JPH10306234A - 有機修飾された無機粉末とその製造方法および用途 - Google Patents

有機修飾された無機粉末とその製造方法および用途

Info

Publication number
JPH10306234A
JPH10306234A JP11578997A JP11578997A JPH10306234A JP H10306234 A JPH10306234 A JP H10306234A JP 11578997 A JP11578997 A JP 11578997A JP 11578997 A JP11578997 A JP 11578997A JP H10306234 A JPH10306234 A JP H10306234A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
powder
inorganic powder
dry method
surface treatment
compound
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP11578997A
Other languages
English (en)
Inventor
Akira Nishihara
明 西原
Yukiya Yamashita
行也 山下
Takeyoshi Shibazaki
武義 柴崎
Hirokazu Kino
博州 城野
Yumi Kato
由美 加藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Materials Corp
Original Assignee
Mitsubishi Materials Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Materials Corp filed Critical Mitsubishi Materials Corp
Priority to JP11578997A priority Critical patent/JPH10306234A/ja
Publication of JPH10306234A publication Critical patent/JPH10306234A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Pigments, Carbon Blacks, Or Wood Stains (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 塩化物から気相での加水分解または燃焼によ
り乾式法で製造されたシリカ、アルミナ、酸化チタン等
の無機微粉末の表面を、その良好な分散状態を保持した
まま、少量の有機物を用いた表面処理により有機修飾す
る。 【解決手段】 SiやBなどの金属を含有しない低分子量
のモノエポキシド化合物またはその溶液を流動状態の粉
末表面に滴下または噴霧した後、不活性ガス雰囲気下80
〜230 ℃で熱処理して表面処理を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、樹脂やゴムに添加
した時に均一かつ容易に分散させることができ、それに
より樹脂やゴムの強度、伸び率、硬度等の特性を改善す
ることができる、表面が有機物で修飾された無機粉末と
その製造方法および用途に関する。
【0002】
【従来の技術】各種の無機粉末が、樹脂やゴムに、充填
材、顔料、チキソトロピー性付与剤、導電粉、滑剤、紫
外線吸収剤、難燃剤などとして添加されている。無機粉
末の製造方法には、湿式法と乾式法(気相法)とがある
が、乾式法で製造された無機粉末は、一般に粒径が非常
に小さい微粉末である上、湿式法で製造された粉末に比
べて凝集が少なく、樹脂やゴム中での分散性がよいた
め、樹脂やゴムに練り込んで配合する添加剤として有利
である。
【0003】例えば、乾式法で製造された酸化ケイ素
(シリカ) 粉末は、合成ゴムやシリコーンゴムへの補強
充填材として、或いは不飽和ポリエステル樹脂、接着
剤、シーラント、塗料、印刷インキなどに対するチキソ
トロピー性付与剤として大量に使用されている。その
他、電子写真現像用のトナーや化粧品などの流動性を改
