MMPsを細胞膜から遊離し可溶化する方法に関する。また、本発明は、MT−MMPの酵素活性を測定する方法およびそれに用いる試薬に関する。
背景技術
マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)は、プロペプチド、酵素活性部位、ヒンジおよびヘモペキシン様部位を基本ドメインとした構造を有する可溶型酵素である。一方、MMPsの中で一群のサブファミリーを形成する膜結合型マトリックスメタロプロテアーゼ(MT−MMPs)は、膜貫通ドメインをC−末端側に有し、細胞膜上に埋め込まれた形で局在する膜結合型酵素である。現在、可溶型MMPとしてMMP−1,2,3,7,8,9,10,11,12,13,18,19,20,21,22,23,26が、膜結合型MMPとしてMMP−14,15,16,17,24,25(それぞれMT1−,MT2−,MT3−,MT4−,MT5−,MT6−MMP)の遺伝子がクローニング、同定されている。
〔MT1−MMPによるプロMMP−2の活性化〕
MMP−2は、ゼラチンや基底膜の主成分であるIV型コラーゲンなどを分解する酵素で、その活性は多くのヒト癌組織の浸潤・転移とよく相関することが知られている。MMP−2以外のプロMMPs(MMP−1,3,7,8,9,10,11,13)は、内因性のセリンプロテアーゼや活性型MMPs相互によって活性化するカスケードを持つが、プロMMP−2はこれらとは異なる活性化機構を有する点で特徴的である。即ち、プロMMP−2は、細胞膜上でTIMP−2を介してMT1−MMPと結合、近接するもう一分子のMT1−MMPがプロMMP−2のプロペプチドを切断し、活性型に変換される。
〔MT1−MMPとヒト癌組織の浸潤・転移〕
MT1−MMPは、ヒト癌組織の浸潤・転移とよく相関して発現するMMP−2の活性化機構に深く関与し、またMT1−MMP自身も細胞外マトリックス分解活性を有することから、癌の浸潤・転移において重要な働きを持つと考えられている。MT1−MMPは、乳癌、大腸癌、胃癌、頭頚部癌など多くの癌細胞で広く発現することが報告されており、MT1−MMPの存在と癌の悪性度即ち浸潤・転移能の関連性が注目されている。
〔MT1−MMPと慢性関節リウマチ〕
慢性関節リウマチ(RA)の早期病理像として、血管新生と滑膜組織の増生が観察される。過形成となった滑膜表層細胞は、MMP−1,3,MT1−MMPおよびTIMP−1を、下層の線維芽細胞はMMP−2とTIMP−2を産生する。また滑膜や関節腔に浸潤した好中球はMMP−8,9を産生、これらのMMPsとTIMPsは関節液中に分泌する。RA関節液中のMMP−1,2,3,8,9レベルは、変形性関節症(OA)関節液より有意に高値で、TIMPsの分子数を上回りMMPs優位の状態にある。これらに加えて、軟骨細胞自身が発現するMMP−1,2,3,7,8,13によってRAの関節軟骨破壊が進行する。RAの発症、進行とMT1−MMPの関連は知られていないが、プロMMP−2の活性化やMT1−MMP自身のECM分解活性による関節軟骨破壊がRAの発症と進行に関与する可能性がある。
〔MT1−MMPの分子種〕
MT−MMPsは、疎水性の膜貫通ドメインをC−末端側に有しこれを介して細胞膜上に埋め込まれた形で存在するため、他の可溶型MMPsとは異なり不溶性を示す。実際、MT1−MMPは、細胞膜に局在することが報告されている。最近、コンカナバリンA(Con A)で処理した乳癌細胞株において、その培養上清に、C−末端側の疎水性膜貫通ドメインを失ったMT1−MMPが可溶化(shedding)して存在することが見出された。これは、コンカナバリンAで誘導されたアポトーシスの過程で膜結合型MT1−MMPが何らかの機構により、C−末端側で切断され、膜から離脱したものとされている。可溶化MT1−MMPの生理的機能は未知であるが、可溶型MMPsと同様、種々の生理的機能が予想される。かくして、MT1−MMPの測定には、これら膜結合型MT1−MMPと可溶型MT1−MMPの両方に適応できる方法が適当であると考えられる。
ヒト癌組織の浸潤・転移、慢性関節リウマチ(RA)の病態にMT1−MMPがどの様に関与しているか調べるためには、ヒト体液、例えば血中、関節液、腹水、胸水、尿など、またはヒト組織、培養細胞などに含まれるMT1−MMP量および酵素活性を知ることは重要である。ところで、MT1−MMPの測定には、mRNAの発現をノーザンブロット法で半定量的に検出する方法、RT−PCRで半定量的に検出する方法などがあるが、いずれも遺伝子の発現レベルを反映する方法であり、機能的なMT1−MMPの量を示すものではない。またこれらの方法は、被検試料が限定されるうえ、mRNAの抽出など技術的に繁雑であり、再現性の確保は困難である。
また、MT1−MMPの検出には、プロMMP−2の活性化を指標にして評価する方法がある。被検試料をゼラチンザイモグラフィーで分析することで、活性化したMMP−2を検出し、その活性化因子であるMT1−MMPの存在を想定することができる。しかし、この方法は、MT1−MMPの存在を間接的に観察しているにすぎないうえ、血液成分などの高タンパク質濃度の検体は、直接ゼラチンザイモグラフィーに供することは不可能である。
また、抗MT1−MMP抗体を用いたウエスタンブロット法でもMT1−MMPの検出が可能であるが、ザイモグラフィーと同様、血液成分などの高タンパク質濃度の検体には適応できないうえ、定量性、再現性に乏しい。さらに、生体タンパク質を定量する方法として免疫学的手法が知られているが、被検試料は可溶性物質に限定され、MT1−MMPの様な細胞膜に存在する不溶性物質の定量には馴染まない。
MT1−MMPを免疫学的に定量する方法が、Harayamaら(Jpn.J.Cancer Res.,90:942−950(1999))により報告されているが、この方法では被検試料の可溶性MT1−MMPを測定できるが、膜に結合しているMT1−MMPは測定できない。また、測定限界が高いため、微量に存在する可溶性MT1−MMPを測定するのは困難である。
MT1−MMPの酵素活性を測定する方法としては、ゼラチンザイモグラフィーが知られている。ゼラチンザイモグラフィーは、電気泳動上でMT1−MMPの分画と活性検出を同時に行うことができる点で、非精製検体に含まれるMT1−MMPの活性検出に優れた方法であるが、操作が繁雑である上、測定結果は半定量的な判定にとどまる。
以上のように、ノーザンブロット法、RT−PCR、ザイモグラフィーおよびウエスタンブロット法などでMT1−MMPの検出や半定量的な測定は可能ではあるが、いずれも操作が複雑で、再現性に乏しく、簡便なMT1−MMPの定量方法および活性測定方法は得られていない。
発明の開示
本発明の目的は、簡単な操作および試薬を用い、感度並びに精度良く、迅速にMT1−MMPなどのMT−MMPを定量する方法、MT1−MMPを含めた各MT−MMP酵素活性を測定する方法およびそのための試薬キット、さらにはそうした方法や試薬などを使用することにより、同定された活性物質などを含有する、MT1−MMPなどの各MT−MMPの発現や酵素活性を抑制する医薬を提供することにある。
本発明は、
(1)免疫学的方法を用いて、被検試料中のMT−MMP、例えばMT1−MMP、を定量すること(免疫学的MT−MMP定量方法)、特には被検試料中の可溶型MT−MMPを定量すること;
(2)被検試料中の膜結合型MT1−MMPなどの膜結合型MT−MMPを可溶化し、免疫学的測定法に適応する検体の調製方法を提供すること;
(3)上記(2)の方法で可溶型MT−MMPに変換させた被検試料中の膜結合型MT−MMPを免疫学的方法で定量すること、あるいは上記(1)の方法において、可溶型MT−MMPに変換させた被検試料中の膜結合型MT−MMPを免疫学的方法で定量すること;
(4)MT−MMPの免疫学的測定法を用いて、MT−MMPの発現量を変化させる因子・薬剤などを検索する方法、およびそれらの因子・薬剤を含有する医薬;
(5)免疫学的方法を用いて、MT−MMPを選択的に固定化し、固定化されたMT−MMPの酵素活性を特異的に測定すること(MT−MMP酵素活性測定法);及び
(6)上記(5)のMT−MMP酵素活性測定法を用いて、MT−MMPの酵素活性を変化させる因子・薬剤などを検索する方法、およびそれらの因子・薬剤を含有する医薬を提供する。
本発明は、
〔1〕 MT−MMPsから成る群から選ばれたMT−MMPに対する抗体を用いることを特徴とするMT−MMPの免疫学的定量法;
〔2〕 MMP−14(MT1−MMP)に対する抗体,MMP−15(MT2−MMP)に対する抗体,MMP−16(MT3−MMP)に対する抗体,MMP−17(MT4−MMP)に対する抗体,MMP−24(MT5−MMP)に対する抗体及びMMP−25(MT6−MMP)に対する抗体から成る群から選ばれた抗体を用いることを特徴とする上記〔1〕記載の免疫学的定量法;
〔3〕 MT1−MMPに対する抗体を用い且つMT1−MMPの免疫学的定量をすることを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕記載の免疫学的定量法;
〔4〕 界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを用いることを特徴とする上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一記載の免疫学的定量法;
〔5〕 抗体が、(i)界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものの存在下で免疫反応性を維持できること及び(ii)人為的に変性してエピトープを露出させたMT−MMPを免疫抗原として得られることから成る群から選ばれた特徴の少なくとも一つを持つものであることを特徴とする上記〔1〕〜〔4〕のいずれか一記載の免疫学的定量法;
〔6〕 免疫抗原が、MT1−MMP,MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMP及びMT6−MMPから成る群から選ばれたものであることを特徴とする上記〔5〕記載の免疫学的定量法;
〔7〕 免疫抗原が、MT1−MMPであることを特徴とする上記〔5〕記載の免疫学的定量法;
〔8〕 抗体がモノクローナル抗体であることを特徴とする上記〔1〕〜〔7〕のいずれか一記載の免疫学的定量法;
〔9〕 免疫学的に定量できるMT−MMPが、(i)界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを用いて細胞膜から遊離及び/又は可溶化させた分子及び(ii)自律的に細胞膜から遊離及び/又は可溶化した分子から成る群から選ばれた分子種の少なくとも一つであることを特徴とする上記〔1〕〜〔8〕のいずれか一記載の免疫学的定量法;
〔10〕 (a)界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを用いて、MT−MMPを細胞膜から遊離及び/又は可溶化させる工程及び(b)MT−MMPを免疫学的に定量する工程を含むことを特徴とする上記〔1〕〜〔9〕のいずれか一記載の免疫学的定量法;
〔11〕 MT−MMPが、MT1−MMP,MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMP及びMT6−MMPから成る群から選ばれたものであることを特徴とする上記〔1〕、〔2〕、〔4〕〜〔6〕及び〔8〕〜〔10〕のいずれか一記載の免疫学的定量法;
〔12〕 MT−MMPが、MT1−MMPであることを特徴とする上記〔1〕〜〔11〕のいずれか一記載の免疫学的定量法;
〔13〕 界面活性剤がドデシル硫酸ナトリウム(SDS)であることを特徴とする上記〔4〕〜〔12〕のいずれか一記載の免疫学的定量法;
〔14〕 還元剤が2−メルカプトエタノールであることを特徴とする上記〔4〕〜〔12〕のいずれか一記載の免疫学的定量法;
〔15〕 上記〔1〕〜〔14〕のいずれか一記載の免疫学的定量法に使用するためのMT−MMPの免疫学的測定用試薬;
〔16〕 MT−MMPsから成る群から選ばれたMT−MMPに対する抗体を含有していることを特徴とする上記〔15〕記載の試薬;
〔17〕 MT−MMPが、MT1−MMP,MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMP及びMT6−MMPから成る群から選ばれたものであることを特徴とする上記〔15〕記載の試薬;
〔18〕 MT1−MMPに対する抗体,MT2−MMPに対する抗体,MT3−MMPに対する抗体,MT4−MMPに対する抗体,MT5−MMPに対する抗体及びMT6−MMPに対する抗体から成る群から選ばれた抗体を含有していることを特徴とする上記〔15〕記載の試薬;
〔19〕 MT−MMPが、MT1−MMPであることを特徴とする上記〔15〕記載の試薬;
〔20〕 MT1−MMPに対する抗体を含有していることを特徴とする上記〔15〕記載の試薬;
〔21〕 界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを含有していることを特徴とする上記〔15〕〜〔20〕のいずれか一記載の試薬;
〔22〕 界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを用いて、MT−MMPsから成る群から選ばれたものを、細胞膜から遊離及び/又は可溶化させることを特徴とするMT−MMPの遊離及び/又は可溶化方法;
〔23〕 界面活性剤がSDSであることを特徴とする上記〔22〕記載の方法;
〔24〕 還元剤が2−メルカプトエタノールであることを特徴とする上記〔22〕記載の方法;
〔25〕 MT−MMPが、MT1−MMP,MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMP及びMT6−MMPから成る群から選ばれたものであることを特徴とする上記〔22〕〜〔24〕のいずれか一記載の方法;
〔26〕 MT−MMPが、MT1−MMPであることを特徴とする上記〔22〕〜〔24〕のいずれか一記載の方法;
〔27〕 (a)上記〔1〕〜〔14〕のいずれか一記載の免疫学的定量法あるいは(b)上記〔22〕〜〔26〕のいずれか一記載の方法に使用するためのものであることを特徴とするMT−MMPを遊離及び/又は可溶化する試薬;
〔28〕 界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを含有していることを特徴とする上記〔27〕記載の試薬;
〔29〕 界面活性剤がSDSであることを特徴とすることを特徴とする上記〔28〕記載の試薬;
〔30〕 還元剤が2−メルカプトエタノールであることを特徴とすることを特徴とする上記〔28〕記載の試薬;
〔31〕 MT−MMPが、MT1−MMP,MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMP及びMT6−MMPから成る群から選ばれたものであることを特徴とする上記〔27〕〜〔30〕のいずれか一記載の試薬;
〔32〕 MT−MMPが、MT1−MMPであることを特徴とする上記〔27〕〜〔30〕のいずれか一記載の試薬;
〔33〕 (a)上記〔1〕〜〔14〕のいずれか一記載の免疫学的定量法、(b)上記〔15〕〜〔21〕のいずれか一記載の試薬、(c)上記〔22〕〜〔26〕のいずれか一記載の方法及び(d)上記〔27〕〜〔32〕のいずれか一記載の試薬から成る群から選ばれたものを用い、且つMT−MMPsから成る群から選ばれたものの発現を促進または阻害する化合物をスクリーニングすることを特徴とするスクリーニング方法;
〔34〕 被検化合物の存在下及び非存在下にスクリーニングを行い、被検化合物の存在下及び非存在下での各結果を比較することを特徴とする上記〔33〕記載のスクリーニング方法;
〔35〕 MT1−MMP,MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMP及びMT6−MMPから成る群から選ばれたMT−MMPの発現を促進または阻害する化合物をスクリーニングすることを特徴とする上記〔33〕又は〔34〕記載のスクリーニング方法;
〔36〕 MT1−MMPの発現を促進または阻害する化合物をスクリーニングすることを特徴とする上記〔33〕又は〔34〕記載のスクリーニング方法;
〔37〕 上記〔33〕〜〔36〕のいずれか一記載のスクリーニング方法に使用するための、MT−MMPsから成る群から選ばれたものの発現を促進または阻害する化合物のスクリーニングキット;
〔38〕 (a)MT−MMPsから成る群から選ばれたMT−MMPに対する抗体、(b)界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたもの及び(c)免疫学的方法で固相化されたMT−MMPから成る群から選ばれたものを含有することを特徴とする上記〔37〕記載のキット;
〔39〕 MT1−MMP,MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMP及びMT6−MMPから成る群から選ばれたMT−MMPの発現を促進または阻害する化合物のスクリーニングのためのものであることを特徴とする上記〔37〕又は〔38〕記載のキット;
〔40〕 MT1−MMPの発現を促進または阻害する化合物のスクリーニングのためのものであることを特徴とする上記〔37〕又は〔38〕記載のキット;
〔41〕 免疫学的方法で固相化されたMT−MMPの酵素活性を測定することを特徴とする測定方法;
〔42〕 MT−MMPの酵素活性を定量的に測定することを特徴とする上記〔41〕記載の方法;
〔43〕 固相化されたMT−MMPが、抗MT−MMP抗体を介して選択的に固相化されたものであることを特徴とする上記〔41〕又は〔42〕記載の方法;
〔44〕 MT−MMPが、MT1−MMP,MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMP及びMT6−MMPから成る群から選ばれたものであることを特徴とする上記〔41〕〜〔43〕のいずれか一記載の方法;
〔45〕 MT−MMPが、MT1−MMPであることを特徴とする上記〔41〕〜〔43〕のいずれか一記載の方法;
〔46〕 MT−MMPが、(i)界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを用いて細胞膜から遊離及び/又は可溶化させた分子及び(ii)自律的に細胞膜から遊離及び/又は可溶化した分子から成る群から選ばれた分子種の少なくとも一つであることを特徴とする上記〔41〕〜〔45〕のいずれか一記載の方法;
〔47〕 (a)界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを用いてMT−MMPを細胞膜から遊離及び/又は可溶化させる工程及び(b)MT−MMPの酵素活性を測定する工程を含むことを特徴とする上記〔41〕〜〔46〕のいずれか一記載の方法;
〔48〕 免疫学的方法で固相化されたMT−MMP;
〔49〕 抗MT−MMP抗体を介して選択的に固相化されたものであることを特徴とする上記〔48〕記載の固相化されたMT−MMP;
〔50〕 抗MT−MMP抗体が、MT−MMPのヘモペキシン様ドメインを認識する抗体であることを特徴とする上記〔49〕記載の固相化されたMT−MMP;
〔51〕 MT−MMPが、MT1−MMP,MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMP及びMT6−MMPから成る群から選ばれたものであることを特徴とする上記〔48〕〜〔50〕のいずれか一記載の固相化されたMT−MMP;
〔52〕 MT−MMPが、MT1−MMPであることを特徴とする上記〔48〕〜〔50〕のいずれか一記載の固相化されたMT−MMP;
〔53〕 (i)上記〔41〕〜〔47〕のいずれか一記載の方法あるいは(ii)上記〔48〕〜〔52〕のいずれか一記載の固相化されたMT−MMPを用いた、MT−MMPの酵素活性を促進または阻害する化合物のスクリーニング方法;
〔54〕 被検化合物の存在下及び非存在下にスクリーニングを行い、被検化合物の存在下及び非存在下での各結果を比較することを特徴とする上記〔53〕記載のスクリーニング方法;
〔55〕 上記〔41〕〜〔47〕のいずれか一記載の方法に使用するための、MT−MMPの酵素活性を促進または阻害する化合物のスクリーニングキット;
〔56〕 上記〔48〕〜〔52〕のいずれか一記載の固相化されたMT−MMPを含有していることを特徴とする上記〔55〕記載のキット;
〔57〕 (a)上記〔33〕〜〔36〕のいずれか一記載の方法で得られ且つMT−MMPsから成る群から選ばれたものの発現を促進または阻害する化合物、(b)上記〔37〕〜〔40〕のいずれか一記載のキットを使用して得られ且つMT−MMPsから成る群から選ばれたものの発現を促進または阻害する化合物、(c)上記〔53〕又は〔54〕記載の方法で得られたMT−MMPの酵素活性を促進または阻害する化合物及び(d)上記〔55〕又は〔56〕記載のキットを使用して得られたMT−MMPの酵素活性を促進または阻害する化合物から成る群から選ばれたものを含有していることを特徴とする医薬;
〔58〕 MT1−MMP,MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMP及びMT6−MMPから成る群から選ばれたMT−MMPの発現を促進または阻害する化合物又は該MT−MMPの酵素活性を促進または阻害する化合物を含有していることを特徴とする上記〔57〕記載の医薬;
〔59〕 MT1−MMPの発現を促進または阻害する化合物又はMT1−MMPの酵素活性を促進または阻害する化合物を含有していることを特徴とする上記〔57〕記載の医薬;
〔60〕 (i)上記〔1〕〜〔14〕のいずれか一記載の免疫学的定量法又は(ii)上記〔41〕〜〔47〕のいずれか一記載の方法により、MT−MMPsから成る群から選ばれたものを測定するものであることを特徴とする癌検査または癌転移検査薬あるいはリウマチ性関節炎またはアルツハイマーの進行度検査薬;
〔61〕 (A)(i)界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを用いて細胞膜から遊離及び/又は可溶化させた分子及び(ii)自律的に細胞膜から遊離及び/又は可溶化した分子から成る群から選ばれた分子種の少なくとも一つであるMT−MMPの量を指標として使用し、癌の悪性度を評価する又は癌転移能を評価するかあるいはリウマチ性関節炎またはアルツハイマーの進行度を評価するか、あるいは(B)(iii)界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを用いて細胞膜から遊離及び/又は可溶化させた分子及び(iv)自律的に細胞膜から遊離及び/又は可溶化した分子から成る群から選ばれた分子種の少なくとも一つであるMT−MMPの酵素活性の量を指標として使用し、癌の悪性度を評価する又は癌転移能を評価するかあるいはリウマチ性関節炎またはアルツハイマーの進行度を評価することを特徴とする上記〔60〕記載の検査薬;
〔62〕 MT1−MMP,MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMP及びMT6−MMPから成る群から選ばれたMT−MMPを測定するものであることを特徴とする上記〔60〕又は〔61〕記載の検査薬;
〔63〕 MT1−MMPを測定するものであることを特徴とする上記〔60〕又は〔61〕記載の検査薬;
〔64〕 MT1−MMPに対する抗体,MT2−MMPに対する抗体,MT3−MMPに対する抗体,MT4−MMPに対する抗体,MT5−MMPに対する抗体及びMT6−MMPに対する抗体から成る群から選ばれた抗体を含有していることを特徴とする上記〔60〕〜〔62〕のいずれか一記載の検査薬;
〔65〕 MT1−MMPに対する抗体を含有していることを特徴とする上記〔60〕〜〔64〕のいずれか一記載の検査薬;
〔66〕 MT1−MMPの酵素活性を測定するものであることを特徴とする上記〔60〕〜〔65〕のいずれか一記載の検査薬;及び
〔67〕 上記〔1〕〜〔66〕のいずれか一記載の中で抗体が、MT−MMPのヘモペキシン様ドメインを認識するものであることを特徴とする、免疫学的定量法、免疫学的測定用試薬、スクリーニング方法、スクリーニングキット、酵素活性測定方法、免疫学的方法で固相化されたMT−MMP、医薬、検査薬などを提供する。
本発明では、好適に、可溶型MT1−MMPについての免疫学的定量法、免疫学的測定用試薬、スクリーニング方法、スクリーニングキット、酵素活性測定方法、免疫学的方法で固相化されたMT−MMP、医薬、検査薬などが提供される。
本発明は、
〔68〕 MT−MMPsから成る群から選ばれたMT−MMPに対する抗体であって、且つ(i)界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものの存在下で免疫反応性を維持できること及び(ii)人為的に変性してエピトープを露出させたMT−MMPを免疫抗原として得られることから成る群から選ばれた特徴の少なくとも一つを持つものであることを特徴とする抗体;
〔69〕 MT1−MMPに対する抗体,MT2−MMPに対する抗体,MT3−MMPに対する抗体,MT4−MMPに対する抗体,MT5−MMPに対する抗体及びMT6−MMPに対する抗体から成る群から選ばれたものであることを特徴とする上記〔68〕記載の抗体;
〔70〕 抗体がモノクローナル抗体であることを特徴とする上記〔68〕又は〔69〕記載の抗体;
〔71〕 抗体がMT−MMPのヘモペキシン様ドメインを認識するものであることを特徴とする上記〔68〕〜〔70〕のいずれか一記載の抗体;
〔72〕 抗体が固相化抗体であることを特徴とする上記〔68〕〜〔71〕のいずれか一記載の抗体;及び
〔73〕 抗体が標識抗体であることを特徴とする上記〔68〕〜〔71〕のいずれか一記載の抗体を提供する。
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。
発明を実施するための最良の形態
本発明は、MT1−MMPに対する抗体を用いた免疫学的定量法を含めた各種MT−MMPに対する抗体を用いた免疫学的定量法を提供している。そして、特には、界面活性剤及び/又は還元剤を用いることを特徴とするMT−MMPの免疫学的定量法を提供する。また、本発明では、界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを少なくとも用いて、MT−MMPを細胞膜から遊離及び/又は可溶化させる工程を含むことを特徴とする該MT−MMPの免疫学的定量法が提供される。特には、本発明では、MT1−,MT2−,MT3−,MT4−,MT5−,MT6−MMPなどのMT−MMPsをその測定対象とする免疫学的定量法が提供される。該MT−MMPに対し特異的に反応する抗体としては、(i)界面活性剤及び/又は還元剤の存在下で免疫反応性を維持できること、(ii)人為的に変性し、エピトープを露出させたMT1−MMPなどのMT−MMPを免疫抗原として得られることから成る群から選ばれた特徴を有している。好適には、MT−MMPとしては、MT1−MMPが挙げられる。以下、MT1−,MT2−,MT3−,MT4−,MT5−,MT6−MMPなどのMT−MMPsのうち、MT1−MMPについてより詳しくその態様を説明するが、他のMT−MMP、例えばMT2−,MT3−,MT4−,MT5−,MT6−MMPなどについても同様にしてそれを適用できることは理解できよう。
一つの態様では、本発明では、免疫学的に定量できるMT1−MMPが以下のいずれか一つの分子種:
(i)界面活性剤及び/又は還元剤を用いて、細胞膜から遊離・可溶化させた分子
(ii)自律的に細胞膜から遊離・可溶化した分子
であることを特徴とするMT1−MMPの免疫学的定量法が提供できる。
本発明の該MT1−MMPの免疫学的定量を用いると、MT1−MMPの発現を促進または阻害する化合物のスクリーニング方法およびスクリーニングキットが提供できる。かくして、本発明に従い、該スクリーニング方法あるいはスクリーニングキットにより得られたMT1−MMPの発現を促進または阻害する化合物を含有していることを特徴とする医薬も提供できる。また、本発明の該MT1−MMPの免疫学的定量法により、癌または癌転移検査薬、さらにはリウマチ性関節炎またはアルツハイマーの進行度検査薬が提供できる。一つの具体的態様では、本発明では、免疫学的方法で反応容器に固相化されたMT1−MMPを使用することを特徴としたMT1−MMPの酵素活性の測定方法及びそのための試薬も提供できる。特には、抗MT1−MMP抗体を介して選択的に反応容器に固相化されたMT1−MMPを使用することを特徴としたMT1−MMPの酵素活性を測定する方法及びそのための試薬が提供できる。こうして、本発明では、さらに、該MT1−MMPの酵素活性を測定する方法あるいはそのための試薬を用いた、MT1−MMPの酵素活性を促進または阻害する化合物のスクリーニング方法およびスクリーニングキットが提供でき、さらには、該MT1−MMPの酵素活性を促進または阻害する化合物を含有していることを特徴とする医薬が提供される。同様に、MT1−MMPに置き換えて、他のMT−MMPについても上記した方法、試薬、キットなどが提供できる。
本明細書中、「膜型マトリックスメタロプロテアーゼ−1」(“membrane−type 1matrix metalloproteinase”)あるいは「MT1−MMP」は、マトリックスメタロプロテアーゼ−14(MMP−14)とも呼ばれる酵素(MEROPS ID:M10.014)で、ヒトにおいてはその染色体遺伝子座14q11−q12を占める遺伝子(C.Mignon et al.,Gemomics,28:pp.360−361(1995))の産物であると報告されているものであり、DNAクローニング並びに組換えタンパク質の発現に成功して、その存在が確認されるとともに詳細な構造及び特性が明らかにされたものである(H.Sato et al.,Nature,370:pp.61−65(1994);T.Takino et al.,Gene,155:pp.293−298(1995);GenBankTM accession number:D26512)。MT1−MMPは、ヒトの他、イヌ、ヤギ、ウサギ、イノシシ、ネズミなどでもその存在が確認されている。ヒトMT1−MMPのcDNAは、582個のアミノ酸残基をコードし(EMBL accession No.D26512,E09720 & E 10297;SWISS−PROT:P50281)、その構造はシグナルペプチドに続くプロペプチドドメイン、ストロメリシン−3(stromelysin−3)に類似した特異な10個のアミノ酸残基からなる挿入配列(フューリン(furin)−様酵素認識部位の可能性のある配列)、亜鉛結合サイトの可能性を持つ部位を有するコア酵素ドメイン、ヒンジドメイン、そしてトランスメンブレンドメインを抱えるヘモペキシン様ドメイン、そしてC−末端側の疎水性膜貫通ドメインからなっている。MT1−MMPは、何らかの機構により、C−末端側で切断され、膜から離脱したもの(遊離したもの)、すなわち、可溶化されたMT1−MMP(可溶型MT1−MMP)としても存在しうる。同様に、他のMT2−,MT3−,MT4−,MT5−,MT6−MMPなどについても、それらは公知であり、適宜、文献を参照することで、当業者には明らかである。
本明細書中、用語「抗体」は最も広い意味で使用され、そして特に、それらが所望の生物学的活性を示す限りは、単一のモノクローナル抗体、多エピトープ特異性を有する抗体組成物、並びに抗体フラグメント(例えば、Fvなど)、ダイアボディ型抗体などを含んでよい。抗体としては、特にモノクローナル抗体が好ましい。本発明では、抗MT1−MMPモノクローナル抗体を好適に利用できる。他の抗MT−MMPモノクローナル抗体も利用できることは明らかである。
本明細書中、「モノクローナル抗体」との用語は、広義の意味で使用されるものであってよく、所望のMT1−MMPなどのタンパク質断片に対するモノクローナル抗体の単一のものや各種エピトープに対する特異性を持つモノクローナル抗体組成物であってよく、また1価抗体または多価抗体を含むものであり、さらに天然型(intact)分子並びにそれらのフラグメント及び誘導体も表すものであり、F(ab’)2,Fab’及びFabといったフラグメントを包含し、さらに少なくとも二つの抗原又はエピトープ(epitope)結合部位を有するキメラ抗体若しくは雑種抗体、又は、例えば、クワドローム(quadrome),トリオーム(triome)などの二重特異性組換え抗体、種間雑種抗体、抗イディオタイプ抗体、さらには化学的に修飾あるいは加工などされてこれらの誘導体と考えられるもの、公知の細胞融合又はハイブリドーマ技術や抗体工学を適用したり、合成あるいは半合成技術を使用して得られた抗体、抗体生成の観点から公知である従来技術を適用したり、DNA組換え技術を用いて調製される抗体、本明細書で記載し且つ定義する標的抗原物質あるいは標的エピトープに関して中和特性を有したりする抗体又は結合特性を有する抗体を包含していてよい。
抗原物質に対して作製されるモノクローナル抗体は、培養中の一連のセルラインにより抗体分子の産生を提供することのできる任意の方法を用いて産生される。修飾語「モノクローナル」とは、実質上均質な抗体の集団から得られているというその抗体の性格を示すものであって、何らかの特定の方法によりその抗体が産生される必要があるとみなしてはならない。個々のモノクローナル抗体は、自然に生ずるかもしれない変異体が僅かな量だけ存在しているかもしれないという以外は、同一であるような抗体の集団を含んでいるものである。モノクローナル抗体は、高い特異性を持ち、それは単一の抗原性をもつサイトに対して向けられているものである。異なった抗原決定基(エピトープ)に対して向けられた種々の抗体を典型的には含んでいる通常の(ポリクローナル)抗体調製物と対比すると、それぞれのモノクローナル抗体は当該抗原上の単一の抗原決定基に対して向けられているものである。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ培養により合成され、他のイムノグロブリン類の夾雑がないあるいは少ない点でも優れている。モノクローナル抗体は、ハイブリッド抗体及びリコンビナント抗体を含むものである。それらは、所望の生物活性を示す限り、その由来やイムノグロブリンクラスやサブクラスの種別に関わりなく、可変領域ドメインを定常領域ドメインで置き換えたり(例えば、ヒト化抗体)、あるいは軽鎖を重鎖で置き換えたり、ある種の鎖を別の種の鎖でもって置き換えたり、あるいはヘテロジーニアスなタンパク質と融合せしめたりして得ることができる(例えば、米国特許第4816567号;Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.79−97,Marcel Dekker,Inc.,New York,1987など)。
モノクローナル抗体を製造する好適な方法の例には、ハイブリドーマ法(G.Kohler and C.Milstein,Nature,256,pp.495−497(1975));ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozbor et al.,Immunology Today,4,pp.72−79(1983);Kozbor,J.Immunol.,133,pp.3001(1984);Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51−63,Marcel Dekker,Inc.,New York(1987);トリオーマ法;EBV−ハイブリドーマ法(Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.,pp.77−96(1985))(ヒトモノクローナル抗体を産生するための方法);米国特許第4946778号(単鎖抗体の産生のための技術)が挙げられる他、抗体に関して以下の文献が挙げられる:S.Biocca et al.,EMBO J,9,pp.101−108(1990);R.E.Bird et al.,Science,242,pp.423−426(1988);M.A.Boss et al.,Nucl.Acids Res.,12,pp.3791−3806(1984);J.Bukovsky et al.,Hybridoma,6,pp.219−228(1987);M.DAINO et al.,Anal.Biochem.,166,pp.223−229(1987);J.S.Huston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85,pp.5879−5883(1988);P.T.Jones et al.,Nature,321,pp.522−525(1986);J.J.Langone et al.(ed.),“Methods in Enzymology”,Vol.121(Immunochemical Techniques,Part I:Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies),Academic Press,New York(1986);S.Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81,pp.6851−6855(1984);V.T.Oi et al.,BioTechniques,4,pp.214−221(1986);L.Riechmann et al.,Nature,332,pp.323−327(1988);A.Tramontano et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,83,pp.6736−6740(1986);C.Wood et al.,Nature,314,pp.446−449(1985);Nature,314,pp.452−454(1985)あるいはそこで引用された文献(それらの中にある記載はそれを参照することにより本明細書の開示に含められる)。
本発明に係るモノクローナル抗体は、それらが所望の生物活性を示す限り、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の種から誘導される又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体の対応配列と同一又はホモローガスであるが、一方、鎖の残部は、別の種から誘導される又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体の対応配列と同一又はホモローガスである、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を包含するものであってもよい(米国特許第4816567号明細書;Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81,pp.6851−6855(1984))。
以下、モノクローナル抗体の作製につき詳しく説明する。
本発明のモノクローナル抗体は、ミエローマ細胞を用いての細胞融合技術(Kohler,G.& Milstein,C.,Nature,256:495(1975)などにより開示された細胞融合技術)を利用して得られたモノクローナル抗体であってよく、例えば次のような工程で作製できる。
1.免疫原性抗原の調製
2.免疫原性抗原による動物の免疫
3.ミエローマ細胞(骨髄腫細胞)の調製
4.抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞融合
5.ハイブリドーマ(融合細胞)の選択及びモノクローン化
6.モノクローナル抗体の製造
1.免疫原性抗原の調製
