JPS6327081Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 この考案はアルミ合金等を用いた自動車用エン
ジンの軽合金製シリンダブロツクに関する。

自動車用エンジンにおいては、その軽量化を図
るために、従来の鋳鉄製シリンダブロツクに代え
てアルミ合金等の軽合金製シリンダブロツクが多
く採用される傾向にあるが、この種の軽合金製シ
リンダブロツクは一般に金型鋳造によつて製造さ
れるもので、ジヤケツト金型を上方に型抜きする
ために、第１図に示す如くアツパデツキを具備せ
ずにウオータジヤケツト１上端が開放された所
謂・オープンデツキ型の構造となつている。

このような軽合金製シリンダブロツクにおい
て、従来はそのウオータジヤケツト１が、従前の
鋳鉄製シリンダブロツクの場合と同様にスカート
部２上端縁とシリンダライナ部３とを連接するロ
アデツキ４近傍まで、換言すればシリンダライナ
部３をほぼ完全に包囲する深さに形成されてい
た。

ところが、ウオータジヤケツト１の深さｌがこ
のように深いと、ジヤケツト金型が細長くなるこ
とからジヤケツト金型の耐久性が低下し、かつ鋳
造精度の点でも好ましくない。またアルミ合金等
は一般に熱伝導が良好であるため、ウオータジヤ
ケツト１の深さｌはピストンの下死点付近まであ
れば実際には十分である。

従つて、ウオータジヤケツト１の深さｌを浅く
することが考えられるが、その場合には、第２図
に示すように、ウオータジヤケツト外壁５とスカ
ート部２とが分離され、浅くしたウオータジヤケ
ツト１底部とロアデツキ４との間が、ウオータジ
ヤケツト外壁５からシリンダライナ部３に沿つて
凹んだ凹部６を形成することになるので、この凹
部６を節としてウオータジヤケツト外壁５とスカ
ート部２とが矢印Ａ方向に開閉振動し易くなり、
エンジン騒音として問題となる１〜2KHz付近の
振動騒音が著しく増大してしまう。

この考案は上記のような点に鑑みてなされたも
ので、ウオータジヤケツト外壁からスカート部下
端にわたつて上下方向に沿設された複数の縦リブ
と、ウオータジヤケツト底部ならびにロアデツキ
（スカート部上端縁）に沿つて夫々前後方向に沿
設された横リブとを、シリンダブロツク表面に一
体に形成した構成によつて、上述したエンジン騒
音の増大を伴わずにウオータジヤケツトを浅く形
成し得るようにし、ウオータジヤケツト金型の耐
久性ならびに鋳造精度の向上を可能とした軽合金
製シリンダブロツクを提供することを目的とす
る。

以下、この考案の一実施例を図面に基づいて詳
細に説明する。尚、上述した従来例と同一部分に
は同一符号を符してある。

第３図および第４図は、この考案の一実施例を
示す。この軽合金製シリンダブロツクは、上述し
たように、金型鋳造のためにアツパデツキを具備
せず、ウオータジヤケツト１上端が開放されてい
るものであつて、上記ウオータジヤケツト１は、
その底部がピストン１１の下死点付近に位置する
ように比較的浅く形成されており、かつこの浅く
なつたウオータジヤケツト１底部とスカート部２
上端のロアデツキ４との間には、ウオータジヤケ
ツト外壁５の外壁面からシリンダライナ部３に沿
つて凹んだ凹部６が形成されている。

一方、このシリンダブロツク外表面において
は、ウオータジヤケツト外壁５とスカート部２と
にわたつて上下方向に沿設された複数の縦リブ１
２…がクランク軸方向から視て略台形状をなすよ
うに（第３図参照）形成されている。すなわち、
上記縦リブ１２はウオータジヤケツト外壁５の上
端からスカート部２の下端に至つており、両者を
略直線的に連結した形状となつている。尚、この
縦リブ１２は、各シリンダの中心あるいは各軸受
部の中心に沿つて設けられ、ブロツク後端に位置
する縦リブ１２は、その下端が変速機取付部１３
に連接されている。また、上記ウオータジヤケツ
ト１底部ならびに上記ロアデツキ４の高さ位置に
は、上記凹部６の上下壁面に連続して突出する
（第３図）と共に、夫々前後方向に沿設された横
リブ１４，１５が、上記縦リブ１２…に直交して
形成されている。尚、これらのリブ１２，１４，
１５はシリンダブロツクの鋳造時に一体に鋳造形
成されるものである。

