JPH1175896A - タンパク質分解酵素阻害物質の測定方法およびそれに用いる測定キット - Google Patents

タンパク質分解酵素阻害物質の測定方法およびそれに用いる測定キット

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JPH1175896A
JPH1175896A JP9234850A JP23485097A JPH1175896A JP H1175896 A JPH1175896 A JP H1175896A JP 9234850 A JP9234850 A JP 9234850A JP 23485097 A JP23485097 A JP 23485097A JP H1175896 A JPH1175896 A JP H1175896A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 迅速かつ簡便に高感度でUTIを測定するこ
とが可能な測定方法を提供する。 【解決手段】 尿試料、緩衝液、トリプシン溶液および
基質溶液を混合し、トリプシンの活性を測定することに
より前記尿試料中のUTI濃度を測定する方法におい
て、前記基質として、L−BAPNAのみの基質溶液を
用い、前記界面活性剤を前記緩衝液および酵素液の少な
くとも一方に配合する。界面活性剤の配合割合は、酵素
反応液全体の約1重量%である。界面活性剤としては、
例えば、ホ゜リオキシエチレン(40)オクチルフェニルエーテル、ホ゜リオキシエチレン
(10)オクチルフェニルエーテル、3−[(3−コラミト゛フ゜ロヒ゜ル)シ゛メチルアン
モニオ]−フ゜ロハ゜ンスルホン酸、3−[(3−コラミト゛フ゜ロヒ゜ル)シ゛メチルア
ンモニオ]−2−ハイト゛ロキシフ゜ロハ゜ンスルホン酸およびホ゜リオキシエチレンソルヒ゛
タンモノラウレートが使用できる。図1のグラフに示すように、
L−BAPNAを用いれば、測定感度が向上する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、タンパク質分解酵
素阻害物質の測定方法およびそれに用いる測定キットに
関する。
【0002】
【従来の技術】最近、尿中トリプシンインヒビター(U
TI)が、生体の状態を表す指標として注目され、臨床
医学の分野において様々な研究がされている。UTI
は、例えば、生体が炎症や外科手術等の内的外的ストレ
スに晒された場合や感染症に罹った場合に尿中に出現す
ることが知られている(「尿中トリプシンインヒビター
の臨床的意義」 桑島士郎ら、JAPANESE JOURNAL OF IN
FLAMMATION REVIEW ARTICLE,VOL9,NO.3,MAY 1989)
【0003】しかしながら、このような有用性を指摘さ
れながら、従来のUTIの測定方法は、感度が十分でな
いため、UTIを臨床医学などの分野において十分に活
用できていなかった。
【0004】すなわち、UTIは、その量に応じてトリ
プシン活性を阻害するため、その測定はトリプシン活性
の阻害程度を測定することにより行われる。この測定と
しては、例えば、尿試料、トリプシンを含有する酵素液
および緩衝液を混合し、これに基質溶液を添加して酵素
反応を測定する方法があげられる。また、この測定の際
に、通常、トリプシン活性化剤であるカルシウムが使用
され、通常、カルシウムは前記緩衝液中に配合される。
【0005】この測定において、基質として、ベンゾイ
ル−アルギニン−p-ニトロアニリド(BAPNA)が
広く使用されている。この基質はトリプシンにより切断
されると発色し、これを吸光度の変化量として分光光度
計で測定することにより、トリプシンの活性が測定され
るのである。しかし、この合成基質は難溶性であり1.