抗原としては、上記で記載してあるように、MT−MMPs、例えばMT1−MMPの可溶性タンパク質断片又はそれから誘導された断片を用いることができる。例えば、決定されたMT1−MMPタンパク質の配列情報を基に、適当なオリゴペプチドを化学合成しそれを抗原として利用することもできる。あるいは、該情報を基に、適切な遺伝子ライブラリーを構築したり、あるいは公知又は容易に入手できる遺伝子ライブラリーを選択使用し、組換えDNA技術を含む遺伝子工学的操作を適用して、例えば、MT1−MMPのヘモペキシンドメイン、亜鉛結合サイトの可能性を持つ部位を有するコア酵素ドメイン、組換えMT1−MMPの可溶性タンパク質などを取得してそれを利用することができる。抗原としては、好ましくは、人為的に変性し、エピトープを露出させたMT1−MMPを用いることが出来る。上記手法は、他のMT−MMPについても同様に行い得る。
遺伝子組換え技術(組換えDNA技術を含む)は、例えばJ.Sambrook,E.F.Fritsch & T.Maniatis,“Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd edition)”,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(1989);D.M.Glover et al.ed.,“DNA Cloning”,2nd ed.,Vol.1to4,(The Practical Approach Series),IRL Press,Oxford University Press(1995);日本生化学会編、「続生化学実験講座1、遺伝子研究法II」、東京化学同人(1986);日本生化学会編、「新生化学実験講座2、核酸III(組換えDNA技術)」、東京化学同人(1992);R.Wu ed.,“Methods in Enzymology”,Vol.68(Recombinant DNA),Academic Press,New York(1980);R.Wu et al.ed.,“Methods in Enzymology”,Vol.100(Recombinant DNA,Part B)&101(Recombinant DNA,Part C),Academic Press,New York(1983);R.Wu et al.ed.,“Methods in Enzymology”,Vol.153(Recombinant DNA,Part D),154(Recombinant DNA,Part E)&155(Recombinant DNA,Part F),Academic Press,New York(1987);J.H.Miller ed.,“Methods in Enzymology”,Vol.204,Academic Press,New York(1991);R.Wu et al.ed.,“Methods in Enzymology”,Vol.218,Academic Press,New York(1993);S.Weissman(ed.),“Methods in Enzymology”,Vol.303,Academic Press,New York(1999);J.C.Glorioso et al.(ed.),“Methods in Enzymology”,Vol.306,Academic Press,New York(1999)などに記載の方法あるいはそこで引用された文献記載の方法あるいはそれらと実質的に同様な方法や改変法により行うことができる(それらの中にある記載はそれを参照することにより本明細書の開示に含められる)。
抗原は、そのまま適当なアジュバントと混合して動物を免疫するのに使用できるが、免疫原性コンジュゲートなどにしてもよい。例えば、免疫原として用いる抗原は、MT−MMP(例えばMT1−MMP)を断片化したもの、あるいはそのアミノ酸配列に基づぎ特徴的な配列領域を選び、ポリペプチドをデザインして化学合成して得られた合成ポリペプチド断片であってもよい。また、その断片を適当な縮合剤を介して種々の担体タンパク質類と結合させてハプテン−タンパク質の如き免疫原性コンジュゲートとし、これを用いて特定の配列のみと反応できる(あるいは特定の配列のみを認識できる)モノクローナル抗体をデザインするのに用いることもできる。デザインされるポリペプチドには予めシステイン残基などを付加し、免疫原性コンジュゲートの調製を容易にできるようにしておくことができる。担体タンパク質類と結合させるにあたっては、担体タンパク質類はまず活性化されることができる。こうした活性化にあたり活性化結合基を導入することが挙げられる。
活性化結合基としては、(1)活性化エステルあるいは活性化カルボキシル基、例えばニトロフェニルエステル基、ペンタフルオロフェニルエステル基、1−ベンゾトリアゾールエステル基、N−スクシンイミドエステル基など、(2)活性化ジチオ基、例えば2−ピリジルジチオ基などが挙げられる。担体タンパク質類としては、キーホール・リンペット・ヘモシアニン(KLH)、牛血清アルブミン(BSA)、卵白アルブミン、グロブリン、ポリリジンなどのポリペプタイド、細菌菌体成分、例えばBCGなどが挙げられる。
2.免疫原性抗原による動物の免疫
免疫は、当業者に知られた方法により行うことができ、例えば村松繁、他編、実験生物学講座14、免疫生物学、丸善株式会社、昭和60年、日本生化学会編、続生化学実験講座5、免疫生化学研究法、東京化学同人、1986年、日本生化学会編、新生化学実験講座12、分子免疫学III、抗原・抗体・補体、東京化学同人、1992年などに記載の方法に準じて行うことができる。免疫化剤を(必要に応じアジュバントと共に)一回又はそれ以上の回数哺乳動物に注射することにより免疫化される。代表的には、該免疫化剤及び/又はアジュバントを哺乳動物に複数回皮下注射あるいは腹腔内注射することによりなされる。免疫化剤は、上記抗原ペプチドあるいはMMPs、例えばMT1−MMPタンパク質あるいはその断片を含むものが挙げられる。免疫化剤は、免疫処理される哺乳動物において免疫原性であることの知られているタンパク質(例えば上記担体タンパク質類など)とコンジュゲートを形成せしめて使用してもよい。アジュバントとしては、例えばフロイント完全アジュバント、リビ(Ribi)アジュバント、百日咳ワクチン、BCG、リピッドA、リポソーム、水酸化アルミニウム、シリカなどが挙げられる。免疫は、例えばBALB/cなどのマウス、ハムスター、その他の適当な動物を使用して行われる。抗原の投与量は、例えばマウスに対して約1〜400μg/動物で、一般には宿主動物の腹腔内や皮下に注射し、以後1〜4週間おきに、好ましくは1〜2週間ごとに腹腔内、皮下、静脈内あるいは筋肉内に追加免疫を2〜10回程度反復して行う。免疫用のマウスとしてはBALB/c系マウスの他、BALB/c系マウスと他系マウスとのF1マウスなどを用いることもできる。必要に応じ、抗体価測定系を調製し、抗体価を測定して動物免疫の程度を確認できる。本発明の抗体は、こうして得られ免疫された動物から得られたものであってよく、例えば、抗血清、ポリクローナル抗体等を包含する。
3.ミエローマ細胞(骨髄腫細胞)の調製
細胞融合に使用される無限増殖可能株(腫瘍細胞株)としては免疫グロブリンを産生しない細胞株から選ぶことができ、例えばP3−NS−1−Ag4−1(NS−1,Eur.J.Immunol.,6:511−519,1976)、SP−2/0−Ag14(SP−2,Nature,276:269〜270,1978)、マウスミエローマMOPC−21セルライン由来のP3−X63−Ag8−U1(P3U1,Curr.topics Microbiol.Immunol.,81:1−7,1978)、P3−X63−Ag8(X63,Nature,256:495−497,1975)、P3−X63−Ag8−653(653,J.Immunol.,123:1548−1550,1979)などを用いることができる。8−アザグアニン耐性のマウスミエローマ細胞株はダルベッコMEM培地(DMEM培地)、RPMI−1640培地などの細胞培地に、例えばペニシリン、アミカシンなどの抗生物質、牛胎児血清(FCS)などを加え、さらに8−アザグアニン(例えば5〜45μg/ml)を加えた培地で継代されるが、細胞融合の2〜5日前に正常培地で継代して所要数の細胞株を用意することができる。また使用細胞株は、凍結保存株を約37℃で完全に解凍したのちRPMI−1640培地などの正常培地で3回以上洗浄後、正常培地で培養して所要数の細胞株を用意したものであってもよい。
4.抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞融合
上記2.の工程に従い免疫された動物、例えばマウスは最終免疫後、2〜5日後にその脾臓が摘出され、それから脾細胞懸濁液を得る。脾細胞の他、生体各所のリンパ節細胞を得て、それを細胞融合に使用することもできる。こうして得られた脾細胞懸濁液と上記3.の工程に従い得られたミエローマ細胞株を、例えば最小必須培地(MEM培地)、DMEM培地、RPMI−1640培地などの細胞培地中に置き、細胞融合剤、例えばポリエチレングリコールを添加する。細胞融合剤としては、この他各種当該分野で知られたものを用いることができ、この様なものとしては不活性化したセンダイウイルス(HVJ:Hemagglutinating Virus of Japan)なども挙げられる。好ましくは、例えば30〜60%のポリエチレングリコールを0.5〜2ml加えることができ、分子量が1,000〜8,000のポリエチレングリコールを用いることができ、さらに分子量が1,000〜4,000のポリエチレングリコールがより好ましく使用できる。融合培地中でのポリエチレングリコールの濃度は、例えば30〜60%となるようにすることが好ましい。必要に応じ、例えばジメチルスルホキシドなどを少量加え、融合を促進することもできる。融合に使用する脾細胞(リンパ球):ミエローマ細胞株の割合は、例えば1:1〜20:1とすることが挙げられるが、より好ましくは4:1〜7:1とすることができる。
融合反応を1〜10分間行い、次にRPMI−1640培地などの細胞培地を加える。融合反応処理は複数回行うこともできる。融合反応処理後、遠心などにより細胞を分離した後選択用培地に移す。
5.ハイブリドーマ(融合細胞)の選択及びモノクローン化
選択用培地としては、例えばヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含む、FCS含有MEM培地、RPMI−1640培地などの培地、所謂HAT培地が挙げられる。選択培地交換の方法は、一般的には培養プレートに分注した容量と等容量を翌日加え、その後1〜3日ごとにHAT培地で半量ずつ交換するというように処理することができるが、適宜これに変更を加えて行うこともできる。また融合後8〜16日目には、アミノプテリンを除いた、所謂HT培地で1〜4日ごとに培地交換をすることができる。フィーダーとして、例えばマウス胸腺細胞を使用することもでき、それが好ましい場合がある。
ハイブリドーマの増殖のさかんな培養ウェルの培養上清を、例えば放射免疫分析(RIA)、酵素免疫分析(ELISA)、蛍光免疫分析(FIA)、発光免疫分析(LIA)、ウェスタンブロティングなどの測定系、あるいは蛍光惹起細胞分離装置(FACS)などで、所定の断片ペプチドを抗原として用いたり、あるいは標識抗マウス抗体を用いて目的抗体を測定するなどして、スクリーニングしたりする。
目的抗体を産生しているハイブリドーマをクローニングする。クローニングは、寒天培地中でコロニーをピック・アップするか、あるいは限界希釈法によりなされうる。限界希釈法でより好ましく行うことができる。クローニングは複数回行うことが好ましい。
6.モノクローナル抗体の製造
得られたハイブリドーマ株は、FCS含有MEM培地、RPMI−1640培地などの適当な増殖用培地中で培養し、その培地上清から所望のモノクローナル抗体を得ることが出来る。大量の抗体を得るためには、ハイブリドーマを腹水化することが挙げられる。この場合ミエローマ細胞由来の動物と同系の組織適合性動物の腹腔内に各ハイブリドーマを移植し、増殖させるか、あるいは例えばヌード・マウスなどに各ハイブリドーマを移植し、増殖させ、該動物の腹水中に産生されたモノクローナル抗体を回収して得ることが出来る。動物はハイブリドーマの移植に先立ち、プリスタン(2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン)などの鉱物油を腹腔内投与しておくことができ、その処理後、ハイブリドーマを増殖させ、腹水を採取することもできる。腹水液はそのまま、あるいは従来公知の方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿法などの塩析、セファデックスなどによるゲルろ過法、イオン交換クロマトグラフィー法、電気泳動法、透析、限外ろ過法、アフィニティ・クロマトグラフィー法、高速液体クロマトグラフィー法などにより精製してモノクローナル抗体として用いることができる。好ましくは、モノクローナル抗体を含有する腹水は、硫安分画した後、DEAE−セファロースの如き、陰イオン交換ゲル及びプロテインAカラムの如きアフィニティ・カラムなどで処理し精製分離処理できる。特に好ましくは抗原又は抗原断片(例えば合成ペプチド、組換え抗原タンパク質あるいはペプチド、抗体が特異的に認識する部位など)を固定化したアフィニティ・クロマトグラフィー、プロテインAを固定化したアフィニティ・クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイト・クロマトグラフィーなどが挙げられる。
また、トランスジェニックマウス又はその他の生物、例えば、その他の哺乳動物は、本発明の免疫原ポリペプチド産物に対するヒト化抗体等の抗体を発現するのに用いることができる。
またこうして大量に得られた抗体の配列を決定したり、ハイブリドーマ株から得られた抗体をコードする核酸配列を利用して、遺伝子組換え技術により抗体を作製することも可能である。当該モノクローナル抗体をコードする核酸は、例えばマウス抗体の重鎖や軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用するなどの慣用の手法で単離し配列決定することができる。一旦単離されたDNAは、上記したようにして発現ベクターに入れ、CHO,COSなどの宿主細胞に入れることができる。該DNAは、例えばホモジーニアスなマウスの配列に代えて、ヒトの重鎖や軽鎖の定常領域ドメインをコードする配列に置換するなどして修飾することが可能である(Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6581,1984)。かくして所望の結合特異性を有するキメラ抗体やハイブリッド抗体も調製することが可能である。また、抗体は、下記するような縮合剤を用いることを含めた化学的なタンパク合成技術を適用して、キメラ抗体やハイブリッド抗体を調製するなどの修飾をすることも可能である。
ヒト化抗体は、当該分野で知られた技術により行うことが可能である(例えば、Jones et al.,Nature,321:pp.522−525(1986);Riechmann et al.,Nature,332:pp.323−327(1988);Verhoeyen et al.,Science,239:pp.1534−1536(1988))。ヒトモノクローナル抗体も、当該分野で知られた技術により行うことが可能で、ヒトモノクローナル抗体を生産するためのヒトミエローマ細胞やヒト・マウスヘテロミエローマ細胞は当該分野で知られている(Kozbor,J.Immunol.,133,pp.3001(1984);Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51−63,Marcel Dekker,Inc.,New York(1987))。バイスペシフィックな抗体を製造する方法も当該分野で知られている(Millstein et al.,Nature,305:pp.537−539(1983);WO93/08829;Traunecker et al.,EMBO J.,10:pp.3655−3659(1991);Suresh et al.,“Methods in Enzymology”,Vol.121,pp.210(1986))。
さらにこれら抗体をトリプシン、パパイン、ペプシンなどの酵素により処理して、場合により還元して得られるFab、Fab’、F(ab’)2といった抗体フラグメントにして使用してもよい。
抗体は、既知の任意の検定法、例えば競合的結合検定、直接及び間接サンドイッチ検定、及び免疫沈降検定に使用することができる(Zola,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques,pp.147−158,CRC Press,Inc.,1987)。
抗体を検出可能な原子団にそれぞれコンジュゲートするには、当分野で知られる任意の方法を使用することができ、例えば、David et al.,Biochemistry,13巻,1014−1021頁(1974);Pain et al,J.Immunol.Meth.,40:pp.219−231(1981);及び“Methods in Enzymolog”,Vol.184,pp.138−163(1990)により記載の方法が挙げられる。標識物を付与する抗体としては、IgG画分、更にはペプシン消化後還元して得られる特異的結合部Fab’を用いることができる。これらの場合の標識物の例としては、下記するように酵素(ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼあるいはβ−D−ガラクトシダーゼなど)、化学物質、蛍光物質あるいは放射性同位元素などがある。
本発明の抗体、特にはモノクローナル抗体を使用しての検知・測定は、イムノ染色、例えば組織あるいは細胞染色、イムノアッセイ、例えば競合型イムノアッセイまたは非競合型イムノアッセイで行うこともでき、FIA,LIA,RIA,ELISAなどを用いることもでき、B−F分離を行ってもよいし、あるいは行わないでその測定を行うこともできる。好ましくは放射免疫測定法や酵素免疫測定法を採用することができ、さらにサンドイッチ型アッセイを好ましく適用できる。例えばサンドイッチ型アッセイでは、一方を本発明のMT1−MMPのヘモペキシンドメインに対する抗体などのMT−MMPのヘモペキシンドメインに対する抗体とし、他方を通常のMT1−MMPに対する抗体などの抗MT−MMP抗体とし、そして一方を検出可能に標識化する。同じ抗原を認識できる他の抗体を固相に固定化する。検体と標識化抗体及び固相化抗体を必要に応じ順次反応させるためインキュベーション処理し、ここで非結合抗体を分離後、標識物を測定する。測定された標識の量は抗原、すなわち可溶性MT−MMP抗原の量(可溶性MT1−MMP抗原の量)と比例する。このアッセイでは、不溶化抗体や、標識化抗体の添加の順序に応じて同時サンドイッチ型アッセイ、フォワード(forward)サンドイッチ型アッセイあるいは逆サンドイッチ型アッセイなどと呼ばれる。例えば洗浄、撹拌、震盪、ろ過あるいは抗原の予備抽出等は、特定の状況のもとでそれら測定工程の中で適宜採用される。特定の試薬、緩衝液等の濃度、温度あるいはインキュベーション処理時間などのその他の測定条件は、検体中の抗原の濃度、検体試料の性質等の要素に従い変えることができる。当業者は通常の実験法を用いながら各測定に対して有効な最適の条件を適宜選定して測定を行うことが出来る。
抗原あるいは抗体を固相化できる多くの担体が知られており、本発明ではそれらから適宜選んで用いることができる。担体としては、抗原抗体反応などに使用されるものが種々知られており、本発明においても勿論これらの公知のものの中から選んで使用できる。特に好適に使用されるものとしては、例えばガラス、例えば活性化ガラス、多孔質ガラス、シリカゲル、シリカ−アルミナ、アルミナ、磁化鉄、磁化合金などの無機材料、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリレート、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアクリルアミド、架橋ポリアクリルアミド、スチレン−メタクリレート共重合体、ポリグリシジルメタクリレート、アクロレイン−エチレングリコールジメタクリレート共重合体など、架橋化アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、デキストラン、アガロース、架橋アガロース、セルロース、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートなどの天然または変成セルロース、架橋デキストラン、ナイロンなどのポリアミド、ポリウレタン、ポリエポキシ樹脂などの有機高分子物質、さらにそれらを乳化重合して得られたもの、細胞、赤血球などで、必要に応じ、シランカップリング剤などで官能性基を導入してあるものが挙げられる。
さらに、ろ紙、ビーズ、試験容器の内壁、例えば試験管、タイタープレート、タイターウェル、ガラスセル、合成樹脂製セルなどの合成材料からなるセル、ガラス棒、合成材料からなる棒、末端を太くしたりあるいは細くしたりした棒、末端に丸い突起をつけたりあるいは偏平な突起をつけた棒、薄板状にした棒などの固体物質(物体)の表面などが挙げられる。
これら担体へは、抗体を結合させることができ、好ましくは本発明で得られる抗原に対し特異的に反応する抗体、特にはモノクローナル抗体を結合させることができる。担体とこれら抗原抗体反応に関与するものとの結合は、吸着などの物理的な手法、あるいは縮合剤などを用いたり、活性化されたものなどを用いたりする化学的な方法、さらには相互の化学的な結合反応を利用した手法などにより行うことが出来る。
標識としては、酵素、酵素基質、酵素インヒビター、補欠分子類、補酵素、酵素前駆体、アポ酵素、蛍光物質、色素物質、化学ルミネッセンス化合物、発光物質、発色物質、磁気物質、金属粒子、例えば金コロイドなど、放射性物質などを挙げることができる。酵素としては、脱水素酵素、還元酵素、酸化酵素などの酸化還元酵素、例えばアミノ基、カルボキシル基、メチル基、アシル基、リン酸基などを転移するのを触媒する転移酵素、例えばエステル結合、グリコシド結合、エーテル結合、ペプチド結合などを加水分解する加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼ、リガーゼなどを挙げることができる。酵素は複数の酵素を複合的に用いて検知に利用することもできる。例えば酵素的サイクリングを利用することもできる。
代表的な放射性物質の標識用同位体元素としては、[32P],[125I],[131I],[3H],[14C],[35S]などが挙げられる。
代表的な酵素標識としては、西洋ワサビペルオキシダーゼなどのペルオキシダーゼ、大腸菌β−D−ガラクトシダーゼなどのガラクトシダーゼ、マレエート・デヒドロゲナーゼ、グルコース−6−フォスフェート・デヒドロゲナーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコアミラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、カタラーゼ、ウシ小腸アルカリホスファターゼ、大腸菌アルカリホスファターゼなどのアルカリフォスファターゼなどが挙げられる。
アルカリホスファターゼを用いた場合、4−メチルウンベリフェリルフォスフェートなどのウンベリフェロン誘導体、ニトロフェニルホスフェートなどのリン酸化フェノール誘導体、NADPを利用した酵素的サイクリング系、ルシフェリン誘導体、ジオキセタン誘導体などの基質を使用したりして、生ずる蛍光、発光などにより測定できる。ルシフェリン、ルシフェラーゼ系を利用したりすることもできる。カタラーゼを用いた場合、過酸化水素と反応して酸素を生成するので、その酸素を電極などで検知することもできる。電極としてはガラス電極、難溶性塩膜を用いるイオン電極、液膜型電極、高分子膜電極などであることもできる。
酵素標識は、ビオチン標識体と酵素標識アビジン(ストレプトアビジン)に置き換えることも可能である。標識は、複数の異なった種類の標識を使用することもできる。こうした場合、複数の測定を連続的に、あるいは非連続的に、そして同時にあるいは別々に行うことを可能にすることもできる。
本発明においては、信号の形成に4−ヒドロキシフェニル酢酸、1,2−フェニレンジアミン、テトラメチルベンジジンなどと西洋ワサビ・ペルオキシダーゼ、ウンベリフェリルガラクトシド、ニトロフェニルガラクトシドなどとβ−D−ガラクトシダーゼ、グルコース−6−リン酸・デヒドロゲナーゼなどの酵素試薬の組合わせも利用でき、ヒドロキノン、ヒドロキシベンゾキノン、ヒドロキシアントラキノンなどのキノール化合物、リポ酸、グルタチオンなどのチオール化合物、フェノール誘導体、フェロセン誘導体などを酵素などの働きで形成しうるものが使用できる。
蛍光物質あるいは化学ルミネッセンス化合物としては、フルオレセインイソチオシアネート、例えばローダミンBイソチオシアネート、テトラメチルローダミンイソチオシアネートなどのローダミン誘導体、ダンシルクロリド、ダンシルフルオリド、フルオレスカミン、フィコビリプロテイン、アクリジニウム塩、ルミフェリン、ルシフェラーゼ、エクォリンなどのルミノール、イミダゾール、シュウ酸エステル、希土類キレート化合物、クマリン誘導体などが挙げられる。
標識するには、チオール基とマレイミド基の反応、ピリジルジスルフィド基とチオール基の反応、アミノ基とアルデヒド基の反応などを利用して行うことができ、公知の方法あるいは当該分野の当業者が容易になしうる方法、さらにはそれらを修飾した方法の中から適宜選択して適用できる。また上記免疫原性複合体作製に使用されることのできる縮合剤、担体との結合に使用されることのできる縮合剤などを用いることができる。
縮合剤としては、例えばホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソチオシアネート、N,N’−ポリメチレンビスヨードアセトアミド、N,N’−エチレンビスマレイミド、エチレングリコールビススクシニミジルスクシネート、ビスジアゾベンジジン、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、スクシンイミジル 3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、N−スクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、N−スルホスクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート、N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート、N−スクシンイミジル 4−(1−マレイミドフェニル)ブチレート、N−(ε−マレイミドカプロイルオキシ)コハク酸イミド(EMCS),イミノチオラン、S−アセチルメルカプトコハク酸無水物、メチル−3−(4’−ジチオピリジル)プロピオンイミデート、メチル−4−メルカプトブチリルイミデート、メチル−3−メルカプトプロピオンイミデート、N−スクシンイミジル−S−アセチルメルカプトアセテートなどが挙げられる。
本発明の測定法によれば、測定すべき物質を酵素などで標識した抗体、特には標識モノクローナル抗体などの標識抗体試薬と、担体に結合された抗体とを順次反応させることができるし、同時に反応させることもできる。試薬を加える順序は選ばれた担体系の型により異なる。感作されたプラスチックなどのビーズを用いた場合には、酵素などで標識した抗体、特には標識モノクローナル抗体などの標識抗体試薬を測定すべき物質を含む検体試料と共に最初適当な試験管中に一緒に入れ、その後該感作されたプラスチックなどのビーズを加えることにより測定を行うことができる。
本発明の定量法においては、免疫学的測定法が用いられるが、その際の固相担体としては、抗体などタンパク質を良く吸着するポリスチレン製、ポリカーボネイト製、ポリプロピレン製あるいはポリビニル製のボール、マイクロプレート、スティック、微粒子あるいは試験管などの種々の材料および形態を任意に選択し、使用することができる。
測定にあたっては至適pH、例えばpH約4〜9に保つように適当な緩衝液系中で行うことができる。特に適切な緩衝剤としては、例えばアセテート緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤、フォスフェート緩衝剤、トリス緩衝剤、トリエタノールアミン緩衝剤、ボレート緩衝剤、グリシン緩衝剤、炭酸塩緩衝剤、トリス−塩酸緩衝剤などが挙げられる。緩衝剤は互いに任意の割合で混合して用いることができる。抗原抗体反応は約0℃〜60℃の間の温度で行うことが好ましい。
酵素などで標識されたモノクローナル抗体などの抗体試薬及び担体に結合せしめられた抗体試薬、さらには測定すべき物質のインキュベーション処理は、平衡に達するまで行うことができるが、抗原抗体反応の平衡が達成されるよりもずっと早い時点で固相と液相とを分離して限定されたインキュベーション処理の後に反応を止めることができ、液相又は固相のいずれかにおける酵素などの標識の存在の程度を測ることができる。測定操作は、自動化された測定装置を用いて行うことが可能であり、ルミネセンス・ディテクター、ホト・ディテクターなどを使用して基質が酵素の作用で変換されて生ずる表示シグナルを検知して測定することもできる。
抗原抗体反応においては、それぞれ用いられる試薬、測定すべき物質、さらには酵素などの標識を安定化したり、抗原抗体反応自体を安定化するように適切な手段を講ずることができる。さらに、非特異的な反応を除去し、阻害的に働く影響を減らしたり、あるいは測定反応を活性化したりするため、タンパク質、安定化剤、界面活性化剤などをインキュベーション溶液中に加えることもできる。
当該分野で普通に採用されていたりあるいは当業者に知られた非特異的結合反応を防ぐためのブロッキング処理を施してもよく、例えば、哺乳動物などの正常血清タンパク質、アルブミン、スキムミルク、乳発酵物質、コラーゲン、ゼラチンなどで処理することができる。非特異的結合反応を防ぐ目的である限り、それらの方法は特に限定されず用いることが出来る。
特に、本発明の抗MT1−MMP抗体を使用しての酵素免疫測定法においては、例えば、当該分野で広く知られた酵素免疫測定技術を制限すること無く適用できるが、該酵素免疫測定法としては、例えば、石川栄治監訳、P.TIJSSEN著、生化学実験法・エンザイムイムノアッセイ、1989年、株式会社東京化学同人などに記載の方法などが挙げられる。例えば、第一抗体固相法、二抗体法、エミット法(Enzyme multiplied immunoassay technique;EMIT)、エンザイムチャンネリングイムノアッセイ法、酵素活性修飾物質イムノアッセイ法、リポソーム膜−酵素イムノアッセイ法、サンドイッチ法、イムノエンザイムメトリックアッセイ法、酵素活性増強イムノアッセイ法などが挙げられ、それらは競合法であっても、非競合法であってもよい。
本発明の測定方法で測定される試料としては、あらゆる形態の溶液やコロイド溶液、非流体試料などが使用しうるが、好ましくは生物由来の試料、例えば胸腺、睾丸、腸、腎臓、脳、乳房、卵巣、子宮、肺、肝、胃、膵、皮膚、食道などの臓器、器官、それらの腫瘍、例えば乳癌、卵巣癌、肺癌、子宮癌、結腸・直腸癌、各種肉腫、血液、血清、血漿、関節液、脳脊髄液、唾液、羊水、尿、その他の体液、細胞培養液、組織培養液、組織ホモジュネート、生検試料、組織、細胞などが挙げられる。
本発明に従って、MT−MMP(例えば、MT1−MMP)の免疫学的定量を行うことにより、MT−MMP(例えば、MT1−MMP)を膜から遊離及び/又は可溶化された分子種(可溶型MT−MMP)として測定できることを見いだした。そして、試料を、例えば界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたもので適切に処理すると、何らかの機構により、膜から離脱したもの(遊離したもの)及び/又は可溶化したものが得られ、MT1−MMPといったMT−MMPの定量などの測定が効果的に行うことができる。かくして、界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを用いて、MT1−MMP、その他のMT−MMPを細胞膜から遊離及び/又は可溶化させる技術が提供される。さらに、界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを用いて、MT−MMPs、例えば、MT1−,MT2−,MT3−,MT4−,MT5−,MT6−MMPなどを、膜から遊離及び/又は可溶化せしめる技術が提供できる。該遊離及び/又は可溶化技術を利用すれば、MT−MMPに対する抗体、特にはモノクローナル抗体(例えば、抗MT1−MMP抗体,MT2−MMP抗体,MT3−MMP抗体,MT4−MMP抗体,MT5−MMP抗体,MT6−MMP抗体など)などを用いて、MT−MMP、特には遊離及び/又は可溶化されたMT−MMPを免疫学的定量に付すことができる。
該界面活性剤としては、膜からMT−MMPを遊離及び/又は可溶化せしめる働きを有するものであれば如何なるものも使用できるが、好ましくはMT−MMPの免疫学的な定量に悪影響を及ぼさないものが挙げられる。該界面活性剤としては、例えば陰イオン界面活性剤などが挙げられ、代表的なものとしては、高級アルキル硫酸のアルカリ金属塩などである。好ましい界面活性剤としては、例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などが挙げられる。該還元剤としては、膜からMT−MMPを遊離及び/又は可溶化せしめる働きを有するものあるいはMT−MMP分子中にある酸化還元反応に感受性の基(例えば、−S−S−結合など)に作用するものが挙げられるが、好ましくはMT−MMPの免疫学的な定量に悪影響を及ぼさないものが挙げられる。該還元剤としては、例えば2−メルカプトエタノール、ジチオスレイトールなどのチオアルコール類、グルタチオンなどの硫黄含有有機化合物などが挙げられる。
好ましくは、界面活性剤及び還元剤の両方を使用して、膜からMT−MMPを遊離及び/又は可溶化せしめることができるし、MT−MMPに対する抗体などを用いて、MT−MMP、特には遊離及び/又は可溶化されたMT−MMPを免疫学的に測定(定量を含む)することができる。かくして、遊離及び/又は可溶化MT−MMPと膜に結合しているMT−MMPとを区別することが可能となったり、膜に結合して検知あるいは測定が困難である場合にもMT−MMPを検知あるいは測定することが可能となる。特に、界面活性剤としてSDS、還元剤として2−メルカプトエタノールを用いて、MT1−MMPを遊離及び/又は可溶化せしめることができる。また、MT1−MMPに対する抗体、特にはモノクローナル抗MT1−MMP抗体を使用して該遊離及び/又は可溶化されたMT1−MMPを免疫学的に定量できる。
これら個々の免疫学的測定法を含めた各種の分析・定量法を本発明の測定方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて、本発明の当該対象物質あるいはそれと実質的に同等な活性を有する物質に関連した測定系を構築すればよい。
これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる〔例えば、入江 寛編,「ラジオイムノアッセイ」,講談社,昭和49年発行;入江 寛編,「続ラジオイムノアッセイ」,講談社,昭和54年発行;石川栄治ら編,「酵素免疫測定法」,医学書院,昭和53年発行;石川栄治ら編,「酵素免疫測定法」(第2版),医学書院,昭和57年発行;石川栄治ら編,「酵素免疫測定法」(第3版),医学書院,昭和62年発行;石川栄治著、「超高感度酵素免疫測定法」,学会出版センター,1993年12月発行;H.V.Vunakis et al.(ed.),“Methods in Enzymology”,Vol.70(Immunochemical Techniques,Part A),Academic Press,New York(1980);J.J.Langone et al.(ed.),“Methods in Enzymology”,Vol.73(Immunochemical Techniques,Part B),Academic Press,New York(1981);J.J.Langone et al.(ed.),“Methods in Enzymology”,Vol.74(Immunochemical Techniques,Part C),Academic Press,New York(1981);J.J.Langone et al.(ed.),“Methods in Enzymology”,Vol.84(Immunochemical Techniques,Part D:Selected Immunoassays),Academic Press,New York(1982);J.J.Langone et al.(ed.),“Methods in Enzymology”,Vol.92(Immunochemical Techniques,Part E:Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods),Academic Press,New York(1983);J.J.Langone et al.(ed.),“Methods in Enzymology”,Vol.121(Immunochemical Techniques,Part I:Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies),Academic Press,New York(1986);J.J.Langone et al.(ed.),“Methods in Enzymology”,Vol.178(Antibodies,Antigens,and Molecular Mimicry),Academic Press,New York(1989);M.Wilchek et al.(ed.),“Methods in Enzymology”,Vol.184(Avidin−Biotin Technology),Academic Press,New York(1990);J.J.Langone et al.(ed.),“Methods in Enzymology”,Vol.203(Molecular Design and Modeling:Concepts and Applications,Part B:Anibodies and Antigens,Nucleic Acids,Polysaccharides,and Drugs),Academic Press,New York(1991)などあるいはそこで引用された文献(それらの中にある記載はそれを参照することにより本明細書の開示に含められる)〕。
本発明では、MT1−MMPなどのMT−MMPの免疫学的定量法を利用して、MT1−MMPの発現などのMT−MMPの発現を促進または阻害する化合物をスクリーニングすることを特徴とするスクリーニング方法が提供される。該スクリーニング方法では、例えば、MT−MMP(例えば、MT1−MMP)を発現する培養細胞、形質転換されたMT−MMP(例えば、MT1−MMP)発現細胞、あるいはトランスジェニックマウスなどのトランスジェニック動物を、任意の生理活性因子、薬剤、化合物などの存在下に維持し、無処理の場合と対照させ、該MT−MMP(例えば、MT1−MMP)の免疫学的定量法により試料中のMT−MMP(例えば、MT1−MMP)の量につき測定を行うことにより、MT−MMP(例えば、MT1−MMP)産生量などの増減を比較して各添加物の効果を評価する。該スクリーニング方法に付される添加物としては、MT−MMP(例えば、MT1−MMP)の発現を促進または阻害する機能をもつ候補のものであれば何らの制限もなくいかなるものであってもよく、それらは公知のものでも新規のものでもよい。該添加物としては、遺伝子の発現制御に関わるもの、MT−MMP(例えば、MT1−MMP)のアンチセンスRNAなどのアンチセンス核酸、MT−MMP(例えば、MT1−MMP)のmRNAを配列依存的に切断するリボザイムなどが考えられる。添加物は、培養液中に直接あるいはハプテン化して添加しても良いし、それぞれを発現する遺伝子を細胞内に導入しても良い。MT−MMP(例えば、MT1−MMP)の発現を強力に、かつ特異的に抑制するアンチセンスRNAなどの核酸やリボザイムの設計および選択にMT−MMP(例えば、MT1−MMP)免疫学的定量法は有用である。MT−MMP(例えば、MT1−MMP)発現抑制剤は、癌転移抑制に対する医薬として有用である。
