JPS608181Y2 - 油圧式クラッチ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は油圧式クラッチの改良に関するものである。

従来の油圧式クラッチは、■入力軸に摺動自在に嵌合さ
れた油圧により作動する単一ピストンの移動により、ク
ラッチハウジングに係合された摩擦押え板を、被動軸に
係合された摩擦板に圧接して動力を伝達する方式、＠ク
ラッチ切換弁と一体またはその周辺に設けた減圧弁でピ
ストンに作用する油圧を調整して摩擦板押え板と摩擦板
との間にスリップを起させながら嵌脱する方式などがあ
る。

しかしながら■の場合、クラッチを切ったときピストン
は戻しばねにより作動前の位置に戻される機構になって
いるため、クラッチ嵌入時作動油圧室の油圧が戻しばね
のばね力を上回らないとピストンの移動が始まらずどう
しても作動遅れとなり、さらにクラッチ嵌入後戻しばね
のばね力が作動油圧室の油圧に抗して作用しているので
、ピストンの摩擦板に対する圧力がその分だけ減殺され
て作動油圧室の油圧の一部が無駄になっており、そのう
え中立時動力を断ったとき、ピストンを戻す力は予め設
定されたばね力だけなので、摺動部における摩擦抵抗、
作動油圧室内の残存作動油を排除しつ）ピストンを戻す
ので時間がか）る。

又クラッチを中立または後退から急速に前進へ嵌入した
場合、作動油圧室の油圧が上昇する迄ピストンによる圧
力が摩擦板に作用しないので動力伝達が開始されるまで
の時間がかかり、さらにピストンが移動する間のピスト
ン及び管路中の作動油の慣性力のため、ピストンの移動
終点では摩擦板に急激な圧力を加えることにより動力の
伝達始めは急激なものとなるので、各構成部材及び結合
部品が余分の安全率を見込む必要があり、振動、騒音を
伴ない船舶の乗心地を損なう原因ともなるなどの欠点が
ある。

＠の場合、減圧弁により作動油圧室の油圧を低下させて
摩擦板押え板の圧力を減じて摩擦板との間にスリップを
起させるので、作動油ポンプの発生圧を大巾に下げて作
動油圧室の油圧とするため作動油の大部分を捨てること
になり、さらに減圧弁と作動油圧室との間が長い細孔の
組合せにより連絡されていることもあって弁部分の脈動
などによりつながりが不安定なものになり勝ちである。

又作動油圧室に供給する油圧を下げると同時に油量も低
下するのでピストンの始動迄に時間を要し、さらにピス
トン及び作動油の慣性力を低下させる機能を持っていな
いので、ピストン移動の終点時の衝撃が大きいなどの欠
点を有している。

本考案は上記の欠点を解消するためになされたものであ
って、クラッチハウジング内に入力軸に油密固着しかつ
ピストンに油密で摺動自在に係合する戻しハウジングを
設けて、ピストンをはさんで作動油圧室に対向する戻し
油圧室を形成すると共に、入力軸に設けられた袖穴を介
してピストンの前進・後進のさいの両室への作動油の分
配を行う切換弁装置を備えることにより、クラッチの嵌
脱を速やかに行うと共にクラッチ嵌入のさいの衝撃を軽
減することのできる油圧式クラッチを提供することを目
的とする。

本考案の第１実施例を示す第１図について以下説明する
。

１はクラッチハウジング２内に設けた。２作動油圧室３
に、油密で摺動自在に入力軸４に外嵌され且つクラッチ
ハウジング２に内嵌されて設けられたピストンで、摩擦
板１１側に内側にインロ一部５を設けている。

６は入力軸４に油密固着され且つピストン１のインロ一
部５に油密で摺動自在に係合された戻しハウジングで、
ピストン１をはさんで作動油圧室３に対向する戻し油圧
室７を形成している。

８及び９は入力軸４に設けられた切換弁１５に連通ずる
作動油圧室３及び戻し油圧室７の夫々の袖穴、１２は摩
擦押え板１０と対向した摩擦板１１を軸方向摺動自在に
係合され、入力軸４に回転自在に嵌着されると共に、推
力軸歯車１４と噛合する歯車１３を備えた被動軸である
。