以上のような構成のシリンダブロツクにあつて
は、ウオータジヤケツト１の深さを浅く形成した
結果、これを鋳造するに必要なジツケツト金型が
短くなり、従つて該金型の耐久性ならびに鋳造精
度の向上が達成される。一方、スカート部２下端
にまで伸びた縦リブ１２…を設けたことにより、
スカート部２とウオータジヤケツト外壁５との結
合剛性が大幅に向上し、凹部６に起因する強度低
下を十分に補うことができ、前述したウオータジ
ヤケツト外壁５とスカート部２との拡開振動を抑
止できる。また、横リブ１４，１５により、シリ
ンダブロツクの横曲げ剛性および上下曲げ剛性を
も向上でき、しかも上記縦リブ１２と横リブ１
４，１５とが互いに直交して結合されているた
め、縦リブ１２の前後振動あるいは横リブ１４，
１５の上下振動を生じる惧れが無いとともに、各
リブ１２，１４，１５による効果が相乗してシリ
ンダブロツクの剛性を効果的に向上せしめること
ができるのである。

さらに、第４図に想像線で示すように、縦リブ
１２および横リブ１４，１５に加えて、シリンダ
ブロツク外側面にＸ字形に沿設される斜リブ１６
を形成すれば、シリンダブロツクのさらに一層の
剛性向上が達成でき、とりわけシリンダブロツク
のねじれ剛性の向上に効果的である。また、同じ
く想像線で示すように、ベアリングキヤツプ１７
…をベアリングビーム１８により互いに前後方向
に連結することによつて、ベアリングキヤツプ１
７…の前後倒れ振動を抑制し、これに起因したス
カート部２の開閉振動の低減が可能である。

尚、アルミ合金等の軽合金は一般に熱伝導が良
好なためウオータジヤケツト１が浅くとも十分な
冷却性能が確保できるのは前述した通りである。
またウオータジヤケツト１の容量が小さくなるこ
とからエンジンの暖機特性や燃費の面でも有利と
なる。

以上の説明で明らかなように、この考案に係る
軽合金製シリンダブロツクにあつては、ウオータ
ジヤケツトの深さが従来のものよりも浅くなり、
これを鋳造する際のジヤケツト金型の耐久性が向
上するとともに、鋳造精度が良好となり、しかも
スカート部下端にまで伸びた縦リブおよびこれと
交差する横リブによつてシリンダブロツク各部の
振動を効果的に抑制してエンジン騒音の低減が図
れる、等の利点を有する。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来の軽合金製シリンダブロツクの断
面図、第２図は従来のウオータジヤケツトを浅く
形成した軽合金製シリンダブロツクの要部断面
図、第３図はこの考案に係る軽合金製シリンダブ
ロツクの断面図、第４図は両側面図である。 １……ウオータジヤケツト、２……スカート
部、３……シリンダライナ部、４……ロアデツ
キ、５……ウオータジヤケツト外壁、６……凹
部、１１……ピストン、１２……縦リブ、１４，
１５……横リブ。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. アツパデツキを具備せず、ウオータジヤケツト
   上端が開放された軽合金製シリンダブロツクにお
   いて、ウオータジヤケツトをその底部がピストン
   下死点付近に位置するように形成するとともに、
   上記ウオータジヤケツト底部とスカート部上端の
   ロアデツキとの間に、ウオータジヤケツト外壁面
   からシリンダライナ部に沿つて凹んだ凹部を形成
   し、かつ上記ウオータジヤケツト外壁からスカー
   ト部下端にわたつて上下方向に沿設された複数の
   縦リブと、上記ウオータジヤケツト底部ならびに
   上記ロアデツキに沿つて夫々前後方向に沿設され
   た横リブとを、シリンダブロツク表面に一体に形
   成したことを特徴とする軽合金製シリンダブロツ
   ク。