JPS6321690Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、内燃機関のピストンの頂部に形成さ
れる燃焼室用キヤビテイ、特に捩り溝を内壁面に
備えた燃焼室用キヤビテイに関する。

従来、デイーゼルエンジンでは混合気生成を効
率よく行うため、燃焼室内の空気の旋回流、即
ち、スワールを利用しているものが多い。この種
デイーゼルエンジンではスワールをピストン頂部
の凹み部、即ち、燃焼室としてのキヤビテイ内に
強力に発生させ、これに向け噴霧される燃料を空
気流中に拡散させ、燃焼を迅速に行なうことがで
きる。このように利用されるピストン頂部のキヤ
ビテイは、噴射ノズルからキヤビテイ内の環状の
内壁面に対し燃料の噴射される方向、キヤビテイ
内に生じるスワール生成方向、ピストン圧縮行程
時にピストン頂面とシリンダヘツドとの間の空気
がスキツシユとしてキヤビテイに流入するスキツ
シユ方向、更に、各気流の流速の大小等をそれぞ
れ考慮し、最も迅速に燃料と空気とを混合し燃焼
を行なわすことのできる状態に各部材の形状や燃
焼条件を決定している。このようなキヤビテイの
内、キヤビテイ内に一定形状の基準形面、たとえ
ば略四角形面を捩り込ませて形成した形状のキヤ
ビテイが知られている。この種キヤビテイはその
環状の内壁面に略四角形の外周縁が画く軌跡とほ
ぼ同一の捩り溝を備える。たとえば第１図ａに示
すように、ピストン１のピストン頂部１０１に形
成した捩り溝Ａを備えたキヤビテイ２の場合、そ
の開口２０１の平面視形状に示される略四角形と
ほぼ同一の基準形面を、キヤビテイ中心線ｌ方向
に送り移動させると共に、キヤビテイ中心線ｌ回
りに所定回転比で捩り角αだけ回転させ、一定ピ
ツチ（ｐ＝2π／αｈ）ｐの捩り溝Ａを形成してい る。従来、このような構成の捩り溝Ａの内壁面２
０２に対して、ノズル３より燃料を噴霧する場
合、噴射角βを適宜設定し、かつ、捩り溝Ａ中の
開口２０１側に近い凸部、即ち、オーバーハング
部（ａ点として示した）より下側の部分に噴射を
行なう。これにより、内壁面２０２の噴霧衝突点
ｂに対し鋭角で衝突した燃料は、衝突によるエネ
ルギロスも少なく拡散し、しかも、スワールの遠
心力をも受けキヤビテイの捩り溝Ａ側に沿つて拡
散するため反射噴霧流がスワール中に混合し易い
利点がある。しかし、この場合、燃料は捩り溝Ａ
に衝突する直前あたりで着火しており、捩り溝の
溝線ｃの方向であるキヤビテイの底部２０３に噴
霧火炎が達する際に、未燃焼状態の燃料が燃焼に
必要な空気に新たに出合う割合が低くなつてい
る。これは燃料粒が捩り溝Ａに沿つて流れるため
にその分布が抑えられると共に、キヤビテイ底部
容量（燃料粒の流動方向に位置する部分に関す
る）が比較的小さいためである。この結果、未燃
焼状態にあつた燃料粒はスキツシユ流等の助けに
より、ピストン頂部側への流動時に燃焼を行なう
こととなり、燃焼速度が遅れ、出力低下を生じる
という不都合がある。

本考案はキヤビテイ内に噴霧された燃料を迅速
に燃焼させることのできる形状を備えたピストン
の燃焼室用キヤビテイを提供することを目的とす
る。

本考案によるピストンの燃焼室用キヤビテイ
は、ピストン頂面の開口部とその奥の底面部と
を、互いに平行であると共に所定捩れ角だけずれ
たほぼ同一形状の基準形面により形成し、しか
も、内壁面には、基準形面の外周縁が捩り移動に
より生じる軌跡にほぼ等しい形状の捩り溝を形成
した構成であり、特に、キヤビテイ中心線と垂直
な面に対する捩り溝の溝線の傾斜角を、底面部側
より開口部側の位置にある方を小さく設定した構
成である。

以下、本考案を添付図面と共に説明する。

第２図には本考案の一実施例としてのピストン
の燃焼室用キヤビテイ（以後単にキヤビテイと記
す）５を備えたデイーゼルエンジンのピストン６
を示した。このピストン６はシリンダブロツク７
と、シリンダヘツド８とで燃焼室を形成してい
る。

