JPS6319590Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案はリコイルスタータ装置に関する。

一般に、リコイルスタータ装置は、ハウジング
に固着された支軸にロープ巻込み用リールとリテ
ーナカムとが回転自在に嵌挿され、該リテーナカ
ムが支軸の一端に固着されたセンターネジに対し
て一定の摩擦力が作用するように押圧される一
方、一端がリールに支持されたドツグが該リール
とリテーナカムとの間に設けられ、前記ロープを
引張してリールを回転すると、リテーナカムがド
ツグの内面に突出して該ドツグが遠心方向に飛出
し、クランクプーリに当接して該プーリを始動回
転させるように構成されている。

上記ドツグはエンジンの始動時のみ飛出し、回
転後には格納されるものであるが、従来、前記リ
コイルスタータ装置においては、エンジン回転後
の運転中にエンジンの振動によつて、ドツグが振
動し、リテーナカムをはげしく叩いて摩耗、損傷
したり、ドツグが飛び出したりするという欠点が
あつた。

これに対し、リテーナカムの外周縁にドツグの
先端部を格納するカバー部を設けてエンジン振動
によるドツグの飛出しを防止したものはある（実
開昭52−106737号公報参照）が、リテーナカム自
体がエンジン振動により回動してドツグが飛出す
懸念がある。

また、ドツグをスプリングにて格納方向へ付勢
しリールの格納面に押当て保持するようにしたも
のもある（実開昭51−34931号公報）が、リテー
ナカムの回動によるドツグの飛出しの問題がなお
残つている。

本考案は、かかる問題を解決する手段として、
ハウジングに固着された支軸に回転可能に保持さ
れたロープ巻込み用リールと、該支軸の一端に着
脱自在に固定されたセンターネジに対して一定の
摩擦力が作用するように回転自在に前記支軸に嵌
挿されたリテーナカムとの間に、一端がリールに
支持されたドツグが設けられ、前記リールを回転
せしめてドツグを遠心方向に飛出させ、クランク
プーリに当接して該プーリを回転させるリコイル
スタータ装置において、前記リテーナカムは外周
部にドツグの飛出しを案内するカム面を備えたカ
ム部と、このカム部に対し切欠を介して区画され
たドツグ支持部とを備え、このドツグ支持部の外
周縁に格納状態のドツグの背面に係合可能なドツ
グ係止部が形成されていて、リールにはリテーナ
カムをそのカム面が格納状態のドツグと当接する
位置に規制するストツパ部と、ドツグの背面に係
止し上記カム面が格納状態のドツグに押圧される
ようにこのドツグを付勢するドツグバネとが設け
られていることを特徴とするリコイルスタータ装
置を提供するものである。

このリコイルスタータ装置においては、リール
が巻戻されてドツグが格納状態にあるとき、リテ
ーナカムはストツパ部によりカム面が格納状態の
ドツグと当接する位置に規制され、ドツグ自体は
ドツグバネにより上記カム面に押圧される。つま
りリテーナカムはドツグを介してドツグバネの付
勢力をカム面に受けることにより、エンジン振動
等によつてドツグ飛出方向へ回動することが防止
される。

また、ドツグ係止部は上記リテーナカムの回動
規制によりドツグの背面に係合可能な位置を保
ち、結局、ドツグはリテーナカムのカム面とドツ
グ係止部との間でドツグバネに抗して飛び出さな
いように位置が規制される。

以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明す
る。

第１図乃至第３図において、１はスノーモービ
ルなどに設けられるリコイルスタータ装置であつ
て、ハウジング２内にドツグ３を有するロープ巻
込み用リール４及びリテーナカム５が収納され、
クランクプーリ６を介してクランク軸（図示省
略）を始動回転させるものである。

ハウジング２は、第２図に示す如く略椀状に形
成されて、端面板２ａの内側中央部に支軸７が一
端にて固着されており、支軸７は大径部７ａと小
径部７ｂとよりなる中空体で、メネジが形成され
ると共に、小径部７ｂの外端にワツシヤ８を介し
てセンターネジ９が着脱自在に螺合固定されてい
る。

