JPS6210487Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案はスラスト受け用鍔部を有する回転軸を
支持する取付部材の軸受部とキヤツプ部材との合
せ面からの油洩れを防止する装置に関するもので
ある。

従来のスラスト受け用鍔部を有する回転軸、例
えばカム軸の支持部構造は第１図および第２図に
示すように、カム軸イの第１ジヤーナル部ロに形
成したスラスト受け用鍔部ハの下部を嵌合支持す
るシリンダヘツドニの軸受部ホに形成した半環状
の下嵌溝ヘと、前記軸受部ホの合せ面トに取付け
るキヤツプ部材チに形成した半環状の上嵌溝リと
が、前記スラスト受け用鍔部ハとの間に閉鎖環状
空間ヌを形成するため、図示しない油供給孔より
軸受部ホに供給された潤滑油は軸受部ホと第１ジ
ヤーナル部ロの回転摺動部分から前記閉鎖環状空
間ヌに進入して、カム軸イの回転により鍔部ハに
よつて加圧され、これが逐次、軸受部ホと第１ジ
ヤーナル部ロの回転摺動隙間を経てキヤツプ部材
チの取付け合せ面ルからシリンダヘツドニの外側
に洩れ、タイミングベルトヲを汚染する等してベ
ルト自体を劣化せしめその機能を損なわしめてい
た。

このため前記鍔部ハより外側においてシール部
材を設け、あるいは液状パツキングを塗り、且つ
該シール部材と前記鍔部ハとの間に戻し孔（図示
せず）を設けて潤滑油を油槽に戻すようにしてい
るが、カム軸は高回転となると油量の増加と油圧
の上昇のため、前記戻し孔、シール部材によつて
も対処できず、前記と同様油洩れが生じていた。

上記の如き鍔部をもつた回転軸の軸受について
は、例えば実公昭34−8602号公報に示す送風機に
おける軸受の構造のように、主軸のスラストカラ
ー部を油溝を有するＬ型状のメタルを介してサイ
ドカバーに支持せしめるとともに、前記スラスト
カラー周囲に環状の油室と該油室に連結した油排
出口を設けたものがあるが、前記軸受の構造では
主軸の回転に伴いスラストカラーの外周に引きず
られて環状の油室の油が回転して油圧が発生し、
これによつて油は主軸とメタルの間から洩れ易く
なり、また高速回転時には油排出口が下方を向い
ていても前記油室内周に貼着して回転し、上記排
出口からは油がなかなか放出されない欠点があ
る。

本考案は前記の点に鑑み案出したもので、軸受
部の下嵌溝と、該軸受部の合せ面に取付けるキヤ
ツプ部材の上嵌溝と、スラスト受け用鍔部の外周
とで形成する空間を非閉鎖空間として進入した潤
滑油を加圧することなく排出させ得るようにし、
回転軸支持部から外部への油洩れを防止せしめ、
油洩れによる部材の汚損、劣化、損傷或いは機能
低下を未然に防止するようにしたものであり、そ
の要旨とするところは、取付部材に支持された回
転軸のスラスト受け用鍔部を取付部材の軸受部に
形成したキヤツプ部材の側面幅より大なる幅をも
つ円弧状下嵌溝と前記キヤツプ部材に設けた半環
状の上嵌溝とに嵌合せしめ、前記下嵌溝を前記キ
ヤツプ部材の側面より外側において上方及び支持
部材の内方に向う水平方向に開口せしめてなる回
転軸支持部の油洩れ防止装置にある。以下、タイ
ミングベルトを備えた内燃機関のスラスト受け用
鍔部を有するカム軸前端部の支持部における油洩
れ防止装置に適用した実施例を図面について説明
する。

第３図および第４図に示すように、回転軸であ
るカム軸１は第１ジヤーナル部２の中央部に位置
するようにスラスト受け用鍔部３が形成されてお
り、取付部材であるシリンダヘツド４には前記第
１ジヤーナル部２の内側部２ａ即ち、スラスト受
け用鍔部３よりシリンダヘツド４の内方側に位置
する部分を支承する受け部５ａと、同外側部２
ｂ、即ちスラスト受け用鍔部３よりシリンダヘツ
ド４の外方側に位置する部分を支承する受け部５
ｂを有する軸受部５が形成されており、前記スラ
スト受け用鍔部３の下部が嵌合され下嵌溝６が軸
受部５に設けられている。