0g/L以上の濃度の基質溶液を調製することは困難で
あるため、酵素活性は基質濃度に依存し、トリプシンの
活性を向上させることが難しかった。一方、UTIは極
めて少量でトリプシンを阻害する。前述のようにUTI
の測定は、トリプシン活性の阻害程度の測定であるか
ら、トリプシン活性が高感度で測定できなければ、UT
Iの測定も高感度で行うことはできない。
【0006】この問題を解決するために、BAPNAを
極性有機溶媒に溶解し、これを水で約2倍に希釈して基
質溶液が調製されていた。しかし、これらの有機溶媒の
使用により、前記測定方法の自動分析機への適用が難し
くなり、また前記有機溶媒によって、自動分析装置一般
に使用されるプラスチックセルを傷めるおそれもある。
さらに、前記有機溶媒が、トリプシン等のタンパク質分
解酵素の活性を阻害する可能もある。この他、前記有機
溶媒を使用して基質溶液を調製したとしても、これを長
期間保存したり冷蔵保存すると、前記基質が結晶析出す
るおそれがある。このため、従来の測定方法では、BA
PNA等の難溶性基質を前記有機溶媒を用いて溶解する
場合、測定毎に基質溶液を調製し、その後直ちに測定す
る必要があった。また、有機溶媒を用いて基質溶液を調
製したとしても、UTIの測定感度は十分ではなかっ
た。
【0007】そこで、本発明の目的は、極性有機溶媒を
用いることなく高感度でタンパク質分解酵素阻害物質を
簡便かつ迅速に測定できる測定方法を提供することであ
る。
【0008】前記目的を達成するために、本発明者ら
は、下記に示す第1番目の測定方法、第2番目の測定方
法および第3番目の測定方法を開発した。
【0009】すなわち、第1番目の測定方法は、試料、
タンパク質分解酵素および基質を液中で混合し、前記酵
素の活性を測定することにより前記試料中のタンパク質
分解酵素阻害物質を測定する方法であって、前記基質と
して、基質中のアミノ酸残基がL型のみである基質を溶
解した基質溶液を用いる方法である。
【0010】すなわち、一般に、タンパク質分解酵素の
活性の測定において用いられる合成基質は、D,L複合
体であるが、この合成基質に対し、アミノ酸残基がL型
のみである基質は、溶解性に優れ、有機溶媒を用いるこ
となく水やお湯で十分量を溶解できる。この原因は明ら
かでないが、この事実は、本発明者らが確認したもので
ある。例えば、D,L−BAPNAは温水を用いても1
g/L以上の濃度で溶解させることは困難であるが、L
−BAPNAは、温水に10g/Lの高濃度で溶解させ
ることができる。さらに、アミノ酸残基がL型のみであ
る基質を用いることで、タンパク質分解酵素の活性を向
上することもできる。この原因も明らかではないが、本
発明者らは、酵素反応に寄与しないD型が排除されるこ
とによりL型の濃度が相対的に増加したという理由だけ
でなく、D型アミノ酸残基の酵素阻害も排除されたため
と推察している。
【0011】つぎに、本発明の第2番目の測定方法は、
試料、タンパク質分解酵素、基質および界面活性剤を液
中で混合し、前記酵素の酵素活性を測定することにより
前記試料中のタンパク質分解酵素阻害物質を測定する方
法であって、前記界面活性剤が前記液中への配合前にお
いて前記基質と共存しないという方法である。
【0012】すなわち、この測定方法では、界面活性剤
を用いることによりタンパク質分解酵素活性を向上さ
せ、この結果、その阻害物質の測定感度を向上させる。
ただし、酵素反応液調製前において、界面活性剤を基質
溶液中に配合するなどして基質と共存させてはいけな
い。したがって、界面活性剤は、緩衝液若しくは酵素液
等の基質溶液とは別の試薬液に配合するか、または別個
に酵素反応液に配合する必要がある。このような態様で
界面活性剤を配合することでタンパク質分解酵素の活性
が向上する理由は、明らかでないが、その向上は顕著で
ある。
【0013】なお、本発明において、酵素反応液とは、
酵素および基質が存在し、酵素反応が生起する液をい
う。したがって、酵素および基質が共存しても、pH等
の調整により酵素反応が生じない液は、酵素反応液とは
いわない。
【0014】つぎに、本発明の第3番目の測定方法は、
試料、タンパク質分解酵素、基質および界面活性剤を液
中で混合し、前記酵素の酵素活性を測定することにより
前記試料中のタンパク質分解酵素阻害物質を測定する方
法であって、前記基質として、アミノ酸残基がL型のみ
である基質を溶解した基質溶液を用い、前記界面活性剤
が前記液中への配合前において前記基質溶液中には存在
しない測定方法である。
【0015】すなわち、この第3番目の測定方法は、前