前記リール４は、ボス部４ａ、ドツグ収容部４
ｂ、アーム部４ｃ及びリム部４ｄが順に連接され
且つドツグ収容部４ｂの背部（ドツグ３の飛出し
方向の反対側）にリテーナカム５に対するストツ
パ部４ｅを設けてなり、耐油性、耐熱性合成樹脂
材料、例えばガラス入りナイロンによつて形成さ
れ、ボス部４ａが大径部７ａに軸受１０を介して
回転自在に嵌合されている。ドツグ収容部４ｂは
対称位置に２個所（第３図参照）設けられ、支軸
７と平行に外方へ延長されており、後述のドツグ
３の筒状枢支部３ａを支承する空間１１が軸方向
に、外周面には空間１１の開口縁より斜め外方に
向つて平坦なドツグ支持面１２が形成されてい
る。リム部４ｄにはロープ１３が懸回され、ロー
プ１３の一端はリール４に連結され、他端はハウ
ジング２外に延設されている。またハウジング２
の端面板２ａとリール４との間には渦巻バネ１４
及びバネケース１５が設けられ、渦巻バネ１４は
リール４に連結されて、リール４をロープ１３の
巻込み方向に付勢している。

ドツグ３は金属材料によつて構成され、板状体
の一端部に筒状に巻回された枢支部３ａが連続し
て形成され、枢支部３ａがリール４の空間１１に
挿入されて、リール４に回動自在に取付けられて
いる。更に、空間１１にはドツグバネ１６が収納
され、ドツグバネ１６は一端がドツグ３の背面に
係合して、ドツグ３を支持面１２および後述する
リテーナカム５のカム面１８に押圧している。

リテーナカム５は、金属材料により円盤状に形
成されて支軸７の小径部７ｂに回転自在に嵌合さ
れていて、それぞれ反対方向に張出した一対のカ
ム部５ａ，５ａと、同じく反対方向に張出してド
ツグ３，３をリール４との間で支持する一対のド
ツグ支持部５ｂ，５ｂとが半径方向の切欠１７に
よつて区画形成されている。

カム部５ａの外周の一隅角にはドツグ３の内面
に当接するカム面１８が平面に削除されて形成さ
れている。カム面１８はドツグ３の格納時にドツ
グバネ１６に押され、リテーナカム５がリール４
に形成されたストツパ部４ｅに当接することによ
りドツグ３の内面と平行に且つリール４の支持面
１２と同一平面上になり、ドツグ３を支持面１２
と共に受止めるものである。つまり、ストツパ部
４ｅはカム部５ａにおけるカム面１８の反対側部
分に当接し、リテーナカム５をそのカム面１８が
格納状態のドツグ３と当接する位置に規制できる
ように設けられている。ドツグ支持部５ｂは外方
にやや膨出し、外周縁には内側へ直角に折曲げら
れてドツグ係止部１９が形成され、係止部１９は
ドツグ３の背面に係合して格納時におけるドツグ
３の飛出し方向への回動を規制している。

また小径部７ｂにはリテーナカム５と大径部７
ａとの間にスプリング２０及びワツシヤ２１が設
けられ、スプリング２０はリテーナカム５をセン
ターネジ９に押圧し、リテーナカム５とセンター
ネジ９との間にワツシヤ８を介して一定の摩擦力
が作用するようになつている。

クランクプーリ６は、端面板６ａと外周板６ｂ
とより略椀状に形成され、リール４の収容部４ｂ
及びリテーナカム５を内包している。外周板６ｂ
には内側に突出する複数個の突部２２が一定間隔
を存して周回状に形成され、突部２２はプレス加
工により連続曲げ形成されている。

尚、ワツシヤ８にはグリース留めの貫通孔２３
が複数個穿設されている。

次に作用について説明する。エンジンを始動す
る場合、第３図に示す状態よりロープ１３を引張
すると、リール４が時計廻り方向に回転し始める
と共に、ドツグ３がリテーナカム５のカム面１８
の案内によつて押し出されて遠心方向に飛出すこ
とになり、また、リテーナカム５はドツグ３を介
してリール４の回転力を受け、リール４に遅れて
このリール４と共に回転することになり、ドツグ
３の先端が突部２２に当接してクランクプーリ６
が始動回転することになる（第４図参照）。その
際、係止部１９はリテーナカム５に伴つて回動す
るため、ドツグ３の回動は許容される。