善する目的でも使用されている。乾式法で製造された酸
化チタン (チタニア) 粉末は、隠蔽力の高い白色顔料と
して、主に樹脂、塗料、印刷インキなどに使用されてい
る。同様に、乾式法で製造された酸化アルミニウム (ア
ルミナ) 粉末も、顔料として塗料に用いられる他、ゴ
ム、プラスチック、紙などの充填剤として添加されてい
る。
【0004】しかし、一般に無機粉末の表面には水酸基
などの極性基が存在し、粉末表面は親水性を示すため、
乾式法で製造されたものであっても、疎水性の樹脂やゴ
ムとの親和性が不十分であり、樹脂やゴム中に均一に分
散させることは困難である。無機粉末を有機物で表面処
理して表面を有機修飾すると、樹脂やゴムとの親和性が
高くなり、無機粉末を配合した樹脂やゴムの強度、伸び
率、硬度等の特性が改善されることが知られている。
【0005】粉末表面の有機修飾に適した代表的な無機
粉末は、シリカ、チタニア、アルミナ等の無機酸化物の
粉末である。これらの無機酸化物の表面には多くの水酸
基が存在しており、この水酸基により樹脂やゴムとの親
和性が阻害されるからである。かかる無機粉末の表面有
機修飾には、一般にシランカップリング剤、チタネート
カップリング剤、シリコーンオイルといった有機金属化
合物が使用される。また、アルコール、カルボン酸、酸
塩化物等の金属を含有しない有機物で表面処理する有機
修飾法も報告されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】無機酸化物粉末の表面
をシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、
シリコーンオイル等の有機金属化合物で表面処理する有
機修飾方法は、これらの有機金属化合物が粉末表面の水
酸基と化学反応して粉末表面に強固に結合するため、有
機修飾の効果が高く、きわめて有効な方法である。しか
し、有機金属化合物は工業的に利用可能な容易に入手で
きる化合物の種類が少ないので、有機修飾によって粉末
表面に特定の官能基を導入したい場合には、かかる官能
基を持つ適当な有機金属化合物が見当たらないか、ある
いは適当な官能基を有した有機金属化合物があっても、
極めて高価であり、工業的には利用しにくいといった問
題がある。
【0007】さらに、有機金属化合物は、種類の少なさ
や価格を度外視しても、分子中に珪素やチタンといった
原子量の大きい金属元素を有しているため、化合物の分
子量が大きくなるので、多量の表面処理剤が必要にな
る。例えば、シランカップリング剤として一般的なアミ
ノアルコキシシランを例にとると、アミノ基の分子量は
わずか16であるのに対して、分子の末端がトリエトキシ
シリル基となっているものでは化合物としての分子量が
221 にも達し、アミノ基は分子量の1/10以下を占める
に過ぎない。
【0008】このように多量の表面処理剤の使用が必要
になることは、無機粉末が乾式法で製造された超微粒子
の微粉末であると、表面積が著しく大きいため、さらに
顕著になる。従って、特に乾式法で製造された無機微粉
末の表面の有機修飾には、金属を含有しない分子量の小
さい有機化合物が有利である。
【0009】無機粉末の別の有機修飾法として、アルコ
ール、酸塩化物、カルボン酸等の水酸基と反応性の有機
化合物を利用し、この有機化合物を含有する液体中に無
機粉末を懸濁させて湿式法により表面処理を行うことが
報告されているが、これらの化合物にはそれぞれ次のよ
うな問題点があった。
【0010】まず、アルコールは無機粉末表面の水酸基
との反応性が低いので、オートクレーブ等を使用した高
温、高圧処理を行わないと、化合物を十分に粉末表面に
固定化することができない。酸塩化物による表面処理で
は、副生物として腐食性の塩化水素が生じる。カルボン
酸による表面処理も、粉末表面への吸着は起こるもの
の、粉末との化学反応による固定化は十分に進行しな
い。
【0011】さらに、これらの非金属系の有機化合物は
いずれも湿式法で表面処理に使用されるが、乾式法で製
造された無機粉末を湿式法で表面処理すると、処理中に
粉末の凝集が起こり易く、この種の無機粉末に固有の
「凝集が少なく、樹脂やゴム中の分散性が比較的良好で
ある」という利点が失われてしまう。
【0012】本発明は、乾式法で製造された無機粉末の