記第1番目の測定方法と前記第2番目の測定方法とを組
み合わせた方法であり、測定感度が極めて高い方法であ
る。
【0016】本発明の測定方法において、界面活性剤の
酵素反応液中の濃度は0.01〜2%であることが好ま
しく、さらに好ましくは、0.05〜0.5%である。
【0017】本発明の測定方法において、前記基質は、
前記の式(化1)で表される基質であることが好まし
い。この基質としては、α-ベンゾイル−L-アルギニン
−p-ニトロアニリドが好ましい。
【0018】本発明の測定方法において、界面活性剤
は、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポ
リオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシ
エチレンソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノ
パルミテート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンモ
ノラウレート、ポリオキシエチレン(10)オクチルフ
ェニルエーテル、ポリオキシエチレン(30)オクチル
フェニルエーテル、ポリオキシエチレン(40)オクチ
ルフェニルエーテル、1−O−n−オクチル−β−D−
グルコピラノシド、スクロースモノラウレート、3−
[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−プ
ロパンスルホン酸、3−[(3−コラミドプロピル)ジ
メチルアンモニオ]−2−ハイドロキシプロパンスルホ
ン酸、臭化セチルトリメチルアンモニウム、水酸化ベン
ジルトリメチルアンモニウムからなる群から選択された
少なくとも一つであることが好ましい。
【0019】本発明の測定方法において、タンパク質分
解酵素がトリプシンであり、試料が尿であり、タンパク
質分解酵素阻害物質が尿中トリプシンインヒビター(U
TI)であり、カルシウム存在下で酵素活性を測定する
ことが好ましい。
【0020】つぎに、本発明のタンパク質分解酵素阻害
物質の測定キットは、前記3種類の本発明の測定方法に
対応して、以下に示す第1番目、第2番目および第3番
目の3種類の測定キットがある。
【0021】まず、前記第1番目の測定キットは、タン
パク質分解酵素および基質を備えたタンパク質分解酵素
阻害物質の測定キットであって、前記基質が、アミノ酸
残基がL型のみである基質を溶解した基質溶液である。
【0022】また、前記第2番目の測定キットは、タン
パク質分解酵素、基質および界面活性剤を備えたタンパ
ク質分解酵素阻害物質の測定キットであって、前記3試
薬の混合前において前記界面活性剤が前記基質と共存し
ていない。
【0023】そして、前記第3番目の測定キットは、タ
ンパク質分解酵素、基質および界面活性剤を備えたタン
パク質分解酵素阻害物質の測定キットであって、前記基
質は、光学活性がL型のアミノ酸残基のみからなる基質
を溶解した基質溶液であり、前記界面活性剤が前記基質
溶液中に存在していない。
【0024】このような本発明の測定キットを使用する
ことにより、タンパク質分解酵素阻害物質を迅速かつ簡
便に高感度で測定できる。
【0025】本発明の測定キットにおいて、緩衝液(R
1)、タンパク質分解酵素液(R2)、基質溶液(R
3)を備えた、タンパク質分解酵素阻害物質の測定キッ
トであって、緩衝液(R1)およびタンパク質分解酵素
液(R2)の少なくとも一方の液中に界面活性剤が含有
されていることが好ましい。
【0026】この測定キットにおいて、前記R1、R2
およびR3は、それぞれ独立していてもよく、前記三種
類の液のうちいずれか二種類の液の混合液と他の一種の
液との組み合わせであってもよい。具体的には下記の三
通りの組み合わせがある。 (1) R1とR2との混合液+R3 (2) R1とR3との混合液+R2 (3) R2とR3との混合液+R1
【0027】なお、上記組み合わせ(3)において、例
えば、pHの調整等により酵素反応を制御すれば、酵素
と基質とを混合することができる。
【0028】本発明の測定キットにおいて、界面活性剤
の濃度が、酵素反応液中で0.01〜2%の濃度範囲と
なるように調整されていることが好ましい。さらに、
0.05〜0.5%に調整されていることが好ましい。
【0029】本発明の測定キットにおいて、好ましい基
質および界面活性剤は、本発明の測定方法の箇所で述べ
たものと同じである。
【0030】本発明の測定キットにおいて、さらにカル
シウムを備え、測定対象試料が尿であり、タンパク質分
