JPS6230585Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案はデイスクの両面に対向して配置した摩
擦パツドを跨ぎ、一方の摩擦パツドの背面を押圧
する押圧手段を備えたインナ部と他方の摩擦パツ
ドの背面に当接するアウタ部とを有するキヤリパ
のデイスク回入側とデイスク回出側のピン取付部
に、摺動ピンをデイスク軸方向と平行に取付け、
この摺動ピンをブラケツトに設けた支持孔に摺動
可能に嵌挿し、前記押圧手段が一方の摩擦パツド
を押動する反力によつてキヤリパがデイスク軸方
向へ移動し、これにより前記アウタ部が他方の摩
擦パツドを押して制動する車両用デイスクブレー
キ装置に関するものである。

この種のデイスクブレーキ装置において、キヤ
リパのデイスク回入側およびデイスク回出側のピ
ン取付部に固定された摺動ピンは、ブラケツトの
支持孔に、弾性ブツシユを介して密合され、キヤ
リパの振動耐久性を保障するとともに制動トルク
によるブラケツトの撓みに摺動ピンが影響される
ことがなく円滑に摺動することができるように工
夫されている。

しかし、このようにしてもブラケツトの撓みに
より弾性ブツシユの一側部が摺動ピンと支持孔間
で圧縮され、摺動ピンが固着するステイツク現象
の発生は完全に防止することができず、デイスク
回出側のピン取付部にはデイスク側に小さく、非
デイスク側に大きな不均等な引張力が生じ、一方
デイスク回入側のピン取付部にはデイスク側に大
きな引張力が、非デイスク側に圧縮力が生じてキ
ヤリパはこの固着点を中心として回動し、摩擦パ
ツドが偏摩耗したり、摺動ピンの摺動抵抗が増加
することは取り除くことができず、円滑かつ確実
な制動力を保障することができない等の問題点が
あつた。

本考案はかかる実情を背景にしてなされたもの
で、キヤリパのデイスク回入側ピン取付部にデイ
スク回入方向を開口して半円状のデイスク回出側
側壁とその側壁に連続する上下壁を有するピン嵌
合溝を形成し、該ピン嵌合溝に前記デイスク回入
側の摺動ピンの円柱状基部を摺動可能に密接嵌合
するとともに、デイスク回入側のピン取付部に基
部を固定した板状の弾性係止部材の中央部に屈曲
形成した押圧部を前記摺動ピンの円柱状基部のデ
イスク回入側に当接させて、該円柱状基部を前記
ピン嵌合溝の半円状側壁に押圧してピン嵌合溝に
圧接せしめ、キヤリパをデイスク回転方向へのみ
移動可能に弾性支持したことを特徴とし、その目
的とするところは、キヤリパがブラケツトの制動
トルクによる撓みに円滑に追従してデイスク回転
方向へ移動し、摺動ピンとのステイツク現象が皆
無となり摺動ピンが支持孔内を円滑に摺動し、こ
れにより偏摩耗や制動不良等が生ずることなく常
に安定かつ確実な制動を保障することができると
ともに、制動トルクによるキヤリパの浮き上りが
防止され、しかも摩擦パツドの交換の際に一方の
摺動ピンを取り外してデイスク回入側の摺動ピン
を支点として回転してもキヤリパの回転力にはこ
の摺動ピンに伝達されず摺動ピンとブラケツト間
に設けたダストブーツが破損したり離脱すること
がない前記車両用デイスクブレーキ装置を提供す
るにある。

以下、図面により本考案の一実施例を説明す
る。

１は車輪と一体に回転するデイスク、２はこの
デイスク１の一側に隣接して配置されるブラケツ
トで、その下部の取付孔３，３を介して車体（図
示せず）に固定される。このブラケツト２はデイ
スク１の周方向間に隔置される左右一対の支持腕
４，５を有し、これらはデイスク１の外周部を跨
いでいる。６，７はこの支持腕４，５の相対向面
に突設された案内レールで、デイスク１の両側に
配置される一対の摩擦パツド８，９の裏板８ａ，
９ａの両端をそれぞれデイスク１の軸方向に摺動
可能に支持している。

１０はインナ部１１とアウタ部１２とを有する
キヤリパで、デイスク１とその両側に配置された
両摩擦パツド８，９とを跨ぐように配置され、イ
ンナ部１１はマスタシリンダ（図示せず）に連通
する液圧シリンダ１３を備え、これにインナ側の
摩擦パツド８をデイスク１に対して押圧するピス
トン１４を収容している。一方アウタ部１２は他
方の摩擦パツド９の背面に当接している。