また、本発明のMT−MMP(例えば、MT1−MMP)の免疫学的定量法は、癌検査または癌転移検査、さらにはリウマチ性関節炎またはアルツハイマーの進行度検査に有用であり、癌検査または癌転移検査用薬、さらにはリウマチ性関節炎またはアルツハイマーの進行度検査薬も提供される。特に、MT−MMP(例えば、MT1−MMP)免疫学的定量試薬は、癌検査または癌転移検査用薬、さらにはリウマチ性関節炎またはアルツハイマーの進行度検査薬として有用である。
本発明では、固相化された抗MT1−MMP抗体などの固相化抗MT−MMP抗体、特には固相化されたモノクローナル抗MT1−MMP抗体などの固相化されたモノクローナル抗MT−MMP抗体が提供される。該固相化された抗MT1−MMP抗体(例えば、固相化されたモノクローナル抗MT1−MMP抗体)などの固相化抗MT−MMP抗体を使用して、試料中のMT1−MMPの酵素活性をスクリーニングすることが可能である。該スクリーニング法では、例えば反応容器などに固相化された抗MT1−MMP抗体(例えば、固相化されたモノクローナル抗MT1−MMP抗体)などの抗MT−MMP抗体に、MT1−MMPを含む試料などのMT−MMPを含む試料を接触せしめ、抗原抗体反応を介して、該固相化された抗MT1−MMP抗体にMT1−MMPを捕捉させるなど固相化抗MT−MMP抗体にMT−MMPを捕捉させ、次にMT1−MMPの酵素活性などMT−MMPの酵素活性を測定することなどにより行われる。酵素活性の測定には、例えばMT1−MMPの基質などMT−MMPの基質を使用し、酵素反応の結果生ずるシグナルを検知あるいは測定することなどにより行うことができる。特に、可溶型MT−MMPを定量でき、その量と腫瘍の悪性度及び癌の転移能との相関関係を求めることを可能にする。別の面では、本発明では、固相化されたMT1−MMPなどの固相化されたMT−MMPが提供される。特には、免疫学的方法で固相化されたMT1−MMPが提供される。該固相化されたMT1−MMPなどのMT−MMPは、例えばMT1−MMP活性阻害剤、その他のMT−MMP活性阻害剤などの試料の存在下あるいは非存在下にMT1−MMPの基質などのMT−MMPの基質と接触せしめ、酵素反応の結果生ずるシグナルを検知あるいは測定することなどによりスクリーニングに使用できる。代表的な固相化MT−MMPとしては、例えば反応容器などに固相化されたものが挙げられる。
MT1−MMPに代えて、MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMP,MT6−MMPなどのMT−MMPについても、同様に、行うことができることは明らかである。
かくして、本発明では、MT−MMPの活性測定およびMT−MMP活性阻害剤の検索が可能である。特に、本発明では、MT1−MMPの活性測定およびMT1−MMP活性阻害剤の検索が可能である。上記の方法において、試料のMT1−MMPなどのMT−MMPを特異的に固相化し、その活性を検出することができ、さらにそのためのスクリーニング試薬が提供される。また、得られたMT1−MMP活性などのMT−MMP活性から癌の浸潤能あるいは転移能を評価できる。したがって、検体癌組織の浸潤能を想定することができ、またそのための試薬が提供される。また、治療を施した癌組織の浸潤能の変動を想定したり、MT1−MMPの産生を抑制し浸潤能を低下あるいは消失させる医薬の選択や薬剤の検索などに有用である。また、一方では、上記の方法において、一定の活性レベルを有する標準MT1−MMPを用い、これに対して各種の酵素活性阻害剤、MMPs阻害剤あるいは任意の化合物を添加せしめ、MT1−MMPに対する阻害活性を測定することができる。この方法を用いれば、未知のMT1−MMP阻害剤の検索やBatimastat、Marimastat、Ro32−3555、AG3340、Bay12−9566、CGS27023Aなど既存のMMP活性阻害剤(ヒドロキサム酸、カルボン酸、ホスホン酸、チオールの誘導体などを包含していてよく、例えば、国際公開第WO 97/27174号(WO 97/27174),WO 97/20824,英国特許公開明細書第2268934号(GB 2268934 A又は米国特許明細書第5310763号(US 5310763)),US 5268384,US 5455258,WO 96/11209,WO 97/18207,WO 97/32846,WO 98/17643,特開平7−101925号公報,US 5614625,WO 98/30551,WO 98/43963,WO 96/15096,WO 96/33174,WO 96/33968,WO 99/31052,国際出願PCT/JP00/03166号などに開示されている)が持つMT1−MMP阻害剤能を知ることができる。MT1−MMPに代えて、MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMP,MT6−MMPなどのMT−MMPについても、同様に、行うことができることは明らかである。
酵素活性あるいは酵素阻害活性の測定は、通常の測定法に準じて実施することができる。また、各種標識、緩衝液系その他適当な試薬等を使用したりすることもできる。方法を行うにあたっては、MT−MMPsをアミノフェニル酢酸水銀などの活性化剤で処理したり、その前駆体あるいは潜在型のものを活性型のものに予め変換しておくこともできる。個々の測定にあたっては、それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて、適切な測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる〔例えば、Methods in Enzymology,Vol.1&2(Preparation and Assay of Enzymes),Academic Press,New York(1955);Methods in Enzymology,Vol.5(Preparation and Assay of Enzymes),Academic Press,New York(1962);Methods in Enzymology,Vol.6(Preparation and Assay of Enzymes),Academic Press,New York(1963);Methods in Enzymology,Vol.3(Preparation and Assay of Substrates),Academic Press,New York(1957);Methods in Enzymology,Vol.4(Special Techniques for the Enzymologist),Academic Press,New York(1957);Methods in Enzymology,Vol.19(Proteolytic Enzymes),Academic Press,New York(1970);Methods in Enzymology,Vol.45(Proteolytic Enzymes,Part B)Academic Press,New York(1976);Methods in Enzymology,Vol.80(Proteolytic Enzymes,Part C)Academic Press,New York(1982);Methods in Enzymology,Vol.248(Proteolytic Enzymes:Aspartic and Metallo Peptidases)Academic Press,New York(1995)などあるいはそこで引用された文献(それらの中にある記載はそれを参照することにより本明細書の開示に含められる)〕。
本発明の測定法及びスクリーニング法で有用な試薬あるいは試薬セット、さらにはキット(スクリーニングキットなど)も有用である。該キットは、組成物用の有効な成分を1又はそれ以上を充填した1又はそれ以上の容器を含む、例えば免疫測定などの測定分野あるいは医薬分野で許容されるパック及びキットである。代表的には、このような(単一あるいは複数の)容器と一緒に、臨床検査あるいは医薬又は生物学的産物の製造、使用又は販売を規制する政府機関により指示された形態の注意書(文書)であって、ヒトなどに関連した製品の製造、使用又は販売に関する該政府機関の承認を示している注意書(添付文書)が添付されていてよいものである。
本発明のスクリーニング法で得られた活性成分〔例えば、(a)MT1−MMPなどのMT−MMPの発現を促進または阻害する化合物あるいはその塩など、(b)MT1−MMPなどのMT−MMPの酵素活性を促進または阻害する化合物あるいはその塩など〕を医薬として用いる場合、それらは、通常単独或いは薬理的に許容される各種製剤補助剤と混合して、医薬組成物又は医薬調製物などとして投与することができる。好ましくは、経口投与、局所投与、または非経口投与等の使用に適した製剤調製物の形態で投与され、目的に応じていずれの投与形態(吸入法、あるいは直腸投与も包含される)によってもよい。
また、本発明の活性成分は、抗腫瘍剤(抗癌剤)、腫瘍転移阻害剤、消炎剤及び/又は免疫抑制剤と配合して使用することもできる。抗腫瘍剤(抗癌剤)、腫瘍転移阻害剤、消炎剤や免疫抑制剤としては、有利な働きを持つものであれば制限なく使用でき、例えば当該分野で知られたものの中から選択することができる。医薬用の組成物は通常の方法に従って製剤化することができる。例えば、適宜必要に応じて、生理学的に認められる担体、医薬として許容される担体、アジュバント剤、賦形剤、補形剤、希釈剤、香味剤などを単独もしくは組合わせて用い、それとともに本発明の活性成分等を混和することによって、一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態にして製造することができる。
本発明の活性成分は、その投与量を広範囲にわたって選択して投与できるが、その投与量及び投与回数などは、処置患者の性別、年齢、体重、一般的健康状態、食事、投与時間、投与方法、排泄速度、薬物の組み合わせ、患者のその時に治療を行なっている病状の程度に応じ、それらあるいはその他の要因を考慮して決められる。
医薬品製造にあたっては、その添加剤等や調製法などは、例えば日本薬局方解説書編集委員会編、第十四改正 日本薬局方解説書、平成13年6月27日発行、株式会社廣川書店;一番ヶ瀬 尚 他編 医薬品の開発12巻(製剤素剤〔I〕)、平成2年10月15日発行、株式会社廣川書店;同、医薬品の開発12巻(製剤素材〔II〕)平成2年10月28日発行、株式会社廣川書店などの記載を参考にしてそれらのうちから必要に応じて適宜選択して適用することができる。
明細書及び図面において、用語は、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによるか、あるいは当該分野において慣用的に使用される用語の意味に基づくものである。代表的な用語の意味を以下に示す。
bp:base pair(s);
IPTG:isopropyl−1−thio−β−D−galactopyranoside;
SDS:sodium dodecyl sulfate;
LB:Luria−Bertani
TAB:3,3’,5,5’−tetramethylbenzidine
BSA:bovine serum albumin
ELISA:enzyme−linked immunosorbent assay
HRP:horseradish peroxidase
PAGE:polyacrylamide gel electrophoresis
EDTA:ethylenediaminetetraacetic acid
後述の実施例2(表1)に記載のモノクローナル抗MT1−MMP抗体を産生するハイブリドーマ:222−1D8は、平成12年10月26日(原寄託日)から茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)の独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(National Institute of Advanced Industrial Science and Technology,International Patent Organism Depositary:IPOD:旧住所は茨城県つくば市東1丁目1番3号(郵便番号305−8566)で、旧名称は通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(NIBH))に寄託されており(受託番号 FERM P−18085)、平成13年11月12日に原寄託よりブダペスト条約に基づく寄託への移管請求がなされ、受託番号 FERM BP−7795としてIPODに保管されている。同様に、後述の実施例2(表1)に記載のモノクローナル抗MT1−MMP抗体を産生するハイブリドーマ:222−2D12は、平成12年10月26日(原寄託日)からIPODに寄託されており(受託番号 FERM P−18086)、平成13年11月12日に原寄託よりブダペスト条約に基づく寄託への移管請求がなされ、受託番号 FERM BP−7796としてIPODに保管されている。
実施例
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。
全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。なお、ベクター、制限酵素などは、宝酒造(株)などから入手したものを使用した。
実施例1 組換えMT1−MMPの調製
各種組換えMT1−MMPを調製し、免疫、モノクローナル抗体のスクリーニング、ウエスタンブロッティング、ELISAなどに用いた。
▲1▼ 大腸菌由来組換えΔMT1−MMP(免疫抗原)
a)発現ベクターの構築
J.Cao et al.,J.Biol.Chem.,270:801−805(1995)記載の方法により作製した動物細胞用発現ベクターpSGΔMT1−MMPよりΔMT1−MMP遺伝子を制限酵素SmaIおよびBglIIで切り出し、制限酵素SmaIおよびBamHIで切断したpUC18のβ−ガラクトシダーゼにインフレームで連結し、発現ベクターpUCΔMT1−MMPを構築した。この発現ベクターにより、β−ガラクトシダーゼの11アミノ酸残基とシグナルペプチドおよびプロペプチド領域の一部(47アミノ酸残基)を欠損したΔMT1−MMP(G48−G535)の488アミノ酸残基、計499アミノ酸残基からなる分子量約55kDaの融合タンパク質を発現せしめた。なお、MT1−MMPをコードしているDNAは、例えばJ.Cao et al.,J.Biol.Chem.,270: 801−805(1995);K.Imai et al.,Cancer Research,56:2707−2710(1996)などに記載があり、それらの中にある記載はそれを参照することにより本明細書の開示に含められる。
b)融合タンパク質の発現
pUCΔMT1−MMPを含む大腸菌DH5αを4mLの50μg/mL Ampicillinを含むLB培地に接種、37℃で16時間培養し、1次カルチャーを調製した。これを400mLの50μg/mL Ampicillinを含むLB培地に再接種、37℃でおよそ3時間、対数増殖期中期まで培養した。IPTG(最終濃度0.1mM)を添加し、さらに4時間培養を継続し、組換え融合タンパク質の発現を誘導した。
c)組換え体の精製−1(inclusion bodyの回収と可溶化)
培養液を直ちに氷冷し、遠心(5,000rpm、20min)で菌体を回収、20mLの1mg/mL lysozyme含有20mM Tris−HCl(pH8.0)に懸濁し15分間、氷中に置いて細胞壁を破壊した。菌体懸濁液を氷冷下で超音波破砕(30秒、10回)、遠心(18,000rpm、10min)してinclusion bodyを回収した。Inclusion bodyを1mLの0.1M NaCl含有10mM リン酸緩衝液(pH7.0)で再懸濁し、洗浄、遠心(15,000rpm、10min)して沈殿を回収、これを1mLの8M urea、0.1M NaCl含有10mM リン酸緩衝液(pH7.0)に溶解した。
d)組換え体の精製−2(preparative SDS−PAGEおよび電気溶出)
前項で調製した溶解画分に1/5体積の6×SDS−PAGE Sample buffer(還元)を加え、37℃で1時間置いた後、preparative SDS−PAGEに供した。90×70×1mmのゲルに対し0.6mLのサンプルを展開した。泳動終了後、ゲルを3M KClに浸し、タンパク質バンドを可視化し、組換えΔMT1−MMPのバンドを切り出した。切り出したゲルを細断、SDS−PAGE泳動バッファーで洗浄した後、電気溶出用カラムに入れ、200V(定電圧)で4時間通電して組換えタンパク質を回収した。これに最終濃度10mMとなるようにデオキシコール酸(DOC)を加え、16時間低温室に置き、SDSをDOCで置換、さらに0.1M NaCl含有50mMリン酸緩衝液(pH7.0)に透析して過剰のSDSおよびDOCを除去した。透析中に発生した沈殿物を遠心で除き、上清を限外濾過で濃縮した。400mLの大腸菌培養から得られた可溶性組換えΔMT1−MMP(Lot GV01)は2.6mg(2mg/mL×1.3mL)であった。
▲2▼COS−7由来組換えMT−MMPs
pSG5に挿入されたMT1−MMPのcDNAをリン酸カルシウム法でCOS−7に導入し、48時間の発現の後、細胞を回収した。細胞をPBSで洗浄した後、0.5mLのPBSに再懸濁し、超音波破砕した。得られた細胞破砕物に1/5体積の6×SDS−PAGE Sample buffer(還元剤含有)を加え、SDS−PAGEおよびウエスタンブロッティングの抗原検体とした。同様にして、pSG5に挿入されたMT2−MMP(マウス)のcDNAおよびpSG5に挿入されたMT3−MMPのcDNAを用い、それぞれ同様に処理し、抗原検体を得た。これらは、モノクローナル抗体の交叉反応性の検討に用いた。
▲3▼ 大腸菌由来リフォールド組換えΔMT1−MMP(ΔMT1−MMPRF)
実施例1で構築したpUCΔMT1−MMPよりΔMT1−MMP遺伝子を制限酵素KpnIおよびHindIIIで切り出し、pTrcHisにインフレームで連結した発現ベクターpTrcHisΔMT1−MMPを構築した。この発現ベクターで大腸菌を形質転換し、組換えタンパク質を発現させた。
上記の組換え大腸菌(400mL培養)より調製した不溶性封入体を8M urea、0.5M NaCl、10mM imidazole含有50mMリン酸緩衝液(pH7.5)で可溶化し、Ni++Chelating Sepharose(Pharmacia)ゲルカラムに供した。洗浄後、8M urea、0.5M NaCl、0.5M imidazole含有50mM リン酸緩衝液(pH7.5)で溶出、得られた精製画分を8M urea、0.3M NaCl含有20mM Tris−HCl(pH8.6)で平衡化したPD−10(Pharmacia)ゲルカラムに供し緩衝液を交換した。これに50μM ZnSO4および1mM DTTを添加した後、A280を測定し、8M urea、0.3M NaCl、50μM ZnSO4、1mM DTT含有20mM Tris−HCl(pH8.6)を用いてA280が0.1となる様に希釈した。これに20mM cysteaminを添加し、リフォールディング用サンプル(50mL)とした。これを5Lの0.15M NaCl、5mM CaCl2、100μM ZnSO4、5mM 2−mercaptoethanol、1mM hydroxyethyl disulfide、0.02% NaN3含有50mM Tris−HCl(pH8.6)で16時間透析、さらに0.15M NaCl、5mM CaCl2、50μM ZnSO4、0.02% NaN3含有50mM Tris−HCl(pH8.6)で透析し(4時間、3回)、リフォールディングした。
透析後のサンプルを遠心し、不溶化したタンパク質を除去、A280を測定しタンパク質量を見積った。得られたΔMT1−MMPRFの量はおよそ1.6mgであった。さらに一部をとって、0.1μg/mLのトリプシンと37℃で1時間処理した。SDS−PAGEで分析したところ、ΔMT1−MMP(58kDa)、ヘモペキシンドメイン(30、34kDa)、触媒ドメイン(21kDa)のバンドが検出された。これを濃縮しエピトープマッピングおよびELISA評価用抗原として使用した。
実施例2 抗体の作製と選択
▲1▼ 免疫スケジュール
免疫動物:6週齢BALB/c雌、2匹
精製抗原:2mg/ml ΔMT1−MMP(実施例1▲1▼−d)で得られたもの)0.1M NaCl含有50mM リン酸緩衝液(pH7.0)
初回免疫:58μg/290μl/マウス(完全フロイントアジュバント)腹
腔内投与
追加免疫:20日後 64μg/160μl/マウス 腹腔内投与
追加免疫:35日後 54μg/160μl/マウス 腹腔内投与
最終免疫:69日後 73.3μg/160μl/マウス 静脈内投与
最終免疫の3日後(72日後)に細胞融合
すなわち、上記精製ΔMT1−MMP抗原(58μg/290μl)を完全フロイントアジュバントと共に6週齢BALB/c雌マウスに腹腔内投与し、初回免疫した。20日後上記精製抗原(64μg/160μl)を初回免疫したマウスに腹腔内投与し、追加免疫した。さらに35日後上記精製抗原(54μg/160μl)を腹腔内投与し、追加免疫し、次に、69日後上記精製抗原(73.3μg/160μl)を静脈内投与し、最終免疫とした。その3日後(全体で72日後)に免疫したマウスから脾臓を摘出し、脾細胞懸濁液を調製した。
▲2▼ 細胞融合とハイブリドーマのスクリーニング
細胞融合には、以下の材料および方法を用いた。
RPMI−1640培地:RPMI−1640(Flow Lab.)に重炭酸ナトリウム(24mM)、ピルビン酸ナトリウム(1mM)、ペニシリンGカリウム(50U/ml)、硫酸アミカシン(100μg/ml)を加え、ドライアイスでpHを7.2にし、0.2μm東洋メンブレンフィルターで除菌ろ過した。NS−1培地:上記RPMI−1640培地に除菌ろ過したウシ胎児血清(FCS,M.A.Bioproducts)を15%(v/v)の濃度になるように加えた。
PEG−4000溶液:RPMI−1640培地にポリエチレングリコール−4000(PEG−4000,Merk&Co.)を50%(w/w)になるように加えた無血清培地を調製した。
8−アザグアニン耐性ミエローマ細胞SP−2(SP−2/0−Ag14)との融合は、Selected Method in cellular immunology p351〜372(ed.B.B.Mishell and S.N.Shiigi),W.H.Freeman and Company(1980)に記載のOi & Herzenbergらの方法を若干改変して行った。
前記で調製した有核脾細胞(生細胞率100%)とミエローマ細胞(生細胞率100%)とを5:1〜10:1の比率で以下の手順で融合した。それぞれの精製ΔMT1−MMP抗原免疫脾細胞懸濁液とミエローマ細胞をそれぞれRPMI1640培地で洗浄した。次に同じ培地に懸濁し、融合させるために有核脾細胞とミエローマ細胞を混合した。
次に、それぞれの細胞混合液を遠心分離により細胞を沈殿させ、上清を完全に吸引除去した。沈殿した細胞に37℃に加温した50% PEG−4000含有RPMI−1640培地(ミエローマ細胞がおおよそ107個/mLとなるよう体積を決定する)を1分間で滴下し、1分間撹拌し、細胞を再懸濁、分散させた。次に添加した50% PEG−4000含有RPMI−1640培地の2倍体積の37℃に加温したRPMI−1640培地を2分間で滴下した。さらに添加した50% PEG−4000含有RPMI−1640培地の7倍体積のRPMI−1640培地を2〜3分間で常に撹拌しながら滴下し、細胞を分散させた。これを遠心分離し、上清を完全に吸引除去した。次に、ミエローマ細胞がおおよそ106個/mLとなるように37℃に加温したNS−1培地を沈殿した細胞に速やかに加え、大きい細胞塊を注意深くピペッティングで分散した。さらに同培地を加えて希釈し、ポリスチレン製96穴マイクロウエルにウエル当りのミエローマ細胞の数を調整して接種した。それぞれの細胞を加えた上記マイクロウエルを7%炭酸ガス/93%空気中で温度37℃、湿度100%で培養した。
次に、選択培地によるハイブリドーマの選択的増殖を行った。
(1)使用する培地は以下の通りである。
HAT培地:前記で述べたNS−1培地に更にヒポキサンチン(100μM)、アミノプテリン(0.4μM)およびチミジン(16μM)を加えた。HT培地:アミノプテリンを除去した以外は上記HAT培地と同一組成のものである。
(2)前記の培養開始後翌日(1日目)、細胞にパスツールピペットでHAT培地2滴(約0.1ml)を加えた。2、3、5、8日目に培地の半分(約0.1ml)を新しいHAT培地で置き換え、10日目に培地の半分を新しいHT培地で置き換えた。11日目以降にハイブリドーマの生育が肉眼にて認められた全ウエルについて固相−抗体結合テスト法(ELISA)により陽性ウエルを調べた。まず、100ng/ウエルで免疫抗原をコートしたポリスチレン製96穴プレート(0.05% Tween20含有PBSを用いて洗浄して未吸着の抗原タンパク質を除いてある)の各ウエルにハイブリドーマの生育が確認されたウエルの培養上清を添加し、室温で約1時間静置した。洗浄後、2次抗体として西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)標識ヤギ抗マウス免疫グロブリン(Cappel)を加え、さらに室温で約1時間静置した。洗浄後、基質である過酸化水素と3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)を加え、発色の程度をマイクロプレート用吸光度測定機(MRP−A4、東ソー)を用いて450nmの吸光度で測定した。15クローンを選択できた。
▲3▼ ハイブリドーマのクローニング
上記で得られた免疫抗原に対し陽性のウエル中のハイブリドーマを、限界希釈法を用いてモノクローン化した。すなわち、NS−1培地中にフィーダーとしてマウス胸腺細胞を含むクローニング培地を調製し、96穴マイクロウエルにハイブリドーマを、ウエル当り5個、1個、0.5個になるように希釈し、それぞれ36穴、36穴、24穴に加えた。3〜7日目、8〜15日目に全ウエルにNS−1培地を追加した。クローニング開始後約1〜3週間で、肉眼的に十分なハイブリドーマの生育を認めたら、コロニー形成陰性ウエルが50%以上である群について上記スクリーニング法(ELISA)を行った。調べた全ウエルが陽性でない場合、抗体陽性ウエル中のコロニー数が1個のウエルを4〜6個選択し、再クローニングを行った。最終的に免疫抗原に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得た。15クローンを選抜した。
▲4▼ モノクローナル抗体のサブクラスアッセイ
15クローンについてサブクラスを決定した。前述したELISAに従い、それぞれ免疫抗原をコートしたポリスチレン製96穴プレートに、上記で得られたハイブリドーマの上清を加えた。次にPBSで洗浄後、アイソタイプ特異的ウサギ抗マウスIgG抗体(Zymed Lab.)を加えた。PBSにより洗浄後、西洋わさびペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ウサギIgG(H+L)を加え、基質として過酸化水素および2,2’−アジノ−ジ(3−エチルベンゾチアゾリン酸)を用いてクラス、サブクラスを決定した。
▲5▼イムノブロッティングによる選択
反応性試験−1:
免疫抗原を12% SDS−PAGEで展開、ナイロンメンブレンに転写、各ハイブリドーマ培養上清を1次抗体として添加、抗マウスIg(G+A+M)−HRPを2次抗体として使用、染色した。全15クローンのうち8クローンを陽性と判定し、2次選択に供した。これら8クローンのサブクラスは、4クローンがIgG1/κ、1クローンがIgG3/κ、3クローンがIgMであった。
反応性試験−2:
前項で陽性と判定した8クローンについて、組換えMT1−MMPを発現するCOS−7の細胞破砕物を抗原としたウエスタンブロッティングでさらに選択を行い、反応性の弱い3クローン(表1中の(+))を除外した。これらはいずれもIgMであった。最終的に得られたクローンは5種で、サブクラスはIgG1/κが4種、IgG3/κが1種であった。
▲6▼ ハイブリドーマの培養とモノクローナル抗体の精製
得られたハイブリドーマ細胞をNS−1培地で培養し、その上清から濃度10〜100μg/mlのモノクローナル抗体を得ることができる。また、得られたハイブリドーマ107個を予め1週間前にプリスタンを腹腔内投与したマウス(Balb/c系、雌、6週齢)に同じく腹腔内投与し、1〜2週間後、腹水中からも4〜7mg/mlのモノクローナル抗体を含む腹水を得ることができる。得られた腹水を40%飽和硫酸アンモニウムで塩析後、IgGクラスの抗体をプロテインAアフィゲル(Bio−Rad)に吸着させ、0.1Mクエン酸緩衝液(pH5.0)で溶出することにより精製する。
本発明では、上記で得られたモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞(5クローン)をマウス腹腔に投与し、それぞれの抗体を含有する腹水を調製した。得られた腹水を硫安分画、アフィゲル プロテインAゲルカラムに供し、精製モノクローナル抗体を得た。
サブクラスアッセイ、反応試験−1および2の結果を表1にまとめた。
実施例3 抗体の反応性
▲1▼エピトープマッピング
実施例1−▲3▼で調製したΔMT1−MMP(58kDa)およびヘモペキシンドメイン(30kDa,34kDa)、触媒ドメイン(21kDa)の断片を抗原としたウエスタンブロッティングでエピトープマッピングを実施した。実施例2で選択した5クローンを1次抗体として添加、抗マウスIg(G+A+M)−HRPを2次抗体として使用、染色した。いずれのクローンもヘモペキシンドメインと強く反応し、これらのエピトープがヘモペキシンにあることが確認された(図1参照)。
▲2▼交叉反応性
実施例1−▲2▼で調製したMT1−MMP発現COS−7の細胞破砕物、MT2−MMP(マウス)発現COS−7の細胞破砕物およびMT3−MMP発現COS−7の細胞破砕物を抗原として用い、ウエスタンブロッティングで交叉反応試験を実施した。実施例2で選択した5クローンを1次抗体として添加、抗マウスIg(G+A+M)−HRPを2次抗体として使用、染色した。いずれのクローンもMT1−MMPとのみ反応し、MT2−MMP(マウス)およびMT3−MMPとは反応せず、MT1−MMPに特異性を持つことが確認された(図2参照)。
実施例4 MT1−MMPの測定
各抗体を固相化した96穴マイクロウエル中で、標準抗原(組換えΔMT1−MMP)を反応させた。洗浄後、各抗体のIgG−HRPと反応させ、続いて未反応のIgG−HRPを洗浄除去した。抗原を介して結合したIgG−HRPの残存活性を、TMBを基質として測定した。最も抗原を良く検出した固相抗体222−2D12と標識抗体222−1D8の組み合わせを見出し、さらに、使用する抗体の濃度、反応時間、反応温度、反応緩衝液の組成など詳細に検討した。標識抗体はIgG−HRPにかえて、Fab’−HRPを新たに作製し用いた。その結果、以下に示す方法において最も効率良くMT1−MMPが測定できた。
▲1▼ 標識抗体
標識抗体Fab’−HRPは次のようにして調製できる。例えば、モノクローナル抗体を0.1M NaClを含む0.1M 酢酸ソーダ緩衝液(pH4.2)に抗体量の2%(W/W)のペプシンを加え、37℃で20時間消化した。消化物に3M Tris−HCl緩衝液(pH7.5)を添加し、反応を停止した。0.1M リン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したウルトロゲルAcA54カラムによるゲルろ過でF(ab’)2画分を分取した。このF(ab’)2画分に最終濃度0.01Mとなるようにシステアミン塩酸塩を添加し、37℃、1.5時間還元し、5mM EDTA含有0.1M リン酸緩衝液(pH6.0)で平衡化したウルトロゲルAcA54カラムによるゲルろ過でFab’画分を分取した。
上記の操作とは別にHRPを0.1M リン酸緩衝液(pH7.0)に溶解、HRPの25倍モル量のBMCSをDMF溶液として加え、30℃、30分間反応させた。これを0.1M リン酸緩衝液(pH6.0)で平衡化したNICK−5カラム(Pharmacia)でゲルろ過しマレイミド標識HRP画分を分取した。
Fab’画分とマレイミド標識HRPを等モルとなるように両画分を混合し、4℃、20時間反応させた後、Fab’の10倍モル量のN−エチルマレイミドで未反応のチオール基をブロックした。これを0.1M リン酸緩衝液(pH6.5)で平衡化したウルトロゲルAcA54カラムでゲルろ過し、Fab’−HRP標識抗体を分取した。これに0.1% BSAおよび0.001%クロルヘキシジンを添加して4℃で保存した。
▲2▼ 抗体固相化プレート:
モノクローナル抗体(例えば、222−2D12(IgG))を0.1M リン酸緩衝液(pH7.0)で25μg/mLに調製し、96穴マイクロウエル(MAXISORP、NUNC−IMMUNO MODULE)あたり100μLずつ加え、4℃、24時間静置した。次に抗体溶液を除去し、洗浄液(0.1% Tween20、0.1M NaCl含有10mM リン酸緩衝液(pH7.0))で3回洗浄後、ブロッキング液(1% BSA、10mM EDTA、0.1M NaCl含有30mM リン酸緩衝液(pH7.0))を96穴マイクロウエルあたり0.3mLずつ加え、4℃で保存した。
▲3▼ 標準抗原:
実施例1で精製したΔMT1−MMPを希釈用緩衝液(0.45% SDS,0.4% 2−メルカプトエタノール,3% ウマ血清,1% BSA,10mM EDTA,0.1M NaCl含有30mM リン酸緩衝液(pH7.0))で160ng/mLに調製した。これを希釈用緩衝液で段階希釈して80,40,20,10,5および2.5ng/mLの標準抗原溶液を調製した。
▲4▼ 測定検体:
測定検体は、必要に応じて希釈用緩衝液で希釈した。
▲5▼ 1次反応:
標準抗原あるいは測定検体を96穴ビニルプレートに25μLずつ加えた。これに希釈用緩衝液100μLを加え混和、これより100μLとって、予めブロッキング液を除去・洗浄した抗体固相化プレートに入れ、4℃で16時間静置した。
▲6▼ 2次反応:
標識抗体222−1D8(Fab’−HRP)をブロッキング液で0.4μg/mLに調製した。1次反応が終了した抗体固相化プレートから反応液を除去し洗浄液で3回洗浄後、標識抗体液をウエルあたり100μLずつ加え、室温で1時間静置した。
▲7▼ 発色:
反応終了後、標識抗体液を除去、洗浄液で3回洗浄し、TMB溶液(CALBIOCHEM)をウエルあたり100μLずつ加え、室温で20分間反応した。これに2N硫酸をウエルあたり100μLずつ加え反応を停止した。この反応混液のA450をマイクロプレートリーダー(MPR−A4、東ソー)を用いて測定した。
上記の方法で得られた標準曲線の例を図3に示した。MT1−MMPサンドイッチEIAの感度は、0.32ng/mL(6.4pg/ウエル)、また0.63−160ng/mL(0.013−3.2ng/ウエル)の範囲で直線性が認められた。
実施例5 MT1−MMPサンドイッチEIAの性能
▲1▼ 希釈試験による検体量の決定
血清、関節液それぞれに標準抗原を添加して作成した検体を希釈、実施例4に記載した方法に従って測定した。血清検体を10、20、30μL/wellとなるように希釈し測定した。検体量を20μL/well以下にした場合、加えた標準抗原の90%以上が回収されたことから、血清検体の測定は20μL/wellで設定した。関節液検体を0.625,1.25,2.5,5μL/wellとなるように希釈し測定した。検体量を2.5μL/well以下にした場合、加えた標準抗原の80%以上が回収されたことから、関節液検体の測定は2.5μL/wellで設定した(表2)。
▲2▼添加回収試験
血清、関節液、培養上清(Con A処理したMDA−MB−231)、細胞抽出画分(Con A処理したMDA−MB−231)のそれぞれに標準抗原を添加し、実施例4に記載した方法に従って測定し添加した標準抗原の回収率を調べた。測定結果例を表3に示した。血清、培養上清、細胞抽出画分では90%以上、関節液では80%以上の回収率が確保された。
▲3▼同時再現性
a)血清に標準抗原を添加して調製した検体(3種)について、実施例4に記載した方法に従い、同時に測定した(n=8)。CV値は2.5〜3.4%を示した(表4)。
b)Con A処理したMDA−MB−231の培養上清および細胞抽出画分について、実施例4に記載した方法に従い、同時に測定した(n=6)。CV値は6.9%及び9.5%を示した(表5)。
▲4▼測定間差
a)血清に標準抗原を添加して調製した検体(3種)について、実施例4に記載した方法に従って、8回測定した。CV値は3.1〜5.0%を示した(表6)。
b)Con A処理したMDA−MB−231の培養上清および細胞抽出画分について、実施例4に記載した方法に従って、6回測定した。CV値は7.1%および10.2%を示した(表7)。
▲5▼特異性試験
MMP−1,2,3,7,8,9,13,19,20をそれぞれ1μg/mLに調製し、MT1−MMPサンドイッチEIAに供しA450を測定した結果を表8に示した。MT1−MMPを0.16μg/mLでサンドイッチEIAに供した場合、2.206の吸光値を示したのに対しこれらのMMPは、0.024〜0.071程度の吸光値しか示さなかった。従って、MT1−MMPサンドイッチEIAは、MT1−MMPと特異的に反応することが確認された。
本発明のモノクローナル抗体を少なくとも1種含む抗体の組み合わせによってMT1−MMPを特異的に検出・測定するサンドイッチEIA系が構成できる。EIA系は1ステップ法、2ステップ法のいずれも可能であり、標識抗体はFab’−HRPに限定されない。各反応緩衝液の組成や反応条件は測定の目的に応じて、短縮、延長など調整できる。標準品となるMT1−MMPは、組織培養上清、細胞培養上清または実施例1記載の方法あるいはそれ以外の方法で発現した組換え体から精製することができる。精製にはイオン交換、ゲルろ過、モノクローナル抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーまたそれ以外の各種アフィニティークロマトグラフィーの組み合わせによって達成される。
測定検体は、ヒト血液、血清、血漿、関節液、尿、唾液、脳脊髄液および羊水などヒトに由来する体液成分、各種ヒト組織(各種腫瘍・癌組織を含む)の抽出液、ヒト由来あるいは組換え体など各種培養細胞の細胞抽出液、培養上清などから調製される。
実施例6 MT1−MMPサンドイッチEIAにおける界面活性剤と還元剤の意義
実施例1に記載の方法でΔMT1−MMP遺伝子を導入したΔMT1−MMP発現COS−7を調製した。このCOS−7細胞を培養し、48時間後に培養上清を回収した。培養上清細胞をSDS−PAGEおよびウエスタンブロッティングに供し、ΔMT1−MMPが可溶性分子として存在することを確認した。この培養上清をMT1−MMPサンドイッチEIAに供したところ、十分なシグナル(A450=1.807)が検出された。一方、同じ培養上清をSDSと2−メルカプトエタノールを除いた希釈用緩衝液(3% ウマ血清、1% BSA、10mM EDTA、0.1M NaCl含有30mMリン酸緩衝液(pH 7.0))を用いてMT1−MMPサンドイッチEIAに供したところ、シグナルはおよそ1/14(A450=0.138、表9の上段の表)に低下した。SDSと2−メルカプトエタノールは検体中の抗原に作用し、抗原の高次構造をMT1−MMPサンドイッチEIAで検出可能な構造変化をもたらしたと考えられる。この構造変換にはSDSと2−メルカプトエタノールの共存が必須であった(表9の下段の表)。