第１図口に示す切換弁１５は、巨体１５′に回動自在に
設けられ、外周に切欠部１７□、１７２−１７３ と、
中央の中空部１８を介して作動油ポンプ（図示せず）と
連通ずる油通孔１９とを設けた中空回転体１６を備える
と共に、巨体１５′に油路８１，８□９９１９ ９２と
を備えている。

切欠部１７２は油通孔１９と連通し、切欠部１７□、１
７３はオイルパン（図示せず）と連通しており、又油路
８□は油入８を介して作動油圧室３に、油路９２は袖穴
９を介して戻し油圧室７に夫々連通している。

油路８２及び９１は図示していないが後進クラッチの作
動油圧室及び戻し油圧室に夫々連通している。

中空回転体１６を回動させることにより、切欠部１７１
− １７２．１１３と油路８１− ｈ −９１，９２と
は１操作で次表の５種類の接続切換えができるよう配置
している。

ただし人は作動油送入、切は作動油排出である。

上記の構成において、前進の場合、切換え弁１５を操作
第１図口−Ｃの様にすると、作動油が油通路１９−切欠
部１７゜−油路８１−油入８を経て作動油圧室３に送ら
れると共に、戻し油圧室５内の作動油が油入９−油路９
□−切欠部１７１を経てオイルパンに返送されて、ピス
トン１が移動して摩擦板押え板１０を摩擦板１１に圧接
し、被動軸１２を介して推力軸（図示せず）に動力が伝
達される。

（後進クラッチは作動室の作動油が油路８゜−切欠部１
７１を経てオイルパンに排出され、戻し油圧室に油通路
１９−切欠部１７２−油路９□を経て作動油が送られて
いる）。

中立の場合、切換弁１５を第１図ローａの様に操作する
ことにより、前進の場合と逆に、作動油が油通路１９−
切欠部１７゜−油路９□−油入９を経て戻し油圧室７に
送られ、作動油圧室３の作動油が油入８−油路８□−切
欠部１７３を経てオイルパンに排出されて、ピストン１
が移動して摩擦板１１と摩擦押え板１０の圧接を解き動
力の伝達が切られる。

又切換弁１５を操作第１図ローｂの様にして作動油圧室
３と戻し油圧室７とに油通路１９−切欠部１７□−油路
８１，９□を経て作動油を送り、その全圧力の差を摩擦
板１１に作用させることにより前進トローリングを行う
ことができる。

この場合ピストン１の戻しを従来の戻しばねによらず油
圧によるのでクラッチ嵌入時作動油圧室３の油圧上昇に
伴って速やかにピストンが始動する。

また逆に中立時等動力を断ったとき戻し油圧室の油圧に
よりピストン１を戻すので戻りが速やかである。

又作動油圧室３と戻し油圧室７の作動油の分配は１個の
切換弁１５で連動して行うので同時嵌入などの失敗が起
らない。

又トローリングの場合両室３，７に同じ圧力の油圧をか
けると戻し油圧室７側よりも作動油圧室３側の受圧面積
が大きいのでその差圧が摩擦板１１を押す。

このため作動油ポンプの発生圧がそのま）両室３．７に
作用し調圧弁により捨てる油も少なく油圧のつながりが
安定している。

又両室３，７にか）る油圧を減圧すれば摩擦板への圧力
を微妙に調整できる。

さらに各構成部品は基本的に円筒加工なので既存の設備
で容易に製作することができる。

又必要に応じ公知の減圧弁を切換弁の付近に設はトロー
リング時の補助装置としてもよい。

本考案の第２実施例を示す第２図について以下説明する
。

１′はクラッチハウジング２内の作動油圧室３′に設け
られた、外ピストン２０と内ピストン２１とからなるピ
ストンである。

外ピストン２０はクラッチハウジング２に油密で摺動自
在に内嵌されて、摩擦板１１側に内側にインロ一部５′
と、その反対側の内側にインロ一部５′よりも小さな径
の段付きインロ一部２２を設けている。

