JPS62813Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 この考案はボールエンドミル用のスローアウエ
イチツプに関するものである。 従来、この種のボールエンドミルとして、複数
のスローアウエイチツプを本体に取付け、かつ各
スローアウエイチツプの切刃の回転軌跡が全体と
して連続するように構成したものが知られてい
る。しかしながら、このようなボールエンドミル
であつても１枚刃のものと同様に、１刃毎にかか
る切削抵抗が大きいために、高速重切削を行つた
場合にビビリ振動や切刃のチツピングが生じ易
く、高能率な加工を行うことが困難であつた。 そこで本出願人等は上記のような問題を解消し
得るボールエンドミルとして第１図および第２図
に示すように構成したものを既に提案した。 すなわち、ここに示すボールエンドミルは、本
体１の先端側に、主スローアウエイチツプ２と副
スローアウエイチツプ３とを取付けたものであつ
て、主スローアウエイチツプ２は全体としてだ円
形の平板体をなし、その長軸方向における一方の
頂点部を本体１の先端中心部にほぼ一致させ、か
つ一方の凸円弧稜が本体１より若干突出するよう
本体１にクランプされており、主スローアウエイ
チツプ２の回転中心部側のすくい面４は所定の曲
率半径ｒの凸曲面とされ、また正面側の切刃５は
前記凸円弧稜に沿う円弧状切刃であり、さらにこ
れに続く外周側の切刃６は、一定間隔毎に台形状
もしくは矩形状に切り欠いてニツク７を形成した
凹凸刃とされている。他方、副スローアウエイチ
ツプ３は、主スローアウエイチツプ２の外周側切
刃６で切り残された部分を補完的に切削するもの
であつて、全体としてほぼ凸円弧状をなす外周側
の切刃８に前記ニツク７と同様なニツク９を一定
間隔毎に形成したものである。 上記のように構成したボールエンドミルによれ
ば、周速すなわち切削速度の速い外周側切刃６，
８による切削が、所謂部分切削になるので、高速
重切削を行つた場合でも、切削抵抗を小さくし、
またビビリ振動の発生を防止することができる。 ところで、上記のボールエンドミルでは、正面
側切刃５が連続した円弧状であるから、より高速
で重切削を行う場合には、この正面側切刃５にお
ける切削抵抗を減じ、またビビリ振動を防止する
ために、正面側切刃５にもニツクを設けることが
望ましいが、単に上記のニツク７，９の如き台形
状もしくは矩形状に切り欠いたニツクを形成した
のでは、以下に述べる欠点が生じる。 第３図Ａは正面側切刃５の回転中心近傍をほぼ
矩形状に切り欠いて形成したニツク１０の一つを
示す図であり、この図に示すように正面側切刃５
の回転中心近傍では切刃稜が回転中心軸線Ｏに対
し垂直（第３図Ａでは左右の水平方向）に近くな
る関係上、切り欠くことにより生じた稜線のうち
回転中心に近い側の稜線１１と回転中心軸線Ｏと
のなす角θが小さくなり、したがつて稜線１１の
回転方向によつて決まる実効逃げ角β_１がスロー
アウエイチツプ２に予め設定してある逃げ角β
（仮に元来の逃げ角という）とほぼ同じになる。
すなわち第３図Ｂの左側の図は前記稜線１１のう
ち回転径がｄの部分を稜線１１に対して垂直な面
に沿つて切断した場合の部分断面であり、換言す
れば、回転中心軸線Ｏに対してθなる角度をなす
方向から見た部分断面であり、この断面には元来
の逃げ角βが現われ、スローアウエイチツプ２を
製造する段階で設定された逃げ面の後退寸法ab
は、スローアウエイチツプ２の厚さをＴとする
と、 ab＝Ｔ tanβ となる。また第３図Ｂの右側の図は、上記の部分