樹脂やゴムとの親和性を改善するための有機修飾方法に
おいて、金属を含有しない有機化合物を少量用いて乾式
法で表面処理することにより有機修飾を実施することが
できる方法を提供しようとするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、無機粉末
の表面を有機修飾する有機化合物として、非金属系のモ
ノエポキシド化合物が最適であることを見出した。具体
的には、この化合物は、エポキシ基が無機粉末の表面に
存在する活性水素を含有する官能基 (代表的には水酸基
であるが、チオール基、カルボキシル基なども含む) と
反応して開環することにより、無機粉末の表面と化学結
合して表面に強固に固定化され、この固定化はエポキシ
基の持つ強い反応性のために乾式法による表面処理でも
実施可能であることが判明した。
【0014】本発明により、乾式法で製造された無機粉
末 (好ましくは乾式法で製造された酸化ケイ素、酸化チ
タン、または酸化アルミニウムの粉末) の表面に、金属
を含有しないモノエポキシド化合物が結合していること
を特徴とする、表面が有機修飾された無機粉末が提供さ
れる。
【0015】本発明によればまた、乾式法で製造された
無機粉末 (好ましくは上記酸化物の粉末) を、金属を含
有しないモノエポキシド化合物を用いて乾式法で表面処
理することを特徴とする、表面が有機修飾された無機粉
末の製造方法も提供される。この表面処理は、好ましく
は不活性ガス雰囲気下80〜230 ℃の範囲で行う。
【0016】本発明において「金属」とは、ケイ素やホ
ウ素のような半金属も含む意味である。従って、本発明
で用いるモノエポキシド化合物はケイ素やホウ素を含有
しておらず、シランカップリング剤のような有機ケイ素
化合物、ならびに有機ボラン類は、本発明で用いるモノ
エポキシド化合物から除外される。
【0017】本発明にかかる有機修飾された無機粉末
は、樹脂やゴムとの親和性が改善されているため、樹脂
またはゴムへの添加剤として好適であり、樹脂やゴム中
に容易かつ均一に分散させることができる。また、マト
リックスである樹脂やゴムと無機粉末との密着性が改善
されるので、樹脂やゴムの強度、伸び、硬度等の特性が
改善される。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明において表面が有機修飾さ
れる無機粉末は、乾式法(即ち、気相法)で製造された
無機粉末である。このような無機粉末の具体例として
は、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化
ジルコニウム等の金属酸化物、さらにはケイ酸アルミニ
ウムのように2種以上の金属を含有する複合酸化物の粉
末が挙げられる。酸化物以外に、ホウ化物、窒化物、硫
化物などでも乾式法で製造できるものがあり、それらに
も本発明を適用することができる。
【0019】乾式法による金属酸化物型の無機粉末の製
造は、一般に対応する塩化物を気相で酸素存在下に加水
分解または燃焼させることにより行われる。例えば、ヒ
ュームドシリカとも呼ばれる乾式法シリカやホワイトア
ルミナとも呼ばれる乾式法アルミナは、それぞれ四塩化
ケイ素または無水三塩化アルミニウムを気相で酸水素炎
中で燃焼加水分解することにより製造される。塩素法と
呼ばれる酸化チタンの製造では、四塩化チタンを気化さ
せ、酸素ガスと接触させて燃焼させることにより製造が
行われる。
【0020】このような乾式法で製造された無機酸化物
は、一般に粒径がサブミクロン、通常は数nm〜数百nm、
例えば、10〜100 nmの範囲内と非常に微細な粉末である
が、製造過程で水のような液体と接触していないため凝
集は非常に少ない。微粉末であることに加えて、揮発性
の原料塩化物の精製が容易であるため、粉末の純度が湿
式法による粉末に比べて非常に高いという特徴を有す
る。しかし、これらの粉末は、一般に表面に水酸基 (例
えば、酸化ケイ素の場合にはシラノール基) を有してい
るため、表面が親水性であり、樹脂やゴムとのなじみ
(親和性) が必ずしも良好ではなく、配合時に粉末が凝
集して均一に練り込むことが困難であり、粉末表面を樹
脂とのなじみのよい有機物で表面修飾することが望まれ
ていた。
【0021】なお、本発明において、表面を有機修飾す