ピストン６はその頂部にキヤビテイ５を形成さ
れており、このキヤビテイは、ピストン頂面６０
１に開口部５０１を、その奥、即ち、所定深さｈ
１の位置に底面５０２をそれぞれ形成され、しか
も、開口部と底面との間には捩り溝Ｄを形成され
た環状の内壁面５０３を有する。キヤビテイ５は
第３図ａに示すような空間構造体５Ａとして示す
ことができる。なお、第４図には第１図に示した
キヤビテイ２の空間構造体２Ａに関する同様の図
を示した。第３図において、キヤビテイの開口部
５０１に当る部分は基準形面としての四角形の各
角部を丸くした略四角形状を呈している（第２図
ｂ参照）。しかも、空間構造体５Ａはこの略四角
形をキヤビテイ中心線ｌ１の方向（ここでは深さ
方向）に一定送り速度で移動（第５図ａにその送
り量Ｓの時間に対する変化パターンを示した）さ
せると共に、キヤビテイ中心線ｌ１回りに第５図
ｂに示すような回転量Ｑの時間に対する変化のパ
ターンに沿つて回転させる。即ち、送り量Ｓに対
し回転量ＱはＱ＝Ｑ（Ｓ）なる函数として設定さ
れている。なお、第５図ｂ中の破線は第１図の従
来のキヤビテイ２の場合を示している。

このような略四角形の回転移動による軌跡に基
づき形成されたキヤビテイ構造体５Ａは、その外
周面、即ちキヤビテイ５の外側からの視界におけ
る面を第３図ｄに示すような展開図として示すこ
とができる。この場合、略四角形の丸い角部によ
る軌跡である溝線ｅは湾曲線状を呈しており、そ
の内、開口部５０１の近くの溝線ｅの接線が水平
線と交差する傾斜角γは、底面５０２の近くの溝
線ｅの接線による傾斜角γ１と比べて小さく設定
されている。即ち、４つの溝線ｅは従来のキヤビ
テイ（第４図ｄ参照）のようにピツチが一定とは
なつておらず、上側で小さく、下側で大きなピツ
チを示している。このようなキヤビテイ構造体５
Ａを持つキヤビテイ５は、その底面５０２側にお
いて、第３図ｃに示すようにその捩り溝Ｄの溝線
ｅがほとんど上下に向いており、溝線ｅ近傍の領
域ｆが第４図ｃに示すキヤビテイ２の領域ｆ１と
比べ捩れておらず、その容積が十分大きく形成さ
れている。

第２図に示したキヤビテイ５にはノズル９より
４つの噴孔を介し燃料が噴射される。この場合の
噴霧衝突点ｇは、第２図ａに示すように、各溝線
ｅ間のオーバーハング部ｉの多少下側に設定され
ている。これにより燃料は内壁面５０２にエネル
ギロスをあまり生じないで鋭角で衝突し、底面５
０２側に拡散する。しかも、この圧縮終了時にあ
るピストンのキヤビテイ５にはこれが周知手段と
共働して生じているスワール（示矢の方向に流動
する）Ｗが強力に作用しており、反射噴霧流は領
域ｆに対応する空間に向け拡散し、燃焼を迅速に
行なうことになる。このため、噴霧された燃料は
オーバーハング部ｉの働きにより、直接シリンダ
ヘツド８とピストン頂面６０１の間に飛びこむこ
ともなく、しかも、底面５０２側の領域ｆの対応
空間の容量が比較的大きいことより、燃料の大部
分が燃焼に必要な空気に容易に到達でき、燃料の
空気利用率が大きくなり、急速に燃焼できる。

このように、キヤビテイ５はその底面５０２側
の空間の容積を大きくしたため、燃焼を迅速に行
なうことができ、燃費や出力を向上させることが
できる。

上述の処において、キヤビテイ５の基準形面は
略四角形であつたが、この他、６角形、８角形等
の略多角形を用いてもよく、更に、クローバ形状
のものを捩り移動させて捩り溝を形成したような
キヤビテイにも同様に本考案を適用できる。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来のキヤビテイを説明する図、第２
図は本考案によるキヤビテイを備えたピストンの
断面および平面図、第３図は第２図のキヤビテイ
の空間構造体の各説明図、第４図は第１図のキヤ
ビテイの空間構造体の各説明図、第５図は第２図
のキヤビテイを形成する略四角形の送り量および
回転量の各時間的変化を示す線図をそれぞれ示し
ている。 ５……キヤビテイ、５０１……開口部、５０２
……底面、５０３……内壁面、６……ピストン、
６０１……ピストン頂面、ｌ１……ピストン中心
線、γ……傾斜角、Ｄ……捩り溝。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. ピストン頂面の開口部とその奥の底面部とを、
   互いに平行であると共に、所定捩れ角だけずれた
   ほぼ同一形状の基準形面により形成し、しかも、
   開口部と底面部との間の環状の内壁面には基準形
   面の外周縁が捩り移動により生じる軌跡にほぼ等
   しい形状の捩り溝を形成したピストンの燃焼室用
   キヤビテイにおいて、上記キヤビテイ中心線と垂
   直な面に対する捩り溝の溝線の傾斜角を、上記底
   面部側より開口部側の位置にある方を小さく設定
   したことを特徴とするピストンの燃焼室用キヤビ
   テイ。