JPS59598B2 - 溶接性にすぐれためつき鋼板 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明の主たる目的は、食缶、雑缶などの容器製造にお
いて、缶体としての接合を溶接にて容易に実施し、併せ
て缶体に必要な機能を得るためのめつき板のめつき層構
成に関するものである。

周知の如く、缶体の価値は耐久性能以外に外観、巻きし
め等の作業の容易さ、信頼性（不良缶のない事）、など
でほぼ決定されるが価格的にも合理的なものでなければ
ならない。従来から利用されているブリキのハンダ接合
缶は缶体としての完成度が高く、広範囲にわたり良好な
性能を示す事が実証されているが、ハンダによる接合の
ためにめつき板の錫の厚みの下限があり、高価な錫を大
量に使用せざるを得ず、またハンダ中の錫の使用コスト
も莫大なものになる。

またハンダ接合部は外観的にも良くないなどの欠点があ
る。ブリキに代つて登場したＴＦＳ（ティン、フリース
チール）には例えばギヤンスーパー（商品名）などの電
解クロム酸処理鋼板があり、ＴＦＳの主流を占めている
。

ＴＦＳの最大の問題はブリキ等で容易であつたハンダに
よる接合が極めて困難な事である。このために特殊な接
着剤を用いたＴＦＳ接着缶が広く実用されているが、ブ
リキハンダ缶の利用分野を全く充当できているわけでは
ない。溶接缶はスードロニツク溶接法、コノウエルド溶
接法などが開発され、一部缶体接合に実用化され、相応
の実績を上げているが、量的にはまだ少ない。この理由
は種々あるが、最も大きい理由は・ 溶接に適した缶用
素材が少ない事である。上記溶接法は全てシーム溶接法
をベースとするものであり、現在主に利用している素材
はブリキ、ＴＦＳ、、冷延鋼板などである。ブリキは価
格面、冷延鋼板（ブラックプレート）は耐食性能面から
の、不利があり、溶接法の利点を最大限に生かすにはＴ
ＦＳが最適である。ただし従来のＴＦＳは皮膜の金属ク
ロム層、クロム水和酸化物を主体とするオキサイドクロ
ム層のために、溶接時にチＩ八スプラツシユの発生が著
しく、充分な接合強度及び気密性、また美麗な溶接部外
観が得られない問題がある。その対策として溶接部のめ
つき皮膜を研磨等の機械的手段で除去する方法が例えば
コノウエルド法などで実用化されている。しかしこの方
法は研磨等による塵埃の発生、研磨部の耐食性能確保の
面で必ずしも最適の方法とは言えない。本発明は従来の
ＴＦＳ系材料の溶接性に関する諸問題を合理的に解決す
るために鋭意研究の結果なされたもので、溶接部のめつ
き層を事前に除去するなどの不利な手段をとる必要がな
く何らの溶接前処理をする事なく、容易に溶接出来、か
つ従来のＴＦＳに類似したコストで製造可能な溶接缶用
素材に関するものである。鋼板表面に極少量の錫が存在
すればシーム溶接時の初期に錫層が熱により融解する。

融解した錫は後述の第３図に示す如く、溶接加圧力のた
めに系外に排出される。第１図は溶接の態様を示す図で
１は缶用材料、２は電極輪、３は銅ワイヤーを示す。第
２図は同溶接部の拡大図で４は錫を示す。第３図は溶接
状況を示す図で、４′は融解した錫であり上層のクロム
と共に系外に排出される。５はナゲツトを示す。

錫層の上部にクロム及びオキサイドクロムの如き溶接性
を阻害する物質が存在しても一、これらは下地の融解し
た錫と一緒に系外に排出され、具体的に悪影響を及ぼさ
ない。本発明者の実験によれば、錫がこの様な作用を発
揮するためには、クロムめつきの厚み、溶接に先立つて
行なわれる塗装焼付条件にもよるが、錫層として０．１
９／イ以上必要である。溶接時の加圧力により溶接ラツ
プ部より錫が絞り出される。

錫が排出された面は酸化膜などのない、新鮮な面であり
、溶接時の板〜板間、および電極〜板間の接触も理想的
に行なわれ、スプラツシユ、チリのない気密性外観の良
い溶接部を得る事ができる。この様に下地に錫層が存在
すればその上層のクロムめつき層などの溶接への悪影響
を防止する事が出来るが、鋼板の両側に錫めつきを行な
うので、めつき厚が薄いとは言え、錫のコストが材料の
コストを押し上げる事になる。

本発明は特にこの問題を有利に解決したもので、錫めつ
き厚を表裏違えて、缶の内面に相当する板面の錫付着量
を多く、缶の外面に相当する部分の板面の錫付着量を他
面より少ないか、または錫めつきをしない事により、全
体としての錫めつき量を低減して、溶接缶用素材として
の価格を安く維持する事を特長としている。溶接部の缶
の内面側では溶接部のチリの発生をゼロにする必要があ
る。