実施例7 MT1−MMPを産生する培養細胞株の検索
MT1−MMPを産生するヒト培養細胞株の検索をMT1−MMPサンドイッチEIAで行った。細胞株は、バーキットリンパ腫(Daudi,Namalwa,Raji)、急性リンパ芽球性白血病(T−細胞)(MOLT−4)、慢性骨髄性白血病(K−562)、前骨髄性白血病(HL−60)、繊維肉腫(HT−1080)、乳癌(MDA−MB−231,SK−BR−3,MCF 7)、肺癌(A549)、直腸腺癌(SW 837)、骨肉腫(MG−63)、舌、扁平細胞癌(SSC−25)、子宮頸部癌(HeLa)、頸部表皮癌(CaSki)、前立腺癌(PC−3)、悪性黒色腫(A−375)を用いた。各種癌細胞株を直径10cmのプレートでコンフルエントまで培養、無血清培地あるいはCon A含有無血清培地に交換し48時間後に培養上清および細胞を回収した。細胞は0.5mLの希釈用緩衝液中で超音波破砕し、遠心して得られた上清を細胞抽出画分としてEIAに供した。培養上清はそのままEIAに供した。
測定結果例を表10に示した。
MT1−MMPは、繊維肉腫(HT1080)、乳癌の一部(MDA−MB−231)、直腸腺癌(SW 837)、骨肉腫(MG−63)、舌、扁平細胞癌(SSC−25)、頚部表皮癌(CaSki)などで検出された。
実施例8 MT1−MMPの発現量を変化させる因子・薬剤などの検索
MT1−MMPを発現する培養細胞を任意の生理活性因子や薬剤、化合物を添加して培養した後、培養上清あるいは細胞抽出画分を回収し、MT1−MMPサンドイッチEIAに供する。測定は、無処理の培養細胞から調製したものを対照とし、MT1−MMP産生量の増減を比較して各添加物の効果を評価する。添加物の濃度は、適宜調製する必要がある。添加物としては、遺伝子の発現制御に関わるもの、MT1−MMPのアンチセンスRNA、MT1−MMPのmRNAを配列依存的に切断するリボザイムなどが考えられる。添加物は、培養液中に直接あるいはハプテン化して添加しても良いし、それぞれを発現する遺伝子を細胞内に導入しても良い。MT1−MMPの発現を強力に、かつ特異的に抑制するアンチセンスRNAやリボザイムの設計および選択にMT1−MMPサンドイッチEIAは有用である。MT1−MMP発現抑制剤は、癌転移抑制に対する医薬として有用である。
実施例9 MT1−MMPの活性測定およびMT1−MMP活性阻害剤の検索
抗MT1−MMPモノクローナル抗体を0.1Mリン酸緩衝液(pH 7.0)で25μg/mLに調製し、96穴マイクロウエルあたり100μLずつ加え、4℃、24時間静置する。次に抗体溶液を除去し、洗浄液(0.1%Tween 20,0.1M NaCl含有10mMリン酸緩衝液(pH7.0))で3回洗浄後、ブロッキング液(1% BSA,10mM EDTA,0.1M NaCl含有30mMリン酸緩衝液(pH7.0))を96穴マイクロウエルあたり0.3mLずつ加え、4℃で16時間以上静置し保存する。0.1% Tween20,0.1M NaCl含有10mMリン酸緩衝液(pH 7.0)で洗浄後、1% BSA,0.1M NaCl含有30mM リン酸緩衝液(pH 7.0)で希釈したMT1−MMPを含む検体を加え、4℃で16時間静置する。0.1% Tween 20,0.15M NaCl含有20mM Tris−HCl緩衝液(pH 7.4)で洗浄、0.15M NaCl,10mM CaCl2,0.05% Brij35,0.02% NaN3含有50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)で1μMに調製したMca−Pro−Leu−Gly−Leu−Dpa−Ala−Arg−NH2を100μL加え、37℃で1時間静置する。反応液を500μLの0.1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.0)を分注した試験管に採り、反応を停止する。MT1−MMPの蛍光基質分解活性を蛍光強度(FI,Ex:328nm,Em:393nm)として、島津分光蛍光強度計RF−5000で測定する。上記の抗体濃度、蛍光基質の種類と濃度、各種反応液の組成、反応時間、反応温度、反応液量などは必要に応じて適宜変更できる。
▲1▼ MT1−MMPの活性測定
上記の方法において、添加する検体として各種癌組織抽出画分を用いると、各種のMMPsを含有する組織抽出画分からMT1−MMPを特異的に固相化し、その活性を検出することができる。得られたMT1−MMP活性から検体癌組織の浸潤能を想定することができる。また、治療を施した癌組織の浸潤能の変動を想定したり、MT1−MMPの産生を抑制し浸潤能を低下あるいは消失させる医薬の選択や薬剤の検索などに有用である。
▲2▼ MT1−MMP活性阻害剤の検索
上記の方法において、添加する検体を一定の活性レベルを有する標準MT1−MMPを用い、これに対して各種の酵素活性阻害剤、MMPs阻害剤あるいは任意の化合物を添加すれば、それぞれのMT1−MMPに対する阻害活性を測定することができる。この方法を用いれば、未知のMT1−MMP阻害剤の検索やBatimastat、Marimastat、Ro32−3555、AG3340、Bay12−9566、CGS27023Aなど既存のMMP活性阻害剤が持つMT1−MMP阻害剤能を知ることができる。
標準MT1−MMPとしては、実施例1に記載したpUCΔMT1−MMP,pTrcHisΔMT1−MMPを導入した大腸菌から発現される組換えタンパク質、pSGΔMT1−MMPを導入したCOS−1,COS−7,CHO細胞から発現される組換えタンパク質を用いることができる。
pUCΔMT1−MMP,pTrcHisΔMT1−MMPにはMT1−MMPのプロドメインが含まれており、活性測定用の標準MT1−MMPとして用いる場合にはフューリンによってプロドメインを切断、除去し、活性型MT1−MMPに変換する必要がある。活性型MT1−MMPを直接、大腸菌発現で発現させるため、以下の組換え体を作成した。
MT1−MMPのcDNAを鋳型とし、プライマー
と
によって増幅される遺伝子を制限酵素BglIIとKpnIで切断、予めBamHIとKpnIで切断したpQE−32(Qiagen)と連結し、pQE MT1ACTR1を作成した。
さらに、MT1−MMPのcDNAを鋳型とし、プライマー
と
によって増幅される遺伝子を制限酵素BglIIとKpnIで切断、予めBamHIとKpnIで切断したpQE−32(Qiagen)と連結し、pQE MT1ACTR2を作成した。
pQE MT1ACTR1およびpQE MT1ACTR2でコードされるMT1−MMPは、それぞれY112−G507およびY112−G535であり、いずれもプロドメインを欠き、活性型MT1−MMPを発現する。
また、pQE MT1ACTR1は疎水性の高い膜貫通ドメインの全体、pQE MT1ACTR2は膜貫通ドメインの一部を欠くため、発現する組換えタンパク質の可溶性が向上し、活性測定用の標準MT1−MMPとしてより好ましい性質を有する。
活性型組換えMT1−MMPは、実施例1の▲3▼項に記載の方法などで精製し、活性測定用標準MT1−MMPとして供することができる。
▲3▼ 活性型MT1−MMPの調製と活性測定
pQE MT1ACTR1を導入した組換え大腸菌(400mL培養)より調製した不溶性封入体を8M尿素(urea),0.5M NaCl,10mMイミダゾール含有50mMリン酸緩衝液(pH7.5)で可溶化し、Ni++Chelating Sepharoseゲルカラムに供した。洗浄後、8M尿素,0.5M NaCl,0.5Mイミダゾール含有50mMリン酸緩衝液(pH7.5)で溶出し、得られた精製画分を8M尿素,0.3M NaCl含有20mM Tris−HCl(pH8.6)で平衡化したPD−10ゲルカラムに供し緩衝液を交換した。これに50μM ZnSO4および1mM DTTを添加した後、A280を測定し、8M尿素,0.3M NaCl,50μM ZnSO4,1mM DTT含有20mM Tris−HCl(pH8.6)を用いてA280が0.1となる様に希釈した。これに20mMシステアミン(cysteamin)を添加し、リフォールディング用サンプル(50mL)とした。これを5Lの0.15M NaCl,5mM CaCl2,100μM ZnSO4,5mM 2−メルカプトエタノール(2−mercaptoethanol),1mM ヒドロキシエチルジスルフィド(hydroxyethyl disulfide),0.02% NaN3含有50mM Tris−HCl(pH8.6)で16時間透析、さらに0.15M NaCl,5mM CaCl2,50μM ZnSO4,0.02% NaN3含有50mM Tris−HCl(pH8.6)で透析し(4時間、3回)、リフォールディングした。透析後のサンプルを遠心し、不溶化したタンパク質を除去、限外濾過で約1mLに濃縮した。これを0.15M NaCl,10mM CaCl2含有50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)で平衡化したSephacryl S−300ゲルカラムに供した。溶出フラクションをA280でモニターし、タンパク質溶出画分を検出した。溶出タンパク質は2つのピークを示し、前半が2量体以上の重合体、後半がモノマーであった。後半のタンパク質ピークを活性型MT1−MMP精製画分としてプールし、限外濾過で1mLに濃縮した。BCA(Pierce)によるタンパク質濃度は0.11mg/mLであった。
得られた活性型MT1−MMPの酵素活性を検討した。
酵素画分50μLに0.15M NaCl,10mM CaCl2,0.05% Brij35,0.02% NaN3含有50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)で1μMに調製したメタロプロテアーゼ用合成基質Mca−Pro−Leu−Gly−Leu−Dpa−Ala−Arg−NH2を100μL加え、37℃で1時間静置した。同時に、上記反応系に20mM EDTAを添加したものを調製し、同様に37℃で1時間静置した。反応液を500μLの0.1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.0)を分注した試験管に採り、反応を停止した。MT1−MMPの蛍光基質分解活性を蛍光強度(FI,Ex:328nm,Em:393nm)として島津分光蛍光強度計RF−5000で測定した。得られた蛍光強度はそれぞれ121.6、6.3を示し、調製した活性型MT1−MMPがEDTAで阻害されるメタロプロテアーゼ活性を有することを確認した。上記の酵素濃度、蛍光基質の種類と濃度、各種反応液の組成、反応時間、反応温度、反応液量などは必要に応じて適宜変更できる。
▲4▼ 固相化抗MT1−MMPモノクローナル抗体用いたMT1−MMPの活性測定
実施例4の▲2▼項に記載した方法に従って、抗体固相化プレートを作成した。使用した各種の抗体濃度は50μg/mL、ブロッキング液は1%スキムミルク、0.1M NaCl含有30mM リン酸緩衝液(pH7.0)にそれぞれ変更して用いた。予めブロッキング液を除去、洗浄液(0.15M NaCl含有50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4))で3回洗浄した抗体固相化プレートに、0.15M NaCl,10mM CaCl2.0.05% Brij35,0.02% NaN3含有50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)で5μL/100μLに希釈した酵素画分を入れ、4℃で16時間静置した。反応液を除去し洗浄液で3回洗浄後、0.15M NaCl,10mM CaCl2,0.05% Brij35,0.02% NaN3含有50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)で1μMに調製したメタロプロテアーゼ用合成基質Mca−Pro−Leu−Gly−Leu−Dpa−Ala−Arg−NH2を100μL加え、37℃で8時間静置した。反応液を500μLの0.1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.0)を分注した試験管に採り、反応を停止した。固相化抗MT1−MMPモノクローナル抗体に捕捉され、マイクロウェルに残存したMT1−MMPに由来する蛍光基質分解活性を蛍光強度(FI,Ex:328nm,Em:393nm)として島津分光蛍光強度計RF−5000で測定した。
固相抗体に本明細書記載の抗体222−1D8,222−2D12,222−3E12,222−4G5および222−9A3を用い、蛍光基質分解活性を測定した場合、市販のMT1−MMPヘモペキシンドメインに対するモノクローナル抗体(113−5B7、第一ファインケミカル)を用いた場合の9.2から17.1倍の蛍光強度を得た(図4)。抗体を添加せず同様に調製したものからは、酵素活性は検出されなかった。これより抗MT1−MMP抗体を固相化したマイクロウェルを用いることにより、選択的にMT1−MMPを捕捉し、その活性レベルを定量的に、検出し得ることが確認された。使用する抗体の種類や濃度、蛍光基質の種類と濃度、各種反応液の組成、反応時間、反応温度、反応液量などは必要に応じて適宜変更できる。
固相化する抗体は、認識領域がヘモペキシンドメインにある抗体、たとえば222−1D8,222−2D12,222−3E12,222−4G5および222−9A3が好適であるが、これら以外の抗体でも可能である一方、113−5B7のような不適当な抗体も存在する。認識領域が触媒ドメインにあるような抗体は、MT1−MMPの活性を阻害する可能性があり、本用途には不適当である場合がある。認識領域がプロペプチドドメインにあるような抗体は、プロペプチドを失った活性型MT1−MMPを捕捉できないことから、本用途には不適当である場合がある。
認識領域がヘモペキシンドメインにある抗体を固相化したマイクロウェルには、プロペプチドドメインを有する不活性型MT1−MMP、プロペプチドを失った活性型MT1−MMPのいずれもが捕捉される。この状態で活性を測定すれば、検体中の活性型MT1−MMPを選択的に測定できるし、フューリンやその他の適切なプロテアーゼ、界面活性剤などで活性化処理した後に測定し、活性化処理前に存在した活性型MT1−MMPを差し引くことで検体中の不活性型MT1−MMPを選択的に測定できる。
実施例10 臨床検体の測定
(1)滑膜抽出画分の測定
滑膜組織を0.15M NaCl,10mM CaCl2,0.05% Brij35含有50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)中でホモジェナイズ、遠心して組織抽出画分を調製した。これらの検体のMT1−MMP濃度を実施例4に記載した方法に従って測定した。63検体を測定した結果、MT1−MMP濃度は1.3ng/mL(実用検出限界)以下から118.9ng/mLまで分布し、その平均値は、23.9ng/mLであった。
(2)癌組織および癌組織近傍の正常組織抽出画分の測定
癌組織および癌組織近傍の正常組織を0.15M NaCl,10mM CaCl2,0.05% Brij35含有50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)中でホモジェナイズ、遠心して組織抽出画分を調製した。これらの検体のMT1−MMP濃度を実施例4に記載した方法に従って測定した。44検体の癌組織抽出画分の平均値は、17.2ng/mLを示した一方、17検体の正常組織抽出画分の平均値は、1.3ng/mL(実用検出限界)以下を示し、MT1−MMPの存在が癌組織で多く産生されていることを本発明サンドイッチEIAで確認した。
実施例11 臨床検体の測定(肺癌組織)
▲1▼ 癌組織および癌組織近傍の正常組織抽出画分の測定
およそ50mgの肺癌組織および癌組織近傍の正常組織を0.15M NaCl,10mM CaCl2,0.05% Brij35含有50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)中でホモジェナイズ、遠心して組織抽出画分を調製した。これらの検体のMT1−MMP濃度を実施例4に記載した方法に従って測定した。さらに、各組織抽出画分のタンパク質濃度をBCA(Pierce)で測定し、MT1−MMP濃度をタンパク質濃度で除して検体タンパク質量あたりのMT1−MMP量を算出した。
51組の検体について、平均値と標準偏差を得た。正常組織、癌組織のMT1−MMP量は、それぞれ0.41±0.76ng/mg、2.43±1.85ng/mgを示し、癌組織と正常組織で有意差(p<0.001)を確認した(Studentの有意差検定、図5)。
同様にして、口腔癌および大腸癌についても、正常組織、癌組織のMT1−MMP量を測定した。口腔癌組織からは近接する正常組織のおよそ3.6倍、大腸癌組織からは近接する正常組織のおよそ2.4倍のMT1−MMPが検出された。いずれの癌種においても正常組織、癌組織間でMT1−MMP量に有意差が確認された。
▲2▼ 転移との相関関係
前項▲1▼で測定した癌組織をリンパ節転移の有無を指標として分類し、転移の有無とMT1−MMP量について相関を調べた。リンパ節転移が認められない癌組織のMT1−MMP量(平均値±標準偏差)は1.63±1.77ng/mg、リンパ節転移が認められる癌組織では2.49±1.78ng/mgを示し、両群に有意差(p<0.05)を確認した(Studentの有意差検定、図6)。
図6においてリンパ節転移が認められていないにもかかわらず、高いMT1−MMP値を示した特異的な検体が存在する(リンパ節転移・なし、最高値7.4ng/mgを示したもの)。この症例は、リンパ節転移は認められなかったが静脈に強い浸襲があり、悪性度の高いものであった。この検体を含め、高いMT1−MMP値を示した検体のほとんどがリンパ節あるいは脈管浸襲を起こしていることから、臨床的に転移が見られなくてもMT1−MMPレベルが高値を示した場合には、すでに微小転移を起こしているか将来転移するリスクが高いと推定し得る。
実施例12 動物細胞株のMT1−MMP測定
MT1−MMPを産生するマウス、ラットおよびラビット培養細胞株の検索を行った。マウス8株、ラット4株、ラビット1株について実施例7と同様にして、各培養上清を調製した。得られた培養上清を20倍に濃縮してEIAに供した。検討した動物細胞株のうち、マウスC127、ラットFR、ラビットHIG−82で、高いMT1−MMPの産生が認められた。濃縮した培養上清を段階希釈し、MT1−MMPを産生するヒト細胞株MDA−MB−231とその反応性について比較した。いずれの種とも同様な傾きを有する希釈曲線(表11および図7)を得たことから、ヒトとマウス、ラットおよびラビット細胞株に由来する各MT1−MMPが、同等な免疫反応性を有することが示された。
これより本EIA系は、ヒトの他に、マウス、ラットおよびラビット各種動物由来のMT1−MMPも測定できることが確認された。本EIA系によって認識されるMT1−MMPのヘモペキシンドメインのアミノ酸配列をヒト〔配列番号:4〕と、マウス〔配列番号:5〕、ラット〔配列番号:6〕およびラビット〔配列番号:7〕で比較した(図9)。189アミノ酸残基のうちヒト/マウス間では1残基、ヒト/ラット間では1残基、ヒト/ラビット間では3残基のミスマッチが認められたのみで、ヘモペキシンドメインは、種間で良く保存されていることが確認された。
実施例13 界面活性剤および還元剤存在下における抗体の免疫反応性の変動
界面活性剤および還元剤存在下における抗体の反応性をウエスタンブロッティングで検討した。本明細書記載のMT1−MMPサンドイッチEIAの標準抗原を500ng/レーンでSDS−PAGEに供し、ニトロセルロース膜に転写した。1% BSA、0.1M NaCl含有30mMリン酸緩衝液(pH7.0)でブロッキングした後、本明細書記載のMT1−MMPサンドイッチEIAの希釈用緩衝液およびSDSと2−メルカプトエタノール不含の希釈用緩衝液を用いて10μg/mLとなるように調製した抗MT1−MMPモノクローナル抗体溶液(222−1D8、222−2D12、222−3E12、222−4G5および222−9A3)に浸漬し、16時間インキュベートした。洗浄後、抗マウスIgG−HRPを反応させ染色した。
本明細書記載のMT1−MMPサンドイッチEIAの固相抗体として用いた抗MT1−MMPモノクローナル抗体222−2D12は、SDSと2−メルカプトエタノールの含有・不含有にかかわらずMT1−MMPとの反応性を維持していた(図8)。一方、222−9A3は、SDSと2−メルカプトエタノール不含有では222−2D12同等の反応性を示したにもかかわらず、含有下ではほとんど反応性を失った(図8)。222−1D8やその他の抗体もMT1−MMPとの反応性を著しく低下させたり、膜全体が着色するなど特異性を失う傾向が認められた。SDSと2−メルカプトエタノールのような界面活性剤、還元剤を含有する希釈用緩衝液中で免疫学的反応を進行させるためには、固相抗体として用いた222−2D12のような安定した反応性を有する抗体の選択が必要である。
ヒトIgGのH鎖およびL鎖は鎖内にそれぞれ4ヶ所、2ヶ所のS−S結合を有し、1ヶ所のS−S結合で互いに結合している。IgG1では、この二量体がH鎖間の2ヶ所のS−S結合で結合し4本鎖構造を安定化している。IgG3にはH鎖間のS−S結合が15ヶ所ある。抗体に還元剤を充分に作用させた場合、鎖内・鎖間のS−S結合が切れ、抗体の高次構造とともに免疫反応性が失われる。S−S結合の多いIgG3は、IgG1に比べ還元剤による変性効果が大きく免疫反応性の低下が著しいものと予想される。MT1−MMPサンドイッチEIA希釈用緩衝液中でMT1−MMPに対する反応性を失った222−9A3は、IgG3である。IgG1においても還元剤によるS−S結合の切断は著しい免疫反応性の低下をまねくが、H鎖とL鎖は、非共有結合による相互作用でも高次構造を保持しているため、還元剤存在下で免疫反応性を維持するクローンも存在し得る。
実施例14 可溶型MT−MMPの作製とその利用
MT2−MMP(SwissProt Accession No.054732;マウス)の触媒ドメイン、ヒンジドメインおよびヘモペキシンドメイン(Y128−C555)を増幅するためのPCRプライマーを作製した。5’側プライマーにはSmaIサイト、3’側プライマーには終止コドンとBglIIサイトを付加した。SmaIサイトはpUC18のβ−ガラクトシダーゼにインフレームで連結できるように設計した。MT2−MMPの全長を含む遺伝子をクローン化したpSGMT2−MMPを鋳型とし、93℃30秒、45℃30秒、72℃60秒で30サイクルのPCRを行った。得られたPCR産物の両末端をSmaIとBglIIで切断し、予めSmaIとBamHIで切断したpUC18に挿入した。この発現ベクターによりβ−ガラクトシダーゼの11アミノ酸残基と、シグナルペプチド、プロペプチド領域、膜貫通領域および細胞内ドメインを欠損したΔMT2−MMP(Y128−C555)の428アミノ酸残基、計439アミノ酸残基からなる分子量約48kDaの融合タンパク質を発現した。
MT3−MMP(SwissProt Accession No.P51512)の触媒ドメイン、ヒンジドメインおよびヘモペキシンドメイン(Y120−C532)を増幅するためのPCRプライマーを作製した。5’側プライマーにはSmaIサイト、3’側プライマーには終止コドンとBglIIサイトを付加した。SmaIサイトはpUC18のβ−ガラクトシダーゼにインフレームで連結できるように設計した。MT3−MMPの全長を含む遺伝子をクローン化したpSGMT3−MMPを鋳型とし、93℃ 30秒、45℃ 30秒、72℃ 60秒で30サイクルのPCRを行った。得られたPCR産物の両末端をSmaIとBglIIで切断し、予めSmaIとBamHIで切断したpUC18に挿入した。この発現ベクターによりβ−ガラクトシダーゼの11アミノ酸残基と、シグナルペプチド、プロペプチド領域、膜貫通領域および細胞内ドメインを欠損したΔMT3−MMP(Y120−C532)の413アミノ酸残基、計439アミノ酸残基からなる分子量約47kDaの融合タンパク質を発現した。
MT4−MMP(SwissProt Accession No.Q9ULZ9)の触媒ドメイン、ヒンジドメインおよびヘモペキシンドメイン(Q129−C525)を増幅するためのPCRプライマーが設計できる。5’側プライマーにはSmaIサイト、3’側プライマーには終止コドンとBglIIサイトを付加する。SmaIサイトはpUC18のβ−ガラクトシダーゼにインフレームで連結できるように設計する。MT4−MMPの全長を含む遺伝子をクローン化したベクターあるいは乳癌cDNAライブラリーなどを鋳型とし、93℃ 30秒、45℃ 30秒、72℃ 60秒で30サイクルのPCRを行う。得られたPCR産物の両末端をSmaIとBglIIで切断し、予めSmaIとBamHIで切断したpUC18に挿入する。この発現ベクターによりβ−ガラクトシダーゼの11アミノ酸残基と、シグナルペプチド、プロペプチド領域、膜貫通領域および細胞内ドメインを欠損したΔMT4−MMP(Q129−C525)の397アミノ酸残基、計408アミノ酸残基からなる分子量約45kDaの融合タンパク質を発現する。
MT5−MMP(SwissProt Accession No.Q9Y5R2)の触媒ドメイン、ヒンジドメインおよびヘモペキシンドメイン(Y156−C569)を増幅するためのPCRプライマーを作製した。5’側プライマーにはSmaIサイト、3’側プライマーには終止コドンとBglIIサイトを付加した。SmaIサイトはpUC18のβ−ガラクトシダーゼにインフレームで連結できるように設計した。脳cDNAライブラリーを鋳型とし、93℃ 30秒、45℃ 30秒、72℃ 60秒で30サイクルのPCRを行う。得られたPCR産物の両末端をSmaIとBglIIで切断し、予めSmaIとBamHIで切断したpUC18に挿入する。この発現ベクターによりβ−ガラクトシダーゼの11アミノ酸残基と、シグナルペプチド、プロペプチド領域、膜貫通領域および細胞内ドメインを欠損したΔMT5−MMP(Y156−C569)の414アミノ酸残基、計425アミノ酸残基からなる分子量約47kDaの融合タンパク質を発現する。
MT6−MMP(SwissProt Accession No.Q9NPA2)の触媒ドメイン、ヒンジドメインおよびヘモペキシンドメイン(Y108−C508)を増幅するためのPCRプライマーが設計できる。5’側プライマーにはSmaIサイト、3’側プライマーには終止コドンとBglIIサイトを付加する。SmaIサイトはpUC18のβ−ガラクトシダーゼにインフレームで連結できるように設計する。MT6−MMPの全長を含む遺伝子をクローン化したベクターあるいは白血球、肺、脾臓cDNAライブラリーなどを鋳型とし、93℃ 30秒、45℃ 30秒、72℃ 60秒で30サイクルのPCRを行う。得られたPCR産物の両末端をSmaIとBglIIで切断し、予めSmaIとBamHIで切断したpUC18に挿入する。この発現ベクターによりβ−ガラクトシダーゼの11アミノ酸残基と、シグナルペプチド、プロペプチド領域、膜貫通領域および細胞内ドメインを欠損したΔMT6−MMP(Y108−C508)の401アミノ酸残基、計412アミノ酸残基からなる分子量約45kDaの融合タンパク質を発現する。
触媒ドメイン、ヒンジドメインおよびヘモペキシンドメインからなる組換えタンパク質ΔMT2−MMP、ΔMT3−MMP、ΔMT4−MMP、ΔMT5−MMPおよびΔMT6−MMPは、実施例1記載の方法と同様にしてinclusion bodyとして回収、8M urea,0.1M NaCl含有10mMリン酸緩衝液(pH7.0)で可溶化し、preparative SDS−PAGEおよび電気溶出で精製、分取することができる。あるいは穏やかなリフォールディングを行いMMP活性を有するMT−MMPを作成することができる。
得られた組換えタンパク質を免疫原として使用することにより、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体を作製することができる。たとえば得られたモノクローナル抗体とそれぞれの組換えタンパク質(標準抗原)の組み合わせによってMT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMPおよびMT6−MMPを特異的に測定できるサンドイッチEIA系が得られる。膜結合型のMT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMPおよびMT6−MMPを測定するEIAの固相には界面活性剤および還元剤に耐性を示す抗体を選択することが望ましい。なお、測定対象の膜結合型MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMPおよびMT6−MMPは、界面活性剤および還元剤を含有する緩衝液中で抽出することができる。
また、得られたモノクローナル抗体を介してMT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMPおよびMT6−MMPを固相化し、それぞれのMMP活性を測定することができる。
MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMPおよびMT6−MMPのサンドイッチEIAや活性測定系は、癌の悪性度の評価、癌種の特定、臓器特異的な癌の検出、リウマチ性関節炎やアルツハイマーの進行度の推定など種々の臨床分野に応用できる外、MT−MMP活性阻害剤などの医薬、その開発研究手段として利用できる。
産業上の利用可能性
本発明により、簡単な操作および試薬を用い、感度並びに精度良く、迅速にMT1−MMPを定量することができる。特に、本発明では、被検試料中の可溶型MT1−MMPを定量できる。さらに、MT1−MMPの発現を促進または阻害する化合物や因子、MT1−MMPの酵素活性を促進または阻害する化合物や因子を効率よくスクリーニングすることが可能である。また、本発明で、細胞膜からMT−MMPsを遊離及び/又は可溶化せしめ、該MT−MMPsを定量できる。本発明では、これら測定に有用な試薬、試薬セット、スクリーニングキット、そして癌または癌転移検査薬、リウマチ性関節炎やアルツハイマーの進行度検査薬、さらにはMT1−MMP活性阻害剤などの医薬、その開発研究手段などが提供される。
本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。本件は特願2000−352491号(出願日:平成12年11月20日)を優先権主張の基礎とする出願であって、当該出願に添付の明細書の内容はそれを参照することにより本明細書に含めて解釈されるべきものである。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明のMT1−MMPに対するモノクローナル抗体を使用し、実施例1−▲3▼で調製したΔMT1−MMP(58kDa)およびヘモペキシンドメイン(30kDa,34kDa)、触媒ドメイン(21kDa)の断片を抗原としたエピトープマッピングの結果を模式的に示す。
図2は、本発明のMT1−MMPに対するモノクローナル抗体を使用し、実施例1−▲2▼で調製したMT1−MMP,MT2−MMP(マウス)及びMT3−MMPのそれぞれを発現するCOS−7の細胞破砕物を抗原としたウエスタンブロッティングによる交叉反応性試験の結果を模式的に示す。
図3は、MT1−MMPサンドイッチEIAにより得られた標準曲線の例を示す。
図4は、各種固相化抗MT1−MMPモノクローナル抗体を用いたMT1−MMPの活性測定の結果を示す。
図5は、癌組織及びその近傍正常組織につき、それらから調製された抽出液中のMT1−MMP量を測定した結果を各試料毎に示したものである。
図6は、癌組織から調製された抽出液中のMT1−MMP量と当該癌組織のリンパ節転移の有無を指標として分類されたものとの間の相関を示すものである。
図7は、ヒト、マウス、ラット及びラビット培養細胞株より調製された培養上清について、その中のMT1−MMP量を測定し、その結果得られた希釈曲線を示す。
図8は、界面活性剤及び還元剤存在下及び非存在下における抗MT1−MMPモノクローナル抗体のMT1−MMPに対する免疫反応性を試験した結果を示している。MT1−MMPは、SDS−PAGEにかけられた後、膜に転写後各抗体と反応せしめられた。
図9は、ヒト、マウス、ラット及びラビット由来MT1−MMPのヘモペキシンドメインのアミノ酸配列をそれぞれ比較して示したものである。
本発明は、膜結合型マトリックスメタロプロテアーゼ(MT−MMP)に対する抗体(抗MT−MMP抗体)を用いた免疫学的定量法およびそれに用いる試薬に関する。また、本発明は、(i)界面活性剤及び/又は還元剤を用いて細胞膜から遊離し及び/又は可溶化したMT−MMPおよび(ii)自律的に可溶化したMT−MMPから成る群から選ばれたものを免疫学的に定量する方法およびそれに用いる試薬に関する。特には、本発明は、(a)界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを用いて細胞膜から遊離し及び/又は可溶化したMT−MMPあるいは(b)自律的に可溶化したMT−MMPを、MT−MMPに対する抗体(例えば、抗MT1−MMP抗体)を用いて免疫学的に定量する方法に関する。そして、本発明は、(A)MT−MMPの発現を変化させる因子及び(B)MT−MMPの酵素活性を変化させる因子の検索方法およびその因子を含有する医薬に関する。一方では、本発明は、界面活性剤及び/又は還元剤を用いてMT1−MMPなどのMT−MMPsを細胞膜から遊離し可溶化する方法に関する。また、本発明は、MT−MMPの酵素活性を測定する方法およびそれに用いる試薬に関する。
背景技術
マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)は、プロペプチド、酵素活性部位、ヒンジおよびヘモペキシン様部位を基本ドメインとした構造を有する可溶型酵素である。一方、MMPsの中で一群のサブファミリーを形成する膜結合型マトリックスメタロプロテアーゼ(MT−MMPs)は、膜貫通ドメインをC−末端側に有し、細胞膜上に埋め込まれた形で局在する膜結合型酵素である。現在、可溶型MMPとしてMMP−1,2,3,7,8,9,10,11,12,13,18,19,20,21,22,23,26が、膜結合型MMPとしてMMP−14,15,16,17,24,25(それぞれMT1−,MT2−,MT3−,MT4−,MT5−,MT6−MMP)の遺伝子がクローニング、同定されている。
〔MT1−MMPによるプロMMP−2の活性化〕
MMP−2は、ゼラチンや基底膜の主成分であるIV型コラーゲンなどを分解する酵素で、その活性は多くのヒト癌組織の浸潤・転移とよく相関することが知られている。MMP−2以外のプロMMPs(MMP−1,3,7,8,9,10,11,13)は、内因性のセリンプロテアーゼや活性型MMPs相互によって活性化するカスケードを持つが、プロMMP−2はこれらとは異なる活性化機構を有する点で特徴的である。即ち、プロMMP−2は、細胞膜上でTIMP−2を介してMT1−MMPと結合、近接するもう一分子のMT1−MMPがプロMMP−2のプロペプチドを切断し、活性型に変換される。
〔MT1−MMPとヒト癌組織の浸潤・転移〕
MT1−MMPは、ヒト癌組織の浸潤・転移とよく相関して発現するMMP−2の活性化機構に深く関与し、またMT1−MMP自身も細胞外マトリックス分解活性を有することから、癌の浸潤・転移において重要な働きを持つと考えられている。MT1−MMPは、乳癌、大腸癌、胃癌、頭頚部癌など多くの癌細胞で広く発現することが報告されており、MT1−MMPの存在と癌の悪性度即ち浸潤・転移能の関連性が注目されている。
〔MT1−MMPと慢性関節リウマチ〕
慢性関節リウマチ(RA)の早期病理像として、血管新生と滑膜組織の増生が観察される。過形成となった滑膜表層細胞は、MMP−1,3,MT1−MMPおよびTIMP−1を、下層の線維芽細胞はMMP−2とTIMP−2を産生する。また滑膜や関節腔に浸潤した好中球はMMP−8,9を産生、これらのMMPsとTIMPsは関節液中に分泌する。RA関節液中のMMP−1,2,3,8,9レベルは、変形性関節症(OA)関節液より有意に高値で、TIMPsの分子数を上回りMMPs優位の状態にある。これらに加えて、軟骨細胞自身が発現するMMP−1,2,3,7,8,13によってRAの関節軟骨破壊が進行する。RAの発症、進行とMT1−MMPの関連は知られていないが、プロMMP−2の活性化やMT1−MMP自身のECM分解活性による関節軟骨破壊がRAの発症と進行に関与する可能性がある。
〔MT1−MMPの分子種〕
MT−MMPsは、疎水性の膜貫通ドメインをC−末端側に有しこれを介して細胞膜上に埋め込まれた形で存在するため、他の可溶型MMPsとは異なり不溶性を示す。実際、MT1−MMPは、細胞膜に局在することが報告されている。最近、コンカナバリンA(Con A)で処理した乳癌細胞株において、その培養上清に、C−末端側の疎水性膜貫通ドメインを失ったMT1−MMPが可溶化(shedding)して存在することが見出された。これは、コンカナバリンAで誘導されたアポトーシスの過程で膜結合型MT1−MMPが何らかの機構により、C−末端側で切断され、膜から離脱したものとされている。可溶化MT1−MMPの生理的機能は未知であるが、可溶型MMPsと同様、種々の生理的機能が予想される。かくして、MT1−MMPの測定には、これら膜結合型MT1−MMPと可溶型MT1−MMPの両方に適応できる方法が適当であると考えられる。
ヒト癌組織の浸潤・転移、慢性関節リウマチ(RA)の病態にMT1−MMPがどの様に関与しているか調べるためには、ヒト体液、例えば血中、関節液、腹水、胸水、尿など、またはヒト組織、培養細胞などに含まれるMT1−MMP量および酵素活性を知ることは重要である。ところで、MT1−MMPの測定には、mRNAの発現をノーザンブロット法で半定量的に検出する方法、RT−PCRで半定量的に検出する方法などがあるが、いずれも遺伝子の発現レベルを反映する方法であり、機能的なMT1−MMPの量を示すものではない。またこれらの方法は、被検試料が限定されるうえ、mRNAの抽出など技術的に繁雑であり、再現性の確保は困難である。
また、MT1−MMPの検出には、プロMMP−2の活性化を指標にして評価する方法がある。被検試料をゼラチンザイモグラフィーで分析することで、活性化したMMP−2を検出し、その活性化因子であるMT1−MMPの存在を想定することができる。しかし、この方法は、MT1−MMPの存在を間接的に観察しているにすぎないうえ、血液成分などの高タンパク質濃度の検体は、直接ゼラチンザイモグラフィーに供することは不可能である。
また、抗MT1−MMP抗体を用いたウエスタンブロット法でもMT1−MMPの検出が可能であるが、ザイモグラフィーと同様、血液成分などの高タンパク質濃度の検体には適応できないうえ、定量性、再現性に乏しい。さらに、生体タンパク質を定量する方法として免疫学的手法が知られているが、被検試料は可溶性物質に限定され、MT1−MMPの様な細胞膜に存在する不溶性物質の定量には馴染まない。
MT1−MMPを免疫学的に定量する方法が、Harayamaら(Jpn.J.Cancer Res.,90:942−950(1999))により報告されているが、この方法では被検試料の可溶性MT1−MMPを測定できるが、膜に結合しているMT1−MMPは測定できない。また、測定限界が高いため、微量に存在する可溶性MT1−MMPを測定するのは困難である。
MT1−MMPの酵素活性を測定する方法としては、ゼラチンザイモグラフィーが知られている。ゼラチンザイモグラフィーは、電気泳動上でMT1−MMPの分画と活性検出を同時に行うことができる点で、非精製検体に含まれるMT1−MMPの活性検出に優れた方法であるが、操作が繁雑である上、測定結果は半定量的な判定にとどまる。
以上のように、ノーザンブロット法、RT−PCR、ザイモグラフィーおよびウエスタンブロット法などでMT1−MMPの検出や半定量的な測定は可能ではあるが、いずれも操作が複雑で、再現性に乏しく、簡便なMT1−MMPの定量方法および活性測定方法は得られていない。
