JPS6113788B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、常温での保存、流通に適した包装し
たフライドポテト半製品の製造法に関する。

馬鈴薯を適当な大きさに切断したのち、油で揚
げて得られるフライドポテトないしはフレンチ・
フライドポテトは、その独特の風味のために、お
やつ、つまみあるいは前菜として広く賞味されて
いる。このフライドポテトは、家庭、食堂などの
調理現場で原料馬鈴薯から水洗、皮むき、切断、
水きり、油揚げの工程をへて直接得ることもでき
る訳であるが、調理工程を簡単化するために半製
品として流通させ、調理現場では最終の油揚げ工
程のみを行うようにすることも広く行われてい
る。このようなフライドポテト半製品は、従来、
生馬鈴薯を水洗、剥皮、切断し、酸化防止剤およ
び組織強化剤を含有する水溶液により浸漬し、水
切りした後、油揚げ、凍結し、包装してなるもの
であり、この際、凍結は半製品の品質保持、年間
を通じた保存と安定供給のために行われ、また油
揚げは、使用上の品質と効率のために行われてい
る。得られるフライドポテト半製品は、冷凍状態
で流通され、消費者の有する冷凍保存設備中で保
存され、最終の油揚げ調理を待つことになる。

しかし、上記したような方法によるフライドポ
テト半製品の製造、流通には重大な欠点がある。
すなわち凍結状態で製造された半製品は、流通時
ならびにその前後においてそれぞれ冷凍設備を要
し、この設備費ならびに維持費がばかにならない
という欠点がある。また一旦凍結した半製品は、
冷凍設備などの故障設備などの故障により解凍す
ると品質が著しく劣化するという問題もある。

このような凍結状態での流通、保存の欠点を避
けるために、常温保存用のフライドポテト半製品
を製造することが一部で考えられているが、現状
では実用化されていない。これの製造工程として
はたとえば、馬鈴薯を水洗、剥皮、切断し、組織
強化剤および酸化防止剤含有の水溶液で処理した
後、水切りしてそのままレトルト袋に充填し、密
封後加圧、加熱によりレトルト殺菌するという考
え方でこれは所謂レトルト食品製造方法である。

しかし、単にこのような方法により製造された
フライドポテト半製品を常温で保存し、また流通
過程におくことには別の多くの問題点がある。す
なわち、最終段階で密封包装した馬鈴薯片を加圧
加熱殺菌するときに、加熱により破壊された馬鈴
薯の組織より出た水分が密封構造のため袋内にた
まり、馬鈴薯に水が浸透して粥状になるなどチク
スチヤーが悪くなる。また過剰水分が馬鈴薯片の
表面にも多量に付着して、最終調理工程で油揚げ
する際に、油のはねが非常に大きく作業性が悪い
事である。

このような欠点は馬鈴薯片を包装前に充分に乾
燥しておけば避けることができる。しかし、フラ
イドポテトの独特の風味は生フライドポテトを直
接油揚げすることにより、そのカリカリした表皮
と柔い中心部との組合せにより得られるものであ
つて、乾燥馬鈴薯の油揚によつては得られるもの
ではない。

このようにフライドポテト半製品の常温流通は
原理的には考えられるものの実用化はされていな
い。

しかしながら本発明者が更に研究した結果、上
記した馬鈴薯片の水分のニジミ出しに代表される
変質は、レトルト殺菌処理のための加熱のみによ
り起るものではなく、その他の要因が重なつて経
時的に進行するものである。そしてその代表的な
要因は、馬鈴薯片に対する酸素と光の影響であ
る。また水分が多いことも馬鈴薯片の変質に重要
な影響を与えることは上述した通りであるが、こ
の欠点は、馬鈴薯片をその自然状態から水分を完
全にではなく部分的にでも低下することによつて
著しく改善することができる。すなわち、生馬鈴
薯片中において、その固形分と水分とは平衡した
状態で存在するものであるから、レトルト殺菌処
理その他の外的要因の変化により平衡がくずれて
水分のニジミ出しが起るのである。したがつて馬
鈴薯中の水分をその平衡状態より幾分低い状態に
しておけば外的要因の変化によつて容易に水分の
ニジミ出しは起らない。そして、このように完全
にではなく部分的に乾燥した状態の馬鈴薯片を油
揚げする場合には、フライドポテトの風味の本質
的な劣化は起らない。なぜならば、最終工程で油
揚げを行う場合には、馬鈴薯片の内部までの充分
な加熱が起るのであり、比較的低い絶対水分量で
飽和が起るからである。生馬鈴薯片を直接油揚げ
する場合は、加熱下での過剰水分量は馬鈴薯片の
外に追い出されてしまう。

