JPH1192687A - アルコール修飾された無機微粉末とその製造方法及び用途 - Google Patents

アルコール修飾された無機微粉末とその製造方法及び用途

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JPH1192687A
JPH1192687A JP25342997A JP25342997A JPH1192687A JP H1192687 A JPH1192687 A JP H1192687A JP 25342997 A JP25342997 A JP 25342997A JP 25342997 A JP25342997 A JP 25342997A JP H1192687 A JPH1192687 A JP H1192687A
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JP
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fine powder
alcohol
powder
metal oxide
oxide fine
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JP25342997A
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English (en)
Inventor
Yukiya Yamashita
行也 山下
Ayako Higo
綾子 肥後
Akira Nishihara
明 西原
Takeyoshi Shibazaki
武義 柴崎
Nariyasu Ishibashi
成泰 石橋
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Mitsubishi Materials Corp
Original Assignee
Mitsubishi Materials Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 気相法で製造された平均一次粒子径0.1 μm
以下の金属酸化物 (シリカ、チタニア、アルミナ) の超
微粒子粉末を、その良好な分散性を阻害せずに、金属を
含有しない有機化合物による表面処理で効率よく (高い
固定化率で) 有機修飾して、粉末表面に疎水性を付与す
る。 【解決手段】 常圧沸点が180 ℃以上の1価または2価
アルコールを用いて、常圧下、200 ℃以上、350 ℃以下
の温度で1〜10時間加熱して乾式法で表面処理を行い、
粉末表面にM−O−R (Mは金属元素、Rはアルコール
残基) で示される基を導入する。Rがフェニル基を有し
ていると、得られた粉末を練り込んだゴムの伸び率が大
きく増大する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、表面が有機基で修
飾された(表面に有機基が化学結合した)金属酸化物の
微粉末とその製造方法及び用途に関する。この金属酸化
物の微粉末は、表面が疎水性を示し、樹脂等の有機物中
での分散性に優れているので、樹脂やゴム等への充填材
として有用である。
【0002】
【従来の技術】無機粉末は、表面が親水性を示すものが
多く、例えば、樹脂の充填材として樹脂中に混合すると
凝集してしまい、均一分散が困難である。そのため、予
め無機粉末の表面を有機化合物で表面処理して疎水化す
ることが行われている。
【0003】このような表面の疎水化が一般的に行われ
ている無機粉末の代表例は、シリカ、チタニア、アルミ
ナ等の金属酸化物の粉末である。これらの金属酸化物の
粉末は、表面に水酸基を持っているので、この水酸基と
反応する有機化合物が表面処理に使用されることが多
い。
【0004】かかる有機化合物の代表例は、シランカッ
プリング剤、チタネートカップリング剤、シリコーンオ
イル等の有機金属化合物である。有機金属化合物以外で
は、アルコール、カルボン酸、カルボン酸塩化物等によ
る表面処理方法が報告されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】金属酸化物粉末の表面
をシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、
シリコーンオイル等の有機金属化合物で表面処理する方
法は、乾式法による表面処理が可能で、これらの化合物
が金属酸化物粉末の表面と強固に結合し、高い疎水性を
示す粉末を与えることが可能である点で非常に有効な方
法である。
【0006】ここで、乾式法による粉末の表面処理と
は、処理する粉末を液体中に浸漬ないし懸濁させずに行
う表面処理方法である。例えば、粉末に処理用化合物の
蒸気を接触させる方法、粉末を流動状態にして処理用化
合物の液体または溶液を噴霧または滴下する方法などが
可能である。
【0007】しかし、有機金属化合物による表面処理で
は、金属酸化物の粉末表面にある特定の官能基を導入し
たい場合、入手の容易な有機金属化合物の種類が少ない
ため、好ましい官能基を持った有機金属化合物が見あた
らない、或いは適当な有機金属化合物が存在していて
も、一般に有機金属化合物は価格が高いという問題があ
る。
【0008】さらに、この種の有機金属化合物は、分子
中に珪素やチタン等の元素を有するため分子量が大き
く、きわめて多量の化合物を表面処理に使用する必要が
あり、そのためコストがさらに増大する。例えば、代表
的なシランカップリング剤であるγ−アミノプロピルト
リエトキシシランの分子量は221 と大きいが、そのうち
アミノ基部分の分子量はわずか16である。
【0009】このように表面処理に多量の化合物が必要
という問題点は、金属酸化物粉末が気相法 (例、金属塩
化物の気相分解) で製造された、平均一次粒子径0.1 μ
m以下の分散性に優れた微粉末 (いわゆる超微粒子) で
ある場合には、表面積が非常に大きいため、さらに顕著
となる。
【0010】一方、アルコール、カルボン酸、カルボン
酸塩化物等の金属を含有しない低分子量の有機化合物に
よる表面処理では、乾式法で行ってもこの種の有機化合
物が粉末表面の水酸基と十分に化学反応しないため、湿
式法による化学反応を用いた表面処理が一般に採用され
ている。
【0011】例えば、アルコールの場合、このアルコー
ル中またはアルコールを有機溶媒に溶解させた溶液中に
金属酸化物の粉末を懸濁させ、必要であれば触媒として
硫酸などの酸を少量添加して、加熱攪拌する。縮合反応
で副生する水を除去して反応を進行させるため、水と共
沸混合物を形成する大過剰の溶媒を用いて脱水したり、
或いはアルコールとして水と共沸混合物を形成するもの
を使用することが行われている。しかし、この反応は平
衡反応であり、大過剰のアルコールを用いても、反応に
10時間以上の長時間を要する。
【0012】より重要な問題として、粉末が前述した気
相法で製造された超微粒子である場合、湿式法で表面処
理すると、反応後に濾過や乾燥等の工程を必要となるた
め、粉末が凝集してしまうという問題がある。そのた
め、この超微粒子に固有の粒子の凝集が少なく、分散性
が良好という特徴をいかすことができない。
【0013】アルコールによる別の表面処理方法とし
て、オートクレーブを用いた方法も報告されている。し
かし、この方法は高圧処理が必要で、工業的に適した方
法ではない。また、この場合の表面処理も湿式処理にな
り、超微粒子の場合には分散性が阻害される。
【0014】カルボン酸による表面処理では、カルボン
酸は粉末表面に吸着されるものの、粉末表面の水酸基と
の化学反応を十分に進行させることは、湿式法でも困難
である。また、カルボン酸塩化物による表面処理では、
反応副生物として腐食性の塩化水素が生成するという問
題がある。
【0015】本発明は、気相法で製造された金属酸化物
の微粉末を、金属を含有しない有機化合物を用いて乾式
法により表面処理して、粉末表面に疎水性を付与するこ
とができる、工業的実施に適した簡便で効率的な方法を
開発することを課題とするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明者は、気相法で製
造された金属酸化物の超微粒子(微粉末)の表面活性が
