JPS632790B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、空気流を利用したマルチノズルヘツ
ド式のインクジエツト記録装置に関する。

第１図は従来のインクジエツト記録ヘツドの一
例を示す断面図である。同図において、導電性の
ノズル板２には空気吐出口１が穿孔されており、
該ノズル板２と平行して壁３が配置されており、
かつ該壁３には空気吐出口１に対向してインク吐
出口４が穿孔されている。ノズル板２と壁３によ
り生じる空気層７には周辺から空気流が送られ、
空気吐出口１より流出している。該空気流の流れ
の方向は、空気吐出口１の近傍で急激に変化して
いるため、インク吐出口４より空気吐出口１に至
る空間には、急激な圧力勾配の変化が生じてい
る。

一方、インク吐出口４内のインクには、一定圧
力が印加されており、インクジエツト記録ヘツド
の非駆動時には、インク吐出口４の近傍の空気圧
力と、インク吐出口４内のインク圧力がほぼ等し
くインク吐出口４に生じるインクのメニスカスが
静止して保たれるように調整されている。

信号源５はノズル板２とインク吐出口４内のイ
ンクとの間に電位差が生じるように、該ノズル板
２およびインク吐出口４に連通した導電性のイン
ク供給管６に電気的に接続されている。該信号源
５により、ノズル板２とインク吐出口４内のイン
クに電位差が生じると、該電位差による電界によ
り、該インク吐出口４に生じるメニスカスが、空
気吐出口１の方向に引き伸ばされる。インク吐出
口４から空気吐出口１に至る空間には、急激な圧
力勾配の変化が生じており、かつ該変化の程度は
空気吐出口１に近い程大であるため、前記インク
吐出口４に生じるインクのメニスカスは、一定長
さ以上引き伸ばされる該圧力勾配の変化によつて
引きちぎられ、空気吐出口１よりインク液滴とな
つて飛翔する。

以上の説明のごとく、第１図に示したインクジ
エツト記録ヘツドは、静電力によつてインク吐出
口４に生じるインクのメニスカスの形状を変化さ
せ、空気流により生じる急激な圧力勾配の変化に
よつて、インク液滴を吐出させるものである。

第２図ａ，ｂは、第１図で示されたインクジエ
ツト記録ヘツドを複数のインク吐出口を有する、
いわゆるマルチノズルヘツドとした例の正面図と
断面図である。同図において、インク室８は複数
のインク吐出口９に連通すると共にインク溜りに
通じる少なくとも１つのインク供給管１０に連通
している。また空気供給管１１より流入される空
気流は空気室１２において均一化され、空気層１
３を介して、インク吐出口９に各々対向した空気
吐出口１４より噴出されるようになつており、イ
ンク吐出口９を急激な圧力勾配の変化が生じてい
る空間に配置させている。空気吐出口１４の周辺
には、それぞれ独立して電極１５が設けられてお
り、各々独立した信号源１６に電気的に連結され
ている。信号源１６は、一方ではインク吐出口９
内のインクと電気的に連結されており、前記電極
１５とインク吐出口９内のインクとの間に、各々
独立して電位差が印加される構造になつている。
なおボデイ１７およびノズル板１８は電気的絶縁
材料よりなつている。なお、２０は壁を表わす。

第３図ａ，ｂは、第２図に示したマルチノズル
ヘツドを改良したもので、複数のインク吐出口９
が１つのインクスリツト２９に置き換えられた点
において第２図のものと異なり、加工、組立工程
が簡単で安価なインクジエツト記録装置が得られ
る。

第４図は、第２図のマルチノズルヘツドのイン
ク吐出口９および空気吐出口１４の部分を拡大し
て図示したものである。同図において、インク吐
出口９１〜９６の各々に対向して、空気吐出口１
４１〜１４６が設けられており、該空気吐出口１
４１〜１４６の周辺に電極１５１〜１５６が設け
られている。空気流は、空気層１３より流入し、
インク吐出口９１〜９６の近傍で曲りを生じ、空
気吐出口１４１〜１４６より常時流出している。
マルチノズルヘツドの非駆動時すなわち、電極１
５１〜１５６とインク吐出口９１〜９６内のイン
ク間に電位差が生じていない時には、インク吐出
口９１〜９６には一定形状のインクのメニスカス
が形成され、インク吐出口９１〜９６内のインク
が吐出、飛翔することなく、かつインク室８に引
込まれることなく保たれねばならない。そのた
め、空気流によつて生じるインク吐出口９１〜９
６の近傍の空気圧力とほぼ等しい圧力がインク室
８内のインクに加えられている。