発明の開示
本発明の目的は、簡単な操作および試薬を用い、感度並びに精度良く、迅速にMT1−MMPなどのMT−MMPを定量する方法、MT1−MMPを含めた各MT−MMP酵素活性を測定する方法およびそのための試薬キット、さらにはそうした方法や試薬などを使用することにより、同定された活性物質などを含有する、MT1−MMPなどの各MT−MMPの発現や酵素活性を抑制する医薬を提供することにある。
本発明は、
(1)免疫学的方法を用いて、被検試料中のMT−MMP、例えばMT1−MMP、を定量すること(免疫学的MT−MMP定量方法)、特には被検試料中の可溶型MT−MMPを定量すること;
(2)被検試料中の膜結合型MT1−MMPなどの膜結合型MT−MMPを可溶化し、免疫学的測定法に適応する検体の調製方法を提供すること;
(3)上記(2)の方法で可溶型MT−MMPに変換させた被検試料中の膜結合型MT−MMPを免疫学的方法で定量すること、あるいは上記(1)の方法において、可溶型MT−MMPに変換させた被検試料中の膜結合型MT−MMPを免疫学的方法で定量すること;
(4)MT−MMPの免疫学的測定法を用いて、MT−MMPの発現量を変化させる因子・薬剤などを検索する方法、およびそれらの因子・薬剤を含有する医薬;
(5)免疫学的方法を用いて、MT−MMPを選択的に固定化し、固定化されたMT−MMPの酵素活性を特異的に測定すること(MT−MMP酵素活性測定法);及び
(6)上記(5)のMT−MMP酵素活性測定法を用いて、MT−MMPの酵素活性を変化させる因子・薬剤などを検索する方法、およびそれらの因子・薬剤を含有する医薬を提供する。
本発明は、
〔1〕 MT−MMPsから成る群から選ばれたMT−MMPに対する抗体を用いることを特徴とするMT−MMPの免疫学的定量法;
〔2〕 MMP−14(MT1−MMP)に対する抗体,MMP−15(MT2−MMP)に対する抗体,MMP−16(MT3−MMP)に対する抗体,MMP−17(MT4−MMP)に対する抗体,MMP−24(MT5−MMP)に対する抗体及びMMP−25(MT6−MMP)に対する抗体から成る群から選ばれた抗体を用いることを特徴とする上記〔1〕記載の免疫学的定量法;
〔3〕 MT1−MMPに対する抗体を用い且つMT1−MMPの免疫学的定量をすることを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕記載の免疫学的定量法;
〔4〕 界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを用いることを特徴とする上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一記載の免疫学的定量法;
〔5〕 抗体が、(i)界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものの存在下で免疫反応性を維持できること及び(ii)人為的に変性してエピトープを露出させたMT−MMPを免疫抗原として得られることから成る群から選ばれた特徴の少なくとも一つを持つものであることを特徴とする上記〔1〕〜〔4〕のいずれか一記載の免疫学的定量法;
〔6〕 免疫抗原が、MT1−MMP,MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMP及びMT6−MMPから成る群から選ばれたものであることを特徴とする上記〔5〕記載の免疫学的定量法;
〔7〕 免疫抗原が、MT1−MMPであることを特徴とする上記〔5〕記載の免疫学的定量法;
〔8〕 抗体がモノクローナル抗体であることを特徴とする上記〔1〕〜〔7〕のいずれか一記載の免疫学的定量法;
〔9〕 免疫学的に定量できるMT−MMPが、(i)界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを用いて細胞膜から遊離及び/又は可溶化させた分子及び(ii)自律的に細胞膜から遊離及び/又は可溶化した分子から成る群から選ばれた分子種の少なくとも一つであることを特徴とする上記〔1〕〜〔8〕のいずれか一記載の免疫学的定量法;
〔10〕 (a)界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを用いて、MT−MMPを細胞膜から遊離及び/又は可溶化させる工程及び(b)MT−MMPを免疫学的に定量する工程を含むことを特徴とする上記〔1〕〜〔9〕のいずれか一記載の免疫学的定量法;
〔11〕 MT−MMPが、MT1−MMP,MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMP及びMT6−MMPから成る群から選ばれたものであることを特徴とする上記〔1〕、〔2〕、〔4〕〜〔6〕及び〔8〕〜〔10〕のいずれか一記載の免疫学的定量法;
〔12〕 MT−MMPが、MT1−MMPであることを特徴とする上記〔1〕〜〔11〕のいずれか一記載の免疫学的定量法;
〔13〕 界面活性剤がドデシル硫酸ナトリウム(SDS)であることを特徴とする上記〔4〕〜〔12〕のいずれか一記載の免疫学的定量法;
〔14〕 還元剤が2−メルカプトエタノールであることを特徴とする上記〔4〕〜〔12〕のいずれか一記載の免疫学的定量法;
〔15〕 上記〔1〕〜〔14〕のいずれか一記載の免疫学的定量法に使用するためのMT−MMPの免疫学的測定用試薬;
〔16〕 MT−MMPsから成る群から選ばれたMT−MMPに対する抗体を含有していることを特徴とする上記〔15〕記載の試薬;
〔17〕 MT−MMPが、MT1−MMP,MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMP及びMT6−MMPから成る群から選ばれたものであることを特徴とする上記〔15〕記載の試薬;
〔18〕 MT1−MMPに対する抗体,MT2−MMPに対する抗体,MT3−MMPに対する抗体,MT4−MMPに対する抗体,MT5−MMPに対する抗体及びMT6−MMPに対する抗体から成る群から選ばれた抗体を含有していることを特徴とする上記〔15〕記載の試薬;
〔19〕 MT−MMPが、MT1−MMPであることを特徴とする上記〔15〕記載の試薬;
〔20〕 MT1−MMPに対する抗体を含有していることを特徴とする上記〔15〕記載の試薬;
〔21〕 界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを含有していることを特徴とする上記〔15〕〜〔20〕のいずれか一記載の試薬;
〔22〕 界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを用いて、MT−MMPsから成る群から選ばれたものを、細胞膜から遊離及び/又は可溶化させることを特徴とするMT−MMPの遊離及び/又は可溶化方法;
〔23〕 界面活性剤がSDSであることを特徴とする上記〔22〕記載の方法;
〔24〕 還元剤が2−メルカプトエタノールであることを特徴とする上記〔22〕記載の方法;
〔25〕 MT−MMPが、MT1−MMP,MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMP及びMT6−MMPから成る群から選ばれたものであることを特徴とする上記〔22〕〜〔24〕のいずれか一記載の方法;
〔26〕 MT−MMPが、MT1−MMPであることを特徴とする上記〔22〕〜〔24〕のいずれか一記載の方法;
〔27〕 (a)上記〔1〕〜〔14〕のいずれか一記載の免疫学的定量法あるいは(b)上記〔22〕〜〔26〕のいずれか一記載の方法に使用するためのものであることを特徴とするMT−MMPを遊離及び/又は可溶化する試薬;
〔28〕 界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを含有していることを特徴とする上記〔27〕記載の試薬;
〔29〕 界面活性剤がSDSであることを特徴とすることを特徴とする上記〔28〕記載の試薬;
〔30〕 還元剤が2−メルカプトエタノールであることを特徴とすることを特徴とする上記〔28〕記載の試薬;
〔31〕 MT−MMPが、MT1−MMP,MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMP及びMT6−MMPから成る群から選ばれたものであることを特徴とする上記〔27〕〜〔30〕のいずれか一記載の試薬;
〔32〕 MT−MMPが、MT1−MMPであることを特徴とする上記〔27〕〜〔30〕のいずれか一記載の試薬;
〔33〕 (a)上記〔1〕〜〔14〕のいずれか一記載の免疫学的定量法、(b)上記〔15〕〜〔21〕のいずれか一記載の試薬、(c)上記〔22〕〜〔26〕のいずれか一記載の方法及び(d)上記〔27〕〜〔32〕のいずれか一記載の試薬から成る群から選ばれたものを用い、且つMT−MMPsから成る群から選ばれたものの発現を促進または阻害する化合物をスクリーニングすることを特徴とするスクリーニング方法;
〔34〕 被検化合物の存在下及び非存在下にスクリーニングを行い、被検化合物の存在下及び非存在下での各結果を比較することを特徴とする上記〔33〕記載のスクリーニング方法;
〔35〕 MT1−MMP,MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMP及びMT6−MMPから成る群から選ばれたMT−MMPの発現を促進または阻害する化合物をスクリーニングすることを特徴とする上記〔33〕又は〔34〕記載のスクリーニング方法;
〔36〕 MT1−MMPの発現を促進または阻害する化合物をスクリーニングすることを特徴とする上記〔33〕又は〔34〕記載のスクリーニング方法;
〔37〕 上記〔33〕〜〔36〕のいずれか一記載のスクリーニング方法に使用するための、MT−MMPsから成る群から選ばれたものの発現を促進または阻害する化合物のスクリーニングキット;
〔38〕 (a)MT−MMPsから成る群から選ばれたMT−MMPに対する抗体、(b)界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたもの及び(c)免疫学的方法で固相化されたMT−MMPから成る群から選ばれたものを含有することを特徴とする上記〔37〕記載のキット;
〔39〕 MT1−MMP,MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMP及びMT6−MMPから成る群から選ばれたMT−MMPの発現を促進または阻害する化合物のスクリーニングのためのものであることを特徴とする上記〔37〕又は〔38〕記載のキット;
〔40〕 MT1−MMPの発現を促進または阻害する化合物のスクリーニングのためのものであることを特徴とする上記〔37〕又は〔38〕記載のキット;
〔41〕 免疫学的方法で固相化されたMT−MMPの酵素活性を測定することを特徴とする測定方法;
〔42〕 MT−MMPの酵素活性を定量的に測定することを特徴とする上記〔41〕記載の方法;
〔43〕 固相化されたMT−MMPが、抗MT−MMP抗体を介して選択的に固相化されたものであることを特徴とする上記〔41〕又は〔42〕記載の方法;
〔44〕 MT−MMPが、MT1−MMP,MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMP及びMT6−MMPから成る群から選ばれたものであることを特徴とする上記〔41〕〜〔43〕のいずれか一記載の方法;
〔45〕 MT−MMPが、MT1−MMPであることを特徴とする上記〔41〕〜〔43〕のいずれか一記載の方法;
〔46〕 MT−MMPが、(i)界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを用いて細胞膜から遊離及び/又は可溶化させた分子及び(ii)自律的に細胞膜から遊離及び/又は可溶化した分子から成る群から選ばれた分子種の少なくとも一つであることを特徴とする上記〔41〕〜〔45〕のいずれか一記載の方法;
〔47〕 (a)界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを用いてMT−MMPを細胞膜から遊離及び/又は可溶化させる工程及び(b)MT−MMPの酵素活性を測定する工程を含むことを特徴とする上記〔41〕〜〔46〕のいずれか一記載の方法;
〔48〕 免疫学的方法で固相化されたMT−MMP;
〔49〕 抗MT−MMP抗体を介して選択的に固相化されたものであることを特徴とする上記〔48〕記載の固相化されたMT−MMP;
〔50〕 抗MT−MMP抗体が、MT−MMPのヘモペキシン様ドメインを認識する抗体であることを特徴とする上記〔49〕記載の固相化されたMT−MMP;
〔51〕 MT−MMPが、MT1−MMP,MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMP及びMT6−MMPから成る群から選ばれたものであることを特徴とする上記〔48〕〜〔50〕のいずれか一記載の固相化されたMT−MMP;
〔52〕 MT−MMPが、MT1−MMPであることを特徴とする上記〔48〕〜〔50〕のいずれか一記載の固相化されたMT−MMP;
〔53〕 (i)上記〔41〕〜〔47〕のいずれか一記載の方法あるいは(ii)上記〔48〕〜〔52〕のいずれか一記載の固相化されたMT−MMPを用いた、MT−MMPの酵素活性を促進または阻害する化合物のスクリーニング方法;
〔54〕 被検化合物の存在下及び非存在下にスクリーニングを行い、被検化合物の存在下及び非存在下での各結果を比較することを特徴とする上記〔53〕記載のスクリーニング方法;
〔55〕 上記〔41〕〜〔47〕のいずれか一記載の方法に使用するための、MT−MMPの酵素活性を促進または阻害する化合物のスクリーニングキット;
〔56〕 上記〔48〕〜〔52〕のいずれか一記載の固相化されたMT−MMPを含有していることを特徴とする上記〔55〕記載のキット;
〔57〕 (a)上記〔33〕〜〔36〕のいずれか一記載の方法で得られ且つMT−MMPsから成る群から選ばれたものの発現を促進または阻害する化合物、(b)上記〔37〕〜〔40〕のいずれか一記載のキットを使用して得られ且つMT−MMPsから成る群から選ばれたものの発現を促進または阻害する化合物、(c)上記〔53〕又は〔54〕記載の方法で得られたMT−MMPの酵素活性を促進または阻害する化合物及び(d)上記〔55〕又は〔56〕記載のキットを使用して得られたMT−MMPの酵素活性を促進または阻害する化合物から成る群から選ばれたものを含有していることを特徴とする医薬;
〔58〕 MT1−MMP,MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMP及びMT6−MMPから成る群から選ばれたMT−MMPの発現を促進または阻害する化合物又は該MT−MMPの酵素活性を促進または阻害する化合物を含有していることを特徴とする上記〔57〕記載の医薬;
〔59〕 MT1−MMPの発現を促進または阻害する化合物又はMT1−MMPの酵素活性を促進または阻害する化合物を含有していることを特徴とする上記〔57〕記載の医薬;
〔60〕 (i)上記〔1〕〜〔14〕のいずれか一記載の免疫学的定量法又は(ii)上記〔41〕〜〔47〕のいずれか一記載の方法により、MT−MMPsから成る群から選ばれたものを測定するものであることを特徴とする癌検査または癌転移検査薬あるいはリウマチ性関節炎またはアルツハイマーの進行度検査薬;
〔61〕 (A)(i)界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを用いて細胞膜から遊離及び/又は可溶化させた分子及び(ii)自律的に細胞膜から遊離及び/又は可溶化した分子から成る群から選ばれた分子種の少なくとも一つであるMT−MMPの量を指標として使用し、癌の悪性度を評価する又は癌転移能を評価するかあるいはリウマチ性関節炎またはアルツハイマーの進行度を評価するか、あるいは(B)(iii)界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを用いて細胞膜から遊離及び/又は可溶化させた分子及び(iv)自律的に細胞膜から遊離及び/又は可溶化した分子から成る群から選ばれた分子種の少なくとも一つであるMT−MMPの酵素活性の量を指標として使用し、癌の悪性度を評価する又は癌転移能を評価するかあるいはリウマチ性関節炎またはアルツハイマーの進行度を評価することを特徴とする上記〔60〕記載の検査薬;
〔62〕 MT1−MMP,MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMP及びMT6−MMPから成る群から選ばれたMT−MMPを測定するものであることを特徴とする上記〔60〕又は〔61〕記載の検査薬;
〔63〕 MT1−MMPを測定するものであることを特徴とする上記〔60〕又は〔61〕記載の検査薬;
〔64〕 MT1−MMPに対する抗体,MT2−MMPに対する抗体,MT3−MMPに対する抗体,MT4−MMPに対する抗体,MT5−MMPに対する抗体及びMT6−MMPに対する抗体から成る群から選ばれた抗体を含有していることを特徴とする上記〔60〕〜〔62〕のいずれか一記載の検査薬;
〔65〕 MT1−MMPに対する抗体を含有していることを特徴とする上記〔60〕〜〔64〕のいずれか一記載の検査薬;
〔66〕 MT1−MMPの酵素活性を測定するものであることを特徴とする上記〔60〕〜〔65〕のいずれか一記載の検査薬;及び
〔67〕 上記〔1〕〜〔66〕のいずれか一記載の中で抗体が、MT−MMPのヘモペキシン様ドメインを認識するものであることを特徴とする、免疫学的定量法、免疫学的測定用試薬、スクリーニング方法、スクリーニングキット、酵素活性測定方法、免疫学的方法で固相化されたMT−MMP、医薬、検査薬などを提供する。
本発明では、好適に、可溶型MT1−MMPについての免疫学的定量法、免疫学的測定用試薬、スクリーニング方法、スクリーニングキット、酵素活性測定方法、免疫学的方法で固相化されたMT−MMP、医薬、検査薬などが提供される。
本発明は、
〔68〕 MT−MMPsから成る群から選ばれたMT−MMPに対する抗体であって、且つ(i)界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものの存在下で免疫反応性を維持できること及び(ii)人為的に変性してエピトープを露出させたMT−MMPを免疫抗原として得られることから成る群から選ばれた特徴の少なくとも一つを持つものであることを特徴とする抗体;
〔69〕 MT1−MMPに対する抗体,MT2−MMPに対する抗体,MT3−MMPに対する抗体,MT4−MMPに対する抗体,MT5−MMPに対する抗体及びMT6−MMPに対する抗体から成る群から選ばれたものであることを特徴とする上記〔68〕記載の抗体;
〔70〕 抗体がモノクローナル抗体であることを特徴とする上記〔68〕又は〔69〕記載の抗体;
〔71〕 抗体がMT−MMPのヘモペキシン様ドメインを認識するものであることを特徴とする上記〔68〕〜〔70〕のいずれか一記載の抗体;
〔72〕 抗体が固相化抗体であることを特徴とする上記〔68〕〜〔71〕のいずれか一記載の抗体;及び
〔73〕 抗体が標識抗体であることを特徴とする上記〔68〕〜〔71〕のいずれか一記載の抗体を提供する。
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。
発明を実施するための最良の形態
本発明は、MT1−MMPに対する抗体を用いた免疫学的定量法を含めた各種MT−MMPに対する抗体を用いた免疫学的定量法を提供している。そして、特には、界面活性剤及び/又は還元剤を用いることを特徴とするMT−MMPの免疫学的定量法を提供する。また、本発明では、界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを少なくとも用いて、MT−MMPを細胞膜から遊離及び/又は可溶化させる工程を含むことを特徴とする該MT−MMPの免疫学的定量法が提供される。特には、本発明では、MT1−,MT2−,MT3−,MT4−,MT5−,MT6−MMPなどのMT−MMPsをその測定対象とする免疫学的定量法が提供される。該MT−MMPに対し特異的に反応する抗体としては、(i)界面活性剤及び/又は還元剤の存在下で免疫反応性を維持できること、(ii)人為的に変性し、エピトープを露出させたMT1−MMPなどのMT−MMPを免疫抗原として得られることから成る群から選ばれた特徴を有している。好適には、MT−MMPとしては、MT1−MMPが挙げられる。以下、MT1−,MT2−,MT3−,MT4−,MT5−,MT6−MMPなどのMT−MMPsのうち、MT1−MMPについてより詳しくその態様を説明するが、他のMT−MMP、例えばMT2−,MT3−,MT4−,MT5−,MT6−MMPなどについても同様にしてそれを適用できることは理解できよう。
一つの態様では、本発明では、免疫学的に定量できるMT1−MMPが以下のいずれか一つの分子種:
(i)界面活性剤及び/又は還元剤を用いて、細胞膜から遊離・可溶化させた分子
(ii)自律的に細胞膜から遊離・可溶化した分子
であることを特徴とするMT1−MMPの免疫学的定量法が提供できる。
本発明の該MT1−MMPの免疫学的定量を用いると、MT1−MMPの発現を促進または阻害する化合物のスクリーニング方法およびスクリーニングキットが提供できる。かくして、本発明に従い、該スクリーニング方法あるいはスクリーニングキットにより得られたMT1−MMPの発現を促進または阻害する化合物を含有していることを特徴とする医薬も提供できる。また、本発明の該MT1−MMPの免疫学的定量法により、癌または癌転移検査薬、さらにはリウマチ性関節炎またはアルツハイマーの進行度検査薬が提供できる。一つの具体的態様では、本発明では、免疫学的方法で反応容器に固相化されたMT1−MMPを使用することを特徴としたMT1−MMPの酵素活性の測定方法及びそのための試薬も提供できる。特には、抗MT1−MMP抗体を介して選択的に反応容器に固相化されたMT1−MMPを使用することを特徴としたMT1−MMPの酵素活性を測定する方法及びそのための試薬が提供できる。こうして、本発明では、さらに、該MT1−MMPの酵素活性を測定する方法あるいはそのための試薬を用いた、MT1−MMPの酵素活性を促進または阻害する化合物のスクリーニング方法およびスクリーニングキットが提供でき、さらには、該MT1−MMPの酵素活性を促進または阻害する化合物を含有していることを特徴とする医薬が提供される。同様に、MT1−MMPに置き換えて、他のMT−MMPについても上記した方法、試薬、キットなどが提供できる。
本明細書中、「膜型マトリックスメタロプロテアーゼ−1」(“membrane−type 1matrix metalloproteinase”)あるいは「MT1−MMP」は、マトリックスメタロプロテアーゼ−14(MMP−14)とも呼ばれる酵素(MEROPS ID:M10.014)で、ヒトにおいてはその染色体遺伝子座14q11−q12を占める遺伝子(C.Mignon et al.,Gemomics,28:pp.360−361(1995))の産物であると報告されているものであり、DNAクローニング並びに組換えタンパク質の発現に成功して、その存在が確認されるとともに詳細な構造及び特性が明らかにされたものである(H.Sato et al.,Nature,370:pp.61−65(1994);T.Takino et al.,Gene,155:pp.293−298(1995);GenBankTM accession number:D26512)。MT1−MMPは、ヒトの他、イヌ、ヤギ、ウサギ、イノシシ、ネズミなどでもその存在が確認されている。ヒトMT1−MMPのcDNAは、582個のアミノ酸残基をコードし(EMBL accession No.D26512,E09720 & E 10297;SWISS−PROT:P50281)、その構造はシグナルペプチドに続くプロペプチドドメイン、ストロメリシン−3(stromelysin−3)に類似した特異な10個のアミノ酸残基からなる挿入配列(フューリン(furin)−様酵素認識部位の可能性のある配列)、亜鉛結合サイトの可能性を持つ部位を有するコア酵素ドメイン、ヒンジドメイン、そしてトランスメンブレンドメインを抱えるヘモペキシン様ドメイン、そしてC−末端側の疎水性膜貫通ドメインからなっている。MT1−MMPは、何らかの機構により、C−末端側で切断され、膜から離脱したもの(遊離したもの)、すなわち、可溶化されたMT1−MMP(可溶型MT1−MMP)としても存在しうる。同様に、他のMT2−,MT3−,MT4−,MT5−,MT6−MMPなどについても、それらは公知であり、適宜、文献を参照することで、当業者には明らかである。
本明細書中、用語「抗体」は最も広い意味で使用され、そして特に、それらが所望の生物学的活性を示す限りは、単一のモノクローナル抗体、多エピトープ特異性を有する抗体組成物、並びに抗体フラグメント(例えば、Fvなど)、ダイアボディ型抗体などを含んでよい。抗体としては、特にモノクローナル抗体が好ましい。本発明では、抗MT1−MMPモノクローナル抗体を好適に利用できる。他の抗MT−MMPモノクローナル抗体も利用できることは明らかである。
本明細書中、「モノクローナル抗体」との用語は、広義の意味で使用されるものであってよく、所望のMT1−MMPなどのタンパク質断片に対するモノクローナル抗体の単一のものや各種エピトープに対する特異性を持つモノクローナル抗体組成物であってよく、また1価抗体または多価抗体を含むものであり、さらに天然型(intact)分子並びにそれらのフラグメント及び誘導体も表すものであり、F(ab’)2,Fab’及びFabといったフラグメントを包含し、さらに少なくとも二つの抗原又はエピトープ(epitope)結合部位を有するキメラ抗体若しくは雑種抗体、又は、例えば、クワドローム(quadrome),トリオーム(triome)などの二重特異性組換え抗体、種間雑種抗体、抗イディオタイプ抗体、さらには化学的に修飾あるいは加工などされてこれらの誘導体と考えられるもの、公知の細胞融合又はハイブリドーマ技術や抗体工学を適用したり、合成あるいは半合成技術を使用して得られた抗体、抗体生成の観点から公知である従来技術を適用したり、DNA組換え技術を用いて調製される抗体、本明細書で記載し且つ定義する標的抗原物質あるいは標的エピトープに関して中和特性を有したりする抗体又は結合特性を有する抗体を包含していてよい。
抗原物質に対して作製されるモノクローナル抗体は、培養中の一連のセルラインにより抗体分子の産生を提供することのできる任意の方法を用いて産生される。修飾語「モノクローナル」とは、実質上均質な抗体の集団から得られているというその抗体の性格を示すものであって、何らかの特定の方法によりその抗体が産生される必要があるとみなしてはならない。個々のモノクローナル抗体は、自然に生ずるかもしれない変異体が僅かな量だけ存在しているかもしれないという以外は、同一であるような抗体の集団を含んでいるものである。モノクローナル抗体は、高い特異性を持ち、それは単一の抗原性をもつサイトに対して向けられているものである。異なった抗原決定基(エピトープ)に対して向けられた種々の抗体を典型的には含んでいる通常の(ポリクローナル)抗体調製物と対比すると、それぞれのモノクローナル抗体は当該抗原上の単一の抗原決定基に対して向けられているものである。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ培養により合成され、他のイムノグロブリン類の夾雑がないあるいは少ない点でも優れている。モノクローナル抗体は、ハイブリッド抗体及びリコンビナント抗体を含むものである。それらは、所望の生物活性を示す限り、その由来やイムノグロブリンクラスやサブクラスの種別に関わりなく、可変領域ドメインを定常領域ドメインで置き換えたり(例えば、ヒト化抗体)、あるいは軽鎖を重鎖で置き換えたり、ある種の鎖を別の種の鎖でもって置き換えたり、あるいはヘテロジーニアスなタンパク質と融合せしめたりして得ることができる(例えば、米国特許第4816567号;Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.79−97,Marcel Dekker,Inc.,New York,1987など)。
モノクローナル抗体を製造する好適な方法の例には、ハイブリドーマ法(G.Kohler and C.Milstein,Nature,256,pp.495−497(1975));ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozbor et al.,Immunology Today,4,pp.72−79(1983);Kozbor,J.Immunol.,133,pp.3001(1984);Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51−63,Marcel Dekker,Inc.,New York(1987);トリオーマ法;EBV−ハイブリドーマ法(Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.,pp.77−96(1985))(ヒトモノクローナル抗体を産生するための方法);米国特許第4946778号(単鎖抗体の産生のための技術)が挙げられる他、抗体に関して以下の文献が挙げられる:S.Biocca et al.,EMBO J,9,pp.101−108(1990);R.E.Bird et al.,Science,242,pp.423−426(1988);M.A.Boss et al.,Nucl.Acids Res.,12,pp.3791−3806(1984);J.Bukovsky et al.,Hybridoma,6,pp.219−228(1987);M.DAINO et al.,Anal.Biochem.,166,pp.223−229(1987);J.S.Huston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85,pp.5879−5883(1988);P.T.Jones et al.,Nature,321,pp.522−525(1986);J.J.Langone et al.(ed.),“Methods in Enzymology”,Vol.121(Immunochemical Techniques,Part I:Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies),Academic Press,New York(1986);S.Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81,pp.6851−6855(1984);V.T.Oi et al.,BioTechniques,4,pp.214−221(1986);L.Riechmann et al.,Nature,332,pp.323−327(1988);A.Tramontano et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,83,pp.6736−6740(1986);C.Wood et al.,Nature,314,pp.446−449(1985);Nature,314,pp.452−454(1985)あるいはそこで引用された文献(それらの中にある記載はそれを参照することにより本明細書の開示に含められる)。
本発明に係るモノクローナル抗体は、それらが所望の生物活性を示す限り、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の種から誘導される又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体の対応配列と同一又はホモローガスであるが、一方、鎖の残部は、別の種から誘導される又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体の対応配列と同一又はホモローガスである、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を包含するものであってもよい(米国特許第4816567号明細書;Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81,pp.6851−6855(1984))。
以下、モノクローナル抗体の作製につき詳しく説明する。
本発明のモノクローナル抗体は、ミエローマ細胞を用いての細胞融合技術(Kohler,G.& Milstein,C.,Nature,256:495(1975)などにより開示された細胞融合技術)を利用して得られたモノクローナル抗体であってよく、例えば次のような工程で作製できる。
1.免疫原性抗原の調製
2.免疫原性抗原による動物の免疫
3.ミエローマ細胞(骨髄腫細胞)の調製
4.抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞融合
5.ハイブリドーマ(融合細胞)の選択及びモノクローン化
6.モノクローナル抗体の製造
1.免疫原性抗原の調製
抗原としては、上記で記載してあるように、MT−MMPs、例えばMT1−MMPの可溶性タンパク質断片又はそれから誘導された断片を用いることができる。例えば、決定されたMT1−MMPタンパク質の配列情報を基に、適当なオリゴペプチドを化学合成しそれを抗原として利用することもできる。あるいは、該情報を基に、適切な遺伝子ライブラリーを構築したり、あるいは公知又は容易に入手できる遺伝子ライブラリーを選択使用し、組換えDNA技術を含む遺伝子工学的操作を適用して、例えば、MT1−MMPのヘモペキシンドメイン、亜鉛結合サイトの可能性を持つ部位を有するコア酵素ドメイン、組換えMT1−MMPの可溶性タンパク質などを取得してそれを利用することができる。抗原としては、好ましくは、人為的に変性し、エピトープを露出させたMT1−MMPを用いることが出来る。上記手法は、他のMT−MMPについても同様に行い得る。
遺伝子組換え技術(組換えDNA技術を含む)は、例えばJ.Sambrook,E.F.Fritsch & T.Maniatis,“Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd edition)”,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(1989);D.M.Glover et al.ed.,“DNA Cloning”,2nd ed.,Vol.1to4,(The Practical Approach Series),IRL Press,Oxford University Press(1995);日本生化学会編、「続生化学実験講座1、遺伝子研究法II」、東京化学同人(1986);日本生化学会編、「新生化学実験講座2、核酸III(組換えDNA技術)」、東京化学同人(1992);R.Wu ed.,“Methods in Enzymology”,Vol.68(Recombinant DNA),Academic Press,New York(1980);R.Wu et al.ed.,“Methods in Enzymology”,Vol.100(Recombinant DNA,Part B)&101(Recombinant DNA,Part C),Academic Press,New York(1983);R.Wu et al.ed.,“Methods in Enzymology”,Vol.153(Recombinant DNA,Part D),154(Recombinant DNA,Part E)&155(Recombinant DNA,Part F),Academic Press,New York(1987);J.H.Miller ed.,“Methods in Enzymology”,Vol.204,Academic Press,New York(1991);R.Wu et al.ed.,“Methods in Enzymology”,Vol.218,Academic Press,New York(1993);S.Weissman(ed.),“Methods in Enzymology”,Vol.303,Academic Press,New York(1999);J.C.Glorioso et al.(ed.),“Methods in Enzymology”,Vol.306,Academic Press,New York(1999)などに記載の方法あるいはそこで引用された文献記載の方法あるいはそれらと実質的に同様な方法や改変法により行うことができる(それらの中にある記載はそれを参照することにより本明細書の開示に含められる)。
抗原は、そのまま適当なアジュバントと混合して動物を免疫するのに使用できるが、免疫原性コンジュゲートなどにしてもよい。例えば、免疫原として用いる抗原は、MT−MMP(例えばMT1−MMP)を断片化したもの、あるいはそのアミノ酸配列に基づぎ特徴的な配列領域を選び、ポリペプチドをデザインして化学合成して得られた合成ポリペプチド断片であってもよい。また、その断片を適当な縮合剤を介して種々の担体タンパク質類と結合させてハプテン−タンパク質の如き免疫原性コンジュゲートとし、これを用いて特定の配列のみと反応できる(あるいは特定の配列のみを認識できる)モノクローナル抗体をデザインするのに用いることもできる。デザインされるポリペプチドには予めシステイン残基などを付加し、免疫原性コンジュゲートの調製を容易にできるようにしておくことができる。担体タンパク質類と結合させるにあたっては、担体タンパク質類はまず活性化されることができる。こうした活性化にあたり活性化結合基を導入することが挙げられる。
活性化結合基としては、(1)活性化エステルあるいは活性化カルボキシル基、例えばニトロフェニルエステル基、ペンタフルオロフェニルエステル基、1−ベンゾトリアゾールエステル基、N−スクシンイミドエステル基など、(2)活性化ジチオ基、例えば2−ピリジルジチオ基などが挙げられる。担体タンパク質類としては、キーホール・リンペット・ヘモシアニン(KLH)、牛血清アルブミン(BSA)、卵白アルブミン、グロブリン、ポリリジンなどのポリペプタイド、細菌菌体成分、例えばBCGなどが挙げられる。
2.免疫原性抗原による動物の免疫
免疫は、当業者に知られた方法により行うことができ、例えば村松繁、他編、実験生物学講座14、免疫生物学、丸善株式会社、昭和60年、日本生化学会編、続生化学実験講座5、免疫生化学研究法、東京化学同人、1986年、日本生化学会編、新生化学実験講座12、分子免疫学III、抗原・抗体・補体、東京化学同人、1992年などに記載の方法に準じて行うことができる。免疫化剤を(必要に応じアジュバントと共に)一回又はそれ以上の回数哺乳動物に注射することにより免疫化される。代表的には、該免疫化剤及び/又はアジュバントを哺乳動物に複数回皮下注射あるいは腹腔内注射することによりなされる。免疫化剤は、上記抗原ペプチドあるいはMMPs、例えばMT1−MMPタンパク質あるいはその断片を含むものが挙げられる。免疫化剤は、免疫処理される哺乳動物において免疫原性であることの知られているタンパク質(例えば上記担体タンパク質類など)とコンジュゲートを形成せしめて使用してもよい。アジュバントとしては、例えばフロイント完全アジュバント、リビ(Ribi)アジュバント、百日咳ワクチン、BCG、リピッドA、リポソーム、水酸化アルミニウム、シリカなどが挙げられる。免疫は、例えばBALB/cなどのマウス、ハムスター、その他の適当な動物を使用して行われる。抗原の投与量は、例えばマウスに対して約1〜400μg/動物で、一般には宿主動物の腹腔内や皮下に注射し、以後1〜4週間おきに、好ましくは1〜2週間ごとに腹腔内、皮下、静脈内あるいは筋肉内に追加免疫を2〜10回程度反復して行う。免疫用のマウスとしてはBALB/c系マウスの他、BALB/c系マウスと他系マウスとのF1マウスなどを用いることもできる。必要に応じ、抗体価測定系を調製し、抗体価を測定して動物免疫の程度を確認できる。本発明の抗体は、こうして得られ免疫された動物から得られたものであってよく、例えば、抗血清、ポリクローナル抗体等を包含する。