上記カム軸１のスラスト受け用鍔部３は前記下
嵌溝６と、この軸受部５にボルト７，７を介して
装着するキヤツプ部材８に設けた上嵌溝９との間
に嵌合させ、軸受部５とキヤツプ用部材８とでス
ラスト受け用鍔部３を有する第１ジヤーナル部２
を支持させて回転軸支持部であるカム軸支持部を
形成している。

前記下嵌溝６は前記キヤツプ用部材８の両側面
８ａ間の幅より大きな幅をもつて形成し、シリン
ダヘツド４に取付けるカバー部材であるシリンダ
カバー１１およびシリンダヘツド内壁面１２の内
側におけるキヤツプ合せ面１３においてキヤツプ
部材８の側面８ａよりも外側において上方及び前
記シリンダヘツド４の内方に向かう水平方向に開
口１０させてある。

図中１４は前記軸受部５の外側部５ｂに設けた
オイルシール部、１５はタイミングギヤ、１６は
タイミングベルト、１７，１８はカムである。

本考案装置は前記のように構成するから、カム
軸１が回転することにより第１ジヤーナル部２の
スラスト受け用鍔部３が回転して軸受部５の内側
部５ａと第１ジヤーナル部２の内側部２ａの回転
摺動部分の間隙を経て下嵌溝６、上嵌溝９に進入
した潤滑油は下嵌溝６の前記鍔部３直下では油圧
は高いが、それより少し離れると間隙が急激に拡
大するため油圧も急激に低下するとともに、スラ
スト受け用鍔部３の回転により遠心力によつて、
第３図および第４図に矢印で示すように下嵌溝６
の上端開口１０を経てシリンダヘツド４内に直
接、或いは上記ヘツド４の内壁面１２よりシリン
ダヘツド４の内側に移送され、シリンダヘツド４
とシリンダヘツドカバー１１との内側空間に流出
せしめられる。

このようにして、下嵌溝６、上嵌溝９内に進入
した潤滑油はスラスト受け用鍔部３の回転により
ほとんど加圧されることなく、上端開口１０を経
てシリンダヘツド４内へ流出されるから、キヤツ
プ合せ面１３を通つてシリンダヘツド４の外側、
即ちタイミングベルト１６方向へ漏洩することは
ない。従つてタイミングベルトに附着し汚損する
ことが防止される。

以上のように本考案による回転軸支持部の油洩
れ防止装置は、取付部材に支持された回転軸のス
ラスト受け用鍔部を取付部材の軸受部に形成した
キヤツプ部材の側面幅より大なる幅をもつ円弧状
下嵌溝と前記キヤツプ部材に設けた半環状の上嵌
溝とに嵌合せしめ、前記下嵌溝を前記キヤツプ部
材の側面より外側において上方及び支持部材の内
方に向う水平方向に開口せしめてなるので、潤滑
油は前記下嵌溝の前記鍔部直下では油圧は高い
が、それより少し離れると間隙が急激に拡大する
ため油圧も急激に低下し、同時に油は前記鍔部の
回転によりその回転方向に遠心力で飛散され、前
記開口の上方及び側方から効率良く放出され、こ
れによりスラスト受け用鍔部の回転による潤滑油
の加圧現象を惹起することなく、回転支持部から
外部への油洩れを防止することができ、油洩れに
よる部材の汚損、損傷、劣化及び機能低下を未然
に防止することができる効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図、第２図はカム軸支持装置の従来例を示
し、第１図は断面側面図であつて第２図−線
相当断面を表わし、第２図は第１図−線相当
断面図である。また第３図、第４図は本考案油洩
れ防止装置を備えたカム軸支持装置を示し、第３
図はその前端部の断面側面図であつて第４図−
線相当断面を表わし、第４図はカバー部材及び
キヤツプ部材を外した一部切断平面図である。 １……カム軸、２……第１ジヤーナル部、３…
…スラスト受け用鍔部、４……シリンダヘツド
（取付部材）、５……軸受部、６……下嵌溝、７…
…ボルト、８……キヤツプ部材、９……上嵌溝、
１０……上端開口、１１……シリンダカバー、１
２……内壁面、１３……キヤツプ合せ面、１４…
…オイルシール部、１５……タイミングギヤ、１
６……タイミングベルト、１７，１８……カム。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 取付部材に支持された回転軸のスラスト受け用
   鍔部を取付部材の軸受部に形成したキヤツプ部材
   の側面幅より大なる幅をもつ円弧状下嵌溝と前記
   キヤツプ部材に設けた半環状の上嵌溝とに嵌合せ
   しめ、前記下嵌溝を前記キヤツプ部材の側面より
   外側において上方及び支持部材の内方に向う水平
   方向に開口せしめてなる回転軸支持部の油洩れ防
   止装置。