解酵素がトリプシンであり、タンパク質分解酵素阻害物
質が尿中トリプシンインヒビター(UTI)であること
が好ましい。このキットにより、UTIの測定を迅速か
つ簡便に高感度で行うことが可能になる。
【0031】
【発明の実施の形態】つぎに、本発明を詳しく説明す
る。
【0032】本発明のタンパク質分解酵素阻害物質の測
定方法は、例えば、タンパク質分解酵素液と、アミノ酸
残基がL型のみの基質を用いた基質溶液と、緩衝液とを
用いて実施できる。
【0033】前記酵素としては、例えば、トリプシンが
あげられる。このトリプシンは、特に限定するものでな
く、例えば、牛膵臓由来のトリプシン、ブタ膵臓由来の
トリプシンがあげられる。また、トリプシン濃度は、そ
の比活性等により適宜決定されるが、酵素液全体に対
し、通常、1〜500mg/L、好ましくは10〜10
0mg/Lである。また、この酵素液は、トリプシンの
自己消化を防止する目的で、塩酸または緩衝液によりp
H2.0〜3.5に調整してもよい。
【0034】なお、トリプシン以外のタンパク質分解酵
素としては、例えば、キモトリプシンがあげられる。そ
して、キモトリプシンに使用する基質としては、例え
ば、ベンゾイル−L-チロシン−p-ニトロアニリドがあ
げられる。
【0035】基質溶液は、アミノ酸残基がL型の基質の
溶液である。前記基質の好ましいものは、先に述べたと
おりであるが、この他に、例えば、Z−グリシン−グリ
シン−L-ロイシン−p-ニトロアニリド、サクシニル−
L-アラニン−L-アラニン−L-アラニン−p-ニトロア
ニリドがあげられる。このような、アミノ酸残基がL型
のみの合成基質は、一般に市販されており(例えば、シ
グマ社から市販のもの)、またD,L複合体を光学活性
クロマトグラフィー等で分割することによっても得るこ
とできる。基質濃度は、通常、1〜10g/Lの範囲で
ある。また、この基質溶液の調製に用いる溶媒は、通
常、水(精製水等)であるが、後述する緩衝液でもよ
い。また、基質溶液は、例えば、水等の前記溶媒を加温
し、これに基質を加えることにより調製できる。
【0036】つぎに、前記緩衝液は、特に制限するもの
ではなく、例えば、トリエタノールアミン塩酸塩緩衝
液、トリス塩酸緩衝液、リン酸緩衝液、グッド緩衝液等
があげられる。この緩衝液は、常法により調製される。
この緩衝液のpHは、これを用いる酵素の最適pHによ
り決定されるが、例えば、トリプシンに使用する場合、
pH7〜8が好ましい。また、トリプシンインヒビター
を測定する場合は、通常、カルシウムを緩衝液中に配合
する。その割合は、通常、0.01〜0.5重量%であ
る。
【0037】そして、本発明では、界面活性剤を使用す
ることが一つの特徴であるが、その種類は問わず、イオ
ン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性
剤のいずれも使用できる。また、その使用量も界面活性
剤の種類により最適範囲が適宜決定される。
【0038】前記イオン性界面活性剤としては、例え
ば、臭化セチルトリメチルアンモニウム、水酸化ベンジ
ルトリメチルアンモニウムがあげられる。この使用量
は、通常、0.01〜2重量%である。
【0039】前記非イオン性界面活性剤としては、例え
ば、ポリオキシエチレン(40)オクチルフェニルエー
テル(例えば、TRITON X−405、ナカライテ
スク社製)、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェ
ニルエーテル(例えば、TRITON X−100、ナ
カライテスク社製)、ポリオキシエチレンソルビタンモ
ノラウレート(例えば、Tween 20、ナカライテ
スク社製)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレー
ト(例えば、Tween80、ナカライテスク社製)が
あげられる。この使用量は、通常、0.01〜2重量%
である。
【0040】前記両性界面活性剤としては、例えば、3
−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−
プロパンスルホン酸(例えば、CHAPS、同仁化学社
製)、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモ
ニオ]−2−ハイドロキシプロパンスルホン酸(例え
ば、CHAPSO、同仁化学社製)があげられる。この
使用量は、通常、0.01〜2重量%である。
【0041】この界面活性剤は、通常、緩衝液中に配合
されるが、これに限定されず、酵素液に配合されたり、
