JPS582591B2 - 熱延鋼板の酸洗方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明は、均一で、美しい外観の酸洗板が得られる熱
延鋼板の酸洗方法に関する。

酸洗のとき、鋼板表面に黒い線状模様の発生がしばしば
経験される。

この模様は、特に冷延に廻さずに熱延鋼板のまま製品化
されるとき、その商品としての価置を著しく落とすこと
になるから、可及的に避けたいところである。

本発明者らの種々な調査結果によれば、上記線状模様の
発生は、鋼中Ｐの偏析に起因するものであり、酸洗の際
、Ｐ偏析部分で局部電池が形成され、結晶粒内と粒界の
酸洗性に差ができる、つまり酸洗液中への溶出の度合い
が不均一になることによる、という事実が判明した。

従ってその対策としては、製鋼段階に迄遡って成分の規
制や鋳込時の偏析を抑制すること等が考えられるが、上
記線状模様の発生には極く僅かな偏析があれば充分であ
り、製鋼段階にてこの微量の偏析までを抑え込むという
のは事実上不可能である。

そこで本発明者らは、鋼板の成分分布にバラツキがあっ
ても均一な酸洗が実現できる酸洗方法の開発を意図し、
実験、研究の結果、酸洗液にＮｉイオンを適量添加する
ことにより、上記線状模様の発生を防いでつねに安定し
た美しい外観を有する酸洗板を得ることに成功した。

すなわち本発明は、Ｎｉイオン４０〜１００ｐｐｍ含む
酸洗液を用いて酸洗を行うことを特徴とする熱延鋼板の
酸洗方法を要旨とする。

鋼板表面の偏析部では、前記局部電池の作用により、結
晶粒内に較べ粒界の方が酸洗され易くなって選択的に溶
出する現象が起り、その結果線状模様が付されることに
なる。

模様のない正常な部分と模様部分の表面の電子顕微鏡写
真（×２５０）を、それぞれ第１図イとロに示す。

正常部分イに対し、模様部分ロでは粒界が明確に認別で
きる。

上記本発明に基くＮｉ添加によりこの模様発生が抑制さ
れる理由としては、以下の如く考えられる。

酸洗液中にあるＮｉイオンは、酸洗時鋼板表面に付着す
る傾向があるが、このような傾向は酸洗され易い部分、
つまり上記結晶粒内と粒界を較べると粒界の方がつよい
。

このため、酸洗液中に充分な量のＮｉイオンが存在する
と、鋼板表面のＰ偏析部分では粒界に粒内より多くのＮ
ｉが付着し、その結果粒界におげる酸洗速度がより大巾
に遅延され、粒内でのそれとの差がなくなる傾向となり
、模様の形成が効果的に解消される。

第２図として、その状況を示す偏析部分の電子顕微鏡写
真（×２５０）の一例を掲げておく。

第１図ロと較べ、粒界が不鮮明で、第１図イの正常部分
とよく似た状態になっているのが判る。

第３図のＡは、酸洗液中のＮｉイオン量と酸洗板の模様
発生程度の関係を示している。

また同図には、Ｂとして熱延鋼板として基本的に必要な
化成処理性に及ぼすＮｉの影響をも併せて記した。

まず模様発生に関するデータは、０．０６Ｃ−０．３２
Ｍｕ−０．０１Ｓｉ−０．０１５Ｓ−０．０９Ｐという
成分のリムド鋼鋼板（２．３ｍ厚×５０ｍｍ巾×７０ｍ
ｍ長）を供試片とし、ＨＣＩ：４．８ｗｔ％、ＦｅＣｌ
２：２５．７ｗｔ％を含む酸洗液にＮｉを水溶液の形で
種々な濃度に添加して、液温：８０℃、酸洗時間：４分
で酸洗を行ない、その各酸洗板における線状模様の発生
程度を目視にて観察した結である。

模様発生の程度は、ｌ：発生なし、２：薄く発生、３：
模様が明確に表われる。

以上の３段階で評価した。

化成処理性に関するデータは、上記の実験で得られた各
酸洗板に、リン酸処理液として日本パーカーボンデライ
ト井３７１の５０℃溶液を用い−３０秒間のスプレーで
０．８ｋｇ／ｃｍの塗布を行う化成処理を施し、６０℃
×ｌｍｍの強制乾燥後、鋼板表面の黄錆発生を目視調査
した結果に基く。

黄錆発生の評価は、１：発生なし、２：僅かに発生、３
：発生著しい、以上３段階によった。

Ｎｉイオン含有による模様低減の効果は、Ｎｉイオン含
有量が４０ｐｐｍとなって始めて発現し、５０ｐｐｍ
以上で最も高く安定する。

ところが１００ｐｐｍを越えると、黄錆の発生が示すよ
うに化成処理性が不足を来たす。

本発明において、酸洗液中のＮｉイオン含有量を４０〜
１００ｐｐｍとしたのは、上記の理由による。

因みに、Ｎｉイオンは一般の峻洗に使用される酸洗液に
も含まれているのが通例ではあるが、このＮｉ含有量は
上記の本発明範囲より可成り低いものであり、これでは
先に述べたＮｉの効果は期待すべくもない。

酸洗槽を複数備える連続酸洗ラインにて本発明を実施す
る場合は、Ｎｉイオンの添加を酸濃度の高い酸供給側の
２〜３槽について行えば、充分な効果が得られるもので
ある。

出願人工場での実績によれば、５つの塩酸酸洗槽を備え
る連続酸洗ラインにて、通常の方法つまり酸洗液中のＮ
ｉイオン濃度を４０ｐｐｍ以下にして熱延コイルの酸洗
を行なったが、この場合は参考図イの写真にみる如く明
確な黒い線状模様が表われたのに対し、本発明に従って
上記ラインの酸供給側の第４と第５番目の槽の酸洗液中
にＮｉイオンをＮｉＣｌ２粉末の形で供給しその酸洗液
中のＮｉイオン濃度を５０ｐｐｍに上げて、前出のコイ
ルと同一チャージの、云い換えれば成分偏析の度合いが
同じと考えられる別のコイルを酸洗したところ、参考図
ロの写真のように同図イでみられる線状模様は略完全に
消失せられた。

以上の説明から明らかなように本発明の方法は、酸洗板
表面への線状模様の発生を効果的に防止することができ
、しかも本来の化成処理性が損なわれるといった懸念も
なく、従って熱延鋼板の商品価値向上に著しい効を奏す
るものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は酸洗板の表面の電子顕微鏡写真（×２５０）で
あり、イは模様のない正常部分、ロは模様部分をそれぞ
れ示す。 第２図は本発明により酸洗を行なった熱延鋼板の表面に
おける偏析部分の電子顕微鏡写真である。 第３図は酸洗液中のＮｉイオン濃度が酸洗板の模様発生
並びに化成処理後の赤錆発生に及ぼす影響を示す図表で
ある。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 熱延鋼板の酸洗処理において、Ｎｉイオン４０〜１
   ００ｐｐｍ含む酸洗液を用いることを特徴とする熱延鋼
   板の酸洗方法。