と同一の箇所（回転径がｄの箇所）を回転中心軸
線Ｏに垂直な面で切断した場合の部分断面であつ
て、換言すれば回転中心軸線方向から見た図であ
つて、この図の直径ｄの円周上を前記稜線１１が
回転するから、この図には切削時に実際に作用す
る実効逃げ角β_１が現われ、この実際に作用する
逃げ面の後退寸法acを求めると、 ac＝ab／cosθ＝Ｔ tanβ／cosθ となる。すなわち第３図Ｃは前記稜線１１をスロ
ーアウエイチツプ２の底面（背面）に投影して
ａ，ｂ，ｃの各点の相対位置を示す図であつて、
この図でacが回転中心軸線Ｏに対して垂直（すな
わち半径方向）となつており、かつabが稜線１
１に対して垂直となつており、この図に示すよう
に線分abとacとは、稜線１１が回転中心軸線Ｏ
に対してθなる角度傾斜しているから、abとac
との角度も同様にθとなり、したがつて上記の式
が成立つ。したがつて実効逃げ角β_１と元来の逃
げ角βとの間には、 tanβ_１＝ac／Ｔ＝tanβ／cosθ の関係が成り立つ。ここで、θは前述したように
小さい値であるから、結局 β_１＝β となり、実効逃げ角β_１は元来の逃げ角βとほと
んど同角度になる。その結果、前記稜線１１の回
転半径ｄが小さく、被加工物の切削面の曲率が大
きくなるために、前記稜線１１についての実効逃
げ角β_１が小さくなり過ぎ、被加工物に干渉する
欠点が生じる。 このような欠点を解消するために、スローアウ
エイチツプ２の先端回転中心近傍における厚さＴ
を薄くすることが考えられるが、このようにする
と強度が低くなるために、切刃が欠損し易くなる
問題が生じる。また、スローアウエイチツプ２の
元来の逃げ角βを先端回転中心近傍のみで大きく
することも考えられるが、このようにすると刃物
角が小さくなつて切刃の強度が低くなるのみなら
ず、スローアウエイチツプ２の形状が極めて複雑
になるから、製造が困難であるうえに、もし製造
し得るとしても相当高価なものになつてしまう。 この考案は上記の事情に鑑みてなされたもの
で、逃げ面と被加工物との干渉が生ぜず、しかも
１刃当りの切削抵抗を減じることのできる切刃形
状のボールエンドミル用スローアウエイチツプを
提供することを目的とするものであり、そしてこ
の考案は、1/4円弧以下の２つの凸円弧稜を有す
る全体としてほぼだ円形の平板体であつて、各凸
円弧稜に該凸円弧稜を一定間隔毎にほぼ三角形状
に切り欠いて凹部切刃を設けた波形状切刃が形成
され、その一方の波形状切刃における凹部切刃の
うち少なくとも長軸方向における一方の頂部近傍
の凹部切刃が、前記一方の頂部側において凸円弧
稜の法線に対する角度が大きくかつ他方の頂部側
で凸円弧稜の法線に対する角度が小さくなる形状
とされていることを特徴とするものである。 以下この考案の実施例を第４図ないし第１２図
を参照して説明する。 第４図はこの考案の一実施例を示す平面図であ
り、第５図はその正面図であつて、ここに示すス
ローアウエイチツプ２０は、1/4円弧程度の２つ
の凸円弧稜２１，２２を備えた全体としてほぼだ
円形をなす平板体をなしており、その長軸方向の
各頂点部には、切屑の排出を良好ならしめるため
に、上面側に凸曲面となるすくい面２３，２４
が、中心部について対称となるよう形成されてお
り、したがつて頂点部の切刃２５，２６は、外周
側および上面側の両方に凸となるよう湾曲してい
る。これら頂点部の切刃２５，２６に連続する凸
円弧稜２１，２２は、一定間隔毎にほぼ三角形状
に切り欠かれて波形状切刃２７，２８とされてい
る。その詳細を第６図に示す。切り欠くことによ
