JPH1194001A - ダンパー装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】簡単な構成で、減衰力に速度依存性を付与し、
オイル漏れの問題を無くし、減衰力の温度依存性を無く
し、大容量の減衰力発生を可能にし、長期耐久性の向上
を図る。 【構成】ピストン外周のチョーク部３により連通する２
つのシリンダ室５Ａ、５Ｂ内に収容されたエラストマー
６を、ピストン４の移動によりチョーク部を通して移動
させることにより振動を減衰する塑性流動抵抗型のダン
パー装置において、ピストンロッド２とピストン４を別
体にして溶接又は蝋付けにより位置決め固定し、シリン
ダ室端面部材１０、１１をシリンダ１の両端部に嵌合し
て溶接又は蝋付けで位置決め固定する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、建築、土木あるい
は機器などの各種の構造物における振動を減衰するため
のダンパー装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】建築、土木あるいは機器などの各種の構
造物においては、地震や風による振動を低減する目的で
ダンパー装置を設けることが行なわれている。このダン
パー装置は、構造物の変位が集中するところ（各方向に
大きな振幅が生じるところ）に装着される。この種のダ
ンパー装置は、減衰の対象となる変位の形態により、層
間ダンパーシステム、ジョイントダンパーシステム、部
材内ダンパーシステムの３つに分類することができる。
また、前記ダンパー装置は、使用する減衰材料により、
履歴型ダンパー装置、粘性抵抗型ダンパー装置、電磁力
型ダンパー装置の３つに分類することができる。前記履
歴型ダンパー装置としては、鋼製弾塑性ダンパー、鉛押
出し型ダンパー、摩擦ダンパーなどが使用されている。
また、前記粘性抵抗型ダンパー装置としては、オイルダ
ンパー、粘性ダンパー、粘弾性ダンパーなとが使用され
ている。さらに、前記電磁力型ダンパー装置としては、
磁気ダンパー、ＥＲダンパーなどが使用されている。

【０００３】本発明は、特に、前記ジョイントダンパー
システムで使用するのに好適な前記粘性抵抗型ダンパー
装置の一種である塑性流動抵抗型のダンパー装置に係わ
るものである。本発明に関する従来技術を開示する文献
には、例えば、シリコンゴム等の塑弾性流動体を用いる
ピストン・シリンダ型の制振装置を開示する実開平２−
９０４４３号がある。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
粘性抵抗型ダンパー装置にあっては、粘性せん断型ダン
パー装置と比較して、大容量の減衰力を発生することが
困難であり、減衰力特性に温度依存性があり、これらを
解決することが要請されていた。また、オイルダンパー
のようなオイル漏れの問題を単純な構成で解消すること
も強く要請されていた。さらに、鉛押出し型ダンパーや
摩擦ダンパーなどの履歴型ダンパー装置と比較すると、
減衰力特性が速度依存性を有し、構造物の熱膨張に伴い
ダンパーが伸縮して余計な力を構造物に作用させてしま
うという不都合もあった。

【０００５】本発明はこのような技術的課題に鑑みてな
されたものであり、本発明の目的は、簡単な構成で、減
衰力にオイルダンパーのような速度依存性を付与するこ
とができ、オイル漏れの問題を無くして維持管理の容易
化を図ることができ、減衰力の温度依存性を無くすとと
もに大容量の減衰力を発生することができる塑性流動抵
抗型のダンパー装置を提供することである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】請求項１の発明は、上記
目的を達成するため、ピストンにより区画されたシリン
ダ室内に収容したエラストマーがピストンの移動により
シリンダ室間を移動して振動を吸収することにより、振
動を減衰する塑性流動抵抗型のダンパー装置において、
前記ピストンロッドと前記ピストンを別体に加工して該
ピストンを該ピストンロッドに嵌合した後溶接又は蝋付
けにより位置決め固定し、前記エラストマーを前記シリ
ンダ室内に収容保持するためのシリンダ室端面部材を前
記シリンダの両端部に嵌合した後これらのシリンダ室端
面部材を前記シリンダに溶接又は蝋付けで位置決め固定
することを特徴とする。

【０００７】請求項２及び３の発明は、上記請求項１の
構成に加えて、前記ピストンロッドの先端部を前記構造
物に連結するためのピストンロッド取付部材と前記シリ
ンダを前記構造物に連結するためのシリンダ取付部材と
を設け、前記ピストンロッド取付部材を前記ピストンロ
ッドに対して位置調節可能な締結手段により固定する構
成、あるいは、前記シリンダ室端面部材の内径部により
ピストンロッドの摺動部を封止するシール材を保持する
構成とすることにより、上記目的を達成するとともに、
性能の向上、生産性の向上及び取扱性の向上を図ること
ができる塑性流動抵抗型のダンパー装置を提供するもの
である。

