JPS6140543Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 この考案は、インキを貯溜するための中綿を使
用しないで、直接インキ室にインキを貯溜する筆
記具におけるインキ流量調節用コレクタに関する
ものである。

一般のこの種コレクタは、筆記時にインキ室の
インキをペン芯まで円滑に誘導する機能と、イン
キ室から溢出した過量のインキを保溜する機能と
を有しており、インキをペン芯まで誘導するイン
キ誘導棒には毛管作用によりインキがインキ室か
らペン芯へ流出するインキ溝とインキ室からペン
芯へ流出したインキと交替してインキ室へ流入す
る空気の通路となる空気溝が設けられ、また、コ
レクタには、インキ室から溢出したインキを収容
する櫛状に形成したインキ保溜溝が設けられてい
る。そして、インキ室の温度、気圧が変化してイ
ンキ室の空気が膨張し、その膨張した空気量に相
当するインキがインキ室から溢出した場合、その
溢出したインキが保溜溝へ流入する抵抗力よりも
ペン芯を通つて流出する抵抗力の方が強いため、
溢出したインキがペン芯からぼた落ちする以前に
インキ保溜溝へ流れ込んで保溜され、インキのペ
ン芯からのぼた落ちを防止することができ、その
後、インキ室内の温度、気圧が変化する前の状態
に戻ると、インキ保溜溝に保溜されたインキがイ
ンキ誘導溝を経てインキ室に流入するようになつ
ている。このように、一般にインキ室の空気の膨
張により溢出したインキはコレクタのインキ保溜
溝に保溜され、インキ室の空気が膨張前の状態に
戻るとインキ溢出溝を経てインキ室に戻るように
なつているが、実際には第６図及び第７図に示す
ように構成されており、インキがインキ室ａへ戻
る時、溢出孔ｂ付近の保溜溝ｃのインキが先にイ
ンキ室ａに戻つてしまい、更にインキを溢出孔ｂ
からインキ室ａへ吸引しようとすると、溢出孔ｂ
付近の溢出溝ｄのインキの連なりが切れ易くな
り、インキを吸い込む際にインキのなくなつた保
溜溝ｃから空気も引き込んでしまう。このため、
インキ室ａに引き込まれた空気の量だけコレクタ
のインキはインキ室ａに戻ることができずコレク
タ内に残溜してしまう。そして、これら動作を幾
度か繰り返すと、コレクタ保溜溝ｃにインキが累
積されて行き、遂には満杯となり、通気路ｅから
インキがぼた落ちしてしまうという問題が生じ
る。

そこで、上記の欠点を解決する方法として、イ
ンキ溢出孔の両側に壁部を形成してインキの通気
路ｅへの流入を阻止する構造が考えられたが、こ
れはインキのインキ室ａからのコレクタへの流出
が静的に近い状態でのみ成立つもので、衝撃等に
よる急激な流出においては全ての保溜溝ｃにイン
キが満される以前に一部のインキは保溜溝ｃに保
溜されず通気路ｅに流出し、他のインキで満され
ていない保溜溝へ通気路側から入り空気を咬んで
しまう。したがつて、インキ室ａの空気が収縮し
たり、筆記してインキが減量しても空気を咬んだ
保溜溝ｃのインキは溢出溝ｄに引き込まれず、筆
記に全てのインキを供することができないばかり
ではなく、静的に近い状態でのインキの溢出の場
合においても空気を咬んだ保溜溝ｃは空気が通気
路ｅへ逃げられないため、インキを保溜する機能
が果せなくなるという問題があつた。

この考案は、上記問題を解決することを企図し
てなされたもので、筆記具を構成する軸筒とコレ
クタ本体との隙間部において、インキ溢出溝側か
ら通気路側に向つて漸次広くなる隙間を形成する
ことにより、保溜溝の中間に空気を咬んでも間隙
を通してインキをインキ室へ引き戻すことがで
き、かつ、インキのぼた落ちを防止できるように
したことを特徴とする筆記具におけるインキ流量
調節用コレクタを提供しようとするものである。

以下にこの考案の実施例を図面に基づいて説明
する。

第１図はこの考案のコレクタを具備する筆記具
を示す断面図で、図中、１は軸筒であつて、その
一端にはこの軸筒１との間に通気孔２を構成する
ように口金３が装着されており、この口金３には
パイプ４を介してペン芯５が嵌装されて外方に向
つて突出されている。また、軸筒１の他端にはイ
ンキ室６が形成されており、このインキ室６と前
記ペン芯５との間にこの考案のコレクタ７が介在
されている。

