JPS6240878Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、船舶の推進用スクリユープロペラの
推進効率を向上させるため船尾部に設けられるリ
アクシヨンフインの改良に関する。

一般にスクリユープロペラの後方には、プロペ
ラ回転と同じ向きの回転流が残るが、プロペラ前
方にリアクシヨンフインを設置してあらかじめ、
プロペラ軸回転流と逆向きの回転流を与えておけ
ば、プロペラ後流の回転エネルギーが減少し、そ
の分だけ推進効率を向上させることができる。

従来のリアクシヨンフインの中には、プロペラ
回転流と逆向きの回転流を与え、さらに、フイン
によつて乱されプロペラに流入する流れが極端に
不均一にならないように船体後方から見て右回り
プロペラの場合、右舷側フインの迎角（プロペラ
軸線に対する傾斜角）を大きくし、右舷側フイン
のプロペラ軸線に対する傾斜角を小さくして、フ
インボスに固着されているものが多い。

第１〜４図は従来のリアクシヨンフインを示
し、このうち第２図はリアクシヨンフインを船体
後方からみた図である。第１〜４図において、０
１は船尾部を示し、０２ａは上部スターンフレー
ム、０２ｂは下部スターンフレーム、０３はシユ
ーピースを示す。０４はプロペラ軸、０５はその
先端に装着されたスクリユープロペラである。

０６は船尾部にプロペラ軸０６を囲むように設
けられたフインボス、０７ａ〜０７ｃはフインボ
スから放射状に突設された複数個のフイン部材
で、このうち、０７ａはフインボス０６から上方
に垂直に配設された上部中央フイン部材で、その
前縁と上端は上部スターンフレーム０２ａに固着
され、０７ｂはフインボス０６から下方に垂直に
配設された下部中央フイン部材で、その前縁は下
部スターンフレーム０２ｂに、下端はシユーピー
ス０３に固着され、０７ｃはフインボス０６から
斜め又は水平方向に突設されたフイン部材であ
る。また第４図において、θはフイン部材のプロ
ペラ軸線０４ａに対する傾斜角（迎角）である。

第５図は右回りプロペラの船にリアクシヨンフ
インが設置されたときの、プロペラ作動中におけ
るプロペラ直前断面の流速分布を船体の後方から
見た図である。

第５図中の矢印は船の長手方向に直角な横断面
上の流速成分を表わし、カーブは進行方向成分の
等流速線を表わす。また０８は船体を左右対称に
垂直に分割する船体中心線、０９はプロペラ円で
ある。

このリアクシヨンフインの作用を右回りプロペ
ラの船舶の場合について説明する。

船内に設置された主機でプロペラ軸０４が回
り、プロペラ０５が回転して、船が前進すると船
尾部のプロペラ０５に流入する流れは、その前方
に設置されたフイン部材０７〜０７ｃによつて、
プロペラ回転方向と逆方向に変えられる。このと
きフイン部材の迎角θが不適当であつた場合は、
第５図に示すとおりプロペラに流入する流れは乱
され、流速変動が大きくなり、推進効率が向上し
ないだけでなく、プロペラ起振力やキヤビテーシ
ヨン発生の原因となる。

このようなことを防止するため、右舷側フイン
部材のプロペラ軸線に対する迎角θは左舷側フイ
ン部材の迎角θより大きくなつている。

しかるに、このように各フイン部材がフインボ
スに固着された従来のリアクシヨンフインは次の
ような欠点をもつ。

ア 右舷側フインと左舷側フインの最適な迎角の
設定には、あらかじめ相似模型船を作り水槽試
験により調査する必要があるが、そのためには
多大な費用と期間が必要である。

イ 船の載荷状態（例えば満載状態や軽荷状態
等）の違いによつて船尾部プロペラ付近の流場
は異なるので、双方の状態とも満足できる最適
なフイン部材の迎角は設定できない。