【０００８】

【発明の実施の形態】以下図面を参照して本発明の実施
の形態を説明する。図１は本発明を適用した塑性流動抵
抗型のダンパー装置の一実施例を示す縦断面図であり、
図２は図１中の線２−２に沿った断面図であり、図３は
図１中の矢視線３−３から見た部分側面図であり、図４
は図１中の矢視線４−４から見た端面図である。

【０００９】図１〜図４において、中空円筒形のシリン
ダ１の内部を通してピストンロッド２が挿通され、該ピ
ストンロッド２にはシリンダ１の内径との間にチョーク
部（狭隘部）３を形成するピストン（突起部）４が設け
られている。シリンダ１とピストンロッド２との間に形
成されるシリンダ室５内にはエラストマー６が収容（充
填）されている。前記エラストマー６としては、例えば
未加硫ゴムやシリコンゴムなどの塑性流動抵抗物質が使
用される。前記シリンダ室５は前記ピストン４により両
側のシリンダ室５Ａ、５Ｂに区分されており、これらの
シリンダ室５Ａ、５Ｂは前記チョーク部３を通して連通
している。前記エラストマー６は、これらのシリンダ室
５Ａ、５Ｂ及び前記チョーク部３内の空間に収容されて
いる。

【００１０】前記ピストンロッド２の先端部（図１中の
左端部）には、該ピストンロッドを一方の構造物（不図
示）に連結するためのピストンロッド取付部材７が設け
られている。このピストンロッド取付部材７は、該部材
に形成された雌ねじにピストンロッド２の先端部に形成
された雄ねじをねじ込むとともにロックナット８を締結
することにより、該ピストンロッド２に対して軸方向位
置調節可能に固定されている。前記ピストンロッド取付
部材７には、ダンパー装置を一方の構造物に取付けるた
めの取付け孔１７が形成されている。前記シリンダ１の
反対側端部（図１中の右側端部）には、該シリンダ１を
他方の構造物（不図示）に連結するためのシリンダ取付
部材９が固定されている。このシリンダ取付部材９に
は、ダンパー装置を他方の構造物に取付けるための取付
け孔１８が形成されている。

【００１１】前記シリンダ１の図１中の左側端部には、
前記エラストマー６を前記シリンダ室５内に収容保持す
るための第１のシリンダ室端面部材１０が位置決め固定
されている。この第１のシリンダ室端面部材１０は前記
シリンダ１の内径部に嵌合した後溶接又は蝋付けで位置
決め固定されている。また、前記シリンダ１の図１中の
右側端部には、前記エラストマー６を前記シリンダ室５
内に収容保持するための第２のシリンダ室端面部材１１
が位置決め固定されている。この第２のシリンダ室端面
部材１１は前記シリンダ取付部材９と共通の部材つまり
該シリンダ取付部材９の一部（シリンダ１との連結部）
で形成されており、該第２のシリンダ室端面部材１１
（すなわちシリンダ取付部材９）も前記シリンダ１の内
径部に嵌合した後溶接又は蝋付けで該シリンダ１に対し
て位置決め固定されている。この場合、前記第１及び第
２のシリンダ室端面部材１０及び１１の外径部に形成し
た雄ねじ部を前記シリンダ１の両端部に形成した雌ねじ
部にねじ込んで嵌合してもよい。

【００１２】前記ピストンロッド２の図１中の右側部分
（前記ピストンロッド取付部材７の反対側部分）は、シ
リンダ１を通り越して延び出しており、その延び出し部
分は前記シリンダ取付部材９に形成された中心孔１２に
より摺動自在に嵌合支持されている。前記第１のシリン
ダ室端面部材１０の内径部には、ピストンロッド２の摺
動面を封止するためのシール材１３と該シール材１３を
位置決め保持するための保持部材（リテーナ）１４が装
着されている。同様に、前記第２のシリンダ室端面部材
１１（本実施例ではシリンダ取付部材９の左端部分に形
成されている）の内径部にも、ピストンロッド２の摺動
面を封止するためのシール材１５と該シール材１５を位
置決め保持するための保持部材（リテーナ）１６が装着
されている。

【００１３】本実施例においては、前記ピストンロッド
２と前記ピストン４は別体の部品として加工（製造）さ
れ、該ピストン４を該ピストンロッド２の所定位置に嵌
合した後、該ピストン２は溶接又は蝋付けにより該ピス
トンロッド２に位置決め固定されている。この場合、前
記ピストン４に形成した雌ねじ部を前記ピストンロッド
２に形成した雄ねじ部にねじ込んで嵌合してもよい。