マルチノズルヘツドでは以上のような非駆動時
のインクのメニスカスの状態が重要である。第４
図はインク吐出口９１〜９６に生じるインクのメ
ニスカス１９１〜１９６が不均一な場合を示して
いる。第４図のようなインクのメニスカス１９１
〜１９６の不均一性は、空気流によつて生じるイ
ンク吐出口９１〜９６の近傍に生じる空気圧力の
不均一性に原因があり、例えば、インク吐出口９
２の近傍では空気圧力が高いため凹型のインクの
メニスカス１９２となる。一方、インク吐出口９
３では、空気圧力が低いために、凸型のインクの
メニスカス１９３となる。インク吐出口９５の近
傍は空気圧力が特に低く、非駆動時にも、空気流
の力だけでインク液滴が吐出している状態を示し
ている。このように、インクのメニスカス１９１
〜１９６が不均一であると、インクが空気流の力
だけで流出したり、また、逆にインクが空気圧力
によつてインク室８まで引込まれてしまうという
欠点が起り得るが、さらに、インクのメニスカス
１９１〜１９６がインク吐出口９１〜９６に静止
して保たれた場合にも、各々の形状が異なると、
インク液滴の飛翔に必要な駆動電圧（電極１５１
〜１５６とインク吐出口９１〜９６内のインクと
の電位差）に差が生じ、各々のインク吐出口９１
〜９６からのインク液滴を同一の状態とすること
が困難となり、マルチノズルヘツドによる記録画
質が低下する。

第２図および第４図の構成ではインク吐出口９
１〜９６内のインクの圧力は、インク室８内のイ
ンクの圧力と等しく、一定値であるので、上記の
ようなインクのメニスカス１９１〜１９６の不均
一性を解消するには、空気流の流れを全てのイン
ク吐出口９１〜９６の近傍で均一なものとし、該
インク吐出口９１〜９６の近傍に生じる空気圧力
を均一なものとする必要がある。

前記空気流の流れが不均一性となる原因として
は、 空気吐出口１４１〜１４６の穴径、長さ、空
気層１３の厚み等の構造的な不均一性。

空気層１３にインクや異物が付着することに
よる空気流の状態変化。

等がある。

上記，項に関し、最も重要であるのは空気
層１３の構造であるので空気層について、さらに
詳細に述べる。

第４図において、空気層の厚みＴは、電極１５
１〜１５６とインク吐出口９１〜９６間に生じる
静電力の大きさや、空気流の急激な曲りの程度か
ら設定すると小さな値が良く、通常、20〜300μm
程度の寸法が選ばれる。しかしながら、空気流の
流れの円滑性やインク吐出口９１〜９６の近傍の
空気圧力の均一性から見ると、空気層の厚みＴが
小さな値であることが、悪影響を及ぼすことがあ
る。その一つは、空気層の厚みＴが小さな値であ
るため、空気層に付着したインクが大きな表要張
力によつて固定され、前記項の原因となること
であり、他の一つは、空気層を流れる空気流の粘
性損失の影響が、インク吐出口９１〜９６の近傍
の空気圧力の低下となつて現われることである。
後者の粘性損失は空気層の厚みＴが小である程大
であるが、空気層の厚みＴが小さくなると、空気
層の厚みＴの不均一性がそのまま粘性損失の変化
となり、該粘性損失の変化がインク吐出口９１〜
９６の近傍の空気圧力の不均一性となつて現われ
る。（前記項） 次に、第３図に示したマルチノズルヘツドにお
ける、インクのメニスカスについて述べる。

第５図ａ，ｂは、第３図のマルチノズルヘツド
のインクスリツト２９および空気吐出口１４の部
分を拡大して示した要部平面図とＡ―Ｂ線断面図
である。インクスリツト２９に生じるメニスカス
は、各空気吐出口１４より流出する空気流の状態
が等しく円滑であれば、インクのメニスカス２３
で示したような、各空気吐出口１４の近傍で凸形
で、各空気吐出口１４の中間部で凹形の形状に設
定することができる。これはインク室８およびイ
ンクスリツト２９内のインクには一定圧力が印加
されているのに対し、インクスリツト２９の表面
の空気圧力が、各空気吐出口１４近傍ではやゝ低
く、各空気吐出口の中間部ではやゝ高くなつてお
り、該空気圧力の差がインクのメニスカスの表面
張力により補正されるからである。

しかしながら、第２図に示したマルチノズルヘ
ツドと同様に、空気層１３における空気圧力が不
均一となると、第３図のマルチノズルヘツドでは
さらに著しくインクのメニスカスの形状が不均一
となり、例えば第５図のインクのメニスカス３０
のようになる。空気層１３における空気圧力の不
均一性については、第５図においても、第４図と
全く同様の原因が考えられ、空気層１３の構造が
最も重要な要素である。