若しくは界面活性剤溶液として単独で酵素反応液に配合
される場合もある。但し、基質溶液に配合することはで
きない。基質溶液に配合して酵素反応液調製前に基質と
共存させると、タンパク質分解酵素の活性を向上させる
ことができないからである。
【0042】つぎに、本発明の測定方法は、例えば、U
TIを測定対象とした場合、つぎのようにして行われ
る。
【0043】すなわち、まず、尿試料、緩衝液および酵
素液の三者を混合する。この割合(体積比)は、通常、
尿試料:緩衝液:酵素液=1:5〜20:2〜10の範
囲に設定される。ついで、これをインキュベーションす
る。このインキュベーションの条件は、通常、25〜3
7℃で1〜5分間である。そして、これに、前記基質溶
液を配合し、前記酵素と基質を反応させる。この配合割
合は、通常、全反応液に対し、体積比5〜30%の範囲
である。この反応条件は、通常、25〜37℃で1〜2
0分間である。また、このときの反応液のpHは、酵素
の種類等により異なるが、この例のトリプシンの場合、
pH7〜8が好ましい。そして、所定の方法により、酵
素反応を検出し、酵素活性を測定する。この反応におい
て、前記尿試料中のUTIの量に応じ、酵素反応が阻害
される。したがって、予め、既知のUTIを用いて検量
線を作成しておけば、酵素活性の測定により、UTIの
量を測定することができる。前記酵素反応の検出方法と
しては、例えば、BAPNA等のような基質として酵素
反応により発色するものを用いた場合は、この発色の程
度を分光光度計等により測定する方法があげられる。こ
の他に、反応生成物の濃度を測定することにより、酵素
活性を測定することもできる。
【0044】つぎに、本発明の測定キットは、例えば、
前記R1の緩衝液、前記R2の酵素液および前記R3の
基質溶液を備えるものがあげられる。これらの試薬(R
1,R2,R3)の調製は、本発明の測定方法の説明に
おいて述べた方法により行うことができ、また各組成お
よびその割合等は、測定方法の箇所で述べたとおりであ
る。この測定キットを用いることにより、UTI等のタ
ンパク質分解酵素阻害物質の測定を簡便にかつ迅速に行
うことができる。
【0045】つぎに、実施例について説明する。
【0046】(実施例1)緩衝液(R1)、酵素液(R
2)および基質溶液(R3)を前述の方法により調製し
た。その組成を下記に示す。
【0047】 (緩衝液R1:pH8.1) トリエタノールアミン塩酸塩 0.5mol/L CaCl2・2H2O 150mg/L
【0048】 (酵素液R2) トリプシン(シグマ社製) 50mg/L HCl 1mmol/L
【0049】(基質液R3)約70℃に加温した水に、
1g/Lの割合でL−BAPNA(ペプチド研究所製、
以下同じ)を溶解することにより調製した。
【0050】(操作方法)生理食塩水(0.85%)を
試料とし、L−BAPNA、D,L−BAPNAの反応
タイムコースを比較した。前記試料20μl、緩衝液
(R1)200μlおよび酵素液(R2)100μlを
混合し、37℃で5分間保温した後、前記基質溶液(R
3)100μlを添加して、反応を開始した。そして、
37℃に保温して2分間の吸光度(405nm)変化を
自動分析装置で測定し、相対吸光度(△O.D.)を求
めた。この結果を、図1のグラフに示す。また、D,L
−BAPNA(シグマ社製、以下同じ)を用いた他は、
前記と同一の条件および操作により測定を行った。この
結果も、図1のグラフに示す。
【0051】図1のグラフから、L−BAPNAを用い
ると、D,L−BAPNAを用いた場合より測定感度が
向上することがわかる。
【0052】(実施例2)下記に示すように、4種類の
界面活性剤(TRITON X−405、TRITON
X−100、Tween20、CHAPSの4種類)
を用いてUTIの測定をそれぞれ行った。以下に試薬
(R1、R2、R3)の組成および操作方法を示す。
【0053】 (緩衝液R1:pH8.1) トリエタノールアミン塩酸塩 0.5mol/L CaCl2・2H2O 150mg/L 界面活性剤 0.1、0.4重量% 但し、界面活性剤の酵素反応液中の濃度(最終濃度)
は、前記濃度の1/2となる。また、対照(Ref)と
して界面活性剤濃度0重量%の緩衝液も調製し実験に供
した。
【0054】 (酵素液R2:pH3.0) トリプシン 50mg/L HCl 1mmol/L
【0055】(基質液R3)約70℃に加温した水に、
4.0g/Lの割合でL−BAPNAを溶解することに
より調製した。
【0056】(操作方法)UTI(ミラクリッド、持田
