JPS6235554B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 技術分野 本発明はトラクタのトランスミツシヨンすなわ
ち伝動装置の潤滑装置に関し、特に、トラクタの
伝動装置内の前方差動歯車装置の潤滑装置に関す
る。

技術的背景 従来、前方差動歯車装置の潤滑装置は全体とし
て、伝動装置の他の部分から独立していた。前方
差動歯車は大気に通気され且つそれ自体の特別な
潤滑油が用いられ、当該差動歯車装置と該装置に
隣接した最終的駆動室との潤滑油は同じ液面高さ
にされていた。

しかし、この型式の潤滑装置には多くの問題が
あることが知られていた。

その一つの大きな問題は、最終駆動室において
は、該室の底部から一定高さ位置にある歯車の潤
滑を行うため、その歯車のある位置に液面を保持
しなければならないのに対し、差動装置では、そ
の歯車の一部は当該装置の底部近くにあるので、
低に液面で操作できる。しかし、従来装置では、
当該差動歯車は上記の如く最終駆動歯車と同じ高
い液面の潤滑油の中で動かされるので、非常に大
きな動力ロスを生じることになることである。

他の大きな問題は、前方差動歯車装置内の潤滑
油の乱れが、当然に広範な蓄熱を生じる。

他の問題は、潤滑油の乱れは他の部分よりも前
方差動歯車装置の操作温度を高くし、従つて当該
差動歯車装置内で使用される特別な潤滑油を必要
とした。この潤滑油はトラクタの伝動装置の他の
部分及び油圧システムで使われるものと相違し、
また、適当な液面にあるか否かを頻繁にチエツク
しなければならなかつた。

また、高速走行時には、当該差動歯車装置内の
潤滑油は、歯車の回転により生じる遠心力により
同装置の周辺部分に集められ、そのため、当該歯
車の中心部分には潤滑油が行き届かなくなる。

更に別の問題は、上述の通り、従来の潤滑装置
においては、差動装置内の潤滑油が他の潤滑装置
の潤滑油と相違しており、従つて２つの潤滑油が
混ざるのを防ぐため、精巧なシールを必要とする
ということである。

発明の目的 本発明は、上記の点に鑑み、差動歯車装置の潤
滑油の液面を従来のものに比べて、かなり低く設
定することができるようにし、それにより、上述
した従来の潤滑装置において生じていた問題を解
消した潤滑装置を提供することを目的とするもの
である。

発明の構成 すなわち、本発明に係る潤滑装置は、外気に通
気されている液溜と、歯車装置とを有する伝動装
置を備える車輌における潤滑装置であつて、その
基本的構成として、上記液溜に接続され、該液溜
から潤滑油と空気との混合物を吸収する入口と該
混合物を放出する出口とを有する潤滑油送給手段
と；該送給手段の出口に接続され、上記歯車装置
内に上記混合体を送る通路手段と；上記歯車装置
を外気から密封する手段と；歯車装置内の潤滑油
の液面を所定高さに制限するため、該所定とほぼ
同じ高さの位置で、歯車装置内に設定された入
口、及び、上記液溜に連通された出口を有し、歯
車装置内の潤滑油が同歯車装置内の空気圧力によ
り上記液溜に戻されるようにするオーバーフロー
リターン通路手段とを備えることを特徴としてい
る。

発明の作用及び効果 本発明に係る潤滑装置は、以上のごとく構成さ
れるものであり、歯車装置内の潤滑油の液面は、
それが一定高さ以上になると、同装置内の空気圧
により液溜に戻され、従つて、液面は常に上記一
定高さに保たれる。

従つて、前述した従来装置に於ける問題、すな
わち、歯車が液面の高い潤滑油の中で作動するこ
とによりエネルギロスが生じたり、また、そのた
めに当該潤滑油の温度が高くなるため、特別の潤
滑油を用いなければならないといつた問題を解消
することが出来る。

実施例 以下、本発明を添付図面に示した実施例に基づ
き詳細に説明する。

第１図にはヒンジ部１４によつて関接々続され
た前方部分１０と後方部分１２を有する４輪駆動
農業トラクタが示されている。前方部分１０は運
転室１６とエンジン１８とを有している。