本発明者は、上述の知見に基づき更に研究を進
めた結果、馬鈴薯片を包装する前に部分的に乾燥
をするとともに、包装材料としてガスバリアー性
と遮光性を兼ね備えた材料を用いれば、常温保存
流通中の変質を防止できるとともに、最終的なフ
ライドポテト製品の風味も本質的に損なわれない
ことを見い出して本発明を完成した。したがつて
本発明の常温保存用フライドポテト半製品の製造
方法は、水洗、剥皮、切断した馬鈴薯を部分的に
予備乾燥したのち、ガスバリアー性および遮光性
を有する材料からなる包装中に充填し、密封包装
し、その後更に殺菌処理することを特徴とするも
のである。

以下、本発明を更に詳細に説明する。

本発明法に従い、まず、馬鈴薯を、水洗、剥皮
ならびに切断する。これら工程は常法に従い行わ
れるものであり、特徴的ではない。次いで得られ
た馬鈴薯片を、好ましくは組織強化剤および酸化
防止剤を含む水溶液で浸漬処理する。組織強化剤
としては、たとえば塩化カルシウム、カリウムミ
ウバン、リン酸カルシウムを0.5〜1.0％（重量
％、以下同様とする）の濃度で、また酸化防止剤
としては、たとえば、アスコルビン酸を0.5〜2.0
％の濃度で用いることができる。

上記浸漬処理後、必要に応じて蒸気等で５〜10
分間ブランチングを行い、馬鈴薯の酵素活性を失
活させてから水切りを行う。

得られた馬鈴薯片を本発明に従い部分的に予備
乾燥する。予備乾燥は、馬鈴薯片の水分を10.0〜
20％、好ましくは15.0〜17.0％減少するまで行
う。この乾燥程度は、かなり臨界的である。前述
したように乾燥程度が10％未満では、その後の殺
菌処理あるいは保存期間中での水分のニジミ出し
が充分に防止できず、また20％を超えるとフライ
ドポテト製品の風味が損われる。又、ポテトの重
量が減りすぎて損失が大きい。通常生馬鈴薯は水
分78.0〜82.0％を有するものであるから、予備乾
燥後の馬鈴薯片中の水分は61.0〜72.％、好まし
くは63.0〜67.0％程度となる。予備乾燥は、油揚
げ、熱風、赤外ヒーター、遠赤外ヒーター等の方
法で行うことができる。しかし、効果的で簡便な
予備乾燥方法は、油揚げである。それは、油揚げ
が最終的な調理工程でも用いられるため、フライ
ドポテトの製造の全工程中に異質な処理を持ち込
まないということの外に、次のような理由がある
からである。すなわち、水分のニジミ出しは表面
から起るものであるから、予備乾燥は水分を表面
から優先的に取り除いて内部に水分を保持する態
様であることが好ましい。油揚げは、この条件を
最も理想的に満す方法の一つである。また油揚げ
により馬鈴薯片の周囲には油の浸透した薄い殻が
形成される。この穀は、内部からの水分のニジミ
出しを有効に防止する作用を有する。

油揚げは、任意の食用油により行うことができ
るが、好ましくはシヨートニングオイル、サラダ
オイル等の軽質油で行う。油揚げはたとえば170
〜190℃で、15〜60秒というように比較的高い温
度で短時間行うのがよい。これも上記したように
表面から優先的に水分を除くためである。油揚げ
後、余分の油を切る。

予備乾燥した馬鈴薯片の所定量を、ガスバリア
ー性および遮光性を有する包装に充填し、密封包
装する。上記性質を兼ね備え、もつとも好ましい
包装材料として熱可塑性プラスチツクフイルムと
アルミニウム箔との積層シートからなるレトルト
用袋がある。