非常に高いことに着目して、各種の化合物を用いて乾式
法による表面処理を試みた結果、常圧沸点 (以下、単に
沸点という) が180 ℃以上のアルコールを用いて金属酸
化物の微粉末を表面処理することにより上記課題を解決
できることを見出した。
【0017】ここに、本発明は、気相法で製造された平
均一次粒子径が0.1 μm以下の金属酸化物微粉末であっ
て、乾式表面処理により導入されたM−O−R (Mは金
属元素、Rはアルコール残基で金属を含有しない) で示
される有機基によって表面が有機修飾されていることを
特徴とする金属酸化物微粉末である。
【0018】本発明によればまた、気相法で製造された
平均一次粒子径が0.1 μm以下の金属酸化物微粉末を、
常圧沸点が180 ℃以上の1価または2価アルコールで乾
式法により表面処理して、粉末表面の水酸基と縮合反応
させることからなる、表面がアルコール残基で有機修飾
された金属酸化物微粉末の製造方法も提供される。
【0019】この表面処理は、常圧において200 ℃以
上、350 ℃以下の温度に加熱することにより行うことが
好ましい。本発明に係る表面が有機修飾された金属酸化
物の微粉末は、凝集しておらず、表面が高い疎水性を示
し、有機物中で良好な分散性を示すので、樹脂およびゴ
ム用充填材として有用である。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明で表面処理する金属酸化物
は、気相法で製造された、平均一次粒子径が0.1 μm以
下の微粉末(即ち、超微粒子)である。気相法による金
属酸化物の超微粒子の製造は、一般に、対応する金属塩
化物のガスを、場合により酸素の存在下で、加水分解す
ることにより行われる。
【0021】現在、この方法で工業的に製造されている
金属酸化物の微粉末は、シリカ (酸化ケイ素) 、チタニ
ア (酸化チタン) 、およびアルミナ (酸化アルミニウ
ム) であるので、本発明をこれらの金属酸化物に適用す
ることが好ましい。しかし、本発明は、これら以外の金
属酸化物の微粉末にも適用可能である。
【0022】気相法で製造された金属酸化物の微粉末
は、表面に多数の水酸基 (例、シリカの場合にはシラノ
ール<Si−OH>基として存在) を有し、表面活性が極め
て高いことは良く知られている。また、純度が非常に高
く、凝集が少なく、分散性に優れていて、吸着水分が少
ないという特徴を持つ。
【0023】例えば、気相法で製造されたシリカ微粉末
(ヒュームドシリカ、無水シリカ、乾式シリカ等と呼ば
れる) は、上記の特徴をいかして、合成ゴムやシリコー
ンゴムの補強充填材や不飽和ポリエステル樹脂等の樹脂
の充填材として幅広く利用されている。従って、樹脂や
ゴム中に均一分散させることは非常に重要であるが、表
面に高密度に存在する水酸基のため、粉末表面は親水性
を示すので、そのままでは樹脂やゴム中での均一分散が
困難である。そのため、従来も、例えば、シランカップ
リング剤による表面処理で粉末表面に疎水性を付与した
り、および/または粉末と樹脂の両者になじみのある湿
潤剤を用いて、粉末の均一分散を図っていたが、従来の
表面処理方法には前述の問題があり、湿潤剤では効果が
不十分である。
【0024】本発明では、比較的高沸点のアルコールを
用いて高温で乾式法により表面処理することで、アルコ
ールを効率よく (高い固定化率で) 金属酸化物微粉末の
表面の水酸基と縮合反応により化学結合させることがで
きる。
【0025】これは、この気相法で製造された微粉末
(超微粒子)の表面活性が高く、かつ比表面積が大きく
表面に存在する水酸基の量が多いため、多量のアルコー
ル化合物を表面に強く吸着できるためであると考えられ
る。即ち、吸着力が強いため、アルコールの沸点以上に
なってもアルコールが気化せず、なお粉末表面に吸着状
態に保持される。そのため、粉末表面の水酸基とアルコ
ールとの化学反応に有効な温度 (この温度は通常はアル
コールの沸点より高い) まで加熱しても、粉末表面にア
ルコールが吸着されているため、乾式法でアルコールを
粉末表面の水酸基と化学反応させることが可能になる。
【0026】また、気相法で製造された金属酸化物の微