本考案は、上記欠点を解消し、各フイン部材の
迎角を自由に設定できるようなリアクシヨンフイ
ンを提案するもので、船尾のスクリユープロペラ
前方でプロペラ軸を囲むフインボスから複数個の
フイン部材を放射状に突設したリアクシヨンフイ
ンにおいて、前部フインボスの内部又はその付近
に一端が駆動装置に連結された複数本の回動軸を
円周方向に互いに間隔をおいて、かつ回動可能に
設け、前記各フイン部材をフイン軸によつて回動
可能に支持せしめ、前記回動軸の回動運動を同フ
イン軸に伝達せしめて各フイン部材の迎角を個別
に独立して変え得るようにし、さらに各フイン部
材の上流側に向けられた面に圧力センサを設け、
且つ同圧センサの信号にもとづき前記駆動装置を
制御するようにしたことを特長とする可変迎角リ
アクシヨンフインを提供する。

本考案装置においては、前記構成により各フイ
ン部材の迎角（プロペラ軸線に対する傾斜角）を
個別にしかも任意に変えることができるので、各
フイン部材の迎角を常に最適な状態に設定でき、
これによつて推進用スクリユープロペラに流入す
る流れを効果的に整流し、推進効率を一層向上さ
せるとともに、プロペラ起振力やキヤビテーシヨ
ンの発生を効果的に防止できる。

さらに各フイン部材の上流側に向けられた面に
設けられた圧力センサによりフイン部材に加わる
圧力を検出し、その検出値に基いてフイン部材を
最適迎角に設定できるので、従来のように相似模
型船による調査を必要とせず、リアクシヨンフイ
ンの製作が従来よりはるかに安価かつ短期間で可
能となる。

次に本考案装置の一実施例を図面に基づいて説
明する。

第６図及び第７図において、１は船尾部、３は
シユーピース、４はプロペラ軸で、前端は図示し
ない船内の主機に連結され、後端は推進用スクリ
ユープロペラ５が装着されている。６はスターン
フレームにプロペラ軸４を囲むように設けられた
フインボスで、フインボス６から上部中央フイン
部材７ａ、下部中央部材フイン７ｂ及びその他の
フイン部材７ｃが放射状に突設されている。

１０は、前端が船内に設けられた図示しない回
動駆動装置に連結され、後端がフインボス６の内
部に装着されかつ、ウオームギア１３が取りつけ
られた複数本の回動軸で、これら回動軸はプロペ
ラ軸６を囲んで互いに間隔をおいて配設されてい
る。１１はフイン部材７ｃに取りつけられフイン
部材７ｃをプロペラ軸線に対して垂直な軸線を中
心に回動可能に支持するフイン軸で、フイン軸１
１のフインボス６内に埋設された一端には、ウオ
ームギア１３と噛み合うウオームホイル１２が固
着されている。１４はフイン軸１１を貫通させフ
イン部材７ｃを支持する軸受孔である。

１５はフイン部材７ｃの上流側に向けられた面
に固着された圧力センサで、フイン部材の内部に
埋設された電線を介して船内の図示しない増幅器
及び指示計に連結されている。なお圧力センサ１
５は、フイン部材表面に沿う流れを乱さないよう
にフイン部材と同一高さになるようフイン部材に
埋設されている。

なおこのようなフイン部材の迎角可変装置は、
フインボス６から斜め又は水平方向に突設された
フイン部材７ｃにのみ適用され、上下垂直方向に
突設された上部中央フイン部材７ａ及び下部中央
フイン部材７ｂには適用せず、これらフイン部材
７ａ，７ｂは第１〜４図に示す従来のリアクシヨ
ンフインと同様に上部スターンフレーム及び下部
スターンフレーム等に固着しておく。この理由
は、これらフイン部材をスターンフレーム等に固
着させずに回動可能にすると、リアクシヨンフイ
ンの船尾部への取付強度が不足するとともに、こ
れらを回動させるとスターンフレームとの位置関
係からかえつてプロペラ付近の流れが複雑になる
からである。