る無機粉末は、前述したように酸化物に限定されるもの
ではなく、その粒径も特に制限されない。例えば、ミク
ロンオーダーまたはそれ以上の比較的粗大な無機粉末に
も、本発明の方法を適用することができる。無機粉末の
平均粒径は、その粉末の用途に応じて選択すればよい。
ただし、本発明の効果は、平均粒径が100 nm以下といっ
た微粉末に適用する方がより顕著となる。
【0022】本発明によれば、乾式法で製造された無機
粉末を、金属を含有しないモノエポキシド化合物によ
り、好ましくは乾式法で表面処理する。このモノエポキ
シド化合物は、そのエポキシ基が粉末表面の水酸基と反
応し、エポキシ基が開環して、粉末表面に化学的に結合
する。こうしてモノエポキシド化合物のエポキシ開環反
応生成物で粉末表面が被覆され、この被覆により粉末表
面が有機修飾される。
【0023】表面処理に使用するモノエポキシド化合物
は、シランカップリング剤、シリコーンオイル、有機ボ
ラン等のようにケイ素やホウ素などの金属を含有せず、
エポキシ基を1個だけ有している有機化合物であればよ
い。エポキシ基に結合している有機残基により粉末表面
に有機官能基が付与される。粉末表面の有機修飾の程度
は、使用するモノエポキシド化合物の種類とその使用
量、および表面処理の熱処理条件によって制御すること
ができるが、特にモノエポキシド化合物の種類と量の影
響が大きい。本発明で使用するのに適したモノエポキシ
ド化合物は次式で示されるものである。
【0024】
【化1】
【0025】上記式中、R1はアルキル、アルケニル、シ
クロアルキル、シクロアルケニル、アラルキルまたはア
リール基であって、酸素、窒素、イオウなどのヘテロ原
子および/または置換基(例、ハロゲン、ヒドロキシ
ル、カルボニル、カルボン酸エステル、カルボン酸アミ
ド等)を含有していてもよく、R2、R3およびR4はそれぞ
れ独立して、水素または低級アルキル基であり、R1とR3
は一緒に結合してアルキレンまたはアルケニレン鎖を形
成していてもよい。
【0026】かかるモノエポキシド化合物の具体例を例
示すると、スチレンオキサイド、α−メチルスチレンオ
キサイド、グリシジルフェニルエーテル、アリルグリシ
ジルエーテル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グ
リシジル、 1,2−エポキシシクロヘキサン、 1,2−エポ
キシシクロペンタン、 1,2−エポキシ−2−メチルプロ
パン、ブチルグリシジルエーテル、 1,2−エポキシオク
タン、 1,2−エポキシデカン、エピクロロヒドリン、グ
リシドール、エピブロモヒドリン、 1,2−エポキシシク
ロドデカン、 2,3−エポキシ−1,1,1 −トリフロオロプ
ロパン等が挙げられる。
【0027】上記モノエポキシド化合物と粉末表面の水
酸基との反応は次式で示すことができる。
【0028】
【化2】
【0029】表面処理は、モノエポキシド化合物を適当
な有機溶媒に溶解させた溶液中に無機粉末を懸濁させる
といった湿式法で行うことも可能である。しかし、乾式
法で製造された無機粉末に固有の特性、特に凝集してお
らず分散性に優れているという特性を損なわないため
に、乾式法により表面処理を行うことが好ましい。乾式
法による表面処理は、この利点に加えて、表面処理に用
いるモノエポキシド化合物の量が少量でよく、その付着
量の制御が容易であり、さらに湿式法では必要な処理後
の粉末の分離が不要であるという利点もある。
【0030】乾式法による無機粉末の表面処理は、例え
ば無機粉末を容器内で適当な手段により流動状態に保持
しておき、ここにモノエポキシド化合物それ自体 (液状
の場合) またはその溶液を滴下または噴霧して、粉末表
面にモノエポキシド化合物を均一に付着させ、次いで粉
末を適当な温度に加熱して、上記のエポキシ基の反応を
十分に進行させることにより実施できる。モノエポキシ
ド化合物が液状の場合でも、均一に付着させるには、適
当な溶媒で希釈した溶液状で使用する方が好ましい。
【0031】処理に用いる溶媒は、使用するモノエポキ
シド化合物を溶解するものであれば特に限定されない
が、代表例としては、アセトン、メタノール、エタノー
ル、ヘキサン、トルエン、クロロホルム、ジイソプロピ