エンジン１８はクラツチハウジング２０を介し
て動力をメーントランスミツシヨン２２及び前方
及び後方差動歯車装置２４，２６にそれぞれ伝達
する。

第２図には遠隔トランスミツシヨン潤滑装置が
示されており、この装置は液溜２８を収納するク
ラツチハウジング２０を有し、該液溜は大体15W
−30の重量の潤滑油（オイル）が充されている。
液溜２８のオイルの液面は３０で示されており、
取入フイルタ３２の一部が液面３０の上に露出さ
れている。クラツチハウジング内の空気は大気と
通じているクラツチハウジング通気管３４によつ
てメーントランスミツシヨンに接続されている。

取入フイルタ３２は取入管３６によつて（「上
記発明の構成」の項で述べた「潤滑油送給手段」
としての）流体ポンプ３８に接続されており、該
ポンプはフイルタ３２を通して約オイル60％、空
気40％のオイルと空気の混合体を吸引するように
なつている。ポンプ３８は出口管４０を介してオ
イル・空気混合体をメーントランスミツシヨン２
２に供給する。

所定の断面積を有する（上記「発明の構成」の
項で述べた「通路手段」としての）前方差動歯車
装置潤滑管４２が出口に接続され、オイル・空気
混合体の所定量を前方差動歯車装置２４に供給す
るようになつている。前方差動歯車装置２４はハ
ウジング４４を有し、該ハウジングはメーントラ
ンスミツシヨン２２からの駆動シヤフト５０を支
持するピニオンクイル（Pinion quill）内の環状
溝に接続された潤滑路４６を含む。

第３図には、前方差動歯車装置４４が示されて
おり、該装置は差動歯車室５６の内側に設けられ
た左右の最終駆動室５２，５４を有している。差
動歯車室５６内には、駆動シヤフト５０によつて
駆動されるピニオン５８が設けられ、該ピニオン
は差動歯車列６２の一部であるベベル歯車６０と
係合している。歯車列は左右の差動歯車６４，６
６を有し、これら歯車は、支持部材７０によつて
支持された参照番号６８によつて示される複数の
ピニオン歯車によつて係合されている。

図示の実施例では、支持部材７０は汎用の油圧
差動ロツク７２を有し、該ロツクは歯車６４，６
６をロツクして相互の相対的回転を防ぐため、
（図示しない）差動ロツク制御装置からの油圧の
伝達を可能とするロータリシール７４を必要とす
る。

左右の歯車のシヤフト７６，７８は歯車６６，
６４を貫通して設けられ、スプライン８０，８２
によつてそれらに係合されている。潤滑油を左右
の最終駆動室から左右の壁８４，８６を通してこ
の差動歯車列６２へ流すため、歯車６６，６４は
３個の等間隔のスプライン歯削除部分を有する。
それらの歯削除領域は左側の歯車６４上で８０
Ａ，８０Ｂ，８０Ｃで示されている。

左右の最終駆動室５２，５４は左右の潤滑油路
８８，９０からオイルが供給されるようになつて
おり、この潤滑油路はピニオンクイル４８上の環
状溝に接続され、前方差動歯車装置潤滑油管４２
からオイルを得るようになつている。オイルの粘
性が大きすぎて迅速にスプライン８０，８２を通
ることができない場合に、左右の最終駆動室５
２，５４からのオイルの通りを確実にするため、
左右の壁８４，８６にそれぞれ開口９２，９４が
設けられている。

左側壁８４にはバツフル９６が取り付けられ、
該バツフルにはオーバーフローリターン管９８が
設けられている。この管９８はバツフル９６から
ハウジング４４を通りクラツチハウジング２０へ
伸び、そこでオイルを液溜２８に戻す。

潤滑油は左右駆動室５２，５４にだけ直接供給
されるので、該室のオイルの液面はスプライン８
０の最も低い位置のレベル100からオイルが開口
９２，９４を越えてオバーフローするレベル104
の間となる。差動歯車室５６内では、オーバーフ
ローリターン管９８のため、オイルの液面は大体
１０２で示されたレベルとなる。

作動が始まる前の最期の段階では、クラツチハ
ウジング２０内のオイルの液面は番号３０で示さ
れるよりも上方であり、左右の最終駆動室間５
２，５４内のオイルの液面は100で示されるレベ
ルで、また、差動歯車室５６内のオイルの液面は
100と102によつて示されるレベルの間にある。

