JPS6347640Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 この考案はシリンダおよびピストンの横断面形
状を長円形とした内燃機関におけるピストンリン
グ構造に関する。

多気筒内燃機関のシリンダブロツク長の短縮化
や、吸気弁、排気弁の開口面積の増大等を目的と
して、シリンダおよびピストンの横断面形状を長
円形とした内燃機関がある。この種の内燃機関の
ピストンリングとしては、従来例えば実開昭54−
161410号公報に開示されているように、リング全
体を１本の連続したものとし、かつ長円の長軸方
向の中央部付近に設けた構成が用いられていた。

しかし、この従来の構成にあつては、第１図に
示すように、ピストンリング１をピストン２のリ
ング溝に装着するに際して左右に大きく広げなけ
ればならず、左右の円弧部と中央の直線部との境
界部分Ａ，Ａに過大な応力が集中し、その結果、
ピストンリング１が折損してしまつたり、あるい
は弾性限界を越えて塑性変形し、張力が失われて
しまう、等の欠点があつた。また中央の直線部と
りわけ合口を備えていない図の下側の直線部で
は、シリンダ壁に対する十分な面圧を確保するこ
とが難しく、気密不良やオイル消費量の増加等を
生じ易い、という欠点もある。

この考案は上記のような従来の欠点に鑑みてな
されたもので、その目的とするところは、シリン
ダおよびピストンの横断面形状を長円形とした内
燃機関において、シリンダ壁に対する均一かつ十
分な面圧を確保することができ、しかも装着に際
して部分的な応力集中を生じることのないピスト
ンリング構造を提供することにある。

すなわち、この考案に係る内燃機関のピストン
リング構造は、ピストン直線部分の略中央で夫々
略Ｕ字形に２分割され、かつ夫々の直線部がピス
トンリング装着時に互いに拡開方向に反発するピ
ストンリングと、このピストンリングの円弧部内
周面に夫々配設され、かつ該ピストンリングとの
接触面が所定半径の円弧状に形成された拡張セグ
メントと、この拡張セグメントとピストンとの間
に配設されて該拡張セグメントをピストン長径方
向に付勢する拡張セグメントとを備えたことを特
徴とするものである。

以下、この考案の一実施例を図面に基づいて詳
細に説明する。

第２図はこの考案に係るピストンリング構造を
適用した長円形のシリンダ１１およびピストン１
２を示し、第３図はその横断面を示している。ピ
ストン１２のリング溝内に嵌合されるピストンリ
ング１３は、長円の直線部分の中心線を境として
左右に対称に２分割されたもので、略Ｕ字形をな
す夫々のピストンリング１３Ａ，１３Ａは、自由
状態において第４図のようにその直線部１４，１
４が若干拡開した形状をなし、シリンダ１１内に
装着した際に、この直線部１４，１４が互いに内
方へ撓められ、その反力としてシリンダ１１内壁
に対する面圧を得るようになつている。

一方、分割したＵ字形ピストンリング１３Ａ，
１３Ａの夫々の円弧部１５内周面には、第５図に
も示すように、拡張セグメント１６および拡張ス
プリング１７が配設され、これらによつて該円弧
部１５でのシリンダ１１内壁に対する面圧を確保
している。上記拡張セグメント１６および拡張ス
プリング１７は、ピストン１２のリング溝の両端
円弧部に更に凹設されたスリツト１８内に収納さ
れているもので、ピストンリング１３Ａの円弧部
１５内周面に接触する拡張セグメント１６の接触
面１６ａは、シリンダ半径Rcからピストンリン
グ１３Ａの幅Ｔを差し引いた半径Rs（第３図参
照）の円弧状に形成されており、かつその背面の
コ字状の凹部１６ｂ内に、板ばねを波状に屈曲し
てなる拡張スプリング１７両端が係止されてい
る。そして上記拡張スプリング１７は、その一対
の山となつた部分がピストン１２のリング溝に当
接し、その反力によつて上記ピストンリング１３
Ａをピストン１２の長径方向に夫々付勢するよう
になつている。従つて、ピストンリング１３Ａの
円弧部１５においては、上記拡張セグメント１６
を介して均一に押圧され、これにより全体として
シリンダ１１内壁に対する均一な面圧を確保して
いる。

尚、上記ピストンリング１３Ａ，１３Ａは一般
に鋳造にて形成されるが、その厚みを薄くして軽
量化を図るために、鋼板をプレス成形するように
しても良い。

以上の説明で明らかなように、この考案に係る
内燃機関のピストンリング構造によれば、長円形
のシリンダ内壁に対し、全周に亘つて十分な面圧
を発揮せしめることができ、良好な気密性を確保
できるとともに、ピストンリングをピストンに装
着するに際しても、従来のように大きく広げる必
要がなく、応力集中による折損や塑性変形等の不
良発生を回避することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来のピストンリングを装着する際の
説明図、第２図はこの考案を適用した内燃機関要
部の断面図、第３図はその−線に沿つた断面
図、第４図はピストンリングの自由状態における
平面図、第５図はピストンリング、拡張セグメン
トおよび拡張スプリングの分解斜視図である。 １１……シリンダ、１２……ピストン、１３，
１３Ａ，１３Ａ……ピストンリング、１４……直
線部、１５……円弧部、１６……拡張セグメン
ト、１７……拡張スプリング。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. シリンダおよびピストンの横断面形状を長円形
   とした内燃機関において、ピストン直線部分の略
   中央で夫々略Ｕ字形に２分割され、かつ夫々の直
   線部が互いに拡開方向に反発するピストンリング
   と、このピストンリングの円弧部内周面に夫々配
   設され、かつ該ピストンリングとの接触面が所定
   半径の円弧状に形成された拡張セグメントと、こ
   の拡張セグメントとピストンとの間に配設されて
   該拡張セグメントをピストン長径方向に付勢する
   拡張スプリングとを備えたことを特徴とする内燃
   機関のピストンリング構造。