JPS643783Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 この考案はバランサおよびウオータポンプの取
付構造に関する。

各種エンジンには、エンジン内の回転部分によ
つて生じる遠心力や往復動部分による慣性力等、
様々な力が作用する関係上、これらの力を可能な
限り打ち消してエンジン全体の振動を少なくする
目的でエンジン内の回転軸にバランサを取り付け
ることが行われる。また、水冷式エンジンの場
合、エンジンによつて振動されるウオータポンプ
を内蔵している。

ところでエンジンにバランサおよびウオータポ
ンプを備える場合、当然エンジンの構造は複雑に
なるが、特に従来は、バランサの回転軸およびウ
オータポンプの回転軸は、それぞれ別個に設けら
れており、このため、部品点数が増え、構造が複
雑になり、小型化が難しいといつた問題がある。
また、一般に、機関冷却水循環用のウオータポン
プを備えた内燃機関においては、ウオータポンプ
の回転数は、機関の特性や必要とされる冷却水の
流量、さらにウオータポンプ自体の特性や性能等
によつて異なり、バランサの回転速度と必ずしも
一致するとは限らないものであり、従つて、クラ
ンクシヤフトと同速度で回転するバランサを持つ
軸上にウオータポンプを取り付けると、高速回転
になつた時にキヤビテーシヨンなどを起こしてウ
オータポンプの効率が悪くなり、この結果、必要
とされる冷却水の流量が得られなくなるといつた
不具合が生じる場合もある。

この考案は上記事情に鑑みてなされたもので、
軸数を減らしてエンジンの部品点数を少なくし、
エンジンの小型化、構造の簡素化を図ることがで
き、その上バランサとウオータポンプが個々に必
要とする回転数を容易に確保することができるバ
ランサおよびウオータポンプの取付構造を提供す
ることを目的とする。

この考案によるバランサおよびウオータポンプ
の取付構造は、クランクシヤフトの回転に連動し
て回転しエンジンの不つりあい慣性力を打ち消す
バランサと、ウオータポンプのインペラとが１本
の回転軸に支持されて回転する構成の内燃機関に
おいて、上記インペラとバランサを、それぞれ上
記回転軸回りに別個に回転可能に設け、かつ、こ
れらインペラとバランサのそれぞれにランクシヤ
フトからの独自の動力伝達系を具備させたことを
特徴としている。

以下、この考案を図面を参照して説明する。

第１図と第２図はこの考案の一実施例を示すも
ので、図中符号１はクランクケースＡ内に設けら
れたメインシヤフトであり、このメインシヤフト
１は従来周知の如くコンロツド２によつて回転さ
れるクランクシヤフト３の回転をクランクギア４
とクラツチ５とを介して受けて回転するようにな
つている。

上記メインシヤフト１の側方にはアイドルシヤ
フト６が回転自在に設けられるとともに、このア
イドルシヤフト６の一端には上記メインシヤフト
１に固着されたメインシヤフトギア７にかみ合う
アイドルギア部８が設けられていて、メインシヤ
フト１の回転がアイドルシヤフト６に伝達するよ
うになつている。上記アイドルギア部８は、アイ
ドルシヤフト６の一端に遊嵌された主ギア８ａ
と、この主ギア８ａを挾むようにアイドルシヤフ
ト６に各々通され、主ギア８ａの歯数より１つ少
ない歯数を有する従動ギア８ｂおよび駆動ギア８
ｃとから成り、従動ギア８ｂはアイドルシヤフト
６に回転自在に嵌合し、また駆動ギア８ｃはアイ
ドルシヤフト６の一端にピン９により、固定され
ていて、上記メインシヤフトギア７は主ギア８ａ
と駆動ギア８ｃとに歯合して駆動ギア８ｃを回転
させることによりアイドルシヤフト６を回転させ
るようになつている。上記ピン９は、アイドルシ
ヤフト６の一端をアイドルシヤフト６の軸線と直
交するように貫通して設けられたもので、その両
端を駆動ギア８ｃの中央部にあけた係止凹部８ｄ
に係合してアイドルシヤフト６に駆動ギア８ｃを
固定している。なお、第２図に符号１０で示すも
のは、従動ギア８ｂをアイドルシヤフト６の軸方
向主ギア８ａ側に付勢して従動ギア８ｂを主ギア
８ａに、また主ギア８ａを駆動ギア８ｃに押し付
ける皿ばねであり、この皿ばね１０によつて主ギ
ア８ａに押圧された駆動ギア８ｃは各ギアの回転
時に主ギア８ａによつて引きずられて常に一方向
に付勢されてメインシヤフトギア７と強く噛合し
ギア間のバツクラツシユを少なくするものであ
る。

