JPS6115493B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

本発明は磁気記録媒体の製造方法に関するもの
である。特に、走行安定性に優れた磁気記録媒体
を提供することを目的とするものである。 一般に磁気記録媒体としては、磁気テープ、磁
気シート、磁気カード、磁気デイスク、磁気ドラ
ム等があり、オーデイオ用、ビデオ用あるいはコ
ンピユータ用等として広く使用されており、最近
目ざましい発展をしている。 なかでも、ホームビデオ機器の普及に伴つて、
ビデオテープの需要が著しく伸びてきた。ビデオ
デツキは、ただ回転磁気ヘツドをテープ上で一定
高速で走行させる単能型から、静止画、低高速の
速度可変型、長時間録画、音声多重によるステレ
オ化、さらに少型軽量を目ざしたポータブル化
と、多様な機能付加が進み、磁気テープにとつて
は従来以上に過酷な使われ方が強いられている。
そのために、電磁変換特性の向上による画質の向
上を可能とし、長時間にわたる走行安定性および
環境にも強い耐久性の優れた磁気テープがますま
す要望されている。 このような高性能、高品質な磁気テープを得る
ために、材料およびテープ製造技術において鋭意
検討されているが、未だ十分満足するところまで
には達していないのが現状である。 磁気テープは、ほぼ次の工程を経て製造され
る。 (1) 磁性粉末と結合剤と必要に応じて加えられる
各種添加剤とを有機溶剤で混合してなる磁性塗
布液の製造工程。 (2) 上記の磁性塗布液をポリエステルフイルムな
どの非磁性支持体に塗布し乾燥する塗布工程。 (3) 塗布された磁気フイルムの塗布表面を平滑加
工する表面成型工程。 (4) 表面成型後の磁気フイルムを所定巾に切断す
る細断工程。 (5) 製品に仕上げる組立工程。 このような方法において、特にビデオ用磁気テ
ープとする場合には、製品特性上から各工程とも
従来になり厳しい製造技術が要求される。 磁気テープをはじめとする磁気記録媒体の耐摩
耗性および走行性を向上させる方法としては、一
般に潤滑剤が使われることが知られている。すな
わち、磁性粉、結合剤、その他必要成分と一緒に
あらかじめ潤滑剤を添加して磁性塗布液を作り、
これを非磁性支持体上に塗布して、磁性層を形成
するという方法である。 しかし、磁性層の表面滑性を高めようとして潤
滑剤を多く添加すると、磁性層表面にブルーミン
グ現象を生じて、逆に走行性が不安定になり、磁
気ヘツドの目づまり、粉付着が起り、さらには感
度、S/Nの低下を招くので好ましくない。一方、
潤滑剤量が少ないと潤滑効果が小さく、走行特性
が向上しないというおそれがある。このことか
ら、潤滑剤量を少なくしていかに磁気記録媒体の
走行性を高めるかが大きな課題であつた。 本発明は、潤滑剤の添加方法を検討することに
よつて、従来より少ない潤滑剤量で磁性層の耐摩
耗性が向上し、かつ摩擦係数が低くなつて走行の
安定な磁気記録媒体が得られることを見い出した
ことに基くものである。 すなわち、本発明は、磁性粉末、結合剤、その
他の必要成分、および有機溶剤からなる組成物に
潤滑剤の一部を含ませて混合分散し、混練物を作
り、この混練物を必要に応じて粘度調整した後に
残りの潤滑剤を添加し撹拌分散を行うと、総量と
して潤滑剤量の少ない磁性塗布液が得られる。そ
して、この磁性塗布液で製造した磁気テープは耐
摩耗性および走行特性に優れているという事実に
基いている。 従来法のように上記組成物を調合して混練物を
作る段階で一度に全量の潤滑剤を添加すると、磁
性粉末およびカーボンブラツク等の無機微粉末に
必要以上の潤滑剤が吸着され、結合剤中に必要と
する潤滑剤を含ませるにはさらに多くの潤滑剤が
いるということになる。このことが後の磁性層を
形成した場合、その表面にブルーミング現象をも
たらす原因になつている。これに対して、本発明
のように潤滑剤を２段階に分けて添加すれば、総