粉末は凝集が極めて少なく、例えば、攪拌するだけで容
易に流動状態になるので、乾式法による表面処理が容易
である。乾式法による表面処理は、例えば、こうして流
動状態にした微粉末に、アルコールそれ自体 (アルコー
ルが室温または使用温度で液体の場合) 或いはアルコー
ルを適当な有機溶媒に溶解した溶液を滴下、噴霧などの
手法で必要量だけ添加し、微粉末と均一に接触させるこ
とにより実施できる。こうして、添加したアルコールを
粉末表面に吸着させ、次いで加熱して化学反応させるこ
とができる。粉末とアルコール溶液との均一接触が可能
であれば、他の乾式法による表面処理方法も採用でき
る。
【0027】乾式法による表面処理は、気相法で製造さ
れた金属酸化物の微粉末の特性を損なわないという利点
に加えて、表面処理に用いるアルコールと溶媒の使用量
が少量でよく、粉末に付着 (吸着) するアルコール量
(従って、有機修飾の程度) の制御が容易であり、さら
に湿式法では必要な処理後の粉末の分離が不要であると
いう利点もある。
【0028】本発明の表面処理に用いるアルコールは1
価または2価アルコールである。即ち、ケイ素、チタン
といった金属を含有しない有機化合物であって、1個ま
たは2個の脂肪族性ヒドロキシル基を含有するものであ
る。このアルコールは、分子中に芳香環や、アミン、エ
ーテル、エステル、アミド等の官能基を有していてもよ
い。3価以上のアルコールは、その立体障害のために反
応性が落ち、そのヒドロキシル基の全てを粉末表面と反
応させることが困難である。
【0029】さらに、使用するアルコールは沸点が180
℃以上のものである。アルコールを金属酸化物の粉末表
面の水酸基と乾式法により化学反応させるには、一般に
200℃以上の反応温度が必要である。沸点が180 ℃より
低いアルコールを用いると、この微粉末の表面活性がい
くら高くても、200 ℃以上の反応温度に加熱した時に、
粉末表面に吸着されたアルコールが気化して表面から離
れてしまい、反応できなくなる可能性が大きくなる。こ
れに対し、沸点が180 ℃以上であれば、200 ℃以上の反
応温度に加熱されても、なお気化せずに粉末表面の高い
吸着力により吸着されたまま保持されるので、化学反応
が可能になる。
【0030】本発明の表面処理に用いるのに適したアル
コールの例としては、ベンジルアルコール、2−フェネ
チルアルコール、2−フェノキシエタノール、オクタノ
ール、デカノール、2− (ブチルアミノ) エタノール、
ジエタノールアミン、 1,8−オクタンジオール、2−ヘ
キシルオキシエタノール等が挙げられるが、これらに限
定されるものではない。
【0031】アルコールは、室温で液体でない場合に
は、有機溶媒に溶解させて使用することが好ましい。溶
媒は、使用するアルコールを溶解するものであればよ
く、特に限定されないが、一般的な溶媒の例としては、
アセトン、メタノール、エタノール、ヘキサン、トルエ
ン、クロロホルム、ジイソプロピルエーテル、テトラヒ
ドロフラン等が挙げられる。室温で液体のアルコールの
場合も、粉末との接触をより均一にするために、適当な
溶媒で希釈してから使用してもよい。
【0032】表面処理は、前述したように、金属酸化物
の微粉末を攪拌等の適当な手段で流動状態にし、ここに
アルコールまたはその溶液を滴下または噴霧して、粉末
と均一に接触させる。この接触は、室温ないし溶媒の沸
点よりやや低い温度で実施することが好ましい。それに
よりアルコールが粉末表面に吸着される。
【0033】その後、適当な反応温度まで加熱して、粉
末表面に吸着されたアルコールと粉末表面の水酸基とを
反応させる。この加熱中に有機溶媒は蒸発する。加熱
は、アルコールの酸化を防ぐため、不活性ガス雰囲気中
で (例、不活性ガスを流通させながら) 行うことが好ま
しい。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム
等が使用できるが、これらに制限されるものではない。
【0034】反応温度は、使用するアルコールの種類に
よっても異なるが、 200〜350 ℃の範囲が好ましく、よ