一方、アイドルシヤフト６の側方には、アイド
ルシヤフト６のアイドルギア部８取付側と反対側
のクランクケースＡ内に設けられた冷却水の循環
通路Ｄの一部に一端１２ａを突出させた回転軸１
２が、その軸線をアイドルシヤフト６の軸線と平
行して回転自在に設けられている。この回転軸１
２は、その中央部に固定されたギア部材１３を上
記アイドルシヤフト６の一部に固定された歯車１
４に噛合させてアイドルシヤフト６により駆動さ
れるようになつている。また、上記回転軸１２の
他端１２ｂ側には、両端の同軸位置に挿通孔１５
ａ，１５ｂをあけたバランサ１５が、挿通孔１５
ａをギア部材１３に向けかつ挿通孔１５ａ，１５
ｂに回転軸１２を挿通して回転自在に支持されて
いる。なお、バランサ１５の挿通孔１５ｂまわり
の周壁は一部筒状にされている。このバランサ１
５は上記ギア部材１３側の挿通孔１５ａに挿入し
たベアリング１６と、挿通孔１５ｂに挿入したベ
アリング１７と、このベアリング１７を囲むバラ
ンサ１５の円筒状の周壁を囲むベアリング１８と
によつて回転軸１２と別個に回転軸１２を中心に
回転自在にされたものである。そしてバランサ１
５の挿通孔１５ｂ側の他端にはバランサギア１９
が固定されるとともに、このバランサギア１９は
上記主ギア８ａと従動ギア８ｂとに噛合していて
メインシヤフト１の回転によりバランサ１５が回
転軸１２を中心に回転するようになつている。ま
た、上記回転軸１２の循環通路Ｄの一部に突出し
た一端１２ａにはインペラ２０が固定されてい
て、上記循環通路Ｄの一部にウオータポンプＰが
形成されている。

なおまた上記循環通路Ｄはシリンダおよびシリ
ンダヘツド等のジヤケツトに連絡している。

そして、このようにして、ウオータポンプＰの
インペラ２０とバランサ１５は、それぞれ回転軸
１２回りに別個に回転可能に設けられ、かつ、こ
れらインペラ２０とバランサ１５のそれぞれがク
ランクシヤフト３からの独自の動力伝達系を備え
た構成とされている。

上記した構成によれば、クランクシヤフト３が
回転してメインシヤフト１が回転すると、バラン
サ１５が回転して機関の振動を低減する。また、
バランサ１５の回転とは別個にメインシヤフト１
の回転がアイドルシヤフト６とアイドル歯車１４
とギア部材１８に伝わり、ウオータポンプＰのイ
ンペラ２０が回転して循環通路Ｄ内の冷却水を循
環させる。

このように、上記した構造においては、インペ
ラ２０を支持して回転させる回転軸１２がバラン
サ１５も支持していて、別々の軸によりインペラ
とバランサとを支持回転させていた従来の構造よ
り軸数が少なくなつているため、機関の少型軽量
化をなしうる。また軸数を減らすことによつて、
機関の設計自由度が増すとともに、機関製作時の
軸加工の工数が少なくなるため、加工が容易にな
る。

以上説明したようにこの考案は、シリンダ等を
冷却する冷却水を循環させるウオータポンプのイ
ンペラと、エンジンの不つりあい慣性力を打ち消
すためのバランサとを１本の回転軸に取り付け
て、従来の構造よりも軸数を減らしたものである
ため、機関の小型軽量化をなしうる。また、同様
な理由によつて機関設計の自由度が増すととも
に、機関製作時の軸加工の工数が少なくなるた
め、加工工程を簡略化できるといつた優れた効果
を奏する。

特にこの考案によれば、インペラとバランサ
は、回転軸回りにそれぞれ別個に回転可能に設け
られ、かつ、これらインペラおよびバランサのそ
れぞれがクランクシヤフトからの独自の動力伝達
系を備えている構成であるから、インペラとバラ
ンサの回転速度に関し、互いに異なる回転数とな
るように予め設定することができ、従つて、機関
の特性や要求される冷却水の流量などを含む種々
の設計条件等に基づいて、それらインペラおよび
バランサが個々に必要とする回転数を容易に確保
することができる。換言すれば、インペラおよび
バランサの各々の回転速度に関し相関的に制約を
受けることがないので、それらインペラおよびバ
ランサの個々について最も望ましい回転速度に設
定することが可能になる、といつた特有の効果を
奏する。

【図面の簡単な説明】

図面はこの考案の一実施例を示すもので、第１
図はエンジンの断面略図、第２図は要部の縦断面
図である。 ２……コンロツド、３……クランクシヤフト、
１２……回転軸、１５……バランサ、２０……イ
ンペラ、Ａ……クランクケース、Ｄ……循環通
路、Ｐ……ウオータポンプ。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. クランクシヤフトの回転に連動して回転しエン
   ジンの不つりあい慣性力を打ち消すバランサと、
   ウオータポンプのインペラとが１本の回転軸に支
   持されて回転する構成の内燃機関において、上記
   インペラとバランサは、それぞれ上記回転軸回り
   に別個に回転可能に設けられ、かつ、これらイン
   ペラとバランサのそれぞれがクランクシヤフトか
   らの独自の動力伝達系を備えていることを特徴と
   するバランサおよびウオータポンプの取付構造。