内ピストン２１は油密で摺動自在に、数段付きインロ一
部２２を介して外ピストン２０に内嵌され且つ入力軸４
に外嵌されて、段付きインロ一部２２の段部２３に対す
る当て座部２４と、入力軸４附近の摩擦板１１側に戻し
ばね受部２５とを設けている。

６′は入力軸４に油密固着され且つ外ピストン２０のイ
ンロ一部５′に油密で摺動自在に係合された戻しハウジ
ングで、ピストン１′をはさんで作動油圧室３′に対向
する戻し油圧室７′を形威し、内ピストン２１の戻しば
ね受部２５に対向する戻しばね受部２５′を設けている
。

２６は内ピストン２５と戻しハウジング６′との夫々の
戻しばね受部２５．２５’の間に設けた戻しばねで、ば
ね力は従来のものより小さなものでよい。

外ピストン２０の段部２３と内ピストン２１の当て座部
２４、及び内ピストン２１の戻しばね受部２５に適宜調
整シムを挿入する。

その他の符号に対する名称及び構成は第１実施例と同様
である。

切換弁は第１実施例の場合と全く同様であって、１操作
で前表に示す５種類の切換えができるよう構成されてい
る。

切換弁の操作によるピストン１′に対する作動油圧室３
′と戻し油圧室７′の作用は第１実施例のピストン１に
対する作動油圧室３ど戻し油圧室７のそれと同様である
が、第２実施例の場合外ピストン２０と内ピストン２１
から構成されたピストン１′の作用が異なっている。

即ちクラッチを中立から前進に嵌入した場合、切換弁の
作用で戻し油圧室７′の油圧が急激に小さくなると共に
作動油圧室３′の油圧が高まるが、内ピストン２１が戻
しばね２６で支えられているため、外ピストン２０のみ
が速やかに始動し前進して摩擦板押え板１０を摩擦板１
１に圧接して動力伝達が開始される。

この場合外ピストン２０の受圧面積が小さく始動時の油
圧も低いので外ピストン２０移動終点時の衝撃は小さな
ものになる。

外ピストン２０の動力伝達は普通スリップを伴ないなが
ら滑らかに開始される。

作動油圧室３′の油圧が上昇してくると戻しばね２６の
ばね力に打ち勝って内ピストン２１も移動し、外ピスト
ン２０を段部２３を介して押圧して従来の単一ピストン
と同様に作動する。

又前進から中立に戻した場合、切換弁を介して作動油圧
室３′の油圧が低下し、戻し油圧室７′の油圧が上昇す
ると、戻しばね２６があるので内ピストン２１が速やか
に後退し、油圧の上昇につれて外ピストン２０も後退す
る。

又トローリング操作の場合、作動油圧室３′と戻し油圧
室７′の両方に同じ圧力の油圧をかけると戻し油圧室７
′側よりも作動油圧室３′側の受圧面積が大きいため、
その差により摩擦押え板１０を摩擦板１１へ押圧する。

第２実施例はクラッチ嵌入時作動油圧室３′の油圧上昇
に伴なって速やかにピストン１′が始動するが、ピスト
ン１′が外ピストン２０と内ピストン２１で構成されて
いるので、第１実施例に比較して滑らかな動力伝達が行
なわれて、外ピストン２０移動終点時の衝撃が小さい。

また中立降等動力を断ったときピストン１′の戻りが速
やかなこと、両室３’、？’への作動油分配を１個の切
換弁で行なうので操作ミスがないこと、トローリング操
作のさい調圧弁により捨てる油も少なく油圧のつながり
が安定していること、各構成部品を容易に製作できるこ
と、及び既製の減圧弁との組み合せも可能である等は第
１実施例の場合と同様である。

尚第２実施例の場合、使用者の好みにより、クラッチ嵌
入時のショック程度を変更したり、或は前進側と後進側
とを各々異なった構造とするなど基本構造に大きな変更
を加えることなく広範囲の選択が可能である特徴を備え
ている。

