JPS6410699B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、液体で満たされかつ弾性ゴム周壁を
もつた２つの液体室が、小さな振幅で高い周波数
の振動の際の液圧的応動を阻止するために、絞り
開口付きの中間板を介して互いに液圧的に接続さ
れ、そして、その上側液体室からは膜によつて別
の室（膜室）が分離されている、特に自動車用
の、液圧的減衰作用をもつた二室形エンジン支持
体に関する。

この種のエンジン支持体はヨーロツパ特許出願
公開第0044545号公報によつて公知である。弾性
支持された中間板と高圧の際に自動的に閉鎖され
るノズルとを備えたこの公知のエンジン支持体に
おいては、小さな振幅で高周波数の振動の際には
そのエンジン支持体が応動せず、そしてこの種の
振動はごく僅かに減衰され、一方周波数が低くな
る程かつ振幅が大きくなる程振動の際にノズルを
通る液体通流が増大するので振動減衰も大きくな
る。中間板を弾性支持することによつて、さらに
約200Hzの周波数領域まで小さな振幅について液
圧的絶縁も小規模ながら得られ、それによつて音
響特性が改善される。

液圧的絶縁の他の例がドイツ連邦共和国特許出
願公開第2618333号公報に開示されており、この
例では外周領域において液体室のエンジン側カバ
ーキヤツプに環状室が形成され、この環状室がそ
の液体室から膜によつて分離されている。このよ
うにして得られた液圧的絶縁はしかしながら400
Hz以上の非常に高い周波数の際に初めて生じるも
のであり、従つて最高400Hz以下の本当に対策を
講じたい周波数領域に対しては実際上有効ではな
い。

最良のエンジン支持に望まれている最も重要な
事項は、つまり始動トルクおよび制動トルクの吸
収、路面のでこぼこによつて引き起こされた力の
吸収、無負荷運転の際の車体振動の回避、ならび
に衝撃音の遮断である。このようなことから、エ
ンジン支持体に対して高い剛性あるいは多くの減
衰といつたような要求が出される。しかしなが
ら、このことはエンジンの動的慣性力の遮断のた
めには音響的には不利に作用する。というのは、
良好な衝撃音の遮断を得るためには柔軟に構成さ
れたエンジン支持体が必要であるからである。

すなわち、原理的には次の２つの条件、つま
り、低周波数領域（約30Hz以下）での高い減衰
と、30Hz以上の高い周波数領域での小さな剛性と
の２つの条件が満たされなければならない。ここ
ではまだ僅かな振幅が現われるので、出来るだけ
良い遮断という要求が強い。

本発明は、このような点に鑑みてなされ、大き
な振動振幅の際には高い減衰を生ぜしめそして特
に小さな振幅の際には音響の最適遮蔽ならびに発
生振動の最適絶縁を保証するように、液圧的減衰
作用をもつた二室形エンジン支持体を構成するこ
とを目的とする。

このような目的は、本発明によれば、冒頭で述
べた種類の二室形エンジン支持体において、二室
の上側液体室から膜によつて分離されている膜室
がその上側液体室に接するエンジン支持体の中央
部に配設され、そしてその膜室を閉鎖するゴム膜
がその中央部に堅い抑制部材（Tilgermasse）を
有するようにすることによつて達成される。

その場合に、抑制部材は金属円板として形成さ
れ、そして円環状に成形されたゴム膜によつて支
持されるようにすることができる。膜を25〜45特
に30〜38のシヨアＡ硬さの軟質ゴムによつて構成
することは目的に適うことである。その際に、ゴ
ム膜をプログレシブなばね定数を有するように形
成するとよい。

膜室を密閉構造に構成することは目的に適うこ
とである。その際にその膜室にはガスまたは液体
を充填してもよく、その場合に必要に応じて膜室
内の圧力は調整可能にされる。

このように構成された液圧的減衰作用を持つエ
ンジン支持体によつて、大きな振幅のエンジン振
動が発生した際には大きな振動減衰が生ぜしめら
れ、そして小さな振幅つまり0.1mmの範囲の小さ
な振幅の際には音響の最適遮断ならびに発生振動
の最適絶縁が保証される。

次に、本発明の一実施例の構成および動作態様
を図面に基づいて詳細に説明する。

第１図は本発明による二室形エンジン支持体の
概略構成を示し、このエンジン支持体は主として
エンジン側上側室１と下側室２とから成り、両室
は作動液で満たされており絞り開口４を持つた中
間板３で仕切られている。その場合に、上側室１
は弾性ゴム材料製の厚肉で中空円錐状の室壁５に
よつて形成されており、この室壁５の上側端面は
ねじ棒７が取付けられているエンジン支持板６に
よつて閉鎖され、その下側外周部はリング状のサ
ポート体８に貼着接続されている。下側室２は同
様に弾性ゴム材料製のたとえばカツプ状室壁９に
よつて形成されており、この室壁９は同様にサポ
ート体８に気密に固定されている。また、中間板
３もそのサポート体８内に強固に支持されてい
る。