次に本装置の作用効果を説明する。まずスクリ
ユープロペラ５が回つて船体が航走すると、フイ
ン部材７ｃに水圧が加わる。従つてフイン部材７
ｃの上流側に向けられた面に設けられた圧力セン
サ１５にも同様の水圧が加わるので、その水圧の
大きさは圧力センサ１５に検出されて船内に設け
られた増幅器に伝送された電気的に変換増幅され
て、さらに指示計に表示される。一方船内に設け
られた図示しない回動駆動装置を作動させて各回
動軸１０を回動させ、これによつてウオームギア
１３及びこれと噛み合うウオームホイル１２が回
り、さらにウオームホイル１３と一体に固着され
たフイン軸１１が回動しフイン部材７ｃの迎角が
変えられる。

従つて指示計に表示される水圧をモニタしなが
らフイン部材７ｃを回動させて最適迎角を設定す
る。

このようにして、上部中央フイン部材７ａ及び
下部中央フイン部材７ｂを除くすべてのフイン部
材の迎角を任意に変え、各フイン部材の迎角を常
に最適な状態に設定できる。

従つて、本装置は、次のような多くの長所をも
つ。

ア 船の載荷状態の違いによつて船尾部プロペラ
付近の流場は異なるので、フイン部材の最適な
角も異なるが、本装置では、フイン部材の迎角
をそれに応じて変更することができ、常に最適
な状態で使用できる。また各船ごとに相似模型
船による調査を要しないので、リアクシヨンフ
インを安価かつ短期間で製作できる。

イ フイン部材は位置（例えば左舷側や、右舷
側、上側や下側など）によつても最適な迎角は
異なるが、本装置では、必要に応じてフイン部
材の迎角を自由に設定でき、各位置での最適な
迎角を設定できる。

ウ 船型の異なる他の船舶にも使用できる。

【図面の簡単な説明】

第１〜４図は従来のリアクシヨンフインを示
し、このうち第１図はリアクシヨンフインを設け
た船尾部の縦断右側面図、第２図は第３図中の
−線に沿う横断立面図、第３図は第２図中の
−線に沿う縦断平面図、第４図は第３図中の
−線に沿う縦断左側面図、第５図は叙上の装置
が設置された場合におけるプロペラ直前断面の流
速分布図、第６図は本考案装置の一実施例を示す
船体前方からみた横断立面図、第７図は第６図中
の−線に沿う縦断平面図である。 ０１，１……船尾部、０２ａ……上部スターン
フレーム、０２ｂ……下部スターンフレーム、０
３，３……シユーピース、０４，４……プロペラ
軸、０４ａ……プロペラ軸線、０５，５……スク
リユープロペラ、０６，６……フインボス、０７
ａ，７ａ，０７ｂ，７ｂ，０７ｃ，７ｃ……フイ
ン部材、１０……回動軸、１１……フイン軸、１
２……ウオームホイル、１３……ウオームギア、
１５……圧力センサ。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 船尾のスクリユープロペラ前方でプロペラ軸を
   囲むフインボスから複数個のフイン部材を放射状
   に突設したリアクシヨンフインにおいて、前記フ
   インボスの内部又はその付近に一端が駆動装置に
   連絡された複数本の回動軸を円周方向に互いに間
   隔をおいてかつ回動可能に設け、前記各フイン部
   材をフイン軸によつて回動可能に支持せしめ、前
   記回動軸の回動運動を同フイン軸に伝達せしめて
   各フイン部材の迎角を個別に独立して変え得るよ
   うにし、さらに各フイン部材の上流側に向けられ
   た面に圧力センサを設け、且つ同圧力センサの信
   号にもとづき前記駆動装置を制御するようにした
   ことを特長とする可変迎角リアクシヨンフイン。