量として少い潤滑剤量でその働きを十分に生み出
し、上記欠点を解消するものと考えられる。 本発明に使用される潤滑剤は、高級脂肪酸エス
テル、有機シリコン化合物、有機フツ素化合物等
の単独もしくはそれらの２種以上の組合せたもの
がある。なかでも炭素数12〜18の一塩基性高級脂
肪酸と一価の高級アルコールからなる脂肪酸エス
テル、または有機シリコーン化合物が特に好まし
い。 これらの潤滑剤の総量は、磁性粉100重量部に
対して0.1〜４重量部で、前添加と後添加での割
合は9/1以下が好ましい。 上記潤滑剤量が0.2重量部より少ないと潤滑効
果が小さく、４重量部より多いとブルーミング現
象が生じる。また、添加割合が9/1より大きくな
ると従来の一括添加と変らない効果になつてしま
う。 本発明の方法において用いられる磁性微粉末と
しては、従来から知られている磁性酸化鉄粉末
（Fe₃O₄，Co含有―Fe₃O₄，γ―Fe₂O₃，Co含有
γ―Fe₂O₃等）、二酸化クロム粉末、金属磁性粉
のいずれでもよい。 研摩剤としては、磁気ヘツドの面荒れ防止とし
て磁性層中に適量混在させるもので、Cr₂O₃，Ａ
₂O₃，SiC，TiO₂，α―Fe₂O₃等の高硬度微粉
末がある。この量があまり多すぎると、磁気ヘツ
ドの摩耗量が大きくなつて、逆に悪い結果を与え
る。 帯電防止剤は、絶縁材料からなる磁気テープの
帯電によるドロツプアウト、ノイズの発生を防止
するために、テープの表面電気抵抗を10⁷〜10¹⁰
Ω／口にまで下げる必要から加えられるもので、
導電材料であるカーボン粒子、グラフアイト粒子
あるいは界面活性剤を用いて磁性層に含ませる。
支持体に関しては、ポリエステルフイルム、アセ
テートフイルム、ポリイミドフイルム、ポリアミ
ドフイルムまたは紙等が使われる。 結合剤は、磁性粉を結合させて磁性層を構成す
る骨格材となすものであり、多くの樹脂が知られ
ている。代表的なものとして、ポリウレタン樹
脂、塩化ビニル―酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹
脂、フエノール樹脂、アクリル系樹脂、セルロー
ス系樹脂、ブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、尿
素樹脂等があり、実際には、これらの単独もしく
は２種以上の組合せ系で用いればよい。さらに、
ビデオ用磁気テープの場合には磁気ヘツドと大き
な相対速度で摺接することから耐久性、耐熱性が
求められるので、上記結合剤に硬化剤を添加して
熱硬化性樹脂とするのが一般的である。このとき
に用いる硬化剤としては、イソシアネート、ポリ
アミン、ポリアミド化合物等がある。 分散剤は、磁性粉の磁性層中での高分散状態を
実現するためのものであり、磁性塗料製造中に添
加されて磁性粉の分散性を一層高める働きをもつ
ている。その具体例として、高級脂肪酸、高級ア
ルコール、レシチン等がある。 以上に述べた磁性微粉末と結合剤、必要に応じ
て加えられる帯電防止剤、研摩剤、分散剤等の微
量添加物に前述した潤滑剤の一部を加え、有機溶
剤を共存させて混合機にて十分混合分散して混練
物を作る。次に、この混練物の粘度調整を行なつ
てから、上記潤滑剤の残りを添加し、分散機を用
いて撹拌混合し、それを磁性塗布液とする。 ここで使用する有機溶剤としては。主としてメ
チルエチルケトン、トルエン、メチルイソブチル
ケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル等があ
る。 混合機、分散機としては、ボールミル、サンド
ミル、デイゾルバー、アトライタ、高速ミキサー
ニーダ等を使えばよい。 このようにして調合した磁性塗布液をポリエス
テルフイルムなどの支持体上に塗布し乾燥する。 塗布方法としては、ドクターブレード方式、グ
ラビア方式、リバースロール方式のいずれでもよ
い。このとき、塗膜の平滑性をさらに高めるため
