JPS63993Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、燃料の噴射開始時期を電気的に制御
するようにした内燃機関用の燃料噴射装置に関す
るものである。

従来のこの種の燃料噴射装置は、例えば特開昭
53−65528号公報に開示されているように、機関
の上死点タイミングと燃料の噴射開始タイミング
とを検出することにより実際の噴射開始時期を演
算すると共に機関の運転状態を示す各種の信号を
基にその時の最適な噴射開始時期を示す目標噴射
開始時期を演算し、両者の差が零となるようにタ
イマを電気的に制御する構成となつている。従つ
て、若し、これらのタイミングを検出するセンサ
に故障が生じると噴射時期を所要の値に制御する
ことができなくなり、この結果、機関のオーバー
ヒート、排気ガス中に黒煙が発生する等の種々の
不具合いを生じることになる。

本考案は上記事情に鑑みてなされたものであ
り、その目的は、燃料噴射時期の閉ループ制御を
行なうのに必要な内燃機関の所定回転位置タイミ
ングを検出するセンサに不具合が生じても、開ル
ープ制御によつて燃料噴射時期の制御を所定の制
御性能で継続することができるようにした燃料噴
射装置を提供することにある。

本考案の構成は、機関の所定回転位置タイミン
グを示すセンサ出力信号を発生する回転センサ
と、実際の燃料噴射開始タイミングに関連したタ
イミングを示すタイミング信号を発生するタイミ
ングセンサと、上記センサ出力信号と上記タイミ
ング信号とに少なくとも応答し最適な噴射タイミ
ングが得られるようタイマを電気的に閉ループ制
御するための出力信号を出力する閉ループ制御信
号発生回路とを備えた燃料噴射装置において、上
記センサ出力信号を使用することなしに上記最適
な噴射タイミングに概略一致する噴射タイミング
となるよう上記タイマを開ループ制御するための
予備制御信号を出力する予備制御信号発生回路
と、上記回転センサにおける障害の発生を検出す
るためのセンサチエツク回路と、上記出力信号又
は上記予備制御信号のいずれか一方を上記タイマ
を制御するための信号として択一的に選択するた
めの切換スイツチと、上記センサチエツク回路に
おいて上記回転センサの障害が検出された場合に
上記出力信号に代えて上記予備制御信号を選択す
るよう上記切換スイツチの制御を行なう切換制御
回路とを備えた点に特徴を有する。

以下、図示の実施例により本考案を詳細に説明
する。

第１図には、本考案による内燃機関用燃料噴射
装置の一実施例の制御部のブロツク図が示されて
いる。この実施例は電子式の分配型燃料噴射ポン
プを用いた例であり、噴射量制御部１と噴射時期
制御部２とを備えている。噴射量制御部１は、内
燃機関の運転状態に従つた最適な燃料噴射量が得
られるように燃料噴射量調節部材であるコントロ
ールスリーブ３の位置制御を行なうためのもので
あり、機関の運転状態を示す各種の情報が電気信
号として入力されている理論噴射量演算回路４を
備えている。図示の実施例では、運転状態を示す
情報として、アクセル位置を示すアクセル信号
S₁、機関の冷却水温を示す水温信号S₂、燃料の温
度を示す燃料温度信号S₃及び切換スイツチ１０か
らの回転数データD₁が入力されており、これら
の情報に基づいてその時の運転状態に従う最適な
燃料噴射量が演算され、この演算結果を示す理論
噴射量データD₂が理論噴射量演算回路４から出
力される。

機関の回転タイミングを検出することができる
ように、回転センサ５が設けられている。回転セ
ンサ５は、機関のクランク軸６に固着された歯車
７と電磁ピツクアツプ８とから成り、歯車７の外
周に上死点に対応して設けられているコグ７ａ乃
至７ｄに電磁ピツクアツプ８が接近離反すること
により電磁ピツクアツプ８から所定のパルス状信
号が得られる。この回転センサ５からのセンサ出
力信号S₄は機関の上死点タイミングを示すのは勿
論のこと回転数の情報をも示すものであり、回転
数演算回路９に回転数情報として入力されてい
る。回転数演算回路９は、センサ出力信号S₄に基
づいて機関の回転数を示す回転数信号S₅を出力
し、回転数信号S₅は切換スイツチ１０の一方の入
力接点１０ａに印加されている。後で詳しく述べ
るように、回転センサ５が正常に働いている場合
には、切換スイツチ１０は図中実線で示されるよ
うに切換えられており、回転数信号S₅が回転数デ
ータD₁として理論噴射量演算回路４に入力され
ると共に理論噴射量演算回路４の出力側に設けら
れた切換スイツチ１１も実線で示される如く切換
えられる。