そして、このキヤリパ１０はインナ部１１のデ
イスク回入側とデイスク回出側にピン取付部１
５，１６が一体に突設され、このデイスク回出側
のピン取付部１６はブラケツト２の支持腕５に形
成された支持孔５ａにデイスク軸方向に摺動自在
に嵌挿されている摺動ピン１７に締付ボルト１８
により締付固定されている。

一方デイスク回入側のピン取付部１５にはピン
嵌合溝１９がデイスク回入方向を開口し、そのデ
イスク回出側の側壁１９ａを半円状にして形成さ
れており、ブラケツト２の支持腕４に形成された
支持孔４ａにデイスク軸方向に摺動自在に嵌挿し
た摺動ピン２０の円柱状基部２０ａがこのピン嵌
合溝１９に摺動自在に密接嵌合している。

２１は板状の弾性係止部材で、その両基部２１
ａ，２１ａをビス２２，２２によつてデイスク回
入側のピン取付部１５の上下に固定され、中間に
屈曲形成した押圧部２１ｂがピン嵌合溝１９に侵
入して円柱状基部２０ａをデイスク回出側へ押圧
し、円柱状基部２０ａを常にピン嵌合溝１９の半
円状の側壁１９ａに圧接している。

これにより、デイスク回入側のピン取付部１５
は摺動ピン２０の円柱状基部２０ａに摺動自在で
デイスク回転方向へのみ移動できるように支持さ
れているので、キヤリパ１０は制動時にブラケツ
ト２のデイスク回出側の支持腕５の撓みに摺動ピ
ン１７を介して追従することができ、デイスク回
転方向へ移動する。このとき、デイスク回入側の
ピン取付部１５には弾性係止部材２１による一定
のスプリング荷重がかかつているのみであるか
ら、大きな引つ張り力は生じない。

２３は摺動ピン２０の円柱状基部２０ａ端に固
定したピン抜け止め用のクリツプ、２４はデイス
ク回入側の摺動ピン２０と支持腕４との間に、２
５はデイスク回出側の摺動ピン１７と支持腕５と
の間に設けられたダストブーツである。

次に、この実施例の作用を説明する。マスタシ
リンダ（図示せず）を操作して液圧シリンダ１３
に圧液を供給すると、その液圧によつてピストン
１４が前進して摩擦パツド８をデイスク１の一側
面に圧接する。これと同時にその反作用によつて
キヤリパ１０が両摺動ピン１７，２０を支持孔５
ａ，４ａに沿つて摺動させながらピストン１４の
動きと反対方向へ作動し、アウタ部１２が他方の
摩擦パツド９をデイスク１の他側面に圧接する。
このようにデイスク１は両側面に摩擦パツド８，
９より等しい摩擦力を受けて制動され、摩擦パツ
ド８，９がデイスク１より受ける制動トルクはデ
イスク回出側の支持腕５によつて支承される。

この制動トルクを支承することによつて支持腕
５がデイスク１の回転方向へ撓みを生じ、これに
より摺動ピン１７がデイスク回転方向へ移動して
キヤリパ１０をピン取付部１６を介してデイスク
回転方向へ引つ張る。

このとき、デイスク回入側のピン取付部１５は
摺動ピン２０の円柱状基部２０ａに摺動自在でデ
イスク回転方向へのみ移動可能に嵌合し弾性係止
部材２１で弾性支持されているので、弾性係止部
材２１の押圧部２１ｂはデイスク回入側へ撓みデ
イスク回入側のピン取付部１５には引つ張り力は
生ぜず、キヤリパ１０はデイスク回出側の支持腕
５の撓みに追従して移動する。

したがつて、両摺動ピン１７，２０は共に制動
トルクから解放され制動中でも支持孔５ａ，４ａ
内を円滑に摺動することができ、キヤリパ１０は
ピストン１４の作動反力に的確に応動して両摩擦
パツド８，９に常に等しい押圧力を効率よく与え
ることができる。

また、この制動時にキヤリパ１０のデイスク回
入側に生ずる浮き上りはピン嵌合溝１９の上壁１
９ｂと下壁１９ｃとに密接して嵌合されている摺
動ピン２０の円柱状基部２０ａによつて確実に規
制される。