り生じた凹部切刃２９は、第６図に示すように一
方の頂点部側すなわち一方の頂点部の切刃２５に
近い部分（以下、仮に長辺側切刃稜という）と他
方の頂点部側（以下、仮に短辺側切刃稜という）
とで前記凸円弧稜２１，２２の法線Ｈに対する角
度が相違しており、その角度αは長辺側切刃稜で
大きく、短辺側切刃稜で小さく設定されている。 また、前記スローアウエイチツプ２０の中心部
には、取付け孔３０が形成され、さらに底面３１
は、切削抵抗によるずれを防止するべく舟底形に
形成されている。 なお、上記スローアウエイチツプ２０の外周面
は、従来一般のスローアウエイチツプにおけると
同様に、正の逃げ角に設定した逃げ面とされてい
る。 第７図および第８図は上記のスローアウエイチ
ツプ２０を用いたボールエンドミルを示す図であ
つて、上記のスローアウエイチツプ２０はその一
方の頂点部が先端回転中心Ｐに一致しかつ一方の
波形状切刃２７が本体３２の先端部外周面よりわ
ずか突出するようチツプ座３３に、ボルト３４に
よつて固定されている。また本体３２には、前記
チツプ座３３から180゜回転した位置に他のチツ
プ座３５が形成されており、そのチツプ座３５に
前記波形状切刃２７と同様な波形状切刃３６を有
するスローアウエイチツプ３７がボルト３８によ
つて固定されている。これらのスローアウエイチ
ツプ２０，３７は、各々の波形状切刃２７，３６
における凹凸部が本体３２の軸線方向へ１ピツチ
ずれるように相互の位置が設定され、したがつて
一方のスローアウエイチツプ２０によつて切り残
した部分を他方のスローアウエイチツプ３７によ
つて切削する所謂相互補完的な切削が可能なよう
に位置設定されている。 しかして上記のボールエンドミルにあつては、
一方のスローアウエイチツプ２０における凸円弧
稜２１のほぼ全体を波形状切刃２７としたから、
１切刃当りの切削抵抗を減じ、かつビビリ振動を
防止することができ、しかも前述したように凹部
切刃２９における凸円弧稜２１の法線Ｈに対する
角度αを前記長辺側切刃稜で大きく設定したか
ら、先端部回転中心近傍におけるその切刃稜の回
転中心軸線に対する角度θが大きくなり、その結
果該切刃稜の実効逃げ角は、前記の tanβ_１＝tanβ／cosθ の関係式から明らかなように、スローアウエイチ
ツプ２０に予め設定してある逃げ角より相当大き
くなるため、被加工物と干渉することはない。 第９図および第１０図はこの考案の他の実施例
を示すもので、ここに示すスローアウエイチツプ
４０は、前述したスローアウエイチツプ２０の各
頂点部を切り欠いて前記凸曲面をなすすくい面２
３，２４の部分を除去したものであり、他の構成
は前記スローアウエイチツプ２０と同様である。 第１１図および第１２図は、波形状切刃２７を
有する上記のスローアウエイチツプ４０を用いた
ボールエンドミルを示すもので、前記スローアウ
エイチツプ４０は本体３２の先端部から軸線方向
へ若干後退し、かつ波形状切刃２７が本体３２の
外周面からわずか突出するようチツプ座３５に固
定されており、また他のチツプ座３３には、長軸
方向における頂点部に凸曲面状すくい面４１，４
２を有し、かつ1/4円弧状切刃４３，４４を備え
たスローアウエイチツプ４５が、一方の頂点部を
先端回転中心Ｐに一致させ、かつ一方の凸円弧状
切刃４３を本体３２の外周面から若干突出させた
状態に固定されている。そしてこれら各スローア
ウエイチツプ４０，４５は、波形状切刃２７によ
る切り残し部分を他方のスローアウエイチツプ４
５が補完的に切削するよう相互の位置が設定され
ている。 第９図および第１０図に示す形状のスローアウ