ルエーテル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0032】乾式法で製造されたサブミクロンの無機微
粉末は、攪拌だけで容易に流動状態にすることができる
が、流動状態にする手段は別の方法でもよい。流動状態
に保持した粉末へのモノエポキシド化合物またはその溶
液の噴霧または滴下は、常温で加熱下でも実施できる。
滴下または噴霧したモノエポキシド化合物はほぼ全量が
無機粉末に付着するので、表面処理に用いるモノエポキ
シド化合物の量は、最大でも、粉末表面の全ての水酸基
と反応するのに必要な化学量論量またはそれよりやや過
剰 (例、化学量論量の1.2 倍以下) で十分である。目的
によっては、粉末表面の水酸基の全部にモノエポキシド
化合物を結合させなくても、粉末表面は十分に有機修飾
されるので、必要な表面修飾の程度に応じて、処理に用
いるモノエポキシド化合物の量を決定すればよい。例え
ば、上記化学量論量の20〜50%程度と少量のモノエポキ
シド化合物を使用しても、粉末表面の有機修飾が十分で
ある場合もある。いずれにしても、モノエポキシド化合
物の使用量は湿式法に比べて少なくてすむ。
【0033】その後、上に示したような粉末表面の水酸
基とモノエポキシド化合物のエポキシ基との反応を進行
させるため、無機粉末を加熱して熱処理する。この熱処
理は、処理剤 (モノエポキシド化合物) の酸化を防ぐた
め、不活性ガス中で行うことが好ましい。不活性ガスと
しては、窒素、アルゴン、ヘリウム等が挙げられる。熱
処理中の無機粉末は、流動状態に保持する必要はない。
【0034】熱処理温度は、使用するモノエポキシド化
合物によってエポキシ基の反応温度が異なるため特に限
定されないが、通常は80〜250 ℃、好ましくは 100〜20
0 ℃の範囲内で熱処理を行う。温度が250 ℃を超える
と、モノエポキシド化合物の揮発または分解が進み、粉
末表面に十分な量のモノエポキシド化合物を結合させる
ことが困難となる。一方、温度が80℃より低いと、モノ
エポキシド化合物の粉末表面への化学結合が十分に進行
しなかったり、溶媒が完全に蒸発せずに残留して、粉末
の分散性を低下させることがある。いずれの場合も、無
機粉末表面の有機修飾という目的が十分に達成できな
い。
【0035】熱処理時間は特に限定されず、熱処理温度
やモノエポキシド化合物の種類によっても異なるが、好
ましくは1〜6時間、より好ましくは1〜3時間であ
る。熱処理時間が短すぎると、熱処理温度が低すぎる場
合と同様の問題を生ずる。熱処理温度は長くなってもよ
いが、不必要に長くしても効果の改善はそれ以上に得ら
れず、コストの無駄である。
【0036】この熱処理により、上記
【化2】の反応式に示すように、モノエポキシド化合物
のエポキシ基が粉末表面の水酸基と反応して、この化合
物が粉末表面に化学結合し、粉末表面に結合した有機残
基により粉末表面が有機修飾される。無機粉末が、例え
ば、硫化物といった酸化物以外のものでも、粉末表面に
はチオール基等の活性水素を有する官能基が存在し、こ
の官能基の活性水素とエポキシ基との反応によりモノエ
ポキシド化合物は粉末表面に結合する。
【0037】乾式法で粉末表面に結合したモノエポキシ
ド化合物の量 (以下、粉末表面への固定化量という)
は、溶媒抽出法により求めることが簡便である。溶媒抽
出法は、表面処理後の無機粉末を、未反応のモノエポキ
シド化合物を溶解することができる適当な有機溶媒中に
懸濁させて加熱攪拌することにより、未反応のモノエポ
キシド化合物を溶媒中に完全に抽出し、粉末を濾過して
分離した後、濾液 (抽出液) 中に溶解しているモノエポ
キシド化合物の量または無機粉末中の炭素量を定量する
方法である。
【0038】濾液中の未反応モノエポキシド化合物の定
量は、抽出液を蒸発させて溶媒を完全に除去し、残渣の
重量から求める方法、或いはガスクロマトグラフィー、
核磁気共鳴等の機器分析によって定量する方法などが可
能であり、無機粉末の炭素含有量は、例えば、濾液から
分離した無機粉末を減圧乾燥して溶媒を完全に除去した
後、元素分析等の手法で決定することができる。
【0039】本発明による表面処理法では、エポキシ基
の開環反応により二級または三級アルコール性の水酸基
が生成するので、粉末表面を被覆している有機基はこの
水酸基を含有する。このアルコール性の水酸基は、無機