作動が始まると、クラツチハウジング２０内の
オイルの液面はポンプ３８の作用により急速にレ
ベル30の下になる。一度オイルのレベルがレベル
30より下ると、空気が通気管３４によつて吸引さ
れ、ポンプ３８が約60％のオイルと40％の空気オ
イル・空気混合物を取入フイルタ３２を通して吸
引する。混合体の大部分は主トランスミツシヨン
２２に供給され、その一部は管４２、潤滑油路４
６を通して左右の潤滑油路８８，９０に通され
る。

潤滑油路９０を通るオイルは右側の最終駆動室
５４に通され、右側の歯車６６の外、種々の歯車
を通つて差動歯車室５６に通される。

左側の潤滑油路８８を通るオイルは、左側最終
駆動室５２へ通されるが、差動歯車装置ロツク７
２のシールのため、支持部材７０を支持する軸受
を通ることはできない。従つて、歯車削除空間８
０Ａ，８０Ｂ，８０Ｃを通つて一部のオイルが左
側歯車６４を通るが、オイルのレベルは104で示
されたレベルに向う。オイルがレベル104に達す
ると、開口８２を通つて室５６に入る。

オイル・空気混合体が左右の最終駆動室５２，
５４に入るとすぐ、空気とオイルとは分離を始
め、差動歯車装置ハウジング４４内の空気圧が増
大し始める。開口９２，９４は差動歯車室５６と
左右の最終駆動歯車室５２，５４との間の空気圧
を均等化する。空気圧が増大すると、室５６内の
オイルがバツフル内に圧入され、オーバーフロー
リターン管９８を通して液溜２８に戻され、室５
６内のオイルの液面レベルをレベル102へ下げ
る。

操作に際しては、ポンプ３８により液溜２８か
ら取られたオイル・空気混合体は、潤滑油管４２
を通され、左右の最終駆動室５２，５４に入り、
その中の歯車を潤滑する。これら空所内のオイル
の液面レベルがレベル100よりも高くなるので、
オイルはシヤフト７６，７８の中心に沿つて通
り、差動歯車列６２を中心から潤滑し、その全て
のオイルが歯車から遠心分離することはできない
ように、すなわち、常に中心から歯車外方へ流れ
るオイルがあるようにする。

トラクタの速度が速くなるに従い、室５６内の
オイルは、ベベル歯車６０のスピードのため次第
に乱されてくる。バツフル９６は、オーバーフロ
ーリターン管９８の入口のまわりに設定され、該
管内に導入されるオイルが、バツフルの周りでの
上記オイルの乱れに余り影響されることがないよ
うにする。

クラツチハウジング２０へのオイルは通常の車
輌冷却システム（図示せず）によつて大体冷却さ
れるので、冷却オイルがコンスタントに前方差動
歯車装置２４に循環される。