エイチツプ４０においても本体３２に装着した状
態では、先端部に近い部分における凹部切刃２９
の所謂長辺側切刃稜と回転中心軸線とのなす角度
θが大きくなるから、前述した理由と同様な理由
で実効逃げ角が大きくなり、その結果被加工物と
の干渉を避けることができ、また各スローアウエ
イチツプ４０，４５が相互補完的な切削を行うか
ら、１切刃当りの切削抵抗を減じ、ビビリ振動の
発生を防止することができる。 なお、上記の各実施例で凹部切刃２９を図に示
すように曲線としたが、凹部切刃２９は長短２本
の直線状としてもよい。 以上説明したようにこの考案のボールエンドミ
ル用スローアウエイチツプは、1/4円弧以下の２
つの凸円弧稜を有する全体としてほぼだ円形の平
板体であつて、各凸円弧稜に該凸円弧稜を一定間
隔毎にほぼ三角形状に切り欠いて凹部切刃を設け
た波形状切刃が形成され、その一方の波形状切刃
における凹部切刃のうち少なくとも長軸方向にお
ける一方の頂部近傍の凹部切刃が、前記一方の頂
部側において凸円弧稜の法線に対する角度が大き
くかつ他方の頂部側で凸円弧稜の法線に対する角
度が小さくなる形状とされているから、ボールエ
ンドミルの本体に装着した場合、凹部切刃が先端
回転中心の近傍に位置することになつても、すべ
ての部分の実効逃げ角を大きくすることができ、
したがつて被加工物との干渉を防止することがで
きる。またこの考案によれば、上記の効果に加
え、波形状切刃を設けたものであることから、１
切刃当りの切削抵抗を小さくすることができ、そ
れに伴いビビリ振動や切刃のチツピング等を有効
に防止できる効果を得ることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来のスローアウエイチツプを装着し
たボールエンドミルの一例を示す略解正面図、第
２図はその側面図、第３図Ａは回転中心近傍の切
刃稜に形成したニツクの一つを示す部分正面図、
同図Ｂは元来の逃げ角と実効逃げ角とを示すため
に回転中心軸線に対してθなる角度の方向から見
た場合と回転中心軸線方向から見た場合との部分
断面図、同図Ｃは逃げ面の後退寸法を稜線に対し
て垂直な面内で計つた場合と回転中心軸線に対し
て垂直な面内で計つた場合との関係を示す説明
図、第４図はこの考案の一実施例を示す平面図、
第５図はその正面図、第６図はその一方の波形状
切刃の一部の拡大図、第７図はそのスローアウエ
イチツプを装着したボールエンドミルの一例を示
す正面図、第８図はその先端視図、第９図はこの
考案の他の実施例を示す平面図、第１０図はその
正面図、第１１図はそのスローアウエイチツプを
装着したボールエンドミルの一例を示す正面図、
第１２図はその先端視図である。 ２０，４０……スローアウエイチツプ、２１，
２２……凸円弧稜、２７，２８……波形状切刃、
２９……凹部切刃、Ｈ……法線、α……凹部切刃
と法線とがなす角度。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】

1/4円弧以下の２つの凸円弧稜を有する全体と
してほぼだ円形の平板体であつて、各凸円弧稜に
該凸円弧稜を一定間隔毎にほぼ三角形状に切り欠
いて凹部切刃を設けた波形状切刃が形成され、そ
の一方の波形状切刃における凹部切刃のうち少な
くとも長軸方向における一方の頂部近傍の凹部切
刃が、前記一方の頂部側において凸円弧稜の法線
に対する角度が大きくかつ他方の頂部側で凸円弧
稜の法線に対する角度が小さくなる形状とされて
いることを特徴とするボールエンドミル用スロー
アウエイチツプ。