粉末表面にそのまま残留していても、樹脂やゴムとの親
和性を実質的に阻害しない。しかし、用途によっては、
このアルコール性水酸基の粉末表面における存在が望ま
しくないときは、これをさらに他の化合物と反応させて
保護することが可能である。この保護方法は特に限定さ
れないが、一般にアルコール化合物と反応性の高い、カ
ルボン酸塩化物、酸無水物、イソシアン酸、有機シリル
化合物等との反応が挙げられる。
【0040】以下の実施例は本発明を例示するものであ
り、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0041】
【実施例】
(実施例1〜8)いずれも対応する塩化物から乾式法によ
り製造された下記の金属酸化物型の無機微粉末 (いずれ
も日本アエロジル社製) を、本発明に従って表面処理し
た。
【0042】乾式法による無機微粉末 アエロジル200 :平均粒径12 nm 、1g当たり約1mmol
のシラノール性水酸基を粉末表面に含有するシリカ微粉
末; アエロジル300 :平均粒径7 nm、1g当たり約0.6 mmol
のシラノール性水酸基を粉末表面に含有するシリカ微粉
末; アエロジル130 :平均粒径16 nm 、1g当たり約1.2 mm
olのシラノール性水酸基を粉末表面に含有するシリカ微
粉末; アエロジルP-25:平均粒径21 nm のチタニア微粉末; アエロジルAluminum Oxide C:平均粒径13 nm のアルミ
ナ微粉末。
【0043】表面処理は、ミキサー中で無機微粉末20g
を2000 rpmで攪拌して流動状態に保持し、これに表1に
示す種類および量のモノエポキシド化合物をヘキサン8
gに溶解した溶液を約3分間かけて滴下することにより
添加した後、得られた粉末を1リットルのセパラブルフ
ラスコに移し、窒素気流下で表1に示す温度および時間
で熱処理を行って、表面が有機修飾された無機微粉末を
回収した。
【0044】表面処理により無機粉末に固定された (結
合した) モノエポキシド化合物の量を次のようにして求
めた。粉末試料10gをアセトン500 mlに懸濁させ、アセ
トン還流温度に一晩加熱攪拌した。その後、この懸濁液
を濾過し、沈殿をアセトンとヘキサンで十分に洗浄し、
濾液と洗液を合わせて一晩100 ℃で減圧乾燥することに
より溶媒を完全に除去した。得られた残渣中の炭素含有
量を元素分析法により定量して、粉末表面に固定されな
かった未反応のエポキシド化合物の量を求め、添加量
(20g) との差から、固定されたモノエポキシド化合物
の量を算出し、その固定化率 (使用量に対する割合、
%) を求めた。結果を表1に一緒に示す。
【0045】また、表面処理により有機修飾した無機微
粉末の特性の変化を評価するため、粉末の疎水性を次の
ように試験した。その試験結果も表1に併せて示す。疎水性試験法 表面処理した無機粉末1.0 gを秤量し、蒸留水100 ml中
に加えた。得られた懸濁液を分液ロートに入れ、ターブ
ラーミキサーで2〜3分間振盪攪拌した。その後、この
懸濁液を10分間静置し、分液ロート下部より懸濁液を抜
き出し、抜き出した懸濁液の光透過率を550 nmで測定
し、その光透過率をそのまま疎水性の尺度として示し
た。即ち、疎水性が高いほど、水中で粉末が沈降しにく
いので、静置後にロート下部から抜き出した懸濁液は粉
末含有量が少なく、光透過率が高くなる。
【0046】(比較例1〜3)表面処理に用いる有機物と
して、従来法で使用されていたアルコールまたはカルボ
ン酸を用いて、上記と同様に乾式法により表面処理を行
った。使用した粉末の種類、有機物の種類と量、表面処
理の熱処理条件、表面処理後の有機物の固定化率と粉末
の疎水性の試験結果を、未処理の粉末の疎水性試験結果
と一緒に表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】表1の実施例に示すように、本発明に従っ
て、モノエポキシド化合物を用いて無機粉末を表面処理
して粉末表面を有機修飾すると、エポキシ基の高い反応
性により、乾式法による表面処理でモノエポキシド化合
物の大半を粉末表面に化学結合により固定化することが
でき、少量の有機物の使用で効率よく粉末表面を有機修
飾することができた。
【0049】これに対して、比較例に示すように、有機
