JPS6247645B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 (1) 発明の技術分野 本発明は、ワイヤカツト放電加工用ワイヤ電極
ガイド装置の改良に関する。特に、通常の加工に
対する場合といわゆるテーパ加工に対する場合と
の切り換えを容易とし、かつ、加工精度を向上す
る改良に関する。

(2) 技術の背景 ワイヤカツト放電加工機とは、金属等の導電性
被加工体と、これを貫通して直線状に伸張された
黄銅等の導電性材料よりなるワイヤ電極との間の
間隙に噴射される加工液中に断続的に放電を発生
させ、この断続的放電によつて被加工体の加工領
域を極めて局部的に軟化または溶融するとともに
加工領域近傍に圧力の断続的変化を発生させ、こ
の圧力の断続的変化によつて、上記の軟化または
溶融した被加工体領域を剥離・除去してなす導電
性材料特に金属の加工機械をいう。

上記のワイヤカツト放電加工機を使用してなす
ワイヤカツト放電加工法においては、直径0.2mm
程度のワイヤ電極の支持点と被加工体との相対的
位置を、例えば数値制御（NC）システム等を使
用して0.001mm程度の精度をもつて極めて精密に
制御することにより、加工放電の発生する位置を
正確に制御し、同時にワイヤ電極と加工面との距
離を0.03mm程度に制御し、結果として、すぐれた
加工精度を実現するものである。

換言すれば、ワイヤカツト放電加工法において
直接制御される要素は、ワイヤの支持点と被加工
体との相対的位置関係と放電状態のみであるか
ら、ワイヤカツト放電加工法における加工精度
は、ワイヤの真直度と放電間隙の精度に大きく依
存する。

そのため、ワイヤカツト放電加工機において
は、ワイヤの真直度を向上し、断続放電を安定に
発生させて放電間隙を正確に維持することを目的
とする努力が種々なされている。

まず、ワイヤの真直度を向上するためには、第
１図に示すＶ溝型ガイド２，２′の間にワイヤ１
を張力をかけて伸張し、上下のＶ溝型ガイド２，
２′をサーボ機構をもつて駆動する。このＶ溝型
ガイドは当初ワイヤをセツトすることが容易であ
るし、放電加工の実行によつてワイヤ表面に形成
された突起等に起因する線径不整等に対処するた
めの考慮が不要である等の利点はあるが、上述の
とおりワイヤの直径は0.2mm程度であるからかけ
うる張力の大きさには制限が存在し、ワイヤには
曲げ剛性と曲がりくせとがあるから、実現しうる
真直度は必ずしもすぐれたものではないという欠
点もある。

次に、ワイヤカツト放電加工法には、ワイヤの
伸張方向をワイヤの移動方向に対して常時垂直に
維持する通常の加工と、ワイヤの伸張方向とワイ
ヤの移動方向とを傾斜させる、いわゆる、テーパ
加工とがある。そして、このテーパ加工において
は、上下のガイドを各々独立に駆動するので、Ｖ
溝型ガイドを使用した場合はワイヤの支持点が不
定となるから、Ｖ溝型ガイドは使用できない。そ
こで、テーパ加工の場合は第２図に示すダイス型
ガイド３，３′が通常使用される。

ところが、このダイス型ガイドにおいては当初
ワイヤをセツトするため、また、線径不整に対す
る配慮等のため、ダイス孔径に多少の裕度を設け
る必要があるため位置の精度が悪く、特にダイス
型ガイド部においては一点支持であるに反し、ワ
イヤは急激に曲がりえないという性質があるか
ら、真直度は必ずしもすぐれているとは言い難
く、これらが相乗的に影響して加工精度が必ずし
も満足しうるものではないという欠点がある。

これらの欠点を解消するものとして、第３図に
示すように、Ｖ溝型ガイド２，２′とダイス型ガ
イド３，３′とを組み合わせて使用するワイヤガ
イド装置が開発され、この方式はワイヤの真直度
を向上する効果が顕著であるから、テーパ加工を
含まない通常の放電加工の場合においても精度向
上に有効であることが確認されている（特願昭第
57−70973号）。

次に、断続放電を安定に持続するために、加工
用ワイヤ電極の周囲に厚さが0.03mm程度の加工液
の膜を形成する必要があり、そのために、第４図
に示すように、ワイヤ１を直径３〜６mm程度のノ
ズル４中を通過させ、図に矢印Ａをもつて示す加
工液噴流を形成する手法が使用されている。

