JPS6232129Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、車両等のブレーキ或はクラツチ装置
等において使用されるマスタシリンダに関するも
のである。

従来より、この種のマスタシリンダとして、シ
リンダ孔を穿設した本体と、前記シリンダ孔に摺
動自在に挿入して液圧室を区画するピストンと、
該ピストンに装着され前記液圧室に対する密封を
行う密封部材とを備え、前記シリンダ本体を合成
樹脂製材料から作成したものが知られており、更
に、シリンダ本体の強度不足を補うため、シリン
ダ孔内壁全部を、金属製の長いスリーブを一体に
塑造することも行なわれる。

ところが、シリンダ孔内壁全体をスリーブにて
形成すると、マスタシリンダ全体が重くなるとい
う問題がある。

さらに、シリンダ本体に対するスリーブの抜止
めを施すことが必要になるが、そのために、スリ
ーブの外周にシリンダ本体内周と互いに係合する
凹凸を設けたり、あるいは、抜止め用部材を別途
設け、それをシリンダ本体に取付けたりするので
は、マスタシリンダの構造が複雑になるという問
題がある。

本考案は、上記問題に鑑み成されたものであつ
て、軽量化可能であり、簡単な構造でスリーブの
抜止めを施せるマスタシリンダを提供することを
目的とする。

本考案は、上記目的を達成するために、前記ス
リーブは、前記密封部材の摺動部分及び前記液圧
室を形成するシリンダ孔内壁部分に挿入される筒
部と、前記端壁と対向して前記シリンダ孔の径内
方に延びる縁部とを有し、前記配管接続部を、前
記スリーブの内方から前記縁部に係合するととも
に前記端壁を貫通して前記本体の外部に突出し液
通路を形成された止め具と、該止め具を前記本体
に対してその外部で固定する配管接続具とにより
構成して成るものである。

こうすることにより、スリーブをシリンダ孔に
挿入した後、スリーブに嵌入した止め具を本体外
部で配管接続具により固定すると、スリーブの縁
部が止め具と端壁との間で挟圧されて、スリーブ
は、マスタシリンダの作動時に圧力が加わる液圧
室の部分にだけ配設されて抜止めを施され、しつ
かりと固定される。

このように本考案によれば、スリーブを必要最
小限短縮して、マスタシリンダの軽量化を可能に
することができるのみならず、スリーブの抜止め
のために、配管接続部を構成する止め具と配管接
続具とを利用しているので、マスタシリンダの構
造が複雑にならないという効果を奏する。

以下、図例に基いて本考案のマスタシリンダに
ついて詳説する。

第１図は、本考案の一実施例であるクラツチ用
マスタシリンダの側断面図である。

図において、マスタシリンダは、全体として１
で示され、このマスタシリンダ１は、段付孔２を
形成した合成樹脂製のシリンダ本体３を有してい
る。

前記段付孔２は、小径孔４と大径孔５とを段部
６を介して連設しており、小径孔４の段部６側端
部の上部には、溝７が形成してあり、この溝７
は、小孔８を通してシリンダ本体３に一体形成し
た液溜９の内部空間に連通しているとともに、大
径孔５に連絡している。大径孔５は、小孔８に近
接して段部６の右側に形成した孔１０を通して液
溜９内部に連絡している。

段付孔２の小径孔４内には、ほぼ隙間なく円筒
状のスリーブ１１が挿入されており、このスリー
ブ１１の右端は段部６に係合する円錐部１２とさ
れているとともに、円錐部１２の一部を径方向外
方に屈折させて前記溝７に嵌合する爪１３を形成
してあり、爪１３が溝７に嵌合した状態でスリー
ブ１１内部を溝７に連絡する戻し孔１４が爪１３
のやや前方に形成してある。また、スリーブ１１
の左端には、孔を中央部に穿設した底部１５が形
成してあり、この底部１５の孔及び該孔に整列し
てシリンダ本体３に穿設した孔１６を貫通する軸
部分を有するボルト状の止め具１７の大径部をス
リーブ１１に内嵌させ、かつ、止め具１７の突出
端にナツト状の配管接続具１８を、止め具１７の
段部１９に当接するまで螺着し、底部１５の孔外
周の縁部となる部分を止め具１７の大径部とシリ
ンダ本体３との間で挟圧することによつて、スリ
ーブ１１が小径４孔から抜け出るのを防止してい
る。なお、２０，２１は、Ｏリングである。