物がアルコールやカルボン酸であると、エポキシ基に比
べてアルコール性水酸基やカルボン酸基の粉末表面 (の
水酸基) との反応性が低いため、乾式法で表面処理した
場合には、粉末表面に化学結合により固定化される有機
物の割合が20%以下と非常に少なく、有機修飾の効率が
非常に悪くなり、粉末表面に付与できる有機官能基の程
度にも限界がある。
【0050】従来例の未処理の無機粉末は、水に懸濁さ
せて放置するとすぐに沈降するため、ロート下部から抜
き出した懸濁液の透過率は測定不能であった。
【0051】
【発明の効果】本発明によれば、乾式法で製造された親
水性表面を持つ無機粉末をモノエポキシド化合物により
表面処理することによって、少量の有機物を使用した乾
式法による表面処理で、用いたモノエポキシド化合物の
大半を粉末表面に化学結合させることができ、こうして
恒久的に粉末表面を有機修飾することができる。また、
表面処理を乾式法で実施するため、湿式法による表面処
理とは異なり、表面処理中に粉末の凝集が起こりにく
く、乾式法で製造された無機粉末の特性、特に良好な分
散性が悪影響を受けにくい。
【0052】その結果、本発明により表面が有機修飾さ
れた無機粉末は、凝集がなく分散状態が良好である上、
樹脂 (プラスチック) やゴムとの親和性が改善され、こ
れらに容易に均一分散させることができ、樹脂やゴムの
強度、硬度、伸び等を改善することができる。従って、
本発明にかかる表面が有機修飾された無機粉末は、樹脂
およびゴムへの添加剤として有用であり、均一分散が可
能となることで、品質の一定した製品を得ることが可能
となる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 城野 博州 三重県四日市市三田町3番地 日本アエロ ジル株式会社四日市工場内 (72)発明者 加藤 由美 三重県四日市市三田町3番地 日本アエロ ジル株式会社四日市工場内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 乾式法で製造された無機粉末の表面に、
    金属を含有しないモノエポキシド化合物が結合している
    ことを特徴とする、表面が有機修飾された無機粉末。
  2. 【請求項2】 無機粉末が乾式法で製造された酸化ケイ
    素、酸化チタン、または酸化アルミニウムの粉末である
    請求項1記載の有機修飾された無機粉末。
  3. 【請求項3】 乾式法で製造された無機粉末を、金属を
    含有しないモノエポキシド化合物を用いて乾式法で表面
    処理することを特徴とする、表面が有機修飾された無機
    粉末の製造方法。
  4. 【請求項4】 表面処理を不活性ガス雰囲気下80〜230
    ℃の範囲で行う、請求項3記載の方法。
  5. 【請求項5】 請求項1または2記載の有機修飾された
    無機粉末からなる、樹脂またはゴムへの添加剤。
JP11578997A 1997-05-06 1997-05-06 有機修飾された無機粉末とその製造方法および用途 Pending JPH10306234A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP11578997A JPH10306234A (ja) 1997-05-06 1997-05-06 有機修飾された無機粉末とその製造方法および用途

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP11578997A JPH10306234A (ja) 1997-05-06 1997-05-06 有機修飾された無機粉末とその製造方法および用途

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH10306234A true JPH10306234A (ja) 1998-11-17

Family

ID=14671117

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP11578997A Pending JPH10306234A (ja) 1997-05-06 1997-05-06 有機修飾された無機粉末とその製造方法および用途