本発明に基づいて、エンジン支持板６の下面に
は円筒状中空室１０が形成され、この中空室10の
上側室１側は中央部に抑制部材１２を持つた円環
状ゴム膜１１によつて閉鎖されている。その場合
に、図示された実施例においては、その抑制部材
１２は金属円板として構成され、円環状ゴム膜１
１によつて保持されている。膜１１は約25〜45の
シヨアＡ硬さの軟質ゴムから特になり、その場合
に30〜38のシヨア硬さの際に最適特性が得られ
る。以下においては膜室と称される中空室１０は
密閉されており、そして僅かな密度のガスまたは
液体が充填される。その場合、その膜室１０内の
内力は大気圧に一致させるか、または、適切な減
衰特性に合わせるために正圧が与えられ得る。

このエンジン支持体の機能および動作態様を説
明するために、まず、さらに物理的なモデルと液
圧的な等価回路ダイヤグラムとを図示する。

第２図に示した物理的なモデルに基づいて、エ
ンジン支持板６に作用しかつ運動量q₁を持つエン
ジン質量Ｍは室１，２内の作動液の等価質量mf
にまず弾性ゴムの室壁５を介して結合させる。こ
の室壁５は静的剛性Ksと機械的減衰Ｄとによつ
て特徴付けられている。その室壁５と並列に、エ
ンジン質量Ｍと等価液体質量mfとの間には抑制
部材１２の質量mtが接続されており、この質量
mtは後で説明するパラメータに依存して運動量
すなわち加速度q₂を受ける。エンジン質量Ｍと抑
制部材質量mtとの結合はその場合ばね等価回路
ダイヤグラムK′によつて行なわれる。このばね
等価回路ダイヤグラムK′は抑制部材系の複素剛
性、すなわち、膜室１０の体積剛性に加えて抑制
部材１２の弾性支持体１１のばね定数ならびに抑
制部材系の減衰特性関数ｄを含む。なお、その抑
制部材系の減衰特性関数ｄは抑制部材質量mtの
弾性支持体（ゴム膜１１）の減衰度とガスまたは
液体が充填されている中空室１０の減衰度とに依
存する。また、液体の等価質量mfと抑制部材質
量mtとの結合はばね特性量K₀、すなわち、上側
室１の体積剛性ならびに絞り４およびその特性関
数d^*によつて行なわれる。なお、この特性関数
d^*は絞りの幾可学的構成特にその長さと直径、
ならびに液体の固有質量の流れ方、質量慣性およ
び上側室１と下側室２との体積剛性の比に依存す
る。支持体系の機能と動作態様とにとつて重要な
ことはその場合にまだ特性量γ（つまり、抑制部
材系の複素剛性K′と結合ばねK₀との比）、ならび
に特性量ρ（つまり、抑制部材質量mtの特性関数
ｄと絞り特性関数d^*との減衰度比あるいは効率
比を示す特性量）がある。

第３図に示した液圧的な等価回路ダイヤグラム
においては、さらに、抑制部材質量mtとエンジ
ン質量Ｍとの結合および抑制部材質量mtと液体
と等価質量mfとの結合が膜室１０の減衰ｄおよ
び上側室１と下側室２との間の絞り減衰d^*なら
びに対応する結合ばねK′，K₀でもつて行なわれ
ていることが図示されている。

それゆえに、本発明に基づく二室形エンジン支
持体はまず低い周波数で大きな振幅を持つエンジ
ン振動が発生した場合には絞り４を通る液体通流
のために大きな減衰を生ぜしめる。それに対し
て、高い周波数で約0.1mmオーダの小さな振幅の
場合には、絞り４を通る液体通流は行なわれず、
それゆえ音響の最適遮断と発生振動の最適絶縁と
が保証される。本発明による支持体機構はその場
合に液圧的な減衰力の非線形性を利用しており、
この減衰力は絞りを通る液体の加速度ならびに等
価液体質量に対するその絞りの影響度によつて決
定される。

その際に、液体の質量はエンジン運動量q₁とエ
ンジン加速度q¨₁と絞り４の形態の減衰系を通る液
体の加速度とによつて生ぜしめられる動的（ダイ
ナミツク）な力を発生する。この動的な力は流体
圧力として弾性支持された抑制部材１２、また
は、この抑制部材１２とゴム膜１１と荷重を受け
て質量として振動する場合および相応して荷重が
解除された場合にも変位させられるガス充填の膜
室１０とから成る抑制部材系に与えられる。その
場合に、正弦波励起関数は次のように表わされ
る。

ε＝∫Kd dq＝∫Kd q〓 dt 但し、εは上側室１内の励起振幅ｑによつて流
体の力Kdにより発生されるエネルギである。

今、弾性支持されている抑制部材１２が励起に
対してすなわち室１，２内の液体質量に対して逆
位相で振動すると、系全体は最大効率を達成しそ
して完全な液圧的絶縁を生ぜしめる。