製薬社製、以下同じ)の生理食塩水溶液として、0U/
ml、5U/ml、10U/mlおよび20U/mlの
4種類の濃度のものを用意し、これを試料とした。つぎ
に、前記試料20μl、緩衝液(R1)200μlおよ
び酵素液(R2)100μlを混合し、37℃で5分間
保温した後、前記基質溶液(R3)100μlを添加し
て、反応を開始した。そして、37℃に保温して2分間
の吸光度(405nm)変化を自動分析装置で測定し、
相対吸光度(△O.D.)を求めた。この結果を、各界
面活性剤ごとに図2の4つのグラフに示す。
【0057】図2の4つのグラフに示すように、界面活
性剤を緩衝液中に配合して使用すると、UTIの測定感
度が向上することが分かる。また、一般に、界面活性剤
の濃度を上げればUTI測定感度も向上する傾向が確認
できた。
【0058】(実施例3)下記に示すように、界面活性
剤を添加する試薬の種類を変えて、UTIの測定を行っ
た。
【0059】 処方A:緩衝液R1に界面活性剤を添加 (緩衝液R1:pH8.1) トリエタノールアミン塩酸塩 0.5mol/L CaCl2・2H2O 150mg/L TRITON X−405 2g/L 但し、界面活性剤の酵素反応液中の濃度(最終濃度)
は、前記濃度は0.1重量%となる。以下の処方Bおよ
び処方Cも同じである。 (酵素液R2:pH3.0) トリプシン 50mg/L HCl 1mmol/L (基質液R3)約70℃に加温した水に、4.0g/L
の割合でL−BAPNAを溶解することにより調製し
た。
【0060】 処方B:酵素液R2に界面活性剤を添加 (緩衝液R1:pH8.1) トリエタノールアミン塩酸塩 0.5mol/L CaCl2・2H2O 150mg/L (酵素液R2:pH3.0) トリプシン 50mg/L HCl 1mmol/L TRITON X−405 4g/L (基質液R3)約70℃に加温した水に、4.0g/L
の割合でL−BAPNAを溶解することにより調製し
た。
【0061】 処方C:基質溶液R3に界面活性剤を添加 (緩衝液R1:pH8.1) トリエタノールアミン塩酸塩 0.5mol/L CaCl2・2H2O 150mg/L (酵素液R2:pH3.0) トリプシン 50mg/L HCl 1mmol/L (基質液R3)約70℃に加温した水に、L−BAPN
A(4.0g/L)およびTRITON X−405
(4g/L)を溶解することにより調製した。
【0062】 処方D:界面活性剤無添加 (緩衝液R1:pH8.1) トリエタノールアミン塩酸塩 0.5mol/L CaCl2・2H2O 150mg/L (酵素液R2:pH3.0) トリプシン 50mg/L HCl 1mmol/L (基質液R3)約70℃に加温した水に、L−BAPN
A(4.0g/L)を溶解することにより調製した。
【0063】(操作方法)UTIの生理食塩水溶液とし
て、0U/ml、5U/ml、10U/ml、および2
0U/mlの4種類の濃度のものを用意し、これを試料
とした。つぎに、前記試料20μl、緩衝液(R1)2
00μlおよび酵素液(R2)100μlを混合し、3
7℃で5分間保温した後、前記基質溶液(R3)100
μlを添加して、反応を開始した。そして、37℃に保
温して2分間の吸光度(405nm)変化を自動分析装
置で測定し、相対吸光度(△O.D.)を求めた。この
結果を、図3のグラフに示す。
【0064】図3のグラフに示すように、緩衝液R1お
よび酵素液R2に添加した処方A,Bでは、無添加の処
方Dに比べ、UTIの測定感度が向上したことが分か
る。しかし、基質溶液R3に添加した処方Cでは、無添
加の処方Dに比べ、UTIの測定感度が低下した。この
ことから、酵素反応液調製前において基質と共存させな
ければ、界面活性剤を添加するとUTIの測定感度は向
上するといえる。
【0065】(実施例4)下記に示すように、基質溶液
R3の組成を変えてUTIの測定を行った。また、緩衝
液R1および酵素液R2の組成も下記に示す。
【0066】 (緩衝液R1:pH8.1) トリエタノールアミン塩酸塩 0.5mol/L CaCl2・2H2O 150mg/L
【0067】 (酵素液R2:pH3.0) トリプシン 50mg/L HCl 1mmol/L
【0068】(基質液R3) ・処方(0) 約70℃に加温した水に、D,L−BAPNA(1.0
g/L)を溶解することにより調製した。 ・処方(1) まず、D,L−BAPNAをDMSOに溶解し、これを
界面活性剤(CHAPSO)水溶液で希釈することによ
り調製した。なお、前記各成分の溶液中の最終濃度は、
D,L−BAPNAが4g/L、DMSOが10重量