こうした段付孔２の小径孔４と大径孔５とにま
たがつて段付ピストン２２が移動可能に挿入して
あり、小径孔４内に圧力室２３を、大径孔５内に
補給室２４を各々区画している。

段付ピストン２２の左方端部には、スリーブ１
１内周面を摺動するフランジ２５が形成してあ
り、このフランジ２５の左方側に隣接して昇圧用
のリツプシール２６が装着してある。このリツプ
シール２６は、段部２７に係合して配置した押え
２８と、この押え２８と止め具１７との間に張設
した戻しばね２９の張力とによつて脱落を防止す
るようにされている。すなわち、ピストン２２の
左方端部は、フランジ２５から左方に向けて順次
小径となるような形状とされており、リツプシー
ル２６がその中間径部分に抜け止めを施して装着
してある。

他方、ピストン２２の左右端部には、大径孔５
の内周面を摺動するフランジ３０を形成してある
とともに、このフランジ３０の右方側に隣設した
減径部３１に液漏れ防止用のトリプルリツプ型の
リツプシール３２が装着されている。このリツプ
シール３２は、ピストン２２の後端中央部に形成
した凹所３３に挿入固定した当接板３４のフラン
ジ部３５によつて支持され、抜けを防止されてい
る。すなわち、ピストン２２の後端部においても
フランジ３０から右方に順次小径となるように
し、その小径部分にリツプシール３２を抜け止め
を施して装着してある。なお、当接板３４は、ピ
ストン２２に対して、圧入、接着等によりピスト
ン２２にピストン２２の塑造後に一体化してい
る。

更に、ピストン２２の中間部分は、大きく減肉
されており、周方向に適当な間隔をもつてリム３
６を多数個形成してある。

シリンダ本体３の右端部には、コツプ状を呈す
るストツパ３７が抜止めを施して外嵌してあり、
このストツパ３７に前記ピストン２２の当接板３
４のフランジ部３５が当接可能となつている。ま
た、シリンダ本体３の右端外周には、取付孔３８
を穿設したフランジ３９が設けてある。

その他、第１図において、４０はクラツチペダ
ル（図示せず）に連動するプツシユロツド、４１
は、防塵用のプーツ、４２は、補強板を各々示し
ており、圧力室３２は、図示しない配管の端部
を、シリンダ本体３外部に突出する止め具１７の
テーパ状端面に、配管接続具１８に螺着される図
示しないフレアナツトによつて周知の如く圧接さ
せて固定し、そうした配管を介して、図示しない
クラツチオペレイテイングシリンダに接続してあ
る。

以上の例の作用等について以下に記す。

今、クラツチペダルを踏み込んでいないとする
と、ピストン２２は、戻しばね２９の張力により
右方に押圧されて当接板３４を介してストツパ３
７に当接する位置にあり、従つて、リツプシール
２６が戻し孔１４のやや右方側に位置し、圧力室
２３が戻し孔１４、溝７、小孔８を介して液溜９
内に連通して圧力が解放されている。

こうした状態で、プツシユロツド４０により、
戻しばね２９の張力に抗してピストン２２を左方
に押圧すると、リツプシール２６により戻し孔１
４がふさがれ、圧力室２３内に圧力が発生し始め
る。次いで、更にピストン２２を左方に押圧する
と、圧力室２３内に高圧が発生して、クラツチオ
ペレイテイングシリンダに充分高い圧力が伝達さ
れる。