り好ましくは230 ℃以上、300 ℃以下である。200 ℃未
満では、アルコールの粉末表面への化学結合が完全には
進行せず、単に吸着しただけの固定化されないアルコー
ルの割合が多くなり、有機修飾の目的が十分に達成され
ない。350 ℃より高温に加熱すると、アルコールの気化
または熱分解が進み、粉末表面に化学結合するアルコー
ルの量が著しく少なくなる。
【0035】反応時間は特に限定されないが、一般には
1時間以上、10時間以下であり、好ましくは2時間以
上、7時間以下である。1時間より短時間ではアルコー
ルの化学結合が十分に進行せず、10時間より長時間加熱
しても、それ以上の反応の進行が認められないことが多
い。
【0036】金属酸化物の粉末表面とアルコールとの化
学反応は、粉末表面に存在する水酸基とアルコールのヒ
ドロキシル基との縮合反応であり、この反応によって粉
末表面には、式:M−O−R (Mは金属元素、Rはアル
コール残基) で示される有機基が結合することにより、
粉末表面が有機修飾される。
【0037】こうして粉末表面に結合した有機基の量、
即ち、アルコールの固定化率は、溶媒抽出法により測定
することが可能である。溶媒抽出法は、表面処理後の粉
末を、表面処理に用いたアルコールより低沸点の適当な
有機溶媒中に懸濁させて加熱攪拌した後、濾過して粉末
を分離し、濾液中の有機物の量を測定する方法であり、
粉末表面に固定化されていない(溶媒に溶出してきた)
有機物を定量することができる。
【0038】定量方法は、必要に応じて濃縮した濾液を
ガスクロマトグラフィー、核磁気共鳴等の機器分析によ
り分析する方法が簡便であるが、溶媒を完全に除去し、
残渣を分析してもよい。また、上記方法で濾過により分
離された粉末は固定化されなかった有機物が除去されて
いるので、この粉末を減圧乾燥して完全に溶媒を除去し
た後、元素分析等の方法で組成を分析することにより、
粉末表面に固定化された有機物の量を求めることもでき
る。
【0039】こうして表面に有機基(−OR基)が導入
された金属酸化物の微粉末の表面は、それまでの親水性
から、表面の有機基により疎水性を示すようになる。粉
末表面の疎水性は、水に分散させた時の粉末の懸濁の度
合いを観察することにより評価することができる。ま
た、表面処理を乾式法で行うため、表面処理後の金属酸
化物の微粉末は凝集していない。
【0040】本発明に係る表面がアルコールで有機修飾
された金属酸化物の微粉末は、上記の疎水性により、樹
脂やゴムとの相容性(なじみ)が増し、これらに容易に
均一分散させることができるので、樹脂やゴムの補強用
充填材として有効である。これに用いる樹脂としては、
シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、不飽和
ポリエステル樹脂等が例示されるが、これらに限定され
るものではない。ゴムは天然ゴムと各種合成ゴムのいず
れでもよいが、特に好ましいゴムは、シリコーンゴム、
ウレタンゴム、フッ素ゴム等である。充填材としての配
合量は特に限定されないが、通常は1〜50重量%程度で
ある。
【0041】表面処理に用いたアルコールが芳香族基
(例、フェニル基)を有するもの(例、ベンジルアルコ
ール、フェネチルアルコール、フェノキシエタノール
等)であると、このアルコールで有機修飾された金属酸
化物微粉末を樹脂やゴムに練り込んだ時に、その伸び率
が大きく増大することが認められた。即ち、この金属酸
化物微粉末は、樹脂やゴムの伸び率向上剤として有用で
ある。この場合、この金属酸化物の微粉末と一緒に、少
量の湿潤剤を添加することが好ましい。有用な湿潤剤と
しては、両末端にヒドロキシル基を持つシリコーン油が
例示される。
【0042】本発明にかかる有機修飾された金属酸化物
の微粉末は、ゴムや樹脂に練り込む用途以外に、例え
ば、油性の塗料やインキにチキソトロピー性付与剤 (増
粘剤)として添加する、接着剤やシーラントに添加す
る、といった他の用途にも使用できる。また、化粧品等
に粉末のまま或いはペースト状で使用することも可能で
ある。
【0043】(実施例1)気相法で製造された酸化ケイ
素微粉末(日本アエロジル社製アエロジル#200、平均一