このため、理論噴射量データD₂は、直接に、
スリーブ位置演算回路１２に入力され、この理論
噴射量データD₂により示される理論噴射量を得
るのに必要なコントロールスリーブ３の位置が演
算され、その結果がスリーブ位置データD₃とし
て出力され、Ｄ／Ａ変換器１３によりアナログデ
ータに変換される。Ｄ／Ａ変換器１３からのアナ
ログデータは目標信号S₆として加算器１４に入力
され、ここで、コントロールスリーブ３の位置を
検出するスリーブ位置センサ１５からのスリーブ
位置信号S₇と図示の極性にて加算され、目標信号
S₆の示す目標スリーブ位置とスリーブ位置信号S₇
の示す実際のスリーブ位置との差に従う誤差信号
S₈が出力される。誤差信号S₈はPI制御回路１６
において処理され、比例・積分制御を行なうため
の信号に変換された後、パルス巾変調器１７に入
力される。パルス巾変調器１７はPI制御回路１
６からの信号に従つてデユーテイ比の変化する駆
動パルス信号S₉を出力し、この駆動パルス信号S₉
はコントロールスリーブ３の位置決めを行なうた
めの電磁アクチユエータ１８に印加される。電磁
アクチユエータ１８によりコントロールスリーブ
３の位置が変化すると、この変化はスリーブ位置
信号S₇の変化として加算器１４にフイードバツク
され、これにより誤差信号S₈の示す差が零となる
ように、即ち、実際のスリーブ位置が目標のスリ
ーブ位置に一致するように、コントロールスリー
ブの位置制御が行なわれる。

一方、噴射時期制御部２は、内燃機関の運転状
態に従つた最適な噴射時期が得られるようにタイ
マ１９の制御を行なうためのものであり、実際の
燃料噴射時期を示す実噴射時期信号S₁₀を出力す
る噴射時期演算回路２０と、機関の運転状態を示
す各種の情報が入力されその時の最適な噴射時期
を示す目標噴射時期信号S₁₁を出力する目標噴射
時期演算回路２１とを備えている。噴射時期演算
回路２０には、センサ出力信号S₄が上死点タイミ
ングを示す信号として入力されると共に、燃料の
実噴射時期に関連する信号として、タイミングセ
ンサ２２からのタイミング信号S₁₂が入力されて
いる。図示の実施例では、タイミングセンサ２２
は燃料噴射ポンプの燃料噴射ノズル（図示せず）
の針弁のリフトタイミングを検出する構成となつ
ているが、このタイミングセンサ２２は燃料の実
噴射時期に関連する他の信号を検出するものであ
つてもよい。

上述のように、本実施例では、タイミング信号
S₁₂は燃料噴射開始タイミングを示す信号であり、
従つて、噴射時期演算回路２０においては、タイ
ミング信号S₁₂の示すタイミングT₁と出力信号S₄
の示す上死点タイミングT₂との差から実際の噴
射時期を演算し、実噴射時期信号S₁₀を出力する。
目標噴射時期演算回路２１には、センサ出力信号
S₄の外、水温信号S₂、燃料温度信号S₃、及び噴射
量を示す噴射量信号S₁₃が入力されており、これ
らの信号に基づいて演算出力された目標噴射時期
信号S₁₁は加算器２３に入力され、ここで、実噴
射時期信号S₁₀と図示の極性にて加算され、両者
の差に従う誤差信号S₁₄が出力される。誤差信号
S₁₄はPI制御回路２４に入力されて比例・積分制
御を行なうための信号に変換され、その出力信号
S₁₅は切換スイツチ２４に印加される。上述の噴
射時期演算回路２０、目標噴射時期演算回路２
１、加算器２３及びPI制御回路２４により、タ
イマ１９を閉ループ制御するための出力信号S₁₅
を出力するための閉ループ制御信号発生回路が構
成されており、出力信号S₁₅はパルス巾変調器２
６に入力される。

パルス巾変調器２６は切換スイツチ２５からの
信号に従つてデユーテイ比の変化する駆動パルス
信号S₁₆を出力し、この駆動パルス信号S₁₆はタイ
マ１９を制御するための電磁弁２７に印加され
る。電磁弁２７によりタイマ１９が作動して噴射
時期が変化すると、この変化は実噴射時期信号
S₁₀の変化として加算器２３にフイードバツクさ
れ、これにより実際の噴射時期が目標の噴射時期
に一致するようタイマ１９が制御される。