その場合に、このような液体−空気系の整合お
よび配列により、従来のエンジン支持体を用いた
場合に比べて、著しく幅広い周波数領域まで抑制
効果を得ることができる。このことにより、特に
可成り改良された音響特性が可能になる。

所望の絶縁周波数領域を選定するための整合パ
ラメータとして、その場合特に抑制部材１２の質
量と膜室１０の体積とその膜室１０内に封入され
たガスまたは液体の密度と抑制部材１２の弾性支
持体（ゴム膜１１）の撓性とを考慮すべきであ
る。なお、その撓性はゴム膜１１のばね定数のプ
ログレシブ特性ならびに上側室１の有効面積に対
する抑制部材系面積の比および物理的モデルに基
づいて説明した特性量γ，ρによつて得られ、そ
して、そのような考慮のもとにゴム膜１１も30〜
38のシヨアＡ硬さのゴムを使用すると最適特性を
示す。

第４図および第５図には従来の非絶縁形液体式
エンジン支持体の減衰度および動的剛性が周波数
に関して描かれており、一方、第６図および第７
図には本発明による絶縁形液体式支持体の減衰特
性および動的剛性が同様に周波数に関して描かれ
ている。しかして、第４図および第５図から明ら
かなように、従来の非絶縁形液体式エンジン支持
体の周波数−減衰度特性および周波数−動的剛性
特性においては、振幅が小さくなると減衰度が大
きくなり、そして、動的剛性は増大して、その後
ほぼ一定に維持する（本当は逆の特性が望まれて
いるのである）。

それに対して、第６図および第７図によれば、
本発明に基づく絶縁形液体式エンジン支持体の周
波数−減衰度特性および周波数−動的剛性特性に
おいては、減衰最大値はほぼ同じであるが、大き
い振幅で低周波数の際には良好な減衰作用が得ら
れ、かつ、小さい振幅で高周波数の際には良好な
音響特性が保証される。その場合に減衰度は振幅
が小さくなると共に減少する。さらに、興味深い
ことは、第７図に示した動的剛性特性曲線は、短
い増大後剛性が大幅に減少しそして図示された実
施例ではほぼ180Hzの際に所望の絶縁が現われ、
その場合に動的剛性が静的（スタテイツク）剛性
の一定値以下まで低下することを示していること
である。上述したパラメータを適当に変更するこ
とによつて、広い範囲に亘つて絶縁が所望の周波
数の際に得られる。

以上に説明したように、本発明のエンジン支持
体によれば、エンジンの高い振動振幅が大幅に減
衰され、その場合に減衰最大値はエンジンの固有
周波数のときに生じ、そして、小さい振幅の際に
は液圧的な減衰作用が阻止され、それゆえに最適
な音響特性が得られる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明による二室形エンジン支持体の
一実施例の横断面図、第２図はその支持体の物理
的モデルを示す概略図、第３図はその支持体の液
体的等価回路ダイヤグラム、第４図および第５図
は従来の非絶縁形液体式エンジン支持体の周波数
−減衰度特性図および周波数−剛性特性図、第６
図および第７図は本発明の一実施例による絶縁形
液体式エンジン支持体の周波数−減衰度特性図お
よび周波数−剛性特性図である。 １……上側室、２……下側室、３……中間板、
４……絞り開口、６……エンジン支持板、１０…
…膜室、１１……ゴム膜、１２……抑制部材。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 液体で満たされかつ弾性ゴム周壁をもつた２
   つの液体室が、小さな振幅で高い周波数の振動の
   際の液圧的応動を阻止するために、絞り開口付き
   の中間板を介して互いに液圧的に接続され、そし
   て、その上側液体室から膜によつて膜室が分離さ
   れている液圧的減衰作用をもつた二室形エンジン
   支持体において、膜室１０は上側液体室１に接す
   るエンジン支持板６の中央部に配設され、前記膜
   室１０を閉鎖するゴム膜１１はその中央部に堅い
   抑制部材１２を有することを特徴とする二室形エ
   ンジン支持体。 ２ 抑制部材１２は金属円板として形成され、そ
   して円環状のゴム膜１１によつて支持されている
   ことを特徴とする特許請求の範囲第１項記載の二
   室形エンジン支持体。 ３ 膜１１は25〜45特に30〜38のシヨアＡ硬さの
   軟質ゴムから成ることを特徴とする特許請求の範
   囲第２項記載の二室形エンジン支持体。 ４ 膜１１はプログレシブなばね定数を有するよ
   うに形成されていることを特徴とする特許請求の
   範囲第３項記載の二室形エンジン支持体。 ５ 膜室１０は密閉されていることを特徴とする
   特許請求の範囲第１項ないし第４項のいずれかに
   記載の二室形エンジン支持体。 ６ ガスが充填された膜室１０内の圧力は調整可
   能であることを特徴とする特許請求の範囲第５項
   記載の二室形エンジン支持体。 ７ 膜室１０には液体が充填されていることを特
   徴とする特許請求の範囲第１項記載の二室形エン
   ジン支持体。