3.ミエローマ細胞(骨髄腫細胞)の調製
細胞融合に使用される無限増殖可能株(腫瘍細胞株)としては免疫グロブリンを産生しない細胞株から選ぶことができ、例えばP3−NS−1−Ag4−1(NS−1,Eur.J.Immunol.,6:511−519,1976)、SP−2/0−Ag14(SP−2,Nature,276:269〜270,1978)、マウスミエローマMOPC−21セルライン由来のP3−X63−Ag8−U1(P3U1,Curr.topics Microbiol.Immunol.,81:1−7,1978)、P3−X63−Ag8(X63,Nature,256:495−497,1975)、P3−X63−Ag8−653(653,J.Immunol.,123:1548−1550,1979)などを用いることができる。8−アザグアニン耐性のマウスミエローマ細胞株はダルベッコMEM培地(DMEM培地)、RPMI−1640培地などの細胞培地に、例えばペニシリン、アミカシンなどの抗生物質、牛胎児血清(FCS)などを加え、さらに8−アザグアニン(例えば5〜45μg/ml)を加えた培地で継代されるが、細胞融合の2〜5日前に正常培地で継代して所要数の細胞株を用意することができる。また使用細胞株は、凍結保存株を約37℃で完全に解凍したのちRPMI−1640培地などの正常培地で3回以上洗浄後、正常培地で培養して所要数の細胞株を用意したものであってもよい。
4.抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞融合
上記2.の工程に従い免疫された動物、例えばマウスは最終免疫後、2〜5日後にその脾臓が摘出され、それから脾細胞懸濁液を得る。脾細胞の他、生体各所のリンパ節細胞を得て、それを細胞融合に使用することもできる。こうして得られた脾細胞懸濁液と上記3.の工程に従い得られたミエローマ細胞株を、例えば最小必須培地(MEM培地)、DMEM培地、RPMI−1640培地などの細胞培地中に置き、細胞融合剤、例えばポリエチレングリコールを添加する。細胞融合剤としては、この他各種当該分野で知られたものを用いることができ、この様なものとしては不活性化したセンダイウイルス(HVJ:Hemagglutinating Virus of Japan)なども挙げられる。好ましくは、例えば30〜60%のポリエチレングリコールを0.5〜2ml加えることができ、分子量が1,000〜8,000のポリエチレングリコールを用いることができ、さらに分子量が1,000〜4,000のポリエチレングリコールがより好ましく使用できる。融合培地中でのポリエチレングリコールの濃度は、例えば30〜60%となるようにすることが好ましい。必要に応じ、例えばジメチルスルホキシドなどを少量加え、融合を促進することもできる。融合に使用する脾細胞(リンパ球):ミエローマ細胞株の割合は、例えば1:1〜20:1とすることが挙げられるが、より好ましくは4:1〜7:1とすることができる。
融合反応を1〜10分間行い、次にRPMI−1640培地などの細胞培地を加える。融合反応処理は複数回行うこともできる。融合反応処理後、遠心などにより細胞を分離した後選択用培地に移す。
5.ハイブリドーマ(融合細胞)の選択及びモノクローン化
選択用培地としては、例えばヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含む、FCS含有MEM培地、RPMI−1640培地などの培地、所謂HAT培地が挙げられる。選択培地交換の方法は、一般的には培養プレートに分注した容量と等容量を翌日加え、その後1〜3日ごとにHAT培地で半量ずつ交換するというように処理することができるが、適宜これに変更を加えて行うこともできる。また融合後8〜16日目には、アミノプテリンを除いた、所謂HT培地で1〜4日ごとに培地交換をすることができる。フィーダーとして、例えばマウス胸腺細胞を使用することもでき、それが好ましい場合がある。
ハイブリドーマの増殖のさかんな培養ウェルの培養上清を、例えば放射免疫分析(RIA)、酵素免疫分析(ELISA)、蛍光免疫分析(FIA)、発光免疫分析(LIA)、ウェスタンブロティングなどの測定系、あるいは蛍光惹起細胞分離装置(FACS)などで、所定の断片ペプチドを抗原として用いたり、あるいは標識抗マウス抗体を用いて目的抗体を測定するなどして、スクリーニングしたりする。
目的抗体を産生しているハイブリドーマをクローニングする。クローニングは、寒天培地中でコロニーをピック・アップするか、あるいは限界希釈法によりなされうる。限界希釈法でより好ましく行うことができる。クローニングは複数回行うことが好ましい。
6.モノクローナル抗体の製造
得られたハイブリドーマ株は、FCS含有MEM培地、RPMI−1640培地などの適当な増殖用培地中で培養し、その培地上清から所望のモノクローナル抗体を得ることが出来る。大量の抗体を得るためには、ハイブリドーマを腹水化することが挙げられる。この場合ミエローマ細胞由来の動物と同系の組織適合性動物の腹腔内に各ハイブリドーマを移植し、増殖させるか、あるいは例えばヌード・マウスなどに各ハイブリドーマを移植し、増殖させ、該動物の腹水中に産生されたモノクローナル抗体を回収して得ることが出来る。動物はハイブリドーマの移植に先立ち、プリスタン(2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン)などの鉱物油を腹腔内投与しておくことができ、その処理後、ハイブリドーマを増殖させ、腹水を採取することもできる。腹水液はそのまま、あるいは従来公知の方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿法などの塩析、セファデックスなどによるゲルろ過法、イオン交換クロマトグラフィー法、電気泳動法、透析、限外ろ過法、アフィニティ・クロマトグラフィー法、高速液体クロマトグラフィー法などにより精製してモノクローナル抗体として用いることができる。好ましくは、モノクローナル抗体を含有する腹水は、硫安分画した後、DEAE−セファロースの如き、陰イオン交換ゲル及びプロテインAカラムの如きアフィニティ・カラムなどで処理し精製分離処理できる。特に好ましくは抗原又は抗原断片(例えば合成ペプチド、組換え抗原タンパク質あるいはペプチド、抗体が特異的に認識する部位など)を固定化したアフィニティ・クロマトグラフィー、プロテインAを固定化したアフィニティ・クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイト・クロマトグラフィーなどが挙げられる。
また、トランスジェニックマウス又はその他の生物、例えば、その他の哺乳動物は、本発明の免疫原ポリペプチド産物に対するヒト化抗体等の抗体を発現するのに用いることができる。
またこうして大量に得られた抗体の配列を決定したり、ハイブリドーマ株から得られた抗体をコードする核酸配列を利用して、遺伝子組換え技術により抗体を作製することも可能である。当該モノクローナル抗体をコードする核酸は、例えばマウス抗体の重鎖や軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用するなどの慣用の手法で単離し配列決定することができる。一旦単離されたDNAは、上記したようにして発現ベクターに入れ、CHO,COSなどの宿主細胞に入れることができる。該DNAは、例えばホモジーニアスなマウスの配列に代えて、ヒトの重鎖や軽鎖の定常領域ドメインをコードする配列に置換するなどして修飾することが可能である(Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6581,1984)。かくして所望の結合特異性を有するキメラ抗体やハイブリッド抗体も調製することが可能である。また、抗体は、下記するような縮合剤を用いることを含めた化学的なタンパク合成技術を適用して、キメラ抗体やハイブリッド抗体を調製するなどの修飾をすることも可能である。
ヒト化抗体は、当該分野で知られた技術により行うことが可能である(例えば、Jones et al.,Nature,321:pp.522−525(1986);Riechmann et al.,Nature,332:pp.323−327(1988);Verhoeyen et al.,Science,239:pp.1534−1536(1988))。ヒトモノクローナル抗体も、当該分野で知られた技術により行うことが可能で、ヒトモノクローナル抗体を生産するためのヒトミエローマ細胞やヒト・マウスヘテロミエローマ細胞は当該分野で知られている(Kozbor,J.Immunol.,133,pp.3001(1984);Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51−63,Marcel Dekker,Inc.,New York(1987))。バイスペシフィックな抗体を製造する方法も当該分野で知られている(Millstein et al.,Nature,305:pp.537−539(1983);WO93/08829;Traunecker et al.,EMBO J.,10:pp.3655−3659(1991);Suresh et al.,“Methods in Enzymology”,Vol.121,pp.210(1986))。
さらにこれら抗体をトリプシン、パパイン、ペプシンなどの酵素により処理して、場合により還元して得られるFab、Fab’、F(ab’)2といった抗体フラグメントにして使用してもよい。
抗体は、既知の任意の検定法、例えば競合的結合検定、直接及び間接サンドイッチ検定、及び免疫沈降検定に使用することができる(Zola,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques,pp.147−158,CRC Press,Inc.,1987)。
抗体を検出可能な原子団にそれぞれコンジュゲートするには、当分野で知られる任意の方法を使用することができ、例えば、David et al.,Biochemistry,13巻,1014−1021頁(1974);Pain et al,J.Immunol.Meth.,40:pp.219−231(1981);及び“Methods in Enzymolog”,Vol.184,pp.138−163(1990)により記載の方法が挙げられる。標識物を付与する抗体としては、IgG画分、更にはペプシン消化後還元して得られる特異的結合部Fab’を用いることができる。これらの場合の標識物の例としては、下記するように酵素(ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼあるいはβ−D−ガラクトシダーゼなど)、化学物質、蛍光物質あるいは放射性同位元素などがある。
本発明の抗体、特にはモノクローナル抗体を使用しての検知・測定は、イムノ染色、例えば組織あるいは細胞染色、イムノアッセイ、例えば競合型イムノアッセイまたは非競合型イムノアッセイで行うこともでき、FIA,LIA,RIA,ELISAなどを用いることもでき、B−F分離を行ってもよいし、あるいは行わないでその測定を行うこともできる。好ましくは放射免疫測定法や酵素免疫測定法を採用することができ、さらにサンドイッチ型アッセイを好ましく適用できる。例えばサンドイッチ型アッセイでは、一方を本発明のMT1−MMPのヘモペキシンドメインに対する抗体などのMT−MMPのヘモペキシンドメインに対する抗体とし、他方を通常のMT1−MMPに対する抗体などの抗MT−MMP抗体とし、そして一方を検出可能に標識化する。同じ抗原を認識できる他の抗体を固相に固定化する。検体と標識化抗体及び固相化抗体を必要に応じ順次反応させるためインキュベーション処理し、ここで非結合抗体を分離後、標識物を測定する。測定された標識の量は抗原、すなわち可溶性MT−MMP抗原の量(可溶性MT1−MMP抗原の量)と比例する。このアッセイでは、不溶化抗体や、標識化抗体の添加の順序に応じて同時サンドイッチ型アッセイ、フォワード(forward)サンドイッチ型アッセイあるいは逆サンドイッチ型アッセイなどと呼ばれる。例えば洗浄、撹拌、震盪、ろ過あるいは抗原の予備抽出等は、特定の状況のもとでそれら測定工程の中で適宜採用される。特定の試薬、緩衝液等の濃度、温度あるいはインキュベーション処理時間などのその他の測定条件は、検体中の抗原の濃度、検体試料の性質等の要素に従い変えることができる。当業者は通常の実験法を用いながら各測定に対して有効な最適の条件を適宜選定して測定を行うことが出来る。
抗原あるいは抗体を固相化できる多くの担体が知られており、本発明ではそれらから適宜選んで用いることができる。担体としては、抗原抗体反応などに使用されるものが種々知られており、本発明においても勿論これらの公知のものの中から選んで使用できる。特に好適に使用されるものとしては、例えばガラス、例えば活性化ガラス、多孔質ガラス、シリカゲル、シリカ−アルミナ、アルミナ、磁化鉄、磁化合金などの無機材料、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリレート、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアクリルアミド、架橋ポリアクリルアミド、スチレン−メタクリレート共重合体、ポリグリシジルメタクリレート、アクロレイン−エチレングリコールジメタクリレート共重合体など、架橋化アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、デキストラン、アガロース、架橋アガロース、セルロース、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートなどの天然または変成セルロース、架橋デキストラン、ナイロンなどのポリアミド、ポリウレタン、ポリエポキシ樹脂などの有機高分子物質、さらにそれらを乳化重合して得られたもの、細胞、赤血球などで、必要に応じ、シランカップリング剤などで官能性基を導入してあるものが挙げられる。
さらに、ろ紙、ビーズ、試験容器の内壁、例えば試験管、タイタープレート、タイターウェル、ガラスセル、合成樹脂製セルなどの合成材料からなるセル、ガラス棒、合成材料からなる棒、末端を太くしたりあるいは細くしたりした棒、末端に丸い突起をつけたりあるいは偏平な突起をつけた棒、薄板状にした棒などの固体物質(物体)の表面などが挙げられる。
これら担体へは、抗体を結合させることができ、好ましくは本発明で得られる抗原に対し特異的に反応する抗体、特にはモノクローナル抗体を結合させることができる。担体とこれら抗原抗体反応に関与するものとの結合は、吸着などの物理的な手法、あるいは縮合剤などを用いたり、活性化されたものなどを用いたりする化学的な方法、さらには相互の化学的な結合反応を利用した手法などにより行うことが出来る。
標識としては、酵素、酵素基質、酵素インヒビター、補欠分子類、補酵素、酵素前駆体、アポ酵素、蛍光物質、色素物質、化学ルミネッセンス化合物、発光物質、発色物質、磁気物質、金属粒子、例えば金コロイドなど、放射性物質などを挙げることができる。酵素としては、脱水素酵素、還元酵素、酸化酵素などの酸化還元酵素、例えばアミノ基、カルボキシル基、メチル基、アシル基、リン酸基などを転移するのを触媒する転移酵素、例えばエステル結合、グリコシド結合、エーテル結合、ペプチド結合などを加水分解する加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼ、リガーゼなどを挙げることができる。酵素は複数の酵素を複合的に用いて検知に利用することもできる。例えば酵素的サイクリングを利用することもできる。
代表的な放射性物質の標識用同位体元素としては、[32P],[125I],[131I],[3H],[14C],[35S]などが挙げられる。
代表的な酵素標識としては、西洋ワサビペルオキシダーゼなどのペルオキシダーゼ、大腸菌β−D−ガラクトシダーゼなどのガラクトシダーゼ、マレエート・デヒドロゲナーゼ、グルコース−6−フォスフェート・デヒドロゲナーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコアミラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、カタラーゼ、ウシ小腸アルカリホスファターゼ、大腸菌アルカリホスファターゼなどのアルカリフォスファターゼなどが挙げられる。
アルカリホスファターゼを用いた場合、4−メチルウンベリフェリルフォスフェートなどのウンベリフェロン誘導体、ニトロフェニルホスフェートなどのリン酸化フェノール誘導体、NADPを利用した酵素的サイクリング系、ルシフェリン誘導体、ジオキセタン誘導体などの基質を使用したりして、生ずる蛍光、発光などにより測定できる。ルシフェリン、ルシフェラーゼ系を利用したりすることもできる。カタラーゼを用いた場合、過酸化水素と反応して酸素を生成するので、その酸素を電極などで検知することもできる。電極としてはガラス電極、難溶性塩膜を用いるイオン電極、液膜型電極、高分子膜電極などであることもできる。
酵素標識は、ビオチン標識体と酵素標識アビジン(ストレプトアビジン)に置き換えることも可能である。標識は、複数の異なった種類の標識を使用することもできる。こうした場合、複数の測定を連続的に、あるいは非連続的に、そして同時にあるいは別々に行うことを可能にすることもできる。
本発明においては、信号の形成に4−ヒドロキシフェニル酢酸、1,2−フェニレンジアミン、テトラメチルベンジジンなどと西洋ワサビ・ペルオキシダーゼ、ウンベリフェリルガラクトシド、ニトロフェニルガラクトシドなどとβ−D−ガラクトシダーゼ、グルコース−6−リン酸・デヒドロゲナーゼなどの酵素試薬の組合わせも利用でき、ヒドロキノン、ヒドロキシベンゾキノン、ヒドロキシアントラキノンなどのキノール化合物、リポ酸、グルタチオンなどのチオール化合物、フェノール誘導体、フェロセン誘導体などを酵素などの働きで形成しうるものが使用できる。
蛍光物質あるいは化学ルミネッセンス化合物としては、フルオレセインイソチオシアネート、例えばローダミンBイソチオシアネート、テトラメチルローダミンイソチオシアネートなどのローダミン誘導体、ダンシルクロリド、ダンシルフルオリド、フルオレスカミン、フィコビリプロテイン、アクリジニウム塩、ルミフェリン、ルシフェラーゼ、エクォリンなどのルミノール、イミダゾール、シュウ酸エステル、希土類キレート化合物、クマリン誘導体などが挙げられる。
標識するには、チオール基とマレイミド基の反応、ピリジルジスルフィド基とチオール基の反応、アミノ基とアルデヒド基の反応などを利用して行うことができ、公知の方法あるいは当該分野の当業者が容易になしうる方法、さらにはそれらを修飾した方法の中から適宜選択して適用できる。また上記免疫原性複合体作製に使用されることのできる縮合剤、担体との結合に使用されることのできる縮合剤などを用いることができる。
縮合剤としては、例えばホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソチオシアネート、N,N’−ポリメチレンビスヨードアセトアミド、N,N’−エチレンビスマレイミド、エチレングリコールビススクシニミジルスクシネート、ビスジアゾベンジジン、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、スクシンイミジル 3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、N−スクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、N−スルホスクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート、N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート、N−スクシンイミジル 4−(1−マレイミドフェニル)ブチレート、N−(ε−マレイミドカプロイルオキシ)コハク酸イミド(EMCS),イミノチオラン、S−アセチルメルカプトコハク酸無水物、メチル−3−(4’−ジチオピリジル)プロピオンイミデート、メチル−4−メルカプトブチリルイミデート、メチル−3−メルカプトプロピオンイミデート、N−スクシンイミジル−S−アセチルメルカプトアセテートなどが挙げられる。
本発明の測定法によれば、測定すべき物質を酵素などで標識した抗体、特には標識モノクローナル抗体などの標識抗体試薬と、担体に結合された抗体とを順次反応させることができるし、同時に反応させることもできる。試薬を加える順序は選ばれた担体系の型により異なる。感作されたプラスチックなどのビーズを用いた場合には、酵素などで標識した抗体、特には標識モノクローナル抗体などの標識抗体試薬を測定すべき物質を含む検体試料と共に最初適当な試験管中に一緒に入れ、その後該感作されたプラスチックなどのビーズを加えることにより測定を行うことができる。
本発明の定量法においては、免疫学的測定法が用いられるが、その際の固相担体としては、抗体などタンパク質を良く吸着するポリスチレン製、ポリカーボネイト製、ポリプロピレン製あるいはポリビニル製のボール、マイクロプレート、スティック、微粒子あるいは試験管などの種々の材料および形態を任意に選択し、使用することができる。
測定にあたっては至適pH、例えばpH約4〜9に保つように適当な緩衝液系中で行うことができる。特に適切な緩衝剤としては、例えばアセテート緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤、フォスフェート緩衝剤、トリス緩衝剤、トリエタノールアミン緩衝剤、ボレート緩衝剤、グリシン緩衝剤、炭酸塩緩衝剤、トリス−塩酸緩衝剤などが挙げられる。緩衝剤は互いに任意の割合で混合して用いることができる。抗原抗体反応は約0℃〜60℃の間の温度で行うことが好ましい。
酵素などで標識されたモノクローナル抗体などの抗体試薬及び担体に結合せしめられた抗体試薬、さらには測定すべき物質のインキュベーション処理は、平衡に達するまで行うことができるが、抗原抗体反応の平衡が達成されるよりもずっと早い時点で固相と液相とを分離して限定されたインキュベーション処理の後に反応を止めることができ、液相又は固相のいずれかにおける酵素などの標識の存在の程度を測ることができる。測定操作は、自動化された測定装置を用いて行うことが可能であり、ルミネセンス・ディテクター、ホト・ディテクターなどを使用して基質が酵素の作用で変換されて生ずる表示シグナルを検知して測定することもできる。
抗原抗体反応においては、それぞれ用いられる試薬、測定すべき物質、さらには酵素などの標識を安定化したり、抗原抗体反応自体を安定化するように適切な手段を講ずることができる。さらに、非特異的な反応を除去し、阻害的に働く影響を減らしたり、あるいは測定反応を活性化したりするため、タンパク質、安定化剤、界面活性化剤などをインキュベーション溶液中に加えることもできる。
当該分野で普通に採用されていたりあるいは当業者に知られた非特異的結合反応を防ぐためのブロッキング処理を施してもよく、例えば、哺乳動物などの正常血清タンパク質、アルブミン、スキムミルク、乳発酵物質、コラーゲン、ゼラチンなどで処理することができる。非特異的結合反応を防ぐ目的である限り、それらの方法は特に限定されず用いることが出来る。
特に、本発明の抗MT1−MMP抗体を使用しての酵素免疫測定法においては、例えば、当該分野で広く知られた酵素免疫測定技術を制限すること無く適用できるが、該酵素免疫測定法としては、例えば、石川栄治監訳、P.TIJSSEN著、生化学実験法・エンザイムイムノアッセイ、1989年、株式会社東京化学同人などに記載の方法などが挙げられる。例えば、第一抗体固相法、二抗体法、エミット法(Enzyme multiplied immunoassay technique;EMIT)、エンザイムチャンネリングイムノアッセイ法、酵素活性修飾物質イムノアッセイ法、リポソーム膜−酵素イムノアッセイ法、サンドイッチ法、イムノエンザイムメトリックアッセイ法、酵素活性増強イムノアッセイ法などが挙げられ、それらは競合法であっても、非競合法であってもよい。
本発明の測定方法で測定される試料としては、あらゆる形態の溶液やコロイド溶液、非流体試料などが使用しうるが、好ましくは生物由来の試料、例えば胸腺、睾丸、腸、腎臓、脳、乳房、卵巣、子宮、肺、肝、胃、膵、皮膚、食道などの臓器、器官、それらの腫瘍、例えば乳癌、卵巣癌、肺癌、子宮癌、結腸・直腸癌、各種肉腫、血液、血清、血漿、関節液、脳脊髄液、唾液、羊水、尿、その他の体液、細胞培養液、組織培養液、組織ホモジュネート、生検試料、組織、細胞などが挙げられる。
本発明に従って、MT−MMP(例えば、MT1−MMP)の免疫学的定量を行うことにより、MT−MMP(例えば、MT1−MMP)を膜から遊離及び/又は可溶化された分子種(可溶型MT−MMP)として測定できることを見いだした。そして、試料を、例えば界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたもので適切に処理すると、何らかの機構により、膜から離脱したもの(遊離したもの)及び/又は可溶化したものが得られ、MT1−MMPといったMT−MMPの定量などの測定が効果的に行うことができる。かくして、界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを用いて、MT1−MMP、その他のMT−MMPを細胞膜から遊離及び/又は可溶化させる技術が提供される。さらに、界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを用いて、MT−MMPs、例えば、MT1−,MT2−,MT3−,MT4−,MT5−,MT6−MMPなどを、膜から遊離及び/又は可溶化せしめる技術が提供できる。該遊離及び/又は可溶化技術を利用すれば、MT−MMPに対する抗体、特にはモノクローナル抗体(例えば、抗MT1−MMP抗体,MT2−MMP抗体,MT3−MMP抗体,MT4−MMP抗体,MT5−MMP抗体,MT6−MMP抗体など)などを用いて、MT−MMP、特には遊離及び/又は可溶化されたMT−MMPを免疫学的定量に付すことができる。
該界面活性剤としては、膜からMT−MMPを遊離及び/又は可溶化せしめる働きを有するものであれば如何なるものも使用できるが、好ましくはMT−MMPの免疫学的な定量に悪影響を及ぼさないものが挙げられる。該界面活性剤としては、例えば陰イオン界面活性剤などが挙げられ、代表的なものとしては、高級アルキル硫酸のアルカリ金属塩などである。好ましい界面活性剤としては、例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などが挙げられる。該還元剤としては、膜からMT−MMPを遊離及び/又は可溶化せしめる働きを有するものあるいはMT−MMP分子中にある酸化還元反応に感受性の基(例えば、−S−S−結合など)に作用するものが挙げられるが、好ましくはMT−MMPの免疫学的な定量に悪影響を及ぼさないものが挙げられる。該還元剤としては、例えば2−メルカプトエタノール、ジチオスレイトールなどのチオアルコール類、グルタチオンなどの硫黄含有有機化合物などが挙げられる。
好ましくは、界面活性剤及び還元剤の両方を使用して、膜からMT−MMPを遊離及び/又は可溶化せしめることができるし、MT−MMPに対する抗体などを用いて、MT−MMP、特には遊離及び/又は可溶化されたMT−MMPを免疫学的に測定(定量を含む)することができる。かくして、遊離及び/又は可溶化MT−MMPと膜に結合しているMT−MMPとを区別することが可能となったり、膜に結合して検知あるいは測定が困難である場合にもMT−MMPを検知あるいは測定することが可能となる。特に、界面活性剤としてSDS、還元剤として2−メルカプトエタノールを用いて、MT1−MMPを遊離及び/又は可溶化せしめることができる。また、MT1−MMPに対する抗体、特にはモノクローナル抗MT1−MMP抗体を使用して該遊離及び/又は可溶化されたMT1−MMPを免疫学的に定量できる。
これら個々の免疫学的測定法を含めた各種の分析・定量法を本発明の測定方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて、本発明の当該対象物質あるいはそれと実質的に同等な活性を有する物質に関連した測定系を構築すればよい。
これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる〔例えば、入江 寛編,「ラジオイムノアッセイ」,講談社,昭和49年発行;入江 寛編,「続ラジオイムノアッセイ」,講談社,昭和54年発行;石川栄治ら編,「酵素免疫測定法」,医学書院,昭和53年発行;石川栄治ら編,「酵素免疫測定法」(第2版),医学書院,昭和57年発行;石川栄治ら編,「酵素免疫測定法」(第3版),医学書院,昭和62年発行;石川栄治著、「超高感度酵素免疫測定法」,学会出版センター,1993年12月発行;H.V.Vunakis et al.(ed.),“Methods in Enzymology”,Vol.70(Immunochemical Techniques,Part A),Academic Press,New York(1980);J.J.Langone et al.(ed.),“Methods in Enzymology”,Vol.73(Immunochemical Techniques,Part B),Academic Press,New York(1981);J.J.Langone et al.(ed.),“Methods in Enzymology”,Vol.74(Immunochemical Techniques,Part C),Academic Press,New York(1981);J.J.Langone et al.(ed.),“Methods in Enzymology”,Vol.84(Immunochemical Techniques,Part D:Selected Immunoassays),Academic Press,New York(1982);J.J.Langone et al.(ed.),“Methods in Enzymology”,Vol.92(Immunochemical Techniques,Part E:Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods),Academic Press,New York(1983);J.J.Langone et al.(ed.),“Methods in Enzymology”,Vol.121(Immunochemical Techniques,Part I:Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies),Academic Press,New York(1986);J.J.Langone et al.(ed.),“Methods in Enzymology”,Vol.178(Antibodies,Antigens,and Molecular Mimicry),Academic Press,New York(1989);M.Wilchek et al.(ed.),“Methods in Enzymology”,Vol.184(Avidin−Biotin Technology),Academic Press,New York(1990);J.J.Langone et al.(ed.),“Methods in Enzymology”,Vol.203(Molecular Design and Modeling:Concepts and Applications,Part B:Anibodies and Antigens,Nucleic Acids,Polysaccharides,and Drugs),Academic Press,New York(1991)などあるいはそこで引用された文献(それらの中にある記載はそれを参照することにより本明細書の開示に含められる)〕。
本発明では、MT1−MMPなどのMT−MMPの免疫学的定量法を利用して、MT1−MMPの発現などのMT−MMPの発現を促進または阻害する化合物をスクリーニングすることを特徴とするスクリーニング方法が提供される。該スクリーニング方法では、例えば、MT−MMP(例えば、MT1−MMP)を発現する培養細胞、形質転換されたMT−MMP(例えば、MT1−MMP)発現細胞、あるいはトランスジェニックマウスなどのトランスジェニック動物を、任意の生理活性因子、薬剤、化合物などの存在下に維持し、無処理の場合と対照させ、該MT−MMP(例えば、MT1−MMP)の免疫学的定量法により試料中のMT−MMP(例えば、MT1−MMP)の量につき測定を行うことにより、MT−MMP(例えば、MT1−MMP)産生量などの増減を比較して各添加物の効果を評価する。該スクリーニング方法に付される添加物としては、MT−MMP(例えば、MT1−MMP)の発現を促進または阻害する機能をもつ候補のものであれば何らの制限もなくいかなるものであってもよく、それらは公知のものでも新規のものでもよい。該添加物としては、遺伝子の発現制御に関わるもの、MT−MMP(例えば、MT1−MMP)のアンチセンスRNAなどのアンチセンス核酸、MT−MMP(例えば、MT1−MMP)のmRNAを配列依存的に切断するリボザイムなどが考えられる。添加物は、培養液中に直接あるいはハプテン化して添加しても良いし、それぞれを発現する遺伝子を細胞内に導入しても良い。MT−MMP(例えば、MT1−MMP)の発現を強力に、かつ特異的に抑制するアンチセンスRNAなどの核酸やリボザイムの設計および選択にMT−MMP(例えば、MT1−MMP)免疫学的定量法は有用である。MT−MMP(例えば、MT1−MMP)発現抑制剤は、癌転移抑制に対する医薬として有用である。
また、本発明のMT−MMP(例えば、MT1−MMP)の免疫学的定量法は、癌検査または癌転移検査、さらにはリウマチ性関節炎またはアルツハイマーの進行度検査に有用であり、癌検査または癌転移検査用薬、さらにはリウマチ性関節炎またはアルツハイマーの進行度検査薬も提供される。特に、MT−MMP(例えば、MT1−MMP)免疫学的定量試薬は、癌検査または癌転移検査用薬、さらにはリウマチ性関節炎またはアルツハイマーの進行度検査薬として有用である。
本発明では、固相化された抗MT1−MMP抗体などの固相化抗MT−MMP抗体、特には固相化されたモノクローナル抗MT1−MMP抗体などの固相化されたモノクローナル抗MT−MMP抗体が提供される。該固相化された抗MT1−MMP抗体(例えば、固相化されたモノクローナル抗MT1−MMP抗体)などの固相化抗MT−MMP抗体を使用して、試料中のMT1−MMPの酵素活性をスクリーニングすることが可能である。該スクリーニング法では、例えば反応容器などに固相化された抗MT1−MMP抗体(例えば、固相化されたモノクローナル抗MT1−MMP抗体)などの抗MT−MMP抗体に、MT1−MMPを含む試料などのMT−MMPを含む試料を接触せしめ、抗原抗体反応を介して、該固相化された抗MT1−MMP抗体にMT1−MMPを捕捉させるなど固相化抗MT−MMP抗体にMT−MMPを捕捉させ、次にMT1−MMPの酵素活性などMT−MMPの酵素活性を測定することなどにより行われる。酵素活性の測定には、例えばMT1−MMPの基質などMT−MMPの基質を使用し、酵素反応の結果生ずるシグナルを検知あるいは測定することなどにより行うことができる。特に、可溶型MT−MMPを定量でき、その量と腫瘍の悪性度及び癌の転移能との相関関係を求めることを可能にする。別の面では、本発明では、固相化されたMT1−MMPなどの固相化されたMT−MMPが提供される。特には、免疫学的方法で固相化されたMT1−MMPが提供される。該固相化されたMT1−MMPなどのMT−MMPは、例えばMT1−MMP活性阻害剤、その他のMT−MMP活性阻害剤などの試料の存在下あるいは非存在下にMT1−MMPの基質などのMT−MMPの基質と接触せしめ、酵素反応の結果生ずるシグナルを検知あるいは測定することなどによりスクリーニングに使用できる。代表的な固相化MT−MMPとしては、例えば反応容器などに固相化されたものが挙げられる。
MT1−MMPに代えて、MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMP,MT6−MMPなどのMT−MMPについても、同様に、行うことができることは明らかである。
かくして、本発明では、MT−MMPの活性測定およびMT−MMP活性阻害剤の検索が可能である。特に、本発明では、MT1−MMPの活性測定およびMT1−MMP活性阻害剤の検索が可能である。上記の方法において、試料のMT1−MMPなどのMT−MMPを特異的に固相化し、その活性を検出することができ、さらにそのためのスクリーニング試薬が提供される。また、得られたMT1−MMP活性などのMT−MMP活性から癌の浸潤能あるいは転移能を評価できる。したがって、検体癌組織の浸潤能を想定することができ、またそのための試薬が提供される。また、治療を施した癌組織の浸潤能の変動を想定したり、MT1−MMPの産生を抑制し浸潤能を低下あるいは消失させる医薬の選択や薬剤の検索などに有用である。また、一方では、上記の方法において、一定の活性レベルを有する標準MT1−MMPを用い、これに対して各種の酵素活性阻害剤、MMPs阻害剤あるいは任意の化合物を添加せしめ、MT1−MMPに対する阻害活性を測定することができる。この方法を用いれば、未知のMT1−MMP阻害剤の検索やBatimastat、Marimastat、Ro32−3555、AG3340、Bay12−9566、CGS27023Aなど既存のMMP活性阻害剤(ヒドロキサム酸、カルボン酸、ホスホン酸、チオールの誘導体などを包含していてよく、例えば、国際公開第WO 97/27174号(WO 97/27174),WO 97/20824,英国特許公開明細書第2268934号(GB 2268934 A又は米国特許明細書第5310763号(US 5310763)),US 5268384,US 5455258,WO 96/11209,WO 97/18207,WO 97/32846,WO 98/17643,特開平7−101925号公報,US 5614625,WO 98/30551,WO 98/43963,WO 96/15096,WO 96/33174,WO 96/33968,WO 99/31052,国際出願PCT/JP00/03166号などに開示されている)が持つMT1−MMP阻害剤能を知ることができる。MT1−MMPに代えて、MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMP,MT6−MMPなどのMT−MMPについても、同様に、行うことができることは明らかである。