チリが存在すれば、その上に補修塗装を行なつてち、塗
料密着性、塗膜下耐食性に欠点があり、缶の内容物によ
つては長期保存時にブリスタ一、鉄の異常溶出などの危
険性を生じる。またチリの飛び具合によつては補修塗装
がいきわたらないなどの問題が生じる可能性もある。こ
の様な見知から、また缶としての耐内容物性をより向上
せしめる点から、クロム、オキサイドクロム層は厚い方
が良く、錫めつき層は耐食性、溶接性の点から厚い方が
良い。缶のサイズにもよるが例えばスードロニツク溶接
を行なう場合、缶内部と缶外面の溶接リング（銅線が巻
きついている）の径が異なり、一般に缶外面部の径が大
きい。このため板〜銅ワイヤーの接触面積が缶外部で大
きく、缶内部で小さい。溶接リングは水冷されており溶
接用銅線を介して板面を冷却する作用も行なう。溶接後
の冷却をすみやかに行なわないとチリが発生しやすく、
このため缶の内側は外側より不利である。しかしめつき
面に錫が存在すると銅線と板との接触が良くなり、且つ
溶融錫の冷却作用により板の局部的異常蓄熱を抑制する
結果、チリ、スプラツシユの発生を効果的に防止するの
である。缶の外面は溶接時の冷却も比較的良好であり、
且つ微少のチリは外観に悪影響を及ぼさない限り、実用
上の問題は少ない。本発明はかかる見地から、板の両面
の錫めつき層の厚みを差厚にしたものである。

次に錫層の上にクロム、及びオキサイドクロム層を析出
せしめる理由を述べる。

本発明は缶材としてのコストを安価にするために錫めつ
き量を極力抑えて、塗装による耐食性を最大限に期待す
るものである。

塗装性（塗料密着性、塗膜下耐食性など）向上にはオキ
サイドクロムが最も有効であるが、オキサイドクロムと
錫めつき層の密着力は弱い。そこで金属クロム層を両者
の間に存在せしめてオキサイドクロムの素地密着性を飛
躍的に同上せしめたものであり、また金属クロム層の存
在により塗膜下塗食性（例えば耐サルフアーステン性、
アンダーカツトフイルムコロジオン性）が大巾に向上す
る等のメリツトも生じる。次に本発明のめつき厚の限定
理由を詳説する。

先づ錫めつき量について、内容物と接する缶の内側に相
当する板面の錫めつき量は５，６９／７ｒＩ以下、０．
１９／Ｒｎ′以上がのぞましい。５．６９／Ｍ゜以上で
はコスト的に錫めつき鋼板に比して格別な利点が見出せ
なくなる。

本発明の目的は缶用素材のコストダウンを錫付着量の減
少とそれを補償するクロムめつきによつて達成するので
、錫付着量が５．６ｆ１／イを越えると、通常錫層自体
の耐食性で十分であり、クロムめつきの必要性も殆んど
なくなる。錫付着量の下限は０．１９／Ｍ２であるが、
これはスードロニツク法などのシーム溶接性を確保する
に必要最小限の錫付着量を示すもので、これ以下である
と、錫層による溶接性能の飛躍的な向上は望めない。

溶接缶を製造する場合通常塗装板をフオーミング次いで
溶接する工程が採用されており、塗装後オーブンで塗膜
を焼付硬化せしめる際に微量の錫が地鉄と反応して合金
層を形成する場合が多い。錫、鉄合金は錫より熱融解し
にくく、従つて溶接性向上作用も小さい。発明者等の種
々の研究の結果錫付着量は０．１９／イ以上必要な事が
判明したのである。缶の外面に該当する板面の錫付着量
はＯ〜２．８９／ｗｌの範囲で好結果を得る。

錫付着量が２．８９／イを越えても性能的に不都合はな
いが、本発明の目的にある錫付着量の減少を満足しない
。缶体外面として要求される耐食性、塗装密着性は錫層
に加えてクロムめつき（電解クロム酸処理とも言える）
を行なう事により十分満たされるので錫付着量をいたず
らに増加するのは無意味である。錫付着量が零であつて
も板の他面に錫層が存在すれば溶接時の抵抗は著しく減
少し、且つ局部的な蓄熱及びそれにともなうチｌ八スプ
ラツシユの発生が効果的に抑制される。また缶の外面の
チリ、スブラツシユの許容限度は性能面から缶内面より
も、緩和されるのである。従つて缶の外面に相当する板
面の錫付着量は、零でも良い場合がある。次にクロム付
着量の限定理由を説明する。

オキサイドクロムの効果を最大限に発揮せしめノるには
金属クロムの存在が必要不可欠である。

金属クロム量が５η／ｍ゛以下ではオキサイドクロムの
素地密着性が悪くなり、その結果板の塗料密着性、塗膜
下耐食性能が低下する。金属クロム量が５０η／Ｍ２超
になると、めつき厚みを必要以上に厚くすることになり
、経済性からも無意味である。オキサイドクロム厚は塗
料密着性、耐食性、板の外観、溶接性能の点から範囲を
定めた。オキサイドクロム量（クロム水和酸化物を主体
とする皮膜中のクロム量を定量した値）が３即／イ以下
であれば、塗料密着性が著しく低下し、また中間防錆能
など、板を梱包している状態、あるいは缶の製造工程で
の仕掛り中に錆が生ずる危険性が強くなる。