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH10306234A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005343960A (ja) * 2004-06-01 2005-12-15 Yung Chi Paint & Varnish Mfg Corp Ltd 顔料の表面処理のための組成物および方法
JP2008174624A (ja) * 2007-01-17 2008-07-31 Admatechs Co Ltd 表面処理無機粉体

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005343960A (ja) * 2004-06-01 2005-12-15 Yung Chi Paint & Varnish Mfg Corp Ltd 顔料の表面処理のための組成物および方法
JP4614694B2 (ja) * 2004-06-01 2011-01-19 ヤン チィ ペイント アンド バーニッシュ マニュファクチャリング コーポレーション リミティッド 顔料の表面処理のための組成物および方法
JP2008174624A (ja) * 2007-01-17 2008-07-31 Admatechs Co Ltd 表面処理無機粉体

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3229174B2 (ja) 表面改質金属酸化物微粉末およびその製造方法
EP1249475B1 (en) Surface-modified inorganic oxide powder, process for producing the same, and use thereof
JP4430164B2 (ja) 疎水性非凝集コロイドシリカの製造方法
JP4982427B2 (ja) 金属酸化物粒子の表面改質剤及びそれを使用した金属酸化物粒子の表面改質方法
JP4118637B2 (ja) シリカのシラノール基含有率が低いシリカ
JP4879434B2 (ja) 安定化シリカおよびこれの製造および使用方法
JP4090836B2 (ja) アミノ基で表面変性された固体物質
KR100887273B1 (ko) 히드록시알킬로 작용화된 충전제
JP2009513741A (ja) 高い充填剤含量を有するシラン製剤
JP5730489B2 (ja) 表面改質された無機酸化物粉体及びその製造方法
JP2009292915A (ja) 表面改質無機酸化物粉末及び電子写真用トナー組成物
WO2018186382A1 (ja) 表面修飾ナノダイヤモンド、表面修飾ナノダイヤモンド分散液、及び樹脂分散体
JP7284573B2 (ja) 4級アンモニウム基で表面修飾された金属酸化物粒子およびその製造方法
JPH11130979A (ja) 表面処理無機微粒子の製造方法
JP5229843B2 (ja) 疎水化された金属化合物粒子粉末及びその製造法
JP2002256173A (ja) 表面改質無機酸化物粉末とその用途
JPH10306234A (ja) 有機修飾された無機粉末とその製造方法および用途
JPH08325276A (ja) 新規アルコキシシラン化合物とその用途
US20050203214A1 (en) Surface modified inorganic oxide powder and its use
JP3329330B2 (ja) 表面処理剤
JPH1192687A (ja) アルコール修飾された無機微粉末とその製造方法及び用途
JP2019182688A (ja) シリカ粒子又はその分散体の製造方法
JP2005539113A (ja) 有機ケイ素化合物を有する疎水化シリカ(hydrophobingsilica)およびその配合物
KR20130103654A (ko) 표면개질방법 및 표면개질재료
JP3575136B2 (ja) 表面にスルホン酸基を有する無機物質とその製法及び用途

Legal Events

Date Code Title Description
A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20030610