酵素活性あるいは酵素阻害活性の測定は、通常の測定法に準じて実施することができる。また、各種標識、緩衝液系その他適当な試薬等を使用したりすることもできる。方法を行うにあたっては、MT−MMPsをアミノフェニル酢酸水銀などの活性化剤で処理したり、その前駆体あるいは潜在型のものを活性型のものに予め変換しておくこともできる。個々の測定にあたっては、それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて、適切な測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる〔例えば、Methods in Enzymology,Vol.1&2(Preparation and Assay of Enzymes),Academic Press,New York(1955);Methods in Enzymology,Vol.5(Preparation and Assay of Enzymes),Academic Press,New York(1962);Methods in Enzymology,Vol.6(Preparation and Assay of Enzymes),Academic Press,New York(1963);Methods in Enzymology,Vol.3(Preparation and Assay of Substrates),Academic Press,New York(1957);Methods in Enzymology,Vol.4(Special Techniques for the Enzymologist),Academic Press,New York(1957);Methods in Enzymology,Vol.19(Proteolytic Enzymes),Academic Press,New York(1970);Methods in Enzymology,Vol.45(Proteolytic Enzymes,Part B)Academic Press,New York(1976);Methods in Enzymology,Vol.80(Proteolytic Enzymes,Part C)Academic Press,New York(1982);Methods in Enzymology,Vol.248(Proteolytic Enzymes:Aspartic and Metallo Peptidases)Academic Press,New York(1995)などあるいはそこで引用された文献(それらの中にある記載はそれを参照することにより本明細書の開示に含められる)〕。
本発明の測定法及びスクリーニング法で有用な試薬あるいは試薬セット、さらにはキット(スクリーニングキットなど)も有用である。該キットは、組成物用の有効な成分を1又はそれ以上を充填した1又はそれ以上の容器を含む、例えば免疫測定などの測定分野あるいは医薬分野で許容されるパック及びキットである。代表的には、このような(単一あるいは複数の)容器と一緒に、臨床検査あるいは医薬又は生物学的産物の製造、使用又は販売を規制する政府機関により指示された形態の注意書(文書)であって、ヒトなどに関連した製品の製造、使用又は販売に関する該政府機関の承認を示している注意書(添付文書)が添付されていてよいものである。
本発明のスクリーニング法で得られた活性成分〔例えば、(a)MT1−MMPなどのMT−MMPの発現を促進または阻害する化合物あるいはその塩など、(b)MT1−MMPなどのMT−MMPの酵素活性を促進または阻害する化合物あるいはその塩など〕を医薬として用いる場合、それらは、通常単独或いは薬理的に許容される各種製剤補助剤と混合して、医薬組成物又は医薬調製物などとして投与することができる。好ましくは、経口投与、局所投与、または非経口投与等の使用に適した製剤調製物の形態で投与され、目的に応じていずれの投与形態(吸入法、あるいは直腸投与も包含される)によってもよい。
また、本発明の活性成分は、抗腫瘍剤(抗癌剤)、腫瘍転移阻害剤、消炎剤及び/又は免疫抑制剤と配合して使用することもできる。抗腫瘍剤(抗癌剤)、腫瘍転移阻害剤、消炎剤や免疫抑制剤としては、有利な働きを持つものであれば制限なく使用でき、例えば当該分野で知られたものの中から選択することができる。医薬用の組成物は通常の方法に従って製剤化することができる。例えば、適宜必要に応じて、生理学的に認められる担体、医薬として許容される担体、アジュバント剤、賦形剤、補形剤、希釈剤、香味剤などを単独もしくは組合わせて用い、それとともに本発明の活性成分等を混和することによって、一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態にして製造することができる。
本発明の活性成分は、その投与量を広範囲にわたって選択して投与できるが、その投与量及び投与回数などは、処置患者の性別、年齢、体重、一般的健康状態、食事、投与時間、投与方法、排泄速度、薬物の組み合わせ、患者のその時に治療を行なっている病状の程度に応じ、それらあるいはその他の要因を考慮して決められる。
医薬品製造にあたっては、その添加剤等や調製法などは、例えば日本薬局方解説書編集委員会編、第十四改正 日本薬局方解説書、平成13年6月27日発行、株式会社廣川書店;一番ヶ瀬 尚 他編 医薬品の開発12巻(製剤素剤〔I〕)、平成2年10月15日発行、株式会社廣川書店;同、医薬品の開発12巻(製剤素材〔II〕)平成2年10月28日発行、株式会社廣川書店などの記載を参考にしてそれらのうちから必要に応じて適宜選択して適用することができる。
明細書及び図面において、用語は、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによるか、あるいは当該分野において慣用的に使用される用語の意味に基づくものである。代表的な用語の意味を以下に示す。
bp:base pair(s);
IPTG:isopropyl−1−thio−β−D−galactopyranoside;
SDS:sodium dodecyl sulfate;
LB:Luria−Bertani
TAB:3,3’,5,5’−tetramethylbenzidine
BSA:bovine serum albumin
ELISA:enzyme−linked immunosorbent assay
HRP:horseradish peroxidase
PAGE:polyacrylamide gel electrophoresis
EDTA:ethylenediaminetetraacetic acid
後述の実施例2(表1)に記載のモノクローナル抗MT1−MMP抗体を産生するハイブリドーマ:222−1D8は、平成12年10月26日(原寄託日)から茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)の独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(National Institute of Advanced Industrial Science and Technology,International Patent Organism Depositary:IPOD:旧住所は茨城県つくば市東1丁目1番3号(郵便番号305−8566)で、旧名称は通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(NIBH))に寄託されており(受託番号 FERM P−18085)、平成13年11月12日に原寄託よりブダペスト条約に基づく寄託への移管請求がなされ、受託番号 FERM BP−7795としてIPODに保管されている。同様に、後述の実施例2(表1)に記載のモノクローナル抗MT1−MMP抗体を産生するハイブリドーマ:222−2D12は、平成12年10月26日(原寄託日)からIPODに寄託されており(受託番号 FERM P−18086)、平成13年11月12日に原寄託よりブダペスト条約に基づく寄託への移管請求がなされ、受託番号 FERM BP−7796としてIPODに保管されている。
実施例
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。
全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。なお、ベクター、制限酵素などは、宝酒造(株)などから入手したものを使用した。
実施例1 組換えMT1−MMPの調製
各種組換えMT1−MMPを調製し、免疫、モノクローナル抗体のスクリーニング、ウエスタンブロッティング、ELISAなどに用いた。
▲1▼ 大腸菌由来組換えΔMT1−MMP(免疫抗原)
a)発現ベクターの構築
J.Cao et al.,J.Biol.Chem.,270:801−805(1995)記載の方法により作製した動物細胞用発現ベクターpSGΔMT1−MMPよりΔMT1−MMP遺伝子を制限酵素SmaIおよびBglIIで切り出し、制限酵素SmaIおよびBamHIで切断したpUC18のβ−ガラクトシダーゼにインフレームで連結し、発現ベクターpUCΔMT1−MMPを構築した。この発現ベクターにより、β−ガラクトシダーゼの11アミノ酸残基とシグナルペプチドおよびプロペプチド領域の一部(47アミノ酸残基)を欠損したΔMT1−MMP(G48−G535)の488アミノ酸残基、計499アミノ酸残基からなる分子量約55kDaの融合タンパク質を発現せしめた。なお、MT1−MMPをコードしているDNAは、例えばJ.Cao et al.,J.Biol.Chem.,270: 801−805(1995);K.Imai et al.,Cancer Research,56:2707−2710(1996)などに記載があり、それらの中にある記載はそれを参照することにより本明細書の開示に含められる。
b)融合タンパク質の発現
pUCΔMT1−MMPを含む大腸菌DH5αを4mLの50μg/mL Ampicillinを含むLB培地に接種、37℃で16時間培養し、1次カルチャーを調製した。これを400mLの50μg/mL Ampicillinを含むLB培地に再接種、37℃でおよそ3時間、対数増殖期中期まで培養した。IPTG(最終濃度0.1mM)を添加し、さらに4時間培養を継続し、組換え融合タンパク質の発現を誘導した。
c)組換え体の精製−1(inclusion bodyの回収と可溶化)
培養液を直ちに氷冷し、遠心(5,000rpm、20min)で菌体を回収、20mLの1mg/mL lysozyme含有20mM Tris−HCl(pH8.0)に懸濁し15分間、氷中に置いて細胞壁を破壊した。菌体懸濁液を氷冷下で超音波破砕(30秒、10回)、遠心(18,000rpm、10min)してinclusion bodyを回収した。Inclusion bodyを1mLの0.1M NaCl含有10mM リン酸緩衝液(pH7.0)で再懸濁し、洗浄、遠心(15,000rpm、10min)して沈殿を回収、これを1mLの8M urea、0.1M NaCl含有10mM リン酸緩衝液(pH7.0)に溶解した。
d)組換え体の精製−2(preparative SDS−PAGEおよび電気溶出)
前項で調製した溶解画分に1/5体積の6×SDS−PAGE Sample buffer(還元)を加え、37℃で1時間置いた後、preparative SDS−PAGEに供した。90×70×1mmのゲルに対し0.6mLのサンプルを展開した。泳動終了後、ゲルを3M KClに浸し、タンパク質バンドを可視化し、組換えΔMT1−MMPのバンドを切り出した。切り出したゲルを細断、SDS−PAGE泳動バッファーで洗浄した後、電気溶出用カラムに入れ、200V(定電圧)で4時間通電して組換えタンパク質を回収した。これに最終濃度10mMとなるようにデオキシコール酸(DOC)を加え、16時間低温室に置き、SDSをDOCで置換、さらに0.1M NaCl含有50mMリン酸緩衝液(pH7.0)に透析して過剰のSDSおよびDOCを除去した。透析中に発生した沈殿物を遠心で除き、上清を限外濾過で濃縮した。400mLの大腸菌培養から得られた可溶性組換えΔMT1−MMP(Lot GV01)は2.6mg(2mg/mL×1.3mL)であった。
▲2▼COS−7由来組換えMT−MMPs
pSG5に挿入されたMT1−MMPのcDNAをリン酸カルシウム法でCOS−7に導入し、48時間の発現の後、細胞を回収した。細胞をPBSで洗浄した後、0.5mLのPBSに再懸濁し、超音波破砕した。得られた細胞破砕物に1/5体積の6×SDS−PAGE Sample buffer(還元剤含有)を加え、SDS−PAGEおよびウエスタンブロッティングの抗原検体とした。同様にして、pSG5に挿入されたMT2−MMP(マウス)のcDNAおよびpSG5に挿入されたMT3−MMPのcDNAを用い、それぞれ同様に処理し、抗原検体を得た。これらは、モノクローナル抗体の交叉反応性の検討に用いた。
▲3▼ 大腸菌由来リフォールド組換えΔMT1−MMP(ΔMT1−MMPRF)
実施例1で構築したpUCΔMT1−MMPよりΔMT1−MMP遺伝子を制限酵素KpnIおよびHindIIIで切り出し、pTrcHisにインフレームで連結した発現ベクターpTrcHisΔMT1−MMPを構築した。この発現ベクターで大腸菌を形質転換し、組換えタンパク質を発現させた。
上記の組換え大腸菌(400mL培養)より調製した不溶性封入体を8M urea、0.5M NaCl、10mM imidazole含有50mMリン酸緩衝液(pH7.5)で可溶化し、Ni++Chelating Sepharose(Pharmacia)ゲルカラムに供した。洗浄後、8M urea、0.5M NaCl、0.5M imidazole含有50mM リン酸緩衝液(pH7.5)で溶出、得られた精製画分を8M urea、0.3M NaCl含有20mM Tris−HCl(pH8.6)で平衡化したPD−10(Pharmacia)ゲルカラムに供し緩衝液を交換した。これに50μM ZnSO4および1mM DTTを添加した後、A280を測定し、8M urea、0.3M NaCl、50μM ZnSO4、1mM DTT含有20mM Tris−HCl(pH8.6)を用いてA280が0.1となる様に希釈した。これに20mM cysteaminを添加し、リフォールディング用サンプル(50mL)とした。これを5Lの0.15M NaCl、5mM CaCl2、100μM ZnSO4、5mM 2−mercaptoethanol、1mM hydroxyethyl disulfide、0.02% NaN3含有50mM Tris−HCl(pH8.6)で16時間透析、さらに0.15M NaCl、5mM CaCl2、50μM ZnSO4、0.02% NaN3含有50mM Tris−HCl(pH8.6)で透析し(4時間、3回)、リフォールディングした。
透析後のサンプルを遠心し、不溶化したタンパク質を除去、A280を測定しタンパク質量を見積った。得られたΔMT1−MMPRFの量はおよそ1.6mgであった。さらに一部をとって、0.1μg/mLのトリプシンと37℃で1時間処理した。SDS−PAGEで分析したところ、ΔMT1−MMP(58kDa)、ヘモペキシンドメイン(30、34kDa)、触媒ドメイン(21kDa)のバンドが検出された。これを濃縮しエピトープマッピングおよびELISA評価用抗原として使用した。
実施例2 抗体の作製と選択
▲1▼ 免疫スケジュール
免疫動物:6週齢BALB/c雌、2匹
精製抗原:2mg/ml ΔMT1−MMP(実施例1▲1▼−d)で得られたもの)0.1M NaCl含有50mM リン酸緩衝液(pH7.0)
初回免疫:58μg/290μl/マウス(完全フロイントアジュバント)腹
腔内投与
追加免疫:20日後 64μg/160μl/マウス 腹腔内投与
追加免疫:35日後 54μg/160μl/マウス 腹腔内投与
最終免疫:69日後 73.3μg/160μl/マウス 静脈内投与
最終免疫の3日後(72日後)に細胞融合
すなわち、上記精製ΔMT1−MMP抗原(58μg/290μl)を完全フロイントアジュバントと共に6週齢BALB/c雌マウスに腹腔内投与し、初回免疫した。20日後上記精製抗原(64μg/160μl)を初回免疫したマウスに腹腔内投与し、追加免疫した。さらに35日後上記精製抗原(54μg/160μl)を腹腔内投与し、追加免疫し、次に、69日後上記精製抗原(73.3μg/160μl)を静脈内投与し、最終免疫とした。その3日後(全体で72日後)に免疫したマウスから脾臓を摘出し、脾細胞懸濁液を調製した。
▲2▼ 細胞融合とハイブリドーマのスクリーニング
細胞融合には、以下の材料および方法を用いた。
RPMI−1640培地:RPMI−1640(Flow Lab.)に重炭酸ナトリウム(24mM)、ピルビン酸ナトリウム(1mM)、ペニシリンGカリウム(50U/ml)、硫酸アミカシン(100μg/ml)を加え、ドライアイスでpHを7.2にし、0.2μm東洋メンブレンフィルターで除菌ろ過した。NS−1培地:上記RPMI−1640培地に除菌ろ過したウシ胎児血清(FCS,M.A.Bioproducts)を15%(v/v)の濃度になるように加えた。
PEG−4000溶液:RPMI−1640培地にポリエチレングリコール−4000(PEG−4000,Merk&Co.)を50%(w/w)になるように加えた無血清培地を調製した。
8−アザグアニン耐性ミエローマ細胞SP−2(SP−2/0−Ag14)との融合は、Selected Method in cellular immunology p351〜372(ed.B.B.Mishell and S.N.Shiigi),W.H.Freeman and Company(1980)に記載のOi & Herzenbergらの方法を若干改変して行った。
前記で調製した有核脾細胞(生細胞率100%)とミエローマ細胞(生細胞率100%)とを5:1〜10:1の比率で以下の手順で融合した。それぞれの精製ΔMT1−MMP抗原免疫脾細胞懸濁液とミエローマ細胞をそれぞれRPMI1640培地で洗浄した。次に同じ培地に懸濁し、融合させるために有核脾細胞とミエローマ細胞を混合した。
次に、それぞれの細胞混合液を遠心分離により細胞を沈殿させ、上清を完全に吸引除去した。沈殿した細胞に37℃に加温した50% PEG−4000含有RPMI−1640培地(ミエローマ細胞がおおよそ107個/mLとなるよう体積を決定する)を1分間で滴下し、1分間撹拌し、細胞を再懸濁、分散させた。次に添加した50% PEG−4000含有RPMI−1640培地の2倍体積の37℃に加温したRPMI−1640培地を2分間で滴下した。さらに添加した50% PEG−4000含有RPMI−1640培地の7倍体積のRPMI−1640培地を2〜3分間で常に撹拌しながら滴下し、細胞を分散させた。これを遠心分離し、上清を完全に吸引除去した。次に、ミエローマ細胞がおおよそ106個/mLとなるように37℃に加温したNS−1培地を沈殿した細胞に速やかに加え、大きい細胞塊を注意深くピペッティングで分散した。さらに同培地を加えて希釈し、ポリスチレン製96穴マイクロウエルにウエル当りのミエローマ細胞の数を調整して接種した。それぞれの細胞を加えた上記マイクロウエルを7%炭酸ガス/93%空気中で温度37℃、湿度100%で培養した。
次に、選択培地によるハイブリドーマの選択的増殖を行った。
(1)使用する培地は以下の通りである。
HAT培地:前記で述べたNS−1培地に更にヒポキサンチン(100μM)、アミノプテリン(0.4μM)およびチミジン(16μM)を加えた。HT培地:アミノプテリンを除去した以外は上記HAT培地と同一組成のものである。
(2)前記の培養開始後翌日(1日目)、細胞にパスツールピペットでHAT培地2滴(約0.1ml)を加えた。2、3、5、8日目に培地の半分(約0.1ml)を新しいHAT培地で置き換え、10日目に培地の半分を新しいHT培地で置き換えた。11日目以降にハイブリドーマの生育が肉眼にて認められた全ウエルについて固相−抗体結合テスト法(ELISA)により陽性ウエルを調べた。まず、100ng/ウエルで免疫抗原をコートしたポリスチレン製96穴プレート(0.05% Tween20含有PBSを用いて洗浄して未吸着の抗原タンパク質を除いてある)の各ウエルにハイブリドーマの生育が確認されたウエルの培養上清を添加し、室温で約1時間静置した。洗浄後、2次抗体として西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)標識ヤギ抗マウス免疫グロブリン(Cappel)を加え、さらに室温で約1時間静置した。洗浄後、基質である過酸化水素と3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)を加え、発色の程度をマイクロプレート用吸光度測定機(MRP−A4、東ソー)を用いて450nmの吸光度で測定した。15クローンを選択できた。
▲3▼ ハイブリドーマのクローニング
上記で得られた免疫抗原に対し陽性のウエル中のハイブリドーマを、限界希釈法を用いてモノクローン化した。すなわち、NS−1培地中にフィーダーとしてマウス胸腺細胞を含むクローニング培地を調製し、96穴マイクロウエルにハイブリドーマを、ウエル当り5個、1個、0.5個になるように希釈し、それぞれ36穴、36穴、24穴に加えた。3〜7日目、8〜15日目に全ウエルにNS−1培地を追加した。クローニング開始後約1〜3週間で、肉眼的に十分なハイブリドーマの生育を認めたら、コロニー形成陰性ウエルが50%以上である群について上記スクリーニング法(ELISA)を行った。調べた全ウエルが陽性でない場合、抗体陽性ウエル中のコロニー数が1個のウエルを4〜6個選択し、再クローニングを行った。最終的に免疫抗原に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得た。15クローンを選抜した。
▲4▼ モノクローナル抗体のサブクラスアッセイ
15クローンについてサブクラスを決定した。前述したELISAに従い、それぞれ免疫抗原をコートしたポリスチレン製96穴プレートに、上記で得られたハイブリドーマの上清を加えた。次にPBSで洗浄後、アイソタイプ特異的ウサギ抗マウスIgG抗体(Zymed Lab.)を加えた。PBSにより洗浄後、西洋わさびペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ウサギIgG(H+L)を加え、基質として過酸化水素および2,2’−アジノ−ジ(3−エチルベンゾチアゾリン酸)を用いてクラス、サブクラスを決定した。
▲5▼イムノブロッティングによる選択
反応性試験−1:
免疫抗原を12% SDS−PAGEで展開、ナイロンメンブレンに転写、各ハイブリドーマ培養上清を1次抗体として添加、抗マウスIg(G+A+M)−HRPを2次抗体として使用、染色した。全15クローンのうち8クローンを陽性と判定し、2次選択に供した。これら8クローンのサブクラスは、4クローンがIgG1/κ、1クローンがIgG3/κ、3クローンがIgMであった。
反応性試験−2:
前項で陽性と判定した8クローンについて、組換えMT1−MMPを発現するCOS−7の細胞破砕物を抗原としたウエスタンブロッティングでさらに選択を行い、反応性の弱い3クローン(表1中の(+))を除外した。これらはいずれもIgMであった。最終的に得られたクローンは5種で、サブクラスはIgG1/κが4種、IgG3/κが1種であった。
▲6▼ ハイブリドーマの培養とモノクローナル抗体の精製
得られたハイブリドーマ細胞をNS−1培地で培養し、その上清から濃度10〜100μg/mlのモノクローナル抗体を得ることができる。また、得られたハイブリドーマ107個を予め1週間前にプリスタンを腹腔内投与したマウス(Balb/c系、雌、6週齢)に同じく腹腔内投与し、1〜2週間後、腹水中からも4〜7mg/mlのモノクローナル抗体を含む腹水を得ることができる。得られた腹水を40%飽和硫酸アンモニウムで塩析後、IgGクラスの抗体をプロテインAアフィゲル(Bio−Rad)に吸着させ、0.1Mクエン酸緩衝液(pH5.0)で溶出することにより精製する。
本発明では、上記で得られたモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞(5クローン)をマウス腹腔に投与し、それぞれの抗体を含有する腹水を調製した。得られた腹水を硫安分画、アフィゲル プロテインAゲルカラムに供し、精製モノクローナル抗体を得た。
サブクラスアッセイ、反応試験−1および2の結果を表1にまとめた。
実施例3 抗体の反応性
▲1▼エピトープマッピング
実施例1−▲3▼で調製したΔMT1−MMP(58kDa)およびヘモペキシンドメイン(30kDa,34kDa)、触媒ドメイン(21kDa)の断片を抗原としたウエスタンブロッティングでエピトープマッピングを実施した。実施例2で選択した5クローンを1次抗体として添加、抗マウスIg(G+A+M)−HRPを2次抗体として使用、染色した。いずれのクローンもヘモペキシンドメインと強く反応し、これらのエピトープがヘモペキシンにあることが確認された(図1参照)。
▲2▼交叉反応性
実施例1−▲2▼で調製したMT1−MMP発現COS−7の細胞破砕物、MT2−MMP(マウス)発現COS−7の細胞破砕物およびMT3−MMP発現COS−7の細胞破砕物を抗原として用い、ウエスタンブロッティングで交叉反応試験を実施した。実施例2で選択した5クローンを1次抗体として添加、抗マウスIg(G+A+M)−HRPを2次抗体として使用、染色した。いずれのクローンもMT1−MMPとのみ反応し、MT2−MMP(マウス)およびMT3−MMPとは反応せず、MT1−MMPに特異性を持つことが確認された(図2参照)。
実施例4 MT1−MMPの測定
各抗体を固相化した96穴マイクロウエル中で、標準抗原(組換えΔMT1−MMP)を反応させた。洗浄後、各抗体のIgG−HRPと反応させ、続いて未反応のIgG−HRPを洗浄除去した。抗原を介して結合したIgG−HRPの残存活性を、TMBを基質として測定した。最も抗原を良く検出した固相抗体222−2D12と標識抗体222−1D8の組み合わせを見出し、さらに、使用する抗体の濃度、反応時間、反応温度、反応緩衝液の組成など詳細に検討した。標識抗体はIgG−HRPにかえて、Fab’−HRPを新たに作製し用いた。その結果、以下に示す方法において最も効率良くMT1−MMPが測定できた。
▲1▼ 標識抗体
標識抗体Fab’−HRPは次のようにして調製できる。例えば、モノクローナル抗体を0.1M NaClを含む0.1M 酢酸ソーダ緩衝液(pH4.2)に抗体量の2%(W/W)のペプシンを加え、37℃で20時間消化した。消化物に3M Tris−HCl緩衝液(pH7.5)を添加し、反応を停止した。0.1M リン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したウルトロゲルAcA54カラムによるゲルろ過でF(ab’)2画分を分取した。このF(ab’)2画分に最終濃度0.01Mとなるようにシステアミン塩酸塩を添加し、37℃、1.5時間還元し、5mM EDTA含有0.1M リン酸緩衝液(pH6.0)で平衡化したウルトロゲルAcA54カラムによるゲルろ過でFab’画分を分取した。
上記の操作とは別にHRPを0.1M リン酸緩衝液(pH7.0)に溶解、HRPの25倍モル量のBMCSをDMF溶液として加え、30℃、30分間反応させた。これを0.1M リン酸緩衝液(pH6.0)で平衡化したNICK−5カラム(Pharmacia)でゲルろ過しマレイミド標識HRP画分を分取した。
Fab’画分とマレイミド標識HRPを等モルとなるように両画分を混合し、4℃、20時間反応させた後、Fab’の10倍モル量のN−エチルマレイミドで未反応のチオール基をブロックした。これを0.1M リン酸緩衝液(pH6.5)で平衡化したウルトロゲルAcA54カラムでゲルろ過し、Fab’−HRP標識抗体を分取した。これに0.1% BSAおよび0.001%クロルヘキシジンを添加して4℃で保存した。
▲2▼ 抗体固相化プレート:
モノクローナル抗体(例えば、222−2D12(IgG))を0.1M リン酸緩衝液(pH7.0)で25μg/mLに調製し、96穴マイクロウエル(MAXISORP、NUNC−IMMUNO MODULE)あたり100μLずつ加え、4℃、24時間静置した。次に抗体溶液を除去し、洗浄液(0.1% Tween20、0.1M NaCl含有10mM リン酸緩衝液(pH7.0))で3回洗浄後、ブロッキング液(1% BSA、10mM EDTA、0.1M NaCl含有30mM リン酸緩衝液(pH7.0))を96穴マイクロウエルあたり0.3mLずつ加え、4℃で保存した。
▲3▼ 標準抗原:
実施例1で精製したΔMT1−MMPを希釈用緩衝液(0.45% SDS,0.4% 2−メルカプトエタノール,3% ウマ血清,1% BSA,10mM EDTA,0.1M NaCl含有30mM リン酸緩衝液(pH7.0))で160ng/mLに調製した。これを希釈用緩衝液で段階希釈して80,40,20,10,5および2.5ng/mLの標準抗原溶液を調製した。
▲4▼ 測定検体:
測定検体は、必要に応じて希釈用緩衝液で希釈した。
▲5▼ 1次反応:
標準抗原あるいは測定検体を96穴ビニルプレートに25μLずつ加えた。これに希釈用緩衝液100μLを加え混和、これより100μLとって、予めブロッキング液を除去・洗浄した抗体固相化プレートに入れ、4℃で16時間静置した。
▲6▼ 2次反応:
標識抗体222−1D8(Fab’−HRP)をブロッキング液で0.4μg/mLに調製した。1次反応が終了した抗体固相化プレートから反応液を除去し洗浄液で3回洗浄後、標識抗体液をウエルあたり100μLずつ加え、室温で1時間静置した。
▲7▼ 発色:
反応終了後、標識抗体液を除去、洗浄液で3回洗浄し、TMB溶液(CALBIOCHEM)をウエルあたり100μLずつ加え、室温で20分間反応した。これに2N硫酸をウエルあたり100μLずつ加え反応を停止した。この反応混液のA450をマイクロプレートリーダー(MPR−A4、東ソー)を用いて測定した。
上記の方法で得られた標準曲線の例を図3に示した。MT1−MMPサンドイッチEIAの感度は、0.32ng/mL(6.4pg/ウエル)、また0.63−160ng/mL(0.013−3.2ng/ウエル)の範囲で直線性が認められた。
実施例5 MT1−MMPサンドイッチEIAの性能
▲1▼ 希釈試験による検体量の決定
血清、関節液それぞれに標準抗原を添加して作成した検体を希釈、実施例4に記載した方法に従って測定した。血清検体を10、20、30μL/wellとなるように希釈し測定した。検体量を20μL/well以下にした場合、加えた標準抗原の90%以上が回収されたことから、血清検体の測定は20μL/wellで設定した。関節液検体を0.625,1.25,2.5,5μL/wellとなるように希釈し測定した。検体量を2.5μL/well以下にした場合、加えた標準抗原の80%以上が回収されたことから、関節液検体の測定は2.5μL/wellで設定した(表2)。
▲2▼添加回収試験
血清、関節液、培養上清(Con A処理したMDA−MB−231)、細胞抽出画分(Con A処理したMDA−MB−231)のそれぞれに標準抗原を添加し、実施例4に記載した方法に従って測定し添加した標準抗原の回収率を調べた。測定結果例を表3に示した。血清、培養上清、細胞抽出画分では90%以上、関節液では80%以上の回収率が確保された。
▲3▼同時再現性
a)血清に標準抗原を添加して調製した検体(3種)について、実施例4に記載した方法に従い、同時に測定した(n=8)。CV値は2.5〜3.4%を示した(表4)。
b)Con A処理したMDA−MB−231の培養上清および細胞抽出画分について、実施例4に記載した方法に従い、同時に測定した(n=6)。CV値は6.9%及び9.5%を示した(表5)。
▲4▼測定間差
a)血清に標準抗原を添加して調製した検体(3種)について、実施例4に記載した方法に従って、8回測定した。CV値は3.1〜5.0%を示した(表6)。
b)Con A処理したMDA−MB−231の培養上清および細胞抽出画分について、実施例4に記載した方法に従って、6回測定した。CV値は7.1%および10.2%を示した(表7)。
▲5▼特異性試験
MMP−1,2,3,7,8,9,13,19,20をそれぞれ1μg/mLに調製し、MT1−MMPサンドイッチEIAに供しA450を測定した結果を表8に示した。MT1−MMPを0.16μg/mLでサンドイッチEIAに供した場合、2.206の吸光値を示したのに対しこれらのMMPは、0.024〜0.071程度の吸光値しか示さなかった。従って、MT1−MMPサンドイッチEIAは、MT1−MMPと特異的に反応することが確認された。
本発明のモノクローナル抗体を少なくとも1種含む抗体の組み合わせによってMT1−MMPを特異的に検出・測定するサンドイッチEIA系が構成できる。EIA系は1ステップ法、2ステップ法のいずれも可能であり、標識抗体はFab’−HRPに限定されない。各反応緩衝液の組成や反応条件は測定の目的に応じて、短縮、延長など調整できる。標準品となるMT1−MMPは、組織培養上清、細胞培養上清または実施例1記載の方法あるいはそれ以外の方法で発現した組換え体から精製することができる。精製にはイオン交換、ゲルろ過、モノクローナル抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーまたそれ以外の各種アフィニティークロマトグラフィーの組み合わせによって達成される。
測定検体は、ヒト血液、血清、血漿、関節液、尿、唾液、脳脊髄液および羊水などヒトに由来する体液成分、各種ヒト組織(各種腫瘍・癌組織を含む)の抽出液、ヒト由来あるいは組換え体など各種培養細胞の細胞抽出液、培養上清などから調製される。
実施例6 MT1−MMPサンドイッチEIAにおける界面活性剤と還元剤の意義
実施例1に記載の方法でΔMT1−MMP遺伝子を導入したΔMT1−MMP発現COS−7を調製した。このCOS−7細胞を培養し、48時間後に培養上清を回収した。培養上清細胞をSDS−PAGEおよびウエスタンブロッティングに供し、ΔMT1−MMPが可溶性分子として存在することを確認した。この培養上清をMT1−MMPサンドイッチEIAに供したところ、十分なシグナル(A450=1.807)が検出された。一方、同じ培養上清をSDSと2−メルカプトエタノールを除いた希釈用緩衝液(3% ウマ血清、1% BSA、10mM EDTA、0.1M NaCl含有30mMリン酸緩衝液(pH 7.0))を用いてMT1−MMPサンドイッチEIAに供したところ、シグナルはおよそ1/14(A450=0.138、表9の上段の表)に低下した。SDSと2−メルカプトエタノールは検体中の抗原に作用し、抗原の高次構造をMT1−MMPサンドイッチEIAで検出可能な構造変化をもたらしたと考えられる。この構造変換にはSDSと2−メルカプトエタノールの共存が必須であった(表9の下段の表)。
実施例7 MT1−MMPを産生する培養細胞株の検索
MT1−MMPを産生するヒト培養細胞株の検索をMT1−MMPサンドイッチEIAで行った。細胞株は、バーキットリンパ腫(Daudi,Namalwa,Raji)、急性リンパ芽球性白血病(T−細胞)(MOLT−4)、慢性骨髄性白血病(K−562)、前骨髄性白血病(HL−60)、繊維肉腫(HT−1080)、乳癌(MDA−MB−231,SK−BR−3,MCF 7)、肺癌(A549)、直腸腺癌(SW 837)、骨肉腫(MG−63)、舌、扁平細胞癌(SSC−25)、子宮頸部癌(HeLa)、頸部表皮癌(CaSki)、前立腺癌(PC−3)、悪性黒色腫(A−375)を用いた。各種癌細胞株を直径10cmのプレートでコンフルエントまで培養、無血清培地あるいはCon A含有無血清培地に交換し48時間後に培養上清および細胞を回収した。細胞は0.5mLの希釈用緩衝液中で超音波破砕し、遠心して得られた上清を細胞抽出画分としてEIAに供した。培養上清はそのままEIAに供した。
測定結果例を表10に示した。
MT1−MMPは、繊維肉腫(HT1080)、乳癌の一部(MDA−MB−231)、直腸腺癌(SW 837)、骨肉腫(MG−63)、舌、扁平細胞癌(SSC−25)、頚部表皮癌(CaSki)などで検出された。
実施例8 MT1−MMPの発現量を変化させる因子・薬剤などの検索
MT1−MMPを発現する培養細胞を任意の生理活性因子や薬剤、化合物を添加して培養した後、培養上清あるいは細胞抽出画分を回収し、MT1−MMPサンドイッチEIAに供する。測定は、無処理の培養細胞から調製したものを対照とし、MT1−MMP産生量の増減を比較して各添加物の効果を評価する。添加物の濃度は、適宜調製する必要がある。添加物としては、遺伝子の発現制御に関わるもの、MT1−MMPのアンチセンスRNA、MT1−MMPのmRNAを配列依存的に切断するリボザイムなどが考えられる。添加物は、培養液中に直接あるいはハプテン化して添加しても良いし、それぞれを発現する遺伝子を細胞内に導入しても良い。MT1−MMPの発現を強力に、かつ特異的に抑制するアンチセンスRNAやリボザイムの設計および選択にMT1−MMPサンドイッチEIAは有用である。MT1−MMP発現抑制剤は、癌転移抑制に対する医薬として有用である。
実施例9 MT1−MMPの活性測定およびMT1−MMP活性阻害剤の検索
抗MT1−MMPモノクローナル抗体を0.1Mリン酸緩衝液(pH 7.0)で25μg/mLに調製し、96穴マイクロウエルあたり100μLずつ加え、4℃、24時間静置する。次に抗体溶液を除去し、洗浄液(0.1%Tween 20,0.1M NaCl含有10mMリン酸緩衝液(pH7.0))で3回洗浄後、ブロッキング液(1% BSA,10mM EDTA,0.1M NaCl含有30mMリン酸緩衝液(pH7.0))を96穴マイクロウエルあたり0.3mLずつ加え、4℃で16時間以上静置し保存する。0.1% Tween20,0.1M NaCl含有10mMリン酸緩衝液(pH 7.0)で洗浄後、1% BSA,0.1M NaCl含有30mM リン酸緩衝液(pH 7.0)で希釈したMT1−MMPを含む検体を加え、4℃で16時間静置する。0.1% Tween 20,0.15M NaCl含有20mM Tris−HCl緩衝液(pH 7.4)で洗浄、0.15M NaCl,10mM CaCl2,0.05% Brij35,0.02% NaN3含有50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)で1μMに調製したMca−Pro−Leu−Gly−Leu−Dpa−Ala−Arg−NH2を100μL加え、37℃で1時間静置する。反応液を500μLの0.1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.0)を分注した試験管に採り、反応を停止する。MT1−MMPの蛍光基質分解活性を蛍光強度(FI,Ex:328nm,Em:393nm)として、島津分光蛍光強度計RF−5000で測定する。上記の抗体濃度、蛍光基質の種類と濃度、各種反応液の組成、反応時間、反応温度、反応液量などは必要に応じて適宜変更できる。
▲1▼ MT1−MMPの活性測定
上記の方法において、添加する検体として各種癌組織抽出画分を用いると、各種のMMPsを含有する組織抽出画分からMT1−MMPを特異的に固相化し、その活性を検出することができる。得られたMT1−MMP活性から検体癌組織の浸潤能を想定することができる。また、治療を施した癌組織の浸潤能の変動を想定したり、MT1−MMPの産生を抑制し浸潤能を低下あるいは消失させる医薬の選択や薬剤の検索などに有用である。
▲2▼ MT1−MMP活性阻害剤の検索
上記の方法において、添加する検体を一定の活性レベルを有する標準MT1−MMPを用い、これに対して各種の酵素活性阻害剤、MMPs阻害剤あるいは任意の化合物を添加すれば、それぞれのMT1−MMPに対する阻害活性を測定することができる。この方法を用いれば、未知のMT1−MMP阻害剤の検索やBatimastat、Marimastat、Ro32−3555、AG3340、Bay12−9566、CGS27023Aなど既存のMMP活性阻害剤が持つMT1−MMP阻害剤能を知ることができる。
標準MT1−MMPとしては、実施例1に記載したpUCΔMT1−MMP,pTrcHisΔMT1−MMPを導入した大腸菌から発現される組換えタンパク質、pSGΔMT1−MMPを導入したCOS−1,COS−7,CHO細胞から発現される組換えタンパク質を用いることができる。
pUCΔMT1−MMP,pTrcHisΔMT1−MMPにはMT1−MMPのプロドメインが含まれており、活性測定用の標準MT1−MMPとして用いる場合にはフューリンによってプロドメインを切断、除去し、活性型MT1−MMPに変換する必要がある。活性型MT1−MMPを直接、大腸菌発現で発現させるため、以下の組換え体を作成した。
MT1−MMPのcDNAを鋳型とし、プライマー
と
によって増幅される遺伝子を制限酵素BglIIとKpnIで切断、予めBamHIとKpnIで切断したpQE−32(Qiagen)と連結し、pQE MT1ACTR1を作成した。
さらに、MT1−MMPのcDNAを鋳型とし、プライマー
と
によって増幅される遺伝子を制限酵素BglIIとKpnIで切断、予めBamHIとKpnIで切断したpQE−32(Qiagen)と連結し、pQE MT1ACTR2を作成した。