エンジンが回転してロープ１３を離すと、リー
ル４は渦巻バネ１４によつて逆回転してロープ１
３を巻込む一方、リテーナカム５がドツグ３を押
圧しなくなり、ドツグ３はドツグバネ１６によつ
て支持面１２及びカム面１８に押圧されて格納さ
れる（第３図参照）。この場合、リール４はリテ
ーナカム５より先に逆方向へ回転し始めてそのス
トツパ部４ｅがリテーナカム５に当接し、リテー
ナカム５を同方向へ回転させることになる。そし
て、このストツパ部４ｅがリテーナカム５に当接
した状態（第３図に示す状態）は、ドツグ３が格
納された状態であり、カム面１８は格納状態のド
ツグ３と当接する位置関係にある。この状態にお
いて、リテーナカム５はエンジンの振動等を受け
るが、ドツグ３を介してドツグバネ１６の付勢力
をカム面１８に受け、ドツグ飛出方向（第３図で
反時計回り方向）へ回動することが防止される。
そして、ドツグ係止部１９は上記リテーナカム５
の回動が防止されることによつてドツグ３の先端
部背面に係合可能な位置を保つ。従つて、ドツグ
３はドツグバネ１６の付勢によつて格納状態に保
持されるだけでなく、ドツグバネ１６の付勢によ
つてドツグ係止部１９が格納状態にあるドツグ３
の背部に常に位置することになるから、このドツ
グ係止部１９により飛出方向への回動が防止され
る。

以上のように、本考案によれば、ドツグバネに
よつてドツグを格納方向に付勢できるとともに、
リテーナカムの回動を防止してドツグ係止部を常
にドツグの背部に位置させることができるため、
ドツグを格納位置に確実に保持してエンジン振動
等によるドツグの振動や飛出しおよびそれに伴う
ドツグとリテーナカムとの間での打撃や、ドツグ
とクランクプーリとの干渉ないしは衝突を防止
し、これらドツグ、リテーナカムおよびクランク
プーリの摩耗、損傷あるいは異音の発生を防ぐこ
とができる。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の実施態様を示し、第１図はリコ
イルスタータ装置の全体平面図、第２図は同中央
縦断面図、第３図は停止時における第２図Ａ−Ａ
線の端面図、第４図は駆動時における第２図Ａ−
Ａ線の端面図、第５図は要部の拡大縦断面図であ
る。 １……リコイルスタータ装置、２……ハウジン
グ、３……ドツグ、４……リール、４ｂ……ドツ
グ収容部、５……リテーナカム、５ａ……カム
部、５ｂ……ドツグ支持部、６……クランクプー
リ、７……支軸、９……センターネジ、１３……
ロープ、１６……ドツグバネ、１７……切欠、１
８……カム面、１９……係止部。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. ハウジングに固着された支軸に回転可能に保持
   されたロープ巻込み用リールと、該支軸の一端に
   着脱自在に固定されたセンターネジに対して一定
   の摩擦力が作用するように回転自在に前記支軸に
   嵌挿されたリテーナカムとの間に、一端がリール
   に支持されたドツグが設けられ、前記リールを回
   転せしめてドツグを遠心方向に飛出させ、クラン
   クプーリに当接して該プーリを回転させるリコイ
   ルスタータ装置において、前記リテーナカムは外
   周部にドツグの飛出しを案内するカム面を備えた
   カム部と、このカム部に対し切欠を介して区画さ
   れたドツグ支持部とを備え、このドツグ支持部の
   外周縁に格納状態のドツグの背面に係合可能なド
   ツグ係止部が形成されていて、リールにはリテー
   ナカムをそのカム面が格納状態のドツグと当接す
   る位置に規制するストツパ部と、ドツグの背面に
   係止し上記カム面が格納状態のドツグに押圧され
   るようにこのドツグを付勢するドツグバネとが設
   けられていることを特徴とするリコイルスタータ
   装置。