JPS6130643B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

（産業上の利用分野） 本発明は光呼吸阻害剤に関する。更に詳しくは
アミノメタンスルホン酸、３−（２−チエニル）
セリン、アミノアセトニトリルの中から選ばれる
一種または二種以上の化合物を含有する光呼吸阻
害剤に関する。 （従来の技術） 農業生産を生物学的にみると、その主要な点は
緑色植物の光合成能力を利用して、地球上に太陽
エネルギーを蓄積する方法で生産を行なう点にあ
り、併せて大気中に酸素を供給していることにな
る。しかしこれは太陽エネルギーの利用方法とし
ては必ずしも効率がよいものではなかつた。一
方、世界の食糧事情をみた場合、今世紀末には世
界の人口が現在のほゞ倍位になるものと予想され
ており、この人口増大に対処するための食糧の確
保は極めて困難であろうと予想されている。 （発明が解決しようとする問題点） この様な人口増加に対処するために多くの研究
努力が払われて来たが、しかし従来の農業生産力
増強のために実施されて来た開発研究はその多く
が生産技術の改良に止まり、植物が本来的に具備
している機能の細部を具体的に把握し、それを強
化するという方向への努力がほとんど払われてい
なかつた。一般に植物は光合成作用によつて、太
陽エネルギーを利用して、水と炭酸ガスから炭水
化物を合成し、大気中に酸素を供給している。一
方植物は空気中の酸素を吸収して炭酸ガスを放出
するいわゆる呼吸作用を行なつているが、この呼
吸作用には光の照射下で行なわれる光呼吸と暗所
において行なわれる暗呼吸とがあり、外見上、光
呼吸はC₃植物のみに認められることが知られて
いる。しかも光呼吸によつて消費される炭素化合
物の量は多く、或る種の植物では光合成によつ
て、同化された炭素化合物の50％が光呼吸によつ
て分解されてしまうといわれている。したがつて
植物体内における他の代謝過程に悪影響を及ぼす
ことなく、光呼吸だけを選択的に抑制することが
出来れば、それに対応して作物の生産性を高めう
る可能性が期待される。 発明者等は緑色植物による太陽エネルギー固定
機能の増進について研究を行なつた結果、光呼吸
を行なう植物の光呼吸をある種の阻害剤によつて
抑制することによつて、植物の光合成をより効率
的に行なうことが出来ることを発見し、本発明を
完成するに至つた。 （発明の効果） 本発明剤を使用した場合は例えばイネ、ムギ、
マメ、サトウダイコンなどの様なC₃植物、即ち
食糧の主要な供給源となる植物の光呼吸を抑制す
ることが可能である。 （問題点を解決するための手段） 即ち本発明はアミノメタンスルホン酸、３−
（２−チエニル）セリン、アミノアセトニトリル
から選ばれる一種または二種以上の化合物を含有
する光呼吸阻害剤である。 本発明剤に係る化合物を製造するには例えばア
ミノメタンスルホン酸を製造するには水とホルマ
リンと酸性亜硫酸ソーダからなる溶液にアンモニ
ヤ水を加え、冷却後、硫酸々性にすることによつ
て、mp184〜185℃の白色結晶状のアミノメタン
スルホン酸を製造することが可能である。３−
（２−チエニル）セリンはグリシンのアルカリ溶
液に２−チオフエンカルボキシアルデヒドを加え
氷冷下で塩酸を加えることによつてmp179〜181
℃の薄黄色板片状結晶の３−（２−チエニル）セ
リンを製造することが可能である。 本発明剤は例えば粉末、水溶液、乳濁液、水性
または油性懸濁液の様な通常の公知の任意の剤型
に製剤が可能である。 本発明剤の使用量は作物の種類、作物の生育ス
テージ、使用方法または使用時期等によつて異な
るが、一般的には土壌施用の場合には乾土に対し
て化合物即ち有効成分として0.1〜1000ppmであ
り、作物の茎葉部に水溶液で散布する場合には有
効成分として0.05〜500ppmの濃度の水溶液を散
布する。 また本発明剤の使用方法は一般的には水溶液に
して使用するが、肥料と一緒にして土壌中に混和
してもよく、また追肥の際に土壌表面に散布して
もよい。更に液肥、殺虫剤、殺菌剤または葉面散
布剤等と混用することも可能である。なお薬剤が
作物に付着して浸透し易いようにするために、界
面活性剤を添加した水溶液を散布することは好ま
しいことである。本発明剤の使用時期は一般的に
は植物の光呼吸が盛んな時期が好ましく、例えば
植物の生殖生長期から収穫期までの間に使用する
のが好ましい。しかし作物によつては栄養生長期
に使用した場合に、より好ましい効果を示す場合
があるので使用時期は特に限定されるものではな
い。 （実施例） 次に本発明剤の効果を試験例によつて説明す
る。 試験例 １ 本発明剤を含むHoagland水耕液を、紙を敷
いたガラスチユーブ（φ2.3cm×15.8cm）に入
れ、発芽直後のイネ（日本晴）を10粒ずつ播種し
た。これを30℃、2800 luxの人工光線照射下で生
育し、10日後の草丈および生体重を測定した。測
定結果を第１表に示した。なお測定結果の値は無
処理区の測定結果を100とした場合の比較値
（％）を示す。

【表】 試験例 ２ 播種後約１ケ月生育した５葉期の水稲（日本
晴）を直径が3.5cm、高さが14cmの容器に入れ、
本発明剤を所定の濃度に溶解した木村氏Ｂ液（PH
５〜5.5）を与えて、30℃、10000 lux、長日条件
下で生育させ21日後の長さ、生体重および乾物重
量を測定した。結果を第２表に示した。なお数値
は無処理区の測定結果を100とした場合の比較値
（％）を示す。 また、同水稲を水田土壌をつめた1/5000ａのワ
グネルポツトに移し、屋外で栽培を行い、76日後
展着剤リノー0.2％を加えた本発明剤の各濃度液
を10/aの割合で茎葉散布し、120日後、収量調
査を行つた結果を第３表に示す。 なお、施肥は基肥としてポツト当りＮ：0.4
ｇ、Ｐ：0.8ｇ、Ｋ：0.8ｇ、追肥として65日後に
Ｎ：0.2ｇを使用した。 本試験は、各区７ポツトを使用し、その平均値
を示した。 本発明剤を使用した場合、弱勢頴果の登熟歩合
が向上し、収量が上昇している。

【表】

【表】

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ アミノメタンスルホン酸、３−（２−チエニ
   ル）セリン、アミノアセトニトリルの中から選ば
   れる一種または二種以上の化合物を含有すること
   を特徴とする光呼吸阻害剤。