以上詳細な説明のように、第２図，第３図のマ
ルチノズルヘツドでは、空気流の流れの不均一性
のため、インク吐出口９あるいはインクスリツト
２９に生じるインクのメニスカスの形状が不均一
となり、各々の空気吐出口１４より飛翔するイン
ク液滴の吐出特性が不均一になるという欠点があ
つた。

本発明は第２図，第３図に示したようなインク
ジエツト記録装置が持つ上述のような欠点を解消
し、均一な特性をもつマルチノズルヘツド構造を
提供するものである。以下、本発明を図示の実施
例に基づいて説明する。第６図ａ，ｂは本発明の
第１の実施例の要部平面図と断面図である。な
お、この第６図および後述の第７図，第１０図〜
第１２図において、ａはｂのＣ―Ｄ線断面図を、
そしてｂはａのＡ―Ｂ線断面図を示している。た
だし、第８図，第９図においてはａ平面図、ｂは
ａのＡ―Ｂ線断面図を示している。

第６図において、インク吐出口９が穿孔された
壁２０の各インク吐出口９の中間部には溝２１が
設けられている。また、壁２０の幅Ｌは十分小さ
な寸法としているため、インク吐出口９より空気
室１２に至る距離が短かく、空気層１３での空気
流の粘性抵抗が小さくなつている。溝２１の役割
は、壁２０の幅Ｌが小さくなり、空気層１３での
空気流の流れが側面の空気室１２からの２方向よ
りのものとなり、空気吐出口１４の全周辺方向か
らのものでなくなるのを防ぐものであり、空気流
は空気室１２より溝２１に流れ込み、該溝２１よ
り空気吐出口１４方向にも流れる。このように、
第６図の構成では、空気層１３の厚みが小さい場
合にも粘性抵抗の少ない空気流を生じさせること
ができ、かつ空気流の流れの方向を空気吐出口１
４の周辺からの均一なものとすることができる。
また、第６図では、各々の空気吐出口１４より流
出する空気流の状態が空気室１２と溝２１の空気
流の状態で決定され、溝２１以外の空気層１３に
インクあるいは異物があつても、該インクあるい
は異物のない部分での空気流の流出状態が変化せ
ず正常に動作し得る。また、上記インクが空気層
に固着する現象も、空気吐出口１４より該インク
を噴き出させることにより解消できるものであ
る。

したがつて、第６図のような構成のマルチノズ
ルヘツドでは、空気流により生じるインク吐出口
９の近傍の空気圧力を均一化することができ、特
性の均一なマルチノズルヘツドが提供できる。

第７図に本発明の第２の実施例を示す。この第
７図では、インク吐出口９が穿孔されている壁２
０の側面に溝２２が設けられ、壁２０により生じ
る空気層１３の形状が各インク吐出口９の部分で
広く、中間部分で狭い形となつている。このよう
な構成では、第６図の場合と同じく、空気流の粘
性抵抗を減少させ、かつ空気吐出口１４への空気
流の流入方向が均一なものとすることができるた
め、特性の均一なマルチノズルヘツドが提供でき
る。

第８図に本発明の第３の実施例を示す。この第
８図ではインクスリツト２９を有し、空気層１３
に面するスリツト板表面２４の面積が空気吐出口
１４付近で大で、各空気吐出口の中間部で小とな
るように、スリツト板の側面に溝２８が設けられ
ている。また、スリツト板表面２４の面積は比較
的小さく設計され、空気室１２より空気吐出口１
４に至る距離が短かく、空気層１３での空気流の
粘性抵抗が小さくなつている。溝２８の役割は、
スリツト板表面２４が小さくなり、空気層１３で
の空気流の流れが、側面の空気室１２からの２方
向よりのものとなり、空気吐出口の全周辺方向か
らのものでなくなるのを防ぐものであり、溝２８
より空気吐出口１４の方向にも空気流が流れる。
このように、第８図の構成では、空気層１３の厚
みが小さい場合にも粘性抵抗の小さい空気流を生
じさせることができ、かつ、空気流の流れの方向
を空気吐出口１４の周辺からの均一なものとする
ことができ、インクスリツト２９に出じるインク
のメニスカス２６を均一なものとすることができ
る。

第９図に本発明の第４の実施例を示す。この第
９図では、インクスリツト２９を有し、空気層１
３に面するスリツト板表面２４に溝２７が設けら
れており、空気層１３の厚みが空気吐出口１４の
付近で小さく、各空気吐出口１４の中間部で大き
くなつている。この第９図のものにおいても、空
気流が溝２７に流入するため、空気吐出口１４の
全周辺方向よりのものとなり、インクスリツトに
生じるインクのメニスカス２５を均一なものとす
ることができる。さらに、インクスリツト２１を
使つたマルチノズルヘツドでは、空気吐出口１４
の近傍で凸形の、各空気吐出口１４の中間部で凹
形のインクのメニスカスができることが好ましい
が、第９図の構成ではインクスリツト２９の形状
自体が凹凸形状となつているため、前記の条件が
容易に実現できるという利点がある。