何らかの理由で回転センサ５において障害が生
じ回転数に関する情報が回転センサ５から得られ
なくなつた場合においても噴射量制御部の正常な
動作を確保する目的で、予備回転数演算回路２８
が設けられている。予備回転数演算回路２８には
タイミングセンサ２２からのタイミング信号S₁₂
が機関の回転数に関する情報として入力されてお
り、このタイミング信号S₁₂に基づいて、回転数
信号S₅に対応した代りの予備回転数信号S₁₇が出
力される。この予備回転数信号S₁₇は、切換スイ
ツチ１０の他方の入力接点１０ｂに印加されてお
り、切換スイツチ１０により信号S₅又は信号S₁₇
のいずれか一方の信号が選択され、回転数データ
D₁として取出される。

ここで、第２図を参照して、回転数信号S₅と予
備回転数信号S₁₇とについて説明する。回転数信
号S₅は、第２図ａに示されるセンサ出力信号S₄に
基づき回転数演算回路９において作られる信号で
ある。センサ出力信号S₄は、歯車７の各コグが電
磁ピツクアツプ８に接近離反する毎に得られる正
及び負のパルスから成る一対のパルス信号の集ま
りであり、一対のパルス信号の各々において正及
び負のパルスの間の零レベル点が丁度上死点タイ
ミングを示している。回転数演算回路９はこのセ
ンサ出力信号S₄を、整流、波形整形して第２図ｂ
に示す如きパルス信号PS₁に変換し、このパルス
信号の周期に基づいて回転数を演算し、その結果
をデイジタルデータとして出力する。一方、タイ
ミング信号S₁₂は、第２図ｄに示されるように、
センサ出力信号S₄の丁度８倍の周期を有する信号
であり、そのレベルが負方向に変化する変化開始
点が噴射開始タイミングを示すものである。予備
回転数演算回路２８において、タイミング信号
S₁₂はセンサ出力信号S₄の場合と同様に波形整形
され、整形された信号の周期に基づいて回転数が
演算され、演算結果がデイジタルデータとして出
力される。

切換スイツチ１０は、後で詳しく述べるように
して、回転センサ５が正常に動作している場合に
は回転数信号S₅を回転数データD₁として取出し
センサ５に障害が生じた場合には予備回転数信号
S₁₇を回転数データD₁として取出すことができる
ように切換えられる。

回転センサ５に障害が生じると、噴射時期制御
部２に対してもセンサ出力信号S₄の供給が停止さ
れる。噴射時期演算回路２０は、機関の上死点タ
イミングに対応するセンサ出力信号S₄の既述の各
零レベル点において立上るパルス信号PS₂（第２
図ｃ）と、タイミング信号S₁₂における噴射開始
タイミングを示す既述の各レベル変化点において
立上るパルス信号PS₃（第２図ｅ）とを発生し、
これらのパルス信号から噴射開始タイミングT₁
及び上死点タイミングT₂を検出し、その差に基
づく実噴射時期を演算するものであるから、セン
サ出力信号S₄の供給停止により噴射時期制御部２
もまた動作不能となつてしまう。回転センサ５に
障害が生じても噴射時期制御部２の動作を確保す
るため、予備制御信号発生回路３２が設けられて
いる。予備制御信号発生回路３２は、出力信号
S₁₅による制御により得られる最適噴射タイミン
グに概略一致する噴射タイミングを得ることがで
きるようにパルス巾変調器２６を制御するための
予備制御信号S₂₁を噴射量信号S₁₃に基づいて発生
する回路である。この予備制御信号S₂₁は切換ス
イツチ２５に入力されており、回転センサ５に障
害が発生した場合に切換スイツチ２５は点線で示
される如く切換えられ、出力信号S₁₅に代えて予
備制御信号S₂₁がパルス巾変調器２６に入力され
る。

回転センサ５における障害の有無に従つて、切
換スイツチ１０及び２５の切換を行なうため、セ
ンサチエツク回路２９と切換制御回路３０とが設
けられている。センサチエツク回路２９にはセン
サ出力信号S₄が入力され、このセンサ出力信号S₄
の発生状態が監視され、これにより回転センサ５
に障害が発生したことが検出されるとセンサチエ
ツク回路２９から障害発生信号S₁₈が出力されて
切換制御回路３０に入力される。切換制御回路３
０からの切換信号S₁₉のレベルは、障害発生信号
S₁₈が出力されていない場合には「Ｌ」レベルで
あり、障害発生信号S₁₈が出力されると「Ｈ」レ
ベルになる。この切換信号S₁₉は切換スイツチ１
０，１１，２５に印加されており、そのレベルが
「Ｌ」レベルの場合には各切換スイツチを図中実
線で示す状態とし、「Ｈ」レベルの場合には各切
換スイツチを図中点線で示す状態とする。切換制
御回路３０は、更に、回転センサ５に障害が生じ
た場合にのみ予備回転数演算回路２８及び予備制
御信号発生回路３２を動作状態とし、回転センサ
５が正常に作動している場合には予備回転数演算
回路２８及び予備制御信号発生回路３２を不動作
状態とするための制御信号S₂₀を出力するように
なつている。