必要な操作を終了し、プツシユロツド４０によ
りピストン２２を押圧する作用力を徐々に減少す
ると、ピストン２２が徐々に右方に移動するとと
もに、圧力室２３内の圧力が低下してくる。その
後、ピストン２２が充分に後退し、ストツパ３７
に当接するまで戻ると、上述の如きクラツチペダ
ルを踏み込んでいないときと同様の状態となり、
圧力室２３内の圧力は解放される。

こうした一連の操作において、圧力室２３には
高圧が発生し、この液圧によつて各部が変形しよ
うとするが、スリーブ１１によりその変形を阻止
され、不具合は発生しない。更に、スリーブ１１
は小径孔４内にのみ配置されるから、軸方向長さ
を短かくして軽量化が可能である。またスリーブ
１１は、溝７と爪１３とにより回り止めを施さ
れ、かつ、止め具１７と配管接続具１８とにより
抜け止めを施されるため、しつかり固定されると
ともに、戻し孔１４の位置を所定の位置に正確に
位置決め出来かつ圧力室２３内の残存空気は、液
溜９内に自然移動可能である。さらにまた、スリ
ーブ１１の抜止めは、マスタシリンダ１に配管を
接続するため止め具１７と配管接続具１８とを利
用して施しているので、スリーブの抜止めのため
に、スリーブ１１の外周に凹凸を形成したり、別
途部材を用いる必要がなく、マスタシリンダ１の
構造が複雑にならない。

更に、ピストン２２は、フランジ２５，３０か
ら端部に向けて順次小径となるようにし、かつ、
リツプシールを減径された部分に装着するように
しているから、ピストン２２の塑造時に、リツプ
シール２６，３２を装着する部分（シール面）に
パーテイングライン（型合せ部分に生ずる線状の
小突起）が生じないように塑造出来、密封性能を
向上する。すなわち、リツプシール２６，３２を
装着する部分を、ピストン２２の軸方向に沿つて
離型させることによつて形成できるため、両方向
にパーテイングラインが生じても軸方向には生じ
ない（なお、ピストンの中間部分において軸方向
に生じても特に問題はない。）。

以上の如く、上述の実施例によれば、種々の効
果を奏するが、本考案は、図例に限定されること
なく実施可能である。

すなわち、タンデムマスタシリンダとする例、
マスタシリンダをセンタバルブ型等の異なる型式
とする例、ピストンを金属性とする例、スリーブ
を予めシリンダ本体と一体塑造する例、スリーブ
の回止めとして、底部に爪を形成しこの爪を段付
孔底部に凹所に嵌合する例、等々挙げられ、これ
らの例以外でも種々変更が可能である。

以上の説明から明らかな如く、本考案によれ
ば、軽量化可能であり、簡単な構造でスリーブを
確実に固定できるマスタシリンダが得られるもの
である。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本考案の一実施例であるクラツチ用
マスタシリンダの側断面図である。 １……マスタシリンダ、２……段付孔、１１…
…スリーブ、１７……止め具、１８……配管接続
具、２３……圧力室、２６……リツプシール。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. シリンダ孔を穿設した合成樹脂製の本体と、前
   記シリンダ孔に摺動自在に挿入され前記シリンダ
   孔の端壁との間に液圧室を区画するピストンと、
   該ピストンに装着され前記液圧室に対する密封を
   行う密封部材と、前記端壁に設けられ前記液圧室
   を作動器に連絡する配管が接続される配管接続部
   とを備え、前記シリンダ孔内に金属製のスリーブ
   を挿入したマスタシリンダにおいて、前記スリー
   ブは、前記密封部材の摺動部分及び前記液圧室を
   形成するシリンダ孔内壁部分に挿入される筒部
   と、前記端壁と対向して前記シリンダ孔の径内方
   に延びる縁部とを有し、前記配管接続部を、前記
   スリーブの内方から前記縁部に係合するとともに
   前記端壁を貫通して前記本体の外部に突出し液通
   路を形成された止め具と、該止め具を前記本体に
   対してその外部で固定する配管接続具とにより構
   成して成るマスタシリンダ。