そして、制動を解除すると撓んでいるデイスク
回出側の支持腕５は原形に復帰し、これに伴いキ
ヤリパ１０も摺動ピン１７を介してデイスク回出
側へ移動して元の位置に復帰する。このとき、デ
イスク回入側のピン取付部１５はピン嵌合溝１９
が円柱状基部２０ａに円滑に案内されて摺動し、
摺動ピン２０を移動方向へ倒すことはなく、摺動
ピン１７，２０が支持孔５ａ，４ａ内を円滑に摺
動することができ制動の解除は迅速に行なわれ
る。また、走行時に車体の振動に伴つて生ずるキ
ヤリパ１０の振動は弾性係止部材２１のスプリン
グ力によつて吸収されガタつくことはない。

更に、この繰り返しの制動によつて摩耗した摩
擦パツド８，９の交換は、デイスク回出側の締付
ボルト１８を取り外してキヤリパ１０をデイスク
回入側の摺動ピン２０の円柱状基部２０ａを支点
として反時計方向へ回転し、摩擦パツド８，９の
交換をする。このとき、ピン嵌合溝１９のデイス
ク回出側の半円状の側壁１９ａが円柱状基部２０
ａに摺動自在に嵌合され、しかも弾性係止部材２
１の押圧部２１ｂが点接触で円柱状基部２０ａを
押圧しているのみであるから、キヤリパ１０の回
動力は摺動ピン２０には伝達されず、ダストブー
ツ２４がねじれて破損したり離脱したりすること
はない。

以上のように本考案によれば、キヤリパのデイ
スク回入側のピン取付部に形成したピン嵌合溝
に、ブラケツトの支持孔に摺動自在に嵌挿した摺
動ピンの円柱状基部を摺動可能に密接嵌合し、こ
の弾性係止部材によりこの円柱状基部をデイスク
回出方向へ押圧してピン嵌合溝に圧接せしめ、キ
ヤリパをデイスク回転方向へのみ移動可能に弾性
支持したので、制動の際にブラケツトの制動トル
クによる撓みに追従してキヤリパがデイスク回転
方向へ移動し、一対の摺動ピンは共に制動トルク
による側圧を受けず円滑に支持孔を摺動すること
ができ、摩擦パツドの偏摩耗を防止するとともに
強力な制動力を発揮することができ、かつこの制
動時のキヤリパの浮き上りも確実に防止される。
また、制動を解除すると撓んでいるブラケツトの
原形への復帰に伴いキヤリパはデイスク回入側の
摺動ピンを押圧することなくデイスク回入側へ移
動して元の位置へ復帰し、両摺動ピンは円滑に支
持孔を摺動することができ、制動の解除は迅速で
かつ摩擦パツドの引きずりも生じない。更に、摩
擦パツドの交換の際に、デイスク回出側の摺動ピ
ンを取り外してキヤリパをデイスク回入側の摺動
ピンを支点として回動して、摩擦パツドの交換を
してもキヤリパの回動力は摺動ピンには伝達され
ず、ダストブーツが破損したり離脱したりするこ
とはない等の効果を有している。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の一実施例を示すもので、第１図
は一部縦断平面図、第２図は第１図の−断面
正面図である。 ４，５は支持腕で、４ａ，５ａは支持孔、１０
はキヤリパで、１１はインナ部、１２はアウタ
部、１７，２０は摺動ピン、１９はピン嵌合溝、
２０ａは円柱状基部、２１は弾性係止部材であ
る。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. デイスクの両面に対向して配置した摩擦パツド
   を跨ぎ、一方の摩擦パツドの背面を押圧する押圧
   手段を備えたインナ部と他方の摩擦パツドの背面
   に当接するアウタ部とを有するキヤリパのデイス
   ク回入側とデイスク回出側のピン取付部に、摺動
   ピンをデイスク軸方向と平行に取付け、この摺動
   ピンをブラケツトに設けた支持孔に摺動可能に嵌
   挿した車両用デイスクブレーキ装置において、前
   記キヤリパのデイスク回入側ピン取付部にデイス
   ク回入方向を開口して半円状のデイスク回出側側
   壁とその側壁に連続する上下壁を有するピン嵌合
   溝を形成し、該ピン嵌合溝に前記デイスク回入側
   の摺動ピンの円柱状基部を摺動可能に密接嵌合す
   るとともに、デイスク回入側のピン取付部に基部
   を固定した板状の弾性係止部材の中央部に屈曲形
   成した押圧部を前記摺動ピンの円柱状基部のデイ
   スク回入側に当接させて、該円柱状基部を前記ピ
   ン嵌合溝の半円状側壁に押圧してピン嵌合溝に圧
   接せしめ、キヤリパをデイスク回転方向へのみ移
   動可能に弾性支持したことを特徴とする車両用デ
   イスクブレーキ装置。