次粒子径 12 nm) 20.0gをミキサーに入れて攪拌し、流
動状態にした。この流動状態の粉末に、ベンジルアルコ
ール2.16gをジイソプロピルエーテル8gに溶解した溶
液を滴下した。
【0044】滴下終了後、この粉末を1リットルのセパ
ラブルフラスコに移し、窒素気流下250 ℃に6時間加熱
して、表面処理を完了した。この加熱中にフラスコから
排出したガス成分を2−プロパノール中に捕捉し、その
中に含まれるベンジルアルコール量をガスクロマトグラ
フィーにより定量することで、加熱中に揮発したベンジ
ルアルコールの量を求めた。この揮発量は約0.09gであ
った。
【0045】上記のように乾式法で表面処理した微粉末
の表面に固定されたベンジルアルコールの割合 (アルコ
ール固定化率) を調べるため、この粉末1gをアセトン
30ml中に懸濁させ、アセトン還流下で一晩攪拌した後、
懸濁液を濾過し、濾液中に含まれるベンジルアルコール
量をガスクロマトグラフィーにより定量して、粉末表面
に吸着されたが、化学反応により固定化されなかったア
ルコール量を求めた。反応に用いたアルコール量 (A)
と、表面処理中に揮発したアルコール量 (B)と、アセ
トンで抽出された表面に固定されていないアルコール量
(C) とから、アルコール固定化率 [ (A−B−C) /
(A−B) ×100]を算出した。
【0046】また、表面処理後の微粉末の疎水性を、次
のようにして調べた。粉末 1.0gを蒸留水 100gと混合
し、ターブラーミキサーで3分間攪拌した。その後、こ
の懸濁液を分液漏斗に移し、10分間静置して微粉末を沈
降させた後、分液漏斗下部から抜き出した液の波長550
nmにおける透過率を測定し、同じ波長の蒸留水で測定し
た透過率に対する%を疎水化率として表示する。即ち、
粉末表面が疎水性であるほど、粉末は水に浮くようにな
り、下部から抜き出した液は透明になり、この値が大き
くなる。逆に、疎水性が小さいと、粉末が水に懸濁して
透明度は低下する。
【0047】以上の試験結果を、表1に示す。なお、実
施例で使用した金属酸化物の微粉末を未処理のままで上
記の疎水性試験に供すると、蒸留水に懸濁させて10分間
静置した後、いずれの微粉末も蒸留中に懸濁したままで
あり、透過性を測定することができなかった (疎水化率
は1%以下) 。
【0048】(実施例2〜8)表1に示す気相法で製造さ
れた金属酸化物の微粉末 (いずれも日本アエロジル社
製) を、表1に示す種類および量のアルコールを用い
て、実施例1と同様にして乾式法により表面処理した。
但し、加熱温度は、表1に記載のように変更した。表面
処理により微粉末の表面に固定されたアルコールの割合
(アルコール固定化率) と、表面処理した微粉末の疎水
化率を、表1に一緒に示す。
【0049】(比較例1〜4)沸点が180 ℃より低いア
ルコールを用いて、表1に示す条件で酸化ケイ素微粉末
の表面処理を実施例1と同様に行った。測定結果を表1
に示す。
【0050】(比較例5)湿式法で製造された酸化ケイ素
微粉末を、表1に示すアルコールおよび加熱条件によ
り、実施例1と同様に表面処理した。測定結果を表1に
示す。
【0051】
【表1】
【0052】表1からわかるように、本発明によれば、
気相法で製造された金属酸化物微粉末を乾式法により表
面処理することによって、アルコールを高い固定化率で
表面に固定することができ、疎水性が著しく増大した有
機修飾された微粉末を得ることができた。
【0053】しかし、使用するアルコールの沸点が180
℃より低いと、乾式法による表面処理では、加熱温度に
よらずアルコールを効果的に粉末表面に固定化すること
ができず、粉末表面に疎水性を付与することはできなか
った。また、湿式法で製造された金属酸化物の微粉末に
ついては、平均一次粒子径が小さくても粉末の表面活性
が低いため、本発明の方法によってアルコールを効果的
に固定化することができなかった。
【0054】(実施例9〜11)シリコーンゴム 120gに、
実施例1、4または8で得られたアルコールで表面処理
された酸化ケイ素微粉末を48gを、両末端にヒドロキシ
ル基を有するシリコーン油 (湿潤剤) 2gと一緒に、15