前記コレクタ７は、ほぼ円筒状に形成された本
体８の中心に円筒状のコレクタ軸９を有し、その
両端に円板状のフランジ部１０，１０が設けら
れ、これらフランジ部１０，１０間には軸方向に
沿つて適宜間隔をおいて列設される多数の羽１
１，１１…によつて櫛状のインキ保溜溝１２，１
２…が形成されている。また、コレクタ７には、
軸心に関して対峙状に前記羽１１，１１…を貫通
する狭隘状のインキ溢出溝１３と幅広の通気路１
４とが形成され、この際、インキ溢出溝１３を構
成する一対の側壁１５，１５は、前記軸筒１の内
面に向つて延在され、そして、それら側壁１５，
１５と軸筒内面との間に僅かの間隙（0.05〜0.2
mm）のインキ溢出隙間１６を形成し、かつ、この
インキ溢出隙間１６と連なる隙間１７を前記イン
キ溢出溝１３から通気路１４側に向つて漸次広く
なるように形成してある（第２図及び第３図参
照）。

なお、１８はコレクタ軸９内に嵌装されるイン
キ誘導棒、１９はこのインキ誘導棒１８を介して
前記インキ室６内のインキをインキ溢出溝１３に
誘導する溢出孔である。

上記のように構成されるこの考案のコレクタに
おいて、衝撃等によりインキがインキ室６から急
激に流出し、保溜溝１２，１２…に保溜されず、
他の空の保溜溝１２へ通気路側から入つて空気を
咬んでも、羽１１，１１…の外周と軸筒内壁とに
よつて形成された間隙１６，１７がインキ溢出溝
１３付近に近づくに従つて狭くなつているので、
インキはインキ溢出隙間１６へ移動して、遂には
溢出溝１３と連なり、連続的にインキをインキ室
６内へ引き戻すことができる。

第４図及び第５図はこの考案の第二及び第三実
施例を示すもので、第４図に示す第二実施例はイ
ンキ溢出溝１３の側壁１５，１５を軸筒１の内面
に接触させて羽１１，１１…の部分のみ0.1mm前
後の間隙１７′を形成した場合、また、第５図に
示す第三実施例は羽１１，１１…を軸筒内面に接
触させ、インキ溢出溝１３の側壁１５，１５と軸
筒内面との間に間隙１６を形成した場合である。

以上に説明したように、この考案のコレクタに
よれば、軸筒とコレクタ本体との隙間部におい
て、インキ溢出溝側から通気路側に向つて漸次広
くなる隙間を形成してあるので、衝撃等により保
溜溝の中間に空気を咬んでも、隙間を通してイン
キを連続してインキ室へ引き戻すことができ、し
かも、本来のペン芯へのインキ誘導機能及びイン
キ室から溢出した過量のインキを保溜する機能を
有し、かつ、インキのぼた落ちを防止することが
できるなどの優れた効果が得られ、その利用価値
は顕著である。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案のコレクタを具備する筆記具
の断面図、第２図は第１図の−線に沿う断面
図、第３図は第２図の部拡大図、第４図及び第
５図はそれぞれこの考案の第二及び第三実施例を
示す要部拡大断面図、第６図は従来のコレクタを
示す断面図、第７図は第６図の−線に沿う断
面図である。 １……軸筒、５……ペン芯、６……インキ室、
８……コレクタ本体、９……コレクタ軸、１１…
…羽、１２……インキ保溜溝、１３……インキ溢
出溝、１４……通気路、１５……側壁、１６……
インキ溢出隙間、１７，１７′……隙間。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 軸筒の一端に装備されるペン芯と、該端部のイ
   ンキ室との間に介在されるほぼ円筒状本体の中心
   部に筒状のコレクタ軸を配設し、前記本体には長
   手方向に沿つて適宜間隔をおいて複数の羽を列設
   するとともに、各羽間にインキ保溜溝を形成し、
   これら羽及びインキ保溜溝を貫通する狭隘状のイ
   ンキ溢出溝と、通気路とを対峙状に形成し、前記
   軸筒の内壁と本体の外周とにおいて、前記インキ
   溢出溝側から通気路側に向つて漸次広くなる隙間
   を形成して成る筆記具におけるインキ流量調節用
   コレクタ。