オキサイドクロム量が３０ｍｇ／Ｔｒｌを越えると板が
黄褐色に着色し、商品価値を減じるとともにチリ、スプ
ラツシユなど溶接性能が悪くなる。反面塗料密着性など
性能面での向上は認められない。次に実施例を示す。

実施例 １ 板厚０．２１〜のめつき原板（ローモ板）を常法に従い
苛性ソーダ浴で電解脱脂後硫酸浴で浸漬酸洗した。

公知のフエロスタン法めつき浴を用い、陽極を錫、陰極
に試料をつけて電解した。

浴温は４５℃、電流密度は片面３０Ａ／Ｄｍ２×０．０
８秒及び他面は４５Ａ／ＤＴＩ×０．０８秒でそれぞれ
０．２ｇ／Ｔｒｌ（片面当り）及び０．３９／７ｒＩ（
片面当り）の錫めつき板を得た。次にＣｒＯ３ｌＯＯ９
／１ｓＨ２Ｓ０４１９／ｌのクロムめつき浴で試料を陰
極とし、陽極にＰｂ−Ｓｎ合金を用いて電解した。

浴温は４５℃、電流密度５０Ａ／ＤＴｒＩＸＯ．２秒で
処理して金属タロム量（Ｍ一Ｃｒ量と略記）２５η／Ｍ
２（片面当り）オキサイドクロム量９．５η／７ｒ１（
片面当り）の板を得た。この板にＤＯＳ（ジオクチルセ
バケート）を片面当り約５η／Ｍ２塗油後電気オーブン
で２１０℃Ｘ２Ｏ分間加熱した。この板をスードロニツ
ク溶接機（４００１１ｚ加圧力４５ｋｇ、ラツプ巾０．
８ｍｍ１溶接速度５０ｍ／分）にて錫めつき厚の薄い方
を缶外面にして溶接した。その結果チリ、スプラツシュ
が全く存在せず良好な溶接部を得た。なお、この試験片
（空焼をしない）にエポキシフエノール系塗料を５０ｍ
ｇ／ＤＴｒｌ塗装、２１０℃で１０分焼付後アンダーカ
ツトフイルムコロジオンテスト（ＵＣＣテスト）を行な
つたがその腐食巾は０．０７關と極めて小さく、良好な
耐食性能を示した。ＵＣＣテスト：塗装板に鋭利な刃物
で塗膜面から鉄素地に達する疵をクロス状に入れ、次に
これをクエン酸１５％、食塩１．５％からなる水溶液中
に浸漬し、５０℃で３日経過後のクロスカツト部の腐食
巾を測定する。

比較例 １ 実施例１と同じ要領で錫付着量が１ＴＩあたり０．０５
９／０．０５９のめつき板を得た。

次にＣｒＯ３ｌＯＯｆｌ／１１Ｎａ２ＳｉＦ６Ｏ．３９
／１．Ｈ２ＳＯ４１．０９／ｌのクロムめつき浴を用い
、浴温４５℃５０Ａ／Ｄｍ２ＸＯ．２秒の電解処理を行
ないＭ−Ｃｒ２ＯＴｎ９／Ｍ２、０Ｘ−Ｃｒ６ＴＩ９／
Ｒｒｌの板を得た。ＤＯＳ（ダイ、オクチル、セバケー
ト）を約５．０η／ｄ塗油後電気オーブンで２１『Ｃ２
Ｏ分間加熱した。この板を実施例１の条件でスードロニ
ツク溶接を行なつた。その結果、缶内面側溶接部のチリ
が１０傭の缶長にそつて約３０ケ存在し、耐内容物性上
問題があつた。なおＵＣＣテストは腐食巾０．１ｍ１Ｌ
で良好であつた。以下他の実施例は表示する。

（尚ＵＣＣテストは缶内面側を測定している。）

【図面の簡単な説明】

第１図は溶接状況を示す図であり、第２図は溶接部の拡
大図、第３図はその溶接状況を示す図でちる。 １：缶用材料、２：電極輪、３：銅ワイヤー４：錫、５
：ナゲツト。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 片面に錫めつき層が重量換算で０．１〜５．６ｇ／
   ｍ＾２存在し、更にその上層に金属クロムめつき層が重
   量換算で５〜５０ｍｇ／ｍ＾２未満存在する金属クロム
   めつき層の上層にクロム水和酸化物を主体とする皮膜が
   クロム量として３〜３０ｍｇ／ｍ＾２存在し、他面に錫
   めつき層が重量換算で０〜２．８ｇ／ｍ＾２存在し、そ
   の上層に金属クロムめつき層が重量換算で５〜５０ｍｇ
   ／ｍ＾２未満存在し、更にその上層にクロム水和酸化物
   を主体とする皮膜がクロム量として３〜３０ｍｇ／ｍ＾
   ２存在し、且つ、片面の錫めつき厚が他面の錫めつき厚
   よりも大なることを特徴とする、溶接性にすぐれためつ
   き鋼板。