本考案は入力軸に摺動自在に外嵌された油圧ピストンの
移動により摩擦板押え板と摩擦板とを圧接させて被動軸
に回転動力を伝達するクラッチ装置において、クラッチ
ハウジング内に該入力軸に油密で固着され且つ該ピスト
ン内側に設けたインロ一部に油密で摺動自在に係合され
た戻しハウジングを設けて、前記ピストンをはさんで作
動油圧室に対向する戻し油圧室を形成すると共に、該両
油圧室に連通して前記入力軸に設けられた夫々の油入に
連結された油路を設けられた巨体、並びに該巨体に回動
自在に設けられ、中央に作動油ポンプに連結された中空
部、及び外周に該中空部に連通ずる切欠部とその両側に
オイルパンに連通する切欠部を設けた中空回転体から威
り、該中空回転体の回動で前記油路と前記切欠部との接
続切換えを行なうことにより、前記両油圧室に作動油の
給排を行なう切換弁装置を備えたことを特徴とする油圧
式クラッチなので次の効果を奏する。

（１）クラッチ嵌入時のクラッチ始動時間を著しく短縮
でき、応答性の優れたクラッチを提供できる。

（２）クラッチの嵌脱時の発生する衝撃を軽減できる。

（３）中立降等動力を断った場合油圧によりピストンを
戻すので戻りが早く、切れのよいクラッチを提供できる
。

（４）作動油圧室の油圧がそのま）摩擦板に対する圧力
となり途中の無駄が少ないのでエネルギー効率の良いク
ラッチを提供できる。

（５）１個の切換弁で作動油の給排を行うので同時嵌入
などの誤操作を防止できる。

（６） トローリング操作を容易に且つ微妙な調整を
行うことができる。

（７）既製の減圧弁との組み合せも可能であり、汎用性
に優れたクラッチを提供できる。

【図面の簡単な説明】

第１図は第１実施例を示し、イは主要部断面図（入力軸
中心より上部がクラッチ嵌入状態、下部がクラッチ非嵌
入状態）、口は切換弁の作用を説明するための既略断面
図、第２図は第２実施例の主要部断面図（入力軸中心よ
り上部がクラッチ嵌入状態、下部がクラッチ非嵌入状態
）である。 １．１′・・・・・・ピストン、２・・・・・・クラッ
チハウジング、３．３’・・・・・・作動油圧式、４・
・・・・・入力軸、５．５′・・・・・・インロ一部、
６，６′・・・・・・戻しハウジング、７，７′・・・
・・・戻し油圧室、８，９・・・・・・油入、８１，８
□？ ９１ ？ ９２・・・・・・油路、１０・・・・
・・摩擦板押え板、１１・・・・・・摩擦板、１２・・
・・・・被動軸、１５・・・・・・切換弁、１５′・・
・・・・巨体、１６・・・・・・中空回転体、１７□、
１７□、１７３・・・・・・切欠部、１８・・・・・・
中空部。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 入力軸に摺動自在に外嵌された油圧ピストンの移動によ
   り摩擦板押え板と摩擦板とを圧接させて被動軸に回転動
   力を伝達するクラッチ装置において、クラッチハウジン
   グ内に該入力軸に油密で固着され且つ該ピストン内側に
   設けたインロ一部に油密で摺動自在に係合された戻しハ
   ウジングを設けて、前記ピストンをはさんで作動油圧に
   対向する戻し油圧室を形成すると共に、該両袖圧室に連
   通して前記入力軸に設けられた夫々の油入に連結された
   油路を設けられた匣体、並びに該匣体に回動自在に設け
   られ、中央に作動油ポンプに連結された中空部、及び外
   周に該中空部に連通ずる切欠部と、その両側にオイルパ
   ンに連通する切欠部を設けた中空回転体から戒り、該中
   空回転体の回動で前記油路と前記切欠部との接続切換え
   を行なうことにより、前記両袖圧室に作動油の給排を行
   なう切換弁装置を備えたことを特徴とする油圧式クラッ
   チ。