(3) 従来技術と問題点 しかし、従来技術におけるワイヤ電極ガイド装
置は第５図、第６図に示す如きものが一般であつ
た。すなわち、第５図、第６図に示すように取り
付け板５を設けておき、テーパ加工を含まない通
常の放電加工の場合は、第５図に示すように、取
り付け板５の下面にＶ溝型ガイド２とノズル４′
とを有する第１アタツチメント６を取り付けるこ
ととし、一方、テーパ加工の場合は、第６図に示
すように、取り付け板５の下面にダイス型ガイド
３とノズル４″とを有する第２アタツチメント７
を取り付けることとしている。

上記より明らかなように、従来技術におけるワ
イヤ電極ガイド装置においては、Ｖ溝型ガイドま
たはダイス型ガイドの一方のみを使用することが
前提とされておりこれら双方を併用することは考
慮されておらない。

その理由は、上記せるＶ溝型ガイドとダイス型
ガイドとの併用がワイヤ電極の真直度向上に有効
であるためテーパ加工においては勿論のこと通常
の放電加工においてもその加工精度の向上に有効
であることが知られていなかつたからである。

しかし、Ｖ溝型ガイドとダイス型ガイドとの併
用がワイヤ電極の真直度向上に有効であり加工精
度の向上に有効であることが明らかになつた以
上、ワイヤカツト放電加工機のワイヤ電極ガイド
装置は、技術の背景の項に記載したすべての機能
を併せ有し、しかも、取り扱いが容易であること
が望ましい。更に、加工精度より取り扱いの簡便
さが極めて重要である場合もあるから、この点を
考慮すると、Ｖ溝型ガイドのみの構成とＶ溝型ガ
イドとダイス型ガイドとの組み合わせの構成との
間で切り換えが可能にされていることが望まし
い。

(4) 発明の目的 本発明の目的は、ワイヤ電極の真直度を向上し
加工精度を向上する効果を有し、しかも、取り扱
いが簡便であり、更に、必ずしも高精度を必要と
しない場合には簡便さがより向上する構成に極め
て容易に切り換えうる利益を有するワイヤカツト
放電加工用ワイヤ電極ガイド装置を提供すること
にある。

(5) 発明の構成 本出願には二つの独立した発明が包含され、そ
の第１の発明の構成は、第７図に示すように、加
工用ワイヤ電極１をガイドするＶ溝型ガイド２と
加工液給送手段１０とを収容するＶ溝型ガイド部
８と、該Ｖ溝型ガイド部８の下面に着脱可能に取
り付けられ前記加工用ワイヤ電極１をガイドする
ダイス型ガイド３と前記加工液給送手段１０と連
通し前記ダイス型ガイド３を囲む開口を有する加
工液噴射ノズル１２とを収容するダイス型ガイド
部１１とよりなるワイヤカツト放電加工用ワイヤ
電極ガイド装置にあり、その第２の発明の構成
は、第８図に示すように、加工用ワイヤ電極１を
ガイドするＶ溝型ガイド２と加工液給送手段１０
とを収容するＶ溝型ガイド部８と、該Ｖ溝型ガイ
ド部８の下面に着脱可能に取り付けられ前記加工
用ワイヤ電極１の導出口と前記加工液給送手段１
０と連通する加工液噴射ノズルとを兼ねる開口１
４を有する加工液ノズル部１３とよりなる、ワイ
ヤカツト放電加工用ワイヤ電極ガイド装置にあ
る。

(6) 発明の実施例 以下図面を参照しつつ、本発明の実施例に係
る、ワイヤカツト放電加工用ワイヤ電極ガイド装
置について更に説明する。

第７図参照 図はＶ溝型ガイド２とダイス型ガイド３とが併
用されており、テーパ加工を含まない通常の加工
には勿論のことテーパ加工を含む加工にも使用可
能であり、いづれの加工においても高い加工精度
を実現しうる構成の例を示す。図において、８は
Ｖ溝型ガイド部であり、Ｖ溝型ガイド２とワイヤ
送りローラ等よりなるワイヤ送り手段９と加工液
給送手段１０とを収容する。１１はダイス型ガイ
ド部であり、ダイス型ガイド３と上記の加工液給
送手段１０と連通しており、かつ、ダイス型ガイ
ド３を囲んで加工液噴出口を有する加工液噴射ノ
ズル１２とを収容し、更に、上記のＶ溝型ガイド
部８の下面に着脱可能に取り付けられる。

かかる構造を有するワイヤ電極ガイド装置にお
いては、Ｖ溝型ガイド２とダイス型ガイド３とが
併用されているので、テーパ加工にも使用しうる
うえに、ワイヤの剛性や曲りぐせ等の矯正が可能
であり、ワイヤの真直度が向上し、通常の加工に
おいても加工精度が向上する。しかも、ダイス型
ガイド部１１は着脱可能であるから、下記する第
２の構成への切り換えも極めて容易で、作業性も
良好であり、現実的利益が大きい。

