JPS585796B2 - オフセツト印刷用アルミニウム粗面板の製造法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は一解粗面化処理法によるオフセット印刷版材用
のアルミニウム粗面板の製造法に関するものである。

一般にアルミニウム板をオフセット印刷用版材として使
用するためには製版処理に際しての感光膜の被着性の向
上と印刷に際しての湿し水保水性の改善のために予じめ
その表面を粗面化処理しておくことが行われるが、この
粗面化処理ば製版後、実際にオフセット印刷を行なった
場合に版材の印刷性能や耐刷性能に著しい影響をおよぼ
すので、その良否は版材製作上重要なポイントの一つに
なっている。

版材用アルミニウム板の粗面化処理法としてはポール研
摩法やブラシング研摩法などの機械的処理法もあるが、
塩酸や硝酸あるいはこれらを主体として含む電解液を使
用して板面を電気化学的に腐食する電解粗面化処理法は
アルミエウム単板の処理のみならず、ストリツプ板を連
続的に処理するのに適しているので近年着目されている
。

而して、電解処理法では上記したように塩酸または硝酸
、あるいはこれらを主体として含む電解液を使用し電解
槽内において黒鉛板等の適当な電解板を対極とし、交流
電流によってアルミニウム板の電解処理を行なうのであ
るが、硝酸またはこれを主体とする電解液を使用した場
合に得られる粗面化面は比較的微細なピット構造を有し
、且つそのピット面に更に極く微細な凹凸が存在する二
重構造的なピット構造を示すが、そのピット深さが全体
的に浅いのに対し、塩酸またはこれを主体とする電解液
を使用した場合にはピット深さは一般に深いが、ピット
面が比較的平滑であって、硝酸系の電解液を使用したと
きのような複雑な凹凸面とはならない。

このような粗面化面のピット構成の違いは版材の印刷性
能や耐刷性能に微妙に影響し、硝酸系電解液による粗面
版より得られた版材は印刷部数は比較的少ないが、繊細
な画像の要求される高級美術印刷の如きに適し、また塩
酸系電解液による粗面板より得られた版材は新聞、雑誌
などの耐刷力を重点とする印刷に適するといわれ、それ
ぞれの適用範囲にある程度の限界があった。

また、従来の交流電流による電解粗面化法の共通的な問
題点として電解条件と電解液組成との間に強い相関性が
あって、均一な粗面板を安定して得ることができる好適
電解条件に対して適応できる電解液の組成範囲が比較的
狭いので、これが電解粗面板の版材としての適用範囲を
一層狭いものにしていた。

発明者らは種々研究の結果、塩酸系電解液を使用して版
材用アルミニウム板の電解粗面化処理を施こすに際し、
交番波形電流を用いその陽極時雷圧ＶＡが陰極時電圧Ｖ
ｃよりも大なるように槽電圧を印加し、陽極時電気量Ｑ
Ａを陰極時電気量Ｑｃよりも大なるように通電量を調整
してやるときは二重構造的な微細凹凸面を有する均一な
粗面板を極く短時間の電解処理で効率的に得ることがで
きること、また、電圧調整によって与えられる陽陰極時
の電気量比ＱＣ／ＱＡの比率を適宜変化せしめることに
より、ピット径や深さを任意に調整することができるこ
となどを見出した。

こうして得られた二重細造的凹凸面を有するアルミニウ
ム粗面板はこのまゝでも使用出来るが、さらに硫酸電解
液を用いた陽極酸化処理を施し板面に硫酸陽極処理特有
の硬質多孔性の保護皮膜を形成さすことによって、感光
膜被着性、湿し水保水性および耐摩耗性の一層改善され
た版材用粗面板とすることができる。

即ち、本発明はアルミニウム板を塩酸系電解液中で陽極
時電圧ＶＡが陰極時電圧Ｖｃより大なるよう槽電圧を調
整印加した交番波形電流を用い電解粗面化処理を施し、
ついで硫酸電解液中で陽極酸化処理を施すことによって
硬質の保護皮膜を有する粗面化面を形成せしめることを
特徴とするオフセット印刷用アルミニウム粗面板の製造
法である。

本発明における電解粗面化処理において使用される塩酸
系電解液とは０．０５〜５重量％の範囲で塩酸単味を含
む水溶液電解液のほかこれに腐食抑制剤、安定化剤とし
て例えば塩化亜鉛、塩化アンモニウム、食塩等のｃｌを
含む塩類、モノアミン、ジアミンなどのアミン類、アル
デヒト、ＥＤＴＡ等の有機剤、燐酸、クロム酸、硝酸な
どの酸類の極く僅かを添加したものであっても差支えな
い。

また交番波形電流とは正負の極性を交互に交換せしめて
得られる波形の電流であって、第１図にその電圧波形図
を例示する。

第１図においてａは正弦波、ｂは矩形波、Ｃは台形波の
電圧波形を示すが、本発明の交番波形電流は上記した電
圧波形のものに限るものでない。

本発明の電解粗面化処理においてはかかる電圧波形を示
す交番波形電流を用い、第１図に示す如く陽極時電圧Ｖ
Ａを陰極時電圧ｖｃよりも大なるように槽電圧を印加す
ることによって陽極時電気量ＱＡが陰極時電気量Ｑｃよ
りも大なるように陽陰極時の通電量を調整しつつアルミ
ニウム板の電解粗面化を行なうものであるが、これによ
って板材表面に均一且つ安定的に二重構造ピットを有す
る粗面化面を形成するような陽極時電気量ＱＡと陰極時
電気量Ｑｃとの比率ＱＣ／ＱＡは約０．３〜０．８、好
適には０．４〜０．７の範囲である。