密封包装に際しては真空包装をすることが好ま
しい。その理由の一つは、包装内から酸素を除く
ことであり、もう一つは、これにより包袋の変形
性を除くことである。すなわち、馬鈴薯片の常温
保存中の変質を促進する要因の一つとして、馬鈴
薯片の傷みがあるが、これは半製品の保存中の積
み重ねあるいは流通過程での取り扱い中に馬鈴薯
片に局部的な、外力が加わることにより起ること
が多い。しかし、真空包装を行えば包装と充填さ
れた馬鈴薯片との一体性が改善され局部的な外力
がかかりにくくなり、またフライドポテト半製品
全体の変形も起りにくくなる。

最後に包装中に密封した馬鈴薯片について常温
での保存に耐えられるようになるまで殺菌処理を
行う。最も簡単な殺菌処理は、加熱処理である。

殺菌条件は、包装形態、馬鈴薯片の大きさ（厚
み）等により異なり一概にはいえないが、たとえ
ば115〜120℃の温度で行われる。処理時間は、所
望の保存性を与えるように、殺菌値（Fo値）を
目安に合目的的に決定すれば良い。

殺菌処理は加熱空気等による任意の加熱方法に
より行うことができるが、スチーム又は熱水を用
いるレトルト殺菌機の使用、加圧、加熱処理が等
に適している。

このようにして得られたフライドポテト半製品
は、常温で６ケ月程度の保存性を有し、常温での
保存、流通後、必要なときに開封され、内容物は
たとえば170〜180℃の食用油中で2.0〜5.0分程度
油揚げを行うことにより最終的なフライドポテト
製品として食用に供せられる。

以下、実施例により本発明を更に具体的に説明
する。

例 １ 生馬鈴薯を水洗、剥皮して10×10×30m／ｍの
チツプに切断する。これを塩化カルシウム1.0％
及びＬ−アスコルビン酸1.0％を含有する水溶液
で60分間浸漬処理を行う。

その後、水洗、水切りを行い、180℃に加熱し
たサラダオイル中で30秒間油揚げ処理して、馬鈴
薯片の水分を生のそれより17％低下した。

冷却したポテトをポリエステル12μ／Al9μ／
ポリプロピレン60μからなる積層レトルト用袋
（320×250m／ｍ大）へ１Kg充填し、真空包装機
で100％バキユームシールを行う。

加圧熱水回転式レトルト殺菌機にて120℃×20
分間殺菌して終了後直に冷却する。

本条件で作成した製品を25℃１ケ月間保存後開
封し180℃に加熱したサラダオイルで約５分間フ
ライしたが過剰水分による油のはねは少く、ポテ
トの組織も固くしまり食味、風味は良好であつ
た。

また包装材料をポリエステル12μ／Al9μ／高
密度ポリエチレンからなる積層レトルト用袋に変
えたときも同様の結果が得られた。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 水洗、剥皮、切断した馬鈴薯を部分的に予備
   乾燥したのち、ガスバリアー性および遮光性を有
   する材料からなる包袋中に充填し、密封、包装
   し、その後更に加熱殺菌処理することを特徴とす
   る、常温保存用フライドポテト半製品の製造方
   法。 ２ 予備乾燥により、馬鈴薯中の水分を10〜20重
   量％減少する上記第１項の方法。 ３ 予備乾燥により馬鈴薯中の水分を61.0〜72.0
   重量％とする上記第１項または第２項の方法。 ４ 馬鈴薯を食用油で油揚げすることにより予備
   乾燥する上記第１項ないし第３項のいずれかの方
   法。 ５ 油揚げが170〜190℃で15〜60秒間行われる上
   記第４項の方法。 ６ 包装が熱可塑性プラスチツクフイルムとアル
   ミ箔の積層シートからなる上記第１項ないし第５
   項のいずれかの方法。 ７ 切断した馬鈴薯を予備乾燥前に酸化防止剤及
   び組織強化剤を含有する溶液で浸漬処理する上記
   第１項ないし第６項のいずれかの方法。 ８ 殺菌処理が加圧・加熱殺菌である上記第１項
   ないし第７項のいずれかの方法。 ９ 密封、包装が真空包装により行われる上記第
   １項ないし第８項のいずれかの方法。