なお、溝２１，２２，２７，２８の形状には
種々のものが考えられる。例えば、第１０図のよ
うに溝Ｅがなめらかな曲面であるもの、第１１図
のように空気層の狭い部分Ｆが円形であるもの、
第１２図のように空気層を形成する壁の表面と側
面の両方に溝Ｇが設けられたもの等がある。

また、本発明は、第２図，第３図に示されたイ
ンクジエツト記録ヘツドについてのみ説明して来
たが、複数の空気吐出口を有する板状体とのイン
ク吐出口を有する壁部とが対向して配置され、前
記板状体と前記壁部とにより生じる間隙に空気流
を流し、空気吐出口より急激な曲りを生じさせな
がら空気流を流出させることを特徴とするインク
ジエツト記録装置であれば、全てについて実施で
きるものである。

以上詳細に説明したように、本発明のインクジ
エツト記録装置は、空気流の流れを円滑にするこ
とができ、インク吐出口に生じる空気圧力を均一
にすることができ、したがつて、非駆動時におけ
るインク吐出口に生じるインクのメニスカスの形
状を均一にすることができるため、均一な特性の
マルチノズルヘツド式インクジエツト記録装置が
実現できるものである。

【図面の簡単な説明】

第１図，第２図ａ，ｂ、第３図ａ，ｂ、第４図
および第５図ａ，ｂは従来例の要部構成図、第６
図ａ，ｂ、第７図ａ，ｂ、第８図ａ，ｂ、第９図
ａ，ｂ、第１０図ａ，ｂ、第１１図ａ，ｂおよび
第１２図ａ，ｂはそれぞれ本発明の実施例の要部
構成図である。 １４…空気吐出口、１８…ノズル板、２０…
壁、５，１６…信号源、６，１０…インク供給
管、８…インク室、９…インク吐出口、１１…空
気供給管、１２…空気室、１３…空気層、１５…
電極、１７…ボデイ、１９，２３，２５，２６，
３０…インクのメニスカス、２１，２２，２２′，
２７，２８…溝、２４…スリツト板表面、２９…
インクスリツト。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 複数の空気吐出口を有する板状体と、インク
   吐出口を有し、前記板状体に対向して配置された
   壁部と、前記板状体と前記壁部とにより生じる間
   隙に、複数の空気吐出口の配列方向に直交する両
   側より空気流を流し、空気吐出口より急激な曲り
   を生じさせながら流出させ、インク吐出口から空
   気吐出口に至る方向に空気の圧力の減少するよう
   な圧力勾配の変化する空間を形成する第１の手段
   と、駆動信号に応じてインク吐出口内のインクを
   空気吐出口の方向に選択的に引き伸ばすエネルギ
   ーを付与する第２の手段とを有し、第２の手段に
   より引き伸ばされたインクを、第１の手段により
   生じる空気流の加速力によつて空気吐出口を経て
   外方に選択的に吐出飛翔させ、前記板状体と前記
   壁部とにより生じる間隙の大きさが、前記空気吐
   出口の付近で狭く、他の部分で広くなるように、
   前記壁部の表面に凹凸を設けたことを特徴とする
   インクジエツト記録装置。 ２ インク吐出口をスリツト形状としたことを特
   徴とする特許請求の範囲第１項記載のインクジエ
   ツト記録装置。 ３ 複数の空気吐出口を有する板状体と、インク
   吐出口を有し、前記板状体に対向して配置された
   壁部と、前記板状体と前記壁部とにより生じる間
   隙に、複数の空気吐出口の配列方向に直交する両
   側より空気流を流し空気吐出口より急激な曲りを
   生じさせながら流出させ、インク吐出口から空気
   吐出口に至る方向に空気の圧力の減少するような
   圧力勾配の変化する空間を形成する第１の手段
   と、駆動信号に応じてインク吐出口内のインクを
   空気吐出口の方向に選択的に引き伸ばすエネルギ
   ーを付与する第２の手段とを有し、第２の手段に
   より引き伸ばされたインクを、第１の手段により
   生じる空気流の加速力によつて空気吐出口を経て
   外方に選択的に吐出飛翔させ、前記板状体と前記
   壁部により生じる間隙の面積が各空気吐出口付近
   で大きく、各空気吐出口の中間部分で小さくなる
   ように、前記壁部の側面に凹凸を設けたことを特
   徴とするインクジエツト記録装置。 ４ インク吐出口をスリツト形状としたことを特
   徴とする特許請求の範囲第３項記載のインクジエ
   ツト記録装置。