0 ℃で1時間ニーダー混練して練り込んだ。この混合物
を二等分して、それぞれ過酸化物1gを加えてから二本
ロールでさらに混練し、2mm厚シートに成形した後、17
0 ℃で10分間の熱プレスにより一次硬化させ、次いでエ
アーオーブン内で200 ℃に4時間加熱して二次硬化させ
た。一次および二次硬化後の硬度と、二次硬化させたシ
ートの引張強度および伸び率をJIS K6301 に従って測定
した。試験結果を表2にまとめて示す。
【0055】比較のために、未処理の同じ酸化ケイ素微
粉末を同様に練り込んだ場合の測定結果を表2に一緒に
示す。なお、未処理の酸化ケイ素微粉末を練り込む場合
には、この粉末をゴム中に均一分散させるのに湿潤剤の
量を7gに増大させる必要があった。
【0056】
【表2】
【0057】表2からわかるように、本発明に従ってア
ルコールにより有機修飾した酸化ケイ素微粉末を練り込
んだ場合、実施例9、10のようにアルコールがフェニル
基を含有しているものであると、未処理の酸化ケイ素微
粉末を練り込んだ場合に比べて、ゴムの伸び率が2倍近
く増大した。一方、実施例11のようにフェニル基を含有
しないアルコールで有機修飾した酸化ケイ素微粉末を練
り込んだ場合には、ゴムの伸び率は未処理の再結晶微粉
末を練り込んだ場合と大差なかった。但し、この場合で
も、実施例1で表1に示したように高い疎水性付与効果
は得られる。
【0058】
【発明の効果】本発明によれば、気相法で製造された分
散性に優れた金属酸化物の微粉末に、その分散性を阻害
しない乾式法による表面処理によって、有機化合物 (ア
ルコール)を粉末表面に高い固定化率で結合させること
ができ、少ない量の有機化合物で効率よく粉末表面を有
機修飾して、粉末に疎水性を付与することができる。
【0059】こうして有機修飾された金属酸化物の微粉
末は、補強用充填材として樹脂やゴムといった有機物中
に容易に均一に分散させることができる。さらに、フェ
ニル基を含有するアルコールを用いて本発明に従って有
機修飾した金属酸化物の微粉末は、これを樹脂やゴムに
練り込むと、その伸び率が著しく向上するので、伸び率
向上剤としても有用である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 柴崎 武義 三重県四日市市三田町3番地 日本アエロ ジル株式会社四日市工場内 (72)発明者 石橋 成泰 三重県四日市市三田町3番地 日本アエロ ジル株式会社四日市工場内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 気相法で製造された平均一次粒子径が0.
    1 μm以下の金属酸化物微粉末であって、乾式表面処理
    により導入されたM−O−R (Mは金属元素、Rはアル
    コール残基で金属を含有しない) で示される結合基によ
    って表面が有機修飾されていることを特徴とする金属酸
    化物微粉末。
  2. 【請求項2】 Rが芳香族基を含んでいる、請求項1記
    載の金属酸化物微粉末。
  3. 【請求項3】 気相法で製造された平均一次粒子径が0.
    1 μm以下の金属酸化物微粉末を、常圧沸点が180 ℃以
    上の1価または2価アルコールで乾式法により表面処理
    して、粉末表面の水酸基と縮合反応させることからな
    る、粉末表面がアルコール残基で有機修飾された金属酸
    化物微粉末の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記表面処理を、常圧において200 ℃以
    上、350 ℃以下の温度で加熱することにより行う、請求
    項3記載の方法。
  5. 【請求項5】 請求項1または2記載の表面が有機修飾
    された金属酸化物微粉末からなる、樹脂およびゴム用充
    填材。
  6. 【請求項6】 請求項2記載の表面が有機修飾された金
    属酸化物微粉末からなる、樹脂およびゴム用伸び率向上
    剤。
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