%、CHAPSOが1重量%である。 ・処方(2) D,L−BAPNAに代えてL−BAPNAを用いた他
は、処方(1)と同様に調製した。 ・処方(3) D,L−BAPNAに代えてL−BAPNAを4g/L
の割合で用いた他は、処方(0)と同様に調製した。 ・処方(4) 約70℃に加温した水に、L−BAPNA(4.0g/
L)を溶解することにより調製した。そして、この処方
(4)では、CHAPSOを緩衝液R1に0.5重量%
の割合で添加した。
【0069】(操作方法)UTIの生理食塩水溶液とし
て、0U/ml、6.25U/ml、12.5U/m
l、25U/ml、50U/mlおよび100U/ml
の6種類の濃度のものを用意し、これを試料とした。つ
ぎに、前記試料20μl、緩衝液(R1)200μlお
よび酵素液(R2)100μlを混合し、37℃で5分
間保温した後、前記基質溶液(R3)100μlを添加
して、反応を開始した。そして、37℃に保温して2分
間の吸光度(405nm)変化を自動分析装置で測定
し、相対吸光度(△O.D.)を求めた。この結果を、
図4のグラフに示す。
【0070】図4のグラフAは、5つの処方(0、1、
2、3、4)の結果を全て示したグラフであり、同図グ
ラフBは処方(1)および処方(4)を示したグラフで
ある。これらから分かるように、従来法である3つの処
方(0、1、2)に比較して、本発明の処方である処方
(3)および処方(4)によったUTI測定感度は高か
った。特に、L−BAPNAを用い、界面活性剤を緩衝
液R1に配合した処方(4)のUTI測定感度は極めて
高かった。
【0071】
【発明の効果】以上のように、本発明のタンパク質分解
酵素阻害物質の測定方法によれば、DMSO等の有機溶
媒を用いる以上に基質濃度を高めることができ、また測
定感度も向上することができる。このため、本発明の測
定方法の適用により、タンパク質分解酵素阻害物質を迅
速かつ簡便に高感度で測定できるため、例えば、感染症
等の有用な指標となりうるUTIを臨床医療等の分野で
十分に活用することが可能となる。また、前述のよう
に、本発明の測定方法は、有機溶媒を用いることがない
ため基質溶液の調製工程の簡略化ができ、またプラスチ
ックセルの損傷も生じず、さらに有機溶媒を用いないこ
とは材料コストの低減にもつながる。このため、本発明
の測定方法は、自動分析機を用いた検査等に容易にしか
も低コストで適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の測定方法の一実施例において、L−B
APNAおよびD,L−BAPNAを用いて感度比較を
行った結果を示すグラフである。
【図2】本発明の測定方法のその他の実施例において、
各種界面活性剤を用いてUTIの測定を行った結果を示
すグラフである。
【図3】本発明の測定方法のさらにその他の実施例にお
いて、界面活性剤を添加する試薬の種類を変えてUTI
の測定を行った結果を示すグラフである。
【図4】グラフAおよびグラフBは、本発明の測定方法
の一実施例において、基質溶液を5種類の処方で調製し
てUTIの測定を行った結果を示すグラフである。

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 試料、タンパク質分解酵素および基質を
    液中で混合し、前記酵素の活性を測定することにより前
    記試料中のタンパク質分解酵素阻害物質を測定する方法
    であって、前記基質として、基質中のアミノ酸残基がL
    型のみである基質を溶解した基質溶液を用いるタンパク
    質分解酵素阻害物質の測定方法。
  2. 【請求項2】 試料、タンパク質分解酵素、基質および
    界面活性剤を液中で混合し、前記酵素の酵素活性を測定
    することにより前記試料中のタンパク質分解酵素阻害物
    質を測定する方法であって、前記界面活性剤が前記液中
    への配合前において前記基質と共存しないタンパク質分
    解酵素阻害物質の測定方法。
  3. 【請求項3】 試料、タンパク質分解酵素、基質および
    界面活性剤を液中で混合し、前記酵素の活性を測定する
    ことにより前記試料中のタンパク質分解酵素阻害物質を
    測定する方法であって、前記基質として、基質中のアミ
    ノ酸残基がL型のみである基質を溶解した基質溶液を用
    い、前記界面活性剤が前記液中への配合前において前記
    基質溶液中には存在しないタンパク質分解酵素阻害物質
    の測定方法。
  4. 【請求項4】 界面活性剤の酵素反応液中の濃度が0.