に、塗布直後にスムーザを接触させるのである
が、それにはバースムーザ、ワイヤスムーザ、フ
イルムスムーザ、ナイフスムーザ等が挙げられ
る。 この後、磁性粉末を一方向に配列するための磁
場配向装置において、適当な磁場強度のもとを通
過させている。この磁場強度は磁性粉の抗磁力に
より異なるが、その約２〜４倍程度が好ましい。
磁石としては永久磁石あるいは電磁石のいずれで
もよい。そして配向後、乾燥して溶剤を離脱させ
る。 塗布、乾燥した磁性フイルムの表面をさらに平
滑にするために表面成型（カレンダリング）を行
う。この際、カレンダ装置の鏡面ロールおよび弾
性ロールの表面粗度がテープの電磁変換特性に大
きな影響を与える。カレンダ条件としては、温度
50〜100℃、圧力50〜400Kg/cm、速度20〜200m／
分が好ましい。 表面成型した磁性フイルムは所定巾に細断され
るが、片伸びしない巾精度、巾変動が小さくなる
ようにすることが肝要である。 最後の組立て工程では、ドロツプアウトの原因
となるような塵埃等の付着物がテープに付かない
よう十分に注意する必要がある。 以上のようにして得られた磁気テープは、従来
のように磁性塗料を作る最初の段階で潤滑剤を一
括全量添加して作製した磁気テープと比較して、
少量の潤滑剤で磁性層の耐摩耗性がよくかつ摩擦
係数が低くて走行性に優れているということが判
明した。 本発明の主旨は、磁気テープのみならず、磁気
シート、磁気カード、磁気デイスク等の磁気記録
媒体の製造に応用できることはいうまでもないこ
とである。 以下、本発明の実施例について具体的に説明す
る。 なお、実施例において組成比を表わす部は全て
重量部である。 実施例 Co含有磁性酸化鉄 100部 （Hc＝670Oe） ポリウレタン樹脂 12部 ニトロセルロース樹脂 ８部 カーボンブラツク ６部 レシチン １部 メチルエチルケトン 125部 トルエン 125部 の配合物に、下表に示す組成と量の潤滑剤を加え
た組成物を、ボールミルでそれぞれ48時間混合分
散して混練物を作り、さらにこの混練物に下表に
示す量の潤滑剤とポリイソシアネート化合物６部
を添加して、高速デイゾルバーで30分撹拌分散を
行い、さらに平均孔径３μｍのフイルタで過し
て磁性塗布液を準備した。 このようにして得た磁性塗布液を約15μｍ厚の
ポリエステルフイルム上にそれぞれ塗布、乾燥し
た後、スーパーカレンダロールにより磁性層の表
面加工処理を行い、磁性層厚約５μｍの広巾磁性
フイルムを得た。これれらを1/2インチ（12.65
mm）巾に細断し、ビデオ用磁気テープを作製し
た。 以上のようにして得られた各磁気テープを試料
No.１〜８とし、各々のスチールライフ、ブルーミ
ングおよび摩擦係数を下表に示した。 比較例 潤滑剤を一括添加する以外は実施例と同じ条件
で、磁気テープを作製した。 このときの試料をNo.９〜13とし、各テープ特性
を下表に示した。

【表】 上表から明らかなように、本発明方法によれ
ば、スチールライフ、ブルーミング、摩擦係数の
いずれにおいても、顕著な改善がなされている。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 磁性微粉末、結合剤、溶剤およびその他の必
   要成分からなる組成物にあらかじめ潤滑剤の一部
   を含ませて混合分散を行なつてから、得られた混
   練物の粘度調整をし、さらに前記潤滑剤の残部を
   添加して撹拌分散を行なつて磁性塗布液を得、こ
   の磁性塗布液を非磁性支持体上に塗布し乾燥させ
   て、磁性層を形成することを特徴とする磁気記録
   媒体の製造方法。 ２ 潤滑剤として、炭素数12〜18の一塩基性高級
   脂肪酸と一価の高級アルコールからなる高級脂肪
   酸エステル、または有機シリコン化合物を使用す
   ることを特徴とする特許請求の範囲第１項記載の
   磁気記録媒体の製造方法。