また好ましい電圧範囲は陽極時電圧ＶＡを基準とすると
き１０〜５０Ｖの範囲であり、陰極時電圧Ｖｃは勿論、
陽極時電圧ＶＡよりも小さい値をとるように印加する。

また、上記交番波形電流における陽極時間ｔＡと陰極時
間ｔｃとはほぼ同一でもよいが、他の電解条件が同じ場
合には上記した電気量比の範囲内で陽極時間ｔＡより陰
極時間ｔｃを長くする程電解処理に要する時間を短縮す
ることができるので、電気消費量や電解液消費量を節減
するこさができる。

また、交番波形電流における周波数ｆについては通常の
交流周波数の範囲、つまり５０Ｈｚ乃至６０Ｈｚに限定
せられるものではない。

しかし乍ら周波数を高くする程形成される粗面化面のピ
ットが細密化する傾向がある。

上記した電解粗面化処理を施した二重構造的凹凸面を有
するアルミニウム粗面板に対し、さらに硫酸電解液中で
陽極酸化処理を施す。

これによって板面に硫酸陽極酸化処理特有の硬質多孔性
の陽極酸化皮膜が形成され、これと前記した二重構造的
凹凸面の形成と相俟って製版処理に際しての感光膜被着
性とオフセット印刷に際しての湿し水保水性の一段の向
上と、耐摩耗性の改善による耐刷性の向上をはかること
ができ、従って印刷性能、耐刷性共にすぐれたオフセッ
ト印刷用版材を得ることができる。

なお、硫酸電解液による陽極酸化処理条件は一般的な陽
極酸化処理条件が適用される。

次に本発明の実施例について述べる。

純度９９．５％のアルミニウム板（９５０ｍｍ×１ ５
０ ０ｍｍ× Ｏ．３ｍｍ）を苛性ソーダ溶液で脱脂
洗浄した後、半連続電解装置を用い、濃度７．７ｇ／ｌ
、液温３５℃の塩酸電解液を使用し、周波数１００Ｈｚ
，陽極時間ｔＡと陰極時間ｔｃとの比率ｔｃ／ｔＡが１
．７８となるように調整した台形波交番電流を用い、陽
極時電圧ＶＡが２６．４Ｖ，陰極時電圧Ｖｃが１１．Ｏ
Ｖの条件で電解槽内の滞留時間が９５秒となる送り速度
でアルミニウム板を移動させながら電解粗面化処理を行
なった。

なお、電流密度は陽極時が３ ０． Ｏ Ａ／ ｄｍ２
、陰極時が１３．３Ａ／ｄｍ２であった。

次いで水洗後、濃度３０％、温度５５℃の硫酸溶液中に
５分間浸漬して表面に付着したスマットを除去した後水
洗し、この板を濃度１７８ｇ／ｌ１液温１９℃の硫酸電
解液を用い電流密度ＩＡ／ｄｍ２で６分４０秒間直流に
よる陽極酸化処理を施し水洗乾燥した。

このようにして得られた粗面板は表面アラサ３．５μ（
Ｈｍａｘ）で全面均一な二重構造的凹凸面を有し、陽
極酸化皮膜の厚みは約２μであった。

このようにして得られた粗面板にジアゾ系感光液を用い
て製版処理を施し、これを用いてオフセット印刷を行な
ったところ従来法の塩酸系浴を用いて交流により電解粗
面化処理を行ない、以後同様に陽極酸化および製版処理
を施したものに較べて湿し水の管理が容易で刷り易く、
画線細部の表現がすぐれた印刷物が得られ、耐刷性も良
好であって５万部の印刷も行なっても伺ら変化なく良好
な印刷物が得られた。

以上述べた如く本発明法によるときは従来ピット深さは
深いが、ピット構造は単純であって、従って耐刷力はす
ぐれているが印刷性能において若干劣ることのあった塩
酸系電解液を使用して、二重構造的な微細凹凸面を有す
る均一な粗面板を、極く短時間の電解処理で効率的に得
ることができ、またそのピット深さも適当な電解条件を
選ぶことによって任意に調整することができるので、印
刷性能および耐刷性の両者を満足するオフセット印刷用
のアルミニウム粗面板を容易にうることができる上、陽
極時間比、周波数の調節によって電解時間を短縮するこ
とが可能であるので、経済的な効果も大きい。

【図面の簡単な説明】

第１図は交番波形電流として得られる電流の電圧波形図
である。 ａ・・・・・・正弦波、ｂ・・・・・・矩形波、Ｃ・・
・・・・台形波。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ アルミニウム板を塩酸系電解液をもちい陽極時電圧
   が陰極蒔電圧より犬なるように槽電圧を印加した交番波
   形電流によって電解粗面化処理を施としたのち、硫酸電
   解液中で陽極酸化処理することを特徴とするオフセット
   印刷用アルミニウム粗面板の製造法。