回転センサ５が正常に動作している場合の動作
については既に述べたので、回転センサ５におい
て障害が発生した場合について説明する。噴射量
制御部１においては、回転センサ５において障害
が発生した場合、制御信号S₂₀により予備回転数
演算回路２８が動作状態となり、予備回転数信号
S₁₇が回転数データD₁として噴射量制御部１に供
給されるため、回転センサ５の障害により回転数
信号S₅が取出せない場合であつても噴射量制御を
何ら支障なく行なうことができる。更に、切換信
号S₁₉により切換スイツチ１１も点線の如く切換
えられ、理論噴射量データD₂は噴射量制限回路
３１を介してスリーブ位置演算回路１２に供給さ
れるようになる。噴射量制限回路３１は、理論噴
射量データD₂の値が所定の上限値以上となつて
もデータD₂の値を所定の上限値に抑えると共に、
所定の下限値以下となつた場合においても所定の
下限値に抑えるための回路である。従つて、予備
回転数信号S₁₇による動作のために制御が不完全
になつてとしても噴射量が極端に増大するのを防
止すると共に無噴射となつてタイミングセンサ２
２からのタイミング信号S₁₂が消失し制御が不能
となることを防止することができる。一方、噴射
時期制御部２においては、回転センサ５において
障害が発生すると、切換スイツチ２５が第１図中
点線で示されるように切換えられるので、タイマ
１９は予備制御信号３２により制御され、上死点
タイミングを示す信号がなくても最適噴射タイミ
ングに概略一致した噴射タイミングで機関の運転
を継続することができる。

尚、上記実施例では、予備制御信号発生回路３
２には噴射量信号S₁₃のみが入力されているが、
このほかに、燃料噴射タイミングを決定するのに
必要な任意の信号が入力されてもよい。または、
運転状態を示す信号を一切入力せず、予め定めら
れた一定の噴射タイミングが得られるように一定
レベルの信号を予備制御信号として出力するよう
に、予備制御信号発生回路３２を構成してもよ
い。

更に、上記実施例では分配型の場合を例にとつ
て説明したが、列型に対しても本考案を適用する
ことができるのは勿論であり、噴射量制御を機械
的に制御する装置であつても本考案を適用するこ
とができる。

本考案によれば、上述の如く、噴射時期の電気
的制御を閉ループ制御にて実行するのに必要な、
内燃機関の所定回転位置タイミングを検出するセ
ンサが故障しても、予備制御信号発生手段からの
予備制御信号により噴射時期の制御を閉ループ制
御により継続して行なえ機関のオーバーヒート及
び黒煙の発生を防ぐことができる信頼性の高い燃
料噴射装置を提供することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例の制御部のブロツク
図、第２図ａ乃至第２図ｅは第１図に示すブロツ
ク図の動作を説明するための信号波形図である。 １……噴射量制御部、２……噴射時期制御部、
３……コントロールスリーブ、５……回転セン
サ、９……回転数演算回路、１０，２５……切換
スイツチ、１９……タイマ、２２……タイミング
センサ、２８……予備回転数演算回路、２９……
センサチエツク回路、３０……切換制御回路、３
２……予備制御信号発生回路、D₁……回転数デ
ータ、D₂……理論噴射量データ、S₄……センサ
出力信号、S₅……回転数信号、９₉，S₁₆……駆動
パルス信号、S₁₂……タイミング信号、S₁₇……予
備回転数信号、S₁₈……障害発生信号、S₁₉……切
換信号、S₂₁……予備制御信号。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 機関の所定回転位置タイミングを示すセンサ出
   力信号を発生する回転センサと、実際の燃料噴射
   開始タイミングに関連したタイミングを示すタイ
   ミング信号を発生するタイミングセンサと、前記
   センサ出力信号と前記タイミング信号とに少なく
   とも応答し最適な噴射タイミングが得られるよう
   タイマを電気的に閉ループ制御するための出力信
   号を出力する閉ループ制御信号発生回路とを備え
   た燃料噴射装置において、前記センサ出力信号を
   使用することなしに前記最適な噴射タイミングに
   概略一致する噴射タイミングとなるよう前記タイ
   マを開ループ制御するための予備制御信号を出力
   する予備制御信号発生回路と、前記回転センサに
   おける障害の発生を検出するためのセンサチエツ
   ク回路と、前記出力信号又は前記予備制御信号の
   いずれか一方を前記タイマを制御するための信号
   として択一的に選択するための切換スイツチと、
   前記センサチエツク回路において前記回転センサ
   の障害が検出された場合に前記出力信号に代えて
   前記予備制御信号を選択するよう前記切換スイツ
   チの制御を行なう切換制御回路とを備えたことを
   特徴とする燃料噴射装置。