操作の間、全体の遠隔トランスミツシヨン潤滑
システムは、オイル・空気混合体による前方差動
装置２４へ供給される空気が、室５６内のオイル
のレベル102及び室５２，５４内のオイルレベル
100・104間の高いオイルレベルを維持する傾向が
あるという点において自己整潤滑システムとな
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本発明に係る潤滑システムを組み入
れた四輪駆動トラクタの側面図；第２図は本発明
の潤滑システムの一部切欠側面図；第３図は本発
明に係る潤滑システムが組み込まれた差動歯車装
置の一部切欠平面図；である。 ２４……歯車装置；２８……液溜；３８……潤
滑油送給手段（ポンプ）；４２……通路手段；９
８……オーバーフローリターン通路手段。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 外気に通気されている液溜と、歯車装置とを
   有する伝動装置を備える車輌における潤滑装置に
   おいて： 上記液溜に接続され、該液溜から潤滑油と空気
   との混合物を吸収する入口と、該混合物を放出す
   る出口とを有する潤滑油送給手段と； 該送給手段の出口に接続され、上記歯車装置内
   に上記混合体を送る通路手段と； 上記歯車装置を外気から密封する手段と； 歯車装置内の潤滑油の液面を所定高さに制限す
   るため、該所定高さとほぼ同じ高さの位置で、歯
   車装置内に設定された入口、及び、上記液溜に連
   通された出口を有し、歯車装置内の潤滑油が同歯
   車装置内の空気圧力により上記液溜に戻されるよ
   うにするオーバーフローリターン通路手段と、を
   備える潤滑装置。 ２ 上記歯車装置が、上記所定の高さより上に開
   口の設けられた壁によつて分離され、それぞれ歯
   車を含む第１及び第２の空所を有し、上記通路手
   段が第２の空所に接続され、上記オーバーフロー
   リターン通路手段が第１空所に接続配置されてお
   り、それにより、第２空所内の潤滑油液面が第１
   空所内より高くなるようにした特許請求の範囲第
   １項に記載の潤滑装置。 ３ 上記開口を通り、それにより支持されて伸び
   るシヤフトを有し、該シヤフトにはそれぞれ第１
   及び第２空所内に配置された第１及び第２の歯車
   が支持され、第１の歯車にはその中に第２の空所
   から第１の空所へ潤滑油を通して第１の歯車を潤
   滑するための通路が設けられている特許請求の範
   囲第２項に記載の潤滑装置。 ４ 上記壁が、上記第２空所内の潤滑油の液面高
   さを、上記所定高さより上方の第２の所定高さに
   制限するため、上記開口より上方に他の開口を設
   けている特許請求の範囲第３項に記載の潤滑装
   置。 ５ 外気と通じる液溜が内部に設けられているク
   ラツチハウジングを有するトランスミツシヨン
   と、該ハウジングから離れた第１の差動歯車ハウ
   ジングと、該差動歯車ハウジング及び上記クラツ
   チハウジングから離された第２差動歯車ハウジン
   グを有するメーントランスミツシヨンとを備える
   車輌における潤滑装置であつて： 上記クラツチハウジング内に設けられ、液溜か
   ら潤滑油と空気との混合体を取り入れる入口、及
   び、この混合体をメーントランスミツシヨンに放
   出するための出口を有するポンプと； 該ポンプと第１差動歯車ハウジングとに接続さ
   れ、上記混合体の所定の量を第１差動歯車ハウジ
   ングに送る所定寸法の通路手段と； 第１差動歯車ハウジングを外気から遮断し、該
   ハウジングから空気が洩れるのを防ぐ密封手段
   と； 第１差動歯車ハウジングを上記クラツチハウジ
   ングに接続するオーバーフローリターン路で、第
   １差動歯車ハウジング内の潤滑油が所定の高さ以
   上になると潤滑油を受け入れる入口を有し、当該
   第１差動歯車ハウジング内の空気圧の下、潤滑油
   を上記液溜に戻し、当該潤滑油の液面を上記所定
   高さに制限するためのオーバーフローリターン路
   と；を備える潤滑装置。 ６ 上記第１差動歯車ハウジングが、両側に第１
   及び第２最終駆動空所を備え、それぞれ上記所定
   高さより上方位置に第１及び第２開口を有する第
   １及び第２壁によつて上記空所から分離されてい
   る第１差動歯車空所を有し；上記通路手段が、そ
   れぞれ第１及び第２最終駆動空所に接続された上
   記第１差動歯車ハウジングに穿設されている第１
   及び第２の通路手段と接続され；上記オーバーフ
   ローリターン路の入口が第１差動歯車空所内に配
   置されたバツフル手段に接続されている特許請求
   の範囲第５項に記載の潤滑装置。 ７ 上記差動歯車ハウジングは、差動歯車装置を
   有し、該装置は、上記第１及び第２開口を通り支
   持されている第１及び第２シヤフト上にそれぞれ
   配置された第１及び第２歯車を有し、この第１及
   び第２歯車はそれぞれ上記第１及び第２最終駆動
   空所から差動歯車空所に潤滑油を通す手段が設け
   られている特許請求の範囲第６項に記載の潤滑装
   置。 ８ 上記第１及び第２の壁が、それぞれ第１及び
   第２最終駆動空所内の潤滑油の液面高さを上記所
   定高さより高い所定高さに制限するため、上記開
   口より上方の位置に第３及び第４の開口を有して
   いる特許請求の範囲第７項に記載の潤滑装置。