【００１４】以上説明したダンパー装置は、地震や風な
どの加振力により相対変位（振動）する２つの構造物の
それぞれに前記ピストン取付部材７と前記シリンダ取付
部材９を連結して使用されるものである。図５は本発明
によるダンパー装置を２つの建物（構造物）の間に取付
けて使用するジョイントダンパーシステムを例示する概
略図である。図５において、第１の建物（構造物）２１
と第２の建物（構造物）２２との間に本発明によるダン
パー装置２０が取付けられている。図６は本発明による
ダンパー装置２０を建物等の構造物２３を構成する部材
２４Ａ、２４Ｂ、２４Ｃ、２４Ｄのそれぞれの内部に取
付けて使用する部材内ダンパーシステムを例示する概略
図である。

【００１５】図１〜図６において、地震等で構造物間
（２つの構造物の間、建物等における２つの層の間、構
造物を構成する部材の各部分の間などを含む）に相対移
動が生じてピストン４がシリンダ１に対して移動する
と、シリンダ１とピストンロッド２との間に形成される
シリンダ室５内に収容されたエラストマー６が前記チョ
ーク部３を通して前記ピストン４で区分されたシリンダ
室５Ａ、５Ｂ間を移動し、それ際のエラストマー６の塑
性流動抵抗（内部損失）により振動を吸収し、それによ
って振動を減衰する塑性流動抵抗型のダンパー装置とし
て作動するものである。

【００１６】すなわち、シリンダ１内のエラストマー６
の容積は一定であるので、ピストン４とシリンダ１が相
対的に移動すると、エラストマー６はピストン４の外径
面とシリンダ１の内径面との間のチョーク部（狭隘部）
３を通過して移動する。このとき、ピストン（突起部）
の外径面（せん断面）に作用するせん断応力（塑性流動
抵抗）が減衰力として作用する。この減衰力の大きさ
は、同一エラストマーのもとでは、チョーク部３の隙間
寸法、ピストン４の外径面の面積、ピストン４の移動速
度などによって変化する。

【００１７】エラストマー６を減衰材として用いること
により、鉛押し出し型ダンパー装置と比較して、緩速変
形時の抵抗を小さくすることができる。また、減衰力の
発現はエラストマー６が前記チョーク部（狭隘部）３を
通過するときの抵抗によるので、減衰力の温度依存性を
小さくすることができる。また、制振用のダンパー装置
において、減衰力を発現するチョーク部３を形成するた
めの突起（ピストン）４をピストンロッド２と別体に加
工し、該突起４をピストンロッド２にねじ込み等で所定
位置に嵌合した後、溶接又は蝋付け等で位置決め固定す
る構成としたので、外径寸法や外径面積（軸方向長さ）
が異なる種々のピストン４を選択して後付けで組付ける
ことが可能となり、共通のピストンロッド２を使用しな
がら種々の（所望の）減衰力を発現することが可能にな
る。

【００１８】さらに、ピストンロッド２の先端部を一方
の構造物に連結するためのピストンロッド取付部材７と
シリンダ１を他方の構造物に連結するためのシリンダ取
付部材９とを設け、前記ピストンロッド取付部材７を前
記ピストンロッド２に対して軸方向（長さ方向）位置調
節可能な締結手段（ねじ係合とロックナット８）により
固定する構成にしたので、ダンパー装置を構造物間（構
造物の内部メンバーの間や階層間を含む）に容易にかつ
正確に取り付けることが可能になる。

【００１９】また、エラストマー６を前記シリンダ室５
Ａ、５Ｂ内に収容保持するためのシリンダ室端面部材１
０、１１をシリンダ１の両端部にねじ係合等により嵌合
（ねじ込みを含む）した後、これらのシリンダ室端面部
材１０、１１を前記シリンダ１に溶接又は蝋付けで位置
決め固定する構成にしたので、同一仕様のシリンダ１に
対して異なる形状寸法のシリンダ室端面部材を異なる位
置に後付けで選択的に組付けることが可能となり、共通
のシリンダ１を使用しながら種々の仕様（減衰力、スト
ローク、ピストンロッド径）のダンパー装置を製造する
ことが可能になる。さらに、所定間隔をおいて配置され
たシリンダ室端面部材１０、１１の内径面でピストンロ
ッド２を摺動自在に支持するとともに、各シリンダ室端
面部材１０、１１の内径部によりピストンロッド２の摺
動部（外径摺動面）を封止するシール材１３、１５を保
持する構成としたので、前記シール材１３、１５の材質
としてテフロン等の自己潤滑性に優れた材料を選択する
ことにより、ピストンロッド２に曲げモーメントが作用
しても良好な制振作用を維持することが可能になる。