    01〜2%である請求項2または3記載の測定方法。
  5. 【請求項5】 基質が、下記の式(化1)で表される基
    質である請求項1または3記載の測定方法。 (化1) 保護基−(L型アミノ酸残基)n−p-ニトロアニリド [前記式において、nは1〜5の整数である。]
  6. 【請求項6】 基質が、α-ベンゾイル−L-アルギニン
    −p-ニトロアニリドである請求項5記載の測定方法。
  7. 【請求項7】 界面活性剤が、ポリオキシエチレンソル
    ビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタン
    モノオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステ
    アレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモ
    ノオレート、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエ
    チレン(10)オクチルフェニルエーテル、ポリオキシ
    エチレン(30)オクチルフェニルエーテル、ポリオキ
    シエチレン(40)オクチルフェニルエーテル、1−O
    −n−オクチル−β−D−グルコピラノシド、スクロー
    スモノラウレート、3−[(3−コラミドプロピル)ジ
    メチルアンモニオ]−プロパンスルホン酸、3−[(3
    −コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−2−ハイ
    ドロキシプロパンスルホン酸、臭化セチルトリメチルア
    ンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムか
    らなる群から選択された少なくとも一つである請求項2
    〜4のいずれか一項に記載の測定方法。
  8. 【請求項8】 タンパク質分解酵素がトリプシンであ
    り、試料が尿であり、タンパク質分解酵素阻害物質が尿
    中トリプシンインヒビター(UTI)であり、カルシウ
    ム存在下で酵素活性を測定する請求項1〜7のいずれか
    一項に記載の測定方法。
  9. 【請求項9】 タンパク質分解酵素および基質を備えた
    タンパク質分解酵素阻害物質の測定キットであって、前
    記基質が、基質中のアミノ酸残基がL型のみである基質
    を溶解した基質溶液であるタンパク質分解酵素阻害物質
    の測定キット。
  10. 【請求項10】 タンパク質分解酵素、基質および界面
    活性剤を備えたタンパク質分解酵素阻害物質の測定キッ
    トであって、前記3試薬の混合前において前記界面活性
    剤が前記基質と共存しないタンパク質分解酵素阻害物質
    の測定キット。
  11. 【請求項11】 タンパク質分解酵素、基質および界面
    活性剤を備えたタンパク質分解酵素阻害物質の測定キッ
    トであって、前記基質は、基質中のアミノ酸残基がL型
    のみである基質を溶解した基質溶液であり、前記界面活
    性剤が前記基質溶液中に存在しないタンパク質分解酵素
    阻害物質の測定キット。
  12. 【請求項12】 緩衝液(R1)、タンパク質分解酵素
    液(R2)、基質溶液(R3)を備えたタンパク質分解
    酵素阻害物質の測定キットであって、前記緩衝液(R
    1)およびタンパク質分解酵素液(R2)の少なくとも
    一方の液中に界面活性剤が含有されている請求項10ま
    たは11記載の測定キット。
  13. 【請求項13】 界面活性剤の濃度が、酵素反応液中で
    0.01〜2%の濃度範囲となるように調整されている
    請求項10〜12のいずれか一項に記載の測定キット。
  14. 【請求項14】 基質が、下記の式(化1)で表される
    基質である請求項9または11記載の測定キット。 (化1) 保護基−(L型アミノ酸残基)n−p-ニトロアニリド [前記式において、nは1〜5の整数である。]
  15. 【請求項15】 基質が、α-ベンゾイル−L-アルギニ
    ン−p-ニトロアニリドである請求項14記載の測定キ
    ット。
  16. 【請求項16】 界面活性剤が、ポリオキシエチレンソ
    ルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタ
    ンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノス
    テアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタン
    モノオレート、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシ
    エチレン(10)オクチルフェニルエーテル、ポリオキ
    シエチレン(30)オクチルフェニルエーテル、ポリオ
    キシエチレン(40)オクチルフェニルエーテル、1−
    O−n−オクチル−β−D−グルコピラノシド、スクロ
    ースモノラウレート、3−[(3−コラミドプロピル)
    ジメチルアンモニオ]−プロパンスルホン酸、3−
    [(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−2
    −ハイドロキシプロパンスルホン酸、臭化セチルトリメ
    チルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニ
    ウムからなる群から選択された少なくとも一つである請
    求項10〜13のいずれか一項に記載の測定キット。
  17. 【請求項17】 カルシウムをさらに備え、測定対象試
    料が尿であり、タンパク質分解酵素がトリプシンであ
    り、タンパク質分解酵素阻害物質が尿中トリプシンイン
    ヒビター(UTI)である請求項9〜16のいずれか一
    項に記載の測定キット。
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