pQE MT1ACTR1およびpQE MT1ACTR2でコードされるMT1−MMPは、それぞれY112−G507およびY112−G535であり、いずれもプロドメインを欠き、活性型MT1−MMPを発現する。
また、pQE MT1ACTR1は疎水性の高い膜貫通ドメインの全体、pQE MT1ACTR2は膜貫通ドメインの一部を欠くため、発現する組換えタンパク質の可溶性が向上し、活性測定用の標準MT1−MMPとしてより好ましい性質を有する。
活性型組換えMT1−MMPは、実施例1の▲3▼項に記載の方法などで精製し、活性測定用標準MT1−MMPとして供することができる。
▲3▼ 活性型MT1−MMPの調製と活性測定
pQE MT1ACTR1を導入した組換え大腸菌(400mL培養)より調製した不溶性封入体を8M尿素(urea),0.5M NaCl,10mMイミダゾール含有50mMリン酸緩衝液(pH7.5)で可溶化し、Ni++Chelating Sepharoseゲルカラムに供した。洗浄後、8M尿素,0.5M NaCl,0.5Mイミダゾール含有50mMリン酸緩衝液(pH7.5)で溶出し、得られた精製画分を8M尿素,0.3M NaCl含有20mM Tris−HCl(pH8.6)で平衡化したPD−10ゲルカラムに供し緩衝液を交換した。これに50μM ZnSO4および1mM DTTを添加した後、A280を測定し、8M尿素,0.3M NaCl,50μM ZnSO4,1mM DTT含有20mM Tris−HCl(pH8.6)を用いてA280が0.1となる様に希釈した。これに20mMシステアミン(cysteamin)を添加し、リフォールディング用サンプル(50mL)とした。これを5Lの0.15M NaCl,5mM CaCl2,100μM ZnSO4,5mM 2−メルカプトエタノール(2−mercaptoethanol),1mM ヒドロキシエチルジスルフィド(hydroxyethyl disulfide),0.02% NaN3含有50mM Tris−HCl(pH8.6)で16時間透析、さらに0.15M NaCl,5mM CaCl2,50μM ZnSO4,0.02% NaN3含有50mM Tris−HCl(pH8.6)で透析し(4時間、3回)、リフォールディングした。透析後のサンプルを遠心し、不溶化したタンパク質を除去、限外濾過で約1mLに濃縮した。これを0.15M NaCl,10mM CaCl2含有50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)で平衡化したSephacryl S−300ゲルカラムに供した。溶出フラクションをA280でモニターし、タンパク質溶出画分を検出した。溶出タンパク質は2つのピークを示し、前半が2量体以上の重合体、後半がモノマーであった。後半のタンパク質ピークを活性型MT1−MMP精製画分としてプールし、限外濾過で1mLに濃縮した。BCA(Pierce)によるタンパク質濃度は0.11mg/mLであった。
得られた活性型MT1−MMPの酵素活性を検討した。
酵素画分50μLに0.15M NaCl,10mM CaCl2,0.05% Brij35,0.02% NaN3含有50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)で1μMに調製したメタロプロテアーゼ用合成基質Mca−Pro−Leu−Gly−Leu−Dpa−Ala−Arg−NH2を100μL加え、37℃で1時間静置した。同時に、上記反応系に20mM EDTAを添加したものを調製し、同様に37℃で1時間静置した。反応液を500μLの0.1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.0)を分注した試験管に採り、反応を停止した。MT1−MMPの蛍光基質分解活性を蛍光強度(FI,Ex:328nm,Em:393nm)として島津分光蛍光強度計RF−5000で測定した。得られた蛍光強度はそれぞれ121.6、6.3を示し、調製した活性型MT1−MMPがEDTAで阻害されるメタロプロテアーゼ活性を有することを確認した。上記の酵素濃度、蛍光基質の種類と濃度、各種反応液の組成、反応時間、反応温度、反応液量などは必要に応じて適宜変更できる。
▲4▼ 固相化抗MT1−MMPモノクローナル抗体用いたMT1−MMPの活性測定
実施例4の▲2▼項に記載した方法に従って、抗体固相化プレートを作成した。使用した各種の抗体濃度は50μg/mL、ブロッキング液は1%スキムミルク、0.1M NaCl含有30mM リン酸緩衝液(pH7.0)にそれぞれ変更して用いた。予めブロッキング液を除去、洗浄液(0.15M NaCl含有50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4))で3回洗浄した抗体固相化プレートに、0.15M NaCl,10mM CaCl2.0.05% Brij35,0.02% NaN3含有50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)で5μL/100μLに希釈した酵素画分を入れ、4℃で16時間静置した。反応液を除去し洗浄液で3回洗浄後、0.15M NaCl,10mM CaCl2,0.05% Brij35,0.02% NaN3含有50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)で1μMに調製したメタロプロテアーゼ用合成基質Mca−Pro−Leu−Gly−Leu−Dpa−Ala−Arg−NH2を100μL加え、37℃で8時間静置した。反応液を500μLの0.1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.0)を分注した試験管に採り、反応を停止した。固相化抗MT1−MMPモノクローナル抗体に捕捉され、マイクロウェルに残存したMT1−MMPに由来する蛍光基質分解活性を蛍光強度(FI,Ex:328nm,Em:393nm)として島津分光蛍光強度計RF−5000で測定した。
固相抗体に本明細書記載の抗体222−1D8,222−2D12,222−3E12,222−4G5および222−9A3を用い、蛍光基質分解活性を測定した場合、市販のMT1−MMPヘモペキシンドメインに対するモノクローナル抗体(113−5B7、第一ファインケミカル)を用いた場合の9.2から17.1倍の蛍光強度を得た(図4)。抗体を添加せず同様に調製したものからは、酵素活性は検出されなかった。これより抗MT1−MMP抗体を固相化したマイクロウェルを用いることにより、選択的にMT1−MMPを捕捉し、その活性レベルを定量的に、検出し得ることが確認された。使用する抗体の種類や濃度、蛍光基質の種類と濃度、各種反応液の組成、反応時間、反応温度、反応液量などは必要に応じて適宜変更できる。
固相化する抗体は、認識領域がヘモペキシンドメインにある抗体、たとえば222−1D8,222−2D12,222−3E12,222−4G5および222−9A3が好適であるが、これら以外の抗体でも可能である一方、113−5B7のような不適当な抗体も存在する。認識領域が触媒ドメインにあるような抗体は、MT1−MMPの活性を阻害する可能性があり、本用途には不適当である場合がある。認識領域がプロペプチドドメインにあるような抗体は、プロペプチドを失った活性型MT1−MMPを捕捉できないことから、本用途には不適当である場合がある。
認識領域がヘモペキシンドメインにある抗体を固相化したマイクロウェルには、プロペプチドドメインを有する不活性型MT1−MMP、プロペプチドを失った活性型MT1−MMPのいずれもが捕捉される。この状態で活性を測定すれば、検体中の活性型MT1−MMPを選択的に測定できるし、フューリンやその他の適切なプロテアーゼ、界面活性剤などで活性化処理した後に測定し、活性化処理前に存在した活性型MT1−MMPを差し引くことで検体中の不活性型MT1−MMPを選択的に測定できる。
実施例10 臨床検体の測定
(1)滑膜抽出画分の測定
滑膜組織を0.15M NaCl,10mM CaCl2,0.05% Brij35含有50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)中でホモジェナイズ、遠心して組織抽出画分を調製した。これらの検体のMT1−MMP濃度を実施例4に記載した方法に従って測定した。63検体を測定した結果、MT1−MMP濃度は1.3ng/mL(実用検出限界)以下から118.9ng/mLまで分布し、その平均値は、23.9ng/mLであった。
(2)癌組織および癌組織近傍の正常組織抽出画分の測定
癌組織および癌組織近傍の正常組織を0.15M NaCl,10mM CaCl2,0.05% Brij35含有50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)中でホモジェナイズ、遠心して組織抽出画分を調製した。これらの検体のMT1−MMP濃度を実施例4に記載した方法に従って測定した。44検体の癌組織抽出画分の平均値は、17.2ng/mLを示した一方、17検体の正常組織抽出画分の平均値は、1.3ng/mL(実用検出限界)以下を示し、MT1−MMPの存在が癌組織で多く産生されていることを本発明サンドイッチEIAで確認した。
実施例11 臨床検体の測定(肺癌組織)
▲1▼ 癌組織および癌組織近傍の正常組織抽出画分の測定
およそ50mgの肺癌組織および癌組織近傍の正常組織を0.15M NaCl,10mM CaCl2,0.05% Brij35含有50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)中でホモジェナイズ、遠心して組織抽出画分を調製した。これらの検体のMT1−MMP濃度を実施例4に記載した方法に従って測定した。さらに、各組織抽出画分のタンパク質濃度をBCA(Pierce)で測定し、MT1−MMP濃度をタンパク質濃度で除して検体タンパク質量あたりのMT1−MMP量を算出した。
51組の検体について、平均値と標準偏差を得た。正常組織、癌組織のMT1−MMP量は、それぞれ0.41±0.76ng/mg、2.43±1.85ng/mgを示し、癌組織と正常組織で有意差(p<0.001)を確認した(Studentの有意差検定、図5)。
同様にして、口腔癌および大腸癌についても、正常組織、癌組織のMT1−MMP量を測定した。口腔癌組織からは近接する正常組織のおよそ3.6倍、大腸癌組織からは近接する正常組織のおよそ2.4倍のMT1−MMPが検出された。いずれの癌種においても正常組織、癌組織間でMT1−MMP量に有意差が確認された。
▲2▼ 転移との相関関係
前項▲1▼で測定した癌組織をリンパ節転移の有無を指標として分類し、転移の有無とMT1−MMP量について相関を調べた。リンパ節転移が認められない癌組織のMT1−MMP量(平均値±標準偏差)は1.63±1.77ng/mg、リンパ節転移が認められる癌組織では2.49±1.78ng/mgを示し、両群に有意差(p<0.05)を確認した(Studentの有意差検定、図6)。
図6においてリンパ節転移が認められていないにもかかわらず、高いMT1−MMP値を示した特異的な検体が存在する(リンパ節転移・なし、最高値7.4ng/mgを示したもの)。この症例は、リンパ節転移は認められなかったが静脈に強い浸襲があり、悪性度の高いものであった。この検体を含め、高いMT1−MMP値を示した検体のほとんどがリンパ節あるいは脈管浸襲を起こしていることから、臨床的に転移が見られなくてもMT1−MMPレベルが高値を示した場合には、すでに微小転移を起こしているか将来転移するリスクが高いと推定し得る。
実施例12 動物細胞株のMT1−MMP測定
MT1−MMPを産生するマウス、ラットおよびラビット培養細胞株の検索を行った。マウス8株、ラット4株、ラビット1株について実施例7と同様にして、各培養上清を調製した。得られた培養上清を20倍に濃縮してEIAに供した。検討した動物細胞株のうち、マウスC127、ラットFR、ラビットHIG−82で、高いMT1−MMPの産生が認められた。濃縮した培養上清を段階希釈し、MT1−MMPを産生するヒト細胞株MDA−MB−231とその反応性について比較した。いずれの種とも同様な傾きを有する希釈曲線(表11および図7)を得たことから、ヒトとマウス、ラットおよびラビット細胞株に由来する各MT1−MMPが、同等な免疫反応性を有することが示された。
これより本EIA系は、ヒトの他に、マウス、ラットおよびラビット各種動物由来のMT1−MMPも測定できることが確認された。本EIA系によって認識されるMT1−MMPのヘモペキシンドメインのアミノ酸配列をヒト〔配列番号:4〕と、マウス〔配列番号:5〕、ラット〔配列番号:6〕およびラビット〔配列番号:7〕で比較した(図9)。189アミノ酸残基のうちヒト/マウス間では1残基、ヒト/ラット間では1残基、ヒト/ラビット間では3残基のミスマッチが認められたのみで、ヘモペキシンドメインは、種間で良く保存されていることが確認された。
実施例13 界面活性剤および還元剤存在下における抗体の免疫反応性の変動
界面活性剤および還元剤存在下における抗体の反応性をウエスタンブロッティングで検討した。本明細書記載のMT1−MMPサンドイッチEIAの標準抗原を500ng/レーンでSDS−PAGEに供し、ニトロセルロース膜に転写した。1% BSA、0.1M NaCl含有30mMリン酸緩衝液(pH7.0)でブロッキングした後、本明細書記載のMT1−MMPサンドイッチEIAの希釈用緩衝液およびSDSと2−メルカプトエタノール不含の希釈用緩衝液を用いて10μg/mLとなるように調製した抗MT1−MMPモノクローナル抗体溶液(222−1D8、222−2D12、222−3E12、222−4G5および222−9A3)に浸漬し、16時間インキュベートした。洗浄後、抗マウスIgG−HRPを反応させ染色した。
本明細書記載のMT1−MMPサンドイッチEIAの固相抗体として用いた抗MT1−MMPモノクローナル抗体222−2D12は、SDSと2−メルカプトエタノールの含有・不含有にかかわらずMT1−MMPとの反応性を維持していた(図8)。一方、222−9A3は、SDSと2−メルカプトエタノール不含有では222−2D12同等の反応性を示したにもかかわらず、含有下ではほとんど反応性を失った(図8)。222−1D8やその他の抗体もMT1−MMPとの反応性を著しく低下させたり、膜全体が着色するなど特異性を失う傾向が認められた。SDSと2−メルカプトエタノールのような界面活性剤、還元剤を含有する希釈用緩衝液中で免疫学的反応を進行させるためには、固相抗体として用いた222−2D12のような安定した反応性を有する抗体の選択が必要である。
ヒトIgGのH鎖およびL鎖は鎖内にそれぞれ4ヶ所、2ヶ所のS−S結合を有し、1ヶ所のS−S結合で互いに結合している。IgG1では、この二量体がH鎖間の2ヶ所のS−S結合で結合し4本鎖構造を安定化している。IgG3にはH鎖間のS−S結合が15ヶ所ある。抗体に還元剤を充分に作用させた場合、鎖内・鎖間のS−S結合が切れ、抗体の高次構造とともに免疫反応性が失われる。S−S結合の多いIgG3は、IgG1に比べ還元剤による変性効果が大きく免疫反応性の低下が著しいものと予想される。MT1−MMPサンドイッチEIA希釈用緩衝液中でMT1−MMPに対する反応性を失った222−9A3は、IgG3である。IgG1においても還元剤によるS−S結合の切断は著しい免疫反応性の低下をまねくが、H鎖とL鎖は、非共有結合による相互作用でも高次構造を保持しているため、還元剤存在下で免疫反応性を維持するクローンも存在し得る。
実施例14 可溶型MT−MMPの作製とその利用
MT2−MMP(SwissProt Accession No.054732;マウス)の触媒ドメイン、ヒンジドメインおよびヘモペキシンドメイン(Y128−C555)を増幅するためのPCRプライマーを作製した。5’側プライマーにはSmaIサイト、3’側プライマーには終止コドンとBglIIサイトを付加した。SmaIサイトはpUC18のβ−ガラクトシダーゼにインフレームで連結できるように設計した。MT2−MMPの全長を含む遺伝子をクローン化したpSGMT2−MMPを鋳型とし、93℃30秒、45℃30秒、72℃60秒で30サイクルのPCRを行った。得られたPCR産物の両末端をSmaIとBglIIで切断し、予めSmaIとBamHIで切断したpUC18に挿入した。この発現ベクターによりβ−ガラクトシダーゼの11アミノ酸残基と、シグナルペプチド、プロペプチド領域、膜貫通領域および細胞内ドメインを欠損したΔMT2−MMP(Y128−C555)の428アミノ酸残基、計439アミノ酸残基からなる分子量約48kDaの融合タンパク質を発現した。
MT3−MMP(SwissProt Accession No.P51512)の触媒ドメイン、ヒンジドメインおよびヘモペキシンドメイン(Y120−C532)を増幅するためのPCRプライマーを作製した。5’側プライマーにはSmaIサイト、3’側プライマーには終止コドンとBglIIサイトを付加した。SmaIサイトはpUC18のβ−ガラクトシダーゼにインフレームで連結できるように設計した。MT3−MMPの全長を含む遺伝子をクローン化したpSGMT3−MMPを鋳型とし、93℃ 30秒、45℃ 30秒、72℃ 60秒で30サイクルのPCRを行った。得られたPCR産物の両末端をSmaIとBglIIで切断し、予めSmaIとBamHIで切断したpUC18に挿入した。この発現ベクターによりβ−ガラクトシダーゼの11アミノ酸残基と、シグナルペプチド、プロペプチド領域、膜貫通領域および細胞内ドメインを欠損したΔMT3−MMP(Y120−C532)の413アミノ酸残基、計439アミノ酸残基からなる分子量約47kDaの融合タンパク質を発現した。
MT4−MMP(SwissProt Accession No.Q9ULZ9)の触媒ドメイン、ヒンジドメインおよびヘモペキシンドメイン(Q129−C525)を増幅するためのPCRプライマーが設計できる。5’側プライマーにはSmaIサイト、3’側プライマーには終止コドンとBglIIサイトを付加する。SmaIサイトはpUC18のβ−ガラクトシダーゼにインフレームで連結できるように設計する。MT4−MMPの全長を含む遺伝子をクローン化したベクターあるいは乳癌cDNAライブラリーなどを鋳型とし、93℃ 30秒、45℃ 30秒、72℃ 60秒で30サイクルのPCRを行う。得られたPCR産物の両末端をSmaIとBglIIで切断し、予めSmaIとBamHIで切断したpUC18に挿入する。この発現ベクターによりβ−ガラクトシダーゼの11アミノ酸残基と、シグナルペプチド、プロペプチド領域、膜貫通領域および細胞内ドメインを欠損したΔMT4−MMP(Q129−C525)の397アミノ酸残基、計408アミノ酸残基からなる分子量約45kDaの融合タンパク質を発現する。
MT5−MMP(SwissProt Accession No.Q9Y5R2)の触媒ドメイン、ヒンジドメインおよびヘモペキシンドメイン(Y156−C569)を増幅するためのPCRプライマーを作製した。5’側プライマーにはSmaIサイト、3’側プライマーには終止コドンとBglIIサイトを付加した。SmaIサイトはpUC18のβ−ガラクトシダーゼにインフレームで連結できるように設計した。脳cDNAライブラリーを鋳型とし、93℃ 30秒、45℃ 30秒、72℃ 60秒で30サイクルのPCRを行う。得られたPCR産物の両末端をSmaIとBglIIで切断し、予めSmaIとBamHIで切断したpUC18に挿入する。この発現ベクターによりβ−ガラクトシダーゼの11アミノ酸残基と、シグナルペプチド、プロペプチド領域、膜貫通領域および細胞内ドメインを欠損したΔMT5−MMP(Y156−C569)の414アミノ酸残基、計425アミノ酸残基からなる分子量約47kDaの融合タンパク質を発現する。
MT6−MMP(SwissProt Accession No.Q9NPA2)の触媒ドメイン、ヒンジドメインおよびヘモペキシンドメイン(Y108−C508)を増幅するためのPCRプライマーが設計できる。5’側プライマーにはSmaIサイト、3’側プライマーには終止コドンとBglIIサイトを付加する。SmaIサイトはpUC18のβ−ガラクトシダーゼにインフレームで連結できるように設計する。MT6−MMPの全長を含む遺伝子をクローン化したベクターあるいは白血球、肺、脾臓cDNAライブラリーなどを鋳型とし、93℃ 30秒、45℃ 30秒、72℃ 60秒で30サイクルのPCRを行う。得られたPCR産物の両末端をSmaIとBglIIで切断し、予めSmaIとBamHIで切断したpUC18に挿入する。この発現ベクターによりβ−ガラクトシダーゼの11アミノ酸残基と、シグナルペプチド、プロペプチド領域、膜貫通領域および細胞内ドメインを欠損したΔMT6−MMP(Y108−C508)の401アミノ酸残基、計412アミノ酸残基からなる分子量約45kDaの融合タンパク質を発現する。
触媒ドメイン、ヒンジドメインおよびヘモペキシンドメインからなる組換えタンパク質ΔMT2−MMP、ΔMT3−MMP、ΔMT4−MMP、ΔMT5−MMPおよびΔMT6−MMPは、実施例1記載の方法と同様にしてinclusion bodyとして回収、8M urea,0.1M NaCl含有10mMリン酸緩衝液(pH7.0)で可溶化し、preparative SDS−PAGEおよび電気溶出で精製、分取することができる。あるいは穏やかなリフォールディングを行いMMP活性を有するMT−MMPを作成することができる。
得られた組換えタンパク質を免疫原として使用することにより、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体を作製することができる。たとえば得られたモノクローナル抗体とそれぞれの組換えタンパク質(標準抗原)の組み合わせによってMT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMPおよびMT6−MMPを特異的に測定できるサンドイッチEIA系が得られる。膜結合型のMT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMPおよびMT6−MMPを測定するEIAの固相には界面活性剤および還元剤に耐性を示す抗体を選択することが望ましい。なお、測定対象の膜結合型MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMPおよびMT6−MMPは、界面活性剤および還元剤を含有する緩衝液中で抽出することができる。
また、得られたモノクローナル抗体を介してMT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMPおよびMT6−MMPを固相化し、それぞれのMMP活性を測定することができる。
MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMPおよびMT6−MMPのサンドイッチEIAや活性測定系は、癌の悪性度の評価、癌種の特定、臓器特異的な癌の検出、リウマチ性関節炎やアルツハイマーの進行度の推定など種々の臨床分野に応用できる外、MT−MMP活性阻害剤などの医薬、その開発研究手段として利用できる。
産業上の利用可能性
本発明により、簡単な操作および試薬を用い、感度並びに精度良く、迅速にMT1−MMPを定量することができる。特に、本発明では、被検試料中の可溶型MT1−MMPを定量できる。さらに、MT1−MMPの発現を促進または阻害する化合物や因子、MT1−MMPの酵素活性を促進または阻害する化合物や因子を効率よくスクリーニングすることが可能である。また、本発明で、細胞膜からMT−MMPsを遊離及び/又は可溶化せしめ、該MT−MMPsを定量できる。本発明では、これら測定に有用な試薬、試薬セット、スクリーニングキット、そして癌または癌転移検査薬、リウマチ性関節炎やアルツハイマーの進行度検査薬、さらにはMT1−MMP活性阻害剤などの医薬、その開発研究手段などが提供される。
本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。本件は特願2000−352491号(出願日:平成12年11月20日)を優先権主張の基礎とする出願であって、当該出願に添付の明細書の内容はそれを参照することにより本明細書に含めて解釈されるべきものである。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明のMT1−MMPに対するモノクローナル抗体を使用し、実施例1−▲3▼で調製したΔMT1−MMP(58kDa)およびヘモペキシンドメイン(30kDa,34kDa)、触媒ドメイン(21kDa)の断片を抗原としたエピトープマッピングの結果を模式的に示す。
図2は、本発明のMT1−MMPに対するモノクローナル抗体を使用し、実施例1−▲2▼で調製したMT1−MMP,MT2−MMP(マウス)及びMT3−MMPのそれぞれを発現するCOS−7の細胞破砕物を抗原としたウエスタンブロッティングによる交叉反応性試験の結果を模式的に示す。
図3は、MT1−MMPサンドイッチEIAにより得られた標準曲線の例を示す。
図4は、各種固相化抗MT1−MMPモノクローナル抗体を用いたMT1−MMPの活性測定の結果を示す。
図5は、癌組織及びその近傍正常組織につき、それらから調製された抽出液中のMT1−MMP量を測定した結果を各試料毎に示したものである。
図6は、癌組織から調製された抽出液中のMT1−MMP量と当該癌組織のリンパ節転移の有無を指標として分類されたものとの間の相関を示すものである。
図7は、ヒト、マウス、ラット及びラビット培養細胞株より調製された培養上清について、その中のMT1−MMP量を測定し、その結果得られた希釈曲線を示す。
図8は、界面活性剤及び還元剤存在下及び非存在下における抗MT1−MMPモノクローナル抗体のMT1−MMPに対する免疫反応性を試験した結果を示している。MT1−MMPは、SDS−PAGEにかけられた後、膜に転写後各抗体と反応せしめられた。
図9は、ヒト、マウス、ラット及びラビット由来MT1−MMPのヘモペキシンドメインのアミノ酸配列をそれぞれ比較して示したものである。
Claims (60)
- 膜結合型マトリックスメタロプロテアーゼ類(MT−MMPs)から成る群から選ばれたMT−MMPに対する抗体を用いることを特徴とするMT−MMPの免疫学的定量法。
- MMP−14(MT1−MMP)に対する抗体,MMP−15(MT2−MMP)に対する抗体,MMP−16(MT3−MMP)に対する抗体,MMP−17(MT4−MMP)に対する抗体,MMP−24(MT5−MMP)に対する抗体及びMMP−25(MT6−MMP)に対する抗体から成る群から選ばれた抗体を用いることを特徴とする請求項1記載の免疫学的定量法。
- MT1−MMPに対する抗体を用い且つMT1−MMPの免疫学的定量をすることを特徴とする請求項1又は2記載の免疫学的定量法。
- 界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一記載の免疫学的定量法。
- 抗体が、(i)界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものの存在下で免疫反応性を維持できること及び(ii)人為的に変性してエピトープを露出させたMT−MMPを免疫抗原として得られることから成る群から選ばれた特徴の少なくとも一つを持つものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一記載の免疫学的定量法。
- 抗体がモノクローナル抗体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一記載の免疫学的定量法。
- 免疫学的に定量できるMT−MMPが、(i)界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを用いて細胞膜から遊離及び/又は可溶化させた分子及び(ii)自律的に細胞膜から遊離及び/又は可溶化した分子から成る群から選ばれた分子種の少なくとも一つであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一記載の免疫学的定量法。
- (a)界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを用いてMT−MMPを細胞膜から遊離及び/又は可溶化させる工程及び(b)MT−MMPを免疫学的に定量する工程を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一記載の免疫学的定量法。
- 界面活性剤がドデシル硫酸ナトリウム(SDS)であることを特徴とする請求項4〜8のいずれか一記載の免疫学的定量法。
- 還元剤が2−メルカプトエタノールであることを特徴とする請求項4〜8のいずれか一記載の免疫学的定量法。
- 請求項1〜10のいずれか一記載の免疫学的定量法に使用するためのMT−MMPの免疫学的測定用試薬。
- MT−MMPが、MT1−MMP,MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMP及びMT6−MMPから成る群から選ばれたものであることを特徴とする請求項11記載の試薬。
- MT−MMPが、MT1−MMPであることを特徴とする請求項11記載の試薬。
- 界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを含有していることを特徴とする請求項11〜13のいずれか一記載の試薬。
- 界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを用いて、MT−MMPsから成る群から選ばれたものを、細胞膜から遊離及び/又は可溶化させることを特徴とするMT−MMPの遊離及び/又は可溶化方法。
- 界面活性剤がSDSであることを特徴とする請求項15記載の方法。
- 還元剤が2−メルカプトエタノールであることを特徴とする請求項15記載の方法。
- MT−MMPが、MT1−MMP,MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMP及びMT6−MMPから成る群から選ばれたものであることを特徴とする請求項15〜17のいずれか一記載の方法。
- MT−MMPが、MT1−MMPであることを特徴とする請求項15〜17のいずれか一記載の方法。
- (a)請求項1〜10のいずれか一記載の免疫学的定量法あるいは(b)請求項15〜19のいずれか一記載の方法に使用するためのものであることを特徴とするMT−MMPを遊離及び/又は可溶化する試薬。
- 界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを含有していることを特徴とする請求項20記載の試薬。
- MT−MMPが、MT1−MMP,MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMP及びMT6−MMPから成る群から選ばれたものであることを特徴とする請求項20又は21記載の試薬。
- MT−MMPが、MT1−MMPであることを特徴とする請求項20又は21記載の試薬。
- (a)請求項1〜10のいずれか一記載の免疫学的定量法、(b)請求項11〜14のいずれか一記載の試薬、(c)請求項15〜19のいずれか一記載の方法及び(d)請求項20〜23のいずれか一記載の試薬から成る群から選ばれたものを用い、且つMT−MMPsから成る群から選ばれたものの発現を促進または阻害する化合物をスクリーニングすることを特徴とするスクリーニング方法。
- 被検化合物の存在下及び非存在下にスクリーニングを行い、被検化合物の存在下及び非存在下での各結果を比較することを特徴とする請求項24記載のスクリーニング方法。
- MT1−MMP,MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMP及びMT6−MMPから成る群から選ばれたMT−MMPの発現を促進または阻害する化合物をスクリーニングすることを特徴とする請求項24又は25記載のスクリーニング方法。
- MT1−MMPの発現を促進または阻害する化合物をスクリーニングすることを特徴とする請求項24又は25記載のスクリーニング方法。
- 請求項24〜27のいずれか一記載のスクリーニング方法に使用するための、MT−MMPsから成る群から選ばれたものの発現を促進または阻害する化合物のスクリーニングキット。
- (a)MT−MMPsから成る群から選ばれたMT−MMPに対する抗体、(b)界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたもの及び(c)免疫学的方法で固相化されたMT−MMPから成る群から選ばれたものを含有することを特徴とする請求項28記載のキット。
- MT1−MMP,MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMP及びMT6−MMPから成る群から選ばれたMT−MMPの発現を促進または阻害する化合物のスクリーニングのためのものであることを特徴とする請求項28又は29記載のキット。
- MT1−MMPの発現を促進または阻害する化合物のスクリーニングのためのものであることを特徴とする請求項28又は29記載のキット。
- 免疫学的方法で固相化されたMT−MMPの酵素活性を測定することを特徴とする測定方法。
- MT−MMPの酵素活性を定量的に測定することを特徴とする請求項32記載の方法。
- 固相化されたMT−MMPが、抗MT−MMP抗体を介して選択的に固相化されたものであることを特徴とする請求項32又は33記載の方法。
- MT−MMPが、MT1−MMP,MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMP及びMT6−MMPから成る群から選ばれたものであることを特徴とする請求項32〜34のいずれか一記載の方法。
- MT−MMPが、MT1−MMPであることを特徴とする請求項32〜34のいずれか一記載の方法。
- MT−MMPが、(i)界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを用いて細胞膜から遊離及び/又は可溶化させた分子及び(ii)自律的に細胞膜から遊離及び/又は可溶化した分子から成る群から選ばれた分子種の少なくとも一つであることを特徴とする請求項32〜36のいずれか一記載の方法。
- (a)界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを用いてMT−MMPを細胞膜から遊離及び/又は可溶化させる工程及び(b)MT−MMPの酵素活性を測定する工程を含むことを特徴とする請求項32〜37のいずれか一記載の方法。
- 免疫学的方法で固相化されたMT−MMP。
- 抗MT−MMP抗体を介して選択的に固相化されたものであることを特徴とする請求項39記載の固相化されたMT−MMP。
- 抗MT−MMP抗体が、MT−MMPのヘモペキシン様ドメインを認識する抗体であることを特徴とする請求項40記載の固相化されたMT−MMP。
- MT−MMPが、MT1−MMP,MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMP及びMT6−MMPから成る群から選ばれたものであることを特徴とする請求項39〜41のいずれか一記載の固相化されたMT−MMP。
- MT−MMPが、MT1−MMPであることを特徴とする請求項39〜41のいずれか一記載の固相化されたMT−MMP。
- (i)請求項32〜38のいずれか一記載の方法、あるいは(ii)請求項39〜43のいずれか一記載の固相化されたMT−MMPを用いた、MT−MMPの酵素活性を促進または阻害する化合物のスクリーニング方法。
- 被検化合物の存在下及び非存在下にスクリーニングを行い、被検化合物の存在下及び非存在下での各結果を比較することを特徴とする請求項44記載のスクリーニング方法。
- 請求項32〜38のいずれか一記載の方法に使用するための、MT−MMPの酵素活性を促進または阻害する化合物のスクリーニングキット。
- 請求項39〜43のいずれか一記載の固相化されたMT−MMPを含有していることを特徴とする請求項46記載のキット。
- (a)請求項24〜27のいずれか一記載の方法で得られ且つMT−MMPsから成る群から選ばれたものの発現を促進または阻害する化合物、(b)請求項28〜31のいずれか一記載のキットを使用して得られ且つMT−MMPsから成る群から選ばれたものの発現を促進または阻害する化合物、(c)請求項44又は45記載の方法で得られたMT−MMPの酵素活性を促進または阻害する化合物及び(d)請求項46又は47記載のキットを使用して得られたMT−MMPの酵素活性を促進または阻害する化合物から成る群から選ばれたものを含有していることを特徴とする医薬。
- MT1−MMP,MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMP及びMT6−MMPから成る群から選ばれたMT−MMPの発現を促進または阻害する化合物又は該MT−MMPの酵素活性を促進または阻害する化合物を含有していることを特徴とする請求項48記載の医薬。
- MT1−MMPの発現を促進または阻害する化合物又はMT1−MMPの酵素活性を促進または阻害する化合物を含有していることを特徴とする請求項48記載の医薬。
- (i)請求項1〜10のいずれか一記載の免疫学的定量法又は(ii)請求項32〜38のいずれか一記載の方法により、MT−MMPsから成る群から選ばれたものを測定するものであることを特徴とする癌検査または癌転移検査薬。
- (A)(i)界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを用いて、細胞膜から遊離及び/又は可溶化させた分子及び(ii)自律的に細胞膜から遊離及び/又は可溶化した分子から成る群から選ばれた分子種の少なくとも一つであるMT−MMPの量を指標として使用し、癌の悪性度を評価する又は癌転移能を評価するか、あるいは(B)(iii)界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものを用いて細胞膜から遊離及び/又は可溶化させた分子及び(iv)自律的に細胞膜から遊離及び/又は可溶化した分子から成る群から選ばれた分子種の少なくとも一つであるMT−MMPの酵素活性の量を指標として使用し、癌の悪性度を評価する又は癌転移能を評価することを特徴とする請求項51記載の検査薬。
- MT1−MMP,MT2−MMP,MT3−MMP,MT4−MMP,MT5−MMP及びMT6−MMPから成る群から選ばれたMT−MMPを測定するものであることを特徴とする請求項51又は52記載の検査薬。
- MT1−MMPを測定するものであることを特徴とする請求項51又は52記載の検査薬。
- MT1−MMPに対する抗体,MT2−MMPに対する抗体,MT3−MMPに対する抗体,MT4−MMPに対する抗体,MT5−MMPに対する抗体及びMT6−MMPに対する抗体から成る群から選ばれた抗体を含有していることを特徴とする請求項51〜53のいずれか一記載の検査薬。
- MT1−MMPに対する抗体を含有していることを特徴とする請求項51,52又は54記載の検査薬。
- MT1−MMPの酵素活性を測定するものであることを特徴とする請求項51、52、54又は56記載の検査薬。
- MT−MMPsから成る群から選ばれたMT−MMPに対する抗体であって、且つ(i)界面活性剤及び還元剤から成る群から選ばれたものの存在下で免疫反応性を維持できること及び(ii)人為的に変性してエピトープを露出させたMT−MMPを免疫抗原として得られることから成る群から選ばれた特徴の少なくとも一つを持つものであることを特徴とする抗体。
- MT1−MMPに対する抗体,MT2−MMPに対する抗体,MT3−MMPに対する抗体,MT4−MMPに対する抗体,MT5−MMPに対する抗体及びMT6−MMPに対する抗体から成る群から選ばれたものであることを特徴とする請求項58記載の抗体。
- 抗体がモノクローナル抗体であることを特徴とする請求項58又は59記載の抗体。
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