【００２０】こうして、シリンダ１とピストンロッド２
との間に形成されるシリンダ室５内に収容したエラスト
マー６がピストン４の移動により該ピストンで区分され
たシリンダ室５Ａ、５Ｂ間を移動して振動を吸収する
（減衰する）塑性流動抵抗型のダンパー装置であって、
簡単な構成で、減衰力にオイルダンパーのような速度依
存性を付与することができ、オイル漏れの問題を無くし
て維持管理の容易化を図ることができ、減衰力の温度依
存性を無くすとともに大容量の減衰力を発生することが
できるダンパー装置が得られた。そして、上記構成のダ
ンパー装置を採用することにより、従来の鉛押し出し型
ダンパー、摩擦ダンパー及びオイルダンパーでなければ
実現することができなかった１０００ｋＮ（１００ｔ
ｆ）クラスのエラストマーを用いる塑性流動抵抗型のダ
ンパー装置を実現することができた。

【００２１】

【発明の効果】以上の説明から明らかなごとく、請求項
１の発明によれば、シリンダとピストンロッドとの間に
形成されるシリンダ室内に収容したエラストマーがピス
トンの移動により該ピストンで区分されたシリンダ室間
を移動して振動を吸収することにより、振動を減衰する
塑性流動抵抗型のダンパー装置において、前記ピストン
ロッドと前記ピストンを別体に加工して該ピストンを該
ピストンロッドに嵌合した後溶接又は蝋付けにより位置
決め固定し、前記エラストマーを前記シリンダ室内に収
容保持するためのシリンダ室端面部材を前記シリンダの
両端部に嵌合した後これらのシリンダ室端面部材を前記
シリンダに溶接又は蝋付けで位置決め固定する構成とし
たので、簡単な構成で、減衰力にオイルダンパーのよう
な速度依存性を付与しながら、オイル漏れの問題を無く
して維持管理の容易化を図ることができ、減衰力の温度
依存性を無くすとともに大容量の減衰力を発生すること
ができ、長期耐久性にもすぐれた塑性流動抵抗型のダン
パー装置が提供される。

【００２２】請求項２及び３の発明によれば、上記請求
項１の構成に加えて、前記ピストンロッドの先端部を前
記構造物に連結するためのピストンロッド取付部材と前
記シリンダを前記構造物に連結するためのシリンダ取付
部材とを設け、前記ピストンロッド取付部材を前記ピス
トンロッドに対して位置調節可能な締結手段により固定
する構成、あるいは、前記シリンダ室端面部材の内径部
によりピストンロッドの摺動部を封止するシール材を保
持する構成としたので、上記効果を達成するするととも
に、性能の向上、生産性の向上及び取扱性の向上を図る
ことができる塑性流動抵抗型のダンパー装置が提供され
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明を適用したダンパー装置の一実施例を示
す縦断面図である。

【図２】図１中の線２−２に沿った断面図である。

【図３】図１中の矢視線３−３から見た部分側面図であ
る。

【図４】図１中の矢視線４−４から見た端面図である。

【図５】本発明を適用したダンパー装置をジョイントダ
ンパーシステムにおいて使用する形態を例示する概略立
面図である。

【図６】本発明を適用したダンパー装置を部材内ダンパ
ーシステムにおいて使用する形態を例示する概略立面図
である。

【符号の説明】

１ シリンダ ２ ピストンロッド ３ チョーク部（狭隘部） ４ ピストン（突起） ５ シリンダ室 ６ エラストマー ７ ピストンロッド取付部材 ８ ロックナット ９ シリンダ取付部材 １０ 第１のシリンダ端面部材 １１ 第２のシリンダ端面部材 １３ シール材 １５ シール材 １７ 取付け孔 １８ 取付け孔

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ピストンにより区画されたシリンダ室
   内に収容したエラストマーがピストンの移動によりシリ
   ンダ室間を移動して振動を吸収することにより、振動を
   減衰する塑性流動抵抗型のダンパー装置において、前記
   ピストンロッドと前記ピストンを別体に加工して該ピス
   トンを該ピストンロッドに嵌合した後溶接又は蝋付けに
   より位置決め固定し、前記エラストマーを前記シリンダ
   室内に収容保持するためのシリンダ室端面部材を前記シ
   リンダの両端部に嵌合した後これらのシリンダ室端面部
   材を前記シリンダに溶接又は蝋付けで位置決め固定する
   ことを特徴とするダンパー装置。
2. 【請求項２】 前記ピストンロッドの先端部を前記構
   造物に連結するためのピストンロッド取付部材と前記シ
   リンダを前記構造物に連結するためのシリンダ取付部材
   とを設け、前記ピストンロッド取付部材を前記ピストン
   ロッドに対して位置調節可能な締結手段により固定する
   ことを特徴とする請求項１に記載のダンパー装置。
3. 【請求項３】 前記シリンダ室端面部材の内径部によ
   りピストンロッドの摺動部を封止するシール材を保持す
   ることを特徴とする請求項１又は２に記載のダンパー装
   置。