第８図参照 図はＶ溝型ガイド２のみが使用されており、テ
ーパ加工が含まれず、加工精度もさることながら
取り扱い上の便を優先するという要求に対応する
構成の例を示す。図において、８は上記他の構成
の場合と同一のＶ溝型ガイド部であり、Ｖ溝型ガ
イド２とワイヤ送りローラ等よりなるワイヤ送り
手段９と加工液給送手段１０とを収容する。１３
は加工液ノズル部であり、開口１４は加工用ワイ
ヤ電極１の導出口としての機能と加工液噴射ノズ
ルとしての機能とを兼ねている。したがつて、ワ
イヤ１はこの開口１４の中心を通過して導出され
る。そして、上記のＶ溝型ガイド部８の下面に着
脱可能に取り付けられる。

かかる構造を有するワイヤ電極ガイド装置にお
いては、Ｖ溝型ガイド２のみが使用されているの
で、テーパ加工には使用できず、また、テーパ加
工を含まない通常の加工の場合においてもワイヤ
の真直度が上記第１の構成に比して劣るので加工
精度も上記第１の構成に比して劣るが、ワイヤの
セツトをはじめ取り扱いが簡易であり、作業上現
実利益が大きい。しかも、加工液ノズル部１３は
着脱可能であるから上記第１の構成への切り換え
も極めて容易であり、作業性も良好であり、現実
的利益が大きい。

(7) 発明の効果 以上説明せるとおり、本発明によれば、Ｖ溝型
ガイドのみを使用する構成とＶ溝型ガイドとダイ
ス型ガイドとの組み合わせの構成との間で切り換
えが極めて容易に可能であり、前者においては精
度は必ずしもすぐれていないが取り扱い上有利で
あり、後者においてはテーパ加工を含む加工にも
使用可能であり、いづれの加工においても高い加
工精度を実現することができる利益を有する、ワ
イヤカツト放電加工用ワイヤ電極ガイド装置を提
供することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図はＶ溝型ガイドの概念的構成図である。
第２図はダイス型ガイドの概念的構成図である。
第３図はＶ溝型ガイドとダイス型ガイドとが併用
されているワイヤ電極ガイド装置の概念的構成図
である。第４図は加工液噴射ノズルの概念的構成
図である。第５図はＶ溝型ガイドを有する従来技
術におけるワイヤ電極ガイド装置の概念的構成図
である。第６図はダイス型ガイドを有する従来技
術におけるワイヤ電極ガイド装置の概念的構成図
である。第７図は本出願の第１の発明の一実施例
に係るワイヤカツト放電加工用ワイヤ電極ガイド
装置の概念的構成図である。第８図は本出願の第
２の発明の一実施例に係るワイヤカツト放電加工
用ワイヤ電極ガイド装置の概念的構成図である。 １……ワイヤ、２，２′……Ｖ溝型ガイド、
３，３′……ダイス型ガイド、４，４′，４″……
ノズル、Ａ……加工液噴流、５……取り付け板、
６……第１アタツチメント、７……第２アタツチ
メント、８……Ｖ溝型ガイド部、９……ワイヤ送
り手段、１０……加工液給送手段、１１……ダイ
ス型ガイド部、１２……加工液噴射ノズル、１３
……加工液ノズル部、１４……開口。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 加工用ワイヤ電極１をガイドするＶ溝型ガイ
   ド２と加工液給送手段１０とが板状体８１に取り
   付けられて独立の部材を構成するＶ溝型ガイド部
   ８と、 該Ｖ溝型ガイド部８の下面に着脱可能に取り付
   けられ、前記加工用ワイヤ電極１をガイドするダ
   イス型ガイド３と前記加工液給送手段１０と連通
   し前記ダイス型ガイド３を囲む開口を有する加工
   液噴射ノズル１２とが板状体１５に取り付けられ
   て独立の部材を構成するダイス型ガイド部１１と
   よりなるワイヤカツト放電加工用ワイヤ電極ガイ
   ド装置。 ２ 加工用ワイヤ電極１をガイドするＶ溝型ガイ
   ド２と加工液給送手段１０とが板状体８１に取り
   付けられて独立の部材を構成するＶ溝型ガイド部
   ８と、 該Ｖ溝型ガイド部８の下面に着脱可能に取り付
   けられ、前記加工用ワイヤ電極１の導出口と前記
   加工液給送手段１０と連通する加工液噴射ノズル
   とを兼ねる開口１４を有して独立の部材を構成す
   る加工液ノズル部１３とよりなる、ワイヤカツト
   放電加工用ワイヤ電極ガイド装置。